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特表2023-546652活性が増強されたナチュラルキラー細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】活性が増強されたナチュラルキラー細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20231030BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231030BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231030BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/17
A61P37/04
A61P35/00
C12N5/10
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522387
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021056761
(87)【国際公開番号】W WO2022093901
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,978
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508228061
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,ダン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤマモト,ケンタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
【要約】
内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子の不活性化変異を含む、操作された免疫細胞、任意選択的に、ナチュラルキラー(NK)細胞。増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有する、幹細胞、任意選択的に人工多能性幹細胞(iPSC)から産生される、ADAM17欠損免疫細胞。当該操作された免疫細胞を含む医薬組成物。操作された免疫細胞及び医薬組成物を作製するための方法、並びに使用方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を含む、操作された免疫細胞。
【請求項2】
前記操作された免疫細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来の免疫細胞である、請求項1に記載の操作された免疫細胞。
【請求項3】
前記操作された免疫細胞が、末梢血(PB)由来の免疫細胞である、請求項1に記載の操作された免疫細胞。
【請求項4】
前記操作された免疫細胞が、臍帯血(CB)由来の免疫細胞である、請求項1に記載の操作された免疫細胞。
【請求項5】
前記操作された免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項6】
前記ADAM17不活性化変異が、内因性ADAM17遺伝子のノックアウトである、請求項1~5のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項7】
前記操作された免疫細胞が、ADAM17-/-免疫細胞である、請求項6に記載の操作された免疫細胞。
【請求項8】
前記ADAM17不活性化変異が、内因性ADAM17遺伝子のノックダウンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項9】
前記操作された免疫細胞が、CD56+、CD94+、NKG2D+、NKp44+、及びNKp46+である、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項10】
前記操作された免疫細胞が、刺激剤による刺激後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD16a、TNF-α、及びCD62L(L-セレクチン)の増加した発現を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項11】
前記操作された免疫細胞におけるCD16aの発現が、培養物中での増殖中に少なくとも約6週間、安定して維持される、請求項1~10のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項12】
前記免疫細胞が、ヒト免疫細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞のうちの1つ以上を含む、精製細胞組成物。
【請求項14】
操作された免疫細胞の少なくとも約71%が、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する、請求項13に記載の精製細胞組成物。
【請求項15】
操作された免疫細胞の少なくとも約42%が、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する、請求項13又は14に記載の精製細胞組成物。
【請求項16】
前記操作された免疫細胞が、疾患細胞株及び前記疾患細胞株に特異的な抗体と共インキュベーションした後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD107a及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の増加した発現を有する、請求項13に記載の精製細胞組成物。
【請求項17】
前記疾患細胞株が、Bリンパ腫細胞株であり、前記疾患細胞株に特異的な前記抗体が、抗CD20抗体である、請求項16に記載の精製細胞組成物。
【請求項18】
前記抗CD20抗体が、リツキシマブである、請求項17に記載の精製細胞組成物。
【請求項19】
前記操作された免疫細胞が、CD107aの少なくとも約45%増加した発現を示す、請求項17又は18に記載の精製細胞組成物。
【請求項20】
前記操作された免疫細胞が、IFNγの少なくとも約36%増加した発現を示す、請求項17又は18に記載の精製細胞組成物。
【請求項21】
前記疾患細胞株が、扁平上皮がん細胞株であり、前記疾患細胞株に特異的な前記抗体が、抗EGFR抗体である、請求項16に記載の精製細胞組成物。
【請求項22】
前記抗EGFR抗体が、セツキシマブである、請求項21に記載の精製細胞組成物。
【請求項23】
前記操作された免疫細胞が、CD107aの少なくとも約29%増加した発現を示す、請求項21又は22に記載の精製細胞組成物。
【請求項24】
前記操作された免疫細胞が、IFNγの少なくとも約39%増加した発現を示す、請求項21又は22に記載の精製細胞組成物。
【請求項25】
前記操作された免疫細胞が、操作されていない免疫細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す、請求項13~24のいずれか一項に記載の精製細胞組成物。
【請求項26】
請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を作製する方法であって、
a)内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を幹細胞に導入することと、
b)前記幹細胞を免疫細胞に分化させることと、を含む、方法。
【請求項27】
前記幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)、末梢血細胞、又は臍帯血細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項30】
請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、又は請求項29に記載の医薬組成物と、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項31】
疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞又は請求項29に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記疾患又は障害が、悪性腫瘍である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記悪性腫瘍が、腫瘍関連抗原を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患又は障害が、ウイルス感染症である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルス感染症が、ウイルス感染関連抗原を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投与することが、前記操作された免疫細胞、又は前記操作された免疫細胞を含む医薬組成物を、疾患に特異的な抗体と組み合わせて投与することを更に含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
疾患に特異的な前記抗体が、抗CD20抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗CD20抗体が、リツキシマブである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
疾患に特異的な前記抗体が、抗EGFR抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記抗EGFR抗体が、セツキシマブである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
遺伝子改変されたADAM17欠損ナチュラルキラー(NK)細胞を含む、細胞培養物。
【請求項42】
前記NK細胞が、人工多能性幹細(iPSC)から産生されている、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項43】
前記NK細胞が、末梢血細胞又は臍帯血細胞から産生されている、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項44】
前記NK細胞が、ヒトNK細胞である、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項45】
前記NK細胞が、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項46】
前記NK細胞が、細胞表面マーカーCD56、NKG2D、NKp44、及びNKp46を発現する、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項47】
前記NK細胞が、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増加した細胞表面マーカーCD16、TNF-α、及びCD62Lを発現する、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項48】
前記NK細胞が、CRISPR、TALEN、又はZFNを用いて、ADAM17欠損であるように遺伝子改変されている、請求項41に記載の細胞培養物。
【請求項49】
請求項41~48のいずれか一項に記載の遺伝子改変されたADAM17欠損NK細胞の培養物からのNK細胞を含む、医薬組成物。
【請求項50】
必要とする対象を治療する方法であって、前記対象に、請求項49に記載の有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項51】
前記必要とする対象が、NK耐性の耐性がんを患っている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記必要とする対象が、慢性ウイルス感染症を患っている、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が、疾患細胞に特異的な抗体を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が、CD20に特異的な抗体を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
細胞を、ADAM17欠損であるように遺伝子改変することを含む、請求項41~48のいずれか一項に記載のNK細胞培養物を製造する方法。
【請求項56】
前記細胞が、iPSCである、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月27日に出願された米国仮出願第63/105,978号の優先権の利益を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府資金援助
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金番号CA203348の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、活性が増強されたナチュラルキラー(NK)細胞に関する。NK細胞は、幹細胞に由来し得る。本発明の他の態様及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【背景技術】
【0004】
養子細胞療法は、がんを治療する有望な新しい方法として急速に関心を集めている。特に、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、最近2017年に承認された、がんを治療するための唯一のUSFDA承認されたリンパ球ベースの養子がん細胞療法であり、難治性B細胞悪性腫瘍の治療において顕著な有効性を示している。CAR-T細胞療法の成功は、より効果的な養子細胞療法選択肢の開発に対する楽観主義を促進している。現在承認されているCAR-T治療レジメンは、元の患者からの白血球除去輸血によって採取されたエクスビボ修飾及び増殖されたT細胞の自己移植に依存している。このプロセスには3~4週間かかり、個々の患者からの採取されたT細胞の質に関するドナーの変動性は、治療成績に広く影響を与える可能性がある。更に、CAR-T細胞療法を受けた一部の患者は、潜在的に致命的な副作用、特にサイトカイン放出症候群(CRS)及び神経毒性を経験する。したがって、最小限の副作用でタイムリーに患者に投与することができる、定義された一貫した品質を有する標準化された「既製の」細胞療法製品の開発は、非常に望ましく、大きな商業的関心を有する。
【0005】
この文脈では、焦点は、「既製の」細胞療法のための好適な細胞源としてのナチュラルキラー(NK)細胞に向けられている。T細胞とは異なり、NK細胞は、事前の抗原プライミングなしに、腫瘍及びウイルス感染細胞を殺傷する天然の能力を有する。更に、NK細胞は、移植片対宿主病を回避するためにHLAマッチングを必要とするT細胞とは異なり、HLAアロタイプにわたって患者に投与することができる。同種NK細胞の養子移入を利用した多くの試験では、標準化学療法に耐性のある急性骨髄性白血病(AML)患者で完全な寛解が実証された。別の最近の臨床研究では、最小限の副作用で、同種CAR発現NK細胞を使用したリンパ性悪性腫瘍の効果的な治療を実証した。したがって、NK細胞は、T細胞に対して、多様な悪性腫瘍を治療するための安全で効果的な「既製の」養子細胞療法製品として使用されることを可能にするいくつかの利点を有する。
【0006】
ドナー末梢血(PB)、臍帯血(CB)、及び確立されたNK腫瘍細胞株から供給されるNK細胞に加えて、人工多能性幹細胞(iPSC)から生成されるNK細胞は、同種NK細胞にとって有望な供給源である。最も顕著なことに、iPSCは、改善された抗腫瘍活性を媒介するためにNK細胞の細胞毒性活性を増強するために利用され得る、遺伝子改変、すなわち、遺伝子欠失/変異又は過剰発現に、より適している。対照的に、CB及びPB由来のNK細胞は、遺伝子操作がより困難であり、より不均一な遺伝子改変された細胞集団を産生し、ドナーの変動性もまた、下流の細胞療法有効性に影響を与える可能性がある。ヒトiPSCはまた、未分化状態で培養において無限に成長し、iPSCからNK細胞を誘導するために開拓され、洗練された方法は現在、臨床スケールでiPSC由来のNK細胞の産生を可能にする。
【0007】
したがって、iPSCは、増強された細胞毒性を有する、標準化された、遺伝子編集された、及び均一な養子NK細胞療法を生成するための理想的な鋳型として機能する。したがって、いくつかの知名度の高いバイオテクノロジー会社及び製薬会社は、「既製の」iPSC由来のNK細胞療法製品を積極的に開発しており、すでに臨床試験に入っている会社もある。NK細胞媒介性細胞毒性を増強するための遺伝子改変戦略を同定することは、様々な悪性腫瘍を治療するためのより強力な養子NK細胞療法製品の生成を可能にするため、非常に活発な研究分野であり、多大な商業的意味を有する。
【0008】
したがって、NK細胞は養子細胞療法において有用であり得るが、それらの使用はしばしば、生物学的制約によって制限され、次善の有効性をもたらす。したがって、当該細胞及びそれらの使用方法を含む組成物の満たされない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本開示は、内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を含む、操作された免疫細胞を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来の免疫細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、末梢血(PB)由来の免疫細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、臍帯血(CB)由来の免疫細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ADAM17不活性化変異は、内因性ADAM17遺伝子のノックアウトである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、ADAM17-/-免疫細胞である。いくつかの実施形態では、ADAM17不活性化変異は、内因性ADAM17遺伝子のノックダウンである。
【0013】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD56+、CD94+、NKG2D+、NKp44+、及びNKp46+である。
【0014】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、刺激剤による刺激後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD16a、TNF-α、及びCD62L(L-セレクチン)の増加した発現を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞におけるCD16aの発現は、培養物中での増殖中に少なくとも約6週間、安定して維持される。
【0016】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ヒト免疫細胞である。
【0017】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞のうちの1つ以上を含む精製細胞組成物を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約71%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約42%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。
【0019】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、疾患細胞株及び当該疾患細胞株に特異的な抗体と共インキュベーションした後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD107a及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の増加した発現を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、Bリンパ腫細胞株であり、当該疾患細胞株に特異的な抗体は、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約45%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約36%増加した発現を示す。
【0021】
いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、扁平上皮がん細胞株であり、当該疾患細胞株に特異的な抗体は、抗EGFR抗体である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約29%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約39%増加した発現を示す。
【0022】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、操作されていない免疫細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す。
【0023】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞を作製する方法であって、a)内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を幹細胞に導入することと、b)幹細胞を免疫細胞に分化させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)、末梢血細胞、又は臍帯血細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞である。
【0024】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞又は本開示の医薬組成物と、使用説明書と、を含む、キットを提供する。
【0026】
一態様では、本開示は、疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において、それを行う方法であって、本開示の操作された免疫細胞又は本開示の医薬組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、悪性腫瘍は、腫瘍関連抗原を含む。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、ウイルス感染関連抗原を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、投与することは、操作された免疫細胞、又は当該操作された免疫細胞を含む医薬組成物を、疾患に特異的な抗体と組み合わせて投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、疾患に特異的な抗体は、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブである。いくつかの実施形態では、疾患に特異的な抗体は、抗EGFR抗体である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。
【0028】
一態様では、本開示は、遺伝子改変されたADAM17欠損ナチュラルキラー(NK)細胞を含む、細胞培養物を提供する。実施形態では、NK細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)から産生されている。実施形態では、NK細胞は、末梢血細胞又は臍帯血細胞から産生されている。実施形態では、NK細胞は、ヒトNK細胞である。
【0029】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す。
【0030】
実施形態では、NK細胞は、細胞表面マーカーCD56、NKG2D、NKp44、及びNKp46を発現する。実施形態では、本発明は、NK細胞が、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増加した細胞表面マーカーCD16、TNF-α、及びCD62Lを発現することを提供する。
【0031】
実施形態では、NK細胞は、CRISPR、TALEN、ZFN、又は他の遺伝子編集技術を用いて、ADAM17欠損であるように遺伝子改変されている。
【0032】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の遺伝子改変されたADAM17欠損NK細胞の培養物からのNK細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0033】
一態様では、本開示は、必要とする対象を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、本発明は、必要とする対象が、NK耐性がんを患っていることを提供する。実施形態では、本発明は、必要とする対象が、慢性ウイルス感染症を患っていることを提供する。
【0034】
実施形態では、投与は、疾患細胞に特異的な抗体を更に含む。実施形態では、本発明は、投与が、CD20に特異的な抗体を更に含むことを提供する。
【0035】
一態様では、本開示は、細胞をADAM17欠損であるように遺伝子改変することを含む、本明細書に記載のNK細胞培養物を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明のある実施形態の概略図を示す。
図2】リツキシマブ(抗CD20)の存在下で、ADAM17-KO iPSC-NK細胞が、RA JI細胞に対する増強された細胞毒性を実証することを示す。
図3A-F】ADAM17欠損iPSCが、造血前駆細胞及び機能的NK細胞に効率的に分化することを示す。図3Aは、CRISPR/Cas9を使用してADAM17でエクソン1を標的化するためのゲノム位置を示す。赤色の配列は、使用される非限定的な例示的な短いガイドRNA(sgRNA)配列、及び以下の領域内の対応するコードされたアミノ酸を示す。ヒトゲノムアセンブリGRCh38.p13に基づくsgRNA配列に対応する染色体2上の数値ゲノム位置。図3Bは、野生型対照(WT)及びADAM17欠損(ADAM17-KO)iPSC上の多能性マーカーSSEA-4及びTRA-1-81、並びにADAM17の表面マーカー発現を示す。赤いグレースケールヒストグラム-アイソタイプ対照。青いグレースケールヒストグラム-示されたマーカーの染色。図3Cは、播種7日後にWT及びADAM17KO iPSCから生成された解離スピン胚様体(EB)上のCD34、CD31、CD43、CD45の表面マーカー発現を示す。図3Dは、WT及びADAM17-KO iPSCから生成されたiPSC-NK細胞、並びに健康なドナー末梢血NK細胞(PB-NK)の代表的な表面マーカー発現を示す。赤いグレースケールヒストグラム-アイソタイプ対照。青いグレースケールヒストグラム-示されたマーカーの染色。図3Eは、EB形成後、かつNK分化条件下で27~35日で生成された、WT iPSC-NK及びADAM17KO iPSC-NK上のCD16表面発現を分析する複数の実験からの、%CD16細胞((C)、CD16パネルのように)の定量化を示す。各ドットは、生成されたiPSC-NK細胞バッチの生物学的複製を表す。等分散を前提としたStudentの両側t検定によって判定された**P<0.005。エラーバーは±S.D.を示す。図3Fは、K562赤白血病細胞及び示されたNK細胞を、示された効果対標的(E:T)比で共インキュベートした後の細胞死及びアポトーシス(カスパーゼ3/7、7-AAD)を測定する4時間の細胞毒性アッセイを示す。
図4A-D】16濃縮ADAM17欠損NK細胞が、CD16、CD62Lを保持し、活性化時にTNFα表面発現を蓄積することを示す。図4Aは、CD16+NK細胞の濃縮のための概略図を示す。図4Bは、未処理の、又はホルボール-12-ミリスチン酸13-酢酸塩(80nM)及びイオノマイシン(130μM)(PMA/Iono)で4時間刺激し、CD16表面発現について評価した、CD16濃縮((図4A)のように)WT、ADAM17KO iPSC-NK、及びPB-NKを示す。図4Cは、図4Bのように、未処理と比較した、%CD16細胞の定量化を示す。各ドットは、個別の実験の複製を表す。等分散を前提としたStudentの両側t検定によって判定された***P<0.001。示されているエラーバーは、実験の複製からの±S.D.を示す。図4Dは、未処理の、又はPMA/イオノマイシンで4時間刺激し、TNFa及びCD62L表面発現について評価した、CD16濃縮WT、ADAM17KO iPSC-NK、及びPB-NKを示す。
図5A-C】ADAM17欠損iPSC-NK細胞が、増強された抗体由来細胞毒性(ADCC)活性発現を実証することを示す。図5Aは、CD107a対IFNγを示し、図5Bは、示された条件での4時間のインキュベーション後のCD16濃縮WT、ADAM17KO iPSC-NK、及びPB-NK上のTNFα対IFNγを示す。腫瘍細胞株(K562、RAJI、CAL27)との共培養条件を、1:1の効果対標的比でインキュベートし、示されるプロットを、CD56+細胞上でゲーティングした。リツキシマブ(抗CD20)を10μg/mLの最終濃度で使用し、セツキシマブ(抗EGFR)を1μg/mLの最終濃度で使用し、同じそれぞれの濃度でヒトIgG1アイソタイプ対照とインキュベートした細胞と比較した。固定化後及び透過性化後のIFNγ及びTNFαレベルを評価するために、細胞内染色を実施した。図5Cは、%CD107+(左)、%IFNγ(中央)、及び%TNFα(右)の定量化を示す。それぞれの条件の各ドットは、独立して実施された実験から分析された%陽性細胞を示す。等分散を前提としたStudentの両側t検定ごとの*P<0.05。エラーバーは、実験の複製からの±S.D.を示す。
図6A-B】ADAM17欠損iPSC-NKが、治療抗体による増強された細胞毒性を実証することを示す。図5Aは、(A)10μg/mLのリツキシマブ(抗CD20)又はヒトIgG1アイソタイプ対照を有するRAJI細胞と共インキュベートした、CD16濃縮WT、ADAM17KO iPSC-NK、及びPB-NKの24時間細胞毒性アッセイを示すか、又は図6Bは、1μg/mLのセツキシマブ(抗EGFR)又はヒトIgG1アイソタイプ対照を有するCAL27細胞を示す。細胞死は、無傷細胞の数に対して正規化したカスパーゼ3/7陽性イベントとして検出された(CellTrace Far Red)。各条件について示されたデータは、0時間でのバックグラウンド細胞死に対して正規化した。画像を24時間にわたって1時間間隔で取得し、IncuCyteプラットフォームを使用して死滅/生細胞数の変化を評価した。エラーバーは、条件/時点ごとに3ウェルにわたって撮影された12枚の画像で計算された細胞死の±S.E.M.を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、部分的には、操作されていない免疫細胞と比較して、幹細胞から産生される、操作された免疫細胞であるADAM17欠損ナチュラルキラー(NK)細胞が、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有し、かつ他のAディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ17基質の中でもとりわけCD16aの拡張した安定発現を有するという、本発明者らによる驚くべき発見に関する。本開示は、これらの発見を利用する、操作された細胞、組成物、及び方法を提供する。
【0038】
一態様では、本開示は、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有する、人工多能性幹細胞-ナチュラルキラー(iPSC-NK)細胞などのNK細胞を産生するための新規の遺伝子操作戦略を提供する。ADCCは、抗体オプソニン化標的細胞に対するNK細胞の細胞毒性を媒介し、抗腫瘍抗体の治療有効性を媒介するのを助ける重要な経路である。NK細胞では、ADCCは、抗体コーティングされた標的細胞と活性化受容体FcγRIIIa(CD16a)との係合を介して発生し、炎症性サイトカインアップレギュレーション、脱顆粒、及び標的細胞死をもたらす。細胞活性化時に、CD16a細胞外ドメインは、Aディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ17(ADAM17)としても知られるTNFα変換酵素(TACE)によって、NK細胞表面から切断される。細胞外ドメインの切断は、NK細胞活性を低下させるCD16aを介した更なる抗体結合及びシグナル伝達を防止する。したがって、ADAM17活性を欠くNK細胞は、NK活性化時にCD16aが脱落するのを防ぎ、ADCC活性を増強することができる。更に、約80のADAM17基質、中でも特にTNFβ及びCD62L(L-セレクチン)が、同定されており、NK細胞活性化時に切断を受け、細胞毒性に影響を及ぼし得ることも指摘されている。ADAM17発現を欠くiPSCに由来するADAM17欠損(ADAM17-KO)NK細胞は、本明細書に記載される。ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、未改変の野生型iPSC-NK(WT iPSC-NK)及び末梢血-ナチュラルキラー(PB-NK)細胞対照と比較して、治療抗体と組み合わせて、NK耐性腫瘍細胞に対する増強されたADCC活性及びより強力な細胞毒性を有する。
【0039】
本開示の様々な更なる態様及び実施形態は、以下の説明によって提供される。
【0040】
定義
本開示をより詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ち得る。
【0041】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の材料及び方法を、本発明を実施するために使用することができる。本発明の実施は、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を使用し得、これらは当業者の技量の範囲内である。そのような技法については、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(MJ.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993- 1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and CC.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al ,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(CA.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)、及びCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)などの文献に詳細に説明されている。本明細書で記載されるものと同様又は同等のあらゆる方法及び材料が、本発明の実施で使用され得るのであるが、例示的な方法、装置及び材料が、本明細書に記載されている。本開示の目的のために、以下の用語を以下に定義する。追加の定義は、本開示を通して示される。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「それによって特徴付けられる」、又はそれらの任意の他の変形は、明示的に示される任意の限定に従って、列挙される構成要素の非排他的な網羅を包含することが意図されている。例えば、操作された免疫細胞、医薬組成物、及び/又は要素(例えば、構成要素、特徴、又はステップ)の列挙を「含む」方法は、必ずしもそれらの要素(又は構成要素、又はステップ)のみに限定されないが、操作された免疫細胞、医薬組成物、及び/又は方法に明示的に列挙されていない、又は固有の他の要素(又は構成要素、又はステップ)を含み得る。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態(a particular embodiment)」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態(a certain embodiment)」、「追加の実施形態」、若しくは「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所における前述の句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態では、任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【0043】
2つ以上の項目の列挙において「及び/又は」という用語が使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で使用しても、又は列挙された項目のいずれか1つ以上と組み合わせて使用してもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」という表現は、A及びBの一方又は両方、すなわち、Aのみ、Bのみ、又はAとBの組み合わせを意味することが意図される。「A、B及び/又はC」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、又はAとBとCの組み合わせを意味することが意図される。
【0044】
本明細書で使用される「a」及び「an」という用語は、別段の指示がない限り、列挙された構成要素のうちの「1つ以上」を指すことを理解されたい。代替物(例えば、「又は」)の使用は、代替物のうちの1つ、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0045】
範囲形式での説明は、便宜上かつ簡潔さのためにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、考えられる全ての部分範囲とその範囲内の個々の数値が具体的に開示されているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6が具体的に開示されているとみなされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。また、本明細書では、値又は範囲は、「約」、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、として表され得る。そのような値又は範囲が表される場合、開示される他の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値まで、列挙された特定の値を含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。
【0046】
本明細書で開示される値がいくつかあり、各値が、本明細書では、値自体に加えて、「約」その特定の値としても開示されることが更に理解されよう。実施形態では、「約」は、例えば、基準量、レベル、値、数、周波数、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに対して最大で15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%変動する基準量、レベル、値、数、周波数、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを意味するために使用されることができる。様々な実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、基準量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さについて、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%に関する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0047】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願が各々参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかの如く同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本明細書で使用されるセクション見出しは、構成の目的のみのためのものであり、記載された主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0049】
操作された細胞
一態様では、本開示は、内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を含む、操作された免疫細胞を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来の免疫細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、末梢血(PB)由来の免疫細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、臍帯血(CB)由来の免疫細胞である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」又は「iPSC細胞」又は「iPSC」は、増殖、選択可能な分化、及び成熟が可能である、多能性状態に再プログラムされた体細胞に由来する細胞を指すために使用される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「末梢血」又は「末梢血細胞」は、循環血に由来し、かつ増殖、選択可能な分化、及び成熟が可能である造血幹細胞を含む、細胞を指すために使用される。
【0053】
本明細書で使用する場合、「臍帯血細胞」は、臍帯及び胎盤に由来し、かつ増殖、選択可能な分化、及び成熟が可能である造血幹細胞を含む、細胞を指すために使用される。
【0054】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0055】
本明細書で使用する場合、及び別途指定されない限り、「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細胞」は、先天性免疫系の主要成分を構成する細胞毒性リンパ球である、細胞を指すために使用される。ヒトでは、ナチュラルキラー細胞は通常、表面マーカーCD16(FCyRIII)及びCD56を発現する。NK細胞は、細胞毒性であり、細胞質中の小さな顆粒であり、グランザイムとして知られるパーフォリン及びプロテアーゼなどの特別なタンパク質を含有する。NK細胞は、ウイルス感染細胞に迅速な応答を提供し、形質転換細胞に応答する。殺傷が予定されている細胞に近接して放出されると、パーフォリンは、標的細胞の細胞膜に孔を形成し、孔を通ってグランザイム及び関連分子が入ることができ、アポトーシスを誘導する。したがって、NK細胞は、抗腫瘍免疫及び抗感染免疫におけるリンパ球集団のエフェクターとして作用し得る。
【0056】
典型的には、免疫細胞は、感染細胞の表面上の主要組織適合性複合体(MHC)分子によって提示される病原体からペプチドを検出し、サイトカイン放出を誘発し、溶解又はアポトーシスを引き起こす。しかしながら、NK細胞は、病原体からのペプチドがMHC分子上に存在するかどうかにかかわらず、ストレス細胞を認識する能力を有するため、ユニークである。NK細胞は、標的を殺すために事前の活性化を必要としないという当初の考えのために「ナチュラルキラー」と命名された。NK細胞は、大きな顆粒リンパ球(LGL)であり、骨髄中で分化し、成熟することが知られており、骨髄から循環に入る。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD3-であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD45+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD45+CD3-であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD45+CD33-であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD45+CD3-CD33-であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+CD94+NKG2D+NKp44+NKp46+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD56+NKG2D+NKp44+NKp46+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NKp30+NKp44+NKp46+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NKp30+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NKp44+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NKp46+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、CD94+NKG2+であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、NK細胞は、阻害性キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR+)であることを特徴とする。
【0057】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD56+、CD94+、NKG2D+、NKp44+、及びNKp46+である。
【0058】
本明細書で使用する場合、「操作された」、又は「遺伝子改変された」、又は「形質転換された」は、互換的に使用され、細胞は、ゲノム配列の分子リプログラミング(例えば、挿入、欠失、又は置換)によって操作されている。当該細胞は、継代の数にかかわらず、一次形質転換された細胞及びそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではなく、変異を含有し得る。最初に形質転換された細胞でスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が本明細書に含まれる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ADAM17不活性化変異は、内因性ADAM17遺伝子のノックアウトである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、ADAM17-/-免疫細胞である。いくつかの実施形態では、ADAM17不活性化変異は、内因性ADAM17遺伝子のノックダウンである。いくつかの実施形態では、細胞は、内因性ADAM17遺伝子の発現を阻害する外因性ポリヌクレオチドを発現する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「不活性化変異」は、野生型又は天然に存在するゲノム核酸配列と比較して、転写物又は翻訳産物の形成の欠如をもたらすゲノム核酸の変異、すなわち、挿入、欠失、又は置換を記述するために使用される。不活性化変異は、発現のために天然に存在する核酸配列を機能的に不活性化するか、又は非機能的及び/又は不作動にする。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ノックアウト」又は「KO」は、遺伝子操作を指すために使用され、この操作は、遺伝子が無効にされ、及び/又は遺伝子の機能が大部分又は完全に排除されることをもたらす。ノックアウトは、当該技術分野で既知の様々な方法、例えば、早期停止コドンの組み込み、又は遺伝子を不作動にする程度の挿入及び/若しくは欠失を介して達成され得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ノックダウン」又は「KD」は、遺伝子操作を指すために使用され、この操作は、遺伝子の発現が減少することをもたらす。ノックダウンは、遺伝子の転写の減少をもたらす遺伝子改変の使用によって、又は機能的遺伝子転写産物の欠乏をもたらす遺伝子若しくはmRNA転写産物に相補的な配列を有する短いDNA若しくはRNAオリゴヌクレオチドをコードする外因性ポリペプチドを導入することを使用して達成され得る。
【0063】
「外因性」及び「異種」という用語は、生物の外に由来する核酸、タンパク質又はペプチド、小分子化合物などを含む、任意の分子を指すために本明細書で使用される。対照的に、「内因性」という用語は、生物内に由来する(すなわち、生物によって自然に産生される)任意の分子を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ADAM17-/-」という用語は、内因性ADAM17遺伝子の両方の対立遺伝子に不活性化変異を有し、それによって細胞をダブルノックアウトにし、細胞は、両方の遺伝子の発現が存在しない、又はほぼ存在しないことを示す、細胞を指す。
【0065】
免疫細胞が異常な要素を標的にし、その後排除する能力は、無数の潜在的なデバイスを伴う。例えば、1つのそのようなデバイスには、抗体依存性細胞毒性(ADCC)の使用が含まれ、免疫細胞は、抗体オプソニン化標的に対する細胞毒性を媒介する。エフェクター細胞は、標的抗原に結合した特異的抗体によってマークされた標的細胞に結合することによってADCCを利用し、その結果、エフェクター細胞の脱顆粒化により、細胞毒性因子を放出し、標的を死滅させる。エフェクター細胞の表面上のFc受容体(活性化受容体)は、抗原刺激性ADCCに結合した抗体のFc領域に結合する。
【0066】
Fc受容体の細胞外ドメインは、細胞活性化後に酵素による分解を受ける。例えば、CD16受容体は、酵素Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)の多くの暫定的基質の1つとして同定されている。エフェクター細胞CD16受容体の破壊は、細胞を、抗体結合及びシグナル伝達を不可能にし、結果としてADCCの低減をもたらすであろう。
【0067】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞、Fc受容体を含む。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、活性化後、完全に無傷のままであるか、又は分解されない。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、FcγRIII(CD16)受容体である。いくつかの実施形態では、CD16受容体は、FcIRIIIa(CD16a)である。いくつかの実施形態では、CD16受容体は、FcγRIIIb(CD16b)である。いくつかの実施形態では、CD16受容体は、CD16a及び/又はCD16bである。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、
【数1】

である。
【0068】
操作された免疫細胞は、野生型細胞対応物と比較して、特定の細胞表面マーカーのアップレギュレーション及び/又は安定化を示し得る。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、野生型細胞対応物と比較して、CD16の安定化を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、野生型対応物と比較して、CD62Lの安定化を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、野生型対応物と比較して、TNFαの増強された表面発現を示す。
【0069】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、刺激剤による刺激後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD16a、TNF-α、及びCD62L(L-セレクチン)の増加した発現を有する。
【0070】
刺激剤としては、NK細胞の活性化を誘発する分子が挙げられる。例示的な種類の刺激剤としては、CD16又はホルボールエステルを誘発することができる分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞におけるCD16aの発現は、培養物中での増殖中に少なくとも約6週間、安定して維持される。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ヒト免疫細胞である。
精製細胞組成物
【0073】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞のうちの1つ以上を含む精製細胞組成物を提供する。
【0074】
本明細書で使用する場合、「精製細胞集団」又は「精製細胞組成物」を含有する組成物は、組成物中の細胞の少なくとも30%、50%、60%、典型的に少なくとも70%、より好ましくは80%、90%、95%、98%、99%、又はそれ以上が、特定された種類のものであることを意味する。
【0075】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、刺激剤による刺激の後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約50%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約60%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約70%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約80%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約90%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約100%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の約71%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約71%は、刺激剤による刺激後に腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約30%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約40%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約50%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約60%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約70%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約80%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約90%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約100%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の約42%で、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞の少なくとも約42%は、刺激剤による刺激後にCD62L(L-セレクチン)を発現する。
【0076】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、疾患細胞株及び当該疾患細胞株に特異的な抗体と共インキュベーションした後に、操作されていない免疫細胞と比較して、CD107a及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、悪性腫瘍を含む細胞株である。いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、ウイルス感染症を含む細胞株である。
【0077】
いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、Bリンパ腫細胞株であり、当該疾患細胞株に特異的な抗体は、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約20%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約30%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約40%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約50%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約60%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約70%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約80%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約90%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの約45%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約45%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約10%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約20%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約30%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約40%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約50%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約60%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約70%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約80%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約90%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの約36%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約36%増加した発現を示す。
【0078】
いくつかの実施形態では、疾患細胞株は、扁平上皮がん細胞株であり、当該疾患細胞株に特異的な抗体は、抗EGFR抗体である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約10%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約20%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約30%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約40%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約50%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約60%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約70%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約80%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約90%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの約29%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、CD107aの少なくとも約29%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約10%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約20%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約30%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約40%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約50%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約60%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約70%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約80%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約90%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約100%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの約39%増加した発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、IFNγの少なくとも約39%増加した発現を示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、操作されていない免疫細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約50%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約60%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約70%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約80%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約90%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、少なくとも約100%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、標的化された細胞に特異的な抗原特異的抗体の存在下にある。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、約80%の標的化された細胞死が可能であり、本開示の免疫細胞は、抗原特異的抗体の存在下にある。
【0080】
ADAM17-KO iPSCは、造血前駆細胞に正常に分化し、その後、CD56、CD94、NKG2D、NKp44、及びNKp46を含む典型的なNK細胞表面マーカーを均一に発現するNK細胞に分化する。ADAM17-KO iPSC由来のNK細胞は、野生型iPSC由来のNK細胞(WT iPSC-NK細胞)及び健常なドナー由来の末梢血NK細胞(PB-NK細胞)と比較して、機能性であり、K562赤白血病細胞をインビトロで殺傷する。驚くべきことに、分化すると、ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、WT iPSC-NK細胞と比較して約20%低いCD16a表面発現を発現するが、CD16a+細胞を濃縮した後、培養において6週間の増殖にわたって、CD16a発現を安定的に保持する。WT iPSC-NK細胞及びPB-NK細胞は、ホルボールエステルによる刺激時にCD16a表面発現を急速に失うが、ADAM17KO iPSC-NK細胞は、この刺激後に、90%を超えるCD16a発現を維持する。加えて、有意に高い割合のADAM17-KO iPSCは、WT iPSC-NK(7%TNF-α+、2%L-セレクチン+)及びPB-NK(2%TNF-α+、1%L-セレクチン+)と比較して、ホルボールエステルで4時間刺激した後に、細胞表面上で、TNF-α(71%)及びCD62L(L-セレクチン)(36%)-2つの他の既知のADAM17基質を発現する。CD16a+ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、CD16a+WT iPSC-NK(32%CD107a+,11%IFNγ)及びPB-NK(37%CD107a+,7%IFNγ)細胞と比較して、抗CD20抗体リツキシマブの存在下で、RAJI Bリンパ腫細胞と共インキュベートしたときに、増加したCD107a(45%)及びIFNγ(39%)発現を媒介する。同様に、CD16a+ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、CD16a+WT iPSC-NK(12%CD107a+,8%IFNγ)及びPB-NK(14%CD107a+,6%IFNγ)と比較して、抗EGFR抗体セツキシマブの存在下で、CAL27扁平上皮がん細胞と共インキュベートしたときに、増加したCD107a(29%)及びIFNγ(42%)発現をアップレギュレートする。リツキシマブの存在下でのRAJI細胞に対する長期(24時間)細胞毒性アッセイは、経時的に、CD16a+ WT iPSC-NK、及びCD16a+ PB-NK細胞と比較して、CD16a+ ADAM17-KO iPSC-NK細胞において高い細胞毒性を実証する。
【0081】
操作されていない免疫細胞と比較した本開示の操作された免疫細胞の増強された属性は、以下の表1に提供される。
【表1】
【0082】
ともに、これは、遺伝子編集されたiPSCの再生可能源に由来するADAM17-KO iPSC-NK細胞が、増強されたADCC可能性を有し、治療抗体と併せて、標準化された既製のNK細胞ベースの治療に使用される有望な候補を提供することを実証する。
【0083】
作製する方法
本開示は、本明細書に記載のNK細胞培養物を作製する方法であって、細胞をADAM17欠損であるように遺伝子改変することを含む、方法を提供する。
【0084】
本明細書で使用する場合、別途指定されない限り、「ADAM17欠損である」又は「ADAM17欠損」は、天然に存在する、又は野生型の免疫細胞におけるADAM17遺伝子発現と比較して、ADAM17遺伝子の発現のための天然に存在する核酸配列の少なくとも一部が欠如していることを意味する。このような欠損は、本明細書に開示されるような不活性化変異の結果であり得る。
【0085】
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞を作製する方法であって、a)内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を幹細胞に導入することと、b)幹細胞を免疫細胞に分化させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)、末梢血細胞、又は臍帯血細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞を作製する方法は、a)幹細胞を免疫細胞に分化させることと、b)内因性Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)遺伝子における不活性化変異を当該免疫細胞に導入することと、を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞は、導入された多能性幹細胞(iPSC)、末梢血細胞、又は臍帯血細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞である。
【0087】
ゲノム編集ツールを使用して、細胞を操作(engineer)及び/又は操作(manipulate)することができる。いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞は、CRISPR、TALEN、又はZFNゲノム編集ツールのいずれかを用いて操作され得る。
【0088】
クラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)システムなどのゲノム編集ツールを使用して、細胞を遺伝子改変し得る。CRISPRは、多種多様な生物で使用(例えば、特定遺伝子の配列を追加、破壊、又は変更するために使用)可能である。本明細書で使用される「CRISPR」又は「CRISPR遺伝子編集」は、一組のクラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し、又はそのような一組の繰り返しを含むシステムを指す。本明細書で使用される「Cas」は、CRISPR関連タンパク質を指す。「CRISPR/Cas」システムは、標的遺伝子を沈黙させる、ノックアウトする、又は変異させるために使用することができるCRISPR及びCasに由来するシステムを指す。
【0089】
CRISPR/Casシステムは、2つの要素に基づいている。第1の要素は、ガイドポリヌクレオチド(例えば、ガイドRNA又はgRNA)である第2の要素が結合する部位を持つエンドヌクレアーゼ、すなわちCas(例えば、Cas9及びMAD7)である。ガイドポリヌクレオチド(例えば、ガイドRNA)は、Casタンパク質を配列相同性に基づいて二本鎖DNA鋳型に誘導する。次に、Casタンパク質はそのDNA鋳型を切断する。Casタンパク質及び適切なガイドポリヌクレオチド(例えば、ガイドRNA)を細胞に送達することにより、生物のゲノムが所望の位置で切断される。Cas/gRNA複合体による標的化されたゲノム配列の切断後、2つの代替的DNA修復メカニズム、すなわち、1)gRNA切断部位にてDNAの少数の塩基対(bp)の挿入及び/又は欠失を生じさせる非相同末端結合(NHEJ)、又は2)gRNA切断部位にまたがる追加の「つなぎ」DNA鋳型を介して損傷部位を修正することができる相同組換え修復(HDR)のうちの1つは、染色体の完全性を復元することができる。CRISPR/Casシステムは、クラス及び型によって分類される。クラス2システムは、現在、3つの異なる型(II型、V型、及びVI型)に分類される単一の干渉タンパク質を表す。遺伝子編集に好適な任意のクラス2CRISPR/Casシステム、例えば、II型、V型、又はVI型システムは、本開示の範囲内で想定される。例示的なクラス2 II型CRISPRシステムとしては、Cas9、Csn2、及びCas4が挙げられる。例示的なクラス2 V型CRISPRシステムとしては、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cas12i及びCas12k(C2c5)が挙げられる。例示的なクラス2 VI型システムとしては、Cas13、Cas13a(C2c2)Cas13b、Cas13c、及びCas13dが挙げられる。
【0090】
CRISPR配列は、CRISPR遺伝子座と呼ばれることもあり、交互にリピート及びスペーサーを含む。天然に存在するCRISPRでは、スペーサーは、通常、プラスミド又はファージ配列などの、細菌に外来の配列を含む。本明細書に記載されるように、スペーサー配列はまた、「標的化配列」とも称され得る。遺伝子操作のためのCRISPR/Casシステムにおいて、スペーサーは、標的遺伝子配列(gNA)に由来する。
【0091】
標的化配列は、当業者に既知のコンピュータプログラムを使用して設計又は選択され得る。コンピュータプログラムは、予測される融解温度、二次構造形成、予測されるアニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノム発生の頻度(例えば、同一であるか又は類似しているが、ミスマッチ、挿入、又は欠失の結果として1つ以上のスポットで変化する配列の頻度)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用することができる。利用可能なコンピュータプログラムは、NCBI遺伝子ID、公式遺伝子記号、Ensembl遺伝子ID、ゲノム座標、又はDNA配列を入力として取り出し、入力として指定された適切なゲノム領域を標的とするsgRNAを含有する出力ファイルを作成することができる。コンピュータプログラムはまた、標的遺伝子に対するsgRNAのオンターゲット及びオフターゲット結合を示す統計量及びスコアの概要を提供し得る(Doench et al.Nat Biotechnol.34:184-191(2016))。
【0092】
標的配列は、gRNAの標的化配列に相補的であり、gRNAの標的化配列とハイブリダイズする。標的核酸配列は、20個のヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、20個未満のヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、20個を超えるヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、少なくとも、5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、最大でも、5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。
【0093】
したがって、CRISPR/Casシステムを使用して、塩基対を付加若しくは欠失させること、早期停止コドンを導入すること、又はしたがって標的の発現を部分的若しくは完全に減少させるフレームシフト変異を導入することによって、本明細書に記載の細胞内で編集するための標的とされる遺伝子のような標的遺伝子を編集することができる。CRISPR/Casシステムは、代替的に、RNA干渉のように使用され、可逆的な方法で標的遺伝子をオフにすることができる。例えば、哺乳類細胞において、RNAは、Casタンパク質を標的遺伝子プロモーターに導き、RNAポリメラーゼを立体的に遮断することができる。
【0094】
当業者に知られているCRISPR/Casシステムの更なる態様は、PCT公開第2017/049266号及び第2017/223538号に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示のNK細胞を生成するための、TALEN及びジンクフィンガーヌクレアーゼなどの、これら及び他の周知の新しい技術は、本発明によって企図される。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたNK細胞は、TALEN遺伝子編集を使用して編集される。「TALEN」又は「TALEN遺伝子編集」は、標的遺伝子を編集するために使用される人工ヌクレアーゼである、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼを指す。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることによって人工的に産生される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、TCRサブユニット、MHCクラスI複合体成分、又はCD52などの標的遺伝子の一部分を含む、任意の所望のDNA配列に結合するように操作され得る。操作されたTALEをDNA切断ドメインと組み合わせることによって、標的遺伝子配列を含む任意の所望のDNA配列に特異的である制限酵素を産生することができる。次いで、これらを細胞に導入することができ、そこでそれらをゲノム編集に使用することができる。Boch(2011)Nature Biotech.29:135-6、及びBoch et al.(2009)Science 326:1509-12;Moscou et al.(2009)Science 326:3501.
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたNK細胞は、ZFN遺伝子編集を使用して編集される。「ZFN」又は「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」又は「ZFN遺伝子編集」は、標的遺伝子を編集するために使用することができる人工ヌクレアーゼであるジンクフィンガーヌクレアーゼを指す。TALENと同様に、ZFNは、DNA結合ドメインに融合されたフォールドヌクレアーゼドメイン(又はその誘導体)を含む。ZFNの場合、DNA結合ドメインは、1つ以上のジンクフィンガーを含む。Carroll et al.(2011)Genetics Society of America 188:773-782、及びKim et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156-1160.
【0097】
本明細書に記載の免疫細胞は、当該技術分野で既知である方法を使用して改変され得る。本明細書に記載の様々な遺伝子編集システムを使用して、免疫細胞を改変して、標的遺伝子又は標的遺伝子産物の機能を欠失させるか、不活性化させるか、発現を低減させるか、又は別様に阻害し得る。
【0098】
NK細胞又はiPSCなどの細胞は、CRISPR、TALEN、又はZFN技術などの任意の既知又は発見された遺伝子編集方法によって、ADAM17欠損、又はADAM17ノックアウト(ADAM17KO)であるように遺伝子改変することができる。いくつかの実施形態では、NK細胞は、遺伝子編集方法によって、ADAM17欠損、又はADAM17ノックアウト(ADAM17KO)であるように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、iPSCは、遺伝子編集方法によって、ADAM17欠損、又はADAM17ノックアウト(ADAM17KO)であるように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、NK細胞は、遺伝子編集方法によって、ADAM17欠損、又はADAM17ノックダウン(ADAM17KD)であるように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、iPSCは、遺伝子編集方法によって、ADAM17欠損、又はADAM17ノックダウン(ADAM17KD)であるように遺伝子改変される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示は、a)内因性ADAM17遺伝子の不活性化変異が両方の対立遺伝子で生じ、それによってADAM17-/-iPSCを生成する、ADAM17gRNA及びMAD7構築物でiPSCを形質導入することと、b)ADAM17-/-iPSCをNK細胞に分化させ、それによってADAM17-/-NK細胞を生成することと、を含む、操作された免疫細胞を作製する方法を提供する。
【0100】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、及びmRNAなどのDNA及びRNA、又はそれらの組み合わせを含む。核酸は、本開示の遺伝子改変を可能にする配列に加えて、当該遺伝子改変を可能にする核酸の転写及び/又は翻訳に必要なものなどの更なる配列を含み得る。これには、プロモーター、エンハンサー、転写及び/若しくは翻訳開始及び/若しくは終結配列、選択マーカー、RNAを保護若しくは指示する配列、並びに/又は細胞内での遺伝子改変を可能にする配列が含まれ得る。これらの配列の選択及び組み合わせは、当業者の知識の範囲内であり、核酸が意図される細胞に従って選択され得る。
【0101】
本開示の遺伝子改変を可能にするポリヌクレオチドは、単離された核酸として、又はベクター内で細胞に送達され得る。単離された核酸又はベクターは、リポソームなどの脂質又は脂質ベースの送達系で送達され得る。あるいは、ベクターは、ベクターがウイルスベクターである場合などに、ウイルスタンパク質を含み得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、標的化された細胞の形質転換又は形質導入を指示するように設計された遺伝物質からなる構築物を指す。ベクターは、核酸カセット内の核酸が転写され、必要に応じてトランスフェクトされた細胞内で翻訳され得るように、他の必要な要素と位置的かつ連続的に配向された複数の遺伝子要素を含有する。本明細書で使用される場合、ベクターという用語は、核酸、例えば、特定のタンパク質をコードする、プラスミド、コスミド、ファージミド、バクテリオファージ、ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、又は核酸の1つ以上の断片が挿入又はクローニングされ得る他のタイプのウイルスに由来するDNAを指すことができる。本明細書で使用される場合、「プラスミド」という用語は、染色体外遺伝物質、通常は染色体DNAとは独立して複製することができるDNAの環状二本鎖からなる構築物を指す。プラスミドは、必ずしも複製するとは限らない。
【0102】
任意の好適なベクターは、本開示の範囲内で想定される。本開示の遺伝子改変を可能にするポリヌクレオチドを、いくつかのタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、本開示の遺伝子改変を可能にするポリヌクレオチドは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特に関心のあるベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で、免疫細胞などの細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカー(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号)を含有する。
【0103】
ベクターの目的は、細胞又は組織内に核酸配列を提供することである。発現は、挿入された遺伝子又は核酸配列の効率的な転写を含む。発現産物は、タンパク質、ポリペプチド、又はRNAであり得る。核酸配列は、核酸カセットに含有されることができる。核酸の発現は、連続的、構成的、又は調節されることができる。ベクターはまた、細菌中のプラスミドの複製のための、及び細菌中のプラスミドの維持のための選択のための原核細胞要素として使用することができる。
【0104】
遺伝子を細胞内に導入及び発現する方法は、当該技術分野で既知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当該技術分野の任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0105】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照されたい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入のための1つの方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0106】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照されたい。
【0107】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、及び水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系などのコロイド分散系が挙げられる。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、形質導入は、リン酸カルシウム媒介遺伝子導入、DEAEデキストラン媒介遺伝子導入、リポソーム媒介遺伝子導入、エレクトロポレーション媒介遺伝子導入、ウイルスベクター媒介遺伝子導入、又は核融合媒介遺伝子導入のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、形質導入は、リン酸カルシウム媒介遺伝子導入によって達成される。いくつかの実施形態では、形質導入は、リポソーム媒介遺伝子導入によって達成される。いくつかの実施形態では、形質導入は、エレクトロポレーション媒介遺伝子導入によって達成される。いくつかの実施形態では、形質導入は、ウイルスベクター媒介遺伝子導入によって達成される。いくつかの実施形態では、形質導入は、核融合媒介遺伝子導入によって達成される。
【0109】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞内の組換えDNA配列の存在を確認するため、又はゲノム調節の効果を確認するために、様々なアッセイが行われ得る。そのようなアッセイとしては、例えば、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT-PCR、及びPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、特定のペプチドの存在若しくは不在を検出することなどの「生化学的」アッセイ、又は他のアッセイが挙げられる。
【0110】
一般に、人工多能性細胞を分化させるための技術は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び/又は小分子ベースのアプローチを使用して、直接的又は間接的に、特定の細胞経路の調節を伴う。細胞の発生力は、例えば、細胞を1つ以上の調節物質と接触させることによって調節され得る。本明細書で使用される場合、「接触させること」は、1つ以上の因子(例えば、小分子、タンパク質、ペプチドなど)の存在下で細胞を培養することを伴うことができる。いくつかの実施形態では、細胞を1つ以上の薬剤と接触させて、細胞分化を誘導する。かかる接触は、例えば、インビトロ培養中に1つ以上の薬剤を細胞に導入することによって生じ得る。したがって、接触は、栄養細胞培養培地中で1つ以上の薬剤を細胞に導入することによって生じ得る。細胞は、細胞が、所望である分化表現型を達成するのに十分な期間、1つ以上の薬剤を含む培養培地中に維持され得る。
【0111】
幹細胞の分化には、培養培地中の刺激薬剤の変化、又は細胞の物理的状態の変化など、培養系の変化が必要である。従来の戦略は、系統特異的分化を開始するための一般的かつ重要な中間体として胚様体(EB)の形成を利用する。EBは、三次元クラスターであり、三次元領域内で多数の系統を生じさせるため、胚発達を模倣することが示されている。分化プロセスを通じて、単純なEB(例えば、分化するために誘発される凝集した多能性幹細胞)は、成熟を続け、嚢胞性EBに発達し、その時点で、それらは、分化を継続するために更に処理される。EB形成は、三次元の多層細胞クラスターにおいて、多能性幹細胞を互いに近接してもたらすことによって開始される。典型的には、これは、多能性細胞を液滴中に沈殿させること、細胞を「U」底ウェルプレートに沈殿させること、又は機械的攪拌によること含むいくつかの方法のうちの1つによって達成される。EB発達を促進するために、多能性幹細胞凝集塊は、多能性培養維持培地で維持される凝集塊が適切なEBを形成しないため、更なる分化キューを必要とする。これに続いて、iPSCを造血細胞に分化させ、次に造血前駆細胞をナチュラルキラー(NK)に変換する追加の刺激を行い得る。
【0112】
操作された細胞を作製及び使用するための例示的な方法は、国際特許出願第2013/163171 A1号、同第2017/078807 A1号、及び同第2018/147801号に提供されており、それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「分化させる」又は「分化した」は、未成熟(特殊化されていない)細胞が成熟(特殊化された)細胞になる特性を獲得し、それによって特定の形態及び機能を獲得するプロセス及び条件を指すために使用される。幹細胞(特殊化されていない)は、しばしば、当該幹細胞の特定の系統コミットメント又は分化を誘導するために、様々な条件(例えば、成長因子及び形態形成因子)に曝露される。特殊化されていない(「コミットされていない」)、又はそれほど特殊化されていない細胞が、例えば、血液細胞又は筋肉細胞などの特殊化細胞の特徴を獲得するプロセス。分化した細胞又は分化誘導細胞は、細胞の系統内でより特殊化された(「コミットされた」)位置をとっている細胞である。「コミットされた」という用語は、分化のプロセスに適用される場合、通常の状況下では、細胞が特定の細胞タイプ又は細胞タイプのサブセットに分化し続けるであろう点まで分化経路で進行し、通常の状況下では、異なる細胞タイプに分化するか、又はより分化の少ない細胞タイプに戻ることができない細胞を指す。
【0114】
分化マーカー遺伝子は、細胞の分化状態を測定するために監視され得る。本明細書で使用される場合、「分化マーカー遺伝子」又は「分化遺伝子」という用語は、発現が、多能性細胞などの細胞内で生じる細胞分化を示す遺伝子を指す。分化マーカー遺伝子としては、以下の遺伝子:FOXA2、FGF5、SOX17、XIST、NODAL、COL3A1、OTX2、DUSP6、EOMES、NR2F2、NR0B1、CXCR4、CYP2B6、GATA3、GATA4、ERBB4、GATA6、HOXC6、INHA、SMAD6、RORA、NIPBL、TNFSF11、CDH11、ZIC4、GAL、SOX3、PITX2、APOA2、CXCL5、CER1、FOXQ1、MLL5、DPP10、GSC、PCDH10、CTCFL、PCDH20、TSHZ1、MEGF10、MYC、DKK1、BMP2、LEFTY2、HES1、CDX2、GNAS、EGR1、COL3A1、TCF4、HEPH、KDR、TOX、FOXA1、LCK、PCDH7、CD1D FOXG1、LEFTY1、TUJ1、T遺伝子(Brachyury)、ZIC1、GATA1、GATA2、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC9、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH4、PAX5、RBPJ、RUNX1、STAT1、STAT3、及びSTAT5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
「培養(culture)」又は「細胞培養」は、インビトロ環境における細胞の維持、成長及び/又は分化を指す。「細胞培養培地」、「培養培地」(各場合において単数「培地(medium)」)、「サプリメント」、及び「培地サプリメント」は、細胞培養物を培養する栄養組成物を指す。
【0116】
「培養する」又は「維持する」とは、例えば滅菌プラスチック(又はコーティングされたプラスチック)細胞培養皿又はフラスコ内で、組織外又は体外での細胞の支持、増殖(成長)、及び/又は分化を指す。「培養(cultivation)」又は「維持すること」は、培養培地を、細胞を成長させる、及び/又は支持するのに役立つ栄養素、ホルモン、及び/又は他の因子の供給源として利用し得る。
【0117】
多能性造血幹細胞は、2つの主要な前駆細胞系統の基礎を提供する。第1の細胞系統は、一般的なリンパ系前駆細胞系統であり、多能性造血幹細胞(血球芽細胞)は、ナチュラルキラー細胞、Tリンパ球、若しくはBリンパ球に更に分化するか、又はBリンパ球から形質細胞に更に分化する能力を有するリンパ系前駆細胞に分化する。他の主要な細胞系統は、一般的な骨髄前駆細胞系統であり、血球芽細胞は、巨核球、赤血球、血小板、肥満細胞、若しくは骨髄芽細胞に更に分化するか、骨髄芽細胞から好塩基球、好中球、好酸球、若しくは単球に更に分化するか、又は単球からマクロファージに更に分化する能力を有する骨髄前駆細胞に分化する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「多能性」という用語は、細胞が身体又は体細胞(すなわち、胚体)の全ての系統を形成する能力を指す。例えば、胚性幹細胞は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉の3つの胚葉の各々から細胞を形成することができる一種の多能性幹細胞である。したがって、本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞」という用語は、造血転換を介して造血幹細胞及び前駆細胞を生じさせることができる未分化細胞のサブセットを指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「造血幹細胞」という用語は、T細胞、B細胞、及びナチュラルキラー細胞を含む成熟骨髄細胞及びリンパ系細胞の両方を生じさせることができるCD34+幹細胞を指す。
【0120】
本明細書で使用される場合、「造血前駆体」という用語は、造血細胞型への造血転換が可能な細胞を指す。いくつかの実施形態では、造血前駆細胞は、CD56+細胞であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、造血前駆細胞は、CD3-細胞であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、造血前駆細胞は、CD56+/CD3-細胞であることを特徴とする。
【0121】
いくつかの実施形態では、培養プラットフォームの培地のうちの1つ以上は、フィーダーフリー環境であり、任意選択的に、サイトカイン及び/又は成長因子を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清、抽出物、成長因子、ホルモン、サイトカインなどのサプリメントを含有する。一般に、培養プラットフォームは、段階特異的なフィーダーを含まない、血清を含まない培地のうちの1つ以上を含み、その各々は、栄養素/抽出物、成長因子、ホルモン、サイトカイン、及び培地添加剤のうちの1つ以上を更に含む。好適な栄養素/抽出物としては、例えば、多くの異なる哺乳類細胞の増殖をサポートするために広く使用される基礎培地である、DMEM/F-12(ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12)、KOSR(ノックアウト血清代替物)、L-glut、NEAA(非必須アミノ酸)が挙げられ得る。他の培地添加剤としては、MTG、ITS、(ME、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の培養培地は、以下のサイトカイン又は成長因子:上皮成長因子(EGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、白血病阻害因子(LIF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子β(TGF-β)、骨形成タンパク質(BMP4)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、様々なインターロイキン(IL-1~IL-18)、様々なコロニー刺激因子(顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など)、様々なインターフェロン(IFN-γなど)、並びに幹細胞因子(SCF)及びエリスロポエチン(EPO)などの幹細胞に影響を有する他のサイトカインのうちの1つ以上を含む。これらのサイトカインは、例えば、R&D Systems(Minneapolis,Minn.)から市販され得、天然又は組換えのいずれかであり得る。いくつかの他の実施形態では、本発明の培養培地は、骨形態形成タンパク質(BMP4)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、造血成長因子(例えば、SCF、GMCSF、GCSF、EPO、IL3、TPO、EPO)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)のうちの1つ以上、並びに白血病阻害因子(LIF)、IL3、IL6、IL7、IL11、IL15からの1つ以上のサイトカインのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、成長因子/マイトジェン及びサイトカインは、経験的に、又は確立されたサイトカイン技術によって指導されるように決定される濃度において、段階及び/又は細胞型特異的である。
【0122】
医薬組成物
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0123】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される組成物を指し、組成物は、医薬的活性剤を含み、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体を更に含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬的活性剤及び担体の組み合わせであり得る。
【0124】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒト及び/又は非ヒト哺乳動物での使用に安全な他の製剤に加えて、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方、一般に認められている他の薬局方に収載されていることを意味する。
【0125】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、本開示のNK細胞とともに投与される、賦形剤、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、及び/又はビヒクルを指す。そのような担体は、水及び油などの無菌液体であってよく、油としては、石油、動物、植物、又は合成に由来する油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒が挙げられる。ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度を調整するための薬剤もまた、担体であり得る。担体と組み合わせて組成物を作成する方法は、当業者に既知である。いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤」という用語は、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張剤、及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,(Lippincott,Williams & Wilkins 2003)を参照されたい。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合しない場合を除き、組成物におけるそのような使用が企図される。
【0126】
投与に好適な医薬組成物の製剤は、通常、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水などの薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤と組み合わせた活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に好適な形態で調製、包装、又は販売され得る。注射可能な製剤は、アンプル中又は防腐剤を含有する複数回投与容器中などの単位剤形で調製、包装、又は販売され得る。投与のための製剤としては、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルション、ペーストなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかる製剤は、懸濁化剤、安定化剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の成分を更に含み得る。製剤はまた、塩、炭水化物、及び緩衝剤などの賦形剤、又は無菌のパイロジェンフリー水を含有し得る水溶液を含み得る。例示的な投与形態は、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液又はデキストロース溶液中の溶液又は懸濁液を含み得る。このような剤形は、所望の場合、好適に緩衝することができる。
【0127】
本発明の組成物は、医薬組成物に従来見られる他の補助成分を更に含有し得る。したがって、例えば、組成物は、例えば、痒み止め剤、収縮剤、局所麻酔剤、又は抗炎症剤などの追加の、互換性のある、薬学的に活性な材料を含有し得るか、又は染料、防腐剤、抗酸化剤、不透明剤、増粘剤、及び安定剤など、本発明の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに有用な追加の材料を含有し得る。しかしながら、そのような材料は、添加された場合、本開示の組成物の構成要素の生物学的活性を過度に干渉してはならない。かかる製剤は、滅菌することができ、所望の場合、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、及び/又は製剤と有害に相互作用しない芳香物質などの助剤と混合することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の治療活性剤と組み合わせて、当該NK細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、疾患細胞表現型に特異的な抗体と組み合わせて、当該NK細胞を含む。いくつかの実施形態では、疾患細胞表現型は、悪性細胞のものである。いくつかの実施形態では、疾患細胞表現型は、ウイルス感染症のものである。
【0128】
「組み合わせ」という用語は、1つの投薬単位形態における固定された組み合わせか、又は併用投与のためのパーツのキットのいずれかを指し、1つ以上の活性化合物及び組み合わせパートナー(例えば、「治療薬」又は「補助薬剤」とも称される、以下で説明される別の薬物)が、独立して同時に又は時間間隔内で別々に投与され得る。いくつかの状況では、組み合わせパートナーは協同的効果、例えば、相乗効果を示す。本明細書で使用される「併用投与(co-administration)」又は「併用投与(combined administration)」などの用語は、選択された組み合わせパートナーを、それを必要とする単一の対象(例えば、患者)に投与することが包含されることを意味し、薬剤が必ずしも同じ投与経路又は同じ時間で投与されるわけではない治療レジメンが含まれることを意図する。本明細書で使用される「医薬の組み合わせ」という用語は、2つ以上の活性成分の混合又は組み合わせにより得られ、活性成分の組み合わせが固定されているものも固定されていないものも含まれる製品を意味する。「固定された組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、化合物及び組み合わせパートナーの両方が単一の実体又は用量の形態で一斉に患者に投与されることを意味する。「固定されていない組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば、化合物及び組み合わせパートナーの両方が、特定の時間的制約を設けることなく別々の実体として一斉に、同時に、又は連続して患者に投与されることを意味し、ここで、そのような投与により、2つの化合物が治療上有効な濃度で患者の体内で提供される。後者は、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0129】
キット
一態様では、本開示は、本開示の操作された免疫細胞又は本開示の医薬組成物と、使用説明書と、を含む、キットを提供する。
【0130】
使用方法
本発明は、増強されたADCC活性を実証する、遺伝子編集されたiPSCの再生可能源に由来する、操作された免疫細胞を提供する。これらの細胞は、難治性悪性腫瘍、及び慢性ウイルス感染症などの潜在的な他の疾患を効果的に治療するために、治療抗体と併用した、標準化された既製のNK細胞ベースの療法のための有望な使用を提供する。
【0131】
一態様では、本開示は、疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において、それを行う方法であって、本開示の操作された免疫細胞又は本開示の医薬組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、悪性腫瘍は、腫瘍関連抗原を含む。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、ウイルス感染関連抗原を含む。
【0132】
「対象」、「患者」、及び「個体」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指すために本明細書中で交換可能に使用される。インビボで得られたか、又はインビボで培養された生物学的実体の組織、細胞、及びそれらの子孫もまた包含される。本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」、又は「個体」には、本明細書で企図される、ベクター、組成物、及び方法で治療することができる痛みを示す任意の動物が含まれる。好適な対象(例えば、患者)としては、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、又はモルモットなど)、家畜、及び飼育動物又はペット(ネコ又はイヌなど)が挙げられる。非ヒト霊長類、及び好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0133】
いくつかの実施形態では、投与することは、治療有効量を対象に投与することを含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、臨床結果を含む、有益な又は所望の予防的又は治療的結果を達成するための、細胞の「有効である量」又は「有効量」を指す。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、疾患及び医学的状態に関連付けられた症状を、治療若しくは改善する、又は何らかの方法で軽減するのに十分である薬学的に活性な化合物の量を指す。方法に関して使用される場合、方法は、疾患又は状態に関連する症状を、治療若しくは改善する、又は何らかの方法で軽減するのに十分有効である。例えば、疾患に関して有効量とは、その発症を阻止又は予防するのに十分な量であるか、あるいは疾患病状が始まっている場合は、その疾患の進行を緩和する、改善する、安定化させる、逆戻りさせる若しくは疾患の進行を遅らせる、又はその疾患の病理学的結果を低減させる量である。いずれの場合も、有効量は単回投与で与えても分割投与で与えてもよい。
【0135】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、又は「治療する(treating)」という用語は、患者の疾患に関連する症状を少なくとも改善することを包含し、改善とは、広い意味で使用され、治療されている疾患又は状態に関連するパラメータ、例えば、症状の大きさが少なくとも低減することを指す。したがって、「治療」には、疾患、障害、又は病的状態、又は少なくともそれらに関連する症状が、完全に抑制される(例えば、発生が予防される)か又は停止され(stopped)(例えば、停止(terminated))、患者がそれ以上その状態、又は少なくともその状態を特徴付ける症状に苦しむことがないようにする状況が含まれる。
【0136】
本明細書で使用する場合、及び別途指定されない限り、「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、及び「予防(prevention)」という用語は、疾患若しくは障害の発症、再発若しくは拡散、又はそれらの1つ以上の症状の予防を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、症状の発症前に、特に本明細書で提供される疾患又は障害のリスクがある対象への、1つ以上の他の追加の活性剤の有無によらず、本明細書で提供される化合物又は剤形での治療又はその投与を指す。用語は、特定の疾患の症状の抑制又は低減を包含する。ある特定の実施形態では、疾患の家族歴を有する対象は、予防レジメンの可能性のある候補である。ある特定の実施形態では、再発症状の履歴を有する対象も、予防のための可能性のある候補である。この点で、「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と互換的に使用され得る。
【0137】
本明細書で使用する場合、及び別段の定めがない限り、化合物の「予防有効量」は、疾患若しくは障害を予防するのに、又はその再発を予防するのに十分な量である。予防有効量の化合物は、疾患の予防における予防的利益を提供する、単独で又は1つ以上の他の薬剤と組み合わせた治療剤の量を意味する。「予防有効量」という用語は、全体的な予防を改善するか、又は別の予防剤の予防有効性を増強する量を包含し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞、又は当該操作された免疫細胞を含む医薬組成物は、予防有効量で投与される。
【0138】
本開示の免疫細胞又は医薬組成物は、局所的又は全身的治療が所望されるかどうかに応じて、いくつかの方法で投与され得る。NK細胞又は医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適しており、投与は、対象の組織の物理的な突破、及び組織内の突破を介した医薬組成物の投与を特徴とする任意の投与経路を含み、したがって、一般に、血流、筋肉、又は内臓器官への直接投与をもたらす。したがって、非経口投与としては、組成物の注射による、外科的切開を介した組成物の適用による、組織透過性の非外科的創傷を介した組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が挙げられるが、これらに限定されない。特に、非経口投与としては、皮下、腹腔内、筋肉内、大腿内、静脈内、鼻腔内、気管内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、眼内、皮内、滑液内注射又は注入、腫瘍内、及び腎臓透析注入技術が挙げられるが、これらに限定されないことが企図される。いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞、又は医薬組成物は、静脈内投与を含む。いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞、又は医薬組成物は、腫瘍内投与を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞、又は医薬組成物は、未改変の末梢血免疫又はNK細胞を使用する免疫細胞による治療法を用いた過去の臨床研究と同様の方法で患者に投与される。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞、又は当該免疫細胞を含む医薬組成物は、組み合わせパートナーと組み合わせて投与される。「組み合わせ」という用語は、1つの投薬単位形態における固定された組み合わせ、又は、併用投与のためのパーツのキットのいずれかを指し、本開示の当該操作された免疫細胞を含む、操作された免疫細胞又は医薬組成物、及び組み合わせパートナー(例えば、「治療薬」又は「補助薬剤」とも称される、以下で説明される別の薬物)を、独立して、同時又は時間間隔内で別々に投与し得る。いくつかの状況では、組み合わせパートナーは協同的効果、例えば、相乗効果を示す。本明細書で使用される「併用投与(co-administration)」又は「併用投与(combined administration)」などの用語は、選択された組み合わせパートナーを、それを必要とする単一の対象(例えば、患者)に投与することが包含されることを意味し、薬剤が必ずしも同じ投与経路又は同じ時間で投与されるわけではない治療レジメンが含まれることを意図する。本明細書で使用される「医薬の組み合わせ」という用語は、2つ以上の活性成分の混合又は組み合わせにより得られ、活性成分の組み合わせが固定されているものも固定されていないものも含まれる製品を意味する。「固定された組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、化合物及び組み合わせパートナーの両方が単一の実体又は用量の形態で一斉に患者に投与されることを意味する。「固定されていない組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば、化合物及び組み合わせパートナーの両方が、特定の時間的制約を設けることなく別々の実体として一斉に、同時に、又は連続して患者に投与されることを意味し、ここで、そのような投与により、2つの化合物が治療上有効な濃度で患者の体内で提供される。後者は、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0140】
いくつかの実施形態では、投与することは、操作された免疫細胞、又は当該操作された免疫細胞を含む医薬組成物を、疾患に特異的な抗体と組み合わせて投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、疾患に特異的な抗体は、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブである。いくつかの実施形態では、疾患に特異的な抗体は、抗EGFR抗体である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。そのような組み合わせは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び又は抗体依存性細胞食作用(ADCP)をもたらし得る。
【0141】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、標的抗原に特異的に結合するか、又は標的抗原と特異的に相互作用する、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味すると理解される。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む完全長免疫グロブリン分子、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR、VH、又はVHと略され得る)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR、VL、VK、VK、又はVLと略され得る)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)とも称される、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域に更に細分化され得る。
【0142】
本明細書に記載されるように、「抗原結合分子」は、本明細書の他の場所に記載されるような抗体又はその抗原結合断片である。ある実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、scFab、Fab’、単鎖可変断片(scFv)、及びワンアームド抗体からなる群から選択される。
【0143】
好適な抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離されたCDR)、又は拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小限の認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ワンアームド抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、及び小モジュラー免疫医薬品(SMIP)などの他の操作された分子も、本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語によって包含される。
【0144】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR)という用語は、標的抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリン可変ドメインの領域を指す。各可変ドメインは、CDR1、CDR2、及びCDR3として同定される最大3つのCDR配列を含み得る。
【0145】
「特異的に結合する」又は「特異的結合」という用語は、生理学的条件下で、少なくともバックグラウンドの2倍、より典型的にはバックグラウンドの10~100倍を超える、2つの分子間の結合反応を指す。タンパク質である1つ以上の検出可能な結合剤を使用する場合、特異的結合は、タンパク質及び他の生物学的製剤の不均一な集団におけるタンパク質の存在を決定する。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定の抗原結合分子は、特定の抗原決定基に結合し、それによってその存在を識別する。そのような条件下での抗原決定基への特異的結合は、その決定基に対するその特異性のために選択される抗原結合分子を必要とする。この選択は、他の分子と交差反応する抗原結合分子を取り去ることによって達成され得る。様々なイムノアッセイ形式を使用して、抗原結合分子(例えば、免疫グロブリン)を選択することができる(その結果、それらは特定の抗原と特異的に免疫反応する)。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性のある抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイ形式及び条件の説明については、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照されたい)。結合親和性及び特異性を決定する方法は、当該技術分野でも周知である(例えば、Harlow and Lane(上記)、Friefelder,“Physical Biochemistry:Applications to biochemistry and molecular biology”(W.H.Freeman and Co.1976)を参照されたい)。
【0146】
抗体は、それらが、目的の標的抗原部位及びそのアイソフォームへの結合の所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない。「抗体断片」という用語は、完全長抗体の部分、概して、その抗原結合又は可変領域を含む。本明細書で使用される「抗体」という用語は、ヒト抗体、ラット抗体、マウス抗体、ウサギ抗体などを含むが、これらに限定されず、合成的に作製され得るか又は天然に存在し得る、任意の種及びリソースに由来する任意の抗体を包含する。
【0147】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して方向付けられる。更に、異なる決定基(エピトープ)に対して方向付けられる異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して方向付けられる。「モノクローナル抗体」はまた、当該技術分野で知られる技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る。
【0148】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、天然環境から除去される分子又は細胞を指すために使用される。本明細書で使用される場合、「非天然に存在する」という用語は、天然に見出される対応物とは著しく異なる構造を有する、単離された分子又は細胞を指すために使用される。
【0149】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の部分が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか、又は相同である一方で、鎖の残りは、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における対応する配列、並びにかかる抗体の断片と同一であるか、又は相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含む。本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、第2のポリペプチドに動作可能に連結された第1のポリペプチドを含む。キメラタンパク質は、任意選択的に、第1又は第2のポリペプチドに動作可能に連結された第3、第4若しくは第5又は他のポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、2つ以上の異なるポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、同じポリペプチドの複数のコピーを含み得る。キメラタンパク質はまた、1つ以上のポリペプチドにおける1つ以上の変異を含み得る。キメラタンパク質の作製方法は、当該技術分野で周知である。
【0150】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、悪性腫瘍を有するか、又は悪性腫瘍を有すると考えられる。多くの種類の悪性腫瘍は、内因性NK細胞からの攻撃を回避するための耐性メカニズムを発達させることができ、非限定的な例が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、カポジ肉腫(軟部組織肉腫)、エイズ関連リンパ腫(リンパ腫)、原発性中枢神経系リンパ腫(リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型畸形/横紋状腫瘍、皮膚の基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫及び骨肉腫、並びに悪性線維性組織細胞腫を含む)、脳腫瘍、乳がん、脳気管支支腫、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、がん腫、心臓腫瘍、非定型畸形/横紋状腫瘍、髄芽腫、胚細胞腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、胆管がん、脊髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、部位内管がん(DCIS)、子宮内膜がん、上皮腫、食道がん、関節神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚芽細胞腫瘍、腺外胚性芽細胞腫、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管がん、骨原発の線維性組織球腫、骨肉腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部組織肉腫)、胚細胞腫瘍、中枢神経胚細胞腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、精巣がん、妊娠性絨毛性疾患、有毛細胞性白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、組織球症(ランゲルハンス細胞)、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫(軟部組織肉腫)、腎細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、口唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞、小細胞、肺肺芽胞芽腫、及び気管気管支腫瘍)、リンパ腫、男性乳がん、骨原発の線維性組織球腫及び骨肉腫、メルケル細胞がん、中皮腫、転移性がん、原発不明転移性頸部扁平上皮がん、NUT遺伝子変化を伴う中線がん、中咽頭がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、腹筋肉腫(リンパ腫)、骨髄異形成症候群、骨髄異形成性/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄性白血病、急性(AML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔及び鼻副洞がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンリンパ腫、非小細胞性肺がん、膵臓がん、膵臓神経内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、再発がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、血管腫瘍、小腸がん、軟部組織肉腫、T細胞リンパ腫、胸腺腫及び胸腺がん、腎臓骨盤及び尿管の移行がん、膣がん、外陰がん、又はウィルムス腫瘍を含み得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、悪性腫瘍は、腫瘍関連抗原を含み得る。いくつかの実施形態では、悪性腫瘍は、悪性腫瘍に特徴的な細胞マーカーを含み得る。いくつかの実施形態では、悪性腫瘍に特徴的な細胞マーカーは、がん性表現型を有する細胞に起因する腫瘍関連抗原、受容体、又は他のタンパク質若しくは構造である。
【0152】
例示的な腫瘍関連抗原には、p53、Ras、c-Myc、細胞質セリン/スレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-Raf、及びC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGEA1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、MART-1、MC1R、Gp1OO、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CEA、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン調節因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサ1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)(例えば、EGFRvIIIなど)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、srcファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナルトランスデューサ及び転写の活性化因子STAT3、STATS、及びSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1及びHIF-2)、核因子カッパB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1-4)、c-Met、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)、WNT、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、及びそれらの調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、腎細胞がん-5T4、SM22-アルファ、炭酸脱水酵素I(CAI)及びIX(CAIX)(G250としても知られる)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、中皮、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、TIE2、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAG1B、SUNC1、LRRN1、メラノサイトメラノーマ系統抗原(例えば、MART-1/Melan-A、gp75、mda-7、チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連タンパク質)、HER-2/neu、及びイディオタイプのうちの任意の1つ以上に由来するか、又はそれらを含む腫瘍抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
いくつかの実施形態では、悪性腫瘍、又はこれらの細胞は、CD19、CD20、Her2、CD19、CD319/CS1、ROR1、CD20、CD5、CD7、CD22、CD70、CD30、BCMA、CD25、NKG2Dリガンド、MICA/MICB、がん胚性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異したp53、変異したras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-lエンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-lエンベロープ糖タンパク質gpl4l、GD2、CD123、CD33、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRalpha、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、WT-1、EGFRvIII、TRAIL/DR4、VEGFR2、PTK-7、B7H3、PD-L1、CD38、CLL-1、LeY、CAIX、CD133、CD171、GPC3、CEA、Ep-CAM、EphA2、FAP、HPV16-E6、IL13Ra2、MAGEA3、MAGEA4、MART1、MUC16、NY-ESO-1及び/又はPSCA、CLL-1/CLEC12A、BCMA、TROP2、ネクチン-4、CD79b、CD2、CD3、CD4、PD-1、KIR2DL3、ALPPL2、又はCSP1を示す。
【0154】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、ウイルス感染症を患っているか、又はウイルス感染症を患っていると考えられる。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症哺乳類ウイルス感染症。哺乳類ウイルス感染の例としては、DNAウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス;エプスタインバーウイルス;サイトメガロウイルスなどのヘルペスウイルス;ヴァリオラ(小痘)ウイルスなどの痘ウイルス;ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス);パピローマウイルス;アデノウイルス)、RNAウイルス(例えば、HIV I、II;HTLV I、II;ポリオウイルス;A型肝炎;オルソミキソウイルス(例えば、インフルエザウイルス);パラミオウイルス(例えば、麻疹ウイルス);狂犬病;C型肝炎)、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こす)、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ノルウイルス、ウェストナイルウイルス、黄熱、リフトバレーウイルス、ラッサ熱ウイルス、エボラウイルス、及びリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、急性である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、慢性である。
【0155】
ウイルスに感染した細胞は、ウイルス感染関連抗原を提示し得る。ウイルス感染関連抗原の非限定的な例としては、コアタンパク質(Cタンパク質)、非構造タンパク質3(NS3)、非構造タンパク質5(NS5)、エンベロープタンパク質(Eタンパク質)、非構造タンパク質4(NS4)、ヘマグルチニン(HA)、核タンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリックスタンパク質1(M1)、Fタンパク質、Nタンパク質、Gタンパク質、キャプシドタンパク質(C)、非構造タンパク質(NS)、エンベロープタンパク質(E)、前駆膜タンパク質(prM)、非構造タンパク質1(NS1)、Gag、Env、Tat、Pol、Nef、Vif、キャプシドタンパク質P1(VP2)、キャプシドタンパク質P1(VP1)、及びキャプシドタンパク質P1(VP3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
細胞培養物
一態様では、本開示は、遺伝子改変されたADAM17欠損ナチュラルキラー(NK)細胞を含む、細胞培養物を提供する。実施形態では、NK細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)から産生されている。実施形態では、NK細胞は、末梢血細胞又は臍帯血細胞から産生されている。実施形態では、NK細胞は、ヒトNK細胞である。
【0157】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増強された抗体依存性細胞毒性(ADCC)を示す。
【0158】
実施形態では、NK細胞は、細胞表面マーカーCD56、NKG2D、NKp44、及びNKp46を発現する。実施形態では、本発明は、NK細胞が、遺伝子改変されていないNK細胞と比較して、増加した細胞表面マーカーCD16、TNF-α、及びCD62Lを発現することを提供する。
【0159】
実施形態では、NK細胞は、CRISPR、TALEN、ZFN、又は他の遺伝子編集技術を用いて、ADAM17欠損であるように遺伝子改変されている。
【0160】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の遺伝子改変されたADAM17欠損NK細胞の培養物からのNK細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0161】
一態様では、本開示は、必要とする対象を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、本発明は、必要とする対象が、NK耐性がんを患っていることを提供する。実施形態では、本発明は、必要とする対象が、慢性ウイルス感染症を患っていることを提供する。
【0162】
実施形態では、投与は、疾患細胞に特異的な抗体を更に含む。実施形態では、本発明は、投与が、CD20に特異的な抗体を更に含むことを提供する。
【0163】
一態様では、本開示は、細胞をADAM17欠損であるように遺伝子改変することを含む、本明細書に記載のNK細胞培養物を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0164】
ここで、本開示は、以下の実施例を参照して説明される。これらの実施例は、例示のみを目的として提供され、本開示は、決してこれらの実施例に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形例を包含するように解釈されるべきである。
【0165】
更なる説明なしでは、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本開示の方法を作製及び利用し、特許請求の範囲に記載の方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示の実施形態を具体的に指摘しており、本開示の残りの部分をいかなる方法でも限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0166】
ここで、これらの実験に用いる材料及び方法を説明する。
【0167】
実施例1:ADAM17欠損iPSC由来NK細胞の産生
本発明は、増強された抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を有するNK細胞を生成するための、ヒトiPSCにおけるADAM17発現の欠失を説明する最初のものである。加えて、このアプローチは、改善されたCD16発現をもたらすだけでなく、ADAM17媒介切断を受けるTNF-α、CD62L、及び潜在的に他の細胞表面分子の増加した発現ももたらす。
【0168】
以前の研究では、切断耐性CD16分子の産生によるiPSC由来NK細胞における改善されたCD16発現が、改善されたADCC活性につながることが実証されており、このアプローチは現在、臨床試験(Fate Therapeutics FT516及びFT596臨床製品)に入っている。しかしながら、このアプローチは、CD16発現の増加のみをもたらし、他のADAM17媒介切断タンパク質の増加をもたらさない。
【0169】
ADAM17によるCD16切断を同定した最初の研究は、ADAM17活性を阻害することが、抗体被覆標的細胞と共インキュベートしたときにNK細胞によるサイトカイン産生の増加をもたらすことを実証し、Romee et al.(2013)Blood.121(18):3599-608を参照されたい。ADAM17活性を遮断するために、小分子阻害剤(BMS566394)を使用することができ、Mishra et al.(2021)Frontiers in Immunology 12(711621):1-9を参照されたい。本研究は、末梢血NK細胞上で行った。ADAM17は、いくつかの異なる細胞型に発現されるため、臨床環境で小分子阻害剤を使用してADAM17活性を遮断すると、治療有効性に悪影響を及ぼし得る非NK特異的効果がもたらされる。本発明の遺伝子ノックアウトアプローチは、iPSC-NKを使用し、他の細胞における生理学的ADAM17活性に影響を与えることなく、NK細胞上のADAM17に特異的に影響を与える。
【0170】
別の研究では、末梢血NK細胞におけるADAM17発現を中断するために、アデノ随伴ウイルスを使用する相同組換え鋳型の送達とともに、ADAM17を標的とするCRISPR/Cas9の使用が報告され、Pomeroy et al.(2020)Molecular Therapy 26(1):52-63を参照されたい。彼らは、ADAM17破壊されたNK細胞が、改善されたサイトカイン産物及びがん細胞に対する細胞毒性を示すことを報告している。この記事で報告されている戦略はまた、末梢血NK細胞を使用し、これは、ドナー変動性が生じやすく、不均一な遺伝子改変されたNK細胞集団を生成する。本発明からのADAM17欠損iPSC-NKは、増強された抗腫瘍活性を有する一貫した遺伝子編集NK細胞を生成するための、より安定かつ均一なプラットフォームを提供する。
【0171】
NK細胞ADCC活性を増強するための戦略として、ADAM17欠損(ADAM17-KO)iPSC由来NK細胞を生成した。簡潔に述べると、ADAM17-KO iPSCは、臍帯血細胞由来のiPSC上のADAM17のエクソン1を標的とする短いガイドRNA(sgRNA)を用いて、クラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し/Cas9(CRISPR/Cas9)を使用して生成された。ADAM17標的化sgRNAによるCRISPR/Cas9のトランスフェクション後、単一細胞クローンを単離し、PCR及びサンガー配列決定によって、ADAM17における変異について評価した。変異を含有しないトランスフェクトされた細胞を野生型対照として使用した。ADAM17中のホモ接合変異を含有する1つのクローンを増殖し、野生型と比較して、フローサイトメトリーを使用して、表面ADAM17タンパク質発現の欠如について検証した。
【0172】
ADAM17-KO iPSCは、造血前駆細胞に正常に分化し、次いで、CD56、CD94、NKG2D、NKp44、及びNKp46を含む典型的なNK細胞表面マーカーを均一に発現するNK細胞に分化する。ADAM17-KO iPSC-NKは、WT iPSC-NK及び健常なドナー由来PB-NK細胞と比較して、機能的であり、K562赤白血病細胞をインビトロで殺傷する。驚くべきことに、分化時に、ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、WT iPSC-NK細胞と比較して、約20%低いCD16a表面発現を発現する。したがって、我々は、磁気細胞分離を用いて、ADCCが可能であるADAM17-KO細胞のために、CD16aを濃縮するために積極的に選択した。濃縮後、ADAM17-KO細胞は、人工抗原提示細胞を使用した培養において6週間の増殖にわたってCD16a+細胞を安定して発現した。WT iPSC-NK及びPB-NKは、ホルボールエステルによる刺激時にCD16a表面発現を急速に失うが、ADAM17 KO iPSC-NK細胞は、この刺激後に、90%を超えるCD16a発現を維持する。加えて、有意に高い割合のADAM17-KO iPSCは、WT iPSC-NK及びPB-NKと比較して、ホルボールエステルで4時間刺激した後に、細胞表面上で、TNF-a及びCD62L(L-セレクチン)2つの他の既知のADAM17基質を発現する。
【0173】
ADCC活性は、典型的にNK細胞殺傷に耐性のある腫瘍、及びこれらの腫瘍細胞上で発現される抗原に結合する治療抗体とのインキュベーション時のCD107a及びIFNγ発現を観察することによって評価した。RAJI Bリンパ腫細胞と共インキュベートした場合、CD16a+ WT iPSC-NK及びPB-NK細胞と比較して、抗CD20抗体リツキシマブの存在下で、CD16a+ ADAM17-KO iPSC-NK細胞が、増加したCD107a及びIFNγ発現を媒介する。同様に、CD16a+ ADAM17-KO iPSC-NK細胞は、CD16a+ WT iPSC-NK及びPB-NKと比較して、抗EGFR抗体セツキシマブの存在下で、CAL27扁平上皮がん細胞と共インキュベートしたときに、増加したCD107a及びIFNγ発現をアップレギュレートする。リツキシマブ及びセツキシマブの存在下でのRAJI及びCal27細胞に対する長期(24時間)細胞毒性アッセイは、それぞれ、経時的に、CD16a+ WT iPSC-NK及びCD16a+ PB-NK細胞と比較して、CD16a+ ADAM17-KO iPSC-NK細胞において高い細胞毒性を実証する。
【0174】
参考文献
1.Zhu H,Blum R,Bjordahl R,Gaidarova S,Rogers P,Lee TT,Abujarour R,Bonello GB,Wu J,Tsai PF,Miller JS,Walcheck B,Valamehr B,Kaufman DS.(2020).Pluripotent stem cell-derived NK cells with high-affinity non-cleavable CD16a mediate improved anti-tumor activity.Blood.135(6):399-410.
2.Jing Y,Ni Z,Wu J,Higgins L,Markowski TW,Kaufman DS,Walcheck B.(2015).Identification of an ADAM17 Cleavage Region in Human CD16(FcγRIII)and the Engineering of a Non-Cleavable Version of the Receptor in NK Cells.PLoS One.10(3):e0121788.
3.Romee R,Foley B,Lenvik T,Wang Y,Zhang B,Ankarlo D,et al.NK cell CD16 surface expression and function is regulated by a disintegrin and metalloprotease-17(ADAM17).Blood.2013;121(18):3599-608.
4.Pomeroy EJ,Hunzeker JT,Kluesner MG,Lahr WS,Smeester BA,Crosby MR,et al.A Genetically Engineered Primary Human Natural Killer Cell Platform for Cancer Immunotherapy.Mol Ther.2020;28(1):52-63.
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【国際調査報告】