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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ペットフード組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/158 20160101AFI20231026BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20231026BHJP
【FI】
A23K20/158
A23K50/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523144
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021054460
(87)【国際公開番号】W WO2022081500
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/091,531
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】バドリ、ダヤカール
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエル、デニス
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA06
2B150AA06
2B150AB03
2B150AB10
2B150DA58
(57)【要約】
本明細書には、ペットフード組成物およびそれを使用するための方法が記載される。こうした組成物は、特定のオレイン酸のアラキドン酸に対する比率を含んでもよい。方法は、有効量のペットフード組成物をペットに給餌することを含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットフード組成物であって、
オレイン酸と、
アラキドン酸と、を含み、
オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約87.6以上である、ペットフード組成物。
【請求項2】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が、約87.6~約200:1である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約100:1~約200:1である、請求項1または請求項2に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約160:1~約190:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項5】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約172:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項6】
前記オレイン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約4~約12重量%、約4~約10重量%、または約4~約9重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項7】
前記アラキドン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.02~約1重量%、約0.02~約0.08重量%、または約0.02~約0.06重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項8】
前記組成物が一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項9】
前記オメガ3脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.1~約1重量%、約0.1~約0.8重量%、または約0.3~約0.8重量%の量で存在する、請求項8に記載のペットフード組成物。
【請求項10】
前記組成物が一つ以上のオメガ6脂肪酸をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
前記オメガ6脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約1~約10重量%、約1.5~約7重量%、または約2~約5重量%の量で存在する、請求項10に記載のペットフード組成物。
【請求項12】
オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率が、約1:5~約1:10、約1:6~約1:9、または約1:7~約1:9である、請求項8~11のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項13】
前記動物に、請求項1~12のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、イヌにおいて前記オレイン酸抱合代謝産物を増加させ、前記アラキドン酸抱合代謝産物を減少させる方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のペットフード組成物を前記動物に給餌することを含む、イヌの血清インターロイキン-8(IL-8)を減少させる方法。
【請求項15】
前記動物に、請求項1~12のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、イヌの前記腎臓組織におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを低減する方法。
【請求項16】
ペットフード組成物であって、
オレイン酸と、
アラキドン酸と、を含み、
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約38.0以上である、ペットフード組成物。
【請求項17】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約38:1~約60:1である、請求項16に記載のペットフード組成物。
【請求項18】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約43:1である、請求項16または請求項17に記載のペットフード組成物。
【請求項19】
前記オレイン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約2~約8重量%、約3~約7重量%、または約4~約6重量%の量で存在する、請求項16~18のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項20】
前記アラキドン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.05~約2重量%、約0.05%~約1重量%、または約0.07~約0.3重量%の量で存在する、請求項16~19のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項21】
前記組成物が一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含む、請求項16~20のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項22】
前記オメガ3脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.05~約1重量%、約0.0~約0.08重量%、または約0.05~約0.5重量%の量で存在する、請求項21に記載のペットフード組成物。
【請求項23】
前記組成物がオメガ6脂肪酸をさらに含む、請求項16~22のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項24】
前記オメガ6脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約1~約10重量%、約1.5~約5重量%、または約2%~約5重量%の量で存在する、請求項23に記載のペットフード組成物。
【請求項25】
前記オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率が、約10:1~約1:20、約1:12~約1:18、または約1:12~1:16である、請求項21~24のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項26】
前記動物に、請求項16~25のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、ネコにおいて前記オレイン酸抱合代謝産物を増加させ、前記アラキドン酸抱合代謝産物を減少させる方法。
【請求項27】
前記動物に、請求項16~25のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、ネコの前記腎臓組織におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/091,531号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
飼育動物の健康は、その給餌と密接に関係している。正しい給餌は、元気で健康なペットをもたらすはずである。正しい給餌を達成するために、動物に有益な効果をもたらす特定の成分およびそれら成分の濃度を利用しうる。こうした有益な効果には、炎症、腎臓障害、腎不全、心血管疾患、および/または高い尿中溶質濃度に対する保護が含まれ得る。
【0003】
腎臓病は、加齢につれてイヌでよく見られる。一部の獣医は、健康と疾患における腎障害と心血管系の間の相互作用を認識し、その結果、この概念を心血管腎障害(CvRD)と名付けた。
【0004】
アラキドン酸(AA)は、細胞膜脂質の主要成分であり、炎症反応を誘発する様々な代謝産物に変換され得る。(Wang T. et al., Int J Mol Sci., 2019, 20: 3683)。実際に、心筋線維化におけるAA代謝産物の関与を示す証拠が増えている(Levick SP et al., J Immunol., 2007, 178:641-46)。さらに、ラット血清中のオレイン酸濃度は、アラキドン酸の濃度と逆相関を有することが報告されている(Hostmark and Haug, Lipids in Health and Disease, 2013, 12:40)。
【0005】
インターロイキン8(IL-8)の血漿レベルの増加は、急性腎障害の病因に(Liangos et al., Nephron Clin Pract., 2009, 113:c148-C154)、また損傷された血管壁の炎症性微小環境の確立および保存において(Apostolakis S. et al., Cardiovasc Res., 2009, 84(3):353-60)潜在的に関与することが示されている。
【0006】
したがって、アラキドン酸の血清レベルの低下、IL-8レベルの低下、炎症の低下、および/または心血管腎障害に対する保護のうちの一つ以上に影響を与えうる、ペットフード組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
この概要は、本開示の一つ以上の実施のいくつかの態様の簡略化された概要を単に紹介することを意図するものである。本開示が適用可能であるさらなる領域は、本明細書で以下に提供される発明を実施するための形態から明らかになるであろう。この概要は、広範な概観ではなく、本教示の重要なまたは決定的な要素を特定することも意図しておらず、本開示の範囲を説明することも意図されていない。むしろ、その目的は、以下の詳細な説明の前置きとして、一つ以上の概念を簡略化された形式で提示することに過ぎない。
【0008】
出願人は、ペットフード内の特定の成分の利用が、効果的な健康上の利益をもたらすことを発見した。一態様では、健康上の利益は、動物の有益な代謝産物を増加させることであってもよい。別の態様では、健康上の利益は、動物の有害な代謝産物、インターロイキン、およびプロスタグランジンのうちの一つ以上を減少させることであってもよい。したがって、一実施形態では、本発明は、特定のオレイン酸のアラキドン酸に対する比率を含むペットフード組成物である。
【0009】
少なくとも一つの実施形態では、本発明は、オレイン酸(OA)およびアラキドン酸(AA)を含むペットフード組成物を対象とし、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率は約87.6:1以上である。特定の実施形態では、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率(OA:AA)は、約140:1~約200:1である。特定の実施形態では、OA:AAの比率は約172:1である。特定の実施形態では、オレイン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約4%~約12%、約4%~約10%、または約4%~約9%の量で存在する。特定の実施形態では、アラキドン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.02%~約1%、約0.02%~約0.08%、または約0.02%~約0.06%の量で存在する。特定の実施形態では、組成物は、一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.1%~約1%、約0.1%~約0.8%、または約0.3%~約0.8%の量で存在する。特定の実施形態では、組成物は、一つ以上のオメガ6脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態では、オメガ6脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1%~約10%、約1.5%~約7%、または約2%~約5%の量で存在する。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率は、約1:5~約1:10、約1:6~約1:9、または約1:7~約1:9である。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載のペットフード組成物を動物に給餌することを含む、イヌにおいてオレイン酸抱合代謝産物を増加させ、アラキドン酸抱合代謝産物を減少させるための方法を対象とする。特定の実施形態では、方法は、先行する実施形態のいずれかに記載されるペットフード組成物を動物に給餌することを含む。さらなる実施形態では、方法は、先行する実施形態のいずれか一つに記載されるペットフード組成物を動物に給餌することを含む、イヌの腎臓組織のプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを減少させることを対象とする。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、
オレイン酸(OA)とアラキドン酸(AA)を含み、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率が約38.0:1以上であるペットフード組成物を対象とする。特定の実施形態では、OA:AAの比率は約38:1~約60:1である。特定の実施形態では、OA:AAの比率は約43:1である。特定の実施形態では、オレイン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約2%~約8%、約3%~約7%、または約4%~約6%の量で存在する。特定の実施形態では、アラキドン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.05%~約2%、約0.05%~約1%、または約0.07%~約0.3%の量で存在する。特定の実施形態では、組成物は、一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.05%~約1%、約0.05%~約0.08%、または約0.05%~約0.5%の量で存在する。特定の実施形態では、組成物は、オメガ6脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態では、オメガ6脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1%~約10%、約1.5%~約5%、または約2%~約5%の量で存在する。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率は、約1:10~約1:20、約1:12~約1:18、または約1:12~約1:16である。さらなる実施形態では、本発明は、ネコにおいてオレイン酸抱合代謝産物を増加させ、アラキドン酸抱合代謝産物を減少させるための方法であって、本段落内の実施形態のいずれか一つに記載されるようなペットフード組成物を動物に給餌することを含む、方法である。特定の実施形態では、本発明は、ネコの腎臓組織におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを減少させる方法であり、本段落内の実施形態のいずれか一つに記載されるようなペットフード組成物を動物に給餌することを含む。
【0012】
本発明が適用可能であるさらなる領域は、以下に提供される発明を実施するための形態から明らかになるであろう。発明を実施するための形態および特定の実施例は、本発明の典型的な実施形態を示しているものの、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む時によりよく理解されるであろう。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の厳密な配置および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0014】
図1図1は、イヌ血清から採取されたオレイン酸(OA)およびアラキドン酸(AA)抱合代謝産物の比較を示すグラフを示す。
【0015】
図2図2は、ネコ血清から採取されたオレイン酸(OA)およびアラキドン酸(AA)抱合代謝産物の比較を示すグラフを示す。
【0016】
図3図3は、アラキドン酸と機能不全および負傷との関係、ならびに心血管リスク(CVリスク)との関係を示すモデルを示す。
【0017】
図4図4は、アラキドン酸からのエイコサノイド生合成経路を示す。
【0018】
図5図5は、イヌ由来の血清オレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物のMANOVA分析を示す。
【0019】
図6図6は、イヌ血清のオレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物の存在量を示す。
【0020】
図7図7は、ネコ由来の血清オレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物のMANOVA分析を示す。
【0021】
図8図8は、ネコ血清オレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物の存在量を示す。
【0022】
図9図9は、イヌ由来のサイトカインIL-8の血清レベルを示す。
【0023】
図10図10は、炎症と関連疾患に対するOA:AAの比率が高い食物の食物摂取量との関係を示す仮説上の機序を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な目的のために、その様々な例示的な実施形態を参照することによって、本発明の原理が記述される。本発明のある特定の実施形態が本明細書に具体的に記述されているものの、当業者であれば、同じ原理が他の用途および方法に対して等しく適用可能であり、かつ他の用途および方法において採用されることができることを容易に認識するであろう。本発明が、その用途において、示された任意の特定の実施形態の詳細に限定されないことが理解される。本明細書で使用される用語は、記述の目的のためのものであり、本発明、その用途、または使用を限定しない。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって別途規定されない限り、複数の参照を含む。成分の任意のクラスの単数形は、そのクラス内の一つの化学種だけでなく、それらの化学種の混合物も指す。「一つの(a)」(または「一つの(an)」)、「一つ以上の」および「少なくとも一つの」という用語は本明細書において、互換的に使用されてもよい。「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」および「有する(having)」という用語は、互換的に使用されてもよい。「含む(include)」という用語は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。「含む(including)」という用語は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0026】
全体を通して使用されている通り、範囲は、その範囲内にある各値およびすべての値を示すための省略表現として使用される。範囲内の任意の値を、その範囲の末端として選択することができる。
【0027】
別段の特定のない限り、本明細書において、および本明細書のどこか他の箇所で表現される割合および量はすべて、全組成物の重量割合を指すものと理解されるべきである。「重量%」で存在する分子、または複数の分子への言及は、組成物の総重量に基づいて、組成物中に存在するその分子、または複数の分子の量を指す。
【0028】
本出願によると、数値に伴う「約」という用語の使用は、その数字の+/-5%であってもよい値を指す。本明細書で使用される場合、「実質的に無い(substantially free)」という用語は、組成物の約5.0重量%未満、3.0重量%未満、1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.25重量%未満の量を意味することを意図する。
【0029】
別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用または参照されるすべての特許、特許出願、刊行物、他の参考文献は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。本開示における定義と、引用された参照文献における定義に矛盾がある場合、本開示が支配する。
【0030】
本開示は、ペットフード組成物、およびこうしたペットフード組成物を家庭用ペットの治療のために使用する方法を対象とする。特定の実施形態では、ペットはイヌである。他の実施形態では、ペットはネコである。
【0031】
本発明者らは、驚くべきことに、また予想外にも、オレイン酸とアラキドン酸の比率が高いペットフード食餌を動物に提供することが、動物の健康上の利益の向上をもたらすことを発見した。こうした健康上の利益の向上は、多数の態様によって例示されうる。第一の態様では、健康上の利益の向上は、健康に関連するバイオマーカーの増加のための相乗効果である。本明細書に記載される動物組成物を給餌することによって、発明者らは、特定のバイオマーカーの変化の総和の平均と、利用されるOA:AAの比率との間の統計的に有意な線形関係を観察した。この関係は、オレイン酸含有代謝産物の総和を測定し、様々な食品組成物を与えられたコンパニオンアニマル中の代謝産物を含有するアラキドン酸の総和と比較することによって観察された。理論に拘束されるものではないが、代謝産物を含有するアラキドン酸の量の増加は炎症促進効果を生じさせ、一方で、代謝産物を含有するオレイン酸の量の増加は炎症性がより低いことが理解される。
【0032】
したがって、一態様では、本開示は、互いに対して特定の比率でオレイン酸とアラキドン酸を含むペットフード組成物を提供する。イヌにおいて、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率は約87.6以上であってもよい。ネコにおいて、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率は約38.0以上であってもよい。本明細書で使用される重量比は、質量分率として表されてもよい。例えば、オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比38.0:1は、38の質量分率として表されてもよい。同様に、オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比87.6:1は、87.6の質量分率として表されてもよい。特定の実施形態では、ペットフードは乾燥形態である。特定の実施形態では、ペットフードは湿潤形態である。
【0033】
ペットフード組成物は、オレイン酸(OA)とアラキドン酸(AA)を特定の比率で含む。例えば、イヌについての一部の実施形態では、ペットフード組成物は、約87.6:1~約200:1、約87.6:1~約180:1、約87.6:1~約160:1、約87.6:1~約150:1、約87.6:1~約140:1、約87.6:1~約130:1、約87.6:1~約120:1、約87.6:1~約110:1、約87.6:1~約100:1、約100:1~約200:1、約100:1~約180:1、約100:1~約160:1、約100:1~約150:1、約100:1~約140:1、約100:1~約130:1、約100:1~約120:1、約100:1~約110:1、約120:1~約200:1、約120:1~約180:1、約120:1~約160:1、約120:1~約150:1、約120:1~約140:1、約120:1~約130:1、約130:1~約200:1、約130:1~約180:1、約130:1~約160:1、約130:1~約150:1、約130:1~約140:1、約140:1~約200:1、 約140:1~約180:1、約130:1~約160:1、約130:1~約150:1、約130:1~約140:1、約140:1~約200:1、約140:1~約180:1、約140:1~約160:1、または約140:1~約150:1、約150:1~約200:1、約150:1~約180:1、約150:1~約160:1、約160:1~約200:1、約160:1~約180:1、約170:1~約200:1、約170:1~約180:1、約180:1~約200:1、または約190:1~約200:1(それらの間の任意の範囲もしくは部分範囲を含む)からのオレイン酸のアラキドン酸に対する重量比を有してもよい。ネコについての一部の実施形態では、ペットフード組成物は、約38:1~約150:1、約38:1~約125:1、約38:1~約100:1、約38:1~約80:1、約38:1~約70:1、約38:1~約60:1、約38:1~約50:1、約50:1~約150:1、約50:1~約125:1、約50:1~約100:1、約50:1~約80:1、約50:1~約70:1、約50:1~約60:1、約60:1~約150:1、約60:1~約125:1、約60:1~約100:1、約60:1~約80:1、約60:1~約70:1、約70:1~約150:1、約70:1~約125:1、約70:1~約100:1、約70:1~約80:1、約80:1~約150:1、約80:1~約125:1、約80:1~約100:1、約90:1~約150:1、約90:1~約125:1、約90:1~約100:1、約100:1~約150:1、約100:1~約125:1、約110:1~約150:1、約110:1~約125:1、約120:1~約150:1、約130:1~約150:1、または約140:1~約150:1からのオレイン酸のアラキドン酸に対する重量比(それらの間の任意の範囲もしくは部分範囲を含む)を有してもよい。
【0034】
特定の実施形態では、OA:AAの比率は約140:1~約200:1である。別の実施形態では、オレイン酸のアラキドン酸に対する比率(OA:AA)は、約172:1である。特定の実施形態では、OA:AAの比率は、約160:1~約200:1、約160:1~約195:1、約165:1~約190:1、または約170:1~約185:1である。さらなる実施形態では、OA:AAの比率は約172.2である。別の実施形態では、OA:AAの比率は約38:1~約60:1、または約43:1である。
【0035】
オレイン酸は、様々な量または濃度で存在し得る。一実施形態では、オレイン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約4%~約12%の量で存在してもよい。例えば、オレイン酸は、約4.0重量%、約4.2重量%、約4.6重量%、約4.8重量%、約5.0重量%、約5.2重量%、約5.4重量%、約5.6重量%、約5.8重量%、約6.0重量%、約6.2重量%、約6.5重量%、約6.8重量%、約7.0重量%、約7.25重量%、約7.5重量%、約7.75重量%、約8.0重量%、約8.25重量%、約8.5重量%、約8.75重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、約11.0重量%、約11.5重量%、約12.0重量%、約12.5重量%、約13.0重量%、約13.5重量%または約14.0重量%の量で存在してもよい。別の実施例では、オレイン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約4%~約10%、約4%~約9.5%、または約4%~約9%の量で存在してもよい。さらなる実施形態では、オレイン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約2%~約8%、約3%~約7%、または約4%~約6%の量で存在する。
【0036】
アラキドン酸は、様々な量または濃度で存在し得る。一実施形態では、アラキドン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.02%~約1%の量で存在してもよい。例えば、アラキドン酸は、約0.02重量%、約0.04重量%、約0.06重量%、約0.08重量%、約0.1重量%、約0.12重量%、約0.14重量%、約0.16重量%、約0.18重量%、約0.2重量%、約0.22重量%、約0.24重量%、約0.26重量%、約0.28重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、約0.5重量%、約0.55重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、または約1.0重量%の量で存在してもよい。別の実施例では、アラキドン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.02%~約0.08%、約0.02%~約0.06%、または約0.02%~約0.04%の量で存在してもよい。さらなる実施形態では、アラキドン酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.05%~約2%、約0.05%~約1%、または約0.07%~約0.3%の量で存在する。
【0037】
特定の実施形態では、ペットフードは、一つ以上のオメガ-3脂肪酸をさらに含む。オメガ3脂肪酸は、様々な量または濃度で存在し得る。一実施形態では、オメガ3脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.1%~約1%の量で存在し得る。例えば、オメガ3脂肪酸は、約0.1重量%、約0.125重量%、約0.15重量%、約0.175重量%、約0.2重量%、約0.225重量%、約0.25重量%、約0.275重量%、約0.3重量%、約0.325重量%、約0.35重量%、約0.375重量%、約0.4重量%、約0.425重量%、約0.45重量%、約0.475重量%、約0.5重量%、約0.525重量%、約0.55重量%、約0.575重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、または約1.0重量%の量で存在してもよい。別の実施例では、オメガ3脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.1%~約0.8%、または約0.1%~約0.6%の量で存在してもよい。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約0.05%~約1%、約0.05%~約0.08%、または約0.05%~約0.5%の量で存在する。
【0038】
特定の実施形態では、ペットフードは、一つ以上のオメガ6脂肪酸をさらに含む。オメガ6脂肪酸は、様々な量または濃度で存在し得る。一実施形態では、オメガ6脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1%~約10%の量で存在してもよい。例えば、オメガ6脂肪酸は、約1重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約6.5重量%、約7重量%、約7.5重量%、約8重量%、約8.5重量%、9重量%、9.5重量%、または約10重量%の量で存在してもよい。別の実施例では、オメガ6脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1.5%~約7%、約2%~約7%、または約2%~約5%の量で存在してもよい。特定の実施形態では、オメガ6脂肪酸は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1%~約10%、約1.5%~約5%、または約2%~約5%の量で存在する。
【0039】
一実施形態では、オメガ3脂肪酸(複数可)のオメガ6脂肪酸(複数可)に対する比率は、変化してもよい。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸(複数可)のオメガ6脂肪酸(複数可)に対する比率は、約1:5~約1:10、約1:6~約1:9、または約1:7~約1:9である。その他の実施形態では、オメガ3脂肪酸(複数可)のオメガ6脂肪酸(複数可)に対する比率は、約1:8である。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率は、約1:10~約1:20、約1:12~約1:18、または約1:12~約1:16である。
【0040】
一部の実施形態では、ペットフード組成物は、一つ以上の追加の脂肪酸(複数可)を含んでもよい。一つ以上の脂肪酸は、10~50個の全炭素原子、10~40個の全炭素原子、または10~30個の全炭素原子を有する脂肪酸から選択されることが好ましい。一部の実施形態では、ペットフード組成物は、10~30個、12~28個、14~26個、16~24個、16~22個、または16~20個の炭素原子の総数を有する。多価不飽和脂肪酸から選択される一つ以上の脂肪酸。少なくとも一つの実施形態では、組成物は、合計18個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸を含む。
【0041】
脂肪酸は、植物源に由来してもよい。脂肪酸を引き出す、または得るための植物源の例としては、例えば亜麻仁、藻類、アボカド、麻の実、カボチャの種、ヒマワリの種、クルミ、大豆、またはそれらの二つ以上の組み合わせが挙げられる。しかしながら、一部の実施形態では、脂肪酸は、動物源に由来するか、または合成される。
【0042】
追加の脂肪酸(複数可)は、リノレン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、リノールエライジン酸、セルボン酸、ドコサテトラエン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、エライジン酸、ゴンド酸、エルカ酸、ネルボン酸、ミード酸、またはそれらの二種以上の組み合わせから成ってもよい。一部の実施例では、追加の脂肪酸は、バクセン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノールエライジン酸、リノール酸、ステアリドン酸、またはそれらの二種以上の組み合わせを含む。ペットフード組成物は、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、およびそれらの組み合わせから選択されるリノール酸を含んでもよい。
【0043】
ペットフード組成物は、組成物の総重量に基づき、約0.5~約20重量%の追加の脂肪酸(複数可)の量を有してもよい。例えば、組成物は、組成物の乾燥重量に基づいて、約0.5~約20重量%、約0.5~約15重量%、約0.5~約10重量%、約0.5~約8重量%、約0.5~約6重量%、約0.5~約5重量%、約0.5~約4重量%、約0.5~約3重量%、約1~約20重量%、約1~約15重量%、約1~約10重量%、約1~約8重量%、約1~約6重量%、約1~約5重量%、約1~約4重量%、約1~約3重量%、約1.5~約20重量%、約1.5~約15重量%、約1.5~約10重量%、約1.5~約8重量%、約1.5~約6重量%、約1.5~約5重量%、約1.5~約4重量%、約1.5~約3重量%、約2~約20重量%、約2~約15重量%、約2~約10重量%、約2~約8重量%、約2~約6重量%、約2~約5重量%、約2~約4重量%、約2~約3重量%、約2.5~約20重量%、約2.5~約15重量%、約2.5~約10重量%、約2.5~約8重量%、約2.5~約6重量%、約2.5~約5重量%、約2.5~約4重量%、約3~約20重量%、約3~約15重量%、約3~約10重量%、約3~約8重量%、約3~約6重量%、約3~約5重量%、または約3~約4重量%(そのすべての範囲および部分範囲を含む)の量の一つ以上の脂肪酸を含みうる。
【0044】
本発明の組成物は、任意的に、ペットフード組成物での使用に適した追加の成分を含んでもよい。こうした成分の例としては、タンパク質、脂肪、炭水化物、食物繊維、アミノ酸、ミネラル、微量元素、ビタミン、添加剤が挙げられるがこれに限定されない。
【0045】
食物繊維とは、動物の消化酵素による消化に耐性を有する植物の構成要素を指す。食物繊維としては、可溶性繊維および不溶性繊維が挙げられる。可溶性繊維は、小腸での消化および吸収に対して耐性があり、かつ、大腸で完全にまたは部分的に発酵されるものであり、例えばビートパルプ、グアーガム、チコリー根、オオバコ、ペクチン、ブルーベリー、クランベリー、カボチャ、リンゴ、オート麦、マメ、柑橘類、大麦、またはエンドウである。不溶性繊維は、例えばセルロース、全粒小麦製品、小麦オート麦(wheat oat)、コーンブラン、亜麻仁、ブドウ、セロリ、サヤインゲン、カリフラワー、ジャガイモの皮、果物の皮、野菜の皮、落花生殻、および大豆繊維を含む、任意の様々な原料源から供給されることができる。粗繊維としては、例えば米、トウモロコシ、およびマメなどの穀物の殻である、穀物などの植物の細胞壁および細胞含有物に含有される消化されにくい成分が挙げられる。本開示の組成物中の典型的な繊維量は、約0~10%、または約1%~約5%とすることができる。
【0046】
全食物繊維は、様々な量または濃度で存在しうる。一実施形態では、全食物繊維は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約20%未満の量で存在しうる。ある特定の実施形態では、全食物繊維は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1%~約20%の量で存在する。例えば、全食物繊維は、約1重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%~約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%またはその間の範囲の量で存在し得る。別の実施例では、全食物繊維は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約1~約10重量%、約2~約8重量%、約3~約8重量%、約4~約7重量%、約4~約6重量%、または約5~約6重量%の量(それらの間の任意の範囲もしくは部分範囲を含む)で存在してもよい。
【0047】
必須アミノ酸を含むアミノ酸は、遊離アミノ酸として本開示の組成物に添加されることができ、または任意の数の原料源(例えば粗タンパク質)によって本開示の組成物に供給されることができる。必須アミノ酸は、新規に合成できない、または生命体により不十分な量しか合成できないアミノ酸であり、それ故に食餌内に供給されなければならない。必須アミノ酸は、生命体の代謝に依存して、種ごとに異なる。例えば、イヌおよびネコ(ならびにヒト)の必須アミノ酸はフェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニンであることが一般的に理解されている。加えて、タウリンは、専門的にはアミノ酸ではなくシステインの誘導体であるが、ネコにとっての必須栄養素である。
【0048】
組成物は、様々な量または濃度でのタンパク質を含んでもよい。一実施形態では、タンパク質は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約20%~約45%の量で存在しうる。例えば、タンパク質は、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、または約45重量%の量で存在しうる。別の実施例では、タンパク質は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約25%~約40%、約30%~約40%、または約30%~約35%の量で存在しうる。ある特定の実施形態では、タンパク質は、ペットフード組成物の乾燥重量に基づいて、約20%~約35%、約25%~約35%、または約28%~約35%の量で存在する。
【0049】
ペットフード組成物は、タンパク質および/または可消化粗タンパク質を含んでもよい。「可消化粗タンパク質」は、胃の酵素で消化した後、利用可能な、または遊離窒素(アミノ酸)へと変換されることができるタンパク質の一部分である。可消化粗タンパク質のインビトロ測定は、ペプシンなどの胃の酵素を使用することと、試料を消化することと、消化後に遊離アミノ酸を測定することとによって達成されてもよい。可消化粗タンパク質のインビボ測定は、飼料/フード試料中のタンパク質レベルを測定することと、試料を動物に給餌することと、動物の糞便中で収集される窒素の量を測定することとによって達成されてもよい。
【0050】
組成物中のタンパク質の一部分は、可消化タンパク質であってもよい。例えば、組成物は、タンパク質の約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、または約90重量%以上が可消化タンパク質である、タンパク質の量を含んでもよい。一部の実施形態では、例えば望ましい組成物が体重減少を促進する時、可消化タンパク質であるタンパク質の一部分は、組成物中のタンパク質の総量に基づいて、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、または約10重量%以下である。さらなる実施形態では、可消化タンパク質であるタンパク質の量は、組成物中のタンパク質の総量に基づいて、約10~約90重量%、約10~約70重量%、約10~約50重量%、約10~約30重量%、約20~約90重量%、約20~約70重量%、約20~約50重量%、約20~約40重量%、約20~約30重量%、約20~約25重量%、約23~約90重量%、約23~約70重量%、約23~約50重量%、約23~約40重量%、約23~約30重量%、または約23~約25重量%(その範囲および部分範囲を含む)である。
【0051】
本発明の組成物は随意に、脂質を含んでもよい。「脂質」という用語は一般的に、通常の室温(例えば、25℃)および圧力(例えば、1気圧)にて概して固体または液体であってもよい脂質または脂質の混合物を指す。一部の場合において、脂質は、標準室温および標準圧力にて粘性液体または非結晶性固体であってもよい。脂質は、肉、食肉副産物、キャノーラ油、魚油、および植物を含む、当業者に知られている様々な原料源のいずれかによって供給されることができる。植物性脂肪源としては、小麦、亜麻仁、ライ麦、大麦、米、モロコシ、トウモロコシ、オート麦、粟、コムギ胚芽、トウモロコシ胚芽、大豆、落花生、および綿実、ならびにこれらおよび他の植物性脂肪源由来の油が挙げられる。本開示の組成物は、少なくとも約9%(または約9%~約35%、もしくは約10%~約25%、もしくは約15%~約22%)の総脂質を含有し得る。
【0052】
一部の場合において、ペットフード組成物中の脂肪は粗脂質である。粗脂質は、組成物の総重量に基づいて、約10~約20重量%、約10~約18重量%、約10~約16重量%、約12~約20重量%、約12~約18重量%、約12~約16重量%、約12~約14重量%、または約12~約13重量%の量でペットフード組成物の中に含まれてもよい。一部の場合において、総脂質の約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、または約90重量%以上が動物源から得られることが好ましい場合がある。代替的に、総脂質の約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、または約90重量%以上が植物源から得られてもよい。
【0053】
炭水化物は、オート麦繊維、セルロース、落花生殻、ビートパルプ、パーボイルド米、コーンスターチ、コーングルテンミール、およびこれら原料源の任意の組み合わせを含む、当業者に知られている任意の様々な原料源から供給されることができる。炭水化物を供給する穀物としては、小麦、トウモロコシ、大麦、および米を挙げることができるが、これらに限定されない。食品の炭水化物含有量は、当業者に知られている任意の数の方法によって決定されることができる。一般的に、炭水化物の割合は、可溶無窒素物(「NFE」)として計算されることができ、これは以下のように計算されることができる。NFE=100%-水分%-タンパク質%-脂質%-灰分%-粗繊維%。組成物中に存在する炭水化物の量、例えば、NFEとして計算される量は、組成物の総重量に基づいて、約10~約90重量%、約10~約70重量%、約10~約50重量%、約10~約40重量%、約10~約30重量%、約10~約20重量%、約20~約90重量%、約20~約70重量%、約20~約50重量%、約20~約40重量%、約30~約90重量%、約30~約70重量%、約30~約50重量%、約30~約40重量%、約40~約90重量%、約40~約70重量%、または約40~約60重量%でありうる。
【0054】
本開示の組成物はまた、例えば塩化物、ヨウ化物、フッ化物、硫化物、もしくは酸化物などの、対イオンを有する、一つ以上のミネラルおよび/または微量元素、例えば、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、クロム、モリブデン、セレン、または鉄塩類を、欠乏を回避しかつ健康を維持するために必要とされる量で、含有することもできる。これらの量は、例えばOfficial Publication of the Associate of American Feed Control Officials, Inc. (”AAFCO”), Nutrient Requirements of Dogs and Cats, 2006で提供されているように、当業者に公知である。典型的なミネラルの量は、約0.1%~約4%、または約1%~約2%である。
【0055】
本発明の組成物はまた、欠乏を回避しかつ健康を維持するために必要とされる量で、ビタミンを含むことができる。これらの量および測定方法は当業者に知られている。例えば、Official Publication of the Associate of American Feed Control Officials, Inc. (”AAFCO”), Nutrient Requirements of Dogs and Cats, 2006において、イヌおよびネコのためのかかる成分の推奨量を提供している。本明細書で企図される通り、ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンK、葉酸、コリン、イノシトール、ナイアシン、パントテン酸を挙げることができるがこれらに限定されない。本発明の組成物中の典型的なビタミンの量は、約0~約3%、または約1%~約2%である。
【0056】
本開示の組成物は、食味強化剤および安定剤などの他の添加物を、当業者によく知られている量および組み合わせで追加的に含むことができる。安定化物質としては、例えば組成物の貯蔵寿命を増加させる傾向にある物質が挙げられる。本発明の組成物中に含めるために潜在的に適切である他のこうした添加物の他の例としては、例えば防腐剤、着色剤、抗酸化剤、風味剤、協力剤および捕捉剤、包装ガス、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、湿潤剤が挙げられる。乳化剤および/または増粘剤の例としては、例えば、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、および加工デンプンが挙げられる。組成物中のこうした添加物の濃度は典型的に、最大約5重量%とすることができる。一部の実施形態では、こうした添加物の濃度(特に、こうした添加物が主に栄養バランス剤(ビタミンおよびミネラルなど)である場合)は、約0重量%~約2.0重量%である。一部の実施形態では、こうした添加物の濃度(この場合も特に、こうした添加物が主に栄養バランス剤である場合)は、約0重量%~約1.0重量%である。
【0057】
任意の堅さまたは含水量の食品が企図されていて、例えば本発明の組成物は、例えばドライ、モイスト、またはセミモイストの動物用食品組成物とすることができる。一部の実施形態では、含水量は、組成物の総重量の約3%~約90%である。「セミモイスト」は、約25~約35%の水分を含有する食品組成物を指す。「モイスト」食品は、約60~90%以上の含水量を有する食品組成物を指す。「ドライ」フードは、約3~約11%の含水量を有する食品組成物を指し、多くの場合、小片またはキブル(kibble)の形態で製造される。
【0058】
ある特定の態様において、本出願は、本開示の組成物のいずれかを作製する方法をさらに開示する。ウェット形態または缶詰形態での本発明の組成物の調製において、任意の原料(例えば、望ましいOA:AAの比)は一般的に例えば、配合物の加工中、例えば組成物の他の構成成分の混合中および/または混合後などに組成物の中に組み込まれることができる。これらの構成成分の組成物への分配は、従来の手段によって達成されることができる。一部の実施形態では、粉砕した動物タンパク性組織および家禽タンパク性組織は、魚油、穀物粒、他の栄養的にバランスをとる成分、特殊目的の添加物を含む他の成分(例えば、ビタミンおよびミネラル混合物、無機塩、セルロースおよびビートパルプ、増量剤、ならびにこれに類するもの)と混合されていて、また加工のために十分な量の水が添加されている。これらの成分は、構成成分をブレンドしながら加熱するために適切な容器内で混合されることができる。例えば、直接蒸気注入によって、または熱交換器を備えた容器を使用することによってなど、任意の適切なやり方を使用して、混合物の加熱を行うことができる。最後の成分の添加に続いて、混合物を約50°F(10℃)~約212°F(100℃)の温度範囲に加熱することができる。一部の場合において、混合物を約70°F(21℃)~約140°F(60℃)の温度範囲に加熱することができる。これら範囲の外の温度は、一般的に許容可能であるが、他の加工助剤を使用しなければ商業的に非実用的である場合がある。適切な温度に加熱されると、材料は典型的に、濃厚液の形態になるであろう。この濃厚液は缶の中に充填されることができる。缶の中に充填されると、蓋が付けられ、容器は気密密封される。次いで、密封した缶は、内容物を滅菌するために設計された従来の機器の中に定置される。これは通常、約230°F(110℃)を超える温度に、適切な時間にわたって加熱することによって達成され、この時間は例えば、使用する温度、および組成物に依存する。
【0059】
ペットフード組成物は代替的に、従来のプロセスを使用して、乾燥形態で調製されることができる。典型的に、例えば動物性タンパク質、植物性タンパク質、穀物などを含む乾燥成分は粉砕され、一緒に混合される。次いで、脂質、油、動物性タンパク質、水などを含む、湿った成分または液体成分を乾燥混合物に加え、その乾燥混合物と混合する。次いで、混合物をキブルまたは類似の乾燥片へと加工する。キブルは多くの場合、乾燥成分とウェット成分との混合物に高圧および高温にて機械作業を施し、次いで小さい開口部を通して押し出し、回転ナイフによってキブルへと切断される、押出成形プロセスを使用して形成される。次いで、ウェットキブルを乾燥させ、例えば風味剤、脂質、油、粉末、およびこれに類するものを含んでもよい、一つ以上の局所的なコーティングを用いて随意にコーティングする。キブルはまた、押出成形ではなく焼き上げるプロセスを使用してドウから作製されることができ、このプロセスにおいてドウは型の中に定置された後、乾燥加熱処理される。
【0060】
別の態様では、本開示は、動物の有益な代謝産物バイオマーカーを増加させるのに有効な量で、本明細書に記載されたペットフード組成物を動物に給餌することを含む、イヌまたはネコの特定の代謝産物を増加させるための方法を提供する。好ましい実施形態では、有益な代謝産物バイオマーカーのこのような増加は、指定された成分のうちの一つ以上が存在しないか、または所望の比で存在しない条件下で発生する場合よりも大きい。好ましい実施形態では、有益な代謝産物バイオマーカーは、オレイン酸抱合代謝産物である。
【0061】
特定の実施形態では、本開示は、動物の代謝産物バイオマーカーを減少させるのに有効な量で、本明細書に記載されたペットフード組成物を動物に給餌することを含む、イヌまたはネコの特定の代謝産物を減少させるための方法を提供する。好ましい実施形態では、代謝産物バイオマーカーのこのような減少は、指定された成分のうちの一つ以上が存在しないか、または所望の比で存在しない条件下で発生する場合よりも大きい。好ましい実施形態では、代謝産物バイオマーカーは、アラキドン酸抱合代謝産物である。
【0062】
特定の実施形態では、本開示は、動物のサイトカインを減少させるのに有効な量で、本明細書に記載されたペットフード組成物を動物に給餌することを含む、動物の特定のサイトカインを減少させるための方法を提供する。好ましい実施形態では、サイトカインのこのような減少は、指定された成分のうちの一つ以上が存在しないか、または所望の比で存在しない条件下で発生する場合よりも大きい。好ましい実施形態では、サイトカインは、インターロイキン-8(IL-8)である。
【0063】
特定の実施形態では、本開示は、動物のサイトカインを減少させるのに有効な量で、本明細書に記載されたペットフード組成物を動物に給餌することを含む、動物の特定のプロスタグランジンを減少させるための方法を提供する。好ましい実施形態では、プロスタグランジンのこのような減少は、指定された成分のうちの一つ以上が存在しないか、または所望の比で存在しない条件下で発生する場合よりも大きい。好ましい実施形態では、プロスタグランジンはプロスタグランジンE2(PGE2)である。
【0064】
図1は、イヌの血清から採取された様々な代謝産物の比較を示す。「S」は、対応のあるt検定によって決定される食餌の比較間の有意性(P<0.05)を示し、一方で「NS」は、非有意性を示す。
【0065】
図2は、イヌの血清から採取された様々な代謝産物の比較を示す。「S」は、対応のあるt検定によって決定される食餌の比較間の有意性(P<0.05)を示し、一方で「NS」は、非有意性を示す。
【0066】
図3は、アラキドン酸と機能不全および負傷との関係、ならびに心血管リスク(CVリスク)との関係を示すモデルを示す。
【0067】
図4は、アラキドン酸からのエイコサノイド生合成経路を示す。
【0068】
図5は、イヌ由来血清のオレイン酸およびアラキドン酸の共役脂肪酸のMANOVA分析を示す。
【0069】
図6は、イヌ血清のオレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物の存在量を示す。これらの値は、特定の時点における特定の代謝産物の平均値(図6に列挙)の総和である変数を作成することによって決定された。
【0070】
図7は、ネコ由来血清のオレイン酸およびアラキドン酸の共役脂肪酸のMANOVA分析を示す。
【0071】
図8は、ネコ血清オレイン酸およびアラキドン酸の抱合代謝産物の存在量を示す。これらの値は、特定の時点における特定の代謝産物の平均値(図8に列挙)の総和である変数を作成することによって決定された。
【0072】
図9は、対照または実験組成物のいずれかを与えられたイヌの血清からのサイトカインレベルを示す。
【0073】
図10は、オレイン酸を多く含む食餌が、コンパニオンアニマルの腎機能不全および心血管リスクを減少させるメカニズムを示す。
【実施例
【0074】
本明細書に記載の実施例および他の実施は例示的であり、本開示の組成物および方法の全範囲の記述に限定することを意図しない。特定の実施、材料、組成物、および方法の同等の変更、修正、および変形は、実質的に類似の結果を伴って、本開示の範囲内で行われうる。
【0075】
(実施例1)
10.4~12.9歳、体重6.9~13.3kgの、卵巣摘出または去勢手術を受けた健康なイヌ24匹に、鶏肉、小麦、大麦、モロコシ、トウモロコシ、コーングルテンミール、鶏肉粉、豚肉脂肪、ビートパルプ、大豆油、ビタミンおよびミネラルを含む対照食を給餌前段階に4週間与え、次いで二群のうちの一つに分けた。第1段階では、第1群に対照食を与え、第2群に試験食(組成物1)を8週間与えた。(詳細な組成物については表1を参照)。次に、すべてのイヌに維持食を再度4週間給餌することによって、ウォッシュアウト期間を実施した。その後、第2段階では、第1群に試験食を与え、第2群に対照食を8週間与えた。各工程(例えば、給餌前、第1段階、ウォッシュアウト、第2段階)の終了時に血液/血清試料を採取し、さらなる解析まで-80℃で保存した。
【表1】
【0076】
非標的メタボロミクス分析を、各イヌから採取した凍結血清試料で実施した。簡潔に述べると、血清試料をメタノールで分離し、得られた抽出物を5つのアリコートに分割して、Metabolon Inc.(ノースカロライナ州モリスビル)によって確立された4つの異なるプラットフォームで分析した。血清代謝産物およびサイトカイン解析については、デルタ(治療-ベースライン)値を算出した。これらの値は、特定の時点における特定の代謝産物の平均値(図6図8に列挙)の総和である変数を作成することによって決定された。例えば、治療終了時に特定の動物から採取された試料を、給餌前(ベースライン)の終了時に同じ動物から採取された試料で差し引いた。JMP Pro v14.0(SAS、ノースカロライナ州カリー)を使用して、統計解析を実施した。
【0077】
図1は、抱合代謝産物の結果の比較を示す。「S」は、対応のあるt検定による食餌比較間の有意性(P<0.05)を示す。「NS」は、対応のあるt検定による食餌比較間の非有意性を示す。
【0078】
オレイン酸のアラキドン酸に対する異なる比率(以下、「OA:AA」)は、オレイン酸(以下「OA」)およびアラキドン酸(以下「AA」)代謝産物を含む脂質クラスにわたり有意差をもたらした。これらの代謝産物、またはバイオマーカーは、炎症シグナルの減少を示す。炎症は、感染または傷害に応答する際の免疫系の必須要素として知られている。しかしながら、炎症反応は典型的には一過性であり、状況により慢性炎症がもたらされる場合は生物学的過剰であり、これは一般的な慢性疾患の範囲の病因における重要な要因である。本発明の組成物は、炎症の減少に関連する脂肪酸部分の変化をもたらした。例えば、OA:AA比率172.2を有する組成物1は、AA抱合代謝産物と比較して、血清OA抱合代謝産物の有意な増加を示した(図1、5、6を参照)。例えば、OA:AA比率64.8を有する対照食は、OA抱合代謝産物と比較して、AA抱合代謝産物の有意な増加を示した(図1、5、6を参照)。しかしながら、OA:AA比率87.60を有する組成物2は、OA抱合代謝産物とAA抱合代謝産物の間に有意差を示さなかった(図1、5、6を参照)。これらの結果は、OA:AA比率が87.60より大きいと血清AA抱合代謝産物が減少し、87.60未満の比率は血清AA抱合代謝産物を増加させることを示唆する。
【0079】
(実施例2)
1.2歳~8.5歳、体重9.1~13.6kgの、卵巣摘出または去勢手術を受けた健康なイヌ12匹に、対照食を給餌前段階に4週間与え(実施例1と同じ)、その後、治療段階に4週間、イヌに組成物2を与えた(詳細な組成物については表1を参照)。給餌前段階および治療段階の終了時に血液/血清試料を採取し、さらなる解析まで-80℃で保存した。
【0080】
非標的メタボロミクス分析を、各イヌから採取した凍結血清試料で実施した。簡潔に述べると、血清試料をメタノールで分離し、得られた抽出物を5つのアリコートに分割して、Metabolon Inc.(ノースカロライナ州モリスビル)によって確立された4つの異なるプラットフォームで分析した。血清代謝産物およびサイトカイン解析については、デルタ(治療-ベースライン)値を算出した。例えば、治療終了時に特定のイヌまたはネコから採取された試料を給餌前(ベースライン)の終了時に、同じイヌまたはネコから採取された試料で差し引いた。JMP Pro v14.0(SAS、ノースカロライナ州カリー)を使用して、統計解析を実施した。
【0081】
結果は、組成物2および組成物1が、対照食と比較して、血漿インターロイキン8(IL-8)発現レベルを有意に減少させることを示す(図9)。血漿IL-8の増加は、急性腎障害の病因に(Liangos et al., Nephron Clin Pract., 2009, 113:c148-C154)、また損傷された血管壁の炎症性微小環境の確立および保存に(Apostolakis S. et al., Cardiovasc Res., 2009, 84(3):353-60)潜在的に関与することが示されている。したがって、これらの結果は、87.60:1以上のOA:AA比率が抗炎症効果を有することを示唆する。
【0082】
(実施例3)
2.1~8.9歳、体重3.5~7.5kgの、卵巣摘出または去勢手術を受けた健康なネコ30匹に、鶏肉、小麦、コーングルテンミール、豚肉脂肪、鶏肉粉、ビートパルプ、米、大豆油、ビタミンおよびミネラルを含む対照食を給餌前段階に4週間与え、次いで6つの群に分けた。治療段階は、3つの治療食(組成物3、組成物4、または組成物5)のうち一つを、治療群に基づいて異なる順序で各群に給餌することから構成された(詳細な組成物については、表2を参照)。この実験はテン方格法であり、この方法は、各ネコに、治療段階の各期間中に1つずつ、すべての治療食品を給餌することを可能にする。本試験設計には6つの群が存在するため、食品の順序に基づくバイアスは存在しなかった。各治療食を80日間給餌し、その後、ウォッシュアウト期間なしに別の治療食に変更した。血液/血清試料を、給餌前および個々の治療食スケジュール(80日)の終了時に採取し、さらなる解析まで-80℃で保存した。
【表2】
【0083】
非標的メタボロミクス分析を、各ネコから採取された凍結血清試料で実施した。簡潔に述べると、血清試料をメタノールで分離し、得られた抽出物を5つのアリコートに分割して、Metabolon Inc.(ノースカロライナ州モリスビル)によって確立された4つの異なるプラットフォームで分析した。例えば、治療終了時に特定の動物から採取された試料を、給餌前(ベースライン)の終了時に同じ動物から採取された試料で差し引いた。JMP Pro v14.0(SAS、ノースカロライナ州カリー)を使用して、統計解析を実施した。
【0084】
図2は、抱合代謝産物の結果の比較を示す。「S」は、対応のあるt検定による食餌比較間の有意性(P<0.05)を示す。「NS」は、対応のあるt検定による食餌比較間の非有意性を示す。
【0085】
結果は、ネコにおいて、OA:AAの異なる比率が、OAまたはAAのいずれかを含有する脂質クラスにわたり有意差をもたらしたことを示す。例えば、OA:AA比率43.5を有する組成物3の食餌は、AA抱合代謝産物と比較して、血清OA抱合代謝産物の有意な増加を示した(図2、7、8を参照)。逆に、OA:AA比率22.44を有する食餌組成物5は、OA抱合代謝産物と比較して、AA抱合代謝産物の有意な増加を示した(図2、7、8を参照)。しかしながら、OA:AA比率38.0を有する組成物4は、OA抱合代謝産物とAA抱合代謝産物の間に有意差を示さなかった(図2、7、8を参照)。これらの結果は、OA:AA比率が38.0より大きいと血清AA抱合代謝産物が減少し、38.0未満の比率は血清AA抱合代謝産物を増加させることを示唆する。
【0086】
要約すると、これらの結果は、OA:AA比率が宿主脂肪酸代謝に影響を与え、より高い比率(イヌでは87.60超、ネコでは38.0超)がAA代謝を抑制し、OA代謝を強化し、CvRD/CRS症候群を潜在的に軽減することを示唆する。提案された作用機序は、食餌中のOA:AA比率の増加がAA代謝を減少させ、PGE2レベルに影響を与え、炎症を減少させて、慢性腎臓損傷または急性腎損傷を軽減し、コンパニオンアニマルにおける心血管-腎軸障害を減弱することを示す(図10を参照)。
【0087】
本発明は、本発明の完全な開示を行う目的でかなり詳細に記載されている幾つかの実施形態を参照しながら記述されているが、こうした実施形態は単に例示的であり、本発明のすべての態様の網羅的な列挙を限定または代表することを意図していない。本発明の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲から決定されるべきである。さらに、本発明の精神および原理から逸脱することなく、こうした詳細において数多くの変更がなされうることが当業者に明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットフード組成物であって、
オレイン酸と、
アラキドン酸と、を含み、
オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約87.6以上である、ペットフード組成物。
【請求項2】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が、約87.6~約200:1、約100:1~約200:1、約160:1~約190:1、または約172:1である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
前記オレイン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約4~約12重量%、約4~約10重量%、または約4~約9重量%の量で存在し、および/または前記アラキドン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.02~約1重量%、約0.02~約0.08重量%、または約0.02~約0.06重量%の量で存在する、請求項1または2に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
前記組成物が一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含み、前記オメガ3脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.1~約1重量%、約0.1~約0.8重量%、または約0.3~約0.8重量%の量で存在し、および/または前記組成物が一つ以上のオメガ6脂肪酸をさらに含み、前記オメガ6脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約1~約10重量%、約1.5~約7重量%、または約2~約5重量%の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項5】
オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率が、約1:5~約1:10、約1:6~約1:9、または約1:7~約1:9である、請求項に記載のペットフード組成物。
【請求項6】
イヌに、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、前記イヌにおいてオレイン酸抱合代謝産物を増加させ、アラキドン酸抱合代謝産物を減少させる方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード組成物をイヌに給餌することを含む、前記イヌの血清インターロイキン-8(IL-8)を減少させる方法。
【請求項8】
イヌに、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、前記イヌの腎臓組織におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを低減する方法。
【請求項9】
ペットフード組成物であって、
オレイン酸と、
アラキドン酸と、を含み、
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約38.0以上である、ペットフード組成物。
【請求項10】
前記オレイン酸のアラキドン酸に対する重量比が約38:1~約60:1または約43:1である、請求項に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
前記オレイン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約2~約8重量%、約3~約7重量%、または約4~約6重量%の量で存在し、および/または前記アラキドン酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.05~約2重量%、約0.05%~約1重量%、または約0.07~約0.3重量%の量で存在する、請求項9または10に記載のペットフード組成物。
【請求項12】
前記組成物が一つ以上のオメガ3脂肪酸をさらに含み、前記オメガ3脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約0.05~約1重量%、約0.0~約0.08重量%、または約0.05~約0.5重量%の量で存在し、および/または前記組成物がオメガ6脂肪酸をさらに含み、前記オメガ6脂肪酸が、前記ペットフード組成物の前記乾燥重量に基づいて、約1~約10重量%、約1.5~約5重量%、または約2%~約5重量%の量で存在する、請求項11のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項13】
前記オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率が、約1:10~約1:20、約1:12~約1:18、または約1:12~1:16である、請求項12に記載のペットフード組成物。
【請求項14】
ネコに、請求項13のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、前記ネコにおいてオレイン酸抱合代謝産物を増加させ、アラキドン酸抱合代謝産物を減少させる方法。
【請求項15】
ネコに、請求項13のいずれか一項に記載のペットフード組成物を給餌することを含む、前記ネコの腎臓組織におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを低減する方法。
【国際調査報告】