(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】植物材料から天然ゴムを得る方法
(51)【国際特許分類】
B02C 17/00 20060101AFI20231026BHJP
B02C 17/20 20060101ALI20231026BHJP
B02C 17/22 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B02C17/00 Z
B02C17/20
B02C17/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525095
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2021080710
(87)【国際公開番号】W WO2022101091
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020214356.0
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】503306168
【氏名又は名称】フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベーム・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク・カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンツァク・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツ・カルステン
(72)【発明者】
【氏名】プリューファー・ディルク
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ・グロノヴァー・クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF02
4D063FF28
4D063FF35
4D063FF37
4D063GA01
4D063GD04
(57)【要約】
本発明は、植物材料から天然ゴムを得る方法であって、少なくとも、粉砕要素を有する少なくとも1つのボールミルによって植物材料を粉砕する工程を含む方法に関する。本発明は、前記方法によって得られる天然ゴム及び植物材料から天然ゴムを得る過程で植物材料を粉砕するための、粉砕要素を有する少なくとも1つのボールミルの使用にも関する。この方法では、ボールミルは、非金属ライニングを有し、及び/又は粉砕要素は、少なくとも1つの非金属表面を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料から天然ゴムを得る方法であって、少なくとも、前記植物材料を、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルで粉砕する工程を含む方法において、前記ボールミルは、非金属ライニングを有し、及び/又は前記粉砕媒体は、少なくとも非金属表面を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記非金属ライニング及び/又は前記粉砕媒体の前記非金属表面は、重金属及び/又は遷移金属を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項3】
前記非金属ライニング及び/又は前記粉砕媒体の前記非金属表面は、鉄を含まないことを特徴とする、請求項2に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項4】
前記非金属ライニング及び/又は前記粉砕媒体の前記非金属表面は、セラミック、ガラス、鉱物、磁器及び/又は高分子材料からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項5】
前記非金属ライニング及び/又は前記粉砕媒体の前記非金属表面は、セラミック材料、好ましくは酸化アルミニウムセラミックからなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項6】
前記非金属ライニング及び前記粉砕媒体の前記非金属表面は、同じ材料からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項7】
前記ボールミルは、ドラムミル若しくはチューブミルであるか、又は前記複数のボールミルは、複数のドラムミル及び/若しくは複数のチューブミルであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項8】
前記植物材料は、液体、好ましくは水の存在下において前記ボールミル内で粉砕されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項9】
前記植物材料は、前記ボールミル内での粉砕前に浄化、好ましくは水で洗浄されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項10】
前記植物材料は、前記ボールミル内での粉砕前に予備粉砕を受けていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項11】
前記植物材料は、タンポポ属(タンポポ属(Taraxacum))の植物に由来することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項12】
前記植物材料は、ロシアタンポポ種(ロシアタンポポ(Taraxacum kok-saghyz))の植物又はその子孫(交配種)に由来することを特徴とする、請求項11に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項13】
前記植物材料は、根及び胚軸を本質的に含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の植物材料から天然ゴムを得る方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られる天然ゴム。
【請求項15】
植物材料から天然ゴムを得るときに植物材料を粉砕するための、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルの使用において、前記ボールミルは、非金属ライニングを有し、及び/又は前記粉砕媒体は、少なくとも非金属表面を有することを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物材料から天然ゴムを得る方法であって、少なくとも、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルで植物材料を粉砕する工程を含む方法に関する。本発明は、この方法によって得られる天然ゴム及び植物材料から天然ゴムを得るときに植物材料を粉砕するための、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の日常生活の多くの消費財は、ゴム製である。ここで、可能な応力及び品質に関して、天然ゴムは、合成により製造されたゴムよりも優れていることが多い。長い間、天然ゴムは、主にパラゴムノキ(Hevea)属のゴムの木、特にアジアで主に栽培されている植物種であるパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)から得られていた。
【0003】
近年、ゴムを得るための適切な代替物の探索が行われており、中央ヨーロッパの気候条件下でも生育する植物に特に関心が持たれている。天然ゴムを得るための公知の適切な代替物は、タンポポ、特にロシアタンポポ(ロシアタンポポ(Taraxacum kok-saghyz))である。後者は、植物あたり10%(w/w)を超える乾物としてゴムを供給することができ、得られる天然ゴムは、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)から得られるものと非常に類似している。
【0004】
タンポポ及び他の植物から天然ゴムを得る方法並びにタイヤなどのゴム製品への天然ゴムの使用は、既に知られている。
【0005】
国際公開第2018036825A1号パンフレットは、最初に述べたタイプの方法を記載しており、そこでは、タンポポ植物の一部が粉砕及び/又は圧搾されることでパルプが形成され、パルプは、イヌリンが多く、ゴムが少ない相と、ゴムが多く、イヌリンが少ない相とに分離される。粉砕及び圧搾は、通常、ビーズミル又はボールミルを用いて行うことができる。
【0006】
米国特許第814,407号明細書も、ゴムを含有する植物部分の処理のためのボールミルの使用を既に記載している。
【0007】
摩耗板を備えた鋼板製のミリングチャンバー内で粉砕媒体として鋳鉄ボール又は鋼製ボールを使用するボールミルが一般的に使用される。
【0008】
そのようなボールミルによって天然ゴムを得ることができるものの、天然ゴムは、必ずしも望まれる品質及び高い老化安定性を有するとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物材料から天然ゴムを得る方法であって、少なくとも、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルで植物材料を粉砕する工程を含み、高品質且つ耐老化性が改善された天然ゴムを得ることを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、非金属ライニング及び/又は少なくとも非金属表面を有する粉砕媒体を有するボールミルにより、本発明に従って達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
驚くべきことに、粉砕される植物材料と接触することができる金属材料がボールミル内に存在しないと、改善された品質の天然ゴムを得ることができ、従って改良された再現性のある製品を得ることもできる。天然ゴムは、特に老化挙動の改善(ポリマー劣化の低減)によっても特徴付けられる。これは、金属材料を使用しない場合、ゴムの安定性及び品質を損なう重金属イオンがゴム内に入り込むことができないためと考えられる。
【0012】
好ましくは、非金属ライニング及び/又は粉砕媒体の非金属表面は、重金属及び/又は遷移金属を含まず、好ましくはコバルト、鉄、銅、マンガン及びニッケルを含まず、特に好ましくは鉄を含まない。鉄は、耐老化性を損なうことに特に関連していることが分かっており、非金属のライニング及び表面であっても、例えば可溶性塩の形態で存在すべきではない。
【0013】
本発明の好ましい発展形態によれば、非金属ライニング及び/又は粉砕媒体の非金属表面は、セラミック、ガラス、鉱物、磁器及び/又は高分子材料からなる。
【0014】
非金属ライニング及び/又は粉砕媒体の非金属表面がセラミック材料からなる場合、ポリマー劣化の低減、従って耐老化性の点で特に優れた結果を達成することができる。セラミック材料は、例えば、ケイ酸塩系の原料、酸化物系の原料又は非酸化物系の原料に基づく。好ましくは、非金属ライニング及び/又は粉砕媒体の非金属表面は、特に90%~96%の酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウムセラミックからなる。例えば、コランダム(Al2O3)を使用することができる。
【0015】
ボールミルを設計する場合、ライニング及び粉砕媒体の表面は、可能な限り耐摩耗性である必要がある様々な材料から製造することができる。粉砕媒体は、少なくとも非金属の表面を有する必要がある。ただし、これらは、完全に非金属材料からなることもできる。
【0016】
相互の摩耗を最小限に抑えるために、非金属ライニング及び粉砕媒体の非金属表面が同じ材料、例えばコランダムからなる場合に有利であることが見出された。
【0017】
本発明による方法では、少なくとも1つのボールミルが使用される。複数のボールミルを使用することも可能であり、好ましくは異なる寸法、粉砕媒体及びライニングを有するものが順に使用される。本発明の好ましい発展形態によれば、ボールミルは、ドラムミル若しくはチューブミルであるか、又は複数のボールミルは、複数のドラムミル及び/若しくは複数のチューブミルである。これらのミルのタイプにより、植物材料を粉砕するための連続プロセスが可能になる。
【0018】
植物材料は、液体、好ましくは水の存在下においてボールミル内で粉砕される。このようにして、植物材料から天然ゴムを容易に得る/抽出することができる。
【0019】
植物材料の容易な処理を可能にし、可能な限り高い純度の天然ゴムを得るために、植物材料がボールミル内での粉砕前に浄化、好ましくは水で洗浄されている場合に有利であることが見出された。これにより、砂、ローム及び粘土などの表面付着物が除去される。浄化は、植物材料を浄化するために慣用されている通常の装置、プロセス及び浄化物質で行うことができる。
【0020】
ボールミル内の植物材料の滞留時間を短縮するために、植物材料がボールミル内での粉砕前に予備粉砕を受けている場合に有用であることが見出された。予備粉砕は、慣用の裁断又は破砕プロセスにより、例えば裁断機、ハンマーミルなどによって行うことができる。
【0021】
本発明による方法は、天然ゴムを得るのに適した全ての植物に適用することができる。特に好ましくは、植物材料は、タンポポ属(タンポポ属(Taraxacum))の植物に由来する。この属の植物材料は、この方法によって特によく粉砕することができる。
【0022】
植物材料から特に高い割合の天然ゴムを得るために、植物材料は、ロシアタンポポ種(ロシアタンポポ(Taraxacum kok-saghyz))の植物又はその子孫(交配種)に由来する。
【0023】
タンポポ属の植物が使用される場合、植物全体をこの方法において粉砕することができる。しかしながら、タンポポの根及び胚軸が天然ゴムを最も多い割合で含むことから、好ましくは、植物材料は、これらの植物部分を本質的に含む。
【0024】
本発明は、この方法によって得られる天然ゴムも含む。重金属イオンの含有量が少ないため、この天然ゴムは、優れた品質及び改善された耐老化性によって特徴付けられる。この天然ゴムは、様々なゴム製品、好ましくはタイヤの製造に使用することができる。車両用タイヤなど、この天然ゴムから製造された製品は、優れた機械的及び動的特性並びに耐老化安定性を特徴とする。この目的のために、本方法によって得られた天然ゴムは、従来のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)から得られる天然ゴムと同様に、且つ充填剤、老化安定剤、可塑剤、硫黄及び加硫促進剤などの従来の混合物成分と一緒に混合及び加硫によって処理されることで加硫物を形成することができる。
【0025】
本発明は、植物材料から天然ゴムを得るときに植物材料を粉砕するための、粉砕媒体を含む少なくとも1つのボールミルの使用であって、ボールミルは、非金属ライニングを有し、及び/又は粉砕媒体は、少なくとも非金属表面を有する、使用にさらに関する。
【0026】
ここで、本発明を比較例及び実施例により詳細に説明する。表1は、使用したライニング及び粉砕媒体並びに得られた分析結果を示す。
【実施例】
【0027】
水で浄化した新鮮なロシアタンポポの根1~4kgを5~10倍量の水で20~60分間茹で、沸騰水から分離し、3~10倍量の真水と共にボールミル(KM30、公称容積30L、30kgのミリングボール(ボール径1.5~6cm))に移した。次いで、ボール/根/水の混合物を0.5~0.75*n(臨界)の速度で1~4時間粉砕した。正確な粉砕パラメータは、根の品質(サイズなど)に依存し、最適な粉砕結果は、直径約0.5~5cmのゴムフレークの形成により且つ均質な植物パルプにおいて特徴付けられる。同時に、ミルのライニング及び粉砕媒体を表1に従って変更した。得られた懸濁液は、例えば、孔径5mmの穴の開いた板を用いて濾過した(他のフィルタースクリーン、又は装置、又はグリッドも可能であり、適しており、分離のために浮遊選別も使用可能である)。フィルターケーキは、粉砕プロセスで形成されたゴムフレークを含む。ゴムフレークは、水で複数回洗浄し、その後、室温で乾燥させた。ミリングボールは、ミルを空にするときにボールトラップによって分離することができた。
【0028】
このようにして得た天然ゴムを以下のパラメータについて分析した:
- XRF(蛍光X線分光法)による550℃の灰分(100~150mg)によるゴムの鉄含有量(Fe含有量)は、SpectroのPROLENEフィルム付きのXRF SpectroMicroサンプルカップ(内径6.1mm)内における、SPECTRO XEPOS装置による直接的なものである。
- DIN 55672-1に準拠して溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による、ポリスチレン標準に対する天然ゴムの数平均モル質量Mn及び重量平均モル質量Mw。
【0029】
【0030】
表1は、非金属材料をライニング及び/又は粉砕媒体として使用すると、ポリマーの劣化、従って天然ゴムの老化を明確に低減できることを示す。ライニング及び粉砕媒体がコランダムからなる場合に特に有利である。
【国際調査報告】