(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】負極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20231026BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231026BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231026BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/36 D
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523167
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2021014423
(87)【国際公開番号】W WO2022080979
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134666
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドン-スブ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソク-イン・ノ
(72)【発明者】
【氏名】チャン-ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウク・ウ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA11
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面上に位置し、第1活物質及び第1バインダー高分子を含む下層領域と、前記下層領域に位置し、第2活物質及び第2バインダー高分子を含む上層領域と、を備える負極活物質層と、を含み、前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%が前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%よりも大きいことを特徴とする負極、その製造方法及び当該負極を含むリチウム二次電池を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面上に位置し、第1活物質及び第1バインダー高分子を含む下層領域と、前記下層領域に位置し、第2活物質及び第2バインダー高分子を含む上層領域と、を備える負極活物質層と、を含み、
前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、
前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%よりも大きい、負極。
【請求項2】
前記第1活物質のD50が3μm~20μmである、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記第2活物質のD50が5μm~35μmである、請求項1に記載の負極。
【請求項4】
前記二次粒子の人造黒鉛が、一次粒子の人造黒鉛が造粒化して形成されている、請求項1に記載の負極。
【請求項5】
前記第2活物質の炭素コーティング層が、前記第2活物質の全重量を基準にして0.5重量%~10.0重量%で含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項6】
前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%と前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%との比が1.1:1~5:1である、請求項1に記載の負極。
【請求項7】
前記負極活物質層の下層領域内における第1バインダー高分子の割合(重量%)が2~4重量%であり、前記負極活物質層の上層領域内における第2バインダー高分子の割合(重量%)が0.5~2重量%である、請求項1に記載の負極。
【請求項8】
前記負極活物質層の全体に対して第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総重量%が1~3重量%である、請求項1に記載の負極。
【請求項9】
第1活物質、第1バインダー高分子及び第1分散媒を含む下層用スラリーと、第2活物質、第2バインダー高分子及び第2分散媒を含む上層用スラリーと、を準備する段階と、
負極集電体の一面に前記下層用スラリーをコーティングし、前記下層用スラリーの上に前記上層用スラリーをコーティングする段階と、
コーティングされた前記下層用スラリー及び前記上層用スラリーを同時に乾燥して負極活物質層を形成する段階と、を含み、
前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%よりも大きい、負極の製造方法。
【請求項10】
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%と前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%との比が、1.1:1~5:1である、請求項9に記載の負極の製造方法。
【請求項11】
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が2~4重量%であり、前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%が0.5~2重量%である、請求項9に記載の負極の製造方法。
【請求項12】
前記下層用スラリー及び前記上層用スラリー全体の固形分に対して第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)が1~3重量%である、請求項9に記載の負極の製造方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の負極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着力が確保されると共に急速充電性能が向上する負極及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月16日出願の韓国特許出願第10-2020-0134666号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発及び需要が増加するにつれ、充電が可能であり、小型化及び大容量化が可能な二次電池の需要が急激に増加しつつある。また、二次電池のうち高いエネルギー密度と電圧を有するリチウム二次電池が商用化して広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池は、電極集電体の上に各々活物質が塗布されている正極と負極との間に多孔性の分離膜が介在された電極組立体にリチウム塩を含む電解質が含浸されている構造となっている。前記電極は、活物質、バインダー及び導電材が溶媒に分散しているスラリーを集電体に塗布して、乾燥及び圧延(pressing)することで製造される。
【0005】
通常、二次電池は、正極、負極、電解質及び分離膜で構成される。負極は、正極から出たリチウムイオンを挿入して脱離する負極活物質を含み、前記負極活物質としては、黒鉛系活物質、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛が使用され得る。
【0006】
前記人造黒鉛は主に二次粒子の形態で使用される。このために、通常、一次粒子の材料であるコークスを粗粒化して二次粒子の形態に製造した後、熱処理によって黒鉛化して二次粒子形態の人造黒鉛が得られる。
【0007】
但し、一次粒子の大きさが制御されない前記通常の製造方法による場合、粗粒化されなかった微粉や粗粒化の後にも二次粒子から分離される微粉が多量発生するようになる。これによって、製造された負極で負極接着力(負極から負極活物質粒子が脱離することに対する抵抗力)が減少するようになり、電池の高温貯蔵性能が悪くなり得る。また、二次粒子内にも微粉が含まれるため、負極の気孔が均一ではなくて負極の気孔抵抗が高くなり、電池の急速充電性能が低下する。
【0008】
既存には、このような問題を解決するために二次粒子の上に炭素コーティング層を配置する工程を用いてきた。但し、炭素コーティング層のみでは微粉の脱離を抑制しにくいため、効果改善の程度が微々であった。また、前記のような脱離が抑制されるとしても、二次粒子内に存在する微粉を除去できないため、電池の急速充電性能が改善されにくい。また、微粉の過度な含量によって発生する問題を解決するために造粒化工程に使用されるピッチ(pitch)や炭素コーティング層の形成に必要な炭素前駆体の含量を増加させるしかないので、負極の重さ当たり容量が低下する。
【0009】
一方、既存の商用化された電池は、前記負極と正極は、各電極集電体上に前記電極スラリーを1回コーティングして各電極を構成するようになり、この場合、電極層の断面のバインダー分布を測定すると、表面近くのバインダーの含量は高く、集電体の方向へ進むほどバインダーの含量は減少するようになる。
【0010】
このような電極は、集電体近くのバインダー含量の減少によって接着力が低下するため、接着力低下の問題を改善するためにバインダーの含量を増加させるには、抵抗が増加して急速充電性能が低下するという問題が発生した。
【0011】
そこで、電極の活物質層と集電体との接着力を改善すると共に、電池の急速充電性能を改善するための方案が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、接着力を確保すると共に、急速充電性能が向上する負極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を達成するためのものであって、本発明の一面によれば、下記の具現例による負極の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の一具現例によれば、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面上に位置し、第1活物質及び第1バインダー高分子を含む下層領域と、前記下層領域に位置し、第2活物質及び第2バインダー高分子を含む上層領域と、を備える負極活物質層と、を含み、
前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、
前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%よりも大きいことを特徴とする、負極が提供される。
【0016】
第2具現例によれば、第1具現例において、前記第1活物質のD50は3μm~20μmであり得る。
【0017】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、前記第2活物質のD50は5μm~35μmであり得る。
【0018】
第4具現例によれば、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、前記二次粒子の人造黒鉛が、前記一次粒子の人造黒鉛が造粒化して形成され得る。
【0019】
第5具現例によれば、第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例において、前記第2活物質の炭素コーティング層は、前記第2活物質の全体重量部を基準にして0.5重量%~10.0重量%で含まれ得る。
【0020】
第6具現例によれば、第1具現例から第5具現例のいずれか一具現例において、前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%と前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%との比が1.1:1~5:1であり得る。
【0021】
第7具現例によれば、第1具現例から第6具現例のいずれか一具現例において、前記負極活物質層の下層領域内における第1バインダー高分子の割合(重量%)が2~4重量%であり、前記負極活物質層の上層領域内における第2バインダー高分子の割合(重量%)が0.5~2重量%であり得る。
【0022】
第8具現例によれば、第1具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、前記負極活物質層の全体に対して第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)が1~3重量%であり得る。
【0023】
第9具現例によれば、
第1活物質、第1バインダー高分子及び第1分散媒を含む下層用スラリーと、第2活物質、第2バインダー高分子及び第2分散媒を含む上層用スラリーと、を準備する段階と、
負極集電体の一面に前記下層用スラリーをコーティングし、前記下層用スラリーの上に前記上層用スラリーをコーティングする段階と、
前記コーティングされた下層用スラリー及び上層用スラリーを同時に乾燥して負極活物質層を形成する段階と、を含み、
前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%よりも大きいことを特徴とする負極の製造方法が提供される。
【0024】
第10具現例によれば、第9具現例において、前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%と前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%との比が、1.1:1~5:1であり得る。
【0025】
第11具現例によれば、第9具現例から第10具現例のいずれか一具現例において、前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が2~4重量%であり、前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%が0.5~2重量%であり得る。
【0026】
第12具現例によれば、第9具現例から第11具現例のいずれか一具現例において、
前記下層用スラリー及び前記上層用スラリー全体の固形分に対して第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)が1~3重量%であり得る。
【0027】
第13具現例において、第1具現例から第8具現例のいずれか一具現例に記載の負極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一具現例によれば、バインダー含量を多く増加させることなく負極活物質層と集電体との結着力を高めることができ、活物質の脱離現象が防止され、抵抗特性が改善される負極を提供することができる。
【0029】
さらに、同じバインダーを全体に適用するに際し、下層のバインダーの割合を高めることで接着力の向上を図り、上層のバインダーの割合を減少させることで急速充電性能を向上させ、また、下層には一次粒子の人造黒鉛を適用することで接着力の増加を倍加させることができ、上層には炭素コーティング層を備える二次粒子の人造黒鉛を適用することで急速充電性能をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0031】
本発明の一面によれば、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面上に位置し、第1活物質及び第1バインダー高分子を含む下層領域と、前記下層領域に位置し、第2活物質及び第2バインダー高分子を含む上層領域と、を備える負極活物質層と、を含み、
前記第1活物質が一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含み、
前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%よりも大きいことを特徴とする負極が提供される。
【0032】
本発明において、下層領域及び上層領域に含まれる活物質の種類を異にしながら、特に、負極活物質層の下層領域には一次粒子の人造黒鉛を活物質(第1活物質)に含ませ、負極活物質層の上層領域には、二次粒子の人造黒鉛と前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層を含む活物質(第2活物質)に含ませる。
【0033】
二次粒子の場合、二次粒子を構成する一次粒子同士の空隙にバインダー高分子が分布できるため、実際に接着力が発現可能なバインダー高分子の数が減少するが、一次粒子の場合には、このような空隙が存在しないので、投入したバインダー高分子の全てが接着力に寄与可能である。これによって、集電体と直接対面する負極活物質層の下層領域に一次粒子の人造黒鉛を含ませることで、集電体と負極活物質層との接着力を大幅に向上させることができる。
【0034】
前記負極活物質層の上層領域には、一次粒子の人造黒鉛が造粒化して形成された二次粒子の人造黒鉛と、前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層と、を含む活物質(第2活物質)を含んでおり、二次粒子の場合、配向性[(I(004)/I(110)]が低いため、急速充電性能が向上できる。
【0035】
前記人造黒鉛は、通常、コールタール、コールタールピッチ(coal‐tar pitch)及び石油系中質油などの原料を2,500℃以上に炭化させて製造され、このような黒鉛化後に、粉砕及び二次粒子形成のような粒度調整を経て負極活物質として使用される。人造黒鉛の場合、結晶が粒子内でランダムに分布しており、天然黒鉛に比べて球形度が低く、やや尖った形状を有する。
【0036】
本発明の一具現例において使用される人造黒鉛は、商業的によく使用されているメソフェーズカーボンマイクロビーズ(mesophase carbon microbeads;MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch‐based carbon fiber;MPCF)、ブロック形態に黒鉛化された人造黒鉛、粉体形態に黒鉛化された人造黒鉛などがあり、球形度が0.91以下、望ましくは0.6~0.91、より望ましくは0.7~0.9である人造黒鉛が望ましい。
【0037】
本明細書において、以下に後述するD50は、粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、平均粒径と称し得る。即ち、「粒径Dn」は、粒径による粒子個数累積分布のn%地点での粒径を意味する。これによって、D90は、粒径による粒子個数累積分布の90%地点での粒径を意味し、D10は、粒径による粒子個数累積分布の10%地点での粒径を意味する。
【0038】
前記D50を始め、Dnはレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過するとき、粒子の大きさによる回折パターン差を測定し粒度分布を算出し得る。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の10%、50%及び90%になる地点での粒子径を算出することで、D10、D50及びD90を測定し得る。
【0039】
粒度分布において、前記第1活物質、即ち、人造黒鉛(一次粒子)のD50は3μm~20μmであり、望ましくは5μm~15μmであり、より望ましくは7μm~13μmであり得る。前記一次粒子のD50がこのような範囲を満たす場合、一次粒子が高い黒鉛化を有するように形成され、負極活物質粒子の配向指数が適切に確保されて急速充電性能が改善できる。
【0040】
前記第2活物質において、二次粒子は、一次粒子が造粒化することで形成され得る。即ち、前記二次粒子は、前記一次粒子が造粒化工程によって互いに凝集して形成された構造体であり得る。
【0041】
前記第2活物質は、前記第2粒子の表面に炭素コーティング層を含み、前記炭素コーティング層は、非晶質炭素及び結晶質炭素のうち少なくともいずれか一つを含み得る。
【0042】
前記結晶質炭素は、前記負極活物質の導電性をさらに向上させることができる。前記結晶質炭素は、フラーレン、カーボンナノチューブ及びグラフェンからなる群より選択される少なくともいずれか一つを含み得る。
【0043】
前記非晶質炭素は、前記被覆層の強度を適切に維持させて、前記人造黒鉛の出力特性及び急速充電性能を向上させることができる。前記非晶質炭素は、タール、ピッチ及びその他の有機物からなる群より選択される少なくともいずれか一つの炭化物、または炭化水素を化学気相蒸着法のソースとして用いて形成された炭素系物質であり得る。
【0044】
前記その他の有機物の炭化物は、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、マンノース、リボース、アルドヘキソースまたはケトヘキソースの炭化物及びこれらの組合せより選択される有機物の炭化物であり得る。
【0045】
前記炭化水素は、置換または非置換の脂肪族または脂環式炭化水素、置換または非置換の芳香族炭化水素であり得る。前記置換または非置換の脂肪族または脂環式炭化水素の脂肪族または脂環式炭化水素は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタンまたはヘキサンなどであり得る。前記置換または非置換の芳香族炭化水素の芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセンまたはフェナントレンなどが挙げられる。
【0046】
前記炭素コーティング層は、前記第2活物質の全体重量を基準にして0.5重量%~10.0重量%で含まれ、具体的には、1重量%~8重量%、または2重量%~6重量%で含まれ得る。前記範囲を満たす場合、負極活物質粒子の重さ当たりの容量が確保されながらも人造黒鉛の急速充電性能が改善できる。
【0047】
前記第2活物質のD50は、5μm~35μmであり、具体的には7μm~33μmであり、より具体的には10μm~30μmであり得る。前記範囲を満たす場合、第2活物質が上層用スラリー内で均一に分散し、電池の充電性能も改善可能である。
【0048】
本発明の負極において下層領域に含まれる第1活物質と、上層領域に含まれる第2活物質の平均粒径及び形態が相異なるため、このような下層領域と上層領域が当接する部分にこれら相異なる種類の活物質が混在する混合領域(インターミキシング,intermixing)が存在し得る。これは、第1活物質を含む下層用スラリーと第2活物質を含む上層用スラリーとを集電体上に同時にまたは非常に短い時間差を置いて連続的にコーティングし、その後に同時に乾燥する方式で負極活物質層を形成する場合、下層用スラリーと上層用スラリーが乾燥前に当接した界面上に所定の混合区間が発生し、以後に乾燥されながらこのような混合区間が混合領域の層形態に形成されるためである。
【0049】
本発明の一具現例において、前記負極活物質層の下層領域と上層領域の重量比(単位面積当たりのロード量の比)が20:80~80:20、詳しくは30:70~70:30であり得る。このような重量比の範囲を満たす場合、より接着力が高くなり、優秀な急速充電性能を発揮できる。
【0050】
本発明の一具現例において、前記上層領域と前記下層領域の厚さの比は、20:80~80:20、詳しくは30:70~70:30であり得る。このような厚さの比の範囲を満たる場合、より接着力が高くなり、優秀な急速充電性能を発揮できる。
【0051】
本発明の一具現例において、前記負極活物層の全体厚さは特に限定されない。例えば、40~200μmであり得る。また、前記負極活物質層で前記下層領域の厚さは20~150μm、または30~100μmであり、前記上層領域の厚さは20~150μm、または30~100μmであり得る。
【0052】
この際、前記上層領域と下層領域の厚さがこのような範囲を満たす場合、接着力が高くなり、優秀な急速充電性能が発揮できる。
【0053】
前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%よりも大きい。
【0054】
具体的には、前記下層領域における第1バインダー高分子の重量%及び前記上層領域における第2バインダー高分子の重量%の比が、1.1:1~5:1、または1.2:1~4:1、または1.5:1~3:1、または2.1:1~3:1、または2.3:1.7~3:1、または2.7:1.3~3:1、または2.3:1.7~2.7:1.3であり得る。
【0055】
この際、前記下層領域における第1バインダーの重量%及び前記上層領域における第2バインダーの重量%の割合がこのような範囲を満たす場合、優秀な接着力と急速充電性能を発揮できる。
【0056】
本発明の一具現例において、前記負極活物質層の下層領域内における第1バインダー高分子の割合(重量%)が2~4重量%、または2.3~3重量%であり、前記負極活物質層の上層内における第2バインダー高分子の割合(重量%)が0.5~2重量%、または1~1.7重量%であり得る。
【0057】
本発明の一具現例において、前記負極活物質層全体の第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)が1~3重量%、または1~2重量%、または2~3重量%であり得る。
【0058】
本発明の一具現例による負極の下層領域における第1バインダー高分子の重量%及び上層領域における第2バインダー高分子の重量%は、最初の負極の下層及び上層を製造するための下層用スラリーと上層用スラリー内に含まれた固形分(活物質、導電材、バインダー、増粘剤)の総含量中のバインダーの重量%から計算し得る。
【0059】
また、本発明の一具現例による負極の負極活物質層の下層領域における第1バインダー高分子の重量%及び上層領域における第2バインダー高分子の重量%は、バインダー高分子を染色し得る金属酸化物を用いて染色した後、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X‐ray Spectroscopy)を用いて染色された金属の含量を測定することで間接的に測定し得る。前記金属酸化物としては、四酸化オスミウム(OsO4)、四酸化ルテニウム(RuO4)などを使用し得る。
【0060】
本発明の一具現例によれば、負極活物質層の断面を切断した後、四酸化オスミウム(OsO4)を用いて負極活物質層の下層領域及び上層領域に含まれた第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を染色し、エネルギー分散型X線分光法を用いて前記染色された負極活物質層の断面のオスミウム原子比の値を測定し得る。このように測定された電極活物質層の表面のオスミウム原子比の値は、四酸化オスミウム(OsO4)と染色された負極活物質層の断面のバインダー高分子の含量と相関関係があるので、これよりバインダー高分子の含量を計算し得る。
【0061】
具体的には、最終に製造された負極を所定の大きさで準備し、負極の垂直方向に切断して負極活物質層の断面が露出したサンプルをOsO4(Osmium tetraoxide)が込められている容器に入れて密閉して1~5時間保管した後、負極を取り出して真空オーブンに入れて24~72時間乾燥してOsO4を用いて負極活物質層に含まれたバインダー高分子を染色し、染色が完了した負極をエネルギー分散型X線分光法を用いて断面のバインダー高分子の含量を分析し得る。
【0062】
例えば、本発明の一具現例による負極を1cm×1cmの大きさで準備し、OsO4が込められている容器に入れて密閉し、3時間後に負極を取り出して真空オーブンに入れて48時間乾燥してOsO4を用いて負極活物質層に含まれたバインダー高分子を染色し、染色が完了した負極をエネルギー分散型X線分光法を用いて表面のバインダー高分子の含量を分析した。X‐Max80とExtreme検出器(Oxford社製)を用いて負極活物質層の表面のオスミウムの原子比を以下の条件で測定し得る。
【0063】
【0064】
本発明の一具現例において、前記負極活物質層を形成する基材に使用される負極用集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウムカドミウム合金などが使用され得る。
【0065】
前記集電体の厚さは特に制限されないが、通常適用される3~500μmの厚さを有し得る。
【0066】
前記第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子は、各々独立的に、ポリビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HEP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブチレンゴム(SBR)、フッ素ゴム、多様な共重合体などの多様な種類のバインダー高分子が使われ得る。
【0067】
また、本発明の一具現例によれば、前記負極活物質層は、スラリーの分散安定性に寄与する増粘剤をさらに含み得、下層領域に含まれる第1増粘剤及び上層領域に含まれる第2増粘剤は、各々独立的に、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンポリビニルアルコール、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などが使用され得る。
【0068】
前記負極活物質層は、選択的に導電材をさらに含み得る。前記導電材としては、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0069】
本発明の一面によれば、
第1活物質、第1バインダー高分子及び第1分散媒を含む下層用スラリーと、第2活物質、第2バインダー高分子及び第2分散媒を含む上層用スラリーと、を準備する段階と、
負極集電体の一面に前記下層用スラリーをコーティングし、前記下層用スラリーの上に前記上層用スラリーをコーティングする段階と、
前記コーティングされた下層用スラリー及び上層用スラリーを同時に乾燥して負極活物質層を形成する段階と、を含み、
前記第1活物質が、一次粒子の人造黒鉛であり、前記第2活物質が、一次粒子の人造黒鉛が造粒化して形成された二次粒子と、前記二次粒子上に位置する炭素コーティング層と、を含み、
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%よりも大きいことを特徴とする負極の製造方法が提供される。
【0070】
前記下層用スラリーと上層用スラリーに含まれる活物質(第1活物質、第2活物質)、バインダー高分子(第1バインダー高分子、第2バインダー高分子)、択一的に増粘剤(第1増粘剤、第2増粘剤)、導電材などは、前述したものと同一である。
【0071】
前記分散媒である第1分散媒及び第2分散媒としては、各々独立的にN‐メチルピロリドン、アセトン、水などを使用し得る。
【0072】
この際、本発明の負極活物質層の下層領域は、前記コーティングされた下層用スラリーに由来して形成され、本発明の負極活物質層の上層領域は、前記上層用スラリーに由来して形成される。
【0073】
本発明の一具現例によると、前記下層用スラリーをコーティングし、同時にまたは所定の時間差を置いて前記下層用スラリーの上に上層用スラリーをコーティングすることができ、この際、二重スロットダイ(double slot die)などの装置を用い得る。
【0074】
前記コーティングされた下層用スラリー及び上層用スラリーを同時に乾燥して負極活物質層を形成する段階は、前記コーティングされた下層用スラリー及び上層用スラリーを同時に乾燥してスラリー内の分散媒を除去し、圧延した後、真空乾燥を経て負極活物質層を形成する段階を含み得る。
【0075】
この際、圧延は、ロールプレス(roll pressing)のように当業界で通常使用される方法によって行うことができ、例えば、1~20MPaの圧力及び15~30℃の温度で行われ得る。また、前記圧延は、圧延後の電極(活物質層)の気孔度が20~40%、または25~35%、または20~30%、または30~40%になる条件で施され得る。
【0076】
前記コーティングされたスラリーを乾燥する段階は、例えば、70~90℃、または75~85℃、または80~85℃で10~30分間、または15~25分間、または20~30分間行い得るが、このような乾燥温度及び時間は、分散媒の種類及び含量に応じて適切に調節可能である。
【0077】
また、前記乾燥されたスラリー層を圧延した後、100~170℃、または120~150℃、または130~150℃の温度で約3~10時間、または5~8時間、真空乾燥方式で行われ得るが、このような乾燥温度及び時間は分散媒の種類及び含量に応じて適切に調節可能である。
【0078】
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%と前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%の比が1.1:1~5:1、または1.2:1~4:1、または1.5:1~3:1、または2.1:1~3:1、または2.3:1.7~3:1、または2.7:1.3~3:1、または2.3:1.7~2.7:1.3であり得る。
【0079】
この際、前記コーティングされた下層用スラリーにおける第1バインダーの重量%と前記コーティングされた上層用スラリーにおける第2バインダーの重量%の割合がこのような範囲を満たす場合、優秀な接着力と急速充電性能を発揮できる。
【0080】
前記下層用スラリーの固形分における第1バインダー高分子の重量%が2~4重量%、または2.3~3重量%であり、前記上層用スラリーの固形分における第2バインダー高分子の重量%が0.5~2重量%、または1~1.7重量%であり得る。
【0081】
前記下層用スラリー及び前記上層用スラリー全体の固形分における第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)が1~3重量%、または1~2重量%、または2~3重量%であり得る。
【0082】
本発明のさらに他の一具現例は、前記のように製造された負極を含むリチウム二次電池に関する。具体的には、前記リチウム二次電池は、正極、前述したような負極、及びその間に介在されたセパレーターを含む電極組立体にリチウム塩含有の電解質を注入して製造され得る。
【0083】
前記正極は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造した後、それを金属集電体に直接コーティングするか、または別の支持体の上にキャストしてその支持体から剥離した正極活物質フィルムを金属集電体にラミネートすることで正極を製造し得る。
【0084】
正極に使用される活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiCoPO4、LiFePO4及びLiNi1-x-y-zCoxM1yM2zO2(M1及びM2は、互いに独立的に、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、x、y及びzは、互いに独立的に酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z≦1である。)からなる群より選択されたいずれか一つの活物質粒子またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。
【0085】
一方、導電材、バインダー及び溶媒は、前記負極の製造時に使用されたものと同じものが使用され得る。
【0086】
前記セパレーターは、従来のセパレーターに使用される通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用し得る。また、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用され得る。前記セパレーターは、セパレーターの表面にセラミック物質が薄くコーティングされた安全性強化セパレーター(safety reinforced separator; SRS)を含み得る。その外にも、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラスファイバー、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用し得るが、これらに制限されない。
【0087】
前記電解液は、電解質としてリチウム塩及びこれを溶解するための有機溶媒を含む。
【0088】
前記リチウム塩は、二次電池用電解液に通常使用するものであれば、制限なく使用可能である。例えば、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F-、Cl-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群より選択される一種を使用し得る。
【0089】
前記電解液に含まれる有機溶媒としては、通常使用されるものなどが制限なく使用可能であり、代表的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、γ‐ブチロラクトン、プロピレンスルフィド及びテトラハイドロフランからなる群より選択される一種以上を使用し得る。
【0090】
特に、前記カーボネート有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高くて電解質内のリチウム塩を解離させやすいため望ましく使われ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適切な割合で混合して使用すると、高い電気伝導率を有する電解液を作ることができるので、望ましく使用され得る。
【0091】
選択的には、本発明によって保存される電解液は、通常の電解液に含まれる過充電防止剤などのような添加剤をさらに含み得る。
【0092】
本発明の一具現例によるリチウム二次電池は、正極と負極との間にセパレーターを配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体を、例えば、パウチ、円筒状の電池ケースまたは角形の電池ケースに入れた後に電解質を注入することで二次電池が完成され得る。または、前記電極組立体を積層した後、それを電解液に含浸し、得られた結果物を電池ケースに入れて密封することでリチウム二次電池が完成され得る。
【0093】
本発明の一具現例によると、前記リチウム二次電池は、積層型、巻取型、積層/折畳み型またはケーブル型であり得る。
【0094】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、複数の電池セルを含む中・大型電池モジュールに単位電池としても望ましく使用され得る。前記中・大型デバイスの望ましい例には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどが挙げられ、特に、高出力が求められる領域であるハイブリッド電気自動車及び新材生エネルギー貯蔵用バッテリーなどに有用に使用され得る。
【0095】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、多様な形態で変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供される。
【0096】
実施例1:負極の製造
<下層用負極スラリーの製造>
平均粒径(D50)が10μmである人造黒鉛の一次粒子を第1活物質として使用した。
【0097】
前記第1活物質と導電材としてのSuper C65と第1バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を各々95:1:3:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造した。
【0098】
<上層用負極スラリーの製造>
人造黒鉛の一次粒子が造粒化して形成された二次粒子形態の人造黒鉛と、前記人造黒鉛の上に配置された炭素コーティング層と、を含む第2活物質を準備した。この際、第2活物質において、前記一次粒子のD50は10μmであり、前記一次粒子が造粒化して凝集した二次粒子の平均粒径(D50)は20μmであった。前記二次粒子の上の炭素コーティング層は、前記第2活物質の全体重量を基準にして4.0重量%で含まれた。この際、炭素コーティング層が形成された二次粒子の平均粒径(D50)は21μmであった。
【0099】
前記第2活物質と、導電材としてのSuper C65と、第2バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を97:1:1:1の重量比で混合し、水を添加して上層用スラリーを製造した。
【0100】
<負極の製造>
二重スロットダイを用いて、厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)ホイルの一面に前記下層用スラリーを2.5mAh/cm2のロード量で塗布した後、前記塗布された下層用スラリーの上に前記上層用スラリーを2.5mAh/cm2のロード量でコーティングした。前記スラリーコーティングした後、80℃で20分間乾燥してスラリー中の水を除去し、乾燥されたスラリー層を圧延した後、約130℃で8時間真空乾燥して負極を製造した。この際、製造された負極の気孔度は30%であった。
【0101】
このように製造された負極は、50μm厚さの上層領域及び50μm厚さの下層領域の二重層構造を有し、全体厚さの100μmの負極活物質層を備えていた。
【0102】
実施例2:負極の製造
前記第1活物質と導電材としてのSuper C65と第1バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を95.3:1:2.7:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造し、前記第2活物質と導電材としてのSuper C65と第2バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96.7:1:1.3:1の重量比で混合し、水を添加して上層用スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0103】
実施例3:負極の製造
前記第1活物質と導電材としてのSuper C65と第1バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を各々95.7:1:2.3:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造し、前記第2活物質と導電材としてのSuper C65と第2バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96.3:1:1.7:1の重量比で混合し、水を添加して上層用スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0104】
比較例1:負極の製造
人造黒鉛の一次粒子が造粒化して形成された二次粒子形態の人造黒鉛、及び前記人造黒鉛の上に配置された炭素コーティング層を含む活物質を準備した。この際、活物質において、前記一次粒子のD50は10μmであり、前記一次粒子が造粒化して凝集した二次粒子の平均粒径(D50)は20μmであった。前記二次粒子の上に炭素コーティング層は、前記第2活物質の全体重量を基準にして4.0重量%で含まれていた。この際、炭素コーティング層が形成された二次粒子の平均粒径(D50)は21μmであった。
【0105】
前記活物質と導電材としてのSuper C65とバインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合し、水を添加してスラリーを製造した。
【0106】
厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)ホイルの一面に前記スラリーを5mAh/cm2のロード量でコーティングした。前記スラリーをコーティングした後、80℃で20分間乾燥してスラリー中の水を除去し、乾燥されたスラリー層を圧延した後、約130℃で8時間真空乾燥して負極を製造した。この際、製造された負極の気孔度は30%であった。
【0107】
このように製造された負極は、全体厚さ100μmの断層構造の負極活物質層を備えていた。
【0108】
比較例2:負極の製造
平均粒径(D50)が10μmである人造黒鉛の一次粒子を活物質として使用した。
【0109】
前記活物質と導電材としてのSuper C65とバインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造した。
【0110】
厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)ホイルの一面に前記スラリーを5mAh/cm2のロード量でコーティングした。前記スラリーをコーティングした後、80℃で20分間乾燥してスラリー中の水を除去し、乾燥されたスラリー層を圧延した後、約130℃で8時間真空乾燥して負極を製造した。この際、製造された負極の気孔度は30%であった。
【0111】
このように製造された負極は、全体厚さ100μmの断層構造の負極活物質層を備えていた。
【0112】
比較例3:負極の製造
前記第1活物質と導電材としてのSuper C65と第1バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造し、前記第2活物質と導電材としてのSuper C65と第2バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合し、水を添加して上層用スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0113】
比較例4:負極の製造
前記第2活物質が炭素コーティング層を備えないことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0114】
比較例5:負極の製造
前記第1活物質炭素コーティング層を備えることを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0115】
この際、前記炭素コーティング層は、前記第1活物質の全体重量を基準にして4.0重量%で含まれていた。
【0116】
比較例6:負極の製造
下層用スラリーとして実施例1の上層用スラリーを使用し、上層用スラリーとして実施例1の下層用スラリーを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0117】
比較例7:負極の製造
人造黒鉛の一次粒子が造粒化して形成された二次粒子形態の人造黒鉛(炭素コーティング層を備えない)を第1活物質として準備した。この際、第1活物質において、前記一次粒子のD50は10μmであり、前記一次粒子が造粒化して凝集した二次粒子の平均粒径(D50)は20μmであった。
【0118】
前記第1活物質と導電材としてのSuper C65と第2バインダー高分子としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を95:1:3:1の重量比で混合し、水を添加して下層用スラリーを製造した。
【0119】
前記製造された下層用スラリーを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を製造した。
【0120】
負極/二次電池の特性評価
実験例1:電池の急速充電性能評価
1.7671cm2の円形に切断したリチウム(Li)金属薄膜を正極にした。前記正極と前記負極(実施例1~3及び比較例1~7の各々の負極)との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在し、メチルエチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)の混合体積が7:3である混合溶液に0.5重量%で溶解されたビニレンカーボネートを溶解し、1M濃度のLiPF6が溶解された電解液を注入し、リチウムコインハーフセル(coin half‐cell)を製造した。
【0121】
製造されたハーフセルに対して最初の3回サイクルはCC/CVモード(0.1Cの電流速度、5mV、0.005C電流カットオフ(current cut‐off))で充電し、CCモードで1.0Vまで放電させた。3番目のサイクルの放電容量を基準にして、CCモードで1.5Cの電流速度でSOC80%まで充電し、SOC変化による電圧をグラフとして示した。X軸はSOCを示し、Y軸は測定された出力電圧を示すようにグラフに示した後、dV/dQ微分によって勾配の変化点を探してLiプレーティング(plating)SOCを判断する方法で急速充電性能を評価した。
【0122】
実験例2:X線回折分析時のI(004)/I(110)
実施例1~3及び比較例1~7の負極の各々に対してXRD機器を用いてX線回折分析を行って(004)面と(110)面の各々のピーク強度(intensity)を確認し、(110)面のピーク強度に対する(004)面のピーク強度の割合であるI(004)/I(110)の値を求めた。
【0123】
実験例3:負極接着力の評価
実施例1~3及び比較例1~7の負極の各々に対して下記のような方法によって負極接着力を評価し、表2に示した。
【0124】
前記負極を20mm×150mmに打ち抜けて25mm×75mmのスライドガラスの中央部にテープを使用して固定した後、UTMを用いて集電体を剥ぎだしながら90°の剥離強度を測定した。評価は5個以上の剥離強度を測定して平均値にした。
【0125】
【0126】
表2を参照すると、実施例1~3の負極では、下層領域に接着力が優秀な一次粒子があり、上層領域に急速充電が優秀な二次粒子形態の炭素コーティング層を備えた人造黒鉛があり、また、下層領域にバインダー高分子の含量がさらに多いことによって接着力が優秀であり、上層領域にバインダー高分子の含量が少ないことによって急速充電が優秀な結果を示していることが分かる。一方、比較例1の負極の場合、二次粒子形態の炭素コーティング層を備えた人造黒鉛を使用して断層として製造されることによって接着力が非常に低くなり、実施例1の上層領域のバインダー高分子の含量に比べて比較例1の上層領域のバインダー高分子の含量が多いことによって急速充電性能が低下した。
【0127】
比較例2の負極の場合、一次粒子形態の人造黒鉛を使用して断層として製造され、実施例1~3の下層領域のバインダー高分子の含量に比べて比較例2の下層領域のバインダー高分子の含量が小さいことによって接着力が低下し、配向度が大きいことによって急速充電性能が非常に低下した。
【0128】
比較例3の負極の場合、実施例1と同じ活物質を下層領域及び上層領域に使用したが、下層領域及び上層領域におけるバインダー高分子の含量が同一であることから、実施例1の負極に比べて接着力が低下し、急速充電性能も低下した。
【0129】
比較例4の負極の場合、実施例1の負極と比較して上層領域の二次粒子が炭素コーティング層を備えないので、急速充電性能が低下したことを確認した。
【0130】
比較例5の負極の場合、実施例1の負極と比較して下層領域に使用した一次粒子が炭素コーティング層を備えているので、炭素コーティング層を備えた一次粒子は硬質(hard)特性を有するようになり、このように上層及び下層領域に共に炭素コーティング層を備えた活物質を使用するようになれば、上層領域に気孔が形成されにくくなり、電解液の拡散抵抗が大きくなって急速充電性能が低下した。
【0131】
比較例6の負極の場合、実施例1の負極と比較して上層領域と下層領域が互いに逆になっており、接着力も低下し、急速充電性能も劣ることが分かる。
【0132】
比較例7の負極の場合、実施例1の負極と比較して下層領域に一次粒子形態の人造黒鉛ではなく二次粒子形態の人造黒鉛を使用した結果、急速充電性能は一部改善されるが、接着力が非常に低くなり、実際に使用しにくいということを確認した。
【国際調査報告】