(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物またはキット
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231027BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20231027BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20231027BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20231027BHJP
A61K 39/25 20060101ALI20231027BHJP
A61K 39/20 20060101ALI20231027BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231027BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231027BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231027BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20231027BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20231027BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20231027BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231027BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20231027BHJP
C12N 15/38 20060101ALN20231027BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231027BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/02
A61K39/00 K
A61K39/002
A61K39/00 J
A61K39/00 Z
A61K39/25
A61K39/20
A61P3/04
A61P43/00 105
A61P37/04
A61K48/00
A61K38/20
A61K38/21
A61K38/19
A61P37/02
C12N15/40 ZNA
C12N15/38
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524776
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2021014976
(87)【国際公開番号】W WO2022086300
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138615
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウン-ソム
(72)【発明者】
【氏名】ソ,キ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,スン-ヘ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,テウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スジン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
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4C085GG03
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4C085GG08
4C085GG10
(57)【要約】
本発明は、外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物であって、好ましくは、前記組成物は、肥満の治療または予防のためのワクチン組成物として提供され得る。前記ワクチン組成物は、皮下脂肪細胞除去用の組成物として提供され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項2】
前記ターゲット組織は、脂肪細胞、筋肉細胞、骨細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、分泌細胞および血細胞よりなる群から選ばれたいずれか1種以上の細胞からなる組織であることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項3】
前記薬学組成物は、脂肪細胞の減少または死滅を誘導する、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項4】
前記組成物に含まれる外来抗原は、非ヒト由来抗原、ウィルス由来抗原、細菌由来抗原、真菌由来抗原、原生動物由来抗原、鳥類由来抗原、寄生虫由来抗原、マイコプラズマ由来抗原、および植物由来抗原よりなる群から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項5】
前記外来抗原は、黄熱ウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、および風疹ウィルスよりなる群から選ばれたいずれか1種以上のウィルス、またはこれらのエピトープであることを特徴とする、請求項4に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項6】
前記遺伝物質は、DNAまたはRNAであることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項7】
前記遺伝物質は、配列番号1の核酸分子、および配列番号5または6のペプチドを暗号化する核酸分子よりなる群から選ばれたいずれか1種以上を含む、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項8】
前記ワクチン組成物は、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含む、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項9】
前記サイトカインは、IL-12、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-1、IL-6、INF-α、INF-β、TNF-α、およびTNF-βよりなる群から選ばれたいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項8に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項10】
前記外来抗原は、細胞内免疫反応を誘発させることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項11】
前記組成物は局所的に働き、
前記ワクチン組成物は、少なくとも1種以上の免疫環境の造成のためのタンパク質またはこのエピトープが先に個体に適用された後に適用されることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項12】
前記遺伝物質は、経口、経皮、筋肉、腹膜、静脈、皮下、または鼻腔ルートを通じた注射、または
エレクトロポレーション法、遺伝子銃、リポソーム、デンドリマー(dendrimers)、ナノ粒子(nano particles)、またはトランスファー(transfer)ベクターを通じてターゲット組織に投与されることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項13】
前記組成物に含まれている遺伝物質の投与量は、1回接種時に0.1~1000μg/siteとなることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物。
【請求項14】
(a)外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物と、
(b)前記ワクチンの投与のための投与ガイドブックと、
を含む、キット。
【請求項15】
前記キットには、(c)前記(a)組成物の投与前に免疫環境の造成のためのタンパク質抗原またはこのエピトープを含む組成物がさらに含まれている、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記(a)ワクチン組成物は、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含む、請求項14に記載のキット。
【請求項17】
外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物が充填されたシリンジ。
【請求項18】
前記シリンジは、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含む、請求項17に記載のシリンジ。
【請求項19】
少なくとも1つの外来抗原をコードする遺伝物質を含む、皮下脂肪細胞除去用の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含む、請求項19に記載の皮下脂肪細胞除去用の組成物。
【請求項21】
個体のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小方法であって、
外来抗原をコードする遺伝物質を個体のターゲット組織に投与するステップを含む、方法。
【請求項22】
前記方法は、個体の脂肪細胞の減少または死滅を誘導することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、IL-12、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-1、IL-6、INF-α、INF-β、TNF-α、およびTNF-βよりなる群から選ばれたいずれか1種以上のサイトカインを同時にまたは順次に投入するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月23日付け出願の韓国特許出願番号第10-2020-0138615号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、外来抗原をコードする遺伝物質を含んで免疫反応を誘導して、ターゲット組織の大きさまたは体積を縮小するための薬学組成物であって、詳細には、肥満を予防および/または治療する治療用ワクチン組成物に関する。より詳細には、抗原遺伝子による免疫療法にてターゲット部位を構成する細胞の死滅を誘導する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
「肥満」とは単に体重が多いことを意味するよりは、「体内に過剰な量の体脂肪がたまっている状態」のことをいい、糖尿をはじめとする代謝疾患、心血管疾患、癌など様々な慢性疾患の発病率を高める危険因子として捉えられている。脂肪の過剰な蓄積であると定義される肥満は、脂肪組織の代謝、内分泌および免疫機能の喪失を伴い、かような脂肪組織の病的リモデリングが主な代謝疾患の病態生理要因として注目を集めている。
【0004】
肥満の治療のための薬物治療には、脂肪分解酵素抑制剤である「オルリスタット(一般名、Orlistat)」を使うが、これは、体内にある脂肪の一部を身体の外に排出する役割を果たすが、副作用としては、下痢および脂肪便などをきたす。なお、肥満の治療のための薬物の場合、多くの副作用があるだけではなく、女性の身体のうち、分解を不所望の部位の脂肪をも分解してしまうことがある。現在安全に使える食欲抑制剤はないのが現状であり、合併症がある高度肥満症患者の場合には胃腸管に対する肥満手術が役立つ可能性はある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如き問題を解決するために、本発明は、ターゲット組織に投与してターゲット組織の大きさまたは体積を縮小することのできる新規な方法または薬学組成物を提供することを目的とする。より具体的に、前記方法または薬学組成物は、所望の部位に局所的に投与されて肥満細胞を死滅させることができる。別の態様は、新規な肥満治療剤または治療用ワクチンを提供することを目的とする。前記ワクチン組成物は、少なくとも1種以上の予備ワクチンが個体に適用された後に適用され得る。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、局所肥満を解消し、しなやかで滑らかなボディラインに仕上げることのできる新規な形態の肥満治療剤または治療用ワクチンを提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、免疫システムが抗原タンパク質を発現させる脂肪細胞を攻撃して脂肪細胞の死滅を促して、脂肪細胞が死滅するものの、不所望の部位の脂肪細胞には影響を及ぼさない新規な脂肪細胞減少用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、人体の外部から由来した抗原をコードする遺伝物質をターゲット組織に投与し、投与された遺伝物質により前記ターゲット組織を構成する細胞において抗原遺伝子が発現すれば、これに対して既存の免疫が作用して当該細胞を死滅させるという新規な概念の組織の大きさまたは体積の縮小用薬学組成物(好ましくは、ワクチン組成物)を提供し、より具体的に、肥満の予防または治療用ワクチンまたは皮下脂肪細胞除去用の組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明のある態様は、人体の外部から由来した抗原をコードする遺伝物質をターゲット組織に投与し、投与された遺伝物質により前記ターゲット組織を構成する細胞において抗原遺伝子が発現すれば、これに対して既存の免疫が作用して当該細胞を死滅させるという新規な概念の組織の大きさまたは体積の縮小方法を提供する。
【0010】
本発明の発明者等は、免疫反応を用いて、ターゲット部位を構成する細胞を死滅させて前記細胞が構成する組織を縮小することができるということを見出し、本発明を完成するに至った。特に、本発明を通じて、脂肪細胞の効果的な除去および/または減少を成し遂げることができ、これを通じて、体型の校正および肥満治療の効果を奏することができるということを実験を通じて確認するようになった。
【0011】
本発明のある実施形態は、ターゲット組織に投与して前記組織を縮小するための薬学組成物であって、前記組成物は、外来抗原をコードする遺伝物質を含む。本発明のある実施形態は、外来抗原をコードする遺伝物質のターゲット細胞の死滅、ターゲット組織縮小用途を提供し、より具体的に、前記遺伝物質の局所脂肪組織の縮小用途を提供する。好ましくは、前記外来抗原をコードする遺伝物質は、黄熱ウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、および風疹ウィルスよりなる群から選ばれたいずれか1種以上のウィルス、またはこれらのエピトープを含む。ある態様は、前記ウィルスまたはこれらのエピトープのターゲット細胞の死滅またはターゲット組織の縮小用途を提供することができる。前記組織は、特に制限されるものではなく、例えば、脂肪細胞、筋肉細胞、骨細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、分泌細胞および血細胞よりなる群から選ばれたいずれか1種以上の細胞からなる組織を含み、好ましくは、前記組織は、脂肪組織または筋肉組織であり得、より好ましくは、皮下脂肪組織であり得る。前記組成物は、脂肪細胞、特に、皮下脂肪に分布された脂肪細胞の減少または死滅を誘導することができる。
【0012】
本発明の発明者等は、既存の脂肪除去手術、薬物などに比べて副作用が少なく、局所のターゲット部位(例えば、特定の部位の脂肪組織)のみをターゲットとして体つき補正や体型補正の効果を期待できる組成物、またはキットを提供する。本発明は、ターゲット部位に局所的に働き、免疫療法を用いたターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用薬学組成物を提供する。本発明は、好ましくは、脂肪細胞、特に、皮下脂肪細胞の死滅を誘導する薬学組成物、ワクチン組成物、または治療用ワクチン組成物を提供する。
【0013】
本明細書中で使用される「ターゲット組織またはターゲット部位」とは、大きさまたは体積を縮小するための同じ構造と機能を有する細胞集団のことを意味する。前記「体つき補正または体型補正」とは、不所望の部位に蓄積した組織(例えば、脂肪組織)を構成する細胞を死滅または減少させて組織の大きさや体積が縮小されて外形的にスリムになるという効果を有することを意味する。本明細書中で使用される「局所的に働く」とは、注射投与部位を基準として半径10cm、9cm、8cm、7cm、6cm、5cm、4cm、3cm、2cm、1cmの前後において細胞の死滅または組織の大きさまたは体積の縮小効果をもたらすことを意味し、好ましくは、3cm前後の範囲において効果をもたらすことができる。
【0014】
個体が抗原に晒されたとき、免疫細胞が機能的に食作用(Phagocytosis)と抗原提示(Antigen presenting)の機能をすることになる。ある実施形態において、免疫反応が誘導できるようにタンパク質抗原、またはこれらのエピトープなどの外来物質を意図的にまたは非意図的に体内に浸透させて免疫環境が造成された後、本発明の薬学組成物を投与してもよい。また、別の実施形態を通じて、前記薬学組成物を体内に繰り返し投与してもよい。さらに別の実施形態において、本発明の薬学組成物に含まれている遺伝物質を個体に投与して既存の免疫を誘導し、次いで、繰り返し行われた組成物の投与により人体内の単球(Monocyte)、好中球(Neutrophil)、リンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(Natural killer cell)、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell)、免疫細胞、生理活性物質、抗体、補体など免疫作用により分泌された物質により前記抗原が提示された脂肪細胞は死滅して脂肪組織の大きさまたは体積が減少することができる。前記組成物は、体つき補正または体型補正の用途に利用可能であり、局所部位の体型補正の用途に利用可能である。なお、前記組成物は、筋肉組織に投与されてボトックスなどの皮膚シワの改善効果、筋肉の収縮を通じた体つき補正用途などにも利用可能である。のみならず、陽性または悪性腫瘍の除去、または皮膚のいぼの除去にも利用可能である。
【0015】
前記薬学組成物は、少なくとも1つ以上の抗原をコードする遺伝物質を含み、前記遺伝物質は、DNAおよび/またはRNAを含むだけではなく、前記遺伝物質に関連したアンチセンスヌクレオチド(antisense nucleotide)、mRNA(伝令RNA)、ssRNA(Single-Stranded RNA、一本鎖RNA)、cDNA(相補的DNA)なども含む。前記抗原は、免疫反応を引き起こして抗体を産生するようにする物質であって、腫瘍抗原、ウィルス、バクテリア、タンパク質、または抗原のエピトープを含み得る。前記抗原は、免疫を誘導できる限り、制限なしに含まれ得、前記抗原は、これに何ら限定されないが、既に当業界に公知の非ヒト由来抗原、ウィルス由来抗原、細菌由来抗原、真菌由来抗原、原生動物由来抗原、鳥類由来抗原、寄生虫由来抗原、マイコプラズマ由来抗原、および植物由来抗原よりなる群から選ばれるいずれか1種以上であり得、抗原は、ペプチドまたは完全なタンパク質またはその一部として発現し得る。具体的に、ウィルスの非制限的な例には、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、ヒト免疫不全ウィルス、例えば、HIV-1;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウィルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウィルス、ヒトコクサッキーウィルス、ライノウイルス、エコーウィルス);カリシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を招く菌株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウィルス、ルベラウィルス);フラウイルス科(Flaviridae)(例えば、デングウィルス、脳炎ウィルス、黄熱ウィルス);コロノウイルス科(Coronoviridae)(例えば、コロナウィルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウィルス、狂犬病ウィルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウィルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウィルス)、流行性耳下腺炎ウイルス、ハシカウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウィルス);ブニヤウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンタウィルス、ブニヤウィルス、フレボウィルスおよびナイロウィルス);アレナウイルス科(Arenaviridae)(出血熱ウィルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウィルス、オルビウィルスおよびロタウィルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウィルス);パルボウイルス科(Parvovirida)(パルボウィルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウィルス、ポリオーマウィルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(多くのアデノウィルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘・帯状疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、ヘルペスウィルス;ポックスウイルス科(Poxviridae)(バリオラウイルス、ワクシニアウィルス、ポックスウィルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカ豚熱ウィルス)が含まれる。細菌由来抗原の非制限的な例には、パスツレラ(Pasteurella)、スタフィロウコカイ(Staphylococci)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種、およびサルモネラ(Salmonella)種が含まれる。感染性バクテリアの非制限的な例には、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マイコバクテリア属(Mycobacteria spp)(例えば、M.トゥバキュロウシス(tuberculosis)、M.アビウム(avium)、M.イントラセルラーレ(intracellulare)、M.カンサシ(kansasii)、M.ゴルドネ(gordonae))、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ネイセリア・ゴノローエ(Neisseria gonorrhoeae)、ネイセリア・メニンギティディス(meningitides)、リステリア・モノサイトゲンス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコッカス・パイオゲンス(Streptococcus pyogenes)(グループAストレプトコッカス)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(agalactiae)(グループBストレプトコッカス)、ストレプトコッカス(ビリダンスグループ)、ストレプトコッカス・フェカーリス(faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(bovis)、ストレプトコッカス(アナエロビック種)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(pneumonia)、病原性カンピロバクター属(Campylobacter sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、ヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、バチルス・アントラシス(Bacillus antracis)、コリネバクテリウム・ジフテリア(corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム属、エリシペロスリックス・ルーシオパチー(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム・ペルフリンガー(Clostridium perfringers)、クロストリジウム・テンターニ(tetani)、エンテロバクター・アエロゲンス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、パスツーレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス属(Bacteroides sp.)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネマ・ペルテヌー(pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リッケットシア(Rickettsia)、及びアクチノミセス・イスラエリ(Actinomyces israelli)から由来した抗原が非制限的に含まれ得る。本発明において用いられる細菌性病原体の非制限的な例には、ストレプトコッカス・ニューモニエ、モラクセラ・カタラーリス、マイコプラズマ・ニューモニエ、クレブシエラ・ニューモニエ、ヘモフィラス・インフルエンザ、スタフィロコッカス・アウレウス、クラミジア・ニューモニエ、レジオネラ・ニューモフィラ、またはボルデテラ・パーツシスまたは肺において病原性であるあらゆる細菌が含まれる。真菌由来抗原の非制限的な例には:アスぺルギルス・フミガタス、ブラストミセス属、コクシジオイデス・イミチス、コクシジオイデス・ポサダシ、クリプトコックス・ネオフォルマンス、クリプトコックス・ガッティ、フザリウム属、ヒストプラスマ・カプスラツム、パエシロマイセス属、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス、ペニシリウム・マルネッフェイ、ニューモシスチス・イロベチイ、シュードアレシェリア・ボイディー、スケドスポリウム・アピオスペルムム、リゾプス属、ムコール属、アブシジア属、クニンガメラ属、スケドスポリウム・プロリフィカンス、スタキボトリス・カルタルム、トリコデルマ・ロンギブラキアタム、トリコスポロン属などから由来した抗原であり得る。寄生虫由来の抗原性成分を含み得、この例としては:セストデス(サナダムシ)、タエニア・サギナタ、タエニア・ソリウム、ジフィロボスリウム種、ヒメノレピス・ナナ、ヒメノレピス・ディミヌータ、ジピリジウム・カニヌム、ネマトデス(回虫)、Aアスカリス・ルムブリコイデス、ストロンギロイデス・ステルコラリス、ネカトル・アメリカヌス、アンシロストマ・デュオデナレ、アンシロストマ・カニヌム、トリチュリス・トリチュラ、カピラリア・フィリピネンシス、トリコストロンギルス種、トリチネラ種、ネカトル・アメリカヌス、アニサキスおよび亜種、アンジオストロンギルス・コスタリセンシス、エンテロビウス・ベルミクラリス、トレマトデス(吸虫)、ファシオロプシス・ブスキ、ヘテロフィエス種、エキノストーマ種、クロノルチス・シネンシス、オピストルキス種、ファシオラ種、メタゴニムス・ヨコガワイ、シストソーマ・マンソニ、シストソーマ・ジャポニクム、シストソーマ・メコンギ、シストソーマ・インターカラーツム、エキノストーマ種およびパラゴニムス種から由来した抗原が挙げられる。好ましくは、組織の大きさの減少の側面を考慮して、黄熱ウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、風疹ウィルス、インフルエンザウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、およびハシカウィルスよりなる群から選ばれたいずれか1種以上のウィルスを含み得、好ましくは、ハシカウィルスを含み得る。好ましくは、前記抗原をコードする遺伝物質は、配列番号1で示される核酸配列を有する核酸分子を含み得る。あるいは、前記遺伝物質は、配列番号5または6を有するペプチドを暗号化する核酸分子を含み得る。
【0016】
また、前記遺伝物質は、配列番号1と少なくとも85%以上の配列相同性を有し、ターゲット組織の大きさまたは体積を縮小できる(すなわち、本発明の目的を達成できる)核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み得る。前記配列相同性には、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上の配列相同性が含まれ得る。あるいは、配列番号5または6のペプチドを暗号化する核酸分子と少なくとも85%以上の配列相同性を有し、ターゲット組織の大きさまたは体積を縮小できる(すなわち、本発明の目的を達成できる)核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み得る。前記配列相同性には、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上の配列相同性が含まれ得る。
【0017】
前記組成物は、IL-12、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-1、IL-6、INF-α、INF-β、TNF-α、およびTNF-βよりなる群から選ばれたいずれか1種以上のサイトカインをコードする遺伝物質をさらに含み得、前記遺伝物質により発現する抗原による免疫刺激効果をより一層極大化させるために、IL-12を含むことが好ましい。
【0018】
前記組成物は、前記遺伝物質を動物細胞において伝達するベクターに含めて提供され得る。前記核酸は、発現ベクター、例えば、プラスミドなどに含まれて提供され得、好ましくは、核酸は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞における発現に適した転写要素を含み得る。本明細書中で使用される「ベクター」は、投与しようとする遺伝物質を細胞内に輸送することができる。前記ベクターは、遺伝物質の伝達のために使用可能である。好ましくは、このようなベクターは、発現制御配列に作動可能に連結されたコード配列を含み得る。
【0019】
好ましい実施態様において、前記組成物は、黄熱ウィルス(Yellow fever virus(17D))遺伝子の構造タンパク質に相当する遺伝子を動物細胞においてタンパク質発現可能なようにするプラスミド(例えば、gWizTMベクター)に含め得る。前記黄熱ウィルスは制限なしに使用可能であり、例えば、前記黄熱ウィルスは、17D株を含み得るが、これに限定されない。前記プラスミドには、ウィルスを暗号化する核酸分子またはこの断片、変異体または類似体を含み得る。例えば、配列番号1またはこの断片、変異体、または類似体を含み得る。
【0020】
好ましい実施態様において、前記組成物は、風疹ウィルス(Rubella virus)遺伝子の構造タンパク質に相当する遺伝子を動物細胞においてタンパク質発現可能なようにするプラスミド(例えば、gWizTMベクター)に含め得る。前記風疹ウィルスは制限なしに使用可能であり、例えば、前記風疹ウィルスは、RA27/3株を含み得るが、これに限定されない。前記ウィルスを暗号化する遺伝子は、スパイクグリコプロテイン(spikeglyco proteins)を暗号化する遺伝子を含み得る。前記スパイクグリコプロテインの例には、E2-E1異型接合体が含まれ得る。例えば、配列番号5のタンパク質を暗号化する核酸分子またはこの断片、変異体または類似体を含み得る。
【0021】
好ましい実施態様において、前記組成物は、水痘・帯状疱疹ウィルス(Varicella zoster virus)遺伝子の構造タンパク質に相当する遺伝子を動物細胞においてタンパク質発現可能なようにするプラスミド(例えば、gWizTMベクター)に含め得る。前記水痘・帯状疱疹ウィルスは制限なしに使用可能であり、例えば、前記水痘・帯状疱疹ウィルスは、Oka株を含み得るが、これに限定されない。前記ウィルスを暗号化する核酸分子は、表面タンパク質であるgEタンパク質を暗号化する核酸分子を含み得る。例えば、配列番号6のタンパク質を暗号化する核酸分子またはこの断片、変異体または類似体を含み得る。
【0022】
ここで、「この断片、変異体または類似体」とは、本発明のタンパク質、ペプチド、核酸、核酸分子、または遺伝子が達成しようとする目的を達成するが、配列相同性が85%以上、90%以上、95%以上、99%以上であり得るタンパク質、ペプチド、核酸、核酸分子、または遺伝子の一部のことを意味するものと理解され得る。例えば、「前記断片、変異体または類似体を含む」とは、配列番号1の核酸分子、配列番号5を暗号化する核酸分子、または配列番号6を暗号化する核酸分子、または前記核酸分子が暗号化するタンパク質が達成可能な目的を達成できる限り、本発明の範囲から除外されないという意味であると理解され得る。
【0023】
本発明の外来遺伝物質は、好ましくは、ウィルスから由来した遺伝物質を含み得、前記ウィルスは、好ましくは、黄熱ウィルス、風疹ウィルス、および/または水痘・帯状疱疹ウィルスを含み得る。前記ウィルスは、ターゲット組織、好ましくは、脂肪細胞の死滅、組織の大きさの縮小効果に優れている可能性がある。なお、効果が速やかに現れ、しかも、副作用が少ない。のみならず、注射剤として長期にわたって保管しても変質する虞が少ない。
【0024】
別の実施態様において、前記組成物は、細胞性免疫反応を増進可能な免疫増進剤を含むことにより、脂肪細胞の死滅、またはターゲット組織の縮小効果をより一層増進させることができる。前記組成物は、免疫増強効果を向上可能な免疫増強剤をコードする遺伝物質、例えば、インターロイキン12(IL-12)をコードする補助遺伝物質をさらに含み得る。前記補助遺伝物質は、例えば、pSF-CMV-CMV-Sbflベクターにコード領域を挿入して提供し得る。
【0025】
本発明の組成物は、前記サイトカイン、これをコードする遺伝子または他の免疫補助剤のみならず、当業界において広く用いられるような薬剤学的担体または賦形剤と併用可能である。前記組成物は、人体または獣医用に剤形化されて、様々なルートで投与され得る。投与ルートとしては、経口、経皮、筋肉、腹膜、静脈、皮下、鼻腔ルートが利用可能であるが、これに制限されない。より好ましくは、経皮、筋肉、腹膜、皮下ルートが利用可能である。また、前記組成物は、活性物質が標的細胞に移動可能な任意の装置またはルートにより投与可能であり、ターゲット組織または組織を構成する細胞に本発明の組成物、または前記組成物に含まれる遺伝物質が伝達可能である限り、投与方法は特に制限されない。例えば、注射、マイクロニードルパッチなどに剤形化されて提供され得る。例えば、注射に用いられる場合、注射剤は、前記遺伝物質の効果を阻害しない範囲内において、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて製造することができ、変質の防止のための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、微生物の発育を阻止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなど)などの薬剤学的担体を含み得る。マイクロニードルパッチとして使用される場合、前記微細針は、不溶解性および溶解性微細針を網羅する。
【0026】
また、前記組成物に含まれる遺伝物質および/または補助遺伝物質は、当業界における通常の遺伝子伝達方法に従って体内に伝達され得る。非制限的な例として、遺伝子伝達方法であるエレクトロポレーション法(電気穿孔法)や遺伝子銃などの物理的な伝達方法、脂質-遺伝子結合体(Lipid-DNA complex:Lipoplex)、ポリマー-遺伝子結合体(Polymer-DNA complex:Polyplex)、リポソーム、デンドリマー(dendrimers)、ナノ粒子(nanoparticles)、または他の適切なトランスファー(transfer)ベクターなどの化学的な伝達方法などがいずれも使用可能である。
【0027】
本発明の組成物は、薬剤学的な有効量にて投与する。用語「薬剤学的有効量」とは、組成物が治療、改善、または予防効果を示せるか、あるいは、ワクチン効果を示せるほどの十分な量のことを意味し、また、副作用や深刻なまたは過剰な免疫反応を引き起こさないほどの量のことを意味する。本発明の組成物は、免疫反応を誘導し、細胞の死滅を誘導することを目指すという特性からみて、遺伝物質を投与することができ、2~3日おきに4~8回、好ましくは、5回投与することが好ましい。上記のように投与したとき、ターゲット部位の細胞の死滅により組織の減少または縮小効果を得ることができる。前記組成物は、多量または多回投与すれば投与するほど、細胞死滅効果に違いが出ることができ、部位ごとに適切な投与量を調節して使用することができる。
【0028】
本発明の別の態様は、タンパク質抗原をコードする遺伝物質、前記遺伝物質を含むベクター、またはこれらを含む組成物を個体のターゲット組織に投与するステップを含む、組織の大きさまたは体積を縮小または減少させる方法を提供する。前記方法は、好ましくは、皮下脂肪組織を構成する細胞を死滅させることができる。前記i)方法またはii)前記タンパク質抗原をコードする遺伝物質、前記遺伝物質を含むベクター、またはこれらを含む組成物、またはこれを含むキットは、個体の肥満症を改善または治療するための用途、シワの改善用途、筋肉の縮小用途、陽性または悪性腫瘍の除去または縮小用途、いぼの除去用途などに使用可能であり、美容目的で目元の脂肪袋を除去する用途に使用可能であり、これを通じて、目元のクマを緩和するための用途に使用可能である。
【0029】
前記方法は、前記遺伝物質、前記遺伝物質を含むベクター、またはこれらを含む組成物をターゲット組織に投与する前に体内の免疫環境を造成するステップをさらに含み得る。前記体内免疫環境を造成するステップは、免疫反応が誘導可能な外来物質を投与するステップを含み得る。前記外来物質は、タンパク質を抗原として用いる物質であれば、制限なしに含まれ得る。
【0030】
本発明のある態様は、様々な適応症の治療、改善、または予防用途に提供されるだけではなく、外形の改善のための美容目的にも提供され得る。
【0031】
本発明の別の実施形態は、(a)外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物、および(b)前記ワクチンの投与のための投与ガイドブックを含む、キットを提供する。前記キットには、(c)前記(a)組成物の投与前に免疫環境の造成のためのタンパク質抗原またはこのエピトープを含む組成物がさらに含まれ得る。ここで、前記(c)は、少なくとも1種以上のプレワクチン(pre-vaccine)または免疫反応の誘導のための組成物であると理解され得る。
【0032】
この開示において言及された「プレワクチン」は、本発明のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物が投与される前に投与されるワクチンであると理解され得、既存の免疫を得るために本発明のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物が投与される前に投与されるワクチン組成物であると理解され得る。前記プレワクチンは、本発明のターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物に含まれる抗原物質と同じ抗原物質を含み得る。例えば、(a)外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物は、黄熱ウィルス、風疹ウィルス、および/または水痘・帯状疱疹ウィルスを含み得、(c)もまた、黄熱ウィルス、風疹ウィルス、および/または水痘・帯状疱疹ウィルスを含み得る。
【0033】
前記(a)ワクチン組成物は、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含み得、前記(a)組成物の免疫効果の上昇のために使用可能な物質は、制限なしに含まれ得る。前記サイトカインは、IL-12、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-1、IL-6、INF-α、INF-β、TNF-α、およびTNF-βよりなる群から選ばれたいずれか1種以上を含み得る。
【0034】
本発明のキットにおいて、薬剤学的組成物、抗微生物剤、DNase抑制剤、RNase抑制剤、可溶化剤などと関連して、本明細書中で定義されたような少なくとも1つの追加製剤を含み得る。キットは、例えば、1つ以上のキット部品(例えば、容器)からなり得る。例えば、各容器は、シリンジ、プレフィルドシリンジ、バイアル、瓶、壺、密封スリーブ、エンベロープまたはポーチ、チューブまたはブリスターパックまたは容器が構成要素の早期の混合を防ぐように構成された任意の他の好適な形態であり得る。異なる構成要素のそれぞれは個別的に提供されてもよく、あるいは、異なる構成要素の一部が一緒に(すなわち、同じ容器内に)提供されてもよい。前記キットは、また、任意の成分の投与、投与方法および投与量に関する情報を有する投与ガイドブックを含み得る。
【0035】
本発明の別の実施形態は、外来抗原をコードする遺伝物質を含む、ターゲット組織の大きさまたは体積の縮小用のワクチン組成物が充填されたシリンジを提供する。前記シリンジは、サイトカインをコードする遺伝物質をさらに含み得る。前記サイトカインは、IL-12、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-1、IL-6、INF-α、INF-β、TNF-α、およびTNF-βよりなる群から選ばれたいずれか1種以上を含み得る。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、ターゲットとする特定の部位の細胞を死滅させることができ、組織の大きさまたは体積を縮小または減少させることのできる新規な肥満の改善または治療用の組成物を提供する。前記組成物を投与して体型補正効果または体型改善効果を得ることができる。
【0037】
本発明は、局所肥満を解消し、しなやかで滑らかなボディラインに仕上げることのできる新規な形態の肥満治療剤を提供することができる。
【0038】
本発明の肥満治療剤は、所望の部位の組織のみを選択的に減少させることができ、不所望の部位の組織またはこれを構成する細胞には影響を及ぼさない、選択的な局所部位の縮小に有効である。
【0039】
また、本発明の組成物は、外形の改善のための美容の目的にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】黄熱ワクチン株である17Dウィルスを投与して既存の免疫を誘導した結果を示す。免疫環境の造成を確認するために、前記ワクチン株を投与してから2週間後に血液の血清を分離して黄熱ウィルスに対するIgG抗体価を測定した結果である。NCは、何も投与されていない正常マウス、ND(Normal diet)は、一般食餌が適用されたマウス、HFD(High fat diet)は、高熱量食餌が適用された肥満誘導マウスをそれぞれ示す。
【
図2】治療用ワクチンの投与直前の体重を基準として、投与の前と後における体重の変化を測定した結果である。
【
図3】治療用ワクチンの投与後におけるAT(Adipose tissue、脂肪組織)の重さの変化の度合いを示す結果である。
【
図4】AT(Adipose tissue)の重さの変化率の統計分析の結果を示す。統計分析の結果、MOCK(偽対照群)/治療剤(治療用ワクチン)はP-VALUE 0.03007、MOCK/治療剤+IL-12はP-VALUE 0.0005であって、統計学的にMOCKに比べて治療剤の単独処理および治療剤+IL-12においてそれぞれ有意味な違いが見られた。治療剤の単独処理と治療剤及びIL-12の同時処理の2グループの両方ともにおいて有意味な違いが見られたということが分かる。
【
図5】黄熱ウィルス(17D)のゲノム(GenBank:X03700.1)において構造タンパク質(カプシドタンパク質、prMタンパク質、エンベロープタンパク質、119~2452bp(2334bp))をコードする遺伝物質(配列番号1)をgWiz
TMベクターに挿入したベクターマップを示す。tga(終止コドン)を最後に追加した。
【
図6】IL-12のp35(GenBank:M86672.1)とp40(GenBank:M86671.1)のコーディング領域(p35;127~774bp, p40;35~1042bp)に相当する核酸配列である配列番号2および3をそれぞれコザック配列とともにpSF-CMV-CMV-Sbflベクターに挿入したベクターマップを示す。IL-12 p35は、MCS site Iにおいて制限酵素;EcoRIおよびXhoI部位に挿入され、IL-12p40は、MCS site IIにおいて制限酵素;SalIおよびSpeI部位に挿入された。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の理解への一助となるために、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は色々な別の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものであると解釈されてはいけない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0042】
〔1.脂肪細胞分解用ワクチンの製造〕
実験のために、既存の免疫が誘導された個体に投与するための遺伝物質と前記遺伝物質とともに投与可能な免疫増強剤を下記のようにして製造した。
【0043】
(1)外来抗原の準備
1)黄熱ウィルスの遺伝物質の準備
まず、黄熱ウィルス(17D)のゲノム(GenBank:X03700.1)において構造タンパク質(カプシドタンパク質、prMタンパク質、エンベロープタンパク質、119~2452bp(2334bp))をコードする遺伝物質(配列番号1)を準備した。
【0044】
2)風疹ウィルス(Rubella virus)の遺伝物質の準備
配列番号5を暗号化する、風疹ウィルスのRA27/3株のE1-E2タンパク質をコードする遺伝物質を準備した。
【0045】
3)水痘・帯状疱疹ウィルス(Varicella zoster virus)の遺伝物質の準備
配列番号6を暗号化する水痘・帯状疱疹ウィルスの、Oka株のうちのgEタンパク質をコードする遺伝物質を準備した。
【0046】
(2)動物細胞において発現するベクターの準備
動物細胞においてタンパク質発現可能なgWiz
TMベクターに黄熱ウィルスの遺伝物質を挿入して代表的に脂肪細胞の死滅結果を確認した。ベクターマップは、
図5に示す。
【0047】
(3)補助遺伝物質の準備
次いで、補助遺伝物質として免疫増強剤を準備した。IL-12のp35(GenBank:M86672.1)とp40(GenBank:M86671.1)のコーディング領域(p35;127~774bp, p40;35~1042bp)に相当する核酸配列である配列番号2および3をそれぞれコザック配列とともにpSF-CMV-CMV-Sbflベクターに挿入した。ベクターマップは、
図6に示す。
【0048】
そして、それぞれのIL-12の合成の際に先頭にコザック配列が挿入されている。
【0049】
クローニングされたYF抗原プラスミドとmIL12プラスミドは、DH5aコンピテントセルに形質転換する。当該細胞を大量培養し、プラスミドプレップキットを用いて、プラスミドを回収した。
【0050】
〔2.脂肪細胞の死滅の確認〕
(1)実験方法
1)食事性肥満(Diet induced obese;DIO)マウスの生産
C57BL/6Jの3週齢の雌性マウスに一般飼料および60%高脂肪飼料(high fat diet)をそれぞれ供給した。毎1週間おきに体重を測定し、10~15週間飼育した後、正常マウスの25%以上体重が増えれば、肥満誘導マウスとみなして実験に供した。
【0051】
2)既存の免疫の誘導と抗体価の測定
ワクチン株ウィルスである弱毒化生ウィルスを用いて、既存の免疫の形成を誘導した。前記ワクチン株ウィルスとして17Dウィルスを用いた。
【0052】
マウスの左側の後脚筋肉に17Dウィルス(弱毒化生ウィルス)を2x105pfu/1回の濃度にて2週間おきに3回注射した。最後に注射してから2週間後に血液を収集し、血清を分離した。分離した血清は、ELISA分析を通じて黄熱ウィルス(YFV)に特異的な抗体を検出した。ELISA分析のために、注射に用いられた17Dウィルスを5x104 pfu/wellの濃度にてプレートにコーティングし、分析サンプル(血清)を希釈させて2時間反応させた。洗浄後、抗マウスIgG-HRP二次抗体を1/4000に希釈させて処理した後、2時間反応させた。洗浄後、発色液を入れ、10分間反応させてO.D値を測定した。
【0053】
黄熱ワクチン株である17Dウィルスを投与した後、2週間後に血液の血清を分離してYFVに対するIgG抗体価を測定し、正常的な免疫誘導(抗体)が起こった。
【0054】
結果は
図3に示す。マウス体内の抗体の生成を確認するために、優先的にYFV特異的なgG総抗体価の分析を行った。抗体価の形成の度合いをELISA分析法を用いて吸光度(OD値)にて示した。NC群に比べて、ND、HFDグループにおいて約1のOD値を示し、抗体が生成されたことを確認することができた。したがって、免疫の誘導が起こったことを確認することができる。
【0055】
3)治療用ワクチンの投与および脂肪の重さの測定
正常マウスもしくは肥満が誘導されたマウスにおいてそれぞれ黄熱ワクチンが投与されたグループと投与されていないグループに分けて実験に供した。治療用ワクチンの投与の3日前からすべてのマウスには正常食餌を与えた。治療用ワクチンは、マウスを左と右に分けて、片側の鼠径部脂肪組織と肩甲骨間脂肪組織の2つの部位に注射した。2~3日おきに5回投与され、抗原DNAは100μg/site、IL-12 DNAは50μg/siteの濃度にて総150μg/siteを投与し、投与された抗原DNAの総量に合うように空ベクターが用いられた。治療用ワクチンの投与前と投与後に体重を測定した。最後の治療用ワクチンを投与してから7日目にマウスを解剖し、鼠径部脂肪組織と肩甲骨間脂肪組織を分離し、それぞれの重さを測定した。
【0056】
ND:Normal diet、HFD:60%高脂肪飼料(High fat diet)
【0057】
【0058】
上記の表1の各グループの治療剤の投与後の体重の平均変化率と脂肪組織の減少効果をそれぞれ確認して
図2から
図4に示す。
図2を参照すると、治療用ワクチン(治療剤)(図中のtreatment)の投与前と投与後に体重の測定を行い、投与直前の体重を基準として体重の変化を測定し、何も処理されないグループの場合、体重が徐々に増えたが、MOCK、治療用ワクチン1、治療用ワクチン2のグループはいずれも体重の減少効果を示しており、治療用ワクチン1と2の投与グループがさらに大幅に減少した。また、IL-12が一緒に投与されたグループの場合、体重の減少が最も大きく現れた。
図3は、治療用ワクチンを5回にわたって投与してから7日目にマウスの左側と右側の鼠径部脂肪組織(AT:adipose tissue)と肩甲骨間脂肪組織(AT)を分離してATの重さを測定し、同じ個体において空ベクターもしくは治療用ワクチンが投与されないATを基準として脂肪の重さの減少量を比較した結果を示す。何も投与されないControl及び空ベクターの投与グループと比較したとき、治療用ワクチン1および2を処理したときに、脂肪組織の重さが減少したということが分かる。特に、IL-12を一緒に投与した治療用ワクチン2の処理群において脂肪組織の重さの変化が遥かに大きいということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、肥満を予防および/または治療することができる。本発明は、局所部位に注射して肥満を予防および/または治療することのできる方法を提供する。
【配列表】
【国際調査報告】