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特表2023-546429GIP誘導体、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】GIP誘導体、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/16 20060101AFI20231026BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20231026BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231026BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20231026BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231026BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C12N15/16
A61K38/22 ZNA
A61P29/00
A61P37/06
A61P9/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/02
A61P25/00
A61P7/00
A61P17/06
A61P13/12
A61P21/04
A61P3/10
A61K47/54
A61K47/56
A61K47/64
A61K47/68
A61K47/62
A61K47/61
A61K47/60
A61K47/58
A61K39/395 W
C12N15/63 Z
C07K14/575
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523191
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2021014456
(87)【国際公開番号】W WO2022080984
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134479
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォン キ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ニョン サン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン チュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC17
4C076CC20
4C076CC21
4C076DD41M
4C076DD67M
4C076DD70M
4C076EE01M
4C076EE06M
4C076EE23M
4C076EE30M
4C076EE37M
4C076EE41M
4C076EE59M
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB37
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA511
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZC351
4C084ZC411
4C084ZC541
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA19
4H045BA41
4H045DA30
4H045DA76
4H045EA30
4H045FA10
(57)【要約】
GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその持続型結合体、またはそれを含む炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含む、ペプチド:
[一般式1]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43;
前記一般式1において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aib、チロシン(Tyr,Y)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)、リシン(Lys,K)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)、Aibまたはリシン(Lys,K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa23は、バリン(Val,V)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn,N)、アラニン(Ala,A)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)、グリシン(Gly,G)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であるか、あるいは存在せず、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であるか、あるいは存在せず、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であるか、あるいは存在せず、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であるか、あるいは存在せず、
Xaa39は、セリン(Ser,S)、アスパラギン(Asn,N)またはシステイン(Cys、C)であるか、あるいは存在せず、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【請求項2】
GIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体に対して活性を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド:
[一般式2]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43;
前記一般式2において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aib、またはチロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)、Aibまたはリシン(Lys,K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn,N)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)、アスパラギン(Asn,N)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【請求項4】
下記一般式3で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド:
[一般式3]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Asn-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43;
前記一般式3において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【請求項5】
前記一般式3において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa14は、ロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)であり、
Xaa41ないしXaa43は、存在しない、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、配列番号1ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドは、そのC末端が変形されていないか、あるいはアミド化された、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載のペプチドをコーディングする、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項12】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載のペプチドと、生体内半減期を増加させる生体適合性物質とが結合された、結合体。
【請求項13】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の反復単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(transferrin)、糖類(saccharide)、ヘパリン、並びにエラスチンによって構成された群のうちから選択される、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記高分子重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
前記生体適合性物質は、FcRn結合物質である、請求項12に記載の結合体。
【請求項16】
前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域である、請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン;(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン;(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン;(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ;並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちから選択される、請求項16に記載の結合体。
【請求項18】
前記免疫グロブリンFc領域は、糖鎖化されていない、請求項16に記載の結合体。
【請求項19】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4Fc領域である、請求項16に記載の結合体。
【請求項20】
前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の糖鎖化されていないFc領域である、請求項16に記載の結合体。
【請求項21】
前記ペプチドは、リンカを介して生体適合性物質と連結される、請求項12に記載の結合体。
【請求項22】
前記リンカは、ペプチド、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記高分子重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項22に記載の結合体。
【請求項24】
前記リンカは、エチレングリコール反復単位を含む、請求項21に記載の結合体。
【請求項25】
前記エチレングリコール反復単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲にある、請求項24に記載の結合体。
【請求項26】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載のペプチド、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、または請求項12ないし25のうちいずれか1項に記載の結合体を含む、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項27】
前記炎症性疾患または前記自己免疫疾患は、血管炎、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、視神経脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑症、血栓性血小板減少性紫斑症、自己免疫血小板減少症、乾癬、IgA腎症、IgM多発神経病症、重度筋無力症、糖尿病、レイノー症候群、及び糸球体腎炎によって構成された群のうちから選択されたいずれか一つである、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記血管炎は、大血管血管炎、中血管血管炎または小血管血管炎である、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記血管炎は、巨大細胞動脈炎、高安動脈炎、コーガン症候群における大動脈炎、脊椎関節症における大動脈炎、孤立性大動脈炎、川崎病、結節性多発動脈炎、ANCA関連血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、中枢神経系原発性脈管炎、IgA血管炎、リウマチ関節炎関連血管炎、全身紅斑ループス関連血管炎、シェーグレン症候群関連血管炎、クリオグロブリン血管炎、及び薬物誘発血管炎によって構成された群のうちから選択されたいずれか一つである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
さらに薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項26に記載の薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GIP誘導体、その持続型結合体、及びそれを含む炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管炎(vasculitis)は、免疫細胞が血管または血管壁を攻撃し、血管壁内に炎症を誘発して生じる疾患である。血管炎は、多様な分類方法によっても分類されるが、現在最も多用されている分類法は、ジェネット(Jennette)らが提示した侵犯された血管の大きさによる分類である(Jennette JC, Falk RJ, Andrassy K et al. Nomenclature of systemic vasculitides. Proposal of an international consensus conference. Arthritis Rheum 37:187-92, 1994)。
【0003】
高安動脈炎(TA:Takayasu arteritis)と巨大細胞動脈炎(GCA:giant cell arteritis)は、大動脈のような大血管を侵犯する代表的な大血管血管炎(LVV:large vessel vasculitis)である。血管炎の症状は、血管の直接の損傷、または血液供給が妨害または減少された組織の間接的な損傷にも起因しうる。その症状は、炎症が引き起こされた血管の大きさ、位置、損傷程度によって多様である。血管炎は、症状が多様であり、非特異的であるために、早期診断が困難であり、血管変形がかなり進んだ後になってこそ、診断される場合が多く、治療に困難さが伴う。また、TA及びGCAのいずれも原因が知られておらず、人種、地域、性別によって違いはあるが、発生が多くない珍しい疾患であるために、それに係わり、活発な研究が進められていなかった状況である。
【0004】
血管炎の治療は、炎症緩和のために、糖質コルチコイド(glucocorticoid)を利用するのがほとんどであるが、ステロイドの特性上、高用量または長期間の使用時、副作用が大きいという短所がある。そして、糖質コルチコイドの投薬を中断するか、あるいは用量を減らして使用することになれば、緩和された症状が再発するというような問題点がある。
【0005】
LVVは、まだ根本的な治療剤の開発が十分でなく、充足を求める需要が高い分野のうち一つである。副作用が少なく、血管炎が非可逆的な血管病変に進むことを防ぎ、今後の発生可能な合併症を予防するために、適切な治療剤の開発が要求されている。
【0006】
血管炎及び動脈硬化症の場合、病症が生ずる組織が血管であるという点と、慢性炎症疾患という点とにおいて共通点があるが、疾患発生に脂質が関与するか否かということによっても区分される。動脈硬化症は、血液内脂質が血管壁にたまり、血管が細くなるのが疾患の発生経路であり、血管炎は、血管壁に侵犯した炎症反応が、疾患の発生経路である。従って、血管炎と動脈硬化症は、疾病の発生メカニズムだけではなく、病態生理学的に異なっており、治療法においても違いがある。
【0007】
GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、胃腸管で分泌される代表的なホルモン(インクレチンホルモン)であると共に、神経ホルモンであり、飲食物摂取に刺激を受けて分泌される。GIPは、小腸のK細胞から分泌される42個アミノ酸によって構成されたホルモンであり、血糖濃度に依存的に、膵臓からのインシュリン分泌あるいはグルカゴン分泌を促進しさせ、血糖の恒常性を維持するのに一助となると周知されており、最近の研究においては、食餌抑制効果が報告されている。
【0008】
一方、天然型GIPの場合、DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)酵素により、N末端側で切断が起こることになれば、その活性を喪失してしまい、当該反応は、体内で非常に速い速度で起こる。従って、人体内において、GIPの半減期は、約7分と非常に短いと知られている(J Clin Endocrinol Metab. 2000 Oct; 85 (10):3 575-81)。従って、GIPの効能を利用し、治療剤開発に使用する場合、体内で持続性が増大された誘導体を開発することが要求される。
【0009】
そのために、本発明者らは、ヒトGIP受容体において高活性を示し、体内持続性が改善された持続型GIP誘導体結合体を開発し、その血管炎に対する治療剤としての可能性を確認し、本発明完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規のGIP誘導体を提供する。
【0011】
本発明は、前記GIP誘導体をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0013】
本発明は、前記ポリヌクレオチドまたはそのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0014】
本発明は、前記GIP誘導体と、生体内半減期を増加させる生体適合性物質とが結合された結合体を提供する。
【0015】
本発明は、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体を含む炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明は、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体、あるいは前記薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患または自己免疫疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0017】
本発明は、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書全般において、天然に存在するアミノ酸に係わる通常の1文字コード及び3文字コードが使用されるだけではなく、Aib(α-アミノ-イソ酪酸)のような他のアミノ酸について一般的に許容される3文字コードが使用される。また、本明細書において、略語で言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法によって記載されている。
【0019】
アラニンAla,A
アルギニンArg,R
アスパラギンAsn,N
アスパラギン酸Asp,D
システインCys,C
グルタミン酸Glu,E
グルタミンGln,Q
グリシンGly,G
ヒスチジンHis,H
イソロイシンIle,I
ロイシンLeu,L
リシンLys,K
メチオニンMet,M
フェニルアラニンPhe,F
プロリンPro,P
セリンSer,S
スレオニンThr,T
トリプトファンTrp,W
チロシンTyr,Y
バリンVal,V
【0020】
一態様は、GIP誘導体を提供する。
【0021】
「GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptideまたはgastric inhibitory polypeptide)」は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のK細胞から分泌されるホルモンであり、血中糖濃度調節に関与する物質として最初に報告されている。
【0022】
前記「GIP誘導体」とは、天然型GIP配列において、少なくとも1以上のアミノ酸に変形が起こった天然型GIPの誘導体であり得る。前記変形は、置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、改質(modification)、及びそれらの2以上の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。前記追加されるアミノ酸配列は、天然GIPアミノ酸配列に由来するものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0023】
前記GIP誘導体は、GIP受容体に対して活性を有するペプチドであり得る。前記「GIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、前記GIP受容体に対して有意レベルの活性を有し、具体的には、GIP受容体に対し、インビトロ(in vitro)活性が、天然型リガンド(天然型GIP)対比で、約で、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、100%ないし500%、または100%ないし200%を示すものを意味しうる。そのようなGIP受容体に対して活性を有するペプチドのインビトロ活性を測定する方法は、本願明細書の実施例2を参照することができるが、特別にそれに制限されるものではなく、当業界に知られた方法であるならば、適切に使用し、インビトロ活性を測定することができる。
【0024】
「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをいずれも含む範囲であり、「約」という用語後に出てくる数値と同等であるか、あるいは類似した範囲の数値をいずれも含むが、それに制限されるものではない。
【0025】
一実施形態具体例において、前記GIP誘導体は、天然型または変異されていないGIPタンパク質において、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10個、またはそれ以上のアミノ酸において、保存的置換が起こったものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0026】
「保存的置換(conservative substitution)」とは、1アミノ酸を、類似した構造的及び/または化学的な性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。前記GIP誘導体は、天然型または変異されていないGIPタンパク質の生物学的活性を依然として保有しながら、例えば、1以上の保存的置換を有しうる。そのようなアミノ酸置換は、一般的に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/または両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいても生じうる。例えば、正に荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含み、負に荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み、芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含み、疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンを含む。また、アミノ酸は、電荷を帯びる(electrically charged)側鎖を有するアミノ酸と、電荷を帯びていない(uncharged)側鎖を有するアミノ酸とに分類される。電荷を帯びる側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンを含み、電荷を帯びていない側鎖を有するアミノ酸は、また非極性(nonpolar)アミノ酸または極性(polar)アミノ酸に分類される。非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリンを含み、極性アミノ酸は、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンを含むものであり得る。前述のような類似した性質を有するアミノ酸における保存的置換は、同一であるか、あるいは類似した活性を示すと期待される。
【0027】
前記GIP誘導体は、非自然発生(non-naturally occurring)のものであり得る。
【0028】
前記GIP誘導体は、分離されたペプチドであり得る。
【0029】
一実施形態において、前記GIP誘導体は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドである:
[一般式1]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43
【0030】
前記一般式1において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aib、チロシン(Tyr,Y)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)、リシン(Lys,K)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)、Aibまたはリシン(Lys,K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa23は、バリン(Val,V)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn,N)、アラニン(Ala,A)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)、グリシン(Gly,G)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であるか、あるいは存在せず、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であるか、あるいは存在せず、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であるか、あるいは存在せず、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であるか、あるいは存在せず、
Xaa39は、セリン(Ser,S)、アスパラギン(Asn,N)またはシステイン(Cys、C)であるか、あるいは存在せず、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【0031】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号1ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0032】
他の実施形態において、前記ペプチドは、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含むものであり得る:
[一般式2]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43
【0033】
前記一般式2において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aib、またはチロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)、Aibまたはリシン(Lys,K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn,N)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)、アスパラギン(Asn,N)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【0034】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号11,17、及び配列番号19ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0035】
さらに他の実施形態において、前記ペプチドは、下記一般式3で表されるアミノ酸配列を含むものであり得る:
[一般式3]
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Asn-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43
【0036】
前記一般式3において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【0037】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0038】
他の実施形態において、前記一般式3において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa14は、ロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)であり、
Xaa41ないしXaa43は、存在しないものであり得る。
【0039】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号17、21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0040】
他の実施形態において、前記一般式1において、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa23は、バリン(Val,V)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa29は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa30は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa31は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、アスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa35は、アスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、トリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、ヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、アスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa40は、イソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa41は、スレオニン(Thr,T)であり、
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であり得る。
【0041】
ただし、前記一般式1ないし3で、Xaa32ないしXaa43のうちいずれか1つのアミノ酸が存在しない場合、その後のアミノ酸配列は、存在しないものであり得る。一例として、Xaa32が存在しない場合、Xaa33ないしXaa43は、存在しないものであり得る。他の例として、Xaa41が存在しない場合、Xaa42ないしXaa43は、存在しないものであり得る。
【0042】
他の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号1ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。
【0043】
他の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19ないし26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。
【0044】
他の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。
【0045】
他の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号17、21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号17、21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号17、21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得るであり得る。
【0046】
本願において、「特定配列番号によって構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列によってなるペプチドと同一であるか、あるいは相応する活性を有する場合であるならば、当該配列番号のアミノ酸配列先後の無意味な配列追加、または自然に生じうる突然変異、あるいはその沈黙突然変異(silent mutation)を除くものではなく、そのような配列追加あるいは突然変異を有する場合にも、本発明の範囲内に属するということが自明である。すなわち、一部配列の差があっても、ある程度レベル以上の配列同一性を示し、GIP受容体に対する活性を示すものであるならば、本発明の範囲に属しうる。具体的には、前記ペプチドは、配列番号1ないし26のアミノ酸配列と、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0047】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と、互いに関連する程度を意味し、百分率でもっても表される。任意の2つのペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するか否かということは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444におけるようなデフォルトパラメータを利用し、「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用しても決定される。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0またはその後バージョン)において行われるような、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されても決定される(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984), BLASTP, BLASTN, FASTA(Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994, 及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを利用し、相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0048】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2: 482に公知されているように、例えば、Needleman et al.(1970), J Mol Biol.48: 443のようなGAPコンピュータプログラムを利用し、配列情報を比較することによっても決定される。要約すれば、GAPプログラムは、2つの配列のうちさらに短いものにおける記号の全体数でもって、類似した配列された記号(すなわち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)によって開示されているように、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(または、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)、2)各ギャップのための3.0のペナルティ、及び各ギャップにおける各記号のための追加0.10ペナルティ(または、ギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)、並びに(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むものであり得る。従って、本発明で使用されているものとして、用語である「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0049】
一実施形態において、多様なペプチド製造のためのさまざまな方法の組み合わせにより、一態様による一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを製造することができる。
【0050】
一態様によるペプチドは、その長さにより、本分野において周知の方法、例えば、自動ペプチド合成基によって合成することができ、遺伝子操作技術によって生産することもできる。具体的には、前記ペプチドは、標準合成方法、組み換え発現システム、または任意の他の当該分野の方法によっても製造される。従って、一態様によるペプチドは、例えば、下記のところを含む方法を含む多数の方法によっても合成されるが、それらに制限されるものではない:
(a)ペプチドを固体相方法または液体相方法の手段でもって、段階的または断片組み立てによって合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、
(b)ペプチドをコーディングする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、
(c)ペプチドをコーディングする核酸作製物の無細胞試験管内発現を行い、発現生成物を回収する方法、または
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによってペプチド断片を得て、次に、該断片を連結させてペプチドを得て、当該ペプチドを回収する方法。
【0051】
また、前記ペプチドの製造は、L型アミノ酸あるいはD型アミノ酸、及び/または非天然型アミノ酸を利用した変形、及び/または天然型配列の改質、例えば、側鎖作用基の変形、分子内共有結合、例えば、側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化のように改質することによって変形することをいずれも含む。また、前記変形は、非天然型化合物への置換をいずれも含む。
【0052】
前記変形に利用される置換されたり、追加されたりするアミノ酸は、ヒトタンパク質において一般的に観察される20個のアミノ酸だけではなく、非定形アミノ酸または非自然発生アミノ酸を使用することができる。非定形アミノ酸の商業的出処には、Sigma-Aldrich、ChemPep及びGenzyme Pharmaceuticalsが含まれるものであり得るが、それらに制限されるものではない。例えば、Aib(aminoisobutyric acid)は、アセトンから、ストレッカーのアミノ酸合成によっても製造されるが、それに制限されるものではない。そのような非定形ミノ酸または非自然発生アミノ酸が含まれるペプチドと定形的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成社、例えば、米国のAmerican Peptide CompanyやBachem、または韓国のAnygenを介して、合成及び購入することができるが、それに制限されるものではない。
【0053】
また、前記ペプチドは、N末端及び/またはC末端が変形されていないものであり得るが、生体内のタンパク質切断酵素から保護され、安定性を上昇させるために、そのN末端及び/またはC末端などが化学的に変形されるか、有機端に保護されるか、あるいはペプチド末端などにアミノ酸が追加されて変形されたりする形態も、前記態様によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が変形されていない場合、ペプチド末端は、自由カルボン酸を有するが、特別にそれに制限されるものではない。
【0054】
特に、化学的に合成されたペプチドの場合、N末端及びC末端が電荷を帯びているために、そのような電荷を除去するため、にN末端及び/またはC末端を変形することができる。例えば、N末端のアセチル化(acetylation)及び/またはC末端のアミド化(amidation)が可能であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0055】
一実施形態において、前記ペプチドは、そのC末端が変形されていないか、あるいはアミド化されたものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0056】
前記ペプチドは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒化物の形態をいずれも含む。
【0057】
前記塩の種類は、特別に制限されるものではない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全であって効果的な形態であることが望ましいが、特別にそれに制限されるものではない。
【0058】
また、前記ペプチドは、薬学的に許容される任意の形態であり得る。
【0059】
用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができるほどの十分な量であり、副作用を起こさないものを意味し、疾患の種類、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、または同時使用される薬物のように、医学分野に周知の要素により、当業者により、容易に決定されうる。
【0060】
一実施形態において、前記ペプチドは、その薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。前記塩は、薬学分野、例えば、炎症性疾患または自己免疫疾患の分野において使用される通常の酸付加塩、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸または硝酸のような無機酸から誘導された塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸またはトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導された塩を含む。また、前記塩は、アンモニウム、ジメチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミンのような塩基付加塩であり得る。また、前記塩は、通常の金属塩形態、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムのような金属から誘導された塩を含む。前記酸付加塩、塩基付加塩または金属塩は、通常の方法によっても製造される。薬学的に許容可能な塩、及びそれを製造する一般方法論は、関連技術分野に広く公知されている。例えば、文献[P. Stahl, et al. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2nd Revised Edition (Wiley-VCH, 2011)],[S.M. Berge, et al., 「Pharmaceutical Salts」, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977]を参照することができる。
【0061】
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成に有用な各種活性化試薬、特に望ましくは、トリスホスホニウム塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミドなどが使用されうる。トリスホスホニウム塩の例は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)を含み、テトラメチルウロニウム塩の例は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2-(5-ノボラン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)を含み、カルボジイミドの例は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などを含む。それらを利用する縮合のために、ラセミ化阻害剤[例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)など]の添加が望ましい。縮合に使用される溶媒は、ペプチド縮合反応に有用なものであると公知されたもののうちからも適切に選択される。例えば、無水N,N-ジメチルホルムアミドまたは水含有N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのような酸アミド;塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化された炭化水素;トリフルオロエタノール、フェノールのようなアルコール;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド;ピリジンのような3級アミン;ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル;それらの適切な混合物などが使用されうる。反応温度は、ペプチド結合反応に使用可能であると公知された範囲から適切に選択され、通常、約で-20℃ないし90℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常、1.5倍ないし6倍過剰に使用される。固相合成において、ニンヒドリン反応を利用する試験が、縮合が不十分であることを示す場合、十分な縮合は、保護基の除去なしに、縮合反応を反復することによっても行われる。反応を反復した後にも、縮合が依然として不十分である場合、未反応アミノ酸は、酸無水物、アセチルイミダゾールなどによってもアセチル化されるので、後続反応に対する影響が回避されうることになる。
【0062】
出発アミノ酸のアミノ基に係わる保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチルなどを含む。
【0063】
出発アミノ酸に対するカルボキシル保護基の例は、前述のC-Cアルキル基、C-C10シクロアルキル基、C-C14アルアルキル基以外に、アリール、2-アダマンチル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルハイドラザイド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどを含む。
【0064】
セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基は、例えば、エステル化またはエーテル化によっても保護される。エステル化に適する基の例は、アセチル基のような低級(C-C)アルカノイル基、ベンゾイル基のようなアロイル基、及び有機酸などに由来する基を含む。また、エーテル化に適する基の例は、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)などを含む。
【0065】
チロシンのフェノール性ヒドロキシル基に係わる保護基の例は、Bzl、2,6-ジクロロベンジル、2-ニトロベンジル、Br-Z、tert-ブチルなどを含む。
【0066】
ヒスチジンのイミダゾールに係わる保護基の例は、p-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmocなどを含む。
【0067】
アルギニンのグアニジノ基に係わる保護基の例は、Tos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NOなどを含む。
【0068】
リシンの側鎖アミノ基に係わる保護基の例は、Z、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデニル(Dde)などを含む。
【0069】
トリプトファンのインドリルに係わる保護基の例は、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどを含む。
【0070】
アスパラギン及びグルタミンに係わる保護基の例は、Trt、キサンチル(Xan)、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)などを含む。
【0071】
出発物質中の活性化されたカルボキシル基の例は、対応する酸無水物、アザイド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))]などを含む。出発材料内の活性化されたアミノ基の例は、対応するインアミドを含む。
【0072】
保護基を除去する方法の例は、Pd-ブラックまたはPd-炭素のような触媒の存在下における水素ストリーム中の触媒還元;無水フルオロ水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンソルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはその混合物溶液を利用した酸処理;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを利用した塩基処理;及び液体アンモニア内におけるナトリウムによる還元などを含む。前述の酸処理による除去反応は、一般的に、-20℃ないし40℃の温度で行われ、該酸処理は、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール及びパラクレゾール;ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール、トリイソプロピルシランのような陽イオンスカベンジャー(cation scavenger)を添加することにより、効率的に行われる。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として使用される2,4-ジニトロフェニル基は、チオフェノール処理によって除去され、トリプトファンのインドール保護基として使用されるポルミル基は、1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在中において、酸処理によるだけではなく、希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニアなどによるアルカリ処理による脱保護によって除去される。
【0073】
出発物質と保護基との反応に関与することがあってはならない作用基の保護、保護基の除去、反応に関与する作用基の活性化などは、公知された保護基、及び公知された手段から適切に選択されうる。
【0074】
本明細書で言及されたペプチドにつき、左側端部が通常のペプチドマーキングに沿ってN末端(アミノ末端)であり、右側端部がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(-CONH)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アルキルアミド(-CONHR’、ここで、R’は、アルキルである)及びエステル(-COOR’、ここで、R’は、アルキルまたはアリールである)のうちいずれか一つであり得る。
【0075】
ペプチドのアミドを製造する方法において、それは、アミド合成のために樹脂を利用する固相合成によって形成されるか、あるいはカボキシ末端アミノ酸のα-カルボキシル基がアミド化され、ペプチド鎖がアミノ基側に向けて目的とする鎖長に延長され、その後、ペプチド鎖だけのN末端α-アミノ基に係わる保護基が除去されたペプチド、及びC末端カルボキシル基に係わる保護基だけがペプチド鎖から除去されたペプチドが製造され、それら2つのペプチドは、前述の混合された溶媒中で縮合される。縮合反応に係わる詳細につき、前述のようなところが適用される。縮合によって得られた保護されたペプチドが精製された後、全ての保護基が、前述の方法によって除去され、目的とするペプチドを得ることができる。このペプチドを、主な分画を精製し、かつ凍結乾燥の各種公開的に公知された手段を利用して精製することにより、ペプチドが目的とするアミドが製造されうる。
【0076】
一実施形態において、前記ペプチドは、その溶媒化物の形態であり得る。「溶媒化物」とは、前記ペプチドまたはその塩が、溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0077】
他の態様は、前記GIP誘導体をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0078】
前記GIP誘導体については、前述の通りである。
【0079】
前記ポリヌクレオチドは、分離されたポリヌクレオチドであり得る。
【0080】
前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコーディングするDNA及びRNAを含む。
【0081】
前記ポリヌクレオチドは、変形されうる。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、または非保存的置換または保存的置換を含む。
【0082】
前記ポリヌクレオチドは、当該配列と、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列によって構成されるものであり得る。
【0083】
他の態様は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0084】
用語「ベクター(vector)」とは、宿主細胞において、目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミド(cosmid)ベクター、バクテリオファージ(bacteriophage)ベクター、アデノウイルス(adenovirus)ベクター、レトロウイルス(retrovirus)ベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。それら組み換えベクターとしても使用されるベクターは、当業界で往々に使用されるプラスミド(plasmid)(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、pUC19及びp426GPDなど)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1及びM13など)またはウイルス(例えば、CMV、SV40など)を操作しても作製されるが、それらに制限されるものではない。プラスミドが現在ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、折々相互交換的に使用される。
【0085】
前述の組み換えベクターにおいて、GIP誘導体をコーディングするポリヌクレオチドは、プローモーター(promoter)に作動可能にも連結される。用語「作動可能に連結」されているというのは、目的タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプローモーターの配列と、前記ポリヌクレオチド配列とが機能的に連結されていることを意味する。
【0086】
前記組み換えベクターは、典型的に、クローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとしても構築される。前記発現用ベクターは、当業界において、植物、動物または微生物において、外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。前記組み換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を介しても構築されえる。
【0087】
前記組み換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にしても構築される。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主にする場合、転写を進行させうる強力なプローモーター(例えば、pLλプローモーター、trpプローモーター、lacプローモーター、tacプローモーター、T7プローモーターなど)、解読開始のためのリボソーム結合サイト、及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主にする場合、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点は、f1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点、CMV複製原点及びBBV複製原点などを含むが、それらに制限されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプローモーター(例えば、メタロチオニンプローモーター)、または哺乳動物ウイルスに由来するプローモーター(例えば、アデノウイルス後期プローモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプローモーター、SV40プローモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プローモーター、及びHSVのtkプローモーター)が利用されうるが、一般的に、転写終結配列として、ポリアデニル化配列を有する。
【0088】
他の態様は、前記ポリヌクレオチドまたはそのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0089】
前記宿主細胞は、分離された細胞であり得る。
【0090】
組み換えベクターに形質転換されうる宿主細胞としては、通常、DNAの導入効率と、導入されたDNAの発現効率とが高い宿主が使用される。例えば、大腸菌、シュードモナス、バシラス、ストレプトマイセス、真菌、酵母のような周知の真核宿主及び原核宿主、スポドプテラ・フルギペルダ(SF9)のような昆虫細胞、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10のような動物細胞などが使用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0091】
ポリヌクレオチド、またはそれを含む組み換えベクターの宿主細胞内への挿入は、当業界に広く知られた方法を使用することができる。その運搬方法は、例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、塩化カルシウム(CaCl)方法または電気穿孔法などを使用することができ、宿主細胞が真核細胞である場合、微細注入法、酢酸カルシウム沈澱法、電気穿孔法、リポソーム媒介形質感染法及び遺伝子ボムバードメントなどを使用することができるが、それらに制限されるものではない。
【0092】
前記ポリヌクレオチドは、自主的に発現されるのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されうる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプローモーター、転写終結信号、リボソーム結合部位、及び翻訳終結信号を含むものであり得る。前記発現カセットは、自体複製が可能な発現ベクター形態であり得る。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、該宿主細胞において、発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであり得るが、それに限定されるものではない。
【0093】
他の態様は、前記GIP誘導体と、生体内半減期を増加させる生体適合性物質とが結合された結合体を提供する。
【0094】
前記GIP誘導体については、前述の通りである。
【0095】
前記生体適合性物質は、キャリア(carrier)とも混用される。
【0096】
前記結合体は、分離された結合体であり得る。
【0097】
前記結合体は、天然型GIPと同等、またはそれ以上のGIP受容体に対する活性を示すと共に、キャリアが結合されていない天然型GIPまたはGIP誘導体に比べ、増加された効力の持続性を示すことができる。従って、前記結合体は、持続型結合体であり得る。用語「持続型結合体」とは、生体適合性物質が結合されていない天然型GIPまたはGIP誘導体に比べ、効力持続性が増加された結合体を意味する。従って、前記結合体は、「持続型GIP誘導体結合体」、「持続型GIP誘導体」または「持続型GIP結合体」とも称される。そのような結合体は、前述の形態だけではなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などをいずれも含む。
【0098】
前記結合体は、非自然発生(non-naturally occurring)のものであり得る。
【0099】
前記生体適合性物質は、前記GIP誘導体と、共有化学結合または非共有化学結合によって互いに結合されるものでもあり、共有化学結合、非共有化学結合、またはそれらの組み合わせにより、リンカ(L:linker)を介して互いに結合されるものであり得る。GIP誘導体内の1以上のアミノ酸側鎖は、生体内において、可溶性及び/または半減期を増加させ、かつ/あるいは生体利用率を上昇させるために、そのような生体適合性物質にも接合される。そのような変形は、また治療学的タンパク質及びペプチドの消去(clearance)を低減させることができる。前述の生体適合性物質は、水溶性(両親媒性または親水性)、及び/または無毒性、及び/または薬学的に許容可能なものであり得る。
【0100】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の反復単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(transferrin)、糖類(saccharide)、ヘパリン、並びにエラスチンによって構成された群のうちから選択されるものであり得るが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0101】
前記高分子重合体の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される高分子重合体を有することができ、前記多糖類としては、デキストランが含まれるものであり得るが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0102】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0103】
前記脂肪酸は、生体内アルブミンと結合力を有するものであり得るが、特別にそれに制限されるものではない。
【0104】
前記生体適合性物質は、ポリリシン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸のようなポリアミノ酸を含むが、それらに制限されるものではない。
【0105】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)でもあり、それらのうち、一部配列あるいは一部反復単位の重合体でもあり、例えば、エラスチン類似ポリペプチドの場合をいずれも含むが、特別にそれに制限されるものではない。
【0106】
一実施形態において、前記生体適合性物質は、FcRn結合物質であり得る。具体的には、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域でもあり、さらに具体的には、IgGFc領域、さらに具体的には、糖鎖化されていないIgG4Fc領域であり得るが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0107】
「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを除いた、重鎖不変領域2(CH2)部分及び/または重鎖不変領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、一態様による結合体のモイエティをなす一構成であり得る。
【0108】
そのような免疫グロブリンFc領域は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0109】
一実施形態において、免疫グロブリンFc領域は、N末端に、特定ヒンジ配列を含むものであり得る。
【0110】
用語「ヒンジ配列」は、重鎖に位置し、内部二硫化結合(inter disulfide bond)を介し、免疫グロブリンFc断片の二量体を形成する部位を意味する。
【0111】
一実施形態において、前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸配列を有するヒンジ配列のうち一部が欠失され、1つのシステイン残基のみを有するように変異されたものであり得るが、それに制限されるものではない:
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号27)。
【0112】
前記ヒンジ配列は、配列番号27のヒンジ配列において、8番目または11番目のシステイン残基が欠失され、1つのシステイン残基のみを含むものであり得る。一実施形態によるヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみを含む、3個ないし12個のアミノ酸によって構成されたものであり得るが、それに制限されるものではない。さらに具体的には、一実施形態によるヒンジ配列は、次のような配列を有しうる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号28)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号29)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号30)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号31)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号32)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号33)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号34)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号35)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号36)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号37)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号38)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号39)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号40)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号41)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号42)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号43)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号44)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号45)、Ser-Cys-Pro(配列番号46)。
【0113】
さらに具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号37(Pro-Ser-Cys-Pro)または配列番号46(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0114】
一実施形態による免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在として、免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態であり得る。また、一実施形態による化学式1の結合体は、リンカの一末端が、二量体の免疫グロブリンFc領域の1つの鎖に連結された形態であり得るが、それに制限されるものではない。
【0115】
用語「N末端」は、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端を意味するものであり、該アミノ末端の最末端、または最末端から、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のアミノ酸まで含むものであり得る。本発明の免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ配列をN末端に含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0116】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型と、実質的に同等であるか、あるいは向上された効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であり得る。また、CH2及び/またはCH3に該当する相当に長い一部アミノ酸配列が除去された領域であり得る。
【0117】
例えば、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ、並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。
【0118】
前記免疫グロブリンFc領域は、二合体形態(dimeric form)でもあり、二合体形態の1つのFc領域に、GIP誘導体1分子が共有結合的に連結され、このとき、前記免疫グロブリンFcとGIP誘導体は、非ペプチド性重合体によって互いに連結されうる。一方、二合体形態の1つのFc領域に、GIP誘導体2分子が対称的に結合することも可能である。このとき、前記免疫グロブリンFcとGIP誘導体は、非ペプチド性リンカによっても互いに連結される。しかしながら、前述の例に制限されるものではない。
【0119】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけではなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基が、欠失、挿入、非保存的置換または保存的置換、またはそれらの組み合わせによって異なる配列を有するものを意味する。
【0120】
例えば、IgGFcの場合、結合に重要であると知られた214番ないし238番、297番ないし299番、318番ないし322番、または327番ないし331番のアミノ酸残基が、変形のために適切な部位としても利用される。また、二硫化結合を形成することができる部位が除去されるか、天然型Fcから、N末端のいくつかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端に、メチオニン残基が付加されうるというように、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されもし、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されもする。そのような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0121】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H. Neurath、R. L. Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser,Val/Ile,Asp/Glu,Thr/Ser,Ala/Gly,Ala/Thr,Ser/Asn,Ala/Val,Ser/Gly,Thy/Phe,Ala/Pro,Lys/Arg,Asp/Asn,Leu/Ile,Leu/Val,Ala/Glu,Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などによっても変形(modification)される。
【0122】
前述のFc誘導体は、前記Fc領域と同等な生物学的活性を示し、Fc領域の列、pHなどに係わる構造的安定性を増大させたものであり得る。
【0123】
また、そのようなFc領域は、ヒト、牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラットまたはギニアピッグのような動物の生体内から分離された天然型からも得られ、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体であり得る。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンを、ヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であり得る。パパインを処理する場合には、Fab及びFcから切断し、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2から切断する。それをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを利用し、FcまたはpF’cを分離することができる。さらに具体的な実施例においては、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0124】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増大された糖鎖、天然型に比べて低減された糖鎖、または糖鎖が除去された形態であり得る。そのような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法、及び微生物を利用した遺伝工学的方法のような一般的な方法が利用されうる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が顕著に低下され、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が低減または除去されるので、生体内において、不要な免疫反応を誘発しない。そのような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、糖鎖が除去されるか、あるいは糖鎖化されていない免疫グロブリンFc領域であると言うことができる。
【0125】
「糖鎖の除去(deglycosylation)」は、酵素から党を除去したFc領域を言い、非糖鎖化(aglycosylation)は、原核動物、さらに具体的な実施例においては、大腸菌で生産され、糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0126】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMに由来するか、あるいはそれらの組み合わせ(combination)、またはそれらの混成(hybrid)によるFc領域であり得る。さらに具体的な実施例においては、ヒト血液に最も豊富なIgGまたはIgMに由来するものであり、一層具体的な実施例においては、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させると公知されたIgG由来である。さらに一層具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4Fc領域であり、最も具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の糖鎖化されていないFc領域であるが、それらに制限されるものではない。
【0127】
「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが、異なる起源の一本鎖ポリペプチドとの結合を形成することを意味する。すなわち、IgGFc、IgAFc、IgMFc、IgDFc及びIgEのFc断片によってなるグループから選択された2個以上の断片から、二量体または多量体の製造が可能である。
【0128】
前記GIP誘導体は、リンカを介し、生体適合性物質と連結されうる。
【0129】
前記リンカは、ペプチド性リンカまたは非ペプチド性リンカであり得る。
【0130】
前記リンカがペプチド性リンカであるとき、1個以上のアミノ酸を含むものでもあり、例えば、1個から1,000個のアミノ酸を含むものであり得るが、特別にそれに制限されるものではない。前記ペプチド性リンカは、Gly,Asn及びSer残基を含むものでもあり、Thr及びAlaのような中性アミノ酸も含まれるものであり得る。前記生体適合性物質とGIP誘導体とを連結するために、公知の多様なペプチドリンカが使用されうる。また、機能的一部分間の適切な分離を達成するか、あるいは必須な内部モイエティ(inter-moiety)の相互作用を維持するためのリンカの最適化を考慮し、コピー数「n」を調節することができる。当該技術分野において、他の可撓性リンカが知られているが、例えば、水溶性を向上させるために、極性アミノ酸残基を追加するだけではなく、柔軟性を維持するために、T及びAのようなアミノ酸残基を追加させたGリンカ及びSリンカがあり得る。従って、一実施形態において、前記リンカは、G,S及び/またはT残基を含む柔軟性リンカであり得る。前記リンカは、(GpSs)n及び(SpGs)nから選択される一般式を有することができ、その場合、独立的して、pは、1ないし10の整数であり、s=0ないし10の0または整数であり、p+sは、20以下の整数であり、かつnは、1ないし20の整数である。さらに具体的には、該リンカの例は、(GGGGS)n、(SGGGG)n、(SRSSG)n、(SGSSC)n、(GKSSGSGSESKS)n、(RPPPPC)n、(SSPPPPC)n、(GSTSGSGKSSEGKG)n、(GSTSGSGKSSEGSGSTKG)n、(GSTSGSGKPGSGEGSTKG)nまたは(EGKSSGSGSESKEF)nであり、前記nは、1ないし20、または1ないし10の整数である。
【0131】
前記「非ペプチド性リンカ」は、反復単位が2個以上結合された生体適合性重合体を含む。前記反復単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合を介して互いに連結される。前記非ペプチド性リンカは、前記結合体のモイエティをなす1つの構成であり得る。
【0132】
前記「非ペプチド性リンカ」とは、「非ペプチド性重合体」と混用されて使用されうる。
【0133】
一実施形態において、前記結合体は、両末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域及びGIP誘導体と結合されうる反応基を含む非ペプチド性リンカを介し、該生体適合性物質と該GIP誘導体とが互いに共有結合的に連結されたものであり得る。
【0134】
具体的には、前記非ペプチド性リンカは、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものであり得る。
【0135】
特に、以下のところに制限されるものではないが、 前記非ペプチド性リンカは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)及びPLGA(polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものであり得る。前記多糖類は、デキストランであり得るが、それに制限されるものではない。
【0136】
さらに具体的な実施例において、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコールであり得るが、それに制限されるものではない。従って、前記リンカは、エチレングリコール反復単位を含むものであり得る。また、当該分野にすでに知られたそれら誘導体、及び当該分野の技術レベルで容易に製造することができる誘導体も、本発明の範囲に含まれる。
【0137】
前記非ペプチド性リンカは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性ある重合体であるならば、制限なしに使用されうる。非ペプチド性重合体の化学式量は、1ないし1,000kDa範囲、具体的には、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲であるが、それらに制限されるものではない。また、前記非ペプチド性リンカは、一種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組み合わせも使用される。一実施形態において、前記エチレングリコール反復単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲にあるものであり得る。
【0138】
一実施形態において、前記非ペプチド性リンカの両末端は、それぞれ生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミン基またはチオール基、及びGIP誘導体のアミン基またはチオール基に結合することができる。
【0139】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端に、それぞれ生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)及びGIP誘導体と結合されうる反応基、具体的には、GIP誘導体、あるいは生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端またはリシンに位置したアミン基、またはシステインのチオール基と結合されうる反応基を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0140】
また、生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域及びGIP誘導体と結合されうる、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、アルデヒド基として、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0141】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合によって連結されたものよりもはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHにおいて、N末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0条件においては、リシン残基と共有結合を形成することができる。
【0142】
また、前記非ペプチド性リンカの両末端の反応基は、互いに同一であるか、あるいは互いに異なりうる、例えば、一末端には、マレイミド基を、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有しうる。しかし、非ペプチド性リンカの各末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体とが結合されうるならば、特にそれに制限されるものではない。例えば、前記非ペプチド性リンカの一末端には、反応基としてマレイミド基を含み、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基などを含むものであり得る。
【0143】
両末端に、ヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを、非ペプチド性重合体として利用する場合には、公知の化学反応により、前記ヒドロキシ基を、前記多様な反応基で活性化するか、あるいは商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを利用し、前記持続型結合体を製造することができる。
【0144】
一実施形態において、前記非ペプチド性重合体は、GIP誘導体のシステイン残基、さらに具体的には、システインの-SH基に連結されるものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0145】
もしマレイミド-PEG-アルデヒドを使用する場合、マレイミド基は、GIP誘導体の-SHと、チオエーテル(thioether)結合でもって連結され、アルデヒド基は、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFcの-NHと、還元的アルキル化反応を介しても連結されるが、それらに制限されるものではなく、それは1つの一例に該当する。
【0146】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が、免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NH2連結されたものであり得るが、それは、一例に該当する。
【0147】
従って、前記一態様による結合体は、下記化学式1で表されうる:
【0148】
【化1】

【0149】
ただし、このとき、Xは、GIP誘導体であり、
Lは、リンカであり、
Fは、Xの生体内半減期を増大させる生体適合性物質であり、
-は、XとLとの結合連結、LとFとの結合連結を示す。
【0150】
前記化学式1で、GIP誘導体、リンカ及び生体適合性物質については、前述の通りである。
【0151】
前記化学式1で、Lは、Laでもあり、ここで、aは、0または自然数であり、ただし、aが2以上であるとき、それぞれのLは、互いに独立してもいる。
【0152】
具体的には、前記リンカは、下記化学式2で表されるポリエチレングリコール(PEG)であり得るが、それに制限されるものではない:
【0153】
【化2】

【0154】
ここで、n=10ないし2,400、n=10ないし480、またはn=50ないし250であるが、それらに制限されるものではない。
【0155】
前記持続型結合体において、PEGモイエティは、-(CHCHO)-構造だけではなく、連結要素とその-(CHCHO)-との間に介在する酸素原子も含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0156】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にそれらに制限されるものではない。
【0157】
一実施形態において、前記-は、XとLとの共有結合連結、LとFとの共有結合連結を示すことができる。
【0158】
前記結合体は、インビトロ及びインビボで、いずれも炎症関連遺伝子IL-1β,IL-6,IL-12,IFN-γ及びTNF-αの発現程度を低減させることを確認したので、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防または治療の用途にも使用される。
【0159】
前記GIP誘導体またはその結合体は、単核球/大食細胞株の細胞株であるTHP-1細胞株において、炎症関連遺伝子の発現程度を低減させることを確認した。大食細胞は、血管炎感染組織において、感染初期に、サイトカイン及びケモカインを分泌し、他の免疫細胞を動員し、炎症進行を誘導し、巨大細胞を形成すると知られている。また、GIP誘導体またはその結合体は、高脂肪食餌誘導肥満マウスの大動脈において、炎症関連遺伝子の発現程度を低減させることを確認した。また、GIP誘導体またはその結合体は、血管炎疾患モデルにおいて、炎症関連遺伝子の発現程度を低減させるだけではなく、血管炎の進行に重要な役割を行う血管再形成因子であるMMP-2とMMP-9との発現程度を低減させることを確認した。また、GIP誘導体またはその結合体は、アンジオテンシンII注入マウスにおいて、炎症関連遺伝子(例:IL-6及びTNF-α)の発現を低減させることを確認した。従って、前記GIP誘導体またはその結合体は、血管炎の予防または治療の用途に使用されうる。
【0160】
前記GIP誘導体またはその結合体は、下記のうちいずれか一つにより、血管炎の予防または治療の効果を示すことができる:
(i)大食細胞において、炎症関連遺伝子の発現を低減させたり抑制させたりする(前記炎症関連遺伝子は、IL-1β、IL-6、IL-12、IFN-γ及びTNF-αのうちから選択された1種以上である);
(ii)血管において、炎症関連遺伝子の発現を低減させたり抑制させたりする(前記炎症関連遺伝子は、MCP-1、IL-1α、IL-1β、IL-6、IFN-γ及びTNF-αのうちから選択された1種以上である);及び
(iii)血管において、血管再形成因子の発現を低減させたり抑制させたりする(前記血管再形成因子は、MMP-2及びMMP-9のうちから選択された1種以上である)。
【0161】
他の態様は、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、または前記結合体を含む、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0162】
前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、または前記結合体については、前述の通りである。
【0163】
用語「予防」とは、前記組成物の投与により、炎症性疾患または自己免疫疾患の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0164】
用語「治療」とは、前記組成物の投与により、炎症性疾患または自己免疫疾患の症状が好転するか、あるいは望ましいものになる全ての行為を意味する。
【0165】
前記「炎症性疾患または自己免疫疾患」とは、炎症に起因するか、炎症で生じるか、あるいは炎症を誘導する疾患、または個体内の自己免疫反応(自家抗原または自己抗原に対して作用する免疫反応)の存在を称する。自己免疫疾患は、獲得(adaptive)免疫系が自己抗原に対して反応し、細胞及び組織の損傷を媒介させる自体耐性の故障(breakdown)に起因する疾患を含む。具体的には、前記炎症性疾患または前記自己免疫疾患は、身体特定部位、例えば、血管、口腔、粘膜、胃腸、膵臓、皮膚、眼球、咽頭、扁桃、耳、骨、関節、軟骨、脳、脊髄、神経、骨髄、膀胱、肝臓、筋肉、甲状腺、胆管、腎臓などにおける炎症性疾患または自己免疫疾患;全身性炎症性疾患または自己免疫疾患などを含むが、それらに制限されるものではない。
【0166】
一実施形態において、前記炎症性疾患または前記自己免疫疾患は、血管炎(vasculitis)、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、視神経脊髄炎(NMO:neuromyelitis optica)、特発性血小板減少性紫斑症(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura、ITP)、血栓性血小板減少性紫斑症(TTP:thrombotic thrombocytopenic purpura)、自己免疫血小板減少症(autoimmune thrombocytopenia)、乾癬(psoriasis)、IgA腎症(IgA nephropathy)、IgM多発神経病症(IgM polyneuropathies)、重度筋無力症(myasthenia gravis)、糖尿病(diabetes mellitus)、レイノー症候群(Reynaud’s syndrome)及び糸球体腎炎(glomerulonephritis)によって構成された群のうちから選択されたいずれか一つであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0167】
一実施形態において、前記炎症性疾患または前記自己免疫疾患は、血管炎であり得る。前記血管炎は、侵犯された血管の大きさによっても分類される。前記血管炎は、大血管血管炎、中血管血管炎または小血管血管炎であり得る。前記血管炎は、大動脈(aorta)、及び主要分枝(major branches)を含む大型動脈(largest arteries)と係わる血管炎、中型動脈(medium-sized arteries)と係わる血管炎、中小型動脈(small and medium-sized arteries)と係わる血管炎、小型動脈(small arteries)と係わる血管炎、または多様な大きさの動脈及び静脈(arteries and veins of various sizes)と係わる血管炎などにも分類される。
【0168】
一実施形態において、前記血管炎は、下記のところによって構成された群のうちから選択されるものであり得るが、それらに制限されるものではない:
(1)巨大細胞動脈炎(GCA:giant cell arteritis)、高安動脈炎(TA:Takayasu’s arteritis)、コーガン症候群における大動脈炎(aortitis in Cogan’s syndrome)、脊椎関節症における大動脈炎(aortitis in spondylarthropathies)、孤立性大動脈炎(isolated aortitis)などを含む大型動脈と係わる血管炎;
(2)川崎病(Kawasaki disease)、結節性多発動脈炎(PAN:polyarteritis nodosa)などを含む中型動脈と係わる血管炎;
(3)ANCA関連血管炎(antineutrophil cytoplasmic antibodies-associated vasculitis)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA:granulomatosis with polyangiitis)(旧名称:ウェゲナー肉芽腫症(WG:Wegener’s granulomatosis))、顕微鏡的多発血管炎(MPA:microscopic polyangiitis)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA:eosinophilic granulomatosis with polyangiitis)(または、チャーグ・ストラウス症侯群(Churg-Strauss syndrome))、中枢神経系原発性脈管炎(primary angiitis of the central nervous system)などを含む中小型動脈と係わる血管炎;及び
(4)IgA血管炎(または、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henoch-Schonlein))、リウマチ関節炎関連血管炎,全身紅斑ループス関連血管炎,シェーグレン症候群関連血管炎(vasculitis related to rheumatoid arthritis,systemic lupus erythematosus and Sjogren's syndrome)、クリオグロブリン血管炎(cryoglobulinemic vasculitis)、薬物誘発血管炎(drug-induced vasculitis)などを含む小型動脈と係わる血管炎。
【0169】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものであり得る。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを使用することができる。
【0170】
一実施形態において、前記薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むものであり得る。
【0171】
前記薬学的組成物の剤形は、前述のような薬学的に許容可能な担体と混合しても多様に製造される。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ及びウェーハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。それ以外にも、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0172】
一方、製剤化に適する担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルジネート、ゼラチン、酢酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されうる。また、充填剤、抗凝個剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むものであり得る。
【0173】
前記薬学的組成物は、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための1以上の他の製剤をさらに含むものであり得る。具体的には、前記他の製剤は、抗炎症剤または免疫抑制剤であり得るが、それらに制限されるものではない。さらに具体的には、前記他の製剤は、血管炎治療剤であり得るが、それに制限されるものではない。
【0174】
「抗炎症剤」とは、炎症性疾患、またはそれと係わる症状の治療のための化合物を称する。該抗炎症剤は、非制限的な例として、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)(例:アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、サリチル酸メチル、ジフルニサル、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ケトロラク、カプロフェン、フェノプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、メトトレキサート、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びニメスリド)、コルチコステロイド(例:プレドニゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン及びフルチカゾン)、ラパマイシン(例:文献[Migita et al., Clin. Exp. Immunol. (1997) 108: 199-203]; [Migita et al., Clin. Exp. Immunol. (1996) 104: 86-91]; [Foroncewicz et al., Transpl. Int. (2005) 18: 366-368]参照)、高密度脂質タンパク質(HDL)及びHDLコレステロール上昇化合物(例:文献[Birjmohun et al. (2007) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 27: 1153-1158]; [Nieland et al. (2007) J. Lipid Res., 48: 1832-1845];抗炎症剤として、ロジグリタゾンの用途を開示した[Bloedon et al. (2008) J. Lipid Res., Samaha et al. (2006) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 26: 1413-1414], [Duffy et al. (2005) Curr. Opin. Cardiol., 20: 301-306]参照)、rhoキナーゼ抑制剤(例:文献[Hu, E. (2006) Rec. Patents Cardiovasc. Drug Discov., 1:2 49-263] 参照)、抗マラリア剤(例:ヒドロキシクロロキン及びクロロキン)、アセトアミノフェン、グルココルチコイド、ステロイド、β-作用剤、抗コリン剤、メチルキサンチン、金注入(例:金チオリンゴ酸ナトリウム)、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管形成剤、ダプソン、ソラレン、抗ウイルス剤、スタチン(例:文献[Paraskevas et al. (2007) Curr. Pharm. Des., 13: 3622-36]; [Paraskevas, K. I. (2008) Clin. Rheumatol. 27: 281-287]参照)、及び抗生物質(例:テトラサイクリン)を含む。特定実施形態において、該抗炎症剤は、スタチンまたは高密度脂質タンパク質(HDL)及びHDLコレステロール上昇化合物である。
【0175】
「免疫抑制剤」及び「免疫抑制性製剤」は、免疫反応、またはそれと係わる症状を抑制する化合物または組成物を含む。該免疫抑制剤は、非制限的な例として、プリン類似体(例:アザチオプリン)、メトトレキサート、シクロスポリン(例:シクロスポリンA)、シクロホスファミド、レフルノミド、ミコフェノレート(ミコフェノレートモフェチル)、ステロイド(例:グルココルチコイド、コルチコステロイド)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クロラムブシル、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、マクロライド(例:ピメクロリムス、タクロリムス(FK506)及びシロリムス)、デヒドロエピアンドロステロン、レナリドミド、CD40拮抗剤(例:抗CD40L抗体)、アベチムスナトリウム、BLys拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))、ダクチノマイシン、ブシラミン、ペニシラミン、レフルノミド、メルカプトプリン、ピリミジン類似体(例:シトシンアラビノシド)、ミゾリビン、アルキル化剤(例:窒素マスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファン及びシクロホスファミド)、葉酸拮抗剤(例:アミノプテリン及びメトトレキサート)、抗生物質(例:ラパマイシン、アクチノマイシンD、ミトマイシンC、フラマイシン及びクロラムフェニコール)、ヒトIgG、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗体(例:抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL-2受容体(例:ダクリズマブ及びバシリキシマブ)、抗α/β TCR、抗ICAM-1、ムロモナブ-CD3、抗IL-12、アレムツズマブ及び免疫毒素に対する抗体)、1-メチルトリプトファン、並びにその誘導体及び類似体を含む。特定実施形態において、該免疫抑制メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、シロリムス、及びBLyS拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))によって構成された群のうちから選択される。
【0176】
「血管炎治療剤」は、血管炎と係わる症状を抑制するか、あるいはそれを治療する化合物または組成物を含む。前記血管炎治療剤は、公知の物質を使用することができる。
【0177】
前記薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢・性別及び体重、疾患の重症度のようなさまざまな関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0178】
前記薬学的組成物は、生体内持続性及び力価にすぐれるので、投与回数及び頻度を顕著に低減させることができる。
【0179】
他の態様は、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、あるいは前記結合体または前記薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患または自己免疫疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0180】
前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、前記薬学的組成物、及び炎症性疾患または自己免疫疾患については、前述の通りである。
【0181】
「有効量」または「薬学的有効量」とは、患者に、単一または多回の用量で投与されたとき、診断下または治療下で、患者に所望する効果を提供する、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体の量または用量を称する。該有効量は、公知技術を使用したり、類似環境下で得られた結果を観察したりすることにより、関連技術分野の当業者としての主治医の診断により、容易に決定されうる。患者に対する有効量を決定するとき、哺乳動物種;その大きさ、年齢及び一般的な健康状態;関連する具体的な疾患または障害;疾患または障害の関連程度または重症度;個別患者の反応;投与される特定化合物;投与モード;投与される製剤の生体利用性特徴;選択された投薬療法;同時薬物処置使用;及び他の関連環境を含むが、それらに制限されない多数の因子が主治医の診断によって考慮される。
【0182】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0183】
「投与」とは、ある適切な方法により、患者に所定物質を導入することを意味する。投与経路は、患者の生体内標的に逹することができるいかなる一般的な経路であり得る。前記投与は、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、直腸内投与であり得るが、それらに制限されるものではない。
【0184】
前記投与は、一実施形態による組成物を、個体1個当たり、0.0001mgないし1、000mg、例えば、0.1mgないし1,000mg、0.1mgないし500mg、0.1mgないし100mg、0.1mgないし50mg、0.1mgないし25mg、1mgないし1,000mg、1mgないし500mg、1mgないし100mg、1mgないし50mg、または1mgないし25mgを投与するものであり得る。ただし、投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別・病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方され、当業者であるならば、そのような要因を考慮し、該投与量を適切に調節することができるのである。投与回数は、1日1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内において、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所、または2ヵ所以上に投与することができ、毎日、または2日間隔ないし5日間隔で、総投与日数は、1回の治療時、1日から30日まで投与されうる。必要な場合、適正時期後、同一治療を反復することができる。ヒト以外の動物についても、kg当たりヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的とする動物と、ヒトとの器官(心臓など)容積比(例えば、平均値)などにより、前述の投与量を換算した量を投与することができる。
【0185】
前記方法において、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体は、有効量の1以上の他の活性成分と同時に、個別、または順次に投与することができる。前記1以上の他の活性成分は、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための1以上の他の製剤であり得るが、それに制限されるものではない。
【0186】
他の態様は、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【0187】
前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、及び炎症性疾患または自己免疫疾患については、前述の通りである。
【0188】
本願で開示されるそれぞれの説明及び実施例は、それぞれの他の説明及び実施例にも適用される。すなわち、本願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な敍述により、本発明の範疇が制限されるとすることはできない。
【発明の効果】
【0189】
一態様によるGIP誘導体、またはその持続型結合体は、炎症関連因子の発現程度を低減させ、血管炎疾患モデルにおいて、血管再形成因子の発現程度を低減させる効果があるので、炎症性または自己免疫反応による血管炎の予防または治療の用途に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
図1】GIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体を製造し、SDS-PAGEによって分析した結果を示した図である。
図2】(A)は、天然型GIPまたは持続型GIP結合体の処理後、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12,IL-1β及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフであり、(B)は、天然型GIPまたは持続型GIP結合体の処理後、炎症関連サイトカインTNF-αの濃度を示したグラフである。
図3】マウスに、対照群または持続型GIP結合体を投与した後、炎症関連遺伝子IL-1α,IL-1β,IL-6,IFN-γ及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
図4】(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセプト投与群、及び持続型GIP結合体投与群の腎臓動脈おける、炎症関連遺伝子MCP-1,IL-1β,IL-6またはTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフであり、(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセプト投与群、及び持続型GIP結合体投与群の腎臓動脈における、血管再形成因子として知られているMMP-2とMMP-9との相対的な発現程度を示したグラフである。
図5】(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)、及び試験群(持続型GIP結合体3.163mg/kg)の大動脈弓における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフであり、(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)、及び試験群(持続型GIP結合体3.163mg/kg)の腹部大動脈における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0191】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって限定されるものではない。
【0192】
<実施例1:GIP受容体に対して活性を有するGIP誘導体の製造>
ヒトGIP受容体に活性を示すGIP誘導体を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0193】
【表1-1】

【0194】
【表1-2】

【0195】
前記表1に記載された配列において、Aibと表記されたアミノ酸は、非天然型アミノ酸であるAib(aminoisobutyric acid)である。前記GIP誘導体ペプチドは、必要により、C末端をアミド化したGIP誘導体として利用する。
【0196】
<実施例2:GIP誘導体のインビトロ活性測定>
前記実施例1で製造されたGIP誘導体の活性を測定するために、GIP受容体が形質転換された細胞株を利用し、インビトロで細胞活性を測定する方法を利用した。株は、CHO(Chinese hamster ovary)に対し、それぞれヒトGIP受容体遺伝子を発現するように形質転換されたものであり、GIPの活性を測定するのに適する。
【0197】
前記実施例1で製造されたGIP誘導体のヒトGIP受容体における活性測定のために、ヒトGIPを16nMから、4倍ずつ0.000015nMまで連続して希釈し、前記実施例1で製造されたGIP誘導体を、16nMから、4倍ずつ0.000015nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加え、細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用し、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0198】
ヒトGIP受容体におけるヒトGIP対比の相対力価は、下記表2に示されている。
【0199】
【表2-1】

【0200】
【表2-2】

【0201】
<実施例3:持続型GIP結合体の製造>
前記実施例1で製造されたGIP誘導体を含む持続型結合体を製造した。具体的には、配列番号11,17,21及び24のGIP誘導体を、それぞれ非ペプチド性重合体であるPEGを介し、免疫グロブリンFc領域と連結させた。
【0202】
具体的な持続型結合体の製造工程は、次の通りであり、同一工程を、配列番号11,17,21及び24のGIP誘導体結合体を製造するために反復した。免疫グロブリンFc領域のN末端をペギル化させるために、免疫グロブリンFc領域とMAL-10K PEG-ALD(マレイミド(maleimide)基とプロピオンアルデヒド(propionaldehyde)基とをそれぞれ有している10kD aPEG(NOF、日本))とを、モル比1:1~2、全体タンパク質濃度40~60mg/ml、pH6.0~6.5、4~8℃で、約3~4時間反応させた。このとき、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride(NaCNBH))還元剤を添加して反応させ、反応液は、CaptoQ ImpRes(GE Healthcare Life Science、米国)カラムを利用し、単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域を精製した。
【0203】
精製された単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体とを結合させるために、単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)とのモル比1:1~3、全体タンパク質濃度0.1~0.5mg/mlにし、イソプロパノールを含むバッファで、4~8℃で約14~18時間反応させた。反応液は、Source 15ISO(GE Healthcare Life Science、米国)カラムを使用し、免疫グロブリンFc領域にGIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)が、それぞれPEGによって共有結合で連結された結合体を精製した
【0204】
その結果、精製された配列番号11のGIP誘導体-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体、精製された配列番号17のGIP誘導体-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体、精製された配列番号21のGIP誘導体-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体、及び精製された配列番号24のGIP誘導体-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体が90%以上の高純度で製造されたことを確認し、SDS-PAGE分析結果は、図1の通りである。
【0205】
<実施例4:持続型GIP結合体のインビトロ活性測定>
前記実施例3で製造された持続型GIP結合体の活性を測定するために、前記実施例2と同一に GIP受容体が形質転換された細胞株を利用し、インビトロで細胞活性を測定する方法を利用した。
【0206】
具体的には、持続型GIP結合体のヒトGIP受容体における活性測定のために、ヒトGIPを、16nMから、4倍ずつ0.000015nMまで連続して希釈し、持続型GIP結合体を、50nMから、4倍ずつ0.000048nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液が含まれたdetection mixを10μlずつ加え、細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用し、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0207】
ヒトGIP受容体におけるヒトGIP対比の相対力価は、下記表3に示した。
【0208】
【表3】

【0209】
前記実施例は、本発明のGIP誘導体が、天然型GIPの活性を保有し、特に、持続型結合体として製造されたときには、天然型GIPと同等であるか、あるいはさらに高い活性を示しながらも、半減期が増大されるので、薬物として優秀な性質を有するということを示す。
【0210】
<実施例5:持続型GIP結合体の抗炎症インビトロ効力の確認>
血管炎に対する持続型GIP誘導体結合体の抗炎症効力を、インビトロ上で確認するために、ヒト単核球/大食細胞株の細胞株であるTHP-1細胞株を使用した。該大食細胞は、血管炎感染組織において、感染初期に、サイトカイン及びケモカインドールを分泌し、他の免疫細胞を動員して炎症の進行を誘導し、巨大細胞を形成すると知られている。従って、大食細胞における抗炎症効果を究明することが、血管炎に対する効力を評価するための適切なインビトロシステムであると言うことができる。
【0211】
THP-1細胞株は、RPMI 1640を基に、10% FBS(fetal bovine serum)、100μg/mLストレプトマイシン、100U/mLペニシリン、そして0.05μMβ-メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)を添加した培地において、37℃、5%二酸化炭素の条件で培養した。細胞株に、LPS(lipopolysaccharide)を1μg/mLで添加して炎症反応を誘導し、そこに、天然型GIP及び持続型GIP誘導体の処理時、LPSによる炎症反応にいかような影響を与えるかということ確認した。天然型GIPは、10μM、持続型GIP誘導体は、1または10μMの濃度に希釈して添加した。持続型GIP誘導体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0212】
処理が完了したTHP-1細胞株は、RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用し、RNAを分離し、iScript(登録商標) cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAに対し、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症関連遺伝子の発現程度を確認した。Delta Delta Ct methodを利用し、ハウスキーピング遺伝子としては、β-アクチンを使用した。炎症関連遺伝子としてIL-6、IL-12、IL-1β、TNF-αを確認した。
【0213】
図2(A)は、天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後の炎症関連遺伝子IL-6,IL-12,IL-1β及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0214】
図2(A)に示されているように、LPSの処理時、炎症反応が誘導され、前記炎症関連遺伝子の発現程度が上昇することを確認することができ、天然型GIPと持続型GIP誘導体との処理時には、それらの発現がさらに少なくなることを確認することができた。そのような結果は、持続型GIP誘導体結合体が濃度依存的に現れることを確認することができた。
【0215】
さらには、THP-1細胞株の、培地上におけるで炎症関連サイトカインであるTNF-αの濃度を測定するために、LPS 0.1μg/mLで処理し、炎症反応を誘導し、天然型GIPは、1μM、持続型GIP誘導体は、0.1または1μMの濃度に希釈して処理した。該培地は、Human TNF alpha ELISA Kit(Abcam、米国)を利用して定量した。
【0216】
図2(B)は、天然型GIPまたは持続型GIP結合体の処理後、炎症関連サイトカインTNF-αの濃度(ng/mL)を示したグラフである。
【0217】
図2(B)に示されているように、LPSの処理時、培地上のTNF-αの濃度が上昇することを確認することができ、天然型GIPと持続型GIP結合体との処理時には、さらに低下することを確認することができた。
【0218】
従って、持続型GIP結合体が直接大食細胞に作用し、LPSで誘導された炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すことを確認することができた。その抗炎症効果は、GIPの作用によるものであることを天然型GIPの結果から類推することができる。
【0219】
<実施例6:持続型GIP結合体の抗炎症インビボ効力の確認>
前記実施例で確認されたインビトロ効力と同様に、持続型GIP誘導体の抗炎症効力をインビボ上で確認するために、高脂肪食餌誘導肥満マウスを使用した。マウスの体重は、投与前、約40~60gであった。研究期間の間、マウスは、群別に収容され、水に自由に接近することができるようにした。光は、6AMから6PMまで消しておいた。
【0220】
賦形剤を投与した対照群と、持続型GIP結合体を、11.7nmol/kgで投与した試験群とがあり、投与は、2日間隔にし、実験は28日目に終了した。持続型GIP結合体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。実験が終わった後、剖検を介して大動脈を取り、RNAを抽出した。RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用してRNAを取り、iScript(登録商標) cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAを、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症関連遺伝子の発現程度を確認し、対照群と試験群との差を比較した。
【0221】
図3は、マウスに、対照群または持続型GIP結合体を投与した後、炎症関連遺伝子IL-1α,IL-1β,IL-6,IFN-γ及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0222】
図3に示されているように、炎症関連遺伝子の発現程度を測定した結果、持続型GIP結合体を投与した投与群が、対照群に比べ、全ての炎症関連遺伝子の発現が有意的に低減されていることを確認した。従って、持続型GIP結合体は、すぐれた抗炎症効果があるということが分かった。
【0223】
<実施例7:持続型GIP結合体の血管炎疾患モデルにおける効力の確認>
血管炎に対する持続型GIP結合体の効力を、疾患モデルで確認するために、MRL/lprマウスを使用した。当該マウスの場合、全身性炎症によって引き起こされた大動脈、及び主要分枝を含む大血管に血管炎が観察されると知られている(Arthritis Rheum. 2003 May; 48(5): 1445-51)。それにより、血管炎疾患モデルとして選択した。
【0224】
賦形剤を投与した正常マウス対照群と、疾患モデル対照群とがあり、商用対照品として使用したアバタセプト(abatacept(オレンシア注))を、5.7mg/kgで投与した対照群、及び持続型GIP結合体をそれぞれ0.12,1.05または3.16mg/kgで投与した試験群がある。賦形剤及び薬物の投与は、2日間隔にし、実験は、10週目に終了した。持続型GIP結合体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0225】
図4(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセプト投与群、及び持続型GIP結合体投与群の腎臓動脈において、炎症関連遺伝子MCP-1,IL-1β,IL-6またはTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0226】
図4(A)に示されているように、炎症関連遺伝子発現程度を測定した結果、アバタセプト投与群または持続型GIP結合体投与群が、疾患モデル対照群に比べ、全ての炎症関連遺伝子の発現が有意的に低減されていることを確認した。
【0227】
図4(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセプト投与群、及び持続型GIP結合体投与群の腎臓動脈において、血管再形成因子として知られているMMP-2とMMP-9との相対的な発現程度を示したグラフである。
【0228】
図4(B)に示されているように、アバタセプトと異なり、持続型GIP結合体投与群が対照群に比べ、血管再形成遺伝子の発現が低減される傾向性を有するということを確認した。
【0229】
従って、持続型GIP結合体が、直接に疾患モデルにおいて血管に作用し、炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すだけではなく、血管炎の進行に重要な役割を行う血管再形成因子の発現も少なくするということを確認することができた。
【0230】
<実施例8:持続型GIP結合体のアンジオテンシンII注入マウスにおける効力の確認>
血管炎に対する持続型GIP結合体の効力を、疾患モデルにおいて確認するために、アンジオテンシンII注入マウス(Angiotensin II infusedマウス、AngIIマウス)を使用した。前記Ang IIマウスは、正常マウス(雄C57BL/6Nマウス、DBL Co., Ltd.)に、4週間Ang II(Sigma-Aldrich)を毎日1.4mgずつ投与したマウスである。当該マウスの場合、高血圧の疾患モデルとして十分に周知されているが、Ang IIにより、マウス動脈壁に炎症が起こり、厚みが厚くなると知られている(Hypertension. 2004; 44: 264-270)。それにより、血管炎疾患モデルとして選択された。研究期間の間、マウスは、群別に収容され、水に自由に接近することができるようにした。光は、6AMから6PMまで消しておいた。
【0231】
正常マウス(雄C57BL/6Nマウス、DBL Co., Ltd.)、対照群(control)及び疾患モデル対照群(Ang II)は、賦形剤を投与した。試験群は、持続型GIP結合体を、3.163mg/kgで投与した。賦形剤及び持続型GIP結合体の投与は、2日間隔にし、実験は、4週目に終了した。持続型GIP結合体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0232】
実験が終わった後、剖検を介し、大動脈弓と腹部大動脈(abdominal aorta)との2ヵ所の大動脈を取り、RNAを抽出した。RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用し、RNAを取り、iScript(登録商標) cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAに対し、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症関連遺伝子の発現程度を確認して比較した。
【0233】
図5(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(Ang II投与対照群)、及び試験群(持続型GIP結合体3.163mg/kg)の大動脈弓における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
【0234】
図5(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(Ang II投与対照群)、及び試験群(持続型GIP結合体3.163mg/kg)の腹部大動脈における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
【0235】
その結果、図5(A)及び図5(B)に示されているように、大動脈2ヵ所のいずれにおいても、持続型GIP結合体を投与した試験群が、疾患モデル対照群に比べ、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の発現が低減されていることを確認した。
【0236】
従って、持続型GIP結合体が、直接に疾患モデルにおいて大動脈に作用し、炎症関連遺伝子の発現を低減させることにより、炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すということを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】