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特表2023-546617コンタクトレンズ材料及びコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ材料及びコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20231027BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20231027BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F220/00
C08F226/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525108
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2022077140
(87)【国際公開番号】W WO2022179477
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/152,503
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】葉▲ウェイ▼安
(72)【発明者】
【氏名】李庭育
【テーマコード(参考)】
2H006
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL62T
4J100AM19S
4J100AQ08P
4J100BA02Q
4J100BA03R
4J100BA32Q
4J100BA81Q
4J100CA03
4J100DA49
4J100JA34
(57)【要約】
【課題】本発明は、親水性モノマー、架橋剤、開始剤及びシロキサンモノマーを含む、コンタクトレンズ材料を提供する。
【解決手段】
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記シロキサンモノマーの使用量は、5重量部~50重量部である。また、前記シロキサンモノマーの化学式は、CSiである。Cは炭素原子であり、aは12~55の正数であり、Hは水素原子であり、bは29~121の正数であり、Oは酸素原子であり、cは4~17の正数であり、Nは窒素原子であり、dは0~5の正数であり、Siはケイ素原子であり、eは1~9の正数である。本発明のコンタクトレンズ材料で、コストの低く、量産性及びプロセスが簡単である、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性モノマー、架橋剤、開始剤、及びシロキサンモノマーを含む、コンタクトレンズ材料であって、
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記シロキサンモノマーの使用量は、5重量部~50重量部であり、
前記シロキサンモノマーの化学式は、式(I)に示すとおりである、
コンタクトレンズ材料。
Si 式(I)
式(I)中、
Cは炭素原子であり、aは12~55の正数であり、
Hは水素原子であり、bは29~121の正数であり、
Oは酸素原子であり、cは4~17の正数であり、
Nは窒素原子であり、dは0~5の正数であり、
Siはケイ素原子であり、eは1~9の正数である。
【請求項2】
前記シロキサンモノマーの分子量は400~1,200である、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項3】
前記シロキサンモノマーの分子構造の主鎖にシロキサン繰り返し単位(siloxane repeat units)又はシロキシ(siloxy)を有すると共に、前記主鎖に式(I-1)に示した置換基で修飾されたアミノグリセロール(1-aminoglycerol)の構造フラグメントで構成された第1の親水性セグメントを更に有し、
前記シロキサンモノマーの分子構造の側鎖にポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)で構成された第2の親水性セグメントを更に有する、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【化1】
式(I-1)中、
はメチル基(-CH)又は存在しなくてもよく、
、Rは独立に、H、メチル基(-CH)、又は
;R10はH又はメチル基(-CH)であり、nは0~3の正数である。
【請求項4】
前記シロキサンモノマーの分子構造において、前記主鎖にグラフトする親水性側鎖を有し、
前記親水性側鎖は、x個の炭素原子及びy個の酸素原子を有し、0≦x+y≦10であり、
前記親水性側鎖の前記主鎖から離れた末端に親水性官能基を有し、前記親水性官能基は、ヒドロキシル官能基(-OH基)又はアルコキシ(alkoxy)官能基である、
請求項3に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項5】
前記シロキサンモノマーの化学構造の化学式は、式(II-1)又は式(II-2)に示すとおりである、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【化2】
【化3】
式(II-1)及び式(II-2)中、
はH又はメチル基(-CH)であり、
はO又はNRであり、
はCH-OR又は存在しなくてもよく、
はメチル基(-CH)又は存在しなくてもよく、
、R、R、R及びRは、独立にH、メチル基(-CH)、又は
であり、
10は、H又はメチル基(-CH)であり、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数が1~10の、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、アリールオキシ基(aryloxy)、又はOSiR111213であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、炭素数が1~10の、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、又はアリールオキシ基(aryloxy)であり、
a、c、及びnは独立に0~3の正数であり、bは0~8の正数である。
【請求項6】
式(II-1)又は式(II-2)の化学式において、少なくとも1つのヒドロキシル基は主鎖にある置換基であり、少なくとも1つの酸素、窒素又はその両方を骨格原子とし、前記シロキサンモノマーはイオン性モノマー、線状モノマー又は分岐モノマーである、
請求項5に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項7】
前記親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)、メタクリル酸グリシジル(GMA)、モノメタクリル酸グリセロール(GMMA)、メタクリル酸(MMA)、アクリル酸(AA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリシンビニルカーボネート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチルからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記親水性モノマーの使用量は、40重量部~90重量部である、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項8】
前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(TTEGDMA)、メタクリル酸アリル(AMA)、エチレングリコールジアリルエーテル(EGDAE)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(TEGDAE)、テトラエチレングリコールジアリルエーテル(TTEGDAE)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリルアミド、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン、及びポリエチレングリコールジアクリレートからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記架橋剤の使用量は、0.1重量部~5重量部である、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項9】
前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,2’-アゾジ(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル)バレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)プロピオニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、及び過酸化ベンゾイルからなる群の少なく開始剤とも1つから選択され、
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部である、
請求項1に記載のコンタクトレンズ材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズは、45wt%~80wt%の含水量、40barrers以上の酸素透過係数、1.5MPa以下の弾性係数、80°以下の動的接触角、及び5~10の潤滑性を有することを特徴とする、
コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ材料に関し、特に、酸素透過係数、含水率、及び表面濡れ性において高い特性を備える、コンタクトレンズ材料及びコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルコンタクトレンズ(Hydrogel contact lenses)は、ハイドロゲル(Hydrogel)材料で製造されたコンタクトレンズであり、例えば、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(p-HEMA)などが挙げられる。架橋剤(例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などの化合物)を、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに添加することによって、ハイドロゲル材料の高分子鎖がお互いに織り交ぜて結合することで強度を向上させることができる。
【0003】
又、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの含水率が低い(約35~40%である)。よって、含水率を向上させるために、コンタクトレンズ材料において、p-HEMA以外に、一種以上の親水性モノマー(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸(MMA)など)を更に添加する。これによって、コンタクトレンズの含水率が向上する。
【0004】
親水性モノマーを添加した後、コンタクトレンズの含水率は、効果的に向上する(約70~80%に向上する)。しかしながら、含水量が高いほど、コンタクトレンズの張力及び靭性がいずれも低下するため、含水量を適切に制御する必要があり、通常、45%~60%である。また、1日使い捨てコンタクトレンズは、酸素透過係数(DK)が40~70である必要があるが、ハイドロゲルコンタクトレンズの含水率を如何にも向上させたとしても、酸素透過係数は15~35にとどまる。
【0005】
一方、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、効果的に酸素透過係数(DK)を向上させることができる。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、親水性シリコン含有高分子材料を含むと共に、親水性モノマー(例えば、NVP、DMA、MAAなど)を更に添加して、共重合することによって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成する。しかしながら、シリコーンハイドロゲル材料の表面に疎水性を有するため、雑菌が繁殖しやすく、目が炎症を起こすなどの問題がある。故に、シリコーンハイドロゲル材料の表面には通常、修飾することによって、材料表面の濡れ性を向上させることが必要がある。
【0006】
したがって、上記の問題を解決するための新規のシリコーンハイドロゲル材料が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、コンタクトレンズ材料及びコンタクトレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、親水性モノマー、架橋剤、開始剤、及びシロキサンモノマーを含む、コンタクトレンズ材料を提供する。前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記シロキサンモノマーの使用量は、5重量部~50重量部である。また、前記シロキサンモノマーの化学式は、式(I)に示すとおりである。
【0009】
Si 式(I)
【0010】
Cは炭素原子であり、aは12~55の正数である。Hは水素原子であり、bは29~121の正数である。Oは酸素原子であり、cは4~17の正数である。Nは窒素原子であり、dは0~5の正数である。Siはケイ素原子であり、eは1~9の正数である。
【0011】
好ましくは、前記シロキサンモノマーの分子量は400~1,200である。
【0012】
好ましくは、前記シロキサンモノマーの分子構造の主鎖にシロキサン繰り返し単位(siloxane repeat units)又はシロキシ(siloxy)を有すると共に、前記主鎖に式(I-1)に示した置換基で修飾されたアミノグリセロール(1-aminoglycerol)の構造フラグメントで構成された第1の親水性セグメントを有し、前記シロキサンモノマーの分子構造の側鎖にポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)で構成された第2の親水性セグメントを更に有する。
【0013】
【化1】
【0014】
好ましくは、前記シロキサンモノマーの分子構造において、前記主鎖にグラフトする親水性側鎖を有し、前記親水性側鎖は、x個の炭素原子及びy個の酸素原子を有し、0≦x+y≦10であり、前記親水性側鎖の前記主鎖から離れた末端に少なくとも1つの親水性官能基を有し、前記親水性官能基は、ヒドロキシル官能基(-OH基)又はアルコキシ(alkoxy)官能基である。
【0015】
好ましくは、前記シロキサンモノマーの化学構造の化学式は、式(II-1)又は式(II-2)に示すとおりである。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
好ましくは、次のとおりである。RはH又はメチル基(-CH)である。XはO又はNRである。XはCH-OR又は存在しなくてもよい。Rはメチル基(-CH)又は存在しなくてもよい。R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)、H、メチル基(-CH)、又は
である。R10は、H又はメチル基(-CH)である。R及びRは、それぞれ独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、アリールオキシ基(aryloxy)、又はOSiR111213である。R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、又はアリールオキシ基(aryloxy)である。a、c、及びnは、それぞれ独立に(数は、同様又は異なってもよい)、0~3の正数である。bは0~8の正数である。
【0019】
好ましくは、式(II-1)又は式(II-2)の化学式において、少なくとも1つのヒドロキシル基は主鎖にある置換基であり、少なくとも1つの酸素、窒素又はその両方を骨格原子とし、前記シロキサンモノマーはイオン性モノマー、線状モノマー又は分岐モノマーである。
【0020】
好ましくは、前記親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)、メタクリル酸グリシジル(GMA)、モノメタクリル酸グリセロール(GMMA)、メタクリル酸(MMA)、アクリル酸(AA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリシンビニルカーボネート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチルからなる群の少なくとも1つから選択される。好ましくは、前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記親水性モノマーの使用量は、40重量部~90重量部である。
【0021】
好ましくは、前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(TTEGDMA)、メタクリル酸アリル(AMA)、エチレングリコールジアリルエーテル(EGDAE)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(TEGDAE)、テトラエチレングリコールジアリルエーテル(TTEGDAE)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリルアミド、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン、及びポリエチレングリコールジアクリレートからなる群の少なくとも1つから選択される。好ましくは、前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記架橋剤の使用量は、0.1重量部~5重量部である。
【0022】
好ましくは、前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,2’-アゾジ(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル)バレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)プロピオニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、及び過酸化ベンゾイルからなる群の少なく開始剤とも1つから選択される。好ましくは、前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部である。
【0023】
上記の技術の課題を解決するために、本発明で採用されたもう1つの技術方案は、前記コンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズを提供する。前記コンタクトレンズは、45wt%~80wt%の含水量、40barrers以上の酸素透過係数、1.5MPa以下の弾性係数、80°以下の動的接触角、5~10の潤滑性を有する。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成により、本発明のコンタクトレンズ材料で、コストが低く、量産性及びプロセスが簡単なシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。尚、本発明に係るコンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズの表面は、優れた表面特性(例えば、親水性又は濡れ性)を有する。そのため、前記コンタクトレンズの表面に他の親水性コーティングを与える必要がない。特筆すべきことは、前記シロキサンモノマーの分子構造において、前記シロキサンの繰返し単位又はシロキシは、コンタクトレンズの酸素透過係数(DK)を向上させることができる。尚、前記主鎖及び側鎖のそれぞれにある第1の親水性セグメント及び第2の親水性セグメントによって、コンタクトレンズの表面親水性又は濡れ性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。しかし、提供される詳細な説明は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0026】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0027】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」といった用語を用いて各種の構成又は特徴的化合物を叙述することがあるが、これらの構成又は特徴的化合物は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの構成ともう1つの構成、又は1つの特徴的化合物ともう1つの特徴的化合物を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0028】
本明細書において、特定の数値範囲が記載される際に、「ある値~ある値」との書き方を採用する。その意味は、当該数値範囲に含まれた任意の数値及び当該数値範囲に含まれた任意の数値範囲で限定された狭い数値範囲を含む。具体的に、明細書に明確に記載された当該任意の数値及びより狭い数値範囲に示す通りである。また、明細書の記載を簡潔にするために、本明細書における各化合物又は基の構造は、構造に含まれた炭素原子、水素原子及び炭素水素結合を略すように、骨格式(skeletal formula)で表されることがある。しかしながら、構造式において特定の原子又は基が描かれた場合、構造式における原子又は基を採用する。
【0029】
[コンタクトレンズ材料]
本発明の実施形態は、コンタクトレンズ材料(material for contact lenses)を提供する。前記コンタクトレンズ材料は、表面親水性を有すると共に、前記コンタクトレンズ材料で高い酸素透過係数及び高い含水率を有するコンタクトレンズを形成することができる。
本発明に係る実施形態のコンタクトレンズ材料は、シロキサンモノマー(silicone monomer)と、親水性モノマー(hydrophilic monomer)と、架橋剤(crosslinking agent)と、開始剤(initiator)と、を含む。
【0030】
前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記シロキサンモノマーの使用量は5重量部~50重量部であることが好ましく、20重量部~40重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0031】
前記シロキサンモノマーの化学式は、下式(I)で示すとおりである。
【0032】
Si 式(I)
【0033】
その中、Cは炭素原子であり、aはシロキサンモノマーでの炭素原子が存在する数である。aは12~55の正数であることが好ましく、17~32であることが特に好ましい。Hは水素原子であり、bはシロキサンモノマーでの水素原子が存在する数である。bは29~121の正数であることが好ましく、38~71であることが特に好ましい。Oは酸素原子であり、cはシロキサンモノマーでの酸素原子が存在する数である。cは4~17の正数であることが好ましく、6~14であることが特に好ましい。Nは窒素原子であり、dはシロキサンモノマーでの窒素原子が存在する数である。dは0~5の正数であることが好ましく、0~3であることが特に好ましい。Siはケイ素原子であり、eはシロキサンモノマーでのケイ素原子が存在する数である。eは1~9の正数であることが好ましく、3~5であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、前記シロキサンモノマーの分子量は、400~1,200であることが好ましく、500~700であることがより好ましい。
【0035】
本発明の一つの実施形態において、前記シロキサンモノマーの分子構造の主鎖にシロキサン繰り返し単位(siloxane repeat units)又はシロキシ(siloxy)を有すると共に、前記主鎖に式(I-1)に示した置換基で修飾されたアミノグリセロール(1-aminoglycerol)の構造フラグメントで構成された第1の親水性セグメントを有し、前記シロキサンモノマーの分子構造の側鎖にポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)で構成された第2の親水性セグメントを有する。
【0036】
【化4】
【0037】
本発明の1つの実施形態において、前記シロキサンモノマーの分子構造に、前記主鎖にグラフトする親水性側鎖(hydrophilic branch)を更に有する。その中、前記親水性側鎖は、x個の炭素原子及びy個の酸素原子を有し、0≦x+y≦10であり、前記親水性側鎖の前記主鎖から離れた末端に少なくとも1つの親水性官能基を有し、例えば、ヒドロキシル官能基(-OH基)又はアルコキシ官能基である。
【0038】
上述した構成により、本発明のコンタクトレンズ材料で、コストが低く、量産性及びプロセスが簡単である、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。尚、本発明に係るコンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズの表面は、優れた表面特性(例えば、親水性又は濡れ性)を有する。そのため、前記コンタクトレンズの表面に他の親水性コーティングを与える必要がない。特筆すべきことは、前記シロキサンモノマーの分子構造において、前記シロキサンの繰返し単位又はシロキシは、コンタクトレンズの酸素透過係数(DK)を向上させることができる。尚、前記主鎖及び側鎖のそれぞれにある第1の親水性セグメント及び第2の親水性セグメントによって、コンタクトレンズの表面親水性又は濡れ性を向上させることができる。
【0039】
本発明の一つの実施形態において、前記シロキサンモノマーの化学式は、下式(I-1)、式(I-2)及び式(I-3)に示す通りである。
【0040】
2453NSi式(I-1)
【0041】
286111NSi式(I-2)
【0042】
1738Si式(I-3)
【0043】
その中、前記式(I-1)に示したシロキサンモノマーの分子量(molecular weight)は、583.9354であり、前記式(I-2)に示したシロキサンモノマーの分子量は、672.0405であり、前記式(I-3)に示したシロキサンモノマーの分子量は、422.7365である。
【0044】
本発明の一つの実施形態において、式(I)で示すシロキサンモノマーの骨格式(skeletal formula)は、式(II-1)又は式(II-2)である。
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
その中、RはH又はメチル基(-CH)であり、XはO又はNRであり、XはCH-OR又は存在しなくてもよく、Rはメチル基(-CH)又は存在しなくてもよく、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)H又はメチル基(-CH)又は
であり、R10はH又はメチル基(-CH)であり、R及びRはそれぞれ独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)炭素数が1~10の、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、アリールオキシ基(aryloxy)又はOSiR111213であり、R11、R12及びR13は独立に(即ち、置換基が同様又は異なってもよい)炭素数が1~10の、アルキル基(alkyl)、アリール基(aryl)、アルコキシ基(alkoxy)、アリールオキシ基(aryloxy)であり、その中、a、c及びnはそれぞれ独立に(数が同一またま異なってもよい)0~3の正数(好ましくは、1~3である)であり、bは0~8の正数(好ましくは、1~8である)である。
【0048】
上式(II-1)又は式(II-2)の構造式において、
はシロキサン繰返し単位(siloxane repeat units)又はシロキシ(siloxy)である。
【0049】
更に説明すると、R又はRの置換基
は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)で構成された前記第2の親水性セグメント(hydrophilic segment)である。
【0050】
更に説明すると、X及びXは主鎖の骨格原子又は基であり、若しくは親水性側鎖(hydrophilic branch)である。
【0051】
更に説明すると、少なくとも1つのヒドロキシル基は主鎖にある置換基であり、少なくとも1つの酸素、窒素又はその両方を骨格原子とし、前記シロキサンモノマーはイオン性モノマー、線状モノマー又は分岐モノマーである。
【0052】
本発明の第1の具体的な実施形態において、式(I-1)に示したシロキサンモノマーにおける、式(II-1)に対応する置換基は、以下の通りである。R=CH;X=O;X=CH-OR;a=c=1;b=0;R=none;R
,n=2;R=R=R=R10=H;R=R=OSiR111213,R11=R12=R13=CH
【0053】
本発明の第2の具体的な実施形態において、式(I-2)に示したシロキサンモノマーにおける、式(II-1)に対応する置換基は、以下の通りである。R=R=R=CH;X=O;X=CH-OR;a=c=1;b=2;R=none;R=R
,n=2;R=R=R10=H。
【0054】
本発明の第3の具体的な実施形態において、式(I-3)に示したシロキサンモノマーにおける、式(II-1)に対応する置換基は、以下の通りである。R=CH;X=O;X=CH-OR;a=b=0;c=1;R=R=OSiR111213,R11=R12=R13=CH;R=R=H。
【0055】
本発明の一つの実施形態において、前記親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン(N-vinyl pyrrolidone,NVP)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethyl methacrylate,HEMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(2-hydroxyethyl acrylamide,HEAA)、メタクリル酸グリシジル(glyceryl methacrylate,GMA)、モノメタクリル酸グリセロール(glycerol mono-meth acrylate,GMMA)、メタクリル酸(methacrylic acid,MAA)、アクリル酸(acrylic acid,AA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(N,N-di(methyl meth acryl-amide),DMA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide)、グリシンビニルカーボネート(glycine vinyl carbonate)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチル(2-hydroxy-butyl methacrylate)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0056】
更に説明すると、前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記親水性モノマーの使用量は、40重量部~90重量部であることが好ましく、45重量部~85重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
本発明の一つの実施形態において、前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol di(methacrylate),EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(di(ethylene glycol)di(methacrylate),DEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(tri(ethylene glycol)di(methacrylate),TEGDMA)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(tetra(ethylene glycol)di(methacrylate),TTEGDMA)、メタクリル酸アリル(allyl methacrylate,AMA)、エチレングリコールジアリルエーテル(ethylene glycol di(allyl ether),EGDAE)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(tri(ethylene glycol)di(allyl ether),TEGDAE)、テトラエチレングリコールジアリルエーテル(tetra(ethylene glycol)di(allyl ether),TTEGDAE)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(1,3,5-Triallyl-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione)、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート(1,1,1-tri(methylolpropane)tri(methacrylate))、トリメチロールプロパントリアクリラート(tri(methylolpropane) tri(acrylate))、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetra(acrylate))、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetra(ethylene glycol) di(acrylate))、エチレンジアクリルアミド(ethylene di(acrylamide))、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン(butylene 1,4-di(acrylamide))及びポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol)di(acrylate))からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0058】
更に説明すると、前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記架橋剤の使用量は、0.1重量部~5重量部であることが好ましく、0.1重量部~3重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0059】
本発明の1つに実施形態において、前記開始剤は光開始剤である。
【0060】
本発明の一つの実施形態において、前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)(bis(2,6-difluoro-3-(1-hydropyrro-1-yl)-phenyl)titanocene)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenylbis-(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphine oxide)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-porpanone)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0061】
本発明の一つの実施形態において、前記開始剤は、2,2’-アゾジ(2,4-ジメチルバレロニトリル)(2,2’-Azodi(2,4-dimethylvaleronitrile),ADVN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(2,2’-Azobis(2-methylpropionitrile),AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル)バレロニトリル(2,2’-Azobis(2,4-dimethyl)valeronitrile)、2,2’-アゾビス(2-メチル)プロピオニトリル(2,2’-Azobis(2methyl)propionitrile)、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル(2,2’-Azobis(2-methyl)butyronitrile)、及び過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)からなる群の少なくとも1つから選択されてもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0062】
更に説明すると、前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部であることが好ましく、0.05重量部~1重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0063】
前記コンタクトレンズ材料の紫外線遮断力を向上させるために、本発明の一つの実施形態において、前記コンタクトレンズ材料は、紫外線遮断モノマーを更に含む。前記コンタクトレンズ材料の総重量100重量部として、前記紫外線遮断モノマーの使用量は、0.30重量部~1.80重量部である。前記紫外線遮断モノマーは、ベンゾフェノン(benzophenone)を有するモノマー及びベンゾトリアゾール(benzotriazole)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0064】
前記コンタクトレンズ材料の溶解性を向上させるために、本発明の一つの実施形態において、前記コンタクトレンズ材料は、共溶媒を更に含む。前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記共溶媒の使用量は、3重量部~15重量部である。前記共溶媒は、グリセリン(glycerol,GLY)、2-プロパノール(isopropyl alcohol)、n-ブタノール(n-butanol)、tert-ブタノール(t-butanol)、tert-アミルアルコール(t-amyl alcohol)及びn-ヘキサノール(n-hexanol)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0065】
前記コンタクトレンズ材料に特定の色を与えるため、本発明の複数の実施形態において、前記コンタクトレンズ材料は、染料を更に含む。前記コンタクトレンズ材料の総重量を100重量部として、前記染料の使用量は、0.002重量部~0.050重量部である。前記染料は、リアクティブブルー19(disodium,1-amino-9,10-dioxo-4-[3-(2-sulfonatooxyethylsulfonyl)anilino]anthracene-2-sulfonate)、スーダンIII(1-[4-(Phenylazo)phenylazo]-2-naphthol,Sudan III)、インディゴ(2,2’-Bis(2,3-dihydro-3-oxoindolylidene),Indigo)、及びキノフタロン(disodium 2-(1,3-dioxo-2,3-dihydro-1H-inden-2-yl)quinolone-6,8-disul fonate,Quinoline yellow)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0066】
[コンタクトレンズの製造方法]
本発明の実施形態において、コンタクトレンズの製造方法を更に提供する。前記コンタクトレンズの製造方法は、前記コンタクトレンズ材料を、コンタクトレンズを製造するための金型に注入すると共に、前記コンタクトレンズ材料に硬化成形のプロセスを行うことによって、コンタクトレンズの乾燥半製品を形成した。次に、前記コンタクトレンズの乾燥半製品を、コンタクトレンズの乾燥半製品が膨潤するように緩衝液に放置した(水和プロセス)。そして、緩衝液を包装用容器に充填して、前記コンタクトレンズを前記緩衝液に浸させた。次に、封止工程及び滅菌工程を行った後に、コンタクトレンズの製造を完成した。
【0067】
[コンタクトレンズ]
本発明の実施形態において、コンタクトレンズを更に提供する。前記コンタクトレンズは、上記の実施形態に係るコンタクトレンズ材料で形成される。上記の実施形態に係るコンタクトレンズの配合によれば、本発明の実施形態に係るコンタクトレンズは、酸素透過係数、含水率、及び表面濡れ性において高い特性を有する。
【0068】
本発明のコンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズは、より優れた物理化学特性を有する。より具体的に説明すると、前記コンタクトレンズは、(a)45wt%~80wt%の含水量(water content)(好ましくは、65wt%~80wt%である)、(b)40barrers以上の酸素透過係数(oxygen permeability)(好ましくは、40barrers~60barrersである)、(c)1.5MPa以下の弾性係数(elastic modulus)(好ましくは、0.3MPa~0.6MPaである)、(d)80°以下の動的接触角(dynamic contact angle)(60°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましい)(e)1.350~1.442の屈折率(refractive index)、及び(f)5~10(好ましくは、6~9である)の潤滑性(lubricity)を有する。
【0069】
[実験データ及び測定結果]
以下、実施例S1~S11により、本発明の内容を詳しく説明する。しかしながら、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0070】
実施例S1~S11の製造方法は、前記コンタクトレンズ材料を、コンタクトレンズを製造するための金型に注入すると共に、前記コンタクトレンズ材料に硬化成形のプロセスを行うことによって、コンタクトレンズの乾燥半製品を形成したことを含む。次に、前記コンタクトレンズの乾燥半製品を、コンタクトレンズの乾燥半製品が膨潤するように緩衝液に放置した(水和プロセス)。そして、緩衝液を包装用容器に充填して、前記コンタクトレンズを緩衝液に浸させた。次に、封止工程(封止温度は約125℃)及び滅菌工程(滅菌時間が約30分)を行った後に、コンタクトレンズの製造を完成した。
【0071】
その中、前記コンタクトレンズ材料は、シロキサンモノマーと、親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を主に含む。実施例S1~S11の製造方法はほぼ同一であり、それらの相違点については、実施例S1~S11に係るコンタクトレンズ材料の各成分の使用量が異なったと共に、用いたシロキサンモノマーも異なった。その中、実施例S1~S3は、前記化学式(I-1)を有し、かつ第1の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーを採用した。実施例S4~S6は、前記化学式(I-2)を有し、かつ第2の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーを採用した。実施例S7及びS8は、前記化学式(I-1)を有し、かつ第1の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、前記化学式(I-2)を有し、かつ第2の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、を採用した。実施例S9は、前記化学式(I-1)を有し、かつ第1の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、前記化学式(I-3)を有し、かつ第3の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、を採用した。実施例S10は、前記化学式(I-2)を有し、かつ第2の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、前記化学式(I-3)を有し、かつ第3の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーと、を採用した。実施例S11は、前記化学式(I-3)を有し、かつ第3の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーを採用した。実施例S1~S11の配合は、下表1に示す通りである。
【0072】
実施例S1~S11で採用されたシロキサンモノマーの化学構造においてはいずれも、炭素原子(C)、水素原子(H)、酸素原子(O)、及びケイ素原子(Si)を含むが、窒素原子(N)の含有量が異なっている。前記化学式(I-3)を有し、かつ第3の具体的な実施形態に対応するシロキサンモノマーには、窒素原子が含まれていないため、本発明の実施形態に係るコンタクトレンズ材料において、窒素、酸素及びケイ素の異なる組成を持つコンタクトレンズ材料を有する実験対照組とすることができる。
【0073】
実施例S1~S11で採用されたシロキサンモノマーはいずれも、コンタクトレンズの以下の物理化学特性に良好の表現を与えられる。物理化学特性は、コンタクトレンズ本体の含水量(water content,wt%)、コンタクトレンズ本体の酸素透過係数(oxygen permeability,DK)、コンタクトレンズ本体の弾性係数(elastic modulus,MPa)、コンタクトレンズ表面の動的接触角(dynamic contact angle)、及びコンタクトレンズ表面の潤滑性(lubricity)を含む。コンタクトレンズの物理化学特性の測定方法は、以下の通り説明すると共に、測定の結果は、下表5に示すとおりである。
【0074】
コンタクトレンズ本体の含水量(wt%)について、平衡含水率の測定方法は、コンタクトレンズ表面に水を移動させた後に、前記レンズの重量を測定することによって、水和レンズの重量を得た。オーブンで前記レンズを乾燥して、乾燥状態において測定することによって、乾燥レンズの重量を得た。水和レンズの重量から乾燥レンズの重量を引くことによって、重量差を得た。平衡含水率(wt%)=(重量差/水和レンズの重量)×100%。
【0075】
コンタクトレンズ本体の酸素透過係数(DK)について、酸素透過係数は、O2パーミオメーターを用いて、ISO 9913-1に記載されたポーラログラフィー法に基づいて測定を行った。サンプルを少なくとも12時間平衡した純水に浸して測定を行った。次に、35℃のリン酸塩緩衝液において、O2パーミオメーター(Rheder Development Company製のModel 201T)を用いて酸素透過係数を測定した。酸素透過係数の単位は、Barrerである。
【0076】
コンタクトレンズ本体の弾性係数(MPa)について、弾性係数は、引張試験機(Zwick Z0.5)を用いて測定を行った。レンズのサンプルを幅2mmとなるようにカットした。測定を行う前に、マイクロメータを用いてサンプルの厚みを測定した。測定が開始する時に、サンプルを延伸する移動速度、サンプルの長さ及びチャックの間の距離を一定に保持した。測定の過程において、サンプルをそれぞれに緩衝塩水に放置した。弾性率の単位はMPaであり、伸長率の単位が%であった。
【0077】
コンタクトレンズ表面の動的接触角(°)について、動的接触角の測定方法として、水中気泡法(captive bubble method)を採用した。このような方法によって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、2つの硬質プラスチックの間に適切に挟持して、レンズの中心部分を比較的にフラットにした後に、レンズをホウ酸緩衝塩水の溶液を収容した小缶に浸した。そして、バブルを適当にレンズの表面に導入すると共に、バブルを表面に止めさせる。その後、デジタルカメラで写真を撮り、電卓プログラムでプロットから左右の接触角を得て、左右の接触角の平均を記録した。
【0078】
コンタクトレンズ表面の潤滑性について、コンタクトレンズの潤滑性は、10人で盲目的に評価した(1~10)。その分数が高いほど、コンタクトレンズ表面の潤滑性が優れた。
【0079】
表1は、実施例S1~S11のコンタクトレンズ材料の配合を示す。その中、コンタクトレンズ材料の総重量は、100重量部であった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
[実験結果の検討]
表2では、実施例S1~S11のコンタクトレンズ表面の特性、例えば、動的接触角と潤滑性を示した。その中、動的接触角の値が低いほど、コンタクトレンズ表面の親水性が優れている。多数の高い親水性表面に、その接触角は0°~30°を示す。コンタクトレンズ表面の潤滑性は、10人で盲目的に評価した(1~10)。その分数が高いほど、コンタクトレンズ表面の潤滑性が優れている。動的接触角及び潤滑性の測定結果は、表2に示すとおりである。
【0083】
実施例S1~S11で採用したシロキサンモノマーのいずれかによって、コンタクトレンズの以下の物理化学特性が良好であった。その中、実施例S1~S8の、コンタクトレンズ表面の親水性又は濡れ性は、より優れた結果を示した。更に説明すると、実施例S1~S8のシロキサンモノマーの化学構造において、酸素原子は、水素結合及び水分子結合でコンタクトレンズ材料の表面親水性を向上させることができる。窒素原子は、イオン状態で水素結合を介して水分子に容易に結合する。
【0084】
また、一般的に、ケイ素原子の含有量が多いほど、コンタクトレンズ表面が疎水となるが、実施例S1~S8に係るシロキサンモノマーの化学構造において、比較的に多い酸素原子及び窒素原子を有するため、コンタクトレンズの表面に良好の親水性及び潤滑性を維持することができる。それによって、実施例S1~S8コの配合で製造されたコンタクトレンズの表面に親水性コーティングを与える必要がない。
【0085】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明の実施形態に係るコンタクトレンズ材料で、コストが低く、量産性及びプロセスが簡単である、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。尚、本発明に係るコンタクトレンズ材料で製造されたコンタクトレンズの表面は、優れた表面特性(例えば、親水性又は濡れ性)を有する。そのため、前記コンタクトレンズの表面に他の親水性コーティングを与える必要がない。特筆すべきことは、前記シロキサンモノマーの分子構造において、前記シロキサンの繰返し単位又はシロキシは、コンタクトレンズの酸素透過係数(DK)を向上させることができる。尚、前記主鎖及び側鎖のそれぞれにある第1の親水性セグメント及び第2の親水性セグメントによって、コンタクトレンズの表面親水性又は濡れ性を向上させることができる。
【0086】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】