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特表2023-546444液体組成物中の浸漬によるバッテリーの熱調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】液体組成物中の浸漬によるバッテリーの熱調節
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20231026BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20231026BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231026BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231026BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20231026BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20231026BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20231026BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231026BHJP
【FI】
H01M10/653
C09K5/04 C ZNM
C09K5/04 ZHV
C09K5/04 ZAB
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6566
H01M10/615
B60K11/02
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523585
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 FR2021051702
(87)【国際公開番号】W WO2022084600
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】2010703
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2105145
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガレ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アッバース, ローラン
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D235AA02
3D235BB36
3D235BB41
3D235BB45
3D235CC14
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
本発明は、バッテリーの温度を調節するための、0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む冷媒と、60重量%から100重量%未満の誘電性流体とを含む伝熱組成物の使用であって、該バッテリーが、液体状態の伝熱組成物中に浸漬されたエネルギー蓄電池を含み、伝熱組成物が本質的に状態変化を受けない、使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの温度を調節するための、0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む冷媒と、60重量%から100重量%未満の誘電性流体とを含む伝熱組成物の使用であって、バッテリーが、液体状態の伝熱組成物中に浸漬されたエネルギー蓄電池を含み、伝熱組成物が本質的に状態変化を受けない、使用。
【請求項2】
伝熱組成物が、伝熱回路中を循環する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
バッテリーが1つ以上のモジュールを含み、モジュールのそれぞれが筐体を含み、筐体中にエネルギー蓄電池が配置され、筐体が伝熱回路の一部を形成する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
伝熱回路が、追加の伝導組成物を含有する二次回路に熱的に接続されている、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
二次回路が、車両の空調回路であり、かつ/または可逆ヒートポンプ回路である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
冷媒が、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む/であるか、または、好ましくは共沸性の、Z型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンとの二元混合物もしくはZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンとE型の1,2-ジクロロエチレンとの二元混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
誘電性流体が、鉱物誘電油、合成誘電油および植物性誘電油から選択され、好ましくはアルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタンおよびこれらの組合せから選択される芳香族炭化水素、ポリ(α-)オレフィンならびにポリオールエステルから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
バッテリーを冷却するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
バッテリーが、電気またはハイブリッド車両の、好ましくは電気またはハイブリッド自動車のバッテリーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
車両のバッテリーの充電中に実施される使用であって、車両のバッテリーが、完全放電から開始して、好ましくは、30分以下、好ましくは15分以下の時間内で満充電される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
特に電気またはハイブリッド車両のバッテリーアセンブリであって、1つ以上のモジュールを含み、各モジュールの中に、液体状態の伝熱組成物中に浸漬されたエネルギー蓄電池が配置された筐体が含まれ、伝熱組成物が0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む冷媒と、60重量%から100重量%未満の誘電性流体とを含み、バッテリーの温度を調節するために伝熱組成物が本質的に状態変化を受けないように構成された、バッテリーアセンブリ。
【請求項12】
伝熱組成物が循環する伝熱回路を含み、この伝熱回路中にモジュールの筐体が組み込まれる、請求項11に記載のバッテリーアセンブリ。
【請求項13】
伝熱回路がポンプを含み、かつ/または伝熱回路が、伝熱組成物と、周囲空気もしくは二次回路中の伝熱組成物のいずれかとの間の熱交換を可能にするための熱交換器を含む、請求項12に記載のバッテリーアセンブリ。
【請求項14】
冷媒が、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む/であるか、または、好ましくは共沸性の、Z型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンとの二元混合物もしくはZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンとE型の1,2-ジクロロエチレンとの二元混合物である、請求項11から13のいずれか一項に記載のバッテリーアセンブリ。
【請求項15】
誘電性流体が、鉱物誘電油、合成誘電油および植物性誘電油から選択され、好ましくはアルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタンおよびこれらの組合せから選択される芳香族炭化水素、ポリ(α-)オレフィンならびにポリオールエステルから選択される、請求項11から14のいずれか一項に記載のバッテリーアセンブリ。
【請求項16】
伝熱組成物の状態が本質的に変化しない、伝熱組成物によってエネルギー蓄電池を加熱することおよび/または伝熱組成物によってエネルギー蓄電池を冷却することを含む、請求項11から15のいずれか一項に記載のバッテリーアセンブリのバッテリーの温度を調節する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの温度を調節するための、少なくとも1種の冷媒および少なくとも1種の誘電性流体を含む伝熱組成物の使用に関する。本発明は、特に、電気またはハイブリッド車両のバッテリーに適用する。
【背景技術】
【0002】
高熱流速を放散する必要性は、いくつかの用途、特にバッテリーの冷却において不可欠である。
【0003】
特に、電気またはハイブリッド車両のバッテリーは、特定の作用条件下、具体的には非常に特定の温度範囲内で最大効率をもたらす。したがって、寒冷気候では、電気またはハイブリッド車両のこの範囲は、必要とされる高い発熱量によって貯蔵電気エネルギーの大部分が消費されるため、ますます問題である。加えて、低温では、利用できるバッテリーの出力が低く、運転問題をもたらす。その上、バッテリーの費用が、電気またはハイブリッド車両の費用の大きな一因となっている。
【0004】
逆に、バッテリーの冷却は、主流の安全措置である。様々な誘電油を使用して、電気またはハイブリッド車両のバッテリーを冷却することができる。しかしながら、急速なバッテリー充電が必要な場合、誘電油単独の使用は、バッテリーを効率的に冷却するには不十分である。この場合、より揮発性かつより低い粘性の流体を使用する必要がある。しかしながら、これらの流体は、通常、誘電油の場合に観察されたものより高い蒸気圧を有し、圧力に耐えるためにバッテリーのケーシングの強化(したがって、その重量の増量)を必要としうる。その上、これらの流体は、誘電油より高価である。
【0005】
さらに、バッテリーの近くでは難燃性または不燃性の組成物を使用して、これらの組成物の使用に関連する一切の安全性リスクを解消することが重要である。
【0006】
文献FR2973809は、冷媒流体組成物中の温度変化に晒される油の熱安定性を改善するためのゼオライト吸着材の使用に関する。
【0007】
文献FR2962442は、冷却および空調に使用する、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む安定性組成物に関する。
【0008】
文献US2014/057826は、空調、冷却およびヒートポンプ用途に使用する、または製品、コンポーネント、基材もしくは清浄する物質を含有する他の物品の清浄に使用する、少なくとも1種のヒドロクロロフルオロオレフィンを含む伝熱組成物に関する。
【0009】
文献WO2019/242977は、電気絶縁流体で充填された流体区分と、流体区分中に位置し、電気絶縁流体によって電気的に絶縁されている導電体と、を含む流体絶縁開閉装置に関する。
【0010】
文献WO2019/162598は、電気またはハイブリッド車両のバッテリーの温度を温度範囲内に維持するための、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む冷媒の使用に関する。
【0011】
文献WO2019/162599は、電気またはハイブリッド車両のバッテリーを、車両の走行開始から予熱するための、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む冷媒の使用に関する。
【0012】
文献WO2019/197783は、第1の伝熱組成物が循環する蒸気圧縮回路と、第2の伝熱組成物が循環する第2の回路と、を含むシステムの手段による、自動車内のボディまたは流体を冷却および/または加熱するプロセスに関する。
【0013】
文献WO2020/011888、WO2020/100152、WO2020/007954、US9865907、US10784545、FR3037727、FR3075471、FR3085542、FR3085545、FR3085547、FR3085556およびEP3499634は、流体と直接接触させることによってバッテリーを熱調節するシステムを記載している。
【0014】
費用を増やすことなく、長寿命を有する、安全かつ効率的なバッテリーを提供するように、特に電気またはハイブリッド車両のバッテリーの最適な動作を確保する必要がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、第1に、バッテリーの温度を調節するための、0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む冷媒と、60重量%から100重量%未満の誘電性流体とを含む伝熱組成物の使用であって、該バッテリーが、液体状態の伝熱組成物中に浸漬されたエネルギー蓄電池を含み、伝熱組成物が本質的に状態変化を受けない、使用に関する。
【0016】
いくつかの実施形態において、伝熱組成物は、伝熱回路中を循環する。
【0017】
いくつかの実施形態において、バッテリーは、1つ以上のモジュールを含み、各モジュールは、エネルギー蓄電池が配置された筐体を含み、該筐体は伝熱回路の部品を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態において、伝熱回路は、追加の伝導組成物を含有する二次回路に熱的に結合されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、二次回路は、車両の空調回路であり、かつ/または可逆ヒートポンプ回路である。
【0020】
いくつかの実施形態において、冷媒は、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む/であるか、または、好ましくは共沸性の、Z型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンとの二元混合物もしくはZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンとE型の1,2-ジクロロエチレンとの二元混合物である。
【0021】
いくつかの実施形態において、誘電性流体は、鉱物誘電油、合成誘電油および植物性誘電油から選択され、好ましくはアルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタンおよびこれらの組合せから選択される芳香族炭化水素、ポリ(α-)オレフィンならびにポリオールエステルから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、使用は、バッテリーを冷却することを目的とする。
【0023】
いくつかの実施形態において、バッテリーは、電気またはハイブリッド車両の、好ましくは電気またはハイブリッド自動車のバッテリーである。
【0024】
いくつかの実施形態において、使用は、車両のバッテリーの充電中に実施され、車両のバッテリーは、完全放電から開始して、好ましくは、30分以下、好ましくは15分以下の時間内で満充電される。
【0025】
本発明はまた、特に電気またはハイブリッド車両のバッテリーアセンブリであって、該バッテリーアセンブリが、1つ以上のモジュールを含み、各モジュールの中に、液体状態の伝熱組成物中に浸漬されたエネルギー蓄電池が配置された筐体が含まれ、該伝熱組成物が0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む冷媒と、60重量%から100重量%未満の誘電性流体とを含み、バッテリーの温度を調節するために伝熱組成物が本質的に状態変化を受けないように構成されたバッテリーアセンブリにも関する。
【0026】
いくつかの実施形態において、アセンブリは、伝熱組成物が循環する伝熱回路を含み、モジュールの筐体は、この伝熱回路中に組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、伝熱回路はポンプを含み、かつ/または、伝熱組成物と周囲空気または二次回路中の伝熱組成物のいずれかとの熱交換を可能にするために、伝熱回路は熱交換器を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、冷媒は、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む/であるか、または、好ましくは共沸性の、Z型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンとの二元混合物もしくはZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンとE型の1,2-ジクロロエチレンとの二元混合物である。
【0029】
いくつかの実施形態において、誘電性流体は、鉱物誘電油、合成誘電油および植物性誘電油から選択され、好ましくはアルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタンおよびこれらの組合せから選択される芳香族炭化水素、ポリ(α-)オレフィンならびにポリオールエステルから選択される。
【0030】
本発明はまた、伝熱組成物の状態が本質的に変化しない、伝熱組成物によってエネルギー蓄電池を加熱することおよび/または伝熱組成物によってエネルギー蓄電池を冷却することを含む、上記バッテリーアセンブリのバッテリーの温度を調節する方法にも関する。
【0031】
本発明は、上記の必要を満たすことを可能にする。具体的には、これは、費用を増やすことなく、長寿命を有する安全かつ効率的なバッテリーを提供するように、機材、特に電気またはハイブリッド車両のバッテリー(特に車両の牽引用バッテリー)の最適な動作を確保することを可能にする。
【0032】
これは、0重量%超から40重量%の、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される冷媒と、60%から100%未満の誘電性流体とを含む伝熱組成物を使用することによって達成され、バッテリーのエネルギー蓄電池は、液体状態の伝熱組成物中に浸漬され、伝熱組成物は本質的に状態変化を受けない。
【0033】
「本質的に状態変化を受けない」という表現は、温度変化に応じてその蒸気圧が変化する可能性があるという理由以外の理由により、組成物が状態変化を受けないことを意味すると理解される。特に、蒸気圧の変化による任意の状態変化は、好ましくは組成物の1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満を占める。
【0034】
好ましくは、冷媒は、(1バールで)50℃未満、より好ましくは30℃未満、特に25℃未満または20℃未満の沸点を有する。
【0035】
具体的には、誘電性流体と冷媒との組合せは、(特に誘電性流体からなる組成物と比較して)あまり粘性ではない組成物を提供することを可能にし、これにより、例えば、システムのエネルギー消費を減らすことが可能になる。したがって、好ましくは、誘電性流体単独より効率的に熱が移行する。
【0036】
その上、低沸点を有する化合物の存在は、バッテリーの熱暴走の事象における伝播の遅延を助けることができる。
【0037】
冷媒単独の使用と比較して、本発明は、バッテリーの性能、寿命または安全性を大幅に劣化することなく、費用および重量を低減することを可能にする。
【0038】
加えて、組成物の蒸気圧は、一般的に冷媒単独より低く、ユニットの強化に関連する制約を減らすことを可能にする。
【0039】
したがって、本発明は、一般的に、費用を増やさずに、特に急速充電中、バッテリーの効率、寿命および安全性の向上を可能にする。
【0040】
好ましくは、組成物は、25℃で10Ωcm以上の体積抵抗率を有する。好ましくは、組成物は、20℃で20kV以上の破壊電圧を示す。これは、組成物の誘電特性が、安全性の観点から、電池と直接接触させる使用に適合することを確保する。
【0041】
有利には、冷媒と誘電性流体との組合せは、難燃性または不燃性の組成物を得ることも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明によるバッテリーアセンブリの実施形態を例示する図である。
図2】本発明によるバッテリーアセンブリの実施形態を例示する図である。
図3】本発明によるバッテリーアセンブリの実施形態を例示する図である。
図4】本発明によるバッテリーアセンブリの実施形態を例示する図である。
図5】冷媒の含有量の関数としての、圧力1バールでの伝熱組成物の液体飽和温度の変化を例示するグラフである(以下の実施例の項を参照)。温度をy軸(℃)に示し、誘電性流体の含有量をx軸(wt%)に示す。
図6】流体中に浸漬された電池を含み、電池の1つが熱暴走を受ける、筐体中の温度変化を示すグラフである。温度はy軸(℃)に表示し、時間をx軸(s)に表示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ここで、本発明を、以下の記述において、より詳細に、かつ非限定的は方法で説明する。
【0044】
伝熱組成物
本発明による伝熱組成物は、少なくとも1種の冷媒および少なくとも1種の誘電性流体を含む。
【0045】
用語「冷媒」は、低温および低圧でエバポレートすることによって熱を吸収でき、高温および高圧で凝結することによって熱を放出できる流体を意味する。
【0046】
冷媒は、ハロゲン化炭化水素、ペルハロゲン化化合物、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルおよびこれらの組合せから選択される化合物を含む。
【0047】
冷媒は、1種以上の該化合物からなりうる。あるいは、炭化水素(アルカンまたはオレフィン、特にプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン)、COおよび酸素含有炭化水素(特にメトキシメタン、エトキシエタンおよびギ酸メチル)から選択される1種以上の追加の化合物も含みうる。
【0048】
好ましくは、冷媒は、C、C、C、Cおよび/またはC化合物、より好ましくはC、C、Cおよび/またはC化合物からなる。
【0049】
ハロゲン化炭化水素の中では、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィンおよびヒドロクロロフルオロオレフィンを挙げることができる。
【0050】
例として、冷媒は、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(HFO-1336mzz、EまたはZ異性体)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd、EまたはZ異性体)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタ-1-エン(HFO-1345fz)、2,4,4,4-テトラフルオロブタ-1-エン(HFO-1354mfy)、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO-1123)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze、EまたはZ異性体、好ましくはE異性体)、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd、EまたはZ異性体、好ましくはZ異性体)、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、1,2-ジクロロチセチレン(1,2-dichlorothisethylene)(HCO-1130、EまたはZ異性体、好ましくはE異性体)およびこれらの組合せから選択することができる。
【0051】
好ましい化合物は、特にHCFO-1233zd(好ましくはE型)、HFO-1336mzz(好ましくはZ型)およびHCFO-1224yd(好ましくはZ型)である。
【0052】
ペルハロゲン化化合物は、炭素原子およびハロゲン原子のみで構成される。例えば、ドデカフルオロペンタン、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサデカフルオロヘプタンおよびこれらの組合せなどのペルフルオロ化化合物を挙げることができる。
【0053】
フッ素化ケトンの中では、例えば、フッ素化モノケトン、1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノンなどのペルフルオロ化モノケトン、およびこれらの組合せを挙げることができる。
【0054】
フッ素化エーテルの中では、例えば、ヒドロフルオロエーテル、例えばメトキシノナフルオロブタン(HFE7100)、エトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)、1-メトキシヘプタフルオロプロパン(HFE-7000)、ペルフルオロポリエーテルおよびこれらの組合せを挙げることができる。
【0055】
冷媒は、いくつかの、例えば2または3または4または5種の上記化合物を含むことができる。
【0056】
例えば、冷媒は、
- HFO-1234yfとHFC-134aとの混合物、
- HFO-1336mzz(Z)とHCO-1130(E)との混合物、
- HFO-1234ze(E)とHFC-227eaとの混合物、
- HFO-1234yf、HFC-134aおよびHFC-152aの混合物、
- HFC-32、HFC-152aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- CO、HFC-134aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFO-1234ze(E)およびブタンの混合物、
- HFC-32、HFC-125およびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFC-125、HFO-1234yf、HFC-134aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFC-125、HFO-1234yfおよびHFC-134aの混合物、
- HFC-134aとHFO-1234ze(E)との混合物、
- HFC-32、HFC-125およびHFO-1234yfの混合物、
- HFC-32とHFO-1234yfとの混合物、
- CO、HFC-32およびHFO-1234yfの混合物、
- HFC-32、HFC-134aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFO-1234yfおよびHFC-152aの混合物、
- HFC-32、HFO-1234yfおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFC-125、HFC-134aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- HFC-32、HFC-125、HFC-134aおよびHFO-1234ze(E)の混合物、
- CO、HFC-32、HFC-125、HFO-1234yfおよびHFC-134aの混合物、
- HFC-32、HFC-125、HFO-1234ze(E)およびHFC-227eaの混合物、ならびに
- HFC-32、プロパンおよびHFO-1234yfの混合物
からなってもよい(またはこれらから本質的になってもよい)。
【0057】
したがって、冷媒は、純物質であっても混合物であってもよい。混合物の場合、好ましくは共沸性または疑共沸性混合物である。
【0058】
好ましい共沸性組成物は、以下の冷媒である:
- R-513A(56%のHFO-1234yfおよび44%のHFC-134a);
- R-513B(58.5%のHFO-1234yfおよび41.5%のHFC-134a);
- R-514A(74.7%のHFO-1336mzz(Z)および25.3%のHCO-1130(E));
- R-515A(88%のHFO-1234ze(E)および12%のHFC-227ea);
- R-516A(77.5%のHFO-1234yf、8.5%のHFC-134aおよび14%のHFC-152a)。
【0059】
あるいは、特定の実施形態において、非共沸性組成物、特に以下の冷媒を用いることができる:
- R-444A(12%のHFC-32、5%のHFC-152aおよび83%のHFO-1234ze(E));
- R-444B(41.5%のHFC-32、10%のHFC-152aおよび48.5%のHFO-1234ze(E));
- R-445A(6%のCO、9%のHFC-134aおよび85%のHFO-1234ze(E));
- R-446A(68%のHFC-32、29%のHFO-1234ze(E)および3%のブタン);
- R-447A(68%のHFC-32、3.5%のHFC-125および28.5%のHFO-1234ze(E));
- R-447B(68%のHFC-32、8%のHFC-125および24%のHFO-1234ze(E));
- R-448A(26%のHFC-32、26%のHFC-125、20%のHFO-1234yf、21%のHFC-134aおよび7%のHFO-1234ze(E));
- R-449A(24.3%のHFC-32、24.7%のHFC-125、25.3%のHFO-1234yfおよび25.7%のHFC-134a);
- R-449B(25.2%のHFC-32、24.3%のHFC-125、23.2%のHFO-1234yfおよび27.3%のHFC-134a);
- R-449C(20%のHFC-32、20%のHFC-125、31%のHFO-1234yfおよび29%のHFC-134a);
- R-450A(42%のHFC-134aおよび58%のHFO-1234ze(E));
- R-451A(89.8%のHFO-1234yfおよび10.2%のHFC-134a);
- R-451B(88.8%のHFO-1234yfおよび11.2%のHFC-134a);
- R-452A(11%のHFC-32、59%のHFC-125および30%のHFO-1234yf);
- R-452B(67%のHFC-32、7%のHFC-125および26%のHFO-1234yf);
- R-452C(12.5%のHFC-32、61%のHFC-125および26.5%のHFO-1234yf);
- R-454A(35%のHFC-32および65%のHFO-1234yf);
- R-454B(68.9%のHFC-32および31.1%のHFO-1234yf);
- R-454C(21.5%のHFC-32および78.5%のHFO-1234yf);
- R-455A(3%のCO、21.5%のHFC-32および75.5%のHFO-1234yf);
- R-456A(6%のHFC-32、45%のHFC-134aおよび49%のHFO-1234ze(E));
- R-457A(18%のHFC-32、70%のHFO-1234yfおよび12%のHFC-152a);
- R-459A(68%のHFC-32、26%のHFO-1234yfおよび6%のHFO-1234ze(E));
- R-459B(21%のHFC-32、69%のHFO-1234yfおよび10%のHFO-1234ze(E));
- R-460A(12%のHFC-32、52%のHFC-125、14%のHFC-134aおよび22%のHFO-1234ze(E));
- R-460B(28%のHFC-32、25%のHFC-125、20%のHFC-134aおよび27%のHFO-1234ze(E));
- R-460C(2.5%のHFC-32、2.5%のHFC-125、46%のHFC-134aおよび49%のHFO-1234ze(E));
- R-460A(12%のHFC-32、52%のHFC-125、14%のHFC-134aおよび22%のHFO-1234ze(E));
- R-463A(6%のCO、36%のHFC-32、30%のHFC-125、14%のHFO-1234yfおよび14%のHFC-134a);
- R-464A(27%のHFC-32、27%のHFC-125、40%のHFO-1234ze(E)および6%のHFC-227ea);ならびに
- R-465A(21%のHFC-32、7.9%のプロパンおよび71.1%のHFO-1234yf)。
【0060】
示されるパーセンテージは全て、重量によるものである。
【0061】
特定の好ましい実施形態において、冷媒は、EまたはZ型の、より好ましくはE型のHCFO-1233zdを含む。
【0062】
好ましくは、本発明による伝熱組成物は、冷媒として、本質的に1種の化合物のみを含む。この場合、この冷媒としては、EまたはZ型の、より好ましくはE型のHFO-1233zdが好ましい。
【0063】
不純物は、例えば最大1重量%で存在しうる。
【0064】
冷媒は、特に:
- 少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.7重量%、より好ましくは少なくとも99.8重量%のHCFO-1233zd(E);
- 500ppm以下、好ましくは1~500ppm、より好ましくは2~300ppmの含有量のHFC-245fa;
- 100ppm以下、好ましくは1~100ppm、より好ましくは2~50ppmの含有量のHFO-1234ze(EまたはZ);
- 100ppm以下、好ましくは1~100ppm、より好ましくは2~50ppmの含有量のHCFO-1233zd(Z)
を含みうる。
【0065】
他の好ましい組成物は:
- HCFO-1233zd(E)およびHFC-245ebからなる(またはこれらから本質的になる)混合物、好ましくは疑共沸性または共沸性組成物;
- HFO-1366mzz(Z)およびHCO-1130(E)からなる(またはこれらから本質的になる)混合物、好ましくは疑共沸性または共沸性組成物、より好ましくは冷媒R-514A
である。
【0066】
本発明による冷媒は、特に、20℃で0.1~2cP、好ましくは20℃で0.2~0.9cPの液粘度を有しうる。粘度は、以下の実施例2に示す方法にしたがって測定することができる。
【0067】
本発明による冷媒は、特に、1バールで、0℃~50℃、好ましくは10℃~30℃、特に15℃~25℃の飽和液体温度を有しうる。
【0068】
本発明による冷媒は、特に、20℃で、1~1.7、好ましくは1~1.5、好ましくは1~1.4の密度を有しうる。
【0069】
本発明の目的のために、「誘電性流体」という表現は、電気を通さない(または通しにくい)が静電力は作用させる流体、一般的には油を意味すると理解される。
【0070】
用語「油」は、常温で液体状態にあり、水と混ざらない脂肪性物質を意味する。油は、植物、鉱物または合成起源の脂肪性液体である。油は、API分類において規定されているグループI~Vに属する油(またはATIEL分類によるこれらの同等物)から選択することができる。
【0071】
絶縁(誘電)油は、熱交換流体の特性を有し、したがって冷媒と同様に熱の移動に関与する。
【0072】
伝熱組成物に含まれる油は、特に、鉱物誘電油、任意選択によりバイオベースである合成誘電油、および植物性誘電油、ならびにこれらの組合せから選択することができる。
【0073】
好ましくは、誘電性流体は、少なくとも1種の鉱物誘電油を含む。そのような鉱物誘電油の非限定例には、パラフィン油およびナフテン油、例えばNynasから販売されているNytroファミリーの誘電油(特にNytro Taurus、Nytro Libra、Nytro 4000XおよびNytro 10XN)ならびにShellから販売されているDaliaが含まれる。
【0074】
鉱物誘電油は、好ましくは、Nynasから販売されているNytro Taurus油およびShellから販売されているDalia油などのパラフィン油(すなわち、飽和直鎖または分岐鎖炭化水素)、またはNynasから販売されているNytro LibraおよびNytro 10XN油などのナフテン油(すなわち、環状パラフィン)、芳香族化合物(すなわち、単結合の代わりに二重結合によって特徴付けられる1つ以上の環を含む不飽和環状炭化水素)ならびに非炭化水素化合物であってもよい。
【0075】
好ましくは、誘電性流体は、任意選択によりバイオベースである合成誘電油である。好ましくは、誘電性流体は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、シリコーン油、エステルおよびポリエステル、特にポリオールエステル、ならびに任意の割合のこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0076】
芳香族炭化水素の中では、非限定的に、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン(例えば、フェニルキシリルエタン(phenylxyxlyethane)(PXE)、フェニルエチルフェニルエタン(PEPE)、モノイソプロピルビフェニル(MIPB)、1,1-ジフェニルエタン(1,1-DPE))、アルキルナフタレン(例えば、ジイソプロピルナフタレン(DIPN))、メチルポリアリールメタン(例えば、ベンジルトルエン(BT)およびジベンジルトルエン(DBT))ならびにこれらの混合物を挙げることができる。前記芳香族炭化水素において、少なくとも1つの環が芳香族であり、任意選択により存在する1つ以上の他の環が部分的にまたは全体的に不飽和であってもよいことを理解すべきである。特に、Soltex Inc.によって販売されている誘電性流体、Arkema製の名称Jarylec(登録商標)、およびJX Nippon Chemical Texas Inc.製のSAS 60Eを挙げることができる。
【0077】
脂肪族炭化水素の中では、非限定的に、アルカン、ポリ(α-)オレフィン(PAO)、例えばポリイソブテン(PIB)、またはビニリデンタイプのオレフィン、例えばSoltex Inc.から販売されているものなどを挙げることができる。
【0078】
アルカンは、特に、少なくとも8個の炭素原子、例えば8~22個の炭素原子、好ましくは15~22個の炭素原子を含むことができる。
【0079】
PAOは、グループIVから選択することができ、例えば、4~32個の炭素原子を含むモノマー、例えばオクテンまたはデセンから得られる。PAOの重量平均分子量は、非常に広範に変動しうる。好ましくは、PAOの重量平均分子量は600Da未満である。PAOの重量平均分子量はまた、100~600Da、150~600Da、または200~600Daの範囲でもありうる。例えば、規格ASTM D445にしたがって100℃で測定した動粘度が1.5~8mm/sの範囲を示すPAOは、Ineosから商標名Durasyn(登録商標)162、Durasyn(登録商標)164、Durasyn(登録商標)166およびDurasyn(登録商標)168で市販されている。
【0080】
シリコーン油の中では、非限定的に、ポリジメチルシロキサンタイプの直鎖シリコーン油、例としては、Wackerによって名称Wacker(登録商標)AKで販売されているものを挙げることができる。
【0081】
合成エステルの中では、非限定的に、ジオクチルフタレート(DOP)またはジイソノニルフタレート(DINP)(例えば、BASFにより販売されている)などのフタル酸タイプのエステルを挙げることができる。
【0082】
また、非限定的に、ポリアルコールと有機酸、特に飽和または不飽和C~C22有機酸から選択される酸との反応から得られるエステルも挙げることができる。そのような有機酸の非限定例として、ウンデカン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、パルミチン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。非限定例として、上述のエステルの合成に使用できるポリオールの中では、M&I Materials製の油Mivolt DF7、Midel 7131およびMivolt DFKの合成用のペンタエリスリトールを挙げることができる。
【0083】
エステルは、例えば、式R-C(O)-O-([C(R)])-O)-C(O)-R[式中、各Rは、独立して、水素原子または直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基、特にメチル、エチルまたはプロピル基、とりわけメチル基を表し、sは1、2、3、4、5または6であり、nは1、2または3であり、sが1以外のとき、nの値は同一であっても異なっていてもよいと理解され、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、互いに独立して、6~18個の炭素原子の直鎖状配列を有する飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖炭化水素基を表す]のジエステルであってもよい。好ましくは、sおよびnは同一であり、2に等しく、少なくとも1つのR基は直鎖または分岐鎖C~Cアルキル基を表し、sが1であり、nが3のとき、エステル官能基の酸素原子のβ位の炭素に結合されている少なくとも1つのR基は水素原子を表す。
【0084】
ポリアルコールと有機酸との間の反応から得られる合成エステルは、例えば、M&I Materials製のMidel 7131またはNyco製のNycodiel部類のエステルである。
【0085】
天然エステルおよび植物油の中では、非限定的に、脂肪種子由来の製品または他の天然起源由来の製品を挙げることができる。例としては、非限定的に、Cargillから販売されているFR3(商標)もしくはEnvirotemp(商標)またはM&I Materialsから販売されているMidel eN 1215を挙げることができる。
【0086】
また、特に、2~8個の炭素原子、特に2~4個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合または共重合によって得られる、ポリアルキレングリコール(PAG)も使用することができる。
【0087】
本発明による伝熱組成物は、1種以上の油、例えば2種または3種または4種または5種の油を含むことができる。
【0088】
好ましい誘電性流体は、ペンタエリスリトールから製造されるポリオールエステルである。
【0089】
別の好ましい誘電性流体は、主に(すなわち、50重量%超)4~32個の炭素原子を含むイソパラフィンを含むポリ(α-)オレフィン(PAO)である。この流体は、API分類のグループIVに属する。
【0090】
好ましくは、本発明による伝熱組成物は、1種の誘電性流体のみを含む。
【0091】
誘電性流体は、特に、規格ISO3104にしたがって20℃で1~60cPの粘度を有することができる。
【0092】
誘電性流体は、特に、沸点測定法によって測定した場合、30℃超の沸点を有することができる。
【0093】
誘電性流体は、伝熱組成物の総重量に対して60重量%~100重量%未満、好ましくは85重量%~99.5重量%の含有量で組成物中に存在しうる。
【0094】
例えば、この含有量は、伝熱組成物の総重量に対して、60重量%~65重量%、または65重量%~70重量%、または70重量%~75重量%、または75重量%~80重量%、または80重量%~85重量%、または85重量%~86重量%、または86重量%~87重量%、または87重量%~88重量%、または88重量%~89重量%、または89重量%~90重量%、または90重量%~91重量%、または91重量%~92重量%、または92重量%~93重量%、または93重量%~94重量%、または94重量%~95重量%、または95重量%~96重量%、または96重量%~97重量%、または97重量%~98重量%、または98重量%~99重量%、または99重量%~100重量%未満であってもよい。
【0095】
冷媒は、伝熱組成物の総重量に対して0重量%超~40重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%の含有量で組成物中に存在しうる。
【0096】
例えば、この含有量は、伝熱組成物の総重量に対して、0重量%超~1重量%、または1重量%~2重量%、または2重量%~3重量%、または3重量%~4重量%、または4重量%~5重量%、または5重量%~6重量%、または6重量%~7重量%、または7重量%~8重量%、または8重量%~9重量%、または9重量%~10重量%、または10重量%~11重量%、または11重量%~12重量%、または12重量%~13重量%、または13重量%~14重量%、または14重量%~15重量%、または15重量%~20重量%、または20重量%~25重量%、または25重量%~30重量%、または30重量%~35重量%、または35重量%~40重量%であってもよい。
【0097】
特定の実施形態において、本発明による伝熱組成物は、ペンタエリスリトールおよび少なくとも1種のフッ素化またはフルオロ塩素化炭化水素、例としては、非限定的に、ヒドロフルオロプロパン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロプロパン、ヒドロクロロフルオロプロペンおよび任意の割合のこれらの混合物から製造されるポリオールエステルを含む。
【0098】
他の実施形態において、本発明による伝熱組成物は、ポリ(α-)オレフィン(PAO)および少なくとも1種のフッ素化またはフルオロ塩素化炭化水素、例としては、非限定的には、ヒドロフルオロプロパン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロプロパン、ヒドロクロロフルオロプロペン、およびさらには任意の割合のこれらの混合物などを含む。
【0099】
好ましくは、本発明による伝熱組成物は、HCFO-1233zd(好ましくはE型)と、ペンタエリスリトールから製造されるポリオールエステルとを含む。さらにより優先的には、本発明による伝熱組成物は、HCFO-1233zd(好ましくはE型)と、ペンタエリスリトールから製造されるポリオールエステルとから本質的になり、さらには、これらからなる。
【0100】
好ましくは、本発明による伝熱組成物は、HCFO-1233zd(好ましくはE型)およびポリ(α-)オレフィン(PAO)を含む。さらにより優先的には、本発明による伝熱組成物は、HCFO-1233zd(好ましくはE型)およびポリ(α-)オレフィン(PAO)から本質的になり、さらには、またはこれらからなる。また、Z型のHCFO-1233zd、HFC-245ebおよびPAOから本質的になりうるか、またはこれらからなりうる。また、Z型のHFO-1336mzzおよびPAOから本質的になりうるか、またはこれらからなりうる。また、Z型のHFO-1336mzz、E型のHCO-1130およびPAOから本質的になりうるか、またはこれらからなりうる。
【0101】
本発明との関係において使用できる組成物は、1種以上の添加剤および/または充填剤をさらに含むことができ、それらは、例えば、抗酸化剤、不動態化剤(passivators)、流動点降下剤、分解阻害剤、芳香剤および香料、着色剤、防腐剤およびこれらの混合物から非限定的に選択される。分解阻害剤の存在が特に好ましい。
【0102】
組成物中に有利に使用できる抗酸化剤の中では、非限定例として、フェノール系抗酸化剤、例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、さらには、これらのフェノール系抗酸化剤のアセテート;アミンタイプの抗酸化剤、例としては、フェニル-α-ナフチルアミン、ジアミンタイプの抗酸化剤、例えばN,N’-ビス(2-ナフチル)-パラ-フェニレンジアミン、アスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸のエステル、これら単独またはこれらの2つ以上の混合物またはこれらと他の成分、例としては、緑茶抽出物、コーヒー抽出物との混合物を挙げることができる。
【0103】
特に好適な抗酸化剤は、Brenntagから商標名lonol(登録商標)で市販されている製品である。
【0104】
本発明との関係において使用できる不動態化剤は、有利には、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール、イミダゾール、チアゾールおよびベンゾチアゾールから選択される。非限定例としては、ジオクチルアミノメチル-2,3-ベンゾトリアゾールおよび2-ドデシルジチオイミダゾールを挙げることができる。
【0105】
存在しうる流動点降下剤の中では、非限定例として、スクロースの脂肪酸エステル、およびポリ(アルキルメタクリレート)またはポリ(アルキルアクリレート)などのアクリルポリマーを挙げることができる。
【0106】
好ましいアクリルポリマーは、50000g.mol-1から500000g.mol-1の間の分子量を有するものである。これらのアクリルポリマーの例としては、1~20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を含有できるポリマーが挙げられる。
【0107】
これらの中でも、さらに非限定例として、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヘプチルアクリレート)、ポリ(ヘプチルメタクリレート)、ポリ(ノニルアクリレート)、ポリ(ノニルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルアクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、ポリ(トリデシルアクリレート)、ポリ(トリデシルメタクリレート)、ポリ(ペンタデシルアクリレート)、ポリ(ペンタデシルメタクリレート)、ポリ(ヘプタデシルアクリレート)およびポリ(ヘプタデシルメタクリレート)を挙げることができる。
【0108】
そのような流動点降下剤の例は、三洋化成工業株式会社から商標名Aclubeで市販されている。
【0109】
最も特定して好ましい態様によれば、分解阻害剤が添加剤として存在する。分解阻害剤は、特に、ジフェニルカルボジイミド、ジトリルカルボジイミド、ビス(イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ブチルフェニル)カルボジイミドなどのカルボジイミド誘導体から選択することができるが、フェニルグリシジルエーテル、またはエステル、アルキルグリシジルエーテル、またはエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、アントラキノンファミリーの化合物、例としては、名称「BMAQ」で販売されているβ-メチルアントラキノン、エポキシド誘導体、例えばビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-6-メチルヘキサン)カルボキシレート、フェノールノボラックタイプのエポキシ樹脂、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルエポキシ、例えばDGEBAまたはCEL 2021P(特にWhyte Chemicalsから入手可能)からも選択することができる。
【0110】
添加剤の総量は、好ましくは、伝熱組成物の5重量%以下、特に4重量%以下、より特定すると3重量%以下、最も特定すると2重量%以下、または、さらに1重量%以下である。
【0111】
本発明による組成物は、当業者に周知の任意の手段によって、例えば本発明による組成物の様々な成分を単純混合することによって調製することができる。
【0112】
特定の実施形態において、伝熱組成物は不純物を含有する。不純物が存在する場合、それらは伝熱組成物に対して1(重量)%未満、好ましくは0.5(重量)%未満、好ましくは0.1(重量)%未満、好ましくは0.05(重量)%未満、好ましくは0.01(重量)%未満を占めうる。
【0113】
本発明による伝熱組成物は、好ましくは、25℃で10Ω.cm以上、好ましくは10Ω.cmまたは10Ω.cm以上の体積抵抗率を有する。材料の抵抗率は、電流の流れに反対するその能力を表す。言い換えると、体積抵抗率は、組成物の誘電特性の現れである。体積抵抗率は、規格IEC60247にしたがって測定される。
【0114】
例えば、体積抵抗率は、10~5×10Ω.cm、または5×10~10Ω.cm、または10~5×10Ω.cm、または5×10~10Ω.cm、または10~5×10Ω.cm、または5×10~10Ω.cm、または10Ω.cm超であってもよい。
【0115】
さらに、本発明による伝熱組成物は、好ましくは、20℃で20kV以上、好ましくは20kV以上、好ましくは30kV以上、好ましくは50kV以上、より好ましくは100kV以上の破壊電圧を有する。用語「破壊電圧」は、絶縁体の一部を導電性にする最低電圧を意味すると理解される。したがって、このパラメータは、組成物の誘電特性の現れでもある。破壊電圧は、規格IEC60156にしたがって測定される。
【0116】
例えば、本発明による組成物の20℃での破壊電圧は、25~30kV、または30~40kV、または40~50kV、または50~60kV、または60~70kV、または70~80kV、または80~90kV、または90~100kV、または100~110kV、または110~120kV、または120~130kV、または130~140kV、または140~150kVであってもよい。
【0117】
また、本発明による伝熱組成物は、1バールの圧力で、20~80℃、好ましくは30~70℃の飽和液体温度も有しうる。例えば、この温度は、20℃~25℃、または25℃~30℃、または30℃~35℃、または35℃~40℃、または40℃~45℃、または45℃~50℃、または50℃~55℃、または55℃~60℃、または60℃~65℃、または65℃~70℃、または70℃~75℃、または75℃~80℃であってもよい。
【0118】
本発明による伝熱組成物は、特に、規格ISO3104にしたがって、20℃で0.1~20cPの粘度を有することができる。
【0119】
本発明による伝熱組成物は、好ましくは難燃性である(すなわち、規格ISO3679およびISO3680にしたがって、例えば150℃超、または200℃超、または250℃超、または300℃超の高い引火点を有する)か、または、より好ましくは不燃性である。
【0120】
伝熱組成物の使用
図1を参照して、バッテリー402は、少なくとも1つのモーター404、特に車両用モーターに出力を供給することができる。車両は、好ましくは自動車、または場合により建設機械、スクーター、オートバイ、トラック、船、および航空機などである。
【0121】
バッテリーは、一連のエネルギー蓄電池(またはアキュムレータ)を含むことができ、これらは、単一のモジュールまたはいくつかのモジュール中にまとめることができる。各モジュールは、密閉された筐体中に配列された複数の電池を含有することができる。各モジュール筐体は、電池を固定された状態に保持するように構成されうる。
【0122】
バッテリーは、同一のまたは異なるモジュールを含みうる。モジュールは、機械的に組み立てられ、かつ/または電気的に接続されてバッテリーを形成しうる。モジュールは、直列にまたは並列に電気的に接続されうる。
【0123】
各筐体は、例えば、例えば溶接、接着またはねじ留めによって接続された上部および下部を含むことができる。
【0124】
電池は、例えば、円筒形であってもよい。各モジュールは、2~200個の電池、好ましくは4~100個の電池、より好ましくは6~50個の電池を含むことができる。電池は、例えば、各モジュール中のM電池のN列に配列されうる。Nは、例えば1~10であってもよく、例えば、2であってもよい。Mは、例えば1~60であってもよく、例えば、3の倍数(すなわち、3、6、12、18、30など)であってもよい。特定の実施形態において、電池は、各モジュール中の三次元配列にしたがって順序付けられ得、NxM電池のP層が積層される。それにより、層Pの数は、例えば2~5の値を有しうる。あるいは、単層が存在する。
【0125】
電池は、例えば、再充電可能ニッケル-カドミウム(NiCd)、ニッケル水素(Ni-M-H)またはリチウムイオン(Liイオン)電池であってもよい。
【0126】
各筐体は、例えば、プラスチック、特にポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルポリマー、特にポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂などのプラスチックで製造されうる。あるいは、例えばアルミニウムの金属材料で製造することができる。
【0127】
伝熱組成物は、バッテリーの温度を調節するために使用される。この調節は、伝熱組成物を、バッテリーのエネルギー蓄電池と直接接触させて置き、伝熱組成物が完全に液体状態にあることによって実施される。言い換えれば、エネルギー蓄電池は、液体状態の伝熱組成物中に浸漬され、バッテリーの正常の動作条件下、伝熱組成物は、本質的に状態変化を受けない。
【0128】
したがって、伝熱組成物は、SPLC(「単相液体冷却」)として公知の単相冷却に使用され、これは、特定の実施形態において、単相加熱にも使用できる、または単相加熱に使用できると理解される。
【0129】
用語「浸漬される」は、電池が伝熱組成物と接触することを意味すると理解される。より具体的には、電池の外面が伝熱組成物と接触する。好ましくは、電池は、本質的に液体形態の伝熱組成物と接触する。
【0130】
したがって、電池は、伝熱組成物浴中に配列されうる。伝熱組成物は、電池と筐体の壁との間の、モジュールの内部空間全体を占めうる、または好ましくは、気体の上部空間が設けられうる。好ましくは、筐体中の電池の全面が、液体形態の組成物と接触する。
【0131】
あるいは、電池の表面が、好適な手段(散布、射出、噴流など)によって、かつ/または電池の表面の特殊な処理によって得られる液膜で覆われていてもよい。
【0132】
例えば、伝熱組成物を、一方向または多方向ノズルによって電池全体にスプレーしてもよい。該ノズルは、例えば、伝熱組成物を電池の側面上に射出するように電池間に配置することができる。あるいは、該ノズルを電池の上に置いて、伝熱組成物を電池の上面上に射出させる。組成物は、噴流の形態、または細流、または霧の形態で射出されうる。組成物は、タンク中で回収し、ポンプによって再循環することができる。熱交換器および/または加熱手段(例えば、抵抗加熱手段)をリザーバ中、またはポンプの上流もしくは下流に配置して、組成物に熱を供給するか、または組成物から熱を除去することを可能にすることができる。この変形形態において、バッテリーの温度を調節する必要がある場合のみ、液体組成物を電池の表面と接触させてもよい。それ以外の時間、特にバッテリーが操作されていないとき、電池の表面は伝熱組成物と接触していなくてもよい。
【0133】
任意選択により、電池の表面を親水性膜で覆って、伝熱組成物の液層を電池の表面全体への分布を可能にすることができる。例えば、ナノ構造化SiO膜を用いてもよい。あるいは、フィラメント状もしくは繊維状構造(1種以上の粗紡または織布もしくは不織布を含む)、またはさらには凝集金属粉を電池の表面に配置して、毛管作用によって伝熱組成物の液層を電池の表面全体に分布させることができる。
【0134】
浸漬は、伝熱組成物の熱特性を最大限有利に使用することを可能にする。特に、バッテリーの電池と伝熱組成物との直接の接触による冷却が、バッテリーの急速加熱を伴うバッテリーの急速充電の事象において有用である。これは、温度を最適な動作範囲内で均一に維持することを可能にする。
【0135】
伝熱組成物は、組成物とバッテリーの電池との間、好ましくはさらには組成物と二次供給源との間の熱交換を可能にするのに好適なデバイスに含まれる。
【0136】
バッテリー自体を有するデバイスは、本発明によるバッテリーアセンブリを構成する。
【0137】
二次供給源は、周囲空気または追加の伝熱組成物であってもよい。周囲空気の場合、1つ以上のファンを使用して周囲空気との熱交換を強化することができる。
【0138】
伝熱組成物は、静的であっても循環していてもよい。
【0139】
静的である場合、デバイスは、バッテリーの電池と、これらの電池と接触している伝熱組成物とを含む筐体を含む。伝熱組成物は、筐体自体を介して、周囲または追加の伝熱組成物と熱交換する。そのため、筐体の内壁および/または外壁は、周囲または追加の伝熱組成物との熱交換を促進するために、フィンまたは別の開放型構造体などの放熱要素を含むことができる。あるいは、伝熱組成物は、筐体中に位置する熱交換器を介して、または筐体の壁を直接介して、または筐体の壁のプレートもしくはチャネルを介して追加の伝熱組成物と熱交換することができる。
【0140】
伝熱組成物が循環している場合、デバイスは、図1に例示するような主要伝熱回路を含む。
【0141】
主回路中の伝熱組成物の流量は、0~100l/min、好ましくは5~50l/minであってもよい。
【0142】
各モジュールの筐体は、少なくとも1つの流体用入口および少なくとも1つの流体用出口を備えて、伝熱組成物が筐体を通過できるようにし、電池は、好ましくは完全に伝熱組成物中に浸漬されている。
【0143】
熱衝撃を回避するために、筐体の入口での伝熱組成物の温度は、10℃以上、例えば約20℃~約30℃であることが好ましいことがある。
【0144】
モジュールは、伝熱組成物の循環に対して、直列にまたは並列に流体的に接続されうる。
【0145】
ここでも図1を参照して、主要伝熱回路は、少なくとも1つの熱交換器408、408’から発する伝熱組成物をバッテリー402へ移送し、再度、バッテリー402から少なくとも1つの熱交換器408、408’へ移送するように構成されうる。モジュール筐体は、この主回路に組み込まれる。主回路はまた、伝熱組成物をバッテリーに供給し、それを集め、場合により、それをバッテリーのモジュール間で移送するための1つ以上のパイプを含みうる。あるいは、モジュールの筐体は、モジュールの各流体用入口および出口の組み立てを可能にするように直接接触されていてもよい。この場合、組み立てられた入口と出口との間にシールが設けられうる。
【0146】
分配器およびコレクタは、各筐体中にいくつかの流体用入口および/またはいくつかの流体用出口が設けられている場合、筐体中に接続されているか、または組み込まれていてもよい。特定の実施形態において、分配器およびコレクタの一部は、各筐体が組み込まれるとき、伝熱組成物を一モジュールから他への収集および分配を可能にするように、筐体自体中で形成されうる。
【0147】
それが循環するとき、主回路中の伝熱組成物の移送は、1つ以上のポンプ406によって行われうる。主回路は、コンプレッサを含まず、言い換えれば、主回路は蒸気圧縮回路ではない。
【0148】
熱交換器408は、特に周囲空気との熱交換を確保するラジエータであってもよい。
【0149】
あるいは、熱交換器408’は、主回路を、追加の伝熱組成物が循環し、組成物自体が別の供給源、例えば周囲空気と熱交換する二次回路と連結する。
【0150】
追加の伝熱組成物は、伝熱組成物と同一であっても異なっていてもよい。例えば、これは上述の冷媒であってもよく、誘電性流体と混合しない。例えば、組成物は、適切な場合、1種以上の潤滑剤および他の添加剤と合わせた、HFO-1234yfを含んでもよい。あるいは、これは、例えば、水とグリコールとの混合物であってもよい。
【0151】
この二次回路は、コンプレッサ、膨張弁、エバポレーターおよびコンデンサーを含む冷却回路であってもよく、またはコンプレッサを省いた単純な熱交換回路であってもよい。
【0152】
膨張弁(例えば、電子膨張弁)が、この二次回路中の熱交換器408’の上流に備えられてもよい。
【0153】
追加の伝熱組成物を循環させるために、ポンプが、この二次回路中に備えられてもよい。
【0154】
追加の伝熱組成物は、任意選択により、熱交換器408’を通過すると、完全にまたは部分的に状態を変化することができる。したがって、伝熱組成物を熱交換器408’中で冷却した場合、追加の伝熱組成物を対応して加熱し、(例えば、完全に液体の状態から二相の気液状態へ)完全にまたは部分的にエバポレートさせることができる。逆に、伝熱組成物を熱交換器408’中で加熱した場合、追加の伝熱組成物を対応して冷却し、(例えば、二相の気液状態から完全に液体の状態へ)完全にまたは部分的に凝縮させることができる。
【0155】
任意選択により、二次回路は可逆性であってもよい(すなわち、二次回路は、動作モードに応じて、バッテリーと接触している伝熱組成物を冷却または加熱することができる)。
【0156】
追加の伝熱組成物との熱交換を可能にする熱交換器408’は、例えば、並流であってもよく、または好ましくは向流であってもよい。
【0157】
用語「向流熱交換器」は、第1の流体と第2の流体との間で熱が交換される熱交換器であって、交換器の入口の第1の流体が、交換器の出口の第2の流体と熱交換し、交換器の出口の第1の流体が、交換器の入口の第2の流体と熱交換する熱交換器を意味する。
【0158】
例えば、向流熱交換器は、第1の流体の流れと第2の流体の流れが反対方向または実質的に反対方向にあるデバイスを含む。向流の流れと逆流モードで動作する交換器も、向流熱交換器のうちに含まれる。
【0159】
熱交換器は、特に、U形管の交換器、水平もしくは垂直管束の交換器、スパイラル交換器、プレート交換器またはフィン交換器であってもよい。
【0160】
追加の伝熱組成物は、それ自体が、追加の熱交換器の手段によって、周囲と熱交換することができる。追加の伝熱組成物は、任意選択により、車両のパッセンジャー・コンパートメントの空気を加熱または冷却するためにも使用することができる。そのため、バッテリーによって放散された熱は、車両の空調回路によって吸収されうる。
【0161】
この目的を達成するために、二次回路は、別個の熱交換器を有する様々な分岐を含むことができ、任意選択により、これらの分岐中、追加の伝熱組成物が、動作モードに応じて流れる。任意選択により、あるいは、または加えて、二次回路は、例えば1つ以上の三方弁または四方弁を含む、追加の伝熱組成物の流れの方向を変更するための手段を含んでもよい。
【0162】
循環システム中の主回路は、過剰の液体形態の伝熱組成物を貯蔵するためのタンクを含んでもよい。
【0163】
二次回路は、過剰の液体形態の伝熱組成物を貯蔵するためのタンクを含んでもよい。
【0164】
循環システム中の主回路において、確実に液体のみがバッテリーに注入されるように、例えばポンプの上流に保護を設けてもよい。これは、外的条件(例えば、天候条件に起因して車両が起動時に高温になるとき)により、伝熱組成物が、ポンプの上流で、特にタンクの出口で二相でありうるためである。保護は、弁を有する、特にタンクとポンプとの間のバイパスシステム、圧力センサおよび温度センサを含んでもよい。充填剤および乾燥器を設けて、不純物および水分をそれぞれ捕獲することができる。
【0165】
熱交換器によって二次回路に熱的に接続された、別の追加の伝熱組成物を含有する三次回路をさらに設けることが可能である。この三次回路は、特に、車両のモーターおよび/または電気部品によって放散される熱の回収のために設けられうる。
【0166】
いくつかのバッテリーが存在する場合、バッテリーの種々のモジュールの温度を調節するか、または種々のバッテリーを制御するために、並列して動作し、独立して制御される主回路を2つまたは2つ以上設けることが可能である。
【0167】
バッテリー管理システム410は、電気パラメータ(特に電圧)、さらには各モジュールの温度(温度センサの手段によって)を測定し、問題にする電気パラメータおよび温度が所望の範囲内にあることを確保するためにモジュールおよび主回路(および任意選択により二次回路)、特にそれらのポンプを制御するために、バッテリー402と合わせてもよい。
【0168】
主回路および二次回路を含む熱調節システムの具体例を、ここでより詳細に記載する。
【0169】
図2を参照して、(特に車両に使用されうる)本発明によるバッテリーアセンブリの例は、上記の伝熱組成物を含有する主回路2と、追加の伝熱組成物を含有する二次回路3とを含む熱調節システム1を含み、2つの回路は少なくとも1つの熱交換器4によって熱的に接続されている。主回路2中の伝熱組成物は、循環するとき、ポンプ7によって動かされうる。二次回路3中の追加の伝熱組成物は、ポンプ8によって動かされる。二次回路3は、主回路2の伝熱組成物を冷却するための熱交換器4中の追加の伝熱組成物のエバポレーションを確保することを可能にする膨張弁9を含む。
【0170】
少なくとも1つのバッテリーモジュール10(上記)は、主回路2中に流体的に組み込まれる。加熱要素11は、バッテリーモジュール10と組み合わせてもよいが、その中に組み込んでもよい。
【0171】
循環システムにおいて、過剰の液体形態の伝熱組成物を受け取るために、タンク21が任意選択によって主回路2中に設けられてもよい。
【0172】
バッテリー冷却モードにおいて、ポンプ7は、タンク21から伝熱組成物を引き出し、それをバッテリーモジュール10へ送る。伝熱組成物は、バッテリーモジュール10を通過するとき、液体状態のままである。
【0173】
伝熱組成物は、後続して熱交換器4を通過する。追加の伝熱組成物は、膨張弁9で膨張し、次いで熱交換器4で完全にまたは部分的に蒸発する。伝熱組成物は、熱を追加の伝熱組成物へ移動する。伝熱組成物は、後続してタンク21に戻る。
【0174】
二次回路3は、車両の自動車空調回路(コンプレッサは図示せず)であってもよい。
【0175】
図3および4を参照して、(特に車両に使用されうる)本発明によるバッテリーアセンブリの例は、上記の主回路2と、可逆ヒートポンプとして操作できる二次回路3とを含む熱調節システム1を含む。そのため、バッテリーモジュール10を、伝熱組成物によって冷却および加熱することができる。二次回路は、冷却モードと加熱モードの2つの動作モードを有する。冷却モードを図3に例示し、加熱モードを図4に例示する。
【0176】
二次回路3は、パッセンジャー・コンパートメントの空気の熱調節を行うHVAC(暖房、換気および空調)モジュール16を含む。これは、コンデンサー17およびエバポレーター18を含む。コンデンサー17は、パッセンジャー・コンパートメントの空気を加熱するために使用され、エバポレーター18は、パッセンジャー・コンパートメントを冷却するために使用される。
【0177】
二次回路3は、制御弁19、遮断弁24、タンク37および外部熱交換器20を追加で含む。膨張弁9は、外部熱交換器20の下流に配置され、遮断機能を有する目盛り付きオリフィス25はエバポレーター18の上流に配置される。膨張弁9、遮断弁24および目盛り付きオリフィス25は電気的に制御されうる。制御弁19は、追加の伝熱組成物の循環方向を変えることができる可逆弁および/または四方弁であってもよい。
【0178】
冷却モードにおいて、外部熱交換器20がコンデンサーとして使用され、一方で熱交換器4およびエバポレーター18がエバポレーターとして使用されるように、制御弁19は第1の位置にある。遮断弁24および目盛り付きオリフィス25は、このモードでは開いている。タンク37中の追加の伝熱組成物は二相状態にあり、ポンプ8は該伝熱組成物を外部熱交換器20へ送る。追加の伝熱組成物は外部熱交換器20中で凝縮し、熱交換器4およびエバポレーター18へ送られる。どちらの場合も、少なくとも部分的に気化され、タンク37に戻る。
【0179】
加熱モードにおいて、外部熱交換器20がエバポレーターとして使用され、一方で熱交換器4およびコンデンサー17がコンデンサーとして使用されるように、制御弁19は第2の位置にある。遮断弁24および目盛り付きオリフィス25は、このモードでは閉じている。タンク37中の追加の伝熱組成物は二相状態にあり、ポンプ8は該伝熱組成物をコンデンサー17へ送り、そこで該伝熱組成物が部分的に凝縮される。次いで該伝熱組成物を熱交換器4へ送り、そこで該伝熱組成物の凝縮を継続する。次いで、該伝熱組成物は、エバポレーター機能を有する外部熱交換器20を通過する。
【0180】
任意選択により、三次回路12が設けられて、加熱モードに関与してもよい。三次回路12は、車両のモーター26および/または電気部品22によって放散される熱を回収することを可能にできる。三次回路は、ポンプおよびラジエータ28を含んでもよい。遮断弁29が取り付けられたバイパスは、ラジエータ28をバイパスさせることを可能にできる。三次回路12は、第2の熱交換器13によって二次回路3に熱的に接続される。三次回路は、例えば、水とグリコールとの混合物のタイプの流体を含んでもよい。加熱モードにおいて、熱交換器4の出口で、追加の伝熱組成物は外部熱交換器20中および第2の熱交換器13中に分配され、これらは両方ともエバポレーター機能を有する。したがって、該追加の伝熱組成物は、三次回路12の流体によって放散される熱を吸収する。
【0181】
二次回路3は、第2の熱交換器13を含む回路の分岐上に(外部熱交換器20を含む分岐と平行して)2つの逆止め弁23を含んでもよく、また、第2の熱交換器13の上流に膨張弁9を含んでもよい。
【0182】
温度の調節
本発明は、バッテリーの温度を調節するための本発明による伝熱組成物の使用に関する。好ましくは、組成物は、バッテリーを冷却するために使用される。また、バッテリーを加熱するために使用することもできる。加熱および冷却は、必要条件(外部温度、バッテリーの温度、バッテリーの動作モード)に応じて変更可能である。バッテリーの加熱は、特に、外部温度が寒いとき(例えば、10℃未満、または0℃未満、または-10℃未満、または-20℃未満)の車両の起動時に有用である。
【0183】
また、加熱は、補助加熱要素の手段、例えば電気抵抗加熱器によって少なくとも部分的に、実際にはさらには全体的に実施することもできる。補助加熱要素は、バッテリーに取り付けられていてもよい。
【0184】
そのため、本発明による伝熱組成物のみをバッテリーの均一冷却の専用とし、一方で他の手段、例えば電気抵抗加熱器はバッテリーを加熱するために使用されることが可能である。
【0185】
あるいは、主回路に関連する加熱要素を、特にバッテリーの上流に設けることが可能である。この場合、加熱要素は、伝熱組成物を加熱でき、後続してバッテリーを加熱する。
【0186】
用語「バッテリーの温度」は、一般的に、1つ以上のその電気化学的電池の外壁の温度を意味する。
【0187】
バッテリーの温度は、温度センサの手段によって測定できる。バッテリー中にいくつかの温度センサが存在する場合、バッテリーの温度は、様々な測定温度の平均値としてみなすことができる。本発明は、バッテリーの種々の位置で測定された温度間の差を顕著に縮めることを可能にする。
【0188】
温度の調節は、車両のバッテリーが充填されるときに実施できる。あるいは、バッテリーが放電されるとき、特に車両のモーターがオンに切り替わるときに実施できる。これにより、外部温度の理由で、および/または機能中の前記バッテリーの固有の加熱の理由で、バッテリーの温度が過剰になることを顕著に防止する。
【0189】
特に、バッテリーの充電は、急速充電であってもよい。したがって、(バッテリーが完全に放電された瞬間から開始して)30分以下、好ましくは15分以下の時間にわたってバッテリーを完全に充電する間、本発明による組成物の使用は、バッテリーの温度を、均一な分布で最適な温度範囲内に維持することを可能にする。これは、急速充電中、バッテリーが急速に加熱し、特にホットスポットを有する高温に達する傾向にあり、その動作、その性能、その安全性およびその寿命を劣化させうることを踏まえて、有利である。
【0190】
特定の実施形態において、バッテリーの冷却は、特定の期間にわたって継続される。
【0191】
特定の実施形態において、冷却および任意選択の加熱は、特に車両が運転中のとき(モーターがオンに切り替わっているとき)、とりわけ車両が動いているとき、バッテリーの温度を最適な温度範囲内に維持させることを可能にする。これは、バッテリーの温度が低すぎる場合、バッテリーの性能が有意に低下する傾向にあるためである。
【0192】
したがって、特定の実施形態において、車両のバッテリーの温度は、最低温度tと最高温度tとの間で維持されうる。
【0193】
特定の実施形態において、最低温度tは10℃以上であり、最高温度tは80℃以下であり、好ましくは、最低温度tは15℃以上であり、最高温度tは70℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは16℃以上であり、最高温度tは50℃以下である。例えば、tは20℃に等しくてもよく(実際には、さらには20℃超)、tは40℃に等しくてもよい(実際には、さらには40℃未満)。
【0194】
所望の温度の維持を確保するように、測定されるバッテリーの温度に応じてユニットの運転パラメータを改変するために、フィードバックループが有利には存在する。
【0195】
車両のバッテリーの温度を維持する継続時間の間の外部温度(最低温度tから最高温度tの間)は、特に-60℃から-50℃、または-50℃から-40℃、または-40℃から-30℃、または-30℃から-20℃、または-20℃から-10℃、または-10℃から0℃、または0℃から10℃、または10℃から20℃、または20℃から30℃、または30℃から40℃、または40℃から50℃、または50℃から60℃、または60℃から70℃であってもよい。
【0196】
用語「外部温度」は、車両のバッテリーの温度の維持の前および間の、最低温度tから最高温度tの間の、車両の外の常温を意味する。
【0197】
本発明はまた、故障(例えば、短絡)によるバッテリーの暴走の結果を防止、遅延または制限するための、上記伝熱組成物の使用にも関する。暴走の存在は、150℃~200℃の典型的な温度での、主に電極の分解によって生じるガスの急速発生と同時に起こる制御されない温度上昇によって特徴付けられ、結果としてCO、CO、HFおよび引火性実体(H、CH、C、C、CFなど)が生成される。引火性ガスの含有量は、放出されるガス中の少なくとも30%に達しうる。
【0198】
したがって、上記の伝熱組成物は、故障の事例において、150℃未満、好ましくは140℃未満、より好ましくは140℃未満、より好ましくは130℃未満のバッテリーの温度を維持するために使用することができる。
【0199】
上記伝熱組成物はまた、バッテリーの暴走の事象において放出されるガス混合物の引火性を低減または抑制するために使用することもできる。特に、該伝熱組成物は、放出されたガス混合物中の引火性ガスの含有量が比較的少ないままであることを確実にするために使用することができる。該伝熱組成物は、放出されたガス混合物中の冷媒の含有量が、30mol%以上、好ましくは40mol%以上、または50mol%以上、または60mol%以上、または70mol%以上であることを確実にするために使用することができ、この実施形態では、冷媒は、非引火性である、すなわち、ASHRAE 34 standardのクラスA1であるように選択され、好ましくは、冷媒は、HCFO-1233zdEを含むか、またはそれからなる。
【実施例
【0200】
実施例1-混和性および誘電特性
冷媒としてのHCFO-1233zdEを、ベンジルトルエンとジベンジルトルエンとの混合物(Arkemaから名称Jarylec(登録商標)C101で販売されている)と合わせることによって組成物を調製した。最初に、2つの生成物が、あらゆる割合で混和性であることを確認した。
【0201】
油を、気相および液相中の温度を均一化するように、マグネティックスターラーおよび伝熱流体が流れるジャケットを装備した0.2lオートクレーブ中に計り分けて導入した。
【0202】
次いで、オートクレーブを、真空が引かれた-10℃まで冷却した。
【0203】
シリンダに含まれるHCFO-1233zdEを、計り分けることによって液相として閉回路モードで移した。
【0204】
液相の組成物が温度によって変動しないように、充填される液体の最小体積を算出した。
【0205】
最終混合物を均一化するように、最終混合物を撹拌しながら所望の温度にした。次いで、混合物が平衡状態に達するまで撹拌を止めた。平衡状態での温度および圧力を記録した。
【0206】
図5は、1バールの飽和蒸気圧で、冷媒の含有量が、組成物の液体飽和温度に与える影響を示す。より具体的には、100%の油を含む組成物に対して、少ない含有量でも、組成物への冷媒の添加が、組成物の液体飽和温度を顕著に低下させることを可能にすることが観察され、したがって、バッテリーを冷却する能力を増加することを可能にする。
【0207】
以下に挙げる条件下で、69.2gのHCFO-1233zd Eと100.5gのArkema製Jarylec(登録商標)C101とを混合することによって組成物を調製した。
【0208】
以下に挙げる条件下で、35重量%のHCFO-1233zdEと65重量%のArkema製Jarylec(登録商標)C101とを混合することによって別の組成物を調製した。
【0209】
破壊電圧を規格IEC 60159:1995にしたがって測定した。
【0210】
実施例2-粘度
粘度の測定を、Jarylec(登録商標)C101油を導入したオートクレーブ反応器(伝熱流体が流れるジャケットを有し、容量が0.2Lである)中で実施した。反応器を-10℃まで冷却し、磁気的に撹拌した。次いで、HCFO-1233zdEを圧力差によって導入した。次いで、反応器を測定温度にした。
【0211】
次いで、粘度を、Sofraser製のモデルMIVI9601の振動棒粘度計を用いて測定した。カメラを使用して、測定値をとる前に、測定条件下での油と冷媒の混和性を確定し、粘度計の棒の浸漬を確認した。
【0212】
比較目的のために、規格ISO3104による粘度の測定は、20℃の油(0%のHCFO-1233zdE)で実施した。得られた値は6.5cPである。
【0213】
実施例3-引火性
引火点の測定を、90重量%のJarylec(登録商標)C101油および10重量%のHCFO-1233zdEを含有する組成物で実施し、また100重量%のJarylec(登録商標)C101油を含有する比較例の組成物でも実施した。
【0214】
混合物を、大気圧下、低温で調製した。これは均一であり、常温および大気圧下で液体である。
【0215】
引火点の測定は、規格ISO3679またはISO3680にしたがって実施した。「引火/非引火タイプの決定-高速平衡化クローズドカップ法」。注入口は空きのままであり、したがって開いて大気に対して通気性であり、カップは閉じて、標準試験を実施する。
【0216】
試験は、温度を平衡化する間(標準化条件下で2分)、さらにより密閉されたデバイスをシミュレートするように注入口を遮断することによって、ケース・バイ・ケースに基づいて適合した。この場合、試験は、「蓋で遮断された」状態で実施される。
【0217】
調査した温度範囲は、最大300℃まで達する。
【0218】
実施例4-伝熱係数
伝熱係数の比較測定を行うために、密封筐体中の36個の角柱電池(1個の実チタン酸リチウム電池が35個のダミー電池に囲まれている)のモジュールを含む試験デバイスを使用する。電池および母線は、0.5l/min~40l/minの速度で循環する液体中に浸漬される。液体用入口および出口の温度、流量ならびに圧力を測定し、監視する。液体を外部から冷却する。
【0219】
電池は、その小さな表面上で冷却される。液体経路は並列に配置される。モジュールには、26個の温度センサが装備され、そのうちの8個は実電池の大きな表面の1つに分布される。
【0220】
試験は、0~1W/cmの種々の熱流速密度Fで実行した。Fは、供給される全熱出力を全交換区域によって分けたものに等しい。
【0221】
試験した液体は、Jarylec(登録商標)C101と同様の粘度を有する油またはこの油とHCFO-1233zdEとの混合物のいずれかであった。最初に、水分または大気汚染物質の混入を回避しながら、HCFO-1233zdEを導入した。油は、メスシリンダーを使用して、重量によって添加した。サンプリングによって混和性および均一性を確認した。
【0222】
デバイスを、0.25W/cmの熱流速密度F(供給される出力を変化させて調節される)および15℃の平均流体温度(筐体入口の液体温度および筐体出口の液体温度の平均)にて、自動試験モードで使用した。所与の熱流速密度では、液体流量は、流体によって決まる最大ポンピング速度まで増加した。
【0223】
伝熱係数Hは、平均電池温度と筐体入口の流体温度との間の差によって割られた熱流速密度に対応する。
【0224】
純粋な油では、達成可能な最大液体流量は15l/minである。10%のHCFO-1233zdEを含む組成物では、達成可能な最大液体流量は18l/minである。
【0225】
実施例5-暴走の防止
試験は、流体A(純HCFO-1233zdE)または流体B(10重量%のHCFO-1233zdE+90重量%の脂肪族炭化水素系誘電油)で充填された密閉筐体中に8個のエネルギー蓄電池が収容された小型アセンブリ中で実施された。筐体は、50℃での流体の蒸気圧より高い圧力に適合した弁を装備している。
【0226】
試験は、電池の壁の温度および流体の温度を監視するための熱電対を備えている。放出されるガスは、洗浄して酸生成物を除去した後、ガスクロマトグラフィーによって分析する。
【0227】
電池の特性は、以下のとおりである:
- モデル:Samsung INR 18650 35E
- 電気アーキテクチャ:1s8p
- 容量:3.5A.h
- 化学式:LiNiCoMnO
- 電圧:最小2.5V、正常3.6V、最大4.2V。
【0228】
時間t=0で、釘の手段によって最大まで充電された電池の1つで短絡を起こす。次いで、当該の電池は熱暴走を経、それは温度および圧力が上昇し、筐体の弁が開くことによって反映される。
【0229】
流体Aの場合、弁の較正圧力は4バール絶対圧である。最高平均温度は93℃であり、300s後の平均温度は63℃である。放出されるガス中のHCFO-1233zdの含有量は、60mol%超である。Hの含有量は、9mol%である。暴走は、手が付けられていないままの他の電池へ伝播されない。
【0230】
ガスの分析は、HCFO-1233zdの一切の分解を明らかにしていない。
【0231】
流体Bの場合、弁の較正圧力は1.5バール絶対圧である。最高平均温度は128℃であり、300s後の平均温度は73℃である。放出されるガス中のHCFO-1233zdの含有量は、50mol%超である。Hの含有量は、11mol%である。暴走は、手が付けられていないままの他の電池へ伝播されない。ガスの分析は、HCFO-1233zdの一切の分解も、油との任意の反応をも明らかにしていない。
【0232】
完全温度プロフィルは、図6で確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】