(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電気車両充電器のコネクタを動かすための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231026BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20231026BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
B60L53/16
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023523056
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 NL2021050613
(87)【国際公開番号】W WO2022086320
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521468682
【氏名又は名称】ロクシス ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】ROCSYS B.V.
【住所又は居所原語表記】Delftweg 65,2289 BA Rijswijk,the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ヴェイデ,ヨハネス オーステン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドゥールツェン,カンター
(72)【発明者】
【氏名】パリス,フース ニコ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ローイエン,レミー
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503FA03
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC24
5H125BE02
5H125DD03
5H125DD04
5H125FF12
(57)【要約】
電気車両充電器のコネクタ(3)を動かすための装置(1)であって、コネクタ(3)を懸架するための作動装置取付け箇所(2)を動かすための作動機構と、コネクタ(3)のためのコネクタ取付け箇所(27)であって、コネクタ(3)には、差込み方向(D)に動かすことによって電気車両のソケットに電気的および機械的に接続するように構成された一方の端部(4)が提供されている、コネクタ取付け箇所(27)と、作動装置取付け箇所(2)に結合されコネクタ取付け箇所(27)を保持する懸架装置とを備え、懸架装置がコネクタ取付け箇所(27)を好ましい配向に保持し、コネクタ(3)が、コネクタ取付け箇所(27)に及ぼされる力の印加下で、そこから作動装置取付け箇所(2)に対して運動可能であり、具体的にはコンプライアントに運動可能であり、コネクタ取付け箇所(27)が、少なくとも、差込み方向に対して平行でなく好ましくは垂直な角度の回転軸を中心に回転可能であり、回転軸が、懸架装置からある距離だけコネクタ取付け箇所(27)を越える方向に位置するある位置で、差込み方向(D)にコネクタ取付け箇所(27)を通る想像軸と交差し、この距離が5メートル未満、より好ましくは4メートル未満、最も好ましくは3メートル未満である、装置(1)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両充電器のコネクタ(3)を動かすための装置(1)であって、
- 前記コネクタ(3)を懸架するための作動装置取付け箇所(2)を動かすための作動機構と、
- 前記コネクタ(3)のためのコネクタ取付け箇所(27)であって、前記コネクタ(3)には、差込み方向(D)に動かすことによって電気車両のソケットに電気的および機械的に接続するように構成された一方の端部(4)が提供されている、コネクタ取付け箇所(27)と、
- 前記作動装置取付け箇所(2)に結合され前記コネクタ取付け箇所(27)を保持する懸架装置(5)と
を備え、
- 前記懸架装置(5)が前記コネクタ取付け箇所(27)を好ましい配向に保持し、前記コネクタ(3)が、前記コネクタ取付け箇所(27)に及ぼされる力の印加下で、そこから前記作動装置取付け箇所(2)に対して運動可能であり、具体的にはコンプライアントに運動可能であり、前記コネクタ取付け箇所(27)が、少なくとも、
- 前記差込み方向(D)に対して平行でなく好ましくは垂直な角度の回転軸を中心に回転可能である、装置(1)において、
- 前記回転軸が、前記懸架装置(5)からある距離だけ前記コネクタ取付け箇所(27)を越える方向に位置するある位置で、前記差込み方向(D)に前記コネクタ取付け箇所(27)を通る想像軸と交差し、前記距離が5メートル未満、より好ましくは4メートル未満、最も好ましくは3メートル未満であることを特徴とする、
装置(1)。
【請求項2】
前記コネクタ取付け箇所(27)が、前記コネクタ取付け箇所(27)に力を及ぼすことによって2つの回転軸を中心に前記作動機構に対して回転可能であり、それぞれが、前記差込み方向(D)に対しておよび互いに対して平行でなく好ましくは直角である、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記コネクタ取付け箇所(27)が、複合的運動の一部として前記作動装置取付け箇所(2)に対して回転可能である、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記懸架装置(5)が、弓形または皿形の1つまたは複数の案内を含む、請求項1から3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
前記力が除去されたときに好ましい位置へと戻されるように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
前記懸架装置(5)が、ばねまたはばね状の剛性部、たとえば複数自由度の屈曲部の下で、前記好ましい位置に戻るように前記コネクタ取付け箇所(27)を付勢するように構成されている、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記懸架装置(5)が、第1の側では前記作動機構に、第2の側では前記コネクタ取付け箇所(27)にそれぞれ連結された、屈曲部、ばねで荷重をかけられたピストン、またはガス・スプリングのような、三角形の構成で配置された運動力学的に平行でコンプライアンス性の少なくとも3つの要素を備える、請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記懸架装置(5)がスチュワート・プラットフォーム、具体的にはパッシブ・スチュワート・プラットフォーム、またはヘキサポッドなどのパラレル・メカニズムを備える、請求項6に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記懸架装置(5)が、前記差込み方向(D)において前記コネクタ取付け箇所(27)の完全に後ろに位置付けられている、請求項1から8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
前記作動機構と前記懸架装置(5)との間、または前記懸架装置(5)と前記コネクタ取付け箇所(27)との間に直列コンプライアンス部(23)を備える、請求項1から9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
前記直列コンプライアンス部(23)が、前記差込み方向(D)において、前記懸架装置(5)の、結果として得られるばね定数よりも低いばね定数を有し、ならびに/または懸架装置(5)および直列コンプライアンス部(23)の剛性およびプリロードは、前記差込み方向(D)に前記コネクタ取付け箇所(27)に力を印加したとき、前記直列コンプライアンス部(23)のストロークの半分を越えたときにのみ、前記懸架装置(5)のプリロードが超えられるように構成されている、請求項10に記載の装置(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの自由度における前記コネクタ取付け箇所(27)の偏向を検出するための少なくとも1つのセンサを備える、請求項1から11のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項13】
前記懸架装置(5)には、3であるコンプライアンス性回転自由度、および少なくとも1であるコンプライアンス性並進自由度が提供されている、請求項1から12のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項14】
前記懸架装置(5)には、3であるコンプライアンス性回転自由度、および2であるコンプライアンス性並進自由度が提供されている、請求項1から13のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項15】
前記懸架装置(5)が、静止位置を有することによって一方向のコンプライアンスを有するように構成されており、前記懸架装置(5)の少なくとも一部が、端部ストップに対して予め張力をかけられている、請求項1から14のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項16】
前記コネクタ(3)が前記コネクタ取付け箇所(27)に結合されており、前記コネクタには、差込み方向(D)に動かすことによって電気車両のソケットに電気的および機械的に接続するように構成された一方の端部(4)が提供されている、請求項1から15のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項17】
電気車両充電器のコネクタを動かすための方法であって、前記コネクタには、差込み方向に動かすことによって電気車両のソケットに電気的および機械的に接続するように構成された一方の端部が提供されており、前記方法が、
- 前記コネクタを保持する懸架装置に結合された作動機構により、好ましい配向に前記コネクタを動かすステップと、
- 前記コネクタに力を印加するステップと、
- 前記懸架装置を使用して、前記差込み方向に対して平行でなく好ましくは垂直な角度の回転軸を中心に前記コネクタを回転させ、具体的にはコンプライアントに回転させるステップと
を含む、方法において、
- 前記回転軸が、コネクタからある距離である方向に位置する位置で、前記差込み方向に前記コネクタを通る想像軸と交差し、前記距離が5メートル未満、より好ましくは4メートル未満、最も好ましくは3メートル未満であることを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記コネクタが、前記コネクタに力を及ぼすことによって2つの回転軸を中心に回転させられ、それぞれの軸が、前記差込み方向に対しておよび互いに対して平行でなく好ましくは直角である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コネクタが、複合的運動の一部として回転させられる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記力が除去されたときに前記コネクタを好ましい位置へと戻すステップを含む、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ばねまたはばね状の剛性部の下で前記好ましい位置に戻るように前記コネクタを付勢するステップを含む、請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
3であるコンプライアンス性回転自由度、および少なくとも1であるコンプライアンス性並進自由度で前記コネクタを懸架するステップを含む、請求項17から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
3であるコンプライアンス性回転自由度、および2であるコンプライアンス性並進自由度で前記コネクタを懸架するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
一方向のコンプライアンスを備える前記コネクタを懸架するステップを含む、請求項17から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1から16のいずれかに記載の装置を使用する、請求項17から24のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両充電器のコネクタを動かすための装置に関する。より詳細には、本発明は、電気車両用の充電器の充電器コネクタを電気車両のソケットに自動的に差し込むための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この目的のための装置は、とりわけ同じ出願人による特許出願から、当技術分野で知られている。
【0003】
充電器コネクタを車両に差し込むときの課題の1つは、充電器を車両に対して正しく位置決めすることである。別の課題は、差込み方向での運動を容易にするために、その配向を正しくアウトラインすることである。車両が厳密に静止していないとき、または人々が車に乗り込むときおよび車から出るときに、両課題はより難しくなる。
【0004】
別の課題は、充電器およびその作動機構の運動および体積の自由度が、車両の車体やインレット・カバーの部品などの種々の物品によって制限されることである。これらの表面により、作動機構は、それが操作可能である制限された容積を有する。複雑化要因は、車の車両インレット部分の設計が、異なるブランドおよびタイプにおいて著しく異なり得るということである。正確さを向上させると、普通はスピードが失われ、工学的な労力および部品に関する要件が増加し、したがってコストが増加し、したがって普通はこれら2つの間の許容可能な兼ね合いが選択される。要求される正確さを低下させるために、具体的にはコネクタの丸くされるかまたは切り取られた縁部であり、ソケットの受入れ空間に収束する、一般に面取り部と称される機械的案内表面が設けられる場合がある。コネクタは、一定のマージン内で、作動機構を非常に正確に位置決め/配向することなしに、ソケットへのその進路を探し出すことができる。
【0005】
しかし、特に連結しようと試みたときに車両が動くと、機械的案内表面は運動の振幅を補償することができず、車両および/または充電器を損傷させるリスクさえ生じる。
【0006】
この理由のために、コンプライアンス・メカニズムを使用して、コネクタの自己探索を可能にし、コネクタと車両との間の衝突を軟化させることが知られている。コンプライアンス部により、コネクタと車両との間の衝突または衝撃さえもが吸収され、連結されるとコネクタが一定の境界内で車両と共に動くことが可能になる。
【0007】
しかし、コンプライアンス部が全体として非常に柔らかいとき、コネクタをソケットに差し込むことはより困難になり、コネクタがあまりに容易に逸れる傾向にあるとき、自己探索および/または案内表面が必ずしも役立つとは限らない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目標は、上述の欠点を排除し、かつ/または従来技術に対する有用な代替物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに対して、本発明は、電気車両充電器のコネクタを動かすための装置であって、コネクタを懸架するための作動装置取付け箇所を動かすための作動機構であって、前記コネクタには、差込み方向に動かすことによって電気車両のソケットに電気的かつ機械的に接続するように構成された一方の端部が提供されている、作動機構と、作動装置取付け箇所に結合されコネクタ取付け箇所を保持する懸架装置とを備え、懸架装置が、コネクタ取付け箇所を好ましい配向に保持し、コネクタ取付け箇所が、コネクタ取付け箇所に及ぼされる力の印加下で、そこから作動機構に対してコンプライアントに動き、コネクタ取付け箇所が、差込み方向に対してある角度の回転軸を中心に少なくとも回転可能であり、回転軸が、懸架装置からコネクタ取付け箇所の端部を越える方向に位置するある位置で、差込み方向にコネクタ取付け箇所を通る想像軸と交差する、装置を提案する。
【0010】
コネクタが参照される場合、プラグという用語が代わりに考慮されてもよい。現在一般に使用されているコネクタのタイプが、IEC62196やSAEJ1772などの規格に記載されている。これらの規格におけるコネクタおよびソケットのタイプは、CCS-1、CCS-2、タイプ-1、タイプ-2、タイプ-3、CHAdeMO、および(GB/T20234.3にも記載されている)GB/Tと称される。規格化された他のEV充電コネクタには、たとえば中国およびアジア地域で使用することを意図された、新しく定められたChaoJiコネクタ、フォークリフトなどの低電圧車両で使用されるDIN VDE0623-589に記載のEuro-Din、およびトラックやバスなどの重量電気車両で使用することを意図された将来的なHPCCVまたはMCSコネクタが含まれる。特に、CCS-2タイプのコネクタおよびソケットがヨーロッパで人気を得てきている。多極電気接続に加えて、コネクタおよびソケットにより機械的連結が確立され、これにより、正しい極が対にされることが確実となり、充電を実施している間に電気接続がなされ続ける。機械的連結を保つために、コネクタは、ソケット内にコネクタをクランプする締まり嵌めを有する。前述の規格ならびにコネクタおよびソケットは、具体的には車両ボディもしくは車体内に、または車両ボディもしくは車体上に配置されることが意図されており、普通は車両の側方、またはことによると上部に配置される。これらのコネクタは、車両下部に対して、もしくは車両下部に一体化されて、またはそのシャーシ内で、もしくはそのシャーシに対して、車両の下で使用されることは特に意図されていない。したがって、本発明(による方法)は、車両の下で、および/または車両の下部もしくはシャーシに対して連結されることを明確に意図していない場合がある。
【0011】
規格によるコネクタは案内のための面取り部を有する場合があり、ソケットへの初期の挿入段階では「緩い」嵌めを有する場合がある。しかし、標準的な電気車両コネクタをソケットに挿入するのは、普通は、挿入すべきコネクタを正確に位置決めすることを必要とする精度の高い作業である。さらに、現実的な状況では、挿入中または充電プロセス中に車両のソケットの姿勢(位置/回転)が予期せず変化する場合がある(人々が出るかまたは入る、積荷の積込みおよび積降し、風による負荷など)。従来技術の装置では、コネクタ取付け箇所は並進することができるかまたは回転軸を中心に回転可能であり、この回転軸は、コネクタ取付け箇所内の、またはコネクタ取付け箇所の前の位置において、差込み方向にコネクタ取付け箇所を通る想像軸と交差する。上記のことの少なくとも一部を示す例が、米国特許出願公開第2013/076902A1号、国際公開公報第99/10137A1号、または国際公開公報第2020/222640A1号である。
【0012】
取付け箇所という用語により、空間内の離散点ではなく、表面を有する領域を明確に指すことができる。回転可能とは、少なくとも一定の角度にわたって妨げられることなく、外力またはトルクの影響下で回転可能であることを意味する。
【0013】
本発明では、回転軸は、懸架装置からコネクタ取付け箇所の端部を無限ではなく越える方向に位置するある位置で、差込み方向にコネクタ取付け箇所を通る想像軸と交差し、これは言い換えれば、差し込むときに回転軸がコネクタ取付け箇所に先行するかまたは先導することを意味する。
【0014】
懸架装置自体は、コネクタ取付け箇所の、コネクタが電気車両のソケットに電気的かつ機械的に接続する側から離れた側に、本質的に、好ましくは完全に配向される。より具体的には、作動機構に対するコネクタのいかなる考えられる配向においても、懸架装置のどの部品も、作動機構からの方向で見たコネクタの最も遠い点に接触する平面として定義されるコネクタの前面よりも遠くに突出する形で延在せず、この平面は、作動機構からコネクタの最も遠い点への方向に対して垂直である。この場合、点は平面または実際の点でもよく、1群の点でもよい。
【0015】
作動機構は、知られている任意の作動装置、たとえば直列または並列なロボット作動装置などでもよく、作動装置とも呼ばれる場合がある。
【0016】
回転軸がコネクタ取付け箇所に先行するかまたは先導する結果、結合されるときのコネクタが、ショッピング・カートの車輪の懸架装置に相当する形で、ソケットに接触することによって生じる配向の移動または変化に追従することが可能になり、この場合、回転点は、普通はコネクタの前部の近くになる。さらに、充電プロセス中にコネクタがソケットに固定されると、車両は、コネクタの前方でさらに遠くに、ひいてはコネクタ取付け箇所からさらに遠くに、回転軸と共に効果的に回転することができる。
【0017】
コネクタ取付け箇所と回転軸との間の距離は、好ましくは1センチメートルより大きいが、電気車両の最大幅の2倍より小さい。言い換えれば、それは好ましくは1センチメートルより大きく、より好ましくは2センチメートルより大きく、最も好ましくは3センチメートルより大きい。しかし、これは好ましくは5メートル(標準的な電気車両において許容されている幅の約2倍)未満であり、より好ましくは4メートル未満であり、最も好ましくは3メートル(標準的な電気車両において許容されているおおよその幅)未満である。この範囲は、ソケットの近傍だけではなく車の幅全体に沿って生じる、挿入プロセス中および充電プロセス中の車両のソケットの予期しない姿勢(位置/回転)の相違または変化をモデル化および補償するために、最も効果的な範囲であることが証明されている。
【0018】
別の実施形態では、コネクタ取付け箇所は、コネクタ取付け箇所に力を及ぼすことにより、それぞれが差込み方向に対しておよび互いに対してある角度である2つの回転軸を中心に、作動機構に対して回転可能である。角度は、好ましくは平角であってもよく、したがって予想される差込み配向および位置に対する対称な配向が可能になる。
【0019】
コネクタ取付け箇所は、複合的運動の一部として作動機構に対して回転可能でもよい。こうした複合的運動は、たとえば1つまたは複数の弓形または皿形の案内を含んでもよく、これは前述の1つまたは複数の回転軸を中心に湾曲している。
【0020】
懸架装置は、力が除去されたときに好ましい位置へと戻されるようにさらに構成されてもよい。この目的のために、制御可能作動装置などのアクティブな手段が存在してもよく、または懸架装置が、たとえばばねの作用下でコネクタ取付け箇所を好ましい位置へと戻すように付勢するよう構成されてもよい。後者は比較的単純かつ頑健な解決法である。
【0021】
これに関する一例は、懸架装置が三角形の構成で配置された3つの屈曲部、ばねで荷重がかけられたピストン、またはガス・スプリングを備える実施形態であり、それぞれは第1の側では作動機構に連結され、第2の側ではコネクタ取付け箇所に連結される。
【0022】
代替の一実施形態では、懸架装置はヘキサポッドを備える。ヘキサポッドはパッシブなヘキサポッドでもよく、これはばねで張力をかけることができるが、作動装置を備えない。特にこれらの後者2つの懸架装置により、差込み方向において懸架装置をコネクタ取付け箇所の完全に後ろに位置付けられたままにさせることが可能になる。
【0023】
好ましい一実施形態では、懸架装置は、作動機構と懸架装置との間、または懸架装置とコネクタ取付け箇所との間に直列コンプライアンス部を備える。これにより、方向に依存する挙動を有するコンプライアンス部を導入することが可能になる。
【0024】
好ましい一実施形態では、直列コンプライアンス部は、差込み方向において、懸架装置の、結果として得られるばね定数よりも小さいばね定数を有する。これにより、コネクタが実際に差し込まれる前にコネクタを配向するのをコンプライアンス部に支援させることが可能になり、コネクタがソケットの方向に静かに動かされたとき、またはさらにはソケットに押しつけられたときにソケット内でコネクタがゆがむかまたはクランプすることが防止される。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明による装置は、少なくとも1つの方向におけるコネクタ取付け箇所の偏向を検出するための少なくとも1つのセンサを備える。こうしたセンサを使用して、コネクタが車両のソケットに接触したことまたは別の衝突を間接的に判定することができ、センサを使用して車両の運動を判定することができる。このセンサによって生成される信号は、コネクタを再位置決めするために、かつ/または位置決めもしくは運動シーケンスもしくはプロトコルを反復するために、装置の制御装置によって使用され得る。
【0026】
さらに別の実施形態では、懸架装置には、3であるコンプライアンス性回転自由度、および少なくとも1であるコンプライアンス性並進自由度が提供される。より好ましくは、懸架装置には、3であるコンプライアンス性回転自由度、および少なくとも2であるコンプライアンス性並進自由度が提供される。
【0027】
直列コンプライアンス部の直列的な連結によって得られるコンプライアンスまたは構成コンプライアンスは、静止位置を有することによって一方向のコンプライアンスに構成されてもよく、懸架装置の少なくとも一部は端部ストップに対して予め張力をかけられる。
【0028】
次に、以下の図を参照して本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1b】複数の車両を考慮したときの、インレットの周りで利用可能な運動空間の粗いモデルである。
【
図2】第1の位置における本発明の第1の実施形態の斜視図である。
【
図3】第2の位置における本発明の第1の実施形態の斜視図である。
【
図4】第1の位置における本発明による第2の実施形態による懸架装置の斜視図である。
【
図5】第2の位置における本発明による第2の実施形態による懸架装置の斜視図である。
【
図6】本発明による懸架装置、およびその結果得られる回転軸の数学的モデルである。
【
図7】直列コンプライアンス部を備える本発明の一実施形態の数学的モデルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aには、従来技術による車両インレット部分18の斜視
図17が示してある。図に見えているように、コネクタを動かすための作動機構の運動および体積の自由度は、車両の車体19やインレット・カバー20の部品などの種々の物品によって制限されている。これらの表面により、作動機構は、それが操作可能である制限された容積を有する。複雑化要因は、車の車両インレット部分の設計が、異なるブランドおよびタイプにおいて著しく異なり得るということである。
【0031】
図1bには、様々なタイプの車両の種々のインレット部分および充電ポート・カバーの幾何形状を測定した結果が示してある。作動機構を操作するために利用可能な自由空間を画定するために、種々の車両の車体の制限を考慮して、作動機構が操作可能である空間を表す三次元容積を確立することができる。この図には、作動機構が占有することができる容積に著しい制限があることが示されている。挿入方向には利用可能なかなりの自由空間が存在するが、インレットの側方ならびに上方および下方においては、空間は限定されている。したがって、自動化システムは、実際のコネクタの側方ならびに上方および下方では限定的な容積を占有することが理想的である。これが、コンプライアンス組立体を設計するための複雑化要因である。図には、車両インレット21の平面、および作動機構22が利用可能な容積が示されている。
【0032】
図2には、電気車両充電器のコネクタ3を動かすための装置が示してあり、これはコネクタ3を懸架するための作動装置取付け箇所2を動かすための作動機構(図示せず)を備える。コネクタ3には、差込み方向Dに動かすことによって電気車両のソケットに電気的および機械的に接続するように構成された一方の端部4が提供されており、装置1には、作動装置取付け箇所2に結合されコネクタ3を保持する懸架装置5が提供されている。図では、懸架装置5が好ましい配向でコネクタ3を保持しており、コネクタ3は、コネクタ3に及ぼされる力の印加下で、そこから作動装置取付け箇所に対して回転可能である。コネクタは、少なくとも(図面の平面に対して垂直な)回転軸Aを中心に、また(
図5でより詳細に説明される)差込み方向Dに対して垂直に回転可能である。回転軸は、懸架装置からコネクタ3の端部4を越える方向に位置するある位置において、差込み方向Dにコネクタ3を通る想像軸Iと交差する。
【0033】
コネクタ3は、コネクタに及ぼされる力を及ぼすことにより、差込み方向Dおよび第1の回転軸Aに対して垂直な第2の回転軸Bを中心に、作動装置取付け箇所に対してさらに回転可能である。コネクタ3は、懸架装置5によって備えられたヘキサポッドによって可能になる複合的運動の一部として、作動機構に対して回転可能である。このヘキサポッドは、ばねで張力をかけることができるが作動装置は備えないパッシブなヘキサポッドである。
【0034】
図3には、ここでは回転軸Aを中心に角度アルファを回転させられた
図2からの装置が示してある。
【0035】
図4には、第1の側では作動装置取付け箇所10に、第2の側ではコネクタ(図示せず)にそれぞれ連結するための、三角形の構成で配置された3つの屈曲部7、8、9を備える、本発明による代替の懸架装置6が示してある。代わりに、コネクタ保持箇所11が示してある。
【0036】
図5には、
図4の配向に対して回転軸Aを中心に角度ベータにわたって回転させられた配向における、
図4からの懸架装置6が示してある。
【0037】
図6には、コネクタの懸架装置14用の取付け箇所13を備える、電気車両充電器のコネクタを動かすための装置の仕組みの概略
図12が示してある。懸架装置は脚部15および60を備え、どちらも共通の距離でコネクタ保持箇所16に結合されている。脚部は比較的短い長さrをそれぞれ有するが、コネクタ(保持箇所16)は、差込み方向Dに対して垂直な回転軸Aを中心に、半径Rで回転可能である。
【0038】
懸架装置は、差込み方向Dに見るとコネクタの後ろに位置付けられた、脚部15および16によって形成される回転部品を備え、このコネクタは領域Cに位置付けられることが、図から明確に見て取れる。しかし、複合的運動によって生じる効果的な回転はより大きい半径Rを有し、その回転軸Aは、領域Cに位置付けられたコネクタの前方に存在する。
【0039】
図7には、直列コンプライアンス部23と、作動装置取付け箇所24と、ヘキサポッド25によって形成されて、整列させられていないストラットを用いたパラレル・メカニズムを形成する懸架装置と、ヘキサポッド取付け箇所26と、コネクタ取付け箇所27とを有する、直列コンプライアンス部を備える本発明の一実施形態の数学的モデルが示してある。この実施形態では、懸架装置が直列コンプライアンス部23によって作動装置取付け箇所に結合されていることが、図から明らかになる。理想的には、ストラットおよび直列コンプライアンス部の剛性およびプリロードは、差込み方向にコネクタに力を印加したとき、直列コンプライアンス部のストロークの半分を越えたときにのみ、ヘキサポッドのプリロードが超えられるように構成される。コネクタにかかる力が差込み方向に対してある角度であるとき、ヘキサポッドの個々のストラットのプリロードがその前に超えられてもよい。
【国際調査報告】