(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ER陽性がんに選択的な抗がん化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20231027BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20231027BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20231027BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20231027BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D403/04
A61K31/454
A61K31/403
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524127
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2021056003
(87)【国際公開番号】W WO2022087234
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500436215
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシテイ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲンロザー、ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボードロー、マシュー
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC06
4C063CC10
4C063DD03
4C063DD06
4C063EE01
4C086BC13
4C086BC21
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
治療抵抗性ERa陽性の乳がん細胞、卵巣がん細胞及び子宮内膜がん細胞を死滅させる小分子ERα生体調節剤が開示される。一実施形態では、小分子生体調節剤は、BHPI及び他の従来の療法(内分泌療法、タモキシフェン、及びフルベストラント/ICI)と比較して、治療抵抗性がん細胞を死滅させる増加した能力のために、治療的有用性が増加している。小分子生体調節剤は、がん細胞の増殖を阻害するだけでなく、がん細胞を死滅させ、数年後の腫瘍の再活性化を防ぐ。ErSO-DFPなどの本発明の化合物は、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がんなどのERa陽性がんの治療に有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
Xは、O、S又はNR
Aであり;
Yは、NR
A、O又はSであり;
各R
Aは、独立して、H、アルキル、又は窒素保護基であり;
R
1は、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ハロ、-OR
B、-SR
B又はN(R
B)
2であり;
R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ハロ、-OR
B、-SR
B又はN(R
B)
2であり;
各R
Bは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり;
各R
Xは、独立して、OH、ハロ、アルキル、-OR
C、-SR
C、-S(=O)
2R
Cであり;
各R
Cは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり;
nは、1、2、3、4、5又は0であり;ならびに
Zは、1つ以上の置換基で置換されていてもよい6、5、4、7又は8員窒素含有複素環であり;
各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール及びヘテロアリールは、1つ以上の置換基で置換されていてもよい)
の化合物
又はその塩。
【請求項2】
XがNHであり、YがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が、CF
3又はCH
3である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
2、R
3及びR
4が、それぞれ独立して、H又はハロである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
R
XがOHである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
1個のR
X基が、フェニル環のパラ位又はメタ位に結合している、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
nが、1、2又は3である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
Zが、6員窒素含有複素環の窒素原子で結合した6員窒素含有複素環である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
Zが、2個又は1個のハロ基で置換されている、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Zが4,4-ジフルオロピペリジニルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項11】
窒素含有複素環が、それぞれ1~6個の置換基で置換されていてもよいピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン、アゼパンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項12】
式II又はIII:
【化2】
(式中、
各R
Zは、独立して、ハロ、ニトロ、アルキル、-OR
D、-SR
D、-S(=O)
2R
Dであり、各R
Dは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり、及び
mは、2、0、1、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である)
によって表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
XがNHであり、YがOであり、R
1がCF
3又はCH
3であり、R
2、R
3及びR
4が、それぞれ独立して、H又はハロであり、R
XがOHであり、及びnが1、2又は3である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
mが2であり、各R
Zがハロである、請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項15】
各ハロがフルオロである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
化合物が、2、24、又は26:
【化3】
である、請求項1又は12に記載の化合物。
【請求項17】
化合物ErSO-DFP((R)-2):
【化4】
【請求項18】
請求項1、12又は17に記載の化合物を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項19】
ERα陽性がんを治療する方法であって、ERα陽性がんを有する対象に、治療有効量の請求項1、12又は17に記載の化合物を投与することを含み、ERα陽性がんがそれによって治療される、上記方法。
【請求項20】
ERα陽性がんが、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、又は子宮内膜がんである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化合物が、
(R)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;又は
(S)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン
である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年10月23日に出願された米国仮特許出願第63/104,933号に対する35 U.S.C.§119(e)の下での優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ERαを直接的又は間接的に標的化することは、ERα+乳がんを治療するための最も重要な標的化戦略である。そのような戦略は、細胞の成長及び増殖の誘導におけるERαの標準的な機能を遮断することを目指すので、内分泌療法と呼ばれる。患者は、最初は内分泌療法(典型的にはタモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾールなど)から恩恵を受けるが、薬物耐性及び腫瘍の再成長は避けられず、大きな臨床的課題である。内分泌療法とCDK4/6又はPI3KCA阻害剤との最近の組合せをもってしても、薬物耐性の致死的な疾患が依然として蔓延している。これらの耐性腫瘍は、典型的にはそれらのERα過剰発現を維持し、ERαを利用する薬物、特に新しい機構を介して作用する薬物が、典型的には薬物耐性と考えられ、他の治療選択肢によって十分に対処されない多様な患者集団に対して有意な臨床的利益を提供し得ることを示唆する。
【0003】
従来の小胞体ストレス応答(UPR)は、不十分なタンパク質折りたたみ能力に応答したシグナル伝達を特徴とする。将来の過活性化成長を「予測」して細胞によって活性化されるUPRの別の形態、すなわち予測的UPR(a-UPR)がある。このa-UPRは、ERα、アンドロゲン受容体、上皮成長因子受容体などを含むホルモン特異的受容体にわたって保存された機構であり、a-UPRの誘導は、ERαの非標準的機能と考えることができる。a-UPRは細胞保護的であり、様々な状況において薬物耐性と関連付けられているが、持続的活性化はがん細胞に対して毒性であり、腫瘍保護経路を強力かつ選択的な抗がん戦略に変換する機会である。
【0004】
本発明者らは最近、ERα+がん細胞においてERα依存性a-UPRを過剰活性化し、複数のマウスモデルでERα+乳房腫瘍の根絶をもたらす化合物である小分子ErSOを報告した。ErSOは、内分泌療法に対する主要な臨床的耐性機構であるERαの変異(Y537S及びD538G)を含む乳がん細胞株に対する活性を維持する。短いインキュベーション時間(例えば6又は24時間)での培養中のERα+細胞に対するErSOの選択性は印象的であり、ERα+がん細胞株とERα-がん細胞株との間で細胞IC50に350倍を超える差がある。さらに、ERα陰性MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん細胞へのERαのノックインは、細胞培養物及び異種移植モデルの両方においてこれらの細胞をErSOに対して劇的に感作する。ErSOがERαのこの非標準的活性(a-UPRの誘導)を利用する能力は、おそらくErSOが腫瘍退縮を誘導することを可能にし、内分泌療法で典型的に観察される細胞増殖抑制活性とは対照的である。
【0005】
したがって、単に細胞増殖抑制性ではなく、細胞傷害性である新しい小分子治療薬が、より効果的ながん治療を提供するために緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
エストロゲン受容体アルファ陽性(ERα+)乳がんは、この疾患の最も一般的なタイプであり、米国では毎年20万人を超える新規症例が診断されている。これらのがんでは、ERαが腫瘍の成長及び疾患の進行を促進し、したがってERαをERαアンタゴニスト及び分解薬(例えばタモキシフェン、フルベストラント)で直接、又はアロマターゼ阻害剤で間接的に標的化することが成功した治療戦略であり、これらの患者の全生存期間が有意に増加した。しかしながら、そのような処置は治癒的であることは稀であり、患者は、典型的には転移性の薬物耐性(ERα変異及び他の機構による)疾患に屈する。小分子であるErSOは、ERαを標的とする臨床的に承認された薬物とは異なる機構、すなわち予測的小胞体ストレス応答の過剰活性化を介して、ERα+乳がん細胞の強力なERα依存性死滅を誘導する。ErSOは、ERα+乳がんの複数のマウスモデルにおいて顕著な活性を有し、多くの場合、完全な腫瘍根絶を誘導する。重要なことに、ErSOは、乳がん細胞株及び変異ERαによる内分泌療法に抵抗性である前臨床腫瘍モデルにおいて評価された場合でさえ、強力かつ有効である。ErSOは、ERα+腫瘍を標的とする新しい薬物として非常に有望であるが、高濃度及び長いインキュベーション時間では、培養中のERα陰性(ERα-)細胞に何らかの影響を及ぼす。
【0007】
本明細書では、構造活性相関を確立し、ERα+細胞とERα-細胞との間でさらに広い差次的活性を有する新しい変異体を同定することに主に焦点を当てて、ErSOの改変バージョンの構築を報告する。これらの試験の過程で、本発明者らは、細胞培養中のERα+乳がん細胞の死滅を誘導するための卓越した有効性を維持する化合物であるErSO-DFPが、ERα-がん細胞よりもERα+がん細胞に対する著明に増強された選択性、増大したインビボ忍容性、及びインビボでの顕著な抗腫瘍効果を有し、マウス同所性異種移植モデルにおいて大きなERα+腫瘍の劇的な退縮を誘導することを発見した。ErSO-DFP及び関連分子は、ERα+がんの治療のための興味深い新規クラスの化合物である。
【0008】
したがって、一実施形態では、本発明は、式I:
【化1】
(式中、
Xは、O、S又はNR
Aであり;
Yは、O、S又はNR
Aであり;
各R
Aは、独立して、H、アルキル、又は窒素保護基であり;
R
1は、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ハロ、-OR
B、-SR
B又はN(R
B)
2であり;
R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ハロ、-OR
B、-SR
B又はN(R
B)
2であり;
各R
Bは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり;
各R
Xは、独立して、OH、ハロ、アルキル、-OR
C、-SR
C、-S(=O)
2R
Cであり;
各R
Cは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり;
nは、0、1、2、3、4又は5であり;ならびに
Zは、1つ以上の置換基で置換されていてもよい3~8員窒素含有複素環であり;
各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール及びヘテロアリールは、1つ以上の置換基で置換されていてもよい)
の化合物
又はその塩
を提供する。
【0009】
置換されている場合、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、OH、ハロ、ニトロ、アルキル、及び本明細書で以下に論じる置換基について定義される置換基の群から選択される1つ以上の置換基で置換され得る。例えば、アルキルを2個又は3個のハロ基で置換して、それぞれジハロアルキル又はトリハロアルキル(トリフルオロメチルなど)を提供することができる。したがって、式Iの任意のアルキル基又は置換基を置換して、トリフルオロメチル基を得ることができる。
【0010】
一実施形態では、XはNHであり、YはOである。いくつかの実施形態では、R1は、CF3又はMeである。様々な実施形態では、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H又はハロである。特定の実施形態では、RXはOHである。様々な実施形態では、nは、1、2又は3である。
【0011】
特定の実施形態では、RXはOHであり、nは1、2又は3である。様々な実施形態は、RXがOHであり、nが1もしくは2であり、RX基が、それらが結合しているフェニル環のメタ位もしくはパラ位に位置するか、又はRXがOHであり、nが1であり、RX基が、それが結合しているフェニル環のパラ位に位置する式Iの化合物を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、Zは、複素環の窒素原子によって式Iに結合した3、4、5、6、7又は8員窒素含有複素環である。様々な実施形態では、複素環は、1つ又は2つのハロ基によって置換され得る。さらなる実施形態では、複素環は、ピペリジン環の3位で1つ又は2つのフルオロ基によって置換されたピペリジンである。さらなる実施形態では、複素環は、それぞれ1~6個の置換基で置換されていてもよいピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、アゼパン、アジリジン、アゼチジン、又はアゾカンである。いくつかの実施形態では、Zは、4,4-ジフルオロピペリジニル、3,3-ジフルオロピロリジニル、又は3,3,4,4-テトラフルオロピロリジニルである。
【0013】
一実施形態では、式Iの化合物は左旋性である。代替の実施形態では、化合物は、右旋性の式Iのものである。
【0014】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、式II又はIII:
【化2】
(式中、各R
Zは、独立して、OH、ハロ、ニトロ、アルキル、-OR
D、-SR
D、-S(=O)
2R
Dであり、各R
Dは、独立して、H、トリフルオロメチル、アルキル、又はヘテロ原子保護基であり、mは0~12である)
の化合物又はその塩である。
【0015】
いくつかの実施形態では、XはNHであり、YはOであり、R1はCF3又はMeであり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H又はハロであり、RXはOHであり、nは1、2、又は3である。様々な実施形態では、mは2であり、各RZはハロである。さらなる実施形態では、各ハロはフルオロである。
【0016】
いくつかの特定の実施形態では、式I、II又はIIIの化合物は、2、24又は26:
【化3】
である。
【0017】
別の特定の実施形態では、式I又はIIの化合物は、ErSO-DFP:
【化4】
である。
【0018】
本発明はまた、式I又はIIの化合物を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明はさらに、ERα陽性がんを治療する方法であって、ERα陽性がんを有する対象に、治療有効量の式I又はIIの化合物を投与し、それによってERα陽性がんを治療することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ERα陽性がんは、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、又は子宮内膜がんである。特定の実施形態では、化合物はErSO-DFPである。
【0020】
本明細書に記載される式の化合物は、アルファエストロゲン受容体(ERα)に結合し、小胞体における小胞体ストレス応答(UPR)の過剰活性化によってがん細胞を死滅させるか又はその成長を阻害することができる。様々な実施形態では、式Iの化合物は細胞傷害性である。したがって、様々な実施形態では、がんは、例えば、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、又は結腸がんであり得る。
【0021】
したがって、本発明は、式I~IIIの新規化合物、式I~IIIの化合物を合成するための中間体、ならびに式I~IIIの化合物を調製する方法を提供する。本発明はまた、他の有用な化合物の合成のための中間体として有用である式I~IIIの化合物を提供する。本発明は、ヒトなどの哺乳動物のがんを治療するための式I~IIIの化合物の使用を提供する。投与される化合物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含む組成物の形態であり得る。
【0022】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の実施形態又は様々な態様をさらに実証するために含まれる。場合によっては、本発明の実施形態は、本明細書に提示される詳細な説明と組み合わせて添付の図面を参照することによって最もよく理解することができる。この説明及び添付の図面は、本発明の特定の具体的な例又は特定の態様を強調し得る。しかしながら、当業者は、例又は態様の一部が、本発明の他の例又は態様と組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ErSO-DFPは、その前駆体であるErSOと比較して優れたLipEを有する活性抗がん剤である。
【
図1A】化合物と共に24時間インキュベートしたMCF-7細胞に対するラセミ体2((±)-2)、ErSO-DFP及び(S)-2の生物学的活性。細胞生存率をアラマーブルー蛍光によって評価した。ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.として示す;n≧2の独立した反復。
【
図1B】ErSO及びErSO-DFPの脂溶性効率。LipEの増加は、多くの場合、より「薬物様」の特徴と関連している。
【
図2】ErSO-DFPは、ErSOよりも広い選択性ウィンドウでERα陽性がん細胞株を強力に死滅させる。選択されたERα陽性(赤色曲線)及びERα陰性(青色曲線)のがん細胞株に対するErSO-DFP及びErSO活性のIC
50曲線。IC
50を決定するために、細胞をErSOと共に24時間(A)又は72時間(B)インキュベートした。生存率をアラマーブルー蛍光によって測定し、ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.としてプロット/表示する;n≧3の独立した反復。黒の両側矢印は、IC
50 MCF-7と選択されたERα陰性細胞株との間の治療域を示す(表3)。
【
図3】ErSO-DFPは、ErSOと同様の方法でa-UPRを活性化する。MCF-7細胞を、示されている化合物と共にインキュベートし、回収し、a-UPR活性化のための重要なタンパク質のウエスタンブロット分析を行った。用量依存性(右側のブロット)のために、細胞を化合物と共に4時間インキュベートした(A)。ImageJ及びローディング対照としてのアクチンバンドを使用して定量化を計算した。データを平均±s.e.m.としてプロットする(B)。ブロットは、3回の独立した反復の代表的な画像である。
【
図4】ErSO-DFPは、マウスに静脈内投与した場合、生物学的に適切な濃度を達成する。
【
図4A】ErSO-DFPの薬物動態(PK)実験の要約。データを平均±s.e.m.としてプロットした;n≧3匹のマウス/時点。
【
図4B】模擬胃液(SGF)安定性アッセイの結果。目的の化合物(100μM)を、ペプシンを含むSGF中で示されている時間インキュベートし、化合物濃度をLC-MS/MSによって測定した。次いで、濃度をt=0試料に対して正規化し、残存%を計算し、プロットした。半減期(t
1/2)及び曲線は、一相減衰方程式を用いてGraphPad PRISMで計算した(Y0=100、プラトー=0、K>0)。エリスロマイシンは、公知の酸感受性陽性対照である。95%CI:95%信頼区間、SD:標準偏差。示されているデータはN=2を代表する。
【
図5】ErSO-DFPは、インビボで忍容性良好であり、血液脳関門浸透性である。B.マウスを10mg/kg I.V.のErSO-DFP又はErSOで処置し、15分後、マウスを屠殺し、それらの血清及び脳を収集した(n=4匹のマウス/化合物)。ErSO/ErSO-DFPの濃度をLC-MS/MSによって決定した。マウスあたりの平均血液を58.5mL/kgと概算した。データを平均±s.e.m.としてプロットする。統計:両側不等分散t検定;n.s.:有意差なし p>0.05(p=0.7224)。
【
図6】ErSO-DFP処置は、低用量で著しい腫瘍退縮をもたらし、これは、高いMTDと相まって、大きな治療指数を有する化合物として示唆される。
【
図6A】ErSO-DFPは、ErSOと同様の方法でMCF-7腫瘍を退縮させる。MCF-7細胞(5×10
6個)を、60日E2ペレット(0.36mg)を補充した卵巣摘出Nu/Jマウスの乳房脂肪パッドに注射し、得られた腫瘍を平均サイズ>300mm
3まで成長させた。次いで、群をI.V.投与によって1週間に1回、合計3回の投与(すなわち、3×週)で処置した;各処置群についてn=6。14日目以降はマウスを処置しなかった。
【
図6B】Aに示されているMCF-7同所性試験中に観察されたマウス体重の変化率の要約。二元配置ANOVAによって決定されたように、いずれの時点でも相互に統計的に有意な体重変化はなかった(n.s.、p値>0.05);各処置群についてn=6。
【
図7A】20mg/kg I.VでのErSOの薬物動態を示すグラフ。
【
図7B】20mg/kg I.VでのErSO-DFPの薬物動態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前臨床モデルからのデータに基づいて、ErSOは広い治療域を有するようである;マウス及びイヌにおいて150mg/kgを超える経口用量で忍容される。しかしながら、改変された場合、さらにより有望な薬物をもたらす可能性があるErSOの特性がある。第1に、経口投与と比較して、マウスにおけるErSOの最大耐量は、静脈内投与した場合に有意に低く(20mg/kg)、ラットではより低い最大耐量で、いくぶんかの種特異的感受性があるようである。第2に、示されているように、また本明細書でさらに詳述されるように、より長いインキュベーション時間及びより高い濃度では、ERα-がん細胞に比べてERα+がん細胞における細胞死の誘導に対するErSOの選択性が、場合によっては損なわれ始める。本明細書において、本発明者らは、ERα非依存性効果を最小限に抑えた新しいリードを同定することを目的として、ErSOに関連する新規化合物を構築及び評価しようと試みた;本発明者らは、そのような最適化された化合物がインビボでより広い治療域を有すると仮定した。それらの翻訳の見込みに加えて、より選択的な化合物はまた、a-UPRの堅固かつ清浄なERα依存性活性化のための優れたプローブであろう。本発明者らは、ERα+乳がんのマウスモデルにおいて低用量で著しい腫瘍退縮を誘導する能力を維持しながら、培養中のERα+がん細胞に対する著明に増加した選択性、ErSO様のa-UPR活性化及び効力、インビボでのより大きな治療域、ならびに優れた薬物様特性を有する化合物であるErSO-DFP((R)-2、表1)を報告する。
【0025】
チャート1.ErSO及びErSO-DFPの化学構造。
【化5】
【0026】
定義
以下の定義は、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれる。本明細書で使用される場合、列挙される用語は以下の意味を有する。本明細書で使用される他のすべての用語及び語句は、当業者が理解するそれらの通常の意味を有する。そのような通常の意味は、R.J.Lewis,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,2001によるHawley’s Condensed Chemical Dictionary 14th Editionなどの専門用語辞典を参照することによって得られ得る。
【0027】
本明細書における「一実施形態」、「1つの実施形態」などへの言及は、記載される実施形態が特定の態様、特徴、構造、部分、又は特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその態様、特徴、構造、部分、又は特性を含むとは限らないことを示す。さらに、そのような語句は、必ずしもそうとは限らないが、本明細書の他の部分で言及される同じ実施形態を指し得る。さらに、特定の態様、特徴、構造、部分、又は特性が一実施形態に関連して説明される場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関するそのような態様、特徴、構造、部分、又は特性に影響を及ぼす又は関連付けることは、当業者の知識の範囲内である。
【0028】
単数形「1つの」、及び「その」は、文脈上明確に異なる指示がない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「1つの化合物」への言及は、複数のそのような化合物を含み、その結果、1つの化合物Xは、複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、本明細書に記載の任意の要素、及び/又は特許請求の範囲の要素の列挙又は「否定的」限定の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することが意図されている。
【0029】
「及び/又は」という用語は、この用語が関連付けられている項目のいずれか1つ、項目の任意の組合せ、又は項目のすべてを意味する。「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という語句は、特にその使用法の文脈で読まれる場合、当業者によって容易に理解される。例えば、この語句は、1、2、3、4、5、6、10、100、又は記載されている下限より約10、100、又は1000倍高い上限を意味し得る。例えば、フェニル環上の1つ以上の置換基は、環上の1~5個の置換基を指す。
【0030】
当業者に理解されるように、成分の量、分子量などの特性、反応条件を表すものを含むすべての数は近似値であり、すべての場合に「約」という用語によって修飾されていてもよいと理解される。これらの値は、本明細書の説明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて異なり得る。そのような値は、それらのそれぞれの試験測定値で認められた標準偏差から必然的に生じる変動性を本質的に含むことも理解される。先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、修飾語「約」のない特定の値もさらなる態様を形成することが理解されよう。
【0031】
「約」及び「およそ」という用語は互換的に使用される。どちらの用語も、指定された値の±5%、±10%、±20%、又は±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45から55パーセントまでの変動、又は特定の請求項によって別段に定義される変動を有し得る。整数範囲について、「約」という用語は、範囲の各末端に列挙された整数より大きい及び/又は小さい1つ又は2つの整数を含むことができる。本明細書で別段の指示がない限り、「約」及び「およそ」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能性に関して同等である、列挙された範囲に近い値、例えば重量パーセントを含むことが意図されている。「約」及び「およそ」という用語はまた、この段落で上述したように、列挙された範囲の終点を修飾することができる。
【0032】
当業者に理解されるように、ありとあらゆる目的のために、特に書面による説明を提供することに関して、本明細書に列挙されるすべての範囲はまた、そのありとあらゆる可能な部分範囲及び部分範囲の組合せ、ならびに範囲を構成する個々の値、特に整数値を包含する。したがって、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていることが理解される。例えば、10から15が開示されている場合、11、12、13、及び14もまた、個別に、及び範囲の一部として開示されている。列挙される範囲(例えば重量パーセントまた炭素基)は、その範囲内の各特定の値、整数、小数、又は同一性を含む。列挙される範囲は、同じ範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、又は10等分に分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じる各範囲は、下3分の1、中央3分の1、及び上3分の1などに容易に分解することができる。同じく当業者に理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「より多い」、「以上」などのすべての言語は、列挙される数を含み、そのような用語は、上記で論じたように後で部分範囲に分解することができる範囲を指す。同様に、本明細書に列挙されるすべての比率は、より広い比率に含まれるすべての部分的比率も含む。したがって、ラジカル、置換基、及び範囲について列挙される特定の値は、例示のみを目的とする;それらは、ラジカル及び置換基についての他の定義された値又は定義された範囲内の他の値を排除しない。さらに、各範囲の終点は、他方の終点に関しても、及び他方の終点とは無関係にも、意味をなすことが理解されよう。
【0033】
本開示は、体積、質量、パーセンテージ、比率などの変数に対する範囲、限界、及び偏差を提供する。「数値1」から「数値2」などの範囲は、整数及び小数を含む数値の連続する範囲を意味することが当業者には理解される。例えば、1から10は、1、2、3、4、5、…9、10を意味する。これはまた、1.0、1.1、1.2、1.3、…、9.8、9.9、10.0も意味し、また1.01、1.02、1.03なども意味する。開示される変数が「数値10」未満の数である場合、これは、上記で論じたように、数値10未満の整数及び小数を含む連続する範囲を意味する。同様に、開示される変数が「数値10」より大きい数である場合、これは、数値10より大きい整数及び小数を含む連続する範囲を意味する。これらの範囲は、上記で意味を説明した「約」という用語によって修飾され得る。
【0034】
当業者はまた、メンバーがマルクーシュ群などの一般的な方法で一緒にグループ化される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の各メンバーを個別に、及び主要な群のすべての可能なサブグループを包含することを容易に認識するであろう。さらに、すべての目的のために、本発明は、主要な群だけでなく、群メンバーの1つ以上が存在しない主要な群も包含する。したがって、本発明は、列挙される群のメンバーのいずれか1つ以上の明示的な除外を想定する。したがって、ただし書きは、開示されるカテゴリ又は実施形態のいずれかに適用され得、それによって、列挙される要素、種、又は実施形態のいずれか1つ以上が、例えば明示的な否定的限定において使用するために、そのようなカテゴリ又は実施形態から除外され得る。
【0035】
「接触すること」という用語は、例えば溶液中、反応混合物中、インビトロ、又はインビボで、例えば生理学的反応、化学反応、又は物理的変化をもたらすために、細胞レベル又は分子レベルにおいて、を含む、触れる、接触する、又は密接もしくは近接させる行為を指す。
【0036】
「有効量」は、疾患、障害、及び/もしくは状態を治療するために、又は列挙される効果をもたらすために有効な量を指す。例えば、有効量は、治療されている状態又は症状の進行又は重症度を軽減するのに有効な量であり得る。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。「有効量」という用語は、例えば、宿主において疾患もしくは障害を治療もしくは予防するために、又は疾患もしくは障害の症状を治療するために有効である、本明細書に記載の化合物の量、又は本明細書に記載の化合物の組合せの量を含むことが意図されている。したがって、「有効量」は、一般に、所望の効果を提供する量を意味する。
【0037】
あるいは、本明細書で使用される「有効量」又は「治療有効量」という用語は、治療されている疾患又は状態の症状の1つ以上をある程度緩和する、投与される薬剤又は組成物又は組成物の組合せの十分な量を指す。結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の軽減及び/もしくは緩和、又は生物学的システムの任意の他の所望の変化であり得る。例えば、治療用途の「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定され得る。用量は、1回以上の投与で投与することができる。しかし、有効用量と見なされるものの正確な決定は、患者の年齢、サイズ、疾患の種類又は程度、疾患の病期、組成物の投与経路、使用される補足療法の種類又は程度、進行中の疾患過程、及び所望の治療の種類(例えば積極的治療対従来の治療)を含むがこれらに限定されない、各患者に個別の因子に基づき得る。
【0038】
「治療すること」、「治療する」及び「治療」という用語は、(i)疾患、病的状態もしくは医学的状態の発生を防ぐこと(例えば予防);(ii)疾患、病的状態もしくは医学的状態を阻害するかもしくはその発症を阻止すること;(iii)疾患、病的状態もしくは医学的状態を緩和すること;及び/又は(iv)疾患、病的状態もしくは医学的状態に関連する症状を軽減することを含む。したがって、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、予防にまで拡大することができ、治療されている状態又は症状の進行又は重症度を予防する、予防、予防すること、低下させること、停止させること又は逆転させることを含み得る。したがって、「治療」という用語は、必要に応じて、医学的、治療的、及び/又は予防的投与を含むことができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」は、疾患又は他の悪性腫瘍の症状を有するか、又はそのリスクがある個体を意味する。患者は、ヒト又は非ヒト動物であり得、例えば、本明細書に記載されるマウスモデルなどの研究目的のための「モデル系」として使用される動物系統又は種を含み得る。同様に、患者は、成体又は若齢(例えば小児)のいずれかを含み得る。さらに、患者は、本明細書で企図される組成物の投与から利益を受ける可能性のある任意の生物、好ましくは哺乳動物(例えばヒト又は非ヒト動物)を意味し得る。哺乳動物の例としては、哺乳動物クラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長動物、ならびに他の類人猿及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ及びネコなどの飼育動物;ラット、マウス及びモルモットなどのげっ歯動物を含む実験動物が挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例としては、鳥類、魚類などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0040】
本明細書で使用される場合、「提供する」、「投与する」、「導入する」という用語は、本明細書では互換的に使用され、所望の部位への化合物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による対象への本開示の化合物の配置を指す。化合物は、対象の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0041】
本明細書に記載される化合物及び組成物は、組成物の安定性及び活性を延長するためにさらなる組成物と共に、又は他の治療薬と組み合わせて投与され得る。
【0042】
「阻害する」、「阻害すること」、及び「阻害」という用語は、疾患、感染、状態、又は細胞群の成長又は進行を遅らせる、停止させる、又は逆転させることを指す。阻害は、例えば、治療又は接触がない場合に起こる成長又は進行と比較して、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、又は99%を超えるものであり得る。
【0043】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、広義の用語であり、限定されることなく、指定されるものの大部分であるが必ずしも全体ではないことを含む、その通常の意味で使用される。例えば、この用語は、完全な数値の100%ではない可能性のある数値を指し得る。完全な数値は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、又は約20%少なくてもよい。
【0044】
「含む」という用語が本明細書で使用される場合は常に、「からなる」又は「から本質的になる」という用語が代わりに使用される選択肢が企図される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、さらなる列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、態様要素で指定されていない要素、工程、又は成分を排除する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、態様の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。本明細書ではいずれの場合も、「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置き換え得る。本明細書に例示的に記載される開示は、本明細書に具体的に開示されていない1つ以上の要素、1つ以上の制限がない場合に適切に実施され得る。
【0045】
「ハロ」又は「ハロゲン化物」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。同様に、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0046】
「アルキル」という用語は、例えば1~20個の炭素原子、多くの場合1~12、1~10、1~8、1~6、又は1~4個の炭素原子を有する分岐又は非分岐炭化水素を指す。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、以下に定義される「シクロアルキル」も包含する。例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル(イソブチル)、2-ブチル(sec-ブチル)、2-メチル-2-プロピル(t-ブチル)、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルは、置換されていなくてもよく、又は例えば、以下に記載されるか又は他の箇所で本明細書に記載される置換基で置換されていてもよい。アルキルはまた、部分的又は完全に不飽和であってもよい。したがって、アルキル基の列挙は、アルケニル基又はアルキニル基を含むことができる。アルキルは、上記で説明し、例示したように、一価の炭化水素ラジカルであってもよく、又は二価の炭化水素ラジカル(すなわちアルキレン)であってもよい。
【0047】
アルキレンは、炭素鎖の炭素又は2つの異なる炭素原子に2つの遊離原子価を有するアルキル基である。同様に、アルケニレン及びアルキニレンはそれぞれ、2つの異なる炭素原子に2つの遊離原子価を有するアルケン及びアルキンである。
【0048】
「シクロアルキル」という用語は、例えば、単一の環状環又は複数の縮合環を有する3~10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。シクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、又はアダマンチルなどの多環構造が含まれる。シクロアルキルは、置換されていなくてもよく、又は置換されていてもよい。シクロアルキル基は一価又は二価であり得、アルキル基について記載されているように置換されていてもよい。シクロアルキル基は、1つ以上の不飽和の部位を含んでもよく、例えば、シクロアルキル基は、例えば1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキス-1-エニル、1-シクロヘキス-2-エニル、1-シクロヘキス-3-エニルなどの1つ以上の炭素-炭素二重結合を含むことができる。
【0049】
「ヘテロシクロアルキル」又は「複素環」という用語は、少なくとも1つの環に窒素、硫黄、酸素、好ましくは1~3個のヘテロ原子から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む飽和又は部分飽和単環式、二環式又は多環式環を指す。各環は、好ましくは3~10員、より好ましくは4~7員である。適切なヘテロシクロアルキル基の例としては、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3-ジアザパン、1,4-ジアザパン、1,4-オキサゼパン、1,4-オキサチアパンなどが挙げられる。複素環は、1つ以上の置換基で置換することができる。
【0050】
「芳香族」という用語は、本明細書に記載のアリールもしくはヘテロアリール基又は置換基のいずれかを指す。さらに、芳香族部分は、ビス芳香族部分、トリス芳香族部分などであってもよい。ビス芳香族部分は、ビフェニル又はビピリジンなどであるがこれらに限定されない2つの芳香族部分の間に単結合を有する。同様に、トリス芳香族部分は、各芳香族部分の間に単結合を有する。
【0051】
「アリール」という用語は、親芳香環系の単一の炭素原子から少なくとも1個の水素原子を除去することから誘導される芳香族炭化水素基を指す。ラジカル結合部位は、親環系の飽和又は不飽和炭素原子に存在し得る。アリール基は、6~30個の炭素原子、例えば約6~10個の炭素原子を有することができる。アリール基は、単環(例えばフェニル)又は複数の縮合(融合)環を有することができ、少なくとも1つの環は芳香族である(例えばナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、又はアントリル)。典型的なアリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールは、置換されていなくてもよく、又は以下に記載される置換基で置換されていてもよい。
【0052】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ、2つ、又は3つの芳香環を含み、芳香環に少なくとも1個の窒素、酸素、又は硫黄原子を含む単環式、二環式、又は三環式環系を指す。ヘテロアリールは、置換されていなくてもよく、又は「置換された」の定義に記載されているように、例えば1つ以上、特に1~3個の置換基で置換されていてもよい。典型的なヘテロアリール基は、1つ以上のヘテロ原子に加えて2~20個の炭素原子を環骨格に含み、環骨格は、5員環、6員環、2つの5員環、2つの6員環、又は6員環に縮合した5員環を含む。ヘテロアリール基の例としては、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、「ヘテロアリール」という用語は、炭素を含む5又は6個の環原子と、非過酸化物酸素、硫黄、及びN(Z)から独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子とを含む単環式芳香環を意味し、ここで、Zは存在しないか、又はH、O、アルキル、アリール、もしくは(C1-C6)アルキルアリールである。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、それから誘導される約8~10個の環原子のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体、又はそれにプロピレン、トリメチレン、もしくはテトラメチレンジラジカルを縮合することによって誘導されるものを意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「置換された」又は「置換基」という用語は、「置換された」(又は「置換基」)を使用する表現で示される基上の1つ以上(例えば、様々な実施形態では、1~10個;他の実施形態では、1~6個;いくつかの実施形態では、1、2、3、4、又は5個;特定の実施形態では、1、2、又は3個;他の実施形態では、1又は2個)の水素が、示される1つ以上の基からの選択物、又は当業者に公知の適切な基で置き換えられ、ただし、示される原子の通常の原子価を超えず、置換が安定な化合物をもたらすことを条件とすることを示すことが意図されている。適切な示される基(置換基)としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル及びアルキルスルホニルが挙げられる。示される基の置換基は、本明細書に記載の置換基の具体的なリストに列挙されたものであり得るか、又は当業者が認識するように、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル及びシアノから選択される1つ以上の置換基であり得る。示される基の適切な置換基は、置換炭素原子に結合することができ、F、Cl、Br、I、OR’、OC(O)N(R’)2、CN、CF3、OCF3、R’、O、S、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R’)2、SR’、SOR’、SO2R’、SO2N(R’)2、SO3R’、C(O)R’、C(O)C(O)R’、C(O)CH2C(O)R’、C(S)R’、C(O)OR’、OC(O)R’、C(O)N(R’)2、OC(O)N(R’)2、C(S)N(R’)2、(CH2)0-2NHC(O)R’、N(R’)N(R’)C(O)R’、N(R’)N(R’)C(O)OR’、N(R’)N(R’)CON(R’)2、N(R’)SO2R’、N(R’)SO2N(R’)2、N(R’)C(O)OR’、N(R’)C(O)R’、N(R’)C(S)R’、N(R’)C(O)N(R’)2、N(R’)C(S)N(R’)2、N(COR’)COR’、N(OR’)R’、C(=NH)N(R’)2、C(O)N(OR’)R’、又はC(=NOR’)R’を含み、ここで、R’は水素又は炭素ベースの部分(例えば(C1-C6)アルキル)であり得、炭素ベースの部分はそれ自体がさらに置換され得る。置換基は、例えばF又はClなどの一価である場合、それが置換している原子に単結合によって結合される。置換基は、Oなどの二価である場合、それが置換している原子に二重結合によって結合される;例えば、Oで置換された炭素原子はカルボニル基C=Oを形成する。
【0054】
本明細書で使用される立体化学の定義及び慣例は、一般に、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York;及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1994に従う。本発明の化合物は、不斉中心又はキラル中心を含有し得、したがって、様々な立体異性体形態で存在し得る。ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、ならびにそれらの混合物、例えばラセミ混合物を含むがこれらに限定されない本発明の化合物のすべての立体異性体形態が本発明の一部を形成することを意図する。多くの有機化合物は光学的に活性な形態で存在し、すなわち、それらは平面偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際に、接頭辞D及びL、又はR及びSは、その1つ以上のキラル中心の周りの分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞d及びl又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために用いられ、(-)又はlは、化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞(+)又はdが付いた化合物は右旋性である。所与の化学構造について、これらの立体異性体は、それらが互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーと呼ばれることもあり、そのような異性体の混合物はしばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体(以下に定義される)と呼ばれ、化学反応又はプロセスにおいて立体選択性又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。
【0055】
「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」という用語は、光学活性を欠く2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0056】
本明細書で使用される「エナンチオマー濃縮された」(「ee」)という用語は、1つのエナンチオマーが別のエナンチオマーよりも多く存在する混合物を指す。したがって、別のエナンチオマーよりも多く存在する1つのエナンチオマーを提供する反応は、「エナンチオ選択的」である(又は「エナンチオ選択性」を示す)。本発明の一実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約2%eeを有する混合物を指す;本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約5%eeを有する混合物を指す;本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約20%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約50%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約80%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約90%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約95%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約98%、本発明の別の実施形態では、「エナンチオマー濃縮された」という用語は、少なくとも約99%を有する混合物を指す。「エナンチオマー濃縮された」という用語は、反対の光学活性の種を実質的に含まない混合物であるか、又は1つのエナンチオマーが非常に少量、例えば0.01%、0.001%もしくは0.0001%で存在する、エナンチオマー的に純粋な混合物を含む。
【0057】
「IC50」という用語は、一般に、24時間で細胞の50%を死滅させるのに必要な濃度として定義される。
【0058】
「ErSO-DFP」という名称は、化合物(R)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンを指す。
【0059】
本発明の実施形態
本明細書に記載される各式において、式I又は式IIの可変要素が置換されていてもよい場合、それは、1つ以上の置換基、例えば、本明細書の置換基の定義に記載される置換基の1つ以上で置換され得る。1つ以上の置換基で置換されていてもよいアルキルは、例えば、1~6個の置換基、1~5個の置換基、1~4個の置換基、1~3個の置換基、1又は2個の置換基、又は1個の置換基で置換されたアルキルであり得る。1つ以上の置換基で置換されていてもよいアルキルとしては、例えば、ハロ置換アルキル基、例えばCF3、CHF2、CH2F、CH2CF3、CF2CH3又はCF2CF3が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、(S)-エナンチオマーである。他の実施形態では、式Iの化合物は、(R)-エナンチオマーである。同様に、いくつかの実施形態では、式IIの化合物は(S)-エナンチオマーであり、他の実施形態では、式IIの化合物は(R)-エナンチオマーである。式I又は式IIの置換基が2つ以上の立体中心を有する化合物をもたらす場合、この段落に記載される(R)及び(S)の呼称は、ErSO-DFPに見出される立体中心に対応する化合物の立体中心の位置を指す。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物は、(R)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンである。いくつかの実施形態では、化合物は、(S)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンである。いくつかの実施形態では、化合物は、3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4,4-ジフルオロ-3-メチルピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-モルホリノ-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(アゼパン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ピペラジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)ピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(4-フルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(3,3-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;3-(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン;又は3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(3,3,4,4-テトラフルオロピロリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンである。
【0062】
他の実施形態では、化合物は、(R)-3-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン又は(R)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(3,3,4,4-テトラフルオロピロリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンである。
【0063】
式I及び式IIの化合物は、小胞体における小胞体ストレス応答(UPR)の過剰活性化によってがん細胞を死滅させるか又はその成長を阻害することができる。がん細胞又は結果として生じる腫瘍は、ERα陽性であり得る。特定の実施形態では、化合物は細胞傷害性である。様々な実施形態では、がん細胞は、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮内膜がん細胞、又は当技術分野で公知の他のEP陽性がんである。
【0064】
化合物は、経口、注射、皮下、舌下、直腸、注入、静脈内投与によって、又は当業者に公知の他の方法によって投与することができる。
【0065】
結果。
リードとしてのErSOの評価は、脂溶性を主な最適化可能なパラメータとして明らかにする。ErSOは非常に脂溶性であると考えられ、6.44のclogD7.4を有する。脂溶性は、標的結合のためのエントロピー及びエンタルピーの増加をもたらし得るが、疎水性すぎる分子は、しばしば「薬物様」特性が不十分である(例えば、高いクリアランス、オフターゲットの阻害、低い経口バイオアベイラビリティ及びhERGのような重要な安全性イオンチャネルを阻害する傾向)。脂溶性は、ErSOの環A/Bの系統的な変化による調節についての十分なパラメータとして想定された(チャート1)。したがって、cLogD7.4、細胞効力及び選択性(すなわち、ERα+がん細胞及びERα-がん細胞に対する差次的影響)、ならびに脂溶性効率(LipE)を、有望な誘導体の同定のために優先した。具体的には、本発明者らは、より低いclogD7.4及びより高いLipEを有する化合物が、複数の薬物開発キャンペーンに従って、忍容性及び有効性のインビボ評価によって評価される優れた化合物であると仮定した。
【0066】
フェノール性ファーマコフォアの探索(環A摂動)
抗がんファーマコフォアとしての3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オンに関する複数の報告がある。一貫した所見は、抗がん活性のために少なくとも1つのフェノールが必要であることである。フェノール環上に置換基を有する誘導体は、脂溶性に大きな変化を与える可能性は低いが、フェノールの電子を変化させることによって抗がん活性に最適なpKaに関する手がかりを提供することができ、pKaに大きな変化を有するフェノールは、インビボで代謝(例えばグルクロン酸抱合速度)が変化している可能性がある。ErSOのフェノールの構造活性相関(SAR)を調べるために、フェノール環を修飾した複数の誘導体を評価した。第三級アルコール4を形成する7-トリフルオロイサチン(3)にリチウム化B環を付加することによってこれらの誘導体を構築するために、容易なモジュラー合成経路を利用し、次いで、フリーデルクラフツ反応によって変化を導入して、化合物5~13を得た(スキーム1)。
【0067】
スキーム1.フェノール誘導体のモジュラー合成。n-BuLi:n-ブチルリチウム、TfOH:トリフル酸、イサチン
THF:THFに溶解した7-トリフルオロメチルイサチン(3)、THF:テトラヒドロフラン。
【化6】
このプロセスを通して合成した誘導体、フェノール性OHの予測pKa、及びMCF-7がん細胞(ERα+乳がん細胞株)に対する抗がん活性を表1に示す。注目すべきことに、本明細書の生物学的データを分析する場合、本発明者ら他(Sci.Transl.Med.,2021,13,603)は、このクラスの化合物について、1つのエナンチオマー(多くの場合、(R)-エナンチオマー)のみが抗がん活性を有することを見出した;したがって、ラセミ化合物は、それらのエナンチオピュアな対応物の半分の効力を有すると想定される。興味深いことに、環上の様々な位置におけるフッ素置換(例えば化合物5~8)は、7.50~8.39の範囲の予測フェノールpKa値を有する化合物を提供する;一般に、そのような置換は比較的忍容され、オルトフッ素化誘導体(5)が最も活性である。化合物6では活性が失われており、フェノールは生理学的pHで主に脱プロトン化される。フェノールの不変性は、トリフルオロメチルアニソール9について観察される活性の欠如によって強く示される。フェノールのオルトヒドロキシル化を有する化合物は、化合物10及びその単一エナンチオマー(ErSO-OH、(S)-10)によって実証される効力を維持することができる;ErSO-OHは、ErSOのインビトロ代謝物評価中に見出される少量の代謝物である(1%未満の存在量でしか見出されないが)。対照的に、フェノール環上にo-アルキル化を有する化合物11~13は不活性である。要約すると、フェノール環のわずかな変化でさえ、活性の大きな損失につながり得る。
【0068】
ErSOの脂溶性を有意に変化させることに焦点を当てると、フェノールを中心とした変化はこのように非生産的であり、唯一の例外はカテコールErSO-OHであり、これはcLogD
7.4(6.13)が低下しており、効力が維持された。ErSO-OHの最初のインビボ忍容性評価は、clogD
7.4の低下がマウスにおいてより大きな静脈内忍容性をもたらし得るという概念実証を示したが、この化合物についてラットの忍容性の増加は観察されなかった。注目すべきことに、カテコールを薬物として開発することには、酸化、オルトキノン形成、及びその後の無差別反応性の傾向を有するという課題がよく報告されている。
【表1-1】
【表1-2】
a:pKa及びcLogD
7.4は、ChemAxon MarvinSketchを用いて計算した。
b:pKaは環Aの酸性プロトンについて報告されている。
c:IC
50を決定するために、MCF-7細胞を化合物と共に24時間インキュベートし、アラマーブルー蛍光によって生存率を測定した。ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.として示す;n≧2の独立した反復。iPr:イソプロピル。
【0069】
環Bの探索、アミン含有種の発見
他の3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オンは、変化したB環を有し、細胞培養中及びインビボで強力な抗がん活性を維持するが、単純な非置換シクロアルカン(すなわちシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル)を超える検討はほとんどなされていない。この位置における多様性の欠如は、おそらく、このタイプの置換化合物をジアステレオ選択的及びモジュラー方式で合成することが困難であることの結果である。本発明者らは、極性官能基を有するこの環の変化が、脂溶性の調整可能な変化を有する生物学的に活性な誘導体をもたらし得ると想定した。全体的な脂溶性の低下をもたらす窒素含有複素環の組み込みに注力した;そのような化合物は、3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オン骨格では前例がない。
【0070】
これらの窒素含有化合物の合成(スキーム2)は、環A誘導体にアクセスするために使用される経路と同様の方法で進行し、インサイチュで生成されたアリールオルガノリチウムによる7-トリフルオロイサチン(3)の求核攻撃から出発して、第三級アルコール14を形成する。スキーム1のフリーデルクラフツ経路はこれらの新しい標的化合物を除外するので、アミン求核試薬を組み込むために、不安定な第三級塩化物15の生成に続いて適切な窒素含有複素環と反応させ、TBS脱保護(スキーム2)によって最終化合物2及び16~21を得た(表2)。
【0071】
スキーム2.B環誘導体のモジュラー合成。n-BuLi:n-ブチルリチウム、TBS:tert-ブチルジメチルシリル、SOCl
2:塩化チオニル、TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム、THF:テトラヒドロフラン、DMF:ジメチルホルムアミド。
【化7】
これらの新規窒素含有化合物の活性を表2に要約する。特に、cLogD
7.4値(2.61~4.85の範囲)は、それらのビスアリール対応物よりも著明に低い。培養中のMCF-7細胞に対する評価は、驚くべきことに、4,4-ジフルオロ化を欠く化合物16とは全く対照的に、4,4-ジフルオロ置換ピペリジン2及び17が強力な抗がん活性を維持することを明らかにした。化合物17は、ジアステレオマーとそれらの対応するエナンチオマーの混合物(合計4つの化合物)であり、4,4-ジフルオロピペリジンの3位から分岐した化合物が効力を維持することができる可能性を示唆する。興味深いことに、2と比較して2倍のIC
50によって証明されるように、1つの種のみが活性であるようである。このセット(18~21)で試験した他のすべての化合物は強力な活性を欠く。
【表2】
a:cLogD
7.4は、ChemAxon MarvinSketchを用いて計算した。
b:IC
50を決定するために、MCF-7細胞を化合物と共に24時間インキュベートし、アラマーブルー蛍光によって生存率を測定した。ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.として示す;n≧2の独立した反復。
c:ジアステレオマー及びそれらの対応するエナンチオマーの混合物、合計4つの化合物。
【0072】
ErSO-DFPは強力なERα依存性抗がん化合物である
化合物2は、MCF-7細胞に対する活性を維持しながら、ErSOと比較して脂溶性の有意な低下を示し(cLogD
7.4:それぞれ4.37対6.44)、詳細な評価の正当な理由となる。2のエナンチオマーを分取キラルクロマトグラフィによって分離し、それらの絶対配置をX線結晶学によって決定した(チャート2)。以前の観察によれば、(R)-エナンチオマー((R)-2、新たに作製されたErSO-DFP)は、ラセミ化合物の約2倍強力な活性化学種である;反対のエナンチオマーである(S)-2は、MCF-7細胞に対していかなる活性も有さない(
図2B)。LipEは、薬物開発キャンペーン中に効力及び脂溶性を好都合に追跡するための強力なパラメータであり得る。ErSO-DFPは、ErSOと比較した場合、LipEが2.5倍を超えて増加し、シフトは等電位であり、ErSO-DFPの脂溶性の低下の直接的な結果を有する(
図2C)。
【0073】
チャート2.ErSO-DFPは、その前駆体であるErSOと比較して優れたLipEを有する活性抗がん剤である。X線結晶学によって確認されたErSO-DFP及び(S)-2の化学構造。ChemAxon MarvinSketchによって計算されたErSO-DFPの物理化学的パラメータ。
【表3】
【0074】
ErSO-DFPは、ErSOと同様に、T47D細胞株ならびにその治療抵抗性のERα変異型、T47D-ERαY537S(TYS)及びT47D-ERαD538G(TDG)を含む他のERα+乳がん細胞株に対して強力な活性を有する(表3)。最も重要なことに、ERα-細胞株に対するこれらの化合物の評価は、ErSO-DFPが、ErSOと比較して著しく低いERα非依存性活性を有することを示す;この効果は、表3に見られ、及び
図3の用量反応曲線において最も際立っている。ErSOは、HCT-116及びHT-29で最も顕著な、複数のERα陰性細胞株におけるERα依存性死滅の時間依存性減弱を有するが、ErSO-DFPは、24及び72時間でこれらの細胞株において不活性であり(IC
50>25μM)、IC
50曲線は、ほとんどの場合に0%近くの細胞死まで下落する(
図3)。例えば、HCT-116細胞では、ErSOのIC
50は11μMから0.26μMにシフトし、約38%で底を打つ。対照的に、ErSO-DFPのIC
50は、24及び72時間の両方で55μMであり、効果は、より低濃度の化合物で0%に近づく。ErSO-DFPの場合、ERα+がん細胞株とERα-がん細胞株との間で観察されたIC
50値(24及び72時間の両方で測定)に平均2750倍を超える差があり、これは、ErSOの555倍の差と比較して、細胞培養における選択的細胞死滅のための有意に広い治療域である。
【表4】
IC
50を決定するために、がん細胞を化合物と共に24又は72時間インキュベートし、アラマーブルー蛍光によって生存率を測定した。ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.として示す;n≧3の独立した反復。
a:cLogD
7.4は、ChemAxon MarvinSketchを用いて計算した。
b:MCF-7及びERα陰性細胞株についての24/72時間のIC
50値間の平均倍率変化。
【0075】
ErSO-DFPは、ErSOと同様の方法で予測的小胞体ストレス応答(a-UPR)を活性化する。ErSO-DFPの抗がん活性がErSOと同様の機構を介して誘導されるかどうかを評価するために、a-UPR活性化(P-AMPK及びP-EIF2αの出現、ATF6α
p90の切断)と一致する重要なタンパク質のウエスタンブロット分析を行った。MCF-7細胞を用いたこれらの実験では、ErSO-DFPは、ErSOと同様の時間及び濃度依存的方法でa-UPRを活性化する(
図4)。不活性エナンチオマーである化合物(S)-2ではa-UPRの活性化は見られない。
【0076】
ErSO-DFPの最適化合成
さらなる試験を容易にするために、スキーム2の一般的な経路からの重要な改変を伴う、特にErSO-DFPのための堅固でスケーラブルな合成経路を開発し、スキーム3Aに特にErSO-DFPについて示した。スキーム3Aの経路は使用可能な量の材料を生じる;しかしながら、スケールアップ時に一貫性のない収率が観察された。ヘテロ原子求核試薬を利用する3,3-二置換オキシインドールの合成に関する他の研究から着想を得て、本発明者らは、THFを溶媒として使用すると(工程1、スキーム3B)、より清浄な第三級塩化物中間体が得られることを見出した。一晩撹拌しながら、ジクロロメタン中の過剰の炭酸セシウムとのより塩基性の反応に変更し、続いてTBAF脱保護を行うと、化合物2への非常に効率的な経路となり、化合物2は3工程にわたって収率95%で生成された(スキーム3B)。これらの最適化された条件は一般的であり、2に加えて他の誘導体の合成にも好ましいようである(方法を参照)。
【0077】
スキーム3.ErSO-DFPの最適化合成。方法間の大きな変化を青色で強調表示している。n-BuLi:n-ブチルリチウム、イサチン
THF:THFに溶解した7-トリフルオロメチルイサチンン、SOCl
2:塩化チオニル、TBS:tert-ブチルジメチルシリル、pyr.:ピリジン、キラル分離:方法に十分に説明されている。
A.
【化8】
B.
【化9】
【0078】
さらなるフッ素化誘導体の構築及び評価
ErSO-DFPの活性に対するジフルオロピペリジンファーマコフォアの予期せぬ重要性を調べるために、様々なフッ素化複素環(ピペリジン、ピロリジン、アゼチジン)を含有する一連の誘導体、3.50~4.53のcLogD7.4範囲を有する化合物を合成した(表4)。単一のエナンチオマーを分離し、エナンチオピュアな化合物(R)-22~26をERα+乳がん細胞株MCF-7、ならびに3つのERα-がん細胞株MDA-MB-231、HCT-116及びHT-29に対して評価した。表4に示すように、MCF-7細胞に対する化合物(R)-22の強力な活性の著しい欠如が存在し、ErSO-DFPの抗がん効力のためのジフッ素化の重要性を示唆する。このピペリジン二フッ素化を3位に移動させると(3,3-ジフルオロピペリジン)、(R)-23で実証されるように、ErSO-DFPと比較して活性がわずかに低下する。6員ジフルオロピペリジンの5員3,3-ジフルオロピロリジンへの縮合は忍容され、強力な誘導体(R)-24が得られる。化合物(R)-25のIC50の増加によって証明されるように、4員3,3-ジフルオロアゼチジンへのさらなる縮合は忍容性が低い。
【0079】
四フッ化ピロリジン誘導体(R)-26は、4~5nMのIC
50値を有する最も強力な化合物である。反対のエナンチオマーである化合物(S)-26は、MCF-7細胞に対して不活性であり、この場合も、この化合物クラスにおける1つのエナンチオマーのみが抗がん活性を有することを実証している。強力な誘導体((R)-23、(R)-24、(R)-276)を、ERα-がん細胞株MDA-MB-231、HCT-116及びHT-29に対するそれらの活性についてさらに評価した。ErSO-DFPデータと一致して、化合物(R)-23、(R)-24及び(R)-26は、24及び72時間の化合物インキュベーションにより、これらの細胞株に対して2桁のマイクロモル効力を有する。化合物(R)-26は、最大の倍率変化(≧3500)を有し、フッ素化窒素複素環含有誘導体の中で最も強力である。このセットのすべての化合物(ErSO-DFP、(R)-23、(R)-24及び(R)-26)は、それらの極性及びナノモル効力の増加によって駆動されるLipEの有意な増加を有する。
【表5】
IC
50を決定するために、がん細胞を化合物と共に24又は72時間インキュベートし、アラマーブルー蛍光によって生存率を測定した。ラプチナール(100μM)を100%死滅対照として使用した。データを平均±s.e.m.として示す;n=3の独立した反復。
a:cLogD
7.4は、ChemAxon MarvinSketchを用いて計算した。
b:MCF-7及びERα陰性細胞株についての24/72時間のIC
50値間の平均倍率変化。
c:n=2の独立した反復。n.d.:測定せず
【0080】
ErSO-DFPはマウス及びラットにおいて良好に忍容される
培養中のERα細胞に対するその活性の欠如(すべてのERα-細胞株及びすべての時点でIC
50>25μM)ならびにその手軽な市販されている出発物質(すなわち、4,4-ジフルオロピペリジン塩酸塩)のために、ErSO-DFPのインビボプロファイルをさらに調べた。ErSO-DFPは、ErSOと比較して親水性及びLipEの有意な変化を有する(チャート1、
図2C)。マウスにおける薬物動態(PK)プロファイルならびにマウス及びラットにおける忍容性をErSO-DFPについて調べた。PK評価は、ErSO-DFP(静脈内投与)が生物学的に適切な濃度を達成することを明らかにした(
図5B)が、ErSO-DFPはマウスにおいて経口アベイラビリティが低い(F%:6%)。この低いF%は、ErSO-DFPの限られた酸安定性の結果であり得る。模擬胃液(SGF)安定性アッセイ(
図5C、表5)において、ErSO-DFP及び化合物(R)-23、(R)-24、(R)-26はSGF中での安定性が限られており、半減期は10~77分の範囲であった。これは、マウスにおけるErSOの47%のF%と一致する、ErSOの観察された(
図5C、表5)2時間を超える半減期とは対照的である。ErSO-DFPの酸不安定性は、酸促進脱離、すなわち3,3-ビアリール誘導体を構築するためのフリーデルクラフツ型反応において利用される反応性の結果であり得る(スキーム1)。この仮説を試験するために、化合物2をトリフル酸及びフェノール求核試薬に供した。実際に、化合物3の反応で報告されたものよりも長い反応時間及び低い物質収支回収率ではあるが(スキーム1)、フリーデルクラフツ反応生成物27が収率20%で単離された(チャート3)。これらのデータは、経口バイオアベイラビリティに対する影響と共に、酸促進脱離がErSO-DFP及び誘導体(R)-23、(R)-24、(R)-26の酸安定性不良の原因であり得るという初期の証拠を提供する。
【表6】
目的の化合物(100μM)を、ペプシンを含むSGF中で示されている時間インキュベートし、化合物濃度をLC-MS/MSによって測定した。次いで、濃度をt=0試料に対して正規化し、残存%を計算し、プロットした。半減期(t
1/2)及び曲線は、一相減衰方程式を用いてGraphPad PRISMで計算した(Y0=100、プラトー=0、K>0)。エリスロマイシンは、公知の酸感受性陽性対照である。95%CI:95%信頼区間、SD:標準偏差。示されているデータはN=2を代表する。
【0081】
チャート3.化合物2とトリフル酸及びフェノールとの反応の要約。
【化10】
その低い経口バイオアベイラビリティにもかかわらず、マウスにおける直接比較PK実験(I.V.投与)は、ErSO-DFP C
maxがErSOで見られる濃度のおよそ2倍であり、AUCがErSO値の約60%であることを示す(表6、
図7)。ErSO-DFPは、より高いクリアランス値及びより低い算出平均滞留時間で、ErSOよりも迅速にクリアされる(表6、
図7)。このPKデータを用いて、ErSO及びErSO-DFPの最大耐量(MTD)を決定した。ErSO-DFPは、マウス及びラットの両方においてErSOよりも良好に忍容され、静脈内投与した場合、忍容性がほぼ5倍増加する;これらの実験では、静脈内注射されたErSO-DFPのMTDは、マウスでは95mg/kgであり、ラットでは>50mg/kgである(表7)。同様のPKパラメータを考慮すると(表6)、ErSOと比較したErSO-DFPの忍容性のこの観察された改善は、化合物曝露の差によるものではないようである。
【表7】
【0082】
ErSO-DFPは、ErSOと比べて異なる予測脳浸透率を有し、cLogBBはそれぞれ0.03及び0.25であり、CNS MPOスコアはそれぞれ3.44対2.83である。ErSO-DFPの脳対血清比を、マウスにおける10mg/kgの静脈内注射によって実験的に測定した。差を予測するcLogBB予測及びCNS MPOスコアとは対照的に、ErSO-DFPはErSOと同様の血液脳分配比を維持し(
図6B)、ErSO-DFPの忍容性の増加がBBB浸透性不良の結果ではないことを示唆する。要約すると、これらのデータは、静脈内投与した場合、ErSO-DFPがインビボで有意な治療上適切な濃度に達し、ErSOよりも良好に忍容されることを実証している。
【表8】
MTDは、n≧2、単回投与で決定した。
a:Boudreau,M.W.et al.Sci.Transl.Med.2021,13,eabf1383によって報告された。
【0083】
ErSO-DFPは、ERα陽性乳がんのマウスモデルにおいてErSO様活性を維持する
ERα+乳房腫瘍に対するErSO処置の有意な抗腫瘍効果は、選択的抗がん療法におけるその可能性を示唆する;このタイプの急速で劇的な腫瘍退縮は、従来の選択的エストロゲン受容体分解薬/下方制御薬(SERD)及び選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)を使用したマウス腫瘍モデルでは見られない。ErSO-DFPの抗腫瘍効果を評価するために、大きい(処置前の平均サイズ>300mm
3)MCF-7腫瘍を有するマウスを、ErSO又はErSO-DFPの週に1回、合計3回の投与(5mg/kgのI.V.投与)で処置した。ErSO-DFP処置は、MCF-7腫瘍の著しい退縮をもたらし、ErSO処置マウスに関する結果を反映する(
図7A)。処置は十分に忍容され、試験全体を通して有意な体重変化は観察されなかった(
図7B)。この初期有効性データを直接比較MTD試験(表7)と組み合わせて使用すると、ErSO-DFPの治療指数(TI)がErSOよりも大きく、おそらく約5倍以上の増加であることは明らかである。TI値を完全に確立するためには、ErSO-DFPを用いたさらなる用量発見実験が必要である。
【0084】
考察
内分泌療法は、ERα+乳がん患者の5年生存率を実質的に改善したが、薬物耐性の進行したERα+乳がんの治療が依然として緊急に必要とされている。新規な次世代SERD及びERαを標的とするタンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)を含む、この必要性に対処することを目指す新しい治療法の数多くの例がある。しかしながら、これらの内分泌療法は、がん細胞の細胞増殖抑制を誘導し、前臨床モデルにおいて限られた腫瘍退縮しかもたらさない公知の阻害機構を利用する。この課題は、最近報告された次世代SERD、GDC-9545(ギレデストラント)によって例示され、これは、CDK4/6阻害剤パルボシクリブと組み合わせても、細胞培養では強力な抗増殖活性を有するが、高度にエストロゲン依存性のMCF-7腫瘍を定量的に退縮させることができない。これらの薬物によって誘導されるゆっくりとした腫瘍退縮は、腫瘍負荷が大きい患者における内分泌療法の使用の回避、及び患者のコンプライアンス不良というよく報告されている問題につながる長期の内分泌療法処置時の重大な毒性を含む、臨床適用に影響を及ぼす。
【0085】
内分泌療法の細胞増殖抑制活性とは対照的に、a-UPR活性化剤は、非常に有効で速効性の細胞傷害性ERα依存性療法である可能性がある。ErSO-DFP及びErSOは、抗がん性小分子の置換3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オンクラスのメンバーである。このクラスの周知のメンバーは、40年以上にわたって使用され、後に形質転換細胞及びがん細胞に対する抗増殖効果を有することが示された緩下剤であるオキシフェニサチンである。オキシフェニサチンの誘導体は強力な抗がん活性を有する。例えば、Andruska et al(Proc.Natl.Acad.Sci.U S A,2015,112(15),4737)は、ERα媒介a-UPRの過剰活性化を介してERα+がん細胞の成長を遅延させるオキシフェニサチン誘導体、BHPIを開示した。BHPIによるa-UPRの「創薬可能性」の最初の実証は、明確で独特の細胞傷害性a-UPR過剰活性化を誘導する化合物であるErSOの発見の基礎であった。前駆体a-UPR活性化因子BHPIは、ほとんどのERα+がん細胞株に対して細胞増殖抑制性であるが、ErSOは迅速に細胞傷害性であり、単剤として週1回の投与で前臨床腫瘍モデルにおいて定量的腫瘍退縮を誘導する。ErSO-DFPは、1週間に1回の静脈内投与で観察される有意な腫瘍退縮を伴ってErSOと同様の抗腫瘍活性を示し、ErSOよりもさらに広い治療域を有する。細胞増殖抑制性又は細胞傷害性a-UPR活性化因子との間のこの切り替えの正確な分子基盤はまだ解明されていないが、表現型の変化及び腫瘍退縮は明らかである。
【0086】
一般的な脂溶性(cLogD7.4によって予測される)は、化合物の選択性及び特異体質性毒性プロファイルに大きな影響を及ぼし得る。脂溶性は、高親和性リガンド及びオンターゲット作用機構にとって重要であり得るが、高すぎる脂溶性は、オフターゲット機構及び他の欠点によって促進される狭い治療域をもたらし得る。ErSOの脂溶性効率の低さ(LipE=1.26)は、細胞培養におけるERα依存性活性の観察された減弱において役割を果たす可能性がある。過度の脂溶性が選択性にとって問題であり得るというこの主張を支持して、ErSO-DFP及び他のより極性の高い化合物((R)-23、(R)-24、(R)-26)は、72時間のインキュベーションでさえもERα+及びERα-がん細胞株に対して堅固な選択性を維持する。細胞培養におけるこの選択性は、ErSO-DFPで示されるように、インビボでのより良好な忍容性にもつながるようである。
【0087】
ErSOで以前に報告されたように、3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オンは、ラットの種別毒性を有する可能性がある。この毒性の正確な基礎となる薬理学的説明及びヒトとの関連性は知られていない。しかし、忍容性を考慮した場合、オキシフェニサチンの複数年の臨床使用は有望である;この薬物は、緩下剤では受け入れられない稀な肝毒性のために最終的に臨床から回収されたが、40年間にわたって広く処方された。それにもかかわらず、このラット毒性は、この薬物クラスの重要な前臨床フィルタとして使用することができる。単純なシクロアルカン置換を除いて、3-(4-ヒドロキシフェニル)インドリン-2-オンを多様化するための限られたセットの置換しか存在していない。脂溶性効率、がん細胞株特異性、及びラットインビボ忍容性を最適化するために、本発明者らは、このクラスの様々な異なる極性誘導体にアクセスするための高度にモジュール化された戦略を開発した。本明細書のErSO-DFP及び誘導体を超えて、この合成経路は、SARを拡大し、望ましいパラメータ(例えば経口バイオアベイラビリティ)をさらに調節するための将来の最適化に利用することができる。ErSO-DFPによって実証されるように、培養におけるリガンド脂溶性効率及びがん細胞選択性の優先順位付けは、マウス及びラットにおけるインビボ忍容性が増加した化合物をもたらすはずであり、進行中及び将来のa-UPR活性化剤の医薬品化学キャンペーンのための強力な最適化戦略を定義する。
【0088】
a-UPR活性化剤で見られる大きな抗腫瘍効果は、直接の標的係合及びそれらの根底にある機構の他の局面を明らかにする特定の必要性と共に、それらのさらなる調査を正当化する。より長い化合物インキュベーション時間で評価した場合、一部のがん細胞株におけるErSOの明らかなERα非依存性効果は、標的係合、a-UPR活性化、及びがん細胞死滅を取り巻く研究を複雑にし得る。この目的のために、ErSO-DFP及びその誘導体(例えば(R)-26)は、ERα-がん細胞株における顕著な不活性によって例示されるように、a-UPR活性化を検討するためのより理想的な化学プローブである。
【0089】
ErSO-DFPの活性に対するジフッ素化の強い必要性は、この研究の予想外の所見であった。フッ素原子は、リガンドの物理化学的特性及び立体配座特性に大きな影響を及ぼし、リガンドとそれらのタンパク質標的との間の様々な相互作用に寄与し得る。実際に、本明細書で利用される窒素複素環のフッ素化は、対応する共役酸の予測pKaを減少させ、そのpKa摂動はそれらの強力な活性の要因であり得る。さらに、ピペリジン(及び他の複素環)のフッ素化は、化合物の立体配座に有意な影響を及ぼす可能性があり、溶液中及び/又は標的結合における主要な立体配座を変化させ得る。このジフッ素化を欠く化合物(例えば16)と比較したErSO-DFPの強力な生物学的活性の正確な推進力は不明のままである。様々な薬物様リガンドの開発におけるフッ素化の重要な役割は明らかであり、ErSO-DFP及び関連化合物はこの必須性の別の例である。
【0090】
要約すると、脂溶性指向設計を使用して、本発明者らは、強力かつ選択的なERα依存性抗がん活性を示すErSO-DFP及び関連誘導体の発見を報告する。ErSO-DFPは、その前駆体ErSOのプラスの特徴の多く、すなわち強力なERαWT/変異体依存性a-UPR活性化及びがん細胞死滅を保存する。興奮することには、より極性ではあるが、ErSO-DFPは依然としてBBB浸透を維持しており、薬物耐性ERαWT/変異体陽性脳転移の治療のための将来の開発への扉を開く。本明細書に報告されるErSO-DFP及び他の化合物は、進行したERα+乳がん及び他のERα+がんを治療するためのa-UPR活性化剤の開発に向けて有望である。
【0091】
一般的な合成方法
本発明はまた、本発明の化合物及び組成物を製造する方法に関する。化合物及び組成物は、有機合成の適用可能な技術のいずれか、例えば、以下に記載される技術によって調製することができる(例2)。多くのそのような技術は当技術分野で周知である。ただし、公知の技術の多くは、Compendium of Organic Synthetic Methods(John Wiley&Sons,New York),Vol.1,Ian T.Harrison and Shuyen Harrison,1971;Vol.2,Ian T.Harrison and Shuyen Harrison,1974;Vol.3,Louis S.Hegedus and Leroy Wade,1977;Vol.4,Leroy G.Wade,Jr.,1980;Vol.5,Leroy G.Wade,Jr.,1984;and Vol.6,Michael B.Smith;ならびにMarch’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th Ed.by M.B.Smith and J.March(John Wiley&Sons,New York,2001);Comprehensive Organic Synthesis;Selectivity,Strategy&Efficiency in Modern Organic Chemistry,in 9 Volumes,Barry M.Trost,Ed.-in-Chief(Pergamon Press,New York,1993 printing));Advanced Organic Chemistry,Part B:Reactions and Synthesis,Second Edition,Cary and Sundberg(1983);Protecting Groups in Organic Synthesis,Second Edition,Greene,T.W.,and Wutz,P.G.M.,John Wiley&Sons,New York;及びComprehensive Organic Transformations,Larock,R.C.,Second Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)などの標準有機参照テキストに詳述されている。
【0092】
本発明の化合物を調製するためのいくつかの例示的な方法を以下に提供する。これらの方法は、そのような調製物の性質を説明することを意図しており、適用可能な方法の範囲を限定することを意図しない。
【0093】
一般に、温度、反応時間、溶媒、後処理手順などの反応条件は、実施される特定の反応について当技術分野で一般的なものである。引用される参考資料は、その中で引用される資料と共に、そのような条件の詳細な説明を含む。典型的には、温度は-100℃~200℃であり、溶媒は必要な条件に応じて非プロトン性又はプロトン性であり、反応時間は1分~2日である。後処理は、典型的には、未反応の試薬をクエンチし、続いて水/有機層系の間で分配し(抽出)、生成物を含む層を分離する工程からなる。
【0094】
酸化及び還元反応は、典型的には室温付近の温度(約20℃)で実施されるが、金属水素化物の還元の場合は、しばしば温度を0℃~-100℃に低下させる。必要に応じて加熱を使用することもできる。溶媒は、典型的には還元については非プロトン性であり、酸化についてはプロトン性又は非プロトン性のいずれかであり得る。反応時間は、所望の変換を達成するように調整される。
【0095】
縮合反応は、典型的には室温付近の温度で実施されるが、平衡化されていない、速度論的に制御された縮合の場合は、低温(0℃~-100℃)も一般的である。溶媒は、プロトン性(平衡反応で一般的)又は非プロトン性(速度論的に制御された反応で一般的)のいずれかであり得る。反応副生成物の共沸除去及び無水反応条件(例えば不活性ガス環境)の使用などの標準的な合成技術は、当技術分野において一般的であり、適用可能な場合は適用される。
【0096】
保護基。「保護基」という用語は、ヒドロキシ又は他のヘテロ原子に結合したときに、この基で望ましくない反応が起こるのを防ぎ、ヒドロキシル基を再確立するための従来の化学的又は酵素的工程によって除去することができる任意の基を指す。使用される特定の除去可能な保護基は、必ずしも重要であるとは限らず、好ましい除去可能なヒドロキシル保護基としては、例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナシル、メチルメトキシ、シリルエーテル(例えばトリメチルシリル(TMS)、t-ブチル-ジフェニルシリル(TBDPS)、又はt-ブチルジメチルシリル(TBS))などの従来の置換基、及びヒドロキシル官能基に化学的に導入され、後で、生成物の性質と適合性の穏やかな条件で化学的又は酵素的方法のいずれかによって選択的に除去され得る任意の基が挙げられる。
【0097】
適切なヘテロ原子保護基は当業者に公知であり、T.W.Greene,Protecting Groups In Organic Synthesis;Wiley:New York,1981(“Greene”)及びその中で引用される参考文献、ならびにKocienski,Philip J.;Protecting Groups(Georg Thieme Verlag Stuttgart,New York,1994)により詳細に開示されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
保護基は、利用可能であり、一般に公知で、使用されており、合成手順、すなわち本発明の方法によって化合物を調製するための経路又は方法の間、保護された基との副反応を防止するために使用されてもよい。ほとんどの場合、どの基を保護するか、いつ保護するか、及び化学的保護基(「PG」又は「P」)の性質に関する決定は、保護されるべき反応の化学的性質(例えば、酸性、塩基性、酸化的、還元的又は他の条件)及び意図される合成の方向に依存する。
【0099】
本発明の化合物の調製を以下の例において説明する。当業者によって容易に認識されるように、本明細書に記載される式の様々な他の化合物は、適切な市販の又は容易に調製される出発物質を使用することによって、及び/又は標的化合物の合成中に置換基を導入することによって調製することができる。特定の関連する出発物質の調製は、国際公開第2020/009958号(Shapiro et al.)に記載されており、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
医薬製剤
本明細書に記載の化合物は、例えば、化合物を薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と組み合わせることによって、治療用医薬組成物を調製するために使用することができる。化合物は、塩又は溶媒和物の形態で担体に添加し得る。例えば、化合物が安定な非毒性の酸塩又は塩基塩を形成するのに十分に塩基性又は酸性である場合、化合物を塩として投与することが適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸で形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、及びβ-グリセロリン酸塩である。塩酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩を含む適切な無機塩も形成され得る。
【0101】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的な手順を使用して、例えばアミンなどの十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて、生理学的に許容されるイオン性化合物を提供することによって得られ得る。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)塩又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩も、類似の方法によって調製することができる。
【0102】
本明細書に記載される式の化合物は、医薬組成物として製剤化され、様々な形態でヒト患者などの哺乳動物宿主に投与され得る。形態は、選択された投与経路、例えば、経口投与又は静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下経路による非経口投与に特に適合させることができる。
【0103】
本明細書に記載される化合物は、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて全身投与され得る。経口投与のために、化合物は、硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、又は患者の食事の食物に直接組み込まれ得る。化合物はまた、1つ以上の賦形剤と組み合わせてもよく、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。そのような組成物及び調製物は、典型的には少なくとも0.1%の活性化合物を含む。組成物及び調製物のパーセンテージは様々であり得、好都合には、所与の単位剤形の重量の約0.5%~約60%、約1%~約25%、又は約2%~約10%であり得る。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効投与量レベルを得ることができる量であり得る。
【0104】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、以下のうちの1つ以上を含み得る:トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;及びステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤。スクロース、フルクトース、ラクトースもしくはアスパルテームなどの甘味料;又はペパーミント、冬緑油もしくはサクランボ香料などの着香料を添加してもよい。単位剤形がカプセルである場合、上記の種類の材料に加えて、植物油又はポリエチレングリコールなどの液体担体を含んでもよい。他の様々な材料が、コーティングとして、又は固体単位剤形の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラック又は砂糖などでコーティングされてもよい。シロップ又はエリキシルは、活性化合物、甘味料としてスクロース又はフルクトース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボ又はオレンジ香料などの着香料を含み得る。任意の単位剤形を調製する際に使用される任意の材料は、薬学的に許容され、使用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性製剤及びデバイスに組み込まれ得る。
【0105】
活性化合物は、注入又は注射によって静脈内又は腹腔内に投与され得る。活性化合物又はその塩の溶液は、任意で非毒性の界面活性剤と混合して、水中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、もしくはそれらの混合物中で、又は薬学的に許容される油中で調製することができる。通常の保存及び使用条件下では、調製物は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含み得る。
【0106】
注射又は注入に適した医薬剤形としては、任意でリポソームに封入された、滅菌注射用又は注入用溶液又は分散液の即時調製に適合された活性成分を含む滅菌水溶液、分散液又は滅菌粉末を含み得る。最終的な剤形は、無菌で流動性があり、製造及び保存の条件下で安定であるべきである。液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び/又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝剤、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンによってもたらされ得る。
【0107】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記に列挙した様々な他の成分と共に、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に組み込むことによって調製することができ、その後濾過滅菌してもよい。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、活性成分及び溶液中に存在する任意のさらなる所望の成分の粉末を生成する、真空乾燥及び凍結乾燥技術を含むことができる。
【0108】
本明細書に記載される化合物の有用な投与量は、それらのインビトロ活性及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物における有効投与量をヒトに外挿するための方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号(Borch et al.)を参照されたい。治療に使用するために必要な化合物又はその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の化合物又は塩だけでなく、投与経路、治療されている状態の性質、ならびに患者の年齢及び状態によっても異なり、最終的には主治医又は臨床医の裁量による。
【0109】
しかしながら、一般に、適切な用量は、約0.5~約100mgの範囲、例えば約10~約75mg/kg体重/日、例えばレシピエントの体重1キログラムあたり3~約50mg/日、好ましくは6~90mg/kg/日の範囲、最も好ましくは15~60mg/kg/日の範囲である。
【0110】
化合物は、例えば単位剤形あたり5~1000mg、好都合には10~750mg、最も好都合には50~500mgの活性成分を含む単位剤形に好都合に製剤化される。一実施形態では、本発明は、そのような単位剤形に製剤化された本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0111】
化合物は、例えば単位剤形あたり5~1000mg/m2、好都合には10~750mg/m2、最も好都合には50~500mg/m2の活性成分を含む単位剤形で好都合に投与され得る。所望の用量は、好都合には、単回用量で、又は適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日あたり2、3、4、又はそれ以上の部分用量として提示され得る。部分用量自体は、例えばいくつかの個別の緩やかに間隔を空けた投与にさらに分割され得る。
【0112】
所望の用量は、好都合には、単回用量で、又は適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日あたり2、3、4、又はそれ以上の部分用量として提示され得る。部分用量自体は、例えば、吹送器からの複数回の吸入又は眼内への複数の液滴の適用などの、いくつかの個別の緩やかに間隔を空けた投与にさらに分割され得る。
【0113】
本明細書に記載される化合物は、有効な抗腫瘍剤であり得、BHPIと比較してより高い効力及び/又は低減された毒性を有し得る。好ましくは、本発明の化合物は、BHPIよりも強力で毒性が低く、及び/又はBHPIで遭遇する潜在的な異化代謝部位を回避する、すなわちBHPIとは異なる代謝プロファイルを有する。さらに、本明細書に記載される化合物は、BHPI及び他の公知の化合物よりも重症度の低い運動失調を引き起こす。
【0114】
本発明は、がんを有する哺乳動物に有効量の本明細書に記載の化合物又は組成物を投与することを含む、哺乳動物などの脊椎動物においてがんを治療する治療方法を提供する。哺乳動物には、霊長動物、ヒト、げっ歯動物、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウシなどが含まれる。がんは、一般に、望ましくない細胞増殖、例えば、制御されない成長、分化の欠如、局所組織浸潤及び転移を特徴とする様々なタイプの悪性新生物のいずれかを指す。本明細書に記載の化合物によって治療することができるがんとしては、例えば、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、白血病、肺がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、又は子宮がん、特にERα陽性である任意のがんが挙げられる。
【0115】
がんを治療する本発明の化合物の能力は、当技術分野で周知のアッセイを使用することによって決定され得る。例えば、治療プロトコルの設計、毒性評価、データ分析、腫瘍細胞死滅の定量化、及び移植可能腫瘍スクリーンの使用の生物学的意義が知られている。さらに、がんを治療する化合物の能力は、以下に記載される試験を用いて決定され得る。
【0116】
以下の例は、上記の発明を説明することを意図しており、その範囲を狭めると解釈されるべきではない。当業者は、例が、本発明を実施することができる多くの他の方法を示唆することを容易に認識するであろう。本発明の範囲内に留まりながら、多数の変形及び修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0117】
例1.生物学的手順
がん細胞株:培養条件及び検証。すべての細胞株を37℃、5%CO2で培養した。すべてのERα陽性細胞株を、フェノールレッドを含まない培地で増殖させた。MCF-7は、10%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)を含むEMEM中で増殖させた。T47Dを、10%FBS及び1%P/Sを含むMEM中で培養した。TYS及びTDG細胞を、10%CD-FBS及び1%P/Sを添加したMEM中で増殖させた。HCT-116及びMDA-MB-231細胞を、10%FBS及び1%P/Sを添加したRPMI-1640中で培養した。MDA-MB-436細胞を、10%FBS及び1%P/Sを添加したDMEM中で培養した。HT-29を、10%FBS及び1%P/Sを添加したMcCoy培地中で培養した。すべての細胞株は、ATCCストックから直接使用し、及び/又は前述のようにPowerPlex16HSアッセイ(Promega)を使用してさらに認証した54。手短に言えば、>100万個の細胞を収集し、細胞溶解緩衝液(50mMトリス、50mM EDTA、25mMスクロース、100mM NaCl、1%SDS、pH8)を使用して溶解した。各細胞株のDNA抽出及びショートタンデムリピート(STR)プロファイリングは、University of Arizona Genetics Core(UAGC)で行われた。常染色体STRプロファイルを、ATCC、DSMZ及びJCRBなどの参照データベースと比較した。
【0118】
抗がん活性のためのアラマーブルー蛍光(IC50)。ウェルあたり2,000~15,000個の細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を接着させた後、試験化合物のDMSOストック溶液を各ウェルに添加し、各ウェル中のDMSOの最終濃度=1%、最終容量:100μLとした。所望のインキュベーション時間(例えば24又は72時間)の最後に、各ウェル中の培地を吸引し、新しい新鮮な培地(化合物なし、100μL)を添加した。次いで、アラマーブルー溶液(40mLのPBSあたり4mgのレサズリン)を添加した(10μL)。2~6時間のインキュベーション後、各ウェルの蛍光(λ励起=555nm、λ発光=585nm)を、SpectraMax M3プレートリーダ(Molecular Devices)を使用して測定した。100%死滅対照:100μMラプチナール処理細胞との比較によって死滅パーセントを決定した。用量依存曲線及びIC50を、Origin Pro V10を使用して計算した。
【0119】
a-UPRイムノブロッティング/ウエスタンブロット手順。400,000個/ウェルのMCF-7細胞を6又は12ウェルプレートに播種し、一晩接着させた。次いで、培地を各ウェルから吸引し、次いで、希釈した試験化合物(0.1%DMSO濃度)を含む新鮮な培地を適宜添加した。細胞を4又は6時間インキュベートし、次いで回収した。次いで、PBSで洗浄した細胞ペレットを、ホスファターゼ(BioVision)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem)を含有するRIPA緩衝液を用いて溶解した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)を使用して決定した。10~15μgのタンパク質を含有する溶解物を4~20%勾配ゲル(BioRad)にロードし、SDS-PAGEを行った。次いで、タンパク質を膜(PDVF Millipore)に転写し、ブロットをBSA溶液(40mL TBST中2g)で1時間ブロッキングした。ブロッキング後、一次抗体を添加し、一晩インキュベートした(製造業者の推奨希釈液を使用して)。一晩のインキュベーション後、ブロットをTBSTで洗浄し(各洗浄について5分間のインキュベーション、3回洗浄)、次いで、TBST中でHRP結合二次抗体と共に1時間インキュベートした。ブロットを洗浄した(合計2回の10分間洗浄で、各洗浄について10分間のインキュベーション)。次いで、製造業者の手順に従ってSuperSignal West Pico Solutionを添加し、ChemiDocでブロットを画像化した。
【0120】
抗体。使用した抗体:ホスホ-AMPK(Thr172):CST-2535、AMPK:CST-5832、ホスホ-EIF2α(Ser51):CST-3398、EIF2α:CST-5324、ATF6α:CST-65880、β-アクチン-HRPコンジュゲート:CST-5125、β-アクチン:CST-4970、抗ウサギIgG HRP結合:CST-7074。
【0121】
IACUCガイドライン及びプロトコル番号。すべてのインビボ研究を、UIUC IACUCガイドライン及び承認されたプロトコル(IACUCプロトコル:18075)に従って行った。
【0122】
薬物動態(PK)試験。雌CD-1マウス(Charles River、約25gマウス)に、示されているように化合物(すなわち、ErSO又はErSO-DFP)を20mg/kg又は40mg/kgで静脈内(尾静脈I.V.)又は強制経口投与(P.O.)のいずれかで投与した。次いで、マウスを時点(#、#、#)で3のコホートにおいて屠殺した。LC-MS/MS(UIUC Metabolomics Center,Urbana,IL.)を利用した試験化合物の定量化のために、血液を採取し、遠心分離し、血漿を分離した。次いで、決定された化合物濃度を、非線形回帰プログラミング(WinNonlin)及び推定された薬物動態パラメータを使用して分析した。
【0123】
模擬胃液(SGF)安定性アッセイ。3.2gのペプシン(Sigma Aldrich P7000)を1000mLのSGF(Fischer Scientific 7108-16)に添加し、pHメータを使用してpHを1.2に調整することによって、SGFを新たに調製した。次いで、このSGFペプシン含有溶液を37℃に加温した。次いで、990μLの温めたSGFペプシン含有を複数のエッペンドルフチューブに分注し、続いて試験化合物の10mM DMSOストック溶液10μLを分注した。エリスロマイシン(MedChemExpress HY-B0220)は、この安定性アッセイの陽性対照である。試料を、15分ごとにボルテックスしながら実験全体にわたって37℃でインキュベートした。各所望の時点(0、15、30、60、120分)において、100μLアリコートを取り出し、50μLのアセトニトリルに入れてクエンチする。すべての時点が完了するまで、試料を4℃で保存する。次いで、試料をボルテックスし、次いで、4℃の遠心分離機において3,000RPMで10分間清澄化した。上清を回収し、LC-MS/MS(UIUC Metabolomics Center,Urbana,IL.)によって化合物濃度を決定した。決定した化合物濃度を使用して、t=0試料と比較して残存率を計算した。単相指数関数的減衰式を、GraphPadソフトウェア(一相減衰式、Y0=100、プラトー=0、K>0)を使用して各化合物のデータに当てはめ、これらの当てはめた式を使用して半減期(t1/2)を計算した。
【0124】
マウス及びラットにおける最大耐量(MTD)実験。雌CD-1マウス(Charles River、7~8週齢)又はCD Sprague Dawley IGSラット(Charles River、250~350g)を、静脈内(尾静脈I.V.)又は強制経口投与(P.O.)のいずれかで、所望の用量のErSO又はErSO-DFPで処置した。げっ歯動物を、化合物投与後複数日間、窮迫、嗜眠、神経毒性などの徴候について観測した。所与の用量が忍容された場合、忍容できない用量が観察されるまで(しばしば毒性及び/又は致死性の急性徴候に関連する)、又は所与の試験化合物で溶解度限界に達するまで、より高い用量を調査した。MTDは、観察された急性副作用が忍容され、致死性が観察されなかった最大用量として定義した。
【0125】
MCF-7同所性腫瘍モデル。Nu/J卵巣摘出マウス(Jackson’s lab)に、腫瘍細胞接種の2~3日前に60日E2ペレット(0.36mg、Innovative Research of America)を補充した。MCF-7細胞(1:1のHBSS:マトリゲル中5×106個)を乳房脂肪パッドに接種し、確立させ、腫瘍を約300~400mm3まで成長させた(約21~28日で確立)。ErSO及びErSO-DFPを、5%DMSO、10%Tween-20及び85%PBS中に配合した。次いで、マウスを無作為化し(n=6/群)、ビヒクル(5%DMSO、10%Tween-20、85%PBS)、ErSO(5mg/kg)又はErSO-DFP(5mg/kg)を1週間に1回、合計3回投与で(0日目、7日目、14日目)静脈内注射した(尾静脈I.V.)。腫瘍サイズをカリパスによって測定し、マウス体重を記録した。
【0126】
BBB浸透性試験。CD-1マウス(Charles River)に、指示される用量でErSO又はErSO-DFPを静脈内注射し(尾静脈I.V.)、注射の15分後に屠殺した(各時点及び用量についてn=3)。マウスを屠殺し、血液を採取した。残留循環量を灌流によって除去した。血液試料を13,000RCFで5分間遠心分離した。得られた上清を回収し、分析前に-80℃で保存した。脳を頭蓋円蓋から採取し、秤量し、液体窒素で急速凍結した。1000μLの冷メタノールを解凍した脳に添加し、次いで、ハンドヘルド組織ホモジナイザを使用して脳をホモジナイズした。得られたスラリーを13,000RCFで各回10分間、2回遠心分離し、上清を回収し、分析前に-80℃で凍結した。次いで、試料をLC-MS/MS(Metabolomics Laboratory of the Roy J Carver Biotechnology Center UIUC)によって分析して、血清及び脳の両方におけるErSO又はErSO-DFP濃度を決定した。絶対脳:血清比を計算するために、各マウスについて58.5mL/kgの近似マウス血液量を利用した。
【0127】
例2.化学合成のための材料及び方法
一般的な方法。本明細書に記載のすべての反応は、特に明記されない限り、不活性雰囲気(すなわち、アルゴンガス)下で行った。化学試薬は商業的供給源から購入し、さらに精製することなく使用した。7-トリフルオロイサチン(1)は市販されている(例えば、Oakwood Chemical-024866)。使用したすべての溶媒は無水であり、商業的供給源から購入したか、又はPureSolv MD-5溶媒精製システムを利用して活性アルミナカラムに通す工程から得た。最終化合物を、ニートアセトニトリルから一晩凍結乾燥によって乾燥させた。1H NMR、13C NMR、19F NMR実験は、CryoProbeを用いてBruker Avance III HD 500MHz NMRで行った。CD3ODで得られたスペクトルを、1H及び13C NMRスペクトルについてそれぞれ3.31ppm及び49.00ppmを参照した。19F NMRについては、対応する1H NMR実験からの参照を利用した。すべてのNMR化学シフトは、ppm(δ)、カップリング定数(J、Hz)で報告し、ピークは、s=シングレット、bs=ブロードシングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレットとして報告する。13C及び19Fピーク多重度は、1H NMRに使用される同じ名称で、特に明記されない限りすべて一重線である。エレクトロスプレーイオン化(ESI)を利用してUIUC SCS Mass Spectrometry Laboratoryで高分解能質量スペクトル(HRMS)を得た。絶対立体化学を決定することができるBruker D8 Venture Duo機器を利用して、UIUC SCS George L.Clark X-Ray FacilityでX線結晶学を行った。さらなる結晶学的情報は、要求に応じて入手可能であり、Reciprocal Netに寄託されている。生物学的アッセイで利用される化合物の>95%の純度を、HPLCをλ:254nmで使用して決定した。キラルHPLCは、ラセミ混合物について2つのピークを示すことが多く、本明細書のこのクラスの化合物については1つのエナンチオマーのみが生物学的活性を示すことが多いので、本明細書の化合物についての重要な考慮事項である。いくつかの化合物(全体を通して示される)について、使用したHPLCキラルカラムでは両エナンチオマーの分割は達成されなかった。
【0128】
1、 ErSO、(R)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。化合物1を合成し、報告されているように単離した(Sci.Transl.Med.,2021,13,603)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.53(d,J=8.0 Hz,1H),7.45(d,J=7.5 Hz,1H),7.31(d,J=8.9 Hz,2H),7.25-7.14(m,3H),7.03(d,J=8.8 Hz,2H),6.74(d,J=8.9 Hz,2H).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.48,-62.98.融点:91.1~94.8℃。
【0129】
4、 3-ヒドロキシ-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。不活性雰囲気下の火炎乾燥した丸底フラスコに、1-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(23.30mmol、3.5mL)を充填し、THF(23mL)に溶解した。反応混合物を-78℃に冷却し、n-BuLi溶液(21.39mmol、14.3mL)を10分間かけて滴下した。反応物を-78℃で1時間撹拌した。別の火炎乾燥フラスコにおいて、7-(トリフルオロメチル)インドリン-2,3-ジオン(9.30mmol、2.0g)を添加し、不活性雰囲気下でTHF(23mL)に溶解した。このイサチンの室温溶液を反応容器に-78℃で15分間かけて滴下した。得られた混合物を-78℃で1時間撹拌し、冷浴から取り出し、30分間撹拌しながら室温に温めた。反応物を水(15mL)でクエンチした。溶液を、100mLのEtOAc及び100mLの1:1 H
2O:飽和ブラインを含む分液漏斗に注いだ。有機物を酢酸エチル(3×、約50~100mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた油状物を自動フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、溶出溶媒:18カラム体積にわたって初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサンから漸増勾配で50:50酢酸エチル:ヘキサン)によって精製した。4をオフホワイト色/黄色の固体として収率65%で単離した(6.07mmol、2.29g)。
1H NMR(CD
3OD,500 MHz)δ:7.57(d,J=8.0 Hz,1H),7.47(d,J=8.8 Hz,2H),7.41(d,J=7.4 Hz,1H),7.25(d,J=8.5 Hz,2H),7.20(t,J=7.8 Hz,1H).
13C NMR(CD
3OD,126 MHz)δ:182.08,150.31(q,J=1.7 Hz),140.70(q,J=2.28 Hz),140.54,135.70,129.90,128.61,127.35(q,J=4.5 Hz),125.09(q,J=270.9 Hz),124.04,122.01,121.88(q,J=255.7 Hz),113.84(q,J=33.3 Hz),77.09.
19F NMR(CD
3OD,471 MHz)δ:-60.23(s),-63.71(s).HRMS(ESI):m/z C
16H
8NO
3F
6[M+H]
+の計算値376.0408、実測値:376.0404。融点:59.5~61.8℃。
【化11】
【0130】
一般手順A(化合物5~13)。丸底フラスコに化合物4(1.06mmol、0.40g)を充填し、目的のフェノール(3.71mmol)をジクロロメタン(2.2mL)に溶解した。次いで、反応混合物を氷浴に入れ、次いで、トリフル酸(TfOH、0.4mL)を滴下した。警告:トリフル酸は、多くの一般的なプラスチック、特にシリンジのプランジャを溶解するため、金属針又はガラスシリンジを使用することが推奨される。プラスチックシリンジを使用する場合、シリンジのプランジャとの接触を避ける。次いで、反応容器を氷浴から取り出し(又は氷を融解させ)、室温で1時間撹拌した。次いで、反応混合物を、氷を満たした飽和重炭酸ナトリウム(水性、約50mL)に注ぎ入れ、水溶液を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた油状物をカラムクロマトグラフィ(SiO2、溶出溶媒:通常、初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサンから漸増勾配で40:60酢酸エチル:ヘキサン)によって精製した。
【0131】
5、 3-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。2-フルオロフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。5を白色固体として収率73%で単離した(0.192mmol、0.091g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.55(d,J=8.0 Hz,1 H),7.48(d,J=7.6 Hz,1 H),7.31(d,J=8.9 Hz,2 H),7.25(d,J=8.5 Hz,2 H),7.23(t,J=7.9 Hz,1 H),6.91(dd,J=12.3,2.4 Hz,1 H),6.88(t,J=8.7 Hz,1 H),6.83(dd,J=8.6,2.4 Hz,1H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.80,152.68(d,J=241.4 Hz),149.94(q,J=1.9 Hz),146.14(d,J=13.0Hz),141.74,139.88(q,J=2.1 Hz),136.30,133.33(d,J=5.7 Hz),131.16,131.09,126.18(q,J=4.5 Hz),125.45(d,J=3.3 Hz),125.1(q,J=268.9 Hz),124.02,122.14,121.79(q,J=252.4 Hz),118.81(d,J=3.3 Hz),117.17(d,J=20.5 Hz),113.91(q,J=33.3 Hz),61.92.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.48,-63.01,-137.93(dd,J=12.4,8.9 Hz).HRMS(ESI):m/z C22H13NO3F7[M+H]+の計算値472.0784、実測値:472.0792。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:92.0~95.2℃。
【0132】
6、 3-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。2,6-ジフルオロフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。6を白色固体として収率91%で単離した(0.961mmol、0.4702g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.57(d,J=8.1 Hz,1H),7.51(d,J=7.6 Hz,1H),7.37-7.18(m,5H),6.83-6.70(m,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.24,153.76(dd,J=242.9,7.3 Hz),150.05(q,J=1.6 Hz),141.26,139.91(q,J=2.1 Hz),135.65,135.32(t,J=16.1 Hz),132.26(t,J=7.7 Hz),131.11,131.09,126.65(q,J=4.5 Hz),125.05(q,J=271.1 Hz),123.80,121.86(q,J=256.0 Hz),122.25,114.04(q,J=33.3 Hz),112.83(m),61.66.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-60.23(s),-63.80(s),-135.17(d,J=8.7 Hz).HRMS(ESI):m/z C22H12NO3F8[M+H]+の計算値490.0689、実測値:490.0687。HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:63.2~65.9℃。
【0133】
7、 3-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3-フルオロフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。6を白色固体として収率68%で単離した(0.359mmol、0.169g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.6 Hz,1H),7.44-7.32(m,3H),7.31-7.13(m,3H),6.84(t,J=8.9 Hz,1H),6.57(dd,J=8.7,2.7 Hz,1H),6.49(dd,J=13.0,2.5 Hz,1H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.91,162.64(d,J=246.6 Hz),160.49(d,J=11.98 Hz),148.85,140.30(q,J=1.95 Hz),138.98,135.68,131.80(d,J=5.33 Hz),131.12,130.79(d,J=2.93 Hz),126.36(q,J=4.43 Hz),125.16(q,J=271.0 Hz),123.51,121.92,121.89(q,J=255.9 Hz),120.54(d,J=13.41 Hz),113.68(q,J=33.39 Hz),112.30(d,J=2.69 Hz),104.55(d,J=24.77 Hz),59.14.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-60.21(s),-63.74(s),-110.66(m).HRMS(ESI):m/z C22H13NO3F7[M+H]+の計算値472.0784、実測値:472.0779。HPLCキラル純度(λ:254nm):97%。融点:102.5~103.9℃。
【0134】
8、 3-(2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3,5-ジフルオロフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。8を白色固体として収率58%で単離した(0.160mmol、0.078g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.59(d,J=8.0 Hz,1H),7.47(d,J=7.5 Hz,1H),7.29(d,J=8.5 Hz,2H),7.25(t,J=7.8 Hz,1H),7.19(d,J=8.5 Hz,2H),6.39(d,J=11.8 Hz,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.84,163.02(dd,J=247.0,10.8 Hz),160.85(t,J=15.5 Hz),150.03(q,J=2.0 Hz),140.39(q,J=2.0 Hz),140.14,134.68,130.56,129.71,126.81(q,J=4.4 Hz),125.08(q,J=271.0 Hz),123.82,121.89(q,J=255.7 Hz),121.84,113.81(q,J=33.3 Hz),109.16(t,J=16.0 Hz),101.16(dd,J=28.01,2.1 Hz),56.49.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.51,-63.08,-106.44(d,11.9 Hz).HRMS(ESI):m/z C22H12NO3F8[M+H]+の計算値490.0689、実測値:490.0691。LCMS純度(λ:254nm):>96%。融点:>225℃。
【0135】
9、 3,3-ビス(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。トリフルオロメトキシベンゼンを用いて一般手順Aによって合成した。9を白色固体として収率54%で単離した(0.144mmol、0.075g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.58(d,J=7.9 Hz,1H),7.52(d,J=7.3 Hz,1H),7.33(d,J=9.0 Hz,4H),7.27(d,J=9.0 Hz,4H),7.24(t,J=7.9 Hz,1H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.34,150.06(q,J=1.9 Hz),141.38,139.99(q,J=1.9 Hz),135.85,131.23,131.17,126.62(q,J=4.4 Hz),125.07(q,J=271.3 Hz),123.84,122.27,121.87(q,J=255.6 Hz),114.05(q,J=34.0 Hz),62.30.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.50,-63.05.HRMS(ESI):m/z C23H13NO3F9[M+H]+の計算値522.0752、実測値:522.0757。HPLCキラル純度(λ:254nm):>98%。融点:176.6~178.1℃。
【0136】
10、 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。カテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)を用いて一般手順Aによって合成した。10を白色固体として収率36%で単離した(0.160mmol、0.075g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.53(d,J=7.8 Hz,1H),7.44(d,J=7.3 Hz,1H),7.34(d,J=8.9 Hz,2H),7.26-7.18(m,3H),6.71(d,J=8.3 Hz,1H),6.67(d,J=2.3 Hz,1H),6.49(dd,J=8.3,2.3 Hz,1H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:181.34,149.79(q,J=1.7 Hz),146.54,146.31,142.05,139.85(q,J=2.0 Hz),136.99,133.33,131.29,131.06,126.07(q,J=4.5 Hz),125.16(q,J=270.8 Hz),123.49,121.97,121.89(q,J=255.8 Hz),120.66,116.68,116.25,113.72(q,J=31.5 Hz),62.29.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.49,-62.98.HRMS(ESI):m/z C22H14NO4F6[M+H]+の計算値470.0827、実測値:470.0828。HPLCキラル純度(λ:254nm):>98%。融点:95.8~101.9℃。
【0137】
(S)-10、(S)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの分離。10を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5uMセルロース-1、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:40%i-PrOH/ヘキサン)を使用してそのそれぞれのエナンチオマーに分離した。(S)-10を白色固体として単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.53(d,J=8.0 Hz,1H),7.44(d,J=7.5 Hz,1H),7.34(d,J=8.9 Hz,2H),7.29-7.16(m,3H),6.71(d,J=8.3 Hz,1H),6.66(d,J=2.3 Hz,1H),6.49(dd,J=8.4,2.3 Hz,1H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:181.36,149.80(q,J=1.7 Hz),146.56,146.33,142.06,139.85(q,J=2.1 Hz),136.99,133.34,131.30,131.07,126.07(q,J=4.6 Hz),125.17(q,J=270.8 Hz),123.49,121.97,121.89(q,J=255.8 Hz),120.66,116.68,116.26,113.73(q,J=31.5 Hz),62.29.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.49,-62.97.HRMS(ESI):m/z C22H14NO4F6[M+H]+の計算値470.0827、実測値:470.0829。HPLCキラル純度(λ:254nm):>98%。融点:223.7~225.0℃。
【0138】
11、 3-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。2-メチルフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。11を白色固体として収率83%で単離した(0.436mmol、0.2035g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.53(d,J=7.7 Hz,1H),7.44(d,J=7.3 Hz,1H),7.31(d,J=8.9 Hz,2H),7.25-7.16(m,3H),6.92(dd,J=2.5,0.8 Hz,1H),6.82(dd,J=8.4,2.5 Hz,1H),6.69(d,J=8.4 Hz,1H),2.11(s,3H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.21,157.12,149.80(q,J=1.8 Hz),142.22,139.81(q,J=2.1 Hz),137.05,132.51,131.61,131.24,131.07,127.68,126.07(m,complex,~2 carbons),125.16(q,J=271.0 Hz),123.52,121.96,121.89(q,J=255.7 Hz),115.57,113.74(q,J=33.3 Hz),63.08,16.33.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-60.21(s),-63.69(s).HRMS(ESI):m/z C23H16NO3F6[M+H]+の計算値468.1034、実測値:468.1032)HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:93.3~98.2℃。
【0139】
12、 3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。2,6-ジメチルフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。12をオフホワイト色の固体として収率76%で単離した(0.203mmol、0.098g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.53(d,J=8.0 Hz,1H),7.45(q,J=1.9 Hz,1H),7.30(d,J=8.9 Hz,2H),7.22(d,J=8.4 Hz,2H),7.20(t,J=7.7 Hz,1H),6.76(s,2H),2.17(s,6H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:181.52,154.21,149.79,142.18,139.79(q,J=1.88 Hz),137.09,132.76,131.27,131.08,129.20,126.04(q,J=4.43 Hz),125.93,125.18(q,J=270.0 Hz),123.51,121.94,121.89(q,J=255.4 Hz),113.72(q,J=32.95 Hz),62.30,16.78.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.47,-62.95.HRMS(ESI):m/z C24H18NO3F6[M+H]+の計算値482.1191、実測値:482.1195。HPLCキラル純度(λ:254nm):>98%。融点:177.2~189.4℃。
【0140】
13、 3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。2,6-ジイソプロピルフェノールを用いて一般手順Aによって合成した。13をオフホワイト色の固体として収率64%で単離した(0.169mmol、0.091g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.54(d,J=7.8 Hz,1H),7.42(d,J=7.3 Hz,1H),7.29(d,J=9.0 Hz,2H),7.23(d,J=9.0 Hz,2H),7.22(t,J=7.7 Hz,1H),6.86(s,2H)3.26(septet,J=6.9 Hz,2H),1.10(dd,J=6.7,1.5 Hz,12H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:181.60,151.72,149.78(q,J=1.5 Hz),142.34,139.88(q,J=2.1 Hz),137.26,136.99,133.02,131.27,130.99,126.04(q,J=4.4 Hz),125.19(q,J=268.9 Hz),124.34,123.43,121.90,121.88(q,J=256.5 Hz),113.85(q,J=32.9 Hz),62.73,23.30,23.25.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-59.50,-62.96.HRMS(ESI):m/z C28H26NO3F6[M+H]+の計算値538.1817、実測値:538.1819。HPLCキラル純度(λ:254nm):97%。融点:77.5~79.0℃。
【0141】
14、 3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-3-ヒドロキシ-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。不活性雰囲気下の火炎乾燥した丸底フラスコに、(4-ブロモフェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(29.30mmol、7.2mL)を充填し、THF(31mL)に溶解した。反応混合物を-78℃に冷却し、n-BuLi溶液(27.90mmol、18.6mL)を10分間かけて滴下した。反応物を-78℃で1時間撹拌した。別の火炎乾燥フラスコにおいて、7-(トリフルオロメチル)インドリン-2,3-ジオン(13.95mmol、3.0g)を添加し、不活性雰囲気下でTHF(31mL)に溶解した。このイサチンの室温溶液を反応容器に-78℃で15分間かけて滴下した。得られた混合物を-78℃で1時間撹拌し、冷浴から取り出し、30分間撹拌しながら室温に温めた。反応物を水(20mL)でクエンチした。溶液を、100mLのEtOAc及び100mLの1:1 H
2O:飽和ブラインを含む分液漏斗に注いだ。有機物を酢酸エチル(3×、約50~100mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた油状物を自動フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、溶出溶媒:20カラム体積にわたって初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサンから漸増勾配で40:60酢酸エチル:ヘキサン)によって精製した。14を黄色固体として収率79%で単離した(11.04mmol、4.67g)。
1H NMR(CD
3OD,500 MHz)δ:7.54(d,J=7.8 Hz,1H),7.43(d,J=7.2 Hz,1H),7.26(d,J=8.7 Hz,2H),7.18(dd,J=8.1,7.4 Hz,1H),6.81(d,J=8.7 Hz,2H),0.97(s,9H),0.18(s,6H).
13C NMR(CD
3OD,126 MHz)δ:181.43,157.02,140.53(q,J=2.3 Hz),136.68,134.05,129.89,128.11,126.98(q,J=4.5 Hz),125.12(q,J=271.0),123.80,121.01,113.60(q,J=33.2 Hz),77.63,26.12,19.03,-4.34.
19F NMR(CD
3OD,471 MHz)δ:-62.86(s).HRMS(ESI):m/z C
21H
25F
3NO
3Si [M+H]
+の計算値424.1556、実測値:424.1563。融点:71.9~73.9℃。
【化12】
【0142】
一般手順B(化合物2、16~21)。ジクロロメタン(2.9mL)に溶解した化合物14(0.394mmol)を充填した丸底フラスコを0℃に冷却した。ピリジン(0.8mmol、0.06mL)、次いで、塩化チオニル(SOCl2、0.591mmol、0.04mL)を添加し、反応物を1時間撹拌した。次いで、水(約5mL)を激しく撹拌しながら添加した。次いで、二相混合物を酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。清浄な反応容器に粗混合物を充填し、THF又はDMF(3.9mL)に溶解し、続いて所望のアミン(3.94mmol)、及び所望のアミンがHCl塩である場合はピリジン(3.94mmol)に溶解した。反応混合物を2~4時間撹拌した(出発物質の消費を観測するためにTLCによって反応を追跡した)。反応物を1:1の水:ブラインに注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。次いで、粗油状物をTHF(4mL)に溶解し、TBAF溶液(THF中1 M、2mL)を添加し、出発物質の完全な消費が観察されるまで反応物を撹拌した(反応をTLCによって観測した)。完了したら、混合物を1:1の飽和重炭酸ナトリウム:ブラインに注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し(3回)、得られた合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。最終化合物を自動フラッシュクロモカラムクロマトグラフィ(SiO2、CH2Cl2又はジエチルエーテルを用いてカラムにロードした、溶出溶媒:約20~30カラム体積にわたって初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサンから漸増勾配で100:0酢酸エチル:ヘキサン)によって精製した。注:スキーム3B(以下の一般手順C)は、このタイプの化合物を合成するための理想的な合成経路である。
【0143】
2、3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。4,4-ジフルオロピペリジン塩酸塩を用いて一般手順Bによって合成した。2を白色固体として収率54%で単離し(0.213mmol、0.0875g)、白色固体として収率83%で単離した(2.45mmol、1.01g)。本発明者らは、この反応によるバッチ間の変動性を観察した。
1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.5 Hz,1H),7.52(d,J=8.0 Hz,1H),7.33(d,J=8.5 Hz,2H),7.20(t,J=7.8 Hz,1H),6.77(d,J=8.4 Hz,2H),2.95-2.45(m,4H),2.02-1.87(m,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.94,158.93,140.07(q,J=2.2 Hz),133.36,130.46,130.03,129.45,126.51(q,J=4.5 Hz),125.12(q,J=271.0 Hz),123.37,123.0(t,J=241.0 Hz),116.58,113.63(q,J=33.1 Hz),74.00,45.13(t,J=5.5 Hz),35.70(t,J=22.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.70,-99.68(bs).HRMS(ESI):m/z C20H18N2O2F5[M+H]+の計算値413.1288、実測値:413.1288。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%(ラセミ体)。融点:93.5~95.2℃。
【0144】
16、 3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。ピペリジンを用いて一般手順Bによって合成した。16を白色固体として収率65%で単離した(0.257mmol、0.0966g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.60-7.43(m,2H),7.30(d,J=8.4 Hz,2H),7.19(t,J=7.8 Hz,1H),6.74(d,J=8.7 Hz,2H),2.60-2.39(m,4H),1.66-1.49(m,4H),1.49-1.36(m,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.49,158.62,140.22(q,J=2.3 Hz),133.68,130.72,130.40,129.71,126.17(q,J=4.4 Hz),125.21(q,J=271.2 Hz),123.04,116.33,113.38(q,J=33.1 Hz),74.94,40.42,27.64,25.84.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.66.HRMS(ESI):m/z C20H20F3N2O2[M+H]+の計算値377.1477、実測値:377.1491。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:99.6~100.7℃。
【0145】
17、 3-(4,4-ジフルオロ-3-メチルピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。4,4-ジフルオロ-3-メチルピペリジン塩酸塩を用いて一般手順Bによって合成した。17(ジアステレオマーのラセミ混合物、合計4つの化合物)を白色固体として収率71%で単離した(1.38mmol、0.586g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.63-7.45(m,2H),7.33(d,J=8.2 Hz,2H),7.23-7.11(m,1H),6.77(d,J=8.4 Hz,2H),2.84-2.60(m,2H),2.60-2.48(m,1H),2.28(q,J=11.4 Hz,1H),2.19-1.75(m,3H),1.06-0.77(m,3H).13C NMR(CD3OD、126MHz)δ:179.95/179.90(2シグナル-ジアステレオマー)、158.93、140.06(m)、133.35/133.30(2シグナル-ジアステレオマー)、130.48、130.05/130.02(2シグナル-ジアステレオマー)、129.52/129.48(2シグナル-ジアステレオマー)、126.51(q,J=4.6Hz)、125.12(q,J=270.9Hz)、123.94/123.90(2シグナル-ジアステレオマー、t,J~247.0Hz)、123.35、116.57、113.62(q,J=33.5Hz)、73.86、51.95(t,J=9.3Hz)、45.37(m)、39.77(m)、34.98(t,J=23.5Hz)、10.51(m)。19F NMR(CD3OD、471MHz)δ:-63.68,-102.29(m)。HRMS(ESI):m/z C21H20F5N2O2[M+H]+の計算値427.1445、実測値:427.1426。HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:109.5~114.5℃(分解)。
【0146】
18、 3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-モルホリノ-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。モルホリンを用いて一般手順Bによって合成した。18を白色固体として収率70%で単離した(0.277mmol、0.1046g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.5 Hz,1H),7.51(d,J=8.1 Hz,1H),7.35(d,J=8.2 Hz,2H),7.20(dd,J=8.1,7.5 Hz,1H),6.76(d,J=8.4 Hz,2H),3.70-3.58(m,4H),2.62-2.50(m,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.78,158.82,140.24(q,J=2.43 Hz),133.15,130.72,129.90,129.38,126.45(q,J=4.47 Hz),125.10(q,J=270.92 Hz),123.26,116.51,113.52(q,J=33.18 Hz),74.20,68.51,48.75.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.67(s).HRMS(ESI):m/z C19H18F3N2O3[M+H]+の計算値379.1270、実測値:379.1273。HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:214.7~215.0℃(分解)。
【0147】
19、3-(アゼパン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。アゼパンを用いて一般手順Bによって合成した。19をオフホワイト色の固体として収率56%で単離した(0.133mmol、0.052g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.57(d,J=7.5 Hz,1H),7.48(d,J=8.1 Hz,1H),7.33(d,J=8.8 Hz,2H),7.18(t,J=7.8 Hz,1H),6.73(d,J=8.8 Hz,2H),2.76-2.45(m,4H),1.79-1.49(m,8H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:181.24,158.66,139.92(q,J=2.1 Hz),134.97,131.95,130.18,129.65,126.08(q,J=4.5 Hz),125.21(q,J=270.7 Hz),123.19,116.28,113.40(q,J=33.2 Hz),75.76,52.23,31.03,27.53.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.68.HRMS(ESI):m/z C21H22F3N2O2[M+H]+の計算値391.1633、実測値:391.1619。HPLCキラル純度(λ:254nm):98%。融点:103.1~104.3℃。
【0148】
20、3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。ピペリジン-4-オールを用いて一般手順Bによって合成した。20をオフホワイト色の固体として収率67%で単離した(0.135mmol、0.053g)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.60-7.41(m,2H),7.31(d,J=8.3 Hz,2H),7.19(t,J=7.8 Hz,1H),6.75(d,J=8.4 Hz,2H),3.60-3.45(m,1H),2.94-2.64(m,2H),2.42-2.21(m,2H),1.85-1.74(m,2H),1.62-1.44(m,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.33,158.72,140.14(q,J=1.5 Hz),133.64,130.64,130.39,129.58,126.26(q,J=4.6 Hz)125.19(q,J=271.3 Hz)123.16,116.41,113.44(q,J=33.2 Hz),74.40,68.91,46.05,35.85.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.67.HRMS(ESI):m/z C20H20F3N2O3[M+H]+の計算値393.1426、実測値:393.1424。HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:143.5℃(分解)。
【0149】
21、3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-(トリフルオロメトキシ)ピペリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。4-(トリフルオロメトキシ)ピペリジンを用いて一般手順Bによって合成した。21をオフホワイト色の固体として収率41%で単離した(0.096mmol、0.0443g)。
1H NMR(CD
3OD,500 MHz)δ:7.55(d,J=7.5 Hz,1H),7.51(d,J=8.0 Hz,1H),7.32(d,J=8.4 Hz,2H),7.20(t,J=7.8 Hz,1H),6.76(d,J=8.8 Hz,2H),4.39-4.24(m,1H),2.87-2.64(m,2H),2.54-2.22(m,2H),2.09-1.90(m,2H),1.85-1.69(m,2H).
13C NMR(CD
3OD,126 MHz)δ:180.10,158.83,140.12(q,J=2.6 Hz),133.46,130.56,130.12,129.54,126.41(q,J=4.5 Hz),126.23(q,J=270.9 Hz),123.30,123.09(q,J=252.6 Hz),116.50,113.55(q,J=33.2 Hz),76.84(m),74.28,45.21,33.37.
19F NMR(CD
3OD,471 MHz)δ:-59.98,-63.69.HRMS(ESI):m/z C
21H
19F
6N
2O
3[M+H]
+の計算値461.1300、実測値:461.1300。HPLCキラル純度(λ:254nm):99%。融点:100.4~101.8℃。
【化13】
【0150】
一般手順C(化合物2、22~26)。14(1.77mmol、0.75g)を充填した火炎乾燥フラスコに、THF(5.9mL)を添加し、0℃に冷却した。TLC(40:60酢酸エチル:ヘキサン)によって観測して出発物質(14)が消費されるまで、ピリジン(5.32mmol、0.42mL)、次いで塩化チオニル(SOCl2、8.85mmol、0.65mL)を添加した;SOCl2添加の約30分後に、約30mLの水を激しく撹拌しながら反応物に添加した。次いで、得られた溶液を酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗油状物をCH2Cl2(25.5mL)に溶解し、所望のアミン塩酸塩(3.55mmol、0.56g)を添加し、続いて炭酸セシウム(Cs2CO3、14.18mmol、5.01g)を添加した。反応物を一晩(約16~18時間)撹拌し、次いで、水(約100mL)に注ぎ入れた。有機物をCH2Cl2で抽出し(3回)、合わせた有機層を1:1ブライン:飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。次いで、得られた粗黄色油状物をTHF(9.3mL)に溶解し、続いてTHF溶液中のTBAF(1M、7.2mL)を添加した。TBAFを添加すると反応物は淡緑色になり、反応物を2時間撹拌した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム(約50mL)に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し(3回)、1:1ブライン:飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO2、典型的なカラム条件:溶出溶媒:2カラム体積にわたって初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサン、次いで10カラム体積にわたって35:65酢酸エチル:ヘキサンへの漸増勾配、続いて2カラム体積にわたって35:65酢酸エチル:ヘキサンの維持、最後に3.5カラム体積にわたって70%酢酸エチル:ヘキサンへの漸増勾配で終了)によって精製した。
【0151】
2,3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの最適化された合成(スキーム3B)。2をオフホワイト色の固体として収率95%で単離した(1.69mmol、0.696g)。すべての特性評価データは、一般手順Bを使用して上記に報告した2と一致する。
【化14】
【0152】
(R)-2、ErSO-DFP、(R)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン及び(S)-2、(S)-3-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンのキラル分離及び単離。2を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用してそのそれぞれのエナンチオマーに分離した。キラル分離により、ニートアセトニトリルからの凍結乾燥後に(R)-2(HPLCの第1のピーク)が白色固体として得られる。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.5 Hz,1H),7.52(d,J=8.0 Hz,1H),7.33(d,J=8.4 Hz,2H),7.24-7.14(m,1H),6.77(d,J=8.4 Hz,2H),2.80-2.51(m,4H),2.02-1.85(m,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.94,158.92,140.09(q,J=2.2 Hz),133.37,130.47,130.05,129.46,126.53(q,J=4.4 Hz),125.12(q,J=271.1 Hz),123.37,123.01(t,J=241.0 Hz),116.58,113.63(q,J=33.2),74.00,45.13(t,J=5.6 Hz),35.70(t,J=22.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-62.97(s),-98.87(bs).HRMS(ESI):m/z C20H18F5N2O2[M+H]+の計算値413.1288、実測値:413.1279。COSY、HSQC、HMBC及びDEPT135によって実施された完全構造解明。X線によって結晶構造を確認した。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:214.1~215.7℃。
【0153】
ニートアセトニトリルからの凍結乾燥後に白色固体として(S)-2(HPLCの第2のピーク)。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.5 Hz,1H),7.52(d,J=7.7 Hz,1H),7.33(d,J=8.7 Hz,2H),7.24-7.15(m,1H),6.77(d,J=9.0 Hz,2H),2.71-2.50(m,4H),2.03-1.76(m,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.93,158.91,140.08(q,J=2.3 Hz),133.36,130.46,130.04,129.45,126.51(q,J=4.5 Hz),125.12(q,J=270.9 Hz),123.36,123.00(t,J=241.0 Hz),116.57,113.62(q,J=33.2 Hz),74.00,45.13(t,J=5.6 Hz),35.71(t,J=22.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-62.97(s),-98.97(bs).HRMS(ESI):m/z C20H18F5N2O2[M+H]+の計算値413.1288、実測値:413.1277。結晶構造:X線分析によって確認。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:198.0~199.1℃。
【0154】
(R)-22、(R)-3-(4-フルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。4-フルオロピペリジン塩酸塩を用いて一般手順Cによって合成した。22をオフホワイト色の固体として収率57%で単離した(0.538mmol、0.212g)。(R)-22を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.76-7.43(m,2H),7.32(d,J=8.6 Hz,2H),7.19(t,J=7.8 Hz,1H),6.75(d,J=9.0 Hz,2H),4.59(dtt,J=48.6,6.9,3.5 Hz,1H),2.80-2.59(m,2H),2.52-2.40(m,2H),2.00-1.63(m,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.22,158.77,140.16(q,J=2.2 Hz),133.49,130.62,130.22,129.57,126.35(q,J=4.6 Hz),125.16(q,J=271.0 Hz),123.22,116.45,113.50(q,J=33.2 Hz),89.59(d,J=170.5 Hz),74.43,44.56(dd,J=17.4,6.5 Hz),33.25(dd,J=19.5,6.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.68,-182.68(bs).HRMS(ESI):m/z C20H19F4N2O2[M+H]+の計算値395.1383、実測値:395.1368。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:100.9℃(分解)。
【0155】
(R)-23、(R)-3-(3,3-ジフルオロピペリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3,3-ジフルオロピペリジン塩酸塩を用いて一般手順Cによって合成した。23をオフホワイト色の固体として収率58%で単離した(0.206mmol、0.085g)。(R)-23を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.55-7.45(m,2H),7.35(d,J=8.7 Hz,2H),7.18(t,J=7.8 Hz,1H),6.78(d,J=8.8 Hz,2H),2.87-2.74(m,2H),2.56-2.40(m,2H),1.98-1.79(m,2H),1.77-1.62(m,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.60,158.89,139.99(q,J=2.4 Hz),133.66,130.29,129.72,129.56,126.50(q,J=4.6 Hz),125.10(q,J=271.0 Hz),123.48,121.53(t,241.0 Hz),116.60,113.61(q,J=33.3 Hz),73.66,53.91(t,J=29.2 Hz),47.71,33.60(t,J=23.3 Hz),23.43(t,J=23.4 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.71,-102.32(m).HRMS(ESI):m/z C20H16F5N2O2[M-H]-の計算値411.1132、実測値:411.1119。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:96.3~100.3℃(分解)。
【0156】
(R)-24、(R)-3-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3,3-ジフルオロピロリジン塩酸塩を用いて一般手順Cによって合成した。24を白色固体として収率66%で単離した(0.231mmol、0.092g)。(R)-24を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.56(d,J=7.5 Hz,1H),7.51(d,J=8.1 Hz,1H),7.36(d,J=8.9 Hz,2H),7.19(t,J=7.8 Hz,1H),6.78(d,J=8.8 Hz,2H),3.13(ddd,J=15.1,12.6,10.6 Hz,1H),2.96(dt,J=14.4,11.1 Hz,1H),2.86(dt,J=9.1,6.7 Hz,1H),2.76(dt,J=9.3,7.2 Hz,1H),2.28-2.14(m,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:179.63,158.87,139.78(q,J=2.1 Hz),133.50,130.36(t,J=246.9 Hz),130.35,129.64,129.36,126.62(q,J=4.5 Hz),125.08(q,J=270.9 Hz),123.51,116.57,113.64(q,J=33.2 Hz),70.90,56.33(t,J=30.5 Hz),46.61(t,J=3.6 Hz),36.15(t,J=24.5 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.71,-95.78(p,J=14.2 Hz),-95.93(qd,J=14.9,11.25 Hz).HRMS(ESI):m/z C19H14F5N2O2[M-H]-の計算値397.0975、実測値:397.0974。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:98.7℃(分解)。
【0157】
(R)-25、(R)-3-(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3,3-ジフルオロアゼチジン塩酸塩を用いて一般手順Cによって合成した。25を白色固体として収率37%で単離した(1.31mmol、0.502g)。(R)-25を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.49(dd,J=11.6,7.8 Hz,2H),7.35(d,J=8.7 Hz,2H),7.14(t,J=7.8 Hz,1H),6.78(d,J=8.7 Hz,2H),3.93(td,J=12.5,9.6 Hz,2H),3.52(td,J=12.4,9.6 Hz,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:180.00,158.91,139.80(q,J=2.0 Hz),133.67,130.09,129.36,129.18,126.84(q,J=4.5 Hz),125.04(q,J=270.9 Hz),123.75,117.43(t,J=272.7 Hz),116.68,113.70(q,J=33.3 Hz),72.45,60.01(t,J=24.5 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.64,-102.64(p,J=12.4 Hz).HRMS(ESI):m/z C18H12F5N2O2[M-H]-の計算値383.0819、実測値:383.0822。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:79.0~83.9℃。
【0158】
(R)-26、(R)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(3,3,4,4-テトラフルオロピロリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンの合成。3,3,4,4-テトラフルオロピロリジン塩酸塩を用いて一般手順Cによって合成した。26を白色固体として収率86%で単離した(0.813mmol、0.353g)。(R)-26を、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.60(d,J=7.6 Hz,1H),7.54(d,J=8.1 Hz,1H),7.38(d,J=8.7 Hz,2H),7.22(t,J=7.8 Hz,1H),6.82(d,J=8.8 Hz,2H),3.45-3.24(m,2H,overlap with CD3OD),3.12(q,J=12.5 Hz,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:178.73,159.27,139.73(q,J=2.1 Hz),132.52,130.19,129.33,128.43,127.12(q,J=4.5 Hz),124.98(q,J=271.0 Hz),123.86,119.90(tt,J=260.5,23.5 Hz),116.87,113.98(q,J=33.4 Hz),70.16,54.26(t,J=27.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.72,-120.61(t,J=13.2 Hz).HRMS(ESI):m/z C19H12F7N2O2[M-H]-の計算値433.0787、実測値:433.0788。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:112.3~115.3℃。
【0159】
(S)-26、(S)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(3,3,4,4-テトラフルオロピロリジン-1-イル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンを、分取キラルHPLC分離(Lux(登録商標)5μMセルロース-1、LCカラム、250×21.2mm、AXIA(商標)充填、アイソクラティック:10% i-PrOH/ヘキサン)を使用して単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.60(d,J=7.5 Hz,1H),7.54(d,J=8.0 Hz,1H),7.38(d,J=8.6 Hz,2H),7.22(t,J=7.8 Hz,1H),6.82(d,J=8.6 Hz,2H),3.58-3.25(m,2H,overlap with CD3OD),3.12(q,J=12.5 Hz,2H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:178.73,159.28,139.74(q,J=2.2 Hz),132.52,130.20,129.33,128.43,127.13(q,J=4.5 Hz),124.98(q,J=271.0 Hz),123.87,119.91(tt,J=260.5,23.6 Hz),116.87,113.98(q,J=33.3 Hz),70.16,54.26(t,J=27.9 Hz).19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.73,-120.62(t,13.2 Hz).HRMS(ESI):m/z C19H12F7N2O2[M-H]-の計算値433.0787、実測値:433.0786。HPLCキラル純度(λ:254nm):>99%。融点:99.0~101.6℃。
【0160】
27、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-7-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン。丸底フラスコに化合物2(0.243mmol、0.10g)を充填し、フェノール(0.85mmol、0.080g)をジクロロメタン(0.5mL)に溶解した。次いで、反応混合物を氷浴に入れ、次いで、トリフル酸(TfOH、0.09mL)を滴下した。警告:トリフル酸は、多くの一般的なプラスチック、特にシリンジのプランジャを溶解するため、金属針又はガラスシリンジを使用することが推奨される。プラスチックシリンジを使用する場合、シリンジのプランジャとの接触を避ける。氷を融解させながら、反応物を6時間撹拌した。次いで、反応混合物を、氷を満たした飽和重炭酸ナトリウム(水性、約10mL)に注ぎ入れ、水溶液を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。次いで、得られた油状物をカラムクロマトグラフィ(SiO2、溶出溶媒:初期混合物0:100酢酸エチル:ヘキサン、35:65酢酸エチル:ヘキサンへの漸増勾配(15カラム体積)、続いて70:30酢酸エチル:ヘキサン(7カラム体積)、次いで100:0酢酸エチル:ヘキサン(2カラム体積)への増加によって精製した。27を白色固体(0.0480mmol、0.0185g)として単離し、2を白色固体(0.0876mmol、0.0361g)として単離した。1H NMR(CD3OD,500 MHz)δ:7.49(d,J=8.1 Hz,1H),7.39(d,J=7.6 Hz,1H),7.17(t,J=7.9 Hz,1H),7.01(d,J=8.6 Hz,4H),6.72(d,J=8.7 Hz,4H).13C NMR(CD3OD,126 MHz)δ:182.44,158.04,139.71(q,J=2.1 Hz),138.04,133.45,130.98,130.51,125.65(q,J=4.6 Hz),125.24(q,J=271.2 Hz),123.30,116.24,113.51(q,J=33.2 Hz),62.14.19F NMR(CD3OD,471 MHz)δ:-63.65.HRMS(ESI):m/z C21H15F3NO3[M+H]+の計算値386.1004、実測値:386.1007。
【0161】
例3.医薬剤形
以下の製剤は、本明細書に記載される式の化合物、本明細書に具体的に開示される化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(以下「化合物X」と呼ぶ)の治療的又は予防的投与のために使用し得る代表的な医薬剤形を例示する。化合物Xの具体例は、ErSO-DFPである。
(i)錠剤1 mg/錠
「化合物X」 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
微結晶セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0
(ii)錠剤2 mg/錠
「化合物X」 20.0
微結晶セルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0
(iii)カプセル mg/カプセル
「化合物X」 10.0
コロイド状二酸化ケイ素 1.5
ラクトース 465.5
アルファ化デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0
(iv)注射剤1(1mg/mL) mg/mL
「化合物X」(遊離酸形態) 1.0
二塩基性リン酸ナトリウム 12.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0N水酸化ナトリウム溶液 適量
(pHを7.0~7.5に調整)
注射用水 適量を添加して1mLにする
(v)注射剤2(10mg/mL) mg/mL
「化合物X」(遊離酸形態) 10.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.3
二塩基性リン酸ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1N水酸化ナトリウム溶液 適量
(pHを7.0~7.5に調整)
注射用水 適量を添加して1mLにする
(vi)エアロゾル mg/缶
「化合物X」 20
オレイン酸 10
トリクロロモノフルオロメタン 5,000
ジクロロジフルオロメタン 10,000
ジクロロテトラフルオロエタン 5,000
(vii)局所ゲル1 重量%
「化合物X」 5%
カルボマー934 1.25%
トリエタノールアミン 適量
(pHを5~7に調整)
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
(viii)局所ゲル2 重量%
「化合物X」 5%
メチルセルロース 2%
メチルパラベン 0.2%
プロピルパラベン 0.02%
精製水 100gにするための適量
(ix)局所軟膏 重量%
「化合物X」 5%
プロピレングリコール 1%
無水軟膏基剤 40%
ポリソルベート80 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
(x)局所クリーム1 重量%
「化合物X」 5%
白色蜜ろう 10%
流動パラフィン 30%
ベンジルアルコール 5%
精製水 100gにするための適量
(xi)局所クリーム2 重量%
「化合物X」 5%
ステアリン酸 10%
モノステアリン酸グリセリル 3%
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 3%
ソルビトール 5%
パルミチン酸イソプロピル 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
【0162】
これらの製剤は、製薬分野で周知の従来の手順によって調製し得る。上記の医薬組成物は、異なる量及び種類の活性成分「化合物X」に対応するために、周知の製薬技術に従って変化させ得ることが理解されるであろう。エアロゾル製剤(vi)は、標準的な定量エアロゾルディスペンサと組み合わせて使用し得る。さらに、特定の成分及び比率は例示を目的とするものである。成分は、適切な等価物に交換してもよく、比率は、目的の剤形の所望の特性に従って変化させてもよい。
【0163】
開示された実施形態及び例を参照して特定の実施形態を上記で説明したが、そのような実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。以下の特許請求の範囲で定義される本発明のより広い態様において本発明から逸脱することなく、当業者に従って変更及び修正を行うことができる。
【0164】
すべての刊行物、特許、及び特許文献は、参照により個別に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示と矛盾するいかなる制限も、そこから理解されるべきではない。本発明は、様々な特定の好ましい実施形態及び技術を参照して説明されている。しかしながら、本発明の精神及び範囲内に留まりながら、多くの変形及び修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】