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特表2023-546448少なくとも1つの金属補強要素とゴム組成物とを含む補強製品。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】少なくとも1つの金属補強要素とゴム組成物とを含む補強製品。
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20231026BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231026BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231026BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20231026BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20231026BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/013
C08K3/36
C08K5/31
C08K3/08
B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524142
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 FR2021051748
(87)【国際公開番号】W WO2022084601
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】2010880
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】トゥイリエ アン-リセ
(72)【発明者】
【氏名】ガヴァール-ロンシェ オディル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト-ディ-ドミニク フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】マムリ カーヒナ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA14
3D131BA08
3D131BA18
3D131BC02
3D131BC31
4J002AC011
4J002AC012
4J002AC021
4J002AC032
4J002AC051
4J002AC061
4J002AC062
4J002AC081
4J002AC111
4J002BC051
4J002BC052
4J002DA037
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4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
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4J002DE147
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4J002EV139
4J002EV169
4J002EV279
4J002EV329
4J002EW169
4J002FD016
4J002FD017
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4J002FD208
4J002GC00
4J002GC01
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのエポキシ化ジエンエラストマー、補強フィラー、及び少なくとも1phrの硫黄を含む架橋システムに基づくゴム組成物中に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づく補強製品に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエポキシ化ジエンエラストマー、補強フィラー及び1~2.5phrの硫黄を含む架橋システムに基づくゴム組成物に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づいた補強製品であって、
前記ゴム組成物が、0.5phr未満のステアリン酸又はその誘導体の1つと最大で2.5phrの酸化亜鉛とを含み、前記エポキシ化ジエンエラストマーが前記ゴム組成物中の主成分である、補強製品。
【請求項2】
加硫系が更に、0.1~6phr、より優先的には0.5~4phr、極めて優先的には0.5~2.5phrの含有量で用いられる加硫促進剤を含む、請求項1に記載の補強製品。
【請求項3】
前記補強用フィラーが、主成分としてシリカを含む、請求項1~2の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項4】
前記ゴム組成物が更に、グアニジン族の化合物、優先的にはジフェニルグアニジンを含む、請求項1~3の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項5】
前記グアニジン族の化合物の含有量が、0.5~3phr、優先的には0.5~2.5phr、及び好ましくは0.5~2phrの範囲である、請求項1~4に記載の補強製品。
【請求項6】
前記エポキシ化ジエンエラストマーが、エポキシ化天然ゴム、エポキシ化合成ポリイソプレン、優先的には90%を超えるシス-1,4結合の含有量を有するエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン/スチレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択されており、優先的にはエポキシ化天然ゴム及びエポキシ化合成ポリイソプレンからなるグループから選択されている、請求項1~5の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項7】
前記ゴム組成物が更に、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択され、優先的には天然ゴム及び合成ポリイソプレンから選択された非エポキシ化ジエンエラストマーを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、単独エラストマーの場合、1又は2以上のエポキシ化ジエンエラストマーを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、コバルト塩を含まないか、又はその2phr未満、優先的には1phr未満、好ましい態様では0.5phr未満、極めて優先的には0.1phr未満を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、ステアリン酸又はその誘導体の1つを含まないか、又はその0.1phr未満を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項11】
前記ゴム組成物が、シリカのカップリング助剤及びシリカを覆うための助剤、並びにこれらの混合物から選択さたる助剤を含み、助剤の含有量が、シリカの量に対して、5重量%から20重量%、優先的には6重量%から18重量%に及ぶ範囲である請求項3による補強製品又は、これらが請求項3に従属する場合の請求項4から10の何れか1項に記載の補強製品。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の補強製品を含む、完成品又は半完成品。
【請求項13】
請求項1から11の何れか1項に記載の補強製品を含む、空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強ゴム製品、特に空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤ用の補強ゴム製品の分野に関し、並びにこのような補強製品を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ又は補強ゴム物品の補強プライは、通常、「カレンダー加工」ゴム組成物と金属製補強コードを含む。カレンダー加工組成物は、タイヤの寿命を通じて良好な耐久性と低い転がり抵抗をプライに与える、金属補強コードへの良好な接着性、破断特性及びヒステリシス特性などを極めて明確に示すこと必要である。
【0003】
従って、金属コードと周囲のゴムとの間の接着は、空気入りタイヤ又は補強ゴム物品の補強プライの有効性にとって重要な特性である。ジエンエラストマー、特に天然ゴム、補強フィラー、及びこれらの組成物に極めて特異的な加硫系を含むコーティング組成物は、当該技術分野で知られている。この加硫系は、通常、高含量の硫黄及び酸化亜鉛、低含量のステアリン酸、「遅い」加硫促進剤及び加硫遅延剤を含む。これらのシステムでは、ゴム混合物と金属コードとの間の接着は、コードの真鍮コーティング表面の硫化現象を介して行われる。従って、加硫によって消費される前に硫黄が金属コードを硫化することを可能にするために、加硫遅延剤と「遅い」加硫促進剤が使用される。
【0004】
空気入りタイヤの製造業者により、カレンダー加工組成物の性能品質の1又は2以上を改善し更に耐久性を向上させるために多くの研究が行われてきた。
【0005】
文献国際公開第2016/058943号には、シース付きの補強スレッドをコーティングするゴム組成物を含む補強製品が開示されており、この組成物は、ジエンエラストマー、補強フィラー、及び本明細書で以下に定義される用語による「急速」加硫促進剤を含む加硫系に基づいており、この組成物はエージングに対する優れた耐性を発揮する。
【0006】
文献国際公開第2019/122586号には、実質的に分子状硫黄を含まず、良好な接着及び剛性性能品質を示す接着促進剤を含む組成物が示されており、この組成物を加硫以外の様々な架橋システムによって架橋することが可能である。
【0007】
より最近では、文献国際公開第2020/058614号では、優れた接着特性並びに経時的な特性維持が良好である、エポキシド基を示す少なくとも1つのエラストマー、少なくとも1つの補強フィラー、ポリカルボン酸、イミダゾール及び少なくとも1つの特定のポリフェノール化合物を含む架橋システムに基づくゴム組成物を教示している。
【0008】
加硫に代わる架橋システムを利用した組成物は、非常に有効ではあるが、その構成物質が多様であることにより、比較的工業上の煩わしさを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/058943号
【特許文献2】国際公開第2019/122586号
【特許文献3】国際公開第2020/058614号
【特許文献4】米国特許公開第2003/120007号明細書
【特許文献5】欧州特許第0 763 564号明細書
【特許文献6】米国特許第6903165号明細書
【特許文献7】欧州特許第1 403 287号明細書
【特許文献8】米国特許公開第2011/0098404号
【特許文献9】国際出願第97/36724-A2
【特許文献10】国際出願第99/16600-A1号
【特許文献11】国際出願第2006/069792-A1号
【特許文献12】国際出願第2006/069793-A1号
【特許文献13】国際出願第2008/003434-A1号
【特許文献14】国際出願第2008/003435-A1号
【特許文献15】国際出願第03/016215-A1号
【特許文献16】国際出願第03/016387-A1号
【特許文献17】国際出願第02/10269号
【特許文献18】フランス国特許2 981 298号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kautsch.Gummi Kunst.、2004年、57(3)、82
【非特許文献2】J.Appl.Polym.Sci.、1999、73、1733
【非特許文献3】Macromolecules, 1998, 31, 2822)
【非特許文献4】「The Journal of the American Chemical Society」(第60巻、309ページ、1938年2月)
【発明の概要】
【0011】
出願人の会社は、この調査研究を続け、少なくとも1つのエポキシ化ジエンエラストマーをベースとするゴム組成物中に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づく補強製品であって、この組成物は加硫によって架橋され、従って工業的利用が容易でありながら、補強要素への組成物の優れた接着特性を示し、特に破壊時特性及び転がり抵抗の点で性能品質の耐久性が改善されることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも1つのエポキシ化ジエンエラストマー、補強フィラー、及び少なくとも1phrの硫黄を含む架橋システムに基づくゴム組成物中に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づく少なくとも1つの補強製品に関する。
【0013】
好ましくは、本発明は、架橋システムが1~5phrの硫黄、優先的には1~4phrの硫黄、及び好ましくは1~2.5phrの硫黄を含む、補強製品に関する。
【0014】
好ましくは、本発明は、加硫系が更に、0.1~6phrの間、より優先的には0.5~4phrの間、及び極めて優先的には0.5~2.5phrの間の含有量で用いられる加硫促進剤を含む補強製品に関する。
【0015】
好ましくは、本発明は、架橋システムが、3.5分未満、好ましくは3分以下の「t0」と呼ばれる加硫開始時間を示す加硫促進剤を含む補強製品に関する。
【0016】
好ましくは、本発明は、補強用フィラーが主成分としてシリカを含む補強製品に関する。
【0017】
好ましくは、本発明は、ゴム組成物が更に、グアニジン族の化合物、優先的にはジフェニルグアニジンを含む補強製品に関する。好ましくは、グアニジン族の化合物の含有量は、0.5~3phr、優先的には0.5~2.5phr、及び好ましくは0.5~2phrの範囲である。
【0018】
好ましくは、本発明は、エポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化度が5%~40%、好ましくは10%~35%の範囲内である補強製品に関する。
【0019】
好ましくは、本発明は、エポキシ化ジエンエラストマーが、エポキシ化天然ゴム、エポキシ化合成ポリイソプレン、優先的にはシス1,4結合の90%を超える含有量を有するエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン/スチレンのコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択され、優先的にはエポキシ化天然ゴムとエポキシ化合成ポリイソプレンからなるグループから選択された補強製品に関する。
【0020】
特定の配置において、本発明は、ゴム組成物が更に、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択され、優先的には天然ゴム及び合成ポリイソプレンから選択される非エポキシ化ジエンエラストマーを含む、本発明による補強製品に関する。この特定の配置において、非エポキシ化ジエンエラストマーの含有量は、優先的には0~49phr、好ましくは0~40phr、優先的には5~25phrの間である。
【0021】
別の特定の配置において、本発明は、ゴム組成物が、単独エラストマー用に、1又は2以上のエポキシ化ジエンエラストマーを含む補強製品に関する。
【0022】
好ましくは、本発明は、ゴム組成物がコバルト塩を含まない、又はその2phr未満、優先的には1phr未満、好ましい態様では0.5phr未満、極めて優先的には0.1phr未満のコバルト塩を含む補強製品に関する。
【0023】
好ましくは、本発明は、ゴム組成物が、ステアリン酸又はその誘導体の1つを含まないか、又はその2phr未満、優先的には1phr未満、好ましい態様では0.5phr未満、極めて優先的には0.1phr未満を含む補強製品に関する。
【0024】
好ましくは、本発明は、ゴム組成物が、シリカのカップリング助剤及びシリカを覆うための助剤、並びにこれらの混合物から選ばれた助剤を含み、助剤の含有量が、シリカの量に対して、5重量%から20重量%に及ぶ範囲、優先的にはシリカの量に対して6重量%から18重量%に及ぶ範囲にある、補強製品に関する。好ましくは、シリカのカップリングのための助剤は、有機シランから選ばれ、好ましい態様では、有機シランポリスルフィド、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン及びブロック化メルカプトシランからなるグループから選ばれ、極めて好ましくは、有機シランポリスルフィドからなるグループから選ばれる。好ましくは、シリカを覆うための助剤は、アルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、第1、2、3級アミン又はポリオルガノシロキサンから選ばれ、極めて優先的にはアルキルアルコキシシランから選ばれる。
【0025】
好ましくは、本発明は、ゴム組成物が、最大で4phrの酸化亜鉛、優先的には最大で3phrの酸化亜鉛、優先的には最大で2.5phrの酸化亜鉛を含む補強製品に関する。
【0026】
好ましくは、本発明は、全補強フィラーの含有量が10~200phr、好ましくは10~100phr、好ましい態様では25~75phrである補強製品に関連する。
【0027】
好ましくは、本発明は、金属補強体が、銅、亜鉛、錫、アルミニウム、コバルト、ニッケル及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなるグループから選択された金属、優先的には銅、錫、亜鉛又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなるグループから選択された金属を表面を備えた、補強製品に関する。好ましくは、金属補強体の金属表面の金属は、真鍮である。
【0028】
本発明はまた、本発明による補強製品を含む完成品又は半完成品に関する。
【0029】
本発明はまた、本発明による補強製品を含む空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤに関する。
【0030】
(定義)
「に基づく」という表現は、使用される様々な構成物質の混合物及び/又はその場反応の生成物を含む製品又は組成物を意味すると理解されるべきであり、これらの構成物質の一部が、組成物の製造の様々な段階の間に少なくとも部分的に互いに反応することが可能であり及び/又は反応することが意図されており、従って、製品又は組成物が完全に又は部分的に架橋した状態又は非架橋状態になることが可能である。
【0031】
「エラストマーの百重量部当たり(又はphr)の重量部」という表現は、本発明の意味の範囲内において、エラストマーの百質量部当たりの質量部を意味すると理解されるべきである。
【0032】
本明細書において、特に明示しない限り、表示されているパーセンテージ(%)は全て重量パーセンテージ(%)である。
【0033】
更に、「aとbの間」という表現で示される何れかの値域は、aより大きくてb未満に及ぶ値域(つまり、a、bを除くこの区間)を表し、他方、「aからbまで」という表現で示される何れかの値域は、aから最大でbまで(つまり、厳格な限界値a、bを含む)に及ぶ値域を意味する。
【0034】
本明細書に記載される炭素を含む化合物は、化石起源又はバイオベース起源とすることができる。後者の場合、部分的又は完全にバイオマスから生じるか、バイオマスから生じる再生可能な原材料から得ることができる。特に、ポリマー、可塑剤、フィラーなどが該当する。
【0035】
(補強製品)
本発明による補強製品は、少なくとも1つのエポキシ化ジエンエラストマー、補強フィラー、及び少なくとも1phrの硫黄を含む架橋システムをベースとするゴム組成物に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づくものである。
【0036】
(エポキシ化ジエンエラストマー)
エポキシ化エラストマー又はゴム(2つの用語は、既知の方法で同義であり同義的である)は、エラストマー特性を有する、ホモポリマー又はブロック、統計又は他のコポリマーの何れであっても、当業者に知られている意味内の何れかのタイプのエラストマーを意味すると理解されるが、これはエポキシド基化(又はエポキシ化)、すなわち、エポキシド基基を含有することをいう。「エポキシド基基を含むジエンエラストマー」又は「エポキシ化ジエンエラストマー」という表現は、区別なく使用される。
【0037】
エポキシ化ジエンエラストマーは、公知の方法で、周囲温度(20℃)で固体であり;固体とは、重力の影響下でのみ、周囲温度(20℃)で、遅くとも24時間後にはそれが存在する容器の形状を最終的に呈する能力を有しない何れかの物質を意味すると理解する。
【0038】
本文に記載のエラストマーのガラス転移温度Tgは、DSC(示差走査熱量測定)により公知の方法で測定され、例えば、特に断りのない限り、1999年のASTM規格 D3418に準じて測定される。
【0039】
本発明による補強製品のゴム組成物は、ただ1つのエポキシ化ジエンエラストマー又は複数のエポキシ化ジエンエラストマーの混合物(次に、組成物のエポキシ化ジエンエラストマーの合計を表すために「エポキシ化ジエンエラストマー」であると単数形で表記される)を含有することができ、これは、何れかのタイプの非エポキシ化エラストマー、例えばジエンエラストマー、実際にはジエンエラストマー以外のエラストマーと組み合わせて、エポキシド基を含むジエンエラストマーを使用可能である。
【0040】
エポキシ化ジエンエラストマーは、本発明によるゴム組成物において主成分であり、すなわち、唯一のエラストマーであるか、組成物のエラストマーの中で最大の質量を占めるものである。
【0041】
本発明の優先的な実施形態によれば、ゴム組成物は、51から100phr、好ましくは60から100phr、好ましい態様では75から95phrの主成分としてエポキシ化ジエンエラストマーを、0から49phr、好ましくは0から40phr、好ましい態様では5から25phrの1又は2以上の他の少数の非エポキシ化エラストマーと配合物として含む。
【0042】
好ましくは、少数の非エポキシ化エラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択され、優先的には天然ゴム及び合成ポリイソプレンから選択される非エポキシ化ジエンエラストマーである。
【0043】
本発明の別の優先的な実施形態によれば、組成物は、100phrのエラストマーの全体に対して、1又は2以上のエポキシ化ジエンエラストマーを含む。
【0044】
エポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化度(mol%)は、本発明の特定の実施形態により大きな範囲まで変化することができ、好ましくは0.1%~80%の範囲内、優先的には0.1~50%の範囲内、更に優先的には0.3~50%の範囲内である。エポキシ化度が0.1%未満では、目的とする技術的効果が不十分となる恐れがあり、一方、80%を超えると、ポリマー本来の性質が劣化する。これらの理由から、官能基化、特にエポキシ化の程度は、より優先的には5%から40%の範囲内、有利には10%から35%の範囲内である。
【0045】
エポキシ化ジエン型のエラストマーは、ジエンモノマー(2つの共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)生じるエラストマーを意味すると理解されるべきであり、このポリマーは官能化されており、すなわち、エポキシド官能基を含有することが想起される。
【0046】
エポキシ化ジエンエラストマーの第1の特徴は、ジエンエラストマーであることである。これらのジエンエラストマーは、本特許出願の定義上では非熱可塑性であり、極めて大多数のケースで負(すなわち、0℃未満)のTgを示し、公知の方法で、「本質的に不飽和」と呼ばれるものと「本質的に飽和」と呼ばれるものの2つのカテゴリに分類することができる。例えばEPDMタイプのジエンとα-オレフィンのコポリマーなどのブチルゴムは、本質的に飽和ジエンエラストマーの範疇に入り、ジエン由来の単位の含有量は低いか極めて低く、常に15%(mol%)未満である。対照的に、本質的に不飽和のジエンエラストマーは、少なくとも部分的に共役ジエンモノマーから生じるジエンエラストマーであって、15%(mol%)より大きいジエン由来の単位(共役ジエン)の含量を有するものを意味すると理解される。「本質的に不飽和な」ジエンエラストマーのカテゴリにおいて、「高度に不飽和な」ジエンエラストマーは、特に、50%(mol%)より大きいジエン由来の単位(共役ジエン)の含量を有するジエンエラストマーを意味すると理解される。
【0047】
高度不飽和タイプの少なくとも1つのジエンエラストマー、特に天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなるグループから選択されるジエンエラストマーを用いることが望ましい。このようなコポリマーは、より優先的には、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)及びこれらのコポリマーの混合物からなるグループから選択される。
【0048】
本発明の要件に使用するエポキシ化ジエンエラストマーの第2の本質的な特性は、エポキシド官能基を含有して官能化されていることである。
【0049】
ジエンエラストマー中に存在するエポキシド基は、共重合又は重合後の修飾によって得られ、調製方法に応じて、鎖の骨格によって直接担われるか、又は側基によって担われ、例えば、共重合後のエラストマー鎖中に存在するジエン官能基のエポキシ化又は他の何れかの修飾によって担われる。
【0050】
エポキシ化ジエンエラストマーは、例えば、等価非エポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化、例えば、クロロヒドリンに基づくプロセス、ブロモヒドリンに基づくプロセス、又は過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド、過酸(過酢酸又はペルピン酸など)に基づくプロセスによって既知の方法で得ることができ;特にKautsch.Gummi Kunst.、2004年、57(3)、82を参照されたい。その結果、エポキシド基はポリマー鎖に存在する。特に、エポキシ化天然ゴム(「ENR」と略称される)を挙げることができ、このようなENRは、例えば、Guthrie PolymerからENR-25及びENR-50(それぞれのエポキシ化度が25%及び50%)の名称で販売されている。エポキシ化BRは、それ自体もよく知られており、例えばSartomer社からPoly Bd(例えば、Poly Bd 605E)の名で販売されている。エポキシ化SBRは、当業者によく知られたエポキシ化技術によって調製することができる。
【0051】
エポキシ化基を有するジエンエラストマーは、例えば、米国特許公開第2003/120007号又は欧州特許第0 763 564号、及び米国特許第6903165号又は欧州特許第1 403 287号に記載されている。
【0052】
優先的に、エポキシ化ジエンエラストマーは、エポキシ化天然ゴム(NR)(「ENR」と略記)、エポキシ化合成ポリイソプレン(IR)、優先的には90%を超えるシス1,4-結合の含有量を有するエポキシ化ポリブタジエン(BR)、エポキシ化ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)及びこれらエラストマーの混合物からなるグループから選択される。
【0053】
エポキシ化ジエンエラストマーは、ペンダント型エポキシド基を示すことができる。この場合、これらは、重合後修飾(例えば、J.Appl.Polym.Sci.、1999、73、1733参照)によって、又はジエンモノマーとエポキシド基を有するモノマー、特にエポキシド基を有するメタクリル酸のエステル、例えばメタクリル酸グリシジル(特にバルク、溶液又は分散媒体-特に分散、乳化又は懸濁液-でのこのラジカル重合は、ポリマーの合成の当業者にはよく知られており:例えば以下の文献を挙げることができる:Macromolecules,1998,31,2822)とのラジカル共重合によって、或いは、エポキシド基を有するニトリルオキシドを使用することにより得ることができる。例えば、文献米国特許公開第2011/0098404号には、1,3-ブタジエン、スチレン及びグリシジルメタクリレートの乳化共重合が記載されている。
【0054】
補強用フィラー
本発明による補強製品のゴム組成物は、1又は2以上の補強用充填材を含む。
【0055】
特にタイヤの製造に使用できるゴム組成物を補強する能力について知られている何れかのタイプの「補強」フィラー、例えばカーボンブラックなどの有機フィラー、シリカなどの無機フィラー、又はこれら2つのタイプのフィラーの混合物を使用することができる。
【0056】
全てのカーボンブラック、特にタイヤ又はそのトレッドに従来から使用されているブラックがカーボンブラックとして好適である。後者のうち、より特には、100、200及び300シリーズの補強用カーボンブラック、又は500、600、又は700シリーズのブラック(ASTM D-1765-2017グレード)(例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683もしくはN772ブラックなど)について言及することにする。これらのカーボンブラックは、市販されているように単離された状態で、又は他の何れかの形態で、例えば、使用されるゴム添加剤の一部のための支持体として使用することができる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態で、ジエンエラストマー、特にイソプレン系エラストマーに既に組み込まれている場合がある(例えば、国際出願第97/36724-A2号及び国際出願第99/16600-A1号参照)。また、タイヤのリサイクルから生じるカーボンブラック、空気タイヤの熱分解から生じるブラックなど、例えばScandinavian Enviro Systems社が製造する500シリーズのEnviro CB P550ブラックも好適である。
【0057】
カーボンブラック以外の有機フィラーの例として、国際出願第2006/069792-A1号、国際出願第2006/069793-A1号、国際出願第2008/003434-A1号及び国際出願第2008/003435-A1号に記載されているような官能化ポリビニール有機フィラーを挙げることができる。
【0058】
「補強用無機フィラー」とは、本明細書では、その色及び起源(天然又は合成)が何であれ、カーボンブラックとは対照的に、「ホワイト」フィラー、「クリア」フィラー、或いは「ノンブラック」フィラーとも呼ばれ、タイヤの製造を意図したゴム組成物を中間カップリング助剤以外の手段なしに単独で補強することができる何らかの無機又はミネラルフィラーを意味すると理解されたい。既知の方法で、幾つかの補強用無機フィラーは、特に、その表面におけるヒドロキシル(-OH)基の存在によって特徴付けることができる。
【0059】
珪素系、特にシリカ(SiO2)、又はアルミナ系、特にアルミナ(Al23)のミネラルフィラーは、特に補強用無機フィラーとして適している。使用されるシリカは、当業者に知られている何れかの補強用シリカ、特に、BET比表面及びCTAB比表面の両方が450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60~300m2/gに及ぶ範囲内を示す沈降シリカ又はヒュームドシリカとすることができる。何れかのタイプの沈降シリカ、特に高分散性沈降シリカ(「高分散性」又は「高分散性シリカ」として「HDS」と呼ばれる)を使用することができる。高分散性であるか又は高分散性でないこれらの沈降シリカは、当業者には周知である。例えば、国際出願第03/016215-A1号及び国際出願第03/016387-A1号に記載されているシリカを挙げることができる。特に、市販のHDSシリカの中でも、EvonikのUltrasil(登録商標)5000GR及びUltrasil(登録商標)7000GRシリカ、又はSolvayのZeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1115 MP、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)Premium 200MP及びZeosil(登録商標)HRS 1200 MPシリカを使用することが可能である。非HDSシリカとして、以下の市販シリカ:EvonikからのUltrasil(登録商標)VN2GR及びUltrasil(登録商標)VN3GRシリカ、SolvayからのZeosil(登録商標)175GRシリカ、Hi-Sil EZ120G(-D)、Hi-Sil EZ160G(-D)、Hi-Sil EZ200G(-D)、PPGからのHi-Sil 243LD,Hi-Sil 210,HiSil HDP 320Gシリカ及びWilmarからのK-160を使用することができる。
【0060】
本開示において、BET比表面は、「The Journal of the American Chemical Society」(第60巻、309ページ、1938年2月)に記載のブルナウアー・エメット・テラー法を用いて、より具体的には、2010年6月の規格NF ISO 5794-1, Appendix E[多点(5点)容積法-ガス:窒素-真空下の脱ガス:160℃で1時間-相対圧p/p0の範囲:0.05~0.17]に適応した方法に従ってガス吸着により決定される。
【0061】
シリカなどの無機フィラーについては,2010年6月の規格NF ISO 5794-1,AppendixGに従ってCTAB比表面値を決定した。これは、補強用フィラーの「外面」へのCTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロマイド)の吸着に基づいている。
【0062】
カーボンブラックの場合、STA比表面は、標準ASTM D6556-2016に従って決定される。
【0063】
補強用無機フィラーが提供される物理的状態は重要ではなく、それが粉末の形態であるか、マイクロビーズの形態であるか、顆粒の形態であるか、或いはビーズの形態又は他の何れかの適切な高密度形態であるかは問わない。もちろん、補強用無機フィラーはまた、異なる補強用無機フィラーの混合物、特に上述のようなシリカの混合物を意味することは理解される。
【0064】
好ましくは、全補強フィラー(カーボンブラック及び/又はシリカなどの補強用無機フィラー)の含有量は、10~200phr、より優先的には10~100phr、極めて優先的には25~75phrであり、最適は、既知の方法で対象の特定の用途に応じて異なる。
【0065】
優先的に、ゴム組成物の補強フィラーは、主成分としてシリカを含む。主成分としてとは、シリカが補強フィラーの総重量の50%を超えて占めることを意味すると理解される。
【0066】
補強フィラーが、シリカ、優先的には主成分としてシリカを含む場合、本発明による補強製品のゴム組成物は、シリカのカップリング用の助剤及びシリカを覆うための助剤、更にはこれらの混合物から選ばれる助剤を優先的に含み、助剤の含有量は、シリカの量に対して、5重量%から20重量%に及ぶ範囲、優先的にはシリカの量に対して6%から18重量%に及ぶ範囲である。
【0067】
カップリング助剤とは、無機フィラー(その粒子の表面)とエポキシ化ジエンエラストマーとの間に化学的及び/又は物理的性質の満足な接続を提供することを意図した少なくとも二官能性のカップリング助剤(又は結合剤)を意味すると理解される。特に、少なくとも二官能性である有機シラン又はポリオルガノシロキサンが使用される。「二官能性」とは、無機フィラーと相互作用することができる第1の官能基と、エポキシ化ジエンエラストマーと相互作用することができる第2の官能基とを有する化合物を意味すると理解される。例えば、このような二官能性化合物は、無機フィラーのヒドロキシル基と相互作用することができる、珪素原子を含む第1の官能基と、ジエンエラストマーと相互作用することができる硫黄原子を含む第2の官能基と、を含むことができる。
【0068】
優先的に、有機シランは、EvonikからSi69の名称で販売されている、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、略称TESPT、又はEvonik社からSi75の名称で販売されている、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、略称TESPDなどの有機シランポリスルフィド(対称又は非対称)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、モメンティブ社がNXTシランの名称で販売しているS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエートなどのブロックメルカプトシランからなるグループから選ばれる。より優先的には、有機シランは、有機シランポリスルフィドである。
【0069】
被覆剤は、当業者に公知の方法で、フィラーとエラストマーマトリックスとの間の結合を提供しない助剤を意味すると理解される。無機フィラーの表面官能部位に、例えば、補強用無機フィラーがシリカである場合にはシリカの表面ヒドロキシル部位に既知の方法で共有結合を介して結合することにより、被覆剤は、組成物の加工性を改善し、その組成物の未硬化状態での粘度を低下させる。
【0070】
公知の方法で、ゴムマトリックス中の無機フィラーの分散性の向上及び組成物の粘度の低下に基づいて、未硬化状態での加工の容易性を向上させることができる加工助剤は、一般に被覆剤とみなされ、これらの加工助剤は、例えば、加水分解性シランであり、例えばアルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)、ポリオール、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)、第1級、第2級又は第3級アミン(例えばトリアルカノールアミン)、又はヒドロキシル化又は加水分解性POS、例えばα,ωジヒドロキシポリオルガンシロキサン(特にα,ωジヒドロキシポリジメチルシロキサン)である。
【0071】
(架橋システム)
本発明による補強製品のゴム組成物は、加硫系と呼ばれる、少なくとも1phrの硫黄を含む硫黄系架橋システムを含む。
【0072】
硫黄は、何れかの形態で、特に、分子硫黄又は硫黄供与剤の形態で提供することができる。
【0073】
本発明による補強製品の組成物は、低い硫黄含有量を有する。硫黄は、1~5phrの範囲、優先的には1~4phrの範囲、極めて優先的には1~2.5phrの範囲の含有量で使用される。
【0074】
好ましくは、架橋システムは、「急速」加硫促進剤、すなわち、「t0」と呼ばれる加硫開始時間が3.5分未満、好ましくは3分以下を示す加硫促進剤を含む。
【0075】
所与の促進剤のt0値は、所与のゴム組成物において所与の加硫温度で測定する必要がある。t0値に従って「遅い」又は「速い」促進剤を比較するために、ここでは、参照組成物として、NR100phr、カーボンブラックN326 47phr、ステアリン酸0.9phr、ZnO7.5 phr、硫黄4.5phr及び促進剤を含む組成物が与えられ、そのt0は、エラストマー100重量部あたり2.3mmolのモル含有量で決定されるべきである(ここに示した成分の商業参照は例1で用いた成分のものと同じである)。t0の測定方法は、規格DIN-53529に準拠し、150℃のものである。本特許出願の意義の範囲内において、「t0」は、上記で定義され測定されたt0を意味する。
【0076】
例えば、提案の処方において、提案された測定方法による特定の促進剤のt0は、以下の表1に示される。DCBSはN,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを示し、TBBSはN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを示し、CBSはN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを示している。
【0077】
[表1]
【0078】
優先的には、加硫促進剤は、チウラム族の化合物、チオカルバメートの誘導体、スルフェンアミド、チオホスフェート及びその混合物からなるグループから選択され、そのt0は、3分半以下、好ましくは3分未満である。極めて優先的には、本発明による補強製品のゴム組成物は、加硫促進剤としてN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを含む。
【0079】
加硫促進剤は、0.1~6phr、より優先的には0.5~4phr、極めて優先的には0.5~2.5phrの優先的含有量で使用される。
【0080】
好ましくは、本発明による補強製品のゴム組成物は、少なくとも0.5phrの酸化亜鉛、優先的には少なくとも1phrの酸化亜鉛を含む。優先的には、本発明による補強製品のゴム組成物は、最大で5phrの酸化亜鉛、優先的には最大で3phrの酸化亜鉛を含む。
【0081】
(添加剤)
本発明による補強製品のゴム組成物はまた、可塑剤(可塑化油及び/又は可塑化樹脂など)、フィラー(例えば、空気入りタイヤのリサイクルから生じる再生又は脱硫クラムなど、上記以外の補強又は非補強)、顔料、抗オゾンワックス、化学抗オゾン剤又は酸化防止剤などの保護剤、抗疲労剤又は補強樹脂(例えば、国際出願第02/10269号に記載のもの)など、当業者に知られ且つ空気入りタイヤ用のゴム組成物に特に使用されている通常の添加剤及び加工助剤の全て又は一部を含むことができる。
【0082】
本発明による補強製品のゴム組成物の配合により、優れた接着特性を維持しながら、コバルト塩の使用を最小限に抑えることができ、実際には使用しないことさえ可能になる。従って、好ましい配置では、本発明による補強製品のゴム組成物は、コバルト塩を含まないか、又はその2phr未満、優先的には1phr未満、好ましい態様では0.5phr未満、極めて優先的には0.1phr未満を含む。
【0083】
更に、本発明による補強製品のゴム組成物の配合により、ステアリン酸又はその誘導体の1つの使用を最小化すること、実際には使用しないことさえ可能になる。従って、本発明による補強製品のゴム組成物は、ステアリン酸又はその誘導体の1つを含まないか、又はその2phr未満、優先的には1phr未満、好ましい態様では0.5phr未満、極めて優先的には0.1phr未満を含む。
【0084】
本発明による補強製品のゴム組成物は更に、グアニジン族の化合物、優先的にはジフェニルグアニジンを含むことができる。グアニジン族の化合物、優先的にはジフェニルグアニジンの存在により、ゴム組成物の金属補強体への接着特性を更に改善することが可能になることが観察されている。
【0085】
好ましくは、グアニジン族の化合物の含有量は、0.5~3phr、優先的には0.5~2.5phr、好ましくは0.5~2phrの範囲である。
【0086】
(補強要素)
本発明による補強製品は、ゴム組成物中に埋め込まれた少なくとも1つの金属製補強要素に基づくものである。
【0087】
「ゴム組成物に埋め込まれた少なくとも1つの金属補強要素に基づく」という表現は、補強要素と上記組成物を含む補強製品を意味すると理解されるべきであり、補強製品の製造の様々な段階で、特に組成物の架橋中又は組成物の架橋前の補強製品の製造中に、組成物が補強要素の表面と反応することが可能である。
【0088】
前記金属製補強要素は、スレッド様要素である。金属製補強要素は、完全に又は部分的に金属製とすることができる。
【0089】
特定の配置において、上記補強要素は、金属表面を含む。
【0090】
補強要素の金属表面は、当該要素の表面の少なくとも一部、優先的には全部を構成し、ゴム組成物と直接接触することを意図している。好ましくは、補強要素は金属製であり、すなわち金属材料から構成される。
【0091】
ゴム組成物は、補強要素の少なくとも一部、優先的には上記補強要素の全てをコーティングする。
【0092】
本発明の第1の代替形態によれば、補強要素の金属表面は、補強要素の残りの部分とは異なる材料で作られている。言い換えれば、補強要素は、金属表面を構成する金属層で少なくとも部分的に覆われ、優先的には完全に覆われた材料で作られている。金属表面で少なくとも部分的に覆われ、優先的には完全に覆われた材料は、金属性又は非金属性であり、好ましくは金属性である。
【0093】
本発明の第2の代替形態によれば、補強要素は、1つの同じ材料で作られており、この場合、補強要素は、金属表面の金属と同一の金属で作られている。
【0094】
金属表面は、例えば、補強要素の加工特性、又は補強製品及び/又は空気入りタイヤ自体の使用特性、例えば、接着特性、耐腐食性、耐エージング性などを改善することが可能である。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、金属表面は、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケル、及びこれらの金属のうちの少なくとも1つを含む合金からなるグループから選択される金属を含む。合金は、例えば、青銅及び真鍮のような二元又は三元合金とすることができる。好ましくは、金属表面の金属は、銅、錫、亜鉛であるか、又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金である。より優先的には、金属表面の金属は、真鍮(Cu-Zn合金)、亜鉛又は青銅(Cu-Sn合金)であり、より好ましくはやはり真鍮である。
【0096】
ある金属は外気と接触状態で酸化を生じやすいので、この金属は、部分的に酸化される可能性がある。
【0097】
好ましい実施形態によれば、本発明による補強製品は、上記で定義された複数の補強要素と、補強要素が埋め込まれたカレンダー加工ゴムとを備え、カレンダー加工ゴムは、本発明による補強製品のゴム組成物からなる。この実施形態によれば、補強要素は、一般に、主方向に沿って横並びに配置される。タイヤにて想定される用途では、本発明による補強製品は、タイヤのための補強材を構成することができる。
【0098】
埋め込まれたとは、金属補強要素がその全表面にわたってゴム組成物と直接接触していることを意味すると理解される。
【0099】
本発明による補強製品は、未硬化状態(ゴム組成物の架橋前)又は硬化状態(ゴム組成物の架橋後)とすることができる。本発明による補強製品は、補強要素をゴム組成物と接触させた後に硬化される。
【0100】
本発明による補強製品は、
ゴム組成物の2つの層を製造するステップと、
補強材を2つの層の間に堆積させることにより2つの層で補強要素を挟むステップと、
適宜本発明による補強製品を硬化させるステップと、
を含むプロセスによって製造することができる。
【0101】
或いは、本発明による補強製品は、層の一部に補強要素を堆積させ、次に層をそれ自体で折り畳んで補強要素を覆い、その全長又はその長さの一部にわたって挟み込むことにより製造することができる。
【0102】
層は、カレンダー加工によって製造することができる。本発明による補強製品の硬化の間、ゴム組成物は架橋される。
【0103】
本発明による補強製品が空気入りタイヤの補強材として使用されることを意図している場合、本発明による補強製品の硬化は、一般に、空気入りタイヤの硬化中に行われる。
【0104】
(完成品又は半完成品、及びタイヤ)
本発明の別の主題は、本発明による補強製品を含む完成品又は半完成品である。完成品又は半完成品は、補強製品を含む何れかの物品とすることができる。例えば、非限定的であるが、ボール、コンベヤベルト、靴底、又は空気圧タイヤもしくは非空気圧タイヤを挙げることができる。
【0105】
本発明の別の主題である空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤは、本発明による補強製品を含むことを本質的な特徴として有する。タイヤは、未硬化状態(ゴム組成物の架橋前)又は硬化状態(ゴム組成物の架橋後)とすることができる。一般に、タイヤの製造中、補強製品は、タイヤを硬化させる段階の前に、未硬化状態(すなわち、ゴム組成物の架橋前)で、タイヤの構造中に堆積される。
【0106】
本発明によるタイヤは、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードフィラー及びこれらの補強層の組み合わせから優先的に選択される本発明による補強製品からなる補強層を含む。更に、本発明による補強製品のゴム組成物は、空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤの内部層として使用することができ、内部層は、周囲空気と接触せず、膨張ガスとも接触しないタイヤの層である。このような内部層は、例えば、クラウンフット層、デカップリング層、エッジゴム及びこれらの内部層の組み合わせである。本明細書において、「エッジゴム」は、補強層の端部、補強要素の端部、又は別のエッジゴムと直接接触してタイヤ内に配置される層を意味すると理解される。
【0107】
本発明は、特に、乗用車タイプの自動車、SUV(Sport Utility Vehicle)、又は二輪車両(特にオートバイ)、又は航空機、更にはバン、大型車両、すなわち地下列車、バス、大型道路輸送車両(ローリー、トラクター、トレーラー)又はオフロード車、大型農業車両又は土工機械及びその他から選ばれた産業車両に備えることを目的とするタイヤに関する。
【0108】
従って、本発明は、特に、補強要素の2つのクラウンプライから形成されたクラウン補強体を含み且つトレッドで覆われたクラウンと、各々が周方向の補強要素を含むリムに接触することを意図した2つのビードと、各々が半径方向内側に、すなわちビードまでのクラウンの軸方向端部まで延びる2つのサイドウォールとを含む空気入りタイヤ又は非空気圧タイヤであって、上記タイヤは更に、ビードの各々に係止されて、ビードからサイドウォールを通ってクラウンまで延びるカーカス補強体を含み、補強要素の二つのクラウンプライの少なくとも一方が本発明による補強製品からなる、空気入りタイヤ又は非空気圧タイヤに関する。
【0109】
別の特定の配置において、本発明は、補強要素の2つのクラウンプライから形成されたクラウン補強体を含み且つトレッドで覆われたクラウンと、各々が周方向の補強要素を含むリムに接触することを意図した2つのビードと、各々が半径方向内側に、すなわちビードまでのクラウンの軸方向端部まで延びる2つのサイドウォールとを含む空気入りタイヤ又は非空気圧タイヤであって、上記タイヤは更に、ビードの各々に係止されて、ビードからサイドウォールを通ってクラウンまで延びるカーカス補強体を含み、少なくともカーカス補強体が本発明による補強製品からなる、空気入りタイヤ又は非空気圧タイヤに関する。
【実施例
【0110】
(ゴム組成物の調製)
以下の試験は、ジエンエラストマー(エポキシ化又は非酸化)、補強用充填材、及び加硫系を除く他の様々な成分を、初期容器温度が約60℃の内部混合機に順次導入する(最終充填量:約70重量%)ようにして、実施される。次いで、熱機械加工(非生産的段階)が1段階で行われ、合計で約3~4分間、最高165℃の「滴下」温度に到達するまで続く。
【0111】
このようにして得られた混合物を回収し、冷却した後、硫黄と促進剤(スルフェンアミド)を30℃の混合機(ホモフィニッシャー)上に組み込み、全てを適当な時間(例えば5~12分の間)混合する(生産段階)。
【0112】
このようにして得られた組成物は、その後、プラーク(厚さ2~3mm)又は薄いゴムのシートの形でカレンダー加工され、次いで150℃で15分間硬化段階にされた後、物理的又は機械的特性の測定がなされる。
【0113】
(測定方法)
(粘着力試験)
試験片の作製
調製されたゴム組成物は、以下のプロトコールに従って、試験片の形態の複合材を作るのに使用される。
【0114】
この試験で使用された金属/ゴム複合材は、200mm×4.5mm(ミリメートル)、厚さ3.5mmの2枚のプラークを硬化前に貼り合わせたゴム組成物のブロックであり、得られたブロックの厚さは7mmとなる。このブロックの製造中に、例えば15の補強材が2つの未硬化プラークの間に捕捉され、補強材の所定の長さ、例えば4.5mmだけが硬化中にこの補強材の長さが接着されるゴム組成物と自由に接触するようにされ、補強材の残りの長さは、所定の接触ゾーンの外での接着を防ぐために、(例えばプラスチック又は金属フィルムを用いて)ゴム組成物から隔離されている。各補強材は、ゴムのブロックを貫通し、その自由端の少なくとも1つの十分な長さ(少なくとも5cm、例えば5~10cm)が、その後の補強材の引張試験を可能にするように保持されている。
【0115】
各金属補強材は、直径30/100mmの0.7%炭素を有する鋼材を撚り合わせた2つのスレッドからなり、真鍮コーティングは、63%の銅を含む。
【0116】
その後、15の補強材を含むブロックを適当な型に入れ、約15barの圧力下で150℃、15分間硬化させる。
【0117】
(引裂力の測定)
上記のブロックの硬化及びエージングが終了すると、各補強材は、標準ASTM D 2229-02に記載されている方法に従って、引張試験機を用いてゴムブロックから引き抜き、プルレートは100mm/分であり、従って、接着は、周囲温度で試験片から補強材を引き裂くのに必要な力によって特徴付けられ、引裂力は、複合材の15の補強材に対応する15の測定値の平均を表す。
【0118】
力の値が大きいほど、コードとゴム組成物との接着度が高くなる。
【0119】
引裂力の測定は,t=0で、77℃の空気中で21日後に行われる。空気の湿度は、制御されず、外気の湿度、すなわち30%から50%に対応する。
【0120】
結果は、ベース100で表され、値100は、検討中の組成物及び上述の金属補強体を用いて形成された試験片に対応する。100より大きい値は、改善された結果、すなわち、t=0における試験片の引裂力よりも大きい引裂力を示している。
【0121】
(引張試験)
これらの引張試験により、ゴム組成物の弾性応力と破断時特性を測定することができる。試験は、1988年9月のフランス規格NF T 46-002に従って実施された。破断時の伸び(単位:%)は、23℃で測定される。
【0122】
破断時伸びの測定は、t=0、空気下77℃で7日後、空気下77℃で21日後に実施される。空気の湿度は制御されず、周囲の空気の湿度、すなわち30%から50%の間に対応する。
【0123】
結果は100を基準として表され、値100は、t=0における検討中のサンプルの破断時伸びの値に割り当てられる。100よりも大きい結果は、検討中の組成物が、t=0における同じ組成物よりも大きな破断時伸びを示すことを表している。
【0124】
(転がり抵抗計)
試験組成物によって誘起される転がり抵抗は、2000年4月の規格DIN 53-512に記載されているような、初期エネルギーが課せられたサンプルの6回目のリバウンドで回復されたエネルギーの温度60℃でのエネルギー損失の測定によって推定される。この測定値は、P60と表記され、以下のように計算される:
P60(%)=100×(E0-E1)/E0
ここで,E0は初期エネルギー,E1は復元されたエネルギーを表す。
【0125】
60℃における損失の測定は,t=0、空気中77℃で7日後、及び空気中77℃で21日後に実施した。空気の湿度は制御されず、周囲の空気の湿度、すなわち30%から50%の間に対応する。
【0126】
結果は100を基準として表され、値100はt=0における検討中のサンプルの60℃での損失の値に割り当てられる。100よりも大きい結果は、検討中の組成物が、t=0における同じ組成物よりも大きな60℃における損失を示し、従って、より大きな転がり抵抗を誘起することを表している。
【0127】
異なる試験の結果を表2に示す。
【0128】
組成物T1は、例えば、文献国際公開第2016/058943号及びフランス国特許2 981 298号に提示されているような先行技術のカレンダー加工組成物である。
【0129】
[表2]


(1)天然ゴム(ペプタイズド)
(2)ENR 1:Guthrie Polymer社製の25mol%エポキシ化天然ゴム、ENR-25;ENR 2:Muang Mai Guthrie社製の天然ゴムをエポキシ化することにより製造された15%エポキシ化天然ゴム;
(3)ASTMグレードN326(キャボット社製);
(4)シリカ 160 MP、Zeosil 1165MP、Rhodia社製;
(5)Octeo、DegussaからDynasylan;
(6)酸化亜鉛(工業用)、Umicore社製;
(7)ステアリン、Pristerene 4931、Uniqemaから;
(8)Flexsys社製、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(Santoflex 6-PD);
(9)CTP、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド;Lanxess社からVulkalent Gの名で、又はDuslo社からもDuslin Pの名で販売されている;
(10)N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社のSantocure DCBS);
(11)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社のSantocure CBS);
(12)ジフェニルグアニジン
【国際調査報告】