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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】プラズマシステムの非侵襲的な測定
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/00 20060101AFI20231026BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521679
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021078080
(87)【国際公開番号】W WO2022074262
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2016105.5
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504094693
【氏名又は名称】ダブリン シティ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マクナリー
(72)【発明者】
【氏名】デービッド コーツ
(72)【発明者】
【氏名】ニール マクゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ラジャニ ケイ. ビジャヤラガバン
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD14
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH18
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH34
2G084HH35
2G084HH37
2G084HH42
2G084HH43
2G084HH45
2G084HH52
(57)【要約】
本発明は、プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するためのシステムおよび方法であって、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは表面を有しており、前記ビューポートまたは前記表面は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記方法は、前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために、近接場Eフィールド領域およびBフィールド領域で信号を測定するように構成された電波発光分光分析(Radio Emission Spectroscopy:RES)システムのアンテナを前記プラズマチャンバの外部に提供することと、前記アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定することと、前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算することと、を含み、前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力であるシステムおよび方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するための方法であって、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは表面を有しており、前記ビューポートまたは前記表面は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記方法は、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために、近接場Eフィールド領域およびBフィールド領域で信号を測定するように構成された電波発光分光分析(Radio Emission Spectroscopy:RES)システムのアンテナを前記プラズマチャンバの外部に提供することと、
前記アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定することと、
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算することと、
を含み、
前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、
前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力である、
方法。
【請求項2】
前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマチャンバは、単一周波数駆動のプラズマシステムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性は、プラズマ圧力であり、前記第2の値を計算することは、前記プラズマチャンバ内のリークまたは圧力変化を検出することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記プラズマチャンバは、容量結合プラズマシステムである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマチャンバは、複数周波数駆動のプラズマシステムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特性は、前記測定されたRES周波数信号であり、前記方法は、前記第2の値に基づいて、前記プラズマチャンバ内のリアクタンス変化を示す第3の値を計算することを含み、前記リアクタンス変化は、容量性、誘導性、または抵抗性の変化のうちの少なくとも1つに起因する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマチャンバを囲む電力供給されるRFコイルを介した誘導結合により、RF電力が前記プラズマチャンバに入力されることを可能にするステップを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記RESシステムを較正することをさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記較正するステップは、前記プラズマチャンバの電力供給システムの基本周波数に同調させたアンテナを提供することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アンテナを提供するステップは、前記基本周波数または前記基本周波数の捕捉されたサブ高調波に前記アンテナを同調させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記第2の値に基づいて前記プラズマチャンバを制御することをさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するためのシステムであって、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは表面を有しており、前記ビューポートまたは前記表面は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記システムは、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために前記プラズマチャンバの外部に提供された電波発光分光分析(Radio Emission Spectroscopy:RES)システムを備え、前記RESは、
近接場Eフィールド領域およびBフィールド領域で信号を測定し、
アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定し、かつ
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算するように構成されており、
前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、
前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力である、
システム。
【請求項14】
前記RESは、前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、パルスCCPまたはICPシステムに組み込まれている、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
アンテナに接続されたコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
プラズマチャンバのビューポートまたは表面を通過した電磁放射を示す第1の値を測定させ、かつ
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、特性の大きさの変化を示す第2の値を計算させる
命令を含むコンピュータ可読媒体であって、
前記第1の値は、前記アンテナで誘導される信号に基づいており、前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、
前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力である、
コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定させる命令をさらに含む、請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ以上のプラズマシステムの測定のためのシステムおよび方法を対象とする。特に、本開示は、非侵襲的で現場でのプラズマの監視を対象とする。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、非常に一般的なものであり、多くの産業処理の環境で使用されている。例えば、低圧システムは、例えば半導体または医療産業分野での材料堆積およびエッチングを含む高度な材料処理のために使用されている。大気圧プラズマ処理システムも、航空および自動車産業分野のための、例えば材料洗浄、接着、堆積、エッチングの産業用途を有する。典型的な使用では、プラズマは、プラズマチャンバ内に提供される。(プロセスチャンバとも呼ばれる)プラズマチャンバは、密閉チャンバであり、当該密閉チャンバ内で、プラズマは、マイクロチップの製造中に、例えばマイクロチップの基板などの所与の表面で動作するように使用される。使用時、プラズマチャンバは、部分的または完全な真空であり得る。
【0003】
プラズマを利用するために、プラズマの診断および監視技術が不可欠である。当該技術は、プラズマのパラメータを測定するために使用され、そして、1.Yue H H、Qin S J、Markle R J、Nauert C、およびGatto M、2000、発光スペクトルを使用したプラズマエッチャの誤検出(Fault detection of plasma etchers using optical emission spectra)、IEEE Trans.Semicond.Manuf.13 37と、Gottscho R AおよびMiller T A、1984、プラズマ診断の光学技術(Optical techniques in plasma diagnostics)、Pure&Appl.Chem.56 189と、Kim I JおよびYun I、2018、コンピュータ統合生産のための入射角依存の発光分光分析を使用したリアルタイムのプラズマ監視技術(Real-time plasma monitoring technique using incident-angle-dependent optical emission spectroscopy for computer-integrated manufacturing)、Robot Cim-Int Manufと、Mangolini L、2017、ナノ粒子合成のための非熱プラズマプロセスの監視(Monitoring non-thermal plasma processes for nanoparticle synthesis)、J.Phys.D:Appl.Phys.50 373003とによって開示されるように、当該パラメータは、例えば半導体処理およびデバイス製造中に、例えば、リアルタイムに、装置を最適化するためにおよび/または低圧プラズマプロセスを制御するために使用され得る。
【0004】
プラズマのパラメータのわずかな変化で、製造に大きなコストがかかり得るため、当該技術は特に重要である。したがって、プラズマのパラメータの変化を適切に監視することによって、製造ラインで、プロセスの遅延を回避することおよび/または品質のばらつきを最小限にすることが可能である。これは、非平衡プラズマプロセスで特に重要である。したがって、プラズマのパラメータのリアルタイムの診断および制御(次いで、例えばプラズマ誘起化学の制御)は、例えば、Dolins S B、Srivastava A、およびFlinchbaugh B E、1988、プラズマエッチングプロセスの監視および診断(Monitoring and diagnosis of plasma etch processes)、IEEE Trans.Semicond.Manuf.1、23によって開示されるように、大量の半導体製造の産業に対して重要な経済的利点である。
【0005】
現在までに、いくつかのプラズマプローブおよび診断技術が開発されており、プラズマパラメータを監視するために半導体製造ラインに組み込まれている。しかしながら、非侵襲的で現場でのプラズマの監視がプロセス制御に不可欠である。現在の多くのプローブシステムは、プラズマ自体を乱し、それは事実上、実行しようと試みている実際の測定を変更するため、非侵襲的なプラズマ計測は特定の前提条件である。
【0006】
プラズマに対する大きな擾乱を回避するために、非侵襲的なプローブが好ましい。Hopkins M BおよびLawler J F、2000、産業におけるプラズマ診断(Plasma diagnostics in industry)、Plasma Phys.Control.Fusion 42 B189と、Donnelly V MおよびKornblit A、2013、プラズマエッチング:過去、今日、および将来(Plasma etching: Yesterday, today, and tomorrow)、J.Vac.Sci.Technol.A31 050825-1と、Bruggeman P JおよびCzarnetzki U、2016、「2012年プラズマロードマップ」の回顧(Retrospective on 'The 2012 Plasma Roadmap')、J.Phys.D:Appl.Phys.49 431001の文献を参照されたい。例えば、プラズマチャンバの外部の光センサは、発光分光分析(Optical Emission Spectroscopy:OES)に使用され得る。OESは、半導体処理産業で、十分に確立され幅広く使用されている非侵襲的な監視技術である。使用時、光信号を許容するビューポートは、プラズマチャンバの壁に設けられている。プラズマによって生成される光信号は、ビューポートを通過し、1つ以上の光センサによってプラズマチャンバの外側で検出される。Schmachtenberg EおよびHegenbart A、2007、OESによるプラズマプロセスの監視(Monitoring of plasma processes by OES)、2007、WILEY-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA、Weinheimを参照されたい。
【0007】
しかしながら、OESには、いくつかの大きな欠点がある。例えば、光信号は、現実の製造シナリオで光ビューポートの曇りによって著しく影響を受ける。Milosavljevic V、MacGearailt N、Cullen P J、Daniels S、およびTurner M M、2013、電子サイクロトロン共鳴エッチャについての位相分解発光分光分析(Phase-resolved optical emission spectroscopy for an electron cyclotron resonance etcher)、J.Appl.Phys113 163302を参照されたい。この不透明度に関する低下は、薄膜の堆積により、またはプラズマによるビューポート上の表面エッチングにより生じる。Jang H、Nam J、Kim C-K、およびChae H、2013、拡張主成分分析でのプラズマインピーダンス監視を使用したプラズマエッチングでの小さい露光領域のSiO2膜のリアルタイムの終点検出(Real-Time Endpoint Detection of Small Exposed Area SiO2 Films in Plasma Etching Using Plasma Impedance Monitoring with Modified Principal Component Analysis)、Plasma Process.Polym.10、850を参照されたい。したがって、既存のプラズマチャンバに後付けでき、ビューポートの光学的不透明度の影響を受けない、非侵襲的で非接触(リモート)の産業用プラズマの監視プローブの開発は、当分野で有益かつ重要な進歩であろう。
【0008】
OESに対する代替的なアプローチの1つは、Kelly SおよびMcNally P J、2017、無線近接場での低圧プラズマのリモートセンシング(Remote sensing of a low pressure plasma in the radio near field)、Appl.Phys.Express10 096101によって開示されるような電波発光分光分析(Radio Emission Spectroscopy:RES)である。RESは、近接場アンテナ(例えば、Bフィールドアンテナであるが、Eフィールドアンテナも採用され得る)を採用して、プラズマチャンバのビューポートの近傍でプラズマからの無線周波数放射を捕捉する。RESは、プラズマチャンバ内のプラズマ電流を監視するための実行可能技術として確立されている。近接場アンテナを採用して、(Bフィールドアンテナの場合)電極間を流れるプラズマ電流から発せられる磁束が、スペクトル分析器機構を使用して遮られてサンプリングされ得る。本明細書で使用されるとき、無線周波数放射は、3kHz~3GHzの典型的な範囲内の電磁放射についての放射である。Eフィールドアンテナについて、バルクプラズマおよびチャンバ壁近くの誘起プラズマシースの組合せの電圧変化は、アンテナへの容量結合によるアンテナでの電流生成につながる。
【0009】
東京エレクトロン株式会社(Tokyo Electron Limited)のPCT特許出願公開第WO2004/006285号は、プラズマを収容する処理チャンバの内側および外側の両方に一般的なRFアンテナを開示しており、それは、プラズマチャンバに対応付けられ得る複数の信号源の区別には特に適していない。電界と磁界とを区別する能力を有し、WO2004/006285号で定義または開示されていない近接場領域での有効性と組み合わされる、正確に選択されたアンテナのみが、本願で概説される能力を有する。
【0010】
Mandelisによる論文発表、Rev.Sci.Instrum.90、079501、(2019)は、非侵襲的なプラズマチャンバ監視のための機器を開示している。しかしながら、この論文発表の提案では、複数の信号が存在するプラズマの状態を監視するには、感度または精度が十分ではない。Mandelisの発表に示される「アンテナ」についての図をよく見ると、同軸BNCタイプの出力が2つのみ利用可能であることを明確に示している。BNCケーブルのみの使用は、周波数範囲を著しく制限し、それによって、複数の電極からのヘテロダイン/混合生成物の分析は、BNCケーブルの使用が意味する比較的狭い範囲の約40kHz~500MHzの外側だけに当該混合生成物が発生した場合、ほぼ不可能になる。
【0011】
PCT特許出願第PCT/EP2018/057556号は、電波発光分光分析(RES)システムの開示を通じて、従来技術に対する大きな進歩を記載している。好ましい実施形態では、このシステムは、電界近接場(Eフィールド)アンテナおよび/または磁界近接場(Bフィールド)アンテナをプラズマチャンバの外部および近位に配置することを含む。上述の理由で、近接場アンテナをプラズマチャンバの外側に配置することは非常に有益である。近接場アンテナは、動作状態の間にプラズマチャンバ内のプラズマの電流または電圧を監視するために、適切な信号分析システムに接続される。
【0012】
本開示は、電波発光分光分析(RES)システムを記載している、PCT特許出願第PCT/EP2018/057556号によって提供される寄稿、ならびにS.KellyおよびP.J.McNallyによる論文、Appl.Phys.Express10(2017)096101に基づく。典型的な実施形態では、プラズマプロセスチャンバ内のプラズマ特性を測定および制御するために、RESシステムは、近接場(Near Field:NF)電界(Eフィールド)アンテナおよび/またはNF磁界(Bフィールド)アンテナをプラズマプロセスチャンバの内部に近接して(例えば、好ましくは40mm以下に)配置することを含む。重要なことに、アンテナ(複数可)は、プラズマの外部に配置されている、すなわち、本開示によると、アンテナ(複数可)は、使用時に、プラズマまたはプラズマの格納容器に浸漬されておらず、プラズマまたはプラズマの格納容器と物理的に接触していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本開示は、現在の従来技術のシステムと比較して、より効率的かつ正確な方法で、プラズマのパラメータ(例えば、電力、圧力など)、または感度が高く正確な測定を必要とするプラズマチャンバを監視するためのRESの使用を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、添付の特許請求の範囲で述べられる特徴を有する方法、システム、およびコンピュータ可読媒体を対象とする。本発明は、単一または複数の周波数駆動プラズマシステム(複数可)内の圧力、圧力変化(好ましくは、それによってリーク検出のための手段を提供する)、プラズマチャンバの清潔度、および/または汚染のうちの1つ以上を監視するためのシステムおよび方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するための方法であって、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは表面を有しており、前記ビューポートまたは前記表面は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記方法は、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために、近接場Eフィールド領域およびBフィールド領域で信号を測定するように構成された電波発光分光分析(RES)システムのアンテナを前記プラズマチャンバの外部に提供することと、
前記アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定することと、
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算することと、
を含み、前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力である方法が提供される。
【0016】
一実施形態では、プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するための方法が提供され、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは同様の特徴を有しており、前記ビューポートまたは前記同様の特徴は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記方法は、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために、電波発光分光分析(RES)システムのアンテナを前記プラズマチャンバの外部に提供することと、
前記アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定することと、
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算することと、
を含み、前記特性は、プラズマ電力、プラズマ圧力、プラズマ周波数、ガス組成、およびプラズマチャンバの汚染または清潔度のうちの1つ以上である。
【0017】
前記方法は、好ましくは、前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定することを含む。
【0018】
一実施形態では、前記プラズマチャンバは、単一周波数駆動のプラズマシステムである。
【0019】
一実施形態では、前記特性は、プラズマ圧力であり、前記第2の値を計算することは、前記プラズマチャンバ内のリークまたは圧力変化を検出することを含む。
【0020】
別の実施形態では、前記プラズマチャンバは、複数周波数駆動のプラズマシステムである。前記特性は、任意で、プラズマRES周波数であり、前記方法は、前記第2の値に基づいて、前記プラズマチャンバ内のリアクタンス(容量性、および/または誘導性、および/または抵抗性の)変化を示す第3の値を計算することを含む。
【0021】
任意で、前記方法は、前記RESシステムを較正することをさらに含む。好ましくは、較正するステップは、前記プラズマチャンバの電力供給システムの基本周波数に同調させたアンテナを提供することを含む。より好ましくは、アンテナを提供するステップは、前記基本周波数に前記アンテナを同調させることを含む。
【0022】
好ましくは、前記方法は、前記第2の値に基づいて前記プラズマチャンバを制御することをさらに含む。
【0023】
さらに、プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するためのシステムが提供され、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは同様の特徴を有しており、前記ビューポートまたは前記同様の特徴は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記システムは、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために前記プラズマチャンバの外部に提供された電波発光分光分析(RES)システムを備え、前記RESは、
前記アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定し、かつ
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算するように構成されており、前記特性は、プラズマ電力、プラズマ圧力、プラズマ周波数、およびプラズマチャンバの汚染または清潔度のうちの1つ以上である。
【0024】
好ましくは、前記RESは、前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定するように構成されている。RESシステムは、OESシステムと組み合わされて、単一の分析プロセスを実施するように構成され得ることが理解されるであろう。
【0025】
別の実施形態では、プラズマまたはプラズマチャンバの特性を測定するためのシステムであって、前記プラズマチャンバは、ビューポートまたは表面を有しており、前記ビューポートまたは前記表面は、電磁放射を透過可能であって、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマによって放出される前記電磁放射の少なくとも一部は、前記ビューポートを通過し、前記システムは、
前記ビューポートを通過した前記電磁放射の少なくとも一部を吸収するために前記プラズマチャンバの外部に提供された電波発光分光分析(RES)システムを備え、前記RESは、
近接場Eフィールド領域およびBフィールド領域で信号を測定し、
アンテナで誘導される前記信号に基づいて第1の値を測定し、かつ
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、前記特性の大きさの変化を示す第2の値を計算するように構成されており、
前記信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された複数の電力供給されるRF電極から取得され、前記特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力であるシステムが提供される。
【0026】
コンピュータ可読媒体も提供される。前記コンピュータ可読媒体は、アンテナに接続されたコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
電磁放射の少なくとも一部がプラズマチャンバのビューポートをいつ通過したかを示す第1の値を測定させ、かつ
前記第1の値の大きさの変化に基づいて、特性の大きさの変化を示す第2の値を計算させる命令を含み、前記第1の値は、前記アンテナで誘導される信号に基づいており、前記特性は、プラズマ電力、プラズマ圧力、プラズマ周波数、およびプラズマチャンバの汚染または清潔度のうちの1つ以上である。
【0027】
好ましくは、前記コンピュータ可読媒体は、前記コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに
前記アンテナで誘導される前記信号の周波数スペクトルに基づいて、どの特性が前記第2の値に対応付けられているかを決定させる命令をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、添付の図面を参照して、例示としてのみ与えられる本発明の実施形態の以下の説明から、より明確に理解されるであろう。
【0029】
図1】RESシステムおよびプラズマチャンバを示す。
図2】Oxford Instruments PlasmaLab100エッチングツールの電力供給される電極に印加される50~500Wの広い電力範囲についてのRF電力の関数として、13.56MHzの電極駆動周波数で捕捉されたRES信号の変化を示す。
図3図2の破線部の拡大図であり、50~150WのRF電力の関数として、基本(例えば、13.56MHz)電極駆動周波数で捕捉されたRES信号の変化を示し、RES測定値は、線形目盛で表されている。
図4】プラズマプロセスのリアルタイムの監視を示し、処理中のRF電力の変化に対応するステップ変化を示す。
図5】10mTorr~250mTorrのプロセス圧力の関数として、捕捉されたRES信号の変化を示し、プラズマチャンバの基本周波数(例えば、13.56MHz)でのRES信号の圧力依存性を示す。
図6図5の破線部の拡大図であり、線形目盛の10mTorr~25mTorrのプロセス圧力の関数として、基本周波数(例えば、13.56MHz)で捕捉されたRES信号の変化を示す。
図7】RES技術を使用したリアルタイムのプロセス監視を示し、Oxford Instruments PlasmaLab100エッチングツールでのプラズマプロセス中の圧力変化を示す。
図8】例えば、Oxford Instruments PlasmaLab100ツールのチャンバ壁の清潔度の関数として、捕捉されたRES信号の変化を示す。
図9】複数周波数のプラズマチャンバ、この例では、162MHzおよび2MHzの電極駆動周波数の組合せを使用したLam EXELANチャンバから収集されたRESデータを示す。
図10(a)】162MHzおよび27MHzの独立した周波数で動作する電力供給される電極の組合せを使用したLam EXELAN複数周波数ツールから収集されたRESデータを示し、162MHzの電極の電力を250Wで一定に保ちながら27MHzのRF発生器で電力を変更した関数としてRES信号変化を示す。
図10(b)】162MHzおよび27MHzの独立した周波数で動作する電力供給される電極の組合せを使用したLam EXELAN複数周波数ツールから収集されたRESデータを示し、27MHzのRF電極に対する電力の関数としてRES信号周波数の変化を示す。
図10(c)】162MHzおよび27MHzの独立した周波数で動作する電力供給される電極の組合せを使用したLam EXELAN複数周波数ツールから収集されたRESデータを示し、27MHzの電極に対する電力の関数として、公称27.12MHzの印加電極の周波数からのRES信号周波数のシフトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
RESシステムでは、センサによって受信される信号が、試験対象のプラズマシステム(例えば、プラズマチャンバ)から確実に発せられていることが重要である。したがって、RESシステムのセンサ(例えば、電界および/もしくは磁界アンテナ、または同様のセンサ)は、多くの場合、試験対象のプラズマシステムのアクセスポートの近くに配置されている。このアクセスポートは典型的には、ガラス/石英/誘電体窓で構成されており、プラズマを直接見て観察できるようにしてもよく、またはそうしなくてもよい。直接見てアクセスするかどうかに関わらず、プラズマからのRF放射は依然、このアクセスポートを通過し得る。既製の近接場(NF)、磁界、電界、または同様のアンテナの使用に加えて、カスタムセンサが構築または製造され得る。これは、RESシステムの要件に適切なセンサまたはアンテナをカスタムで構築するために、ガラス、誘電体、木、または同様の基板上に誘電体および/または導電性部材を手動または自動で堆積させることを含み得る。
【0031】
図1は、本開示に係るRESシステム10を示す。RESシステム10のアンテナ11は、プラズマチャンバ20のビューポート21の近位に設けられている。好ましくは、プラズマチャンバは、耐圧プラズマチャンバ20および真空システム(図示せず)を備える低圧プラズマシステムの一部である。使用時、低圧プラズマシステムのプラズマチャンバは、実質的に真空である。プラズマチャンバ20には、電極22が設けられている。電極22は、プラズマ発生器24によって電力供給される。好ましくは、プラズマ発生器は、高周波(すなわち、3MHz~30MHz)発生器である。図1に示される実施形態では、第2の電極、すなわち接地電極は、チャンバの囲壁の残りの部分で構成されている。
【0032】
RESシステム10は、典型的には、プラズマチャンバ内に封入されたプラズマ23の状態を監視するために使用され得る。これらの測定は、プラズマ23に対して非侵襲的かつ非接触であり、またプラズマ23を乱さない。したがって、プラズマ23自体の状態は、プラズマチャンバ20自体に計測センサまたはツールを挿入することなく測定される。したがって、後述のすべての特定の実例では、プラズマパラメータの感知は、プラズマに対する接触または侵襲的な測定を伴わず、無線周波数センサヘッド/アンテナ(複数可)は、プラズマチャンバから離れており、プラズマ自体とのいかなる物理的接触もなくプラズマの状態の測定を提供することに留意することが重要である。
【0033】
本明細書に記載されるRESシステム10は、重要なプロセスパラメータ(例えば、電力、圧力など)を監視するために使用され得る。本発明はまた、関連する処理課題(例えば、壁の清潔度)を監視するためにRESシステム10が使用され得る方法を記載し、それによって、技術的に識別が困難な複数の信号がチャンバ内で生成される、産業用のプラズマベースの製造プロセスのリアルタイムの監視のための本技術の能力を示す。
【0034】
アンテナ11は、好ましくは、近接場ループアンテナである。アンテナ11は、チャンバビューポート21の近傍でプラズマからの無線周波数(すなわち、3kHz~30GHz)放射を捕捉するために使用される。(本明細書でRES信号と称される)アンテナ11で誘導される電流は、電気陰性プラズマについての空間平均の電流測定値と比較すると、プラズマ23のバルク(バルクプラズマ)内に支配的に位置する伝導電流に対応することが分かった。
【0035】
市販で利用可能なプラズマチャンバでのRES監視システムの展開をより十分に示すために、プラズマチャンバシステムの2つの例示的な実施形態が以下に提供される。これは、RES技術の有効性を示すために行われる。これらの特定の市販プラズマチャンバシステムの使用は非限定的であり、RES技術は、他の実施形態で他の好適なプラズマチャンバと共に使用されてもよいことに留意されたい。したがって、ここで挙げられる2つの例は、単に実証的なものである。
【0036】
(i)Oxford Instruments PlasmaLab100の容量結合の13.56MHz駆動システム。プロセスチャンバ壁を洗浄し、安定したプラズマを得るために、チャンバは、典型的には、酸素/Arプラズマを流すことによって予め洗浄される。無線周波数(Radio frequency:RF)RES信号は、ループの平面がプラズマチャンバのビューポートに対して垂直に向いた状態で、プラズマビューポートから1mmの距離に位置する近接場Bフィールドループアンテナ(直径=21.6mm)を使用して収集された。Oxford Instruments PlasmaLab100の容量結合リアクタの場合、遮られるRES信号は、駆動周波数の高調波の多数の放射を加えた駆動周波数(13.56MHz)の1次放射で構成されていることが分かった。
【0037】
(ii)2MHz、27MHz、および162MHzの駆動周波数の組合せで構成されたデュアル周波数源のLam EXELAN2300の複数周波数のチャンバ。プロセスチャンバ壁を洗浄し、安定したプラズマを得るために、チャンバは、典型的には、酸素/Arプラズマを流すことによって予め洗浄される。無線周波数(RF)RES信号は、ループの平面がプラズマチャンバのビューポートに対して垂直に向いた状態で、プラズマビューポートから1mmの距離に位置する近接場Bフィールドループアンテナ(直径=21.6mm)を使用して収集された。例示として、捕捉されたRESスペクトルは、162MHzおよび2MHzの周波数の組合せを使用して、それぞれ250Wおよび50Wの印加電力で動作した酸素/Arプラズマから収集された。この実証例では、捕捉されたRES信号の大部分は、162MHzの主要駆動周波数から30MHzの周波数範囲内に見出される。162MHzの信号とそれより低い2MHzの周波数との周波数混合成分が容易に捕捉され、プラズマ自体が、2つ以上の異なる周波数でのRF励起のための非線形混合媒体として機能していることを示す。
【0038】
最近のプラズマベースの製造は、電力供給される複数の電極が、各々、異なるRF周波数で駆動され、電子エネルギー分布関数、イオンエネルギー、ならびに処理される材料と相互作用する電子およびイオンの密度に対するはるかに優れた制御をもたらすプラズマシステムへと移行している。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、本発明は、従属または独立の電源で独立して変調され得る複数のRF電極が電力供給されるプラズマシステムに適用され得る。このようなプラズマシステムでは、アンテナによって捕捉される複数の信号を識別または区別することが困難である。本発明は、無線周波数領域で独立して電力供給される複数の電極の相互作用の測定、およびプラズマパラメータ測定ツールとしての当該電極の使用に関してRESシステムが使用され得る方法を示す。
【0040】
本実施形態で取得される測定値の詳細は、複数周波数の低圧RFプラズマシステム(f1=2MHz、f2=162MHz)および混合生成物について図9で分かり得、これは、プラズマシースがこの非線形ダイオード混合効果の主な原因であることを強く示唆している。周波数ヘテロダイニング現象は、162MHzの主要駆動周波数の両側で発生する周波数側波帯の出現により観測可能である。2MHzの規則的な周波数シフト(Δf)を有するビート周波数が明確に観測され、非線形プラズマ媒体がこれらの効果を促進していることを示す。162MHzの駆動周波数の複数の高調波が、より低い(この場合、2MHzの)RF駆動周波数(f1)による付随の側波帯と共に発生することで、364MHz帯、486MHz帯、648MHz帯など(n×162MHz、ここで、n=1、2、3、4、...、すなわちn×f2)のRFヘテロダイン生成物がさらにもたらされる。
【0041】
このデータは、本発明に係る複数の構成で取得され得る。両方の信号を捕捉するための単一の近接場Bフィールドループアンテナ、より高い周波数およびその高調波(n×f2)での高調波および混合物を捕捉するための近接場Eフィールドアンテナに加えて、より低い周波数のRF信号およびその高調波(この場合、n×f1)を捕捉するための単一のBフィールドループアンテナ、近接場EフィールドおよびBフィールドアンテナの他の置換が達成される。好適には、システムおよび方法は、アンテナで誘導される信号に基づいて第1の値を測定するように構成されており、当該信号は、1つ以上の電源で独立して変調されるように構成された多数の電力供給されるRF電極から取得される。第1の値の大きさの変化に基づいて、特性の大きさの変化を示す第2の値が計算され、当該特性は、プラズマ電力および/またはプラズマ圧力である。
【0042】
別の実施形態では、プラズマチャンバを囲む電力供給されるRFコイルを介した誘導結合により、RF電力がプラズマチャンバに入力されるプラズマシステムが提供され得る。このような実施形態は、パルス容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma:CCP)および/または誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)システムに組み込まれ得ることが理解されるであろう。
【0043】
ここで、これら2つのプラズマチャンバシステムを使用したRES監視の用途が記載される。
1.RESを使用したプロセスチャンバ内の電力変化のリアルタイムの監視
【0044】
本技術を示すために、Oxford Instruments PlasmaLab100エッチングツールを13.56MHzの容量性駆動電極システムで使用した。捕捉された信号のスペクトル分析を行うために、近接場Bフィールドループアンテナを適切な電子機器に接続した。
【0045】
プラズマチャンバの近くに配置されたループアンテナで誘導される電圧は、放電のバルク内のプラズマ電流に比例しており、典型的には、基本駆動周波数は、その最初の基本周波数および最初の4つまたは5つのさらなる高調波と共に、誘導信号の大部分が基本周波数に存在する信号電力のほとんどを含むが、すべてを含むわけではないことが既知である。簡潔にするために、プラズマ内の電流変化について基本周波数(すなわち、13.56MHz)を監視した。この新しい技術の応答性を探るために広範な動作パラメータで信号の捕捉が実行される。
【0046】
図2は、印加電極のRF電力の関数として、プラズマビューポートから1mmの距離で近接Bフィールドループによって記録されるRES信号振幅の変化を示す。50sccmの流量、100mTorrの圧力で酸素ガスを供給することによってプラズマチャンバを作動させた。電極電力を50Wから500Wまで変更することによって、13.56MHzの基本周波数のRES信号を収集した。RESの範囲の変化は約10dBであり、これは、線形目盛で、信号振幅の大きさの変化のオーダーを表す。
【0047】
50~150Wの電力範囲内で、1Wの電力変化がRES信号の約3倍の変化に対応することを観察することによって、本技術の最高の感度をさらに確認することができる。特に、図3は、図2の破線枠の拡大図を示し、5W刻みの50~150Wの電力変化について、対応するRES応答を線形目盛で示す。この図から明らかなように、RESは、5W程の低さの電力変化を0.4%未満の誤差で検出するのに十分高感度である。
【0048】
提示されるデータは、20回のスキャンの平均であり、数十キロヘルツのサンプリングレートで提供され得る。スキャン回数およびサンプリングレートは、必要とされる用途に応じて調整または選択され得る。
【0049】
図4は、プラズマプロセスのリアルタイムの監視を示し、ステップ変化は、RF電力の変化を示す。非接触のRES技術が、処理中のRF電力変化をリアルタイムに監視できることが非常に明らかである。
2.RESを使用したプロセスチャンバ内の圧力変化のリアルタイムの監視
【0050】
プラズマ処理システムでは、プラズマプロセスチャンバ内の気体圧力を特定することが極めて重要である。非接触かつ非侵襲的な方法でこれを行うことができる任意の技術は、試験対象のプラズマを乱さない(すなわち、妨げない)という優れた利点を有するため、非常に大きなメリットを有する。
【0051】
以下の説明では、RES技術が、典型的な半導体処理状態の間の小さい圧力変化を監視するのに非常に有用であることが示されている。再び、説明のために、以下の説明は、酸素プラズマを使用し、かつ13.56MHzの周波数で動作するOxford Instruments PlasmaLab 100ツールを参照しているが、他の好適なプラズマチャンバおよびプラズマチャンバ構成を使用してもよい。プラズマチャンバは、安定したプラズマ状態が存在することを確認するために、RES測定の開始前に200Wの電力および100mTorrの圧力で15分間作動した。酸素ガスフローを50sccmで一定に保ち、圧力を10mTorrから250mTorrまで変更することによってRESデータを収集した。
【0052】
図5は、10~250mTorrの圧力の関数として、400WのRF電力での基本周波数(この場合、13.56MHz)のRES信号の変化を示す。
【0053】
図6は、図5の破線部の拡大図であり、RES信号は、線形目盛で表されている。図6に示すように、プラズマチャンバ圧力を1mTorrから25mTorrまで小刻みに増加させることによって、チャンバ圧力変化に対するRES技術の感度を検証した。ここで、y軸は、線形目盛で表されている。
【0054】
図6は、200WのRF電力での圧力の関数としてRESの信号振幅の変化を示す。この例では、RESの振幅範囲の変化は約10dBであり、これは、線形目盛で、信号強度の大きさの変化のオーダーを表す。
【0055】
RESの信号振幅は、10~25mTorrの圧力変化に対して約4dB変化し、これは、線形目盛で約2.4に対応する。したがって、RESプローブは、1mTorr程の低さのプロセス圧力変化を0.1%未満の誤差で検出するのに十分高感度である。
【0056】
図7は、プラズマプロセスのリアルタイムの監視を示し、ステップ変化は、プラズマチャンバ圧力の変化を示す。図7から、非接触のRES技術が、処理中のチャンバ圧力の変化をリアルタイムに監視できることが非常に明らかである。これは、上記圧力変化の監視および他の用途の両方に適用可能である。例えば、プラズマチャンバについてのリーク検出器として実装される場合に、RESの使用は大きな利点を有し得る。
3.RESを使用したチャンバ壁の清潔度のリアルタイムの監視
【0057】
プラズマプロセスについて、プラズマチャンバの内壁の清潔度(すなわち、汚染量)は、非常に重要なパラメータである。汚染は、例えば、集積回路製造でのウェハ間のプロセスの再現性に大きな影響を与える。したがって、清潔度の維持は、半導体エッチングプロセス中のプロセス再現性に対する最大の課題の1つとして残っている。
【0058】
例示として、Oxford Instruments PlasmaLab100のプラズマシステムのチャンバ壁をフォトレジスト製品で意図的に汚染した。次いで、汚染前、汚染中、および汚染後にRES信号を連続的に測定した。図8は、基本周波数(すなわち、この例では13.56MHz)でのRESの信号振幅の変化を示す。4.3時間の間隔、133kHzのレートで、連続的な間隔でRESの振幅を測定した。図8から分かり得るように、フォトレジストを用いたプラズマチャンバ壁の汚染前、汚染中、および汚染後に収集されたRES信号の振幅には、明らかな測定可能な違いが存在する。汚染されたプラズマチャンバ壁からのRESの信号振幅は、酸素プラズマによる汚染(すなわち、この場合、フォトレジスト)の除去によって、汚染された壁が清潔になるにつれて、清潔なプラズマチャンバ壁のRESの信号振幅に徐々に近づく。したがって、RESは、チャンバ壁の汚染を監視するために利用され得る。
4.複数周波数のチャンバ内のプラズマを監視するためのRESの使用
【0059】
複数周波数のRFプラズマ構成は、プラズマの処理時にバルクおよびシースの特性を独立して制御できるため、多大な関心を集めており、イオンエネルギーおよび角度分布、イオンフラックス、ならびにシース電位がウェハ表面に与える影響を調整するのに有利である。例えば、Zhang Y、Zafar A、Coumou D J、Shannon S C、およびKushner M J、2015、複数周波数の容量結合プラズマの位相シフトを使用したイオンエネルギー分布の制御(Control of ion energy distributions using phase shifting in multi-frequency capacitively coupled plasmas)、J.Appl.Phys.117 233302と、Chen W、Zhang X、およびDiao D、2018、複数周波数の容量結合プラズマでのイオンエネルギー分布関数およびシース電界の正確な予測のための高速半解析的手法(Fast semi-analytical method for precise prediction of ion energy distribution functions and sheath electric field in multi-frequency capacitively coupled plasmas)、Appl.Phys.Express11、056201と、Robiche J、Boyle P C、Turner M M、およびEllingboe A R、2003、デュアル周波数の容量性シースの解析モデル(Analytical model of a dual frequency capacitive sheath)、J.Phys.D:Appl.Phys.36 1810によって開示されている。
【0060】
したがって、これらの複数周波数のプラズマチャンバ内のプラズマプロセスを監視し、最終的に制御するための非侵襲的なプローブを開発することが非常に重要である。一例として、2MHz、27MHz、および162MHzの駆動周波数の組合せで構成されたLam EXELAN2300の複数周波数のチャンバで実行されるRES測定が以下で述べられている。
【0061】
図9では、(上述のように、好ましくは近接場ループアンテナである)RESシステムのアンテナによって捕捉された信号の周波数スペクトルが示されている。簡潔にするために、この周波数スペクトルは、捕捉されたRESスペクトルと称される。捕捉されたRESスペクトルは、162MHzおよび2MHzの周波数の組合せを使用して、それぞれ250Wおよび50Wの印加電力で動作したAr/Oプラズマから収集される。
【0062】
捕捉されたRES信号が、162MHzの主要駆動周波数から30MHzの周波数範囲内に見出される例が示されている。162MHzの信号とそれより低い2MHzの駆動周波数との周波数混合成分は、周波数ヘテロダイニング現象を介して明確に見られ、当該周波数ヘテロダイニング現象は、162MHzの主要駆動周波数の両側で発生する周波数側波帯の出現により観測可能である。2MHzの規則的な周波数シフト(Δf)を有するビート周波数が明確に観測され、非線形プラズマ媒体がこれらの効果を促進していることを示す。
5.浮遊容量の変化、チャンバの状態、またはプラズマのシース特性の変化をリモートで監視するためのRESの使用。
【0063】
例示として、Lam EXELAN2300複数周波数ツールで、この場合、それぞれ162MHzおよび27MHzの独立した周波数で動作する、電力供給される電極の組合せを使用して捕捉されたデータを示す。25mTorrの圧力でAr/Oプラズマについて、図10の下に示す特定の測定を実行した。162MHzの駆動電極の電力を250Wで一定に保ち、27MHzの電極の電力を50Wから250Wまで変更した。
【0064】
図(図10(a))は、電力に対するRESのピーク振幅の変化の傾向(増加)を示す。これは、図2を参照して上述した単一周波数のプラズマチャンバからの結果とよく一致する。しかしながら、単一周波数の場合とは対照的に、27MHz付近で捕捉されたRES信号のピーク周波数が、RF電力の増加と共に連続的に変化していることが分かる(図10(b))。公称27.12MHzのピークからの放出無線周波数シフト(Δf)が図10(c)に示されている。
【0065】
この挙動は、自動同調器の結合の周波数補償特性の結果であると考えられ、インピーダンスマッチングは、RF発生器の低い(~27MHz)動作周波数のわずかな調整によって実行される。電力増幅器は、可変コンデンサ(C)を使用して自動同調し、それによって、補償可変インピーダンスZ=-j(1/ωC)を導入する。ここで、ωは、ラジアル周波数である。
【0066】
Lieberman MおよびLichtenberg A、2005、プラズマ放電および材料処理の原理(Principles of Plasma Discharges and Materials Processing)(Wiley、New York)によって開示されるように、バルクプラズマは、誘導抵抗成分として振る舞い、シースは、容量性効果を提供する。RF増幅器で見られるような負荷容量に対する変化は、印加周波数を調整し、したがって生じる電力を最小化することによって影響を受け得る。電力の増加と共に、増幅器は、周波数を減らし、増幅器の出力インピーダンスZoutを増加させて負荷を整合させることによって補償する。したがって、観測された周波数シフトは、チャンバ内の容量変化の代用であり、浮遊容量の変化、チャンバの状態、またはシース特性の変化による負荷容量のシフトをリモートで監視するために使用され得る。
【0067】
上記の例の各々についてのこの特定のプラズマチャンバおよび当該例の特定の構成の選択は単に、例示のためであることに留意されたい。もちろん、特定の周波数、電力、圧力、および他のプラズマパラメータの組合せで各々動作する様々なプラズマチャンバは、RESと共に使用されてもよい。しかしながら、これらの例は、より一般的な点、すなわち、プラズマチャンバ内にプローブを挿入する必要なく、プラズマチャンバ内のプラズマの特性および動作状態を測定および/または制御するためのRESおよびRESシステムの適合性を示していることにも留意されたい。
【0068】
さらに、RESは、OESよりも柔軟なプラズマの測定および制御のための手段を提供する。RESは、チャンバビューポート上に存在する不透明な非導電性コーティングによる信号劣化の影響を受けず、したがって、放電に対する透明なビューポートのアクセスに依存する幅広く採用された光学監視技術よりも優れた明確な利点を提供する。例えば、印加されるRF電力、チャンバ圧力、RFバイアス周波数、およびチャンバ壁の清潔度を含む装置パラメータについてのRESの上記の説明から、本発明は、プラズマまたはプラズマチャンバのこれらの特性が確実に、正確に測定されることを可能にする。特に、誘導RES信号は、圧力変化に対して敏感に変化することが分かり、RESシステムは、一般的なプラズマプロセスの上記の例では、~1mTorr程の低さの圧力変化を検出できることが示されたことが理解されるであろう。このように、RESは、半導体製造中に直面する現代の課題(すなわち、窓のコーティングおよび壁の擾乱)に関連するシナリオで、リアルタイムの測定値を捕捉するために使用され得る。
【0069】
本明細書では、「備える(comprise)、備える(comprises)、備わる(comprised)、および備えている(comprising)」という用語またはその任意の変形、ならびに「含む(include)、含む(includes)、含まれる(included)、および含んでいる(including)」という用語またはその任意の変形は、完全に相互に交換可能であるとみなされ、それらすべてに、可能な限り広い解釈が与えられるべきであり、逆もまた同様である。
【0070】
本発明は、本明細書で前述した実施形態に限定されるものではなく、構造および細部の両方で変えられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
【国際調査報告】