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特表2023-546508抗TIGIT抗体、その医薬組成物及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体、その医薬組成物及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231026BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20231026BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/12
C07K16/46
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K49/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525079
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021126277
(87)【国際公開番号】W WO2022089392
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011153458.2
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 百 勇
(72)【発明者】
【氏名】夏 瑜
(72)【発明者】
【氏名】王 忠 民
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA92X
4B065AB01
4B065AB05
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA19
4C085BB11
4C085CC23
4C085HH03
4C085HH11
4C085HH13
4C085HH20
4C085KA05
4C085KA26
4C085KA27
4C085KA29
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、医薬分野に属し、抗TIGIT抗体、その医薬組成物及び用途に関する。具体的には、本発明は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片に関し、そのうち、前記抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3~5に示されるHCDR1~HCDR3を含み、且つ前記抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号8~10に示されるLCDR1~LCDR3を含む。本発明の抗体は、TIGITに効果的に結合でき、腫瘍の予防及び治療に用いられる可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3~5に示されるHCDR1~HCDR3を含み、且つ軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号8~10に示されるLCDR1~LCDR3を含む、
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号15及び配列番号17から選ばれ、且つ
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6、配列番号19、配列番号21、配列番号23及び配列番号25から選ばれる、
請求項1に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号19に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号17に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号19に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号13に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号21に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号13に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号23に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号15に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号21に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号15に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号23に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号25に示され、又は、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号17に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号25に示される、
請求項1~2の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又は二重抗体から選ばれる、
請求項1~3の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体は、非-CDR領域を含み、且つ前記非-CDR領域は、ネズミ類でない種、例えばヒト抗体に由来する、
請求項1~4の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
前記抗体の重鎖定常領域がIg gamma-1 chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01857)又はIg gamma-4 chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01861.1)であり、軽鎖定常領域がIg kappa chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01834)である、
請求項1~5の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記抗体は、4E-10未満又は4E-11未満のKDでTIGIT-mFcに結合し、好ましくは、前記KDは、Fortebio分子間相互作用測定装置で測定される、
請求項1~6の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
前記抗体は、1.5nM未満、1.2nM未満又は1nM未満のEC50でTIGIT-mFcに結合し、好ましくは、前記EC50は、フローサイトメーターで測定される、
請求項1~7の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
前記抗TIGIT抗体は、ハイブリドーマ細胞株LT019が産生した抗体であり、前記ハイブリドーマ細胞株LT019は、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC NO: C2020208である、
請求項1~8の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片をコードする、
単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の単離された核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の単離された核酸分子、又は請求項11に記載のベクターを含む、
宿主細胞。
【請求項13】
中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC NO: C2020208である、
ハイブリドーマ細胞株LT019。
【請求項14】
抗体及びカップリング部分を含む複合体であって、そのうち、前記抗体が、請求項1~9の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり、前記カップリング部分が、検出可能な標識であり、好ましくは、前記カップリング部分が、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質又は酵素である、
複合体。
【請求項15】
請求項1~9の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片を含むか、又は請求項14に記載の複合体を含むキットであって、
好ましくは、前記キットは、前記抗体を特異的に識別する二次抗体を更に含み、任意選択的に、前記二次抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質又は酵素を更に含む、
キット。
【請求項16】
サンプルにおけるTIGITの存在又はそのレベルの検出に用いられるキットの調製における、
請求項1~9の何れか1項に記載の抗体又は請求項14に記載の複合体の用途。
【請求項17】
第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域とを含む二重特異性抗体であって、そのうち、
前記第1タンパク質機能領域は、TIGITを標的とし、
前記第2タンパク質機能領域は、TIGITと異なる標的(例えば、PD-1)を標的とし、
そのうち、前記第1タンパク質機能領域が、請求項1~9の何れか1項に記載の抗体又は抗原結合性断片であり、
好ましくは、前記二重特異性抗体がIgG-scFvモードであり、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が、請求項1~9の何れか1項に記載の抗体であり、且つ免疫グロブリン形式であり、且つ前記第2タンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、又は
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、且つ前記第2タンパク質機能領域が、TIGITと異なる標的(例えば、PD-1)を標的とする免疫グロブリン形式の抗体である、
二重特異性抗体。
【請求項18】
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域とは、直接に連結されるか又は連結断片によって連結される、
請求項17に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域とは、相互に独立して1つ、2つ又は2つ以上である、
請求項17~18の何れか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項20】
前記一本鎖抗体は、それぞれ免疫グロブリン形式の抗体の2本の重鎖のC末端に連結される、
請求項17~19の何れか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項21】
請求項1~9の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片又は請求項14に記載の複合体を含む医薬組成物であって、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を更に含む、
医薬組成物。
【請求項22】
1種類もしくは複数種類の抗PD-1抗体、又は1種類もしくは複数種類の抗PD-L1抗体を更に含む、
請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗体の質量で計算して、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体との質量比が(1:5)~(5:1)である、
請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
相互に独立して包装される第1製品と第2製品とを含む組合せ製品であって、
前記第1製品は、請求項1~9の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片、請求項14に記載の複合体又は請求項21~23の何れか1項に記載の医薬組成物を含み、
前記第2製品は、少なくとも1種類の抗PD-1抗体又は少なくとも1種類の抗PD-L1抗体を含み、
好ましくは、前記第1製品と前記第2製品とは、1種類又は複数種類の薬学的に許容される補助剤を更に相互に独立して含み、
好ましくは、前記組合せ製品は、製品添付文書を更に含む、
組合せ製品。
【請求項25】
抗体の質量で計算して、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体との質量比が(1:5)~(5:1)である、
請求項24に記載の組合せ製品。
【請求項26】
腫瘍(好ましくは、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌の1種類又は複数種類から選ばれる)を治療及び/又は予防する薬物の調製における、
請求項1~9の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、請求項14に記載の複合体、請求項17~20の何れか1項に記載の二重特異性抗体又は請求項21~23の何れか1項に記載の医薬組成物の用途。
【請求項27】
腫瘍(好ましくは、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌の1種類又は複数種類から選ばれる)を治療及び/又は予防することに用いられる、
請求項1~9の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片又は請求項17~20の何れか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項28】
必要とする被験者に有効量の請求項1~9の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片又は請求項に17~20の何れか1項に記載の二重特異性抗体を投与するステップを含む腫瘍(好ましくは、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌の1種類又は複数種類から選ばれた)を治療及び/又は予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、抗TIGIT抗体、その医薬組成物及び用途に関する。具体的には、本発明は、抗TIGITのモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
TIGIT(T cell Ig and ITIM domain:WUCAM、Vstm3、VSIG9とも称される)は、ポリオウイルス受容体(PVR)/Nectinファミリーのメンバーである。TIGITは、細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)ドメインと、I型膜貫通ドメインと、典型的な免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)及び免疫グロブリンテールチロシン(ITT)モチーフを有する細胞内ドメインとからなる。TIGITは、リンパ細胞、特にエフェクターと制御性CD4+T細胞、濾胞性ヘルパーCD4+T細胞とエフェクターCD8+T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞に、高度に発現する(Yu X, Harden K, Gonzalez L C, et al. The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells[J]. Nature immunology, 2009, 10(1): 48)。
【0003】
CD155(PVR、Necl5又はTage4とも称される)、CD112(PVRL2 / nectin 2とも称される)とCD113(PVRL3とも称される)は、TIGITが結合するリガンドであり(Martinet L, Smyth M J. Balancing natural killer cell activation through paired receptors[J]. Nature Reviews Immunology, 2015, 15(4): 243-254.)、そのうち、CD155は、TIGITの高親和性リガンドである。NK細胞において、TIGITがリガンドCD155及びCD112に結合すると、TIGIT高発現細胞に対するNK細胞の殺傷作用が抑制される(Stanietsky N, Simic H, Arapovic J, et al. The interaction of TIGIT with PVR and PVRL2 inhibits human NK cell cytotoxicity[J]. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2009, 106(42): 17858-17863)。ある報告では、PD-1とTIGITを同時に遮断した場合にCD8+T細胞の殺傷作用を増強できることが分かっている(Johnston R J, Comps-Agrar L, Hackney J, et al. The immunoreceptor TIGIT regulates antitumor and antiviral CD8+ T cell effector function[J]. Cancer cell, 2014, 26(6): 923-937)。最新の研究において、TIGITはNK細胞の免疫チェックポイントであり、腫瘍の進行において抑制性受容体TIGITがNK細胞の疲弊をもたらすことが発見され、また抗TIGITモノクローナル抗体はNK細胞の疲弊を逆転させることができ、且つさまざまな腫瘍、例えば非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫等の免疫治療に用いられることが証明されている(Zhang Q, Bi J, Zheng X, et al. Blockade of the checkpoint receptor TIGIT prevents NK cell exhaustion and elicits potent anti-tumor immunity[J]. Nature immunology, 2018, 19(7): 723-732)。
【0004】
肝細胞癌(HCC)患者の癌組織におけるTIGITとCD155の発現レベルは、分化度が高から低となるにつれてアップレギュレートされる。HCC術後、患者末梢血におけるTIGIT+cd4+T細胞とTIGIT+Treg細胞の頻度は減少する。TIGIT発現の増加は、AFPレベルと正の相関がある。これらの結果から、共抑制性受容体TIGITは、HCCの発病メカニズムに関与している可能性があり、HCC診断と治療の新しい標的となることが分かる(Duan Xiangguo,Liu Juanxi,Cui Jianjian et al. Expression of TIGIT/CD155 and correlations with clinical pathological features in human hepatocellular carcinoma.[J] .Mol Med Rep, 2019, 20: 3773-3781.)。
【0005】
その他の報告によると、TIGIT遮断剤を単独で、又はPD-1ブロッカーを併用し、更にCD96遮断剤を加えると、野生型とCd155-/-マウスモデルでB16悪性黒色腫の成長を有意に減少できる(Li X-Y, Das I, Lepletier A, et al. . Cd155 loss enhances tumor suppression via combined host and tumor-intrinsic mechanisms. J Clin Invest 2018;128:2613-25)。CD112R遮断剤を単独で、又はTIGIT遮断剤及び/もしくはPD-1遮断剤と併用すると、卵巣腫瘍、子宮内膜腫瘍と肺腫瘍におけるTILのサイトカイン産生能が増加できる(Whelan S, Ophir E, Kotturi MF, et al. . PVRIG and PVRL2 Are Induced in Cancer and Inhibit CD8+ T-cell Function. Cancer Immunol Res 2019;7:257-68)。
【0006】
抗TIGIT抗体薬は、新しい免疫チェックポイント抗体薬として幅広い応用の将来性があり、腫瘍の免疫治療に用いられる。ロシュ(Roche)が研究開発したTiragolumabはすでに第3相臨床試験に入っており、また、報告によると、TIGITモノクローナル抗体TiragolumabとPD-L1薬物Tecentriq(アテゾリズマブAtezolizumab)との併用を一次治療としたところ、PD-L1陽性の転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者を治療する第2相臨床試験で、TiragolumabとTecentriqの組合せは忍容性が良好で、疾患進行のリスクを43%減少し、併用効果が著しいことが分かった(Exit C. Roche to present first clinical data on novel anti-TIGIT cancer immunotherapy tiragolumab at ASCO[J])。
【0007】
しかしながら、既存の抗ヒトTIGIT抗体薬は親和性が低く、高い親和性を有する抗TIGIT抗体はいまだ不足している。
【0008】
そのため、TIGITと高い親和性を有する自己免疫疾病治療用の抗体薬を開発し、それを治療効果が高く毒性反応や副作用の低いものとすることは、極めて大きな意義を有する。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究と創造的な労働を経て、哺乳動物細胞発現系を利用し、組換えのヒトTIGITを抗原として発現し、マウスを免疫し、マウス脾臓細胞と骨髄腫細胞の融合により、ハイブリドーマ細胞を取得した。発明者らは、多数のサンプルに対するスクリーニングにより、ハイブリドーマ細胞株LT019(寄託番号CCTCC NO:C2020208)を取得した。
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、ハイブリドーマ細胞株LT019がそれぞれヒトTIGITに特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(26B12と命名)を分泌及び産生でき、且つ当該モノクローナル抗体がTIGITに非常に効果的に結合し、TIGITの免疫細胞抑制作用を低下させ、T細胞活性を促進し、NK細胞の疲弊を逆転させ、腫瘍に対する免疫細胞の殺傷作用を高めることができることを発見した。更に、本発明者らは、抗ヒトTIGITのヒト化抗体(26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4と命名)を創造的に作製した。
【0011】
本発明者らは更に驚くべきことに、本発明の抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4がTIGITに結合する活性を有し、且つ非常に強い親和性を有し、26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4がTIGITの活性を効果的に減少できることを発見した。本発明の抗体は、腫瘍(例えば肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌、精巣癌)等の疾病の治療及び/又は予防に用いられる可能性がある。このため、下記発明が提供される。
【0012】
本発明の1つの態様は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片に関し、そのうち、
前記抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3~5に示されるHCDR1~HCDR3を含み、且つ前記抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号8~10に示されるLCDR1~LCDR3を含む。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号15及び配列番号17から選ばれ、且つ
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号6、配列番号19、配列番号21、配列番号23及び配列番号25から選ばれる。
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号6に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号11に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号19に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号17に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号19に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号13に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号21に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号13に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号23に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号15に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号21に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号15に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号23に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号11に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号25に示され、又は、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号17に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号25に示される。
【0015】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体が非-CDR領域を含み、且つ前記非-CDR領域が、ネズミ類でない種、例えばヒト抗体に由来する。
【0016】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体の重鎖定常領域がIg gamma-1 chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01857)又はIg gamma-4 chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01861.1)であり、軽鎖定常領域がIg kappa chain C region(例えばNCBI ACCESSION: P01834)である。
【0017】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片が、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又は二重抗体から選ばれる。
【0018】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体が、4E-10未満又は4E-11未満のKDでTIGIT-mFcに結合し、好ましくは、前記KDは、Fortebio分子間相互作用測定装置で測定される。
【0019】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体が、1.5nM未満、1.2nM未満又は1nM未満のEC50でTIGIT-mFcに結合し、好ましくは、前記EC50は、フローサイトメーターで測定される。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態において、前記抗TIGIT抗体はモノクローナル抗体である。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態において、前記抗TIGIT抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態において、前記抗原結合性断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、Fab/c、相補性決定領域断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体又は二重特異性抗体から選ばれる。
【0023】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片は、前記抗体が、ハイブリドーマ細胞株LT019が産生した抗体であり、前記ハイブリドーマ細胞株LT019は、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC NO: C2020208である。
【0024】
本発明の別の態様は、本発明の何れか1項に記載のTIGIT抗体又はその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子に関する。
【0025】
本発明の更なる態様は、本発明の単離された核酸分子を含むベクターに関する。
【0026】
本発明の更なる態様は、本発明の単離された核酸分子、又は本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0027】
本発明の更なる態様は、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC NO:C2020208であるハイブリドーマ細胞株LT019に関する。
【0028】
本発明の更なる態様は、抗体及びカップリング部分を含む複合体に関し、そのうち、前記抗体が、本発明の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり、前記カップリング部分が、検出可能な標識であり、好ましくは、前記カップリング部分が、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質又は酵素である。
【0029】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片を含むか、又は本発明の複合体を含むキットに関し、
好ましくは、前記キットは、前記抗体を特異的に識別する二次抗体を更に含み、任意選択的に、前記二次抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質又は酵素を更に含む。
【0030】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか1項に記載の抗体、又は本発明の複合体の、キットの調製における用途に関し、前記キットはサンプルにおけるTIGITの存在又はそのレベルの検出に用いられる。
【0031】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片又は本発明の複合体を含む医薬組成物に関し、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を更に含む。
【0032】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記医薬組成物は、1種類もしくは複数種類の抗PD-1抗体、又は1種類もしくは複数種類の抗PD-L1抗体を更に含む。
【0033】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記医薬組成物は、抗体の質量で計算して、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体との質量比が(1:5)~(5:1)であり、例えば、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1又は5:1である。
【0034】
本発明の更なる態様は、第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域とを含む二重特異性抗体に関し、そのうち、
前記第1タンパク質機能領域は、TIGITを標的とし、
前記第2タンパク質機能領域は、TIGITと異なる標的(例えば、PD-1)を標的とし、
そのうち、前記第1タンパク質機能領域が、本発明の何れか1項に記載の抗体又は抗原結合性断片であり、
好ましくは、前記二重特異性抗体がIgG-scFvモードであり、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が、本発明の何れか1項に記載の抗体であり、且つ免疫グロブリン形式であり、且つ前記第2タンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、又は
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、且つ前記第2タンパク質機能領域は、免疫グロブリン形式の抗体である。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態において、前記二重特異性抗体は、本発明の何れか1項に記載の抗体が免疫グロブリン形式である。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態において、前記二重特異性抗体は、前記一本鎖抗体が重鎖可変領域-連結断片(linker)-軽鎖可変領域の形式である。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態において、前記二重特異性抗体は、前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域とが、直接に連結されるか又は連結断片(linker)によって連結され、当該連結断片と前の一本鎖抗体における連結断片とは同じでもよく、異なってもよく、いずれも本分野でよく使用される連結断片をよく使用することができる。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態において、前記二重特異性抗体は、前記第1タンパク質機能領域及び第2タンパク質機能領域が、相互に独立して1つ、2つ又は2つ以上である。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態において、前記二重特異性抗体は、前記一本鎖抗体がそれぞれ、免疫グロブリン形式の抗体の2本の重鎖のC末端に連結され、好ましくは、各重鎖は1つの一本鎖抗体に連結される。
【0040】
本発明の更なる態様は、相互に独立して包装される第1製品と第2製品とを含む組合せ製品に関し、そのうち、
前記第1製品は、本発明の何れか1項に記載の抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明の複合体又は本発明の何れか1項に記載の医薬組成物を含み、
前記第2製品は、少なくとも1種類の抗PD-1抗体又は少なくとも1種類の抗PD-L1抗体を含み、
好ましくは、前記第1製品と前記第2製品とは、1種類又は複数種類の薬学的に許容される補助剤(例えば、ベクター及び/又は賦形剤)を更に相互に独立して含み、
好ましくは、前記組合せ製品は、製品添付文書を更に含む。
【0041】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記組合せ製品は、抗体の質量で計算して、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体との質量比が(1:5)~(5:1)であり、例えば、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1又は5:1である。
【0042】
本発明の更なる態様は、腫瘍を治療及び/又は予防する薬物の調製における、本発明の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明の複合体、本発明の何れか1項に記載の二重特異性抗体、本発明の何れか1項に記載の医薬組成物又は本発明の何れか1項に記載の組合せ製品の用途に関し、好ましくは、前記腫瘍は、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌から選ばれた1種類又は複数種類である。
【0043】
本発明の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明の複合体、本発明の何れか1項に記載の二重特異性抗体、本発明の何れか1項に記載の医薬組成物又は本発明の何れか1項に記載の組合せ製品は、腫瘍を治療及び/又は予防するために用いられ、好ましくは、前記腫瘍は、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌から選ばれた1種類又は複数種類である。
【0044】
本発明の更なる態様は、腫瘍を治療及び/又は予防する方法に関し、必要とする被験者に有効量の本発明の何れか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明の複合体、本発明の何れか1項に記載の二重特異性抗体、本発明の何れか1項に記載の医薬組成物又は本発明の何れか1項に記載の組合せ製品を投与するステップを含み、好ましくは、前記腫瘍は、肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌及び精巣癌から選ばれた1種類又は複数種類である。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態において、前記肝臓癌は肝細胞癌である。
【0046】
軽鎖と重鎖の可変領域は、抗原の結合を決定し、各鎖の可変領域は、いずれも3つの高可変領域を含み、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる(重鎖(H)のCDRは、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖(L)のCDRは、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。これはKabatらによって命名されたものである。Bethesda M.d., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 1991; 1-3:91-3242を参照)。
【0047】
好ましくは、CDRはIMGT番号付けシステムによって定義されてもよい。Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF. Nucleic acids research 2009; 38(suppl_1): D301-D307を参照されたい。
【0048】
当業者に周知される技術的手段により、例えばVBASE2データベースでIMGT定義に基づいてモノクローナル抗体配列のCDR領域のアミノ酸配列を解析する。
【0049】
本発明に係る抗体26B12、26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4は、同じCDRを有する。
【0050】
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである。
HCDR1: GHSFTSDYA (配列番号3)
HCDR2: ISYSDST (配列番号4)
HCDR3: ARLDYGNYGGAMDY (配列番号5)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1:QHVSTA (配列番号8)
LCDR2:SAS (配列番号9)
LCDR3:QQHYITPWT (配列番号10)
【0051】
本発明において、特に言及しない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。また、本明細書で用いられる細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学的実験室操作手順はすべてその技術分野で広く使用されている通常の手順である。同時に、本発明をより良く理解するために、以下に関連用語の定義及び説明を提供する。
【0052】
本明細書では、TIGIT(NCBI GenBank ID: NP_776160.2)のアミノ酸配列に言及した場合、それはTIGITタンパク質の全長、又は細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)ドメイン、又は細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)ドメインを含む断片を含み、TIGITの融合タンパク質、例えばマウス又はヒトIgGのFcタンパク質断片(mFc又はhFc)と融合する断片を更に含む。しかしながら、TIGITタンパク質のアミノ酸配列において、突然変異又は変異(置換、欠失及び/又は添加を含むが、それらに限定されない)は、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然に産生でき又は人工的に導入できることが、当業者には理解される。そのため、本発明において、用語「TIGITタンパク質」又は「TIGIT」は、示された配列及びその天然又は人工変異体を含む、そのような配列の全てを含むものとする。且つ、TIGITタンパク質の配列断片を説明する場合、それは配列断片を含むだけでなく、その天然又は人工変異体における対応する配列断片を更に含む。
【0053】
本明細書では、用語EC50とは、半数効果濃度(concentration for 50% of maximal effect)を指し、最大効果の50%をもたらすことができる濃度を指す。
【0054】
本明細書では、用語「抗体」は、一般的に2対のポリペプチド鎖(各対が1本の「軽」(L)鎖と1本の「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体の軽鎖は、κ型とλ型とに分けられる。重鎖は、μ型、δ型、γ型、α型又はε型に分けられ、且つそれぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに定義づける。軽鎖と重鎖では、可変領域と定常領域は、約12個又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域を通じて連結され、重鎖は、また約3つ又はそれ以上のアミノ酸の「D」領域を更に含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2とCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織又は因子(免疫系の各種の細胞(例えば、エフェクター細胞)と古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む)との結合を媒介できる。VHとVL領域は、更に、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存的な領域が散在する、高可変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分できる。各VHとVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で、アミノ基末端からカルボキシル基末端まで配列された3つのCDRと4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VHとVL)は、それぞれ抗原結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda M.d.(1987 and 1991))、又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 1987; 196:901-917; ChothiaらNature 1989; 342:878-883又はIMGT番号付けシステムに従って定義される。Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. "IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF." Nucleic acids research 2009; 38(suppl_1): D301-D307.の定義を参照されたい。用語「抗体」は、抗体を産生するいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、これには、特に、組換え抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体であってもよく、例えば、IgG(例えば、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体である。
【0055】
本明細書では、抗体の「抗原結合性断片」という用語は、完全長抗体の断片を含むポリペプチドを指し、完全長抗体が結合するのと同じ抗原に特異的に結合する能力を保持し、及び/又は抗原への特異的結合について完全長抗体と競合し、これは「抗原結合部分」とも呼ばれる。一般的に、Fundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 第2版、Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい。それは全文が引用により本明細書に組み込まれ、全ての目的に用いられる。抗体の抗原結合性断片は、組換えDNA技術によって、又は完全抗体の酵素的又は科学的切断によって産生できる。場合によっては、抗原結合性断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、二重抗体(diabody)と、ポリペプチドに特異性抗原結合能力を与えるのに十分な抗体の少なくとも一部を有するポリペプチドを含む。
【0056】
本明細書では、用語「Fd断片」は、VHとCH1ドメインからなる抗体断片を意味し、用語「Fv断片」は、抗体の単一アームVLとVHドメインからなる抗体断片を意味し、用語「dAb断片」は、VHドメインからなる抗体断片を意味し(Ward ら, Nature 341:544-546 (1989))、用語「Fab断片」は、VL、VH、CLとCH1ドメインからなる抗体断片を意味し、用語「F(ab')2断片」は、ヒンジ領域上のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む抗体断片を意味する。
【0057】
場合によっては、抗体の抗原結合性断片は、VLとVHドメインが単一のポリペプチド鎖として産生されることを可能にするリンカーにより対合して一価分子を形成する一本鎖抗体(例えば、scFv)である(例えば, Birdら, Science 242:423-426 (1988)とHustonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)を参照)。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有することができる。適切な先行技術のリンカーは、GGGGSアミノ酸配列の反復配列又はその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーを使用してもよいが、その変異体を使用してもよい(Holligerら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。本発明に用いられる他のリンカーは、Alfthanら(1995)、Protein Eng. 8:725-731、Choiら(2001)、Eur. J. Immunol. 31: 94-106、Huら(1996)、Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanovら(1999)、J. Mol. Biol. 293:41-56、及びRooversら(2001)、Cancer Immunol.によって説明される。
【0058】
場合によっては、抗体の抗原結合性断片は二重抗体であり、即ち、VHとVLドメインが単一ポリペプチド鎖に発現されるが、同じ鎖の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによりドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を産生せざるを得ないような二価抗体である(例えば, Holliger P.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)、及びPoljak R. J.ら, Structure 2:1121-1123 (1994) を参照)。
【0059】
他の場合には、抗体の抗原結合性断片は「二重特異性抗体」であり、一次抗体(断片)と二次抗体(断片)又は抗体アナログがカップリングアームによって形成された複合体を指し、カップリングの方式は、化学反応、遺伝子融合と酵素触媒作用を含むが、それらには限られない。抗体の抗原結合性断片は、例えば、3種の異なる抗原結合特異性を有する抗体である三重特異性抗体と、4種の異なる抗原結合特異性を有する抗体である四重特異性抗体などを含む「多重特異性抗体」であってもよい。例えば、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、IgG抗体、scFv-Fc抗体断片と連結され又はその組合せであり、例えばCN104341529Aに示すとおりである。抗IL-17aのfynomerは、抗IL-6R抗体と結合され、例えばWO2015141862A1に示すとおりである。
【0060】
当業者にとって公知の従来技術(例えば、組換えDNA技術又は酵素的若しくは化学的切断)を使用して、与えられた抗体(例えば、本発明により提供されたモノクローナル抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4)から、抗体の抗原結合性断片(例えば、上記抗体断片)を取得し、且つ完全抗体の方式に用いられる方式と同じ方法で、抗体の抗原結合性断片を特異的にスクリーニングできる。
【0061】
本明細書では、用語「モノクローナル抗体」とは、相同性の高い一連の抗体分子のうちの1つの抗体又は抗体の1つの断片に由来するものを指し、即ち自発的に出現する自然突然変異を除いて、完全に同じである一連の抗体分子である。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対する高い特異性を有する。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体と比較し、通常少なくとも2種以上の異なる抗体を含み、これら異なる抗体は、通常、抗原上の異なるエピトープを認識する。モノクローナル抗体は、一般的に、Kohlerらによって最初に発表されたハイブリドーマ技術(Koehler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity[J]. nature, 1975; 256(5517): 495)を採用して取得するが、組換えDNA技術(例えばU.S.Patent 4,816,567を参照)を採用してもよい。
【0062】
本明細書では、用語「ヒト化抗体」とは、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDR領域の全て又は一部が、非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域で置換された後に取得した抗体又は抗体断片を指し、そのうちのドナー抗体は、所望の特異性、親和性又は反応性の非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット又はウサギ)であってもよい。その他、抗体の性能を更に改良又は最適化するため、レセプター抗体のフレームワーク領域(FR)の幾つかのアミノ酸残基が対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換され、又は他の抗体のアミノ酸残基に置換されることができる。ヒト化抗体のさらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 1986; 321:522-525; Reichmann et al., Nature 1988; 332:323-329; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2:593-596;とClark M. Antibody humanization: a case of the ‘Emperor’s new clothes’?[J]. Immunol. Today, 2000; 21(8): 397-402を参照するとよい。
【0063】
本明細書では、用語「単離した」又は「単離された」とは、天然の状態において人工的手段によって取得することを指す。ある「単離」の物質又は成分が自然界に存在する場合、それが存在する自然環境が変化したか、又自然環境から当該物質が単離されたか、又はその両方である可能性がある。例えば、動物の生体内には単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドが天然に存在するが、このような天然の状態から単離された、同じポリヌクレオチド又はポリペプチドの高純度のものは、単離と呼ばれる。用語「単離した」又は「単離された」は、人工又は合成の物質が混ざっていることを排除するものではなく、物質活性に影響しない他の不純物の存在を排除するものでもない。
【0064】
本明細書では、用語「ベクター(vector)」とは、ポリヌクレオチドが挿入されることができる核酸送達担体を指す。ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入でき、それが保持する遺伝物質エレメントを宿主細胞において発現させることができる。ベクターは、当業者に周知であり、プラスミド、ファージミド、コックスプラスミド、人工染色体(例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1に由来する人工染色体(PAC)等の人工染色体)、バクテリオファージ(例えばλバクテリオファージ又はM13バクテリオファージ)、及び動物ウイルス等が含まれるがこれに限定されない。ベクターとしての動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パピローマバキュロウイルス(例えばSV40)を含むが、これらに限定されない。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子を含むが、これらに限定されず、さまざまな発現制御エレメントを含んでもよい。また、ベクターは、複製開始部位を更に含んでもよい。
【0065】
本明細書では、用語「宿主細胞」とは、ベクターの導入に有用な細胞を指し、例えば大腸菌又は枯草菌等の原核細胞、例えば酵母細胞又はアスペルギルス等の真菌細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞又はSf9等の昆虫細胞、又は例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、GS細胞、BHK細胞、HEK 293細胞又はヒト細胞等の動物細胞を含むが、これらに限定されない。
本明細書では、用語「特異的結合」とは、2つの分子間の非ランダムの結合反応、例えば、抗体とそれが向けられる抗原との間の反応を指す。ある実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(又はある抗原に対して特異性を有する抗体)とは、抗体が約10-5 M未満、例えば約10-6 M未満、10-7 M未満、10-8 M未満、10-9 M未満又は10-10 M未満又はそれ以下の親和性(KD)で当該抗原に結合することを指す。
【0066】
本明細書では、用語「KD」は、抗体と抗原の間の結合親和性を説明するために用いられる、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原結合がより緊密であり、抗体と抗原との間の親和性がより高い。一般的に、抗体は、約10-5 M未満、例えば約10-6M未満、10-7 未満、10-8M未満、10-9 M未満又は10-10M未満又はより小さい解離平衡定数(KD)で抗原(例えば、TIGITタンパク質)に結合する。KDは当業者にとって周知の方法で測定してよい。例えばFortebio分子間相互作用測定装置での測定などである。
【0067】
本明細書では、用語「モノクローナル抗体」と「mAb」とは、同じ意味を有し、相互に交換して使用でき、用語「ポリクローナル抗体」と「pAb」とは、同じ意味を有し、相互に交換して使用でき、用語「ポリペプチド」と「タンパク質」とは、同じ意味を有し、相互に交換して使用できる。且つ本発明において、アミノ酸は通常、当該技術分野において公知のアルファベット1字又は3字の略号で示される。例えば、アラニンは、A又はAlaで示すことができる。
【0068】
本明細書では、用語「薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤」とは、薬理学及び/又は生理学的に被験者に活性成分が適合するベクター及び/又は賦形剤を指し、これは本分野で公知であり(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)、且つ、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤を含むが、それらに限定されない。例えば、pH調整剤は、リン酸塩緩衝液を含むが、これには限定されず、界面活性剤は、Tween-80等のカチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されず、イオン強度増強剤は、塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0069】
本明細書では、用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに、又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量を指す。例えば、疾病(例えば腫瘍)予防の有効量とは、疾病(例えば腫瘍)の発生を予防、阻止、又は遅延するのに十分な量を指し、疾病治療の有効量とは、疾病を有している患者の疾病及びその合併症を治癒し又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量を指す。
【0070】
本明細書では、TIGITタンパク質(NCBI GenBank: NP_776160.2)のアミノ酸配列に言及する場合、これにはTIGITタンパク質の全長、又はTIGITの細胞外断片TIGIT ECD又はTIGIT ECDを含む断片を含み、TIGITタンパク質の全長の融合タンパク質又はTIGIT ECDの融合タンパク質、例えばマウス又はヒトIgGのFcタンパク質断片(mFc又はhFc)と融合する断片を更に含む。しかしながら、TIGITタンパク質のアミノ酸配列において、突然変異又は変異(置換、欠失及び/又は添加を含むが、それらに限定されない)は、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然に産生でき又は人工的に導入できることが、当業者には理解される。そのため、本発明において、用語「TIGITタンパク質」は、そのような配列の全てを含み、その天然又は人工変異体を含むものとする。且つ、TIGITタンパク質の配列断片を説明する場合、それはまた、その天然又は人工変異体における対応の配列断片を含む。
【0071】
本明細書では、用語「ハイブリドーマ」と「ハイブリドーマ細胞株」とは相互に交換して使用でき、且つ用語「ハイブリドーマ」及び「ハイブリドーマ細胞株」に言及する場合、ハイブリドーマのサブクローンと子孫細胞を更に含む。
【0072】
本発明において、特別な説明がない場合、前記「第1」(例えば第1製品)及び「第2」(例えば第2製品)は、指し示す上での区分又は表現上の明確化のためのものであり、典型的な順序上の意味を持っていない。
【発明の効果】
【0073】
本発明のモノクローナル抗体は、TIGITに特異的によく結合し、且つ非常に強い親和性を有し、TIGITの免疫細胞抑制作用を低下させ、T細胞活性を促進し、NK細胞疲弊を逆転させ、腫瘍に対する免疫細胞の殺傷作用を増加する。TIGITを抑制する薬物の調製、腫瘍(例えば肝臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、骨腫瘍、胆管癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸部腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、形質細胞腫、子宮内膜癌、前立腺癌、精巣癌)等の疾病を治療又は予防する薬物の調製に用いられ、応用には良好な将来性と市場価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】26B12H1L1、26B12H2L2、26B12H2L3及び26B12H3L2抗体のTIGIT-mFcへの結合活性の検出結果である。
図2】26B12H3L3、26B12H1L4、26B12H4L1及び26B12H4L4抗体のTIGIT-mFcへの結合活性の検出結果である。
図3】26B12H1L1、26B12H2L2、26B12H2L3及び26B12H3L2抗体の、TIGIT-mFcへの結合についてヒトCD155-hFc-Biotinと競合する活性検出結果である。
図4】26B12H3L3、26B12H1L4、26B12H4L1及び26B12H4L4抗体の、TIGIT-mFcへの結合についてヒトCD155-hFc-Biotinと競合する活性検出結果である。
図5】26B12H3L3及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図6】26B12H1L1及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図7】26B12H2L2及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図8】26B12H2L3及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図9】26B12H3L2及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図10】26B12H4L4及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図11】26B12H1L4及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図12】26B12H4L1及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図13】RG6058及びTIGIT-mFcの親和性定数検出結果図である。図の上から下の各対の曲線における抗体添加濃度はそれぞれ5nM、1.67nM、0.557nM、0.185nM、0.06nMである。
図14】FACSによるヒト化抗体26B12H2L2とRG6058の293T-TIGIT細胞膜表面抗原TIGITに対する結合活性の検出である。
図15】FACSによるヒト化抗体26B12H2L2とRG6058の293T-TIGIT細胞膜表面TIGITへの結合についてCD155と競合する活性の検出である。
図16】FACSによるヒト化抗体26B12H2L2とRG6058の293T-TIGIT細胞膜表面TIGITへの結合についてCD112と競合する活性の検出である。
図17】Jurkat-TIGITとHT1080-aCD3scFvの細胞系においてTIGIT抗体を添加した後のIL-2の分泌量の検出である。
図18】hTIGIT-BALB/c遺伝子組み換えマウスCT26腫瘍モデルにおける効果である。
図19】hTIGIT-BALB/c遺伝子組み換えマウスCT26腫瘍モデルにおける体重の変化である。
【0075】
寄託に関する生物材料:
ハイブリドーマ細胞株LT019は、2020年10月23日より中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託されており、寄託番号はCCTCC NO: C2020208であり、寄託先所在地は中国武漢・武漢大学であり、郵便番号は430072である。
【0076】
本発明は、以下のような配列1~26に関する。
1. 26B12VHのアミノ酸配列
EVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCTVTGHSFTSDYAWNWIRQFPGNRLEWMGYISYSDSTNYNPSLKSRISITRDTSKNQFFLQMNSVTTEDTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS (配列番号1)
2. 26B12VHの核酸配列
GAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGACCTGGCCTGGTGAAACCCTCTCAGTCTCTGTCCCTCACCTGCACTGTCACTGGCCACTCATTCACCAGTGATTATGCCTGGAACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAAACAGACTGGAGTGGATGGGCTACATAAGCTACAGTGATAGCACTAACTACAACCCATCTCTCAAAAGTCGAATCTCTATCACTCGAGACACATCCAAGAACCAGTTCTTCTTGCAGATGAATTCTGTGACTACTGAGGACACAGCCACATATTACTGTGCAAGATTGGACTATGGTAACTACGGTGGGGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGGACCTCAGTCACCGTCTCCTCA (配列番号2)
3.HCDR1:GHSFTSDYA (配列番号3)
4.HCDR2:ISYSDST (配列番号4)
5.HCDR3:ARLDYGNYGGAMDY (配列番号5)
【0077】
6. 26B12VLのアミノ酸配列
DIVLTQSHEFMSTSLRDRVSITCKSSQHVSTAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASYRYTGVPDRFTGSGSGTDFTFTISSVKAEDLAVYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK (配列番号6)
7. 26B12VLの核酸配列
GATATTGTGCTAACTCAGTCTCACGAATTCATGTCCACCTCATTACGAGACAGGGTCAGCATCACCTGCAAATCCAGTCAACATGTGAGTACTGCTGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGACAATCTCCTAAACTACTGATTTACTCGGCATCCTACCGGTACACTGGAGTCCCTGATCGCTTCACTGGCAGTGGATCTGGGACGGATTTCACTTTCACCATCAGCAGTGTGAAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGCAACATTATATTACTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATAAAA (配列番号7)
8.LCDR1:QHVSTA (配列番号8)
9.LCDR2:SAS (配列番号9)
10.LCDR3:QQHYITPWT (配列番号10)
【0078】
11. 26B12H1のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWNWIRQFPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRITISRDTSKNQFFLQLNSVTAADTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号11)
12. 26B12H1の核酸配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTTCCCAGACCCTGTCTCTGACCTGTACAGTGTCTGGCCACAGCTTCACATCCGACTACGCCTGGAACTGGATCAGGCAGTTTCCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGATCGGCTACATCTCTTATAGCGACTCCACCAACTATAATCCCTCTCTGAAGAGCCGGATCACCATCAGCAGAGATACATCCAAGAACCAGTTCTTTCTGCAGCTGAACAGCGTGACAGCCGCCGACACCGCCACATACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCTCCGTGACAGTGAGCTCC (配列番号12)
【0079】
13. 26B12H2のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS (配列番号13)
14. 26B12H2の核酸配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGGCAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTCGGGTGACCATCTCTAGAGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGC (配列番号14)
【0080】
15. 26B12H3のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS (配列番号15)
16. 26B12H3の核酸配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGACAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTAGAGTGACCATCTCTGTGGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGC (配列番号16)
【0081】
17. 26B12H4のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWNWIRQFPGKGLEWMGYISYSDSTNYNPSLKSRITISRDTSKNQFFLQLNSVTAADTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS (配列番号17)
18. 26B12H4の核酸配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTTCCCAGACCCTGTCTCTGACCTGTACAGTGTCTGGCCACAGCTTCACATCCGACTACGCCTGGAACTGGATCAGGCAGTTTCCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTACATCTCTTATAGCGACTCCACCAACTATAATCCCTCTCTGAAGAGCCGGATCACCATCAGCAGAGATACATCCAAGAACCAGTTCTTTCTGCAGCTGAACAGCGTGACAGCCGCCGACACCGCCACATACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCTCCGTGACAGTGAGCTCC (配列番号18)
【0082】
19. 26B12L1のアミノ酸配列
DIQMTQSPKSLSTSVGDRVTITCRSSQHVSTAVAWYQQKPGKSPKLLIYSASYRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSVQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK (配列番号19)
20. 26B12L1の核酸配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAAGTCCCTGTCTACAAGCGTGGGCGATCGGGTGACCATCACATGTAGAAGCTCCCAGCACGTGTCTACCGCAGTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTATTCCGCCTCTTACAGGTATTCCGGAGTGCCAGACCGGTTTAGCGGCTCCGGCTCTGGCACCGATTTCACCTTTACAATCTCTAGCGTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACAAAGCTGGAGATCAAG (配列番号20)
【0083】
21. 26B12L2のアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQHVSTALAWYQQKPGKSPKLLIYSASSRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK (配列番号21)
22. 26B12L2の核酸配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAGCTCCCTGTCTGCCAGCGTGGGCGATAGGGTGACCATCACATGTAGATCTAGCCAGCACGTGTCTACAGCCCTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTACTCCGCCTCCTCTAGGTATTCTGGAGTGCCAGACCGGTTTTCCGGCTCTGGCAGCGGCACCGATTTCACCTTTACAATCAGCTCCCTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTATATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG (配列番号22)
【0084】
23. 26B12L3のアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQHVSTALAWYQQKPGKAPKLLIYSASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK (配列番号23)
24. 26B12L3の核酸配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAGCTCCCTGAGCGCCTCCGTGGGCGATAGGGTGACCATCACATGTAGAGCCTCTCAGCACGTGAGCACAGCCCTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTATAGCGCCTCTAGCCTGCAGTCCGGAGTGCCATCTCGGTTCTCTGGCAGCGGCTCCGGAACCGACTTTACCCTGACAATCTCCTCTCTGCAGCCAGAGGATTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG (配列番号24)
【0085】
25. 26B12L4のアミノ酸配列
DIQMTQSPKSMSTSVGDRVTITCRSSQHVSTAVAWYQQKPGKSPKLLIYSASYRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSVQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK (配列番号25)
26. 26B12L4の核酸配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAAGTCCATGTCTACAAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACATGTAGAAGCTCCCAGCACGTGTCTACCGCAGTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTATTCCGCCTCTTACAGGTATTCCGGAGTGCCAGACCGGTTTAGCGGCTCCGGCTCTGGCACCGATTTCACCTTTACAATCTCTAGCGTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACAAAGCTGGAGATCAAG (配列番号26)
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、実施例を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。当業者であれば、以下の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないと理解すべきである。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野の文献に記載された技術又は条件に従って(例えば、Sambrook J, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する)、又は製品の添付文書に従って行われる。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されていない場合、市販されている一般的な製品であってもよい。例えば293TはATCCから購入してもよい。
【0087】
本発明の下記の実施例で使用するBALB/cマウスは、広東省医学実験動物センターより購入した。
【0088】
本発明の下記実施例において、使用する陽性対照抗体RG6058、その配列は、中国公開特許CN108290946Aにおける配列34と配列36を参照できる。
【0089】
本発明の下記実施例において、使用する293T-TIGIT細胞系は、中山康方生物医薬有限公司が構築したものである。293T-TIGIT細胞系は、HEK293T細胞からウイルスによるトランスフェクションによって作製され、ウイルスの調製に使用するのは、3rd Generation Lentiviral Systemsである。例えばA Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M,Trono D,and Naldini L. J Virol. 1998. 72(11):8463-8471. を参照されたい。そのうち、使用するレンチウイルス発現ベクターがpCDH-CMV-PD-1FL-Puroである(そのうち、TIGITは、Genebank ID: NP_776160.2、ベクターpCDH-CMV-Puroは、優宝生物から購入し、製品番号がVT1480である)。
【実施例
【0090】
実施例1:抗TIGIT抗体26B12の調製
1. ハイブリドーマ細胞株LT019の調製
抗TIGIT抗体の調製に使用する抗原はヒトTIGIT-mFc(TIGITはGenbankID: NP_776160.2)である。免疫後のマウスの脾細胞を取ってマウス骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を作製した。ヒトTIGIT-mFcを抗原とし、ハイブリドーマ細胞を間接ELISA法でスクリーニングし、TIGITに特異的に結合する抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞を取得した。スクリーニングして取得したハイブリドーマ細胞に対し、限界希釈法で安定したハイブリドーマ細胞株を取得した。上記ハイブリドーマ細胞株をそれぞれハイブリドーマ細胞株LT019と命名し、それによって分泌されたモノクローナル抗体をそれぞれ26B12と命名した。
【0091】
ハイブリドーマ細胞株LT019は、2020年10月23日より中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託されており、寄託番号はCCTCC NO: C2020208であり、先所在地は中国武漢・武漢大学であり、郵便番号は430072である。
【0092】
2. 抗TIGIT抗体26B12の調製
CD培地(Chemical Defined Medium、1%ペニシリン‐ストレプトマイシンが含まれる)で作製された上記LT019細胞株をCO2 5%、37℃の条件で培養した。7日後、細胞培養上清を回収し、高速遠心と、微多孔膜による真空ろ過を行い、HiTrap protein A HPカラムでの精製を経て、抗体26B12を取得した。
【0093】
実施例2:抗TIGITの抗体26B12の配列解析
培養細胞/細菌総RNA抽出キット(Tiangen、商品番号DP430)の方法によって、実施例1で培養したLT019細胞株からmRNAを抽出した。
Invitrogen SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット添付文書に従ってcDNAを合成し、PCR増幅を行った。
PCR増幅産物に対して直接TAクローニングを行い、具体的な操作は、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)キット添付文書を参照して行った。
TAクローニングの産物に対して直接シークエンシングを行い、シークエンシング結果は以下のとおりであった。
重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号2に示すとおりであり、断片の長さが363bpであった。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号1に示すとおりであり、長さが121個のアミノ酸であった。
そのうち、重鎖HCDR1の配列は、配列番号3に示すとおりであり、HCDR2の配列は、配列番号4に示すとおりであり、HCDR3の配列は、配列番号5に示すとおりであった。
軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号7に示すとおりであり、長さが321bpであった。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号6に示すとおりであり、長さが107個のアミノ酸であった。
そのうち、軽鎖LCDR1の配列は、配列番号8に示すとおりであり、LCDR2の配列は、配列番号9に示すとおりであり、LCDR3の配列は、配列番号10に示すとおりであった。
【0094】
実施例3:抗ヒトTIGITのヒト化抗体の軽鎖と重鎖の設計と調製
1. 抗ヒトTIGITのヒト化抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4の軽鎖と重鎖の設計
ヒトTIGITタンパク質の3次元結晶構造及び実施例2から取得した抗体26B12の配列に基づいて、コンピュータで抗体モデルをシミュレーションし、続いてモデルに基づいて突然変異を設計し、抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4の可変領域配列を取得した(抗体定常領域配列は、NCBIのデータベースに由来し、重鎖定常領域はいずれもIg gamma-1 chain C region、ACCESSION: P01857を採用し、軽鎖定常領域はIg kappa chain C region、ACCESSION: P01834である)。
【0095】
設計された可変領域配列は、以下の表Aに示すとおりである。
【0096】
【表1】
【0097】
以上の8つの抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4の重鎖可変領域の核酸配列の長さは、いずれも363bpであり、それがコードするアミノ酸配列の長さはいずれも121aaであり、軽鎖可変領域の核酸配列の長さはいずれも321bpであり、それがコードするアミノ酸配列の長さはいずれも107aaであった。
且つ、8つの上記抗体は、同じHCDR1~HCDR3とLCDR1~LCDR3を有し、以下のとおりであった。
HCDR1の配列は、配列番号3に示すとおりであり、HCDR2の配列は、配列番号4に示すとおりであり、HCDR3の配列は、配列番号5に示すとおりであった。
LCDR1の配列は、配列番号8に示すとおりであり、LCDR2の配列は、配列番号9に示すとおりであり、LCDR3の配列は、配列番号10に示すとおりであった。
【0098】
2. ヒト化抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4の調製
重鎖定常領域は、いずれもIg gamma-1 chain C region、ACCESSION: P01857を採用し、軽鎖定常領域は、いずれもIg kappa chain C region、ACCESSION: P01834を採用した。
【0099】
26B12H1L1重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H4L1重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H2L2重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H3L2重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H2L3重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H3L3重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H1L4重鎖cDNAと軽鎖のcDNA、26B12H2L4重鎖cDNAと軽鎖のcDNA及び26B12H4L4重鎖cDNAと軽鎖のcDNAを、それぞれpUC57simple(ジェンスクリプト社が提供)ベクターにクローニングし、それぞれpUC57simple-26B12H1、pUC57simple-26B12L1、pUC57simple-26B12H4、pUC57simple-26B12L1、pUC57simple-26B12H2、pUC57simple-26B12L2、pUC57simple-26B12H3、pUC57simple-26B12L2、pUC57simple-26B12H2、pUC57simple-26B12L3、pUC57simple-26B12H3、pUC57simple-26B12L3、pUC57simple-26B12H1、pUC57simple-26B12L4、pUC57simple-26B12H2、pUC57simple-26B12L4、及びpUC57simple-26B12H4、pUC57simple-26B12L4を取得した。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed」で紹介される標準的な技術を参照し、合成の重鎖、軽鎖の全長遺伝子をEcoRI及びHindIIIで消化し、制限酵素(EcoRI&HindIII)の消化で発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、発現プラスミドpcDNA3.1-26B12H1、pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H4、pcDNA3.1-126B12H2、pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H3、pcDNA3.1-26B12L3及びpcDNA3.1-26B12L4を取得し、更に組換え発現プラスミドの重鎖/軽鎖遺伝子に対してシークエンシング解析を行った。続いて、対応する軽、重鎖が含まれる組換えプラスミドに対して遺伝子組合せ(pcDNA3.1-26B12H1/pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H4/pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H2/pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H3/pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H2/pcDNA3.1-26B12L3、pcDNA3.1-26B12H3/pcDNA3.1-26B12L3、pcDNA3.1-26B12H1/pcDNA3.1-26B12L4及びpcDNA3.1-26B12H4/pcDNA3.1-26B12L4)を設計し、それぞれ293F細胞にコトランスフェクションした後、培養液を回収して精製した。シークエンシングの正確さを検証した後、エンドトキシンフリーグレードの発現プラスミドを調製してプラスミドをHEK293細胞に一過性トランスフェクションすることで抗体を発現し、7日培養後、細胞培養液を回収し、Protein Aカラムを採用して親和性精製を行うことにより、ヒト化抗体を取得した。
【0100】
実施例4:ELISA法による抗原TIGIT-mFcに対する抗体の結合活性の測定
実験ステップ:ヤギ抗マウスIgG Fc、2μg/mLをマイクロプレートに被覆した後、4℃で16時間インキュベートした。インキュベート終了後、PBSTでヤギ抗マウスIgG Fcが被覆されたマイクロプレートを1回洗浄し、その後、1%BSAのPBST溶液をマイクロプレートのブロッキング溶液とし、2時間ブロッキングした。マイクロプレートのブロッキングが終了した後、PBSTでプレートを3回洗浄した。そして抗原ヒトTIGIT-mFc 1μg/mLを添加し、37℃の条件で放置して30分間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄した。マイクロプレートの穴にPBST溶液で勾配希釈した抗体を添加し、抗体希釈勾配の詳細は表1と表2に示すとおりである。被験抗体を添加したマイクロプレートを37℃の条件で30分間インキュベートし、インキュベート完了後、PBSTでプレートを3回洗浄した。プレートを洗浄した後、1:5000の比率で希釈されたHRP標識ヤギ抗ヒトIgG Fc二次抗体作業溶液を添加し、37℃の条件で放置し、30分間インキュベートした。インキュベート完了後、PBSTでプレートを4回洗浄してから、TMB(Neogen、308177)を添加して遮光して4min発色し、停止液を添加して発色反応を終了させた。すぐにマイクロプレートをマイクロプレートリーダーに置き、450nmの光の波長を選択してマイクロプレートの各穴のOD数値を読み取った。SoftMax Pro 6.2.1ソフトウェアでデータの解析処理を行った。
【0101】
抗体及び抗原TIGIT-mFcの結合の結果は、図1図2に示すとおりである。各剤量のOD値は、表1と表2に示すとおりである。抗体濃度を横軸、吸光度値を縦軸としてカーブフィッティングを行い、抗体及び抗原の結合EC50を計算し、結果は、表1、表2及び図1図2に示すとおりである。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
結果は、抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4はいずれもヒトTIGIT-mFcに効果的に結合でき、結合効率が用量依存的であり、結合活性は、同じ標的の陽性対照薬RG6058に相当することを示しており、26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4がTIGITに効果的に結合する機能を有することが分かった。
【0105】
実施例5: 競合ELISA法によるTIGIT-mFcへの結合についてCD155-hFc-Biotinと競合する抗体の活性のそれぞれの測定
実験ステップ:TIGIT-mFcを2μg/mLマイクロプレートに被覆した後、4℃で一晩中インキュベートした。インキュベート終了後、PBSTで抗原が被覆されたマイクロプレートを1回洗浄した後、1%BSAのPBST溶液をマイクロプレートブロッキング溶液とし、2時間ブロッキングした。マイクロプレートのブロッキングが終了した後、PBSTでプレートを3回洗浄した。マイクロプレートにPBST溶液で勾配希釈した抗体を添加し、抗体濃度の詳細は表3と表4に示すとおりである。室温で10分間インキュベートした後、等体積の2μg/mL(最終濃度が1μg/mLである)のCD155-hFc-Biotinを添加し、抗体と均一に混合した後、マイクロプレートを37℃の条件で放置し、30分間インキュベートし、インキュベート完了後、PBSTでプレートを3回洗浄した。プレートを洗浄した後、1:4000の比率で希釈されたSA-HRP作業液を添加し、37℃の条件で放置して30分間インキュベートした。インキュベート完了後、PBSTでプレートを4回洗浄してから、TMB(Neogen、308177)を添加して遮光して5min発色し、停止液を添加して発色反応を終了させた。すぐにマイクロプレートをマイクロプレートリーダーに置き、450nmの光の波長を選択してマイクロプレートの各穴のOD数値を読み取った。SoftMax Pro 6.2.1ソフトウェアでデータの解析処理を行った。
【0106】
TIGIT-mFcへの結合についてCD155-hFc-Biotinと競合する抗体の活性結果は表3と表4に示すとおりである。抗体濃度を横軸とし、吸光度の値を縦軸としてカーブフィッティングし、TIGIT-mFcへの結合についてCD155-hFc-Biotinと競合する抗体のEC50を計算し、結果は、以下の表3と表4、図3図4に示すとおりである。
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
結果から、同じ実験条件のもと、26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4は、抗原TIGIT-mFcへの結合についてCD155-hFc-Biotinとそれぞれ競合でき、活性は同じ標的の陽性対照薬RG6058と相当することが分かった。これは26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4及び26B12H4L4はTIGIT-mFcへの結合についてCD155-hFc-Biotinと競合する有効的な機能を有することを示唆する。
【0110】
実施例6:Fortebio分子間相互作用測定装置によるヒト化抗体26B12H3L3、26B12H1L1、26B12H2L2、26B12H2L3、26B12H3L2、26B12H4L4、26B12H1L4、26B12H4L1及びRG6058の抗原TIGIT-mFcへの結合の動態パラメータの測定
サンプル希釈緩衝液はPBS、0.02%Tween-20、0.1%BSA、pH7.4である。TIGIT-mFcを3μg/mLの濃度でAMCセンサに固定し、時間が50sであり、センサを緩衝液で60s平衡化し、センサに固定されたTIGIT-mFcは抗体と結合し、濃度が0.06-5nM(3倍希釈)であり、時間が120sであり、タンパク質は緩衝液に解離し、時間が300sである。センサは、10mMのグリシンを採用し、pH=1.7の溶液で再生した。検出温度が37度であり、検出頻度が0.3Hzであり、試料板振動速度が1000rpmである。データを1:1モデルでフィッティングして解析し、親和性定数を取得した。
【0111】
ヒト化抗体とRG6058(対照抗体として)のTIGITへの親和性定数測定結果は、表5に示すとおりであり、検出結果は、図5図13に示すとおりである。
【0112】
【表6】
【0113】
結果は、ヒト化抗体26B12H3L3、26B12H1L1、26B12H2L2、26B12H2L3、26B12H3L2、26B12H4L4、26B12H1L4、26B12H4L1及びRG6058のTIGIT-mFcへの親和性定数は、順に9.64E-11M、1.64E-11M、8.40E-12M、4.85E-11M、5.40E-11M、3.69E-11M、4.63E-11M、8.57E-12 M及び3.16E-11Mであることを示している。
【0114】
結果から、TIGIT-mFcへの結合のTIGIT各抗体の親和性の強さは、強いものから弱いものへの順に、26B12H2L2、26B12H4L1、26B12H1L1、RG6058、26B12H4L4、26B12H1L4、26B12H2L3、26B12H3L2、26B12H3L3であることが分かり、このうち、ヒト化抗体26B12H2L2、26B12H4L1、26B12H1L1の親和性は、陽性対照薬RG6058より強く、26B12H4L4の親和性は陽性対照薬RG6058の親和性に相当する。
【0115】
実施例7 :FACSによるヒト化抗体26B12H2L2とRG6058の293T-TIGIT細胞膜表面抗原TIGITに対する結合活性の検出
実験の方法:
TIGITベクターplenti6.3/V5-TIGITFL-BSD(ベクターpLenti6.3はInvitrogen公司から購入)は、293T細胞にトランスフェクションし、スクリーニングによりTIGITを安定的に発現する細胞株293T-TIGIT細胞を取得した。
【0116】
293T-TIGIT細胞(DMEM+10%FBS)を回収し、5min遠心後、上清を取り除き、再懸濁し、数量及び生存率(P7、95.79%)を算出し、細胞を希釈し、透明のV底96ウェルプレートに各穴30wの細胞を添加し、各チューブに1%PBSAを200μL添加し、5min遠心し、上清を取り除いた。実験設計に基づき、各穴に100μLの抗体を対応して添加し(最終濃度が300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.41nM、0.041nM、0.0041nM)、またブランク対照及びアイソタイプ対照を設計し、氷の上で60minインキュベートした。各チューブに1%PBSAを200μL添加し、5min遠心し、上清を取り除き、2回洗浄した。各サンプルにFITCヤギ抗ヒトIgG抗体(PBSAで500倍希釈)を添加し、氷の上で遮光して40minインキュベートし、各チューブに200μLのPBSAを添加し、5min遠心し、上清を取り除いた。PBSAを200μL添加して細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで各濃度での細胞の平均蛍光強度を検出した。
【0117】
【表7】
【0118】
実験結果は、表6と図14に示すように、細胞膜表面抗原TIGITに結合する陽性対照抗体RG6058のEC50が1.257nMで、細胞膜表面抗原TIGIT-に結合するヒト化抗体26B12H2L2のEC50が0.917nMであった。
【0119】
実験結果から、ヒト化抗体26B12H2L2の細胞膜表面抗原TIGITへの結合能力は、陽性対照抗体RG6058より強いことが分かる。
【0120】
実施例8:FACSによるヒト化抗体26B12H2L2とRG6058の293T-TIGIT細胞膜表面抗原TIGITへの結合についてCD155又はCD112と競合する活性の検出
実験方法:293T-TIGIT細胞を回収し、5min遠心後、上清を取り除き、再懸濁し、数量及び生存率(94.95%)を算出し、細胞を希釈し、透明のV底96ウェルプレートに各穴30wの細胞を添加し、各チューブに1%PBSAを200μL添加し、5min遠心し、上清を取り除いた。実験設計に基づき、各穴に100μLの抗体を対応して添加し(最終濃度が300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、0.0123nM)、またブランク対照及びアイソタイプ対照を設計し、氷の上で30minインキュベートした。各サンプルにCD155(最終濃度が10nM)又はCD112(最終濃度が30nM)を添加し、氷の上で遮光して60minインキュベートし、そして各チューブに1%PBSAを200μL添加し、5min遠心し、上清を取り除き、2回洗浄した。各サンプルにAPCヤギ抗マウスIgG(最小限の交差反応性minimal x-reactivity)抗体(PBSAで300倍希釈)を添加し、氷の上で遮光して40minインキュベートし、各チューブにPBSAを200μL添加し、5min遠心し、上清を取り除いた。PBSAを200μL添加して細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで各濃度での細胞の平均蛍光強度を検出した。
【0121】
実験結果は、それぞれ表7と図15、及び表8と図16に示すとおりである。
【0122】
【表8】
【0123】
【表9】
【0124】
結果は、TIGITへの結合についてCD155と競合する陽性対照抗体RG6058のEC50が1.212nMで、TIGITへの結合についてCD155と競合するヒト化抗体26B12H2L2のEC50が1.049nMであ、TIGITへの結合についてCD112と競合する陽性対照抗体RG6058のEC50が1.224nMで、TIGITへの結合についてCD112と競合するヒト化抗体26B12H2L2のEC50が1.140nMであることを示している。
結果から、細胞膜表面抗原TIGITへの結合についてCD155又はCD112と競合するヒト化抗体26B12H2L2の能力は、陽性対照抗体RG6058より強いことが分かった。
【0125】
実施例9:Jurkat-TIGITとHT1080-aCD3scFv細胞系にTIGIT抗体を添加する混合リンパ反応
実験方法:
TIGITベクターplenti6.3/V5-TIGITFL-BSD(ベクターpLenti6.3はInvitrogen公司から購入)は、Jurkat細胞にトランスフェクションし、スクリーニングしてTIGITを安定的に発現する細胞株Jurkat-TIGIT細胞を取得し、anti-CD3抗体ベクターpCDH-aCD3scFv-puro(ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-Puroは優宝生物から購入)は、HT-1080細胞にトランスフェクションし、スクリーニングして細胞膜でanti-CD3scFvを安定的に発現する細胞株HT1080-aCD3scFv細胞を取得した。
【0126】
対数増殖期のJurkat-TIGITとHT1080-aCD3scFv細胞を回収し、96ウェルプレートに、Jurkat-TIGITは各穴5Wの細胞を添加し、HT1080-aCD3scFVは各穴1Wの細胞を添加した。希釈された抗体(最終濃度が10nM、50nM、250nM)を添加し、そして抗ヒトCD28抗体(3μg/mL)を添加し、インキュベーターに置いて48h培養し、培養液上清を回収し、IL-2 ELISA検出キットでIL-2の含有量を検出した。
【0127】
実験結果は、図17に示すとおりである。
結果は、ヒト化抗体26B12H2L2と陽性対照抗体RG6058はいずれも系中のIL-2の分泌を促進でき、各濃度(10nM、50nM、250nM)におけるヒト化抗体26B12H2L2のIL-2分泌促進レベルは、RG6058に相当することを示している。
結果から、ヒト化抗体26B12H2L2の細胞に対するIL-2分泌誘導能が、陽性対照抗体RG6058の能力に相当することが分かる。
【0128】
実施例10:hTigit-BALB/c遺伝子組み換えマウスにCT26マウス移植腫瘍を接種する26B12H2L2の治療作用
hTigit-BALB/c遺伝子組み換えマウス(マウスは江蘇集萃薬康生物科技有限公司から購入し、購入された遺伝子組み換えマウスの正常なmouse TIGIT遺伝子が、human TIGIT遺伝子に置き換えられた)の背部に50万/匹のCT26細胞(マウス結腸癌細胞株、ATCCから購入)を接種することを採用し、実験の具体的なステップとしては、5000万/mLのCT26細胞を1匹当たり100μLをマウスに接種することにより、マウス腫瘍モデルを確立した。実験マウスは、各群8匹であり、以下のように群分けした。
【0129】
アイソタイプ対照群G1:投与剤量が20mg/kg、投与方式が腹腔内注射(i.p.)、週に2回。
実験群G2:投与剤量が4mg/kg、投与方式が腹腔内注射(i.p.)、週に2回。
実験群G3:投与剤量が20mg/kg、投与方式が腹腔内注射(i.p.)、週に2回。
陽性対照群G4:投与剤量が20mg/kg、投与方式が腹腔内注射(i.p.)、週に2回。
【0130】
具体的な方案は、表9に示すとおりである。
【0131】
【表10】
【0132】
実験結果は、図18に示すとおりである。
結果は、アイソタイプ対照と比べ26B12H2L2とRG6058ではhTIGIT-BALB/c遺伝子組み換えマウスCT26腫瘍モデルにおいて腫瘍体積が有意に減少したことを示している。
結果から、26B12H2L2は、hTIGIT-BALB/c遺伝子組み換えマウスCT26腫瘍モデルで強い薬効を有し、効果がRG6058に相当することが分かり、26B12H2L2は、腫瘍、特に結腸癌の治療及び/又は予防に用いられる可能性がある。
同時に、図19に示すように、26B12H2L2は、CT26腫瘍モデルであるhTIGIT-BALB/c遺伝子組み換えマウスの体重に影響せず、26B12H2L2抗体がマウスに対して毒性反応や副作用を引き起こさないことが分かる。
【0133】
本発明の具体的な実施形態は詳細に説明されているが、当業者であれば理解できるとおり、開示されている全ての教示によれば、これらの詳細に対する各種の修正及び置換が可能であり、これらの変更はすべて、本発明の保護の範囲に含まれる。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲及びその何れかの均等物によって定義される。
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図11
図12
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図14
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図16
図17
図18
図19
【配列表】
2023546508000001.app
【国際調査報告】