(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 3/215 20060101AFI20231026BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20231026BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20231026BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08J3/215 CES
C08K5/14
C08L23/06
C08F4/654
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529049
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2021081372
(87)【国際公開番号】W WO2022101337
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】マルセーリ、デシオ
(72)【発明者】
【氏名】コンサルヴィ、マルコ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J128
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB24
4F070AC37
4F070AC56
4F070AE03
4F070AE08
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4J128FA09
4J128GB02
(57)【要約】
【解決手段】 二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を押出機装置において調製するためのプロセスであって、密度が0.940g/cm3~0.968g/cm3であるポリエチレン粉体の形態の二峰性又は多峰性ポリエチレンと1種以上の添加剤とを、ポリエチレン粉体を溶融することなく、10℃~100℃の温度で混合装置において混合するステップと、押出機装置内で混合物を溶融均質化して溶融ポリエチレン組成物を形成するステップと、溶融ポリエチレン組成物を造粒するステップと、を含み、有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体に対して有機過酸化物が20ppm~200ppmの量で、混合が起こりかつポリエチレン粉体の温度が10℃~100℃となる位置でポリエチレン粉体に添加される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を押出機装置において調製するためのプロセスであって、
DIN EN ISO 1183-1:2004に準拠して23℃での密度が0.940g/cm
3~0.968g/cm
3であるポリエチレン粉体の形態の二峰性又は多峰性ポリエチレンを混合装置に供給するステップa)と、
有機過酸化物でない1種以上の添加剤を前記混合装置に供給するステップb)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを、前記ポリエチレン粉体を溶融することなく、10~100℃の温度で混合して混合物を形成するステップc)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を前記混合装置から前記押出機装置に移送するステップd)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を押出機装置内で溶融均質化して溶融ポリエチレン組成物を形成するステップe)と、
前記溶融ポリエチレン組成物を造粒するステップf)と、を含み、
有機過酸化物を含む液体は、前記ポリエチレン粉体に対して前記有機過酸化物が20ppm~200ppmの量で前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加され、前記液体は、混合が起こりかつ前記ポリエチレン粉体の温度が10℃~100℃となる位置で前記ポリエチレン粉体に添加される、プロセス。
【請求項2】
前記有機過酸化物を含む液体は、ステップc)の前又は途中に、前記混合装置における前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記有機過酸化物を含む液体は、ステップe)の前に、前記押出機装置におけるポリエチレン粉体を含む混合物に、前記混合物が溶融していない位置で添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機過酸化物を含む液体は、前記有機過酸化物を含む液体を0.5~4MPaの注入圧力で、予荷重をかけたばねを含むばねインジェクタに通すことにより、前記ポリエチレン粉体に添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機過酸化物を含む液体は、活性酸素の含有量が0.1wt%~10wt%の範囲にある過酸化物溶液である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ステップc)の混合は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、前記混合装置内の気相中の酸素含有量が5vol%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物の前記押出機装置への導入は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、ホッパー内の酸素含有量が5vol%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記押出機装置は、共回転する2つの二軸押出機の組み合わせであり、前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物は前記第1二軸押出機に移送され、前記第2二軸押出機は、前記第1二軸押出機から溶融ポリマー流れを供給され、均質化プロセスを完了する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記押出機装置は、ギアポンプを備えた逆回転連続ミキサー、又はギアポンプを備えた共回転二軸押出機である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップe)において、材料の処理量当たりに加えられる比エネルギーが120kW/t~350kW/tである、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記溶融ポリエチレン組成物を、造粒前に融液フィルタを通過させる、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、二峰性又は多峰性ポリエチレンのM
w/M
nが15~40である、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
アルキルアルミニウムとマグネシウムハロゲン化物に担持されたチタン化合物との反応生成物を含むジーグラー又はジーグラー・ナッタ触媒である重合触媒の存在下で、二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための重合を行う、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
管材を製造するためのプロセスであって、
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセスによりポリエチレン組成物を調製するステップa)と、
前記ポリエチレン組成物を管材に形成するステップb)と、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を調製するためのプロセスを提供する。本開示は、特に、密度が0.940~0.968g/cm3である二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を押出機装置において調製するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは広く使用されている商業ポリマーである。ポリエチレンの重要な用途は、管材、特に圧力管材、すなわち管材内の圧力が管材外の圧力よりも高い条件下で流体を輸送するように設計された管材を製造することである。優れた機械的特性(長期にわたって良好な耐圧性、耐薬品性を含む)を有するポリエチレン管材を製造するのに好適な材料は、密度が0.940g/cm3~0.968g/cm3の二峰性又は多峰性ポリエチレンである。
【0003】
管材の製造に適用できるように、ポリエチレンは管材の押出加工性にも優れている必要がある。この加工性の1つの側面は、特に大口径管材の製造において、得られた管材の高い「たるみ」耐性である。「たるみ」とは、管材の溶融物の押出中に、管材の上部から管材の下部に溶融物の一部が流れ、管材の周囲に許容できない管材の肉厚の変化が生じる可能性があることを意味する。
【0004】
管材を製造するために指定された二峰性又は多峰性ポリエチレンのたるみ挙動を改善するために様々な試みがなされ、例えば、WO 2013/101767 A2は、二峰性高密度ポリエチレンポリマー組成物及びこれらの組成物から製造された付属品、好ましくは管材及び継手が開示されている。二峰性高密度ポリエチレンポリマー組成物は、二峰性高密度ポリエチレン系樹脂と過酸化物とを押出機装置に供給し、押出機装置においてポリマー組成物と過酸化物とを実質的に均一になるまで混合することにより調製される。例えばポリプロピレンにおけるマスターバッチとして、過酸化物を押出機装置に搬送するために、担体を使用することが好ましい。
WO 2016/005044 A1は、管材に製造することができる多峰性ポリエチレン組成物に関する。高密度多峰性エチレンポリマー成分と超高分子量エチレンポリマー成分とを含む多峰性ポリエチレン組成物。高密度多峰性ポリエチレン組成物は、管材押出ステップの前の化合ステップで調製されることが好ましい。また、化合中に過酸化物マスターバッチを添加してLCB/架橋反応を誘導することも開示される。
【0005】
WO 2016/064984 A1は、架橋メタロセン触媒ポリエチレンコポリマー及びそれから調製された物品(管材など)に関する。架橋メタロセン触媒ポリエチレンコポリマーは、ポリエチレンコポリマー系樹脂を過酸化物改質剤と接触させることにより得ることができる。過酸化物改質剤は、粉体、マスターバッチ、担体(例えば、ポリプロピレン、炭酸カルシウム等)、又はこれらの組み合わせとして使用することができる。
【0006】
WO 2017/112642 A1は、管材のような様々な形状の物品に押し出すことができ、部分的に架橋された多峰性ポリエチレン組成物を含むポリエチレン製剤を開示している。ポリエチレン製剤は多峰性ポリエチレン樹脂と過酸化物マスターバッチとを組み合わせることにより得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
WO 2018/022885 A1は、1種以上の有機過酸化物の存在下で押出された二峰性高分子量高密度ポリエチレンを含む管材を開示する。管材の製造方法では、有機過酸化物の担体として多孔質ポリプロピレンランダムコポリマーが使用される。
しかしながら、高いたるみ耐性を有し、ゲルレベルが低減された、二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を提供することが必要である。
【0008】
本開示は、二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を押出機装置において調製するためのプロセスであって、
DIN EN ISO 1183-1:2004に準拠して23℃での密度が0.940g/cm3~0.968g/cm3であるポリエチレン粉体の形態の二峰性又は多峰性ポリエチレンを混合装置に供給するステップa)と、
有機過酸化物でない1種以上の添加剤を前記混合装置に供給するステップb)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを、ポリエチレン粉体を溶融することなく、10~100℃の温度で混合して混合物を形成するステップc)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を前記混合装置から前記押出機装置に移送するステップd)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を押出機装置内で溶融均質化して溶融ポリエチレン組成物を形成するステップe)と、
前記溶融ポリエチレン組成物を造粒するステップf)と、を含み、
有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体に対して前記有機過酸化物が20ppm~200ppmの量で前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加され、前記液体は、混合が起こりかつ前記ポリエチレン粉体の温度が10℃~100℃となる位置で前記ポリエチレン粉体に添加される、方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記有機過酸化物を含む液体は、ステップc)の前又は途中に、前記混合装置における前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加される。
いくつかの実施形態では、前記有機過酸化物を含む液体は、ステップe)の前に、前記押出機装置におけるポリエチレン粉体を含む混合物に、前記混合物が溶融していない位置で添加される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記有機過酸化物を含む液体は、前記有機過酸化物を含む液体を0.5~4MPaの注入圧力で、予荷重をかけたばねを含むばねインジェクタに通すことにより、前記ポリエチレン粉体に添加される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記有機過酸化物を含む液体は、活性酸素の含有量が0.1wt%~10wt%の範囲にある過酸化物溶液である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ステップc)の混合は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、前記混合装置内の気相中の酸素含有量が5vol%未満である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物の前記押出機装置への導入は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、ホッパー内の酸素含有量が5vol%未満である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記押出機装置は、共回転する2つの二軸押出機の組み合わせであり、前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物は前記第1二軸押出機に移送され、前記第2二軸押出機は、前記第1二軸押出機から溶融重合体流れを供給され、均質化プロセスを完了する。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記押出機装置は、ギアポンプを備えた逆回転連続ミキサー、又はギアポンプを備えた共回転二軸押出機である。
【0016】
いくつかの実施形態では、ステップe)において、材料の処理量当たりに加えられる比エネルギーが120kW/t~350kW/tである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記溶融ポリエチレン組成物を、造粒前に融液フィルタを通過させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、二峰性又は多峰性ポリエチレンのMw/Mnが15~40である。
【0019】
いくつかの実施形態では、アルキルアルミニウムとマグネシウムハロゲン化物に担持されたチタン化合物との反応生成物を含むジーグラー又はジーグラー・ナッタ触媒である重合触媒の存在下で、二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための重合を行う。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、
ポリエチレン組成物を調製するための上記のいずれか1項に記載のプロセスにより前記ポリエチレン組成物を調製するステップa)と、
前記ポリエチレン組成物を管材に形成するステップb)と、を含む管材を製造するためのプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示のプロセスで使用される二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための反応器の構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、ポリエチレン粉体に有機過酸化物を含む液体を添加するためのばねインジェクタを概略的に示す。
【
図3】
図3は、有機過酸化物を含む液体が混合装置におけるポリエチレン粉体に添加される、本開示に係るポリエチレン組成物を調製するための構成を概略的に示す。
【
図4】
図4は、有機過酸化物を含む液体が押出機装置におけるポリエチレン粉体に添加される、本開示に係るポリエチレン組成物を調製するための構成を概略的に示す。
【
図5】
図5は、有機過酸化物とポリマー担体との固体混合物が混合装置におけるポリエチレン粉体に添加される、ポリエチレン組成物を調製するための比較構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を調製するためのプロセスを提供する。二峰性又は多峰性ポリエチレンは、エチレンを重合させるか、又はエチレンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることにより得ることができる。エチレンとの共重合に適したオレフィンは、特に末端二重結合を有する炭化水素である1-オレフィンであるが、これに限定されるものではない。しかしながら、好適なオレフィンは官能化オレフィン性不飽和化合物であってもよい。直鎖又は分岐鎖のC3-C12-1-アルケン、特に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンなどの直鎖C3-C10-1-アルケン、4-メチル-1-ペンテンなどの分岐鎖C2-C10-1-アルケン、1,3-ブタジエン、1,4-ヘキセン、1,7-オクテンなどの共役及び非共役ジエンが好ましい。エチレンと2種以上の1-オレフィンとの混合物を共重合してもよい。好適なオレフィンはまた、二重結合が1種以上の環系を有してもよい環構造の一部であるオレフィンを含む。例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はメチルノルボルネン、又はジエン例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルネン又はエチルノルボルネンである。
【0023】
このプロセスは、エチレンの単独重合又は共重合に適している。好ましいコモノマーは、多くとも20wt%、より好ましくは0.01wt%~15wt%、特に0.05wt%~12wt%のC3-C8-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンである。エチレンと1-ヘキセン及び/又は1-ブテンとを0.1~12wt%共重合するプロセスが特に好ましい。
【0024】
本開示のプロセスにおいて使用されるポリエチレンは、二峰性又は多峰性ポリエチレンである。「二峰性」及び「多峰性」という用語は、分子量分布のモダリティを意味することができる。このようなポリマーは、エチレンを2つ以上の一連の重合反応器中で異なる反応条件下で重合するか、又はエチレンと1種以上の他のオレフィンとを共重合することによって得られるか、又は同一の重合条件下で異なる分子量のポリエチレンを調製する2つ以上の重合触媒を含む混合触媒系を用いることによって得られる。したがって、「モダリティ」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線において分子量分布のこのモダリティが分離の最大値として認識できるかどうか、あるいは混合重合触媒系に含まれる異なるタイプの重合触媒の数にかかわらず、ポリエチレンの調製に使用された異なる重合条件の数を表す。当技術分野でよく使用され、本明細書においても使用される多峰性という用語は、二峰性を含むことができる。ポリエチレンは、分子量分布に加えて、より高分子量のポリマー鎖の平均コモノマー含有量が、より低分子量のポリマー鎖の平均コモノマー含有量よりも高いコモノマー含有量分布を有していてもよい。しかしながら、この一連の重合反応器のすべての重合反応器において、同一又は非常に類似した反応条件を採用して、狭分子量ポリエチレンを調製することも可能である。しかし、異なる反応条件で操作される一連の重合反応器で多峰性ポリエチレンを調製する時の複雑さは、個々のポリエチレン粒子の反応器内での滞留時間が異なるため、ポリエチレン粉体の個々のポリエチレン粒子の組成が大きく変化する可能性があることである。
【0025】
工業的に知られているすべての重合方法は、二峰性又は多峰性ポリエチレンの調製に使用することができる。重合方法としては、溶液プロセス、懸濁プロセス、気相プロセスが含まれる。重合はバッチ式で行うことができ、好ましくは2段階以上連続して行うことができる。このタイプのプロセスは、当業者には通常知られている。上記重合プロセスでは、特に気相流動層反応器又はマルチゾーン循環気相反応器における気相重合、及び特にループ反応器又は撹拌槽反応器における懸濁重合が好ましい。
【0026】
二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための重合は、0.5MPa~10MPa、好ましくは1.0MPa~8MPa、特に1.5MPa~4MPaの圧力で操作することができ、ここで、これらの圧力は、本開示に記載されているすべての圧力のように、絶対圧力、すなわちサイズMPa(abs)の圧力として理解されなければならない。重合は、30℃~160℃、特に65℃~125℃で行うことが好ましく、比較的高密度のエチレンポリマーを調製するために、この範囲の上部の温度を使用し、低密度のエチレンコポリマーを調製するために、この範囲の下部の温度を使用することが好ましい。
【0027】
本開示の好ましい実施形態では、ポリエチレン組成物は、気相中で調製された二峰性又は多峰性ポリエチレンを含む。好ましくは、二峰性又は多峰性ポリエチレンは、マルチゾーン循環気相反応器中で調製されるか、又は、2つ以上の気相重合反応器のシリーズ、好ましくは2つ以上の流動層反応器のシリーズ、若しくは流動層反応器のようなマルチゾーン循環気相反応器と1種以上の異なる気相重合反応器とを含むシリーズで調製されるか、又は、ループ反応器のような一連の1つ以上の懸濁重合反応器で調製され、次いで流動層反応器のような1つ以上の気相重合反応器で調製される。
【0028】
好ましくは、二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための設備は、成長ポリマー粒子が流動、高速流動化又は輸送条件下で上方に流れる上昇管ユニットと、成長ポリマー粒子が緻密な形態で下方に流れる下降管と、を含む気相重合反応器を含む。
【0029】
成長ポリマー粒子が上方に流れる上昇管ユニットは、成長ポリマー粒子の流動層を含むことができる。そして、上昇管ユニットは流動層反応器などの完全混合気相反応器として運転する。流動層反応器は、ポリマー粒子層内で重合が発生する反応器であって、反応ガス混合物を反応器の下端(通常、分配ガス流れ機能を有するガス分配格子の下)に供給し、その上端で再びガスを吐出することにより、ポリマー粒子層を流動状態に維持する反応器である。次いで、反応ガス混合物は、圧縮機及び重合熱を除去する熱交換器を備えたリサイクルラインを介して反応器の下端に戻される。反応ガス混合物の速度は、第1に、重合領域として使用されるチューブ内に存在する微細ポリマーの混合層を流動化させるために、第2に、重合熱を効果的に除去するために、十分に速くなければならない。
【0030】
上昇管ユニットとしてポリマー粒子を成長させる流動層を含む重合ユニットを使用する場合には、気相反応器内、気相反応器の周囲、又は気相反応器に隣接して下降管を配置することができる。また、成長ポリマー粒子が緻密な形態で下方に流れる下降管として、2つ以上の分離した重合ユニットを採用することもできる。
【0031】
本開示の特に好ましい実施形態では、上昇管ユニットは、成長ポリマー粒子が高速流動化又は輸送条件下で上方へ移動する上昇管である。反応ガス混合物をポリマー粒子の輸送速度よりも速い速度で供給することにより、上昇管内の高速流動化条件が確立される。反応ガス混合物の速度は、一般に0.5~15m/sec、好ましくは0.8~5m/secである。「輸送速度」及び「高速流動化条件」という用語は、当業者には公知である。これらの用語の定義については、例えば「D.Geldart、ガス流れ動化技術、P155以下、J.Wiley&Sons Limited、1986年」を参照する。
【0032】
重合反応器内で成長ポリマー粒子が緻密な形態で下方に流れる部分を「下降管」と呼ぶことがあるが、「移動層」又は「沈降層」ユニット又は反応器と呼ぶこともある。「緻密な形態」という用語は、ポリマーの質量と反応器容積との比率が、得られるポリマーの「注入嵩密度」の80%よりも高いことを意味するものと理解しなければならない。したがって、例えば、ポリマー嵩密度が420kg/m3である場合、「緻密な形態」とは、ポリマー質量/反応器容積比が少なくとも336kg/m3であることを意味する。ポリマーの「注入嵩密度」は当業者に公知のパラメータであり、DIN EN ISO 60:1999に基づいて測定することができる。反応器内の固体の密度は、ポリマーが占める反応器の単位体積当たりのポリマーの質量と定義される。
【0033】
典型的には、下降管は、実質的にプラグフローモードで下方に移動する成長ポリマー粒子層を含む重合反応器の一部である。「プラグフローモード」とは、ポリマー粒子の逆混合がほとんどないか、好ましくは全くないことを意味する。
【0034】
反応性モノマーを置換し、下降管内のガス流れを制御するために、ガス状又は液体状の供給流れを1つ又は複数の位置で下降管内に導入することができる。供給流れは、好ましくはエチレンを含み、さらに、1種以上のコモノマー、プロパンのような不活性成分又は水素を含むことができる。下降管に加えられる気体又は液体供給流れの量及び下降管内の圧力条件に応じて、ポリマー粒子の周囲の気体媒体は、ポリマー粒子と同時に下方に移動するように、又はポリマー粒子と逆流して上方に移動するように設計することができる。液体流れが下降管に供給されると、これらの液体流れは好ましくは下降管内で蒸発し、下降管内の反応ガス混合物の組成に寄与する。複数の供給流れを用いて下降管を運転させる場合、供給流れを下降管に導入する供給点は、下降管の高さにわたって均等に分布することが好ましい。
【0035】
本開示の最も好ましい実施形態では、気相重合反応器はマルチゾーン循環反応器である。この反応器は、例えばWO 97/04015 A1及びWO 00/02929 A1に記載されており、成長ポリマー粒子が高速流動化又は輸送条件下で上方に流れる上昇管と、成長ポリマー粒子が重力下で緻密な形態で流れる下降管との2つの互いに連結された重合ゾーンを有している。上昇管から出たポリマー粒子は、下降管に入り、下降管から出たポリマー粒子は、上昇管に再導入されて、ポリマーが交互に複数回通過する2つの重合ゾーンの間にポリマー循環が確立される。このような重合反応器では、固気分離器が下降管の上方に配置され、上昇管からのポリエチレンと反応ガス混合物とを分離する。成長ポリエチレン粒子は下降管に入り、上昇管の分離された反応ガス混合物は、ガスリサイクルラインを介して重合反応器に再導入される1種以上の点に連続的に再循環される。好ましくは、リサイクルガスの主要部を上昇管の底部に循環させる。リサイクルラインは、好ましくは、圧縮機と、重合熱を除去するための熱交換器とを備えている。好ましくは、触媒供給のためのラインが上昇管上に配置され、ポリマー吐出システムが下降管の底部に配置される。補給モノマー、コモノマー、水素及び/又は不活性成分の導入は、上昇管及び下降管に沿って異なる点で生じ得る。
【0036】
本開示の好ましい実施形態によれば、上昇管ユニットから出た反応ガス混合物は、上昇管ユニットと下降管の少なくとも一部との間に異なる重合条件を確立するために、下降管への進入が部分的又は完全に防止されるこれは、例えば、ガス及び/又は液体混合物の形態のバリア流体を、下降管、好ましくは下降管の上部に供給することによって達成することができる。バリア流体は、上昇管ユニット内に存在するガス混合物の成分とは異なる適切な成分を有するべきである。添加されたバリア流体の量は、ポリマー粒子の流れとは反対の上向きのガス流れを生成するように調整することができ、特にその頂部では、上昇管ユニットからの粒子同伴ガス混合物のバリアとして作用する。
【0037】
バリア流体は、好ましくはリサイクルガス流れから得られ、より好ましくは、この流れを部分的に凝縮させることによって得られる。したがって、バリア流体は、重合されるモノマーに加えて、重合希釈剤として使用される窒素又は1~10個の炭素原子を有するアルカンのような不活性化合物、水素又は反応ガス混合物の他の成分を含むことができる。
【0038】
気相重合反応器での重合は、循環する反応ガス混合物の一部を露点以下に冷却して、それぞれ液相及び気相として、又は一緒に2相混合物として反応器に戻し、反応ガスを冷却するために蒸発エンタルピーを追加的に利用する凝縮モード又は超凝縮モードで行うこともできる。
【0039】
本開示の好ましい実施形態では、上昇管ユニットと下降管とを含む気相重合反応器は、一連の重合反応器の一部である。この一連の重合反応器の更なる重合反応器は、気相反応器又は懸濁反応器のような任意の種類の低圧重合反応器であってもよい。このシリーズの重合反応器の重合プロセスが懸濁重合を含む場合には、気相重合の上流で懸濁重合を行うことが好ましい。このような懸濁重合を行うのに好適な反応器は、例えば、ループ反応器又は撹拌槽反応器である。好適な懸濁媒体は、特にイソブタン又は炭化水素のような不活性炭化水素の混合物又はモノマー自体である。懸濁液中で行われるこの追加の重合段階は、予備重合段階をさらに含むことができる。多段階重合が気相中で行われる追加の重合段階を含む場合、追加の気相重合反応器は、水平又は垂直撹拌気相反応器、流動層反応器、又はマルチゾーン循環反応器のような任意の種類の気相反応器であってもよい。このような追加の気相重合反応器は、気相重合反応器の下流又は上流に配置することができる。本開示の特に好ましい実施形態では、上昇管ユニット及び下降管を含む気相重合反応器は、流動層重合反応器が気相重合反応器の上流に配置された一連の重合反応器の一部である。
【0040】
図1は、本開示のプロセスで使用される二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための流動層反応器及びマルチゾーン循環反応器を含む一連の重合反応器の構成を概略的に示す。
【0041】
第1気相反応器-流動層反応器(1)は、ポリエチレン粒子流動層(2)と、ガス分配格子(3)と、減速ゾーン(4)とを含む。減速ゾーン(4)の直径は、反応器流動層部分の直径に比べて一般的に増大する。反応器(1)の底部に配置されたガス分配格子(3)を介して供給される上向きのガスは、ポリエチレン層を流動状態に維持する。リサイクルライン(5)を通って減速ゾーン(4)の頂部から出た反応ガス混合物のガス流れは、圧縮機(6)によって圧縮され、熱交換器(7)に移送され、そこで冷却された後、位置(8)でガス分配格子(3)の下方の点で流動層反応器(1)の底部に再循環される。必要に応じて、リサイクルガスは、凝縮材料、すなわち凝縮モードで反応器を運転するために、熱交換器内の1種以上のリサイクルガス成分の露点以下に冷却され得る。リサイクルガスは、未反応モノマーに加えて、アルカンのような不活性凝縮性ガスと、窒素のような不活性不凝縮性ガスとを含むことができる。補給モノマー、水素ガス、及び任意の不活性ガス又はプロセス添加剤を、例えば圧縮機(6)の上流のライン(9)を介して、さまざまな位置で反応器(1)に供給することができる。一般に、触媒は、好ましくは流動層(2)の下部に配置されたライン(10)を介して反応器(1)内に供給される。
【0042】
流動層反応器(1)で得られたポリエチレン粒子は、流動層反応器(1)からのガス混合物が第2気相反応器に入るのを避けるために、ライン(11)を介して不連続に吐出され、固気分離器(12)に供給される。固気分離器(12)を出たガスは排気ガスとしてライン(13)を通って反応器から出ていき、分離されたポリエチレン粒子はライン(14)を通って第2気相反応器に供給される。
【0043】
第2気相反応器は、ポリエチレン粒子が繰り返し通過する上昇管(22)と下降管(23)とを含むマルチゾーン循環反応器(21)である。上昇管(22)内では、ポリエチレン粒子が矢印(24)の方向に高速流動化条件で上方に流れる。下降管(23)内では、ポリエチレン粒子が重力により矢印(25)方向に下方に流れる。上昇管(22)と下降管(23)とは、相互接続ベンド(26)、(27)を介して適宜連通する。
【0044】
ポリエチレン粒子及び反応ガス混合物は、上昇管(22)を流れた後、上昇管(22)を出て、固気分離ゾーン(28)に送られる。このような固気分離は、サイクロンのような遠心分離機のような従来の分離装置を用いて実現することができる。ポリエチレン粒子は、分離ゾーン(28)から下降管(23)に入る。
【0045】
分離ゾーン(28)を出た反応ガス混合物は、圧縮機(30)及び熱交換器(31)を備えたリサイクルライン(29)を介して上昇管(22)に再循環される。圧縮機(30)と熱交換器(31)との間では、リサイクルライン(29)が分岐されており、ガス混合物は2つの分離された流れに分割されており、ライン(32)はリサイクルガスの一部を相互接続ベンド(27)に送り、ライン(33)はリサイクルガスの他の一部を上昇管(22)の底部に送り、そこで高速流動化条件を確立する。
【0046】
第1気相反応器からのポリエチレン粒子は、ライン(14)を通って位置(34)の相互接続ベンド(27)でマルチゾーン循環反応器(21)に入る。マルチゾーン循環反応器(21)で得られたポリエチレン粒子は、吐出ライン(35)を介して、下降管(23)の底部から連続的に吐出される。
【0047】
分離ゾーン(28)を出たガス混合物の一部は、圧縮機(30)を通過した後、リサイクルライン(29)を出て、ライン(36)を通って熱交換器(37)に送られ、そこでモノマー及び任意の不活性ガスが部分的に凝縮する温度に冷却される。分離容器(38)は、熱交換器(37)の下流に配置される。分離された液体は、ライン(39)を介して分離容器(38)から引き出され、ポンプ(44)によってライン(40)、(41)、(42)、(43)を介して下降管(23)内に供給され、ここで、ライン(40)を介して導入された供給流れは、上昇管(22)の反応ガス混合物が下降管(23)内に入るのを防止するためのバリアを生成するために供給される。補充モノマー、補充コモノマー、及び任意の不活性ガス及び/又はプロセス添加剤は、ライン(45)、(46)、(47)を介してライン(41)、(42)、(43)に導入され、モノマー供給点(48)、(49)、(50)で下降管(23)に供給され得る。補充モノマー、補充コモノマー、及び任意の不活性ガス及び/又はプロセス添加剤は、ライン(51)を介してリサイクルライン(29)にさらに導入され得る。分離容器(38)内にて気相状態で得られたガス混合物は、ライン(52)を通ってリサイクルライン(29)に再循環される。
【0048】
下降管(23)の底部には、下降管(23)から相互接続ベンド(27)を介して上昇管(22)へのポリエチレン粒子の流れを調整するための調整可能な開口部を有する制御弁(53)が取り付けられている。制御弁(53)の上方では、リサイクルライン(29)からライン(54)を通って供給されるある量のリサイクルガス混合物は下降管(23)に導入され、制御弁(53)を流れるポリエチレン粒子を促進する。
【0049】
本開示の二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための重合は、すべての一般的なエチレン重合触媒を使用して行うことができる。すなわち、重合は、例えば、酸化クロム系フィリップス触媒、チタニウム系チーグラー又はチーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒、又はこれらの触媒の混合物を用いて行うことができる。エチレン重合のためのこれらの触媒の調製及び使用は公知である。本開示の好ましい実施形態では、重合触媒は、アルミノアルキルとマグネシウムハライドに担持されたチタン化合物との反応生成物を含むーグラー又はチーグラー・ナッタ触媒である。
【0050】
本開示のプロセスで使用される二峰性又は多峰性ポリエチレンは、ポリエチレン粉体の形態、すなわち比較的小さな粒子の形態で重合されて得られる。これらポリエチレン粒子の質量-メジアン径D50は、DIN 53477(1992年11月)によるドライシーブ分析により測定される質量-メジアン径D50が300μm~2500μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは400μm~2300μmの範囲内、特に800μm~2100μmの範囲内である。
【0051】
本開示のプロセスで使用される二峰性又は多峰性ポリエチレンの密度は、0.940~0.968g/cm3である。好ましくは、密度は、0.945~0.965g/cm3、特に0.945~0.955g/cm3の範囲である。密度はDIN EN ISO 1183-1:2004に従って法A(浸漬)により、180℃、20MPaで8分間プレスした後、沸騰水中で30分間結晶化する厚さ2mmの圧縮成形板を用いて測定したものと理解される。
好ましくは、本開示のプロセスで使用される二峰性又は多峰性ポリエチレンは、DIN EN ISO1133:2005の条件Gに準拠して測定された、190℃、21.6kgの荷重でのメルトフローレートMFR21.6が、0.5~300g/10分、より好ましくは1~100g/10分、さらに好ましくは1.2~100g/10分、特に1.5~50g/10分である。
【0052】
好ましくは、二峰性又は多峰性ポリエチレンは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した場合、重量平均分子量Mw/Mnが15~40、特
に20~35であり、ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。GPCは、溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用し、装置及び溶液の温度が135℃であり、濃度検出器としてTCBと共に使用可能な赤外線検出器を使用する、2003年
ISO16014-1、-2、-4に記載された高温ゲル浸透クロマトグラフィーであることが好ましい。
【0053】
本開示のポリエチレン組成物は、押出機装置で調製される。本開示のプロセスに適した押出機装置は、押出機又は連続ミキサーである。これらの押出機又はミキサーは、ポリエチレン組成物を溶融均質化するための1段又は2段の機械であってもよい。押出機の例としては、ピン式押出機、遊星式押出機、又は共回転円板加工機が挙げられる。他の可能な例としては、ミキサーと吐出スクリュー及び/又はギアポンプとの組み合わせがある。好ましい押出機はスクリュー押出機であり、特に二軸スクリュー機として構成された押出機である。二軸押出機及び吐出要素を有する連続ミキサー、特に逆回転二軸ロータを有する連続ミキサー、又は押出機装置が少なくとも1つの共回転二軸押出機を含むことが特に好ましい。このタイプの機械は、プラスチック産業では従来から使用されており、例えばコペリオン社(ドイツのシュツットガルト);KraussMaffei Berstorff社(ドイツのハノーバー);日本制鉄工場LTD社(日本東京);ファレル社(米国のアンソニア)、又は神戸製鉄株式会社(日本神戸)によって製造されているものである。好適な押出機装置は、通常、溶融物を造粒するためのユニット、例えば水中造粒機も備えている。
【0054】
本開示の特に好ましい実施形態では、押出機装置は同方向に回転する2つの二軸押出機の組み合わせであり、ここでは、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物が第1二軸押出機に移送され、第2二軸押出機が第1二軸押出機から溶融ポリマー流れを供給され、第2二軸押出機が均質化プロセスを完了する。本開示の他の特に好ましい実施形態では、ポリエチレン組成物は、ギアポンプを備えた逆回転連続ミキサー、又はギアポンプを備えた共回転二軸押出機内で調製される。
【0055】
本開示のポリエチレン組成物を調製するためのプロセスは、ステップa)として、ポリエチレン粉体の形態の二峰性又は多峰性ポリエチレンを混合装置に供給する。混合装置は、粒子の乾式混合を可能にする任意の装置であってもよい。混合装置は、連続的に又は不連続的に運転することができる。混合装置は、連続的に運転することが好ましい。
【0056】
好ましい乾式混合装置は、1つ又は2つの水平方向回転軸、より好ましくは2つの水平方向回転軸を含むパドルミキサーである。軸は、適切な幾何学的形状のパドルを備えている。回転軸は、ポリエチレン粉体と添加剤との組成物を密に混合しながら軸の軸線に沿って水平方向に移動させる。このようなパドルミキサーは、例えば、Kollemann 社(ドイツのアデナウ)又はJ.Engelsmann AG社(ドイツのルートヴィヒスハーフェン)から市販されてもよい。好ましい混合装置は、Zeppelin Systems社(ドイツのカッセル)から入手できるHenschel-Mixers(登録商標)のような追加の縦型バッチミキサーである。好ましい乾式混合装置は、混合要素を備えた単軸コンベアでもある。好ましくは、このような混合要素は、混合のレベルを制御することを可能にする調整可能なパドル又は溝付き翼のような修正可能な装置である。
【0057】
本開示のプロセスのステップb)では、有機過酸化物でない1種以上の添加剤を混合装置に供給する。このような添加剤は当分野では一般的であるが、特に多峰性ポリエチレンでは、添加剤がポリエチレン内に非常に均一に分布することが極めて重要である。ポリエチレン組成物を調製するための好適なタイプの添加剤は、例えば、酸化防止剤、溶融安定剤、光安定剤、酸捕捉剤、潤滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料又は染料、造核剤、難燃剤又は充填剤である。ポリエチレン組成物には、いくつかの添加剤を添加することが一般的である。複数の添加剤は、異なる種類の添加剤であってもよい。しかしながら、ポリエチレン組成物には、添加剤のいくつかの代表が添加されてもよい。これらの添加剤はすべて一般に市販されており、Hans Zweifel,プラスチック添加剤ハンドブック,第5版,Munich,2001などに記載されている。
【0058】
本開示のプロセスのステップc)では、ポリエチレン粉体と添加剤とを、ポリエチレン粉体を溶融させることなく、10℃~100℃の範囲の温度で混合する。前記ステップc)の混合は、20℃~90℃、より好ましくは60℃~80℃の範囲内の温度で行うことが好ましい
【0059】
本開示の好ましい実施形態では、ステップc)の混合は、混合装置に窒素ガスを注入することにより、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われることが好ましい。混合装置内の気相中の酸素含有量は、好ましくは5vol%未満、より好ましくは1vol%未満、特に0.2vol%未満である。
【0060】
次いで、ステップd)において、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物を混合装置から押出機装置に移送する。好ましくは、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物を押出機装置のホッパーに移送した後、ホッパーから押出機装置に導入する。好ましくは、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物は、重力により押出機装置内に移送される。好ましくは、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物の押出機装置への導入は、好ましくは酸素含有量が低減された雰囲気で行われ、これは、好ましくは、ホッパー内に窒素ガスを注入することによって達成される。ホッパー内の気相中の酸素含有量は、好ましくは5vol%未満、より好ましくは1vol%未満、特に0.2vol%未満である。
【0061】
ステップe)では、ポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物を押出機装置において溶融均質化して溶融ポリエチレン組成物を形成する。これは、好ましくは、ポリエチレン粉体と添加剤との混合物に熱的及び機械的エネルギーを加えることにより達成される。好ましくは、比エネルギー、すなわち、材料の処理量当たりに加えられる熱と機械的エネルギーの組み合わせ量は、120kW/t~350kW/t、より好ましくは、160kW/t~300kW/t、特に200kW/t~260kW/tである
【0062】
ステップe)は、ポリエチレン融液自体の均質化をもたらし、また、ポリエチレン融液中の添加剤の均一な分布を提供する。
【0063】
本開示の好ましい実施形態では、溶融ポリエチレン組成物は、造粒前に融液フィルタを通過する。好適な融液フィルタは、50μm~400μmのメッシュ開口部を有する1種以上の活性スクリーンを含む。特に好ましい融液フィルタは、75μm~200μmのメッシュ開口部を有する1種以上の活性スクリーンを含む融液フィルタ、又は205μm~350μmのメッシュ開口部を有する少なくとも2つのスクリーンを含む融液フィルタである。このようなスクリーンの組み合わせは、例えば、WO 2012/152775 A1に記載されている。
【0064】
本開示のプロセスの次のステップf)は、二峰性又は多峰性ポリエチレン及び添加剤を含む溶融ポリエチレン組成物の造粒を提供する。したがって、ステップf)は、溶融ポリエチレン組成物をペレット化する。
【0065】
本開示のプロセスによれば、ポリエチレン粉体に有機過酸化物を含む液体を添加することができる。有機過酸化物を含む液体は、液体過酸化物であってもよく、有機過酸化物を含む液体は、過酸化物の溶液であってもよい。有機過酸化物を含む液体は、過酸化物の溶液であることが好ましい。有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体に対して有機過酸化物が20ppm~200ppm、好ましくは40ppm~150ppm、特に45ppm~95ppmの量でポリエチレン粉体に添加される。好適な有機過酸化物の例は、過酸化ジクミル、過酸化ジtert-ブチル、tert-ブチルペルオキシ安息香酸エステル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,2,4,5,7,8-ヘキシルオキシノナン、代表的には、3,6,9‐トリメチル-3,6,9‐トリ(アルキル)-1,2,4,5,7,8‐-ヘキシルオキシノナン(ここでアルキルはプロピル又はエチル)、tert-ブチルペルオキシネオデカン酸エステル、tert-アミルペルオキシピバレート、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどである。好ましくは、有機過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,2,4,5,7,8-ヘキサン、又は代表的には、3,6,9‐トリメチル-3,6,9‐トリス(アルキル)-1,2,4,5,7,8‐ヘキサン(ここでアルキルはプロピル又はエチルである)である。
本開示の好ましい実施形態では、有機過酸化物は、炭化水素溶液のような希釈剤の形態でポリエチレン粉体に使用される。好ましい過酸化物溶液は、活性酸素含有量が0.1wt%~10wt%、好ましくは0.2~5wt%、より好ましくは0.3wt%~2wt%、特に0.5wt%~1wt%の範囲である。
【0066】
本開示のプロセスにおいて、有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体又はポリエチレン粉体を含む混合物に、混合が起こり、ポリエチレン粉体の温度が10℃~100℃、好ましくは20℃~90℃、より好ましくは60℃~80℃とある位置で添加される。
【0067】
本開示の好ましい実施形態では、有機過酸化物を含む液体は、ステップc)の前又は中に、混合装置におけるポリエチレン粉体又はポリエチレン粉体を含む混合物に添加される。この実施形態では、有機過酸化物を含む液体は、他の添加剤を添加する前に、他の添加剤を添加した後に、又は他の添加剤を添加するとともに、ポリエチレン粉体に添加することができる。好ましくは、有機過酸化物を含む液体は、他の添加剤を添加した後、ポリエチレン粉体に添加される。すなわち、有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体と他の添加剤とを含む混合物に添加される。
【0068】
本開示の別の好ましい実施形態では、有機過酸化物を含む液体は、ステップe)の前に、押出機装置におけるポリエチレン粉体と添加剤とを含む混合物に、混合物が溶融していない位置で添加される。
【0069】
本開示の好ましい実施形態では、有機過酸化物を含む液体は、液体を0.5~4MPa、より好ましくは1~2MPaの注入圧力で予荷重をかけたばねを含むばねインジェクタに通すことにより、ポリエチレン粉体に添加される。
【0070】
図2は、有機過酸化物を含む液体をポリエチレン粉体に添加するためのこの種のばねインジェクタを概略的に示す。ばねインジェクタ(61)は、射出孔(63)と、内針(64)と、シール装置(65)と、圧縮ばね(66)と、ばねの予荷重を設定する圧縮調整ノブ(67)とを備え、射出チャンバ(68)を含む本体(62)を備える。有機過酸化物を含む液体は、供給管(69)を介して射出チャンバ(68)に連続的に供給される。圧縮ばね(66)は、圧縮ばね(66)の予荷重に応じて針(64)を射出孔(63)に付勢する。射出チャンバ(68)内の圧力が圧縮ばね(66)の予荷重に打ち勝つと、過酸化物溶液がポリエチレン粉体に細かく噴霧される。さらに、圧縮ばね(66)の予荷重は、ポリエチレン細材又は添加剤のような粉体材料が射出チャンバ(68)に入り込み、潜在的な目詰まりを引き起こす可能性を防止する。
【0071】
図3は、有機過酸化物を含む液体が混合装置におけるポリエチレン粉体に添加される、本開示に係るポリエチレン組成物を調製するための構成を概略的に示す。
【0072】
ポリエチレン粉体は、モータ(103)で運転される投入装置(102)のホッパー(101)に供給される。添加剤の混合物は、モータ(105)によって運転される第2投入装置(104)のホッパー(103)に供給される。投入装置(102)は、モータ(108)によって運転されるスクリューコンベア(107)のホッパー(106)にポリエチレン粉体を搬送する。投入装置(104)は、添加剤の混合物を、ホッパー(106)の下流に位置するスクリューコンベア(107)のホッパー(109)に供給する。過酸化物溶液は、ポンプ(110)により貯蔵容器(111)からスクリューコンベア(107)に移送され、ホッパー(109)の下流の位置(113)でインジェクタ(112)によりスクリューコンベア(107)に注入される。
【0073】
スクリューコンベア(107)は、ポリエチレン粉体と添加剤と過酸化物溶液との混合物を、モータ(116)によって運転される第1押出機(115)のホッパー(114)内に供給する。押出機(115)内で、ポリエチレン粉体、添加剤及び過酸化物溶液の混合物が溶融され、均質化される。
【0074】
押出機(115)は、ポリエチレン粉体と添加剤と過酸化物溶液との溶融混合物を、ライン(117)を介してモータ(119)によって運転される第2押出機(118)に供給する。押出機(118)内で、ポリエチレン粉体、添加剤及び過酸化物溶液の溶融混合物の均質化プロセスが完了する。均質化された融液は、開始バルブ(120)及び融液フィルタ(121)を通過し、モータ(123)によって運転される水中造粒機(122)に移送されて粒子を形成する。
【0075】
図4は、有機過酸化物を含む液体が押出機装置におけるポリエチレン粉体に添加される、本開示に係るポリエチレン組成物を調製するための構成を概略的に示す。
【0076】
図4に示すポリエチレン組成物を調製するための構成は、過酸化物溶液がポンプ(110)によって貯蔵容器(111)から第1押出機(115)に移送され、ホッパー(114)の下流であってポリエチレン粉体が溶融していない位置(126)でインジェクタ(125)によって押出機(115)に射出されることを除いて、
図4に示すポリエチレン組成物を調製するための構成と同じである。
【0077】
図5は、有機過酸化物とポリマー担体との固体混合物が混合装置におけるポリエチレン粉体に添加される、ポリエチレン組成物を調製するための比較構成を概略的に示す。
【0078】
図5に示すポリエチレン組成物を調製するための構成は、スクリューコンベア(107)に過酸化物溶液が供給されないことを除いて、
図4に示すポリエチレン組成物を調製するための構成と同じである。代わりに、ポリマー担体上の有機過酸化物は、モータ(133)によって運転される投入装置(132)のホッパー(131)に供給され、投入装置(132)は、ポリマー担体上の有機過酸化物をホッパー(109)の下流に位置するスクリューコンベア(107)のホッパー(134)に供給する。
【0079】
本開示のプロセスは、ポリエチレン粒子の質量メジアン径D50が400μm~2500μmの範囲にあるポリエチレン粉体から、二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を調製することができ、このポリエチレン組成物は、ブローフィルムを調製する際の良好な気泡安定性及び低ゲル化を含む優れた性能の組み合わせを有する。さらに、このプロセスは、経済的な手段で連続的に実施することができる。
【0080】
別の態様では、本開示は、本開示に係るプロセスによりポリエチレン組成物を調製するステップa)と、ポリエチレン組成物を管材に形成するステップb)を含む、管材の製造プロセスを提供する。管材は、10~17のSAG値を有する管材であることが好ましい。
実施例
【0081】
メルトフローレートMFR5は、DIN EN ISO1133-1:2012-03に準拠し、温度190℃、荷重5kgで測定する。
【0082】
SAG値は、回転平行板レオメータによって、230℃で5200秒間の剪断応力300Pa、板開度1mmで測定された。SAG値は、試験終了時に測定したクリープひずみ率の1/10thとする。SAG値が低いほど、管材の厚みが均一になる。
【0083】
ゲル数及びゲル面積は、流延膜を用意し、光走査装置により膜欠陥を解析し、膜欠陥の大きさ(円径)により分類して計数することにより求められる。冷却ロールと巻取り機(コリンチルロール144/230型)を備えた押出機(コリン25型)でフィルムを作製し、フラッシュカメラ方式を備えた光学フィルム表面分析装置FSA100型(OCSオプティカルコントロールシステム社製(ドイツのウィッテン))で分析した。この設備は以下の特徴を有する。
- スクリュー径:25 mm、
- スクリュー長さ:25d、
- 圧縮比:3.5:1、
- スクリューレイアウト27D:9D送り、7D圧縮、9D計量、
- ダイ幅(スリットダイ):150 mm、
- 解像度:25μm×25μm、
次の条件で操作する。
- T 1 200°C;
- T 2 210°C;
- T 3 220°C;
- T4,5(アダプタ) 230℃、
- T6、7、8(ダイ) 240℃、
- 起動速度 3.0m/min、
- スクリュー速度 は膜厚50μmに調整される。
- スループット 1.0~1.5kg/h(ターゲット1.1kg/h)
- エアシャワー オン、
- コールドロール温度 60℃、
- カメラしきい値 しきい値1:50%-しきい値2:45%。
【0084】
測定を開始するために、押出機と起動ユニットを所定の条件に設定し、既知のゲルレベルを有する材料から開始する。押出機が温度と溶融圧力が安定していることを示したら、フィルム検出ソフトウェアを起動する。出発材料で押出機を少なくとも30分操作した後、又はゲルカウントが既知のゲルレベルに達した後、最初の測定すべき試料を押出機に供給した。安定したゲルレベルに45分間到達した後、カメラが少なくとも3m2のフィルム領域を検査するまで、カウントプロセスを開始した。その後、次の試料を押出機に供給し、再び45分間安定ゲルカウントに達した後、次の試料のカウントプロセスを開始した。全サンプルのカウントプロセスは、カメラが少なくとも3m2 フィルムの面積を検査し、測定された各サイズグラスの欠陥数を1m2フィルムに正規化するように設定される。
【0085】
DIN 53477(1992年11月)に基づき、AS 200対照振動ふるい(Retsch GmbH,Haan,Germany)と7つの校正ふるいセット(125μm、250μm、500μm、710m、1000μm、1400μm、2000μm)を用いて乾式ふるい分析により、製造したポリエチレン粉体の粒度分布を測定した。この設備のソフトウェアEasy Sieve4.0を用いて、各篩上で計量した後、粒度分布を算出することにより、ポリエチレン粒子の質量-メジアン径D50を求めた。
実施例1
【0086】
図1に示すように、一連の流動層反応器と、2つの反応領域が連結されたマルチゾーン循環反応器(MZCR)でポリエチレンを調製した。
WO 2018/114453 A1の実施例6に従って調製された12g/hのジーグラー・ナッタ触媒を、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)及びジエチルアルミニウム塩化物(DEAC)を加えた第1撹拌予備接触容器に、0.7kg/hの液体プロパンを用いて添加した。TIBAとDEACの重量比は7:1である。アルキルアルミニウムと触媒固体との重量比は5:1である。最初の予備接触容器は50℃に保持され、滞在時間は30分である。第1予備接触容器の触媒懸濁液を、30分間の滞留時間で運転し、50℃に保持された第2撹拌予備接触容器に連続的に移送したその後、触媒懸濁液を、ライン(10)を介して流動層反応器(1)内に連続的に移送した。
流動層反応器(1)において、分子量調整剤として水素を用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合した。50kg/hのエチレンと230g/hの水素ガスとをライン(9)を介して流動層反応器(1)に供給した。コモノマーは添加されていない。重合は80℃の温度と2.9MPaの圧力で行われた。
流動層反応器(1)で得られるポリエチレンは、MFR
2.16が80g/10分であり、密度が0.967g/cm
3である。
流動層反応器(1)で得られたポリエチレンはマルチゾーン循環反応器(21)に連続的に移送され、このマルチゾーン循環反応器(21)は、2.5MPaの圧力及び80℃の温度で運転し、これらの圧力及び温度は反応ガス混合物が分離ゾーン(28)を出た直後のライン(29)の開始で測定された。上昇管(22)は内径200mm、長さ19mである。下降管(23)は全長18mで、内径300mmの上部5m、内径150mmの下部13m、上部と下部の間の長さ0.43mのテーパー部に分かれている最終ポリマーを、ライン(35)を介して不連続に吐出した。
50kg/hrの液体流れをバリア流体としてライン(40)を介して下降管(23)の上部に供給した。バリアを生成するために使用される液体は、60℃及び2.5MPaの運転条件下で、熱交換器(37)内にてリサイクルガス混合物を部分的に凝縮させ、分離容器(38)内にて液体及びガス成分を分離することに由来する。液体バリア流体は、バリア流体を蒸発させることにより発生するガスが、エチレン:4.2vol%、水素:0.02vol%、1-ヘキセン:0.6vol%、プロパン:95.18vol%であるような組成を有する。
追加のモノマーを、バリアの下にある3つのモノマー供給点で下降管に供給した。下降管(23)に供給される新鮮モノマーの合計量は、エチレン20kg/hr及び1-ヘキセン1.7kg/hrである。また、プロパン5kg/hr、エチレン25.5kg/hr、水素1.3g/hrをライン(51)を介してリサイクルライン(29)に供給した。
流動層反応器(1)とマルチゾーン循環反応器(21)のシリーズで最終的に得られるポリエチレンにおいて、51重量%は流動層反応器(1)で生成され、49重量%はマルチゾーン循環反応器(21)で生成される。
最終的に得られるポリエチレンは、MFR
5が0.21g/10分であり、密度が0.948g/cm
3である。ポリエチレン粉体の質量メジアン径D50は1624μmである。
実施例2
【0087】
実施例1で得られたポリエチレン粉体に、添加剤、Songnox 1010(SONGWON Industrial Co.,Ltd.(韓国蔚山)により提供)、Irgafos 168(BASFSE社(ドイツのポート・ルートヴィヒ)により提供)、ステアリン酸カルシウム「M」(So.G.I.S.(イタリアのインダストリア・キミカ・スパ、ソスピロ)により提供)を供給し、Mixaco LAB高速ミキサー(MIXACO Maschinenbau(ドイツのノイエンラーデ))で混合し、均質な粉体プレミックスを形成した。得られた添加剤粉体プレミックスと実施例1で調製されたポリエチレン粉体を、
図3に示すように、2つの異なる供給点で計量し、Somef Officina Meccanica E Fonderia(イタリアのオッキオベッロ)が提供するスクリューコンベアに供給し、そこで密に混合した。実施例1で得られた最終ポリエチレン粉体をコンベアスクリューに搬送する速度は125kg/hであった。添加剤の添加量は、最終的なポリエチレン組成物中の添加剤含有量であるSongnox 1010の1600ppm重量、Irgafos 168の1600ppm重量、ステアリン酸カルシウムMの1200ppm重量に相当する。酸素の存在を防止するために、窒素ガスを0.5m
3/hの供給速度でスクリューコンベアに射出した。
6wt%の2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン(ペルオキシHXはPERGAN社(ドイツのボホルト)により提供)と94wt%のパラフィンオイルOB 22 AT(Conqord Oil S.R.L.社(イタリアのカステラ グイドボノ)により提供)の均質な溶液を、
図3に示すように、スクリューコンベアで、
図2に示す液体インジェクタ(コペリオン社(ドイツのシュツットガルト)により提供)を用いて1MPaの注入圧力で計量し、上記の均質な溶液は、活性酸素0.606wt%を含有する溶液をもたらした。過酸化物溶液の添加量は、最終ポリエチレン組成物に対して1083ppm(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンの重量65ppmに相当)である。
次いで、スクリューコンベアミキサーにより生成されたポリエチレン粉体、添加剤及び過酸化物の均質な混合物を、第1二軸押出機ZSK50及び第2二軸押出機ZSK58を含むZSK NT 50/58押出ライン(コペリオン社(ドイツのシュトゥットガルト))の供給ホッパーに供給し、溶融、均質化及び溶融濾過ステップを行い、最後にFiltec UW50水中造粒システム(Filtec srl社(イタリアのバディア・ポレージネ))を用いて造粒する。融液濾過のために、融液を、60メッシュの4つの金属メッシュと、機械的支持としての20メッシュの金属ネットからなるスクリーンに通した。
適用された操作条件と、得られた粒子試料の特徴付け結果を表1に示す。
実施例3
【0088】
最終ポリエチレン組成物に対して1333ppm重量の過酸化物溶液(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン80ppm重量に相当)を添加することを除いて、実施例2のプロセスを、同じ条件で繰り返した。
適用された操作条件と、得られた粒子試料の特徴付け結果を表1に示す。
実施例4
【0089】
スクリューコンベア内で過酸化物溶液が計量されないこと、スクリューコンベアミキサーで生成されたポリエチレン粉体と添加剤との均質な混合物がZSK NT 50/58押出ラインの供給ホッパーに供給されることを除いて、実施例3のプロセスを、同じ条件で繰り返した。
図4に示すように、
図2に示す液体インジェクタ(コペリオン社(ドイツのシュツットガルト)により提供)を用いて、押出機温度80℃のポリマー溶融前の位置で過酸化物溶液を第1二軸押出機ZSK 50に計量し、1MPaの圧力で射出した。過酸化物溶液の添加量は、最終ポリエチレン組成物に対して1333重量ppm(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンの80重量ppmに相当)である。
適用された操作条件と、得られた粒子試料の特徴付け結果を表1に示す。
比較例A
【0090】
過酸化物を添加しないことを除いて、実施例2のプロセスを同じ条件で繰り返した。
得られたポリエチレン組成物は、ゲルレベルが非常に低かった。ただし、SAG値は45であった。このような高いSAG値は、得られたポリエチレン組成物が許容可能な肉厚変化を有する大口径管材の製造に適していないことを示している。
比較例B
【0091】
スクリューコンベア内で過酸化物溶液が計量されないことを除いて、実施例2のプロセスを、同じ条件で繰り返した。代わりに、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンとポリプロピレン((PERGAPROP HX-20 PP、PERGAN 社(ドイツのボホルト)より提供)の20wt%混合物を、
図5に示すように、スクリューコンベアで計量した。過酸化物混合物の添加量は、最終ポリエチレン組成物に対して325重量ppm(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンの65重量ppmに相当)であった。その後、スクリューコンベアミキサーで生成されたポリエチレン粉体、添加剤及び過酸化物混合物の均質な混合物を、ZSK NT 50/58押出ラインの供給ホッパーに供給した。
適用された操作条件と、得られた粒子試料の特徴付け結果を表1に示す。
比較例C
【0092】
最終ポリエチレン組成物に対して400ppm重量の過酸化物混合物(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン80ppm重量に相当)を添加することを除いて、比較例Bのプロセスを同じ条件で繰り返した。
適用された操作条件と、得られた粒子試料の特徴付け結果を表1に示す。
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二峰性又は多峰性ポリエチレンを含むポリエチレン組成物を押出機装置において調製するプロセスであって、
DIN EN ISO 1183-1:2004に準拠して23℃での密度が0.940g/cm
3~0.968g/cm
3であるポリエチレン粉体の形態の二峰性又は多峰性ポリエチレンを混合装置に供給するステップa)と、
有機過酸化物でない1種以上の添加剤を前記混合装置に供給するステップb)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを、ポリエチレン粉体を溶融することなく、10~100℃の温度で混合して混合物を形成するステップc)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を前記混合装置から前記押出機装置に移送するステップd)と、
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む前記混合物を押出機装置内で溶融均質化して溶融ポリエチレン組成物を形成するステップe)と、
前記溶融ポリエチレン組成物を造粒するステップf)と、を含み、
有機過酸化物を含む液体は、ポリエチレン粉体に対して前記有機過酸化物が20ppm~200ppmの量で前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加され、前記液体は、混合が起こりかつ前記ポリエチレン粉体の温度が10℃~100℃となる位置で前記ポリエチレン粉体に添加される、方法。
【請求項2】
前記有機過酸化物を含む液体は、ステップc)の前又は途中に、前記混合装置における前記ポリエチレン粉体又は前記ポリエチレン粉体を含む混合物に添加されるか、又は、ステップe)の前に、前記押出機装置におけるポリエチレン粉体を含む混合物に、前記混合物が溶融していない位置で添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記有機過酸化物を含む液体は、前記有機過酸化物を含む液体を0.5~4MPaの注入圧力で、予荷重をかけたばねを含むばねインジェクタに通すことにより、前記ポリエチレン粉体に添加される、請求項1~2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機過酸化物を含む液体は、活性酸素の含有量が0.1wt%~10wt%の範囲にある過酸化物溶液である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ステップc)の混合は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、前記混合装置内の気相中の酸素含有量が5vol%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物の前記押出機装置への導入は、酸素含有量が低減された雰囲気中で行われ、ホッパー内の酸素含有量が5vol%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記押出機装置は、共回転する2つの二軸押出機の組み合わせであり、前記ポリエチレン粉体と前記添加剤とを含む混合物は前記第1二軸押出機に移送され、前記第2二軸押出機は、前記第1二軸押出機から溶融ポリマー流れを供給され、均質化プロセスを完了する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記溶融ポリエチレン組成物を、造粒前に融液フィルタを通過させる、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
アルキルアルミニウムとマグネシウムハロゲン化物に担持されたチタン化合物との反応生成物を含むジーグラー又はジーグラー・ナッタ触媒である重合触媒の存在下で、二峰性又は多峰性ポリエチレンを調製するための重合を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
管材を製造するためのプロセスであって、
請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセスによりポリエチレン組成物を調製するステップa)と、
前記ポリエチレン組成物を管材に形成するステップb)と、を含む、管材の製造方法。
【国際調査報告】