(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法およびそれによる金属触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 33/00 20060101AFI20231026BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B01J33/00 C
B01J23/42 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523274
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 KR2021014099
(87)【国際公開番号】W WO2022080850
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0133723
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】291,Daehak-ro Yuseong-gu,Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ド・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ソク・オ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ガプ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・テ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】コンウ・チェ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA08A
4G169BB01C
4G169BB02A
4G169BC06A
4G169BC16A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD06C
4G169BE06C
4G169CA07
4G169CA14
4G169EB15X
4G169EC22Y
4G169EC27
4G169EC28
4G169ED05
4G169ED06
4G169EE01
4G169FB01
4G169FB40
4G169FB44
4G169FB77
4G169FC04
(57)【要約】
本発明は、ALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法とそれによる金属触媒に関する。より詳しくは、ALD工程で金属触媒表面に互いに異なる無機膜を交互に複合膜をレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で蒸着させて触媒の粒子の焼結(sintering)を抑制して活性減少を防止し、高い活性を安定的に維持する効果と熱安定性を共に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)担持触媒に第1前駆体を注入して触媒表面に蒸着させた後、パージする段階;
(b)酸化剤を注入して触媒表面に蒸着された前記第1前駆体と反応させて無機膜を形成した後、パージする段階;
(c)第2前駆体を注入して前記無機膜に第2前駆体を蒸着させた後、パージする段階;および
(d)酸化剤を注入して複合膜を形成した後、パージする段階;を含むALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(a)乃至(b)段階を3乃至10サイクル繰り返した後、前記(c)乃至(d)段階を1乃至3サイクル繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(a)乃至(d)段階を少なくとも2回(dyad)以上繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(a)段階の触媒は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階の担持は、アルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニア、ジルコニアおよび炭素から選択される少なくともいずれか一つを担体で提供することを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(a)段階の第1前駆体と(c)段階の第2前駆体とは、互いに異なる前駆体であることを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項7】
前記(a)段階の第1前駆体と(c)段階の第2前駆体は、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)およびセシウム(Ce)から選択される少なくともいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項8】
前記(a)および(c)段階の注入は不活性ガスを運搬気体で注入して行うことを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項9】
前記(b)段階および(d)段階の酸化剤は、超純水精製水、アルコール、オゾン、亜酸化窒素および酸素から選択される少なくともいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項10】
前記(a)乃至(d)段階のパージは、不活性ガスを注入して行うことを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項11】
前記(a)乃至(d)段階のパージは、0.001乃至1torrの圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項により製造されたALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒。
【請求項13】
前記複合膜は、0.1nm乃至2nmであることを特徴とする、請求項12に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒。
【請求項14】
前記金属触媒は、粉末、粒子、顆粒およびペレットから選択される少なくともいずれか一つの形態で提供されることを特徴とする、請求項12に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒。
【請求項15】
前記金属触媒は、一酸化炭素酸化反応に提供されることを特徴とする、請求項12に記載のALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法とそれによる金属触媒に関する。より詳しくは、ALD工程において金属触媒表面に互いに異なる無機膜を交互に複合膜をレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で蒸着させて触媒の粒子の焼結(sintering)を抑制して活性減少を防止し、高い活性を安定的に維持する効果と熱安定性を共に提供する。
【背景技術】
【0002】
原子層蒸着法(atomic layer deposition、ALD)とは、薄い薄膜を原子層単位で成長するための蒸着方法を意味する。一般的な化学的蒸着法の場合、各前駆体が同時に注入されて気相反応と表面反応が共に行われる反面、原子層蒸着の場合は、順次的な反応体の注入を通じて気相反応を抑制し、蒸着対象表面に自己制限的な吸着過程(self-limited adsorption)を通じた表面反応により蒸着が行われる。したがって、蒸着される膜の全体厚さは蒸着サイクルの数を通じて調節されるため、原子層単位での厚さ調節が容易であるという長所がある。また、多様な種類と良好な薄膜特性と比較的低い温度でも工程などの優れた特性により、主に半導体誘電体、磁性体などに適用されて発展してきた。
【0003】
しかし、最近、ナノ技術の発展により酸化物の原子層蒸着は、既存の伝統的な集積回路素子を中心に研究されていた傾向から外れて多様な分野への応用が最近研究されており、特に、触媒の金属薄膜コーティングにもこれを適用しようとする多様で具体的な研究が現在活発に進行中にある。
【0004】
例えば、中国登録特許第102935378号では、アルデヒド-NH3縮合反応で触媒で改質された分子体触媒を使用し、この場合、改質は多様な金属元素を使用可能であることを開示する。また、ALD工程を利用して触媒表面をAl2O3でコーティングして、アンチコーキング(anti-coking)効果を提供する触媒について言及している。
【0005】
次に、非特許文献論文であるJ. Phys. Chem. C 2016. 120. No.1で言及する内容をみると、ALD工程によりAu触媒にTiO2薄膜を蒸着して活性度を向上させた技術に関するものであって、AuとTiO2の接触面積(interface)が増えるほど活性度が増加すると言及している。蒸着工程20サイクル(cycle)までは接触面積(interface)が増えながらAu触媒活性度が増加すると言及し、より高い蒸着サイクル(cycle)ではAu触媒の活性度を減少する結果について言及している。
【0006】
最後に、非特許文献論文であるACS Catal. 2015. 5.で言及する内容は、Pt触媒に担持体としてAl2O3/TiO2混合して使用している。Al2O3は熱安定性と高い表面積を提供し、TiO2はSMSI(Strong-metal-support-interaction)を通じて分散性を高めると説明している。また、TiO2がPtとSMSIを形成してPtの電子密度(electron density)を増加させてプロパン(Propane)の脱着を容易にし、コーキング問題(coking issue)を減少させると説明している。しかし、TiO2の比率が20%を超えればむしろプロパン(propane)の吸着量が減り、活性度と安定性が共に減少することを示すことについて言及している。
【0007】
前述のようにALD工程を利用して無機膜がコーティングされた金属触媒は、多様に研究開発されており、このような研究の一環として本発明は、ALD工程において互いに異なる無機膜を交互に複合膜をレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で蒸着させることで、既存に比べて触媒の高い活性と熱安定性を提供するために完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国登録特許第102935378号(2013.2.20)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Phys. Chem. C 2016, 120, no.1, 478486
【非特許文献2】ACS Catal. 2015, 5, 438-447 571-577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した問題点を全て解決することを目的とする。
【0011】
本発明の目的は、原子層蒸着(ALD)工程を通じて触媒表面に互いに異なる無機膜をレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で蒸着させて複合膜が蒸着された触媒を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、優れた焼結(sintering)防止効果を提供して、触媒の高い活性を提供すると同時に、高い活性が良好に維持される触媒を製造することにある。
【0013】
本発明の目的は、触媒の高い活性と熱安定性を同時に提供する製造工程を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は、下記のとおりである。
【0015】
本発明の一実施例によれば、(a)担持触媒に第1前駆体を注入して触媒表面に蒸着させた後、パージする段階;(b)酸化剤を注入して触媒表面に蒸着された前記第1前駆体と反応させて無機膜を形成した後、パージする段階;(c)第2前駆体を注入して前記無機膜に第2前駆体を蒸着させた後、パージする段階;および(d)酸化剤を注入して複合膜を形成した後、パージする段階;を含むALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記製造方法により製造された複合膜が蒸着された金属触媒が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の二つの反応物を同時に注入して複合膜を製造するコインジェクション(co-injection)製造方法に比べて、レイヤバイレイヤ(layer-by-layer)製造方法により複合膜をより成功的に形成することができる。
【0018】
本発明によれば、触媒粒子の焼結(sintering)を抑制して活性減少を防止し、高い活性を安定的に維持する効果を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、触媒の高い活性と熱安定性を同時に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】コインジェクション(co-injection)製造方法による既存のALD工程を示すスキーム(scheme)である。
【
図2】本発明によりレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)製造方法によるALD工程を示すスキーム(scheme)である。
【
図3】本発明の実施例1による触媒のX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)を分析した結果である。
【
図4】本発明の実施例2による触媒のX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)結果である。
【
図5】本発明の比較例による触媒のX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)結果である。
【
図6】本発明の実施例1乃至2と比較例による触媒の活性度を示す結果である。
【
図7】本発明の実施例1乃至2と比較例による触媒の熱安定度を示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
後述する本発明に関する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これら実施例は、当業者が本発明を実施する際に十分であるように詳しく説明する。本発明の多様な実施例は互いに異なるが、互いに排他的になる必要はないことが理解されなければならない。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造および特性は、一実施例と関連して本発明の精神および範囲を逸脱せずに他の実施例で具現され得る。また、それぞれの開示された実施例内の個別の構成要素の位置または配置は、本発明の精神および範囲を逸脱せずに変更可能であることが理解されなければならない。したがって、後述する詳細な説明は、限定的な意味で取ろうとするのではなく、本発明の範囲は、適切に説明されれば、その請求項が主張することと均等な全ての範囲と共に添付された請求項のみにより限定される。
【0022】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるようにするために、本発明の好ましい実施例について詳しく説明する。
【0023】
原子層蒸着法(ALD)は、触媒表面に薄い薄膜を原子層単位で成長するための蒸着方法を意味する。ここで、薄い薄膜は、酸化物(oxide)で無機膜を意味し、単一層またはレイヤー層で提供され得、本発明では、好ましくはレイヤー層である複合膜で提供する。
【0024】
図1は触媒表面に複合膜を蒸着するために、反応物(前駆体)を同時に注入するコインジェクション(co-injection)製造方法による既存のALD工程を示すスキーム(scheme)である。
【0025】
図2は複合膜を蒸着するために、反応物(前駆体)を段階的に注入するレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)製造方法によるALD工程を示すスキーム(scheme)である。
【0026】
本発明は
図2のように互いに異なる反応物(前駆体)を段階的に注入するレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)製造方法により複合膜を蒸着させた触媒の製造方法を提供する。
【0027】
本発明の一実施例によれば、(a)担持触媒に第1前駆体を注入して触媒表面に蒸着させた後、パージする段階;(b)酸化剤を注入して触媒表面に蒸着された前記第1前駆体と反応させて無機膜を形成した後、パージする段階;(c)第2前駆体を注入して前記無機膜に第2前駆体を蒸着させた後、パージする段階;および(d)酸化剤を注入して複合膜を形成した後、パージする段階;を含むALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒の製造方法が提供される。
【0028】
つまり、前記(a)乃至(b)段階により形成された無機膜と(c)乃至(d)段階により形成されたまた他の無機膜を蒸着させてレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)である複合膜で提供される。そこで、既存のコインジェクション(co-injection)製造方法に比べて、互いに異なる反応物(前駆体)による無機膜の区別が明確な複合膜を提供することができる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、前記(a)乃至(b)段階を3乃至10サイクル繰り返した後、前記(c)乃至(d)段階を1乃至3サイクル繰り返すことを特徴とする。ここで、1サイクル(cycle)は、前記(a)乃至(b)段階または(c)乃至(d)段階の一連の流れを意味する。
【0030】
例えば、前記(a)乃至(b)段階を3サイクル繰り返した後、前記(c)乃至(d)段階を1サイクル行うことで、レイヤー層である複合膜を製造することができる。他の例として、前記(a)乃至(b)段階を10サイクル繰り返した後、前記(c)乃至(d)段階を3サイクル繰り返すことで、複合膜を製造することができる。そこで、レイヤバイレイヤ(layer-by-layer)方法によるALD工程を通じて第1前駆体による無機膜を形成した後、第2前駆体を蒸着させて他の無機膜を形成するため、レイヤー層の区別が明確な複合膜を提供することができる。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記(a)乃至(d)段階を少なくとも2回(dyad)以上繰り返すことを特徴とする。前記(a)乃至(d)段階を1回行って蒸着する場合、複合膜の厚さは0.02乃至0.1nmで提供され得る。したがって、必要に応じて2回(dyad)以上行って複合膜の厚さを必要に応じて当業者の水準で自由に適切に変形することができる。
【0032】
本発明の一実施例によれば、前記(a)段階の触媒は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)から選択される少なくともいずれか一つが提供され得、好ましくは白金(Pt)が提供され得る。
【0033】
本発明の一実施例によれば、前記(a)段階の担持に提供される担体は、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、ゼオライトおよび炭素から選択される少なくともいずれか一つが担体で提供され得、好ましくはアルミナ(Al2O3)担体に担持され得る。この場合、提供されるアルミナ(Al2O3)担体は、α-アルミナ(α-Al2O3)またはγ-アルミナ(γ-Al2O3)が提供され得るが、これに制限されるのではない。
【0034】
前記炭素担体の場合は、特に制限されるのではないが、活性炭素、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)および炭素ナノチューブから選択された少なくとも一つを使用することができる。
【0035】
前記担持の場合、含浸または浸漬を含む。提供される担体の比表面積は、通常使用されるBET法により測定され得、比表面積が5乃至300m2/gで提供され得る。そこで、熱安定性を確保することができ、十分な分散と触媒活性を提供することができる。
【0036】
本発明の一実施例によれば、前記(a)段階の第1前駆体と(c)段階の第2前駆体とは、互いに異なる前駆体であることを特徴とし、この場合、前記第1前駆体と第2前駆体は、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)およびセシウム(Ce)から選択される少なくともいずれか一つが提供され得る。
【0037】
前記第1前駆体は、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)およびセシウム(Ce)から選択される少なくともいずれか一つの前駆体が提供され得、好ましくはチタニウム(Ti)前駆体が提供され得る。例えば、前記チタニウム前駆体は、チタニウムテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide)、テトラキスジメチルアミドチタニウム(tetrakis dimethylamido titanium)、テトラキスジエチルアミドチタニウム(tetrakis diethylamido titanium)、テトラキスジメチルアミドチタニウム(tetrakis dimethylamido titanium)、チタニウムテトラクロリド(Titanium Tetrachloride)、チタニウムニトレート(titanium nitrate)、チタニウムスルフェート(titanium sulfate)などが提供され得るが、これに制限されるのではない。
【0038】
前記第2前駆体は、第1前駆体に選択されない前駆体で提供し、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)およびセシウム(Ce)から選択される少なくともいずれか一つが提供され得、好ましくはアルミニウム(Al)前駆体が提供され得る。例えば、アルミナ前駆体の場合、有機アルミニウム化合物が提供され得、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、イソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムなどが提供され得、アルミニウム前駆体が水素化物と錯塩の形態で提供され得るが、これに制限されるのではない。
【0039】
本発明の一実施例によれば、前記(a)および(c)段階の注入は、不活性ガスを運搬気体で注入して行うことを特徴とする。提供される不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどが提供され得るが、これに制限されるのではない。
【0040】
また、前記(a)および(c)段階の注入は、0.5秒乃至30秒で提供されることを特徴とする。好ましくは10秒乃至20秒で提供して注入する場合、吸着に十分な時間を提供することができる。
【0041】
本発明の一実施例によれば、前記(b)段階および(d)段階の酸化剤は、超純水精製水、アルコール、オゾン、亜酸化窒素および酸素から選択される少なくともいずれか一つが提供され得、好ましくは超純水精製水が提供され得る。また、酸化剤の注入にかかる時間は、0.5秒乃至30秒で提供される。
【0042】
酸化剤を提供して、触媒表面で吸着された第1前駆体を酸化物(oxide)である無機膜で蒸着させることができ、その後、第2前駆体を酸化物(oxide)である無機膜で蒸着させてレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で複合膜を形成することができる。
【0043】
前記酸化物(oxide)は、例えば、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、ジンクオキシド(ZnO2)、ガリウムオキシド(GaO2)およびセリア(CeO2)が提供され得る。好ましくは第1前駆体および酸化剤によりチタニア(TiO2)無機膜が形成され得、その後、第2前駆体および酸化剤によりアルミナ(Al2O3)無機膜が形成された複合膜が提供され得る。
【0044】
本発明の一実施例によれば、前記(a)乃至(d)段階のパージは、不活性ガスを注入して行うことを特徴とする。パージ(purge)の場合、浄化または除去を意味する。例えば、不活性ガスを注入して内部圧力が0.001乃至1torrで提供され得る。圧力が0.001torr未満である場合、パージによる効果を期待し難く、1torrを超える場合、反応前駆体やパージング気体が残存することを意味し得るため、提供されるガスの圧力を調節して付加的な反応物の吸着を防止することができる。前記不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどが提供され得、これに制限されるのではない。
【0045】
一方、本発明の一実施例によれば、前記製造方法により製造されたALD工程による複合膜が蒸着された金属触媒が提供される。以下、前述した金属触媒の製造方法と同一内容が適用され得、重複する範囲内で説明は省略する。
【0046】
本発明の一実施例によれば、前記複合膜の厚さは、0.1nm乃至2nmに蒸着され得る。前述のように、前記(a)乃至(d)段階を1回行って蒸着される厚さは、0.02乃至0.1nmで提供され得る。したがって、必要に応じて2回(dyad)以上繰り返して必要に応じて複合膜の厚さは当業者の水準で自由に適切に変形することができる。
【0047】
本発明の一実施例によれば、本発明による金属触媒は、粉末、粒子、顆粒およびペレットの形態であり得、好ましくは粉末または粒子の形態で提供され得る。
【0048】
本発明の一実施例によれば、前記金属触媒は、一酸化炭素酸化反応に適用され得る。特に、100℃乃至300℃の高温で行う一酸化炭素酸化反応において、触媒の高い触媒活性と焼結現象防止などの効果を提供することができる。
【0049】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであり、如何なる意味でもこれにより本発明が制限されると解釈されてはならない。ここに記載されない内容は当該技術分野における熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるため、その説明を省略する。
【0050】
実施例1
γ-アルミナ(γ-Al2O3)担持白金(Pt)触媒を150℃の基板に載せておいた。第1前駆体としてチタニウムテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide、TTIP)、99.999%、EG Chem、Co.Ltd.)を150℃、1torrで窒素ガスを運搬気体で15秒間注入して触媒表面に蒸着させた後、150℃、1torr条件で600秒間パージ(purge)した。その後、酸化剤である超純度精製数を150℃、1torrで15秒間注入して、150℃、1torr条件で600秒間パージして担持触媒表面にTiO2無機膜を蒸着した((a)乃至(b)段階)。この過程をさらに2回繰り返してTiO2無機膜をコーティングした。
【0051】
その後、第2前駆体としてトリメチルアルミニウム(Trimethylaluminum、TMA)150℃、1torrで窒素ガスを運搬気体で15秒間注入して触媒表面に蒸着させた後、閉鎖されたバッチ(closed batch)で600秒間150℃、3torrで維持(maintenance)した。維持以降、150℃、1torr条件で600秒間パージ(purge)した。その後、酸化剤である超純度精製数を150℃、1torrで15秒間注入して、閉鎖されたバッチ(closed batch)で600秒間150℃、3torrで維持(maintenance)した。維持以降、150℃、1torr条件で600秒間パージ(purge)して担持触媒表面にAl2O3無機膜を蒸着して複合膜をコーティングした((c)乃至(d)段階)。
【0052】
前記の(a)乃至(d)過程を1dyadと定義した。これをさらに2dyad行って、白金触媒(TiO2 3 cycle-Al2O3 1 cycle-coated Pt/γ-Al2O3)を製造した。
【0053】
実施例2
前記(a)乃至(b)段階を10サイクル行い、(c)乃至(d)段階を3サイクル行った。(a)乃至(d)過程を1dyad行って、白金触媒(TiO2 10 cycle-Al2O3 3 cycle-coatedPt/γ-Al2O3)を製造した点を除いては実施例1と同様に製造した。
【0054】
比較例1
ALD工程を進行せずにアルミナ担持体に担持された白金触媒(Bare Pt/γ-Al2O3)を準備した。
【0055】
比較例2
γ-アルミナ(γ-Al2O3)担持白金(Pt)触媒を150℃の基板に載せておいた。第1前駆体としてチタニウムテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide、TTIP)、99.999%、EG Chem, Co.Ltd.)と2前駆体としてトリメチルアルミニウム(Trimethylaluminum、TMA)を同時に提供した。ここに、150℃、1torrで窒素ガスを運搬気体で15秒間注入して触媒表面に蒸着させた後、150℃、1torr条件で600秒間パージ(purge)した。その後、酸化剤である超純度精製数を150℃、1torrで15秒間注入して、150℃、1torr条件で600秒間パージして担持触媒表面に複合膜を蒸着した。これを150サイクル行った。(コインジェクション(co-injection))
【0056】
実験例1:触媒のX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)分析
実施例1乃至2と比較例による触媒の各元素別定量を確認するためにX-rayを入射する時に飛び出る光電子を分析して試料内の元素種類、化学状態などが分析可能なX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)分析を行い、その結果を
図3および
図4にそれぞれ示した。比較例2による触媒も同一に分析して、その結果を
図5に示した。
【0057】
実験例2:触媒の活性度評価
実施例1乃至2と比較例による触媒の活性度を確認するために、CO酸化(CO oxidation)を150℃で行って、時間によるCO変成(CO conversion)(%)をそれぞれ測定して比較した。反応気体は5%CO(ベースガス空気)を40ml/minの量で反応器に流した。また反応前に3.9%H
2(ベースガスN
2)を使用して500℃で3時間還元を行った後、CO酸化(CO oxidation)反応を行った。これに対する結果を
図6に示した。
【0058】
実験例3:触媒の熱安定性評価
実施例1乃至2および比較例1による触媒に対する熱安定性を確認するために、焼成工程(Calcination)前後の活性度変化を確認した。焼成工程は500℃で2時間空気条件で行った。焼成工程条件で活性度を評価するために、CO酸化(CO oxidation)を150℃で行って、焼成前後のCO変成(CO conversion)(%)をそれぞれ測定して比較した。反応気体は5%CO(ベースガス空気)を40ml/minの量で反応器に流した。また、反応前に3.9%H
2(ベースガスN
2)を使用して500℃で3時間還元を行った後、CO酸化(CO oxidation)反応を行った。これに対する結果を
図7に示した。
【0059】
図3乃至
図5はX線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy)分析結果であり、(A)はAl、(B)はTi分析結果を意味する。
【0060】
図3は実施例1の結果を示し、At%を分析した結果値がO1s 49.2%、Al2p 32.99%、Cls 15.51%、Ti2p 2.2%、Pt4d 0.1%と測定された。
【0061】
図4は実施例2の結果を示し、At%を分析した結果値がO1s 50.31%、Al2p 30.56%、Ti2p 2.7%、Cls 16.43%と測定された。
【0062】
図5は比較例2の結果を示し、At%を分析した結果値はO1s 56.54%、Al2p 42.8%、Ti2pが0.19%、Cls 0.47%と測定された。
【0063】
つまり、At%を分析した結果値において比較例2の場合、実施例の値に比べてAl値が多少高く、Ti値が低いことを確認することができた。これはTiO2前駆体(TTIP)はAl2O3前駆体(TMA)に比べて低い吸着程度と低い反応性を有しているため、二つの反応物が同時に注入される場合、複合膜でないAl2O3単一膜が主に形成されることを意味することが分かる。したがって、本発明の場合、実験例1の分析を通じてレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)複合膜が成功的に形成されることを確認することができる。
【0064】
また、本発明による
図6の結果をみると、実施例1乃至2の場合、比較例に比べて活性度が顕著に向上したことを確認した。
【0065】
最後に本発明による
図7の結果をみると、実施例1乃至2の場合、500℃で2時間の熱処理焼成条件で触媒の高い活性度が維持され、明確な焼結防止効果を確認することができた。反面、比較例1の場合、長時間高温で行われる焼成以降、触媒活性度が顕著に減少したことを確認することができた。
【0066】
したがって、本発明によるALD工程による複合膜は、触媒表面にレイヤバイレイヤ(layer-by-layer)で蒸着させて成功的に製造することができ、そのため、触媒粒子の焼結(sintering)を抑制して活性減少を防止し、高い活性を安定的に維持する効果を提供することができる。また、触媒の高い活性と熱安定性を同時に提供することができる。
【0067】
以上で本発明が具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施例により説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が前記実施例に限定されるのではなく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形を図ることができる。
【0068】
したがって、本発明の思想は、前記説明された実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等にまたは等価的に変形された全てのものは本発明の思想の範疇に属するといえる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、既存の二つの反応物を同時に注入して複合膜を製造するコインジェクション(co-injection)製造方法に比べて、レイヤバイレイヤ(layer-by-layer)製造方法により複合膜をより成功的に形成することができる。
【0070】
本発明によれば、触媒粒子の焼結(sintering)を抑制して活性減少を防止し、高い活性を安定的に維持する効果を提供することができる。
【0071】
本発明によれば、触媒の高い活性と熱安定性を同時に提供することができる。
【国際調査報告】