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  • 特表-肉類似組成物及びその調製の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】肉類似組成物及びその調製の方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20231027BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20231027BHJP
   A23J 3/28 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23J3/14
A23J3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524149
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 SE2021051057
(87)【国際公開番号】W WO2022086422
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】2030316-0
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420791
【氏名又は名称】エーエーケー エービー (ピーユービーエル)
【氏名又は名称原語表記】AAK AB (publ)
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ドゥムリス イェルーン
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AD20
4B042AD21
4B042AD22
4B042AD36
4B042AK02
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK07
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP18
(57)【要約】
本発明は、水中油型の構造化されたエマルション及び植物性タンパク質を含むミートアナログ組成物、該ミートアナログ組成物を調製する方法、及び水中油型の構造化されたエマルションの、ミートアナログ組成物中での使用に関する。ポリヒドロキシ化合物を含みうる構造化されたエマルションは、秩序あるラメラゲルネットワークにより特徴付けられており、かつ調理時にミートアナログ品中の水分含有量及び脂肪含有量を保持するのに有用であり、飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の使用を不要にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型の構造化されたエマルション及び植物性タンパク質を含むミートアナログ組成物であって、前記構造化されたエマルションが、秩序あるラメラゲルネットワークにより特徴付けられる、前記ミートアナログ組成物。
【請求項2】
5~30wt.%の植物性タンパク質、好ましくは15~25重量%の植物性タンパク質を含む、請求項1に記載のミートアナログ組成物。
【請求項3】
35~70wt.%の水、好ましくは40~60wt.%の水を含む、請求項1又は2に記載のミートアナログ組成物。
【請求項4】
少なくとも0.01wt.%、好ましくは0.05~15wt.%の炭水化物、より好ましくは5~10wt.%の炭水化物を含む、請求項1~3のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項5】
炭水化物が、デンプン、穀粉、食用繊維、又はこれらの組合せを含む、請求項4に記載のミートアナログ組成物。
【請求項6】
植物性タンパク質が、藻類タンパク質、ブラックビーンタンパク質、キャノーラコムギタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ソラマメタンパク質、レンズマメタンパク質、ハウチワマメタンパク質、リョクトウタンパク質、エンバクタンパク質、エンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質、コメタンパク質、ダイズタンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、コムギタンパク質、ホワイトビーンタンパク質、及びこれらのタンパク質単離物又は濃縮物から選択される、請求項1~5のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項7】
i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン及びアルギネートから好ましくは選択される、多糖類及び/又は変性多糖類、
ii)親水コロイド、並びに
iii)キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム及びカラヤガムから好ましくは選択される、ガム、
のうちの1種又は2種以上をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項8】
構造化されたエマルションが、非イオン性乳化剤を含む、請求項1~7のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項9】
非イオン性乳化剤が、モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びこれらの組合せから選択され、並びに好ましくは構造化されたエマルションが、少なくとも1種のモノグリセリドを含む、請求項8に記載のミートアナログ組成物。
【請求項10】
構造化されたエマルションが、モノグリセリド及びジグリセリドの酸エステル、脂肪酸及びこれらの金属塩、アニオン性ラクチル化脂肪酸塩、並びにこれらの組合せから選択されるイオン性乳化剤を含む、請求項1~9のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項11】
イオン性乳化剤が、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、及びこれらの組合せから選択される、請求項10に記載のミートアナログ組成物。
【請求項12】
構造化されたエマルションが、非イオン性乳化剤及びイオン性乳化剤を含む、請求項1~11のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項13】
構造化されたエマルションが、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム及びステアロイル乳酸ナトリウムから選択されるイオン性乳化剤、並びにモノグリセリドを含む非イオン性乳化剤を含む、請求項12に記載のミートアナログ組成物。
【請求項14】
構造化されたエマルションが、任意でビシナルヒドロキシ基を有する、500g/mol以下の分子量を有するポリヒドロキシ化合物を含む、請求項1~13のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項15】
構造化されたエマルションのポリヒドロキシ化合物が、糖、糖アルコール、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類から選択され、好ましくは構造化されたエマルションのポリヒドロキシ化合物が、糖及び糖アルコールから選択される、請求項14に記載のミートアナログ組成物。
【請求項16】
糖が、グルコース、フルクトース、キシロース、リボース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、アルロース、タガトース、及びこれらの組合せから選択され;糖アルコールが、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、及びこれらの組合せから選択され;二糖類が、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、イソマルツロース、コジビオース、ニゲロース、セロビオース、ゲンチオビオース、ソフォロース、及びこれらの組合せから選択され;オリゴ糖類が、オリゴフルクトース、ガラクトオリゴ糖類、ラフィノース、及びこれらの組合せから選択され;多糖類が、デキストリンから選択される、請求項15に記載のミートアナログ組成物。
【請求項17】
構造化されたエマルションが、アミノ酸を含む、請求項1~16のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項18】
構造化されたエマルションの油が、アサイー油、アーモンド油、ビーチ油、カシュー油、ココナッツ油、コルザ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、グレープフルーツ種子油、グレープ種子油、ヘーゼルナッツ油、アサ油、レモン油、マカダミア油、マスタード油、オリーブ油、オレンジ油、ピーナッツ油、パーム油、パーム核油、ピーカン油、パインナッツ油、ピスタチオ油、ケシ種子油、菜種油(例えば高オレイン酸菜種油)、米糠油、ベニバナ油(例えば高オレイン酸ベニバナ油)、ゴマ油、シア脂及びその画分(例えばシアオレイン)、ダイズ油(例えば高オレイン酸ダイズ油)、ヒマワリ油(例えば高オレイン酸ヒマワリ油)、ウォルナッツ油及びコムギ胚芽油から選択される植物油を含み、好ましくは構造化されたエマルションが、パーム油及び/又はパーム核油を含まない、請求項1~17のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項19】
構造化されたエマルションが、ワックスを含む、請求項1~18のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項20】
乳、液体香味料、アルコール、保湿剤、ハチミツ、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸性調節剤、液体酵素、乳粉末、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖置換物、デンプン、塩、スパイス、繊維、芳香成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存剤、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、及び酸性調節剤のうちの1種又は2種以上をさらに含む、請求項1~19のいずれかに記載のミートアナログ組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかによる組成物を使用して調製された、ミートアナログ食品。
【請求項22】
バーガー、ソーセージ、ナゲット、ミートボール又はミートローフの形態、好ましくはバーガーの形態を有する、ミンチされた又は粉砕されたミートアナログ品である、請求項21に記載のミートアナログ食品。
【請求項23】
調理済み又は部分調理済みである、請求項21又は22に記載のミートアナログ食品。
【請求項24】
ミートアナログ組成物を調製する方法であって、植物性タンパク質を、秩序あるラメラゲルネットワークを有することにより特徴付けられる水中油型の構造化されたエマルションと混合することによって、ミートアナログ組成物を形成するステップを含む、前記方法。
【請求項25】
植物性タンパク質を含む乾燥相を準備して前記乾燥相を一定量の水と混合することによって植物性タンパク質を調製するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
i)乳化剤成分を含む油相、及び水相を準備するステップと、ii)前記油相と前記水相とを別々に加熱して、加熱済み油相と加熱済み水相とを形成するステップと、iii)前記加熱済み油相を前記加熱済み水相に添加して混合物を形成するステップと、iv)前記混合物を冷却して、水中油型の構造化されたエマルションを形成するステップとによって、前記水中油型の構造化されたエマルションを調製することをさらに含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
水相が、任意でビシナルヒドロキシ基を有する、500g/mol以下の分子量を有するポリヒドロキシ化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
水中油型の構造化されたエマルションが、前記構造化されたエマルションの重量に基づいて、
i)1~8wt.%の乳化剤と、
ii)12~40wt.%の水と、
iii)25~70wt.%の油と
を含む、請求項24~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
水中油型の構造化されたエマルションが、前記構造化されたエマルションの重量に基づいて、
iv)任意でビシナルヒドロキシ基を有する、500g/mol以下の分子量を有する1~55wt.%のポリヒドロキシ化合物
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
乳化剤が、2~7wt.%の量で、好ましくは3~5wt.%の量で存在する、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
油の水に対する重量比が、1.0~5.0、好ましくは2.0~4.0である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項32】
ポリヒドロキシ化合物が、10~40wt.%、好ましくは15~35wt.%、より好ましくは16~30wt.%、最も好ましくは18~28wt.%の量で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
水中油型の構造化されたエマルションが、前記構造化されたエマルションの重量に基づいて、0.01~15%のワックスを含む、請求項28~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
構造化されたエマルションが、動的光散乱法(DLS)により測定して、0.1~3.0μm、好ましくは0.1~1.5μmの等価表面積平均径を有する油滴を含む、請求項24~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
組成物を調理すること又は部分調理することをさらに含み、好ましくは調理することが、焼くこと、揚げること及び/又はマイクロ波調理することを含む、請求項24~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
請求項24~35のいずれかに記載の方法によって調製可能な又は調製された、ミートアナログ組成物。
【請求項37】
ミートアナログ組成物の成分としての、好ましくは調理中のミートアナログ組成物からの油及び/又は水の損失を低減するための、請求項1、8~19、及び28~34のいずれかに記載の構造化されたエマルションの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型の構造化されたエマルション(oil-in-water structured emulsion)及び植物性タンパク質を含む肉類似(meat-analogue)組成物、該肉類似組成物を調製する方法、及び水中油型の構造化されたエマルションの、肉類似組成物中での使用、特に調理時に肉類似品中の水分含有量及び脂肪含有量を保持してこのような組成物中の飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の使用を不要にするための使用に関する。構造化されたエマルションはまた、ポリヒドロキシ化合物を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
健康的で持続可能な供給源の食品を食べたいという消費者の増加する欲求に起因して、かつ消費者の肉取り込み量を一般に低減したいという欲求に起因して、植物ベースの食物への増加する要望が存在する。このことが、肉類似品、肉を含まない、ベジタリアン食品又はビーガン食品の開発へと至らせ、これらの食品は、テクスチャ、味及び/又は外見等の、肉又は肉ベースの製品の一定の品質を模倣している。
【0003】
多くの異なるタイプの肉類似品、例えば豆腐、レンズマメ及びマメをベースとするものが入手可能であり、それらのうちのいくつかは、調理中のシズル感及び褐変、肉汁、色、テクスチャ及び味の点で完全に肉を模倣することを目指している。こうした肉類似品の1つの例が、植物ベースのバーガーである。
【0004】
既知の肉類似品の典型的な組成は、50~60%の水、10~25%のタンパク質(例えばダイズ、エンドウマメ、ジャガイモ及びコムギ)、5~20%の脂肪(例えばココナツ、パーム、ヒマワリ、菜種)、0~10%の炭水化物、並びに香味料及び着色剤である。しかしながら、これらの肉類似品の調理プロセス中に、水及び油のかなりの量は失われて、魅力的でないテクスチャを有する乾燥した食品をもたらすことが多い。所望の肉類似品を生産するために、最終製品が、魅力的な味、テクスチャ及び口当たりを有することが重要である。特に、「多汁性の(より乾燥していない)」テクスチャを有する食品を実現させるために、油及び水を保持していることが望ましい。
【0005】
水分の保持は、製品中の水のゲル化によって助けられ得る。これは、従来、卵白タンパク質を使用して達成されてきた。しかしながら、これらはビーガン食物には好適でない。この熱-ゲル化の機能性を示す親水コロイドは、セルロース生成物のメチルセルロース(MC,methylcellulose)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC,hydroxypropyl methylcellulose)である。MCは、ほとんど常に、卵白に対するビーガン代替品として使用されている。
【0006】
MCを使用するエマルションの例は米国特許第2005/0003071号明細書で付与されており、これは、水、油、メチルセルロース、野菜タンパク質、変性デンプン、変性グルテン及び香味料を含有するエマルションを含む植物ベースの肉類似品を作製する方法を記載している。このエマルションは、調理中の重量低下を減らすために、植物ベースのパテの最終組成物に添加される。
【0007】
しかしながら、MCと卵白との両方が、水分を結合させるのみであり、調理時の油の損失は防止しない。その上、MCを含有する多くの市場製品は、調理する/揚げる間にかなりの量の水分を依然として失う。国際公開第2017/172718号パンフレットは、調理中の凝集、硬度、多汁性、凍結融解安定性、テクスチャ、縮み抵抗性、又はボイルアウトコントロールから選択される、食物組成物の性質のうちの1つ又は2つ以上を改善する方法を記載している。これは、おから若しくはホールダイズ又はこれらの混合物と、繊維含有ペクチン生成物又はペクチンとの組合せを組成物中に組み入れることに関与している。
【0008】
先行技術において提案された解決策は、水分を適正に結合させるために、タンパク質と親水コロイドと変性デンプンとの複合的な組合せの使用に関与することが多いが、これらは、調理中の油の損失の問題に取り組み得ない。油及び水分の損失の防止を目指したいくつかの組成物において、得られた肉類似製品が、水分及び油をほとんど失っていないにもかかわらず多汁性でなかったこともまた見出された。理論に拘泥するわけではないが、このような組成物中では、水分と油との結合が強すぎて、最終製品における多汁性の欠如をもたらすと考えられる。
【0009】
加えて、MC及び/又はタンパク質に基づくエマルションは、食品中に組み入れられる前にゲル化された挙動を呈することが多く、該エマルションを取り扱うことを難しくする。これは、これらのエマルションを所望の量で食品中に組み入れることを難しくし得る。
【0010】
さらに、飽和脂肪酸中、高い油及び脂肪が、所望のテクスチャ及び構造を食品に授けるのに使用されている。しかしながら、肉類似組成物中でのそれらの使用は、油含有物を結合させるには不十分であって、望ましくない粘稠性に帰着することがあり得る。加えて、飽和脂肪酸の健康への負の影響への理解が高まるにつれて、食品中にそれらが行き渡ることの低減がますます望まれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第2005/0003071号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/172718号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
肉類似食品中の所望のテクスチャ及び粘稠性を達成し、かつ調理時の水分及び脂肪の損失を回避する、改善した方法への必要性が残る。好ましくは、このような方法はまた、飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の使用を減らし又は除き、安定性及び貯蔵寿命を増加させる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
肉類似組成物の調理に伴う油及び水分の損失が、水中油型の構造化されたエマルションを肉類似組成物中に組み入れることによって低減され得ることが今や見出された。さらに、肉類似組成物中のこのようなエマルションの存在が、そこから得られ得る調理済み食品中の所望のテクスチャ及び粘稠性をもたらすことが、驚くべきことに見出された。
【0014】
そのため、第1の態様では、本発明は、水中油型の構造化されたエマルション及び植物性タンパク質を含む肉類似組成物であって、前記構造化されたエマルションは、秩序ある(ordered)ラメラゲルネットワークにより特徴付けられる、肉類似組成物を提供する。いくつかの実施形態では、この構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物をさらに含む。
【0015】
第2の態様では、本発明は、肉類似組成物を調製する方法であって、植物性タンパク質を、秩序あるラメラゲルネットワークを有することにより特徴付けられる水中油型の構造化されたエマルションと混合することによって肉類似組成物を形成するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、該方法は、植物性タンパク質を含む乾燥相を準備して該乾燥相を一定量の水と混合することによって植物性タンパク質を調製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、水中油型の構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている方法によって調製可能な又は調製された肉類似組成物を提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、肉類似組成物の成分として本明細書で定義されている構造化されたエマルションの、例としては、調理中の肉類似組成物からの油及び/又は水の損失を低減させるための、使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によらないもの(比較例1、上)と、本発明によるもの(実施例2、下)との両方の、揚げた後のバーガーの断面の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
肉類似組成物
本発明の肉類似組成物は、特に、従来、調理中の油及び/又は水分の損失によって妨害されてきた「多汁性」の点で、既知の組成物を超える改善した性質を呈することが見出された。本発明の肉類似組成物は、揚げる/調理する間、重量損失及び望まれない縮みを回避する。加えて、該組成物は、一旦調理されると多汁性のテクスチャ及び所望の粘稠性を呈し、かつ、また、所望の弾力性、凝集性、硬さ、粘着性、歯ごたえ、レジリエンス及び付着性を伴って調製され得る。その上、本発明の肉類似組成物は、低レベルの飽和脂肪酸、及びまた低含有量の汚染物質を伴って調製され得、例えば、既知の肉類似組成物中で使用されることが多いココナツ油の使用に典型的に伴う、鉱油飽和炭化水素及び鉱油芳香族炭化水素である。
【0020】
本発明の肉類似組成物は、植物性タンパク質を含む。植物性タンパク質は、好適には、組成物の2~50wt.%の量で存在してもよい。好ましい実施形態では、植物性タンパク質は、組成物の5~30wt.%、より好ましくは15~25wt.%の量で存在する。
【0021】
植物性タンパク質は、植物から得られる又は植物に由来するタンパク質の源である。植物性タンパク質は、任意の好適な植物性タンパク質であってもよく、かつ植物性タンパク質の混合物を含んでもよく、及び/又はタンパク質単離物又は濃縮物を含んでもよい。好適な植物性タンパク質の例には、藻類(algae)タンパク質、ブラックビーン(black bean)タンパク質、キャノーラコムギ(canola wheat)タンパク質、ヒヨコマメ(chickpea)タンパク質、ソラマメ(fava)タンパク質、レンズマメ(lentil)タンパク質、ハウチワマメ(lupin bean)タンパク質、リョクトウ(mung bean)タンパク質、エンバク(oat)タンパク質、エンドウマメ(pea)タンパク質、ジャガイモ(potato)タンパク質、コメ(rice)タンパク質、ダイズ(soy)タンパク質、ヒマワリ種子(sunflower seed)タンパク質、コムギ(wheat)タンパク質、ホワイトビーン(white bean)タンパク質、及びこれらのタンパク質単離物又は濃縮物が挙げられる。好ましくは、植物性タンパク質は、植物性組織化タンパク質(TVP,textured vegetable proteins)を含む。TVPは、抽出されたタンパク質であり、これは、乾燥又は湿潤(すなわち水和された)のいずれかであってもよい。TVPは広く入手可能であり、かつ上に挙げた植物源、例えばダイズの粉又は濃縮物から作製され得る。乾燥形態において、TVPは、最大で約70wt.%のタンパク質、典型的には約60~70wt.%のタンパク質を含むことができ、かつ水和されているとき、典型的には約10~20wt.%のタンパク質を含む。典型的には、水和されているとき、TVPは、最大で3倍から4倍のそれらの水中乾燥重量を含有し得る。
【0022】
肉類似組成物の調製において使用される植物性タンパク質は、乾燥(本明細書では「乾燥相」とも称される)又は湿潤のいずれかであってもよい。そのため、実施形態では、植物性タンパク質は、成分の乾燥ミックス中に含まれてよく、これは、タンパク質に加えて、炭水化物、繊維及び/又は親水コロイド等の、肉類似組成物中の包含が意図された追加の成分を含んでもよい。植物性タンパク質が乾燥している場合、それは、肉類似組成物の形成の前に及び/又は形成の間に水和され得る。植物性タンパク質に関連して使用される用語「乾燥」、及び本明細書で使用される「乾燥相」は、植物性タンパク質を含む相が、5wt.%未満の水、好ましくは2wt.%未満の水、より好ましくは1wt.%未満の水を含むこと、さらにより好ましくはそれが水を実質的に含まないことを意味することが意図される。他の好ましい実施形態では、乾燥相のaは、0.90以下、より好ましくは0.80未満である。植物性タンパク質を含む乾燥相は、典型的には、貯蔵寿命を延長させるよう、可能な限り微生物の増殖を減らすために実質的に脱水された状態において付与される。
【0023】
肉類似組成物は、炭水化物を含んでもよい。炭水化物は、例えばデンプン、穀粉、食物繊維、又はこれらの組合せを含む、任意の食用形態の炭水化物であってもよい。炭水化物は、好適には、組成物のうちの少なくとも0.01wt.%、好ましくは少なくとも0.05wt.%、より好ましくは少なくとも1wt.%、最も好ましくは少なくとも5wt.%の量で存在する。炭水化物は、好適には、組成物のうちの最大で20wt.%、好ましくは最大で15wt.%、より好ましくは最大で12wt.%、最も好ましくは最大で10wt.%の量で存在する。実施形態では、炭水化物は、組成物のうちの少なくとも0.01wt.%、好ましくは0.05~15wt.%、より好ましくは5~10wt.%の量で存在する。
【0024】
肉類似組成物は水を含み、これは、組成物の構造化されたエマルション成分に由来してもよく、かつ組成物の調製において別々に添加される水の付加的な源に由来し得る。水の量は、特に限定されず、かつ当業者が認めることになるように、肉類似組成物の意図された粘稠性に応じて多様となる。好適には、肉類似組成物は、35~70wt.%の水、好ましくは40~65wt.%の水を含んでもよい。疑義を避けるために、組成物についての水含有量への参照は、組成物の構造化されたエマルション成分中に含有される水を含む。
【0025】
肉類似組成物は、以下:i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン、及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン及びアルギネートから好ましくは選択される多糖類及び/又は変性多糖類、ii)親水コロイド、並びにiii)キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム及びカラヤガムから好ましくは選択されるガム、のうちの1種又は2種以上をさらに含みうる。好ましい実施形態では、肉類似組成物は、多糖類及び/又は変性多糖類を含まない又は実質的に含まない。
【0026】
肉類似組成物は、好ましくは500g/mol以下の分子量を有する、ポリヒドロキシ化合物をさらに含んでもよい。好ましい実施形態では、このポリヒドロキシ化合物は、構造化されたエマルションの一部を形成する又はそうでなければ構造化されたエマルションを伴うが、この化合物は、組成物中のどこかに代替的に又は追加で存在し得ると想像される。ポリヒドロキシ化合物は、以下にさらに詳細に検討される。
【0027】
本発明の肉類似組成物は、感覚受容の性質、貯蔵の性質及び他の性質を変更するのに使用される1種又は2種以上の添加剤をさらに含んでもよく、それらの例には、乳、液体香味料、アルコール、保湿剤、ハチミツ、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸性調節剤、液体酵素、乳粉末、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖置換物、デンプン、塩、スパイス、繊維、芳香成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存剤、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤及び酸性調節剤が挙げられる。
【0028】
アミノ酸は、本発明の肉類似組成物にとって好ましい添加剤であり、その理由は、それらが、メイラード反応、加熱の際のアミノ酸と糖との間の化学反応からもたらされる非酵素的褐変の形態に寄与することが知られているからである。これは、調理済み食物の芳香の発現において用いられ、この反応は、肉類似組成物中で、香辛性の肉様芳香を創製することによって肉の味を複製するのに用いられ得る。
【0029】
構造化されたエマルション
本明細書で使用される用語「構造化されたエマルション」は、秩序あるラメラゲルネットワークの形態にあるメソ相を呈する水中油型エマルションを指すと意図される。構造化されたエマルションのアーキテクチャは、組成物が、固体又は半固体であると考えられ得ることを意味する。構造化エマルションは有利な安定性を呈し、これは、構造化されたエマルションが、広範囲の温度、例えば最大で100℃、110℃、及びさらには最大で125℃の温度にわたり固体又は半固体として存在し得ることを意味する。
【0030】
例では、構造化されたエマルションは、以下を有する:i)貯蔵係数G’、これは、その損失係数G’’よりも大きく、そのパラメータは、粘弾性を規定するベクトル図の一部として典型的には評価される複合的な剪断係数G(Pa)及び相-シフト角度δから誘導される、並びにii)tan δ = G’’/G’ < 1。これらのパラメータは、時間依存粘弾性挙動を(例えば、一定の力学的-機械的条件下、剪断を用いて実施される振動試験を用いて)評価するための、又は温度依存粘弾性挙動を(例えば、構造化されたエマルションを、好ましくは貯蔵係数G’が1~5Hzの振動数範囲にわたり一定であるところの振動数掃引に暴露することによって)評価するための、既知の方法によって容易に決定され得る。当業者であれば、貯蔵係数及び損失係数を測定するのに用いられ得るレオメータ器具、例としてはAnton Paar社製のレオメータ(例えばMCR300)を把握している。
【0031】
本発明における使用に好適な構造化されたエマルションはまた、国際公開第2005/107489号パンフレットに開示されているものを含み、これは、構造化された油相と水相とを含む細胞固体マトリックス、及びそれらの調製について記載しており、かつ国際公開第2014/043778号パンフレットに開示されているものを含み、これは、ワックス及び界面活性剤を含む水中油型の構造化されたエマルションを記載している。
【0032】
水中油型の構造化されたエマルションは、1種又は2種以上の非イオン性乳化剤及びイオン性乳化剤を含んでもよく、かつ、好ましい実施形態では、ポリヒドロキシ化合物をさらに含みうる。そのため、本発明のいくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、構造化されたエマルションの重量に基づいて、
i)1~8wt.%の乳化剤と、
ii)12~40wt.%の水と、
iii)25~70wt.%の油と
を含む。
【0033】
好ましい実施形態では、水中油型の構造化されたエマルションは、構造化されたエマルションの重量に基づいて、
iv)1~55wt.%のポリヒドロキシ化合物
をさらに含んでもよい。
【0034】
好ましくは、ポリヒドロキシ化合物は、500g/mol以下の分子量を有する。ポリヒドロキシ化合物は、ビシナルヒドロキシル基を有していてもよい。
【0035】
構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物に加えて又は代替として、1種又は2種以上のワックスを含んでもよい。ワックスは、構造化されたエマルションのうちの0.01~15重量%のワックスの量で存在してもよい。理論に拘泥するわけではないが、ワックスは、例えば、エマルションの降伏応力及び弾性係数を上げるために、エマルションに構造を付与すると考えられる。したがって、ワックスは、エマルションを安定させることができる。
【0036】
構造化されたエマルション中の、成分と、それらの相対的割合との上記組合せは、油相と水相との混合時に容易に形成する、かつ高い安定性及び長い貯蔵寿命を呈する、構造化されたエマルションの付与において特に有用であることが見出された。エマルション中のポリヒドロキシ化合物の包含は、先例のない熱安定性を含む、高まった安定性を生じさせる特定の構造的又は形態上の特徴を有する、構造化されたエマルションの形成及び保持を促進すること又は増強することが見出された。
【0037】
本発明による構造化されたエマルションには、アルファゲル相構造又はベータゲル相構造を有するものが挙げられる。好ましくは、本発明の構造化されたエマルションは、より熱力学的に好ましいベータゲル相(「コアゲル」)の利益となるように、アルファゲル相構造を有する。アルファゲル相からベータゲル相への、構造化されたエマルション中の中間形態の変化は、それぞれの相からの油及び/又は水の損失をもたらすおそれがあり、これは、構造化されたエマルションの、及び(例えば、油/水の移入の結果として)それを含む食品の、テクスチャ及び粘稠性を維持するのに望ましくないことがある。しかしながら、高安定性のアルファゲル相が、本発明の肉類似組成物中で使用される構造化されたエマルション中で形成されてもよく、アルファゲル相は、はるかにより長い時間の期間にわたって中間形態の変化に抵抗することが示された。これは、(例えば油/水の移入の結果として)油及び/又は水の低い損失をもたらし、そのため、良好なテクスチャ及び粘稠性を、肉類似組成物を含む食品に授ける。
【0038】
低温(典型的に7℃~13℃)にて、サブ-アルファゲル相が存在することができる。サブ-アルファゲル相は、より高い温度、典型的には13℃超にて、アルファゲル相への熱誘導転移を受けることが知られている。したがって、低温におけるサブ-アルファゲル相の存在は、より高温におけるアルファゲル相の安定な存在の指針である。本発明の肉類似組成物中で使用される構造化されたエマルション中、55日後、及び構造化されたエマルションの形成に続いてさらに長く、低い貯蔵温度でのサブ-アルファゲル相の強力な保持があることが見出された。したがって、これは、より高温にて、これらの構造エマルションのアルファゲル相が、有利にも、より長い期間にわたって存在することになることを示している。
【0039】
構造化されたエマルションによって提示される安定性には、特にポリヒドロキシ化合物を含むときに、経時的に、中間形態の変化(及び結果としての、構造化されたエマルションからの油及び/又は水の損失)への安定性が挙げられるが、加熱の点で、かつまたエマルション中の塩の存在の点で、予想外の安定性もまた挙げられる。例としては、構造化されたエマルションは、構造的安定性に負の影響を一切与えずに、例えば、最大で1.5wt.%、さらには最大で2.0wt.%の塩化ナトリウムを含有してもよい。さらに、本発明者らは、実験において、これらの構造化されたエマルションが、例えば80℃~100℃にて30分間、加熱に容易に耐えられることを見出した。構造化されたエマルションの、ポリヒドロキシ化合物によって可能にされた塩の存在に対する改善した抵抗性はまた、塩が静菌性として使用されて、それにより微生物的な貯蔵寿命を延長させることも可能にし得る。
【0040】
構造化されたエマルションに授けられた安定性の程度を、その中に存在するポリヒドロキシ化合物の濃度を変更することによって変更することが可能であると確信される。そのため、構造化されたエマルション中に含まれるポリヒドロキシ化合物の量を変更することによって、安定のままでありながら、そこへ構造化されたエマルションが加熱され得る温度を変えることが可能であると確信される。周知の通り、本明細書に記載されている範囲の上端におけるポリヒドロキシ化合物の濃度は、より低い濃度よりも高い熱安定性をもたらすことになる。これは、貯蔵の延長された期間の点で、かつ当然ながら調理の点で、肉類似組成物の性質の制御において特に有利であり得る。
【0041】
肉類似組成物が典型的な調理温度に暴露されるとき、構造化されたエマルションの少なくとも一部は、その熱安定性の限界が超過されるにつれて、特に、調理中の温度が最も高いところの肉類似組成物の外面に向かって、分解することが予想される。ポリヒドロキシ化合物の濃度を調整することにより、構造化されたエマルションに授けられた安定性の程度を制御することによって、構造化されたエマルションの程度は、肉類似組成物の厚さが変化し得るにつれて(すなわち、調理中に典型的に確立した温度傾斜につれて)分解することが予想され得る。いくつかの実施形態では、ポリヒドロキシ化合物が、より少なく、構造化されたエマルション中に組み入れられてもよく、これは、構造化されたエマルションが、より低温にて分解することが予想され、その結果、エマルションの油成分及び水成分が、より大きい程度まで調理時に放出されて、調理に続いて、より多汁性の製品であると知覚されるものを生じさせることを意味する。
【0042】
実施形態では、構造化されたエマルションは、肉類似組成物中に組み入れられたとき、貯蔵条件下で、例えば、30℃未満、例えば20℃未満、10℃未満、又は0℃未満の温度にて好ましくは安定である。実施形態では、構造されたエマルションは、肉類似組成物中に組み入れられたとき、調理温度に対して完全には安定でない(すなわち、構造エマルションの少なくとも一部は、調理時間の期間にわたり、調理温度にて分解する)。例えば、構造化されたエマルションの少なくとも一部は、肉類似組成物中に組み入れられたとき、70℃超、80℃超、100℃超、又は150℃超の調理温度にて、例えば70℃~240℃、80℃~220℃、100~210℃、又は150~200℃の温度にて分解する。好ましくは、調理中、肉類似組成物の内部温度は、少なくとも70℃、好ましくは少なくとも75℃の温度にあることになる。
【0043】
理論に拘泥するわけではないが、構造化されたエマルションが貯蔵温度にてアルファ相にあるときに、かつ調理温度にてベータゲル相に部分的に転換されるときに、所望のテクスチャの性質が、調理済み食品中で得られることが確信され、その理由は、これが、構造化されたエマルションからの油及び/又は水の損失を、調理時にではあるが貯蔵時にではなく、もたらすからである。これが、多汁性の調理済み食品をもたらすと確信される。
【0044】
実施形態では、ポリヒドロキシ化合物の量は、本明細書で上に検討された通り、貯蔵温度にて安定であるが調理温度にて分解する、構造化されたエマルションを達成するために選択され得る。構造化されたエマルションの重量の1~55wt.%の範囲にわたってポリヒドロキシ化合物濃度を変更することで、優れた貯蔵安定性が達成され得、その一方でまた、調理温度における(肉類似組成物中に組み入れられたときの)構造化されたエマルションの部分的な分解が、最終の調理済み食品における所望のテクスチャをもたらすと確信される。
【0045】
構造化されたエマルション中のサブ-アルファゲル相の濃度は、融解エンタルピーに基づいてもよい。例えば、構造化されたエマルションは、示差走査熱量計(DSC,Differential Scanning Calorimetry)によって分析されて、7~13℃での融解ピークの存在を確認し得、これは、サブ-アルファゲル相の特性である。経時的に、このピークについての経時的な融解エンタルピー(J/g)及びピーク温度(℃)は、サブ-アルファゲル相の安定性を決定するのに使用されてもよく、このピークの融解エンタルピーの低下は、サブ-アルファ相及びアルファゲル相の損失を示唆する。このパラメータの測定の方法は、当業者には既知であると考えられる。
【0046】
X線散乱パターンがまた、エマルション中の分子構成を評価するのに用いられ得る。詳細には、サンプルは、広角域(WAXS,wide angle region)において評価され得、ピークの変化が経時的に観察され得る。WAXSパターンが同一のままである場合、これは、エマルションの分子構成における変化が起きていないことを示唆する。例えば、構造化されたエマルションは、約4.2Åのd-間隔を伴って1つの特徴的なピークを呈することが見出された。しかしながら、アルファゲル相からコアゲル(ベータゲル)相ヘのシフトを呈した不安定なエマルションは、このピークにおける凹部であると明示した、WAXSパターンにおける変化を示した。
【0047】
例えば、構造化されたエマルションのX線散乱パターンは、銅のX線管(Cu-Kα1、λ=1.5418Å)で装備されたRigaku MultiFlex powder X-ray diffractometerを用いて0.1°/分の率において、40kV及び44mAで作動して、1°<2θ<8°、及び16°<2θ<24°の範囲内で集められ得る。好ましくは、器具は、0.5°の発散スリット、0.5°の散乱スリット、及び0.3mmの受光スリットを備えてセットされ、分析は、XRD器具中のサンプルホルダーとして働く円形ウェルのアルミニウム側上にサンプルを広げて実施される。好ましくは、データ獲得は、室温(20℃)にて実施される。
【0048】
本発明において使用される構造化されたエマルションは、微生物的な貯蔵寿命を改善するために通常依存される保存技術、及び「クリーンラベル」要請を満たさない保存技術を頼りとすることなく調製され得る。これらの構造化されたエマルションが先例のないレベルの安定性を呈することが見出されたので、それらは、本発明による肉類似組成物中に、具体的には調理用の肉類似組成物中に組み入れるのに特に好適であることが見出された。構造化されたエマルションの安定性の結果として、一貫した性質及び性能を有するエマルションを含有する食品を確実に調製することが可能である。本明細書に記載されている構造化されたエマルションは、所望のテクスチャ及び粘稠性を付与することに加えて、例としては、本発明の肉類似組成物中の油結合の目的のために依存され得る。
【0049】
ポリヒドロキシ化合物
肉類似組成物は、ポリヒドロキシ化合物を含んでもよい。好ましくは、構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物の少なくとも一部を含み、及び/又は該組成物の構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物の存在下で調製される。肉類似組成物、好ましくは構造化されたエマルションは、2種以上のポリヒドロキシ化合物を含んでもよい。
【0050】
ポリヒドロキシ化合物への本明細書における参照は、脂肪族ヒドロカルビルの環又は鎖の上に少なくとも2つのヒドロキシル(-OH)基を有する化合物を指し、かつこれは食物用途に好適であり、したがって、本発明の肉類似組成物への組み入れに好適である。ポリヒドロキシ化合物は、500g/mol以下、好ましくは400g/mol以下、より好ましくは350g/mol以下の分子量を有してもよい。ポリヒドロキシ化合物は、少なくとも100g/mol、好ましくは少なくとも120g/mol、より好ましくは少なくとも140g/molの分子量を有してもよい。
【0051】
ポリヒドロキシ化合物は、少なくとも2つのヒドロキシル基、好ましくは3~10のヒドロキシル基、より好ましくは5~8つのヒドロキシル基を含む。好ましい実施形態では、ポリヒドロキシ化合物は、少なくとも2つのビシナルヒドロキシル基(すなわち2つのヒドロキル基が、ヒドロカルビル環又は鎖の中の隣接している炭素原子に結合しているところの)を有する。いかなる特定の理論にも拘泥するわけではないが、ポリヒドロキシ化合物中のビシナルヒドロキシル基の存在が、構造化されたエマルションの安定性を増強するための特定の利益のあるものであり得、かつこのような配列が、結果として、立体的に、構造化されたエマルション内の好ましい相互作用の形成をより多く可能にし得ると確信される。
【0052】
本明細書で使用される用語「ヒドロカルビル」は、水素原子と炭素原子との主要な割合を含む、好ましくは水素原子と炭素原子とから排他的になる、一価の基又は二価の基、好ましくは一価の基を指し、この基は、不飽和の脂肪族であってもよく、又は好ましくは飽和の脂肪族であってもよい。例には、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。ヒドロカルビル基は、少なくとも2つのヒドロキシル基に加えて、1つ又は2つ以上の基によって置換されていてもよく、これらの任意選択の追加の置換基は、カルボン酸基、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシアルコキシ、C-Cシクロアルキル、-CO(C-C)アルキル及び-OC(O)(C-C)アルキルから好ましくは選択される。加えて又は代替的に、ヒドロカルビルの炭素原子のうちの1個又は2個以上、及びヒドロカルビル基の、それに結合している任意の置換基は、酸素原子(-O-)に置き換えられてもよく、但し条件として酸素原子は別のヘテロ原子には結合されない。ヒドロカルビルは、1~40個の炭素原子を有し得る。
【0053】
ヒドロカルビル基の例には、非環状基、及び1つ又は2つ以上の非環状部分と1つ又は2つ以上の環状部分とを合わせた基が挙げられ、これは、カルボシクリル(例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル)基、及びヘテロカルボシクリル(例えばヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル)基から選択され得る。
【0054】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~40個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分岐鎖のアルキル部分を指す。アルキル基の例には、1~30個の炭素原子、1~20個の炭素原子、又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。特に別段の指定がない限り、用語「アルキル」は、任意選択の置換基を含まない。
【0055】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、2~40個の炭素原子を有する、かつ加えて、指定されていない限りE又はZ配置のいずれかの、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、一価の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を指す。アルケニル基の例には、2~28個の炭素原子、3~18個の炭素原子、又は4~12個の炭素原子を有するアルケニル基が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、3~40個の炭素原子を有する、かつ少なくとも1つの環を有する、一価の飽和の脂肪族ヒドロカルビル部分を指し、前記環は、少なくとも3環の炭素原子を有する。本明細書で挙げられるシクロアルキル基は、それに結合しているアルキル基を有していてもよい。シクロアルキル基の例には、3~16個の炭素原子、例えば3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基が挙げられる。特定の例には、3環、4環、5環又は6環の炭素原子を有するシクロアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基の例には、単環式、多環式(例えば二環式)又は架橋された環の系である基が挙げられる。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。「シクロアルケニル」基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する非芳香族シクロアルキル基に相当する。
【0057】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクロアルキル」は、上に記載されているシクロアルキル基を指すと意図され、1個又は2個以上の炭素原子、及びそれに結合している任意の置換基は、ヘテロ原子、好ましくは酸素原子(-O-)に置き換えられており、但し条件として該ヘテロ原子は、環の中で別のヘテロ原子には結合しない。ヘテロシクロアルキル基には、好ましくは、糖の、置換されているフラン及びピラン、特定するとフラノース形態及びピラノース形態が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する非芳香族ヘテロシクロアルキル基に相当する。
【0058】
本発明の構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物を、構造化されたエマルションの重量により、1~55wt.%の量、例えば10~40wt.%、又は15~35wt.%、又は16~30wt.%、又は18~28wt.%の量で含んでもよい。他の実施形態では、構造化されたエマルションのポリヒドロキシ化合物は、少なくとも11wt.%、少なくとも12wt.%、少なくとも13wt.%、少なくとも14wt.%、又は少なくとも15wt.%の量で存在する。他の実施形態では、構造化されたエマルションのポリヒドロキシ化合物は、30wt.%未満、29wt.%未満、28wt.%未満、27wt.%未満、又は26wt.%未満の量で存在する。
【0059】
ポリヒドロキシ化合物を含む、本明細書に開示されている構造化されたエマルション中で形成し得るアルファゲル相は、熱力学的に好ましいベータゲル相(「コアゲル」)への中間形態の変化に特に効果的に抵抗することが見出された。理論に拘泥するわけではないが、構造化されたエマルション中のポリヒドロキシ化合物の存在が、アルファゲル相の安定性を、クラフト温度を実質的に超える温度まで増強すると確信され、かつサブ-アルファゲル相の(低い貯蔵温度における)安定性を、構造化されたエマルションの他の必須成分に対して、より低い量の又は全くない量のポリヒドロキシ化合物を含む従来の構造化されたエマルションに伴うよりも長い期間にわたって増強すると確信される。安定化効果は、複数のヒドロキシル基の存在に起因すると確信され、そのうちのいくつかは、ビシナル配置、及び帰着する構造化されたエマルションとの特定の立体の相互作用を採用し得る。
【0060】
好ましい構造化されたエマルション中のポリヒドロキシ化合物の存在はまた、例としては顕微鏡技術によって観察されて又はレーザー回析法を用いて測定されて、従来の油滴径よりも小さい形態へと至らせるとも確信される。発明者らは、ポリヒドロキシ化合物の存在が水の表面張力を低下させ、これが小滴径の低減へと至らせることに帰着すると確信している。
【0061】
好ましい実施形態では、ポリヒドロキシ化合物は、単糖類、糖アルコール、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類から選択され得、好ましくは単糖類、二糖類及び糖アルコールから選択され得る。単糖類及び二糖類は、本明細書では「糖」と称される。好ましくは、ポリヒドロキシ化合物が多糖類である場合、それは500g/mol以下の分子量を有する。
【0062】
構造化されたエマルションは、糖及び/又は糖アルコールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、糖を、糖アルコールとの組合せにおいて含有する。糖は、構造化されたエマルション中、糖アルコールの非存在下で「クリーンラベル」食品を調製する部分として利用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは糖を含み、かつ糖アルコールを含まない。「糖アルコールを含まない」への参照は、50ppm未満の糖アルコール、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満の糖アルコールが、構造化されたエマルション中に存在することを意味すると意図される。
【0063】
本発明において使用される単糖類は、グルコース、フルクトース、キシロース、リボース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、アルロース、タガトース、及びこれらの組合せから選択され得る。糖アルコールは、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、及びこれらの組合せから選択され得る。二糖類は、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、イソマルツロース、コジビオース、ニゲロース、セロビオース、ゲンチオビオース、ソフォロース、及びこれらの組合せから選択され得、オリゴ糖類は、オリゴフルクトース、ガラクトオリゴ糖類、ラフィノース、及びこれらの組合せから選択され得、多糖類は、デキストリンから選択され得る。
【0064】
好ましくは、糖は、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、トレハロース、キシロース、マンノース、及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、糖成分は、還元性の糖を含む。理論に拘泥するわけではないが、これらの糖が、メイラード反応に寄与し、そのため好ましいことが確信される。
【0065】
いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、糖を、1~55wt.%の量で、例えば10~40wt.%、15~35wt.%、又は16~30wt.%、又は18~28wt.%の量で含有する。他の実施形態では、構造化されたエマルションは、糖を、少なくとも11wt.%、少なくとも12wt.%、少なくとも13wt.%、少なくとも14wt.%、又は少なくとも15wt.%の量で含有する。他の実施形態では、構造化されたエマルションは、糖を、30wt.%未満、29wt.%未満、28wt.%未満、27wt.%未満、又は26wt.%未満の量で含有する。
【0066】
本明細書で使用される用語「糖アルコール」は、本明細書で前に記載された1種又は2種以上の糖の水素添加又は発酵から誘導された又は誘導可能な、少なくとも2個の炭素原子を有する任意のポリオールを指すと意図される。本発明における使用に好適な糖アルコールには、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、及びこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、糖アルコールは、エリスリトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、及びこれらの組合せから選択される。より好ましくは、糖アルコールは、グリセロール及びソルビトールから選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、糖アルコールを、1~55wt.%の量で、例えば10~40wt.%、15~35wt.%、又は16~30wt.%、又は18~28wt.%の量で含む。他の実施形態では、構造化されたエマルションは、糖アルコールを、少なくとも11wt.%、少なくとも12wt.%、少なくとも13wt.%、少なくとも14wt.%、又は少なくとも15wt.%の量で含有する。他の実施形態では、構造化されたエマルションは、糖アルコールを、30wt.%未満、29wt.%未満、28wt.%未満、27wt.%未満、又は26wt.%未満の量で含有する。
【0068】
当業者に周知の通り、ポリヒドロキシ化合物は、油相とは逆に、エマルションの水相中で、優先的には可溶性/混和性である。したがって、本明細書で以下に、より詳細に検討される通り、ポリヒドロキシ化合物は、エマルションが調製されるときに水相中に組み入れられ得る。
【0069】
乳化剤
構造化されたエマルションは、乳化剤を、1~8wt.%の量で含んでもよい。好ましい実施形態では、本発明の構造化されたエマルション中の乳化剤の量は、2~7wt.%、より好ましくは3~5wt.%、又は4~6wt.%の量である。
【0070】
利用される乳化剤は、自己凝集して、エマルションの油相及び水相と、かつポリヒドロキシ化合物と合わされていてもよいときに、本発明において必要とされる構造化されたエマルションを形成することが可能である。水中油型エマルションを形成するとき、乳化剤成分は、アルファ結晶形態又はサブ-アルファ結晶形態のいずれかに優先的に適合し、それにより、特徴的なラメラ構造を有するアルファゲルメソ相又はサブ-アルファゲルメソ相を形成し、これが、水層が乳化剤二層の間で構造化されているところの、六角形に密集されたラメラ構造を典型的に含むことが見出された。
【0071】
乳化剤成分は、非イオン性乳化剤、イオン性乳化剤、又は非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せであってもよい。好ましい実施形態では、乳化剤成分は、非イオン性乳化剤を、好ましくはイオン性乳化剤との組合せにおいて含む。
【0072】
好適な非イオン性乳化剤には、モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びこれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、非イオン性乳化剤は、少なくとも1種のモノグリセリドを含む。特に好ましい実施形態では、非イオン性乳化剤は、1種又は2種以上のモノグリセリドから本質的になる。
【0073】
非イオン性乳化剤として利用されるモノグリセリドは、1-モノグリセリド又は2-モノグリセリドのいずれかであってもよく、かつ飽和又は不飽和、好ましくは飽和であってもよい。いくつかの実施形態では、モノグリセリドは、12~22個の炭素原子、好ましくは14~22個の炭素原子、より好ましくは16~20個の炭素原子、例えば16個又は18個の炭素原子の脂肪酸鎖長を含む。モノグリセリドの特定の例には、モノパルミチン酸グリセロール及びモノステアリン酸グリセロールが挙げられる。本発明における使用に好適なモノグリセリドの商業的な源の例には、DuPont Danisco社から入手可能な、ヒマワリ、菜種、パーム及び/又はダイズマメ油に由来するDIMODAN(登録商標)蒸留モノグリセリドが挙げられる。好ましくは、モノグリセリドは、パーム油を起源としない。
【0074】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、アルカリ条件下で、かつ昇温にて、プロピレングリコールの食用脂肪でのエステル化から好適には誘導されたモノ-及びジエステルである。プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸由来部分は、モノ不飽和、ポリ不飽和若しくは飽和、又はこれらの組合せであってもよい。好ましい実施形態では、プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸由来部分は、飽和されている。いくつかの実施形態では、脂肪酸由来部分の鎖長は、12~22個の炭素原子、好ましくは14~22個の炭素原子、より好ましくは16~20個の炭素原子、例えば16個又は18個の炭素原子である。特に好ましいプロピレングリコール脂肪酸エステルは、ステアリン酸、パルミチン酸、又はこれらのブレンドのプロピレングリコールモノエステルである。
【0075】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、2~10個のグリセロール繰り返しモノマー単位、好ましくは2~6個のグリセロール繰り返しモノマー単位、より好ましくは3~5個のグリセロール繰り返しモノマー単位を含んでもよく、1種又は2種以上の飽和又は不飽和の脂肪酸でエステル化されている。いくつかの実施形態では、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸のポリグリセリンモノエステルである。
【0076】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸由来部分は、モノ不飽和、ポリ不飽和若しくは飽和、又はこれらの組合せであってもよい。好ましい実施形態では、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸由来部分は、飽和されている。いくつかの実施形態では、脂肪酸由来部分の鎖長は、12~22個の炭素原子、好ましくは14~22個の炭素原子、より好ましくは16~20個の炭素原子、例えば16~18個の炭素原子である。特に好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルは、3~5個のグリセロール繰り返しモノマー単位を有するステアリン酸又はパルミチン酸のポリグリセリンモノエステル、及びステアリン酸又はパルミチン酸のトリグリセリンジエステルである。
【0077】
特に好ましい実施形態では、非イオン性乳化剤は、モノパルミチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、又はこれらのブレンドである。
【0078】
好適なイオン性乳化剤には、モノグリセリド又はジグリセリドの酸エステル、脂肪酸、及びこれらの金属塩、アニオン性ラクチル化脂肪酸塩、及びこれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明における使用のためのイオン性乳化剤は、アニオン性ラクチル化脂肪酸塩を含む。
【0079】
モノグリセリドとジグリセリドとの酸エステルは、典型的には植物に由来するもの、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、及びこれらの組合せである、短鎖の天然に発生するカルボン酸でエステル化されたモノ-及びジ-ジグリセリドから好適には選択される。ジグリセリドの酸エステルの例は、ラクトパルミチン酸グリセロールである。モノ-及びジグリセリドのいくつかの酸エステルのアセチル化誘導体が使用されてもよく、その特に好ましい例は、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM,diacetyl tartaric acid esters of mono and diglycerides)である。その対応する酸エステルを形成するためのモノグリセリドは、上に記載されたものであってもよい。対応するそれらの酸エステルを形成するのに利用されるジグリセリドは、1,2-ジグリセリド又は1,3-ジグリセリドのいずれかであってもよく、好ましくは1,3-ジグリセリドであり、飽和であっても不飽和であってもよく、好ましくは飽和である。いくつかの実施形態では、ジグリセリドは、それぞれが12~22個の炭素原子、好ましくは14~22個の炭素原子、より好ましくは16~20個の炭素原子、例えば16個又は18個の炭素原子の脂肪酸鎖長を含む。
【0080】
脂肪酸及びその金属塩はまた、非イオン性乳化剤としても好適に作用し得る。このような脂肪酸の好ましい例は、飽和されており、好ましくは脂肪酸鎖中に14~24個、より好ましくは16~18個の炭素原子を含む。脂肪酸の好ましい例には、ステアリン酸及びパルミチン酸、並びにそれらのアルカリ金属塩、好ましくはそれらのナトリウム塩が挙げられる。
【0081】
アニオン性ラクチル化脂肪酸塩は、イオン性乳化剤として使用されてもよく、かつ炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムの存在下、好ましくは上に記載されている通り、乳酸の、脂肪酸との反応から誘導されるものを好適には含む。アニオン性ラクチル化脂肪酸塩の特に好ましい例は、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL,sodium stearoyl lactylate)である。
【0082】
特に好ましい実施形態では、イオン性界面活性剤は、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、及びモノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、並びにこれらの組合せから選択される。
【0083】
非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せが、構造化されたエマルション中で使用され得る。非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せが、構造化されたエマルション中でアルファゲル相/サブ-アルファゲル相を形成するのに付加的な利益を有し得る。本発明における使用に特に好ましい非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せには、1種又は2種以上のステアリン酸と一緒に本明細書に記載されている、少なくとも1種のモノグリセリド;ステアリン酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、及びモノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM);最も好ましくは、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)又はステアリン酸ナトリウムと一緒に本明細書に記載されている、少なくとも1種のモノグリセリドが挙げられる。
【0084】
組合せにおいて利用されるとき、非イオン性乳化剤が、主要な割合の乳化剤成分(すなわち50wt.%超の乳化剤成分)を表すことが好ましい。好ましい実施形態では、非イオン性乳化剤のイオン性乳化剤に対する重量比は、70:30~99:1、好ましくは75:25~95:5、より好ましくは80:20~90:10である。そのため、例示的な1つの例では、非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せは、10~20wt.%のステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)と一緒の、80~90wt.%の1種又は2種以上のモノグリセリドであってもよい。別の例示的な例では、非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との組合せは、5~20wt.%のステアリン酸ナトリウムと一緒の、80~95wt.%の1種又は2種以上のモノグリセリドであってもよい。
【0085】
ワックス
肉類似組成物は、1種又は2種以上のワックスを含んでもよい。好ましくは、構造化されたエマルションは、少なくとも1種のワックスを含み、その構造化されたエマルションは、本明細書に定義されているポリヒドロキシ化合物を含んでもよく又は含まなくてもよい。肉類似組成物、好ましくは構造化されたエマルションは、2種以上のワックスを含んでもよい。
【0086】
ワックスは、エマルションに構造を付与するように機能する任意の食用の作用剤、例えば、エマルションの降伏応力及び弾性係数を増大させる食用の作用剤を含みうる。好適なワックスには、食用ワックスが挙げられる。好適なワックスの例には、米糠ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ヒマワリワックス、ホホバ油ワックス、コーン油ワックス、サトウキビワックス、オーリクリーワックス、レタモワックス、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスが挙げられるがこれらに限定されない。周知の通り、ワックスの選択は、最終製品の意図された利用性に依存することになる。好ましくは、構造化されたエマルションは、約0.01~15重量%の選択されたワックス、好ましくは約0.5~10重量%のワックス、より好ましくは約2~10重量%のワックスを含む。
【0087】
連続水相
構造化されたエマルションは、12~40wt.%の水、好ましくは15~40wt.%、より好ましくは15~35wt.%の水、最も好ましくは15~25wt.%の水を好ましくは含む。周知の通り、構造化されたエマルションの連続水相は、エマルションの調製において利用されてきた水の全ての源を組み入れる。そのため、エマルションの調製中に添加される水に加えて、エマルションの他の成分の任意の水含有量が、構造化されたエマルションの連続水相及び総水含有量に寄与することになる。例えば、ポリヒドロキシ化合物がエマルション中に組み入れられて、ポリヒドロキシ化合物が、それが、構造化されたエマルションの他の成分と合わされる前に水溶液の形態において付与されるところでは、水溶液の水含有量は、一旦調製された構造化されたエマルションの総水含有量を構成することになる。これもまた周知の通り、構造化されたエマルションの水相は、構造化されたエマルションの油相に対して優先的に水溶性である/優先的に水混和性である、追加の成分を典型的に含む。
【0088】
本明細書における「水」への参照は、特に指定されない限り、飲料水、脱塩水又は蒸留水を含むと意図される。好ましくは、本発明との関連で利用される水は、脱塩水又は蒸留水である。当業者には周知であるが、脱イオン水もまた、脱塩水のサブ部類である。
【0089】
構造化されたエマルションの調製において、水の異なる源は、水相を形成することにおいて依存され得、それぞれの水の源は異なる導電率を有し、個々に、全体としての水相の導電率に寄与する。好ましくは、構造化されたエマルションの水相は、500μS/cm未満、好ましくは100μS/cm未満、より好ましくは10μS/cm未満の導電率を有する。
【0090】
構造化されたエマルションの水性連続相は、エマルションの糖/糖アルコール成分と一緒に、脱塩水又は蒸留水で実質的に形成され得る。ポリヒドロキシ化合物の極性は、存在する場合、構造化されたエマルションのこの成分が、典型的には、油相とは逆に、優先的に水相へと分けられることを意味する。
【0091】
水相中に含まれうる他の成分には、これらは決して必須というわけではないが、塩、香味料、着色剤及び/又は安定化剤が挙げられる。実施形態では、安定化剤が、構造化されたエマルション中に好ましくは含まれる。安定化剤の存在が、食品のテクスチャを改善し得ること、具体的には粘着性又は粘性を低減することが確信される。本明細書で前に記載されているように、構造化されたエマルションは、塩に抵抗性があることが見出された。塩は、従来、貯蔵寿命を延長させるために食品の水活性を低下させる手段として使用されてきた。それにもかかわらず、使用される塩の量が最少化されることが好ましく、その理由は、塩が、微生物的な長い貯蔵寿命を達成するために本発明によって必要とされることがないからである。好ましくは、構造化されたエマルション中に存在する塩の量は、2.0wt.%未満、より好ましくは1.5wt.%未満である。塩の量は、本明細書で上に記載されたように、構造化されたエマルションの必要とされる安定性を達成するために増加されてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、アルカリ性のpHを有する連続水相を含む。好ましい実施形態では、水成分を含む構造化されたエマルションの水相は、少なくとも8.0、例えば8.0~10、好ましくは8.0~9.5、より好ましくは8.0~9.0のpHを有する。例えば、構造化されたエマルション中のステアリン酸ナトリウム又はパルミチン酸ナトリウムの存在(その両方が油相と水相との間を動くことができる)が、水相中、8.0~9.0のpHを生じさせることが見出された。特に驚くべきことは、本明細書で開示されている構造化されたエマルションが、観察される微生物的な長い貯蔵寿命を依然として達成しながら、アルカリ性pHを有する水相を含むことができることである。従来の系では、既知の保存技術を利用して、任意選択で保存剤、例えばソルビン酸カリウムとの組合せにおいて、酸性のpH値を使用することが典型的である。本発明は、そのため、微生物の増殖を制御するためのこのような従来の系の使用を不要にすることができる。本明細書で開示されている構造化されたエマルションの、天然に低い水活性(a)はまた、具体的には微生物的な長期の貯蔵寿命の点において、構造化されたエマルションの好ましい長期安定性に実質的に寄与する。
【0093】
値は、物質中の水の部分的蒸気圧を、水の標準状態の部分的蒸気圧で除することによって計算される。食物科学の分野では、標準状態は、そこで物質中の水の部分的蒸気圧が測定された同一の温度において純水の部分的蒸気圧であると定義されることが最も多い。この定義を用いて、蒸留された純水は、正確に1の水活性を有する。物質のa値は、サンプルを容器中に置き、次いでこれを封止し、平衡が到達された後にサンプル上で相対湿度を決定することによって決定され得る。aを決定するのに好適な器具の例は、Meter Group社製のAqualab 4TE benchtop water activity meterである。
【0094】
構造化されたエマルションは、そこで細菌の増殖及び再生産が起こる閾値未満であると一般に考えられる0.90未満のaを有してもよい。したがって、構造化されたエマルションによって呈される低い水活性は、特に構造化されたエマルションの微生物の増殖に対する長期の安定性に寄与する。そのため、いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、0.90以下のa、好ましくは0.90未満のaを有する。他の実施形態では、構造化されたエマルションは、30℃未満の温度にて、28日間の貯蔵後に、さらには55日間の貯蔵後にさえ、0.90以下のa、好ましくは0.90未満のaを保持する。
【0095】
それにもかかわらず、構造化されたエマルションは、本明細書で記載されているように、本発明の他の利点よりも高いかつ依然として利益を有して配合され得る。そのため、いくつかの実施形態では、aは、例としては0.93、0.92、又は0.91ほど高い。したがって、いくつかの実施形態では、構造化されたエマルションは、0.93未満、0.92未満、又は0.91未満のaを有する。
【0096】
油相
構造化されたエマルションは、25~70wt.%の油、好ましくは35~65wt.%の油、より好ましくは40~60wt.%の油、最も好ましくは50~60wt.%の油を含んでもよい。45~55wt.%、及び50~55wt.%等の他の範囲もまた熟慮されることが、当然ながら理解される。
【0097】
構造化されたエマルションの油相は、好適には、天然源(例えば植物、動物又は魚/甲殻類/藻類の各源)から少なくとも部分的に得られた任意の食用グリセリド油から選択されてもよく、かつ複数の油の組合せであってもよい。油は、植物油、海産油、動物油、及びこれらの組合せから選択され得る。好ましくは、油は、植物油を含む。好ましくは、油相は、本発明の構造化されたエマルション中に液体形態で存在し、したがって、油相が液体のままであることを確実にするために、グリセリド脂肪、特定すると室温にて(例えば20℃にて)固体であり得る動物脂肪が、他の、より低い融点の油との組合せにおいて使用され得る。代替的に、このような脂肪は、構造化されたエマルション中での使用のためにより低い融点画分へと単離するために画分化され得る。
【0098】
植物油には、全ての植物油、ナッツ油及び種子油が挙げられる。本発明における使用のものであり得る好適な植物油の例には、以下:アサイー油、アーモンド油、ビーチ油、カシュー油、ココナッツ油、コルザ油(colza oil)、コーン油、綿実油、亜麻仁油、グレープフルーツ種子油、グレープ種子油、ヘーゼルナッツ油、アサ油、レモン油、マカダミア油、マスタード油、オリーブ油、オレンジ油、ピーナッツ油、パーム油、パーム核油、ピーカン油、パインナッツ油、ピスタチオ油、ケシ種子油、菜種油、米糠油、ベニバナ油、ゴマ油、シア脂及びその画分(具体的にはシアオレイン)、ダイズ油、ヒマワリ油、ウォルナッツ油及びコムギ胚芽油、が挙げられる。好ましい植物油は、コーン油、菜種油、ヘーゼルナッツ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ダイズ油、ピーナッツ油、オリーブオイル、亜麻仁油、シア脂及びその画分(具体的にはシアオレイン)、並びに米糠油から選択されるものである。
【0099】
海産油には、油性の魚又は甲殻類(例えばオキアミ)の組織及び藻類に由来する油が挙げられる。好適な動物油/脂肪の例には、ブタ脂肪(ラード)、アヒル脂肪、ガチョウ脂肪、獣脂及び脂(butter)が挙げられる。とはいえ、本発明の特定の用途をベジタリアン食品又はビーガン食品の調製に付与するとすれば、油相の油が植物油であることが一般に好ましい。
【0100】
本明細書で前に記載された通り、本発明の特定の利益は、肉類似組成物を作製するときに、飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸のかなりの量を含有する油及び脂肪の使用が回避され得ることである。
【0101】
油/水の比
いくつかの好ましい実施形態では、構造化されたエマルションの油/水の重量比は、少なくとも0.6、少なくとも0.8、少なくとも1.0、少なくとも1.4、少なくとも1.8、又は少なくとも2.2である。他の好ましい実施形態では、構造化されたエマルションの油/水の重量比は、0.6~5.8、より好ましくは1.0~5.0、さらにより好ましくは2.0~4.0、例えば3.0~4.0である。このような好ましい実施形態では、構造化されたエマルション中の水の重量濃度が、油成分に対して、より低いことが認められることになる。これは、有利であり得、その理由は、肉類似組成物中に存在する水のうちのより多くが、構造化されたエマルションそれ自体の部分を形成するためというよりも、組成物の他の成分の水和、特にタンパク質の水和のために利用できることを可能にするからである。
【0102】
周知の通り、本明細書で上に記載されている肉類似組成物の好ましい特徴は、他の好ましい特徴と組み合わされて、本発明の特に好ましい実施形態を形成してもよく、これには、例えば以下が挙げられる:
【0103】
実施形態A:本明細書に記載されている肉類似組成物、該組成物は、a)15~25wt.%の植物性タンパク質と、b)40~60wt.%の水と、c)5~10wt.%の炭水化物とを含む。
【0104】
実施形態B:本明細書に記載されている又は実施形態Aによる肉類似組成物、
構造化されたエマルションの乳化剤成分は、非イオン性乳化剤を、イオン性乳化剤との組合せにおいて含み、
非イオン性乳化剤は、本明細書に記載されている少なくとも1種のモノグリセリド(例えば、モノパルミチン酸グリセロール及びモノステアリン酸グリセロール)を含み、かつ
イオン性乳化剤は、モノ-及びジグリセリドの酸エステル、脂肪酸、及びこれらの金属塩、アニオン性ラクチル化脂肪酸塩、並びにこれらの組合せ(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、及びモノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM))から選択される。
【0105】
実施形態C:本明細書に記載されている又は実施形態A又は実施形態Bによる肉類似組成物、
構造化されたエマルションのポリヒドロキシ化合物は、単糖類、二糖類及び糖アルコール(例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、トレハロース、キシロース及びマンノース)から選択される。
【0106】
実施形態D:本明細書に記載されている又は実施形態A~Cによる肉類似組成物、構造化されたエマルションの油成分は、植物油を含み又はそれらからなり、例えば、該植物油は、コーン油、菜種油、ヘーゼルナッツオイル、ヒマワリ油、ベニバナ油、ダイズマメ油、ピーナツオイル、オリーブオイル、亜麻仁油、シア脂及びその画分(具体的にはシアオレイン)並びに米糠油から選択される。
【0107】
実施形態E:本明細書に記載されている又は実施形態A~Dのいずれかによる肉類似組成物、該肉類似組成物は、構造化されたエマルションの重量に基づいて、
i)3~6wt.%(例えば3~5wt.%、又は4~6wt.%)の乳化剤と、
ii)15~35wt.%(例えば15~25wt.%)の水と、
iii)40~60wt.%(例えば45~55wt.%、又は50~55wt.%)の油と、
iv)16~30wt.%(例えば18~28wt.%)のポリヒドロキシ化合物と
を含む構造化されたエマルションから調製される。
【0108】
実施形態F:本明細書に記載されている又は実施形態A~Eによる肉類似組成物、該肉類似組成物は、1.0~5.0、好ましくは2.0~4.0、より好ましくは3.0~4.0の油/水の比を有する構造化されたエマルションから調製される。
【0109】
食品
本発明による肉類似組成物の製造における構造化されたエマルションの使用が、所望の構造、テクスチャ及び/又は粘稠性を肉類似組成物に付与することが見出された。そのため、本明細書で開示されている組成物を使用して調製された肉類似食品が提供される。該肉類似品は、バーガー、ソーセージ、ナゲット、ミートボール又はミートローフの形態、好ましくはバーガーの形態を有する、ミンチされた又は粉砕された肉類似品であってもよい。
【0110】
本明細書に記載されている肉類似組成物を使用して調製した調理済み又は部分調理済み食品もまた提供される。
【0111】
本発明のなおもさらなる態様では、本発明はまた、肉類似組成物の成分として、本明細書に記載されている構造化されたエマルションの使用も提供する。このような使用は、調理中の肉類似組成物からの油及び/又は水の損失を低減するためであり得る。
【0112】
該組成物を使用して調製した肉類似組成物又は食品の性質は、任意の好適な手段によって測定され得る。対象の性質には、多汁性(及び/又は乾燥性)、硬さ、付着性、弾力性、凝集性、粘着性、歯ごたえ及びレジリエンスが挙げられ得る。このような手段には、味試験者が挙げられ、味試験は、組成物又は食品の性質、例えば多汁性(又は乾燥性)、テクスチャ、歯ごたえ及び硬さにおけるフィードバックを付与することができる。典型的には、複数の試験者が、組成物又は食品の1つ又は2つ以上の性質を例えば1~5の尺度に基づいてマークするよう質問されることになる。複数の試験者が質問される場合、該食品の一般的な印象を観察するべく、複数の結果の平均が取られる。
【0113】
組成物又は食品の性質はまた、専門化された機器を用いても測定され得る。例えば、テクスチャプロファイル分析(TPA,texture profile analysis)は、固体及び半固体材料のテクスチャ属性を特徴付けるのに用いられる技術であり、かつ硬さ、付着性、弾力性、凝集性、粘着性、歯ごたえ及びレジリエンスを決定するのに用いられ得る。粘着性は、硬さ×凝集性の積として決定される。歯ごたえは、粘着性×弾力性(硬さ×凝集性×弾力性)の積として決定される。この技術では、試験材料は、往復運動において2回、圧縮され、口の中で噛む動きを模倣し、力対時間(及び/又は距離)グラフを生成し、そこから上記情報が得られ得る。TPA及びテクスチャ特徴付けの分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66、及びTrinh T. and Glasgow S., 'On the texture profile analysis test', Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記載されており、かつそこで記載されているように実施され得る。
【0114】
力対時間(及び/又は距離)グラフは、典型的に、トラフで分けられている2つの圧縮に相当する、力における2つのピークを含む。力は、重力加速度(g-force、g,gravitational force equivalent)又はニュートン(N,Newtons)において測定され得る。
【0115】
硬さ(g又はN)は、第1の圧縮サイクル中に経験される最大ピークの力であると定義される。
【0116】
付着性は、最初の咬合についての負の力の面積として、すなわち、0g又はNの力における又はそれ未満である、力における2つのピーク間のグラフの面積であると定義される。これは、食物の表面と、該食物が接触することになる他の材料の表面との間の引力を克服するのに必要とされる作用、すなわちサンプルから圧縮プランジャーを引っ張るのに必要な総力を表す。高い付着性及び低い凝集性を有する材料について、試験されるとき、サンプルの部分は、上方へのストロークにおけるプローブに付着しそうである。試験プラットフォームの底からサンプルを持ち上げることは、可能であれば回避されるべきであり、その理由は、プローブ上のサンプルの重量が、付着性の値の部分となることが考えられるためである。いくつかの事例では、廃棄可能なプラットフォームの底にサンプルを付着することがアドバイスされるが、全てのサンプルについて適用可能なわけではない。
【0117】
弾力性はまた、弾性としても知られ、第1の圧縮の終了と、第2の圧縮の開始との間で経過する時間の間に食物が回復する高さに関する。第1の圧縮の間、力=0g又はNにおける圧縮の開始から、力の第1のピークまでの時間(「サイクル1の期間」と称される)が測定される。第2のサイクルの間、力=0g又はNにおける第2の圧縮の開始から、力の第2のピークまでの時間(「サイクル2の期間」と称される)が測定される。弾力性は、これらの値の比、すなわち「サイクル2の期間」/「サイクル1の期間」として計算される。
【0118】
凝集性は、正の力の面積の比、すなわち第1の圧縮の間に対する第2の圧縮の間の、0g又はNを超える曲線下面積であると定義される。凝集性は、そこで、機械的作用下で材料が崩壊する率として測定され得る。引張強度は、凝集性の現れである。付着性が凝集性に比べて低い場合、プローブは清浄なままでありそうであり、その理由は、該生成物が一緒に保持する能力を有するためである。凝集性は、普通、第2のパラメータの脆性、歯ごたえ及び粘着性の点で試験される。
【0119】
粘着性は、硬さ×凝集性の積であると定義され、低い程度の硬さ及び高い程度の凝集性を有する半固体食物の特性である。
【0120】
歯ごたえは、粘着性×弾力性の積として定義され(これは、硬さ×凝集性×弾力性に等しい)、したがって、これらのパラメータのうちのいずれか1つの変化によって影響を受ける。
【0121】
レジリエンスは、サンプルが、誘導された速度と力との両方の点で、どのように変形から回復するかの測定値である。これは、第1のプローブ反転点、すなわち、最大の力の点からx軸の交差の点までの面積、すなわち0g又はNにおける面積と、圧縮の開始から最大の力の点との間の第1の圧縮サイクルから生成される面積との比として取られる。このパラメータの有意な値を得るために、サンプルがこの性質を所有している場合、サンプルが回復するのを可能にする比較的ゆっくりとした試験速度が選択されるべきである。
【0122】
肉類似組成物の調製
本発明の肉類似組成物は、本明細書に記載されている構造化されたエマルションと、植物性タンパク質と、組成物の任意の他の成分とを混合することによって容易に調製することができる。一態様では、肉類似組成物を調製する方法が提供され、前記方法は、植物性タンパク質と、水中油型の構造化されたエマルションとを混合することによって、秩序あるラメラゲルネットワークを有することにより特徴付けられる肉類似組成物を形成するステップを含む。さらなる成分が、存在していてもよい。水が、方法における任意の段階において必要とされる場合には、組成物に添加されてもよい。該方法は、以下のステップをさらに含んでもよい:植物性タンパク質を含む乾燥相を準備して該乾燥相を一定量の水と混合することによって植物性タンパク質を調製するステップ、これは、肉類似組成物を形成するステップの先に来る。このステップはまた、乾燥形態にある他の成分を含んでもよく、その結果、これらの乾燥成分は、植物性タンパク質と同時に水和されるようになる。加えて及び/又は代替的に、任意の他の乾燥成分が、任意の組合せにおいて、植物性タンパク質と別々に水和されてもよい。TVPを含む実施形態では、TVPは、好ましくは任意の他の成分と別々に水和される。理論に拘泥するわけではないが、これは、水についての乾燥成分の間の競争を限定し、存在する全ての乾燥成分のために満足のいく水和を確実にすると確信される。
【0123】
そのため、本発明は、肉類似組成物を調製する方法を提供し、前記方法は、以下のステップ:a)植物性タンパク質、及び該組成物の任意の他の乾燥成分を含んでいてもよい乾燥相を準備し、該乾燥相を一定量の水と混合して混合物を形成するステップと、b)ステップa)において形成した混合物を、秩序あるラメラゲルネットワークを有することにより特徴付けられる水中油型の構造化されたエマルションと混合して肉類似組成物を形成するステップ、を含む。水中油型の構造化されたエマルションは、ポリヒドロキシ化合物を含んでもよい。実施形態では、植物性タンパク質はTVPを含んでもよい。好ましくは、植物性タンパク質以外の乾燥成分は、植物性タンパク質と別々に水和される。このような乾燥成分の例には、繊維、香味料、乳化剤、ガム、親水コロイド、増粘剤が挙げられるがこれらに限定されない。実施形態では、水和された植物性タンパク質、及び水和された乾燥成分を含む任意の他の混合物を含むステップa)の混合物が、ステップb)の前に合わされる。理論に拘泥するわけではないが、構造化されたエマルション添加前の乾燥成分の水和(例えばステップa)における)が、製品中の水の最適化された分布をもたらし、より安定な肉類似組成物をもたらすことが確信される。
【0124】
上記の方法中で使用される植物性タンパク質を含む乾燥相は、特に限定されない。植物性タンパク質は、本明細書で上に記載されたものである。用語「乾燥相」は、植物性タンパク質を含む相が、5wt.%未満の水、好ましくは2wt.%未満の水、より好ましくは1wt.%未満の水を含み、さらにより好ましくはそれが実質的に水を含まないことを意味すると意図される。他の好ましい実施形態では、乾燥相のaは、0.90以下、より好ましくは0.80未満である。植物性タンパク質を含む乾燥相は、典型的には、貯蔵寿命を延長させるよう可能な限り微生物の増殖を低減するために、実質的に脱水された状態で準備される。
【0125】
植物性タンパク質を含みうる乾燥相は、水と混合される前に、任意の物理的形態を取ってもよいが、典型的には、それは、粉末、顆粒又はペレット化された形態、細長い片又は大きい塊の形態にある。乾燥相に添加される水の量は、特に限定されない。典型的には、それと共に構造化されたエマルションが容易に混合され得るペースト又は生地へと乾燥成分を結合させるために、一定量の水が添加される。好ましくは、肉類似組成物は、35~70wt.%の水、好ましくは40~65wt.%の水を含み、これは、構造化されたエマルション中に含有されている水を含む。しがたって、乾燥相に添加される水の量は、構造化されたエマルションの添加後に、肉類似組成物中の水の総量がこの範囲内にあるように好ましくは計算される。さらに、構造化されたエマルションの添加後に肉類似組成物中の水の総量がこの範囲内にあるように乾燥相が使用されない場合でさえ、水は組成物に添加されてもよい。
【0126】
添加される水の温度は、それが成分の意図された特性に実質的に影響しない(例えばタンパク質の変性又は加水分解へと至らせない)限り、特に限定されない。好ましい実施形態では、水は、室温未満(すなわち20℃未満)である。特に好ましい実施形態では、氷水が使用される。これは、水が乾燥相に添加されるときに特に好ましい。用語「氷水」は、本明細書では、0℃超及び6℃未満の温度、好ましくは0.5~5℃、より好ましくは1~4℃、より好ましくは1~3℃を有すると定義される。氷水を使用する利点は、それが肉類似組成物の調製中に微生物の増殖を可能な限り遅らせることであり、かつ、それは、メチルセルロースのような一定の乾燥成分の水和に特に好適である。
【0127】
乾燥相の、水との混合は、任意の時間の期間、実施され得る。実施形態では、混合は、乾燥相と水とが緊密に混合されるまで、かつ典型的にはペースト又は生地が形成されるまで実施される。TVPが水和される実施形態では、混合は、繊維性構造を過剰に邪魔しないよう最小に限定される。実施形態では、これは、1分~30分、好ましくは1分~10分、より好ましくは5秒~5分の期間、実施され得る。
【0128】
例えばステップa)における、乾燥相と水との混合に続き、混合物は、例えばステップb)において、構造化されたエマルションの添加前に静置され得る。これは、構造化されたエマルションの添加前の、乾燥相の完全な水和を確実にし得る。この残りは、0.5~15℃、好ましくは1~12℃、より好ましくは5~10℃の温度を有する冷却貯蔵下で実施され得る(それにより微生物の増殖をさらに制御する)。この残りは、5分~5時間、好ましくは5分~2時間、より好ましくは5分~30分の期間、実施され得る。
【0129】
該方法において使用される構造化されたエマルションは、本明細書に記載されているものであり、かつ国際公開第2005/107489 A1号パンフレットに開示されているもの(例えば、その段落[0050]~[0052]、[0056]、[0077]及び[0078]において)を含む任意の好適な方法によって調製され得る。秩序あるラメラゲルネットワークを有する構造化されたエマルションの安定性の結果として、発明者らは、それが従来技術によって容易に調製されることを見出した。
【0130】
したがって、構造化されたエマルションを調製する好適な方法は、油相と水相とを別々に調製すること、調製済み油相と調製済み水相とを別々に昇温に、好ましくは同一の昇温に加熱すること、2つの相を昇温にて合わせ混合すること、その後室温(例えば20℃)に冷却することに関与する。
【0131】
典型的には、ポリヒドロキシ化合物は、存在する場合、水相中に溶解され、乳化剤成分は油相中に溶解される又は分散される。さらに、その一方で非イオン性乳化剤が油相中に容易に分散され得又は溶解され得、イオン性乳化剤は、好ましくは水相中に分散され得る又は溶解され得る。当業者であれば、その中に乳化剤成分及び他の任意選択の添加剤を溶解する又は分散する相を、容易に見分けることができる。
【0132】
別々の水性相と油相との加熱は、従来の方法によってもよく、かつ好ましくは、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃の昇温まで、最大で好ましくは90℃未満、より好ましくは80℃未満までの昇温までである。好ましい実施形態では、水相と油相とは、65~85℃、より好ましくは70~80℃、例えば75℃の温度に加熱される。油相と水相とが同一の温度に加熱されることは必要とされない。
【0133】
周知の通り、乳化剤成分は、クラフト温度を上回る温度にて、かつ乳化剤成分の融解温度を上回る温度にて、しかし乳化剤のラメラから非ラメラへの転移温度を下回る温度にて、付与されるべきである。この理由のために、乳化剤成分を含む油相は、65℃超で80℃未満に好ましくは加熱される。好ましい実施形態では、油相と水相とを合わせた直後に、クラフト温度は超えたままで残る。
【0134】
構造化されたエマルションが水中油型エマルションであるため、加熱済み油相は、加熱済み水相に、調製の規模に応じて例えば1~60分間、典型的には撹拌しながら添加される。好ましくは、油相の添加は、任意の従来の混合器具を用いる合わされた相の同時の混合を伴って、増加的である。小規模において、これは、ハンドミキサー(例えばDynamic MD95 hand mixer)を用いて達成され得る。工業規模において、標準の乳化用機器が用いられ得る(その例には、SPX Emulsifying System, type ERS、及びIKA Standard Production Plantが挙げられる)。混合の剪断速度は、本発明の構造化されたエマルションの形成に特に影響があるとは確信されない。それにもかかわらず、インライン高剪断ミキサー(IKA Ultra Turrax)、ホモジナイザ(SPX APV)又は超音波乳化(Hielscher)が、構造化されたエマルションの調製において用いられ得る。
【0135】
油相の、水相への添加の完了に続き、混合物は、室温(例えば20℃)へと冷却される。冷蔵又は外部冷却の適用は必要とされないものの、冷却速度を上げることは、構造化されたエマルションの性質を保持するのに、かつ形成後のアルファゲル相の損失を遅らせるのに有利であり得る。
【0136】
そのため、いくつかの好ましい実施形態では、構造化されたエマルションが昇温にて形成するのに続いて、冷蔵又は外部冷却が適用される。冷蔵又は外部冷却で達成可能な冷却率は、例としては1分当たり10℃超、好ましくは1分当たり50℃超であってもよい。好ましくは、冷蔵又は外部冷却が適用されるところで、これは、形成後の構造化されたエマルションの温度を、そこで構造化されたエマルションが形成される温度に応じて50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下に低下するように行われる。冷蔵又は外部冷却は、一般的な環境温度条件が達成されるまで適用され得る。別法では、冷蔵又は外部冷却の適用が止められて、一般的な環境温度条件の結果として、さらなる冷却(対応してよりゆっくりな冷却速度で)が起こってもよい。冷蔵又は外部冷却は、従来の機器、例えばプレート型熱交換器、管式冷却器又は表面かき取り式熱交換器を用いて、好ましくは管式冷却器を用いて、達成され得る。
【0137】
そのため、肉類似組成物を調製する方法は、以下:i)乳化剤成分を含む油相、及び水相を準備するステップと、ii)油相と水相とを別々に加熱して、加熱済み油相と加熱済み水相とを形成するステップと、iii)加熱済み油相を加熱済み水相に添加して混合物を形成するステップと、iv)該混合物を冷却させて水中油型の構造化されたエマルションを形成するステップとによって、水中油型の構造化されたエマルションを調製することをさらに含みうる。
【0138】
実施形態では、水相は、本明細書に記載されているポリヒドロキシ化合物を含む。
【0139】
本発明において利用される構造化されたエマルションは、それらを、本発明による肉類似組成物の調製物へと統合するのに特に有用にすることが見出された安定性のレベルを呈している。構造化されたエマルションは、昇温への暴露下であってさえ、中間形態の変化に抵抗することが可能である。この安定性は、ポリヒドロキシ化合物が、構造化されたエマルション中に組み入れられるところで(例えばポリヒドロキシ化合物をエマルションの水相中に組み入れることによって)なおもさらに増強されることが見出された。
【0140】
発明者らは、本発明に従って使用され得る構造化されたエマルションが比較的小さい小滴径で付与され得ることを見出した。典型的には、エマルション安定性の欠如が存在するところでは、より小さい油滴が、乳化剤の量が、十分な安定性を有する個々の小滴を付与するのに少なくとも適切であるように凝集を受けることが予想されると考えられる。理論に拘泥するわけではないが、より小さい小滴径を形成する能力が、本発明に従って利用される構造化されたエマルションの安定性に寄与し得る又はそれらに由来し得ると確信され、この安定性が、上に記載したポリヒドロキシ化合物の存在下で増強され得ると確信される。この油滴径は、それを含む食品に有利なテクスチャ及び粘稠性をもたらすのに特に利益があるとも確信される。
【0141】
そのため、構造化されたエマルションは、0.1~10μmの、単様式のサイズ分布及び/又は等価表面積平均径(いわゆる「ザウター平均粒子径(Sauter mean diameter)」又は「D(3.2)」)を有する油滴を用いて調製され得る。ポリヒドロキシ化合物を包含していてもよいことが、凝集に抵抗性である、より小さい小滴径が達成可能であることを意味する増強された安定性へと至らせる、エマルションの構造的性質の強化を助けうることが可能である。特に、発明者らは、ポリヒドロキシ化合物の存在が、同一のエネルギーインプットのために、小滴径の低減へと至らせる水の表面張力を低減させうると確信している。これらの特徴は、ポリヒドロキシ化合物を含む構造化されたエマルションを、本発明における使用のために特に好適なものとする。
【0142】
そのため、好ましい実施形態では、本発明に従って使用される構造化されたエマルションの油滴は、動的光散乱法(DLS,Dynamic Light Scattering)、顕微鏡技術(例えば、走査電子顕微鏡(SEM,Scanning Electron Microscope)技術又はレーザー回析技術により測定されて、5μm未満、例えば0.1~5μm、0.1~4μm、0.1~3μm、0.1~2μm、又は0.1~1.5μmの表面積平均径を有する。レーザー回析を実施するための好適な器具には、Malvern Instruments社によるMalvern Mastersizer Xが挙げられる。好ましくは、油滴は、動的光散乱法(DLS)により測定されて、0.1~3.0μm、好ましくは0.1~1.5μmの等価面積平均径を有する。
【0143】
肉類似組成物の調製はまた、さらなる成分を組成物に添加するステップもまた含んでもよい。これらの成分は、肉類似組成物の調製における任意の段階において添加されてもよい。実施形態では、さらなる成分は、構造化されたエマルションの添加後に、例えば、ステップb)後に添加される。好ましくは、乾燥成分は、構造化されたエマルションヘの添加前に水和される。実施形態では、乾燥成分は、構造化されたエマルションの添加前に、例えばステップa)において、任意の乾燥した植物性タンパク質と共に水和される。このような成分には、本明細書でより詳細に開示されている通り、1種又は2種以上の炭水化物、多糖類、変性多糖類、親水コロイド、ガム、乳、液体香味料、アルコール、保湿剤、ハチミツ、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸性調節剤、液体酵素、乳粉末、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖置換物、デンプン、塩、スパイス、繊維、芳香成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存剤、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、及び酸性調節剤が挙げられる。これらの成分の添加は、混合、混合、又は任意の好適な手段によって実施されてもよい。
【0144】
一旦、肉類似組成物が調製されたら、これは、食品へと形成され得る。これは、肉類似組成物を所望の形状へと形成するステップを含みうる。得られた食品の形状及びサイズは、特に限定されない。本発明による肉類似組成物から作製され得る形作られた食品の例には、バーガー、ソーセージ、ナゲット、ミートボール及びミンチが挙げられる。
【0145】
任意の好適な方法が、肉類似組成物を所望の形状へと形作るのに使用されてもよい。実施形態では、これは、切断、成形、プレス、押出、ローリング、粉砕、又はこれらの任意の組合せによって実施され得る。これらの方法は、器具を用いて実施されてもよく、これは手動で操作されても自動で操作されてもよい。実施形態では、肉類似組成物は、5分~24時間、好ましくは1時間~12時間、より好ましくは3時間~8時間、圧縮され得る。圧縮の期間及び圧力は、肉類似組成物の性質、例えば他の要因の中でも付着性を考慮に入れて、得られる食品の所望の性質、例えばそのサイズ及び密度によって決定される。これは、例としては粉砕した/刻んだ肉の属性を複製するために、食品の所望の形状を形成してもよく、又はこれは、ペレット化、粉砕又は切断による等でさらに加工されてもよい。
【0146】
肉類似組成物を調製する方法は、食品へと形成され得る組成物を調理すること又は部分調理することをさらに含んでもよい。調理することは、煮ること、焼くこと、揚げること及び/又はマイクロ波調理することを含んでもよい。好ましい実施形態では、調理は、メイラード反応が起こりうるような十分な温度(例えば80℃超、及び最大で180℃、好ましくは130℃~170℃)にて行われる。メイラード反応は、食品の所望の褐変に有用である。
【0147】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されている方法によって調製可能な又は調製された肉類似組成物を提供する。
【0148】
さらなる態様では、本発明は、肉類似組成物の成分としての使用のための、好ましくは調理中の肉類似組成物からの油及び/又は水の損失の低減における使用のための、構造化されたエマルションを提供する。
【0149】
本発明は、今や、図及び実施例を参照して記載されることになる。
【0150】
[実施例]
構造化されたエマルションの調製の一般方法
以下の手順を用いて、構造化されたエマルションのエマルションA、エマルションB及びエマルションCを調製した:
1.油相を、表1に示す油相の成分を混合し、該混合物を75℃に少なくとも3分間加熱して、調製した
2.水相もまた、表1に示す水相の成分(適当な場合)を混合し、該混合物を75℃に少なくとも3分間加熱して、調製した
3.油相を、水相に、75℃にて2分にわたり、同時に混合しながらゆっくりと添加した
4.得られたエマルションを、室温(20℃)に自然に冷却させた。
【0151】
表1から見られる通り、エマルションBは、それがポリヒドロキシ化合物を含まないという点で、エマルションA及びエマルションCとは異なる。エマルションCは、それが異なるポリヒドロキシ化合物をより少量で含むので、エマルションAとは異なる。
【0152】
【表1】
【0153】
植物性タンパク質組成物Aを使用する植物ベースのバーガーの調製の一般方法
以下の手順を用いて、以下の実施例の植物ベースのバーガーを調製した:
1.植物性タンパク質組成物Aを、表2に示す量に従って氷水(1~3℃)と混合し、冷却貯蔵(5℃)において少なくとも30分間さらに水和した
2.エマルションA、エマルションB、又は高オレイン酸ヒマワリ油のいずれかを、表2に示す量に従って水和済み植物性タンパク質Mix Aに室温にて添加し、得られた生地を約1分間混合した
3.生地を冷蔵庫(5℃の温度にて作動)内に少なくとも20分静置した
4.バーガー(直径8cm、高さ2cm、重さ100g)をこの生地から作製し、調理する前に、冷蔵庫(5℃の温度にて作動)内に貯蔵した
5.バーガーを、ヒマワリ油(5g)をひいたフライパン上で6分間(4回、1.5分)加熱して調理した。
上記参照の植物性タンパク質組成物Aは、エンドウマメタンパク質、植物性組織化タンパク質、増粘剤(メチルセルロース)、塩、スパイス、野菜抽出物、スパイス抽出物、グルコースシロップ、香味料、着色剤、並びに脂肪、炭水化物及び繊維を含む、乾燥/脱水した粉末状の植物性タンパク質組成物である。
【0154】
上記の一般方法に従って調製した比較例1、実施例1及び実施例2のバーガーの組成を、表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
比較例1、実施例1及び実施例2によるバーガーは、それらの性質を比較できるように、同一の質量、並びに類似の水分含有量及び脂肪含有量を有するようにした。比較例1において作製したバーガーは、構造化されたエマルションを使用しなかったので、本発明によるものではない。
【0157】
組織化タンパク質(texturised proteins)を使用する植物ベースのバーガーの調製の一般方法
以下の手順を用いて、以下の実施例の植物ベースのバーガーを調製した:
1.組織化タンパク質++を、表3に示す量に従って冷水(5℃)で水和し、冷却貯蔵(5℃)において少なくとも30分間さらに水和した
2.粉末形態にある全ての他の成分(安定化剤ブレンド+++及び香味料)を混合し、少なくとも1分間混合して氷水(1~3℃)で水和し、それに続いてそれらを冷蔵庫内に少なくとも30分間貯蔵した
3.組織化し水和したタンパク質を低速で20秒間刻んだ
4.ステップ2及びステップ3からの成分、エマルションC又はヒマワリ油及びココナツ油、及び任意のさらなる成分(例えば着色剤、脂肪、油)を、表3に示す量に従って室温にて合わせ、得られた生地を約2分間混合した
5.生地を冷蔵庫(2~5℃の温度にて作動)内に少なくとも30分間、静置した
6.バーガー(直径8cm、高さ2cm、重さ100g)をこの生地から作製し、調理する前に冷蔵庫(2~5℃の温度にて作動)内に貯蔵した
7.バーガーを、ヒマワリ油(5g)をひいたフライパン上で6分間(4回、1.5分)加熱して調理した。
++上記参照の組織化タンパク質は、組織化エンドウマメタンパク質(タンパク質含有量は最小70%、フォーマット:細長い片)と組織化ソラマメタンパク質(タンパク質含有量は最小60%、フォーマット:大きい塊)とのブレンドである。
+++上記参照の安定化剤ブレンドは、エンドウマメタンパク質(タンパク質含有量は最小83%、フォーマット:粉末)とエンドウマメ繊維とメチルセルロースとのブレンドである。
【0158】
上記方法に従って調製した比較例2及び実施例3のバーガーの組成を表3に以下に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
比較例2及び実施例3によるバーガーは、それらの性質を比較できるように、類似の質量、並びに類似の水分含有量及び脂肪含有量を有するようにした。比較例2において作製したバーガーは、構造化されたエマルションを使用しなかったので、本発明によるものではない。
【0161】
調理前のバーガーの性質の評価
テクスチャプロファイル分析(TPA,texture profile analysis)を用いて、実施例のバーガー、市場参考ビーガンバーガー及び100%ビーフバーガーの、硬さ、付着性、弾力性、凝集性、粘着性及び歯ごたえを決定し、そのパラメータを以下の表4に、より詳細に記載する。TPAをTA.XT2機械(Stable Micro Systems社製)において実施し、これは、5kg負荷のセル及び25mmのDia Cylinder Aluminium Probe(P/25)で固定した。機械を以下のセッティングで走行するようプログラミングした:事前試験速度:1mm/秒、試験速度:5mm/秒、試験後速度:5mm/秒、圧縮深さ:5mm、サイクル間の時間:5秒、トリガータイプ:5gにおいて自動、データ獲得速度:200pps。試験材料を往復運動で2回圧縮し、口の中の噛む動きを模倣した。力対時間(及び/又は距離)グラフを得、そこから所望の情報を得た。TPA、及びテクスチャ特性の分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66、及びTrinh T. and Glasgow S., 'On the texture profile analysis test', Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記載されており、かつそこで記載されている通りに実施し得る。
【0162】
【表4】
【0163】
生地の加工性を、0~5の尺度において測定し、それぞれ、低い加工性から良好な加工性に相当する。
【0164】
調理前の、実施例において形成した生地及びバーガー、市場参考ビーガンバーガー及び100%ビーフバーガーの測定した性質を表5~7に示す。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
【表7】
【0168】
調理前のバーガーについての好ましい値は以下の通りである:硬さ400~5000g、好ましくは400~1500g、弾力性0.1~1、好ましくは0.5~1、凝集性0.1~1、好ましくは0.4~0.8、粘着性200~4000、好ましくは300~1100、及び歯ごたえ100~4000、好ましくは300~1000。表6及び表7に見られる通り、本発明によるバーガーはこれらの範囲内に収まる。
【0169】
加えて、高含有量のポリヒドロキシ化合物を有するエマルションを使用する実施例1のバーガーが、ポリヒドロキシ化合物を含んでいないエマルションを使用する実施例2のものと比較したときに、改善した加工性(揚げる前の、より低い付着性及びより高い硬さ)を呈することが見られ得る。
【0170】
揚げた後の実施例のバーガーの性質
揚げた後の、比較例1、実施例1、実施例2、比較例2、実施例3において形成したバーガー、並びに市場参考ビーガンバーガー及び100%ビーフバーガーの性質を、表8及び表9に示す。バーガーの硬さ、付着性、弾力性、凝集性、粘着性及び歯ごたえを、上に記載したのと同一の方法を用いてTPAによって測定した。多汁性は、試験者パネルによって決定した。具体的には、5人のパネルが、実施例のそれぞれにおいて形成した、揚げた後のバーガーを盲検した。試験者に、5のうちの多汁性スコアを与えるよう頼み、0は多汁性が最も低く、5が最も多汁性である。平均スコアを決定した。
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
バーガーの、調理後の上記パラメータについての所望の値は以下の通りである:a)硬さ500~5000、好ましくは700~1500g、b)弾力性0.1~1、好ましくは0.5~1、c)凝集性0.1~1、好ましくは0.5~1、d)粘着性300~4000、好ましくは500~1500、及び/又はe)歯ごたえ300~4000、好ましくは500~1500。表8及び表9に見られる通り、本発明によるバーガーは、上記のパラメータについて、好ましい範囲内の全てに収まることになる。
【0174】
表8及び表9はまた、実施例3における比較的少量のポリヒドロキシ化合物を含むバーガーが、最も高い多汁性レーティングを呈することを明示している。これは、実施例2における、ポリヒドロキシ化合物の不使用、及び実施例1における、より多量のポリヒドロキシ化合物の使用よりも好ましい。これは、中程度の安定性のものである構造化されたエマルションが、最良の多汁性をもたらすことを示唆している。理論に拘泥するわけではないが、このような構造化されたエマルションは、調理前の貯蔵中に安定であるが、調理中に分解すると確信される。
【0175】
表8及び表9に示す通り、本発明によるバーガーは、市場参考ビーガンバーガー及び100%ビーフバーガーのものに匹敵するテクスチャの性質を呈する。
【0176】
これらの結果は、構造化されたエマルションを含む実施例1及び実施例2において形成したバーガーが、構造化されたエマルションを含まない比較例1のバーガーと比較したとき、調理時の、(油からと水分からとの両方の)重量損失がより少なくなったこと、並びに縮みがより少なくなった(直径及び高さの低減がより少なかった)ことに帰着したことを明示している。同様に、構造化されたエマルションを含む実施例3において形成したバーガーは、構造化されたエマルションを含まない比較例2のバーガーよりも重量損失が少ないことに帰着した。
【0177】
実施例1及び実施例2のバーガーはまた、味試験者によって、比較例1のものよりも多汁性であることも見出された。総じて、比較例1のバーガーは、他のバーガーよりもコンパクトであり、食べるのが大変であり乾燥していると一般に説明された。これらの結論は、実施例1及び2のバーガーからの水分及び油の損失が少ないという観察と一致し、これは、より乾燥していない、したがってより多汁性のバーガーをもたらすと予想されると考えられる。同様に、実施例3において形成したバーガーは、味試験者により、比較例2のバーガーよりも多汁性であることが見出された。総じて、実施例3のバーガーが最も柔らかく多汁性であると説明された。
【0178】
これらの試験コメントはまた、比較例1(上)及び実施例1(下)を示している図1に示す調理済みバーガーの目視評価とも一致する。比較例1のバーガーが、明らかに、よりコンパクトであり、その一方で実施例1のバーガーが最も湿潤であるように見える。
【0179】
調理前及び調理後のバーガーの測色評価
測色法(BYK instruments calorimeter)を用いて、比較例1、実施例1及び実施例2からのバーガーを、CIEシステムに従って、それらの明るさ(L)、赤味(a)及び黄色味(b)について評価した。調理前及び調理後の結果を以下の表10に示す。
【0180】
【表10】
【0181】
未調理バーガーについて、所望の値は以下の通りである:L36~58、a14~29、及びb12~30。調理済みバーガーについて、好ましい値は以下の通りである:L24~40、a9~36、及びb12~36。
【0182】
調理前に、比較例1からのバーガーは、高いa値及び低いL値を有し、それが、他のバーガーよりも赤く見せていることが見出された。実施例1からのバーガーは、最も高いL値、並びに最も低いa値及びb値を有し、そのため、よりピンク色に見えた。調理に続き、調理前に観察したバーガー同士の間の色差は低減し、3つ全ての値(L、a及びb)は、4つのバーガー間で、はるかにより類似するようになった。
【0183】
組織化ダイズタンパク質を有する植物ベースのバーガー
構造化されたエマルションを調製する先に記載した一般方法を用いて、構造化されたエマルションのエマルションD及びエマルションEを調製した。表11から見られる通り、エマルションEは、それが異なるポリヒドロキシ化合物を少量で含むので、エマルションDとは異なる。エマルションE中の低減したポリヒドロキシ化合物は、水及び油によって補う。
【0184】
【表11】
【0185】
組織化ダイズタンパク質を使用する植物ベースのバーガーの調製の一般方法
以下の手順を用いて、以下の3つの実施例の植物ベースのバーガーを調製した:
1.粉末形態にある全ての成分(安定化剤ブレンド、香味料)と組織化ダイズタンパク質**とを混合した。
2.着色剤を、冷水中で、表12に示す量に従って薄め、ステップ1からの成分と6分間、水和のために混合した。
3.エマルションD若しくはエマルションE又は菜種油を、表12に示す量に従ってステップ2からの成分と合わせ、得られた生地をさらに2分間混合した。
4.生地を容器に詰め、生地がバーガーを形成しやすくするよう、わずかに硬くするために、およそ10~15分、フリーザー(-18℃~-22℃の温度にて作動)内に静置した。
5.バーガー(直径8cm、高さ2cm、重さ100g)をこの生地から作製し、フリーザー(-18℃~-22℃の温度にて作動)内に少なくとも24時間、貯蔵した。
6.バーガーを、菜種油(5g)をひいたグリルプレートで12分間(8回、1.5分)加熱して調理した。
上記参照の安定化剤ブレンドは、変性デンプンと、Ingredion、RD 1020からの親水コロイドとのブレンドとした。
**上記参照の組織化ダイズタンパク質は、最小69%のタンパク質含有量、及び顆粒のフォーマットを有した。
【0186】
上の一般方法に従って調製した比較例3、実施例4及び実施例5のバーガーの組成を、表12に以下に示す。
【0187】
【表12】
【0188】
比較例3、実施例4及び実施例5によるバーガーは、それらの性質を比較できるように、類似した質量、並びに類似した水分含有量及び脂肪含有量を有するようにした。比較例3において作製したバーガーは、構造化されたエマルションを使用しなかったので、本発明によるものではない。
【0189】
調理前のバーガーの性質の評価
テクスチャプロファイル分析(TPA)を、36 mm Dia Cylinder Aluminium Probe(P/36 R)を固定したTA.XT plus machine(Stable Micro Systems社製)を用いる、先の実施例において記載した方法に従って用いた。比較例3、実施例4及び実施例5のバーガーの硬さ、弾力性、凝集性、粘着性及び歯ごたえを決定した。
【0190】
調理前の、比較例3、実施例4及び実施例5において形成した生地及びバーガーの測定した性質を、表13に示す。
【0191】
【表13】
【0192】
調理前のバーガーについての好ましい値は、先の実施例に記載している。表13に見られる通り、本発明によるバーガーは、これらの範囲内に収まることになる。
【0193】
加えて、ポリヒドロキシ化合物を含有するエマルションを使用している実施例4及び実施例5のバーガーが、構造化されたエマルションを使用していない比較例3のものと比較したとき、改善した加工性を示すことが見られ得る。
【0194】
調理後の実施例のバーガーの性質
揚げた後の、比較例3、実施例4及び実施例5において形成したバーガーの性質を、表14に示す。バーガーの硬さ、弾力性、凝集性、粘着性及び歯ごたえを、上に記載したのと同一の方法を用いて、TPAによって測定した。
【0195】
調理済みによる汁の質量(JCM%,Juice-per-cooked-mass)を、調理済みバーガーをAeropress(Model A80、Aerobie社製)中で、7kgの荷重力を5分間用いて圧縮して決定した。圧縮の前に、バーガーを、6つの平行カット及び6つの垂直カットで刻んだ。抽出した汁の重量を記録し、調理済みバーガーの重量により除して、調理済みによる汁の質量(JCM)を計算した。
【0196】
【表14】
【0197】
調理後のバーガーについての所望のTPA値は、先の実施例において記載している。表14に見られる通り、本発明によるバーガーは、これらの範囲内に収まる。
【0198】
加えて、表14は、実施例5における比較的少量のポリヒドロキシ化合物を含むバーガーが、実施例4における多量のポリヒドロキシ化合物を含むバーガーよりも高い「調理済みによる汁の質量」を呈することを明示している。この結果は、比較的少量のポリヒドロキシ化合物を含む実施例3が、多量のポリヒドロキシ化合物を含む実施例2よりも高い多汁性を示したという先の実施例における観察と一致する。両方の結果が、中程度の安定な結果の構造化されたエマルションが最良の多汁性をもたらすという示唆を支持している。
【0199】
さらに、表14中の結果は、構造化されたエマルションを含む実施例4及び実施例5において形成したバーガーが、構造化されたエマルションを含まない比較例3のバーガーと比較したとき、調理時の(油からと水分からとの両方の)重量損失が少ないこと及び縮みが少ないこと(それらの直径及び重さの減り方が小さい)に帰着することを明示している。これらの結果は、それぞれ、構造化されたエマルションを含む実施例1及び実施例2と比較すると、構造化されたエマルションを使用していない比較例1と比較すると、かつ実施例3及び比較例2と比較すると、先述した実施例においてなされた観察と一致する。
図1
【国際調査報告】