(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】空間化されたテクスチャを持つ触覚フィードバックタッチ装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231027BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231027BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
B06B1/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525542
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2021079404
(87)【国際公開番号】W WO2022090090
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519236125
【氏名又は名称】ハプトゥーユー
【氏名又は名称原語表記】HAP2U
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】レイナル バプチステ
(72)【発明者】
【氏名】コティン-バイゾン ミカエル
【テーマコード(参考)】
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D107BB08
5D107CC01
5D107CD03
5E555AA08
5E555BA15
5E555BB15
5E555BC13
5E555CA11
5E555CB16
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
空間化されたテクスチャを持つ触覚フィードバックタッチ装置。タッチ装置(1)を実装する方法において、タッチ装置(1)は、仮想テクスチャリングパターン(M、M
1、M
2)が割り当てられた、少なくとも1つのテクスチャリング領域(10′)を含み、外部体によって触れられることを意図しているプレート(10)と、プレート(10)を超音波振動周波数で振動させるように構成され、活性化信号によって制御されるように構成された、少なくとも一つの変換器(12)と、を備える。方法は、a)テクスチャリング領域(10′)に沿って外部体(9)を移動すること、b)テクスチャリング領域(10′)上の外部体の位置(S(t))を決定すること、c)プレートに沿って外部体の速度(V(t))を測定すること、d)外部体がテクスチャリング領域に沿って移動すると、変換器(12)または各変換器を活性化するように、活性化信号(Act(t))を生成する、こと、を含む。方法において、テクスチャリングパターンは基準軸を基準にして方向付けられており、ステップc)は、基準軸(R)を考慮し、基準軸上の外部体の速度(V
R)の成分を測定し、ステップd)では、活性化信号はテクスチャリングパターンと基準軸上の外部体の速度の成分に依存する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ装置(1)を実装する方法であって、
前記タッチ装置(1)は、
-仮想のテクスチャリングパターン(M、M
1、M
2)が割り当てられた、少なくとも1つのテクスチャリング領域(10′)を含み、外部体によって触れられることを意図しているプレート(10)と、
-前記外部体と前記プレート(10)の間に超音波潤滑効果を生じさせる超音波振動に沿って前記プレート(10)を振動させるように構成され、活性化信号によって制御されるように構成された、少なくとも一つの変換器(12)と、
を備え、
前記方法は、
a)前記テクスチャリング領域(10′)に沿って外部体(9)を移動すること、
b)前記テクスチャリング領域(10′)上の外部体の位置(S(t))を決定すること、
c)前記プレートに沿って前記外部体の速度(V(t))を測定すること、
d)前記外部体が前記テクスチャリング領域に沿って移動すると、前記テクスチャリングパターン(M)に応じて活性化信号(Act(t))が生成され、前記変換器(12)または各変換器が活性化され、前記活性化信号によって前記プレートが超音波振動に沿って振動するようになり、前記振動は、前記プレートと外部体(9)間の摩擦の変化を引き起こすものであり 、移動する前記外部体が前記テクスチャリング領域に沿って移動した結果として前記テクスチャリングパターンを感じる、こと、を含み、
-前記テクスチャリングパターンが基準軸(R)を基準にして方向付けられており、
-ステップc)は、前記外部体の軌道の方向(D)と前記基準軸との間の角度(θ)を考慮し、前記角度に基づいて前記基準軸上の外部体の速度(V
R)の成分を計算することを含み、
-ステップd)では、前記活性化信号は前記テクスチャリングパターン(M)と前記基準軸上の外部体の速度(V
R)の成分に依存し、
前記外部体が前記テクスチャリング領域に沿って移動するときに、前記テクスチャリング領域上の外部体の位置と前記基準軸上の外部体の速度の成分に基づいて、前記プレートと前記外部体の間の摩擦が変更される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
ステップd)において、前記活性化信号は、
・各周期で振幅にわたって延びている周期的な搬送波(w)と、
・テクスチャリングパターン(M)と前記基準軸上の外部体の速度成分(V
R)によって時間的形状に応じて、前記外部体の移動中に変化する変調関数(A)と、から生成され、
-前記活性化信号の振幅が前記変調関数(A)による搬送波(w)の変調から生じる、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
ステップd)の間に、前記活性化信号は、異なる瞬間(t)で生成され、
-それぞれの瞬間において、前記変調関数の振幅は外部体の位置に依存し、
-2つの連続する瞬間の間で、前記基準軸上の外部体の速度成分(V
R)の変化に基づいて、前記変調関数の時間的形状が調整される、方法。
【請求項4】
請求項2および3のいずれかに記載の方法であって、
-変調成分(A)の時間的形状は、前記方向(D)と前記基準軸との間の角度に依存する、方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の方法であって、
-テクスチャリングパターン(M)は、前記基準軸に平行な空間期間(dr)にわたって広がる周期的パターンであり、
-前記変調関数の時間的形状は、ある期間(dt)にわたって周期的であり、前記期間の長さは、前記基準軸R上の外部体の速度の成分(V
R)と、前記テクスチャリングパターンの空間的な期間(dr)に依存する、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載されている方法であって、
-前記テクスチャリングパターンは、第1の基準軸(R
1)および第2の基準軸(R
2)を基準にして方向付けられ、
-ステップc)は、前記第1の基準軸上の第1の速度成分(V
R1) および前記第2の基準軸上の第2の速度成分(V
R2)を測定することを含み、
-ステップd)は、前記外部体の移動中に、
・第1の変調関数によって変調された第1の周期的搬送波によって形成される第1の活性化信号(Act1(t))を生成し、前記第1の変調関数の時間的形状は、前記第1の速度成分(V
R1)に依存し、
・第2の変調関数によって変調された第2の周期的搬送波によって形成される第2の活性化信号(Act2(t))を生成し、前記第2の変調関数の時間的形状は、前記第2の速度成分(V
R2)に依存し、
・前記第1の活性化信号と前記第2の活性化信号を組み合わせて前記活性化信号を形成する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
-前記テクスチャリングパターンは、前記第1の基準軸に平行な第1の空間期間にわたって広がる周期的パターンであり、
-前記第1の変調関数は、第1の期間にわたって周期的であり、前記第1の期間の長さは、前記速度の第1の成分と前記周期的パターンの第1の空間期間に依存し、
-前記テクスチャリングパターンは、前記第2の基準軸に平行な第2の空間期間にわたって広がり、
-前記第2の変調関数は、第2の時間期間にわたって周期的であり、前記第2の時間期間の長さは、前記速度の第2の成分と周期パターンの前記第2の空間期間に依存する、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、
-前記テクスチャリングパターンは、少なくとも1つのノッチ(C)を含み、前記ノッチは、前記テクスチャリングパターンのレリーフまたは窪みに対応し、
-前記活性化信号の変調関数は、外部体がノッチの上を通過したときに、ユーザーがノッチ効果を経験するように決定される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
-前記外部体が前記ノッチ(C)のいずれかの側を通過するとき、
前記変調関数は連続して、
・前記外部体が前記ノッチに近づくときの前段階(dt
a)と、
・前記外部体が前記ノッチを横切るときのノッチ段階(dt
c)と、
・外部体が前記ノッチから離れるときの後段階(dt
p)と、を含み、
-ユーザーによる前記ノッチの感覚は、前記前、ノッチおよび後段階の間の前記変調関数に依存し、
-前記ノッチ段階では、前記前段階及び後段階よりも広い変動範囲で前記変調関数が変化する、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、
前記ノッチ段階では、前記変調関数の時間微分の絶対値(|A′(t)|)が前段階及び後段階よりも高い最大値に達するような前記変調関数である、方法。
【請求項11】
請求項9および10のいずれかに記載の方法であって、
-前記ノッチは前記基準軸に対して方向付けられており、
-前記前段階、ノッチ段階、および後段階の長さは、前記基準軸に対する外部体の速度の成分に依存する、方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の方法であって、
前記テクスチャリングパターンは、いくつかのノッチを含み、
各ノッチが関連する前段階、ノッチ段階、および後段階を有するような前記変調関数を有する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
-前記ノッチは前記基準軸に沿って互いに離れており、
-2つの連続するノッチにそれぞれ関連する2つのノッチ段階間の時間間隔(dt)は、2つのノッチ間の距離(dr)と前記基準軸に対する外部体の速度に依存する、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、
前記基準軸は、直線または曲線または区分直線である、方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれかに記載の方法であって、
-タッチ装置(1)は、インターフェースに接続された装置(20)を制御することを目的としたタッチインターフェースであり、
-前記インターフェースは、前記テクスチャリング領域上の外部体の位置に基づいて、前記装置の少なくとも1つの動作のパラメータの値を調整することを目的としており、前記テクスチャリング領域は、前記パラメータの値を調整することを可能にし、
-前記方法は、前記テクスチャリング領域上の外部体の位置に基づいて前記装置の制御信号(Com(t))を生成することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載されている方法であって、
前記タッチ装置は、前記外部体によって前記プレートに加えられる圧力を測定するように構成された圧力センサー(17)を含み、
前記方法は、
-前記プレートに加えられる圧力の測定し、
-前記測定された圧力と所定の閾値との比較し、
-生じた圧力が前記閾値より大きい場合、ステップc)およびd)を実行することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載されている方法であって、
ステップb)は、容量性センサーを使用して実行される、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載されている方法であって、
前記外部体は、指である、方法。
【請求項19】
外部体(9)が触れることを意図したプレート(10)を含むタッチ装置(1)であって、
前記プレートは、仮想テクスチャリングパターン(M、M
1、M
2)が割り当てられた、少なくとも1つのテクスチャリング領域(10′)を含み、
前記タッチ装置は、
-前記プレート(10)を振動させるように構成された少なくとも1つの変換器(12)と、
-前記プレート(10)上の外部体の位置を表す位置信号(S(t))を生成するように構成された位置センサー(14)と、
-異なる瞬間(t)にそれぞれ生成される位置信号に基づいて、前記プレートに沿った前記外部体の速度を表す速度信号(V(t))を決定するための計算ユニット(14′)と、を備え、
前記タッチ装置は、
-前記位置センサー(14)と前記計算ユニット(14′)に接続され、前記位置センサーからの位置信号と前記計算ユニットからの速度信号に基づいて、請求項1から18のいずれかに記載されている方法のステップd)を実行するように構成された制御ユニット(15)を備える、
ことを特徴するタッチ装置。
【請求項20】
請求項19記載のタッチ装置であって、
前記位置センサーは、容量センサーであり、前記プレートの全部または一部を介した容量結合によって前記外部体を検出するように構成された導電性トラックのネットワークを含む、タッチ装置。
【請求項21】
請求項19および20のいずれかに記載のタッチ装置であって、
スクリーン(11)を含み、
-前記プレートは透明であり、
-前記プレートはスクリーンに対して配置される、タッチ装置。
【請求項22】
請求項19から21のいずれかに記載されているタッチ装置であって、
-前記タッチ装置(1)は、インターフェースに接続された装置(20)を制御することを目的としたタッチインターフェースであり、
-前記タッチ装置は、前記装置(20)の動作のパラメータ(18)の値を調整することを目的とした前記テクスチャリング領域(10′)を含み、前記テクスチャリング領域(10′)は、互いに間隔を空けて配置された少なくとも二つのノッチを含み、
-前記制御ユニットは、前記テクスチャリング領域上の外部体の位置に基づいて前記パラメータの値を調整するように構成される、タッチ装置。
【請求項23】
パラメータ(18)によって制御されるように構成され、前記パラメータを選択するか、または前記パラメータの値を設定するように構成されるタッチインターフェース(1)を含む装置(20)であって、
前記タッチインターフェースは、請求項22に記載のタッチ装置である、装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部体、例えば、ユーザーの指またはユーザーが扱うスタイラスによって触れることができる触覚フィードバックタッチ装置である。
【背景技術】
【0002】
産業用機器であれ、一般向け機器であれ、従来の機器向けインターフェースでは、押しボタン、調整ホイール、スライダーなど、ボタンタイプの制御要素が多用されていた。このタイプの要素は、インターフェースで制御される機器の操作パラメータの選択や設定に使用できる。
【0003】
このタイプのインターフェースの代替は、タッチスクリーン、特に静電容量効果のタッチスクリーンの開発と共に登場した。これらはインタラクティブに、そして非常に直感的に動作することができる。これらは現在、携帯電話や自動車のダッシュボードなどの一般的な装置の両方で使用されているが、より専門的な産業用途でも使用されている。ただし、タッチスクリーンは通常、テクスチャリングのない平面である。
【0004】
ユーザーの指を平面スクリーンに適用すると、テクスチャの感覚を体験できる装置が開発されている。このようなテクスチャリングの原理は、刊行物Biet M.et al.,"Squeeze film effect for the design of an ultrasonic tactile plate"、 IEEE Transactions on Ultrasonic, Ferroelectrics and Frequency Control, IEEE, 2007, 54 (12)、 pp.2678-2688などに記載されており、特許出願EP 1956466にも記載されている。また、刊行物Vezzoli et al.,"Couplage vibration ulsonique etelectro-vibration pour la stimulation tactile" [触覚刺激のための超音波振動と電気振動の結合]、 Electrical Engineering Symposium SGE 2014にも記載されている。後者は、超音波振動効果として知られているものを使用するものを含む、2つの触覚刺激技術を比較している。これらの文献は、指で触れることを意図した接触面を形成する、滑らかなプレートを含むタッチインターフェースについて説明している。このプレートは、プレートに接触して配置された複数の圧電変換器によって、後者の下で振動される。変換器とプレートは、Lamb波型の定在曲げ波の形成に伝導する共振器を形成する。接触面の振動共振周波数が、例えば、10kHzと200kHzの間の超音波範囲にあり、振動の振幅が小さい場合(通常は数ミクロン)、ユーザーは、指がその表面に沿ってスライドするときに、接触面にテクスチャリングの効果を経験することがある。この効果は、「スクイーズ膜」(または過圧膜)という用語で知られ、一般的に呼ばれている。プレートの振動は、指とプレートの間にエアクッションを生成し、プレート上の指の摩擦を軽減する。これは超音波潤滑とも呼ばれる。振動を変調することで、プレート上の指の摩擦を変化させる。これにより、接触面は滑らかなままで、凹凸感や滑りに対する一定の抵抗感といった質感の印象を得ることができる。この効果は透明または非透明の接触面に適用され、触覚インターフェースを形成する。このタイプのインターフェースは、タッチスクリーンと組み合わせることができる。
【0005】
触覚フィードバックに使用できる他の技術も開発されている。これらの中には、振動触覚技術として知られるものが含まれており、これにより、ユーザーがインターフェース上で操作を行うと、インターフェースが振動を発生させる。例えば、文献US10445994B2は、回転モーターを使用して生成されるクリック効果について説明している。後者は、インターフェース全体に伝播する振動を生成する。振動は、通常1000Hz未満の低周波数で、mmオーダーの振幅で放出される。その後、携帯電話が発する短い振動と同様に、筐体を含むインターフェース全体に影響を与える衝撃の形で体験される。特許EP2461233は、低周波で振動することができ、指がボタンに作用したときにクリック効果を発生させるように構成されたフラットタッチインターフェースについて説明している。
【0006】
特許US8405618は、多数の当接プレートから成る触覚インターフェースについて説明しており、各プレートは圧電変換器に接続されている。この特許は、タッチパッドやスマートフォンの表面などを覆うために、多数の当接プレートの使用が必要であることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP1956466
【特許文献2】US10445994B2
【特許文献3】EP2461233
【特許文献4】US8405618
【特許文献5】EP2728445A2
【特許文献6】EP2733575A1
【特許文献7】US2016/0328019A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Biet M.et al.,"Squeeze film effect for the design of an ultrasonic tactile plate"、IEEE Transactions on Ultrasonic, Ferroelectrics and Frequency Control,IEEE, 2007, 54 (12)、pp.2678-2688
【非特許文献2】Vezzoli et al.,"Couplage vibration ulsonique etelectro-vibration pour la stimulation tactile"[触覚刺激のための超音波振動と電気振動の結合]、Electrical Engineering Symposium SGE 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
文献EP2728445A2、EP2733575A1およびUS2016/0328019A1は、指で触れることを意図したプレートを構成する触覚インターフェースについて説明している。指がプレートに沿ってスライドすると、触覚インターフェースはプレート上の指の摩擦を調整するための触覚フィードバックを生成する。発明者たちは、超音波潤滑効果(「スクイーズ膜」 効果として知られる)を発生させる超音波振動の使用に基づいて、新しい機能を持つ触覚装置を設計した。これらは特に、事前に決定された仮想テクスチャリングパターンを考慮することと、装置に触れることによってユーザーがテクスチャリングパターンを知覚することに基づく触覚フィードバックのリアリズムを改善することを含む。タッチ装置の特定のアプリケーションは、触覚インターフェースである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の主題は、タッチ装置を実装するための方法であり、前記タッチ装置は、
-仮想テクスチャリングパターンが割り当てられた、少なくとも1つのテクスチャリング領域を含むプレートであって、外部体に触れることを意図している前記プレートと、
-前記プレートを超音波振動周波数で振動させるように構成された少なくとも1つの変換器であって、活性化信号によって制御されるように構成された前記少なくとも1つの変換器と、
を備え、
前記方法は、
a)前記テクスチャリング領域に沿って外部体を移動し、
b)前記テクスチャリング領域上の前記外部体の位置を決定し、
c)前記プレートに沿った前記外部体の速度を測定し、
d)指が前記テクスチャリング領域に沿って移動すると、テクスチャリングパターンに応じて活性化信号が生成され、前記変換器または各変換器が活性化され、これにより、前記活性化信号によって前記プレートが望ましい超音波振動に沿って振動し、該振動によって前記プレートと外部体間の摩擦の変化が生じ、移動する外部体が前記テクスチャリング領域に沿って移動した結果として前記テクスチャリングパターンを感じる、
ことを含む。
【0011】
一つの可能性として、
-前記テクスチャリングパターンの方向は基準軸を基準にしており、
-ステップc)は、前記基準軸上の外部体の速度の成分を測定することを含み、
-ステップd)の間、前記活性化信号は、前記テクスチャリングパターンと基準軸上の外部体の速度の成分に依存し、
-これにより、指が前記テクスチャリング領域に沿って移動すると、前記プレートと外部体の間の摩擦が、前記テクスチャリング領域上の外部体の位置と基準軸上の外部体の速度の成分に基づいて変化する。
【0012】
超音波周波数での振動は、外部体とプレートの間に超音波潤滑効果を生み出す。
【0013】
仮想テクスチャリングパターンは、実際のテクスチャリングやプレートの表面状態とは無関係に、デジタル的に定義されたテクスチャリングパターンを意味すると理解される。
【0014】
振動は、テクスチャリング領域に触れる外部体によって体験されるテクスチャリングの印象を生み出す。振動は装置からの触覚フィードバックを構成し、その振動によって、タッチ感覚が変更される。
【0015】
超音波振動は、周波数が20kHz以上の振動を意味すると理解される。振動周波数は200kHz未満が望ましい。
【0016】
ステップd)では、活性化信号は次の、
・周期的搬送波であって、各周期で振幅にわたって延びる搬送波と、
・テクスチャリングパターンと基準軸上の外部体の速度成分に応じて、指の動きの間に変化する変調関数と、から生成され、
-活性化信号の振幅は、変調関数による搬送波の変調から生じる。
【0017】
1つの可能性として、ステップd)では、活性化信号はテクスチャリングパターンとテクスチャリング領域上の外部体の速度に依存する。変調関数の時間的形状は、テクスチャリング領域上の外部体の速度に依存する。
【0018】
ステップd)の間に、活性化信号を異なる瞬間に生成することができるので、
-各瞬間において、変調関数の振幅は外部体の位置に依存し、
-2つの連続する瞬間の間で、基準軸上の外部体の速度の成分の変化に基づいて変調関数の時間的形状が調整される。
ある実施形態によると、
-外部体は、基準軸との角度を形成する方向にテクスチャリング領域に沿って移動し、
-変調部品の時間的形状は、その方向と基準軸の間の角度によって異なる。
【0019】
テクスチャリングパターンは、基準軸に平行な空間期間にわたって広がる周期パターンであってもよい。次に、変調関数の時間的形状は、ある期間にわたって周期的であり、その期間の長さは、基準軸上の外部体の速度の成分とテクスチャリングパターンの空間期間に依存する。
【0020】
ある実施形態によると、
-テクスチャリングパターンは、第1の基準軸と第2の基準軸を基準にして方向付けられており、
-ステップc)は、第1の基準軸上の第1の速度成分と第2の基準軸上の第2の速度成分を測定することを含み、
-ステップd)は、外部体の移動中に、以下のように、
・第1の変調関数によって変調された第1の周期的搬送波によって形成される第1の活性化信号を生成し、第1の変調関数の時間的形状は、第1の速度成分に依存し、
・第2の変調関数によって変調された第2の周期的搬送波によって形成される第2の活性化信号を生成し、第2の変調関数の時間的形状は第2の速度成分に依存し、
・第1の活性化信号と第2の活性化信号を組み合わせて活性化信号を形成する、
ことを含む。
【0021】
一つの可能性として、
-テクスチャリングパターンは、第1の基準軸に平行な第1の空間期間に広がる周期パターンであり、
-第1の変調関数は、第1の期間に渡って周期的であり、第1の期間の長さは、速度の第1の成分と周期パターンの第1の空間期間に依存しており、
-テクスチャリングパターンは、第2の基準軸に平行な第2の空間期間にわたって広がり、
-第2の変調関数は、第2の時間期間にわたって周期的であり、第2の時間期間の長さは、速度の第2の成分と周期パターンの第2の空間期間に依存している。
【0022】
ある実施形態によれば、
-テクスチャリングパターンは、少なくとも1つのノッチ(テクスチャリングパターンのレリーフまたはくぼみに対応するノッチ)で構成され、
-活性化信号の変調関数は、外部体がノッチの上を通過したときにユーザーがノッチ効果を経験するように決定される。
【0023】
好ましくは、外部体がノッチのいずれかの側を通過するとき、変調関数は連続して次の、
・外部体がノッチに近づくときの前段階、
・外部体がノッチを横切るときのノッチ段階、
・外部体がノッチから離れるときの後段階、
から構成される。
【0024】
次に、ユーザーによるノッチの感覚は、前、ノッチ、および後の段階中の変調関数に依存する。
【0025】
変調関数は、ノッチ段階では、前段階及び後段階よりも広い変動範囲で変化するようにするのが望ましい。
【0026】
加えて、または代わりに、ノッチ段階では、変調関数の時間微分の絶対値が前段階及び後段階よりも高い最大値に達するようにすることができる。
【0027】
一つの可能性として、
-ノッチは基準軸に対して配置され、
-前段階、ノッチ段階、および後段階の長さは、基準軸に対する外部体の速度の成分によって異なる。
【0028】
テクスチャリングパターンは複数のノッチを持つことができる。変調関数は、各ノッチが関連する前段階、ノッチ段階、および後段階を持つようにすることができる。前段階、ノッチ段階、および後段階は、それぞれのノッチに関連する活性化シーケンスを形成する。
【0029】
一つの可能性として、
-ノッチは基準軸に沿って互いに離れており、
-2つの連続するノッチにそれぞれ関連付けられている2つのノッチ段階間の時間間隔は、2つのノッチ間の距離と基準軸に対する外部体の速度に依存する。
【0030】
実施形態にかかわらず、基準軸は直線または曲線または区分直線であってもよい。
【0031】
1つの実施形態によると、
-タッチ装置は、インターフェースに接続された装置を制御することを目的としたタッチインターフェースであり、
-インターフェースは、テクスチャリング領域上の外部体の位置に基づいて、装置の少なくとも1つの動作のパラメータの値を調整することを目的としており、テクスチャリング領域は、パラメータの値を調整することを可能にし、
-この方法は、テクスチャリング領域上の指の位置に基づいて装置の制御信号を生成することを含む。
【0032】
一実施形態によれば、この装置は、プレート上の外部体によって加えられる圧力を測定するように構成された圧力センサーを含み、
この方法は、次の、
-プレートに加えられる圧力の測定し、
-測定された圧力と所定の閾値との比較し、
-圧力が閾値よりも大きい場合は、ステップc)およびd)を実行する、
ことを含む。
【0033】
一実施形態によると、ステップb)は容量センサーを使用して実行される。
【0034】
一実施形態によると、外部体は指である。
【0035】
本発明の第2の主題は、外部体が触れることを意図したプレートを含むタッチ装置であり、
タッチ装置は以下の、
-プレートを振動させるように構成された少なくとも1つの変換器と、
-プレート上の外部体の位置を表す位置信号を生成するように構成された位置センサーと、
-異なる瞬間にそれぞれ生成される位置信号に基づいて、プレートに沿った外部体の速度を表す速度信号を決定するための計算ユニットと、
を含み、
タッチ装置は、
-位置センサーと計算ユニットに接続され、位置センサーからの位置信号と計算ユニットからの速度信号に基づいて、本発明の第1主題による方法のステップd)を実行するように構成された制御ユニットを含むことを特徴とする。
【0036】
計算ユニットは、テクスチャリング領域に割り当てられたテクスチャリングパターンをデジタル形式で格納するメモリに接続することができる。メモリは、テクスチャリング領域に連続して割り当てることができる異なるテクスチャリングパターンを持つことができる。
【0037】
位置センサーは、静電容量センサーとすることができ、プレートの全部または一部を介した静電容量結合によって外部体を検出するように構成された導電性トラックのネットワークを構成する。
【0038】
タッチ装置は、スクリーンを備えることができる。
タッチ装置は次のように構成されてもよい。
-プレートは透明であり、
-プレートをスクリーンに向けて配置してもよい。
【0039】
タッチ装置は次のように構成されてもよい。
-タッチ装置が、インターフェースに接続された装置を制御することを目的としたタッチインターフェースであり、
-タッチ装置が、装置の動作パラメータの値を調整することを目的としたテクスチャリング領域で構成され、テクスチャリング領域は、互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つのノッチで構成され、
-制御ユニットは、テクスチャリング領域上の指の位置に基づいてパラメータの値を調整するように構成されてもよい。
【0040】
本発明の第3の主題は、パラメータによって制御されるように構成され、パラメータを選択するか、またはパラメータの値を設定するように構成されるタッチインターフェースを含む装置であり、タッチインターフェースは、本発明の第2の主題による装置である。この装置は、装置の動作パラメータの値を調整することを目的としたテクスチャリング領域から構成され、テクスチャリング領域は、互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つのノッチから構成され、制御ユニットは、テクスチャリング領域上の指の位置に基づいてパラメータの値を調整するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、以下に示す図を参照して、説明の残りの部分で提示されている実施形態の説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【0042】
【
図1A】本発明を実施するために使用できるタッチ装置の例を示す。
【
図1B】本発明を実施するために使用できるタッチ装置の例を示す。
【
図1C】本発明を実施するために使用できるタッチ装置の例を示す。
【0043】
【
図1D】
図1A~
図1Cを参照して説明したタッチ装置のプレートを介した超音波振動の伝播の概要を示す。
【0044】
【
図2A】テクスチャリング領域に割り当てられた仮想テクスチャリングパターンの第1の例を示している。
【0045】
【
図2B】
図2Aのテクスチャリングパターンに従ってテクスチャを発生させるようにプレートを振動させる変換器の活性化信号を示している。
【
図2C】
図2Aのテクスチャリングパターンに従ってテクスチャを発生させるようにプレートを振動させる変換器の活性化信号を示している。活性化信号は、搬送波信号(
図2B)と変調関数(
図2C)で構成される。
【0046】
【
図3A】
図2Aのテクスチャリングパターンと、パターン上での指の3方向の動きを示している。
【0047】
【
図3B】変調関数の2つの時間的形状を示しており、1つは基準軸に平行な方向に対するもの、もう1つは基準軸に対して傾斜した方向に対するものである。
【0048】
【
図4】(a)テクスチャリング領域に割り当てられた仮想テクスチャリングパターンの第2の例を示している。(b)
図4(a)に示すテクスチャリングパターンを感じることができる変調関数を示している。
【0049】
【
図5A】テクスチャリングパターンの第3の例を示している。この例では、テクスチャリングパターンは第1の基準軸と第2の基準軸にわたって定義されている。
【0050】
【
図5B】テクスチャリングパターンが非直線の基準軸にわたって広がる例を示している。
【0051】
【
図6A】タッチ装置が装置のインターフェースである構成を示している。
【0052】
【
図6B】タッチ装置が装置のインターフェースである構成を示している。
【0053】
【
図7A】テクスチャリングパターンの第4の例を示している。この例では、テクスチャリングパターンは互いに間隔を空けたノッチを形成している。
【0054】
【
図7B】変調関数による搬送波の振幅変調から生じる、変調関数、搬送波、およびプレートを活性化するための信号を示している。
【
図7C】変調関数による搬送波の振幅変調から生じる、変調関数、搬送波、およびプレートを活性化するための信号を示している。
【
図7D】変調関数による搬送波の振幅変調から生じる、変調関数、搬送波、およびプレートを活性化するための信号を示している。活性化信号により、
図7Aに示すノッチを感じることができる。
【0055】
【
図7E】
図7Aに示すノッチを感じることができる別の活性化信号を示している。
【0056】
【
図7F】
図7Aに示されているパターンと同様のテクスチャリングパターンと、テクスチャリング領域に沿って指が移動する2つの方向を示している。1つの方向は基準軸に平行で、テクスチャリングパターンがその上に広がり、もう1つの方向は基準軸に対して鋭角を形成する。
【0057】
【
図7G】基準軸に対して鋭角を形成する方向および基準軸に平行な方向への指の動きに対応する変調関数を示している。
【
図7H】基準軸に対して鋭角を形成する方向および基準軸に平行な方向への指の動きに対応する変調関数を示している。
【0058】
【
図8】(a)ノッチを感じることができる変調関数を示している。(b)
図8(a)に示した変調関数の時間微分である。
【0059】
【
図9A】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9B】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9C】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9D】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9E】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9F】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9G】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【
図9H】ノッチを感じることができる変調関数の異なる可能性を示している。
【0060】
【
図10】互いに離れた連続するノッチに対応する変調関数を示している。
【
図11】互いに離れた連続するノッチに対応する変調関数を示している。
【0061】
【
図12A】スイッチのスライダーによる移動を模倣したテクスチャリングパターンの例を示している。
【0062】
【0063】
【
図13】本発明による方法の主なステップを示している。
【0064】
【
図14A】同じテクスチャリング領域に連続して割り当てることができる2つの異なるパターンを示している。
【
図14B】同じテクスチャリング領域に連続して割り当てることができる2つの異なるパターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1A~
図1Dは、本発明によるタッチ装置1の一例を示す。タッチ装置は、外部体9が触れることを目的としたプレート10を備える。このアプリケーションで示されている例では、外部体9は指であり、想定されているほとんどのアプリケーションと一致している。または、外部体9はスタイラス、またはプレート10に作用させることができる他の手段であってもよい。
【0066】
タッチ装置1は、プレートに沿って移動する外部体の触覚フィードバックを生成することを目的としている。より正確には、タッチ装置は、プレートに沿って移動すると、外部体がテクスチャリングの印象を体験できるように構成されている。
【0067】
プレート10は、テクスチャリングパターンが割り当てられたテクスチャリング領域10′で構成されている。テクスチャリングパターンMは仮想的であり、プレートの物理的または材料的な構造には対応していない。つまり、テクスチャリングパターンはテクスチャリング領域のプレートの表面状態とは無関係に定義される。たとえば、プレートは滑らかであっても、テクスチャリングパターンは粗さを定義する。テクスチャパターンの例を
図2Aに示す。
【0068】
プレート10は剛性であり、外面10eと内面10iの間に延びている。外面10eは指9にアクセスできる。内面10iと外面10eは互いに平行に伸びるのが好ましい。外面10eと内面10iの間の距離は、プレートの厚さeを定義する。プレートの厚さeは、以下に説明するように、超音波振動に従ってプレート10が振動できるように寸法が付けられている。プレート10の厚さeは、10mm未満、または5mm未満であることが望ましい。厚さeは、材料の性質とその機械的特性(剛性、固体)に基づいて調整される。例えば、ガラスやプレキシグラスなどの材料の場合は1mmから5mmの間である。
【0069】
図の例では、内側の面10iと外側の面10eは平面であり、これは製造する最も単純な構成と一致している。プレートは、横軸Xに平行に幅にわたって、縦軸Yに平行に長さにわたって延びている。長さLと幅lは、5cmから数十cm、例えば30cm、またはそれ以上の場合がある。横軸Xと縦軸Yは、主平面PXYを定義する。他の例では、内側の面10iおよび/または外面10eを曲げることができる。プレート10の表面積は、10cm2より大きいことが望ましく、50cm2であってもよい。
【0070】
プレート10は、ガラス、ポリマー、木材、金属、半導体、例えばシリコンなどの剛性材料から形成される。プレート10は透明または不透明にすることができる。プレート10は不透明部分と透明部分から構成することができる。
【0071】
この例では、プレート10は横軸X上を第1横縁101と第2横縁102で区切られ、その近傍に変換器12が配置されている。近傍とは、プレート10の上または下で、できれば2cm未満の距離にあることを意味すると理解される。各変換器12は、電気的な活性化信号によって活性化することができ、活性化信号の結果として、プレートに垂直な方向にプレートの局所的な変形を生じさせるようにプレート10に圧力を加えることができる。活性化信号が周期的である場合、超音波周波数範囲では、プレート10の変形は周期的であり、超音波振動19の形成につながる。振動は、プレートを通過して形成される曲げ波によって顕著に発生することができる。曲げ波には、定在波と進行波がある。その結果、各変換器の活性化信号を振幅および/または周波数変調することができる。プレートを複数の変換器12に接続することが望ましい。変換器は、一般的に、プレート10の少なくとも一方の端の近くに配置され、横軸Xおよび/または横軸Yに対して相対する二つの端の近くに配置されることが望ましい。プレート10の端における変換器12の配置は必要条件ではない。変換器は、例えば、列の形、プレートの中央、またはマトリックスのような他の構成で配置することができる。
【0072】
振動周波数が超音波であるという事実は、プレートの外面上を移動する外部体9を除いて、振動を知覚できないようにする。
【0073】
各変換器12は、二つの電極の間に配置された、例えばAlN、ZnOまたはPZTのような圧電材料からなる圧電型の変換器とすることができる。例えば、各変換器12はPZT基準406とすることができる。あるいは、各変換器は、例えばMEMS(Micro ElectroMechanical System-electromechanical microresonator)タイプの電気機械式共振器でも、電歪式または磁歪式でもよい。変換器12は、圧電材料がバイアス電極間に一層以上の薄層の形で堆積するようにすることができる。
【0074】
各変換器12は、プレート10の内面10iに接着結合によって接合することができる。変換器は、機械的に内面10iに接続される。変換器は、内面に直接接合することもできるし、中間の、できれば剛性のある部品に接合することもでき、または各変換器によってもたらされる振動をプレートに伝達できるように、内面10iに接合される。
【0075】
中間部品は、金属にすることができる。例えば、増幅器を形成する部品であり、プレートと変換器12(または各変換器12)の間に配置され、変換器12(または各変換器12)によって生成され、プレート10に伝達される振動を増幅するように設計されていてもよい。中間部品は、プレートの剛性を高めるように剛体層を形成することができる。中間部品は、以下に説明するように、プレート10に接合されたスクリーン11とすることができる。プレート10は、スクリーン11の保護スラブを形成することができる。スクリーン11は、LCD(液晶ディスプレイ) またはOLED(有機発光ダイオード)タイプのスクリーンにすることができる。中間部品は多層部品にすることができる。例えば、その下に増幅器を形成する部分が配置され、変換器は増幅器に結合されるスクリーンを含むことができる。
【0076】
一般的に、各変換器12は超音波振動19を生成するように構成され、その超音波振動はプレート10内を伝播する。超音波振動19の周波数は、10kHzから200kHzの間が望ましい。超音波スペクトル帯域に関係するように20kHzより大きく、150kHz未満が望ましい。超音波振動19の振幅は、一般的に0.1μmから50μmの間である。
図1Dは、プレート10内を伝播する超音波振動19の概要を示している。触覚フィードバックインターフェースの分野で知られているように、プレートの超音波振動は、プレート10と指9(「スクイーズ膜効果」、または超音波潤滑として知られる)の間に空気の薄膜を形成し、ユーザーの指が外面10
eに沿って移動すると、プレート上にテクスチャリングされた印象をもたらす。プレートの振動は、空気膜の厚さを変化させ、指とプレートの間の潤滑効果を増減させる。これにより、先行技術で説明したように、プレートと指の間の摩擦が変化し、指が知覚する触感が変化する。超音波振動19は静止することができるが、静止する必要はない。
【0077】
タッチ装置1は、プレート10上の指9の位置に応じて、位置信号として知られる信号S(t)を形成するために使用できる位置センサー14を備える。位置センサーは、例えば、容量性センサーであってもよい。この例では、プレート10は誘電体材料で作られており、位置センサー14は二次元ネットワークに配置された導電性トラック13に接続されている。導電性トラック13は、内面10iに隣接している。導電性トラックは、外面10eの下で、プレート10に平行に延びることができる。示された例では、導電性トラックは静電容量スクリーン11上に形成され、内面10iに隣接して配置される。位置センサーを使用して、50Hzまたは100Hzに達するか、それを超えるサンプリング周波数で指の位置を決定することができる。
【0078】
プレート10が不透明である場合、導電性トラック13は、例えば金属のような一般的な導電性材料から作ることができる。プレート10が透明である場合、導電性トラック13は、例えばITO (Indium-Tin Oxide) のような一般的な材料である導電性酸化物のような透明な導電性材料から作ることが望ましい。導電性のトラック13によって形成されるネットワークは、行列型にすることができ、トラックは直線状で、行と列に伸びる。導電性のトラックは、バイアス電圧に沿ってバイアスすることができる。
【0079】
導電性のトラック13は、プレート10内又はプレート10上に直接形成することができる。
【0080】
指9は導電性であるため、1つ以上の導電性のトラック13の間に近接すると、容量効果を使用して、1つ以上の導電性のトラック13と指9の間で電荷転送が行われる可能性がある。なお、容量結合を使用した位置の検出は、プレート10が導電性の本体9(指、または金属などの導電性スタイラス)に触れていることを前提としている。
【0081】
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、導電性のトラック13がプレート10の背後にあるため、ダッシュで示されている。
【0082】
タッチ装置の他の部品は、
図1Cで概説されている。導電性トラック13は、位置センサー14に接続されている。導電性トラック13の二次元配置により、位置センサー14を使用して、プレート10に平行な指の接触点の二次元座標(x、y)を取得することができる。位置センサー14は計算ユニット14′に接続されており、これを使用して、測定瞬間tと異なる瞬間、測定瞬間tの前後でそれぞれ取得された指の位置から、指の速度信号V(t)を作成することができる。速度信号V(t)は、測定瞬間における指の速度を表す。
【0083】
タッチ装置1は、指9によってプレート10に加えられる圧力を推定するように構成された圧力センサー17を含むことができる。圧力センサー17は以下のようにすることができる。
-距離計はプレートに面して配置され、プレートから離れる距離を測定するように構成され、距離計はプレートに加えられた圧力の結果としてプレートの変形を決定するように構成され、これは
図1Cに示された例と一致する。距離計は、例えば、動作範囲が1から5mmの間で、プレートから2.5mm離れて配置された赤外線光学距離計であってもよい。このような距離計は一般に「反射物体センサー」と呼ばれる。例えば、基準センサーQRE 1113は、以下のような用途に適している。
-プレートに加えられた圧力の結果としてプレートが変形するように設計されたひずみゲージ、
-または、プレートに接触して配置され、プレートに加えられた圧力の結果としてプレートの動きを検出するように構成されたダイナモメータ、
-または、プレートに加えられた圧力によるプレートの振動の変化を測定するように構成された変換器。
変換器を使用して、特許出願EP3566115に記載されているように加えられた圧力を測定することができる。
【0084】
圧力センサー17の使用は任意である。
【0085】
タッチ装置1は、位置センサー14と計算ユニット14′に接続された制御ユニット15で構成される。制御ユニット15は、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサで構成される。制御ユニット15は、以下に説明する動作を実行するようにセットアップまたはプログラムされる。制御ユニット15は、テクスチャリング領域10′に割り当てられた少なくとも一つのデジタルテクスチャリングパターンMを格納するメモリ16に接続される。仮想テクスチャリングパターンは、テクスチャリング領域の表面状態(粗さまたはレリーフの存在)とは無関係に、デジタル形式で作成されるため、仮想パターンと呼ばれている。以下で説明するように、複数のテクスチャリングパターンを異なる瞬間に同じテクスチャリング領域に割り当てることができる。この場合、テクスチャリングパターンのライブラリがメモリ16に格納される。
【0086】
制御ユニット15は、速度V(t)に基づいて、異なる瞬間tに、活性化信号Act(t)を少なくとも一つの変換器12に、できれば各変換器12に送信するように構成される。望ましい目的は、指がテクスチャリング領域10′に沿って移動したときに、タッチ装置1から触覚フィードバックを取得し、ユーザーに送信することである。活性化信号に基づいて、活性化された各変換器は、
図1Dに示すように、プレート10を介して形成され、ユーザーの指9に到達する超音波振動19を生成することができる。超音波振動は、ここで説明した原則に基づいて、テクスチャリング領域に割り当てられたパターンに対応するテクスチャリングの感覚をユーザーに体験させる。したがって、活性化信号がない場合、テクスチャリング領域はテクスチャリングされていないと感じることができるが、活性化信号は、テクスチャリング領域と接触している指がテクスチャリングパターンMによって定義されたテクスチャリングを知覚する結果となる。
【0087】
図2Aは、このような仮想テクスチャリングパターンMの例である。
図2Aに示されているテクスチャリングは実際のものではない。これは、テクスチャリング領域10′に沿って移動する指9が、活性化信号の結果として知覚するものと一致している。指9がテクスチャリングパターンを感じることができるように、活性化信号Act(t)は、「搬送波」信号wとして知られる振幅変調された周期信号によって形成される。
図2Bは搬送波信号を示している。これは周期信号であり、その周期は、超音波周波数に対応し、すなわち20kHzから200kHzの間である。この例では、搬送波は正弦波である。
図2Cは、次のように活性化信号Act(t)を形成するように搬送波の振幅変調を可能にする三角変調関数を示している。
【数1】
【0088】
搬送波変調中、変調関数は仮想パターンMに基づいて定義された所定の時間的形状をとる。時間的形状とは、テクスチャリング領域上での指の動きの間の時間的な変調関数の進化を意味すると理解される。指は、移動時間の間、テクスチャリング領域に沿って移動する。時間的形状は、移動時間中の変調関数の進化に対応する。
【0089】
図2Aに示すパターンMは、基準軸R上の空間周期drを持つ周期的なものである。その周期的なパターンは、基本パターンの空間内での繰り返しによって形成される。空間周期は、基本パターンが基準軸に平行に繰り返される距離を意味すると理解される。基準軸Rは、パターンの空間周期が繰り返される軸に対応する。基準軸Rは、プレート10に平行であり、前に定義した横軸Xまたは縦軸Yと間違えることがあり、これらの軸と異なる場合もある。テクスチャリングパターンMが周期的な場合、変調関数も周期dtで周期的になる。時間周期は、以下に示すように、空間周期と指の移動速度、およびできれば指の移動方向によって異なる。
図2Cでは、変調関数Aは周期的な三角形の時間的形状をしている。
【0090】
テクスチャリングパターンMに対応する活性化信号Act(t)は、指がテクスチャリングエリア10′に接触しているときに活性化される。制御ユニット15は、位置センサー14によって検出された位置S(t)とメモリ16に格納されたテクスチャリングパターンMに基づいて活性化信号Act(t)を生成するようにプログラムされている。
【0091】
本発明の重要な側面は、活性化信号がプレート10上の指の位置だけでなく、その速度V(t)にも依存することである。より正確には、変調関数の時間的形状は基準軸R上の指の速度V
R(t)に基づいて調整される。
図2Cの例では、速度V(t)が高いほど、変調関数の周期dtはすべて小さくなる。
【数2】
【0092】
テクスチャリングパターンMの方向は基準軸Rに対して配向されている。「配向される」とは、テクスチャリングが基準軸に沿って可変であることを意味すると理解される。パターンが周期的である場合、テクスチャリングは基準軸に沿って繰り返される。活性化信号、より正確には変調関数の時間的形状は、基準軸Rに対して指が続く軌跡の向きに依存する。
制御ユニットは以下の
-基準軸R上の指の速度Vの成分VRを計算し、
-このように計算された成分VRに基づいて変調関数の時間的形状を適応させる、
ように構成される。
【0093】
図3Aは、
図2Aに示すようなテクスチャリングパターンMを示している。パターンは基準軸Rに渡って配向される。この例では、パターンは基準軸R上で周期的である。基準軸Rに平行な軌跡Dと、基準軸Rに対して30°の角度で方向付けられた軌跡D′と、基準軸Rに直交する軌跡D′′と、の3つの軌跡が示されている。この実施形態によれば、活性化信号は、基準軸R上の指の速度の投影V
Rを使用して構成される。基準軸R上の投影は、基準軸Rに垂直な投影を意味すると理解される。より正確には、変調関数の周期dtは、基準軸R上に投影される指の速度の値に基づいて変化する。したがって、軌道(D、 D′、D′′)と基準軸Rとの間の角度に基づいて変調が行われる。その角度は位置センサーで決定され得る。基準軸Rに投影される指の速度が低いほど、変調関数の周期dtは大きくなる。
【0094】
各瞬間tにおいて、活性化信号の振幅は変調関数の振幅によって定義され、後者はテクスチャリング領域10′上の指の位置と仮想パターンMに依存する。2つの連続する瞬間の間で、テクスチャリング領域10′に沿った指の移動速度の変化の可能性に基づいて、変調関数の時間的な形状を調整することができる。
【0095】
変調関数A(t)を
図3Bに示す。
-指が基準軸Rに平行な軌道D上を一定速度で動くとき、変調関数の周期はdtである。これはソリッドカーブに相当する。
-指が同じ速度で軌道D′上を動くとき、変調関数の周期はdt′であり、dt′>dtとする。これは破線曲線に相当する。
【0096】
指が軌道D′′上を移動するとき、基準軸R上の速度の投影は0である。活性化信号は送信されない。
【0097】
図4(a)は、押しボタンタイプのボタンの輪郭をシミュレートするテクスチャリングパターンを示している。
図4(a)は、指が基準軸R上のテクスチャリング領域10′に沿ってスライドするときに感じられるボタンをシミュレートする断面図である。指がテクスチャリング領域に沿って移動するときに感じる安堵感は、
図4(a)に示されており、4つの瞬間t
a、t
b、t
c、t
dになる。実際には、指はテクスチャリング領域10′に沿って移動し、例えば、滑らかになる。
図4(a)は、指で感じる仮想テクスチャリングを示している。ユーザーによって加えられる指の押下力は一定であると仮定する。
【0098】
図4(b)は、ボタンタッチの感覚を与える活性化信号を得るために使用できる変調関数の時間的形状を示している。変調関数の時間的形状は、振幅0の平坦な部分によって分離された2つのガウスのピークで構成される。2つのガウスのピークは、時間の長さΔtによって分離される。各ガウスのピークは、ボタンの端に対応する。
【0099】
指の位置が仮想ボタンの第1の端(瞬間ta)に達すると、変調振幅が増加する。これにより、プレート10上の指の摩擦が減少し、指が短時間加速する。指の位置が仮想パターン(瞬間tb)のボタンの上部に向かうと、変調振幅が減少し、プレート10上の指の摩擦が増加する。これにより、指は減速する。ユーザーは、ボタン上の指によって上昇アクションを知覚する。指の位置が仮想ボタンの上部の位置(瞬間tc)に対応する場合、変調振幅は一定であり、例えば0(瞬間tc)である。その摩擦が大きい。指の位置が仮想ボタンの反対側の端(瞬間td)に対応すると、変調振幅が大きくなる。これにより、指とプレート10の間の摩擦が減少し、指が一時的に加速する結果となる。ユーザーは指による落下を知覚する。
【0100】
上昇と下降を知覚する感覚は、ユーザーがテクスチャリング領域上のボタンを視覚的に表現している場合に強調することができる。
【0101】
図4(b)に時間的形状を示す変調関数Aは、基準軸R上での指の移動速度に基づいて変化する。その速度が速いほど、ガウスのピーク間の時間Δtの長さは短くなる。
【0102】
図3Aおよび3Bに示されている実施形態では、テクスチャリングパターンは単一の基準軸(この場合は基準軸R)にわたって周期的である。したがって、活性化関数の時間的形状は、基準軸R上の指の速度に依存する。別の実施形態では、
図5Aに示すように、テクスチャリングパターンは、2つの軸、たとえば、軸R
1と軸R
2の2つの直交軸にわたって周期的であり得る。
したがって、速度V(t)は次の、
-第1の軸上での指の移動速度を表す第1の構成要素V
R 1(t)、この場合は軸R
1と、
-第2の軸上での指の移動速度を表す第2の構成要素V
R 2(t)、この場合は軸R
2と、
で構成される。
【0103】
活性化信号Act(t)は、
-第1成分VR 1(t)に依存する第1周期の第1周期活性化信号ActR 1(t)と、
-第2成分VR 2(t)に依存する第2周期の第2周期活性化信号ActR 2(t)と、
の組み合わせを用いて、得られる。
【0104】
組み合わせとは、例えば和や積になり得る算術演算を意味すると理解される。
【0105】
図5Aでは、グレーのレベルは、指がプレートに沿って一定速度で移動したときに感じる摩擦に対応している。
【0106】
周期的な活性化信号Act
R 1(t)とAct
R 2(t)は、同じ周期と同じ振幅を持つことができ、これは
図5Aに示された例と一致している。これらは、異なる周期または振幅を持つこともできる。例えば、テクスチャリングは、ある方向では別の方向よりも顕著である(および/または間隔が広い)。
【0107】
図6Aおよび6Bに示されている一実施形態によると、タッチ装置1は、装置20に接続された触覚タッチインターフェースである。装置20は、非限定的に、通信装置またはコンピューティング装置、機械、家庭用電化製品、または車両のダッシュボードとすることができる。装置20の動作は、少なくとも一つの動作パラメータ18によって制御される。触覚インターフェース1は、装置20の動作パラメータ18の値を設定するためのものである。
【0108】
この目的のために、テクスチャリング領域10′は、指9がスライドした結果としてパラメータ18を設定するための設定領域を形成する。テクスチャリング領域10′は両端の間に広がり、後者はパラメータの異なる2つの値に対応する。両端は、例えばパラメータ18の2つの極値に対応することができる。示されている例では、パラメータ18の値は、指がテクスチャリング領域に沿って両端の間を矢印の方向にスライドすると徐々に増加し、逆方向にスライドすると徐々に減少する。プレート10の内面10
iに対して位置するスクリーン11の一部11′が
図6Aに示されている。この例では、スクリーン11を使用して、部分11′にパラメータ18を表示することができる。このパラメータの値は、テクスチャリング領域10′上を指9がスライドすることによって調整される。
【0109】
他の例では、テクスチャリング領域10′は直線ではない。テクスチャリング領域は、円弧の形で基準軸R上に広がっている。一例を
図5Bに示す。基準軸Rはダッシュで示されている。他の可能性によると、基準軸は区分的に直線的であることによって連続した直線部分を含むことができる。また、基準軸は曲線部分や他の直線部分を含むこともできる。
【0110】
テクスチャリング領域10′を使用して、パラメータの値を2つの値の間で切り替えることができる。例えば、指がテクスチャリング領域の一方の端に配置されている場合は0、指がテクスチャリング領域のもう一方の端に配置されている場合は1である。例えば、オン/オフスイッチにすることができる。スイッチの例を
図12Aおよび12Bに関連付けて説明する。
【0111】
テクスチャリング領域10′に沿った指のスライドアクションは、ノッチ付きスライダーによる移動アクションや、従来の非触覚インターフェースにおけるノッチ付きホイールの回転に似ている。設定のリアリティを高めるために、インターフェース1は、指9がテクスチャリング領域10′に沿って移動するときにノッチ効果を体験できるように構成されている。ノッチ効果とは、指がテクスチャリング領域に沿ってスライドするときに、機械的なノッチ付きスライダーまたはノッチ付きホイールに作用しているときに知覚される機械的なノッチの通過に相当する触覚ノッチ感覚を体験する効果を意味すると理解される。これには、それがノッチ付き機械的スライダーに作用した場合に指が知覚するであろうノッチ感覚を模倣することが含まれる。これにより、指の速度がほぼ瞬時に変化する。指の速度の変化は、加速または減速に相当する。速度の変化は、界面に沿って滑る指の摩擦の変化によってもたらされる。摩擦の変化は、以下に詳述するように、プレートを振動させることによって得られる。
【0112】
制御ユニッ15は、演算部14′が送信する速度信号V(t)に基づいて、制御信号Com(t)を装置20に送ることができる。例えば、装置20の動作パラメータ18の値をインターフェース1で定義できる場合、制御ユニット15は、動作パラメータ18の値を装置20に送信するように構成される。
【0113】
発明者らは、ユーザーの指9がテクスチャリング領域10′に沿ってスライドしたときに、ノッチ感覚に特に適したテクスチャリングパターンの知覚を可能にする活性化信号を設計した。
【0114】
図7Aは、テクスチャリング領域10′に沿って移動する指9を示している。テクスチャリング領域に関連付けられたパターンMは、互いに間隔を空けて配置されたノッチCで構成される。
図7A~7Dに示されている第1の可能性によると、変調関数Aは上三角である。
図7B、7C、および7Dは、それぞれ式(1)に従って、変調関数Aによる正弦波の搬送波振幅変調から生じる変調関数A、正弦波の搬送波w、および活性化信号Actを示している。
【0115】
それぞれの図において、X軸は時間(単位:秒)、Y軸は振幅に対応している。
【0116】
変調関数Aの時間的形状は、ノッチごとに次の要素から構成されていることがわかる。
-指がノッチに近づくと発生する前時間段階dta、
-指がノッチを横切ると発生するノッチ時間段階dtc、
-指がノッチから離れると発生する後時間段階dtp。
【0117】
前、ッチおよび後時間段階が連続的に活性化される。これらはノッチに関連する活性化シーケンスを定義する。したがって、各ノッチについて、変調関数は、継承前段階、ノッチ段階、後段階に対応する活性化シーケンスを含む。活性化シーケンスの長さは、前、ノッチ、および後のそれぞれの長さの合計に対応する。
【0118】
一般に、ノッチに対応する各活性化シーケンスは、ノッチ段階中に、変調関数の振幅がシーケンスの前および後よりも大幅に大きな変動範囲内で変化するようなものである。変調振幅は、テクスチャリング領域10′上の指の摩擦を決定する。ノッチの知覚は、ノッチの前後で摩擦が比較的安定しており、ノッチ通過時に摩擦が大きく変化する場合に現実的である。これにより、ノッチ通過時に指の速度が急激に変化し、ユーザーがノッチを知覚することにつながる。速度の急激な変化には、減速、加速、または加速と減速の組み合わせがある。ノッチの前後の前段階と後段階の間、変調振幅の変化はノッチ段階の間よりも小さくなる。前段階と後段階の間、
図7Bと7Dに示されているように、変調振幅を安定させることができ、これを必要としない。安定した変調振幅は、ノッチ通過の前または後にテクスチャリング領域に平坦な感覚を生成する。
【0119】
したがって、ΔA(t)が振幅変化に対応する場合、ノッチ時系列は次のようになる。
【数3】
【0120】
図7Bと7Dの例では、ノッチ位相dt
cの間に、プレートの変調振幅が徐々に増加し、スライドの知覚が増加し、指の速度が増加する。ノッチ段階は切れ目で終わり、指が突然遅くなる。加速と減速の組み合わせによってノッチが知覚される。
【0121】
ノッチに対応する時系列は、ノッチ段階の間、変調関数の時間微分A′(t)の絶対値が前段階及び後段階の間よりも高い最大値を持つようなものが望ましい。
A(t)が変調関数に対応する場合:
【数4】
これは、ノッチ段階の間に、変調関数が前段階および後段階の間よりも大きな及び/又は速い振幅変化を受けるという事実を反映している。これにより、摩擦の変化がより速く及び/又は大きくなり、指で知覚されるノッチが生じる。
【0122】
1つ以上のノッチを形成するテクスチャリングパターンMは、一般に、各ノッチが基準軸Rに沿って延びるという意味で、基準軸Rの上に配置される。パターンが割り当てられるテクスチャリング領域10′は、基準軸Rの上に広がることが望ましい。2つの連続するノッチは、基準軸R上の距離drだけ離れている。したがって、2つの連続するノッチ間の時間間隔dtは次のようになる。
【数5】
ここで、V
Rは軸Rに平行な指の速度である。速度が速いほど、時間間隔dtが長くなる。また、速度V
Rに基づいて、前段階、ノッチ段階、後段階のそれぞれの長さが同じように変化することも理解される。
【0123】
図7Bと7Dでは、変調関数は上三角である。
図7Eは別の構成を示しており、それによると変調関数は下三角である。
【0124】
図7Fに示す1つの構成によると、ノッチは基準軸R上に一定の空間範囲を持っている。ノッチの間隔が空いている軸Rに対して指が平行に動くと、2つの連続するノッチ通過の時間差dtが式(5)との関連で定義されるように変調関数Aが調整される。基準軸Rと角度θを形成して指が動く方向Dを
図7Fに示す。変調関数は、指の速度Vの基準軸R上の成分V
Rに基づいて調整される。指がD方向に移動するとき、2つの連続するノッチ間の時間間隔dt′は、次のようになる。
【数6】
【0125】
図7Gと
図7Hは、それぞれD方向と基準軸R上の指の動きに対応する変調機能を示している。Y軸は正規化された振幅に対応する。X軸は時間t-単位sに対応する。時間的形状は基準軸上の速度に依存することがわかる。ノッチ段階dt
cの長さは140μs(
図7G)と70μs(
図7H)の間で変化する。
【0126】
一般的に、より良い感覚を得るためには、ノッチ段階dtcの長さは100ms未満、または1ms、500μs、250μsであることが望ましい。より一般的には、ノッチ段階の長さは指の速度と仮想ノッチのサイズに依存する。
【0127】
図8(a)と
図8(b)は、それぞれ変調関数とその時間微分を示している。ノッチ段階dt
cの間、振幅は減少し、その後増加し、再び減少する。これにより、指は減速し、その後加速し、再び減速する。減速/加速/減速の組み合わせは、ノッチがユーザーに知覚されることにつながる。
図8(b)は、
図8(a)に示されている変調関数の時間微分A′を示しており、その微分は前段階と後段階の間で0である。その微分はノッチ段階の間に大きく変動し、ノッチがユーザーに認識されるようになる。
【0128】
異なるシーケンス、つまり「パターン」を定義して、ノッチ効果を発生させることができる。
図9Aから9Hは、異なる可能性を示している。シーケンスは、前段階、ノッチ段階、後段階を含む連続に対応し、触覚ノッチ効果につながることが思い出される。
図9A~9Hの例は、異なるシーケンスが可能であることを示している。これにより、指9による多種多様なノッチ感覚を得ることができる。
【0129】
図10および11は、それぞれのシーケンスがノッチに対応する前段階-ノッチ段階-後段階のシーケンスの連続からなる変調関数Aを示している。
【0130】
図12Aは、2つの位置を切り替えるために使用できるスイッチの外観を持つ平坦なテクスチャリング領域10′を示している。例えば、これは、オン/オフのスイッチである。このタイプのスイッチは、タッチインターフェースの分野で知られている。指は仮想的なスライダーに作用し、そのスライダーを移動領域の片側または別側に移動させる。仮想的なスライダーはここでは円盤で表される。この例では、指が右から左に動いて仮想的なスライダーを動かす。指の動きの間、
図12Bに示す活性化関数に従って、触覚感覚が生じる。
図12Bは、変調振幅がスイッチ上の指の位置に対応するように、
図12Aを基準に配置されている。スライダーが最終的な位置(移動領域の右側)に近づくにつれて、変調機能の振幅が大きくなり、スライド感が増し、最終的な位置に達すると、スライド感は最大になる。
【0131】
本発明の利点は、ノッチの触覚提示が変調機能によって構成されることである。提示はまた、搬送波に依存することができる。周波数及び/又は搬送波の形状、当該搬送波は、非限定的に、おそらく正弦波または長方形または三角形である。
【0132】
説明されたすべての実施形態と互換性のある一つの可能性によると、指によってプレート10に加えられた圧力が所定の圧力閾値を超えた場合にのみ、活性化信号が変換器に送られる。このような実施形態では、制御ユニット15は、圧力センサー17によって測定された圧力を、以前に決定された圧力閾値と比較することができる。その比較に基づいて、活性化信号は生成される、又は、生成されない。例えば、指によってプレートに加えられる圧力が所定の閾値を超えた場合にのみ活性化信号は生成される。
【0133】
図13は、上述のように、タッチ装置を制御するための方法の主なステップを示している。
【0134】
ステップ100:プレートに指を当てる。
【0135】
ステップ110:プレート10上の指の位置を決定する。位置センサー14は位置信号S(t)を形成する。このステップの間、制御ユニット15は指がテクスチャリング領域10′上に位置していることを確認できる。それ以外の場合、次のステップは実行されない。
【0136】
ステップ120:計算ユニット14′を使用してインターフェース上の指の移動速度を測定し、後者は指の速度を表す速度信号V(t)を生成する。ステップ120は、少なくとも一つの基準軸Rに対する速度VR(t)の決定を含むことができる。
【0137】
ステップ130:ステップ120から生じる速度に基づいて、活性化信号Act(t)を生成する。テクスチャリング領域10′に仮想テクスチャリングパターンMが割り当てられる。活性化信号は周期的な搬送波の振幅変調によって形成されるため、そのテクスチャリングパターンはユーザーの指で感じることができる。変調関数の時間的形状は、パターンMの基準軸R上のステップ120から生じる速度に依存する。
【0138】
タッチ装置1は、装置20のインターフェースとすることができる。その後、仮想テクスチャリングパターンMは、互いに間隔を空けたノッチを含むことができる。テクスチャリング領域10′は、そのテクスチャリング領域上の指の位置に基づいて装置のパラメータを制御するように構成される。この構成によれば、方法は次のステップを含むことができる。
【0139】
ステップ140:指の位置に基づいて制御信号Com(t)を生成し、インターフェースによって制御されるタッチ装置に送信する。その制御信号を使用して、指で触れるテクスチャリング領域10′に関連する操作パラメータ18の値を設定できる。
【0140】
この方法は、ステップ130と140が実装されているか、または実装されていないかの判断に基づいて、ステップ125の、指によってプレートに加えられる圧力を決定し、その圧力と圧力閾値を比較することを含むことができる。
【0141】
本発明の顕著な利点は、テクスチャリングパターンが、テクスチャリング領域10′の表面状態とは無関係に、デジタル的に定義される仮想パターンであることである。したがって、本発明を使用して、同じプレート上に、互いに間隔を空けて、それぞれの異なるテクスチャリング領域に複数の仮想テクスチャリングパターンを定義することができる。また、本発明を使用して、複数の仮想テクスチャリングパターンを同じテクスチャリング領域に割り当てることもできる。例えば、タッチ装置がインターフェースの場合、同じテクスチャリング領域を連続して使用して、異なるパラメータを設定できる。同じテクスチャリング領域の異なるパラメータは、同じ領域に異なるテクスチャリングパターンをそれぞれ割り当てることで設定できる。
図14Aと
図14Bは、2つの異なるパラメータを設定するために、同じテクスチャリング領域に割り当てられた2つのパターンM
1とM
2を示している。これらの2つの仮想パターンは、異なるノッチの数と位置を定義する。
【0142】
本発明は、テクスチャリング領域10′におけるプレートの表面の実際の状態に関係なく、同じテクスチャリング領域に多種多様なテクスチャリングパターンを定義するために使用できることが理解される。
【0143】
このインターフェースは、家電製品の分野や車両のダッシュボードなど、消費者向けデバイスの制御に適している。このインターフェースを使用すると、ユーザーが知覚できる触覚フィードバックを提供できる。触覚フィードバックは、移動する機械的部品からの機械的な応答を模倣している。これにより、インターフェースの使用が簡単でユーザーフレンドリーになる。
【国際調査報告】