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特表2023-546571新規な(パー)フルオロポリエーテルポリマー及びそれの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】新規な(パー)フルオロポリエーテルポリマー及びそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/329 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
C08G65/329
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522486
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021076919
(87)【国際公開番号】W WO2022078766
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20201711.7
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フォンターナ, シモネッタ アントネッラ
(72)【発明者】
【氏名】ロティエルゾ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】トムソン, メアリー
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA09
4J005BD05
4J005BD08
(57)【要約】
本発明は、抗微生物特性に恵まれている、新規な(パー)フルオロポリエーテルポリマーを含む組成物に、それらの製造方法に、及び抗微生物特性を有する組成物を提供するためのそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、1つの鎖末端が、少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、他の鎖末端が、アルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つの基を含むポリマー(P)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が、アルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される1つ基を含むポリマー(P)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が、少なくとも1つの基(N)を含むポリマー(P)と
を含む組成物[組成物(CPOL)]。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物(CPOL)であって、前記組成物(CPOL)が、
- 5~50重量%の前記ポリマー(P)と、
- 0.01~15重量%の前記ポリマー(P)と、
- 35~94.99重量%の前記ポリマー(P)と
を含み、
これらの量が、前記組成物(CPOL)の100重量%を基準とする
組成物(CPOL)。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物(CPOL)であって、前記組成物(CPOL)が、
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、1つの鎖末端がパーフルオロアルキル基を含み、他の鎖末端が、上で定義されたような少なくとも1つの基(N)か又はアルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つ基かのどちらかを含むポリマー(P
を更に含む組成物(CPOL)。
【請求項4】
前記ポリマー(P)は、組成物(CPOL)の総重量を基準として15重量%以下の量で存在する、請求項3に記載の組成物(CPOL)。
【請求項5】
ポリマー(P)、ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記鎖(Rpf)は、式
-D-(CFXz1-O(R)(CFXz2-D
[式中、
互いに等しいか若しくは異なる、z1及びz2は、1以上であり;
互いに等しいか若しくは異なる、X及びXは、-F又はCFであり、
但し、z1及び/又はz2が1超である場合、X及びXは-Fであることを条件とし;
互いに等しいか若しくは異なる、D及びDは、シグマ結合、又は1~6個を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCFである);
(ii)-CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいか若しくは異なる、Xは、F又はCFであり、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:Xのそれぞれが独立してF又はCFである、-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中で選択され、Tは、C~Cパーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される]
の鎖である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物(CPOL)。
【請求項6】
ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記基(N)は、
(N-I) -N(Rh1)(Rh2)(Rh3
(式中、
h1、Rh2、及びRh3のそれぞれは、1~20個、より好ましくは1~18個、更にいっそう好ましくは3~18個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖、ベンジルから独立して選択されるか、或いはRh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、窒素原子と一緒に、5若しくは6員脂肪族環を形成する又はRh1、Rh2、及びRh3は、前記窒素原子と一緒に、5若しくは6員芳香環を形成する)
を含む、好ましくはそれらからなる基の中で選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物(CPOL)。
【請求項7】
ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記基(U)は、
(U-I) -O-C(=O)-CR=CH
(U-II) -O-C(=O)-NH-CO-CR=CH
(U-III) -C(=O)-R-CR=CH
[式中、
は、H又はC~Cアルキル基であり;
は、(R-I)及び(R-II)からなる群から選択され:
【化1】
(式中、
j5のそれぞれは、独立して、0又は1であり、
は、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む、C~C10脂肪族基;C~C12脂環式基;C~C14芳香族基又はアルキル芳香族基からなる群から選択される二価、三価又は四価の基である);
【化2】
(式中、
j6は、0又は1であり;
j7のそれぞれは、独立して、0又は1であり;
B’は、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む、C~C10脂肪族基;C~C12脂環式基;C~C14芳香族基又はアルキル芳香族基からなる群から選択される二価、三価又は四価の基であり;
B*は、RB’に関して上で定義されたものと同じ意味を有するか、或いはそれは、式(R-I):
【化3】
(式中、
置換基Uは、上で定義されたような前記基(U-I)~(U-III)から選択され、
*及び#は、上の式(R-II)において窒素原子への結合部位を示す)
の基である)]
からなる群の中で選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(CPOL)。
【請求項8】
- ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、基(N)は、シグマ結合を介して、又はポリ(オキシ)アルキレン鎖[鎖(R)]を介して前記鎖(Rpf)の1つの鎖末端に結合している;及び/又は
- ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記基(U)は、式:
*-R10-NH-C(=O)-O-R11-#
[式中、
*は、基(U)への結合を示し、
#は、鎖(Rpf)への結合を示し、
10は、トリ-アルコキシ-シリル基を含む基で任意選択的に置換された、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖であり;
11は、シグマ結合又はポリ(オキシ)アルキレン鎖[鎖(R^)]であり、前記鎖(R^)は、1~50個のフッ素を含まないオキシアルキレン単位を含み、前記単位は、互いに同じもの若しくは異なり、
-CH(J*)CH(J)-O
(式中、J及びJ*のそれぞれは、水素原子、直鎖若しくは分岐アルキル又はアリールから独立して選択される)
から選択される]
の基を介して前記鎖(Rpf)の1つの鎖末端に結合している、
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(CPOL)。
【請求項9】
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PINT)]であって、1つの鎖末端が、少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、他の鎖末端が少なくとも1個の-OH基を含むポリマー(PINT)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が、少なくとも1つの基[(N)]を含むポリマー(P)と、
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)と
を含む組成物[組成物(INT)]の製造方法であって、
前記方法が、(i)~(iii)のステップ:
(i)鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)を提供するステップ;
(ii)前記-OH基の少なくとも一部を求核置換反応のための脱離基へ変換するステップ;
(iii)ステップ(ii)において得られた組成物を少なくとも1種の第三級アミンと接触させ、こうして上で定義されたような組成物(INT)を得るステップ
を含む方法。
【請求項10】
- ステップ(i)におけるPFPEポリマーは、以下の式:
(PFPE-i) HO-(Rpf)-OH
(PFPE-ii) HO-[CH(J*)CH(J)O]t1-(Rpf)-[OCH(J)CH(J*)]t2-OH
[式中、
(Rpf)は、上で定義されたとおりであり、
t1及びt2は、それぞれ独立して、1~50の整数であり、
J及びJ*は、それぞれ独立して、鎖(Ra)に関して上で定義されたとおりである]
に従う;及び/又は
- ステップ(ii)において、ステップ(i)において提供された式(PFPE-i)又は(PFPE-ii)の前記PFPEポリマー中の前記-OH基の少なくとも一部は、メシル、トシル、パーフルオロブタンスルホニル又はトリフルオロメチルスルホニル基を含む群の中で選択される基へ変換される;及び/又は
- ステップ(iii)において、前記少なくとも1種の第三級アミンは、以下の式:
N(Rh1)(Rh2)(Rh3
(式中、
h1、Rh2、及びRh3のそれぞれは、1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖、ベンジルから独立して選択されるか、或いはRh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、窒素原子と一緒に、4若しくは5個の炭素原子及び前記窒素原子を含む脂肪族環を形成するか、或いはRh1、Rh2、及びRh3は、窒素原子と一緒に、4若しくは5個の炭素原子及び前記窒素原子を含む芳香環を形成する)
に従う、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PINT)]であって、1つの鎖末端が少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、他の鎖末端が、少なくとも1個の-OH基を含むポリマー(PINT);
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が少なくとも1つの基(N)を含むポリマー(P);及び
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)
を含む組成物[組成物(INT)]。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に定義されたような組成物(CPOL)の製造方法であって、
(iv)請求項11に定義されたような組成物(INT)を、
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(U)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[A];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(E)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[B];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(Si)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[C]
からなる群の中で選択される少なくとも1種の化合物と接触させ、
こうして組成物(CPOL)を得ること
を含む方法。
【請求項13】
ステップ(iv)において、前記化合物(A)は、以下の式:
O=C=N-R20-R21-CR=CH
[式中、
は、基(U)に関して上で定義されたものと同じ意味を有し;
20は、トリ-アルコキシ-シリル基を含む基で任意選択的に置換された、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖であり;
21は、式-O-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-CO-、及び
-O-C(=O)-R-(Rは、請求項5において定義されたとおりである)の二価の基である]
に従う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖(Rpf)を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、1つの鎖末端が、少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、他の鎖末端が、アルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つの基を含む
ポリマー(P)。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の定義されたような組成物(CPOL)と、少なくとも1つの不飽和部分を任意選択的に含む、(パー)フッ素化流体;少なくとも1つの不飽和部分を任意選択的に含む、水素化流体を含む群の中で選択される少なくとも1つの溶媒[溶媒(S)]とを含む組成物[組成物(DIL)]。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物(DIL)であって、前記組成物(DIL)が、0.01~50重量%の請求項1~6のいずれか一項に定義されたような組成物(CPOL)と、50~99.99重量%の少なくとも1種の溶媒(S)とを含み、前記溶媒(S)は、それの鎖末端に少なくとも1つの不飽和基を有する(パー)フルオロポリエーテルポリマーである、組成物(DIL)。
【請求項17】
抗微生物特性を基材に付与するための方法であって、前記方法が、
(a)請求項1~8のいずれか一項に定義されたような組成物(CPOL)又は請求項15及び16のいずれか一項に定義されたような組成物(DIL)を提供すること;
(b)少なくとも1つの表面を有する物品を証明すること;
(c)前記組成物(CPOL)又は組成物(DIL)と、前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部とを接触させること;
(d)前記少なくとも1つの表面の前記少なくとも一部を、前記組成物(CPOL)又は組成物(DIL)でコートすること
を含む方法。
【請求項18】
前記物品は、プラスチック、金属、ガラス、紙又は織物でできた物品から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2020年10月14日出願の欧州特許出願第20201711.7号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、抗微生物特性に恵まれている、新規な(パー)フルオロポリエーテルポリマーを含む組成物に、それらの製造方法に、及び抗微生物特性を有する組成物を提供するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
異なるタイプの基材をコートするための、防汚コーティング組成物の製造での原料としての(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーの使用は、当技術分野において公知である。例えば、欧州特許第3312242号明細書(3M Innovative Properties Company)は、混合機能性を持った保護コーティング組成物であって、PFPEが述べられたとりわけバックボーンである組成物を開示しており;国際公開第2016/079195号パンフレット(Solvay Specialty polymers Italy S.p.A.)は、コーティング応用に好適であるとして開示されている、PFPEの双性イオン誘導体を開示しており;国際公開第2019/106366号パンフレット(Sphere Fluidic Limited)は、パーフルオロポリエーテル構造を含む界面活性剤を開示している。
【0004】
とりわけ、そのようなPFPEポリマーを使用する、特に紙幣などの、機密文書のコーティングは、例えば国際公開第2012/055885号パンフレット(Oberthur Fiduciaire SAS)及び国際公開第2013/045496号パンフレット(Oberthur Fiduciaire SAS、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.)に開示された。
【0005】
抗菌性及び/又は抗ウイルス性を有するコーティングはまた、当技術分野において、例えば特開2014-237227号公報(セントラル硝子株式会社)、台湾特許第201512339号明細書(Alpha Bright Int. Co.,LTD.)、米国特許出願公開第2015/191608号明細書(Industrial Academic Cooperation Group Seoul National University;Samsung Electronics CO.,LTD.;Snu R And DB Foundation);国際公開第2016/153230号パンフレット(Ceko Co.,LTD.);中国特許第105176342号明細書(Xiamen Boensi Applic Material Science and Technology CO.,LTD.)に開示されている。
【0006】
しかしながら、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされるコロナウイルス病(COVID-19)の最近のまん延は、抗微生物特性(抗菌性、抗真菌性及び抗ウイルス性を含むが、それらに限定されない)に恵まれた組成物(そのような組成物は、とりわけ電子デバイス及びスマートデバイス用の、とりわけ紙、紙幣、ガラス及びプラスチックなどの、多種多様な基材をコートするのに好適である)を開発することの重要性を高めた。
【発明の概要】
【0007】
このフレーム内で、本出願人は、抗微生物特性に恵まれた新規なポリマーを開発するという問題に直面した。
【0008】
より具体的には、本出願人は、抗微生物特性に恵まれた新規な(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーであって、前記特性が(パー)フルオロポリエーテル主鎖に結合した特有の官能基によって提供されるポリマーを開発した。
【0009】
有利には、本発明による新規なPFPEポリマーの化学構造は、ポリマーが、撥水性及び撥油性と一緒にとりわけ透明性などの、コーティングの特性を提供しながら、抗微生物特性に恵まれているようなものである。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、
1つの鎖末端が、少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、
他の鎖末が、アルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つの基
を含むポリマー(P)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、
両方の鎖末端が、アルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つの基を含むポリマー(PU)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が少なくとも1つの基(N)を含むポリマー(P)と
を含む組成物[組成物(CPOL)]に関する。
【0011】
有利には、前記組成物(CPOL)は、組成物(C)の総重量を基準として約5~約50重量%の前記(P)を含む。
【0012】
前記組成物(CPOL)は、抗微生物性コーティングを提供するためにそのようなものとして使用することができるか、或いはそれは、溶媒[溶媒(S)]中で原料(「添加物」とも言われる)として使用することができる。
【0013】
したがって、第2の態様では、本発明は、上で定義されたような組成物(CPOL)と、少なくとも1つの不飽和部分を任意選択的に含む、(パー)フッ素化流体;少なくとも1つの不飽和部分を任意選択的に含む、水素化流体を含む群の中で選択される少なくとも1種の溶媒[溶媒(S)]とを含む組成物[組成物(DIL)]に関する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、抗微生物特性を基材に付与するための、上で記載されたような組成物(CPOL)又は組成物(DIL)の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本説明の及び以下の特許請求の範囲の目的のためには:
- 例えば「ポリマー(P)」等のような表現における、式を特定する記号又は数字の周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという単なる目的を有し、これ故に、前記括弧は、省略することもでき;
- 頭字語「PFPE」は、「(パー)フルオロポリエーテル」を表し、名詞として用いられる場合、文脈に応じて、単数形か又は複数形のいずれかを意味することを意図し;
- 用語「(パー)フルオロポリエーテル」は、完全に又は部分的にフッ素化されたポリエーテルポリマーを示すことを意図し;
- 表現「抗微生物特性に恵まれた」は、ポリマーが、細菌、ウイルス及び真菌などの、微生物を殺生する又はそれらの増殖を止めることができることを示すことを意図する。
【0016】
好ましくは、組成物(CPOL)は、
- 約5.00~約50.00重量%のポリマー(P)と、
- 約0.01~約15.00重量%のポリマー(P)と、
- 約35.00~約94.99重量%のポリマー(P)と
を含み、
これらの量は、前記組成物(CPOL)の100重量%を基準とする。
【0017】
より好ましくは、組成物(CPOL)は、
- 約5.00~約48.00重量%のポリマー(P)と、
- 約0.10~約12.00重量%のポリマー(P)と、
- 約40.00~約85重量%のポリマー(P)と
を含み、
これらの量は、前記組成物(CPOL)の100重量%を基準とする。
【0018】
前記組成物(CPOL)は、鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、1つの鎖末端がパーフルオロアルキル基を含み、他の鎖末端が、上で定義されたような少なくとも1つの基(N)か、又はアルコキシシラン[基(Si)]、並びに不飽和部分[基(U)]及びエポキシド[基(E)]から好ましくは選択される、架橋性基からなる群の中で選択される少なくとも1つの基かのどちらかを含むポリマー(P)を更に含むことができる。
【0019】
存在する場合、前記ポリマー(P)は、組成物(CPOL)の総重量を基準として、好ましくは15重量%以下の量に、より好ましくは0.01~12重量%、更にいっそう好ましくは0.05~10重量%の量にある。
【0020】
好ましくは、ポリマー(P)、ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記鎖(Rpf)は、式
-D-(CFXz1-O(R)(CFXz2-D
[式中、
互いに等しいか若しくは異なる、z1及びz2は、1以上であり;
互いに等しいか若しくは異なる、X及びXは、-F又はCFであり、
但し、z1及び/又はz2が1超である場合、X及びXは-Fであることを条件とし;
互いに等しいか若しくは異なる、D及びDは、シグマ結合、又は1~6個、更にいっそう好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCFである);
(ii)-CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいか若しくは異なる、Xは、F又はCFであり、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、互いに等しいか又は異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式
-O-R(f-a)-Tであり、ここで、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:Xのそれぞれが独立してF又はCFである、-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中で選択され、Tは、C~Cパーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される]
の鎖である。
【0021】
好ましくは、互いに等しいか若しくは異なる、z1及びz2は、1~10、より好ましくは1~6、更にいっそう好ましくは1~3である。
【0022】
より好ましくは、互いに等しいか若しくは異なる、D及びDは、シグマ結合、又は式-CH-、-CHCH-、若しくは-CH(CF)-の鎖である。
【0023】
好ましくは、鎖(R)は、以下の式:
(R-I)
-[(CFXO)g1(CFXCFXO)g2(CFCFCFO)g3(CFCFCFCFO)g4]-
[式中、
- Xは、-F及び-CFから独立して選択され、
- 互いに及び出現ごとに等しいか若しくは異なる、X、Xは、独立して、-F、-CFであり、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とし;
- 互いに等しいか若しくは異なる、g1、g2、g3、及びg4は、独立して、g1+g2+g3+g4が2~300、好ましくは2~100の範囲にあるような、0以上の整数であり;g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つがゼロとは異なる場合、異なる繰り返し単位は、鎖に沿って概して統計的に分布している]
に従う。
【0024】
より好ましくは、鎖(R)は、式:
(R-IIA) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中:
- a1及びa2は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;a1及びa2の両方は、好ましくは、ゼロとは異なり、比a1/a2は、好ましくは、0.1~10に含まれる);
(R-IIB) -[(CFCFO)b1(CFO)b2(CF(CF)O)b3(CFCF(CF)O)b4]-
(式中:
b1、b2、b3、b4は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;好ましくは、b1は0であり、b2、b3、b4は0超であり、比b4/(b2+b3)は1以上である);
(R-IIC) -[(CFCFO)c1(CFO)c2(CF(CFcwCFO)c3]-
(式中:
cw=1又は2であり;
c1、c2、及びc3は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるように選択される0以上の整数であり;好ましくは、c1、c2及びc3は、全て0超であり、比c3/(c1+c2)は、概して0.2より小さい);
(R-IID) -[(CFCF(CF)O)]-
(式中:
dは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0超の整数である);
(R-IIE) -[(CFCFC(HalO)e1-(CFCFCHO)e2-(CFCFCH(Hal)O)e3]-
[式中:
- 出現ごとに等しいか若しくは異なる、Halは、フッ素原子及び塩素原子から選択されるハロゲン、好ましくはフッ素原子であり;
- 互いに等しいか若しくは異なる、e1、e2、及びe3は、独立して、合計(e1+e2+e3)が2~300に含まれるような0以上の整数である]
の鎖から選択される。
【0025】
更により好ましくは、鎖(R)は、本明細書で以下の式(R-III):
(R-III) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中、
- a1、及びa2は、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0超の整数であり、比a1/a2は、概して0.1~10、より好ましくは0.2~5に含まれる)
に従う。
【0026】
好ましくは、ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、基(N)は、
(N-I) -N(Rh1)(Rh2)(Rh3
(式中、
h1、Rh2、及びRh3のそれぞれは、1~20個、より好ましくは1~18個、更にいっそう好ましくは3~18個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖、ベンジルから独立して選択されるか、或いはRh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、窒素原子と一緒に、5若しくは6員脂肪族酸を形成るか又はRh1、Rh2、及びRh3は、窒素原子と一緒に、5若しくは6員芳香環を形成する)
を含む、より好ましくはそれらからなる群の中で選択される。
【0027】
好ましくは、Rh1、Rh2、及びRh3の少なくとも1つは、6~20個、より好ましくは6~18個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖である。
【0028】
好ましくは、Rh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、独立して、1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖である。
【0029】
ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれも、前記基(N)に対する対イオンを含む。
【0030】
前記対イオンは、好ましくは、クロリド、ヨージド、ブロミドなどのハロゲニド;メシレート、トシレート、トリフレート及びノナフラートから選択される。メシレート及びトシレートがより好ましい。
【0031】
好ましくは、ポリマー(P)、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、基(N)は、シグマ結合を介して、又はポリ(オキシ)アルキレン鎖[鎖(R)]を介して前記鎖(Rpf)の1つの鎖末端に結合している。
【0032】
より好ましくは、前記鎖(Ra)は、1~50個のフッ素を含まないオキシアルキレン単位を含み、前記鎖は、互いに同じもの若しくは異なり、-OCH(J)CH(J)-から選択され、ここで、J及びJ*のそれぞれは、水素原子、直鎖若しくは分岐アルキル又はアリール、好ましくは水素原子、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される。
【0033】
ポリマー(P)及びポリマー(P)のそれぞれは、好ましくは、その鎖末端に基(U)を含む。
【0034】
好ましくは、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記基(U)は、
(U-I) -O-C(=O)-CR=CH
(U-II) -O-C(=O)-NH-CO-CR=CH
(U-III) -C(=O)-R-CR=CH
[式中、
は、H又はC~Cアルキル基であり;
は、(R-I)及び(R-II)からなる群から選択され:
【化1】
(式中、
j5のそれぞれは、独立して、0又は1であり、
は、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む、C~C10脂肪族基;C~C12脂環式基;C~C14芳香族基又はアルキル芳香族基からなる群から選択される二価、三価又は四価の基である);
【化2】
(式中、
j6は、0又は1であり;
j7のそれぞれは、独立して、0又は1であり;
B’は、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む、C~C10脂肪族基;C~C12脂環式基;C~C14芳香族基又はアルキル芳香族基からなる群から選択される二価、三価又は四価の基であり;
B*は、RB’に関して上で定義されたものと同じ意味を有するか、或いはそれは、式(R-I):
【化3】
(式中、
置換基Uは、上で定義されたような基(U-I)~(U-III)から選択され、
*及び#は、上の式(R-II)において窒素原子への結合部位を示す)
の基である)]
からなる群の中で選択される。
【0035】
好ましくは、ポリマー(P)及びポリマー(P)のいずれにおいても、前記基(U)は、式:
*-R10-NH-C(=O)-O-R11-#
[式中、
*は、基(U)への結合を示し、
#は、鎖(Rpf)への結合を示し、
10は、トリ-アルコキシ-シリル基を含む基で任意選択的に置換された、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖であり;
11は、シグマ結合又はポリ(オキシ)アルキレン鎖[鎖(R^)]であり、ここで、前記鎖(R^)は、1~50個のフッ素を含まないオキシアルキレン単位を含み、前記単位は、互いに同じもの若しくは異なり、
-CH(J*)CH(J)-Oから選択され、ここで、J及びJ*のそれぞれは、水素原子、直鎖若しくは分岐アルキル又はアリール、好ましくは水素原子、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される]
の基を介して前記鎖(Rpf)の1つの鎖末端に結合している。
【0036】
代わりの実施形態によれば、ポリマー(P)及びポリマー(P)のそれぞれは、その鎖末端に基(Si)を含む。
【0037】
好ましくは、前記基(Si)は、式
-Si-(OR30
(式中、R30は、1~12個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖である)
の基である。
【0038】
好ましくは、前記ポリマー(P)は、
-CF、-C、-C、-CFCl、-CFCFCl及び-CClを含む、より好ましくそれらからなる基の中で選択される少なくとも1つの鎖末端パーフルオロアルキル基を含む。
【0039】
上で定義されたようなパーフルオロアルキル基を含む前記ポリマー(P)は、「一官能性ポリマー(P)」とも言われる。
【0040】
当技術分野において公知であるように、本発明ポリマーPによるポリマーの官能価(F)、すなわち、ポリマーの1分子当たりの官能基の平均数は、1.00~2.00である。二官能性ポリマーPは、典型的には、1.50~1.99、より好ましくは1.70~1.98、更にいっそう好ましくは1.85~1.95の官能価(F)を有する。官能価(F)は、例えば欧州特許出願公開第1810987A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)に開示されているように計算することができる。
【0041】
上で定義されたような組成物(CPOL)は、有利には、鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)から出発して調製することができる。
【0042】
例えば、第一に、組成物[組成物(INT)]は、以下のステップ(i)~(iii):
(i)鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)を提供するステップ;
(ii)前記-OH基の少なくとも一部を求核置換反応のための脱離基へ変換するステップ;
(iii)ステップ(ii)において得られた組成物を少なくとも1種の第三級アミンと接触させ、こうして
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PINT)]であって、1つの鎖末端が少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基[基(N)]を含む少なくとも1つの基を含み、他の鎖末端が少なくとも1個の-OH基を含むポリマー(PINT)と;
- 鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(P)]であって、両方の鎖末端が少なくとも1つの[基(N)]を含むポリマー(P)と、
- ステップ(i)において提供される(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーとを含む組成物[組成物(INT)]を得るステップ
を含む方法によって調製することができる。
【0043】
上で定義されたような組成物(INT)は、本発明の別の態様である。
【0044】
本発明による組成物(CPOL)は、有利には、
(iv)上で定義されたような組成物(INT)を、
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(U)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[A];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(E)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[B];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(Si)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[C]
からなる群の中で選択される少なくとも1種の化合物と接触させ、
こうして前記組成物(CPOL)を得ること
を含む方法に従って、上で定義されたような組成物(INT)から出発して調製することができる。
【0045】
更に及び有利には、上で定義されたような組成物(INT)は、少なくともポリマー(PINT)を精製するために、当技術分野において公知の方法に従った精製に供することができる。
【0046】
この実施形態によれば、ポリマー(PINT)は、次いで、上のステップ(iv)において定義されたような化合物[A]、[B]又は[C]の少なくとも1つと接触させられ、こうしてポリマー(P)を純化合物として得る。
【0047】
これ故に、ポリマー(P)それ自体が本発明の更なる目的であることが当業者には明らかであろう。
【0048】
一実施形態によれば、組成物(CPOL)は、ワンポット合成によって、すなわち、前記組成物(INT)を反応混合物から回収することなく調製することができる。
【0049】
この実施形態によれば、組成物(CPOL)は、以下のステップ:
(i)鎖(Rpf)の反対側に結合した2つの鎖末端を有する前記(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(Rpf)]を含む(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー(両方の前記鎖末端は、少なくとも1個の-OH基を含む)を提供するステップ;
(ii)前記-OH基の少なくとも一部を求核置換反応のための脱離基へ変換するステップ;
(iii)ステップ(ii)において得られた組成物を少なくとも1種の第三級アミンと接触させ、こうして上で定義されたような組成物[組成物(INT)]を得るステップ;
(iv)ステップ(iii)において得られたような組成物(INT)を、
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(U)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[A];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(E)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[B];又は
- 上で定義されたような少なくとも1つの基(Si)、及び少なくとも1つのハロゲン原子若しくは少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物[C]
からなる群の中で選択される少なくとも1種の化合物と接触させ、
こうして組成物(CPOL)を得るステップ
を含む方法によって調製される。
【0050】
上のステップ(i)において出発原料として使用される(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーは、好ましくは、以下の式:
(PFPE-i) HO-(Rpf)-OH
(PFPE-ii) HO-[CH(J*)CH(J)O]t1-(Rpf)-[OCH(J)CH(J*)]t2-OH
[式中、
(Rpfは上で定義されたとおりであり、
t1及びt2は、それぞれ独立して、1~50の整数であり;
J及びJ*は、それぞれ独立して、鎖(Ra)に関して上で定義されたとおりである]
に従うPFPEポリマーである。
【0051】
有利には、上のステップ(ii)の下で、式(PFPE-i)又は(PFPE-ii)のPFPEポリマー中の前記-OH基の少なくとも一部は、メシル、トシル、パーフルオロブタンスルホニル又はトリフルオロメチルスルホニル基を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択される基へ変換される。
【0052】
好ましくは、上のステップ(iii)の下で、前記少なくとも1種の第三級アミンは、以下の式:
N(Rh1)(Rh2)(Rh3
(式中、
h1、Rh2、及びRh3のそれぞれは、1~20個、好ましくは3~18個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖、ベンジルから独立して選択されるか、或いはRh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、窒素原子と一緒に、4若しくは5個の炭素原子及び窒素原子を含む脂肪族環を形成するか、或いはRh1、Rh2、及びRh3は、窒素原子と一緒に、4若しくは5個の炭素原子及び窒素原子を含む芳香環を形成する)
に従う。
【0053】
好ましくは、Rh1、Rh2、及びRh3の少なくとも1つは、6~20個、より好ましくは6~18個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖である。
【0054】
好ましくは、Rh1、Rh2、及びRh3の少なくとも2つは、独立して、1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖である。
【0055】
より好ましくは、前記少なくとも1種の第三級アミンは、N,N-ジメチルベンジルアミン;ピリジン;4-ノナデシルピリジン;1-メチルピロール;1-ブチルピロリジン;トリブチルアミン;トリイソオクチルアミン;トリヘキシルアミン;トリオクチルアミン;N,N-ジメチルヘキサデシルアミン;N,N-ジメチルオクチルアミン;トリエチルアミンを含む。更にいっそう好ましくはそれらからなる群の中で選択される。
【0056】
好ましくは、ステップ(iv)の下で、少なくとも1つの基(U)及び少なくとも1つのイソシアネート基を有する前記化合物[A]との反応が好ましい。
【0057】
好ましくは、ステップ(iv)の下で、前記化合物[A]は、以下の式:
O=C=N-R20-R21-CR=CH
[式中、
は、基(U)に関して上で定義されたものと同じ意味を有し;
20は、トリ-アルコキシ-シリル基を含む基で任意選択的に置換された、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル鎖であり;
21は、式-O-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-CO-、-O-C(=O)-R-(ここで、Rは、基(U-III)に関して上で定義されたとおりである)の二価の基である]
に従う。
【0058】
より好ましくは、前記化合物[A]は、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)、アリルイソシアネート、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、2-イソシアナトエチルアクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネートを含む、更にいっそう好ましくはそれらからなる群の中で選択される。
【0059】
上で開示されたように、前記組成物(CPOL)は、そのようなものとして使用することができるか、或いはそれは、好適な溶媒中で添加物として使用することができる。
【0060】
好ましくは、組成物(DIL)は、0.01~50重量%の組成物(CPOL)と、50~99.99重量%の上で定義されたような少なくとも1種の溶媒(S)とを含む。
【0061】
有利には、前記溶媒(S)は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つの不飽和基をそれの鎖末端に有する(パー)フルオロポリエーテルポリマーから選択される。
【0062】
別の実施形態によれば、本発明は、抗微生物特性を物品に付与するための方法であって、前記方法が、
(a)上で定義されたような組成物(CPOL)又は組成物(DIL)を提供すること;
(b)少なくとも1つの表面を有する物品を証明すること;
(c)前記組成物(CPOL)又は組成物(DIL)と、前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部とを接触させること;
(d)前記少なくとも1つの表面の前記少なくとも一部を、前記組成物(CPOL)又は組成物(DIL)でコートすること
を含む方法に関する。
【0063】
有利には、前記物品は、プラスチック、金属、ガラス、紙又は織物、例えばとりわけコットン紙などでできた物品から選択される。より好ましくは、前記物品は紙幣である。
【0064】
好ましくは、組成物(CPOL)又は組成物(DIL)が、前記基(U)を含むポリマー(P)及び(P)を含む場合、ステップ(d)は、より好ましくはUV線で前記組成物(CPOL)又は組成物(DIL)を硬化させることによって行われる。
【0065】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0066】
本発明は、実験の部に含有される実施例によってより詳細に本明細書で以下に例示されるが;実施例は例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0067】
原材料及び方法
Fluorolink(登録商標) E10H及びFluorolink(登録商標) MD700は、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から入手した。
【0068】
以下の材料はAldrichによって入手した:ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリエチルアミン、メタンスルホニルクロリド、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)及び2-イソシアナトエチルメタクリレート。
【0069】
SnapCureTM 1030は、Alfa Aesar Gmbh &Co.から入手した。
【0070】
H-NMR及び19F-NMRは、Hに関しては499.86MHzで及び19Fに関しては470.30MHzで動作するAgilent System 500で記録した。
【0071】
FT-IRスペクトルは、KBr上の薄膜としての液体サンプルに関してThermoScientific FTIR分光光度計で測定した。スペクトルは、2cm-1の分解能で256スキャンを共加算すること(co-adding)によって取得した。
【0072】
実施例1-組成物CPOL-Aの合成
ステップ1:窒素雰囲気下に保たれた並びに冷却器、機械撹拌機、温度計プローブ及び滴下漏斗を備えた、0.5L容量の四つ口丸底フラスコに、150g(EW=g/mol 906;165.6ミリ当量)のFluorolink(登録商標) E10H、100gの1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及び5.9gのトリエチルアミン(58.4ミリ当量)を装入した。その後、フラスコを冷やし、5.8gのメタンスルホニルクロリド(50.6ミリ当量)を、15~30℃の範囲の温度を保つような速度で添加した。メタンスルホニルクロリド添加が完了したとき、反応混合物を、更なる6時間25~30℃で撹拌下のままにした。次いで、反応混合物を、4MのHClの水溶液を添加することによって中性にし、それによって形成された有機相を分離した。減圧下でのフッ素化溶媒の蒸留(T=80℃、P=2Pa)後に、152.1gの透明な液体を単離し、特性を決定した。H-NMR分析は、得られた生成物が、-OH基の29%がメシレートエステルへ転化された状態の出発Fluorolink(登録商標) E10Hであることを裏付けた。
【0073】
ステップ2:窒素雰囲気下に保たれた並びに冷却器、機械撹拌機、温度計プローブ及び滴下漏斗を備えた、0.25L容量の四つ口丸底フラスコに、100gの1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及び9.0g(33.4ミリ当量)のN,N-ジメチルヘキサデシルアミンを装入した。100gのステップ1において得られた生成物を、フラスコに滴下し、結果として生じた混合物を90℃に至るまで加熱し、20時間激しい撹拌下のままにした。溶媒を除去するための減圧下での蒸留(T=80℃、P=2Pa)は、107.1gのろう質の生成物を与えた。H NMR分析は、ターゲット第四級アンモニウム塩へのメシレートエステルの定量的な変換を裏付けた。
【0074】
ステップ3:冷却器、機械撹拌機、滴下漏斗及び温度計プローブを備えた、100ml容量の四つ口丸底フラスコに、100gのステップ2において得られた生成物、3,910-2gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、8.510-2gのSnapCureTM 1030を装入し、得られた混合物を50℃に至るまで加熱した。次いで、11.8gの2-イソシアナトエチルメタクリレート(76.1ミリ当量)をゆっくり添加し、温度を60℃に至るまで上げ、反応混合物を3時間激しい撹拌下のままにした。その後、1.6gのメタノールを添加し、反応混合物を更なる2時間撹拌し、減圧下で乾燥(T=60℃、P=2Pa)させ、108.3gのCPOL-Aを得た。
POL-Aを、統計的に
41.2%のポリマーP-A;
50.4%のポリマーP-A及び
8.4%のポリマーP-A
を含む、粘性のあるわずかに黄色の液体として回収した。
【0075】
ガラス基板上での抗菌活性の測定
80重量%のFluorolink(登録商標) MD700と、20重量%の上の実施例1の下で調製されたポリマーCPOL-Aの組成物とを含む組成物の抗菌活性を、ISO 22196に従って評価した。
【0076】
2種の細菌、すなわち黄色ブトウ球菌(S.aureus)及び大腸菌(E.Coli)の増殖を、ISO 22196試験に記載されているように調製した、ガラス基板上へ評価した。
【0077】
本発明による組成物と接触したガラス基板は、ISO 22196試験に合格した。
【国際調査報告】