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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】車両用の安全ベルトウェビング
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20231027BHJP
   B60R 22/12 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
D03D1/00 D
B60R22/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524468
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021087680
(87)【国際公開番号】W WO2022174968
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021104034.5
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504446641
【氏名又は名称】ベルガー ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフトゥング ウント コンパニー ホールディング カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Berger GmbH & Co. Holding KG
【住所又は居所原語表記】Obere Schlossstr. 114, 73553 Alfdorf, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ブリールマン
【テーマコード(参考)】
3D018
4L048
【Fターム(参考)】
3D018BA04
4L048AA34
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA09
4L048DA26
(57)【要約】
本発明は、車両用の安全ベルトウェビング(1)であって、互いに交差する経糸(3)および緯糸(4)からなる織物(2)を備え、織物(2)は、少なくとも部分的に、一循環において少なくとも6枚、好ましくは8枚に構成されているように形成されており、a)一循環は、経糸(3)毎に少なくとも4つ、好ましくは6つの交差点を緯糸(4)と有し、交差点は、経糸が一循環内で経糸が上を行く状態から経糸が下を行く状態に、または経糸が下を行く状態から経糸が上を行く状態に切り替わる際に、挙げた経糸(3)と緯糸(4)との間に生じる組織点であり、b)一循環内に、最大の経糸フロートが経糸(3)毎に2つの緯糸(4)を越え、最大の経糸沈みが2つの緯糸(4)の下に位置し、c)経糸(4)毎の一循環内に、経糸フロートに対して付加的に、1つの緯糸(4)の上の少なくとも1つの経糸浮きと、1つの緯糸(4)の下の少なくとも1つの経糸沈みとが存在する、車両用の安全ベルトウェビング(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の安全ベルトウェビング(1)であって、互いに交差する経糸(3)および緯糸(4)からなる織物(2)を備え、前記織物(2)は、少なくとも部分的に、一循環において少なくとも6枚、好ましくは8枚に構成されているように形成されており、
a)前記一循環は、経糸(3)毎に少なくとも4つ、好ましくは6つの交差点を前記緯糸(4)と有し、前記交差点は、前記経糸(3)が前記一循環内で経糸が上を行く状態から経糸が下を行く状態に、または経糸が下を行く状態から経糸が上を行く状態に切り替わる際に、前記経糸(3)と前記緯糸(4)との間に生じる組織点であり;
b)前記一循環内に、最大の経糸フロートが経糸(3)毎に2つの緯糸(4)を越え、最大の経糸沈みが2つの緯糸(4)の下に位置し、
c)経糸(3)毎の前記一循環内に、前記経糸フロートに対して付加的に、1つの緯糸(4)の上の少なくとも1つの経糸浮きと、1つの緯糸(4)の下の少なくとも1つの経糸沈みとが存在する、
車両用の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項2】
直接的に隣接する前記経糸(3)は、少なくとも1つの緯糸(4)分、好ましくは、正確に1つの緯糸(4)分ずらされていることを特徴とする、請求項1記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項3】
前記織物(2)は、前記一循環内に少なくとも2つの斜文線を有する複線斜文として形成されており、前記複線斜文は、少なくとも6枚、好ましくは8枚であることを特徴とする、請求項1または2記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項4】
前記複線斜文は、両面または片面複線斜文として構成されていることを特徴とする、請求項3記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項5】
前記複線斜文の斜文線方向は、前記安全ベルトウェビング(1)の幅または長さに沿ってS斜文線からZ斜文線にまたはZ斜文線からS斜文線に切り替わることを特徴とする、請求項3または4記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項6】
前記織物(2)は、前記複線斜文の基本位から出発して、前記経糸(3)の順序の組み替えにより新しく配置されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項7】
前記経糸(3)の糸細さは、550dtex~2500dtex、好ましくは、800dtex~1200dtexであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の安全ベルトウェビング(1)。
【請求項8】
前記緯糸(4)の糸細さは、280dtex~1400dtexであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の安全ベルトウェビング(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、好ましくは、モータライズされた車両用の安全ベルトウェビングに関する。このような車両は、陸の乗り物、例えば自動車、貨物自動車、バスまたはレール車両であり得る。基本的には、車両なる概念の下に、水の乗り物または空の乗り物、例えば航空機も含まれると解される。
【0002】
安全ベルトウェビングは、挙げた車両において、安全ベルトを製造すべく使用される。安全ベルトは、衝突時の負傷や、事故が起きたときの車両搭乗者の車外放出を防止する拘束システムの一部である。このような拘束システムは、通例、安全ベルトに掛着されたバックルタングを有し、バックルタングをベルトバックル内に差し込むことで搭乗者を固定し、バックルを外せば再び解除することが可能である。加えて拘束システムは、巻き上げ機構(リトラクタ)と、安全ベルトの向きを変える偏向部と、端部留め具とを有している。
【0003】
安全ベルトウェビングは、慣用的に少なくとも部分的に織物から、つまり、互いに交差する経糸および緯糸から製造されている。このような安全ベルトウェビングのための、従来技術において公知の組織は、例えば両面単線斜文、交番する経斜文または緯斜文、および比較的稀なケースでは、畝織または平織である。
【0004】
市場において定着している安全ベルトウェビングは、通例、1.2mm厚、またはそれどころかそれ以上である。このような比較的大きな厚さは、しかし、リトラクタの構造スペースに対して不利に働く:それというのも、ベルトウェビングが厚ければ厚いほど、巻き嵩は高くなり、かつこのようなリトラクタが必要とする構造スペースは大きくなるからである。例えば自律走行等の比較的新しい発展は、車両の構造スペースあるいは重量のさらなる削減を要求している。このニーズに応えようとすれば、ベルトウェビングは、必然的により薄くせざるを得ない。このために安全ベルトウェビングの平方センチメートル当たりの材料量は、削減されなければならない。
【0005】
材料量の削減は、より少ない材料コストおよび労務コスト等の有利な効果の他に、しかし、一連の欠点も必然的に伴ってしまう。従来技術において公知の織様は、より薄い安全ベルトウェビングにとって不適であることが大半である。加えて、純粋な厚さ減少と、それと同時の糸数および/または糸細さの減少とは、機械的特性、例えば破断荷重または剛性等の損失に至らしめる。織物は、材料が少ないことで安定性を毀損する。このことは、車両搭乗者にとっての使用特性、例えば安全ベルトの触り心地および着け心地にもネガティブに働いてしまう。より薄い安全ベルトの場合、リトラクタ内での巻き取りは、ネガティブな影響を被ることがあり、バックルタング内でのねじれの恐れは、高まり、リトラクタ内における、バックルタングに沿った、かつ偏向部に沿った、引き出しおよび引き戻しによる擦れは、安全ベルトをより強く損耗させてしまう。結局、より薄い安全ベルトウェビングは、より厚い安全ベルトウェビングよりも早期に摩耗し、その結果、このような安全ベルトウェビングの寿命は、これにより損なわれてしまう。
【0006】
これにより本発明は、車両の、冒頭で挙げた拘束システムの、上位概念部に記載の安全ベルトウェビングに関する。
【0007】
それゆえ本発明の課題は、従来技術と比較して薄く、そのような公知の安全ベルトウェビングと実質的に同じ機械的特性および使用特性を備える車両用の安全ベルトウェビングを提示することである。
【0008】
本発明の根底にある上記課題は、独立請求項に記載の車両用の安全ベルトウェビングにより解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に提示してあり、これらは、選択的に互いに組み合わされてもよい。
【0009】
本発明に係る車両用の安全ベルトウェビングは、互いに交差する経糸および緯糸からなる織物を備え、織物は、少なくとも部分的に、一循環において少なくとも6枚、好ましくは8枚に構成されているように形成されており、
a)一循環は、経糸毎に少なくとも4つ、好ましくは6つの交差点を緯糸と有し、交差点は、経糸が一循環内で経糸が上を行く状態から経糸が下を行く状態に、または経糸が下を行く状態から経糸が上を行く状態に切り替わる際に、挙げた経糸と緯糸との間に生じる組織点であり;
b)一循環内に、最大の経糸フロートが経糸毎に2つ、好ましくは正確に2つの緯糸(緯入れ)を越え、最大の経糸沈みが2つ、好ましくは正確に2つの緯糸(緯入れ)を潜り;
c)経糸毎の一循環内に、経糸フロートに対して付加的に、1つの緯糸(緯入れ)の上の少なくとも1つの経糸浮きと、1つの緯糸(緯入れ)の下の少なくとも1つの経糸沈みとが存在する。
【0010】
この種の織物組織により、従来技術において公知の安全ベルトウェビング(1.2mm厚)と比較して明らかに薄く構成されている本発明に係る安全ベルトウェビングが提示され得る。つまり、材料は、より少なくて済む。それにもかかわらず、本発明に係る安全ベルトウェビングは、それ自体公知の安全ベルトウェビングに匹敵する機械的特性および使用特性を備えている。これにより、本発明に係る安全ベルトウェビングは、リトラクタ内で良好に巻き取られ、バックルタング内でのねじれの恐れは、比較的低く、擦れに対する耐久性も、より高い。而して、つまり、厚い安全ベルトウェビングに相当する寿命の、比較的薄い安全ベルトウェビングが提示され得る。本発明に係る織物組織により、1mm未満の厚さ、例えば0.95mmの厚さを有する安全ベルトウェビングが提示され得る。
【0011】
この織物組織において、経糸毎の一循環は、つまり、(正確に)2つの、経糸浮きのフロートと、2つの、経糸沈みのフロートと、これらのフロートに対して付加的に、1つの経糸沈みと、1つの経糸浮きとを有していることができる。経糸沈みなる概念は、この場合、経糸が下を行く状態なる概念と同義である。
【0012】
一循環なる概念は、織物分野において、組織図の繰り返される組織パターン(組織柄ともいう)を表している。組織図とは、この場合、組織の概略図をいう。本発明では、単一の経糸に関する一循環について述べることが多い。この場合の一循環は、一循環の第1の経糸の織順を意味し、次の経糸は、斜文織のルールに則り、それに倣う。
【0013】
枚数または「枚」なる概念は、一循環内の経糸および緯糸(または緯入れ)の数を意味している。6枚複線斜文は、6つの経糸と、6つの緯糸(緯入れ)とを一循環内に有し、8枚複線斜文は、相応に8つの糸を有している。
【0014】
経糸フロートについて述べるとき、または経糸がフロートしているというとき、これらは、経糸の、連続する2つの組織点の間に、1つより多くの緯糸が位置していることを意味する。換言すれば、一循環に沿って1つの経糸が、例えば連続する2つの、経糸が下を行く状態または経糸が上を行く状態を有するとき、この経糸はフロートしている。この場合、組織柄内で経糸が下を行く状態とは、経糸が緯糸の下に位置し、経糸が上を行く状態とは、経糸が緯糸の上に位置することを意味している。
【0015】
従来慣用のニードルバンド式自動機械では、緯針によりシェッド内に緯入れされるため、方法に起因して緯入れ毎に2つの緯糸が織物内に存在する。第2の緯針により、さらなる緯入れがなされてもよく、この場合は、而して緯入れ毎に4つの緯糸が織物内に存在するであろう。緯糸の上の経糸浮きと、経糸沈み、つまり緯糸の下の経糸の沈みとの場合、それぞれ、「複数の緯糸」ではなく、緯入れまたは簡単に緯糸は、1つを意味し、かつ表している。このことは、一循環内の緯糸のナンバリングにも現れる。緯糸は、緯入れ後に切り離される個々の緯糸ではなく、一方では、緯糸折り返しにより、かつ他方では、目の列によりエッジ経糸とともに、完成した安全ベルトウェビングのウェビングエッジを形成する1つの連続した緯糸である。
【0016】
本発明において組織点という場合、組織点とは、組織柄内における経糸と緯糸あるいは緯入れとの交差を意味している。「緯糸」および「緯入れ」なる概念は、それゆえ、本発明では同義に使用する。
【0017】
「少なくとも6枚」なる定義は、織物が、少なくとも6つ、好ましくは正確に6つ、特に好ましくは正確に8つの経糸を一循環内に有することを意味している。最大数は、ここでは10本の経糸、つまり10枚であってもよい。
【0018】
通例、経糸は、完成した安全ベルトウェビングの長さ延在方向(長さ)で延びている。これに対して横方向、つまり安全ベルトウェビングの幅延在方向(幅)で、緯糸は延びている。厚さ延在方向(厚さ)は、安全ベルトウェビングの幅延在方向および長さ延在方向に対して垂直に延びている。
【0019】
好ましい一実施形態によれば、一循環内において直接的に隣接する経糸は、少なくとも1つの緯糸分、好ましくは、正確に1つの緯糸(緯ともいう)分ずらされている。通例、経糸には、一循環において左から右に通し番号が振られる。8枚一循環の場合、つまり、第1の、左側の経糸は、番号1を有し、右側の、最後の経糸は、番号8を得る。直に番号1の経糸に隣接している番号2の経糸は、つまり、少なくとも1つの緯糸分ずらされている。番号2の経糸に直接的に隣接している番号3の経糸も、同様に少なくとも1つの緯糸分、番号2の経糸に対してずらされている(以下、同様)。
【0020】
本発明に係る安全ベルトウェビングは、複線斜文により実現されてもよい。このような複線斜文は、少なくとも2つの斜文線を一循環内に有し、少なくとも6枚、好ましくは8枚である。複線斜文の場合、一循環内における互いに直に隣接する経糸のずれは、正確に1であろう。この場合、複線斜文は、両面複線斜文または片面複線斜文として構成されていてもよい。複線斜文は、独国特許発明第102011084336号明細書に記載されているような3枚単線経斜文が3枚単線緯斜文と交番するものに対して、一循環内のすべての経糸が少なくとも時々対向するように現れ、ひいては堅固な、糸毎の対向織を有するという利点を有している。両面複線斜文のさらなる利点は、両製品面が同じ外観を呈していることである。両面複線斜文の、例えば従来慣用の単線斜文に対するさらなる利点は、一循環毎の組織点の数が高められていることである。総じて、而して織物内に生じる経糸および緯糸のすべりは、より少なくなる。このような織物の耐すべり性は、それゆえより高い。その際、耐すべり性とは、経糸または緯糸が水平にその本来の位置からすべること、つまり、織物が不安定化することを防ぐのに必要な力と解される。対向織は、ここでは、互いに隣接する経糸において、同じ緯糸の高さで見て、一方の経糸が浮かされており、つまり経糸浮きを示し、これに対して、他方の経糸が沈まされており、その結果、両経糸が、互いにブロックし合い、負荷、特に摩擦および圧力による負荷がかかったときにすべらないことを意味している。
【0021】
好ましくは、複線斜文の斜文線方向は、安全ベルトウェビングの幅または長さに沿ってS斜文線からZ斜文線にまたはZ斜文線からS斜文線に切り替わってもよい。基本的に、織物を、複線斜文の基本位あるいは出発位から出発して、経糸の順序の組み替えにより新しく配置することが可能である。これらの構成により、種々異なるパターン、ひいては見映えのよい外観形態が実現可能である。
【0022】
本発明による構成、例えば織物組織および8枚複線斜文の使用により、本発明に係る利点を特に良好に実現する織物が提示され得る。
【0023】
好ましくは、安全ベルトウェビングは、550dtex~2500dtex、好ましくは、800dtex~1200dtexの糸細さを有する経糸を有していてもよい。また緯糸の糸細さは、280dtex~1400dtexであってもよい。これらが、できる限り高い織物係数のための最適なパラメータであることがわかっている。
【0024】
本発明を改良するさらなる構成について、以下に本発明の好ましい一実施例の説明とともに図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】8枚両面複線斜文を備える本発明の第1の実施形態の組織図である。
図1b図1に示す組織図の第1の経糸の織方を示す図である。
図2】変更された斜文線の順番を有する8枚両面複線斜文を備える本発明の第2の実施形態の組織図である。
図3】経糸の新規配列による8枚複線斜文を備える本発明の第3の実施形態の組織図である。
図4】6枚複線斜文を備える本発明の第4の実施形態の組織図である。
図5】斜文線切り替えと側方のエッジとを有する8枚複線斜文を備える本発明の第5の実施形態の組織図である。
図6】車両の拘束システム内に設けられた本発明に係る安全ベルトウェビングの概略図である。
【0026】
図1ないし図5は、それぞれ、極めて概略的に図示したそれぞれの組織図で、本発明に係る安全ベルトウェビング1の一部分の織物2の様々な実施形態を示している。組織図は、つまり、経糸3が緯糸4と交差して織物2を形成する周期である。図示した組織図の各々には、組織図の左下の象限内の一循環を、横に付した線で略示してある。一循環は、パターンを1つ製造するのに、何本の経糸および緯糸3,4が必要であるか、表示している。この場合、経糸3は、図1aおよび図2ないし図5において、垂直(つまり、製造したい安全ベルトウェビング1の長さ延在方向)に延び、緯糸4は、これに対して水平(つまり、この安全ベルトウェビング1の幅延在方向)に延びている。組織図中の小さな方眼の各々は、この場合、経糸3が緯糸4と交錯する組織点を形成している。この方眼が黒であれば、経糸が上を行く状態にあり、経糸3は、つまり緯糸4の上に位置している。この方眼が白であれば、この場合は、経糸が下を行く状態にあり、経糸3は、緯糸4の下に位置している。図1a、図2図4および図5に共通しているのは、それらが、両面複線斜文織であることである。図3は、この種の組織の変化形である。
【0027】
図で見て、経糸を番号で指示するときは、経糸には、左から右に、1から始めて順にナンバリングする。緯糸は、下から上に、1から始めてナンバリングする。経糸、緯糸ともに同様に、カウントの原点をなしているのは、組織図の第1の左下の方眼である。
【0028】
カウントの原点から、つまり、第1の左下の方眼、ここではつまり、番号1の経糸の方眼から出発して、各個々の経糸3の一循環を見たとき、織方は、次のように書き換えることもできる:まず2つの経糸浮き、その後、1つの経糸沈み、1つの経糸浮き、2つの経糸沈み、1つの経糸浮き、そして最後に1つの経糸沈みである。8枚複線斜文のこの一循環のために、DIN 61 101にしたがって以下の略号が生じる:
【数1】
【0029】
ここで、アルファベットKは、斜文織を表し、アルファベットZは、斜文線方向、ここではZ斜文線を表している。この織方は、したがって両面複線斜文、つまり、複数の斜文線(綾目)を有する安全ベルトウェビングの2つの同じ見た目の製品面を生じさせる。
【0030】
以下に、この織方を、コンバインドツイルともいう複線斜文の基本位あるいは出発位とする。斜文織は、基本的に、一循環の第1の経糸に直接的に隣接する経糸、つまり番号2の経糸が、正確に1つの緯糸分ずらされているように構成されている。このことは、図1aから、番号2の経糸が、番号1の経糸と同じ織方を有しており、最初に挙げた方の経糸が、2番目に挙げた方の経糸に対して1つの緯糸分「上に」ずらされているだけであることに見て取れる。同じことは、番号3の経糸にも当てはまり、番号3の経糸も、再びその直接的な隣糸、つまり番号2の経糸に対して1つの緯糸分「上に」ずらされている。
【0031】
図1bには、番号1の経糸の織方を図1aから取り出して詳細図で示してある。左から見て第8の緯糸4(一循環)の後は、この製織パターンが再び繰り返される。ここには、経糸フロートが、正確に2つであること、つまり、経糸3が、正確に2つの緯糸4の上を、経糸が上を行く状態で延び、かつ同じく正確に2つの緯糸4の下を、経糸が下を行く状態で延びることが、極めて良好に看取可能である。付加的に、両フロートに対して、さらなる単独の経糸浮きと経糸沈みとが存在している。これにより、経糸3毎に一循環内に正確に2つの経糸フロートと、計4つの単独の経糸浮きおよび経糸沈みとが存在している。こうして一循環内には、経糸3毎に見て、このような8枚複線斜文のために、つまり、緯糸4との計6つの交差点(経糸が上を行く状態から経糸が下を行く状態(その逆もまた然り)の際に生じるインタレースポイント)が生じる。これは、比較的高い数であり、その結果、これにより本発明に係る利点は、特に良好に実現され得る。
【0032】
図2は、本発明の第2の実施形態による、図1aの組織図の変化形を示している。この場合も、8枚複線斜文であり、ここでは、斜文線の順番(2/2:1/1)が変更されただけである。織方は、以下の略号により記載され得る:
【数2】
【0033】
ここでも、再び、1つの経糸3の一循環毎に、(正確に)2つの緯糸を越える2つの経糸フロートと、計4つのさらなる単独の経糸浮き/経糸沈みとが存在している。
【0034】
図3には、本発明の第3の実施形態を示してある。ここでも、8枚複線斜文である。この織方のベースにあるのは、やはり図1aの実施形態である。図1aの実施形態から出発して、経糸3を新しく配置している。この場合、而るに図1aの経糸3毎の一循環の番号1ないし8の経糸から出発して、これらの経糸3を相互に組み替え、その結果、而るに図3に示す新規配列の順序が生じる(図1aに示す当初の織方の番号を用いて番号で再現すれば):1-5-2-6-3-7-4-8。
【0035】
図4に示す第4の実施形態は、先の代替的な形態に対して、6枚複線斜文を示している。本実施形態も、各個々の経糸が一循環内に経糸フロート(正確に2つの緯糸の上または下)と、そしてさらに単独の経糸浮きおよび経糸沈みとを有するという本発明による要求にしたがっている。本実施形態のための織方は、以下の略号により記載され得る:
【数3】
【0036】
ここでも、これにより、一循環内の各個々の経糸のために、正確に計2つの経糸フロートと、付加的に計2つの単独の経糸浮き/経糸沈みとが存在している。この織方も、両面複線斜文を生じる。
【0037】
織物であって、これにより本発明に係る安全ベルトウェビング1が少なくとも部分的に製造されている織物は、図1ないし図4のそれぞれの組織図により説明され得る。これらの実施形態において個々に示したような織様を1つの単一の安全ベルトウェビングにおいて組み合わせることが可能である。このような安全ベルトウェビング1の織物は、この場合、複数のストリップをその幅延在方向(緯糸方向)に有していることができるであろう。この場合、織方は、ストリップ毎に切り替わり得る。而して、パターンは、安全ベルトウェビングの幅にわたって、第1の経糸循環(6または8つの経糸)の後、変化し得る。単一の織様の複数のストリップを設けることも可能である。安全ベルトウェビング1が、従来技術により畝織、袋織、斜文織として、またはRukaflex(登録商標)エッジとして形成されていてもよいエッジも備えていることも、可能である。
【0038】
図5に示す第5の実施形態は、複線斜文からなる織物を備える安全ベルトウェビング1用の例示的な組織図を示している。この織物は、幅方向に7つの個々のストリップ1~7に区分されている。左側と右側のストリップ1および7は、安全ベルトウェビングのエッジを形成している。両ストリップ1および7は、ここでは4枚である。このことは、しかし、必須ではない。ストリップ2~6は、ここでは8枚である。ストリップ2,4および6の織様は、図1aに示す組織図(基本織)に相当する。ストリップ2,4および6の織様は、Z斜文線を有している。ストリップ3および5は、相応にその斜文線の点で相違している(ここでは、S斜文線)。而して、ここでは幅にわたってS斜文線とZ斜文線とが切り替わっているだけである。このような配置により、特によい見映えの製品柄、パターンおよび外観形態が達成され得る。
【0039】
ここで例示的に挙げた両織物により、要求される機械的特性および使用特性における言及した利点が、特に良好に達成され得る。それというのも、本発明に係る複線斜文織は、概して、比較的高い数の組織点、極めて高い耐すべり性および安定性により、かつ付加的に、それぞれ直に隣接する経糸の、可能な、拡張された対向織の結果、ポイントを獲得するからである。
【0040】
図6には、車両搭乗者用の拘束システム5を示してあり、本発明は、このような拘束システム5にも関する。拘束システム5は、安全ベルトを備え、安全ベルトは、織られて本発明に係る安全ベルトウェビング1から製造されている。安全ベルトウェビング1は、リトラクタ6内に、非利用時、つまり、バックルを外した場合、(一部)自動で巻き取られる。安全ベルトウェビング1の本発明による形成により、而るに、従来技術と比較して明らかに薄く、そのような公知の安全ベルトウェビングと実質的に同じ機械的特性および使用特性を有する安全ベルトウェビング1が提示され得る。本発明による織様により、使用される材料は、より少なくすることができ、それにもかかわらず、この織物は、もはや安定性を毀損しない。これにより、車両搭乗者のための比較的良好な使用特性、例えば安全ベルトの触り心地および着け心地が達成され得る。バックルタング内でのねじれの恐れは、低下され、安全ベルトウェビング1は、リトラクタ6内での、バックルタングに沿った、かつ偏向部に沿った、引き出しおよび引き戻しによる擦れに対する抵抗力は、より高い。結局、より薄く、比較的高い寿命を有する安全ベルトウェビング1が提示され得る。
【符号の説明】
【0041】
1 安全ベルトウェビング
2 織物
3 経糸
4 緯糸
5 拘束システム
6 リトラクタ
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】