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特表2023-546520音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム、及びその設計方法
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  • 特表-音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム、及びその設計方法 図1
  • 特表-音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム、及びその設計方法 図2
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  • 特表-音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム、及びその設計方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム、及びその設計方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20231026BHJP
   B63H 21/30 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/02 Z
B63H21/30 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528233
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2021130025
(87)【国際公開番号】W WO2022111292
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011354374.5
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】温 華兵
(72)【発明者】
【氏名】康 欽▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 海嬰
(72)【発明者】
【氏名】馬 正剛
(72)【発明者】
【氏名】李 玉
(72)【発明者】
【氏名】劉 尊程
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA04
3J048AC03
3J048AD20
3J048BA25
3J048BC08
3J048BD08
3J048DA01
3J048EA07
3J048EA37
(57)【要約】
本発明は、音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームを開示し、上面板と少なくとも2枚の垂直ブラケットとから構成される少なくとも1つのドア枠状枠体を含み、枠体は後側にウェブが接続され、下端に防振体が接続され、上面板の両端に1次元音響ブラックホールくさび構造一と1次元音響ブラックホールくさび構造二がそれぞれ前から後へ設けられ、ブラケットは、上部には少なくとも2つの小径2次元音響ブラックホール1が設けられ、下部には少なくとも2つの大径2次元音響ブラックホール2が設けられ、ウェブには少なくとも2つの2次元音響ブラックホールアレイが設けられ、ウェブの両端のそれぞれに1次元音響ブラックホールくさび構造三が設けられ、1次元音響ブラックホールくさび構造一、1次元音響ブラックホールくさび構造二、2次元音響ブラックホール構造一、2次元音響ブラックホール構造二、1次元音響ブラックホールくさび構造三は、それぞれ、2次元音響ブラックホールアレイに対応する側の面に減衰層が覆設されている。本発明は、動力機械を支持しながら動力機械により生じる振動エネルギーを散逸し、複合型制振の目的を達成させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フレーム本体を含む音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームであって、
前記支持フレーム本体は、上面板(1)と少なくとも2枚の垂直ブラケット(2)とから構成される少なくとも1つのドア枠状枠体であり、前記枠体は、後側にウェブ(3)が接続され、下端に防振体(4)が接続され、前記上面板(1)の両端に1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)と1次元音響ブラックホールくさび構造二(1-2)がそれぞれ前から後へ設けられ、前記ブラケット(2)は、上部には少なくとも2つの小径の2次元音響ブラックホール一(2-1)が設けられ、下部には少なくとも2つの大径の2次元音響ブラックホール2(2-2)が設けられ、前記ウェブ(3)には少なくとも2つの2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)が設けられ、前記ウェブ(3)の両端のそれぞれに1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)が設けられ、前記1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)、1次元音響ブラックホールくさび構造二(1-2)、2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)、1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)は、それぞれ、2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)に対応する側の面に減衰層(5)が覆設されている、ことを特徴とする複合型制振支持フレーム。
【請求項2】
前記上面板(1)及びウェブ(3)はいずれも矩形鋼板であり、前記ブラケット(2)は直角台形鋼板であり、前記防振体(4)は断面が矩形の中空又は中実構造用鋼である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項3】
前記音響ブラックホールの断面は
【数22】
の減衰則に合致し、ここで、hは0.2~1mmであり、
前記1次元音響ブラックホールは断面が法線方向に引き伸ばされたくさび構造であり、2次元音響ブラックホールは断面がy軸の周りに回転してなる窪み構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項4】
前記上面板(1)の両端の縁部にサイズの異なる2組の1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)と1次元音響ブラックホールくさび構造二(1-2)が分布しており、これらの幅がいずれも上面板(1)の幅の半分である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項5】
前記2次元音響ブラックホールアレイ3(3-2)のアレイ形態は矩形アレイ又は円形アレイであり、各アレイの2次元音響ブラックホールの数が4~6個である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項6】
前記2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)及び2次元音響ブラックホールアレイ3(3-2)の縁部から板の縁部までの距離、隣接する2つの音響ブラックホールの縁部の距離が0.3rよりも大きく、ここで、rは音響ブラックホールの特徴サイズである、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項7】
前記減衰層(5)は、厚さが音響ブラックホールの局所的な厚さhの4~10倍であり、粘弾性減衰材料である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項8】
前記接続は溶接である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームの設計方法であって、
振動試験システムを用いて動力機械の振動線スペクトルを測定し、制振開始周波数fを決定するステップS1と、
冪乗則m(mは2.0~2.5である)を決定し、mが大きい場合、振動が境界に伝わる際の反射係数を著しく低下させることができるが、mが大きいほど製造が困難であり、低周波では平滑性条件を満たさない可能性があるステップS2と、
音響ブラックホールの特徴サイズr(1次元音響ブラックホールの特徴サイズrは長さ、2次元音響ブラックホールの特徴サイズrは半径)を計算するステップS3であって、具体的な内容及びステップとしては、
S3-1:音響ブラックホール集合効果の制振開始周波数から変換して
【数23】
を取得して決定し、ここで、hは平板の厚さ、ρは材料の密度、Eは材料のヤング率、vは材料のポアソン比であり、1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)、1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)、2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)について、制振開始周波数fを式に代入して音響ブラックホールの特徴サイズrを算出することができ、
S3-2:上面板(1)及びブラケット(2)の音響ブラックホールに対して、大きい方の組の1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-2)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)のパラメータを
【数24】
により決定して、半径
【数25】
を決定するステップS3と、
音響ブラックホールの断面関数を計算するステップS4であって、具体的な内容及びステップとしては、
S4-1:1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)、1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)、2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)の断面関数h(x)を計算し、εは、板厚hと音響ブラックホールの特徴サイズrにより決定され、
【数26】
であり、
S4-2:1次元音響ブラックホールくさび構造二(1-2)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)の断面関数を計算し、
【数27】
であるステップS4と、
反射係数を曲げ波の出力量と入力量との比として計算し、
【数28】
ここで、x、xは音響ブラックホールの断面の開始点と終了点であり、E、E、ρ、ρ、η、ηはそれぞれ板と減衰層のヤング率、密度、損失係数であり、δは減衰層の厚さであり、
【数29】
は波数であり、ここで、cは波の板における波速であり、fは波の周波数であり、
減衰が貼り付けられていない場合、音響ブラックホールの非常に小さい局所的な厚さも反射係数を大きくし、音響ブラックホールの波集合効果を低下させ、
1次元音響ブラックホールの反射係数式を用いて各音響ブラックホール構造の反射係数を迅速に評価し、
減衰層が覆設されていない場合、音響ブラックホール及び支持構造の減衰損失係数は比較的小さく、また音響ブラックホールの局部的な厚さが不可避的に存在するため、支持構造の制振効果は明らかではなく、音響ブラックホールの中心領域に減衰層を敷設することで、音響ブラックホール構造の反射係数を効果的に抑制することができ、
減衰層の半径又は長さが音響ブラックホールの特徴サイズrの0.5倍よりも大きくなければならず、振動エネルギーの殆どは音響ブラックホールの中心領域で消費されてしまうので、減衰層は可能な限りすべての領域をカバーするように音響ブラックホールの中心領域に貼り付けられなければならず、
より厚い減衰層δは音響ブラックホールの制振効果を高めることができ、音響ブラックホールの制振効果と経済性を両立させるために、一般的に制振材料の損失係数を0.5より大きくし、減衰層の厚さを局所的な厚さhの4~10倍とし、制振周波数帯域内の反射係数を0.5以内に制御するステップS5と、
平滑性条件:
【数30】
を検証し、
平滑性条件及び反射係数の制御要件を満たさない場合、条件の要件を満たすまでS2及びそれ以降のステップを繰り返すステップS6と、を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響ブラックホールによる複合型制振支持構造、及びその設計方法に関し、具体的には、弾性波の伝達を抑制することができる制振支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には多くの動力機械があって、特にキャビン内には、主機、伝動装置やその他の補機などの動力機械があって、運行時に振動や騒音が不可避的に発生する。よく使われる制振対策は、支持構造の寸法、剛性の変更、振動アイソレータや制振減衰技術であるが、これは支持構造の重量と材料コストを増加させ、また、支持構造の配置と取り付けに対してもより高い要求が求められる。従って、重量や寸法を大きくすることなく、良好な制振効果を確保する新たな支持構造を開発することが期待される。
【0003】
理想的な音響ブラックホール構造(ABH:Aboustic Black Hole)は断面の厚さが冪関数
【数1】
に従って減衰するくさび構造であり、ここで、h(x)はxにおける音響ブラックホール構造の厚さであり、εは定数であり、累乗指数mは正の有理数であり、hは音響ブラックホール構造の局所的な厚さである(理想的な音響ブラックホールのhは0である)。構造の厚さの変化が2以上の指数を有する冪関数曲線を満たすとき、構造音響ブラックホールの基本的な要求を満たすことができる。理想的な条件では、曲げ波がゼロ反射し、ABH領域に伝導した曲げ波がすべて「飲み込まれる」が、実際の製造では、構造厚さが冪指数に従ってゼロに変化するのは困難であり、先端では厚さが遮断されてしまう。ごくわずかな局所的な厚さも構造の反射係数を50%以上に増大させ、音響ブラックホールの集合効果を弱めることがあり、音響ブラックホールの領域に減衰材料を貼り付けることで、反射係数を大幅に低下させ、効果的にエネルギーを吸収し、振動を抑制することができる。
【0004】
制振マスは一般にストリップであり、構造の振動伝達経路に沿って板の接合部に配置され、定常構造が(質量、剛性など)急に変化すると、構造のインピーダンス不整合を引き起こし、曲げ波に対して良好な反射作用を発揮する。
【0005】
本発明は、音響ブラックホールによる複合型制振支持構造及びその設計方法に関し、音響ブラックホールによる弾性波の集合効果を利用して動力機械から発生する振動を制御し、振動エネルギーの放散と波の伝搬の抑制を実現するとともに、減衰層と防振体を設けて制振効果を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、動力機械構造の振動伝達を減少させる制振支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明は下記技術的解決手段を採用する。
【0008】
支持フレーム本体を含む音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームであって、支持フレーム本体は、上面板と少なくとも2枚の垂直ブラケットとから構成される少なくとも1つのドア枠状枠体であり、枠体は、後側にウェブが接続され、下端に防振体が接続され、前記面板の両端に1次元音響ブラックホールくさび構造一と1次元音響ブラックホールくさび構造二がそれぞれ前から後へ設けられ、前記ブラケットは、上部には少なくとも2つの小径の2次元音響ブラックホール一が設けられ、下部には少なくとも2つの大径の2次元音響ブラックホール2が設けられ、前記ウェブには少なくとも2つの2次元音響ブラックホールアレイが設けられ、前記ウェブの両端のそれぞれに1次元音響ブラックホールくさび構造三が設けられ、前記1次元音響ブラックホールくさび構造一、1次元音響ブラックホールくさび構造二、1次元音響ブラックホールくさび構造三、2次元音響ブラックホール構造一、2次元音響ブラックホール構造二は、それぞれ、2次元音響ブラックホールアレイに対応する側の面に減衰層が覆設されている。
【0009】
さらに好ましくは、前記上面板及びウェブはいずれも矩形鋼板であり、ブラケットは直角台形鋼板であり、防振体は断面が矩形の中空又は中実構造用鋼である。
【0010】
さらに好ましくは、前記音響ブラックホールの断面は
【数2】
の減衰則に合致し、ここで、hは0.2~1mmである。1次元音響ブラックホールは断面が法線方向に引き伸ばされたくさび構造であり、2次元音響ブラックホールは断面がy軸の周りに回転してなる窪み構造である。
【0011】
さらに好ましくは、前記上面板及びウェブのそれぞれの両端の縁部に1次元音響ブラックホールくさび構造が分布しており、上面板の両端の縁部にサイズの異なる2組の1次元音響ブラックホールくさび構造が分布しており、これらの幅がいずれも上面板の幅の半分である。
【0012】
さらに好ましくは、前記2次元音響ブラックホールアレイ3のアレイ形態は矩形アレイ又は円形アレイであり、各アレイの2次元音響ブラックホールの数が4~6個である。
【0013】
さらに好ましくは、前記2次元音響ブラックホール構造一、2次元音響ブラックホール構造二及び2次元音響ブラックホールアレイ3の縁部から板の縁部までの距離、隣接する2つの音響ブラックホールの縁部の距離が0.3rよりも大きく、これにより、構造強度が確保され、制振効果を向上させる。
【0014】
さらに好ましくは、前記減衰層は、厚さが音響ブラックホールの局所的な厚さの4~10倍であり、粘弾性減衰材料である。
【0015】
さらに好ましくは、前記接続は溶接である。
【0016】
上記の目的を達成させるために、本発明が目的を達成させるために採用する別の技術的解決手段は以下のとおりである。
【0017】
音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームの設計方法であって、
振動試験システムを用いて動力機械の振動線スペクトルを測定し、制振開始周波数fを決定するステップS1と、
冪乗則m(一般にはmは2.0~2.5である)を決定し、mが大きい場合、振動が境界に伝わる際の反射係数を著しく低下させることができるが、mが大きいほど製造が困難であり、低周波では平滑性条件を満たさない可能性があるステップS2と、
音響ブラックホールの特徴サイズr(1次元音響ブラックホールは長さ、2次元音響ブラックホールは半径)を計算するステップS3であって、
S3-1:音響ブラックホール集合効果の制振開始周波数から変換して
【数3】
を取得して決定し、ここで、hは平板の厚さ、ρは材料の密度、Eは材料のヤング率、vは材料のポアソン比を表し、1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)、1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)、2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)について、制振開始周波数fを式に代入して音響ブラックホールの特徴サイズrを算出することができ、
S3-2:上面板(1)及びブラケット(2)の音響ブラックホールに対して、より大きい組の1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-2)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)のパラメータを
【数4】
により決定して、半径
【数5】
を決定するステップS3と、
音響ブラックホールの断面関数を計算するステップS4であって、
S4-1:1次元音響ブラックホールくさび構造一(1-1)、1次元音響ブラックホールくさび構造三(3-1)、2次元音響ブラックホール構造一(2-1)、2次元音響ブラックホールアレイ(3-2)の断面関数h(x)を計算し、εは、板厚hと音響ブラックホールの特徴サイズrにより决定され、
【数6】
であり、
S4-2:1次元音響ブラックホールくさび構造二(1-2)、2次元音響ブラックホール構造二(2-2)の断面関数を計算し、
【数7】
であるステップS4と、
反射係数を曲げ波の出力量と入力量との比として計算し、
【数8】
ここで、x、xは音響ブラックホールの断面の開始点と終了点であり、E、E、ρ、ρ、η、ηはそれぞれ板と減衰層のヤング率、密度、損失係数であり、δは減衰層の厚さであり、
【数9】
は波数であり、ここで、cは波の板における波速であり、fは波の周波数であり、
減衰が貼り付けられていない場合、音響ブラックホールの非常に小さい局所的な厚さも反射係数を大きくし、音響ブラックホールの波集合効果を低下させる。1次元音響ブラックホールの反射係数式を用いて各音響ブラックホール構造の反射係数を迅速に評価し、
減衰層が覆設されていない場合、音響ブラックホール及び支持構造の減衰損失係数は比較的に小さく、また音響ブラックホールの局部的な厚さが不可避的に存在するため、支持構造の制振効果は明らかではなく、音響ブラックホールの中心領域に減衰層を敷設することで、音響ブラックホール構造の反射係数を効果的に抑制することができ、
減衰層の半径(又は長さ)が音響ブラックホールの特徴サイズrの0.5倍よりも大きくなければならず、振動エネルギーの殆どは音響ブラックホールの中心領域で消費されてしまうので、減衰層は可能な限りすべての領域をカバーするように音響ブラックホールの中心領域に貼り付けられなければならず、
より厚い減衰層δは音響ブラックホールの制振効果を高めることができ、音響ブラックホールの制振効果と経済性を両立させるために、一般的に制振材料の損失係数を0.5より大きくし、減衰層の厚さを局所的な厚さhの4~10倍とし、制振周波数帯域内の反射係数を0.5以内に制御するステップS5と、
平滑性条件:
【数10】
を検証し、
平滑性条件及び反射係数の制御要件を満たさない場合、条件の要件を満たすまでS2及びそれ以降のステップを繰り返すステップS6と、を含む。
【0018】
本発明の動作原理は次の通りである。本発明は、音響ブラックホール効果を利用し、構造インピーダンスの変化により、構造中の波の位相速度と群速度を変化させ、構造の局所領域で波の集合を実現する。薄板構造では、インピーダンスの変化が板の厚さをある指数形式で変化させることによって実現される場合、曲げ波の速度は厚さの減少に伴って徐々に減少し、波長は圧縮され、振幅は増加し、理想的には波の速度は0に減少し、これにより、反射は発生しない。また、インピーダンス不整合の原理を利用して、支持構造における防振体は動力機械により生じた振動波の船体構造への伝播を抑制する。振動が面板から船体に伝わる過程で、音響ブラックホールに局所的な厚さが存在するため、音響ブラックホールは曲げ波を完全に吸収できず、一部の波は「脱出」してしまい、また、ブラケット、ウェブは曲げ剛性が防振体よりも小さく、一部の曲げ波を反射し、反射した曲げ波はブラケットとウェブの中を伝播して音響ブラックホールの領域に再び入り、これにより、音響ブラックホールの波集合効果が高まる。
【0019】
音響ブラックホールは、第1カットオフ周波数
【数11】
よりも低い場合には全く機能せず、励起が第1カットオフ周波数よりも高くなってから、音響ブラックホールの特性長が平板内の曲げ波の半波長よりも長いので、音響ブラックホール効果が徐々に機能し始める。複合型制振支持構造の設計方法では、比較的大きな特徴サイズの音響ブラックホールは第1カットオフ周波数に基づいて計算され、その他の音響ブラックホールの特徴サイズは、平滑性条件から導出された第2カットオフ周波数
【数12】
から計算される。ブラケットの2次元音響ブラックホールの数、ウェブの音響ブラックホールのアレイ形態と数は、支持構造のサイズと配置が容易か否かによって決められる。
【0020】
動力機械により生じる振動は、面板からブラケット又はウェブに伝わる。振動波がブラケット上を伝わると、波は音響ブラックホール構造内に集合する。音響ブラックホールの波集合効果により、音響ブラックホールの中心領域の波幅が比較的大きく、音響ブラックホール領域の表面に減衰層が貼り付けられており、減衰層はせん断変形を利用して機械エネルギーを熱エネルギーに変換し、振動エネルギーを消費する。
【0021】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0022】
本発明は、動力機械を支持しながら動力機械により生じる振動エネルギーを散逸し、音響ブラックホールのエネルギー集合効果、減衰制振設計技術及びインピーダンス不整合の原理を総合的に利用して、曲げ波の制御と振動エネルギーの散逸を行うことで、制振の目的を達成させ、将来性が期待でき、船舶の各種動力機械の支持構造に適用することができる。本発明は、一般的な支持構造の形態と比べて、制振効果がより明らかであり、500Hz以上の周波数帯域での平均制振効果が7dB以上に達し、制振バンドギャップが70%に達し、船舶動力機械の制振・騒音低減に重要な応用価値がある。面板とウェブの両端にある1次元音響ブラックホールの大きさは同じではなく、ブラケットにある上下2組の音響ブラックホールの半径も同じではなく、これにより、音響ブラックホールの制振周波数帯域が広くなる。また、制振マスと減衰の導入は、音響ブラックホールの集合効果を向上させる。波はブラックホール領域内に集合されるので、支持構造体本体全体ではなく、この領域のみに減衰層が設けられ、これによって、材料の使用量が減少し、製造コストが低下する。また、通常のブラケットと比較して、音響ブラックホール構造が導入されているため、同じ厚さであっても、支持構造本体の質量が減少する。支持構造の制振孔構造に代えて音響ブラックホール構造を採用したので、制振孔型支持構造と比較して、支持構造の強度に影響を与えることがなく、弾性的に取り付けたり剛性的に取り付けたりする場合に動力機械を支持することができ、動力機械の振動伝達を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の矩形アレイ形態の構造概略図である。
図2】本発明の円形アレイ形態の構造概略図である。
図3】本発明の面板の上面図である。
図4】本発明の面板のA-A矢視図である。
図5】本発明のブラケットの左面図である。
図6】本発明のブラケットB-B矢視図である。
図7】本発明の矩形アレイ形態のウェブの正面図である。
図8】本発明の矩形アレイ形態ウェブのC-C矢視図である。
図9】本発明の円形アレイ形態のウェブの正面図である。
図10】本発明の円形アレイ形態のウェブのD-D矢視図である。
図11】本発明の設計方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~10に示すように、本発明の音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームは、船舶の動力機械を支持するとともに、伝達経路における振動エネルギーを消費するものである。上面板1、ブラケット2、ウェブ3、防振体4、1次元音響ブラックホールくさび構造一1-1、1次元音響ブラックホールくさび構造二1-2と1次元音響ブラックホールくさび構造三3-1、ブラケット2次元音響ブラックホール一2-1と2次元音響ブラックホール構造二2-2、ウェブ2次元音響ブラックホールアレイ3-2、及び減衰層5を含む。
【0025】
動力機械の重量は上面板1、ブラケット2及びウェブ3によって支持される。
【0026】
上面板1は、材料が鋼材であって、形状が矩形である。上面板1の下端面とブラケット2、ウェブ3の上端面とは溶接によって接続される。上面板1の両端の縁部には1次元音響ブラックホールくさび構造一1-1、1次元音響ブラックホールくさび構造二1-2を有し、1次元音響ブラックホールの領域の平面に減衰層5が貼り付けられている。
【0027】
ブラケット2は、材料が鋼材であって、形状が直角台形あり、上端面が上面板1に溶接により接続され、一方側の端面がウェブ3に溶接により接続され、ブラケット2には2次元音響ブラックホール構造一2-1と2次元音響ブラックホール構造二2-2が設けられ、より小さい組の2次元音響ブラックホール構造一2-1は台形の上底に接近して配置され、より大きい組の2次元音響ブラックホール構造二2-2は台形の上底に接近して配置される。2次元音響ブラックホールの領域の平面の一方側に減衰層5が貼り付けられている。
【0028】
ウェブ3は、材料が鋼材であって、形状が矩形であり、上端面が上面板1に溶接により接続され、ブラケット2の一方側の端面に溶接により接続され、ウェブ3には2次元音響ブラックホールアレイ3-2が付設され、2次元音響ブラックホールの領域の平面の一方側に減衰層5が貼り付けられている。
【0029】
防振体4の横断面は矩形で、横断面の幅はウェブ3又はブラケット2の厚さの5~10倍であり、防振体4はブラケット2とウェブ3の下端に設けられ、ブラケット2及びウェブ3の下端面はそれぞれ前記防振体4の接続面の中央に溶接されている。
【0030】
減衰層5は粘弾性減衰材料で、アスファルト、水可溶化物、ラテックス、エポキシ樹脂などの適切な添加充填材と溶剤とから構成することができ、鋼板と減衰層5は高強度接着剤で接着されて一体構造になる。
【0031】
音響ブラックホールによる複合型制振支持フレームの設計方法は、下記ステップを含む(図11を参照)。
S1:振動試験システムを用いて動力機械の振動線スペクトルを測定し、制振開始周波数fを決定する。
S2:冪乗則m(一般にはmは2.0~2.5である)を決定し、mが大きい場合、振動が境界に伝わる際の反射係数を著しく低下させることができるが、mが大きいほど製造が困難であり、低周波では平滑性条件を満たさない可能性がある。
S3:音響ブラックホールの特徴サイズr(1次元音響ブラックホールは長さ、2次元音響ブラックホールは半径)を計算する。
S3-1:音響ブラックホール集合効果の制振開始周波数から変換して
【数13】
を取得して決定し、ここで、hは平板の厚さ、ρは材料の密度、Eは材料のヤング率、vは材料のポアソン比を表し、1次元音響ブラックホールくさび構造一1-1、1次元音響ブラックホールくさび構造三3-1、2次元音響ブラックホール構造一2-1、2次元音響ブラックホールアレイ3-2について、制振開始周波数fを式に代入して音響ブラックホールの特徴サイズrを算出することができ、
S3-2:上面板1及びブラケット2の音響ブラックホールに対して、より大きい組の1次元音響ブラックホールくさび構造一1-2、2次元音響ブラックホール構造二2-2のパラメータを
【数14】
により決定し、半径
【数15】
を決定する。
S4:音響ブラックホールの断面関数を計算する。
S4-1:1次元音響ブラックホールくさび構造一1-1、1次元音響ブラックホールくさび構造三3-1、2次元音響ブラックホール構造一2-1、2次元音響ブラックホールアレイ3-2の断面関数h(x)を
【数16】
により計算し、εは、板厚hと音響ブラックホールの特徴サイズrにより決定され、
【数17】
である。
S4-2:1次元音響ブラックホールくさび構造二1-2、2次元音響ブラックホール構造二2-2の断面関数を計算し、
【数18】
である。
S5:反射係数を曲げ波の出力量と入力量との比として計算し、
【数19】
ここで、x、xは音響ブラックホールの断面の開始点と終了点であり、E、E、ρ、ρ、η、ηはそれぞれ板と減衰層のヤング率、密度、損失係数であり、δは減衰層の厚さであり、
【数20】
は波数であり、ここで、cは波の板における波速であり、fは波の周波数であり、
減衰が貼り付けられていない場合、音響ブラックホールの非常に小さい局所的な厚さも反射係数を大きくし、音響ブラックホールの波集合効果を低下させる。1次元音響ブラックホールの反射係数式を用いて各音響ブラックホール構造の反射係数を迅速に評価する。
【0032】
減衰層が覆設されていない場合、音響ブラックホール及び支持構造の減衰損失係数は比較的小さく、また音響ブラックホールの局部的な厚さが不可避的に存在するため、支持構造の制振効果は明らかではなく、音響ブラックホールの中心領域に減衰層を敷設することで、音響ブラックホール構造の反射係数を効果的に抑制することができ、
減衰層の半径(又は長さ)が音響ブラックホールの特徴サイズr0.5倍よりも大きくなければならず、振動エネルギーの殆どは音響ブラックホールの中心領域で消費されてしまうので、減衰層は可能な限りすべての領域をカバーするように音響ブラックホールの中心領域に貼り付けられなければならず、
より厚い減衰層δは音響ブラックホールの制振効果を高めることができ、音響ブラックホールの制振効果と経済性を両立させるために、一般的に制振材料の損失係数を0.5より大きくし、減衰層の厚さを局所的な厚さhの4~10倍とし、制振周波数帯域内の反射係数を0.5以内に制御する。
S6:平滑性条件:
【数21】
を検証し、
平滑性条件及び反射係数の制御要件を満たさない場合、条件の要件を満たすまでS2及びそれ以降のステップを繰り返す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】