(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】線維症を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231026BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231026BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20231026BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231026BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 105
A61K31/502
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547328
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021054713
(87)【国際公開番号】W WO2022081661
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523135573
【氏名又は名称】エンデバー バイオメディシンズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デ ロス リオス, ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】フッド, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディフランチェスコ, アニータ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA89
4C084ZB21
4C084ZC01
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZC01
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書は、線維症、特に、肺線維症を処置するための方法および組成物を提供する。肺線維症は、特発性であってもよいし、肺の感染後に生じてもよい。肺感染は、SARS-CoV-2によるものであり得る。処置の結果として、肺機能は安定するか、または改善される。1つの局面は、Gli1のインヒビターを投与する工程を包含する、線維症を処置する方法である。Gli1の阻害は、間接的であり得る。いくつかの実施形態において、SMOのインヒビターは、Gli1を間接的に阻害するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症を処置する方法であって、前記方法は、Gli1を阻害するための手段を、それを必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
式Iの化合物:
【化9】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり;R
2は、水素もしくはメチルであり; R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個は、水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩、
を投与する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タラデギブを投与する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式IIの化合物:
【化10】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり; R
2は、水素もしくはメチルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個は水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩、
を投与する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
L-4を投与する工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
50~200mgの前記手段または化合物を投与する工程を包含する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
初期投与量100~300mgが投与されるが、前記患者が薬物関連有害事象を経験する際には、前記投与量は減量される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記線維症は、特発性肺線維症である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記線維症は、全身性強皮症である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記線維症は、肺感染後の肺線維症である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記肺感染は、SARS-CoV-2による感染である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
毒性は、グレード2もしくはこれ未満に制限される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
線維症は、処置の開始後進行しない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記線維症は肺線維症であり、肺機能が安定化される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記線維症は肺線維症であり、肺機能が改善される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記線維症は肺線維症であり、瘢痕化が減少される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
肺機能は、努力肺活量(FVC)、一秒努力呼気量(FEV
1)、一酸化炭素の肺拡散能力(DL
CO)、FEV
1/FVC比、FVC %予測、FEV
1 %予測、肺の画像化からの線維症の程度の定量的評価、肺の画像化からの線維症の程度の定性的評価、呼吸器系入院数、設定された一定時間で歩行できる距離;および呼吸器系健康調査票のスコアからなる群より選択されるパラメーターによって評価される、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月13日出願の米国仮特許出願第63/091,128号(その内容全体が、本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
線維性疾患の処置は、難題であると証明されている。とはいうものの、いくらかの線維性疾患の処置の承認薬(例えば、特発性肺線維症(IPF)のためのピルフェニドンおよびニンテダニブ)は存在する。しかし、これらの薬物は、上記疾患の進行をわずかに遅らせるだけで、それを停止も逆転もしない。Hedgehog/GLIシグナル伝達経路は、正常な胚発生の重要な調節因子であり、線維症の発生においても関わりがあった。しかし、例えば、Smoothened(SMO)(Hedgehog(Hh)シグナル伝達経路におけるGタンパク質共役レセプター)を阻害することによる標準的なHhシグナル伝達経路の阻害は、肺線維症、腎線維症、または骨髄線維症の臨床上実行可能な処置をもたらさなかった。実際、SMOのインヒビターであるシクロパミンおよびIPI-926は、腎線維症を処置するにあたって有効でないことが見出されている。さらに、骨髄線維症におけるIPI-926のフェーズ2臨床試験は、開発の継続を支持しなかった。IPFの処置のための別のSMOインヒビターであるビスモデギブの(ピルフェニドンとの組み合わせでの)フェーズ1b臨床試験は、ある程度の有効性は示唆されたが、多くの患者は、その薬物を許容できなかったことからその試験から離脱し、この適応症に関する薬物の開発は、断念された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
臨床利用を認めるために十分に強力でありかつ許容できるhedgehogシグナル伝達経路のインヒビターを使用して線維性疾患を処置するための方法および組成物が、本明細書で開示される。
【0004】
1つの局面は、Gli1のインヒビターを投与する工程を包含する、線維症を処置する方法である。Gli1の阻害は、間接的であり得る。いくつかの実施形態において、SMOのインヒビターは、Gli1を間接的に阻害するために使用される。
【0005】
1つの局面は、Gli1を阻害するための手段を投与する工程を包含する、線維症を処置する方法である。Gli1の阻害は、間接的であり得る。いくつかの実施形態において、SMOを阻害するための手段は、Gli1を間接的に阻害するために使用される。種々の実施形態において、SMOインヒビターのうちの1または別の属または種は、具体的に排除される。
【0006】
上記の局面に関しては、いくつかの実施形態において、Gli1のインヒビターまたはGli1を阻害するための手段は、SMOのインヒビター(またはSMOを阻害するための手段)である。いくつかの実施形態において、上記SMOのインヒビター、上記Gli1のインヒビター、または上記Gli1もしくはSMOを阻害するための手段は、式Iの化合物:
【化1】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり;R
2は、水素もしくはメチルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個は水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩である。本開示全体を通じて使用される標準的命名法の下では、指定された側鎖の末端部分が先ず記載され、続いて、結合点に対して隣接する官能基が記載される。例えば、メチルスルホニル置換基は、CH
3-SO
2-に等しい。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、4-フルオロ-N-メチル-N-(1-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)フタラジン-1-イル)ピペリジン-4-イル)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(CAS 1258861-20-9):
【化2】
であり、タラデギブ(taladegib)としても公知である。
【0007】
上記の局面に関して、いくつかの実施形態において、上記SMOのインヒビター、上記Gli1のインヒビター、または上記Gli1もしくはSMOを阻害するための手段は、式IIの化合物:
【化3】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり;R
2は、水素もしくはメチルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個が水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩である。いくつかの実施形態において、式IIの化合物は、以下の構造:
【化4】
を有する化合物L-4である。
【0008】
上記の局面に関して、いくつかの実施形態において、上記Gli1のインヒビターまたは上記Gli1を阻害するための手段は、それを必要とする患者、すなわち、線維性疾患を有する患者に投与される。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、感染(細菌感染またはウイルス感染を含む)後の肺線維症である。大部分の場合において、上記線維症は、線維症を引き起こすにあたって感染の役割が結論として示すことができないような年単位の長さの慢性感染後に発生する;従って、このような線維症は、特発性としてなおも分類される。Covid-19は、線維症の発症が非常に急速であり得るという点において全くの対照をなす。いくつかの実施形態において、上記肺線維症は、SARS-CoV-2による感染の後に起こる。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、強皮症である。場合によっては、上記線維性疾患は、全身性強皮症(systemic scleroderma)であり(全身性強皮症(systemic sclerosis)としても公知)であり、さらに場合によっては、肺が関わる全身性強皮症である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、肝線維症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、腎線維症である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、胃線維症である。いくつかの実施形態において、上記患者は、ヒトである。
【0009】
上記の局面に関して、いくつかの実施形態において、上記Gli1のインヒビターまたは上記Gli1を阻害するための手段は、有効量で投与される。いくつかの実施形態において、上記有効量は、症状を低減するために有効である。いくつかの実施形態において、上記有効量は、上記疾患の進行を遅らせるかまたは停止させるために有効である。いくつかの実施形態において、上記有効量は、上記疾患に起因する障害を低減するために有効である。いくつかの実施形態において、上記有効量は、上記疾患に起因する障害を逆転させる(改善を引き起こす)ために有効である。IPFに関しては、障害は、例えば、肺活量測定によって決定されるように、肺機能における変化として測定され得る。使用され得る肺活量測定尺度としては、努力肺活量(FVC)、一秒努力呼気量(FEV1)、および一酸化炭素の肺拡散能力(DLCO)が挙げられる。線維症の程度はまた、画像化(例えば、高分解能コンピューター断層撮影法(HRCT))によって評価され得る。いくつかの実施形態において、上記有効量は、50~200mgの上記Gli1のインヒビターまたは上記Gli1を阻害するための手段を含む。
【0010】
1つの局面は、上記Gli1のインヒビターまたは上記Gli1を阻害するための手段を含む薬学的化合物である。いくつかの実施形態において、上記Gli1のインヒビターまたは上記Gli1を阻害するための手段は、式1の化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。いくつかの実施形態において、式1の化合物は、タラデギブである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、4種のIPF処置: ピルフェニドン、ニンテダニブ、GLPG1690、およびHhインヒビターであるビスモデギブの臨床試験結果の比較を示す。ピルフェニドン、ニンテダニブ、GLPG1690の治験は、プラシーボ対照であったが、ビスモデギブ治験は、オープンラベルであった。ピルフェニドンデータは、24週間で3回のフェーズ3試験の平均である。ニンテダニブデータは、24週間で2回のフェーズ3試験の平均である。GLPG1690データは、12週間でのフェーズ1bデータである。Hhインヒビター(ビスモデギブ)データは、24週間でのフェーズ1bデータである。
【0012】
【
図2】
図2は、種々の用量のタラデギブを受容する患者の皮膚サンプル中のGli1 mRNA阻害(%)を示す。
【0013】
【
図3】
図3は、IPF処置に関して検討された4種の薬物の治験における薬物関連中止の割合を示す。
【0014】
【
図4】
図4A~Bは、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルにおけるタラデギブ処置ありおよびなしでのα-SMAタンパク質レベルを示す。
図4Aは、偽コントロール、ビヒクル処置、およびタラデギブ処置したマウスの抗α-SMA免疫染色した肺切片の代表的画像を示す。
図4Bは、個々のマウスからのパーセントα-SMA陽性領域、ならびに処置群の平均および標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明
線維性疾患の一般的な機序は、hedgehogのアップレギュレーションを引き起こし、筋線維芽細胞への細胞の分化転換(すなわち、分化した細胞(非幹細胞)が別のタイプの分化した細胞(この場合には、筋線維芽細胞)へと転換すること)を駆動する最初の組織傷害を含むことが理解されている。筋線維芽細胞の生理学的機能は、創傷閉鎖におけるように、細胞外マトリクスを沈着させ、組織を収縮させることによって組織を修復することである。線維性疾患(IPFを含む)は、最初の組織外傷が解消してからかなり後に慢性的マトリクス沈着および組織収縮が関わる、調節不全の創傷リモデリングから生じる。本明細書で開示される方法および組成物は、アップレギュレートされたhedgehogが、この病理をもはや駆動できず、筋線維芽細胞の生成を遮断し線維症を引き起こす慢性的リモデリングを停止させるようにHhシグナル伝達経路を阻害することによって、線維性疾患を処置する。この機序は臨床的に検証されているが、Hh経路インヒビターが線維症を処置する見込みは、これまで実現されていない。
【0016】
SMO、ならびに下流の転写因子であるGli1およびGli2の強力なインヒビターであり、かつ望ましい毒物学プロフィールを示すある特定の1,4-二置換されたフタラジンがこの見込みを満たすことが、本明細書で開示される。本実施形態は、式Iの化合物:
【化5】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり;R
2は、水素もしくはメチルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個は水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩を使用する処置の方法を提供する。本開示全体を通じて使用される標準的命名法の下で、指定された側鎖の末端部分が先ず記載され、続いて、結合点に対して隣接する官能基が記載される。例えば、メチルスルホニル置換基は、CH
3-SO
2-に等しい。「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明の化合物の比較的非毒性の無機塩および有機塩をいう。
【0017】
式Iの化合物およびそれらの合成は、米国特許第9,000,023号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0018】
本実施形態はまた、処置方法において使用するための、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を、薬学的に受容可能な賦形剤、キャリアまたは希釈剤と組み合わせて含む薬学的組成物を提供する。「薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、または賦形剤」とは、哺乳動物、例えば、ヒトへの生物学的に活性な薬剤の送達に関して、当該分野で概して許容されている媒体である。
【0019】
式Iの系列的な化合物は、4-フルオロ-N-メチル-N-(1-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)フタラジン-1-イル)ピペリジン-4-イル)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(CAS 1258861-20-9):
【化6】
(タラデギブとしても公知)である。タラデギブ(LY2940680ともいわれる)は、都合の良い安全性プロフィールを有し、Hh経路を破壊させ得る強力で選択的、かつ経口利用可能なSmoインヒビターである。この分子は、192名を超えるヒト被験体において終了しており、最初は、肺がんおよび基底細胞癌(BCC)を中心とした腫瘍学的適応症を処置することを意図して開発された。主にがん患者ではあったが、これらの試験は、用量および耐容性を予備的に理解することを可能にした。タラデギブは、経口利用可能である。いくつかの実施形態において、平均経口バイオアベイラビリティーは、約72%~約91%である。
【0020】
タラデギブの主要な代謝産物である、M75、酸化的N-デスメチル化産物は、SMOのインヒビターとして活性を保持する。M75は、式IのR2におけるメチル基が失われ、その結果、位置がメチルの代わりに水素であると理解される。
【0021】
タラデギブは、ビスモデギブと比較して、肺を標的することに十分適している。動物モデルでは、タラデギブは、Hh経路が活性化される場合に発現される下流のエフェクター分子である、肺におけるGli1を阻害するにあたってビスモデギブより20倍を超えて強力である。タラデギブの臨床上確立されたMTDは、400mgである。この用量において、Gli1 mRNA阻害は、皮膚において>85%であり、およそ9%が中止した。タラデギブは、50mg程度の低い用量(すなわち、臨床上確立されたMTDの8分の1)において臨床上評価されている。ここでGli1 mRNAの阻害は、なおも80%より高かった。対照的に、ビスモデギブは、150mgというそのMTDにおいて、Gli1 mRNAを50%未満阻害する。タラデギブは、ビスモデギブより良好な臨床上の安全性プロフィールを有し、筋痙攣の出現率は実質的に低い(40% 対 最大80%)。従って、ビスモデギブはIPFに対して不適切であると証明されたが、ビスモデギブでの臨床試験は、Hh経路の阻害が、IPF患者において肺機能を改善し得ることを示した。
【0022】
式Iの化合物は、Daoy細胞において測定され、米国特許第9,000,023号において記載されるように、Gli1活性を概して<40nMのIC50で阻害する。タラデギブは、このアッセイにおいて約2.4nMのIC50を有する。このような化合物は、Gli1活性を阻害するための手段またはSMOを阻害するための手段を構成する。
【0023】
さらに、米国特許出願公開番号20200000784 A1は、線維症、特に、特発性肺線維症の処置に関するタラデギブの使用について教示すること全てに関して、本明細書に参考として援用される。
【0024】
上記フタラジンのある特定のアナログは、SMOならびに下流の転写因子Gli1およびGli2の強力なインヒビターであり、それは、望ましい毒物学プロフィールを示す。いくつかの実施形態において、上記SMOのインヒビター、上記Gli1のインヒビター、または上記Gli1もしくはSMOを阻害するための手段は、式IIの化合物:
【化7】
であって、ここでR
1は、水素もしくはメチルであり;R
2は、水素もしくはメチルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、もしくはR
7は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、もしくはトリフルオロメチルスルホニルであるが、ただしR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のうちの少なくとも3個は水素である化合物;またはその薬学的に受容可能な塩である。いくつかの実施形態において、式IIの化合物は、以下の構造:
【化8】
を有するN-(1-(4,5-ジメチル-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)ピリダジン-3-イル)ピペリジン-4-イル)-4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(L-4としても公知)である。
【0025】
L-4は、Zhuら(L-4, a Well-Tolerated and Orally Active Inhibitor of Hedgehog Pathway, Exhibited Potent Anti-tumor Effects Against Medulloblastoma in vitro and in vivo, Frontiers in Pharmacology 10:89, 2019(これは、その全体において本明細書に参考として援用される))に記載される。Zhuらは、L-4を有望な抗がん剤として記載している。それは、タラデギブとしてHh阻害に関して同様のID50を有する(それぞれ、2.33nM 対 2.26nM)と報告される。
【0026】
タラデギブおよび式Iの化合物と同様に、L-4および式IIの化合物は、Gli1活性を阻害するための手段またはSMOを阻害するための手段を構成する。種々の実施形態は、式Iの化合物、式IIの化合物、または式Iもしくは式IIの特定の下位属または種を具体的に排除する。
【0027】
本発明の化合物は、例えば、多くの無機酸および有機酸と反応して、薬学的に受容可能な酸付加塩を形成し得る。このような薬学的に受容可能な塩およびそれらを調製するための一般的方法論は、当該分野で周知である。例えば、P. Stahl,ら, HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS: PROPERTIES, SELECTION AND USE, (VCHA/Wiley-VCH, 2002); S. M. Berge,ら, 「Pharmaceutical Salts,」 Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol 66, No. 1, January 1977を参照のこと。
【0028】
本明細書で開示される化合物は、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、または賦形剤を使用して薬学的組成物として製剤化され得、種々の経路によって投与され得る。特定の実施形態において、このような組成物は、経口投与または静脈内投与のためのものである。このような薬学的組成物およびこれらを調製するためのプロセスは、当該分野で周知である。例えば、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (A. Gennaro,ら編, 19.sup.th ed., Mack Publishing Co., 1995)。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される化合物は、50または100mgの上記化合物および一般的な薬学的成分: クロスカルメロースナトリウム、HPMCAS-H、マンニトール、微結晶性セルロース、二酸化ケイ素、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む錠剤として製剤化され得る。1つの特定の実施形態は、16.1% タラデギブ、37.6% HPMCAS-H、9.3% マンニトール、28.6% 微結晶性セルロース、2.9% クロスカルメロースナトリウム、1.0% 二酸化ケイ素、1.2% フマル酸ステアリルナトリウム、および3.4% Opadry(フィルムコーティング)を含む。
【0030】
IPFは、進行性の線維性肺瘢痕化を引き起こす調節不全の創傷治癒プロセスである。Hedgehog経路の標的化は、上記疾患の進行を遅らせる、停止させるまたは逆転させる論理的な治療アプローチである。創傷治癒プロセスにおいて、Hh経路は、線維芽細胞の活性化および筋線維芽細胞への分化転換を調節し、これは、調節不全の場合には、線維症の重大な駆動因子になる。IPFでは、筋線維芽細胞は、肺に浸潤し、ここで筋線維芽細胞は、コラーゲンのような細胞外マトリクスタンパク質を生成する。筋線維芽細胞は、細胞外マトリクスに接着し、閉じられる創傷を引っ張ることと同様に、閉じられた肺を引っ張る。筋線維芽細胞活性の結果として、線維症および組織リモデリングを経て肺機能が進行性に失われる。
【0031】
Hh経路を、Smo阻害を介して標的化することは、臨床的および前臨床的の両方で検証されている。臨床的状況では、FDA承認のSmoインヒビターであるビスモデギブ(転移性BCCまたは局所進行性のBCCを有する成人の処置のためにErivedge(登録商標)として承認されている)を、ピルフェニドンとの組み合わせにおいてシングルアームIPF試験で評価した。6ヶ月間の処置後、患者は、平均して、およそ100mLの努力肺活量(FVC)の増大を示した。増大したFVCおよび肺能力は、IPFに関して考慮されたいかなる他の標的を調べる以前の臨床試験においても認められていない。IPFの治療上の標的としてのHh経路を破壊させるSmo阻害は、検証されたが、ビスモデギブは、患者による耐容性が不十分であった。なぜなら重篤な筋痙攣が、参加者のうちの40%超の中止を生じる重大な有害事象であったからである。この中止率は、ビスモデギブを摂取したBCCを有する患者が経験した中止率に類似である。IPF治療剤としてのビスモデギブの全てのさらなる開発は、中止された。
【0032】
皮膚におけるGli1 mRNAの阻害は、肺におけるGli1 mRNAの阻害に類似である。皮膚生検材料におけるGli1 mRNA阻害は、肺がんの臨床試験において、肺におけるGli1 mRNA阻害の代理として測定されている。非臨床的なインビボモデルは、経口投与されたタラデギブによるGli1 mRNA阻害の動態および規模が、マウスの皮膚および肺において非常に類似であることを示した。さらに、マウスの皮膚および肺におけるGli1 mRNA阻害の程度は、臨床的に関連する用量で処置されているヒト被験体の皮膚生検材料において観察されるGli1 mRNA阻害の程度に類似であった。
【0033】
IPF患者サンプルは、Hh経路構成要素および筋線維芽細胞の増大したレベルを示した。いくつかの研究は、IPF患者肺サンプルからの組織を調べ、それらを健常被験体の肺サンプルと比較した。SHh(Hh経路の活性化リガンド)およびGli1の顕著な増大が存在することは、明らかであった。正常肺は、SHhまたはGli1のいずれのいかなる検出可能な量をも示さなかったが、IPFサンプルは、非常に強く染色され、顕著な存在を示した。IPF肺サンプルはまた、筋線維芽細胞を定義するマーカーであるα-平滑筋アクチン1(α-SMA1)に対して非常に強く染色された。正常な健常肺サンプルは、α-SMA1の染色をほとんどないし全く有しなかった。
【0034】
線維症を阻害するためのHh経路の破壊は、いくつかのSmoインヒビターを使用して、インビトロで、および多くの動物モデルにおいて示されている。これらの動物モデルは、線維芽細胞浸潤および筋線維芽細胞への分化転換を許し、これは次いで、進行性の線維症を駆動するという類似の特徴を有する。Smoの阻害は、線維症を破壊し、いくらかの場合には、上記疾患を逆転させることが観察された。さらに、Smoの阻害は、浸潤した筋線維芽細胞のアポトーシスの増大、α-SMA1の低減、Gli1およびSHhの低減、ならびにコラーゲンの低減を生じることが示された。
【0035】
タラデギブの非臨床的な毒性所見は、このクラスの承認薬に類似であり、タラデギブのオンターゲット効果と関連する重要な潜在的リスクは、肝傷害、生殖器に対する影響、横紋筋融解、生殖毒性および骨への影響であると考えられる。臨床的にまたは非臨床的にタラデギブで未だに観察されていないクラスの影響としては、無月経が挙げられる。
【0036】
臨床的には、全ての用量にわたる平均半減期(t1/2)は、タラデギブに関しては、1日に1回の投与を可能にするおよそ16時間であると推定された。メジアンtmaxは、2時間であった。
【0037】
タラデギブは、主に進行したがん患者で行われている業界で資金提供された6件の試験において都合の良い安全性プロフィールを示している。進行したがんにおける単剤療法として、大部分の一般に観察される有害事象(AEs)は、悪心、下痢、味覚異常、疲労、食欲不振、脱毛症、嘔吐、筋痙攣、便秘、体重減少、および頭痛であった。
【0038】
薬物の有効性と毒性との間の関連性は、治療濃度域(therapeutic window)および治療指数に関して概して表現される。治療濃度域は、検出可能な治療効果を示す最低用量から最大耐容量(MTD);許容不能な毒性を生じることなく所望の治療効果を生じる最高用量までの用量範囲である。最も代表的には、治療指数は、動物試験に基づいた場合にはLD50:ED50の比として、およびヒトにおける試験に基づく場合にはTD50:ED50の比として計算される(しかしこの計算はまた、動物試験から導出され得、ときおり、保護指数(protective index)と称される)。ここでLD50、TD50、およびED50は、それぞれ、試験した集団のうちの50%において致死的、毒性のある、および有効な用量である。
【0039】
これらの実施形態の種々の局面において、毒性は、観察可能な毒性、実質的な毒性、重篤な毒性、または許容可能な毒性、または用量制限毒性(例えば、MTDに限定されない)である。観察可能な毒性とは、変化が観察されるが、その影響が無視できるかまたは軽度であることを意味する。実質的な毒性とは、患者の全体的な健康状態またはクオリティー・オブ・ライフに負の影響があることを意味する。場合によっては、実質的な毒性は、他の進行中の医療介入で軽減または解消され得る。重篤な毒性とは、その影響が、急性期の医療介入および/もしくは用量低減または処置の一時中断を要求することを意味する。毒性の許容可能性は、処置されている特定の疾患およびその重篤度ならびに医療介入の軽減の利用可能性によって影響される。
【0040】
毒性および有害事象は、ときおり、5ポイントスケールに従って評点される。グレード1または軽度の毒性は、無症状またはごく軽度の症状を誘導する;臨床上または診断上の観察によってのみ特徴づけられ得る;そして介入は示されない。グレード2または中程度の毒性は、日常生活の活動(例えば、食事の準備、買い物、金銭管理、電話の使用など)を損ない得るが、ごく最小限の、局所的な、または非侵襲性の介入が示される。グレード3毒性は、医療上重大であるが、直ぐに生命を脅かすものではない;入院または入院の長期化が示される;セルフケアに関連する日常生活の活動(例えば、入浴、衣服の脱ぎ着、自力で食べる、トイレを使う、薬を服用する、および寝たきりにならない)が損なわれ得る。グレード4毒性は、生命を脅かすものであり、緊急の介入が示される。グレード5毒性は、有害事象関連死を生じる。従って、種々の実施形態において、本明細書で開示されるレジメンまたは投与量における薬物使用は、処置と関連する毒性のグレードを、別のレジメンに従うその薬物の使用と比較した場合に、少なくとも1グレード低減する。他の実施形態において、特定されるレジメンまたは投与量に従う薬物使用によって、毒性は、グレード2もしくはこれ未満、グレード1もしくはこれ未満に制限されるか、または毒性の観察を生じない。いくつかの実施形態において、Gli1またはSMOの本明細書で開示されるインヒビターの治療指数は、ビスモデギブのもの(およそ0.37)より大きい。比較すると、タラデギブの治療指数は、およそ8である。いくつかの実施形態において、Gli1またはSMOの本明細書で開示されるインヒビターの治療指数は、1、2、3、4、5、6、または7より大きい。
【0041】
本明細書の局面は、部分的に、本明細書で開示される化合物または組成物の有効量(または治療上有効な量)を投与する工程を提供する。本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、「有効用量」と同義であり、IPFの処置への参照において使用される場合、所望の治療効果を達成するために必要な、本明細書で開示される化合物または組成物の少なくとも最小限の用量を意味する。本明細書で開示される化合物または組成物の有効な投与量または量は、当業者によって、全ての基準(例えば、使用される化合物または組成物の排出速度、使用される化合物または組成物の薬力学、組成物中に含まれることになる他の化合物の性質、特定の投与経路、個体の特定の特性、病歴およびリスク因子(例えば、年齢、体重、全身的な健康状態などのような)、処置に対する個体の応答、またはこれらの任意の組み合わせ)を考慮して、および本人のための最善の判断を利用して、特に、本明細書で開示される例示的投与量および他の情報に鑑みて、容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、有効用量は、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、もしくは400mgであるか、または先の値の任意の対によって区切られる範囲の中に入る。いくつかの実施形態において、有効用量は、1日に1回投与される。
【0042】
いくつかの実施形態において、タラデギブ、L-4、または関連化合物の投与量は、200mg/日で開始される。いくつかの実施形態において、上記投与量は、1回の1日用量において提供される。グレード3またはこれより高いAEが観察される場合、投与は減量される。いくつかの実施形態において、上記投与量は、グレード3またはこれより高いAEを回避するために必要とされる場合、50mg/日の減少量で、50mg/日程度まで減量される。いくつかの実施形態において、初期投与量(減量前)は、有効用量と見做される最低投与量より高い任意の投与量であり得る。いくつかの実施形態において、上記初期投与量は、有効用量範囲の上側半分にある。いくつかの実施形態において、上記初期投与量は、上記有効用量範囲の最も上にある。例えば、有効用量範囲が50~200mgである場合、初期用量は、>50mg(例えば、75mg)、125~200mg、または200mgであり得る。場合によっては、上記初期投与量は、100~300mg/日の範囲にある。場合によっては、投与量の減量は、25mg/日、50mg/日、または100mg/日である。
【0043】
いくつかの実施形態において、Gli1もしくはSMOのインヒビター、またはGli1もしくはSMOを阻害するための手段の有効用量は、線維症の安定化または改善(例えば、線維症、肺機能、または本明細書で記載されるとおりの他の尺度の物理的程度に関して)を生じる。さらなる実施形態において、線維症の安定化または改善は、患者が薬物関連有害事象(毒性)を経験することなく達成される。特定の場合には、その回避される薬物関連有害事象は、グレード3またはこれより高い毒性である。いくつかの実施形態において、存在しない薬物関連有害事象は、筋痙攣、QT延長または肝毒性である。
【0044】
種々の局面は、Gli1もしくはSMOのインヒビター、またはGli1もしくはSMOを阻害するための手段を、それを必要とする患者、すなわち、線維性疾患を有する患者に投与することによって、線維症を処置する方法である。いくつかの実施形態において、上記Gli1もしくはSMOのインヒビター、またはGli1もしくはSMOを阻害するための手段は、単剤療法として使用される。いくつかの実施形態において、上記Gli1もしくはSMOのインヒビター、またはGli1もしくはSMOを阻害するための手段は、別の抗線維症薬物と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、他の抗線維症薬物は、Hh経路インヒビターではない。場合によっては、上記非Hh経路インヒビター抗線維症薬物は、ピルフェニドン、ニンテダニブ、GLPG4716またはPRM-151である。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、感染(細菌感染またはウイルス感染を含む)後の肺線維症である。大部分の場合において、上記線維症は、線維症を引き起こすにあたって感染の役割が結論として示すことができないような年単位の長さの慢性感染後に発生する;このような線維症は、従って、特発性としてなおも分類される。Covid-19は、線維症の発症が非常に急速であり得るという点において全くの対照をなす。いくつかの実施形態において、上記肺線維症は、SARS-CoV-2による感染の後に起こる。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、強皮症である。場合によっては、上記線維性疾患は、全身性強皮症(systemic scleroderma)(全身性強皮症(systemic sclerosis)としても公知)であり、さらに場合によっては、肺が関わる全身性強皮症である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、肝線維症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、腎線維症(例えば、腎間質性線維症または腎同種移植片線維症)である。いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、胃線維症(例えば、胃粘膜線維症、腺胃線維症(glandular stomach fibrosis)、または後腹膜線維症)である。いくつかの実施形態において、上記患者は、ヒトである。いくつかの実施形態において、上記患者は、非ヒト動物、例えば、哺乳動物である。
【0046】
各処置方法に関して、線維性疾患の処置における上記Gli1もしくはSMOのインヒビター、またはGli1もしくはSMOを阻害するための手段の使用、あるいは線維性疾患の処置のための医薬、または線維性疾患を処置することにおける使用のための組成物もしくは薬学的組成物の製造におけるそれらの使用などとして表される対応する実施形態が存在する。
【0047】
用語「処置」、「処置すること」などは、疾患、病的な状態、または障害を治癒、改善、安定化、または防止することが意図された、患者の医療的管理に言及する。この用語は、積極的な処置、すなわち、具体的には、疾患、病的な状態、または障害の改善に指向される処置を含み、原因の処置、すなわち、その関連疾患、病的な状態、または障害の原因の除去に指向される処置をも含む。さらに、この用語は、緩和的処置、すなわち、疾患、病的な状態、または障害を治癒させるよりむしろ症状の軽減のために設計された処置;防止的処置、すなわち、その関連する疾患、病的な状態、または障害の発生を最小限にするか、または部分的にもしくは完全に阻害することに指向される処置;ならびに支持的処置、すなわち、その関連する疾患、病的な状態、または障害の改善に対して指向される別の特定の治療を補うために使用される処置を含む。種々の実施形態が、これらの処置様式のうちの1またはこれより多くのものを具体的に含むかまたは排除し得る。
【0048】
処置活動は、医療従事者、患者自身、または任意の他の個人によろうがよるまいが、特に、本明細書で開示される処置の種々の方法に従う、患者への本明細書で記載される医薬、投与形態、および薬学的組成物の投与を含む。処置活動は、医療従事者(例えば、医師、フィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナーなど)の命令、指示、および助言を含み、これらは次いで、他の医療従事者または患者自身を含む任意の他の個人によって行為が行われる。これは、最終的に患者が有益かつ適切な処置を受け得るように、例えば、診断手順(例えば、肺機能の画像化または評価)を、患者に受けさせる、またはそれを臨床検査室に実行させる指示を含む。いくつかの実施形態において、処置活動の命令、指示、および助言の局面はまた、保険会社または薬剤給付管理会社(pharmacy benefits management company)などによって行われ得るように、特定の医薬またはその組み合わせが、その医薬に関する保険の適用範囲を承認する、代替の医薬に関する適用範囲を拒否する(その医薬を医薬品フォーミュラリー(drug formulary)に含める、代替の医薬をそこから排除する、またはその医薬を使用する金銭的インセンティブを与えることを含む)ことによって、状態の処置のために選択される - およびその医薬が実際に使用される - ことを奨励する、誘導する、または権限を与えることを含み得る。いくつかの実施形態において、処置活動はまた、病院、クリニック、健康維持機構、医療実務もしくは医師のグループなどによって確立され得るとおりの方針もしくは実施標準によって、特定の医薬がある状態の処置のために選択される - およびその医薬が実際に使用される - ことを奨励する、誘導する、または権限を与えることを含み得る。全てのこのような命令、指示、および助言は、その指示に従って処置の利益を受けることを条件づけるとして認められるべきである。場合によっては、金銭的利益がまた、このような命令、指示、または助言を遵守するために、患者によって受けとられる。場合によっては、金銭的利益がまた、このような命令、指示、または助言を遵守するために、医療従事者によって受けとられる。
【0049】
肺線維症に関する処置の有効性または利益は、例えば、肺活量測定によって決定されるように、肺機能における変化によって一般的に評価される。使用され得る肺活量測定尺度としては、努力肺活量(FVC)、一秒努力呼気量(FEV1)、および一酸化炭素の肺拡散能力(DLCO)が挙げられる。考慮され得るさらなる肺活量測定パラメーターとしては、FEV1/FVC比、予測FVCのパーセンテージとしての観察されるFVC(FVC %予測)、および予測FEV1のパーセンテージとしての観察されるFEV1(FEV1 %予測)が挙げられる。Association for Respiratory Technology and Physiologyによって発表されるとおりのFVCの予測値(リットル単位)は、5.76×高さ(メートル単位)-0.026×年齢(年単位)-4.34である。Association for Respiratory Technology and Physiologyによって発表されるとおりのFEV1の予測値(リットル単位)は、4.30×高さ(メートル単位)-0.029×年齢(年単位)-2.49である。
【0050】
他の評価としては、以下が挙げられる:
・肺の外見 - CTスキャン、磁気共鳴画像化法(MRI)などによって決定されるとおり、パーセントおよび/または容積による線維症(瘢痕化またはリモデリングを含む)の定量的程度;
・肺の外見 - CTスキャン、磁気共鳴画像化法(MRI)などによって決定されるとおり、線維症の定性的程度: 改善、同じ、または増悪;
・呼吸器系入院数(number of respiratory hospitalization);
・設定された一定時間で歩行できる距離(例えば、6分間の歩行距離);および
・呼吸器系健康調査票のスコア(例えば、St.George’s Respiratory Questionnaire、UCSD Shortness of Breath Questionnaireなど)
【0051】
評価
肺活量測定および他の評価は、規則的な間隔において(例えば、約24週間ごと、年に4回、半年に1回、または1年に1回)行われ得る
【0052】
処置の有効性または利益は、疾患進行の減少、疾患の安定化、または患者の状態の改善として観察され得る。いくつかの実施形態において、進行、安定化、または改善は、その患者の以前の測定値または複数の測定値の比較において判断され得る。いくつかの実施形態において、以前の測定値は、処置の開始前のベースライン測定値である。いくつかの実施形態において、進行、安定化、または改善は、処置を受けていない、プラシーボを受けている、または代替の処置を受けている他の患者(実際のまたは歴史的)との比較に基づいて判断される。従って、いくつかの実施形態において、改善または安定化は、処置されていない患者において予測されるものとの比較によって判断される。例えば、このような実施形態において、減少した瘢痕化は、処置されていない患者において予測されるより少ない瘢痕化の増大を含む。従って、肺機能の安定化は、肺機能の1つのまたは別の尺度のさらなる低減がないことを暗に意味するのではなく、むしろ何らかの減少が、考慮される一定時間にわたる加齢で予測されるものを超えないことを暗に意味する。
【実施例】
【0053】
実施例
以下の非限定的な実施例は、ここで企図される代表的な実施形態のより完全な理解を促進するために、例証目的で提供されるに過ぎない。これらの実施例は、本明細書に記載される実施形態のうちのいずれかを限定すると解釈されるべきではない。
【0054】
実施例1
タラデギブのインビトロ薬理学
インビトロ競合結合アッセイを使用して、50%阻害濃度(IC50)および結合定数(Ki)を、放射性リガンドの競合的置換に基づいて計算した。タラデギブは、hSMOレセプターに結合し、hSMOへの3H-2406189(公知のSMOアゴニスト)の結合を76.4±75.3nMのKiおよび144±143nMのIC50で阻害する(n=4、幾何平均±標準誤差[SE])。
【0055】
マウス細胞におけるタラデギブの生物学的活性を決定するために、Gli-ルシフェラーゼ活性を、sonic hedgehog馴化培地(SHh-CM)で刺激したマウス間葉系C3H10T1/2細胞株において定量した。塩酸タラデギブは、マウスC3H10T1/2細胞において、11.2±5.33nMのIC50(n=8、幾何平均±SE)でHhシグナル伝達活性を阻害した。ヒト細胞におけるタラデギブの生物学的活性を決定するために、Gli1転写物レベルを、SHh-CMで刺激したヒトDaoy腫瘍細胞株において定量した。塩酸タラデギブは、分枝鎖デオキシリボ核酸(DNA)アッセイ技術を使用してGli1 mRNAの測定によって決定されるように、2.22±1.14nMのIC50でヒトDaoy細胞においてHhシグナル伝達活性を阻害した(n=8、幾何平均±SE)。
【0056】
実施例2
タラデギブのインビボ薬理学
PK/PD効果を理解し、有効性試験の投与レジメンを誘導するために、用量応答および時間経過が関わる重要なPK/PD試験を、Balb/c代理モデルおよびPTCH
-/+ × p53
-/- 腫瘍モデルにおけるタラデギブの単一経口投与後に行った。所定の投与期間後に、Balb/Cマウス由来の代理組織(肺、皮膚、および小脳)およびPtch
-/+ × p53
-/- トランスジェニック腫瘍モデルに由来する腫瘍を採取し、処理し、Gli1発現レベルに関して、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応TaqMan
(登録商標)アッセイを使用して評価した。表1にまとめられるように、タラデギブは、評価される組織におけるマウスGli1発現レベルによって測定されるように、Hhシグナル伝達を阻害した。時間経過試験から、持続した標的阻害が、8mg/kgの塩酸タラデギブの単一経口用量後、少なくとも24時間維持され得ることが示された。対応するPD効果を考慮すれば、皮膚Gli1は、肺組織Gli1の適切なPD代理である。
表1. マウス薬力学モデルにおける塩酸タラデギブのTED
50およびTEC
50のまとめの表
【表1】
略語: SE=標準誤差; TEC50=閾値有効濃度; TED50=閾値有効用量; Tg=トランスジェニック。
【0057】
実施例3
SMOインヒビターは、IPF患者におけるFVCを改善する
IPFに関する処置の種々の臨床試験の結果を比較した(
図1)。抗炎症性ピルフェニドン、およびキナーゼインヒビターであるニンテダニブは、FVCの悪化を遅らせ得るに過ぎなかったのに対して、SMOインヒビターであるビスモデギブ(ピルフェニドンと組み合わせて)は、FVCにおける実質的増大(病理の逆転を示唆する)を生じ得た。オートタキシンインヒビターであるジリタキセスタット(zirtaxestat)(GLPG1690としても公知)は、フェーズ1b治験においてFVCの小さな増大を生じたが、この薬物の開発は、独立データモニタリング委員会の評価における、もはやその使用を支持しないというリスク-利益プロフィールに起因して、フェーズ3治験の間に断念された。ジリタキセスタットの全ての開発は中止された。ビスモデギブの開発もまた、重篤な筋痙攣に起因してIPFに関しては中止されたが、これらのデータは、IPFの処置におけるHhインヒビターの使用を検証する。
【0058】
実施例4
低用量のタラデギブは筋痙攣有害事象の重篤度を低減するが、Gli1阻害の程度を維持する
タラデギブを、50mg、100mg、200mg、400mgおよび600mgの用量で被験体に投与した。これらの用量では、大部分の患者は、皮膚生検材料において測定されるように、Gliの>80%阻害を示した(
図2)。ある程度のグレード3毒性が、400mg/日において認められたが、200mg/日または100mg/日では何ら認められなかった(表2)。最小限の生物学的有効用量(BED)が、mGli1の阻害が>50%である最初の用量レベルとしてこの試験において定義されたことに鑑みれば、タラデギブは、試験した全ての用量レベルにおいて薬理学的に活性であることが結論づけられた。
表2. 用量 - 筋痙攣AE相関
【表2-1】
【表2-2】
AEデータは、エトポシドおよびカルボプラチンとの組み合わせに関するフェーズ1b治験を含む複数の臨床試験から集められた。10名未満の患者での用量レベルは、検出力が不十分であることから排除した。
T タラデギブ
V ビスモデギブ
【0059】
実施例5
IPF処置に関して試験した薬物の主なAEの比較
タラデギブ、ビスモデギブ、ピルフェニドン、およびニンテダニブは、全て臨床試験において使用されており、IPFを処置することにおいて使用されており、その使用に関して評価されている。タラデギブを除いて、患者のうちの>20%が、薬物関連の理由から処置を中止した(
図3)。中止を引き起こす主なAEは、ビスモデギブに関しては筋痙攣、ピルフェニドンに関しては悪心、およびニンテダニブに関しては下痢であった。タラデギブに関しては蔓延するAEは存在せず、<10%の患者が、その投与量が≦200mg/日であった場合に、薬物関連の理由から処置を中止した。
【0060】
実施例6
ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルにおける筋線維芽細胞の低減
ブレオマイシン(BLM)誘導性肺線維症モデルは、標準的なIPFモデルであり、薬理学および基礎研究において広く使用されている。疾患IPFは、進行性かつ不可逆的である肺に制限された傷害として定義される。IPF患者において、肺機能の喪失は、活性化筋線維芽細胞の浸潤および拡大増殖によって駆動される。Microsprayer(登録商標) Aerosolizerを使用して、ブレオマイシンの気管内投与を行った。Microsprayer(登録商標) Aerosolizerを介してブレオマイシンを投与することによって、それは肺へと均一に曝露され得、従って、再現性のあるかつ均質な病理を発生させる。このモデルにおいて、筋線維芽細胞の存在は、抗α-平滑筋アクチン(α-SMA)抗体で染色した場合に。免疫組織化学によって観察される。
【0061】
動物を、ブレオマイシンに曝し、次いで、7日目に線維症の発症時にタラデギブで処置した。動物の病理を試験の21日目に調べた。毎日経口投与された5mg/kgのタラデギブでの処置は、α-SMAタンパク質発現のおよそ40%低減を生じ、これは、筋線維芽細胞の低減を示した(
図4A~B)。
【0062】
実施例7
IPFを有する被験体におけるタラデギブの安全性および有効性を評価するフェーズ2多施設試験
American Thoracic Association、Japanese Respiratory Society、European Respiratory Society、Latin American Thoracic Associationガイドラインに基づいてIPFと診断され、高分解能コンピューター断層撮影法(HRCT)によって>50%のパーセント予測FVCおよび35%~85%の間のパーセント予測DLCOを有することを確認した患者を、タラデギブ群およびプラシーボ群へと無作為化する。肺機能検査(FVC、FEV1およびDLCO)、HRCT、およびUCSD Shortness of Breath(SOB)質問票からのベースライン結果を得る。タラデギブを、200mg/日で出発して、12週間にわたって毎日投与する。その患者を、予定された処置が完了した後さらに6週間観察する。薬物療法関連の有害事象を経験する場合、その投与量を、100mg/日程度まで低減し得る。肺機能検査およびUCSD SOB質問票は、試験の6週間目、12週間目、および18週間目に再び行われる。HRCTは、12週間で反復される。有効性を、6週間目、12週間目、および18週間目でのFVC、FEV1、FEV1/FVC比、FVC %予測、FEV1 %予測、およびDLCOならびにUCSD SOB質問票に関してベースラインからの変化によって評価する。HRCTによる肺線維症の定量的(%およびmL)および定性的(改善、同じ、増悪)評価を、スクリーニング時および12週間目に行う。スクリーニングHRCTは、試験HRCT評価のためのベースラインとして働く。12週間では、用量制限毒性は、全くまたはほとんど観察されない。12週間では、いくらかの有効性エンドポイントが、安定化または改善を示す。18週間では、応答の持続が観察される。患者は、筋痙攣が存在しないことを含め、重篤な薬物関連有害事象を(ある場合には、投与量の十分な減量後に)経験しなかった。
【0063】
実施例8
Covid-19治療臨床試験
CTスキャンによって肺線維症を示すSARS-CoV-2感染から回復した患者を、標準治療またはタラデギブ単剤療法での処置のために無作為化する。タラデギブを、200mgで出発して毎日投与する。薬物療法関連の有害事象を経験する場合、その投与量は、有害事象を低減または排除するために、100mgの段階で低減され得る。薬物動態データが集められる。一次有効性エンドポイントは、24週間でのベースラインからのFVC変化である。二次有効性エンドポイントは、ベースラインCTスキャンからの肺線維症の変化、6分間の歩行距離におけるベースラインからの変化、呼吸器系入院の判定数、St.George’s Respiratory Questionnaireにおけるベースラインからの変化である。24週間において、いくらかの有効性エンドポイントは、安定化または改善を示す。患者は、筋痙攣が存在しないことを含め、重篤な薬物関連有害事象を(ある場合には、投与量の十分な減量後に)経験しなかった。
【0064】
最後に、本明細書の局面は、具体的実施形態に言及することによって強調されているが、当業者は、これらの開示される実施形態が本明細書で開示される主題の原理の例証に過ぎないことを容易に認識することは、理解されるべきである。従って、開示される主題が、本明細書で記載される特定の方法論、プロトコール、および/または試薬などに決して限定されないことは、理解されるべきである。よって、開示される主題に対する種々の改変または代替の構成に対する変更は、本明細書の趣旨から逸脱することなく、本明細書中の教示に従って行われ得る。最後に、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定することは意図されない。よって、本発明は、示されかつ記載されるとおりに正確なものに限定されない。
【0065】
本発明の特定の実施形態は、本発明を実施するために本発明者らに既知のベストモードを含め、本明細書に記載される。当然のことながら、これらの記載される実施形態に対するバリエーションは、前述の説明を読めば、当業者に明らかになる。本発明者らは、当業者が適切な場合にこのようなバリエーションを採用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されるもの以外の方法で本発明が実施されることを意図する。よって、本発明は、適用可能な法によって許されるとおりの、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変および均等物を含む。さらに、上記の実施形態の、全ての考えられるそのバリエーションにおける任意の組み合わせは、本明細書で別段示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0066】
本発明の代替の実施形態、要素、または工程のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個々に、または本明細書で開示される他のグループのメンバーとの任意の組み合わせにおいて、言及され、特許請求され得る。グループの1またはこれより多くのメンバーが、便宜上のことおよび/または特許性の理由から、グループの中に含められてもよいし、そこから削除されてもよいことは、認識される。任意のこのような包含または削除が発生する場合、本明細書は、改変されるとおりのグループを含み、従って、添付の特許請求の範囲において使用されるマーカッシュグループの書面による記載を満たすと見做される。
【0067】
別段示されなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメーター、特性、期間などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約(about)」によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」は、そのように修飾された上記特徴、項目、量、パラメーター、特性、期間が、その述べられた特徴、項目、量、パラメーター、特性、期間の値の上下±10%の範囲を包含することを意味する。よって、反対に示されなければ、本明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、変動し得る近似である。少なくとも、および特許請求の範囲に均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、各数値の表示は、報告される有効数字の数字に鑑みて、および通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および値が近似であるにもかかわらず、その具体例に示される数値範囲および値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値範囲または値は、それらそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。本明細書中の値の数値範囲の記載は、その範囲内に入る各別個の数値に個々に言及する簡便法として働くことが意図されるに過ぎない。本明細書で別段示されなければ、数値範囲の各個々の値は、本明細書に個々に記載されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、「上記、この、その(the)」および同様の指示物は、本明細書で別段示されなければ、または文脈が明らかに矛盾しなければ、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書で記載される全ての方法は、本明細書で別段示されなければ、または別段文脈が明らかに矛盾しなければ、任意の適切な順序において行われ得る。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示の文言(例えば、「例えば、のような(such as)」)の使用は、本発明をよりよく例証することが意図されるに過ぎず、別段特許請求される発明の範囲に対して限定を課さない。本明細書中での文言は、本発明の実施に必須のいかなる特許請求されていない要素をも記載すると解釈されるべきではない。
【0069】
本明細書で開示される具体的実施形態は、からなるまたはから本質的になる、の文言を使用して、特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において使用される場合、出願時であろうが補正に従って付加されようが、移行句「からなる(consisting of)」は、請求項中に特定されていないいかなる要素、工程、または成分をも排除する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、特定された材料または工程、および基本的かつ新規な特徴に本質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書で本質的にまたは明示的に記載され、実施可能にされる。
【0070】
本明細書で言及され、特定される全ての特許、特許公報、および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るこのような刊行物に記載される組成物および方法論を記載し開示する目的のために、それらの全体において本明細書に個々におよび明示的に参考として援用される。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示に関して提供されるに過ぎない。この点において、本発明者らが、先行発明によってまたはいかなる他の理由からも、このような開示より前にある権利がないという自認として解釈されるべきものは全くない。これらの文書の内容に関する日付または表示に関する全ての陳述は、出願人に入手可能な情報に基づき、これらの文書の日付または内容の正確性に関してはいかなる自認をも構成しない。
【国際調査報告】