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特表2023-546445コルチコステロイドの非経口投与のためのPEGフリー水性懸濁液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】コルチコステロイドの非経口投与のためのPEGフリー水性懸濁液
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20231026BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231026BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K31/573
A61K47/02
A61K47/18
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524075
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 IB2021059603
(87)【国際公開番号】W WO2022084842
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/104,143
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/252,705
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】オマール アブデルラフマン サルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル アーロン バーグマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076CC04
4C076DD23D
4C076DD60
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA10
4C086DA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA55
4C086NA06
4C086ZB11
(57)【要約】
ポリエチレングリコール(PEG)またはポリソルベート(PS)を含まないコルチコステロイドの非経口水性懸濁液製剤であり、これは、市販されている製剤と比較して再懸濁性が良く、安定性が長く、さらに、これまで実現できなかったより高濃度のコルチコステロイドの安定な製剤が可能になる。好ましくは、コルチコステロイドは、酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルチコステロイド、第四級アンモニウム化合物、等張化剤、および水を含む、非経口使用のための医薬水性懸濁液製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【請求項2】
コルチコステロイドが、酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
第四級アンモニウム化合物が、0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムである、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が0.07~0.3mg/mLである、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が0.07~0.23mg/mLである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項3に記載の製剤。
【請求項7】
さらに塩化ナトリウムが9mg/mLの濃度を有する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
コルチコステロイドが酢酸メチルプレドニゾロンである、請求項6に記載の製剤。
【請求項9】
酢酸メチルプレドニゾロンが20~160mg/mLの範囲の濃度を有する、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
酢酸メチルプレドニゾロンの濃度が20~80mg/mLの範囲である、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
コルチコステロイドが酢酸メドロキシプロゲステロンである、請求項6に記載の製剤。
【請求項12】
酢酸メドロキシプロゲステロンが135~165mg/mLの濃度範囲を有する、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
本質的に酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロン、0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウム、塩化ナトリウム、および水からなる、請求項1に記載の医薬水性懸濁液製剤。
【請求項14】
コルチコステロイドが酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、40℃で少なくとも100日の期間、pH4~7に維持される、請求項1に記載の医薬水性懸濁液製剤。
【請求項15】
期間が少なくとも300日である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
期間が少なくとも500日である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
上部空間を有し、請求項2に記載の製剤を含有するバイアルであって、上部空間が周囲空気で充填されている、バイアル。
【請求項18】
コルチコステロイドが80~180mg/mLの濃度の酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が、酢酸メチルプレドニゾロンの濃度の0.25%~0.33%に等しい濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムである、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
等張化剤が塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
酢酸メチルプレドニゾロンが80~160mg/mLの濃度を有する、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が酢酸メチルプレドニゾロンの濃度の0.3%である、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
コルチコステロイドが120mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.35mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、請求項1に記載の製剤。
【請求項23】
コルチコステロイドが80mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.12~0.23mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、請求項1に記載の製剤。
【請求項24】
コルチコステロイドが40mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.12mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
Depo-Medrol(登録商標)(酢酸メチルプレドニゾロン)およびDepo-Provera(登録商標)(酢酸メドロキシプロゲステロン)は、ポリエチレングリコール(PEG)3350を含有するビヒクルを含む非経口水性懸濁液として製剤されている。PEG 3350は、懸濁液を立体的に安定させるためにビヒクルに加えられ、20年以上にわたって非経口水性懸濁液の成分になっている。安定化のメカニズムは、以下のように説明される。PEGは、化学式がHO(CHCHO)Hである非イオン性水溶性界面活性剤である。PEGポリマーのセグメントは、「アンカー」鎖と呼ばれ、医薬品有効成分(API)粒子の表面に吸着して吸着層を形成する。この層の厚さは、ポリマー濃度、媒体の溶解力、温度、およびポリマーの分子量などのいくつかのパラメーターによって決まる。他のセグメントは、安定化鎖または「尾」と呼ばれ、溶液中に伸長する[T.Tadros.Interaction forces between particles containing grafted or adsorbed polymer layers.Advances in Colloidal Interface Science、104、2003]。これらの尾は相互接続して粒子間を架橋し、制御された凝集をもたらす。したがって、APIは、再分散しやすいゆるく架橋した粒子として沈降する。しかしながら、ビヒクルに界面活性剤が添加されない場合、粒子は遅い速度でそれぞれ独立に沈降し、再分散させるのが難しい密集した沈降物を形成する[T.Tadros.Control of stability/flocculation and rheology of concentrated suspensions.Pure & Appl.Chem.、64(11)、1992]。図1に示すとおり、解凝集された粒子は、(ストークスの法則に従って)粒径の二乗に比例する遅い終端速度を有し、押し固まったケーキを形成する。凝集した粒子は、他方では、沈降物の高さがより高いことによって表されるように、より速く沈降してより固まっていないケーキを形成し、それは簡単に再懸濁することができる[L.Wu;J.Zhang;W.Watanabe、Adv.Drug Delivery Rev.63(2011)456~469頁]。大規模な集塊、または制御されていない凝集は、極めて速い粒子の沈降をもたらし、正確な用量の吸引を難しくし、患者への投与に使用される針の詰まりを引き起こす可能性があるので、望ましくないことに留意されたい。
【0003】
しかしながら、この利点にもかかわらず、PEGを使用することに関して既知の問題や懸念がある。例えば、PEGおよびポリソルベート(PS)などの類似の界面活性剤は、自動酸化してヒドロペルオキシドを形成し、続いてギ酸などの副生成物に鎖分解しやすく、上部空間内の酸素が枯渇するまでpHが継続的に低下することが知られている[M.Danbrow、E.Azaz、A.Pillersdorf.Autoxidation of polysorbates.J.Pharm.Sci.、67(12),1978]。pH低下に加えて、界面活性剤の分解は、懸濁液の増粘をもたらす可能性があり、内容物の均一性の問題が生じる。PEGの酸化分解によって引き起こされるpH低下に対処するため、および製品(バイアルで提供されるもの)の貯蔵期限を延長するために、バイアルの上部空間内の空気を窒素に置き換え(窒素オーバーレイ)、または緩衝剤を製剤に加える。しかしながら、窒素を使用する場合でも、酸素は依然として時間の経過と共にこれらの製品を分解する。PEGに対する別の懸念は、長期保管後の懸濁液の再分散性が時折悪いことである(固化および押し固まった沈降物)。
【0004】
患者に対するPEGの意図された安全性への悪影響について論じている刊行物もいくつかある。Nelsonは、PEGの存在によって引き起こされる髄腔内注射にDepo-Medrol(登録商標)を使用することに関連するリスクを論じた[D.A.Nelson.Dangers from methylprednisolone acetate therapy by intraspinal injection.Arch Neurol、45、 1988]。彼は、髄腔内に注射した場合、グリコールの使用により、無菌性髄膜炎、クモ膜炎、または硬髄膜炎などの大きな影響がもたらされる可能性があると結論付けた。Honorioらは、哺乳動物の神経衝撃に対するPEGの影響を研究した[T.Honorio、A.J.Gissen、G.R.Strichartz、M.J.Avaram、B.G.Covino.The effect of polyethylene glycol on mammalian nerve impulses.Anesth Analg.、66、1987]。20%以上のPEG濃度では、神経細胞の複合活動電位が抑制され、A、B、およびC神経線維の伝導速度が低下した。火傷患者に対する、PEGを含有する抗菌クリームの繰り返し局所投与の潜在的な毒性は、Heroldらにより、動物モデルを使用して研究された(D.A.Herold.Toxicity of topical polyethylene glycol.Toxicology and Applied Pharmacology、65、1982)。ウサギの開放創にこのクリームを塗布すると、総カルシウムの上昇、浸透圧ギャップの上昇、高アニオンギャップ性代謝性アシドーシス、および腎不全がもたらされた。PEGの吸収と、それに続く腎毒性化合物と一酸および二酸へのその代謝が、これらの症状の原因として提案された。Heroldらは、毒性のメカニズムとして、吸収後のアルコール脱水素酵素およびアルデヒド脱水素酵素によるPEGの有機酸への逐次酸化を提案した[D.A.Herold、K.Keil、D.E.Bruns.Oxidation of polyethylene glycol by alcohol dehydrogenase.Biochemical Pharmacology、38、1989]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の技術問題およびPEGへの意図された安全性の懸念に対処するために、PEGを本質的に含まない水性懸濁液の製剤が開発され、その場合、ビヒクル中の賦形剤は、塩化ナトリウム(NaCl)などの等張化剤およびミリスチルガンマ塩化ピコリニウム(MGPC)などの第四級アンモニウム化合物のみである。驚くべきことに、完全にPEGを除去することおよび市販されているコルチコステロイド製剤に含まれているMGPCの量を減らすことにより、市販されている製剤のものと比較して予想外に長期間の安定性が得られることが発見された。
【0006】
本明細書に記載された新しい製剤は、再懸濁性がより良く、窒素オーバーレイなしでpHが安定しており、現在市販されているDepo-Medrol(登録商標)およびDepo-Provera(登録商標)の貯蔵期限と比較してはるかに長い貯蔵期限をもたらす。
【0007】
その上、PEGの除去により、驚くべきことに、MGPCの量を比例的に増加させることによって酢酸メチルプレドニゾロン(MRA)懸濁液中のより高い薬物添加量が可能になることが発見された。これまで、80mg/mLを超えるMRA濃度は市販されておらず、一つには、濃度が高くなると再懸濁性の問題が生じるためである。PEGを完全に除去することにより、驚くべきことに、懸濁液を安定化させるためにPEGが必要であると考えられていた先行技術の教示にもかかわらず、安定したより高濃度のMRAが可能であることが発見された。より高濃度の用量のMRAが現在可能であり、120mg/mLのMRAのそのような1回注射は、FDAによって承認された最大1日量である。このような筋肉内注射では、大量投与および複数回注射に伴う痛み、不快感などを軽減するのに役立つはずである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コルチコステロイド、第四級アンモニウム化合物、等張化剤、および水を含む、非経口使用のための新規な医薬水性懸濁液製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤を提供する。新規な製剤は、時間の経過に伴う安定性の喪失につながるpH低下の主な原因であるPEGまたは(PS)を含有しない。PEGおよびPSを排除し、ビヒクル中でミリスチルガンマ塩化ピコリニウム(MGPC)などの第四級アンモニウム化合物および塩化ナトリウムなどの等張化剤のみを使用することによって、懸濁液は、その貯蔵期限中の再懸濁性および安定性が既存の市販品よりも驚くほど良好である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)解凝集および(b)凝集した懸濁液中の沈降を描写した図を示す。パネルは、左から右に時間が増加することを表す。概略図は、L.Wu;J.Zhang;W.Watanabe、Adv.Drug Delivery Rev.63(2011)456~469頁から再現されている。
図2】本発明のPEGフリー懸濁液と比較した40mg/mL Depo Medrol(登録商標)の保管時間の関数としてのpH低下のプロットを示す。
図3】本発明のPEGフリー懸濁液と比較したDepo-Provera(登録商標)の時間の関数としてのpH低下のプロットを示す。
図4】%沈降した薬物の高さ対時間、すなわち、本発明のPEGフリー120mg/mL MRA懸濁液の沈降のプロットを示す。
図5】種々のMGPC濃度で120mg/mL PEGフリーMRA懸濁液を完全に再懸濁させるための反転の平均数(n=2、ここでnは試行数である)のプロットを示す。
図6】本発明の120mg/mL PEGフリーMRA懸濁液の沈降への種々のNaCl濃度の影響を示すための%沈降した薬物の高さ対時間のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、コルチコステロイド、第四級アンモニウム化合物、等張剤、および水を含む、非経口使用のための医薬水性懸濁液製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤が提供される。
【0011】
本発明の別の態様では、コルチコステロイド、第四級アンモニウム化合物、等張化剤、および水を含む、非経口使用のための医薬水性懸濁液製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤が提供される。
【0012】
後述は、本発明のこの第1の態様のいくつかの実施形態(E)であり、ここで、便宜上、E1はそれと同一である。
【0013】
E1. 直ぐ上に記載したとおり、本発明の2つの態様のいずれかに基づく製剤。
【0014】
E2. 第四級アンモニウム化合物が、0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムである、実施形態E1に基づく製剤。
【0015】
E3. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が0.4mg/mL未満である、実施形態E2に基づく製剤。
【0016】
E4. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が0.07~0.3mg/mLである、実施形態E3に基づく製剤。
【0017】
E5. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が0.07~0.23mg/mLである、実施形態E4に基づく製剤。
【0018】
E6. 等張化剤が塩化ナトリウムである、実施形態E1からE5のいずれか1つに基づく製剤。
【0019】
E7. さらに塩化ナトリウムが9mg/mLの濃度を有する、実施形態E6に基づく製剤。
【0020】
E8. さらに塩化ナトリウムが10mg/mLの濃度を有する、実施形態E6に基づく製剤。
【0021】
E9. コルチコステロイドが酢酸メチルプレドニゾロンである、実施形態E1からE8のいずれか1つに基づく製剤。
【0022】
E10. 酢酸メチルプレドニゾロンが20~160mg/mLの範囲の濃度を有する、実施形態E9に基づく製剤。
【0023】
E11. 酢酸メチルプレドニゾロンの濃度が20~80mg/mLである、実施形態E10に基づく製剤。
【0024】
E12. コルチコステロイドが酢酸メドロキシプロゲステロンである、実施形態E1からE8のいずれか1つに基づく製剤。
【0025】
E13. 酢酸メドロキシプロゲステロンが135~165mg/mLの濃度範囲を有する、実施形態E11に基づく製剤。
【0026】
E14. 酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロン、0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウム、塩化ナトリウム、および水から本質的になる、実施形態E1に基づく製剤。
【0027】
E15. コルチコステロイドが酢酸メチルプレドニゾロンまたは酢酸メドロキシプロゲステロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.5mg/mL未満の濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、40℃で少なくとも100日の期間、pH4~7に維持される、実施形態E1に基づく製剤。
【0028】
E16. 期間が少なくとも300日である、実施形態E15に基づく製剤。
【0029】
E17. 期間が少なくとも500日である、実施形態E15に基づく製剤。
【0030】
E18. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウム濃度が0.4mg/mL未満である、実施形態E14からE17のいずれか1つに基づく製剤。
【0031】
E19. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウム濃度が0.3mg/mL以下である、実施形態E14からE17のいずれか1つに基づく製剤。
【0032】
E20. 上部空間を有し、実施形態E1からE19およびE42からE58のいずれかに基づく製剤のいずれかを含有するバイアルであって、上部空間が周囲空気で充填されている、バイアル。
【0033】
E21. 対象の喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、薬物過敏症反応、アレルギー性鼻炎、血清病、または輸血反応におけるアレルギー状態を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0034】
E22. 対象の水疱性疱疹状皮膚炎、剥脱性皮膚炎、菌状息肉腫、天疱瘡、または重症多形紅斑から選択される皮膚疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0035】
E23. 対象の副腎皮質不全、先天性副腎過形成、または癌に関連するカルシウム血症、または非化膿性甲状腺炎から選択される内分泌障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19の1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0036】
E24. 対象の局部性腸炎および潰瘍性大腸炎における疾患の臨界期を患者が乗り切るための胃腸疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19の1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0037】
E25. 対象の後天性溶血性貧血、先天性再生不良性貧血、赤芽球ろう、または続発性血小板減少症の選択症例から選択される血液障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19の1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0038】
E26. 神経もしくは心筋が関与する旋毛虫症または対象において適切な抗結核化学療法と併用される場合のくも膜下ブロックもしくは切迫ブロックを伴う結核性髄膜炎を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0039】
E27. 対象における緩和的管理のために白血病またはリンパ腫を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0040】
E28. 対象における多発性硬化症、原発性もしくは転移性脳腫瘍に関連する脳浮腫、または開頭術を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0041】
E29. 対象における交感性眼炎、側頭動脈炎、ブドウ膜炎、または局所コルチコステロイドに反応しない目の炎症状態から選択される眼疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0042】
E30. 対象の利尿またはタンパク尿の寛解を誘導する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0043】
E31. 対象のベリリウム症、劇症もしくは播種性肺結核、特発性好酸球性肺炎、または症候性サルコイドーシスから選択される呼吸器疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0044】
E32. 対象の急性痛風性関節炎、急性リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、または全身性紅斑性狼瘡から選択されるリウマチ性障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0045】
E33. 対象における手術不能の、再発性、および転移性子宮内膜または腎癌を治療するための方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0046】
E34. 対象における妊娠を予防する方法であって、このような治療を必要とする対象に実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれか1つに基づく治療有効量の製剤を投与することを含む、方法。
【0047】
E35. 医薬品として使用するための、実施形態E1からE19のいずれかで定義された製剤。
【0048】
E36. 実施形態E21からE32に列挙された疾患のいずれかを治療する方法で使用するための、実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれかで定義された製剤。
【0049】
E37. 手術不能の、再発性、および転移性子宮内膜または腎癌を治療する方法で使用するための、実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれかで定義された製剤。
【0050】
E38. 妊娠の予防に使用するための、実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれかで定義された製剤。
【0051】
E39. 実施形態E21からE32に列挙された疾患のいずれかの治療に使用するための医薬品の製造における、実施形態E1からE11およびE14からE19のいずれかで定義された製剤の使用。
【0052】
E40. 妊娠の予防に使用するための医薬品の製造における、実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれかで定義された製剤の使用。
【0053】
E41. 手術不能の、再発性、および転移性子宮内膜または腎癌を治療する疾患の治療に使用するための医薬品の製造における、実施形態E1からE8およびE12からE19のいずれかで定義された製剤の使用。
【0054】
E42. 20mg/mLメチルプレドニゾロン、0.1165mg/mL MGPC、9mg/mL塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0055】
E43. 40mg/mLメチルプレドニゾロン、0.1165mg/mL MGPC、9mg/mL塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0056】
E44. 80mg/mLメチルプレドニゾロン、0.1165mg/mL MGPC、9mg/mL塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0057】
E45. 120~160mg/mLメチルプレドニゾロン、0.4~0.45mg/mL MGPC、塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0058】
E46. 150mg/mLメドロキシプロゲステロン、0.223mg/mL MGPC、10mg/mL塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0059】
E47. 400mg/mLメドロキシプロゲステロン、0.6~0.7mg/mL MGPC、10mg/mL塩化ナトリウム、および水を含む、非経口使用のための製剤であって、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートのどちらも本質的に含まない、製剤。
【0060】
E48. さらに塩化ナトリウムが5~13mg/mLの濃度を有する、実施形態E6に基づく製剤。
【0061】
E49. さらに塩化ナトリウムが6~11mg/mLの濃度を有する、実施形態E6に基づく製剤。
【0062】
E50. 酢酸メチルプレドニゾロンが20~180mg/mLの範囲の濃度を有する、実施形態E9に基づく製剤。
【0063】
E51. 酢酸メチルプレドニゾロンが20~170mg/mLの範囲の濃度を有する、実施形態E9に基づく製剤。
【0064】
E52. コルチコステロイドが80~180mg/mLの濃度の酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が、酢酸メチルプレドニゾロンの濃度の0.25%~0.33%に等しい濃度のミリスチルガンマ塩化ピコリニウムである、実施形態E1に基づく製剤。
【0065】
E53. 等張化剤が塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである、実施形態E1またはE52に基づく製剤。
【0066】
E54. 酢酸メチルプレドニゾロンが80~160mg/mLの濃度を有する、実施形態E1、E52、またはE53のいずれかに基づく製剤。
【0067】
E55. ミリスチルガンマ塩化ピコリニウムの濃度が酢酸メチルプレドニゾロンの濃度の0.3%である、実施形態E54に基づく製剤。
【0068】
E56. コルチコステロイドが120mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.35mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、実施形態E1に基づく製剤。
【0069】
E57. コルチコステロイドが80mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.12~0.23mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、実施形態E1に基づく製剤。
【0070】
E58. コルチコステロイドが40mg/mL酢酸メチルプレドニゾロンであり、第四級アンモニウム化合物が0.12mg/mLミリスチルガンマ塩化ピコリニウムであり、等張化剤が9mg/mL塩化ナトリウムである、実施形態E1に基づく製剤。
【0071】
定義
本明細書では、用語「ppm」は、重量による百万分率を意味する。
【0072】
用語「ポリエチレングリコールおよびポリソルベートを本質的に含まない」は、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートが製剤の特性(例えば物理的安定性)を改善するために故意に添加されず、存在する場合でも、極微量を超えず、好ましくは100ppm未満であることを意味する。
【0073】
本明細書では、用語「PEG」は、「ポリエチレングリコール」を意味する。医薬用途のPEGの典型的な好ましい分子量範囲は、PEG 200~PEG 8000に及ぶ。PEG 3350は、分析証明書に分子量の配列があり、すなわち、3015~3685であり、メドロキシプロゲステロンおよびメドロキシプロゲステロンの全てまたはほとんどの市販製剤に使用されている。PEG 3350は、PEGの定義を含む。
【0074】
本明細書では、用語「PS」は、「ポリソルベート」を意味する。医薬用途の市販されているポリソルベートは、20、21、40、60、61、65、80、81、85、120のグレードの範囲である。ポリソルベート80は、メドロキシプロゲステロンの市販製剤に使用するのに好ましいPSであり、PSの定義を含む。
【0075】
本明細書では、用語「MRA」は、酢酸メチルプレドニゾロンを意味する。
【0076】
本明細書では、用語「ビヒクル」は、APIを含まない、賦形剤(例えば、NaCl、およびMGPC)を含有する水溶液を表す。
【0077】
本明細書では、用語「懸濁液」は、不溶性APIをビヒクルに加えた後の薬剤を表す。
【0078】
本明細書では、用語「等張剤」は、等張性を制御する溶液中の添加剤を表す。等張剤の非限定的な例には、塩化ナトリウム、塩化カリウムが含まれる。
【0079】
本明細書では、用語「等張化剤」は、溶液に溶解したとき、その溶液の浸透圧に影響を与え得る添加剤を表す。等張化剤の非限定的な例には、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが含まれる。例えば、9mg/mLにおけるNaCl(等張化剤)は、等張液をもたらす。明確にするために、全ての等張剤は、等張化剤である。
【0080】
市販されているDepo-Medrol(登録商標)無菌水性懸濁液のビヒクルは、API粒子の凝集を制御することによって懸濁液を安定化させるためのPEG 3350、等張性のための塩化ナトリウム、ならびに湿潤剤および防腐剤としてのMGPCからなる。
【0081】
市販されているDepo-Provera(登録商標)無菌水性懸濁液のビヒクルは、懸濁液を安定化させるためのPEG 3350およびPS 80、等張性のための塩化ナトリウム、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベンを含有している。
【0082】
PEG 3350を排除することおよび市販されている投与量に見られるミリスチルガンマ塩化ピコリニウム(MGPC)の濃度を下げることにより、Depo-Medrol(登録商標)の安定性がpH低下および再懸濁性に関して著しく改善されることが発見された。MGPCは、防腐剤および湿潤剤としてだけではなく、API粒子の制御された凝集のためのカチオン界面活性剤としても作用し、優れた再分散性をもたらす。同様に、Depo-Provera(登録商標)では、PEGおよびPSを除去し、ビヒクル中でMGPCおよび塩化ナトリウムのみを使用することによって、貯蔵期限中の懸濁液の安定性が改善されることが発見された。
【0083】
PEGを排除することによって、より高用量の投与を可能にして、より高投与量および複数回注射に伴う痛み、不快感を最小限に抑える、メチルプレドニゾロンの新規で安定した高濃度製剤を実現することが可能であることも発見された。
【実施例
【0084】
(実施例1)
実施例1:PEGフリー製剤と比較した市販のDepo-Medrol(登録商標)
懸濁液の製剤は、ビヒクルを調製する標準的な二段法に従い、続いて酢酸メチルプレドニゾロン(MRA)粉末を加えて懸濁液を作製し、湿潤、撹拌、高剪断混合、および最後に再度撹拌する。温度は23~30℃に制御されていたので、所望量の非API成分を順次ミリQ水に加えた。ビヒクルを0.22μmフィルターに通してろ過し、そのpHを6.8~7.0に再調整した。MRA粉末を、続いて量り取り、ビヒクルに加え、次いで10分間撹拌した。得られたスラリーは、1分間の高剪断混合と、それに続いてさらに10分間の撹拌にかけた。最後に、必要に応じて、希NaOHまたはHClを使用して懸濁液のpHを6.8~7.0に調整した。懸濁液温度をモニターして、それが23~30℃の範囲内にあることを確実にした。
【0085】
2つのDepo-Medrol(登録商標)40mg/mL懸濁液を用意して、現在のビヒクルを使用して製剤した生成物対PEGフリービヒクルを用いて製剤した生成物の特徴を比較した。第1の実験(T1)では、PEG 3350(30mg/mL)、MGPC(0.233mg/mL)、およびNaCl(9.0mg/mL)を含む対照ビヒクルを、上記の手順を使用して調製した。第2の実験(T2)では、ビヒクルは、0.1165mg/mL MGPCおよび9.0mg/mL NaClからなっていた。同じMRAバッチをT1およびT2製剤の両方に使用して、40mg/mL API濃度を得た。再懸濁性のマーカーである沈降した薬物の高さ(SDH)は、1日沈降後に、対照およびPEGフリー懸濁液に関してそれぞれ26%および45%であった。両方の懸濁液は、APIを完全に再懸濁するのに2~3回の反転しか必要としなかった。
【0086】
安定性の研究は、1mLバイアルを各製剤で充填し、バイアルに栓で蓋をして実施した。バイアルは、40℃の実験室のオーブン内に直立位置で保管した。バイアルを異なる間隔で取り出し、pHを測定した。表1に提示し、図2に示すように、PEGフリー安定性試料(T2)のpHは、対照(T1)のpH2.7と比較して、40℃で514日保管した後、約4.8で横ばいになった。対照(T1)は、PEGフリー製剤(T2)の2回の反転と比較して、APIを完全に再懸濁するのに4回反転する必要があった。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例2)
実施例2:PEGフリー/PSフリー製剤と比較した市販のDepo-Provera(登録商標)懸濁液
2つのDepo-Provera(登録商標)製剤を用意して、現在のビヒクルを使用して製剤した懸濁液と、MGPCおよびNaClのみを使用して調製したビヒクルを用いて製剤した懸濁液とを比較した。対照ビヒクルは、1.554mg/mLメチルパラベン、0.17mg/mLプロピルパラベン、9.9mg/mL NaCl、32.85mg/mL PEG 3350、および2.735mg/mL PS 80を含有していた。新しいビヒクルは、9.9mg/mL NaClおよび0.223mg/mL MGPCを含んでいた。ビヒクルを0.22μフィルターに通してろ過し、ろ液のpHを6.4~6.6に調整した。酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)粉末を、続いて量り取り、ビヒクルに加えて、150mg/mL API濃度をもたらし、10分間撹拌した。得られたスラリーは、1分間の高剪断混合と、それに続いてさらに30分間の撹拌にかけた。最後に、必要に応じて、希NaOHまたはHClを使用して懸濁液のpHを6.4~6.6に調整する。懸濁液温度をモニターして、それが23~30℃の範囲内にあることを確実にした。
【0089】
沈降した薬物の高さ(SDH)は、1日沈降後に、対照およびPEGフリー懸濁液に関してそれぞれ69%および95%であった。対照は、APIを完全に再懸濁するのに5回の反転を必要としたが、PEGフリー懸濁液は、2回の反転を必要とした。
【0090】
安定性の研究は、1mLバイアルを各製剤で充填し、バイアルに栓で蓋をして実施した。バイアルは、40℃の実験室のオーブン内に直立位置で保管した。バイアルを異なる間隔で取り出し、pHを測定した。表2に提示し、図3に示すように、PEGフリー安定性試料のpHは、対照のpH2.7と比較して、40℃で500日保管した後、約4.9で横ばいになった。さらに、100回反転させた後でも、対照ではAPIの再懸濁を達成することができなかった。PEGフリー製剤では、他方では、APIを完全に再懸濁するのに8回の反転しか必要としなかった。
【0091】
【表2】
【0092】
(実施例3)
実施例3:高濃度PEGフリー120mg/mL MRA懸濁液の調製
高濃度懸濁液の製剤は、ビヒクルを調製した実施例1のPEGフリー組成物について概説した標準的な二段法に従い、続いて酢酸メチルプレドニゾロン(MRA)粉末を加えて懸濁液を作製し、湿潤、撹拌、高剪断混合、および最後に再度撹拌する。温度は23~30℃に制御されていたので、所望量の非API成分を順次精製水に加えた。ビヒクルを0.22μmフィルターに通してろ過し、pH6.0~7.0に調整した。MRA粉末を、続いて量り取り、ビヒクルに加え、次いで10分間撹拌した。得られたスラリーは、1分間の高剪断混合と、それに続いてさらに10分間の撹拌にかけた。最後に、必要に応じて、希NaOHまたはHClを使用して懸濁液のpHを6.5~7.0に調整した。懸濁液温度をモニターして、それが23~30℃の範囲内にあることを確実にした。
【0093】
(実施例3A)
実施例3A:PEGフリー120mg/mL MRA懸濁液の沈降
上記の手順を使用して、MGPC(0.3mg/mL~0.699mg/mL)が異なる120mg/mL MRA懸濁液HC-1からHC-6を調合した。これらの懸濁液をシンチレーションバイアルに充填し、密封し、撹拌しないで静置して固形物の沈降を調べた(%沈降した薬物の高さ、SDH)。沈降は、最長30日間静置したままの懸濁液で決定した。MGPC濃度は、沈降速度ならびに最終的な安定した沈降物の高さの両方に影響を与えた。より高いレベルのMGPCは、図4に示したように、SDHの急速な低下と直接相関関係があった。同時に、MGPCのレベルの増加はまた、最終沈降高さに反比例しており、その場合、最も高いレベルのMGPCにより最も押し固まった沈降物が得られた。これらのどちらの場合も、HC1からHC5までMGPCレベルに対して用量依存的な反応があった。他方では、MGPC濃度が最も高いHC6は、1日後に最大のSDH高さを示したが、HC5と類似の最終状態に達した。図4は、これらの高濃度PEGフリー製剤が固化または解凝集のどちらも受けないことを示す。
【0094】
(実施例3B)
実施例3B:PEGフリー120mg/mL MRA懸濁液の再懸濁性
HC1~HC5の再懸濁性チャレンジを実施した。個々のシンチレーションバイアルに充填し、密封した。種々の時点で、系を穏やかに混合し、穏やかに反転させることによって実施して、完全に均一な分散液を達成した。図5は、種々のMGPC濃度で120mg/mL MRAを完全に再懸濁させるための平均反転数(n=2)をプロットしている。各チャレンジの間、目に見える微粒子を含まない透明な無色上清が観察された。この懸濁液は、一貫した再懸濁チャレンジ後に再現可能な沈降を実証し、一貫した固形物量に戻った。
【0095】
(実施例3C)
実施例3C:PEGフリー120mg/mL MRA懸濁液の安定性
上記の手順を使用して、MRA(120mg/mL)、NaCl(9mg/mL)およびミリスチルガンマ塩化ピコリニウム(MGPC、0.3~0.4mg/mLの範囲)からなる複合懸濁液HC7~HC10を用いた高濃度製剤の安定性を試験した。これらの懸濁液を1mLガラスバイアルに充填し、栓をし、密封し、安定チャンバー内に(反転させて)置き、促進老化(40℃)、中間(30℃)、および長期(25℃)条件で保管後に性能を評価する。0.3mg/mL未満のMGPCレベルで調製した懸濁液は実行可能ではなく、0.4mg/mLより高いMGPC濃度はこのレベルのMRAでは有利ではなかった。これらの懸濁液のpHは、表3に見られるように、実施例1のPEGフリー製剤について観察されたものと類似の傾向に従う。40℃で保管した試料は、より低温条件における約pH5.5と比較して、6カ月後に約pH5.0で横ばいになるようである。
【0096】
【表3】
【0097】
(実施例4)
実施例4:160mg/mLおよび200mg/mL PEGフリーMRA懸濁液の調製
上記の手順を使用して、表4に概説したマトリックスに従って一連のバッチを調製した。この研究は、報告されたMRA/MGPC比で懸濁液が実現可能な固形物の限界を決定するために実施した。この実験のために、「安定な懸濁液」は、予め確立された基準:1)分散液は凝集した懸濁液を形成し、静置後に透明な上清を形成しなければならない、2)分散液は再懸濁が容易なことを示すだけの穏やかな反転で再懸濁しなければならない、また3)再懸濁後に再沈降して透明な上清をもたらし、活発な沈降/再懸濁を示さなければならない)を全て満たしていると定義された。バッチはシンチレーションバイアルに入れ、2週間にわたってモニターした。160mg/mL MRAは、このw/w比のMRA/MGPCで製剤することができるが、それを超えるためには、例えば、200mg/mLでは、懸濁粒子を安定化させるために追加のMGPCがおそらく必要である。
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
PEGを用いて安定な160mg/mL MRA懸濁液を作製する試みが行われた。バッチを上記のように、PEG3350を含めて調製した。0.233mg/mLおよび0.466mg/mLのMGPC濃度を使用すると、MRAの安定な凝集した懸濁液を得ることができなかった。これらの調製物は、静置後に沈降せず、振盪して均一な分散をもたらすことができなかった。
【0101】
(実施例5)
実施例5:120mg/mL MRA懸濁液の再懸濁性に対する塩濃度の影響
MRAの高濃度懸濁液における塩の役割を調べるために、上記プロセスを使用して懸濁液を調製し、120mg/mL MRAおよび0.35mg/mL MGPCを、NaCl(4.5および9mg/mL)およびKCl(4.5および9mg/mL)を用いて調製した。結果は表6を参照のこと。
【0102】
【表6】
【0103】
ナトリウムおよびカリウム塩は、9mg/mL濃度で、0.35mg/mL MGPCと共に120mg/mL MRA懸濁液を再懸濁することができた。しかしながら、両方の塩媒体は、研究領域全体に容易に分散した。全ての溶液は、4.5mg/mLの塩レベルで再懸濁に失敗し、MRAの安定な分散液に下限値が必要であることを示していた。非経口薬物製品の医薬品調整において、塩化ナトリウムは、塩化カリウムと比較して等張化剤として好ましい。5mg/mL~13mg/mLの一連の製剤を調製し、静置したまま%SDHを28日間追跡した。図6を参照のこと。塩濃度を下げると、120mg/mL MRA懸濁液の同時圧縮が見られる。興味深いことに、5~13mg/mLの全てのレベルの塩化ナトリウムは、多くの場合1回の反転で容易に再懸濁された(注記:21日および28日に5mg/mLでは2回の反転が必要とされ、28日に13mg/mLでは2回の反転が必要とされた)。これは、イオン組成と一連の5~13mg/mLの塩、好ましくは塩化ナトリウムの要件を示している。
【0104】
(実施例6)
実施例6:80mg/mL Depo Medrol(登録商標)と120mg/mL PEGフリー製剤のIn Vivo研究
本明細書に記載された120mg/mL PEGフリーMRA製剤と商業的に実現可能な80mg/mL Depo Medrol(登録商標)を比較するために、前臨床薬物動態学(PK)および薬力学(PD)研究に着手した。これは、単回投与の比較筋肉内研究であった。犬にいずれかを3mg/kg投与し、生存相(in-life phase)を介して21日間モニターした。この研究で試験した120mg/mL濃度の製剤は、耐容性、PK、およびPDにおいて既存の80mg/mL(市販)製剤と類似の挙動を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】