(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】太陽電池、太陽電池の製造方法及び太陽光発電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/055 20140101AFI20231026BHJP
【FI】
H01L31/04 622
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521648
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 CN2021136125
(87)【国際公開番号】W WO2022078530
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011086418.0
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522400560
【氏名又は名称】隆基緑能科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LONGI GREEN ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】解 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 子峰
(72)【発明者】
【氏名】呉 兆
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251CB30
5F251HA17
(57)【要約】
本開示は太陽電池、太陽電池の製造方法及び太陽光発電モジュールを提供し、太陽光発電の技術分野に関する。太陽電池は、結晶シリコンセルと、結晶シリコンセルの受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層と、を含み、前記ペロブスカイト層は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少し、前記ペロブスカイト層の背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上であり、バンドギャップが徐々に大から小へ変化するため、ペロブスカイト層は吸収スペクトルが広く、キャリアの自由行程が長く、発光効率がより高いため、太陽電池のスペクトル吸収範囲を広げ、エネルギーの利用・変換効率を高めることができ、しかも、複数層の電池を積層するという複雑なプロセスを回避し、多膜層の構造を簡素化し、膜層界面や直列構造の間でのキャリアの輸送損失を回避し、太陽電池の変換効率をさらに高め、プロセスの難度を低減させ、工業的生産を容易にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコンセルと、結晶シリコンセルの受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層と、を含み、
前記ペロブスカイト層は、受光面から背光面に向かうに従って、バンドギャップが徐々に減少し、前記ペロブスカイト層の背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記ダウンコンバージョン発光層はダウンコンバージョン発光材料を含み、
前記ダウンコンバージョン発光材料はペロブスカイト材料又は発光量子ドットを含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記ペロブスカイト層はABX
3であり、
前記Aはメチルアミンイオン、ホルムアミジンイオン、フェニルエチルアミンイオン、1-ナフチルメチルアミンイオン及びセシウムイオンから選択される少なくとも1つであり、
前記Bは鉛イオン及び錫イオンから選択される少なくとも1つであり、
前記Xはそれぞれ臭素イオン、ヨウ素イオン及び塩素イオンから選択される少なくとも1つであり、
厚さ方向において前記ペロブスカイト層における前記ABX
3の元素分布を調整することにより、前記ペロブスカイト層の前記受光面から前記背光面までのバンドギャップが徐々に減少することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記ペロブスカイト層は、受光面でのバンドギャップが2eV~3.06eV、背光面でのバンドギャップが1.2eV~1.5eVであり、前記ダウンコンバージョン発光層中のダウンコンバージョン発光材料のバンドギャップは1.2eV~1.5eVであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記ペロブスカイト層の厚さは10nm~100nmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項6】
前記ペロブスカイト層とダウンコンバージョン発光層のくり抜き部位に形成され、前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層とは直接接触しない上部電極をさらに含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項7】
太陽電池の製造方法であって、
前記太陽電池は請求項1~6のいずれか1項に記載の太陽電池であり、前記方法は、
結晶シリコンセルを提供するステップと、
ダウンコンバージョン発光層と、バンドギャップが前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上である狭バンドギャップペロブスカイト層とを前記結晶シリコンセルの受光面上に順次形成するステップと、
広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップであって、前記広バンドギャップペロブスカイト材料の形態は、固相、気相及び液相のうちのいずれかの1つであり、前記広バンドギャップペロブスカイト材料のバンドギャップは前記狭バンドギャップペロブスカイト層のバンドギャップよりも大きいステップと、を含み、又は、
結晶シリコンセルを提供するステップと、
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層を形成するステップと、
前記ダウンコンバージョン発光層上に2次元ペロブスカイト前駆体と3次元ペロブスカイト前駆体を含むペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液中のペロブスカイト前駆体を順次結晶化させてペロブスカイト層を形成するステップと、を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記広バンドギャップペロブスカイト材料が固相である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層の表面に広バンドギャップペロブスカイト材料の粉末を付与して加熱し、前記広バンドギャップペロブスカイト材料と前記狭バンドギャップペロブスカイト層との間でイオン交換を起こし、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記広バンドギャップペロブスカイト材料が液相である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX
3ペロブスカイト溶液、AX前駆体溶液及びBX
2前駆体溶液のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料に浸漬してイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記広バンドギャップペロブスカイト材料の形態が気体状態である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX
3ペロブスカイト蒸気、AX前駆体蒸気及びBX
2前駆体蒸気のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料の雰囲気に入れてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の太陽電池を含むことを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項12】
結晶シリコンセルと、前記結晶シリコンセルの受光面上に位置する第1パッケージング層、ペロブスカイト層、ダウンコンバージョン発光層及びカバーガラスと、前記結晶シリコンセルの背光面上に位置する第2パッケージング層及びバックプレートと、を含み、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記結晶シリコンセルの受光面と前記第1パッケージング層との間に位置し、又は、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記第1パッケージング層と前記カバーガラスの背光面との間に位置することを特徴とする請求項11に記載の太陽光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は太陽光発電の技術分野に関し、特に太陽電池、太陽電池の製造方法及び太陽光発電モジュールに関する。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本願は2020年10月12日に中国特許庁に提出され、出願番号が202011086418.0、名称が「太陽電池、太陽電池の製造方法及び太陽光発電モジュール」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全ての内容は引用により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
結晶シリコン電池では、シリコンのバンドギャップは狭く、シリコンは間接半導体であるため、バンドギャップよりもエネルギーがはるかに多い光子はシリコンに吸収された後に、光生成キャリアを生成することができず、この光子のエネルギーは熱として放出され、その結果、可視スペクトルのエネルギーが十分に利用できない。
【0004】
現在、結晶シリコン電池に広バンドギャップの他の太陽電池を重ねて、可視スペクトルにおけるエネルギーの高い光子を同時に吸収し、利用することができるタンデム型太陽電池を製造するのが一般的であるが、タンデム型太陽電池の構造には複数の膜層が存在するため、製造プロセスが複雑になり、異なる電池間に直列構造が存在するため、異なる膜層間、異なる電池間でのキャリアの輸送過程におけるエネルギー損失を招くことになり、これによって、タンデム型太陽電池のエネルギー変換効率が制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、キャリアの輸送過程におけるエネルギー損失を小さくし、太陽電池の変換効率を高める太陽電池、太陽電池の製造方法及び太陽光発電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、本開示の実施例は、
結晶シリコンセルと、結晶シリコンセルの受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層と、を含み、
前記ペロブスカイト層は、受光面から背光面に向かうに従って、バンドギャップが徐々に減少し、前記ペロブスカイト層の背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上である太陽電池を提供する。
【0007】
好ましくは、前記ダウンコンバージョン発光層はダウンコンバージョン発光材料を含み、
前記ダウンコンバージョン発光材料はペロブスカイト材料又は発光量子ドットを含む。
【0008】
好ましくは、前記ペロブスカイト層はABX3であり、
前記Aはメチルアミンイオン、ホルムアミジンイオン、フェニルエチルアミンイオン、1-ナフチルメチルアミンイオン及びセシウムイオンから選択される少なくとも1つであり、
前記Bは鉛イオン及び錫イオンから選択される少なくとも1つであり、
前記Xはそれぞれ臭素イオン、ヨウ素イオン及び塩素イオンから選択される少なくとも1つであり、
厚さ方向において前記ペロブスカイト層における前記ABX3の元素分布を調整することにより、前記ペロブスカイト層の前記受光面から前記背光面までのバンドギャップが徐々に減少する。
【0009】
好ましくは、前記ペロブスカイト層は、受光面でのバンドギャップが2eV~3.06eVであり、背光面でのバンドギャップが1.2eV~1.5eVであり、前記ダウンコンバージョン発光層中のダウンコンバージョン発光材料のバンドギャップは1.2eV~1.5eVである。
【0010】
好ましくは、前記ペロブスカイト層の厚さは10nm~100nmである。
【0011】
好ましくは、前記太陽電池は、前記ペロブスカイト層とダウンコンバージョン発光層のくり抜き部位に形成され、前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層とは直接接触しない上部電極をさらに含む。
【0012】
第2態様では、本開示の実施例は、太陽電池の製造方法であって、
前記太陽電池は第1態様に記載の太陽電池であり、前記方法は、
結晶シリコンセルを提供するステップと、
ダウンコンバージョン発光層と、バンドギャップが前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上である狭バンドギャップペロブスカイト層と、を前記結晶シリコンセルの受光面上に順次形成するステップと、
広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップであって、前記広バンドギャップペロブスカイト材料の形態は、固相、気相及び液相のうちのいずれかの1つであり、前記広バンドギャップペロブスカイト材料のバンドギャップは前記狭バンドギャップペロブスカイト層のバンドギャップよりも大きいステップと、を含み、
又は、
結晶シリコンセルを提供するステップと、
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層を形成するステップと、
前記ダウンコンバージョン発光層上に2次元ペロブスカイト前駆体と3次元ペロブスカイト前駆体を含むペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液中のペロブスカイト前駆体を順次結晶化させてペロブスカイト層を形成するステップと、を含む太陽電池の製造方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記広バンドギャップペロブスカイト材料が固相である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層の表面に広バンドギャップペロブスカイト材料の粉末を付与して、前記広バンドギャップペロブスカイト材料と前記狭バンドギャップペロブスカイト層との間でイオン交換を起こし、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含む。
【0014】
好ましくは、前記広バンドギャップペロブスカイト材料が液相である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX3ペロブスカイト溶液、AX前駆体溶液及びBX2前駆体溶液のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料に浸漬してイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含む。
【0015】
好ましくは、前記広バンドギャップペロブスカイト材料の形態が気体状態である場合、前記広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成するステップは、
狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX3ペロブスカイト蒸気、AX前駆体蒸気及びBX2前駆体蒸気のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料の雰囲気に入れてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成するステップを含む。
【0016】
第3態様では、本開示の実施例は、第1態様に記載の太陽電池を含む太陽光発電モジュールを提供する。
【0017】
好ましくは、結晶シリコンセルと、前記結晶シリコンセルの受光面上に位置する第1パッケージング層、ペロブスカイト層、ダウンコンバージョン発光層及びカバーガラスと、前記結晶シリコンセルの背光面上に位置する第2パッケージング層及びバックプレートと、を含み、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記結晶シリコンセルの受光面と前記第1パッケージング層との間に位置し、又は、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記第1パッケージング層と前記カバーガラスの背光面との間に位置する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の実施例に係る太陽電池は、結晶シリコンセルと、前記結晶シリコンセルの受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層と、を含み、該ペロブスカイト層は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少し、かつ、背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上であり、これによって、結晶シリコンセルによって効果的に利用できないさまざまなエネルギーの光子を吸収して、電子と正孔を発生させることができ、電子と正孔はバンドギャップのエネルギーバンド構造により駆動されてペロブスカイト層の背光面に輸送され、ダウンコンバージョン発光層において放射再結合が発生し、結晶シリコンセルによって効率的に利用可能な波長範囲内の光子を放出する。本開示の実施例に係るペロブスカイト層及びダウンコンバージョン発光層は協力して、さまざまな高エネルギーかつ広波長範囲の光子をダウンコンバージョンすることができ、該ペロブスカイト層は吸収スペクトルが広く、キャリアの自由行程が長く、発光効率がより高いため、太陽電池のスペクトル吸収範囲を効果的に広げ、そのエネルギーの利用・変換効率を高めることができ、しかも、結晶シリコンセルにペロブスカイト層及びダウンコンバージョン発光層だけを増設することにより、複数層の電池を積層するという複雑なプロセスを回避し、多膜層の構造を簡素化し、膜層界面や直列構造の間でのキャリアの輸送損失を回避し、太陽電池の変換効率をさらに高め、プロセスの難度を低減させ、製造コストを削減させ、工業的生産を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、本開示の実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下で説明する図面は本開示のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】本開示の実施例に係る太陽電池の構造概略図を示す。
【
図2】本開示の実施例に係るペロブスカイト層のエネルギーバンドの概略図を示す。
【
図3】本開示の実施例に係る別の太陽電池の構造概略図を示す。
【
図4】本開示の実施例に係る更に別の太陽電池の構造概略図を示す。
【
図5】本開示の実施例に係る太陽電池の製造方法のステップのフローチャートを示す。
【
図6】本開示の実施例に係る別の太陽電池の製造方法のステップのフローチャートを示す。
【
図7】本開示の実施例に係るペロブスカイトの構造概略図を示す。
【
図8】本開示の実施例に係る固相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示す。
【
図9】本開示の実施例に係る液相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示す。
【
図10】本開示の実施例に係る気相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施例の図面を参照して、本開示の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本開示の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本開示の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本開示の保護範囲に属する。
【0021】
図1は本開示の実施例に係る太陽電池の構造概略図を示し、
図1に示すように、該太陽電池10は、結晶シリコンセル101と、結晶シリコンセル101の受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層102及びペロブスカイト層103と、を含み、
前記ペロブスカイト層103は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少し、
前記ペロブスカイト層103の背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセル101の吸収層のバンドギャップ以上である。
【0022】
本開示の実施例では、太陽電池10は、結晶シリコンセル101と、ダウンコンバージョン発光層102と、ペロブスカイト層103と、を含み、ここで、ダウンコンバージョン発光層102及びペロブスカイト層103は結晶シリコンセル101の受光方向に設けられ、ペロブスカイト層103は受光面から背光面まで徐々に減少するバンドギャップを有することによって、さまざまな高エネルギーの光子を吸収して光生成キャリアを発生させることができ、ダウンコンバージョン発光層102は光生成キャリアを放射再結合して、エネルギーの低い光子を取得することができ、これによって、ダウンコンバージョン発光層102及びペロブスカイト層103は、太陽光が結晶シリコンセル101に入る前に、高エネルギーの光子を結晶シリコンセル101による利用率が高くエネルギーが低い光子に変換し、結晶シリコンセル101の変換効率を高めることができる。
【0023】
本開示の実施例では、ペロブスカイト層103は背光面でのバンドギャップが結晶シリコンセル101以上であり、これによって、ペロブスカイト層103は結晶シリコンセル101の吸収層で効果的に利用できない光子をダウンコンバージョンすることができる。また、ペロブスカイト層103のバンドギャップは受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少し、つまり、受光面のバンドギャップが最も大きく、背光面のバンドギャップが最も小さく、バンドギャップは受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少し、このようにして、ペロブスカイト層103は、エネルギーが高いものから低いものまで、広い波長範囲内の光子を吸収して、より広い範囲内の光子をダウンコンバージョンすることができ、太陽電池10の変換効率を効果的に高めることができる。好ましくは、本開示の実施例では、バンドギャップが徐々に減少するとは、バンドギャップがなめらかに減少して、バリヤをなくし、キャリアの移動効率を高めることであってもよく、バンドギャップが段階的に減少することであってもよいが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0024】
図2は本開示の実施例に係るペロブスカイト層のエネルギーバンドの概略図を示し、
図2に示すように、結晶シリコンセル201のバンドギャップ及びペロブスカイト層203のバンドギャップが含まれており、これから明らかに、ペロブスカイト層203の受光面でのバンドギャップ(Eg
1)は最も大きく、背光面でのバンドギャップ(Eg
2)は最も小さく、また、バンドギャップは受光面から背光面まで徐々に減少し、この場合、ペロブスカイト層203では、深さが異なるとバンドギャップが異なるため、異なる深さでは異なるエネルギーの光子を吸収することができ、これにより、ペロブスカイト層203はエネルギー範囲がEg
1~Eg
2の光子を吸収して、キャリアを発生させることができる。
【0025】
図2に示すように、ペロブスカイト層203は、高エネルギーの光子(hv
1)を吸収して、光発生電子と正孔を得る。ペロブスカイト層203の伝導帯の底は受光面から背光面まで徐々に低下し、電子は伝導帯の底において高い箇所から低い箇所に向かって輸送され、価電子帯の頂上は受光面から背光面まで徐々に上昇し、正孔は価電子帯の頂上において低い箇所から高い箇所に向かって輸送され、このため、ペロブスカイト層203の異なる深さで発生させた光発生電子及び正孔は、いずれもペロブスカイト層203の背光面へ輸送される傾向があり、最終的にはダウンコンバージョン発光層202において放射再結合発光が発生し、ペロブスカイト層203の自由行程がより長いため、価電子帯の頂上が徐々に上昇し、伝導帯の底が徐々に低下することによって駆動されて、電子及び正孔はより高い輸送効率を有する。
【0026】
図2に示すように、ダウンコンバージョン発光層202では、電子と正孔は放射再結合が発生し、hv
1よりもエネルギーが低く、かつ結晶シリコンセル201によって効果的に利用できる光子(hv
2)が得られ、ダウンコンバージョン発光層202では、伝導帯の頂上と価電子帯の底が近く、電子と正孔との再結合が容易で、放射再結合発光が生じやすい。
【0027】
図2に示すように、ダウンコンバージョン発光層202は放射再結合発光が発生し、結晶シリコンセル201の吸収層はhv
2を吸収して効果的に利用することができる。
【0028】
好ましくは、前記ペロブスカイト層203の材料はABX3である。
【0029】
本開示の実施例では、ペロブスカイト材料は有機-無機ハイブリッドペロブスカイトであってもよいし、無機ペロブスカイトであってもよいし、無鉛系ペロブスカイトなどであってもよく、好ましくは、ペロブスカイト層の材料はABX3で表されてもよく、ここでは、Aは1価のカチオン、Bは2価の金属カチオン、Xはハロゲンイオンである。A、B、Xはそれぞれ1種のイオンであってもよいし、2種以上のイオンの組み合わせであってもよく、イオンの種類及びイオンの組み合わせの割合などを調整することによって、ペロブスカイト層203のバンドギャップの大きさ及び変化の傾向を調整することができ、これによって、ペロブスカイト層203のバンドギャップは受光面から背光面まで徐々に減少するように分布する。
【0030】
本開示の実施例では、広バンドギャップ材料を狭バンドギャップ材料と接触させることによって、イオンはイオン濃度勾配に従って移動し、これにより、広バンドギャップ材料のイオンは狭バンドギャップ材料へ移動し、狭バンドギャップ材料のイオンは広バンドギャップ材料へ移動し、バンドギャップの大きさがイオンの種類や濃度に繋がるため、イオンの種類や濃度を調整することによってバンドギャップが徐々に変化するペロブスカイト層を形成することができる。A、B、Xがそれぞれ2種類以上のイオンの組み合わせである場合、各々のAイオンはA、A’、各々のBイオンはB、B’、各々のCイオンはC、C’で表されてもよく、B、B’イオンはペロブスカイト材料の結晶構造の主要なフレームを構築するため、その移動にはより高いエネルギー(>2eV)が必要であり、しかも、材料結晶構造の崩壊を招く可能性があり、よって、B、B’イオンは通常移動しない。好ましくは、本開示の実施例では、異なるAとA’イオンを選択するか、異なるXとX’イオンを選択するか、又は異なるAとA’イオン及び異なるXとX’イオンの両方を同時に選択することによって、ABX3のバンドギャップをA’B’X’3よりも大きくすることができ、張り合わせた後、2種類の材料中のイオンの濃度が異なるため、イオンの濃度勾配に従ってイオンが移動し、これによって、バンドギャップが徐々に変化するペロブスカイト層が得られ、本開示の実施例はイオンの種類を特に限定しない。
【0031】
好ましくは、前記Aはメチルアミンイオン、ホルムアミジンイオン、フェニルエチルアミンイオン、1-ナフチルメチルアミンイオン及びセシウムイオンから選択される少なくとも1つである。
【0032】
本開示の実施例では、Aはメチルアミンイオン、ホルムアミジンイオン、フェニルエチルアミンイオン、1-ナフチルメチルアミンイオン及びセシウムイオンなどから選択される1価のカチオンであり、ここで、Aは同種の1価のカチオンを選択してもよいし、A、A’で表す異なる1価のカチオンを選択してもよく、この場合、ABX3のバンドギャップをA’BX3と異なるものとすべきである。一般には、そのほかのイオンが同じである場合、上記の1価のカチオンのバンドギャップの大きさは1-ナフチルメチルアミンイオン(NMA)>フェニルエチルアミンイオン(PEA)>セシウムイオン(Cs)>メチルアミンイオン(MA)>ホルムアミジンイオン(FA)の関係があり、この場合、AがNMAとする場合、A’はPEA、Cs、MA、FAから選択される少なくとも1つであってもよく、AがPEAとする場合、A’はCs、MA、FAから選択される少なくとも1つであってもよく、このようにして、ABX3のバンドギャップはA’BX3よりも大きくなり、その他はこれによって類推することができる。
【0033】
前記Bは鉛イオン及び錫イオンから選択される少なくとも1つである。
【0034】
本開示の実施例では、Bは鉛イオン、錫イオンなどの2価の金属カチオンから選択され、ここで、Bは同種の2価の金属カチオンを選択してもよいし、それぞれB、B’で表す2種類の2価の金属カチオンを選択してもよく、このようにして、ABX3のバンドギャップをAB’X3と異なるものとする。一般には、そのほかのイオンが同じである場合、上記の2価の金属カチオンのバンドギャップの大きさは鉛イオン(Pb)>錫イオン(Sn)の関係があり、この場合、BがPbとする場合、B’はSnであってもよく、その他はこれによって類推することができ、このようにして、ABX3のバンドギャップはAB’X3よりも大きくなる。しかし、実際の適用では、B、B’がイオン移動に関与しないため、材料の異なるバンドギャップを形成するために、A、A’、X、X’のうち少なくとも1つが異なり、この場合、BがSn、B’がPbであっても、構成された材料系におけるABX3のバンドギャップはA’B’X’3よりも大きい可能性がある。本開示の実施例では、バンドギャップの大きさはペロブスカイト材料について実際に測定したバンドギャップに準じることができ、イオンの選択については特に限定しない。
【0035】
前記Xは臭素イオン、ヨウ素イオン及び塩素イオンから選択される少なくとも1つである。
【0036】
本開示の実施例では、Xは臭素イオン、ヨウ素イオン及び塩素イオンなどのハロゲンイオンから選択されてもよく、ここでは、Xは同種のハロゲンイオンを選択してもよいし、それぞれX、X’で表す異なるハロゲンイオンを選択してもよく、これによって、ABX3のバンドギャップをABX’3と異なるものとする。一般には、そのほかのイオンが同じである場合、上記のハロゲンイオンのバンドギャップの大きさは塩素イオン(Cl)>臭素イオン(Br)>ヨウ素イオン(I)の関係があり、この場合、XがClとする場合、X’はBr、Iから選択される少なくとも1つであってもよく、その他はこれによって類推することができ、これによって、ABX3のバンドギャップはABX’3よりも大きくなる。
【0037】
本開示の実施例では、材料系においてハロゲンがバンドギャップの変化に大きく影響するため、Xが広バンドギャップのハロゲンイオン、X’が狭バンドギャップのハロゲンイオンであって、そのほかのイオンとして異なる種類のものが選択される場合、そのほかのイオンに対応するバンドギャップの大きさの関係は反対してもよく、このような場合、材料系におけるABX3のバンドギャップはA’B’X’3よりも大きく、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0038】
厚さ方向において前記ペロブスカイト層における前記ABX3の元素分布を調整することによって、前記ペロブスカイト層は前記受光面から前記背光面までのバンドギャップが徐々に減少する。
【0039】
本開示の実施例では、厚さ方向とはペロブスカイト層の光入射方向であってもよく、ペロブスカイト層におけるABX3の元素分布を調整するとは、ペロブスカイト層における上記のイオンの種類、割合や濃度などを調整することであってもよく、例えば、ペロブスカイト層においてバンドギャップの大きなイオンをペロブスカイト層の受光面に多く分布させ、バンドギャップの小さなイオンをペロブスカイト層の背光面に多く分布させることによって、ペロブスカイト層は受光面から背光面までのバンドギャップが徐々に減少する。
【0040】
好ましくは、前記ペロブスカイト層は受光面でのバンドギャップが2eV~3.06eVであり、背光面でのバンドギャップが1.2eV~1.5eVであり、前記ダウンコンバージョン発光層におけるダウンコンバージョン発光材料のバンドギャップは1.2eV~1.5eVである。
【0041】
本開示の実施例では、結晶シリコンセル201が吸収可能な太陽光中の光子もダウンコンバージョンに参加し、資源の浪費を招くことがないように、ペロブスカイト層203が先に変換する光子エネルギーは、結晶シリコンセル201が吸収可能な上限以上である必要がある。当業者は、ペロブスカイト層203に使用されるペロブスカイト材料のバンドギャップの範囲、結晶シリコンセル201のバンドギャップ及び可視光吸収の最大限に応じて、ペロブスカイト層203の受光面及び背光面でのバンドギャップの大きさの範囲を決定することができ、例えば、結晶シリコンセル201のバンドギャップが1.12eVである場合、ペロブスカイト層203では、受光面でのバンドギャップが2eV~3.06eVであり、背光面でのバンドギャップが1.2eV~1.5eVであり、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0042】
本開示の実施例では、ダウンコンバージョン発光層202はペロブスカイト層203の背光面と結晶シリコンセル201の受光面との間に位置し、ダウンコンバージョン発光層202におけるダウンコンバージョン発光材料はペロブスカイト層203による光発生電子及び正孔を収集し、放射再結合を発生させて結晶シリコンセル201へ発光することができ、このような場合、放射再結合効率を確保するために、ダウンコンバージョン発光材料のバンドギャップの大きさはペロブスカイト層203の背光面でのバンドギャップの大きさを参照して、1.2eV~1.5eVとしてもよい。また、当業者は実際のニーズに合わせてダウンコンバージョン発光層にそのほかの材料を添加してもよいが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0043】
好ましくは、前記ペロブスカイト層203の厚さは10nm~100nmである。
【0044】
本開示の実施例では、ペロブスカイト材料は大きな吸収係数を有するため、ペロブスカイト層203が厚すぎて、自己吸収や発熱などが生じ、ダウンコンバージョン発光層202から出射された低エネルギーの光子が結晶シリコンセル201によって吸収されにくくなることを回避するために、ペロブスカイト層203の厚さは10nm~100nmの範囲内の任意の数値、例えば10nm、15nm、30nm、60nm、80nm、100nmなどとしてもよいが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0045】
図3は本開示の実施例に係る別の太陽電池の構造概略図を示し、
図3に示すように、該太陽電池30は、結晶シリコンセル301と、結晶シリコンセル301の受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層302及びペロブスカイト層303と、を含み、
前記ペロブスカイト層303は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少し、
前記ペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセル301の吸収層のバンドギャップ以上である。
【0046】
本開示の実施例では、結晶シリコンセル301及びペロブスカイト層303に関しては、前記
図1及び
図2の関連する説明を参照すればよく、重複しないように、ここでは、これ以上説明しない。
【0047】
好ましくは、前記ダウンコンバージョン発光層302はダウンコンバージョン発光材料を含む。
【0048】
好ましくは、前記ダウンコンバージョン発光材料はペロブスカイト材料又は発光量子ドットを含む。
【0049】
本開示の実施例では、ダウンコンバージョン発光層302はダウンコンバージョン発光材料を含んでもよく、ここでは、ダウンコンバージョン発光材料はペロブスカイト材料又は発光量子ドットであってもよく、ここでは、ペロブスカイト材料のバンドギャップは均一に分布してもよく、同バンドギャップの異なるペロブスカイト材料又は同種のペロブスカイト材料を用いて製造され、発光量子ドットとはキャリアを束縛することができる半導体ナノ構造を指し、好ましくは、ダウンコンバージョン発光材料は、ペロブスカイト層303の背光面に嵌め込まれる発光量子ドットであってもよく、電子と正孔は背光面に集まってから、発光量子ドットに注入され、発光量子ドットで放射再結合が発生し、低エネルギーの光子を放出することができ、発光量子ドットの量子閉じ込め効果により、発光量子ドットでは電子と正孔はより高い発光効率を有する。
【0050】
本開示の実施例では、ペロブスカイト層303のバンドギャップが1.2eV~1.5eVである場合、発光量子ドットのバンドギャップは、1.2eV~1.5eVの範囲であって、ペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップと同様であってもよく、ペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップと異なってもよい。好ましくは、発光量子ドットのバンドギャップがペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップと異なる場合、発光量子ドットは太陽電池30のエネルギーバンド構造において量子井戸を形成することができ、これによって、発光量子ドットの放射再結合の確率が向上し、太陽電池30の発光効率が高まる。
【0051】
本開示の実施例では、発光量子ドットのバンドギャップがペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップと異なる場合、発光量子ドットのバンドギャップはペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップよりも大きくもよく、ペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップよりも小さくてもよい。発光量子ドットのバンドギャップがペロブスカイト層303の背光面でのバンドギャップよりも小さい場合、発光量子ドットはペロブスカイト層303によって発生させたキャリアをより完全に吸収することができる。好ましくは、発光量子ドットのバンドギャップはペロブスカイト層303のバンドギャップと同じであってもよく、これによって、電子と正孔が発光量子ドットに入りやすくなり、変換効率が高まる。
【0052】
好ましくは、前記太陽電池30は、前記ペロブスカイト層303とダウンコンバージョン発光層302のくり抜き部位に形成され、前記ペロブスカイト層303及び前記ダウンコンバージョン発光層302とは直接接触しない上部電極304をさらに含む。
【0053】
本開示の実施例では、上部電極304とは、太陽電池30において結晶シリコンセル301の受光面に位置する電極であり、
図3に示すように、上部電極304は結晶シリコンセル301の受光面に接続され、ダウンコンバージョン発光層302とペロブスカイト層303のくり抜き部位を貫通して張り出しており、上部電極304がペロブスカイト層303又はダウンコンバージョン発光層302と導通しないように、上部電極304はペロブスカイト層303及びダウンコンバージョン発光層302とは直接接触しないようにしてもよく、例えば、上部電極304はペロブスカイト層303及びダウンコンバージョン発光層302のいずれとも接触せず、又は、上部電極304とダウンコンバージョン発光層302及びペロブスカイト層303のそれぞれとの間に絶縁層が設けられ、本開示の実施例はこれを特に限定しない。また、結晶シリコンセル301の背光面には下部電極305がさらに設けられてもよい。
【0054】
本開示の実施例では、太陽電池30は上記の各機能層に加えて、パッシベーション層など、そのほかの機能層を含んでもよいが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0055】
図4は本開示の実施例に係る更に別の太陽電池の構造概略図を示し、
図4に示すように、
図3を基にして、上部電極304とペロブスカイト層303との間に絶縁層3041が存在し、絶縁層3041は上部電極304を被覆することによって、上部電極304とダウンコンバージョン発光層302又はペロブスカイト層303との導通が回避され、当業者であれば、実際のニーズ及びプロセス条件に合わせて絶縁層3041の材料を選択することができるが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0056】
本開示の実施例に係る太陽電池は、結晶シリコンセルと、前記結晶シリコンセルの受光面上に順次位置するダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層と、を含み、該ペロブスカイト層は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少し、かつ、背光面でのバンドギャップは前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上であり、これによって、結晶シリコンセルによって効果的に利用できないさまざまなエネルギーの光子を吸収して、電子と正孔を発生させることができ、電子と正孔はバンドギャップのエネルギーバンド構造により駆動されてペロブスカイト層の背光面に輸送され、ダウンコンバージョン発光層において放射再結合が発生し、結晶シリコンセルによって効率的に利用可能な波長範囲内の光子を放出する。本開示の実施例に係るペロブスカイト層及びダウンコンバージョン発光層は協力して、さまざまな高エネルギーかつ広波長範囲の光子をダウンコンバージョンすることができ、該ペロブスカイト層は吸収スペクトルが広く、キャリアの自由行程が長く、発光効率がより高いため、太陽電池のスペクトル吸収範囲を効果的に広げ、そのエネルギーの利用・変換効率を高めることができ、しかも、結晶シリコンセルにペロブスカイト層及びダウンコンバージョン発光層だけを増設することにより、複数層の電池を積層するという複雑なプロセスを回避し、多膜層の構造を簡素化し、膜層界面や直列構造の間でのキャリアの輸送損失を回避し、太陽電池の変換効率をさらに高め、プロセスの難度を低減させ、製造コストを削減させ、工業的生産を容易にする。
【0057】
図5は本開示の実施例に係る太陽電池の製造方法のステップのフローチャートを示し、
図5に示すように、該方法は、ステップ501~ステップ503を含んでもよい。
【0058】
ステップ501、結晶シリコンセルを提供する。
【0059】
本開示の実施例では、結晶シリコンセルは単結晶シリコン電池、多結晶シリコン電池などであってもよいし、微結晶シリコン電池、ナノ結晶シリコン電池などであってもよいが、本開示の実施例は結晶シリコンセルの具体的な構造を限定しない。
【0060】
ステップ502、ダウンコンバージョン発光層と、バンドギャップが前記結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上である狭バンドギャップペロブスカイト層とを、前記結晶シリコンセルの受光面上に順次形成する。
【0061】
本開示の実施例では、イオン交換がペロブスカイト材料の間で行われてもよく、ペロブスカイト材料におけるイオンの移動エネルギーが低く、イオンが濃度勾配に従って移動しやすく、このとき、狭バンドギャップのペロブスカイト材料を広バンドギャップのペロブスカイト材料と接触させることができ、ペロブスカイト材料のバンドギャップが異なり、またイオンの種類や割合も異なるため、濃度勾配により駆動されて、イオンの移動によってペロブスカイト材料のバンドギャップの変化が調整される。好ましくは、製造されたペロブスカイト層のバンドギャップが受光面から背光面まで徐々に減少すべきであるから、ダウンコンバージョン発光層と、バンドギャップが結晶シリコンセルの吸収層のバンドギャップ以上である狭バンドギャップペロブスカイト層と、を結晶シリコンセルの受光面上に形成することができる。ここでは、ダウンコンバージョン発光層のバンドギャップの大きさは狭バンドギャップペロブスカイト層のバンドギャップの大きさを参照すればよい。
【0062】
ステップ503、広バンドギャップペロブスカイト材料を前記狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成し、前記広バンドギャップペロブスカイト材料の形態は、固相、気相及び液相のうちのいずれか1つであり、前記広バンドギャップペロブスカイト材料のバンドギャップは前記狭バンドギャップペロブスカイト層のバンドギャップよりも大きい。
【0063】
本開示の実施例では、広バンドギャップペロブスカイト材料を結晶シリコンセルの受光面上の狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させることができ、ここでは、広バンドギャップペロブスカイト材料のバンドギャップは狭バンドギャップペロブスカイト層のバンドギャップよりも大きくなければならない。広バンドギャップペロブスカイト材料におけるイオンは狭バンドギャップペロブスカイト層に移動し、狭バンドギャップペロブスカイト層におけるイオンを置換して、ペロブスカイト層を形成し、これによって、結晶シリコンセル、ダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層を含む太陽電池が得られる。濃度勾配により駆動されて、広バンドギャップペロブスカイト材料におけるイオンは狭バンドギャップペロブスカイト層において受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少する分布傾向があり、これにより、ペロブスカイト層のバンドギャップは受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少し、エネルギーバンドは勾配分布している。好ましくは、広バンドギャップペロブスカイト材料は固相、気相や液相などの形態であってもよく、ここでは、固相、液相の広バンドギャップペロブスカイト材料では、イオンの移動速度が速く、通常、数秒から十数秒の間に数百ナノのイオン移動深さを達成することができ、当業者であれば、実際の使用ニーズや製造プロセスの条件などに合わせて、広バンドギャップペロブスカイト材料を結晶シリコンセルの受光面上の狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させるときの温度や時間を決定することができるが、本開示の実施例はこれらを特に限定しない。
【0064】
好ましくは、前記広バンドギャップペロブスカイト材料が固相である場合、前記ステップ502は、ステップS11を含む。
【0065】
ステップS11、狭バンドギャップペロブスカイト層の表面に広バンドギャップペロブスカイト材料の粉末を付与して、前記広バンドギャップペロブスカイト材料と前記狭バンドギャップペロブスカイト層との間でイオン交換を起こし、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成する。
【0066】
本開示の実施例では、広バンドギャップ材料が固相である場合、広バンドギャップ材料の粉末を狭バンドギャップペロブスカイト層上に被覆してから、温度をさらに上昇し、濃度の差や温度により駆動されて広バンドギャップ材料と狭バンドギャップペロブスカイト層との間でイオン交換を起こし、これによって、ペロブスカイト層のバンドギャップは外から内に向かって徐々に減少する。ここでは、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層は全てペロブスカイト材料で構成されるので、異なるバンドギャップを形成するために、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層では、移動可能なAイオン及びXイオンのうち少なくとも1つが異なり、しかも、広バンドギャップ材料のバンドギャップが狭バンドギャップペロブスカイト層よりも大きいようにし、好ましくは、ここで異なるとは、イオン種類が異なるか、イオン濃度が異なるなどであってもよい。
【0067】
好ましくは、前記広バンドギャップペロブスカイト材料が液相である場合、前記ステップ502は、ステップS21を含む。
【0068】
ステップS21、狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX3ペロブスカイト溶液、AX前駆体溶液及びBX2前駆体溶液のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料に浸漬してイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布している前記ペロブスカイト層を形成する。
【0069】
本開示の実施例では、広バンドギャップペロブスカイト材料が液相である場合、狭バンドギャップペロブスカイト層をこのような材料に浸漬し、これによって、広バンドギャップペロブスカイト材料を狭バンドギャップペロブスカイト層と接触させることができ、好ましくは、狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルの受光面から背光面への方向における広バンドギャップ材料中の浸漬深さを制御してもよく、例えば、結晶シリコンセルと結晶シリコンセルの受光面上の狭バンドギャップペロブスカイト層を一緒に広バンドギャップペロブスカイト材料の溶液に浸漬してもよいし、狭バンドギャップペロブスカイト層を広バンドギャップペロブスカイト材料に浸漬し、結晶シリコンセルを広バンドギャップペロブスカイト材料に浸漬しないように浸漬深さを制御してもよいが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。また、狭バンドギャップペロブスカイト層の溶解による損失を回避するように、広バンドギャップペロブスカイト材料は飽和溶液であってもよい。
【0070】
本開示の実施例では、広バンドギャップペロブスカイト材料はABX3ペロブスカイト溶液であってもよく、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層はいずれもペロブスカイト材料で構成されるので、異なるバンドギャップを形成するために、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層では、移動可能なAイオン及びXイオンのうち少なくとも1つが異なり、また、広バンドギャップ材料のバンドギャップが狭バンドギャップペロブスカイト層よりも大きいようにし、好ましくは、ここで異なるとは、イオン種類が異なるか、イオン濃度が異なるなどであってもよい。好ましくは、移動イオンの種類によっては、広バンドギャップペロブスカイト材料はAX前駆体溶液、BX2前駆体溶液のうちのいずれかを選択してもよく、移動イオンがAイオン、Xイオン又はAXイオンである場合、AX前駆体溶液を選択してもよく、この場合、狭バンドギャップペロブスカイト材料はA’BX3、ABX’3、A’BX’3のうちの少なくとも1種であり、移動イオンがXイオンである場合、BX2前駆体溶液を選択してもよく、かつ、狭バンドギャップペロブスカイト層のX’イオンとXイオンが異なり、当業者であれば、ニーズに応じて広バンドギャップペロブスカイト材料としてさまざまな前駆体溶液を選択することができるが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0071】
本開示の実施例では、イオン移動が終わった後、ペロブスカイト材料に難溶の溶媒で残留した広バンドギャップペロブスカイト材料をリンスしてもよく、これによって、残留した広バンドギャップペロブスカイト材料が形成されたペロブスカイト層の受光面上に広バンドギャップペロブスカイト層をさらに一層形成し、製造プロセスに悪影響を与えることを回避する。
【0072】
好ましくは、広バンドギャップペロブスカイト材料が気相である場合、前記ステップ503は、ステップS31を含む。
【0073】
ステップS31、狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルを、ABX3ペロブスカイト蒸気、AX前駆体蒸気及びBX2前駆体蒸気のうちのいずれかを含む広バンドギャップペロブスカイト材料の雰囲気に入れてイオン交換を行い、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成する。
【0074】
本開示の実施例では、広バンドギャップペロブスカイト材料が気相である場合、狭バンドギャップペロブスカイト層を広バンドギャップペロブスカイト材料の雰囲気に入れることができ、好ましくは、狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルの受光面から背光面への広バンドギャップペロブスカイト材料の雰囲気中での配置の深さを制御してもよく、具体的には、前記ステップS21の関連する説明を参照すればよく、重複しないように、ここでは、これ以上説明しない。
【0075】
本開示の実施例では、広バンドギャップペロブスカイト材料はABX3ペロブスカイト蒸気であってもよく、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層はいずれもペロブスカイト材料で構成されるので、異なるバンドギャップを形成するために、広バンドギャップペロブスカイト材料及び狭バンドギャップペロブスカイト層では、移動可能なAイオン及びXイオンのうち少なくとも1つが異なり、また、広バンドギャップ材料のバンドギャップが狭バンドギャップペロブスカイト層よりも大きいようにし、好ましくは、ここで異なるとは、イオン種類が異なるか、イオン濃度が異なるなどであってもよい。好ましくは、移動イオンの種類によっては、広バンドギャップペロブスカイト材料はAX前駆体蒸気、BX2前駆体蒸気のうちのいずれかを選択してもよく、移動イオンがAイオン、Xイオン又はAXイオンである場合、AX前駆体蒸気を選択してもよく、この場合、狭バンドギャップペロブスカイト材料はA’BX3、ABX’3、A’BX’3のうちの少なくとも1種であり、移動イオンがXイオンである場合、BX2前駆体蒸気を選択してもよく、かつ、狭バンドギャップペロブスカイト層のX’イオンとXイオンが異なり、当業者であれば、ニーズに応じて広バンドギャップペロブスカイト材料としてさまざまな前駆体蒸気を選択することができるが、本開示の実施例はこれを特に限定しない。
【0076】
図6は本開示の実施例に係る別の太陽電池の製造方法のステップのフローチャートを示し、
図6に示すように、該方法は、ステップ601~ステップ603を含んでもよい。
【0077】
ステップ601、結晶シリコンセルを提供する。
【0078】
本開示の実施例では、ステップ601に関しては、前記ステップ501の関連する説明を参照すればよく、重複しないように、ここでは、これ以上説明しない。
【0079】
ステップ602、結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層を形成する。
【0080】
ステップ603、前記ダウンコンバージョン発光層の受光面上に2次元ペロブスカイト前駆体と3次元ペロブスカイト前駆体を含むペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液中のペロブスカイト前駆体を順次結晶化させてペロブスカイト層を形成する。
【0081】
本開示の実施例では、3次元-擬2次元-2次元ペロブスカイトを順次結晶化させることによって、エネルギーバンドが勾配分布しているペロブスカイト層を形成することができ、2次元ペロブスカイト前駆体と3次元ペロブスカイト前駆体の両方を含むペロブスカイト前駆体溶液をダウンコンバージョン発光層の受光面上に塗布してもよく、このとき、ペロブスカイト前駆体は順次結晶化を起こし、背光面から受光面への方向において順次3次元-擬2次元-2次元ペロブスカイト構造となるペロブスカイト層が形成される。
【0082】
図7は本開示の実施例に係るペロブスカイトの構造概略図を示し、
図7に示すように、ダウンコンバージョン発光層の受光面上に3次元ペロブスカイトを形成する際には、その構造はn=∞の場合に対応し、順次結晶化の過程で、n値が徐々に減少し、これによって、擬2次元ペロブスカイト層が形成され、n=1になると、2次元ペロブスカイト層が形成される。n値が小さいほど、ペロブスカイト材料のバンドギャップが大きくなるため、順次結晶化されたペロブスカイト層は受光面から背光面に向かうに従ってバンドギャップが徐々に減少する。好ましくは、本開示の実施例では、2次元ペロブスカイト前駆体、3次元ペロブスカイト前駆体の割合やイオンのタイプを調整することによって、ペロブスカイト層の受光面及び背光面のバンドギャップの大きさを調整することができる。
【0083】
本開示の実施例では、2次元ペロブスカイト前駆体に関しては、前記広バンドギャップペロブスカイト材料の関連する説明を参照すればよく、3次元ペロブスカイト前駆体は前記狭バンドギャップペロブスカイト材料の関連する説明を参照すればよく、重複しないように、ここでは、これ以上説明しない。好ましくは、2次元ペロブスカイト前駆体はイオンの半径が大きいAイオン、例えばNMA(1-ナフチルメチルアンモニウム)、PEA(フェニルエチルアミン)などを使用してもよい。
実施例1 固相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換
【0084】
結晶シリコンセルを提供する。
【0085】
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層及びFAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層を順次形成する。
【0086】
FAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層の受光面の全体にわかってFAPbBr3ペロブスカイト粉末を被覆して、加熱してFAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層とFAPbBr3ペロブスカイト粉末との間でイオン交換を起こし、ペロブスカイト層を形成する。
【0087】
図8は本開示の実施例に係る固相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示し、
図8に示すように、ダウンコンバージョン発光層702上のFAPbI
3狭バンドギャップペロブスカイト層703の受光面上にFAPbBr
3ペロブスカイト粉末704を1層被覆し、こうすると、Iイオン及びBrイオンは濃度差と温度により駆動されて移動し、FAPbI
3(バンドギャップ1.47eV)狭バンドギャップペロブスカイト層703とFAPbBr
3(バンドギャップ2.2eV)ペロブスカイト粉末704でイオン交換が起こり、FAPbI
3狭バンドギャップペロブスカイト層703中のIイオンがBrイオンで置換され、受光面に近いほど置換が多く発生し、Brイオン濃度が高くなり、バンドギャップが大きくなり、最終的には、Brイオン濃度が受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少するFAPb(I
1-xBr
x)
3のペロブスカイト層705が形成され、該ペロブスカイト層705のバンドギャップが受光面から背光面に向かうに従って徐々に減少するため、バンドギャップが段階的に変化するペロブスカイト層が形成された。実施例1で製造されたペロブスカイト層はエネルギーが2.2eV~1.47eVの間の光子を吸収して、波長845nmの光子を放射し、ダウンコンバージョン機能を図ることができる。
実施例2 液相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換
【0088】
結晶シリコンセルを提供する。
【0089】
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層及びFAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層を順次形成する。
【0090】
FAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルをMAPbBr3溶液に浸漬し、FAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層とMAPbBr3溶液の間でイオン交換を起こし、ペロブスカイト層を形成する。
【0091】
図9は本開示の実施例に係る液相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示し、
図9に示すように、FAPbI
3狭バンドギャップペロブスカイト層803を有する結晶シリコンセル801がMAPbBr
3溶液804に浸漬されると、IイオンとBrイオン、FAイオンとMAイオンは濃度差により駆動されて移動し、FAPbI
3(バンドギャップ1.47eV)狭バンドギャップペロブスカイト層803とMAPbBr
3(バンドギャップ2.3eV)溶液804の間でイオン交換が起こり、受光面から背光面までバンドギャップが徐々に小さくなるFA
1-yMA
yPb(I
1-xBr
x)
3ペロブスカイト層805が形成される。製造されたペロブスカイト層805は2.3~1.47eVのエネルギー範囲内の光子を吸収して、波長845nmの光子を放射し、ダウンコンバージョン機能を図ることができる。
実施例3 気相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換
【0092】
結晶シリコンセルを提供する。
【0093】
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層及びFAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層を順次形成する。
【0094】
FAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層を有する結晶シリコンセルをCsPbBr3蒸気の雰囲気に入れて、FAPbI3狭バンドギャップペロブスカイト層とCsPbBr3蒸気の間でイオン交換を起こし、ペロブスカイト層を形成する。
【0095】
図10は本開示の実施例に係る気相広バンドギャップペロブスカイト材料のイオン交換プロセスの概略図を示し、
図9に示すように、FAPbI
3狭バンドギャップペロブスカイト層903を有する結晶シリコンセル901がCsPbBr
3蒸気904の雰囲気に入れられると、FAイオン及びCsイオンは濃度差により駆動されて移動し、FAPbI
3狭バンドギャップペロブスカイト層903とCsPbBr
3(バンドギャップ2.3eV)蒸気904の間でイオン交換が起こり、受光面から背光面までバンドギャップが徐々に小さくなるCs
yFA
1-yPb(Br
xI
1-x)
3ペロブスカイト層905が形成される。製造されたペロブスカイト層905は2.3~1.47eVのエネルギー範囲内の光子を吸収して、波長845nmの光子を放射し、ダウンコンバージョン機能を図ることができる。
実施例4 3次元-擬2次元-2次元ペロブスカイトの順次結晶化
【0096】
結晶シリコンセルを提供する。
【0097】
結晶シリコンセルの受光面上にダウンコンバージョン発光層を形成する。
【0098】
前記ダウンコンバージョン発光層上に(NMA)2PbI42次元ペロブスカイト前駆体とFAPbI33次元ペロブスカイト前駆体を濃度比1:1で混合したものを含むペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、加熱して溶媒を揮発させ、前記ペロブスカイト前駆体溶液中のペロブスカイト前駆体を順次結晶化させてペロブスカイト層を形成する。
【0099】
実施例4では、(NMA)2PbI42次元ペロブスカイト前駆(バンドギャップ2.45eV)とFAPbI33次元ペロブスカイト前駆体(バンドギャップ1.47eV)を濃度比1:1で混合したペロブスカイト前駆体溶液をダウンコンバージョン発光層の表面に塗布し、溶媒を揮発させた後、ペロブスカイトの順次結晶化を開始し、これによって、背光面から受光面への方向において3次元-擬2次元-2次元構造となるペロブスカイト層を形成することができ、製造されたペロブスカイト層はバンドギャップが2.45~1.47eV範囲内の光子を吸収して、845nmの光子を放射し、ダウンコンバージョン機能を図ることができる。
【0100】
本開示の実施例は、第1態様に記載の太陽電池を含む太陽光発電モジュールをさらに提供する。
【0101】
本開示の実施例は、結晶シリコンセルと、前記結晶シリコンセルの受光面上に位置する第1パッケージング層、ペロブスカイト層、ダウンコンバージョン発光層及びカバーガラスと、前記結晶シリコンセルの背光面上に位置する第2パッケージング層及びバックプレートと、を含み、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記結晶シリコンセルの受光面と前記第1パッケージング層との間に位置し、又は、
前記ペロブスカイト層及び前記ダウンコンバージョン発光層は前記第1パッケージング層と前記カバーガラスの背光面との間に位置する別の太陽光発電モジュールを提供する。
【0102】
本開示の実施例では、実際に生産された太陽光発電モジュールでは、ペロブスカイト層の位置はカバーガラスの背光面と結晶シリコンセルの受光面との間であればよく、結晶シリコンセルの受光面とカバーガラスの背光面との間に第1パッケージング層、ダウンコンバージョン発光層及びペロブスカイト層が存在する場合、ペロブスカイト層は結晶シリコンセルの受光面と第1パッケージング層との間に位置してもよく、第1パッケージング層とカバーガラスの背光面との間に位置してもよい。本開示の実施例では、結晶シリコンセルの受光面とカバーガラスの背光面との間にそのほかの機能層が存在する場合、ペロブスカイト層の位置については特に限定はない。
【0103】
なお、方法の実施例については、説明の便宜上、一連の動作の組み合わせとして説明しているが、当業者にとって明らかなように、本願の実施例によれば、いくつかのステップが他の順序で行われてもよく、又は同時に行われてもよいので、本願の実施例は説明された動作の順序によって限定されない。また、明細書に記載された実施例はいずれも好ましい実施例であり、関連する動作の全てが本願の実施例に必須であるとは限らないことも当業者には認識される。
【0104】
なお、本明細書では、「含む」、「備える」等の用語、又はその他の任意の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図しており、それにより、一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は装置は、それらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素も含むか、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含む。これ以上の制限がない場合、「1つの……を含む」という文言によって限定される要素は、当該要素を含むプロセス、方法、物品又は装置にさらに同一の要素が存在することを排除するものではない。
【0105】
以上は、図面を参照して本開示の実施例を説明したが、本開示は上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、上記の具体的な実施形態は、単に例示的なものであって限定的なものではなく、当業者は、本開示に基づいて、本開示の趣旨及び請求項によって保護される範囲から逸脱することなく、多くの形態を作成することができ、これらも本開示の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】