(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】コーティングされたグレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20231026BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20231026BHJP
B01J 27/135 20060101ALI20231026BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
B01J35/02 J
B01J27/135 M
B32B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525038
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 GB2021052784
(87)【国際公開番号】W WO2022090709
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド リマー
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィリアム オールドフィールド
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン アイブル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター マイケル ハリス
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ブレイル
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G169
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
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4G169HE06
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4G169HF03
(57)【要約】
コーティングされたグレージングであって、透明ガラス基板と、ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、コーティングは、ガラス基板から順に、1.6を超える屈折率を有する第1の層と、第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性である、第4の層と、を少なくとも備える、コーティングされたグレージングを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたグレージングであって、
透明ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
前記コーティングは、前記ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層と、
前記第1の層の前記屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、前記第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える、
コーティングされたグレージング。
【請求項2】
前記グレージングは、前記第3の層と前記第4の層との間に位置する、シリコン酸化物をベースとする介在層をさらに備える、請求項1に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項3】
前記介在層は、二酸化ケイ素をベースとする、請求項2に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項4】
前記グレージングは、前記第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する下層をさらに備え、前記下層は、前記ガラス基板と前記第1の層との間に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項5】
前記下層は、半金属の酸化物をベースとし、好ましくはシリコン酸化物または酸窒化シリコンをベースとする、請求項4に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項6】
前記下層は、少なくとも5nm、最大30nmの厚さを有する、請求項4または5に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項7】
前記介在層が存在するとき、前記第1の層の厚さは、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、請求項2から6のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項8】
前記介在層が存在するとき、好ましくは、前記第2の層は、少なくとも15nm、最大50nmの厚さを有する、請求項2から7のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項9】
前記介在層が存在するとき、好ましくは、前記第3の層は、少なくとも100nm、最大300nmの厚さを有する、請求項2から8のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項10】
前記介在層は、少なくとも5nm、最大40nmの厚さを有する、請求項2から9のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項11】
前記介在層が存在するとき、前記第4の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、請求項2から10のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項12】
前記第1の層は、金属酸化物をベースとし、好ましくは前記第1の層は、二酸化スズ、酸化ニオブ、二酸化チタン、SiCOまたは酸化タンタルをベースとする、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項13】
前記第1の層は、二酸化スズをベースとする、請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項14】
前記第2の層は、存在し、半金属の酸化物をベースとし、好ましくは、前記第2の層は、酸化ケイ素または酸窒化ケイ素をベースとする、請求項1から13のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項15】
前記コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
ここで、前記コーティングは、前記ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、前記第1の層は、二酸化スズをベースとし、前記第1の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第1の層と、
前記第1の層の前記屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層であって、前記第2の層は、二酸化シリコンをベースとし、前記第2の層は、少なくとも15nm、最大50nmの厚さを有する、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層であって、前記第3の層は、少なくとも100nm、最大300nmの厚さを有する、第3の層と、
二酸化ケイ素をベースとする介在層であって、前記介在層は、少なくとも5nm、最大40nmの厚さを有する、介在層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、前記第4の層は、光触媒性であり、前記第4の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第4の層と、
を少なくとも備える、
請求項2から14のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項16】
前記コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
前記コーティングは、前記ガラス基板から順に、
シリコン酸化物をベースとする下層と、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、前記第1の層は、二酸化スズをベースとする、第1の層と、
前記第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する第2の層であって、前記第2の層は、シリコン酸化物をベースとする、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
シリコン酸化物をベースとする介在層と、
二酸化チタンをベースとする第4の層であって、前記第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える、
請求項2から15のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項17】
前記コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
ここで、前記コーティングは、前記ガラス基板から順に、
二酸化ケイ素をベースとする下層であって、前記下層は、少なくとも5nm、最大30nmの厚さを有する、下層と、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、前記第1の層は、二酸化スズをベースとし、前記第1の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第1の層と、
前記第1の層の前記屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層であって、前記第2の層は、二酸化シリコンをベースとし、前記第2の層は、少なくとも15nm、最大50nmの厚さを有する、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層であって、前記第3の層は、少なくとも100nm、最大300nmの厚さを有する、第3の層と、
二酸化ケイ素をベースとする介在層であって、前記介在層は、少なくとも5nm、最大40nmの厚さを有する、介在層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、前記第4の層は、光触媒性であり、前記第4の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第4の層と、
を少なくとも備える、
請求項2から16のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項18】
前記コーティングは、ピーク波長351nmのUVランプを0.73W/m2の強度で45℃で30分間使用してグレージングを照射した後、より好ましくは最大30°、さらにより好ましくは最大25°、最も好ましくは最大20°の静的水接触角を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項19】
前記コーティングされたグレージングは、コーティングされた基板と他の点では同じであるコーティングされていない基板と比較して、前記基板のコーティングされた表面上の1つ以上の微生物、例えば細菌および/またはウイルスの生存を減少させる、請求項1から18のいずれか一項にコーティングされたグレージング。
【請求項20】
結露防止、自己洗浄および/または抗菌特性を提供するための、請求項1から19のいずれか一項に記載のコーティングされたグレージングの使用。
【請求項21】
前記使用は、ガラスフレーム、壁、隔壁、ブラインド、ドア、電子機器、タッチスクリーン、鏡、容器、家具、スプラッシュバックおよび/または車両の窓において行われる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記使用は、人工UV光源および/または日光からのUV光で少なくとも1分間、コーティングされたグレージングを照射するステップをさらに含み、好ましくは、前記UV光が、200nmを超える、より好ましくは220nmを超える、さらにより好ましくは250nmを超える、ピーク波長を有する、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記UV光が、自動センサープロセスまたはタイマーを使用して作動される、請求項20から22のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレージングの最外表面に発生し得る結露の形成を低減または防止するためのコーティングされたグレージングおよびそのようなグレージングの使用に関する。当該グレージングはまた、低放射率、自己洗浄性および抗菌特性をも提供し得る。
【背景技術】
【0002】
グレージングの最外表面に結露(露)が発生する問題はよく知られている。このような表面の温度が露点未満の温度に低下するとき、このような表面上に結露が形成され得る。露点は、空気中の水蒸気が凝縮して水滴を形成する、湿度に依存する温度である。
【0003】
結露が問題となるのは、グレージングを通しての視界が低下し、人がそれが設置されている構造物を覗き込むまたはそこから外を覗き込もうとしたときに、しばしば、グレージングを通して何も見えなくなり得るほどであるためである。このようなグレージングを通した視界は、事実上、望ましくないほど妨げられ得る。この観察は、モノリシック(つまり、単一のガラス板)、積層グレージング(つまり、その間に広がる中間層材料のプライによって結合される2つ以上のガラス板を有する)、および複数のガラス板グレージングユニット(つまり、各ガラス板間の密閉空間中のガス層または真空によって分離される2つ以上のガラス板がある)を含む、あらゆる種類のグレージングに当てはまる。結露の問題は、天窓(屋根または天井に設置され、概して屋根または天井と同じ角度に設置された窓)の場合に特に一般的である。
【0004】
もう一つの興味深い特性は、半導体が紫外光で照らされたときに、半導体内での正孔電子対の光生成によって生じる光触媒活性である。正孔電子対は太陽光で生成され、湿った空気中で反応して半導体の表面にヒドロキシラジカルとペルオキシラジカルを形成する。ラジカルは表面の有機汚れを酸化し、構造の劣化を引き起こす。これらの有機汚染物質はその後水で洗い流される。この特性は、自動洗浄基板、特に窓用の自動洗浄ガラスに応用されている。これもまた、その上での結露の形成が軽減または排除されるように設計されたコーティング層にとって特に重要な考慮事項である。これは、通常、汚れまたはその他の有機汚染物質の存在が水滴の核生成につながり(水と接触する表面の接触角が変化するため)、結露の形成を促進するためである。コーティングの露出面が清浄であるほど、結露が発生する可能性が低くなり、グレージングの低放射率および親水性との相乗効果がより高まる。
【0005】
国際公開第2009106864号には、ガラス板の最外面上に光活性で親水性の低放射率コーティング層を設けることが記載されている。しかしながら、これまで知られている製品の特性をさらに改善することは有用であろう。
【0006】
さらに、抗菌特性をも与える前述の特性を備えたグレージングを提供することが望ましいであろう。人間と動物との間で潜在的に有害な微生物の伝播を防ぐ必要がある。本発明の文脈において、微生物には細菌、ウイルスおよび真菌が含まれる。微生物が伝播する方法の1つは、「表面伝播」である。これは、例えば、感染者による以前の表面との相互作用などによって、以前に微生物が播種された表面と個人が相互作用することである。
【0007】
グレージングは複数の個人が共有する環境でよく見られるため、微生物、特に細菌やウイルスの伝播の媒介として機能し得る。これは、トイレ、廊下、病室、店舗、職場など、多数の人が連続して使用し得る空間で特に問題となる。したがって、その表面上の微生物の蔓延を減少させるグレージングを提供することは有用であろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、コーティングされたグレージングであって、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
コーティングは、ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える、コーティングされたグレージングが提供される。
【0009】
驚くべきことに、第1の態様のコーティングされたグレージングは、グレージング上での結露の形成を低減または防止するという点で改良された性能を提供することが判明した。当該グレージングはまた、低放射率、自己洗浄性および抗菌特性をも提供し得る。
【0010】
本発明の文脈では、層が特定の材料を「ベースとする」と言われる場合、これは層が対応する当該1つ以上の材料から主になることを意味し、これは通常、少なくとも約50原子%の1つ以上の材料を備えることを意味する。
【0011】
本発明の下記の説明では、別段の記載がない限り、パラメータの許容範囲の上限または下限の代替値の開示は、当該値の一方が他方よりもより好ましいという指示と組み合わせて、当該代替案のより好ましい値とあまり好ましくない値との間にある当該パラメータの各中間値は、それ自体、当該あまり好ましくない値よりも好ましく、また、当該あまり好ましくない値と当該中間値との間にある各値よりも好ましい。暗黙の声明として解釈されるべきである。
【0012】
本明細書全体を通じて、「備えている」または「備える」という用語は、指定された構成要素を含むことを意味するが、他の構成要素の存在を排除するものではない。「実質的に~からなっている」または「実質的に~からなる」という用語は、指定された構成要素を含むが、不純物として存在する材料、その構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、および本発明の技術的効果を達成すること以外の目的で追加される構成要素を除く他の構成要素を除くことを意味する。通常、組成物に言及するとき、実質的に一組の成分からなる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満の非特定成分を含むであろう。
【0013】
「~からなっている」または「~からなる」という用語は、指定された構成要素を含むが、他の構成要素を除くことを意味する。
【0014】
文脈に応じて、必要に応じて、「備える」または「備えている」という用語の使用は、「実質的に~からなる」または「実質的に~からなっている」という意味を含むものと解釈されることもあり得、また、「からなる」または「からなっている」という意味も含むものと解釈されることもあり得る。
【0015】
本明細書における「xからyの範囲内」などの言及は、「xからyまで」という解釈を含むことを意味し、値xおよびyを含む。
【0016】
本発明の文脈では、透明材料または透明基板は、可視光を透過することが可能な材料または基板であり、その結果、当該材料の向こう側または背後に位置する物体または画像が、当該材料または基板を通してはっきりと見え得る。
【0017】
本発明の文脈では、層(またはコーティング)の「厚さ」は、層の表面の任意の所定の位置について、層の最小寸法の方向において、層の表面の当該位置から当該層の反対側の表面の位置まで層を通る距離によって表される。
【0018】
本明細書に記載される屈折率値は、電磁スペクトルの400~780nmにわたる平均値として報告されることに留意されたい。
【0019】
本発明の文脈では、透明ガラス基板の「フィルム側」とは、コーティングが配置されるガラス基板の主表面を意味する。本発明の文脈では、透明ガラス基板の「ガラス側」とは、コーティングが位置する主表面の反対側のガラス基板の主表面を意味する。
【0020】
好ましくは、グレージングは、シリコン酸化物をベースとし、第3の層と第4の層との間に位置する、介在層をさらに備える。この層の存在は、自己洗浄性および抗菌性の性能を向上させるため、有利である。好ましくは、介在層は、二酸化ケイ素をベースとするが、他の化学量論を使用することも可能であり得る。
【0021】
好ましくは、グレージングは、第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する下層をさらに備え、下層は、ガラス基板と第1の層との間に位置する。好ましくは、下層は半金属の酸化物をベースとし、より好ましくはシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物をベースとする。より好ましくは、下層はシリコン酸化物をベースとし、最も好ましくは二酸化シリコンをベースとするが、他の化学量論を使用することも可能であり得る。下層の存在は、グレージング全体の曇りを減少させ得、美観をより許容可能なものにし得るため、有益である。
【0022】
好ましくは、下層は、ガラス基板と直接接触する。好ましくは、下層は、第1の層と直接接触する。別の実施形態では、第1の層は、ガラス基板と直接接触し得る。好ましくは、第1の層は、第2の層と直接接触する。好ましくは、第2の層は、第3の層と直接接触する。好ましくは、第3の層は、介在層と直接接触する。好ましくは、介在層は、第4の層と直接接触する。好ましくは、コーティングは、下層、第1の層、第2の層、第3の層、介在層および第4の層からなる。
【0023】
好ましくは、下層は、少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも9nm、さらにより好ましくは少なくとも12nm、最も好ましくは少なくとも14nm、しかし好ましくは最大30nm、より好ましくは最大22nm、さらにより好ましくは最大18nm、最も好ましくは最大16nmの厚さを有する。
【0024】
介在層が存在しないとき、第1の層は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、さらにより好ましくは少なくとも14nm、最も好ましくは少なくとも18nm、しかし好ましくは最大40nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大23nmの厚さを有する。
【0025】
介在層が存在するとき、第1の層は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、さらにより好ましくは少なくとも12nm、最も好ましくは少なくとも13nm、しかし好ましくは最大35nm、好ましくは最大25nm、さらにより好ましくは最大20nm、最も好ましくは最大15nmの厚さを有する。
【0026】
介在層が存在しないとき、第2の層は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも12nm、さらにより好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも18nm、しかし好ましくは最大40nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大22nmの厚さを有する。
【0027】
介在層が存在するとき、第2の層は、好ましくは少なくとも15nm、より好ましくは少なくとも20nm、さらにより好ましくは少なくとも25nm、最も好ましくは少なくとも28nm、しかし好ましくは最大50nm、好ましくは最大40nm、さらにより好ましくは最大35nm、最も好ましくは最大30nmの厚さを有する。
【0028】
介在層が存在しないとき、第3の層は、好ましくは少なくとも130nm、より好ましくは少なくとも160nm、さらにより好ましくは少なくとも175nm、最も好ましくは少なくとも185nm、しかし好ましくは最大365nm、より好ましくは最大315nm、さらにより好ましくは最大265nm、最も好ましくは最大215nmの厚さを有する。
【0029】
介在層が存在するとき、第3の層は、好ましくは少なくとも100nm、より好ましくは少なくとも120nm、さらに好ましくは少なくとも130nm、最も好ましくは少なくとも135nm、好ましくは最大300nm、より好ましくは最大200nm、さらにより好ましくは最大160nm、最も好ましくは最大150nmの厚さを有する。
【0030】
好ましくは、介在層は、少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも12nm、さらにより好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも18nm、好ましくは最大40nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大22nmの厚さを有する。
【0031】
介在層が存在しないとき、第4の層は、好ましくは少なくとも8nm、より好ましくは少なくとも13nm、さらにより好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも16nm、しかし好ましくは最大40nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大23nm、最も好ましくは最大18nmの厚さを有する。
【0032】
介在層が存在するとき、第4の層は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、さらに好ましくは少なくとも13nm、最も好ましくは少なくとも14nm、好ましくは最大35nm、好ましくは最大25nm、さらにより好ましくは最大18nm、最も好ましくは最大16nmの厚さを有する。
【0033】
好ましくは、第1の層は、1.8以上の屈折率を有する。より好ましくは、第1の層は、1.8~2.5の屈折率を有する。さらにより好ましくは、第1の層は、1.8~2.2の屈折率を有する。
【0034】
好ましくは、第1の層は、金属の酸化物をベースとし、より好ましくは、第1の層は、二酸化スズ、酸化ニオブ、二酸化チタン、SiCOまたは酸化タンタルをベースとする。好ましくは、第1の層が二酸化スズ、酸化ニオブ、二酸化チタン、または酸化タンタルをベースとするとき、第2の層が存在する。好ましくは、第1の層がSiCOをベースとするとき、第2の層は存在しない。最も好ましくは、第1の層は二酸化スズをベースとする。特定の実施形態では、第1の層は実質的に二酸化スズからなり得る。好ましくは、第1の層は二酸化スズからなる。好ましくは、第1の層はドープされていない。
【0035】
好ましくは、第2の層は、1.6以下の屈折率を有する。より好ましくは、第2の層は、1.2~1.6の屈折率を有する。さらにより好ましくは、第2の層は、1.2~1.5の屈折率を有する。
【0036】
好ましくは、第2の層が存在する。好ましくは、第2の層は半金属の酸化物をベースとし、より好ましくは第2の層は二酸化ケイ素または酸窒化ケイ素をベースとする。最も好ましくは、第2の層は二酸化ケイ素をベースとする。特定の実施形態では、第2の層は実質的に二酸化ケイ素から構成され得る。好ましくは、第2の層は二酸化ケイ素からなる。好ましくは、第2の層はドープされていない。好ましくは、第2の層が存在する。
【0037】
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層の場合、好ましくは、ドーパントは、少なくとも1.0原子%、より好ましくは少なくとも1.5原子%、さらにより好ましくは少なくとも2.0原子%、最も好ましくは少なくとも2.5原子%、好ましくは最大10.0原子%、より好ましくは最大5.0原子%、さらにより好ましくは最大3.5原子%、最も好ましくは最大3.0原子%の量で存在する。
【0038】
好ましくは、第4の層は、二酸化チタンをベースとし、より好ましくは主にアナターゼ結晶構造を有する二酸化チタンをベースとする。より好ましくは、第4の層は、50%以上のアナターゼを有する二酸化チタンを備える。コーティングされたグレージングは、特に紫外線で照射された場合に優れた抗菌特性を有することがわかった。さらに、コーティングされたグレージングにUV光を照射した後、光が全く存在しない場合でも、抗菌効果の増加が持続することが判明した。
【0039】
任意のコーティングの層は、例えば炭素などの微量以上の他の元素を含む他の成分を備え得る。本明細書において「微量」とは、コーティング層の構成成分が微小であるため、必ずしも定量的に測定できるわけではない量をいう。
【0040】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
コーティングは、ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
シリコン酸化物をベースとする介在層と、
二酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える。
【0041】
より好ましくは、コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
コーティングは、ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、第1の層は、二酸化スズをベースにする、第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、第2の層は、シリコン酸化物をベースにする、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
シリコン酸化物をベースとする介在層と、
二酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える。
【0042】
より好ましくは、コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
ここで、コーティングは、ガラス基板から順に、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、第1の層は、二酸化スズをベースとし、第1の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層であって、第2の層は、二酸化シリコンをベースとし、第2の層は、少なくとも15nm、最大50nmの厚さを有する、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層であって、第3の層は、少なくとも100nm、最大300nmの厚さを有する、第3の層と、
二酸化ケイ素をベースとする介在層であって、介在層は、少なくとも5nm、最大40nmの厚さを有する、介在層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性であり、第4の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第4の層と、
を少なくとも備える。
【0043】
直前の3つの段落に関して、いくつかの実施形態では、コーティングが第1の層、第2の層、第3の層、介在層および第4の層からなることが好ましい。
【0044】
概して、コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
コーティングは、ガラス基板から順に、
シリコン酸化物をベースとする下層と、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、第1の層は、二酸化スズをベースにする、第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層と、第2の層は、シリコン酸化物をベースにする、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層と、
シリコン酸化物をベースとする介在層と、
二酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性である、第4の層と、
を少なくとも備える。
【0045】
より好ましくは、コーティングされたグレージングは、
透明ガラス基板と、
ガラス基板上に位置するコーティングと、
を備え、
ここで、コーティングは、ガラス基板から順に、
二酸化ケイ素をベースとする下層であって、下層は、少なくとも5nm、最大30nmの厚さを有する、下層と、
1.6を超える屈折率を有する第1の層であって、第1の層は、二酸化スズをベースとし、第1の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第1の層と、
第1の層の屈折率よりも小さい屈折率を有する追加の第2の層であって、第2の層は、二酸化シリコンをベースとし、第2の層は、少なくとも15nm、最大50nmの厚さを有する、第2の層と、
フッ素がドープされた二酸化スズをベースとする第3の層であって、第3の層は、少なくとも100nm、最大300nmの厚さを有する、第3の層と、
二酸化ケイ素をベースとする介在層であって、介在層は、少なくとも5nm、最大40nmの厚さを有する、介在層と、
酸化チタンをベースとする第4の層であって、第4の層は、光触媒性であり、第4の層は、少なくとも5nm、最大35nmの厚さを有する、第4の層と、
を少なくとも備える。
【0046】
直前の2つの段落では、好ましくは、コーティングは、下層、第1の層、第2の層、第3の層、介在層および第4の層からなる。
【0047】
好ましくは、コーティングは、ガラス基板の第1の主表面上に位置する。好ましくは、コーティングは、第1の主表面の大部分を覆う。より好ましくは、コーティングは、第1の主表面の実質的にすべてを被覆する。最も好ましくは、コーティングは、第1の主表面のすべてを被覆する。好ましくは、下層、第1の層、第2の層、第3の層、介在層および第4の層の少なくとも1つは、より好ましくは各々は、連続層である。好ましくは、下層は、第1の主表面のすべてを直接コーティングする、すなわち、下層は、第1の主表面のすべてと直接接触する。好ましくは、第1の層、第2の層、第3の層、介在層および第4の層の少なくとも1つ、より好ましくは各々は、第1の主表面のすべてを間接的に被覆する。この文脈では、層が「第1の主表面のすべてを間接的にコーティングする」と記載される場合、これは、問題の層が間に少なくとも1つの他の層が存在するのではなく第1の主表面と直接接触する場合、問題の層は、第1の主表面のすべてと直接接触することになることを意味する。
【0048】
好ましくは、コーティングは、ISO/DIS10678:2010に準拠して、0.4nmol/cm2hを超える、より好ましくは0.5nmol/cm2hを超える、さらにより好ましくは0.6nmol/cm2hを超える、さらにより好ましくは0.7nmol/cm2h、最も好ましくは0.8nmol/cm2hを超える、比光触媒活性を有する。
【0049】
好ましくは、コーティングは、最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1.5%、最も好ましくは最大1%のヘイズの平均全体的変化によって表される、EN1096-5:2011に準拠した光触媒活性を有する。
【0050】
透明ガラス基板は、クリアであっても着色されていてもよい。透明ガラス基板は、クリアな透明ガラス基板であることが好ましい。透明ガラス基板は、金属酸化物ベースのガラス板であり得る。ガラス板は、クリアまたは着色されたフロートガラス板であり得る。好ましくは、ガラス板は、クリアなガラス板である。典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの組成(重量比)は、SiO2 69~74%、Al2O3 0~3%、Na2O 10~16 %、K2O 0~5%、MgO 0~6%、CaO 5~14%、SO3 0~2%、Fe2O3 0.005~2%である。ガラス組成物は、他の添加剤、例えば、通常最大2%の量で存在する精製助剤を含み得る。クリアフロートガラスとは、BS EN 572-1およびBS EN 572-2(2004)に定義されている組成を有するガラスを意味する。クリアフロートガラスの場合、Fe2O3のレベルは重量で通常0.11%である。約0.05重量%未満のFe2O3含有量を有するフロートガラスは、通常、低鉄フロートガラスと呼ばれる。このようなガラスは、通常、他の成分の酸化物と同じ基本組成を有する。つまり、低鉄フロートガラスもまた、透明なフロートガラスと同様に、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスである。通常、着色フロートガラスは、少なくとも0.5重量%のFe2O3、例えば1.0重量%のFe2O3、を有する。あるいは、ガラス板は、ホウケイ酸塩ベースのガラス板、アルカリアルミノケイ酸塩ベースのガラス板、または酸化アルミニウムベースのクリスタルガラス板である。
【0051】
この仕様に記載されているすべての透過率、反射率、および色(a*およびb*)の値は、D65光源、10度視野角を使用したCIELABカラースケールシステムに従っている。
【0052】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、好ましくは最大95%、より好ましくは最大90%、さらにより好ましくは最大85%の可視光透過率を示す。
【0053】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、30%の最大可視光フィルム側反射率、より好ましくは25%の最大可視光フィルム側反射率、さらにより好ましくは20%の最大可視光フィルム側反射率、最も好ましくは16%の最大可視光フィルム側反射率を示すが、好ましくは2%の最小可視光ガラス側反射率、より好ましくは5%の最小可視光ガラス側反射率、より好ましくは10%の最小可視光ガラス側反射率、最も好ましくは14%の最小可視光ガラス側反射率を示す。
【0054】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、30%の最大可視光ガラス側反射率、より好ましくは25%の最大可視光ガラス側反射率、さらにより好ましくは20%の最大可視光ガラス側反射率、最も好ましくは16%の最大可視光ガラス側反射率を示すが、好ましくは2%の最小可視光ガラス側反射率、より好ましくは5%の最小可視光ガラス側反射率、より好ましくは10%の最小可視光ガラス側反射率、最も好ましくは14%の最小可視光ガラス側反射率を示す。
【0055】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、フィルム側の反射において少なくとも-10、より好ましくは少なくとも-4、さらにより好ましくは少なくとも-2、好ましくは最大5、より好ましくは最大2、さらにより好ましくは最大1の、a*座標を示す。
【0056】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、フィルム側の反射において少なくとも-1、より好ましくは少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも3、好ましくは最大10、より好ましくは最大6、さらにより好ましくは最大5のab*座標を示す。
【0057】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、ガラス側の反射において少なくとも-8、より好ましくは少なくとも-4、さらにより好ましくは少なくとも-3、好ましくは最大6、より好ましくは最大2、さらにより好ましくは最大1のa*座標を示す。
【0058】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、ガラス側の反射において少なくとも-1、より好ましくは少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも4、好ましくは最大11、より好ましくは最大7、さらにより好ましくは最大6のb*座標を示す。
【0059】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、透過率において少なくとも-7、より好ましくは少なくとも-3、さらにより好ましくは少なくとも-2、好ましくは最大5、より好ましくは最大1、さらにより好ましくは最大0で、のa*座標を示す。
【0060】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、透過率において少なくとも-6、より好ましくは少なくとも-2、さらにより好ましくは少なくとも-1、好ましくは最大5、より好ましくは最大1、さらにより好ましくは最大0、のb*座標を示す。
【0061】
好ましくは、コーティングは、ピーク波長351nm、強度32W/m2で2時間のUVランプを使用してグレージングを照射した後、最大40°、より好ましくは最大30°、さらにより好ましくは最大25°、最も好ましくは最大20°の静的水接触角を有する。新しく準備または洗浄したガラスは、親水性表面を有するが(約40°未満の静水接触角は親水性表面を示す)、有機汚染物質が表面に急速に付着し、接触角が増加する。本発明のコーティングされたグレージングの特別な利点は、たとえコーティングが汚れていても、適切な波長のUV光による照射がそれらの汚染物質を減少または破壊することによって接触角を減少させることである。さらなる利点は、水が低い接触角の表面全体に広がり、表面上の水滴(雨などによる)による転がり影響を軽減し、表面の光触媒活性によって破壊されなかった汚れまたはその他の汚染物質を洗い流しやすいことである。静的水接触角は、ガラス表面上の水滴のメニスカスによって定められる角度であり、UVランプ(ピーク波長351nm)を使用した0.73W/m2の強度で45℃で30分間グレージング照射した後のガラス表面上で既知の体積(例えば、1~5μlの範囲の体積)の水滴の直径を測定することによって既知の方法で決定され得る。
【0062】
本発明によるコーティングされたグレージングによって変性され得る特定の微生物としては、例えば、黄色ブドウ球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むグラム陽性菌およびグラム陰性菌、ならびにSARS-CoV-2を含むコロナウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明によるコーティングされたグレージングは、それ以外はコーティングされた基板と同じであるコーティングされていない基板と比較して、基板のコーティングされた表面上の1つ以上の微生物、例えば細菌および/またはウイルスの生存を減少させ得る。好ましくは、基板のコーティングされた表面上の細菌の増殖は、それ以外はコーティングされた基板と同じである未コーティングの基板と比較して、少なくとも10%、より好ましくは20%、さらにより好ましくは30%減少する。好ましくは、基板のコーティングされた表面上のウイルスの不活性化は、コーティングされていない基板(それ以外はコーティングされた基板と同じ)と比較して、少なくとも10%、より好ましくは20%、さらにより好ましくは30%増加する。
【0064】
本発明によるコーティングされたグレージングによって変性され得る特定の微生物としては、例えば、黄色ブドウ球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むグラム陽性菌およびグラム陰性菌、ならびにSARS-CoV-2を含むコロナウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明によるコーティングされたグレージングは、37℃で2時間以内に、黄色ブドウ球菌、SARS-CoV-2、大腸菌、歯肉炎菌、またはミュータンス菌のうちの1つに対して10%の減少を提供する。より好ましくは、本発明によるコーティングされたグレージングは、黄色ブドウ球菌、SARS-CoV-2、大腸菌、歯肉炎菌、またはミュータンス菌のうちの1つに対して、37℃で2時間以内少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%の減少を提供する。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、例えば、使用中に外部結露の低減が望まれる場合、コーティングが位置するガラス基板の第1の主表面は、それが設置された建物から離れる方向に面しており、すなわち、ガラス基板の第1の主表面は外部環境に面しており、一般に表面#1と呼ばれるであろう。
【0066】
他の好ましい実施形態では、特に使用中に抗菌特性が好ましい場合、コーティングが配置されるガラス基板の第1の主表面は、それが設置されている建物に向かって面しており、すなわち、ガラス基板の第1の主表面は内部環境に面しており、一般にモノリシックグレージングの場合は表面#2、二重グレージングの場合は表面#4と呼ばれる。
【0067】
特定の実施形態では、コーティングされたグレージングは、ガラス基板の反対側の主表面上に位置する第2のコーティングをさらに備え得る。すなわち、前の段落で言及したコーティングはガラス基板の第1の主表面上に位置し、第2のコーティングはガラス基板の反対側の主表面上に位置する。第2のコーティングは、反射防止コーティング、低放射率コーティング、および/または日照制御コーティングを備え得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、ガラス基板の反対側の主表面は、プラスチック中間層のプライによって第2のガラス基板に結合され得る。好ましくは、プラスチック中間層はポリビニルブチラール(PVB)を備える。抗菌特性が望まれる特定の実施形態では、プラスチック中間層はUV吸収剤を含まない。これらの実施形態では、プラスチック中間層は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは実質的に、最も好ましくは完全に、UV放射に対して透過である。ガラス基板の対向する主表面のいずれか、および第2のガラス基板のいずれかの表面は、例えば、反射防止、低放射率および/または日照制御コーティングでコーティングされ得る。
【0069】
特定の実施形態では、第1の態様のコーティングされたグレージング、例えば、直前の2つの段落のコーティングされたグレージングは、さらなるガラス基板(例えば、1つまたは2つのさらなるガラス基板)と組み合わせて、グレージングユニットを形成し得る。コーティングされたグレージングは、任意の隣接するさらなるガラス基板と間隔をあけた関係で保持されて、断熱グレージングユニットを形成し得る。任意のさらなるガラス基板を、任意の隣接するさらなるガラス基板と離間関係で保持して、断熱グレージングユニットを形成し得る。
【0070】
本発明の第2の態様によれば、結露防止、自己洗浄および/または抗菌特性を提供するために、第1の態様のコーティングされたグレージングの使用が提供される。好ましくは、当該使用は建築用途または自動車用途で行われる。当該使用は、グレージングフレーム、壁、隔壁、ブラインド、ドア、電子機器、タッチスクリーン、鏡、コンテナ、家具、スプラッシュバックおよび/または車両の窓で発生し得る。
【0071】
好ましくは、本発明の第2の態様による使用は、人工UV光源および/または日光からのUV光でコーティングされたグレージングを照射するステップをさらに備える。好ましくは、コーティングされた基板は、少なくとも1分間、より好ましくは少なくとも20分間、さらにより好ましくは少なくとも1時間、最も好ましくは少なくとも2時間、UV光で照射される。本発明に関して、UV光は、10nm~400nmの波長を有する電磁放射線である。
【0072】
好ましくは、UV光は、200nmを超える、より好ましくは220nmを超える、さらにより好ましくは250nmを超えるピーク波長を有する。本発明に関して、光のピーク波長とは、光スペクトルにおいて最も強度が高い波長である。例えば、UV光のピーク波長は、10~400nmのUVスペクトルの中で最も強度が高い波長である。
【0073】
好ましくは、UV光は、自動センサープロセスまたはタイマーを使用して作動される。本発明によれば、自動センサープロセスは、パラメータ情報を感知するためのセンサデバイスと、応答を決定する計算デバイスにパラメータ情報を中継するための通信システムとを含み得る。
【0074】
好ましくは、UV光源は移動可能なUV光源である。好ましくは、可動UV光源は、UV光源からの光がコーティングされたグレージングに入射し得る位置とUV光源からの光がコーティングされたグレージングに入射しない位置との間で作動し得る。好ましくは、可動UV光源はロボット装置に取り付けられる。好ましくは、ロボット装置は、作動アーム、車輪付き、脚付き、もしくは追跡式の、移動運搬車、または格納アームである。
【0075】
好ましくは、本発明によるコーティングされたグレージングの使用は、洗浄ステップをさらに含み、好ましくは、コーティングされたグレージングは洗浄製品、好ましくは洗剤および/または殺菌性洗浄製品を用いて洗浄される。好ましくは、洗浄ステップは自動洗浄ステップであり、コーティングされたグレージングは噴霧器、エアナイフおよび/またはワイパーを使用して洗浄される。あるいは、洗浄ステップは手動洗浄ステップであり得る。
【0076】
本発明の第1の態様に関連して上に述べた任意の特徴はまた、本発明の他の態様に関連して利用され得る。
【0077】
本明細書に記載される任意の発明は、必要な変更を加えて、本明細書に記載される他の発明の任意の特徴と組み合わせられ得る。
【0078】
本発明の一態様に適用可能な追加の特徴は、任意の組み合わせおよび任意の数で使用され得ることを理解されたい。さらに、それらは、本発明の他の態様のいずれかと、任意の組み合わせおよび任意の数で使用され得る。これには、本出願の特許請求の範囲における他の請求項の従属請求項として使用される任意の請求項の従属請求項が含まれるが、これに限定されない。
【0079】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書より前に提出され、本明細書とともに公衆の閲覧に公開されるすべての論文および文書に向けられており、そのようなすべての論文および文書の内容は参照によって本明細書に援用される。
【0080】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)で開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示される任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。
【0081】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示される各特徴は、特に明記されていない限り、同じ、均等、または同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。したがって、特に明記されていない限り、開示される各特徴は、一連の同等または類似の特徴の一般的な一例にすぎない。
【0082】
ここで、添付の図面を参照しながら、下記の特定の実施形態によって本発明をさらに説明するが、これらは例示として与えられ、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明の特定の実施形態による、4層コーティングを有するコーティングされたグレージングの断面の概略図である。
【
図2】本発明の特定の実施形態による、5層コーティングを有するコーティングされたグレージングの断面の概略図である。
【
図3】本発明の特定の実施形態による、6層コーティングを有するコーティングされたグレージングの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、本発明の特定の実施形態によるコーティングされたグレージング1の断面図を示す。コーティングされたグレージング1は、CVDを使用して、二酸化スズをベースとする第1の層3、二酸化ケイ素をベースとする第2の層4、フッ素ドープ酸化スズをベースとする第3の層5、および二酸化チタンをベースとする第4の層6を順次コーティングした透明なフロートガラス基板2を備える。CVDは、フロートガラスプロセスにおけるガラス基板の製造と併せて実施され得る。
【0085】
図2は、同様に、二酸化ケイ素をベースとする介在層8がフッ素ドープ酸化スズをベースとする第3の層5と二酸化チタンをベースとする第4の層6との間に位置することを除いて、
図1に示されるコーティングされたグレージング1と同一のコーティングされたグレージング7を示す。
【0086】
図3は、二酸化ケイ素ベースの下層10が透明なフロートガラス基板2と二酸化スズベースの第1の層3との間に位置することを除いて、
図2に示されるコーティングされたグレージング7と同一のコーティングされたグレージング9を示す。
【実施例】
【0087】
本発明による実施例1~6を、フロートガラスプロセスの一部として大気圧CVDを使用して調製した。各実施例で使用した透明ガラス基板は、厚さ4mmのクリアソーダ石灰シリカガラスであった。比較例7は、厚さ4mmの市販のピルキントン防露ガラスであった。比較例8は、厚さ4mmの市販のPilkington Activ(商標)であった。
【0088】
SnO2層を、下記の成分を使用してガラス表面に堆積した。
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチルスズ、およびH2O。
SiO2層を、下記の成分を使用してガラス表面に堆積した。
・N2キャリアガス、Heキャリアガス、O2、C2H4、およびSiH4。
SnO2:Sb層を、下記の成分を使用してガラス表面に堆積した。
・N2およびHeキャリアガス、O2、二塩化ジメチルスズ、酢酸エチル溶液中の30~50重量%のトリフェニルアンチモンおよびH2O。
TiO2層を、下記の成分を使用してガラス表面に堆積した。
・比較例8について酢酸エチル溶液中の四塩化チタン(EtOAc:TiCl4比 1.8~2.2)。
・実施例1~6についてチタンテトライソプロポキシドおよびO2。
SnO2:F層を、下記の成分を使用してガラス表面に堆積した。
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチルスズ、HFおよびH2O。
【0089】
サンプルの各層の厚さは下記のとおりである。
実施例1-6:ガラス/SiO2(20nm)/SnO2(25nm)/SiO2(25nm)/SnO2:F(230nm)/TiO2(実施例1-2、≧1nm、<5nm、実施例3-4、≧5nm、<10nm、実施例5、15nm、実施例6、18nm)
比較例7:ガラス/SiO2(20nm)/SnO2(25nm)/SiO2(25nm)/SnO2:F(230nm)
比較例8:SiO2(35nm)/TiO2(17nm)
【0090】
以下の表1に示す光学特性を、HunterLab(商標)Ultrascan Pro分光光度計を使用して測定した。実施例の層の厚さは、FEI Nova NanoSEM(商標)450およびTEAMソフトウェアを備えたEDAX Octane plus EDS検出器を使用する走査型電子顕微鏡法(SEM)によって決定した。
【0091】
【0092】
これらのサンプルの静的水接触角は、UVランプ(ピーク波長351nm)を使用して0.73W/m2の強度で45℃、30分間グレージングに照射した後、ガラス表面上の水滴(5μl)の直径を測定することによって決定された(下記の表2の「UV」と表示された列に示す)。これらのサンプルの静的水接触角もまた、サンプルを暗所で72時間保存した直後に測定した(下記の表2の「暗所」と示された列に示す)。
【0093】
【0094】
静的な水の接触角は、コーティングされた表面の光活性に起因すると考えられる。この光活性は、表面の有機汚れを破壊することが可能であり、さもなければ表面の接触角が30°を超えて増加し、外部結露の潜在的な核形成領域として機能する。上記の結果は、本発明によるコーティングされたグレージングが、UV光の照射時に非常に低い静的水接触角を示すことを実証する。
【0095】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示される特徴の任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせ、または開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに広がる。
【国際調査報告】