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特表2023-546403有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法
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  • 特表-有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20231026BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20231026BHJP
【FI】
C02F3/34 Z
C02F3/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023522968
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021074461
(87)【国際公開番号】W WO2022078673
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020213078.7
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アンテ・アンゲラ
【テーマコード(参考)】
4D027
4D040
【Fターム(参考)】
4D027CA00
4D040DD03
(57)【要約】
本発明は、産業設備、特に熱間圧延機の有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法に関し、別の態様では、産業設備の冷却回路の冷却回路水内のレジオネラ菌を除去するためのバクテリアの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業設備(2)、特に熱間圧延機(2)の有機物及び/又は無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法であって、冷却回路水が、冷却回路(3)内で、少なくとも、冷却回路水から有機物及び/又は無機粒子を分離するための分離装置(5)と、分離装置(5)の下流に配置された、回路水を冷却するための開放した冷却塔(11)とを介して導かれ、冷却回路水に、冷却回路(3)の少なくとも1つの位置で、定常状態で100cfu/ml未満の冷却回路水内のレジオネラ菌限界値が達成されるように、冷却回路水内に存在する有機物を分解しかつ冷却回路(3)内に生物学的浄化段を形成するために適したバクテリアが添加されること、を特徴とする方法。
【請求項2】
70cfu/ml未満の、好ましくは40cfu/ml未満の、より好ましくは10cfu/ml未満の、最も好ましくは1cfu/ml未満の冷却回路水内のレジオネラ菌限界値が達成されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バクテリアが、分離装置(5)の前及び/又は分離装置(5)内及び/又は冷却塔(11)の前で冷却回路水に添加されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
分離装置(5)の前及び/又は冷却塔(11)の前で冷却回路水に、添加されたバクテリアの増殖を促進する栄養素が添加され、好ましくは、添加された栄養素に対する添加されたバクテリアの比が、時間と共に低減されること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
バクテリア及び/又は栄養素が、顆粒及び/又は懸濁液の形態で提供され、及び/又は、水溶液の形態で冷却回路水に添加され、顆粒及び/又は懸濁液内のバクテリアが、好ましくは凍結乾燥されたバクテリアとして形成されていること、を特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水が、分離装置(5)内で、沈殿槽(6)、浄化槽(7)及び/又は濾過装置(8)を経て導かれること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
異なる環境要件、特に嫌気性、無酸素性及び/又は好気性を有する冷却回路水にバクテリアが添加されること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
産業設備(2)、特に熱間圧延機(2)の冷却回路(3)の有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水内のレジオネラ菌を除去するためのバクテリアの使用であって、バクテリアが、冷却回路水及び/又は冷却回路内に存在する有機物を生物学的な浄化段を形成することによって分解するために適していること、を特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業設備、特に熱間圧延機の有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法に関し、別の態様では、産業設備の冷却回路の冷却回路水内のレジオネラ菌を除去するためのバクテリアの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
産業設備内、特に熱間圧延機内では、プロセスラインを冷却するために、冷却プロセスの過程で油脂のような有機成分と例えばスケールのような無機粒子で汚染された大量の水が必要とされる。この場合、有機成分は、一定の間隔で冷却回路から手間をかけて除去しかつ別々に廃棄しなければならない堆積物を惹起する。これにより、それぞれの設備の継続的な運転コストは、著しく増加する。
【0003】
加えて、別の問題は、冷却回路のレジオネラ菌汚染である。特に開放した冷却回路、即ち開放した冷却塔を有する冷却回路では、エアロゾルが、レジオネラ菌汚染の原因として特定されたが、それが、ドイツ連邦共和国の連邦汚染防止法の第42規制が発行された理由である。これは、特に、水中の許容可能なレジオネラ菌限界値をコントロールする。
【0004】
許容される限界値を超えた時の冷却回路の冷却回路水内のレジオネラ菌濃度を低減するため、冷却回路水に、殺生物剤又は殺生物剤混合物が配量される。ここで、殺生物剤の配量後に有意なレジオネラ菌濃度は確認可能でないが、しかしながら、これは、一時的なものに過ぎないことがわかった。
【0005】
レジオネラ菌は、バイオフィルム内に生息する宿主生物としてアメーバ内に発生することが知られている。この場合、バイオフィルムは、そこにコロニーを形成する微生物のための独自のビオトープを構成し、過酷な条件に対する最も有効な保護である。加えて、冷却回路水内に存在する有機成分は、バイオフィルムの構成を容易化し、これにより、そこに生息する微生物は、殺生物剤に対して特に耐性を有することがわかった。従って、殺生物剤の配量時、水中のいわゆる自由かつ日保護の微生物だけが死滅する。これに対して、バイオフィルム内に保護された微生物は、殺生物剤の措置をほぼ損傷なく克服するので、数日から数週間後に、殺生物剤の配量前の数を部分的に著しく超える一定のレジオネラ菌の菌数に到達する。
【0006】
レジオネラ菌は、肺に到達した場合にのみ感染性である。従って、レジオネラ菌は、直接冷却を必要とし、従ってエアロゾルを著しい程に解放するプロセスラインの全ての圧延過程において、捜査員にとって特に高い危険性を示す。従って、特に、熱間圧延機の冷却区間、ワークロール冷却部及びスケールウォッシャにおける作業位置には、高い危険性がある。
【0007】
この点で、更に、前記限界値未満のレジオネラ菌濃度もしくはレジオネラ菌の菌数を保証し得る方法が必要であることがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の根底にある課題は、従来技術の欠点を克服する方法を提供することである。特に、本発明の根底にある課題は、前記限界値未満の冷却回路の冷却回路水内のレジオネラ菌濃度もしくはレジオネラ菌の菌数を保証する方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、課題は、請求項1の特徴並びに請求項8の特徴によって解決される。
【0010】
本発明の別の有利な形態は、従属的に表現された請求項に記載されている。従属的に表現された請求項に個々に述べられた特徴は、技術的に有効な方法で互いに組合せ可能であり、本発明の別の形態を規定し得る。更に、請求項に記載された特徴は、明細書に詳細に特定及び説明され、本発明の別の好ましい形態が示される。
【0011】
本発明によれば、冷却回路水が、まず冷却回路内で、少なくとも、冷却回路水から有機物及び/又は無機粒子を分離するための分離装置と、分離装置の下流に配置された、回路水を冷却するための開放した冷却塔とを介して導かれる、産業設備、特に熱間圧延機の有機物及び/又は無機粒子を負荷された冷却回路水からレジオネラ菌を除去するための方法を提案する。冷却回路の少なくとも1つの位置で、冷却回路水に、定常状態で最大100cfu/mlの冷却回路水内のレジオネラ菌限界値が達成されるように、冷却回路水内に存在する有機物を分解しかつ冷却回路内に生物学的浄化段を形成するために適したバクテリアが添加される。
【0012】
驚くべきことに、産業設備、特に熱間圧延機の冷却回路の冷却回路水にバクテリアを添加することにより、前記レジオネラ菌限界値を持続的に低減することができ、更に、冷却回路水内で、最大100cfu/mlの、好ましくは最大70cfu/mlの、特にこのましくは最大40cfu/mlの、より好ましくは最大10cfu/mlの、最も好ましくは最大1cfu/mlの値が達成されることがわかった。
【0013】
本発明の根底にある重要な知見は、油脂のような有機物の分解に特化したバクテリアの添加により、かくもレジオネラ菌の温床をも構成する冷却回路内の耐性を有するバイオフィルムが持続的に除去されることである。
【0014】
冷却回路内に添加されたバクテリアにより、冷却回路の1つ又は複数の領域で、バイオセノーシスが形成され、これらバイオセノーシスに、バクテリアは、入植し、耐性を有するバイオフィルムの形成に関与する有機物、特に油脂を分解もしくは代謝する。定常状態が達成され次第、冷却回路水内には、裸のスケール粒子だけが残り、これらスケール粒子は、例えば、重量分析的に又は強磁性的特性に基づいて冷却回路の適当な個所での磁気的分離によって除去することができる。
【0015】
バクテリアの培養物として、例えば、製品名「oilco-Bacteria」として出願人から入手可能な顆粒を使用することができる。
【0016】
本発明の意味のバイオセノーシスは、限られた生活圏(ビオトープ)内の生命体の共同体であり、バイオセノーシスとビオトープは、共に生態系を構成する。
【0017】
有利な実施バリエーションでは、バクテリアが、分離装置の前及び/又は分離装置内及び/又は冷却塔の前で冷却回路水に添加される。従って、バクテリアは、生物学的な浄化段を形成するために、局所的に又は好ましくは冷却回路全体にわたって分配されて、冷却回路水に添加することができる。冷却回路全体にわたってバクテリアを添加する場合には、冷却回路のどのユニットも、通常は一定の間隔で冷却回路全体から除去しかつ別々に廃棄しなければならない粘着性の有機的な堆積物をほとんど有しないでいるとの利点が生じる。従って、有機物並びに無機粒子を含むこれら堆積物の除去を削減することができ、これは、有利には、設備の継続的な運転コストに有利に作用する。
【0018】
別の好ましい実施バリエーションでは、分離装置の前及び/又は冷却塔の前で冷却回路水に、添加されたバクテリアの増殖を促進する栄養素が添加されること、が企図されている。添加された栄養素は、バクテリアによるバイオセノーシスの構成を促進し、更に、その長期的な存在を助長する。ここで、好ましくは、添加された栄養素に対する添加されたバクテリアの比が、時間と共に低減されること、が企図されている。特に好ましくは、これに関連して、バクテリアの添加が、バイオセノーシスの構成に依存して行なわれること、が企図されている。冷却回路内にバイオセノーシスを初めて形成するため、より高いバクテリア濃度が有利である。従って、添加されたバクテリアと添加された栄養素から成る特に好ましい混合物は、1wt%のバクテリアと99wt%の栄養素を含有する。これに対して、既に形成されたバイオセノーシスを維持するため、高めた栄養素濃度が有利である。従って、添加されたバクテリアの濃度は、適用時間の増加と共に1wt%未満に低下し、同時に、99wt%超の栄養素が添加される。
【0019】
バクテリアは、油脂を分解する特異種の純粋培養物である。ある種は、沈殿槽内及び浄化槽のより深い層内に存在し得るために、嫌気性の環境条件下で増殖することができるべきであり、他の種は、冷却塔内及び浄化槽の表面でも油脂を除去し得るために、好気的に生息することができなければならない。
【0020】
栄養素は、主に窒素及び燐であり、硫黄、カリウム、マグネシウム及び/又はナトリウムも成分であり得る。微量栄養素混合物も、濃縮物の一部であり得る。これは、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、モリブデン、タングステン、亜鉛及び/又はタングステンのような金属の混合物であり、場合によっては補足的に、ホウ素、ケイ素及び/又はセレン並びに場合によっては別の元素及び/又はアミノ酸である。通常はバクテリア培地内に含まれる鉄は、カルシウムのように冷却回路内に十分な濃度で含まれているので、必要でない。
【0021】
別の有利な実施バリエーションでは、バクテリア及び/又は栄養素が、顆粒の形態で提供され、水溶液の形態で冷却回路内の冷却回路水に添加される。顆粒は、濃縮された形態のバクテリア及び/又は栄養素を含有するので、これにより、保管の必要が低減される。合目的に、顆粒は、水に溶解される。このため、水は、有利にはまず、冷却回路水と同等の温度に加熱される。次に、顆粒が配量され、溶液が生成される。3~6hの熟成時間の後、溶液は、冷却回路水に添加される。ここで、冷却回路内でのバクテリア及び/又は栄養素の拡散が著しく改善されることがわかった。更に、これに関連して、好ましくは、顆粒内のバクテリアが、凍結乾燥されたバクテリアとして形成されていること、が企図されている。凍結乾燥されたバクテリア(フリーズドライされたバクテリア)は、著しく長い寿命を備えるので、顆粒は、より長い期間にわたって保管することもできる。
【0022】
選択的な実施バリエーションでは、バクテリア及び/又は栄養素は、懸濁液の形態で提供することができる。この場合、バクテリアは、バイオリアクター内で培養され、冷凍乾燥なしで、直接的に冷却回路水に配量される。バクテリア及び/又は栄養素の懸濁液の短い寿命に基づいて、バイオリアクターは、冷却回路の近傍に配置されるべきである。
【0023】
別の好ましい実施バリエーションでは、有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水が、分離装置内で、沈殿槽、浄化槽及び/又は濾過装置を経て導かれる。これに関連して、特に好ましくは、沈殿槽及び/又は浄化槽にバクテリアが添加されること、が企図されている。全く特に好ましくは、異なる環境要件、特に嫌気性、好気性及び/又は無酸素性を有する冷却回路水にバクテリアが添加されること、が企図されている。バクテリアは、それぞれの環境に応じて拡散し、この場合、設備部分の表面並びにユニットから隔絶しかつ集まったスラッジのスケール粒子に付着し、従って、それぞれの設備部分内にバイオセノーシスを形成する。
【0024】
本発明は、ここで詳細に示した熱間圧延機の設備に限定されているのではなく、原理的に、食品産業、製油所、化学及び製薬の設備のような他の産業部門にも適用することができる。ここで、前提条件は、例えば炭化水素、タンパク質又は炭水化物によるような有機化合物による汚染であり、従って、これにより、冷却回路は、レジオネラ菌の感染のリスクにさらされている。
【0025】
本発明及び技術的環境を、以下で図によって詳細に説明する。本発明が、示した実施例によって限定されず、従って本発明の理解のためだけに使用されるべきであることを指摘する。特に、別段の明示的な記載がない限り、図に説明された事項の部分的態様を抽出し、本明細書及び/又は図からの他の構成要素及び知見と組み合わせることも可能である。特に、図及び特に図示した大きさの関係が、概略的であるにすぎないことを指摘する。同じ符号は、同じ対象を示すので、場合によっては、他の図からの説明を補足的に引き合いに出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】有機物及び無機粒子を負荷された冷却回路水のレジオネラ菌を除去するための設備の1つの実施バリエーションの概略図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示した設備1は、ここに図示した実施バリエーションでは、熱間圧延機2を有し、この熱間圧延機に、冷却回路3が接続する。冷却回路3は、それぞれ互いに流体的に接続されかつ以下で詳細に説明される複数のユニットを有する。
【0028】
図示したように、熱間圧延機2は、まず冷却回路3に連結されているので、熱間圧延機2内で使用される油脂のような有機物並びに特にスケールのような無機粒子を負荷された冷却回路水は、冷却回路3内に配置されたユニットを介して、直接的に熱間圧延機2に再び供給され得る程度まで処理される。冷却回路水量が、特定の容積を下回る場合、冷却回路3には、付加的な清水が、清水供給4を介して添加される。
【0029】
図1に示した設備1は、まず、熱間圧延機2の冷却回路水から有機物及び無機粒子を分離するための分離装置5を有するので、予備浄化された冷却回路水が得られる。図1からわかるように、分離装置5は、直列に接続された複数の構成要素を有する。
【0030】
ここに示した実施バリエーションでは、分離装置5は、有機物及び無機粒子から成る混合物の粗いフラクションを分離するための沈殿槽6と、有機物及び無機粒子から成る混合物の平均サイズを分離するため及び表面から浮遊油を吸引するための浄化槽7と、最後に、通常は複数の濾過ユニットを有する濾過装置8とを有する。
【0031】
この図では、濾過装置8の複数の濾過ユニットの並列に接続された2つの濾過ユニット9,10だけが示されていることを指摘する。濾過装置8内で、有機物及び無機粒子から成る混合物の微細なフラクションが分離される。濾過装置8の両濾過ユニット9,10は、逆洗可能に形成され、砂利フィルタスラッジバッファ14に接続されている。濾過ユニット9,10は、ここでは砂利フィルタの形態で形成されている。
【0032】
更に、図1に示した設備1は、開放した冷却塔11を有し、この冷却塔を介して、予備浄化された冷却回路水が冷却可能である。冷却塔11内で、予備浄化された冷却回路水は、噴霧され、これにより、特に水滴が形成され、これら水滴は、部分的に蒸発し、次に凝縮し、これにより冷却される。こうして得られた冷却及び予備浄化された冷却回路水は、主ライン12を介して再び熱間圧延機に供給される。
【0033】
冷却回路3内に、設備1は、更に、冷却回路水内に存在する有機物を分解するために適したバクテリアを添加するための配量装置13を有する。バクテリアは、ここでは凍結乾燥されたバクテリアとして形成されている。配量装置13は、図示したように、分離装置5の前に配置することができる。選択的に、配量装置13は、分離装置5内で、沈殿槽6の前、浄化槽7の前及び/又は濾過装置8の前に配置することもできる(図示せず)。
【0034】
加えて、配量装置13を介して、添加されたバクテリアの増殖を促進する栄養素が冷却回路3に添加される。添加された栄養素は、バクテリアによるバイオセノーシスの構成を促進し、更に、その長期的な存在を助長する。
【0035】
更に、バクテリアが、別の配量装置を介して、微細スケールが内部に集められる(図示せず)砂利フィルタスラッジバッファ14にも添加される場合が有利であるとわかった。
【0036】
例:
【0037】
バクテリアとして、製品名「oilco-Bacteria」として出願人から入手可能な、異なる環境要件(嫌気性、無酸素性、好気性)を有する油脂を分解する特異種の純粋培養物が使用された。
【0038】
顆粒の形態で存在ずるバクテリアが、水に溶解された。顆粒は、1wt%のバクテリアと99wt%の栄養素から成る。水が、まず、冷却回路水と同等の温度に加熱された。次に、指示に従って顆粒が配量され、溶液が生成された。3~6hの熟成時間の後、接種溶液が、配量装置13を介して冷却回路3に分配されて添加された。
【0039】
ここで冷却回路水に添加されたバクテリアは、異なる環境要件を有する。沈殿槽6は嫌気性であり、浄化槽7は嫌気性であり、濾過装置8は無酸素好気性であり、冷却塔は好気性である。
【0040】
バクテリアの添加により、2~8週間をかけて冷却回路全体にバイオセノーシスが形成された。この潜伏期間の後、バイオフィルムは、目に見えて低減することができ、これは、当初100cfu/ml超から1cfu/ml未満へのレジオネラ菌の菌数の減少に反映された。
【0041】
潜伏期間の後、形成されたバイオセノーシスを維持するため、栄養素濃度が高められ、新たに添加されたバクテリアの濃度が下げられた。
【0042】
更に6週間後、定常状態が確認され、これにより、レジオネラ菌の温床を構成する冷却回路3内の体制を有するバイオフィルムを検出することができなかった。DIN EN 13098:2018による冷却回路水の分析により、レジオネラ菌の菌数は、確認することができなかった。
【0043】
プロセスが試験された熱間圧延機は、約1400t/aのスラッジを生成する。沈殿槽6から、約1200t/aのスケールが浚われ、約200t/aの微細スケールスラッジが溜まった。
【0044】
沈殿槽6の上澄み水内のCOD含有量は、当初の60mg/lから30mg/lに低下し、浄化槽7内では48mg/lから6mg/lに低下した。
【0045】
粗スケールの有機物含有量は、280mg/lから35mg/kgに低下した。微細スケールスラッジ内の有機物の割合は、37wt%であり、6%に低下した。
【0046】
冷却回路水内に、リン酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム及び硝酸塩の含有量は、検出限度に基づいて検出することができなかった。pH値は、嫌気性の酸生成によって低下した。その結果、CaCO濃度が低下し、これにより、硬度、導電率及び塩分が低下した。沈殿槽6内には、約1mの視覚的深さがあったが、この視覚的深さは、配量の前には存在しなかった。配量の前に定期的に、大抵は月毎に実施された濾過ユニット9,10の浄化は、もはや必要なかった。
【符号の説明】
【0047】
1 設備
2 産業設備/熱間圧延機
3 冷却回路
4 清水供給
5 分離装置
6 沈殿槽
7 浄化槽
8 濾過装置
9 濾過ユニット
10 濾過ユニット
11 冷却塔
12 主ライン
13 配量装置
14 砂利フィルタスラッジバッファ
図1
【国際調査報告】