(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】線維症の処置および創傷治癒の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20231026BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231026BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231026BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231026BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231026BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231026BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231026BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231026BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20231026BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231026BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231026BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231026BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20231026BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20231026BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231026BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P11/00
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61P1/16
A61P17/00
A61P17/02
A61Q19/08
A61K8/64
A61P3/06
C07K19/00
C12N15/62 Z
C07K14/715 ZNA
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545891
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 US2021053297
(87)【国際公開番号】W WO2022076272
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519456538
【氏名又は名称】コンセホ、ナシオナル、デ、インベスティガシオネス、シエンティフィカス、イェ、テクニカス
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO NACIONAL DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS Y TECNICAS
(71)【出願人】
【識別番号】523123499
【氏名又は名称】ラドバイオ ユーエスエー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【氏名又は名称】三橋 規樹
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】ロモ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】デュウェイ,リカルド,アルフレド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF65
4C083AD411
4C083CC03
4C083EE12
4C083EE13
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA20
4C084BA41
4C084DA39
4C084MA63
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZC33
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA51
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
安定剤に結合された可溶性II型TGF受容体を含む融合タンパク質を投与することによって、肝臓線維症、肺線維症または皮膚線維症などの異なる線維症、創傷治癒および皮膚の若返りを処置する方法が、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする哺乳動物において線維症を処置する方法であって、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の治療有効量を前記哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記可溶性TGF-βII型受容体が、配列番号1に示される前記アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定剤が、ヒト免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記線維症が、肝臓線維症、肺線維症および皮膚線維症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒトが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、強皮症/全身性硬化症(SSc)、特発性肺性線維症、および原発性胆汁胆管炎(PBC)の選択された障害または疾患を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも85%の同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
線維症を処置するための組成物であって、前記組成物が、安定剤に連結された可溶性II型TGF-β受容体および薬学的に許容可能な賦形剤を含み、線維症が、肝臓線維症、肺線維症および皮膚線維症からなる群から選択される、組成物。
【請求項9】
必要とする哺乳動物において創傷を治癒する方法であって、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の治療有効量を前記哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項10】
前記可溶性TGF-βII型受容体が、配列番号1に示される前記アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記安定剤が、ヒト免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも85%の同一性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
創傷治癒のための組成物であって、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体;および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、組成物。
【請求項15】
ヒトの皮膚の老化を減速させる方法であって、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の有効量を前記ヒトに投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記可溶性TGF-βII型受容体アミノ酸配列が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記安定剤が、免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記融合タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも85%の同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ヒトの皮膚の老化を低下させるための化粧用組成物であって、安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体;および許容可能な賦形剤を含む、化粧用組成物。
【請求項20】
安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の、線維症を処置する医薬を調製するための使用。
【請求項21】
安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の、創傷を治癒する医薬を調製するための使用。
【請求項22】
安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の、ヒト皮膚の老化を低下させる化粧用組成物を調製するための使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
線維症とは、組織構造のひずみおよび器官機能の喪失を引き起こす可能性がある細胞外基質(ECM)の過度の蓄積である。この病変は、根底にある病因に関係なく、慢性もしくは反復的な組織損傷または傷害によって生じる創傷治癒応答に一般に起因し、あらゆる器官または固形組織において実質的に起こりうる。糖尿病、高血圧、ウイルス性および非ウイルス性肝炎、心不全および心筋症、特発性肺疾患、強皮症、ならびにがんを含む多様で一般的な慢性疾患が、線維症を招く場合がある。過度のECMは、実質組織を置きかえ、破壊するので、これらおよび他の疾患に起因する線維症は、肝臓、肺、腎臓、心臓または他の重要器官の不全を招く場合がある。結果的に、重度の線維症は、先進国世界における全ての死の最大45%を占めると推定されている。線維症に対する療法は現在ほとんどなく、有効性が限られたものである。したがって、線維症がどのように退縮しうるか理解し、潜在的な新たな治療的手法を特定することが急務である(Jun JI, Lau LF. J Clin Invest. 2018; 128 (1): 97-107)。
【0002】
皮膚は、身体で最大の器官系である。したがって、皮膚は、機械的力および感染、体液不均衡、ならびに熱の異常調節に対する保護に重要な役割を果たしている。同時に、皮膚は、身体の一部領域における関節機能を可能にする柔軟性および掌または足の裏の位置をずれにくくするより柔軟性のない固定を可能にする。多くの症例では、医学的介入を必要とする不十分な創傷治癒を起こす。真性糖尿病または末梢血管疾患などの慢性状態は、創傷治癒不良にする場合がある。皮膚裂傷または大規模熱傷などの急性外傷は、皮膚器官の機能の喪失を伴い、身体を感染症、熱の異常調節および体液喪失に対して脆弱にする(Sorg H, et al. Eur Surg Res. 2017;58(1-2):81-94)。
【0003】
創傷治癒療法は、伝統的療法と近代的療法に大きく分類できるが、有効性のレベル、臨床的容認および副作用は様々である。伝統的療法は、発展途上国の農村住民によって数世紀にわたり主に使用されてきた。これら療法は、薬草および動物に由来する化合物、生物体、銀ならびに伝統的ドレッシング材の使用を一般に含む。他方、近代的療法は、移植片、近代的ドレッシング材、生物工学的代替皮膚、および細胞ドレッシング材/成長因子療法の使用を含む。しかしながら、健康で機能的な皮膚の再生は、その多層構造と、細胞外基質内に異なる細胞型の組織的様式での存在のために、依然として大きな課題である(Pereira RF, Bartolo PJ. Adv Wound Care (New Rochelle). 2016;5(5):208-229)。
【0004】
皮膚老化には、2つの主要な過程:内因性および外因性が存在する。個々の遺伝的背景の変動は、老化を内因性に支配し、時間経過につれて起こる。定義によると、この形態の老化は不回避であり、したがって、明らかに、ヒトの行動の変化による操作の対象ではない。これに反して、外因性老化は、喫煙、過度のアルコール消費、栄養不足および日光への慢性曝露など、人体に導入される外部起源の因子によって生成される。これら外部因子の中でも、日光曝露は、皮膚に最も著しい損傷を与えると思われている。実際に、顔の老化の80%は、日光への慢性曝露によると考えられている。内因性と外因性両方の老化過程は、活性酸素種としても公知のフリーラジカルの形成に影響されるとも考えられている。コラーゲンの喪失は、老化皮膚の特徴的な組織学的所見と考えられている。しわおよび色素変化は、光線老化と直接関連しており、最も顕著な皮膚症状と考えられる。そのような光線損傷は、早期老化の皮膚徴候を表す。さらに、慢性日光曝露の有害な帰結、特に様々な形態の光誘導性皮膚がんは、急性および慢性日光曝露とも関連がある。光線老化を防止することを意図する唯一の公知の戦略は、日光を回避すること、日焼け止めを使用して紫外線照射への皮膚曝露を遮断または減少させること、レチノイドを使用してコラゲナーゼ合成を阻害し、コラーゲン産生を促進すること、ならびに酸化防止剤を、特に組み合わせて使用してフリーラジカルを減少させ、中和することを含む(Bauman L. J Pathol 2007; 211: 241-251)。
【0005】
線維症を防止または処置するための異なる試みが存在し、例えば:欧州特許第2566967号明細書は、カドヘリン11活性を呈する線維症を処置するためのカドヘリン11アンタゴニストを開示している。欧州特許第2010551号明細書には、GBA2阻害剤の使用が開示され、阻害剤は、N-[5’-(アダマンタン-1’-イル-メトキシ)-ペンタン]-1-デオキシノジリマイシン、N-[5’-(アダマンタン-1’-イル-メトキシ)-ペンタン]-L-イド-1-デオキシノジリマイシン、N-[5’-ネオペンチルオキシ-ペンタン]-1-デオキシノジリマイシンおよびN-[5’-ネオペンチルオキシ-ペンタン]-L-イド-1-デオキシノジリマイシンでありえ、前記阻害剤を使用して、嚢胞性線維症の処置のための薬物が調製される。特許文献の欧州特許出願公開第1997507号明細書において、血管新生因子およびトランスポーターを含む、線維輪欠損を処置するための組成物が、開示される。組成物は、血管新生および血管再生を刺激する。米国特許第9,937,133(B2)号明細書は、線維症の処置のためのアルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害剤を開示する。米国特許第10,106,603(B2)号明細書は、インターロイキン11の作用を阻害する薬剤の使用を開示している。
【発明の概要】
【0006】
必要とする哺乳動物において線維症を処置する方法が提供され、方法は、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体(TBRII-SE)を含む融合タンパク質の治療有効量を前記哺乳動物に投与する工程を含む。可溶性受容体は、配列番号1の可溶性TGF-βII型または配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するペプチドでもよい。安定剤は、融合タンパク質を安定化する任意のペプチドでもよい。好ましい実施形態において、安定剤は、免疫グロブリン(Ig)のFcドメインである。別のより好ましい実施形態において、安定剤は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)のFcドメインである。線維症は、いずれの起源のいずれの線維症でもよく、好ましい実施形態において、線維症は、肝臓線維症、肺線維症または皮膚線維症である。哺乳動物がヒトである場合、線維症は、それだけには限らないが、以下の障害および/または疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、強皮症/全身性硬化症(SSc)、特発性肺性線維症、ならびに原発性胆汁胆管炎(PBC)による場合がある。
【0007】
安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体融合タンパク質(配列番号1);および薬学的に許容可能な賦形剤を含む線維症を処置するための組成物も提供される。好ましい実施形態において、安定剤は、免疫グロブリンFcドメイン、例えばヒトIgGのFcドメインである。好ましい実施形態において、融合タンパク質は、配列番号2に示される配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性があるアミノ酸配列を含む。
【0008】
必要とする哺乳動物において創傷を治癒する方法が提供され、方法は、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の治療有効量を前記哺乳動物に投与する工程を含む。可溶性受容体は、配列番号1の可溶性TGF-βII型または配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するペプチドでもよい。安定剤は、融合タンパク質を安定化する任意のペプチドでもよい。好ましい実施形態において、安定剤は、免疫グロブリン(Ig)のFcドメインであり、例えば、限定するものではないが、安定剤は、ヒトIgGのFcドメインである。
【0009】
安定剤に結合された内因性可溶性TGF-βII型受容体(TβRII-SE)を有する融合タンパク質;および薬学的に許容可能な賦形剤を含む創傷治癒用組成物が、提供される。
【0010】
ヒトの皮膚の老化を低下させる方法が提供され、方法は、安定剤に結合された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質の有効量を前記ヒトに投与する工程を含む。好ましい実施形態において、安定剤は、免疫グロブリンのFcドメイン、例えばヒトIgGのFcドメインである。好ましい実施形態において、融合タンパク質は、配列番号2に示される配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性があるアミノ酸配列を含む。
【0011】
安定剤に連結された可溶性TGF-βII型受容体を含む融合タンパク質;および許容可能な賦形剤を含む、ヒト皮膚の老化を低下させる化粧用組成物が提供される。
【0012】
本発明の組成物は、公知の経路のいずれか、例えば真皮内、皮下、静脈内、筋肉内、in situ、真皮、表面、例えば皮膚に沈着させることによって適用されうる。本発明の組成物は、クリーム剤、ゲル剤、液剤、丸剤、カプセル剤、注射剤、ローション剤、制御放出組成物、パッチ剤または他の公知の形態として処方されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】TβRII-SE/Fc融合タンパク質、ニンテダニブおよび媒体(対照)で処置したマウスの毎日の体重決定を示す図である。ニンテダニブ対媒体*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
【
図2】ブレオマイシン誘導された皮膚線維症マウスにおける真皮厚(白矢印)および真皮白色脂肪組織(dWAT)(黒矢印)に対する融合タンパク質TβRII-SE/Fcおよびニンテダニブによる処置の効果を示す、H&Eで染色した皮膚組織の代表的な顕微鏡写真である(A)。真皮厚(B)およびdWAT厚(C)の定量化を示す図である。#P<0.1;**P<0.01。
【
図3】ブレオマイシン誘導された皮膚線維症マウスにおけるTβRII-SE/Fc融合タンパク質およびニンテダニブによる処置の抗線維化効果を示す、マッソントリクローム染色した皮膚組織の代表的な顕微鏡写真である(A)。線維性領域の定量化を示す図である(B)。#P<0.1;n.s.:有意でない。
【
図4】媒体、TβRII-SE/Fc融合タンパク質、およびニンテダニブで処置した動物におけるブレオマイシン誘導された肺線維症を示す、マッソントリクローム染色した肺組織の代表的な顕微鏡写真である(A)。TβRII-SE/Fc融合タンパク質およびニンテダニブによる処置が、媒体群(対照)と比較して線維症を減少させる傾向があることを示す、Ashcroft指数として評価した肺性線維症の定量化を示す図である(B)。#P<0.1。
【
図5】TβRII-SE/Fc融合タンパク質による処置2週間後の、CCl4誘導された肝臓線維症ラットにおけるトランスアミナーゼレベルを示す図である;ALT(A)およびAST(B)。*P<0.05;**P<0.01。
【
図6-1】ラットにおいてCCl4誘導された肝臓線維症モデルにおけるTβRII-SE/Fc融合タンパク質による4週間の処置の組織学的効果を示す図である。TβRII-SE/Fcによる処置は、線維症指数(A)および非アルコール性脂肪肝疾患の活性指数(NAFLD)(B)を減少させ、肝臓炎症(C)および卵形細胞数(D)を低下させ、肝臓構造の改善に対して正の効果を示した。#P<0.1;*P<0.05;**P<0.01。
【
図7-1】ヒト皮膚外植片における創傷修復に対するTβRII-SE/Fc融合タンパク質の効果を示す図である。処置4日後にマッソントリクローム溶液で染色した代表的な切片である。矢印は、新しい表皮の長さを示す(A)。新しい表皮の成長に対する処置4日後のTβRII-SE/Fcの効果を示す図である(B)。処置8日目に創傷の完全な閉鎖を示した外植片の定量化を示す図である(C)。傷害のある皮膚外植片における新しい表皮の分化に対するTβRII-SE/Fc融合タンパク質の効果を示す図である(D)。*P<0.05。
【
図8-1】TβRII-SE/Fc融合タンパク質の抗老化効果が、ヒト皮膚外植片におけるI型コラーゲン産生の増大によって示される。TβRII-SE/Fc融合タンパク質による処置4日後の免疫蛍光によって証明されるI型コラーゲン発現の増大の代表的な顕微鏡写真を示す図である(A)。媒体(対照)またはTβRII-SE/Fcにより4および8日間処置した外植片におけるコラーゲンの存在による蛍光の定量化を示す図である(B)。***P<0.001。
【
図9】肺性線維症モデルにおける肺のサンプリングの代表的な線図である。
【
図10】直径3.5mmの生検パンチを使用した矩形ヒト皮膚外植片に対する機械的病変の具現化の代表的な線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語「TβRII-SE/Fc」および「TβRII-SE/Fc融合タンパク質」は、同じ意味を有し、交換可能である。好ましいが、限定された実施形態において、融合タンパク質は、配列番号1に示される配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性があるアミノ酸配列を有する。
【0015】
一実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFcドメインは、ヒトIgGのFcドメインである。別の好ましい実施形態において、ヒトIgGのFcドメインは、N-グリコシル化部位を除去するための点突然変異、例えばIgG1重鎖におけるAsn297Gly変化を有してもよく、それによって脱グリコシル化されたFcドメインを得ることができる。
【0016】
創傷は、限定することなしに、出血する場合もしない場合もある傷害と理解され、切傷、注射、圧力、摩擦、手術、糖尿病等の結果として身体の外側組織に生じる。
【0017】
治癒は、組織修復の生物学的過程と理解される。
【0018】
皮膚の老化には、2つの過程:時間経過とともにその中で起こる内因性過程、または喫煙、過度のアルコール消費、質の悪い食生活および日光への慢性曝露など、人体に導入される外部起源の因子によってもたらされる外因性過程、があると理解されている。内因性と外因性両方の老化過程は、活性酸素種としても公知のフリーラジカルの形成に影響される。コラーゲンの喪失は、老化皮膚の特徴的な組織学的所見と考えられていられる。しわおよび色素変化は、光線老化と直接関連し、その最も顕著な皮膚症状と考えられる。そのような光線損傷は、早期老化の皮膚徴候を表す。加えて、慢性日光曝露の有害な帰結、特に様々な形態の光誘導性皮膚がんは、急性および慢性日光曝露とも関連がある。それは、皮膚の老化を減速することによってこれらの皮膚症状を後退させると理解されている。
【0019】
安定剤は、融合タンパク質の受容体媒介リサイクルを増大させ、腎クリアランスを防止し、酵素的分解を低下させることによってin vivoでの融合タンパク質の半減期を増大させる任意の安定剤でもよい。
【0020】
融合タンパク質は、両方の部分のリガンドを含むことができる。
【0021】
皮膚線維症の場合、ニンテダニブ群の平均体重は、18~22日目ならびに26日目および28日目において媒体群(対照)の体重より有意に低かった(
図1)。研究期間中のどの日においても、媒体群とTβRII-SE/Fc融合タンパク質で処置した群との間で平均体重に有意な差異は存在しなかった。全群において飼育期間中に死んだ動物はなかった。どの動物も、その全身状態の悪化を示さなかった。
【0022】
定量化されたH&E染色した皮膚切片の代表的な顕微鏡写真(
図2)は、媒体群と比較して、TβRII-SE/Fc融合のタンパク質で処置した群における真皮厚の統計的に有意な低下、加えて真皮白色脂肪組織(dWAT)層の顕著な拡大を示した。
【0023】
マッソントリクローム染色した皮膚の代表的な顕微鏡写真および定量化(
図3)は、TβRII-SE/Fc融合タンパク質で処置した群において線維症の領域が、媒体群と比較して低下する傾向があることを示した。媒体群とニンテダニブ処置群の間で線維症の領域に有意な差異は存在しなかった。
【0024】
肺性線維症の場合、マッソントリクローム染色した肺切片を表す顕微鏡写真は、TβRII-SE/Fc融合タンパク質で処置した動物において肺性線維症の低下を示した(
図4)。TβRII-SE/Fcおよびニンテダニブ群におけるAshcroftスコアは、媒体群と比較して低下する傾向があった(
図4)。
【0025】
H&E染色およびマッソントリクローム染色によって証明された通り、媒体処置群において表皮性肥大および皮膚線維症が、確立された。
【0026】
TβRII-SE/Fcによる処置は、媒体処置群(対照群)と比較して真皮厚の有意な低下および線維症領域が低下する傾向を示した。さらに、TβRII-SE/Fc処置は、dWAT層の有意な増大を示した。
【0027】
結論として、これら結果は、TβRII-SE/Fc融合タンパク質が、皮膚線維症を抑制し、dWAT層を再生する潜在性を有することを示唆した。
【0028】
マッソントリクローム染色試験およびAshcroftスコアによって実証された通り、媒体群(対照群)において肺性線維症の確立が観察された。
【0029】
TβRII-SE/Fcおよびニンテダニブによる処置は、媒体群と比較してAshcroftスコアの低下傾向を示した。
【0030】
結論として、TβRII-SE/Fcによる処置は、媒体群と比較してAshcroftスコアの低下傾向を示し、TβRII-SE/Fcが、肺性線維症において抗線維化効果を有することを示唆した。
【0031】
肝臓線維症モデルで実施した試験において、CCl4による処置でラット血清中のALTおよびASTのレベルが劇的に増大したことが示された(
図5)。TβRII-SE/Fc融合タンパク質による処置のわずか2週間後(CCl4処置の4週間後)に、5mg/kgまたは1mg/kgを受けた動物は、モデル群または対照群と比較して、双方向ANOVAによって分析されたALT/ASTにおいて統計的に有意な差異を示した(
図5)。試料は、CCl4の最後の用量の24時間後に取られた。
【0032】
線維症スコア、非脂肪肝疾患指数(NAFLD)、炎症細胞浸潤および卵形細胞過形成における統計的に有意な差異(#P<0.1、*P<0.05、**P<0.01)(
図6)。
【0033】
H&E染色した肝臓切片の分析は、様々な組織学的パラメータの評価を可能にした。クラスカルワリス分析それに続くダン検定は、線維症スコア、炎症細胞浸潤、および卵形細胞過形成において統計的に有意な差異を示した(*P<0.05、**P<0.01)(
図6)。
【0034】
CCl4による処置は、ALT/ASTレベルを劇的に上昇させ、肝臓線維症を促進した。TβRII-SE/Fcによる処置は、1週間に2用量の処置の2週間後(4用量)にALT/ASTレベルを有意に減少させた。
【0035】
TβRII-SE/Fcによる処置は、線維症スコア、炎症細胞浸潤および卵形細胞過形成を有意に減少させ、肝臓線維症の改善および肝臓構成の部分的回復を示した。
【0036】
ヒト生皮膚外植片における創傷修復および抗老化モデルに対する試験の結果が、分析された。結果は、TβRII-SE/Fcが、5ならびに200μg/mLでの処置の4および8日後にヒト皮膚外植片による耐容性が良いことを示した。
【0037】
他方、4日目に、TβRII-SE/Fc融合タンパク質は、創傷治癒を31%(5μg/ml)および44%(200μg/ml)有意に増大させた(
図7A)。8日目に、TβRII-SE/Fc(5または200μg/mlのいずれか)で処置した6つの外植片のうちの5つが、完全な創傷治癒を示し、一方6つの対照外植片のうちの2つだけが創傷を塞いだ(
図7)。さらに、TβRII-SE/Fcは、8日目に新しい表皮の分化に対して顕著な効果を示した(
図7)。
【0038】
処置の4および8日後にI型コラーゲンの産生を刺激した場合、TβRII-SE/Fc融合タンパク質は、統計的に有意な抗老化活性も呈した(p<0.001)(
図8)。
【0039】
TβRII-SE/Fcは、損傷を受けた皮膚外植片において新しい表皮の形態構造、移動、増殖、細胞接着および分化の有意な増大を誘導した。
【0040】
TβRII-SE/Fcは、真皮におけるI型コラーゲン産生の有意な増大も誘導した。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
皮膚および肺性線維症を処置するためのTβRII-SE/Fc産生およびTβRII-SE/Fcの使用。Marcela Bertolio, et., al., Frontiers in Cell and Developmental Biology. 9:690397.doi: 10.3389/fcell.2021.690397 (2021)に記載される方法にしたがって、TβRII-SE/Fcを産生した。
【0042】
TβRII-SE/Fc(5.2mg/ml)を、研究プロトコールにしたがってPBS pH7.4中に希釈した。ニンテダニブを、Chemexpress Co.,Ltd.(中国)から購入した。投薬溶液を調製するために、ニンテダニブを秤量し、1%メチルセルロース中に再懸濁した。
【0043】
組成物の投与の経路および用量:TβRII-SE/Fcを、週2回、肺性線維症モデルにおいて7~20日目(7、10、14および17日目)(4用量)および皮膚線維症モデルにおいて28日目まで(6用量)、容積5ml/kg(5mg/kg)で静脈内投与した。ニンテダニブを、肺性線維症モデルにおいて7~20日目および皮膚線維症モデルにおいて28日目まで1日1回、容積10ml/kg(100mg/kg)で経口投与した。
【0044】
動物:6週齢の雌C57BL/6Jマウス30匹を、日本エスエルシー株式会社(日本)から入手した。これらマウスを、制御された条件下で飼育し、通常食(CE-2;日本クレア)を給餌した。この研究に使用した動物は全て、以下のガイドライン:1)動物愛護および管理に関する法律(日本の環境省法律第105号、昭和48年10月1日);2)実験動物の飼養および保管ならびに苦痛の軽減に関する基準(日本の環境省告示第88号、平成18年4月28日);3)動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議、2006年6月1日)に沿って飼養された。
【0045】
動物を、温度(23±3℃)、湿度(50±20%)、照明(12時間の人工明暗サイクル;8:00~20:00照明)および換気を制御した条件下で、SPF施設内で飼った。施設の汚染を回避するために実験室内を高圧に維持した。
【0046】
動物を、ケージ当たり最高5匹のマウスでTPXケージ(日本クレア)内で飼育した。清潔な無菌化した紙(日本エスエルシー)を、動物の床敷きに使用し、1週間に1回取り替えた。マウスを、耳穿刺によって識別した。また、各ケージには、特定の識別コードも与えた。
【0047】
無菌化した通常の食餌を、ケージ上部の金属製の蓋に入れて不断に提供した。またRO水を、ゴム栓とストロー管を取り付けた水差しから不断に供給した。水差しを、週1回取り替え、掃除し、加圧殺菌し、再使用した。
【0048】
BLM誘導された肺線維症マウスモデルの誘導:0日目に、マウス30匹における肺線維症の発症を、Microsprayer(Penn-Century、米国)を使用して生理食塩水中の塩酸ブレオマイシン(BLM、日本化薬、日本)を用量3.0mg/kgで、動物当たり容積50μLで1回気管内投与することによって誘導した。
【0049】
BLM誘導された皮膚線維症モデルの誘導:BLM投与の前日に、マウスを、その体重に基づいてマウス10匹の3つの群にランダム化した。0日目に、マウス30匹に、生理食塩水中のBLM(ロット番号391870、日本化薬、日本)を用量50μg/マウス、容積50μlで1日おき(0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26日目)に皮下投与した。
【0050】
動物の監視および屠殺:生存率、臨床的徴候および挙動を毎日監視した。体重を、0日目から毎日記録した。投薬容積を、最終体重に基づいて調整した。マウスを、各投与のおよそ60分後に毒性、罹患率および死亡率の有意な臨床的徴候について観察した。動物を、21日目(肺性線維症モデル)および28日目(皮膚線維症のモデル)にメデトミジン(0.75mg/kg)、ミダゾラム(4mg/kg)およびブトルファノール(5mg/kg)の混合麻酔下で腹部大静脈を通じた放血によって屠殺した。投薬および終了のタイミングを、記録した。全マウスの左葉および下大静脈葉の質量を記録した。
【0051】
試料の採集:固定液の漏出を回避するために左葉の気管支と下大静脈を結紮した。留置針を気管に挿入し、注射器の点滴路に接続した。注射器に、10%中性緩衝ホルマリンをロードし、高さ20cmで保持した。上葉(a)、中間葉(b)および下葉(c)を、10%中性緩衝ホルマリンでその後点滴し、膨張後に結紮した。固定した3つの葉、無固定の左肺(e)および無固定の下大静脈葉(d)を採取した。無固定の2つの葉を冷生理食塩水で洗浄し、質量を測定した。
【0052】
3つの葉を、10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定した。固定化後、これら試料を、マッソントリクローム染色用としてパラフィン包埋した。下大静脈葉(D)を、液体窒素中で急速冷凍し、さらなる分析用として-80℃で貯蔵した。左肺(E)を、液体窒素中で直ちに冷凍し、さらなる分析用として-80℃で貯蔵した(
図9を参照のこと)。
【0053】
皮膚試料の場合、事前に剃毛した背部試料を採集し、10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定した。固定化後、これら試料を、組織病理学的分析用にパラフィン包埋した。
【0054】
組織病理学的分析:10%中性緩衝ホルマリンに予め固定した皮膚および右肺組織由来のパラフィンブロック切片を、回転式ミクロトーム(Leica Microsystems)を使用して4μmに切断した。
【0055】
H&E染色の場合、予め固定した皮膚組織パラフィンブロックの切片を、10%中性緩衝ホルマリン中で切断し、Lillie-Mayerのヘマトキシリン(武藤化学株式会社、日本)およびエオジン溶液(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)で染色した。真皮厚を定量分析するために、HE染色した切片の明視野像を、倍率100倍でデジタルカメラ(DFC295;Leica、ドイツ)で取り込み、真皮厚を、ImageJソフトウェア(アメリカ国立衛生研究所、米国)を使用して5視野/切片で測定した。
【0056】
皮膚と肺両方のマッソントリクローム染色のために、切片を脱パラフィンし、再水和し、続いてブアン液で15分間再固定化した。切片を、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン作業溶液(Sigma-Aldrich)、ビーブリッヒスカーレット酸性フクシン溶液(Sigma-Aldrich)、リンタングステン酸/リンモリブデン酸溶液、アニリンブルー溶液および酢酸溶液al 1%(Sigma-Aldrich)中で染色した。肺性線維症の領域の定量分析のために、マッソントリクローム染色した切片の明視野像を、倍率100倍でデジタルカメラ(DFC295)を使用して無作為に取り込み、20個の視野/マウスで胸膜下領域を取り込み、肺性線維症の分類基準にしたがって評価した(Aschcroft T. et al., J Clin Pathol, 1988; 41: 467-70)。全ての切片を、実験者が盲検的に分析した。
【0057】
肺性線維症のグレード(Aschcroftスコア):
正常肺または肺胞もしくは細気管支壁の極めて小さい線維性肥厚。
2-3 肺構成に明らかな損傷のない壁の中等度の肥厚。
4-5 肺構造に明確な損傷を伴う線維症の増大および線維性バンドまたは小さい線維性塊の形成。
6-7 構造の重度のひずみおよび大きな線維性領域;「ハニカム」の肺
8 視野の全線維性の消滅。
【0058】
Ashcroftスコアの場合、生データを整数として算出した。各切片(葉、上葉、中間葉および下葉)における20個の視野の平均値を、各個々の動物のAshcroftスコアとみなし、小数点以下第1位まで算出した。各群の平均値および標準偏差を、小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位まで算出した。
【0059】
統計分析を、GraphPad Prism 7(GraphPad Software社、米国)でANOVA法またはボンフェローニ多重比較検定を使用して実行した。モデル群を、多重比較の対照群として使用した(ダネット検定)。p<0.05の値を、統計的に有意とみなした。P値が、<0.1の場合に、傾向を仮定した。結果を、平均±SDとして表した。
【0060】
設計および処置の概要
皮膚線維症モデル:
群1:媒体
BLM誘導された皮膚線維症マウス10匹に、リン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4媒体を容積5ml/kgで0~27日目に1週間に2回(月曜日および金曜日)(合計8用量)静脈内投与した。
【0061】
群2:TβRII-SE/Fc
BLM誘導された皮膚線維症のマウス10匹に、TβRII-SE/Fcで補充した媒体を用量5.0mg/kg、容積5ml/kgで0~27日目に1週間に2回(月曜日および金曜日)(合計8用量)静脈内投与した。
【0062】
群3:ニンテダニブ
BLM誘導された皮膚線維症のマウス10匹に、ニンテダニブで補充した1%メチルセルロースを用量100mg/kg、容積10ml/kgで0~27日目に1日1回経口投与した。
【0063】
肺性線維症モデル:ブレオマイシン(BLM)投与の1週後、動物を、体重変化にしたがって3つの実験群にランダム化した:
【0064】
群1:媒体
BLM誘導された肺性線維症マウス10匹に、リン酸緩衝食塩水(PBS)媒体pH7.4を容積5ml/kgで0~20日目に毎週2回(4用量)静脈内投与した。
【0065】
群2:TβRII-SE/Fc
BLM誘導された肺性線維症マウス10匹に、TβRII-SE/Fcで補充した媒体を用量5.0mg/kg、容積5ml/kgで7~20日目に1週間に2回(4用量)静脈内投与した。
【0066】
群3:ニンテダニブ
BLM誘導された肺性線維症マウス10匹に、ニンテダニブで補充した1%メチルセルロースを用量100mg/kg、容積10ml/kgで7~20日目に1日1回経口投与した。
【0067】
[実施例2]
肝臓線維症の処置に対するTβRII-SE/Fcの使用
TβRII-SE/Fcを、1および5mg/kgで試験した。-80℃で貯蔵された5.2mg/ml保存溶液を氷上で解凍し、4℃に保った。投薬前に、保存溶液を、無菌PBSを用いて1mg/mlまたは0.2mg/ml作業溶液に希釈した。
【0068】
組成物の投与の経路および用量:TβRII-SE/Fcを、1および5mg/kgで、容積5ml/kgで、3~6週目に週2回(8用量)静脈内投与した。
【0069】
動物:中国科学院の上海実験動物中心(SLAC)からの、体重180~200グラムの雄スプラーグドーリーラット、SPFグレード42匹。通常飼料を研究の全体を通じて不断に提供し、動物には、飲料水を自由に摂取させた。
【0070】
到着後、動物を、特定病原体未感染(SPF)施設内で、順化のために飼育した。飼育条件は、温度20~26℃、湿度40~70%、および12時間照明/12時間暗所のサイクルであった。7日後、血液を採集し、血清を、5,000rpmで10分間の遠心分離によって調製し、ALT/AST測定にその後使用した。
【0071】
ラットにおけるCCl4による肝線維症の誘導:肝線維症を、経口胃管栄養法によってオリーブ油中の25%四塩化炭素(CCl4)を週3回(TIW)投与することによって誘導した。順化後、ラット32匹は、CCl4を経口胃管栄養法によって容積1mlで、用量0.5ml/kg(795mg/kg)で週に3回(TIW)2週間受けた。その代わりに、ラット10匹は、媒体(オリーブ油)(対照群)を受けた。処置2週間後に、対照動物2匹を屠殺し、線維症を、シリウスレッド染色によって確認した。
【0072】
動物の監視および屠殺:生存率、臨床的徴候および挙動は、毎日監視した。体重を、毎週記録した。動物を、研究6週後に屠殺した。
【0073】
標本の採集:血液を、ALT/AST測定のために0および2週目に採集した。血清試料を、5,000rpmで10分間の遠心分離によって調製した。
【0074】
完了したら、血液を、心穿刺によって採血し、血清を従来通り調製した。肝臓を、解剖し、秤量した。撮影後、左葉を、ホルマリン中に固定し、次いでH&E染色のために組織病理実験室へ移した。
【0075】
ALT/AST測定:血清ALTおよびASTを、自動化した生化学分析装置(MINDRAY BS-380)で測定した。
【0076】
組織病理学的分析:10%中性緩衝ホルマリンに予め固定した肝臓組織由来のパラフィンブロック切片を、回転式ミクロトーム(Leica Microsystems)を使用して4μmに切断した。
【0077】
H&E染色の場合、切片を、脱パラフィン化し、再水和し、その後ヘマトキシリン液で染色し、0.25% HClアルコール中に置き、エオシン中で対比染色し、脱水し、カバーグラス上に搭載した。専門家が、スライドの切片を線維症の程度、炎症細胞浸潤、脂肪症、肝細胞の変性/壊死について盲検的に分析した。
【0078】
スコアリングを、以下の通りに行った:
線維化の程度:
0-線維化なし
1-短い線維中隔を伴う線維性拡大。
2-短い線維中隔を伴うまたは伴わない、殆どの小葉中心域の線維性拡大。
3-小葉中心および/または門脈域の間に副次的架橋線維化を伴う線維性拡大。
4-小葉中心および/または門脈域の間に架橋線維化を伴う線維性拡大。
5-副次的小結節(不完全肝硬変)を伴う、小葉中心および/または門脈域の間の架橋線維化。
6-肝硬変(推定または確定)、小結節を伴う重度の架橋線維化。
【0079】
全般的な組織病理分類の概要:
0-顕著な所見なし;1-最小;2-軽度;3-中等度;4-印;5-重度;
【0080】
統計分析を、GraphPad Prism7ソフトウェア(GraphPad Software Inc.、米国)を使用して、必要に応じてANOVA(パラメトリック)またはクラスカルワリス(ノンパラメトリック)検定を使用して実行した。モデル群を、多重比較の対照群として使用した(ダネットまたはダン検定)。p<0.05の値を、統計的に有意とみなした。P値が、<0.1の場合に、傾向を仮定した。結果を、平均±SDとして表した。
【0081】
設計および処置の概要:CCl4処置2週間後に、ラット30匹を、血清ALT/ASTレベルに基づいて3群に無作為に割り当てた。CCl4または媒体を、6週目まで連続的に投与した。TβRII-SE/Fcを、5ml/kgで週2回(BIW)のCCl4による処置の2時間前に以下の通り静脈内注射によって投与した:
【0082】
群1(媒体):媒体(PBS pH7.4)を、健康な動物10匹に対し3~6週目に容積5ml/kg BIWで静脈内投与した(8用量)。オリーブ油を、完了までTIWで経口胃管栄養法によって連続的に投与した。
【0083】
群2(CCl4モデル):CCl4誘導された肝臓線維症ラット10匹は、媒体(PBS pH7.4)を容積5ml/kgで、3~6週目にBIWで静脈内に受けた(8用量)。CCl4 795mg/kgを、完了までTIWで経口胃管栄養法によって連続的に投与した。
【0084】
群3(高用量):CCl4誘導された肝臓線維症のラット10匹に、TβRII-SE/Fcを用量5mg/kg、容積5ml/kgで、3~6週目にBIWで静脈内投与した(8用量)。CCl4 795mg/kgを、完了までTIWで経口胃管栄養法によって連続的に投与した。
【0085】
群4(低用量):CCl4誘導された肝臓線維症のラット10匹に、TβRII-SE/Fcを用量1mg/kg、容積5ml/kgで、3~6週目にBIWで静脈内投与した(8用量)。CCl4 795mg/kgを、完了までTIWで経口胃管栄養法によって連続的に投与した。
【0086】
[実施例3]
創傷の処置および修復のため;および生きたヒト皮膚外植片において老化を減少させるためのTβRII-SE/Fcの使用
本研究の目的は、生きたヒト皮膚外植片を使用して創傷治癒および皮膚老化に対する2濃度のTβRII-SE/Fcの効果を評価することであった。
【0087】
創傷治癒効果を、以下によって評価した:創傷領域と無創傷領域の成長芽に焦点を合わせた全般的な形態構造の分析、成長芽の長さの分析。
【0088】
抗老化効果を、I型コラーゲン免疫染色によって評価した。
【0089】
TβRII-SE/Fcを、5(P1)および200(P2)μg/kgでアッセイした。-80℃で貯蔵された5.2mg/ml保存溶液を氷上で解凍し、4℃に保った。投薬前に、保存溶液を、培養培地に希釈した。処置を更新するたびに、全ての希釈を即時調製した。
【0090】
外植片の調製:55歳白色人種の女性(参照:P2422-AB55)からの腹壁形成外科手術において、21個の円形皮膚外植片(直径12mm)および21個の矩形皮膚外植片(10×15mm)を調製した。外植片を、5% CO2の湿潤雰囲気中で、37℃で、BEM培養培地(BIO-EC外植片培地)中で生存を保った。
【0091】
外植片の分布:外植片を、以下の表1の通りに8ロットに分配した。
【0092】
機械的病変の実行:各矩形外植片において、バッチB0、B、BP1およびBP2に対して、2つの機械的病変を、直径3.5mmの生検パンチを用いて0日目に実行した(
図10を参照のこと)。
【0093】
【0094】
処置:産物P1およびP2を、0日目(D0)、D2、D4およびD6に当該バッチの培養培地に組み込んだ。培養培地の半分(1ml)を、D2、D4およびD6に更新した。対照外植片は、処置を受けなかった。
【0095】
抗老化活性のサンプリングおよび測定:D0に、T0ロット由来の3つの外植片を採集し、2つの部分に切り分けた。半分を、緩衝ホルマリン中に固定し、他の半分を、-80℃で冷凍した。D4およびD8に、ロットT、P1およびP2由来の3つの外植片を採集し、同じ方法で処理した。
【0096】
傷の修復活性の評価:D0に、バッチB0由来の3つの外植片を採取し、3つの部分に切り分けた。第1の部分を、緩衝ホルマリン中に固定し、第2の部分を、-80℃で冷凍し、第3の部分を、最終的な後のトランスクリプトーム分析用にRNAとして貯蔵した。D4およびD8に、ロットB、BP1およびBP2由来の3つの外植片を採集し、同じ方法で処理した。
【0097】
組織学的検査:緩衝ホルマリン中で24時間固定した後、Leica TP 1010自動脱水装置を使用して試料を脱水し、パラフィン包埋した。試料を、Leica包埋ステーションEG 1160を使用して、その後含めた。厚さ5μmの切片を、Leica RM 2125 Minot型ミクロトームを使用して作製し、Superfrost(登録商標)組織学的スライドガラス上にその後封入した。顕微鏡観察を、Leica DMLBまたはオリンパスBX43顕微鏡を使用して行った。画像を、CellD記憶ソフトウェアを用いてオリンパスDP72デジタルカメラでデジタル化した。
【0098】
全般的な形態構造:表皮および真皮の構造ならびに成長芽の全般的な形態構造の観察を、マッソントリクローム、Goldner変形にしたがってパラフィン切片を染色した後に実施した。
【0099】
I型コラーゲン免疫染色:I型コラーゲン免疫染色を、PBS-0.3% BSA中に1:50希釈した抗I型コラーゲンポリクローナル抗体(Monosan社、参照番号PS047)を用いて凍結皮膚切片において実行し、室温で1時間インキュベートした。染色を、AlexaFluor 488(Life Technologies社、参照番号A11008)によって明らかにした。核を、ヨウ化プロピジウムでその後染色した。染色を手動で行い、顕微鏡観察によって評価した。
【配列表】
【国際調査報告】