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▶ アヤー・ラブス・インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】アンダーカット熱光学位相シフタ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20231027BHJP
   G02B 6/14 20060101ALI20231027BHJP
   G02B 6/136 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G02F1/01 C
G02B6/14
G02B6/136
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521445
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2021054925
(87)【国際公開番号】W WO2022081810
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/070,891
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519011669
【氏名又は名称】アヤー・ラブス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AYAR LABS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブクビンダー・シドニー
(72)【発明者】
【氏名】フィニ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒロ・アナトル
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AB28
2H147AC05
2H147BA17
2H147BB02
2H147BD03
2H147BG04
2H147DA09
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC04
2H147GA05
2K102AA28
2K102BA01
2K102BB04
2K102BC10
2K102BD01
2K102CA21
2K102DA05
2K102DB08
2K102DD03
2K102EA05
(57)【要約】
【解決手段】熱光学位相シフタは、基板を備え、基板は、基板の上側領域に形成されている空洞を有する。熱光学位相シフタは、基板の上方に配置されている光導波路を備える。光導波路は、空洞の上方を横切って延伸する。熱光学位相シフタは、さらに、光導波路の側面に沿って配置されているヒータ装置を備える。ヒータ装置は、空洞の上方を横切って延伸する。空洞は、光導波路およびヒータ装置が形成された後に、アンダーカットエッチング処理によって形成される。光導波路は、空洞の上を通る1または複数のセグメントを備えるように形成されうる。また、空洞の上に延伸する光導波路の1または複数のセグメントがヒータ装置によって挟まれるように、第2ヒータ装置が備えられてもよい。ヒータ装置と光導波路との間の伝熱を強化するために、熱貫流構造が備えられてもよい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱光学位相シフタであって、
基板であって、前記基板の上側領域に形成されている空洞を有する、基板と、
前記基板の上方に配置されている光導波路であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、光導波路と、
前記光導波路の側面に沿って配置されているヒータ装置であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、ヒータ装置と、
を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、前記空洞の上方を横切って延伸する前記光導波路のセグメントは、実質的に直線の形状を有する、熱光学位相シフタ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱光学位相シフタであって、前記ヒータ装置は、前記光導波路の前記側面に最も近い前記ヒータ装置の側面に沿って実質的に直線の形状を有し、前記ヒータ装置の前記側面は、前記光導波路の前記側面と実質的に平行に向けられている、熱光学位相シフタ。
【請求項4】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、前記ヒータ装置は、複数のヒータ装置セグメントを備え、各ヒータ装置セグメントは、前記ヒータ装置における隣接して配置されているペアのコンタクト部分の間に伸び、前記ヒータ装置における隣接して配置されているコンタクト部分の各ペアは、第1電位に電気接続されている1つのコンタクト部分と、第2電位に電気接続されている1つのコンタクト部分とを備え、それにより、電流が、前記隣接して配置されているペアのコンタクト部分の間に流れる、熱光学位相シフタ。
【請求項5】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、さらに、
前記光導波路の前記側面と、前記光導波路の前記側面に最も近い前記ヒータ装置の側面との間に配置されている熱貫流構造であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、熱貫流構造を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項6】
請求項5に記載の熱光学位相シフタであって、前記熱貫流構造の垂直サイズは、前記光導波路の一次光モードと前記熱貫流構造との間の光結合を避けるために、前記光導波路の垂直サイズよりも小さい、熱光学位相シフタ。
【請求項7】
請求項5に記載の熱光学位相シフタであって、前記光導波路、前記ヒータ装置、および、前記熱貫流構造は、半導体チップのデバイス層内に配置され、前記半導体チップのバックエンドオブライン領域は、前記デバイス層の上方に配置されている、熱光学位相シフタ。
【請求項8】
請求項7に記載の熱光学位相シフタであって、さらに、
前記基板と前記デバイス層との間に配置されている埋め込み酸化膜層であって、前記空洞の上、かつ、前記光導波路、前記ヒータ装置、および、前記熱貫流構造の各々の下に広がっている、埋め込み酸化膜層を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項9】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、前記ヒータ装置は、前記光導波路の第1側面に沿って配置されている第1ヒータ装置であり、前記熱光学位相シフタは、前記光導波路の第2側面に沿って配置されている第2ヒータを備え、前記第2ヒータ装置は、前記空洞の上方を横切って延伸する、熱光学位相シフタ。
【請求項10】
請求項9に記載の熱光学位相シフタであって、前記空洞の上方を横切って延伸する前記光導波路のセグメントは、実質的に直線の形状を有し、前記第1ヒータ装置は、前記光導波路の前記第1側面に最も近い前記第1ヒータ装置の側面に沿って実質的に直線の形状を有し、前記第1ヒータ装置の前記側面は、前記光導波路の前記第1側面と実質的に平行に向けられ、前記第2ヒータ装置は、前記光導波路の前記第2側面に最も近い前記第2ヒータ装置の側面に沿って実質的に直線の形状を有し、前記第2ヒータ装置の前記側面は、前記光導波路の前記第2側面と実質的に平行に向けられている、熱光学位相シフタ。
【請求項11】
請求項10に記載の熱光学位相シフタであって、さらに、
前記光導波路の前記第1側面と、前記光導波路の前記第1側面に最も近い前記第1ヒータ装置の前記側面との間に配置されている第1熱貫流構造であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、第1熱貫流構造と、
前記光導波路の前記第2側面と、前記光導波路の前記第2側面に最も近い前記第2ヒータ装置の前記側面との間に配置されている第2熱貫流構造であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、第2熱貫流構造と、
を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項12】
請求項11に記載の熱光学位相シフタであって、前記第1熱貫流構造および前記第2熱貫流構造の各々の垂直サイズは、前記光導波路の一次光モードと前記第1熱貫流構造および前記第2熱貫流構造の各々との間の光結合を避ける程度に、前記光導波路の垂直サイズよりも小さい、熱光学位相シフタ。
【請求項13】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、前記光導波路は、前記光導波路が前記空洞の上方の領域に入りまたは出る各位置に光モード変換器を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項14】
請求項1に記載の熱光学位相シフタであって、前記光導波路は、前記空洞の上方を横切って伸びる複数の光導波路セグメントを備え、前記空洞の上方を横切って伸びる前記複数の光導波路セグメントの横方向に隣接して配置されている各ペアは、前記光導波路の対応するループバックセグメントによって接続され、前記光導波路は、前記複数の光導波路セグメントの内の第1横方向外側に配置されているセグメントに接続されている第1入力/出力セグメントと、前記複数の光導波路セグメントの内の第2横方向外側に配置されているセグメントに接続されている第2入力/出力セグメントと、を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項15】
請求項14に記載の熱光学位相シフタであって、前記光導波路の各対応するループバックセグメント、前記光導波路の第1入力/出力セグメント、および、前記光導波路の前記第2入力/出力セグメントは、前記空洞の側面境界の外側で前記基板の上に配置されている、熱光学位相シフタ。
【請求項16】
請求項14に記載の熱光学位相シフタであって、前記光導波路の各対応するループバックセグメント、前記光導波路の第1入力/出力セグメント、および、前記光導波路の前記第2入力/出力セグメントは、互いの間の光結合を避けるために互いに離間されている、熱光学位相シフタ。
【請求項17】
請求項14に記載の熱光学位相シフタであって、前記空洞の上方を横切って伸びる前記複数の光導波路セグメントの各々は、前記空洞の上方を横切って伸びる前記複数の光導波路セグメントの内の任意の2以上の間の光学的重複が位相整合されないことを保証するように設定された横幅を有する、熱光学位相シフタ。
【請求項18】
請求項14に記載の熱光学位相シフタであって、前記ヒータ装置は、前記複数の光導波路セグメントの内の前記第1横方向外側に配置されているセグメントの外側側面に沿って配置されている第1ヒータ装置であり、前記熱光学位相シフタは、前記複数の光導波路セグメントの内の前記第2横方向外側に配置されているセグメントの外側側面に沿って配置されている第2ヒータ装置を備え、前記第2ヒータ装置は、前記空洞の上方を横切って延伸する、熱光学位相シフタ。
【請求項19】
請求項18に記載の熱光学位相シフタであって、さらに、
前記複数の光導波路セグメントの内の前記第1横方向外側に配置されているセグメントの前記外側側面と、前記第1ヒータ装置との間に配置されている第1外側配置熱貫流構造であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、第1外側配置熱貫流構造と、
前記複数の光導波路セグメントの内の前記第2横方向外側に配置されているセグメントの前記外側側面と、前記第2ヒータ装置との間に配置されている第2外側配置熱貫流構造であって、前記空洞の上方を横切って延伸する、第2外側配置熱貫流構造と、
前記空洞の上方を横切って伸びる前記複数の光導波路セグメントの横方向に隣接して配置されている各ペアの間にそれぞれ配置されている1または複数の内側配置熱貫流構造と、
を備える、熱光学位相シフタ。
【請求項20】
請求項19に記載の熱光学位相シフタであって、前記第1外側配置熱貫流構造、前記第2外側配置熱貫流構造の各々、ならびに、前記1または複数の内側配置熱貫流構造の各々の垂直サイズは、前記光導波路の一次光モードと、前記第1外側配置熱貫流構造、前記第2外側配置熱貫流構造、および、前記1または複数の内側配置熱貫流構造の各々との間の光結合を避けるために、前記光導波路の垂直サイズよりも小さい、熱光学位相シフタ。
【請求項21】
熱光学位相シフタを製造するための方法であって、
半導体チップの基板を準備し、
前記基板の上方に光導波路を形成し、
前記光導波路のセグメントの側面に沿ってヒータ装置を形成し、
空洞が前記ヒータ装置の下方かつ前記光導波路の前記セグメントの下方に連続的な開放領域を形成するように、前記基板内に前記空洞を形成すること、
を備える、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記空洞を形成することは、前記基板にアンダーカットプラズマエッチング処理を実行することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光データ通信システムは、デジタルデータパターンを符号化するためにレーザ光を変調することによって動作する。変調レーザ光は、光データネットワークを通して送信ノードから受信ノードへ送信される。受信ノードに到達した変調レーザ光は、元のデジタルデータパターンを取得するために復調される。いくつかの光データ通信システムにおいて、レーザ光の伝送、レーザ光の変調、変調光の伝送、および/または、変調光の復調が、光の位相の影響を受ける。したがって、いくつかの光データ通信システムにおいて、光データ通信システムの高信頼性かつ効率的な動作を可能にするには、光の位相を制御する必要がある。また、光導波路を通して伝送される光の位相の制御は、応用例の中でも特に、光アナログ変調を含む応用例など、光データ通信を含む場合も含まない場合もある様々な応用例において必要でありうる。本発明は、この文脈で生まれたものである。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態例において、熱光学位相シフタが開示されている。熱光学位相シフタは、基板を備え、基板は、基板の上側領域に形成されている空洞を有する。熱光学位相シフタは、さらに、基板の上方に配置されている光導波路を備える。光導波路は、空洞の上方を横切って延伸する。熱光学位相シフタは、さらに、光導波路の側面に沿って配置されているヒータ装置を備える。ヒータ装置は、空洞の上方を横切って延伸する。
【0003】
一実施形態例において、熱光学位相シフタを製造するための方法が開示されている。方法は、半導体チップの基板を準備することを備える。方法は、さらに、基板の上方に光導波路を形成することを備える。方法は、さらに、光導波路のセグメントの側面に沿ってヒータ装置を形成することを備える。方法は、さらに、空洞がヒータ装置の下方かつ光導波路のセグメントの下方に連続的な開放領域を形成するように、基板内に空洞を形成することを備える。
【0004】
本発明のその他の態様および利点については、本発明を例示した添付図面を参照しつつ行う以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタを示す等角図。
【0006】
図1B】いくつかの実施形態に従って、図1Aの熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0007】
図1C】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタの斜視図を図1Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図。
【0008】
図1D】いくつかの実施形態に従って、図1Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の図1Aの熱光学位相シフタを示す図。
【0009】
図2A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにバックエンドオブライン(BEOL)領域を除去した状態で、図1Aに示した熱光学位相シフタを示す等角図。
【0010】
図2B】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにBEOL領域を除去した状態で、図1Bに示した熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0011】
図3A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタを示す等角図。
【0012】
図3B】いくつかの実施形態に従って、図3Aの熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0013】
図3C】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタの斜視図を図3Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図。
【0014】
図3D】いくつかの実施形態に従って、図3Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の図3Aの熱光学位相シフタを示す図。
【0015】
図4A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにBEOL領域を除去した状態で、図3Aに示した熱光学位相シフタを示す等角図。
【0016】
図4B】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにBEOL領域を除去した状態で、図3Bに示した熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0017】
図5A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタを示す等角図。
【0018】
図5B】いくつかの実施形態に従って、図5Aの熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0019】
図5C】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタの斜視図を図5Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図。
【0020】
図5D】いくつかの実施形態に従って、図5Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の図5Aの熱光学位相シフタを示す図。
【0021】
図6A】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにBEOL領域を除去した状態で、図5Aに示した熱光学位相シフタを示す等角図。
【0022】
図6B】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタがより明確に見えるようにBEOL領域を除去した状態で、図5Bに示した熱光学位相シフタを示す斜視図。
【0023】
図7】いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタを製造するための方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明を理解できるように、多くの具体的な詳細事項について説明する。ただし、当業者にとって明らかなように、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全部がなくとも実施可能である。また、本発明が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略している。
【0025】
図1Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100を示す等角図である。図1Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100を示す斜視図である。図1Cは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100の斜視図を図1Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図である。図1Dは、いくつかの実施形態に従って、図1Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の熱光学位相シフタ100を示す図である。いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)加工処理を通して半導体チップ(または半導体ダイ)の一部として形成される。記載の簡単のために、本明細書で用いられている半導体チップという用語は、半導体チップおよび半導体ダイの両方を指すこととする。また、本明細書で言及されている半導体チップは、半導体ウエハの個片化の前の元のままの半導体ウエハの一部と見なされてもよいし、半導体ウエハからすでに個片化されたものと見なされてもよい。このように、熱光学位相シフタ100は、基板101(シリコン基板など)の一部の上に形成される。いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)チップとして構成された半導体チップの一部として形成される。これらの実施形態において、埋め込み酸化膜(BOX)層103が、基板101の上に形成されている。熱光学位相シフタ100およびその他の光学構成要素は、半導体チップのデバイス層105内に形成されている。いくつかの実施形態において、デバイス層105は、さらに、シリコンベース電気デバイス(トランジスタおよびその他のアクティブ電気部品など)を備える。したがって、デバイス層105は、半導体チップのアクティブ層とも呼ばれる。
【0026】
バックエンドオブライン(BEOL)領域107が、デバイス層105の上方に形成されている。いくつかの実施形態において、BEOL領域107は、1または複数の相互接続層を備え、ここで、垂直に隣接する相互接続層は、誘電材料(特に、二酸化シリコンなど)を介在させることによって互いから分離されている。複数の相互接続層の各々は、電気信号を伝えるために電気回路の一部を形成する導電相互接続構造の配線を備える。BEOL領域107の所与の層における導電相互接続構造は、誘電材料(特に、二酸化シリコンなど)を介在させることによって互いから電気的に分離されている。BEOL領域107は、さらに、BEOL領域107の異なる相互接続層において導電相互接続構造を電気接続するために形成されている導電ビア構造を備える。また、いくつかの実施形態において、BEOL領域107および/または基板101は、デバイス層105内の光学デバイス(光学デバイスの中でも特に、デバイス層105内に形成されている光導波路など)への光結合を可能にするために、光学構成要素(光回折格子カプラおよび光導波路など)を備える。
【0027】
図2Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100がより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、図1Aに示した熱光学位相シフタ100を示す等角図である。図2Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100がより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、熱光学位相シフタ100を示す斜視図である。熱光学位相シフタ100は、ヒータ領域111を通して延伸する光導波路109を備える。いくつかの実施形態において、光導波路109は、デバイス層105の全厚(図1Dに示すd1)内に実装されている。また、いくつかの実施形態において、光導波路109は、光導波路109の構造内に光導波路109の光モードを閉じ込めるよう構成されている。ヒータ領域111は、光導波路109の近くに配置されている1または複数の半導体ヒータ装置113-1、113-2を備える。1または複数のヒータ装置113-1、113-2は、光導波路109の温度を上げるために、ヒータ領域111に投入される熱エネルギの量を増やすよう制御可能であり、これは、光導波路109を通して移動する光の位相への対応するシフト効果を有する。また、1または複数のヒータ装置113-1、113-2は、光導波路109の温度を下げるために、ヒータ領域111に投入される熱エネルギの量を減らす目的でパワーダウンまたはパワーオフされるよう制御可能であり、これも、光導波路109を通して移動する光の位相への対応するシフト効果を有する。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2の各々は、ヒータ領域111内で光導波路109の長さに沿って伸びるよう構成されている。これらの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2は、ヒータアーム113-1、113-2とも呼ばれる。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2は、電気ヒータ(電気抵抗加熱構造など)である。
【0028】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2は、2つのシリコン加熱構造113-1、113-2としてそれぞれ構成されており、2つのシリコン加熱構造113-1、113-2は、熱光学位相シフタ100の長手方向縁部に沿ってそれぞれ配置されている。いくつかの実施形態において、2つのシリコン加熱構造113-1、113-2は、それらが電気抵抗加熱構造として機能することを可能にする所定の電気抵抗を2つのシリコン加熱構造113-1、113-2内に規定するために、電荷キャリアをドープされている。いくつかの実施形態において、2つのシリコン加熱構造113-1、113-2は、デバイス層105の全厚(図1Dに示すd1)内に実装され、低い電気抵抗を達成するようにドープされている。電流がヒータ装置113-1、113-2に通されると、熱エネルギが、ヒータ装置113-1、113-2から光導波路109へ伝達され、これは、光導波路109の温度の上昇を引き起こし、それに対応して、熱光学効果により、光導波路109(例えば、シリコン光導波路109)の光屈折率を変化させる。同様に、ヒータ装置113-1、113-2に通される電流が低減または停止されると、ヒータ装置113-1、113-2から光導波路109へ伝達される熱エネルギが低減され、これは、光導波路109の温度の低下を引き起こし、それに対応して、熱光学効果により、光導波路109(例えば、シリコン光導波路109)の光屈折率を変化させる。
【0029】
いくつかの実施形態において、1または複数のヒータ装置113-1、113-2の各々は、インターリーブされたセグメント化トポロジ(interleaved segmented topology)で配置され、その結果、熱光学位相シフタ100の所与の全長d2に対して、より低い電気抵抗が達成される。インターリーブされたセグメント化トポロジで構成されたヒータ装置113-1、113-2と共に、複数のコンタクト部分113A-1、113A-2が、ヒータ装置113-1、113-2の長さに沿って提供されている。所与のヒータ装置113-1、113-2に沿って隣接して配置されている各ペアのコンタクト部分113A-1、113B-1は、所与のヒータ装置113-1、113-2内のヒータセグメントのそれぞれの端部に対応する。いくつかの実施形態において、所与のヒータ装置113-1、113-2の全長に対して、ヒータセグメントの数は、より小さいセグメントへ所与のヒータ装置113-1、113-2を分割することによって、所与のヒータ装置113-1、113-2へ給電するために用いられる電源が経験する電気抵抗を下げるように実装される。所与のヒータ装置113-1、113-2に沿って隣接して配置されているコンタクト部分113A-1、113A-2の各ペアについて、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2の内の第1コンタクト部分113A-1、113A-2は、第1電位へ電気接続され、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2の内の第2コンタクト部分113A-1、113A-2は、第2電位へ電気接続されており、ここで、第1電位が第2電位よりも大きいか、もしくは、第2電位が第1電位よりも大きいことで、電流が、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2の間で流れる。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1電位へ電気接続されているコンタクト部分113A-1、113A-2は、並列に接続され、第2電位へ電気接続されているコンタクト部分113A-1、113A-2は、並列に接続されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1電位と第2電位との間の大小関係は、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2によって境界されたヒータセグメントが直流的に動作するように、実質的に定常状態に維持される。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1電位と第2電位との間の大小関係は、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2によって境界されたヒータセグメントが交流的に動作するように、時間の関数として交互にされる。また、いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、および/または、ヒータ装置内の特定のヒータセグメントは、ヒータ装置113-1、113-2、および/または、ヒータ装置内の特定のヒータセグメントを通る電流の存在および/または大きさおよび/または方向が、時間の関数として制御されるように、変調的に動作される。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、および/または、ヒータ装置内の特定のヒータセグメントの交流的または変調的な動作は、ヒータ装置113-1、113-2の電磁信頼性を管理するために用いられる。また、いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、および/または、ヒータ装置内の特定のヒータセグメントの変調的な動作は、熱光学位相シフタ100の動作が、光導波路109を通して移動する光の位相の動的変調を提供することを可能にする。
【0031】
ヒータ装置113-1、113-2のコンタクト部分113A-1、113A-2は、ヒータ装置113-1、113-2への電気信号の供給を容易にする。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2のコンタクト部分113A-1、113A-2は、BEOL層107内の対応する配線(例えば、対応する導電相互接続構造)へ電気接続されている金属コンタクト(例えば、導電ビア構造)を受け入れるよう構成されている。上述のように、コンタクト部分113A-1、113A-2は、ヒータ装置113-1、113-2の長さに沿って分配されている。また、ヒータ装置113-1、113-2の長さに沿ったコンタクト部分113A-1、113A-2の位置は、ヒータ装置113-1、113-2内のセグメントの数に依存する。様々な実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2のコンタクト部分113A-1、113A-2は、ヒータ領域111内に配置されており、電気的要件および製造要件を満たすために必要な場合に、(熱光学位相シフタ100から、側方外向きに、例えば、x-y平面と平行に)ヒータ領域111の外側へ伸びていてもよい。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2のコンタクト部分113A-1、113A-2は、ヒータ装置113-1、113-2へなされた電気接触(例えば、ビアコンタクト)の信頼性を保証するために、加工処理の設計ルール検証(DRC)要件を満たすよう構成されている。いくつかの実施形態において、コンタクト部分113A-1、113A-2および関連導電コンタクト(例えば、ビアコンタクト)ならびに配線のサイズおよび向きは、ヒータ装置113-1、113-2を通る電流に対するファウンドリ信頼性ルールに対してパラメータ化される。
【0032】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2の長さd2およびトポロジは、ヒータ装置113-1、113-2を駆動する回路に提示されている特定の電気インピーダンスを対象とするように規定されている。ヒータ装置113-1、113-2の長さd2は、光導波路109内の所望の光位相シフトに影響するために必要とされる温度とトレードオフされる。例えば、熱光学位相シフタ100およびその中のヒータ装置113-1、113-2の長さd2が長くなるほど、光導波路109内の光位相に所与のシフトを達成するために必要とされる温度が低下する。ヒータ装置113-1、113-2の長さd2およびトポロジ(インターリーブされたセグメント数)は、材料および加工技術に依存する。いくつかの実施形態において、ヒータ領域111の長さd2(熱光学位相シフタ100内のヒータ装置113-1、113-2の長さd2)は、約10マイクロメートルから約1000マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ領域111の長さd2は、約50マイクロメートルから約500マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ領域111の長さd2は、約100マイクロメートルから約200マイクロメートルまでの範囲内にある。
【0033】
光導波路109は、ヒータ装置113-1、113-2の間に配置されている。また、光導波路109は、ヒータ装置113-1、113-2内での温度変化が、光導波路109内での同様の温度変化へ効率的に影響を与えるように、ヒータ装置113-1、113-2と光導波路109との間の熱インピーダンスを低減するために、ヒータ装置113-1、113-2に近接して配置されている。光導波路109と所与のヒータ装置113-1、113-2との間の距離d3は、光導波路109と所与のヒータ装置113-1、113-2との間の熱インピーダンスを最小にしつつ、光導波路109内の一次光モードの光閉じ込めおよび低損失を提供するように選択される。所与のヒータ装置113-1、113-2と光導波路109との間の低い熱インピーダンスは、熱光学位相シフタ100の位相シフトチューニング効率を改善し、一般に、所与のヒータ装置113-1、113-2の給電要件を緩和するので、その結果、光導波路109内で所望の光位相シフトを引き起こすために必要な電流、電圧、および/または、電力が低くなる。
【0034】
様々な実施形態において、光導波路109は、光導波路として機能できる材料(材料の中でも特に、シリコンなど)で形成されている。また、水平方向(x-y平面と平行)および/または垂直方向(z軸と平行)の光導波路109に対する周囲材料は、周囲材料が光導波路109の光クラッド材料として機能することを可能にする光学屈折率を有する。いくつかの実施形態において、(z軸と平行に測定した)光導波路109の垂直サイズd1は、約50ナノメートルから約400ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、光導波路109の垂直サイズd1は、約100ナノメートルから約300ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、光導波路109の垂直サイズd1は、約220ナノメートルである。いくつかの実施形態において、(光導波路109の側面と実質的に垂直な方向にx-y平面と平行に測定した)光導波路109の幅d4は、光導波路109内で単一の光モードをサポートするように設定される。したがって、光導波路109の幅d4は、所与の技術プラットフォームおよび材料断面と共に変化し、それらに対して最適化される。いくつかの実施形態において、光導波路109の幅d4は、約200ナノメートルから約1マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、光導波路109の幅d4は、約300ナノメートルから約500ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、光導波路109の幅d4は、約325ナノメートルから約450ナノメートルまでの範囲内にある。
【0035】
いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100は、光導波路109を通る光の伝送方向に対して、光導波路109がヒータ領域111に入りおよび/または出る位置の内の1または複数に、光モード変換器119を備える。光モード変換器119は、光導波路109の長さに沿った光モードが、光の有害な損失および/または反射を起こすことなしにヒータ領域111内の光導波路109を通る光の伝搬に適していることを保証するために、光導波路109の一次光モードを、ヒータ領域111の外側の分離した光導波路の光モードから、ヒータ領域111内に存在する周囲材料内に埋め込まれた光導波路の光モードへ、移行させるよう設計されている。このように、ヒータ領域111内の光導波路109の部分は、ヒータ領域111の外側の光導波路109の部分とは異なる物理的寸法を有しうる。いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109自体の一部として構成されている。より具体的には、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109内の或る光モードから光導波路109内の別の光モードへの移行を可能にする光導波路109の幾何形状の段階的変化によって形成されている。例えば、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109の所定の長さにわたる光導波路109の幅d4のテーパリングとして構成されている。また、いくつかの実施形態において、光モード変換器119を形成する光導波路109のテーパ幅d4の領域は、光導波路109の各側面で実質的に対称になっている。
【0036】
様々な実施形態において、光モード変換器119の利用は、任意選択的であり、ヒータ領域111の外側の光導波路109の光モードとヒータ領域111の内側の光導波路109の光学モードとの間の相違に依存する。光モード変換器119の利用は、光導波路109を通してヒータ領域111の中へそしてヒータ領域111の外へ光が移動する時に、望ましくない光の損失および/または光の反射を緩和するのに役立つ。しかしながら、いくつかの実施形態において、ヒータ領域111の外側の光導波路109の光モードおよびヒータ領域111内の光導波路109の光モードは、熱光学位相シフタ100の許容可能な性能を達成するために光モード変換器119を利用する必要がないほど十分に類似している。
【0037】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2と光導波路109との間の領域は、十分に低い熱インピーダンスを提供する光クラッド材料で形成されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100は、ヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれと光導波路109との間に配置されている熱貫流構造115-1、115-2を備える。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2は、ヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれと光導波路109との両方に熱伝導するシリコン構造として形成されている。例えば、いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2は、隣接するヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれと光導波路109との両方に物理的に接触する薄いシリコン領域として形成されている。熱貫流構造115-1、115-2は、ヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれと光導波路109との間の熱インピーダンスを下げるよう機能する。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2の(z軸と平行に測定した)垂直サイズd5は、光導波路109の一次光モードを光導波路109内に十分に閉じ込められた状態に保つように設定されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2の垂直サイズd5は、光導波路109の垂直サイズd1よりも小さい。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-の垂直サイズd5は、ゼロより大きい値から約200ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2の垂直サイズd5は、約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2の垂直サイズd5は、約30ナノメートルから約80ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2は、光導波路109および熱貫流構造115-1、115-2の両方を形成するためにリソグラフィでマスクされエッチングされたシリコン層の薄化部分として形成されている。シリコン層のそれぞれの薄化部分として熱貫流構造115-1、115-2を構成することで、光導波路109の光モードが光導波路109内に閉じ込められる。
【0038】
空洞117が、基板101内で熱光学位相シフタ100の下方に形成されている。いくつかの実施形態において、空洞117は、アンダーカットエッチング処理を用いて形成される。より具体的には、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100が基板101上に形成された後、空洞117を形成するように基板101の一部を除去するために、アンダーカットエッチング処理が実行される。空洞117を形成するために利用可能なアンダーカットエッチング処理の一例が、Tymon Barwicz et al.による「A Novel Approach to Photonic Packaging Leveraging Existing High-Throughput Microelectronics Facilities」(IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,Volume22,No.6、2016年11月/12月)(以下、「Barwicz」とする)に記載されている。ただし、Barwiczに記載されているもの以外のアンダーカットエッチング処理も空洞117の形成に利用できることを理解されたい。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、BEOL層107の加工前に基板101に実行される。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、ヒータ領域111の外側の領域内のデバイス層105およびBOX層103の両方を通して開口部(例えば、ホール、スリット、および/または、トレンチ)の配列を形成した後に、開口部の配列を通して基板101の一部をエッチングすることを含み、基板101の一部のエッチングは、熱光学位相シフタ100の下方に連続的な開口領域として空洞117を形成するためにBOX層107をアンダーカットする。開口部の配列における開口部の分布は、熱光学位相シフタ100の下方に連続的な開口領域を形成することを可能にするよう規定される。例えば、いくつかの実施形態において、開口部の配列は、熱光学位相シフタ100のヒータ領域111の周りに格子パターンで規定される。基板101のアンダーカットエッチング処理が実行された開口部は、アンダーカットエッチャントが、熱光学位相シフタ100の光位相シフト領域(ヒータ領域111)の下の基板101(例えば、シリコン基板)に到達することを可能にする。基板101のアンダーカットエッチング中、アンダーカットエッチャントは、熱光学位相シフタ100の下で連続的に広がる開放空洞117を形成するために、熱光学位相シフタの下から基板101の一部を除去する。基板101のアンダーカットエッチング処理が実行される際に用いられる開口部は、様々な開口部に関連する基板101内のアンダーカット領域が統合的に熱光学位相シフタ100の下で連続的な空洞117を形成することを保証するようなサイズで互いに離間される。
【0039】
空洞117は、熱光学位相シフタ100が十分にアンダーカットされることを保証するように、ヒータ装置113-1、113-2および光導波路109と関連して設計されており、光導波路109が上に存在する熱光学位相シフタ構造100の中央の下の位置を含め、熱光学位相シフタ100の下の実質的に全領域で、熱光学位相シフタ100の下の所定の厚さの基板101が除去されるようになっている。いくつかの実施形態において、基板101のアンダーカットエッチング処理が実行された開口部は、その後に密閉される。いくつかの実施形態において、空洞117は、開放されたままにされ、例えば、空気で満たされ、または、ガスで満たされる。いくつかの実施形態において、空洞117は、要因の中でも特に、熱インピーダンス、光学性能信頼性、および/または、製造可能性のバランスを取るように選択された埋め戻し材料で部分的または完全に埋め戻される。いくつかの実施形態において、デバイス層105およびBOX層103を通して形成されている開口部を通して基板101のアンダーカットエッチングを行うことによって空洞117を形成するのではなく、空洞117または同等の領域は、基板101の露出した底面からの部分的基板101除去処理(例えば、基板101の材料のパターニング除去)によって形成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、光導波路109、および、基板101のアンダーカットエッチング処理のための開口部の幾何形状は、熱光学位相シフタ100の下方の空洞117の加工を可能にしつつ、光学損失、散乱、反射、および/または、光導波路109を通して伝送される光学信号へのその他の障害を最小化すると共に、熱光学位相シフタ100の構造内の機械的故障を防ぐよう構成される。空洞117は、熱光学位相シフタ100と周囲材料との間の熱インピーダンスを高め、これは、周囲材料への伝熱を低減することによって、熱光学位相シフタ100のより効率的な動作を可能にする。いくつかの実施形態において、(z軸と平行に測定したされるような)空洞117の深さd6は、約1マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117の深さd6は、約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117の深さd6は、約8マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117の深さd6は、製造に用いられる技術と、空洞117を形成するために用いられるアンダーカットエッチング処理とに依存する。空洞117の深さd6が大きいほど、熱光学位相シフタ100の熱効率が良好になる。ただし、空洞117の有効深さd6を超えると、熱光学位相シフタ100の熱効率の改善はわずかになる。また、空洞117の深さd6は、熱光学位相シフタ100の全体構造の機械的完全性を保証するように規定される。空洞117は、熱光学位相シフタ100と、デバイス層105内の隣接するフィーチャ/構成要素との間の十分な熱的分離を達成するために、熱光学位相シフタ100から横方向に(x-y平面と平行な方向へ)十分に遠く伸びるよう設計されている。いくつかの実施形態において、(x-y平面と平行に測定した)ヒータ装置113の外側の空洞117の側方延長d7は、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117の側方延長d7は、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117の側方延長d7は、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルまでの範囲内にある。熱光学位相シフタ100の熱的分離は、空洞117の側方延長d7が長くなるにつれて増大する。したがって、空洞117の側方延長d7が長くなるほど、熱光学位相シフタ100のサーマルチューニング効率が高くなる。ただし、空洞117の有効側方延長d7を超えると、熱光学位相シフタ100のサーマルチューニング効率の改善はわずかになる。また、空洞117の側方延長d7は、熱光学位相シフタ100の全体構造の機械的完全性を保証するように規定される。空洞117は、熱光学位相シフタ100内に熱エネルギを保持するのに役立つ断熱材として機能し、これは、光導波路109の温度制御の精度を改善し、光導波路109の所定の温度に到達して維持するためにヒータ装置113-1、113-2によって必要とされるエネルギ量を削減し、デバイス層105内で熱光学位相シフタ100の近くに形成されている電気デバイスおよび/または光学デバイスへの伝熱を軽減するのに役立つ。
【0041】
上記に鑑みて、熱光学位相シフタ100は、光導波路109の近くに配置されている1または複数のヒータ装置113-1、113-2を備える。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113は、光導波路109の効率的な加熱を提供するために、光導波路109のそれぞれの側面に沿って構成および配置されている2つのシリコンヒータアームを備える。空洞117は、熱光学位相シフタ100と熱光学位相シフタ100の周囲の材料との間の熱インピーダンスを高めることによって、熱光学位相シフタ100のサーマルチューニング効率を改善するために、熱光学位相シフタ100の下方に形成されている。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2および光導波路109は、部分的にはリソグラフィパターニング処理およびエッチング処理(例えば、完全エッチングおよび/または部分エッチング処理など)によって加工されたデバイス層105(例えば、アクティブ半導体層)に形成されている。いくつかの実施形態において、光導波路109は、全厚の光導波路として構成され、ここで、光導波路109の垂直サイズd1は、デバイス層105の垂直厚さと実質的に同じである。また、熱貫流構造115-1、115-2は、光導波路109への伝熱を改善するために、光導波路109とヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれとの間に任意選択的に配置されてよい。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2は、光導波路109を形成するために用いられたより大きいシリコン構造の部分エッチングによって形成されている薄いシリコン構造である。熱貫流構造115-1、115-2は、ヒータ領域111内の光導波路109の一次光モードとの光結合を避けるようなサイズである。
【0042】
図3Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Aを示す等角図である。図3Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Aを示す斜視図である。図3Cは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Aの斜視図を図3Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図である。図3Dは、いくつかの実施形態に従って、図3Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の熱光学位相シフタ100Aを示す図である。図4Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Aがより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、図3Aに示した熱光学位相シフタ100Aを示す等角図である。図4Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Aがより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、熱光学位相シフタ100Aを示す斜視図である。
【0043】
熱光学位相シフタ100Aは、ヒータ領域111を1回通過する光導波路109を備えた熱光学位相シフタ100(図1A図1B図1C図1D図2A、および、図2Bに関して記載)の変形例である。ただし、図3Aに示すように、熱光学位相シフタ100Aは、デバイス層105A内に構成されている光導波路109Aを備え、光導波路109Aは、ヒータ領域111Aを2回通過している。熱光学位相シフタ例100Aにおいて、光導波路109Aは、ヒータ領域111A内の2つのセグメント109A-1および109A-2、ループバックセグメント109A-3、第1入力/出力セグメント109A-4、および、第2入力/出力セグメント109A-5を含む連続的な構造として形成されている。
【0044】
いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Aは、光導波路109A-5がヒータ領域111Aに入りおよび/または出る位置に、光モード変換器119を備える。光モード変換器119は、光導波路109Aの長さに沿った光モードが、ヒータ領域111A内の光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2を通る光の伝搬に適していることを保証するために、光導波路109Aの光モードを、ヒータ領域111Aの外側の分離した光導波路の光モードから、ヒータ領域111Aの周囲材料内に埋め込まれた光導波路の光モードへ、移行させるよう設計されている。このように、ヒータ領域111A内の光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2は、ヒータ領域111Aの外側にある光導波路109Aのセグメント109A-3、109A-4、および、109A-5とは異なる物理的寸法を有しうる。また、いくつかの実施形態において、光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2の寸法は、互いに対して異なる物理的寸法を有しうる。いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109A自体の一部として構成されている。より具体的には、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109A内の或る光モードから光導波路109A内の別の光モードへの移行を可能にする光導波路109Aの幾何形状の段階的変化によってり形成されている。例えば、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109Aの特定の長さにわたる光導波路109Aの幅のテーパリングとして構成されている。また、いくつかの実施形態において、光モード変換器119を形成する光導波路109Aのテーパ領域は、光導波路109Aの各側面で実質的に対称になっている。
【0045】
様々な実施形態において、光モード変換器119の利用は、任意選択的であり、ヒータ領域111Aの外側の光導波路109Aの光モードとヒータ領域111Aの内側の光導波路109Aの光学モードとの間の相違に依存する。光モード変換器119の利用は、光導波路109Aを通してヒータ領域111A内のセグメント109A-1および109A-2へ光が出入りする時に、望ましくない光の損失および/または光の反射を緩和するのに役立つ。しかしながら、いくつかの実施形態において、ヒータ領域111Aの外側の光導波路109Aの光モードおよびヒータ領域111A内の光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2内の光モードは、熱光学位相シフタ100Aの許容可能な性能を達成するために光モード変換器119を利用する必要がないほど十分に類似している。
【0046】
光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2は、それぞれ、図3Dに示すようにx-y平面と平行に横方向に測定した幅d8およびd9を有する。いくつかの実施形態において、幅d8およびd9は、実質的に等しい。ただし、いくつかの実施形態において、幅d8およびd9の一方は、他方と異なっている。光導波路109Aのセグメント109A-1は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d10だけ隣接するヒータ装置113-1から分離されている。光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d11だけ互いから分離されている。光導波路109Aのセグメント109A-2は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d12だけ隣接するヒータ装置113-2から分離されている。いくつかの実施形態において、距離d10、d11、および、d12は、実質的に等しい。いくつかの実施形態において、距離d10、d11、および、d12の内の1または複数は、その他の距離と異なっている。
【0047】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2と光導波路109Aとの間の領域は、十分に低い熱インピーダンスを提供する光クラッド材料で形成されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Aは、ヒータ装置113-1、113-2の内のそれぞれと光導波路109Aとの間に配置されている熱貫流構造115A-1、115A-2を備える。熱貫流構造115A-1および115A-2は、外側配置熱貫流構造と呼ばれる。また、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Aは、光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2の間に配置されている熱貫流構造115A-3を備える。熱貫流構造115A-3は、内側配置熱貫流構造と呼ばれる。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1および115A-2は、ヒータ装置113-1および113-2の内のそれぞれと光導波路109Aとの両方に熱伝導するシリコン構造として形成されている。また、いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-3は、光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2の両方と熱伝導するシリコン構造として形成されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3は、光導波路109Aの全厚に対して薄いシリコン構造として形成されている。熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3は、ヒータ装置113と光導波路109Aとの間の熱インピーダンスを下げるよう機能する。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3の垂直サイズd5は、光導波路109Aの光モードを光導波路109A内に十分に閉じ込められた状態に保つように設定されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3の垂直サイズd5は、光導波路109Aの垂直サイズd1よりも小さい。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3の垂直サイズd5は、ゼロより大きい値から約200ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3の垂直サイズd5は、約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3の垂直サイズd5は、約30ナノメートルから約80ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3は、光導波路109Aを形成するようにエッチングされたシリコン層の薄化部分として形成されている。シリコン層のそれぞれの薄化部分として熱貫流構造115A-1、115A-2、115A-3を構成することで、光モードが光導波路109A内に閉じ込められる。
【0048】
空洞117Aは、基板101内で熱光学位相シフタ100Aの下方に形成されている。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理が、熱光学位相シフタ100Aの下方に空洞117Aを形成するために用いられる。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、熱光学位相シフタ100Aが基板101上に形成された後に実行される。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、BEOL層107の加工前に基板101に実行される。いくつかの実施形態において、基板101のアンダーカットエッチング処理は、デバイス層105およびBOX層103の両方を通して開口部の配列を形成した後に、開口部を通して基板101の一部をエッチングすることを含み、基板101の一部のエッチングは、熱光学位相シフタ100Aの下方に連続的な開口領域として空洞117Aを形成するためにBOX層107をアンダーカットする。開口部の配列における開口部の分布は、熱光学位相シフタ100Aの下方に連続的な開口領域を形成することを可能にするよう規定される。例えば、いくつかの実施形態において、開口部の配列は、熱光学位相シフタ100Aのヒータ領域111Aの周りに格子パターンで規定される。基板101のアンダーカットエッチング処理が実行された開口部は、アンダーカットエッチャントが、熱光学位相シフタ100Aの光位相シフト領域(ヒータ領域111A)の下の基板101(例えば、シリコン基板)に到達することを可能にする。基板101のアンダーカットエッチング中、アンダーカットエッチャントは、熱光学位相シフタ100Aの下で連続的に広がる開放空洞117Aを形成するために、熱光学位相シフタの下から基板101の一部を除去する。基板101のアンダーカットエッチング処理が実行される開口部は、様々な開口部に関連する基板101内のアンダーカット領域が統合的に熱光学位相シフタ100Aの下で連続的な空洞117Aを形成することを保証するようなサイズで互いに離間される。空洞117Aを形成するために利用可能なアンダーカットエッチング処理の一例が、上述のBarwicz参照文献に記載されている。ただし、Barwicz参照文献に記載されているもの以外のアンダーカットエッチング処理も空洞117Aの形成に利用できることを理解されたい。
【0049】
空洞117Aは、熱光学位相シフタ100Aが十分にアンダーカットされることを保証するように、ヒータ装置113-1、113-2および光導波路109Aと関連して設計されており、光導波路109Aが上に存在する熱光学位相シフタ構造100Aの中央の下の位置を含め、熱光学位相シフタ100Aの下の実質的に全領域で、熱光学位相シフタ100Aの下の所定の厚さの基板101が除去されるようになっている。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理が実行された開口部は、その後に密閉される。いくつかの実施形態において、空洞117Aは、開放されたままにされ、例えば、空気で満たされ、または、ガスで満たされる。いくつかの実施形態において、空洞117Aは、要因の中でも特に、熱インピーダンス、光学性能信頼性、および/または、製造可能性のバランスを取るように選択された埋め戻し材料で部分的または完全に埋め戻される。いくつかの実施形態において、デバイス層105およびBOX層103を通して形成されている開口部を通してアンダーカットエッチングを行うことによって空洞117Aを形成するのではなく、空洞117Aまたは同等の領域は、基板101の底面からの部分的基板101除去処理(基板101の材料のパターニング除去)によって形成される。
【0050】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、光導波路109A、および、アンダーカットエッチング処理のための開口部の幾何形状は、熱光学位相シフタ100Aの下方の空洞117Aの加工を可能にしつつ、光学損失、散乱、反射、および/または、光導波路109Aを通して伝送される光学信号へのその他の障害を最小化すると共に、熱光学位相シフタ100Aの構造内の機械的故障を防ぐよう構成される。空洞117Aは、熱光学位相シフタ100Aと周囲材料との間の熱インピーダンスを高め、これは、周囲材料への伝熱を低減することによって、熱光学位相シフタ100Aのより効率的な動作を可能にする。いくつかの実施形態において、空洞117Aの深さd6は、約1マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Aの深さd6は、約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Aの深さd6は、約8マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Aの深さd6は、製造に用いられる技術と、空洞117Aを形成するために用いられるアンダーカットエッチング処理とに依存する。空洞117Aの深さd6が大きいほど、熱光学位相シフタ100Aの熱効率が良好になる。ただし、空洞117Aの有効深さd6を超えると、熱光学位相シフタ100Aの熱効率の改善はわずかになる。また、空洞117Aの深さd6は、熱光学位相シフタ100Aの全体構造の機械的完全性が損なわれないことを保証するように規定される。空洞117Aは、熱光学位相シフタ100Aと、隣接するフィーチャ/構成要素との間の十分な熱的分離を達成するために、熱光学位相シフタ100Aから横方向に十分に遠く伸びるよう設計されている。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Aの側方延長d7は、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Aの側方延長d7は、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Aの側方延長d7は、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルまでの範囲内にある。熱光学位相シフタ100Aの熱的分離は、空洞117Aの側方延長d7が長くなるにつれて増大する。したがって、空洞117Aの側方延長d7が長くなるほど、熱光学位相シフタ100Aのサーマルチューニング効率が高くなる。ただし、空洞117Aの有効側方延長d7を超えると、熱光学位相シフタ100Aのサーマルチューニング効率の改善はわずかになる。また、空洞117Aの側方延長d7は、熱光学位相シフタ100Aの全体構造の機械的完全性を保証するように規定される。空洞117Aは、熱光学位相シフタ100A内に熱エネルギを保持するのに役立つ断熱材として機能し、これは、光導波路109Aの温度制御の精度を改善し、光導波路109Aの所定の温度に到達して維持するためにヒータ装置113-1、113-2によって必要とされるエネルギ量を削減し、デバイス層105A内で熱光学位相シフタ100Aの近くに形成されている電気デバイスおよび/または光学デバイスへの伝熱を軽減するのに役立つ。
【0051】
熱光学位相シフタ100Aにおいて、光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2は、2つのヒータ装置113-1、113-2の間に配置されている。ヒータ領域111Aの外側にある光導波路109Aのループバックセグメント109A-3は、光導波路109Aの第1入力/出力セグメント109A-4に注入された光が、ヒータ領域111Aを2回通過して光導波路109Aの第2入力/出力セグメント109A-5から出るように、かつ、光導波路109Aの第2入力/出力セグメント109A-5に注入された光が、ヒータ領域111Aを2回通過して光導波路109Aの第1入力/出力セグメント109A-4から出るように、ヒータ領域111Aの内側にある光導波路109Aのセグメント109A-1および109A-2を連続的な経路で接続している。光導波路109Aのループバックセグメント109A-3は、熱光学位相シフタ100Aの全体サイズが、コンパクトであるが、それでも、光導波路109A内の遷移および光放射モードを曲げるために失われる光エネルギを最小化するのに十分大きくなるようなサイズを有する。
【0052】
光導波路109Aがヒータ領域111Aを2回通過しているので、ヒータ装置113-1、113-2は、ヒータ領域111A内の光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2における温度変化に影響を与えることができ、これにより、ヒータ装置113-1、113-2に供給される電力が同じ量でも、光導波路109Aを通る光のより大きい位相シフトが提供される。ヒータ領域111Aを通っている光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2は、光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2における光モードの間の光結合が熱光学位相シフタ100Aの全体の性能に関して大きく影響しないように、互いに離間されている。いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Aのコンパクト性と、ヒータ領域111A内の光導波路109Aにおける隣接して配置されているセグメント109A-1および109A-2の間の光結合を最小化/防止することとのトレードオフを改善するために、光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2は、光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2の間の光学的重複が位相整合されないように、互いに若干異なるサイズを有する。いくつかの実施形態において、ヒータ領域111A内の光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2は、ヒータ領域111A内の光導波路109Aの2つのセグメント109A-1および109A-2の間の光学的重複が位相整合されないように、それぞれ異なる幅d8およびd9を有するよう構成されている。
【0053】
図5Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Bを示す等角図である。図5Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Bを示す斜視図である。図5Cは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Bの斜視図を図5Bの矢視線A-Aにおいて切断した垂直断面図である。図5Dは、いくつかの実施形態に従って、図5Bの矢視線A-Aにおける垂直断面内の熱光学位相シフタ100Bを示す図である。図6Aは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Bがより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、図5Aに示した熱光学位相シフタ100Bを示す等角図である。図6Bは、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100Bがより明確に見えるようにBEOL領域107を除去した状態で、熱光学位相シフタ100Bを示す斜視図である。
【0054】
熱光学位相シフタ100Bは、ヒータ領域111を1回通過する光導波路109を備えた熱光学位相シフタ100(図1A図1B図1C図1D図2A、および、図2Bに関して記載)の変形例である。ただし、図5Aに示すように、熱光学位相シフタ100Bは、デバイス層105B内に構成されている光導波路109Bを備え、光導波路109Bは、ヒータ領域111Bを3回通過している。熱光学位相シフタ例100Bにおいて、光導波路109Bは、ヒータ領域111B内の3つのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3、第1ループバックセグメント109B-4、第2ループバックセグメント109B-5、第1入力/出力セグメント109B-6、および、第2入力/出力セグメント109B-7を含む連続的な構造として形成されている。
【0055】
いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Bは、光導波路109B-5がヒータ領域111Bに入りおよび/または出る位置に、光モード変換器119を備える。光モード変換器119は、光導波路109Bの長さに沿った光モードが、ヒータ領域111B内の光導波路109Bのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3を通る光の伝搬に適していることを保証するために、光導波路109Bの光モードを、ヒータ領域111Bの外側の分離した光導波路の光モードから、ヒータ領域111Bの周囲材料内に埋め込まれた光導波路の光モードへ、移行させるよう設計されている。このように、ヒータ領域111B内の光導波路109Bのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、ヒータ領域111Bの外側にある光導波路109Bのセグメント109B-4、109B-5、109B-6、および、109B-7とは異なる物理的寸法を有しうる。また、いくつかの実施形態において、光導波路109Bのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3の寸法は、互いに対して異なる物理的寸法を有しうる。いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109B自体の一部として構成されている。より具体的には、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109B内の或る光モードから光導波路109B内の別の光モードへの移行を可能にする光導波路109Bの幾何形状の段階的変化によって形成されている。例えば、いくつかの実施形態において、光モード変換器119は、光導波路109Bの特定の長さに沿って光導波路109Bの(x-y平面と平行に測定した)幅をテーパさせることによって形成されている。また、いくつかの実施形態において、光モード変換器119を形成する光導波路109Bのテーパ領域は、光導波路109Bの各側面で実質的に対称になっている。
【0056】
様々な実施形態において、光モード変換器119の利用は、任意選択的であり、ヒータ領域111Bの外側の光導波路109Bの光モードとヒータ領域111Bの内側の光導波路109Bの光学モードとの間の相違に依存する。光モード変換器119の利用は、光導波路109Bを通してヒータ領域111B内のセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3へ光が出入りする時に、望ましくない光の損失および/または光の反射を緩和するのに役立つ。しかしながら、いくつかの実施形態において、ヒータ領域111Bの外側の光導波路109Bの光モードおよびヒータ領域111B内の光導波路109Bのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3の光モードは、熱光学位相シフタ100Bの許容可能な性能を達成するために光モード変換器119を利用する必要がないほど十分に類似している。
【0057】
光導波路109Bのセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、それぞれ、図5Dに示すようにx-y平面と平行に横方向に測定した幅d13、d14、および、d15を有する。いくつかの実施形態において、幅d13、d14、および、d15は、実質的に等しい。ただし、いくつかの実施形態において、幅d13、d14、および、d15の内の1または複数は、その他の幅と異なっている。光導波路109Bのセグメント109B-1は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d16だけ隣接するヒータ装置113-1から分離されている。光導波路109Bのセグメント109B-1および109B-2は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d17だけ互いから分離されている。光導波路109Bのセグメント109B-2および109B-3は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d18だけ互いから分離されている。光導波路109Bのセグメント109B-3は、x-y平面と平行に横方向に測定した距離d19だけ隣接するヒータ装置113-2から分離されている。いくつかの実施形態において、距離d17およびd18は、実質的に等しい。いくつかの実施形態において、距離d16、d17、d18、および、d19は、実質的に等しい。いくつかの実施形態において、距離d16、d17、d18、および、d19の内の1または複数は、その他の距離と異なっている。
【0058】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2と光導波路109Bとの間の領域は、十分に低い熱インピーダンスを提供するクラッド材料で形成されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Bは、ヒータ装置113-1および113-2の内のそれぞれと光導波路109Bとの間に配置されている熱貫流構造115B-1および115B-2を備える。熱貫流構造115B-1および115B-2は、外側配置熱貫流構造と呼ばれる。また、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Bは、光導波路109Bのセグメント109B-1および109B-3の間に配置されている熱貫流構造115B-3を備える。また、いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Bは、光導波路109Bのセグメント109B-2および109B-4の間に配置されている熱貫流構造115B-4を備える。熱貫流構造115B-3および115B-4は、内側配置熱貫流構造と呼ばれる。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1は、ヒータ装置113-1と光導波路109Bのセグメント109B-1との両方に熱伝導するシリコン構造として形成されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-2は、ヒータ装置113-2と光導波路109Bのセグメント109B-3との両方に熱伝導するシリコン構造として形成されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-3は、光導波路109Bのセグメント109B-1および109B-2の両方と熱伝導するシリコン構造として形成されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-4は、光導波路109Bのセグメント109B-2および109B-3の両方と熱伝導するシリコン構造として形成されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4は、光導波路109Bが形成されるシリコン層の薄化部分として形成されている。これらの実施形態において、シリコン層のそれぞれの薄化部分として熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4を形成することで、光モードが光導波路109B内に閉じ込められる。
【0059】
熱貫流構造115B-1および115B-2は、ヒータ装置113-1および113-2の内のそれぞれと光導波路109Bとの間の熱インピーダンスを下げるよう機能する。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、光モードを光導波路109B内に十分に閉じ込められた状態に保つように設定されている。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、光導波路109Bの垂直サイズd1よりも小さい。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、ゼロより大きい値から約200ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、約30ナノメートルから約80ナノメートルまでの範囲内にある。
【0060】
空洞117Bは、基板101内で熱光学位相シフタ100Bの下方に形成されている。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理が、熱光学位相シフタ100Bの下方に空洞117Bを形成するために用いられる。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、熱光学位相シフタ100Bが基板101上に形成された後に実行される。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、BEOL層107の加工前に基板101に実行される。いくつかの実施形態において、アンダーカットエッチング処理は、デバイス層105およびBOX層103の両方を通して開口部の配列を形成した後に、開口部の配列を通して基板101の一部をエッチングすることを含み、基板101の一部のエッチングは、熱光学位相シフタ100Bの下方に連続的な開口領域として空洞117Bを形成するためにBOX層107をアンダーカットする。開口部の配列における開口部の分布は、熱光学位相シフタ100Bの下方に連続的な開口領域を形成することを可能にするよう規定される。例えば、いくつかの実施形態において、開口部の配列は、熱光学位相シフタ100Bの周りに格子パターンで形成されている。基板101のアンダーカットエッチング処理が実行される開口部は、様々な開口部に関連する基板101内のアンダーカット領域が統合的に熱光学位相シフタ100Bの下で連続的な空洞117Bを形成することを保証するようなサイズで互いに離間される。開口部は、熱光学位相シフタ100Bの下から基板101の一部を除去することで熱光学位相シフタ100Bの下で連続的に広がる開放空洞117Bを形成するために、アンダーカットエッチャントが、熱光学位相シフタ100Bの光位相シフト領域(ヒータ領域111B)の下の基板101(例えば、シリコン基板)に到達することを可能にする。空洞117Bを形成するために利用可能な基板101のアンダーカットエッチング処理の一例が、上述のBarwicz参照文献に記載されている。ただし、Barwicz参照文献に記載されているもの以外のアンダーカットエッチング処理も空洞117Bの形成に利用できることを理解されたい。
【0061】
空洞117Bは、熱光学位相シフタ100Bが十分にアンダーカットされることを保証するように、ヒータ装置113-1、113-2および光導波路109Bと関連して設計されており、光導波路109Bが上に存在する熱光学位相シフタ構造100Bの中央の下の位置を含め、熱光学位相シフタ100Bの下の実質的に全領域で、熱光学位相シフタ100Bの下の所定の厚さの基板101が除去されるようになっている。いくつかの実施形態において、基板101のアンダーカットエッチング処理が実行された開口部は、その後に密閉される。いくつかの実施形態において、空洞117Bは、開放されたままにされ、例えば、空気で満たされ、または、ガスで満たされる。いくつかの実施形態において、空洞117Bは、要因の中でも特に、熱インピーダンス、光学性能信頼性、および/または、製造可能性のバランスを取るように選択された埋め戻し材料で部分的または完全に埋め戻される。いくつかの実施形態において、デバイス層105およびBOX層103を通して形成されている開口部を通してアンダーカットエッチング処理を行うことによって空洞117Bを形成するのではなく、空洞117Bは、基板101の底面からの部分的基板101除去処理(基板101の材料のパターニング除去)によって形成される。
【0062】
いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2、光導波路109B、および、基板101のアンダーカットエッチング処理のための開口部の幾何形状は、熱光学位相シフタ100Bの下方の空洞117Bの加工を可能にしつつ、光学損失、散乱、反射、および/または、光導波路109Bを通して伝送される光学信号へのその他の障害を最小化すると共に、熱光学位相シフタ100Bの構造内の機械的故障を防ぐよう構成される。空洞117Bは、熱光学位相シフタ100Bと周囲材料との間の熱インピーダンスを高め、これは、周囲材料への伝熱を低減することによって、熱光学位相シフタ100Bのより効率的な動作を可能にする。いくつかの実施形態において、空洞117Bの深さd6は、約1マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Bの深さd6は、約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Bの深さd6は、約8マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、空洞117Bの深さd6は、製造に用いられる技術と、空洞117Bを形成するために用いられるアンダーカットエッチング処理とに依存する。空洞117Bの深さd6が大きいほど、熱光学位相シフタ100Bの熱効率が良好になる。ただし、空洞117Bの有効深さd6を超えると、熱光学位相シフタ100Bの熱効率の改善はわずかになる。また、空洞117Bの深さd6は、熱光学位相シフタ100Bの全体構造の機械的完全性を保証するように規定される。空洞117Bは、熱光学位相シフタ100Bと、デバイス層105B内の隣接するフィーチャ/構成要素との間の十分な熱的分離を達成するために、熱光学位相シフタ100Bからx-y平面と平行に横方向へ十分に遠く伸びるよう設計されている。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Bの側方延長d7は、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Bの側方延長d7は、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルまでの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113の外側の空洞117Bの側方延長d7は、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルまでの範囲内にある。熱光学位相シフタ100Bの熱的分離は、空洞117Bの側方延長d7が長くなるにつれて増大する。したがって、空洞117Bの側方延長d7が長くなるほど、熱光学位相シフタ100Bのサーマルチューニング効率が高くなる。ただし、空洞117Bの有効側方延長d7を超えると、熱光学位相シフタ100Bのサーマルチューニング効率の改善はわずかになる。また、空洞117Bの側方延長d7は、熱光学位相シフタ100Bの全体構造の機械的完全性を保証するように規定される。空洞117Bは、熱光学位相シフタ100B内に熱エネルギを保持するのに役立つ断熱材として機能し、これは、光導波路109Bの温度制御の精度を改善し、光導波路109Bの所定の温度に到達して維持するためにヒータ装置113-1、113-2によって必要とされるエネルギ量を削減し、デバイス層105B内で熱光学位相シフタ100Bの近くに形成されている電気デバイスおよび/または光学デバイスへの伝熱を軽減するのに役立つ。
【0063】
熱光学位相シフタ100Bにおいて、光導波路109Bの複数のセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、2つのヒータ装置113-1および113-2の間に配置されている。ヒータ領域111Bの外側にある光導波路109Bの第1ループバックセグメント109B-4および第2ループバックセグメント109B-5は、光導波路109Bの第1入力/出力セグメント109B-6に注入された光が、ヒータ領域111Bを複数回通過して光導波路109Bの第2入力/出力セグメント109B-7から出るように、かつ、光導波路109Bの第2入力/出力セグメント109B-7に注入された光が、ヒータ領域111Bを複数回通過して光導波路109Bの第1入力/出力セグメント109B-6から出るように、ヒータ領域111Bの内側にある光導波路109Bの複数のセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3を蛇行した連続的な経路で接続している。光導波路109Bの第1ループバックセグメント109B-4および第2ループバックセグメント109B-5は、熱光学位相シフタ100Bの全体サイズが、コンパクトであるが、それでも、光導波路109B内の遷移および光放射モードを曲げるために失われる光エネルギを最小化するのに十分大きくなるようなサイズを有する。
【0064】
光導波路109Bがヒータ領域111Bを複数回通過しているので、ヒータ装置113-1および113-2は、ヒータ領域111Bを通っている光導波路109Bの複数のセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3における温度変化に影響を与えることができ、これにより、ヒータ装置113-1および113-2に供給される電力が同じ量でも、光導波路109Bを通る光のより大きい位相シフトが提供される。ヒータ領域111Bを通っている光導波路109Bの複数のセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、光導波路109Bの隣接するセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3における光モードの間の光結合が熱光学位相シフタ100Bの全体の性能に関して大きく影響しないように、離間されている。いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100Bのコンパクト性と、ヒータ領域111B内の光導波路109Bの隣接するセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3の間の光結合を最小化/防止することとのトレードオフを改善するために、光導波路109Bの異なるセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、光導波路109Bの異なるセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3の間の光学的重複が位相整合されないように、互いに若干異なるサイズを有する。いくつかの実施形態において、ヒータ領域111B内の光導波路109Bの隣接するセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3は、ヒータ領域111B内の光導波路109Bの異なるセグメント109B-1、109B-2、および、109B-3の間の光学的重複が位相整合されないように、異なる幅d13、d14、および、d15を有するよう構成されている。熱光学位相シフタ100Aおよび100Bに関して上述した原理は、ヒータ領域を4回以上通過する光導波路を備えた熱光学位相シフタ(ここで、熱光学位相シフタは、下層の基板に形成されている空洞の上にある)を形成するために適用できることを理解されたい。
【0065】
いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100、100A、100Bは、基板101の上側領域に形成されている空洞117、117A、117Bを有する基板101を備えることが開示されている。熱光学位相シフタ100、100A、100Bは、基板101の上方に配置されている光導波路109、109A、109Bを備える。光導波路109、109A、109Bは、空洞117、117A、117Bの上方を横切って延伸する。熱光学位相シフタ100、100A、100Bは、さらに、光導波路109、109A、109Bのそれぞれの側面に沿って配置されているヒータ装置113-1および113-2を1または複数備える。ヒータ装置113-1および113-2の各々は、空洞117、117A、117Bの上方を横切って延伸する。いくつかの実施形態において、空洞117、117A、117Bの上方を横切って延伸する光導波路109、109A、109Bのセグメントは、実質的に直線の形状を有する。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1および113-2の各々は、光導波路109、109A、109Bの側面に最も近いヒータ装置113-1、113-2の側面に沿って実質的に直線の形状を有する。また、いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2の直線形状の側面は、光導波路109、109A、109Bの側面と実質的に平行に向けられている。いくつかの実施形態において、ヒータ装置113-1、113-2は、複数のヒータ装置セグメントを含み、各ヒータ装置セグメントは、ヒータ装置113-1、113-2における隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2の間に延伸する。ヒータ装置113-1、113-2の内の所与の装置内に隣接して配置されているコンタクト部分113A-1、113A-2の各ペアは、第1電位へ電気接続されている1つのコンタクト部分113A-1、113A-2と、第2電位へ電気接続されている1つのコンタクト部分113A-1、113A-2とを含み、ここで、第1電位が第2電位よりも大きいか、もしくは、第2電位が第1電位よりも大きいことで、電流が、隣接して配置されているペアのコンタクト部分113A-1、113A-2の間で流れる。
【0066】
いくつかの実施形態において、熱光学位相シフト100、100A、100Bは、光導波路109、109A、109Bの側面と、光導波路109、109A、109Bの側面に最も近いヒータ装置113-1、113-2の側面との間に配置されている熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115B-1、115B-2を備える。熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4は、空洞117、117A、117Bの上方を横切って延伸する。いくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の垂直サイズd5は、光導波路109、109A、109Bの一次光モードと、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4との間の光結合を避けるために、光導波路109、109A、109Bの垂直サイズd1よりも小さい。
【0067】
いくつかの実施形態において、光導波路109、109A、109B、ヒータ装置113-1、113-2、および、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4は、半導体チップのデバイス層105内に配置されている。いくつかの実施形態において、半導体チップのBEOL領域107は、デバイス層105の上方に配置されている。また、いくつかの実施形態において、BOX層103は、基板101とデバイス層105との間に配置されている。BOX層103は、空洞117、117A、117Bの上、かつ、光導波路109、109A、109B、ヒータ装置113-1、113-2、および、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の各々の下に広がっている。また、いくつかの実施形態において、光導波路109、109A、109Bは、光導波路109、109A、109Bが空洞117、117A、117Bの上方の領域に入りまたは出る各位置に光モード変換器119を備える。
【0068】
図7は、いくつかの実施形態に従って、熱光学位相シフタ100、100A、100Bを製造するための方法を示すフローチャートである。方法は、半導体チップの基板101を準備する工程701を備える。方法は、さらに、基板101の上方に光導波路109、109A、109Bを形成する工程703を備える。方法は、さらに、光導波路109、109A、109Bのセグメントのそれぞれの側面に沿って1または複数のヒータ装置113-1、113-2を形成する工程705を備える。方法のいくつかの実施形態において、1または複数のヒータ装置113-1、113-2の各々は、光導波路109、109A、109Bの加熱されるセグメントに沿って実質的に直線の形状を有する。方法のいくつかの実施形態において、光導波路109、109A、109Bの加熱されるセグメントは、実質的に直線の形状を有する。方法は、さらに、空洞117、117A、117Bが、ヒータ装置113-1、113-2の下方、かつ、光導波路109、109A、109Bの加熱されるセグメントの下方に連続的な開放領域を形成するように、基板101内に空洞117、117A、117Bを形成する工程707を備える。方法のいくつかの実施形態において、空洞117、117A、117Bを形成する工程は、基板101にアンダーカットプラズマエッチング処理を実行する工程を含む。方法のいくつかの実施形態において、BOX層103が基板101上に形成され、ここで、光導波路109、109A、109B、ヒータ装置113-1、113-2、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4が、BOX層103の上に形成され、空洞117、117A、117Bが、BOX層103の下方に形成される。
【0069】
方法のいくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115B-1、115B-2は、空洞117、117A、117Bを形成する前に、光導波路109、109A、109Bのセグメントと、隣接するヒータ装置113-1、113-2との間に形成される。方法のいくつかの実施形態において、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4の各々は、光導波路109、109A、109Bのセグメント内の一次光モードと、熱貫流構造115-1、115-2、115A-1、115A-2、115A-3、115B-1、115B-2、115B-3、115B-4との間の光結合を避けるために、光導波路109、109A、109Bの加熱されるセグメントの垂直サイズd1よりも小さい垂直サイズd5を有するように形成される。方法のいくつかの実施形態において、光導波路109、109A、109Bは、光導波路109、109A、109Bが空洞117、117A、117Bの上方の領域に入りまたは出る各位置に光モード変換器119を備えるように形成される。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている熱光学位相シフタ100、100A、100Bは、パラメータ化された設計ルール検証(DRC)クリーンマスクレイヤレイアウトで実装される。いくつかの実施形態において、熱光学位相シフタ100、100A、100Bの構造は、コンピュータソフトウェアとして実装された生成プログラムを用いて規定される。生成プログラムは、多くの異なる設計レベルおよび技術に固有のパラメータに対応するようにパラメータ化され、それらのパラメータは、パラメータの中でも特に、ヒータ装置113-1、113-2の長さd2、ヒータ領域111、111A、111B内の光導波路109、109A、109Bの幅d4、d8、d9、d13、d14、d15、ヒータ領域111A、111B内の光導波路セグメント109A-1、109A-2、109Bー1、109B-2、109B-3の間の間隔d11、d17、d18、ヒータ装置113-1、113-2のトポロジ配列、ヒータ領域111、111A、111Bを通る光導波路109、109A、109Bの通過回数の数、ならびに、空洞117、117A、117Bを形成するための基板101のアンダーカットエッチング処理を実行するために用いられる開口部のサイズおよび分布、を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、生成プログラムは、バークレーフォトニクスジェネレータ(BPG)フレームワークを利用して、複数の技術を対象にする能力で、DRC準拠構造を作成する。BPGは、フォトニック回路レイアウトの生成およびシミュレーションを可能にするPythonベースのフレームワークである。
【0071】
本明細書で開示されている熱光学位相シフタ100、100A、100Bの実施形態例は、二重厚シリコン・オン・インシュレータ(SOI)処理の文脈で記載されており、この処理では、ヒータ装置113、光導波路109、109A、109B、熱貫流構造115、115A、115Bが、デバイス層105、105A、105B内のシリコンに実装される。しかしながら、本明細書で開示されている熱光学位相シフタ100、100A、100Bの原理および構成は、SOI処理に限定されないことを理解されたい。様々な実施形態において、本明細書で開示されている熱光学位相シフタ100、100A、100Bの原理および構成は、任意の適切な技術プラットフォームで実装可能である。
【0072】
本明細書に記載の熱光学位相シフタ100、100A、100Bの実施形態は、コンピュータシステムに格納されたデータを含む様々なコンピュータ実装動作を利用して規定されうることを理解されたい。これらの動作は、物理量の物理的操作を必要とする動作である。実施形態の一部を形成する本明細書に記載の動作のいずれかは、有用な機械動作である。実施形態は、これらの動作を実行するためのハードウェアユニットまたは装置にも関連している。この装置は、専用コンピュータのために特別に構築されてよい。専用コンピュータとして規定された場合、そのコンピュータは、特殊用途のために動作できつつも、特殊用途の一部ではない他の処理、プログラム実行、または、ルーチンを実行することもできる。いくつかの実施形態において、動作は、コンピュータのメモリ、キャッシュに格納され、または、ネットワーク経由で取得された1または複数のコンピュータプログラムによって選択的にアクティブ化または構成された汎用コンピュータによって処理されてもよい。データがネットワーク経由で取得される場合、そのデータは、ネットワーク上の他のコンピュータ(例えば、コンピューティングリソースのクラウド)によって処理されてよい。
【0073】
本明細書に記載されている様々な熱光学位相シフタ100、100A、100Bの実施形態のための設計および製造仕様は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体にコンピュータ読み取り可能コードとして格納されうる。非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体は、データを格納できる任意のデータストレージハードウェアユニットであり、データは、その後、コンピュータシステムによって読み取られうる。非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体の例は、ハードドライブ、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、ROM、RAM、コンパクトディスクROM(CD-ROM)、CDレコーダブル(CD-R)、CDリライタブル(CD-RW)、磁気テープ、ならびに、その他の光学および非光学データストレージハードウェアユニット、を含む。非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ読み取り可能コードが分散的に保存および実行されるように、ネットワーク結合コンピュータシステム上に分散されたコンピュータ読み取り可能な有形の媒体を含んでもよい。
【0074】
以上の実施形態の記載は、例示および説明を目的としたものである。包括的であることも本発明を限定することも意図していない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、適用可能であれば、置き換え可能であり、特に図示も記載もない限りは、選択された実施形態で利用できる。同じものが、多くの方法で変形されてもよい。かかる変形は、本発明からの逸脱と見なされず、すべてのかかる変形は、本発明の範囲内に含まれると意図される。
【0075】
本開示は、理解しやすいように、或る程度の詳細事項を含むが、添付の特許請求の範囲内でいくらかの変更および変形を行ってもよいことは明らかである。例えば、本明細書で開示されている任意の実施形態からの1または複数の特徴が、本明細書で開示されている任意の他の実施形態の1または複数の特徴と組み合わせられてもよいことを理解されたい。したがって、これらの実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、特許請求の範囲は、本明細書に示した詳細に限定されず、記載された実施形態の範囲および等価物の範囲内で変形されてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】