(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】硬化性カーボンナノチューブインクおよびそのインクを用いて作成される透明導電フィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20231027BHJP
【FI】
C09D11/101 ZNM
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522468
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021054845
(87)【国際公開番号】W WO2022081756
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282217
【氏名又は名称】キャズム アドバンスト マテリアルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】CHASM ADVANCED MATERIALS,INC.
【住所又は居所原語表記】480 Neponset Street,Suite 6,Canton,MA United States
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】フー,ツィイ
(72)【発明者】
【氏名】プライノ,ロバート,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アーサー,デイヴィッド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フェルグソン,ジョーン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】アーサー,シーン,ピー.
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD21
4J039BA02
4J039BC20
4J039BC30
4J039BC34
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE25
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA36
4J039EA39
4J039EA40
4J039FA02
4J039GA16
(57)【要約】
硬化性カーボンナノチューブインクおよび該インクを用いた透明導電フィルム。インクは、硬化性樹脂バインダと、活性化されて樹脂バインダを硬化させるように構成される触媒と、粘性-蒸発希釈剤と、カーボンナノチューブ(CNT)とを含む。インク中のCNT濃度範囲は、約0.001重量%~約0.2重量%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂バインダと、
活性化されて樹脂バインダを硬化させるように構成される触媒と、
粘性-蒸発希釈剤と、
カーボンナノチューブ(CNT)とを含む、硬化性カーボンナノチューブインクであって、
インク中のCNT濃度範囲は、約0.001重量%~約0.2重量%であることを特徴とする硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項2】
インク中の樹脂バインダ濃度範囲は、約0.1重量%~約5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項3】
インク中の触媒濃度範囲は、約0.001重量%~約1.0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項4】
インク中の希釈剤濃度範囲は、約90重量%~約99重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項5】
インク中の濃度範囲が約0.1重量%~約5重量%であるフィラー樹脂をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項6】
樹脂バインダは、放射線硬化性であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項7】
樹脂バインダは、UV硬化性多官能アクリル共重合体、UV硬化性ウレタンポリマ、またはUV硬化性ポリエステルの1種以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項8】
非UV硬化性樹脂、多官能オリゴマ、またはモノマの1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項9】
触媒は、I型またはII型フリーラジカル光開始剤を含むことを特徴とする、請求項6に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項10】
樹脂バインダは、熱硬化性であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項11】
樹脂バインダは、酸性官能基を有するアクリル共重合体、ウレタンポリマ、またはポリエステルの1種以上を含むことを特徴とする、請求項10に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項12】
触媒は、ポリアジリジン架橋剤、ポリカルボジイミド架橋剤、または過酸化物型触媒の少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項10に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項13】
樹脂バインダは、UV硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項14】
約1,000cP~約50,000cPの粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項15】
CNTは、単層CNTを含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性カーボンナノチューブインク。
【請求項16】
透明導電フィルム(TCF)であって、
ポリマフィルム基材と、
フィルム表面上の金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層と、
金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層の少なくとも一部を覆う硬化したカーボンナノチューブ(CNT)インクとを含み、CNTインクは、硬化性樹脂バインダと、活性化されて樹脂バインダを硬化させるように構成される触媒と、粘性-蒸発希釈剤と、CNTとを含み、インク中のCNT濃度範囲は、約0.001重量%~約0.2重量%であることを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項17】
優れた導電性、高い可視光透過率、および金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層と硬化したCNTインクとの基材への優れた接着性を示すことを特徴とする、請求項16に記載の透明導電フィルム。
【請求項18】
非硬化性CNTインクを用いて作製されたTCFと比較して、金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層への良好な接着性、向上した耐摩耗性、ならびにエッチングプロセス中の良好な耐溶剤性および耐薬品性を示すことを特徴とする、請求項16に記載の透明導電フィルム。
【請求項19】
優れた導電性、高い可視光透過率、および低ヘイズを維持することを特徴とする、請求項18に記載の透明導電フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年10月13日に出願された仮出願63/090,956の優先権を主張し、その開示内容全体はあらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、硬化性導電性被覆に関する。
カーボンナノチューブインク(すなわち導電性被覆)は、透明導電フィルム(TCF)の一部として使用可能である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、硬化性カーボンナノチューブ(CNT)インク(すなわち、印刷可能な導電性被覆)、およびそのインクを用いて作成(たとえば、印刷)される透明導電フィルム(TCF)を含む。このインクは、フィルムの導電性と環境条件への耐性との両方に寄与する。またこのインクは、エッチングマスクとしても機能する。このインクは、放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の一方または両方を含み、樹脂が硬化したときにCNTのバインダとして機能し、良好な接着性、耐摩耗性、および耐薬品性をも促進する。触媒は、樹脂の硬化を容易にする。またこのインクは、インクの乾燥/硬化プロセスで完全に蒸発する、粘性のある希釈剤を含む。希釈剤は、インクをスクリーン印刷などによって下地基材上に被覆できるインクの所望の粘度を達成するのに役立つ。いくつかの実施例では、インクの粘度は、約1,000cP~約50,000cPである。いくつかの実施例では、硬化性カーボンナノチューブインクは、単層カーボンナノチューブ成分と、UVおよび/または熱硬化性ポリマバインダ成分とで構成されている。CNTインクは、界面活性剤を含有しないスクリーン印刷可能なインクである。一般的に、CNTは分散液として残すために界面活性剤を必要とし、さもなければ凝集する可能性がある。界面活性剤を含む被覆を印刷または乾燥させると、界面活性剤を洗い流さなければならない。洗い流さない場合、CNT層の電子特性はかなり悪くなる。本件では、V2V希釈液は、CNT同志が互いを見つけず/互いに接触しないように十分な粘性がある(レオロジを有する)ので、凝集することはない。その後、希釈液は完全に乾燥し、インクから導電性被覆が作り出され、界面活性剤を洗い流す必要がない。
【0004】
本インクは、TCFの作成に使用することができる。TCFは、基材と、基材表面上の金属ナノワイヤ被覆または金属メッシュ(MM)層と、ナノワイヤまたはMM層上のインクとを含む。インクが硬化した後、得られた多層構造は、優れた導電性、高い可視光透過率、および金属ナノワイヤ(または金属メッシュ)/CNT複合構造の基材への優れた接着性を示す。いくつかの実施例では、TCFは、印刷されたCNTインクを有する、金属ナノワイヤまたは金属メッシュ被覆のない基材(ポリマフィルム、ガラスパネルなど)も含む。
【0005】
本発明は、非硬化性CNTインクを用いて作製されたTCFと比較して、優れた導電性、高い可視光透過率、および低ヘイズを維持しながら、金属ナノワイヤ被覆または金属メッシュ層への良好な接着性、向上した耐摩耗性、ならびにエッチングプロセス中の良好な耐溶剤性および耐薬品性という利点を示す新規な硬化性カーボンナノチューブインクおよび印刷フィルムの作成を結果としてもたらす。
【0006】
以下で述べられる全ての実施例および特徴は、技術的に可能性のある方法で組み合わせ可能である。
【0007】
一態様において、硬化性カーボンナノチューブインクは、硬化性樹脂バインダと、活性化されて樹脂バインダを硬化させるように構成される触媒と、粘性-蒸発希釈剤と、カーボンナノチューブ(CNT)とを含む。インク中のCNT濃度範囲は、約0.001重量%~約0.2重量%である。
【0008】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、またはそれらの組み合わせを含む。一実施例では、インク中の樹脂バインダ濃度範囲は、約0.1重量%~約5重量%である。一実施例では、インク中の触媒濃度範囲は、約0.001重量%~約1.0重量%である。一実施例では、インク中の希釈剤濃度範囲は、約90重量%~約99重量%である。一実施例では、硬化性カーボンナノチューブインクは、インク中の濃度範囲が約0.1重量%~約5重量%であるフィラー樹脂をさらに含む。一実施例では、樹脂バインダは、UV硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の混合物を含む。一実施例では、硬化性カーボンナノチューブインクは、約1,000cP~約50,000cPの粘度を有する。一実施例では、CNTは、単層CNTを含む。
【0009】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、またはそれらの組み合わせを含む。一実施例では、樹脂バインダは、放射線硬化性である。一実施例では、樹脂バインダは、UV硬化性多官能アクリル共重合体、UV硬化性ウレタンポリマ、またはUV硬化性ポリエステルの1種以上を含む。一実施例では、硬化性カーボンナノチューブインクは、非UV硬化性樹脂、多官能オリゴマ、またはモノマの1種以上をさらに含む。一実施例では、触媒は、I型またはII型フリーラジカル光開始剤を含む。一実施例では、樹脂バインダは、熱硬化性である。一実施例では、樹脂バインダは、酸性官能基を有するアクリル共重合体、ウレタンポリマ、またはポリエステルの1種以上を含む。一実施例では、触媒は、ポリアジリジン架橋剤、ポリカルボジイミド架橋剤、または過酸化物型触媒の少なくとも1種を含む。
【0010】
他の態様において、透明導電フィルム(TCF)は、ポリマフィルム基材と、フィルム表面上の金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層と、金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層の少なくとも一部を覆う硬化したカーボンナノチューブ(CNT)インクとを含む。CNTインクは、硬化性樹脂バインダと、活性化されて樹脂バインダを硬化させるように構成される触媒と、粘性-蒸発希釈剤と、CNTとを含む。インク中のCNT濃度範囲は、約0.001重量%~約0.2重量%である。
【0011】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、またはそれらの組み合わせを含む。一実施例では、TCFは、優れた導電性、高い可視光透過率、および金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層と硬化したCNTインクとの基材への優れた接着性を示す。一実施例では、TCFは、非硬化性CNTインクを用いて作製されたTCFと比較して、金属ナノワイヤ層または金属メッシュ層への良好な接着性、向上した耐摩耗性、ならびにエッチングプロセス中の良好な耐溶剤性および耐薬品性を示す。一実施例では、TCFは優れた導電性、高い可視光透過率、および低ヘイズを維持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
少なくとも1つの実施例の様々な態様について、添付の図面を参照して以下に説明するが、添付の図は、縮尺どおりに描かれることが意図されていない。図面は、様々な態様および実施例についての説明およびさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するが、本発明の境界を定義することを意図するものではない。図面において、様々な図面に示される同一または略同一の構成要素は、同様の参照符号で示されてもよい。明確性のために、全ての構成要素が各図において表示されているわけではない。
【0013】
【
図4】異なるレベルのCNTに対するインク粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で議論されるシステム、方法および装置の実施例は、以下の説明に記載され、または添付の図面に例示される構造の詳細および構成要素の配置に適用において限定されるものではない。システム、方法、および装置は、他の実施例で実施することが可能であり、また、様々な方法で実践することが可能であり、または実行することが可能である。具体的な実施例は、例示のためにのみ本明細書に提供され、限定することを意図していない。特に、任意の1以上の実施例に関連して議論された機能、構成要素、要素、および特徴は、他の実施例における同様の役割から除外されることを意図していない。
【0015】
本明細書に開示された実施例は、本明細書に開示された原理の少なくとも1つと一致する任意の方法で他の実施例と組み合わせることができ、「実施例」、「いくつかの実施例」、「代替実施例」、「種々の実施例」、「1つの実施例」等への言及は必ずしも相互に排除的ではなく、記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施例に含まれてもよいことを示すことが意図される。本明細書におけるこのような用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を指しているわけではない。
【0016】
また、本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書で単数形で言及されるコンピュータプログラム製品、システムおよび方法の実施例、構成要素、行為、または機能へのあらゆる言及は、複数を含む実施形態も包含してもよく、本明細書のあらゆる実施例、構成要素、要素、行為、または機能への複数形の言及は、単数のみを含む実施例も包含してもよい。したがって、単数形または複数形の言及は、現在開示されているシステムまたは方法、それらの構成要素、行為、または要素を限定することを意図していない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、およびそのバリエーションの使用は、追加項目と同様に、その後に記載された項目およびその同等物を包含することを意図する。「または」への言及は、「または」を用いて記載される任意の用語が、単一の用語、複数の用語、および記載されるすべての用語のいずれかを示してもよいように、包括的に解釈されてもよい。
【0017】
CNTインクは、可撓性基材および剛性基材に印刷することができる。基材は、ガラス、シリコンウェハ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、環状オレフィンポリマ(COP)、シリコン、またはポリイミド(CPI)のプラスチックフィルムを含むがそれらに限定されない無機および/または有機であってもよい。プラスチック基材は、プライマ層を有し得るか、または表面張力を改善するための表面処理(たとえば、コロナ処理、火炎処理、他のプラズマなど)を有し、いくつかの実施例では、膜厚は12.5ミクロン~300ミクロンの範囲にある。
【0018】
本開示に従う基材、ナノワイヤ層(たとえば、銀ナノワイヤ(AgNW)または金属メッシュ(MM)層)、およびTCFの製造方法は、国際特許出願公開番号WO2016/172315および/または国際特許出願公開番号WO2020/102392に開示されるタイプのものであり得、これらの開示内容全体は、あらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれる。
【0019】
いくつかの実施例では、TCFは以下の手順で作製される。
【0020】
被覆溶液の調製:
硬化性CNTインク:
UV硬化性CNTインク:
UV CNTインク製剤は、インクの乾燥/硬化プロセス中に完全に蒸発する粘性-蒸発(「V2V」)希釈剤、アルコールおよびアミン中のCNT分散液、放射線硬化性樹脂バインダ、光開始剤、および任意にUV樹脂混合物に添加される非UV硬化性樹脂からなる。いくつかの実施例では、CNT濃度は0.01~2.0g/Lの範囲(すなわち、インク中において約0.001重量%~約0.2重量%)にある。いくつかの実施例では、CNT対UV樹脂または樹脂混合物バインダ濃度比(CNT/バインダ)の範囲は、約1:1~約1:1200である。
【0021】
V2V希釈剤は、スクリーン印刷などの下地基材に被覆できるインクの所望の粘度を達成するのに役立つ。いくつかの実施例では、V2V希釈剤は、米国特許第9,777,167号および第9,777,168号に開示されているタイプのものであり、その開示内容全体は、あらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれる。
【0022】
いくつかの実施例では、UV樹脂バインダは以下を含むが、これらに限定されるものではない。
1.多官能UV硬化性オリゴマおよびモノマ、たとえば、Allnex社製のEbecryl 4859、Ebecryl 4858、Ebecryl 8701、Ebecryl 8605、Ebecryl 225、Ebecryl 4740、Ebecryl 4859、 Ebecryl 8405、Ebecryl 1290、Ebecryl 4738、Ebecryl 4513、Ebecryl 284、Sartomer社製のSR 399、SR368、CN 9210、CN 9276、CN 9196、CN 9209、CN 2306、MIWON社製のMiramer M140、Miramer M150、Miramer M1182、Miramer M200、Miramer M 262、Miramer M 300、Miramer M 3130、Miramer M 420. Miramer PU 610、Miramer PU6510、Miramer PU5000、Miramer PU640、Miramer Sc2100、Miramer SC2152、Miramer MU 9500。
2.多官能UV硬化性アクリル共重合体、DSM社製のNeoRad-A 20、Allnex社製のEbecryl 4654、Enstron社製のLumicryl U-721S、Lumicryl102、Lumicryl2882、Lumicryl 245。
【0023】
いくつかの実施例では、UV光開始剤は、BASF社製のIrgacure651、Irgacure369、Irgacure901、Irgacure184、Irgacure2959、Irgacure TPO、Irgacure819、Darocur1173、IGM社製のOmnirad500、Esacure kip 160、Esacure kip 100F、Esacure kip 150、Esacure TZT、Esacure 3644、Esacure 1001M、Omnirad 4-PBZ、Omnirad BPを含むが、これらに限定されるものではない。
【0024】
いくつかの例では、非UV硬化性(すなわち非硬化性)樹脂バインダは、使用される場合、DSM社製のNeocryl 819、Neocryl 817、Neocryl 890、およびNeocryl 813、BASF社製の Joncryl857、Joncryl586、Joncryl611、Joncryl678、Joncryl680、Joncryl682、Joncryl683、Joncryl693、JoncrylECO675、Joncryl ECO684、Joncryl817、Joncryl 819、 Joncryl 820, Joncryl 821, Joncryl 901, Joncryl 903 Joncryl 843, Joncryl 848, Joncryl 67, Joncryl 690 , Joncryl HPD 671およびJoncryl HPD 696を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
熱硬化性CNTインク:
熱硬化性CNTインク製剤は、V2V希釈剤、カーボンナノチューブ、熱硬化性樹脂バインダ、および架橋剤または架橋剤からなる。
【0026】
いくつかの実施例では、CNT濃度およびCNT/バインダ比は上述の通りである。
【0027】
いくつかの実施例では、架橋性樹脂バインダは以下を含むが、これらに限定されるものではない。
1.DSM社製のNeocryl 818、Neocryl 819、Neocryl 890、BASF社製のJoncryl 817、Joncryl 819、Joncryl 820、Joncryl 821、Joncryl 901、Joncryl 903、Joncryl 857、Joncryl 586、Joncryl 611、Joncryl 678、Joncryl 680、Joncryl 682、 BASF社のJoncryl 683、Joncryl 693、Joncryl ECO 675、Joncryl ECO684、Joncryl 843、Joncryl 848、Joncryl 67、Joncryl 690、Joncryl HPD 671、Joncryl HPD 696を含むがこれらに限定されるものではない、カルボキシル官能基を有するアクリル共重合体。
2.架橋剤は、(A)DSM社製のCrosslinker CX-300およびCrosslinker XL-1;STAHL社製のPicassian(登録商標) XL-702、XL-712、XL-752、XL-762、ANGUS社製のZOLDINE(登録商標)XL-29SEを含むがこれらに限定されない、ポリカルボジイミド架橋剤;(B)DSM社製のCrosslinker CX-100およびNeoAdd(商標)PAX-521、STAHL社製のPicassian(登録商標)XL-048およびPicassian(登録商標)XL-706、PolyAziridine LLC社製のPZ-28およびPZ-33を含むがこれらに限定されるものではない。
3.硬化プロセスは、温度と時間とに依存する。
【0028】
UVおよび熱(二重硬化)CNTインク:
UVおよび熱二重硬化CNTインク製剤は、「V2V」希釈剤、アルコールおよび/またはアミン中のCNT分散液、放射線硬化性アクリル共重合体およびカルボン酸官能基を有するアクリル共重合体のバインダ樹脂混合物、光開始剤、および架橋剤からなり、UV硬化性アクリル共重合体、カルボキシ官能基を有する熱硬化性アクリル共重合体、光重合開始剤、熱架橋剤は上記のように定義される。CNT濃度およびCNT/バインダ比は、上記の通りである。
【0029】
印刷プロセス:
CNTインク印刷プロセス:
355ポリエステルメッシュスクリーンを3mmのスナップオフディスタンスで配置する。
AgNWコートPETまたはポリカーボネート基材を、滑らかな表面にテープで固定する。
硬化性CNTインクをパターンの上に約5ml塗布する。
スキージを用いてパターンの上に液体を引くことによって、スクリーンにCNTインクを注入する。
約75度のスキージ角度、均一(一様)な圧力および速度で、インクをスクリーンを通して基材上に剪断する。
被覆された試料を、105℃に設定した対流式オーブンで10分間、送風しながら乾燥させる。
【0030】
硬化プロセス:
放射線硬化システムの場合、必要な放射線量を達成するために、被覆された試料(放射線源に向かう被覆)を放射線源、たとえばUVランプの下に一定時間置く。放射線硬化装置は、静止システムまたはコンベアシステム、たとえば、水銀ランプ、LEDランプ、キセノンランプを備えたコンベアUVシステムであってもよく、UV硬化線量1400mJ/cm^2を達成するようにコンベアベルト速度を設定し、UVコンベアシステムの供給端にUV CNT被覆フィルム上に配置されてもよく、被覆フィルムがUV照射ゾーンを通過してコンベアシステムを出た後、UV硬化プロセスが完了される。UV硬化プロセスは、線量が約400~約1800mJ/cm^2の範囲である限り、コンベアシステムを用いずに行うこともできる。
【0031】
熱硬化プロセスの場合、いくつかの実施例では、試料は110℃で60秒間(60~600秒が好ましい範囲である)硬化される。
【0032】
印刷プロセスでの初期試料乾燥後、UVおよび熱の複合硬化プロセスでは、第1UV硬化/第2熱硬化、または第1熱硬化/第2UV硬化で硬化を達成することができる。
【0033】
パターンエッチングプロセス:
次に、放射線硬化した試料に、1~20%の硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)水溶液を5~200秒間噴霧した。その後、別の洗浄瓶を使用して、試料に、フィルムの両面に脱イオン水を30秒間噴霧した。その後、リントフリークロスでフィルムを叩いて大きな水滴を取り除き、対流式オーブンで105℃、1分間焼成した。また、エッチングは、モータ駆動のフィルム搬送部を有する、エッチング、洗浄、および乾燥からなる自動化システムによって行うことができる。
【0034】
測定:
CNTインク印刷フィルムシートの電気特性は、R-check4点シート抵抗計(EDTM社製)を用いて測定される。
【0035】
全透過率および透過ヘイズの光学特性は、BYK Haze-Guardで測定される。
【0036】
プラスチックフィルム基材へのインクの接着性を測定するASTM D3359テープ接着試験で、印刷インクの剥離(ASTM D3359の定義で5B未満)があれば不合格とする。
【0037】
印刷インクの表面を布生地でこすって摩耗試験を行い、印刷インクが剥がれたものは不合格とする。
【0038】
エタノール耐性ラビングテストは、エタノールを染み込ませた布で印刷インク表面を拭き取ることによって行われ、その後周囲温度で30秒間の乾燥時間を経てシート抵抗が測定される。5回拭き取りを繰り返した後、シート抵抗の変化が元の値の10%未満である場合、その試料は試験に合格したとみなされる。
【0039】
CNTベースのハイブリッドTCF10(
図1)は、金属トレース14~16を含むMM層13と、基材12の上面に接着しMM層13を導電性媒体で封止する上層のCNTインク層18とを含む。露出したMM(すなわち、CNTインクが印刷されていない領域)が化学エッチングによって除去された後、回路パターンが生じる。なお、回路パターンは、金属メッシュ層ではなく、金属ナノワイヤ層から代替的または追加的に作成することができる。
【0040】
図2A~
図2Dは、本開示のTCFを作成するためのプロセスの結果を示す。
図2A~
図2Dの寸法および他の態様は、縮尺どおりではなく、説明のためだけのものであり、誇張されている可能性があることに留意されたい。実際の実施例は、以下に記載される。アセンブリ20、
図2Aは、トレース24~27を含むMMを担持する基材22を含む。MMは、本明細書に記載されるような様々な手段によって基材上に作成することができる。また、MMは、本明細書でさらに説明するように、様々な導電性材料(たとえば、金属)を含むことができる。MMは、電気的に接続された一連の細いトレース(線)を含む。トレースは、典型的には、規則的なパターンでレイアウトされるが、必ずしもそうである必要はない。
【0041】
図2Bは、MMが第2の金属(この非限定的な実施例では、第2の金属は銅である)でオーバめっきされる、さらなるアセンブリ30を示す。したがって、トレース24~27は、部分34~37を含む第2の金属の概ね厚い層によって覆われ、厚く多孔質でないMMトレース40~43をそれぞれ形成する。
【0042】
図2Cは、CNTインク48が、
図2Bに図示されたMM層の一部または全部の上に印刷またはその他の方法で配置される、さらなるアセンブリ50を示す。この図では、インク48は、トレース41および42の上に印刷されているが、トレース40および43の上には印刷されていない。したがって、トレース40および43は露出し、トレース41および42は、導電性線路または導電性領域49を形成する導電性媒体によって覆われる。
【0043】
図2Dは、最終的なTCF60を示し、露出したトレース40および43は、本明細書の他の部分でより詳細に説明するように、エッチングによって除去された。これによって、基材22上に導体49が残る。
【0044】
TCFを製造するための1つの例示的な方法70を、
図3に示す。ステップ72で、適切な基材が提供される。ステップ74では、基材の表面に金属メッシュが印刷される。ステップ76では、金属メッシュ上に第2の金属(たとえば、銅)をめっきする。ステップ76は任意であり、MM自体が許容できるRsを有する場合、MM線路の厚さ(すなわち高さ)を増加させる必要がない場合がある。めっき金属を追加することで、MMトレースの体積が増加し、抵抗が減少する。また、薄いMMをより堅牢にし、導電性インクとの結合をより良くするのに役立ち得る。ステップ78では、硬化性導電性媒体(「インク」と呼ばれる)をMMの選択された領域に印刷し、回路の一部を形成する。一実施例では、硬化性インクは、導電性媒体としてカーボンナノチューブを含み、本明細書に記載されるようなバインダおよび他の成分をも含有する。CNTインクは、本明細書の他の箇所でさらに説明される。ステップ80では、特定のインクに適した方法で、本明細書の他の箇所でさらに説明されているように、インクを硬化させる。最後のステップ82では、露出したMM/銅をエッチングして、基材上に回路のみを残すことを企図している。
【0045】
図4は、CNTの異なるレベルのインク粘度を示すグラフである。
図4の曲線から明らかなように、CNT濃度はインクの粘度に直接影響する。一般に、本明細書のインクは、通常の印刷技術を使用してスクリーン印刷するために、約1,000cp~約50,000cpの範囲の粘度を有し、上述したように界面活性剤を必要とせずに有用であるべきである。本インクにおいて、1グラム/リットルのCNTは約0.1%に相当し、これは約50,000cpの粘度に相当する。
図4の粘度グラフから、3グラム/リットルのCNTを含むと、インクが印刷に使用できない領域、数百万cpになる可能性が高いことは明らかである。0.2%のCNTでさえ、約700,000cpになることが予想される。
【0046】
好ましい実施形態の結果:
性能:
UVおよび/または熱硬化性CNTインクは、VLTおよびヘイズ数の電気的および光学的特性を同等に維持しながら、同じTCF設計でありながら非硬化樹脂バインダを使用するよりも、金属ナノワイヤ被覆の層または金属メッシュ層を有する基材への優れた接着性、優れた耐摩耗性およびエッチング処理時の耐薬品性の利点を生み出す。
【0047】
実施例1:
CNT濃度0.1g/lおよびCNT/バインダ比1:120のUV硬化性CNTインク。バインダ樹脂は、Enstron社製のUV硬化性ポリマLumicryl 245を60重量%、DSM社製の非UV硬化性ポリマNeocryl B-890を40重量%含有する。光開始剤Esacure KIP 100Fを使用し、光重合開始剤とバインダの比率は1:50である。非UV硬化CNTインク(VC200として識別)が比較のために(対照基準値として)試験された。VC200は、UV CNTインクと同じCNT、ポリマバインダおよび希釈剤濃度を有するが、樹脂バインダは非硬化性熱可塑性ポリマ、たとえば100% NeoCryl(登録商標)B-890である。
【0048】
UV CNTインクとVC200とを、C3 Nano AgNWコートPETフィルム(125μm厚)上に30+/-2Ω/のシート抵抗でスクリーン印刷した。スクリーンメッシュサイズは305であり、乾燥条件は前述の通りである。その後、UV CNTインク印刷試料を、1400mj/cm^2のUV線量でUV硬化させた。続いて、UV硬化試料および被覆したVC200試料を、10%硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)水溶液で12秒間エッチングし、その後脱イオン水で洗浄し、オーブン乾燥を上記のように行った。乾燥エッチングされた試料について性能試験を行い、試験結果を表1に示す。シート抵抗が10Ω/、75Ω/のC3 Nano AgNW PETフィルムで試験を繰り返した。
【0049】
表1A、表1Bおよび表1Cに示す試験データは、非硬化性CNTインクを用いたVC200対照と比較して、UV硬化したCNTインクがAgNWフィルム基材への優れた接着性、優れた耐摩耗性および耐溶剤性を示すことを明確に示している。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
実施例2:
CNT濃度0.1g/lおよびCNT/バインダ比1:120の熱硬化性CNTインク。バインダ樹脂は、BASF社製のカルボン酸官能性アクリル樹脂Joncryl HPD 671と、DSM社製の硬化剤CX-100とからなり、架橋剤対ポリマ比は1:12である。比較のために、非硬化性CNTインクVC200を試験した。VC200は、CNT濃度が0.1g/l、CNT/ポリマバインダ比が1:120であり、熱硬化性CNTインクと同じである。
【0054】
熱硬化性CNTインクとVC200とを、C3 Nano AgNWコートPETフィルム(厚さ125um)上にシート抵抗75+/-2Ω/でスクリーン印刷(スクリーンサイズ305)した。印刷したフィルム試料は、110℃、乾燥時間180秒に設定したベルトコンベアオーブンで乾燥させる。熱硬化試料は、周囲温度で120時間硬化させるか、110℃で600秒間加速硬化させることができる。続いて、VC200印刷試料と熱硬化試料とを、10%硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)水溶液で12秒間エッチングし、脱イオン水で洗浄した後、110℃のオーブンで60秒間乾燥させた。性能試験を行い、試験結果を表2に示した。この硬化性インクは、耐摩耗性、耐溶剤拭き取り性、耐エッチング性において優れた性能を示す。
【0055】
【0056】
実施例3:
CNT濃度0.1g/lおよびCNT/バインダ比1:120の二重硬化CNTインク。バインダ樹脂は、Enstron社製のUV硬化性ポリマLumicryl 245を30重量%、BASF社製のカルボン酸官能性アクリル樹脂Joncryl HPD 671を70重量%、IGM社製のII型光開始剤Omnirad 4PBZおよび共開始剤Esacure A198、およびDSM社製の熱硬化剤CX-100からなる。比較のために、非硬化性CNTインクVC200を試験した。VC200は、CNT濃度が0.1g/lであり、CNTとポリマのバインダ比が1:120であり、二重硬化CNTインクと同じである。
【0057】
二重硬化性CNTインクとVC200を、C3 Nano AgNWコートPETフィルム(厚さ125um)上にシート抵抗75+/-2Ω/でスクリーン印刷(スクリーンサイズ305)した。印刷したフィルム試料を、110℃、乾燥時間180秒に設定したコンベアベルトオーブンで乾燥させる。続いて、この試料を、1400mj/cm^2のUV線量でUV硬化させ、その後、110℃で600秒間、熱硬化させた。その後、硬化した試料を10%硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)水溶液で12秒間のエッチングを行った。その後、性能試験を行い、試験結果を表3に示す。二重硬化インクは、UV硬化のみ、熱硬化のみのCNTインクと比較して、耐エッチング性において優れた性能を示す。
【0058】
【0059】
以上、少なくとも1つの実施例のいくつかの態様を説明したが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に生じることが理解されるであろう。そのような変更、修正、および改良は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は例示であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の適切な解釈から決定されるべきものである。
【国際調査報告】