(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】カチオン性タンパク質画分の精製方法及びそれにより得られる画分
(51)【国際特許分類】
C07K 1/34 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
C07K1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521685
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021078094
(87)【国際公開番号】W WO2022078976
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506341803
【氏名又は名称】コンパニー レチエル ユロペンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御子神 隆
(72)【発明者】
【氏名】レシュヴァン、カリーヌ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA40
4H045CA43
4H045GA10
(57)【要約】
本発明は、エンドトキシン除去によりカチオン性タンパク質画分を精製する方法に関するものであり、またこのようにして得られた精製画分に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、カチオン性タンパク質画分を精製する方法:
a)
‐ 6.5~7.5のpHを有する、
‐ 7.5より大きい等電点を有するカチオン性タンパク質と6.5未満の等電点を有する酸性タンパク質を、全タンパク質の重量に対して1重量%未満の含量で含む、
‐ 45mS/cmより大きい導電率を有する、
溶液を得る;
b)カチオン性タンパク質の前記溶液を、10mS/cm以下、好ましくは5mS/cm以下、さらに好ましくは1mS/cm以下の導電率が得られるまで、5~50kDaのカットオフ閾値を有する限外ろ過膜を用いて、エンドトキシンを含まない水、好ましくは限外ろ過浸透水により透析ろ過し、この透析ろ過の間、この溶液をアニオン交換媒体、好ましくは膜又はモノリシック媒体に連続して通す;
c)任意選択で、0.2~1.4μmのカットオフ閾値を有する膜を用いた精密ろ過を行う;
d)任意選択で、この溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥する。
【請求項2】
以下のステップを含む、カチオン性タンパク質単離物の精製方法:
a)
‐ 6.5~7.5のpHを有する、
‐ 7.5より大きい等電点を有するカチオン性タンパク質と6.5未満の等電点を有する酸性タンパク質を、全タンパク質の重量に対して1重量%未満の含量で含む、
‐ 1mS/cm未満の導電率を有する、
溶液を得る;
b)前記溶液をアニオン交換媒体、好ましくは膜又はモノリシック媒体に通す;溶液は好ましくはアニオン交換媒体に数回、好ましくは少なくとも3回通す;
c)任意選択で、0.2~1.4μmのカットオフ閾値を有する膜を用いた精密ろ過を行う;
d)任意選択で、溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、粉末のカチオン性タンパク質単離物を得る。
【請求項3】
エンドトキシン含有量が0.1IU/mgタンパク質未満であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法によって得られ得るカチオン性タンパク質画分。
【請求項4】
5IU/mgタンパク質未満、好ましくは1IU/mgタンパク質未満、さらに好ましくは0.1IU/mgタンパク質未満のエンドトキシン含量を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法により得られるカチオン性タンパク質画分。
【請求項5】
画分のカチオン性タンパク質が乳に由来することを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のカチオン性タンパク質画分。
【請求項6】
カチオン性タンパク質がラクトフェリンから主としてなることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のカチオン性タンパク質画分。
【請求項7】
カチオン性タンパク質がラクトペルオキシダーゼから主としてなることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のカチオン性タンパク質画分。
【請求項8】
カチオン性タンパク質がリボヌクレアーゼから主としてなることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のカチオン性タンパク質画分。
【請求項9】
カチオン性タンパク質が、20μg/gタンパク質より大きいのTGF‐βを含むことを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のカチオン性タンパク質画分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドトキシンの除去によりカチオン性タンパク質画分を精製する方法に関するものであり、このようにして得られた精製画分に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシンは、グラム陰性菌の菌壁の成分である。これらの細菌が溶解又は破壊される際に放出されると、エンドトキシンはこの種の細菌による感染症で敗血症性ショックのような全身性の炎症症状の原因となる。このため、医薬品や注射剤(水など)には、FDA(https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/inspection-technical-guides/bacterial-endotoxinspyrogens)などの当局により、エンドトキシン含有量の上限が定められている。また、注射剤以外の用途でも、化粧品、医療機器、栄養剤などの分野では、使用する成分のエンドトキシン含有量の低減がますます求められるようになってきている。
【0003】
エンドトキシンはリポ多糖(LPS)とも呼ばれ、脂質(リピドA)に糖鎖が結合したものからなる。糖鎖部分は、コアオリゴ糖と呼ばれる部分とO側鎖多糖(O抗原)と呼ばれる部分の2つから構成される。
図1にその模式図を示す(Maeshima & Fernandez 2013)。各LPS分子は、脂質Aのリン酸基と酸基、及びコアオリゴ糖からの複数の負電荷を帯びている。エンドトキシンは、熱的・化学的に安定であることが知られている。エンドトキシン含有量は、1EU(エンドトキシン単位)に相当するIU(国際単位)で表される(3.4 Test for bacterial endotoxins,The International Pharmacopoeia ‐ 9th edition)。目安として、LPS 1ngは約10EU(WHO International Standard,3rd IS for endotoxin)に対応するが、細菌株の起源により異なる場合がある。
【0004】
バイオテクノロジーの手法や生物学的材料の実装に由来するタンパク質に基づく医薬品の開発の範囲では、エンドトキシンを除去するために、タンパク質の精製の様々な方法が開発されている。これらの方法は、例えば、溶媒抽出、アフィニティクロマトグラフィー(ポリミキシンBグラフト樹脂など、ただし、食品の調製には認められていない処理)、膜技術(限外ろ過など)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Petsch、D、2000.Endotoxin removal from protein solutions.(タンパク質溶液からのエンドトキシン除去。)Journal of Biotechnology 76,97‐119; Ongkudon,C.M.,Chew,J.H.,Liu,B.,Danquah,M.K.,2012. Chromatographic Removal of Endotoxins: A Bioprocess Engineer’s Perspective.(エンドトキシンのクロマトグラフィーによる除去:バイオプロセスエンジニアの視点。)ISRN Chromatography 2012,1‐9)。
【0005】
しかし、リゾチーム(Petsch,D.,Deckwer,W.‐D.,Anspach,F.B.,1998.Proteinase K Digestion of Proteins Improves Detection of Bacterial Endotoxins by the LimulusAmebocyte Lysate Assay: Application for Endotoxin Removal from Cationic Proteins.(プロテイナーゼKによるタンパク質の消化は、カブトガニ変形細胞溶解物アッセイによる細菌性エンドトキシンの検出を改善する:カチオン性タンパク質からのエンドトキシン除去への応用。)Analytical Biochemistry 259,42‐47)、リボヌクレアーゼA及びラクトフェリン(Elass‐Rochard,E.,Roseanu,A.,Legrand,D.,Trif,M.,Salmon,V.,Motas,C.,Montreuil,J.,Spik,G.,1995.Lactoferrin‐lipopolysaccharide interaction: involvement of the 28‐34 loop region of human lactoferrin in the high‐affinity binding to Escherichia coli 055B5 lipopolysaccharide.(ラクトフェリン‐リポ多糖相互作用:大腸菌055B5リポ多糖への高親和性結合におけるヒトラクトフェリンの28‐34ループ領域の関与。)Biochem J 312,839‐845)などのカチオン性タンパク質の多くは、数個の負電荷を持つLPS分子と強い相互作用を有するため、カチオン性タンパク質画分からエンドトキシンを除去することは困難であることが知られている。
【0006】
カチオン性タンパク質、特にラクトフェリンに結合したエンドトキシンを除去する方法がWO2009/009706(Glanbia Nutritionals)に提案されている;この方法は、a)タンパク質をカチオン交換樹脂に結合するステップ;b)界面活性剤を添加しない状態で低イオン強度溶液でエンドトキシンを溶出するステップ;c)タンパク質を高イオン強度溶液で溶出するステップを含む。この方法により、1IU/mg未満のエンドトキシンを含むラクトフェリン単離物を得ることができる。
【0007】
ラクトフェリンに結合したエンドトキシンを除去するための同様の方法が、WO2010/112988(Jean‐Paul Perraudin)に提案されている。この方法により、50pg/mg未満(すなわち約0.5IU/mg)のエンドトキシンを含むラクトフェリン単離物を得ることができる。
【0008】
これら2つの方法は、ラクトフェリンのような、カチオン交換樹脂との親和性の高いカチオン性タンパク質を含む画分から、このカチオン性タンパク質をこれらの樹脂に固定した後、このカチオン性タンパク質をカチオン交換樹脂から剥離させずに、低~中イオン強度の溶液(0.25~0.5M NaCl溶液)で、このカチオン性タンパク質に結合したエンドトキシンを解離除去できることを示す。このカチオン交換樹脂との親和性は、カチオン性タンパク質を構成するカチオン性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)に由来する正電荷(その大きさとその位置)に依存している。しかし、これらの方法では、カチオン交換樹脂と低~中程度の親和性を有するカチオン性タンパク質又はカチオン性タンパク質の画分に存在する又は結合したエンドトキシンは、これらのタンパク質がエンドトキシンとともに溶出するため、効果的に除去することができない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、カチオン性タンパク質の画分に存在するエンドトキシン又はカチオン性タンパク質又はカチオン性タンパク質の画分と結合したタンパク質を、その正電荷の大きさや位置に関係なく効率的に除去することを可能にする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従って、本発明は、以下のステップa)~d)を含むカチオン性タンパク質画分を精製する方法に関する:
a)
‐ 6.5~7のpHを有する、
‐ 7.5より大きい等電点を有するカチオン性タンパク質と6.5未満の等電点を有する酸性タンパク質を、全タンパク質の重量に対して1重量%未満の含量で含む、
‐ 45mS/cmより大きい、好ましくは50mS/cm又は60mS/cmより大きい導電率を有する、
溶液を得る;
例示的にかつ限定なしで、このような溶液は、以下から選択され得る:
‐ カチオン交換樹脂(例えば、SP Sepharose Big Beads、Cytiva Life Sciences)から100mS/cmのNaCl溶液で溶出した牛乳由来のラクトフェリンを含有する溶液;
‐ カチオン交換樹脂(例えばSPEC70SLS、Sartorius)から10%のNaClで溶出した牛乳由来のカチオン性タンパク質の全画分を含む溶液;
‐ カチオン交換樹脂(例えばSP Sepharose Big Beads、Cytiva Life Sciences)から40mS/cmのNaCl溶液で溶出した、牛乳由来のカチオン性タンパク質(ラクトペルオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ラクトフェリンを含む)の全画分を含む溶液に、60mS/cmの導電率まで飽和NaCl溶液を補足した溶液;
‐ 100mS/cmの溶出液からの限外ろ過によるウシラクトフェリンの濃縮溶液;
‐ 60mS/cmの導電率まで飽和NaCl溶液で補足された、精密ろ過(マイクロフィルター)された乳清カチオン性タンパク質単離物(タンパク質/乾燥物>90%)の溶液;
‐ 5%生理食塩水で再構成したヤギラクトフェリンの粉末;
‐ 0.5MのNaCl溶液で再構成された卵白のリゾチーム粉末。
b)カチオン性タンパク質の前記溶液を、5~50kDaのカットオフ閾値を有する限外ろ過膜を用いて、エンドトキシンを含まない水、好ましくは限外ろ過浸透水で透析ろ過し、カットオフ閾値は溶液のカチオン性タンパク質の分子量の関数として選ばれるものであり、それは一般に5~50kDaであるが、20kDa以下、又は1~20kDa、又は5~20kDa、又は20kDa、10kDa以下、又は1~10kDa、又は5~10kDa、又は10kDa、5kDa以下、又は1~5kDa、又は5kDa、又は1kDaであり得、透析ろ過は、10mS/cm以下の、好ましくは5mS/cm以下の、さらに好ましくは1mS/cm以下の導電率が得られるまで実施し、この透析ろ過の間、カチオン性タンパク質の溶液の導電率を45mS/cm超から10mS/cm未満に低下させ、この溶液をアニオン交換媒体、好ましくは膜媒体(例えば、Sartobind Q、Sartorus Stedium Biotech)又はモノリシック媒体(例えば、CIMmultus QA、BIA Separations)に連続的に通し、この媒体は、溶液中に存在するエンドトキシンを実質的にすべて吸着して除去するために、立体排除効果をほとんど持たないものである;
c)任意選択で、微生物の負荷を低減するために、0.2~1.4μmのカットオフ閾値を有する膜を用いて精密ろ過(マイクロフィルター)する;
d)任意選択で、溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、粉末のカチオン性タンパク質単離物を得る。
【0011】
図2は、本発明による方法の概略を示す図である。
図3A及び
図3Bは、本発明による方法のステップb)の実施を可能にするダイアグラムの例を示している。
【0012】
あるいは、本発明は、以下のa)~d)のステップを含むカチオン性タンパク質単離物の精製方法に関する:
a)
‐ 6.5~7.5のpHを有する、
‐ 7.5より大きい等電点を有するカチオン性タンパク質と6.5未満の等電点を有する酸性タンパク質を、全タンパク質の重量に対して1重量%未満の含量で含む、
‐ 1mS/cm未満の導電率を有する、
溶液を得る;
特定の実施形態によれば、この第2の方法は、前の方法によって得られた単離物に適用される。
b)前記溶液をアニオン交換媒体、好ましくは膜媒体(例えばSartobind Q、Sartorus Stedium Biotech)又はモノリシック媒体(例えばCIMmultus QA、BIA Separtions)に通し、その媒体は、溶液中に存在するエンドトキシンを実質的にすべて吸着及び除去するために、立体排除効果をほとんど持たないものであり;溶液は好ましくは数回、好ましくは少なくとも3回カチオン交換媒体に通す;
c)任意選択で、完成品の適合性のために微生物負荷を許容レベルまで低減するために、0.2~1.4μmのカットオフ閾値を有する膜を用いて精密ろ過(マイクロフィルター)する;
d)任意選択で、溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、粉末のカチオン性タンパク質単離物を得る。
【0013】
図4は、本発明による代替的方法の実施を可能にする装置の配置図を示す。
【0014】
本発明はまた、本発明による方法によって得られ得る、又は得られるようなカチオン性タンパク質画分であって、5IU/mgタンパク質未満、好ましくは1IU/mgタンパク質未満、なおより好ましくは0.1IU/mgタンパク質未満のエンドトキシン含有量を有するようなものに関する。
【0015】
一実施形態によれば、画分のカチオン性タンパク質は、乳に由来し、その後、ラクトフェリンから主としてなるか、又はラクトペルオキシダーゼから主としてなるか、又はリボヌクレアーゼから主としてなるか、又はTGF‐βを20μg/g超、好ましくは50μg/g超、最も好ましくは100~200μg/gタンパク質の含量で含んでもよい。「から主としてなる」とは、乾物の重量に対して、少なくとも50重量%、さらには90重量%又は95重量%超のタンパク質を含む画分を意味する。本発明による画分は、乳又は乳清のカチオン性タンパク質の混合物を主として含むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】LPSの概略図(Maeshima & Fernandez 2013)。
【
図2】カチオン性タンパク質単離物の精製方法の概略図。
【
図3】カチオン性タンパク質単離物の精製方法の略図の例。A:透析ろ過とアニオン交換媒体を並列に組み合わせた方法、B:透析ろ過とアニオン交換媒体を直列に組み合わせた方法。
【
図4】カチオン性タンパク質単離物を精製するための代替方法の概略図である。
【実施例】
【0017】
例1:液体ウシラクトフェリン濃縮物を用いたベンチテスト
1)ラジアルフローカラム(Albert Handtmann Armaturenfabrick GmbH)において、工業用カチオン交換クロマトグラフィー法、SP Sepharose Big Beads(Cytiva Sweden)を用いて、低温殺菌した脱脂牛乳を通し、次いで36mS/cmのNaCl溶液と110mS/cmの同溶液で連続して溶出し、最後に20kDa MWCO限外ろ過で第2の溶出液を濃縮することにより、牛乳由来ラクトフェリンの液体濃縮物を得た。
【0018】
タンパク質濃度は13mg/mL、タンパク質に対するウシラクトフェリンの純度は95%、この溶液の導電率は65mS/cm、pHは6.8(「濃縮物LF1」)である。
【0019】
2)65mS/cmのこの液体ウシラクトフェリン濃縮物75mLを、Start AXH限外ろ過中空糸モジュール(MWCO 10kDa)を備えたAKTA flux s(Cytiva Sweden)を用いてベンチスケールで透析ろ過した。透析ろ過は、Milli‐Q(Millipore)で調製した超高純度脱塩水で5mS/cmまで不連続的に実施し、保持液(retentate)の体積が初期体積の50%に達した時点で超純水を初期体積にまで添加し、これを5回繰り返した。こうして、脱塩ウシラクトフェリン濃縮物を得た(「濃縮物LF2」)。
【0020】
上記と同様の透析ろ過手順を行ったが、この透析ろ過により導電率が65から5mS/cmに漸減する間に、今度は濃縮物(保持液)をQタイプ(第4級アンモニウム)のアニオン交換膜カートリッジ、Sartobind(登録商標)Q nano 3mL(Sartorius Stedim)に流速15mL/分で80分間再循環させ、並行に通した。こうして、透析ろ過により脱塩し、アニオン交換膜で処理したウシラクトフェリン濃縮物を得た(「濃縮物LF3」)。
【0021】
3) 透析ろ過により得られた各脱塩ラクトフェリン濃縮物中のエンドトキシンの濃度は、Lonza社のkinetic chromogenic LAL(動的色原体LAL)(カブトガニ変形細胞溶解物)アッセイにより測定した。並行して、各濃縮物中のウシラクトフェリンの濃度をHPLC PI法(カラムC18 300Å,0.1%TFA/CH3CNグラジエント、280nmで検出)により測定した。結果はIU/mgウシラクトフェリンとして表す。
【0022】
【0023】
例2:ウシラクトフェリンの液体単離物を用いたベンチテスト
1)ラジアルフローカラム(Albert Handtmann Armaturenfabrick GmbH)において、工業用カチオン交換クロマトグラフィー法、SP Sepharose Big Beads(Cytiva Sweden)を用いて、逆浸透膜で乾燥物量130g/Lに濃縮した低温殺菌脱脂牛乳を通し、次いで38mS/cmのNaCl溶液で10%で連続的に溶出し、次いで第2溶出液を20kDa MWCO限外ろ過で濃縮し、次いで10kDa MWCO限外ろ過で1mS/cmまで浸透水を用いて透析ろ過し、最後に、透析ろ過後の保持液を、0.8μmの二重層セラミック膜(Membrarox(登録商標)、Pall Corporation)で精密ろ過(マイクロフィルター)することにより、牛乳由来のラクトフェリンの液体精密ろ過物を得た。
【0024】
2)この液体ウシラクトフェリン単離物を、Milli‐Q(Millipore)で調製した超高純度脱イオン水で希釈し、タンパク質濃度を16mg/mg(w/v)、タンパク質に対するウシラクトフェリンの純度を95%、この溶液の導電率を0.15mS/cm、pHを6.9とした(「単離物LF1」)。この液体ラクトフェリン単離物75mLをSartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジ(Sartorius Stedim)に13mL/分の流速で通し、90分間再循環させた(以下「単離物LF2」)。
【0025】
3) 各ラクトフェリン単離物中のエンドトキシンの濃度は、Lonza社のkinetic chromogenic LAL(動的色原体LAL)(カブトガニ変形細胞溶解物)アッセイにより測定した。並行して、各濃縮物中のウシラクトフェリンの濃度をHPLC PI法(カラムC18 300Å、0.1%TFA/CH3CNグラジエント、280 nmで検出)により測定した。結果は、ウシラクトフェリンのIU/mgとして表した。
【0026】
【0027】
例3:ウシラクトフェリンの液体単離物を用いたベンチテスト
1)ラジアルフローカラム(Albert Handtmann Armaturenfabrick GmbH)において、工業用カチオン交換クロマトグラフィー法、SP Sepharose Big Beads(Cytiva Sweden)を用いて、低温殺菌した脱脂牛乳を通し、次いで、36mS/cmのNaCl溶液と110mS/cmのNaCl溶液で連続して溶出し、次いで、第2溶出液を20kDa MWCO限外ろ過で濃縮し、次いで、10kDa MWCO限外ろ過で1mS/cmまでの浸透水で透析ろ過し、最後に透析ろ過した保持液を1.4μmの二重層セラミック膜(Membrarox(登録商標)、Pall Corporation)で精密ろ過することにより、牛乳由来のラクトフェリンの液体精密ろ過物を得た。ろ過した。
【0028】
タンパク質濃度は147mg/mL、タンパク質に対するウシラクトフェリンの純度は95%、この溶液の導電率は0.8mS/cm、pHは6.8である(「単離物LF3」)。
【0029】
2)この液体ラクトフェリン単離物70mLをSartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジ(Sartorius Stedim)に6mL/分の流速で通した(「単離物LF4」)。
回収したラクトフェリン液体単離物(65mL)をSartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジに通した後、回収したラクトフェリン液体単離物を再度Sartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジに、合計3回通した(「単離物LF5」)。
回収したラクトフェリン液体単離物(60mL)を、Sartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジに、6mL/分の流速で30分間再循環させ、合計6回の均等の通過をさせた(「単離物LF6」)。
回収したラクトフェリン液体単離物(55mL)を、Sartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジに37分間、6mL/分の流速で循環させ、合計10回の均等の通過をさせた(「単離物LF7」)。
【0030】
3) 各ラクトフェリン単離物中のエンドトキシン濃度は、Lonza社のkinetic chromogenic LAL(動的色原体LAL)(カブトガニ変形細胞溶解物)アッセイにより測定された。結果は、IU/mgタンパク質として表される。
【0031】
【0032】
例4:牛乳由来のカチオン性タンパク質を含むTGF‐βの液体単離物を用いたベンチテスト
1)特許EP1912513号の実施例1に記載の方法に従い、牛乳由来のTGF‐β含有カチオン性タンパク質画分を得た。噴霧乾燥前に得られた精密ろ過液中のELISAキット(Quntikine TGF‐2、R&D Systems)で分析したTGF‐β2含量は115μg/gタンパク質であった。
【0033】
2)TGF‐βを含有するこの液体カチオン性タンパク質単離物を、Milli‐Q(Millipore)で調製した超高純度脱イオン水で希釈してタンパク質濃度を2.6mg/mg(w/v)、この溶液の導電率を0.89mS/cm、pHを7.1とした(「乳カチオン性タンパク質単離物1」)。この液体乳カチオン性タンパク質単離物50mLを、Sartobind(登録商標)Q nano 3mLカートリッジ(Sartorius Stedim)を通して、5mL/分の流速で70分間再循環した(「乳カチオン性タンパク質単離物2」)。
【0034】
3)各液体乳カチオン性タンパク質単離物中のエンドトキシンの濃度は、Lonza社のkinetic chromogenic LAL(動的色原体LAL)(カブトガニ変形細胞溶解物)アッセイにより測定した。結果は、タンパク質のIU/mgとして表される。
【0035】
【国際調査報告】