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特表2023-546679がん治療における放射免疫療法とCD47遮断の併用
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  • 特表-がん治療における放射免疫療法とCD47遮断の併用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】がん治療における放射免疫療法とCD47遮断の併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/10 20060101AFI20231030BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231030BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231030BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
A61K51/10 100
A61K45/00
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/68
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524590
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021056259
(87)【国際公開番号】W WO2022087416
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/104,386
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/226,699
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/250,725
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517405552
【氏名又は名称】アクティニウム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】ラディック デール エル
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド ポール
(72)【発明者】
【氏名】セス サンデシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA12
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085CC23
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA50
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
放射性標識CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3標的薬などの放射線治療薬と、SIRPα-IgG Fc融合タンパク質又はCD47に対するモノクローナル抗体などのCD47チェックポイント阻害剤との併用を含む、哺乳類対象におけるがん及び前がん性増殖性疾患を治療するための組成物及び方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための治療組成物であって、少なくとも1つの放射線治療薬とCD47遮断とを含む組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの放射線治療薬は、CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3に特異的に結合する、モノクローナル抗体、抗原結合性抗体フラグメント、抗体模倣物、ペプチド、又は小分子などの放射性標識標的薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの放射線治療薬のうち少なくとも1つは、131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pb、若しくは103Pd、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの放射線治療薬は、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識したリンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識CD33標的薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの放射線治療薬は、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識したマパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、LBY-135、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識DR5標的薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの放射線治療薬は、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識したMED10641、ALG.APV-527、Tb535、H6-DM5、ZV0508、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識5T4標的薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの放射線治療薬は、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識したパトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、AV-203、GSK2849330、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識HER3標的薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記放射線治療薬はアクチニウム225標識されており、かつ前記アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~10μCi/kg対象体重の放射線量、及び10mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、請求項4~7のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記放射線治療薬はアクチニウム225標識されており、かつ前記アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、請求項4~7のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記CD47遮断薬は、CD47がSIRPαに結合するのを防ぐ、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記CD47遮断薬は、マグロリマブ、レムゾパリマブ、AO-176、TTI-621、TTI-622、RRx-001、アゼルニジピン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記CD47遮断薬の有効量は、0.05~5mg/kg患者体重を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記放射線治療薬は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を有する225Acリンツズマブを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記がんは固形腫瘍がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記がんは血液がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記血液がんは骨髄性悪性腫瘍である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性腫瘍を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記血液がんは再発性/難治性急性骨髄性白血病である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記がんはCD33陽性がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記CD33陽性がんは、CD33を発現する細胞を含み、前記CD33発現細胞は、骨髄芽球細胞又は悪性形質細胞を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
がんを有する対象を治療する方法であって、請求項1~20のうちいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項22】
がん又は前がん性増殖性疾患を治療する方法であって、前記がん又は前がん性増殖性疾患を有する哺乳類対象に、がん関連抗原を標的とする1つ以上の放射性標識標的薬の有効量と、CD47遮断薬の有効量とを投与することを含む方法。
【請求項23】
前記1つ以上の放射性標識標的薬は、CD33に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合性フラグメント、DR5に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合性フラグメント、5T4に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合性フラグメント、HER2に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合性フラグメント、及びHER3に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合性フラグメントのうち1つ以上を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の放射性標識標的薬は、225Ac標識抗体及び非標識抗体の組成物を含み、前記組成物が、0.1~2.0μCi/kg対象体重の放射線量、及び0.1~5.0mg/kg対象体重のタンパク質投与量を含み、並びに
前記CD47遮断は0.05~5.0mg/kg対象体重の総投与量で投与される、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記モノクローナル抗体は抗CD33抗体であり、かつ前記がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性腫瘍のうち1つ以上から選択される血液疾患又は障害である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
モノクローナル抗体は抗5T4抗体であり、かつ前記がんは、結腸直腸がん、胃がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、膵がん、腎臓がん、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
前記モノクローナル抗体は抗DR5抗体であり、かつ前記がんは、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、又は前立腺がんである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項28】
前記モノクローナル抗体は抗HER3抗体であり、かつ前記がんは、膵がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、又は卵巣がんである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項29】
前記モノクローナル抗体は抗HER2抗体であり、かつ前記がんはHER2発現がん細胞を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項30】
前記がんは、乳がん又は卵巣がんである、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年10月22日に出願された米国仮出願第63/104,386号、2021年7月28日に出願された米国仮出願第63/226,699号、及び2021年9月30日に出願された米国仮出願第63/250,725号の優先権を主張するものであり、これらの出願はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
(配列表)
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に援用される。2021年10月22日に作成された前記ASCIIコピーは、ATNM-001PCT_SL_ST25.txtという名称で、サイズは65,536バイトである。
(技術分野)
本願発明は、放射線治療法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
CD47は、正常細胞と悪性細胞の両方の表面に偏在的に発現するインテグリン関連膜貫通タンパク質である。CD47が、マクロファージなどの食細胞や樹状細胞で見られる、その同起源受容体パートナーであるシグナル受容体タンパク質α(SIRPα)と結合すると、貪食作用を阻害する。即ち、CD47は食細胞に「don’t eat me(私を食べないで)」シグナルを送る。
赤血球はインテグリンを発現しないが、CD47は、赤血球を含め事実上すべての正常細胞に発現する。この経路は、免疫系が、老齢細胞、死滅細胞、又は死にかけた細胞を効果的かつ選択的に除去しながらも、正常細胞のみを残す自然な過程として発展している。このため、CD47は、腫瘍細胞の貪食と除去を回避する免疫回避手段として、多様な腫瘍の表面に頻繁に過剰発現する。治療用遮断抗体によってCD47とSIRPαの結合を抑制すると、貪食が可能となる。
しかし、CD47によるdon’t eat meシグナルを抑制しても、マクロファージの貪食作用を引き起こすには不十分である。正常な生理的条件下では、貪食促進シグナルと貪食抑制シグナルのバランスを取ることで細胞恒常性がある程度制御されている。CD47を遮断して標的細胞を貪食させるには、細胞が強力な貪食促進シグナルを出すことも必要であり、主な「eat me(私を食べて)」シグナルは、表面に発現したカルレティキュリンやホスファチジルセリンによって誘発される。これが、死滅細胞や死にかけた細胞の貪食及び除去の過程である。重要なことに、CD47とSIRPαの相互作用を遮断して腫瘍細胞の貪食を促進することは、多くのがん種の治療において新たな治療戦略となっている。しかし、抗CD47遮断抗体療法を用いた治療などの単剤治療に対する臨床反応はわずかである。
本発明が必要とし、かつ提供するのは、がん及び前がん性増殖性疾患などの増殖性疾患の新たな治療手段であり、1つ又は複数の放射性標識標的薬と、1つ又は複数のCD47遮断薬とを含む。
【発明の概要】
【0003】
ここに開示する本発明は、放射性標識がん関連抗原標的薬などの少なくとも1つの放射線治療薬とCD47遮断薬とを併用投与すると、がん細胞の貪食作用に対する貪食促進シグナルと貪食抑制シグナルのバランスが変化するという発見に基づいている。より具体的には、CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3などのがん関連抗原に対する放射性標識標的薬などの放射免疫治療と、CD47に対する遮断モノクローナル抗体などのCD47遮断薬との併用により、固形腫瘍患者や血液悪性腫瘍患者を含むがん患者の臨床転帰を向上させ得る。
従って本発明は、がん又は前がん性増殖性疾患などの増殖性疾患を有する対象の治療に有用な組成物及び方法を提供する。組成物は概して、放射線治療薬とCD47遮断薬とを含む。例示的な放射線治療薬は、CD33、DR5、5T4、HER2、若しくはHER3と特異的に結合する放射性標識抗体、ペプチド、又は小分子などの、CD33、DR5、5T4、HER2、若しくはHER3に対する放射性標識標的薬を含む。例示的なCD33標的薬は、モノクローナル抗CD33抗体リンツズマブ、ゲムツズマブ、又はバダスツキシマブ、例えば225Acリンツズマブのうち任意の1つ又は複数を含む。例示的なDR5標的薬は、モノクローナル抗DR5抗体マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、及びLBY-135のうち任意の1つ又は複数を含む。例示的な5T4標的薬は、モノクローナル抗5T4抗体MED10641、ALG.APV-527、Tb535、H6-DM5、及びZV0508のうち任意の1つ又は複数を含む。例示的なHER3標的薬は、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、GSK2849330、又はAV-203によって認識されるHER3のエピトープと結合し得る。例示的なCD47遮断薬は、CD47が、マグロリマブ、レムゾパリマブ、AO-176、TTI-621、又はTTI-622などのSIRPαに結合するのを阻害できる薬剤を含む。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、0.1~10μCi/kg対象体重の放射線量、及び10mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量で投与される、CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3に対するアクチニウム標識モノクローナル抗体を含む。CD47遮断薬は、例えば、CD47がSIRPαに結合するのを防ぐモノクローナル抗体を含み得る。CD47遮断薬は、例えば、マグロリマブ、レムゾパリマブ、AO-176、AK117、IMC-002、IBI-188、IBI-322、BI766063、ZL-1201、AXL148、RRx-001、アゼルニジピン、ES004、SRF231、SHR-1603、TJC4、TTI-621、又はTTI-622を含み得る。CD47遮断薬の例示的な有効用量は、0.05~5mg/kg患者体重を含む。
【0004】
特定の態様に従って、がんは、固形腫瘍、又は骨髄性悪性腫瘍などの血液がんであり得る。例示的な骨髄性悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性腫瘍を含む。特定の態様に従って、がんは、骨髄芽球細胞又は悪性形質細胞などのCD33陽性細胞と関連していてよい。
本発明の更なる特徴、利点、及び態様は、以下の詳細な説明、ある場合には図面、及び特許請求の範囲を考慮することにより記述され得る、又は明らかになり得る。更に、前述の発明の概要及び以下の詳細な説明はいずれも例示的なものであり、請求項に係る発明の範囲を限定することなく更なる説明を提供することを意図していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】SK-OV3ヒト卵巣がん細胞株を用いたNGSマウス異種移植モデルにおける、ビヒクル(対照)、マグロリマブ単独、225Acトラスツズマブ単独、及びマグロリマブと225Acトラスツズマブの併用の腫瘍増殖に対する効果を比較したグラフである。
図2】SK-OV3ヒト卵巣がん細胞株を用いたNGSマウス異種移植モデルにおける、ビヒクル(対照)、マグロリマブ単独、177Luトラスツズマブ単独、及びマグロリマブと177Luトラスツズマブの併用の腫瘍増殖に対する効果を比較したグラフである。
図3】BxPC3ヒト膵がん細胞株(腺がん)細胞のヒトマクロファージによる貪食作用に対する以下のものの効果を比較したグラフである:非放射性標識抗ヒトHER3 IgGモノクローナル抗体AT-02単独(「HER3 mAb」)、抗ヒトCD47抗体単独(10μg/mL;クローンB6.H12;BioXcellカタログ番号BE0019-1;「CD47 mAb」)、225Ac標識AT-02抗HER3 mAb単独(100nCi/mL;225Ac-HER3 mAb)、及び抗CD47mAb(10μg/mL)と225Ac標識AT-02抗HER3 mAb(100nCi/mL)の併用。図からわかるように、薬剤の併用は、個々の薬剤のいずれと比べても、BxPC3細胞の貪食作用を顕著に増強させた。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一態様では、ここに開示する本発明は、有効量の放射線治療薬と有効量のCD47遮断薬とを投与することにより、血液悪性腫瘍又は固形がんなどの増殖性疾患又は障害を治療する方法を提供する。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、1つ又は複数のがん関連抗原、例えば、CD33、DR5、5T4、HER2、HER3、メソセリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD45、CD171、CD138、CS-1、CLL-1、GD2、GD3、B細胞成熟抗原(BCMA)、Tn Ag、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、カルレティキュリン、ホスファチジルセリン、GRP78(BiP)、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、インターロイキン11受容体α(IL-l lRα)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体β(PDGFR-β)、SSEA-4、CD20、葉酸受容体α(FRα)、ERBB2(Her2/neu)、HER3、MUCl、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、DR5、5T4、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6/E7、MAGE Al、MAGEA3、MAGEA3/A6、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、プロステイン、サバイビン及びテロメラーゼ、PCTA-l/ガレクチン8、KRAS、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、GPA7、並びにIGLL1と特異的に結合する放射性標識モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の放射性標識抗原結合性フラグメント、放射性標識抗体模倣物、放射性標識ペプチド、又は放射性標識小分子などがあるがこれらに限定されない放射性標識標的薬であり得る。
特定の態様に従って、CD47遮断薬は、CD47に対する抗体などのCD47遮断部分を含み得る。
各治療レジメンでは、特定の投与スケジュールに従って投与してよく、方法は、放射線治療薬及びCD47遮断薬それぞれの連続した又は同時の投与を提供する。
【0007】
定義と略語
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、別段の記載がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。例えば、本明細書では、「an」antibody(抗体)、「a」radionuclide(放射性核種)、及び「the」targeting agent(標的薬)について言及するが、これらの構成要素のいずれか1つ若しくは複数、及び/又は本明細書に記載する任意の他の構成要素のうち1つ若しくは複数を使用し得る。
本明細書及び特許請求の範囲で使用する語「含む」及び語「含む」の形態、並びに語「包含する」及び語「包含する」の形態は、言及するもの以外の要素の包含を制限するものではない。更に、本開示全体を通して、これらの様々な態様又は要素を、「包含する」又は「含む」という観点から説明するが、「から本質的になる」又は「からなる」という観点から説明されるこれらの対応する態様又は要素も同様に開示される。例えば、本発明の特定の態様が、放射性標識標的薬を投与することを「包含する」又は「含む」方法の観点から説明されていると同時に、放射性標識標的を投与すること「から本質的になる」又は「からなる」と代わりに記載されている対応する方法も、前記態様の範囲内にあり、本開示によって開示される。この文脈において、「から本質的になる」は、言及するものの基本的かつ新規の、又は機能的な特徴(複数可)に実質的に影響しない要素の存在を許容する範囲を提供するのに対し、用語「からなる」は、言及するもの以外のいかなる要素も除外する。
本開示において、数字表示又は数値に関連して、例えば、温度、時間、量、及び濃度の記述において、範囲の記述も含めて使用する場合の用語「約」は、±10%の変動、及びより大きな変動内で、数字表示又は数値の±5%又は±1%の変動を示す。
【0008】
抗体、抗体フラグメント、Fabフラグメント、アプタマー、ペプチド、又は小分子などの標的薬の関連で本明細書にて使用する「投与する」は、抗体送達に好適な任意の既知の方法により薬剤を対象の体に送達することを意味する。投与の具体的な方式は、静脈内、経皮、皮下、腹腔内、髄腔内、及び腫瘍内投与を非限定的に含む。抗体の例示的な投与方法は、実質的に国際公開第2016/187514号に記載のものであってよく、同文献は参照により本明細書に援用される。例えば、特定の態様に従って、標的薬は、1回用量容器に収容し得る特定患者向けの治療用組成物として投与してよく、その総量を、単一の治療セッションにおいて患者に投与し得る。組成物は、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントと、薬学的に許容される担体とを含んでよく、モノクローナル抗体のエフェクター分子(例えば、放射性核種)の用量及びモノクローナル抗体の総タンパク質量は、少なくとも1つの患者固有のパラメーターよって異なり得る。患者固有のパラメーターには、患者の体重、患者の年齢、患者の身長、患者の性別、患者の病状、及び患者の病歴があるが、これらに限定されない。
更に、放射性標識抗体又は放射性標識抗原結合性抗体フラグメントなどの放射性標識標的薬を含む組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は薬学的に許容される賦形剤を含み得る。そのような担体は、当業者によく知られている。例えば、注射剤送達系は、溶液、懸濁液、ゲル、微粒子、及び高分子注射剤を含み、溶解性改変剤(例えば、エタノール、プロピレングリコール、及びスクロース)及びポリマー(例えば、ポリカプロラクトン(polycaprylactone)及びPLGA)などの賦形剤を含む可能性がある。例示的な製剤は、実質的に国際公開第2017/155937号に記載のものであってよく、同文献は参照により本明細書に援用される。例えば、特定の態様に従って、製剤は、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒト血清アルブミン(HSA)、HSAの水溶性塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される賦形剤を0.5~5.0%(w/v)を含み得る。特定の製剤は、アスコルビン酸0.5~5%;ポリビニルピロリドン(PVP)0.5~4%;及び50mM PBS緩衝液(pH7)中のモノクローナル抗体を含み得る。
【0009】
本明細書で使用する用語「抗体」は、以下を非限定的に含む:(a)2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、抗原を認識する免疫グロブリン分子;(b)ポリクローナル及びモノクローナル免疫グロブリン分子;(c)これらの一価及び二価フラグメント、例えば、Fab、di-Fab、scFvs、二重特異性抗体、ミニボディ、及びナノボディ(sdAb);(d)自然発生抗体及び非自然発生抗体、例えば、完全合成抗体、IgG-Fc-silent、及びキメラ;並びに(e)これらの二重特異性形態。免疫グロブリン分子は、IgA、分泌型IgA、IgG、及びIgMを含むがこれらに限定されない、一般に既知のクラスのいずれかに由来し得る。IgGのサブクラスも当業者によく知られており、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むがこれらに限定されない。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110個以上のアミノ酸の「可変領域」を決定する。用語「可変軽鎖(VL)」及び「可変重鎖(VH)は、それぞれ軽鎖及び重鎖のこれらの領域を指す。抗体は、ヒト、ヒト化、非ヒト抗体であり得る。ここに開示する本発明の特定の態様で「抗体」に言及する場合、又は「抗体」と記述する場合、明示的に別段の表記がない限り、本明細書に開示する全長抗体又はこれらのフラグメントのいずれかを指すものと想定される。
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分、又は全てが、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置き換えられた抗体を指す。抗体のヒト化形態の一実施形態では、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分、又は全てが、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸で置き換えられているのに対し、1つ又は複数のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分、又は全てが未変化である。アミノ酸のわずかな追加、削除、挿入、置換、又は修飾は、これらが、特定の抗原に結合する抗体の能力を損なわない限りにおいて許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。
「キメラ抗体」は、例えば、可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来するなど、可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体を指す。
【0010】
「相補性決定領域」又は「CDR」は、全体で、自然免疫グロブリン結合部位の可変領域の結合親和性及び特異性を決定するアミノ酸配列を指す。抗体の軽鎖及び重鎖それぞれに3つのCDRが存在する。
「フレームワーク領域」又は「FR」は、CDR間に介在する、通常は保存されたアミノ酸配列を指し、CDR間の足場として機能する。
「定常領域」は、抗体のクラスが変化しない抗体分子の一部分を指し、軽鎖及び重鎖のタイプによって定義される。例えば、軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖のタイプであり得、重鎖定常領域は、5つの鎖のアイソタイプ:α、δ、ε、γ、又はμのうちの1つであり得る。この定常領域は、一般に、抗体が示すエフェクター機能を付与できる。様々なサブクラスの重鎖(重鎖のIgGサブクラスなど)は、主に異なるエフェクター機能を担っている。
【0011】
本明細書で使用する「免疫反応性」は、特異的抗原を認識し、これに結合する免疫グロブリンの能力の程度を指す。「特異結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」は、抗原が、他の抗原よりも高い親和性で抗原又は抗原内のエピトープに結合することを指す。通常、抗体は、約1×10-8M以下、例えば、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下の平衡解離定数(KD)で、通常は、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するKDの少なくとも100分の1のKDで抗原又は抗原内のエピトープに結合する。解離定数は標準的な手順を用いて測定し得る。しかし、抗原又は抗原内のエピトープに特異的に結合する抗体は、他の関連抗原と、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)、Pan troglodytes(チンパンジー、chimp)、若しくはCallithrix jacchus(コモンマーモセット、marmoset)などの他の種(相同体)の同じ抗原と交差反応性を示し得る。
【0012】
本明細書で使用する「抗CD33標的薬」は、CD33の任意の利用可能なエピトープに結合する抗体、抗体フラグメント、ペプチド、Fabフラグメント、アプタマー、又は小分子である。特定の態様に従って、抗CD33標的薬はCD33に対するヒト化抗体、例えば、リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ、又はバダスツキシマブである。特定の態様に従って、抗CD33標的薬は、モノクローナル抗体「リンツズマブ」又は「HuM195」が認識するエピトープに結合する。HuM195は、その製造方法と共に知られている。
本明細書で使用する「抗DR5抗体」は、DR5の任意の利用可能なエピトープに結合する抗体、抗体フラグメント、ペプチド、Fabフラグメント、アプタマー、又は小分子である。特定の態様に従って、抗DR5抗体は、DR5に対するヒト又はヒト化抗体である。特定の態様に従って、抗DR5抗体は、マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、及びLBY-135のいずれかが認識するDR5のエピトープに結合する。特定の態様に従って、抗DR5抗体は、マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、及び/又はLBY-135から選択される。
【0013】
【表1】
【0014】
本明細書で使用する「5T4標的薬」は、5T4の任意の利用可能なエピトープに結合する抗体、抗体フラグメント、ペプチド、Fabフラグメント、アプタマー、又は小分子である。例えば、5T4標的薬はモノクローナル抗体であり得る。抗5T4抗体配列の最初の記載は、Hole及びStern(Hole&Stern(1988)Br.J.Cancer 57,239-246)によるものであった。前臨床試験などで、ここに開示する本発明による5T4標的薬として使用する抗体は、Hole及びSternが提供する配列を用いて作製し得る。特定の態様に従って、5T4標的薬は、米国特許第7,074,909及び8,044,178号明細書に記載される、5T4に対するヒト化抗体である。5T4に対する例示的な抗体には、少なくとも、Harper(Harper,J.et al.(2017)Mol.Cancer Ther.16,1576-1587)に記載されている、Medimmune/AstraZenecaが開発したMED10641;Aptevo Therapeutics/Alligator Bioscienceが開発したALG.APV-527;Biotecnol/Chiome Bioscienceが開発したTb535;Guangdong Zhongsheng Pharmaceuticalsが開発したH6-DM5;及びZova Biotherapeuticsが開発したZV0508がある。この他の抗体及び抗体薬物複合体を開示している表1も参照のこと。これらの抗5T4部分は、ここに開示する本発明の様々な態様で5T4標的薬として使用し得る。
【0015】
本明細書で使用する「抗HER2抗体」は、HER2(ErbB2)の任意の利用可能なエピトープに結合するモノクローナル抗体(mAb)などの抗体であるが、これらに限定されない。特定の態様に従って、使用する抗HER2抗体は、トラスツズマブ、若しくはトラスツズマブが認識するHER2のエピトープに結合する異なる抗体であり得る、及び/又は使用する抗体は、ペルツズマブ、若しくはペルツズマブが認識するHER2のエピトープに結合する異なる抗体であり得る。特定の態様に従って、抗HER2抗体は、多特異性抗体、例えば、HER3/HER2の任意の利用可能なエピトープに対する二重特異性抗体、例えば、Merrimack PharmaceuticalsのMM-111及びMM-141/イスチラツマブ、Merus NVのMCLA-128、並びにGenentechのMEHD7945A/デュリゴツマブ(Duligotumab)であってもよい。
DrugBank Onlineで報告されているトラスツズマブの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は、軽鎖(配列番号1)及び重鎖(配列番号2)である。
出願人は、トラスツズマブをp-SCN-DOTAとコンジュゲートさせ、組成物を225Ac又は177Luで放射性標識することに成功した。
DrugBank Onlineで報告されているペルツズマブの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は、軽鎖(配列番号3)及び重鎖(配列番号4)である。
【0016】
本明細書で使用する「抗HER3抗体」は、HER3の任意の利用可能なエピトープに結合するモノクローナル抗体(mAb)などの抗体であるが、これらに限定されない。特定の態様に従って、抗HER3抗体は、以下の抗体のうちの1つであり得る、又は以下の抗体のうちの1つが認識するHER3のエピトープに結合し得る:パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、AV-203(別名CAN017;Aveo Oncology)、又はGSK2849330。特定の態様に従って、抗HER3抗体は、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、US-1402、AV-203、CDX-3379、又はGSK2849330のうち1つ又は複数から選択される。特定の態様に従って、抗HER3抗体は、多特異性抗体、例えば、HER3/HER2の任意の利用可能なエピトープに対する二重特異性抗体、例えば、Merrimack PharmaceuticalsのMM-111及びMM-141/イスチラツマブ、Merus NVのMCLA-128、並びにGenentechのMEHD7945A/デュリゴツマブであり得る。抗体は、米国特許出願公開第20210025006号明細書に開示される抗HER3抗体のうちの1つ、例えば、CAN017(重鎖配列番号5、軽鎖配列番号6)、04D01(重鎖配列番号7、軽鎖配列番号8)、09D03(重鎖配列番号9、軽鎖配列番号10)、11G01(重鎖配列番号11、軽鎖配列番号12)、12A07(重鎖配列番号13、軽鎖配列番号14)、18H02(重鎖配列番号15、軽鎖配列番号16)、及び22A02(重鎖配列番号17、軽鎖配列番号18)、配列番号19の重鎖及び配列番号20の軽鎖を有するIgG、HER3結合抗体、例えば、前記抗体のうちいずれかの重鎖CDRを1つ、2つ、若しくは3つ含む重鎖を有するIgG、及び/若しくは前記抗体の軽鎖CDRを1つ、2つ、若しくは3つ含む軽鎖を有するIgG、又は前記抗体のうちいずれかが認識するHER3のエピトープに結合する抗体であり得る。
【0017】
「エピトープ」は、抗体、抗体フラグメント、Fabフラグメント、アプタマー、又は小分子などの標的薬が認識し、かつ結合することが可能な標的分子の部位(例えば、抗原の少なくとも一部)を指す。例えば、タンパク質抗原では、これは、標的薬が結合するタンパク質(即ち、アミノ酸、特にこれらの側鎖)の領域を指してよい。重複エピトープは、少なくとも1~5個の一般的なアミノ酸残基を含む。抗体のエピトープを特定する方法は当業者に知られており、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のものを含む。
【0018】
本明細書で使用する用語「増殖性疾患」及び「がん」は同じ意味で使用してよく、固形がん(例えば、腫瘍)を非限定的に含み得る。「固形がん」は、骨がん、膵がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼球内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、子宮体がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児腫瘍、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系新生物(CNS)、中枢神経系原発リンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、アスベストによるものなど環境誘発性がんを非限定的に含む。
特定の態様に従って、固形がんは、タモキシフェン感受性乳がん、タモキシフェン抵抗性乳がん、若しくはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などの乳がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、メラノーマなどの皮膚がん、胃がん(stomach cancer)、精巣がん、食道がん、細気管支肺胞がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)などの前立腺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮頸部類表皮がん、肝細胞がん(HCC)若しくは胆管がんなどの肝がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)若しくは小細胞肺がん(SCLC)などの肺がん、腎がん、頭頸部扁平上皮がんなどの頭頸部がん、がん腫、肉腫、又はこれらの組み合わせであり得る。
本明細書で使用する「がん」は、血液悪性腫瘍も非限定的に含む。「血液疾患」又は「血液障害」は、少なくとも血液がんを指すと考えてよい。そのようながんは、骨髄又は免疫系の他の細胞などの造血組織に由来する。血液疾患又は障害には、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性混合型白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病、及び大顆粒リンパ球性白血病)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(真性多血症、本態性血小板増加症、原発性骨髄線維症、及び慢性骨髄性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、MGUS及び類似の障害、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、及びその他のB細胞性悪性腫瘍を非限定的に含む。
【0019】
特定の態様に従って、放射線治療薬は、放射性同位体で標識した標的薬を含み得る。本明細書で使用する「放射性同位体」及び「放射性核種」は同じ意味で使用してよく、α放射同位体、β放射同位体、及び/又はγ放射同位体である可能性がある。放射性同位体の例として以下がある:131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pb、及び103Pd。抗体又は抗体フラグメントなどのタンパク質を付加する(即ち、抗体に放射性同位体で「標識する」)方法はよく知られている。標識する特定の方法は、例えば、国際公開第2017/155937、及び2020年11月30日に出願された「Compositions and methods for preparation of site-specific radioconjugates」という名称の米国仮特許出願第63/119,093号明細書に記載されており、両文献は参照により本明細書に援用される。
【0020】
例えば、特定の態様に従って、放射線治療標的薬は、(a)抗体又はペプチドなどの標的薬を緩衝液中のキレート剤とコンジュゲートさせる、(b)キレート剤結合標的薬を225アクチニウム又は「225Ac」などの緩衝液中の放射性核種で標識する、(c)クエンチ用キレート剤(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))を添加して反応をクエンチする、及び(d)放射性標識したキレート剤結合標的薬を精製する、ことによって標識し得る。例示的なキレート剤は、放射性核種などの金属イオン封鎖剤の二重機能性に加え、生物担体/抗体などの標的薬に共有結合する能力を有する化合物を含む。使用し得る例示的なキレート剤は、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(p-SCN-Bn-DOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N’”-四酢酸(DOTA);p-イソチオシアナトベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”-三酢酸(DO3A);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(2-プロピオン酸)(DOTMA);3,6,9-トリアザ-12-オキサ-3,6,9-トリカルボキシメチレン-10-カルボキシ-13-フェニル-トリデカン酸(「B-19036」);1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N”-三酢酸(NOTA);1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N”,N’”-四酢酸(TETA);トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA);trans-1,2-ジアミノヘキサン四酢酸(CYDTA);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-(2-ヒドロキシプロピル)-4,7,10-三酢酸(HP-DO3A);trans-シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA);trans(1,2)-シクロヘキサンジエチレントリアミン五酢酸(CDTPA);1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-N,N’,N”-三酢酸(OTTA);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス{3-(4-カルボキシル)-ブタン酸};1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(酢酸-メチルアミド);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(メチレンホスホン酸);及びこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0021】
特定の態様に従って、放射線治療標的薬が225Acで標識されている場合、有効量は、50μCi/kg、40μCi/kg、30μCi/kg、20μCi/kg、10μCi/kg、5μCi/kg、4μCi/kg、3μCi/kg、2μCi/kg、1μCi/kg、又は0.5μCi/kg未満である。特定の態様に従って、有効量は、少なくとも0.05μCi/kg、又は0.1μCi/kg、0.2μCi/kg、0.3μCi/kg、0.4μCi/kg、0.5μCi/kg、1μCi/kg、2μCi/kg、3μCi/kg、4μCi/kg、5μCi/kg、6μCi/kg、7μCi/kg、8μCi/kg、9μCi/kg、10μCi/kg、12μCi/kg、14μCi/kg、15μCi/kg、16μCi/kg、18μCi/kg、20μCi/kg、30μCi/kg、又は40μCi/kgである。特定の態様に従って、225Ac標識標的薬は、本明細書に記載する上限と下限の任意の組み合わせを含む用量、例えば、少なくとも0.1~5μCi/kg未満、又は少なくとも5~20μCi/kg未満で投与し得る。
特定の態様に従って、放射線治療標的薬は225Acで標識されており、有効量は2mCi未満であり得る(即ち、225Acは体重に基づかない用量で対象に投与される)。特定の態様に従って、有効量は1mCi未満、例えば、0.9mCi、0.8mCi、0.7mCi、0.6mCi、0.5mCi、0.4mCi、0.3mCi、0.2mCi、0.1mCi、90μCi、80μCi、70μCi、60μCi、50μCi、40μCi、30μCi、20μCi、10μCi、又は5μCiであり得る。有効量は、少なくとも2μCi、例えば、少なくとも5μCi、10μCi、20μCi、30μCi、40μCi、50μCi、60μCi、70μCi、80μCi、90μCi、100μCi、200μCi、300μCi、400μCi、500μCi、600μCi、700μCi、800μCi、900μCi、1mCi、1.1mCi、1.2mCi、1.3mCi、1.4mCi、又は1.5mCiであり得る。特定の態様に従って、225Ac標識CD33標的薬は、本明細書に記載する上限と下限の任意の組み合わせを含む量、例えば、少なくとも2μCi~1mCi未満、又は少なくとも2~250μCi未満、又は75~400μCi未満で投与し得る。
特定の態様に従って、225Ac標識放射線治療標的薬は、12Gy未満、又は8Gy未満、又は6Gy未満、又は4Gy未満、又は2Gy未満、例えば2~8Gyを対象に、例えば主に標的固形腫瘍に送達する単回用量を含む。
【0022】
特定の態様に従って、放射線治療標的薬は177Luで放射性標識されており(「177Lu標識」)、有効量は、例えば1mCi/kg未満であり得る(即ち、対象に投与される177Lu標識標的薬の量は、対象の体重1kg当たり1000mCi未満の放射線量を送達する)。特定の態様に従って、有効量は、900μCi/kg、800μCi/kg、700μCi/kg、600μCi/kg、500μCi/kg、400μCi/kg、300μCi/kg、200μCi/kg、150μCi/kg、100μCi/kg、80μCi/kg、60μCi/kg、50μCi/kg、40μCi/kg、30μCi/kg、20μCi/kg、10μCi/kg、5μCi/kg、又は1μCi/kg未満である。特定の態様に従って、有効量は、少なくとも1μCi/kg、2.5μCi/kg、5μCi/kg、10μCi/kg、20μCi/kg、30μCi/kg、40μCi/kg、50μCi/kg、60μCi/kg、70μCi/kg、80μCi/kg、90μCi/kg、100μCi/kg、150μCi/kg、200μCi/kg、250μCi/kg、300μCi/kg、350μCi/kg、400μCi/kg、又は450μCi/kgである。特定の態様に従って、177Lu標識標的薬は、本明細書に記載する上限と下限の任意の組み合わせを含む量、例えば少なくとも5mCi/kg~50μCi/kg未満、又は少なくとも50mCi/kg~500μCi/kg未満で投与し得る。
特定の態様に従って、放射線治療標的薬は177Lu標識であり、有効量は、45mCi未満、例えば、40mCi、30mCi、20mCi、10mCi、5mCi、3.0mCi、2.0mCi、1.0mCi、800μCi、600μCi、400μCi、200μCi、100μCi、又は50μCi未満であり得る。特定の態様に従って、有効量は、少なくとも10μCi、例えば、少なくとも25μCi、50μCi、100μCi、200μCi、300μCi、400μCi、500μCi、600μCi、700μCi、800μCi、900μCi、1mCi、2mCi、3mCi、4mCi、5mCi、10mCi、15mCi、20mCi、25mCi、30mCiであり得る。特定の態様に従って、177Lu標識標的薬は、本明細書に記載する上限と下限の任意の組み合わせを含む量、例えば、少なくとも10~30mCi未満、又は少なくとも100μCi~3mCi未満、又は3~30mCi未満で投与し得る。
【0023】
特定の態様に従って、放射線治療標的薬は131Iで放射性標識されており(「131I標識」)、有効量は、例えば1200mCi未満であり得る(即ち、対象に投与される131Iの量は、体重に基づかない用量で1200mCi未満の全身放射線量を送達する)。特定の態様に従って、有効量は、1100mCi未満、1000mCi未満、900mCi未満、800mCi未満、700mCi未満、600mCi未満、500mCi未満、400mCi未満、300mCi未満、200mCi未満、150mCi、又は100mCi未満であり得る。特定の態様に従って、有効量は200mCi未満、例えば、190mCi、180mCi、170mCi、160mCi、150mCi、140mCi、130mCi、120mCi、110mCi、100mCi、90mCi、80mCi、70mCi、60mCi、又は50mCi未満であり得る。特定の態様に従って、有効量は、少なくとも1mCi、例えば、少なくとも2mCi、3mCi、4mCi、5mCi、6mCi、7mCi、8mCi、9mCi、10mCi、20mCi、30mCi、40mCi、50mCi、60mCi、70mCi、80mCi、90mCi、100mCi、110mCi、120mCi、130mCi、140mCi、150mCi、160mCi、170mCi、180mCi、190mCi、200mCi、250mCi、300mCi、350mCi、400mCi、450mCi、500mCiであり得る。特定の態様に従って、131I標識標的薬は、本明細書に記載する上限と下限の任意の組み合わせを含む量、例えば、少なくとも1~100mCi未満、又は少なくとも10~200mCi未満で投与し得る。
【0024】
選択した放射性核種を本明細書で詳細に開示しているが、本明細書に開示するこれらのいずれも、ここに開示する本発明の一部である標的薬(即ち、放射線治療薬又は放射免疫治療薬)を標識することが企図される。
ここに開示する本発明の特定の態様に従って、対象に投与される放射線治療標的薬(抗体、抗体フラグメント、ペプチド、小分子等)の大部分は、通常、非標識標的薬からなり、標識標的薬は少数である。標識標的薬と非標識標的薬の比率は、既知の方法を用いて調節できる。特定の態様に従って、放射線治療薬(例えば、放射免疫治療薬)は、標識部分と非標識部分を含んでよく、標識部分と非標識部分の割合は、約0.01:10~1:1、例えば0.1:10~1:1であり得る。更に、放射線治療薬は、特定の患者に合わせた単回投与組成物として提供してよく、組成物中の標識標的薬及び非標識標的薬の量は、国際公開第2016/187514号に記載されるように、少なくとも患者の体重、年齢、性別、診断、及び/又は病状若しくは健康状態に応じて異なってよい。
放射線治療標的薬における標識部分と非標識部分との本発明による組み合わせにより、組成物を特定の患者に合わせることが可能となる。例えば、放射線治療薬が放射免疫治療薬である(即ち、標的薬が抗体である)場合、患者固有のパラメーターの少なくとも1つに基づいて、抗体の放射線量とタンパク質投与量のそれぞれを、その患者に対し個別化し得る。よって、組成物の各バイアルを特定の患者向けに作成することができ、バイアルの内容物全体が単回投与でその患者に送達される。治療レジメンで複数回投与が指示されている場合、各用量は、「単回用量」として患者に投与(即ち、バイアルの全内容物を一度に投与)されるバイアルに、患者固有の用量として処方し得る。それ以降の用量は、レジメンの各用量が患者固有の用量として単回投与容器に充填されるように、同様の方法で処方し得る。開示する組成物の利点の1つは、医療従事者による廃棄や処理、例えば、患者に必要な用量を得るための希釈といった処置が必要となるような放射線の残存がないことである。単回投与容器で提供する場合、容器は、患者に注入するための輸液チューブセットに一列に配置するだけでよい。更に、容量を標準化できるため、医療過誤(即ち、1回の注入で組成物の全量投与が可能であるが故の誤った用量の投与)の可能性が大幅に減少する。
【0025】
特定の態様に従って、放射線治療標的薬が抗体である場合、100mg以下、例えば60mg以下、例えば5~45mgの総タンパク質量、又は0.01~16.0mg/kg患者体重、例えば0.01~10.0mg/kg患者体重、又は0.05~5.0mg/kg患者体重、又は0.01~1.0mg/kg患者体重、又は0.01~0.6mg/kg患者体重、又は0.01mg/kg患者体重、0.015mg/kg患者体重、0.02mg/kg患者体重、又は0.04mg/kg患者体重、又は0.06mg/kg患者体重の総タンパク質量で提供し得る。
特定の態様に従って、放射免疫治療薬中の抗体の有効量は、10mg/m2未満、例えば約6mg/m2、又は3mg/m2、又は2mg/m2の総タンパク質量を含み得る。
【0026】
本明細書で使用する用語「対象」は、哺乳類、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ラット、及びマウスを非限定的に含む。対象がヒトの場合、対象の年齢は問わない。例えば、対象は、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、又は90歳以上であってよい。代替的に、対象は、50歳以下、45歳以下、40歳以下、35歳以下、30歳以下、25歳以下、又は20歳以下であってよい。がんを患うヒト対象の場合、対象は、例えば、新たに診断された、若しくは再燃した、及び/又は難治性である、若しくは寛解中であり得る。
本明細書で使用する、がんを患う対象を「治療すること」は、(i)がんの進行を遅らせる、止める、若しくは逆行させること、(ii)がんの症状の進行を遅らせる、止める、若しくは逆行させること、(iii)がんの再発の可能性を低下させること、及び/又は(iv)がんの症状が再発する可能性を低下させること、を非限定的に含むものとする。特定の好ましい態様に従って、がんを患う対象を治療することは、(i)がんの進行を、理想的にはがんを除去するところまで逆行させること、及び/又は(ii)がんの症状の進行を、理想的には症状を除去するところまで逆行させること、及び/又は(iii)再燃の可能性を低下させる、若しくは排除すること(即ち、理想的には、残っているがん細胞の破壊をもたらすコンソリデーション)を意味する。
【0027】
「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を指す。治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の反応を引き起こす治療薬又は治療薬の組み合わせの能力に応じて変化し得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標に、例えば、患者の健康の増進、腫瘍量の減少、腫瘍増殖の停止若しくは減速、及び/又は体内の他の場所へのがん細胞の転移がないがある。特定の態様に従って、「治療有効量」又は「有効量」は、特定の血液細胞(例えば、CD33発現細胞)、若しくはDR5発現細胞、若しくは5T4発現細胞、HER2若しくはHER3発現細胞における減少など、がん細胞の全体数を枯渇させ得る、若しくはがん細胞の全体数を減少させ得る、又は腫瘍の増殖を阻害し得る治療薬、即ち、放射線治療薬又はCD47遮断薬の量を指す。
「増殖を阻害する」は、治療薬又は治療薬の組み合わせと接触させた場合に、その治療薬又は治療薬の組み合わせがない場合の同じ細胞又は組織の増殖の減少又は遅延と比べて、in vitro又はin vivoでの悪性細胞又は組織(例えば、腫瘍)の増殖における測定可能な減少又は遅延を指す。In vitro又はin vivoでの悪性細胞又は組織の増殖の阻害は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。
【0028】
本願を通じて、様々な特許、特許出願、及び他の出版物を引用する。これらの特許、特許出願、及び他の出版物の開示は、参照によりその全体が本願に援用される。
別段の定義がない限り、又は提示する文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、ここに開示する本発明が属する技術分野において通常の技術者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似又は同等の方法及び材料を、本明細書に記載する実施又は試験において使用し得るが、好適な方法及び材料を以下に説明する。
【0029】
本発明の態様
本開示は、放射線治療薬とCD47遮断薬の投与によりがん患者を治療する方法に関する。放射線治療薬は、放射免疫治療薬などの放射性標識標的薬、即ち放射性標識抗体を含んでよく、CD47遮断薬は、CD47がCD47結合部分などのSIRPαに結合するのを防ぐ薬剤を含み得る。
CD47(当初の名称はインテグリン関連タンパク質(IAP))は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞表面タンパク質であり、体内で高度にグリコシル化し、ほぼ全ての細胞によって発現される。通常、RBC(インテグリンが発現しない)を除く殆どの細胞型でインテグリンavb3と関係しており、マクロファージ/食細胞に「don’t eat meシグナル」を伝達する自己指標である。即ち、細胞表面のCD47は、マクロファージ上の受容体であるSIRPαと相互作用し、正常で健康な細胞の貪食を阻害する。CD47は循環造血幹細胞や白血病細胞でアップレギュレートされ、貪食を回避する。またCD47は、自然免疫系による貪食を回避する手段として、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、非ホジキンリンパ腫、及び膀胱がんなどのいくつかのヒトがんで高度に発現する(Eladl,et al.(2020)Hematology&Oncology,13:96)。
【0030】
固形腫瘍と血液悪性腫瘍の両方のがんの治療用として開発されているCD47遮断薬には30種ほどある。CD47-SIRPα軸をブロックする戦略として、CD47かSIRPαのいずれかに対する生物製剤があり、多くが現在臨床試験中である。例として、マグロリマブ、レムゾパリマブ、及びAO-176がある。これらの分子はCD47とSIRPαの結合を阻害するが、例えば、IgG2若しくはIgG4に対するIgG1など、Fc機能を含むように、又は除去するように操作し得るため、これらの分子の機構的特性は異なることがある。例えば、特定のCD47遮断抗体は、赤血球に発現するCD47にも結合し、その結果、臨床では、関連する有害事象に貧血がある。
抗腫瘍反応は、抗CD47抗体AO-176などについては前臨床試験で、またヒト臨床試験でも観察されているが、抗CD47又は抗SIRPα単剤に対する全体的な反応はわずかである。これは恐らく、腫瘍細胞の効率的な貪食を可能にするには、例えば、don’t eat meシグナルの遮断に加えて、eat meシグナルの貪食作用促進反応のアップレギュレーションが必要だからであろう。正常な生理的条件下では、貪食促進シグナルと貪食抑制シグナルのバランスを取ることで細胞恒常性がある程度制御されている。CD47を遮断して標的細胞を貪食させるには、細胞が強力な貪食促進シグナルを出すことも必要であり、主な「eat me(私を食べて)」シグナルは、表面に発現したカルレティキュリンやホスファチジルセリンによって誘発される。従って、CD47-SIRPα軸を標的とする薬剤では、有意な臨床反応が得られる治療薬の併用が必要となる可能性がある。
【0031】
ここに開示する本発明は、がん及び血液悪性腫瘍に関与する特定の細胞型に対してなど、細胞恒常性のバランスを貪食促進シグナルに傾ける組成物及び方法に直接的に関するものである。このため、ここに開示する本発明は、「eat me」シグナルを増強する放射線治療薬と組み合わせた、「don’t eat me」シグナルを阻害、又はそれ以外の方法でダウンレギュレートする、CD47とSIRPα(食細胞における)との相互作用の遮断に関する。
一例として、抗CD47抗体マグロリマブは、最近、骨髄異形成症候群(MDS)又は急性骨髄性白血病(AML)を有する未治療の高リスク患者における有意な臨床反応が実証された。eat meシグナルのアップレギュレーションの要件が、これらの反応を起こすのに極めて重要とみられる。自然免疫反応と適応免疫反応の両方を誘発する能力によりCD47経路を遮断する薬剤にとって、放射線は理想的な併用療法である(de la Cruz-Merino,et al.(2014)Frontiers in Immunology,vol 5,article 102;Vermeer,et al.(2012)International Journal of Cancer,133:120)。
【0032】
放射線生物学的反応は、様々なT細胞株の活性化を引き起こし、適応免疫反応の「スイッチオン」を行う。放射線生物学的モデルからは、放射線照射後のDNA損傷は、腫瘍細胞の直接的な損傷の結果として、又はフリーラジカルの誘導により間接的に、様々な生物学的反応を誘発すると考えられる。大部分の細胞は、放射線照射後限られた時間しか生存できず、この間に分子シグナル(損傷関連分子パターン(DAMP))を発生し、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、及び細胞表面受容体の発現を制御する特定の遺伝子の過剰発現を誘導し、自然免疫系と適応免疫系の両方の炎症反応を活性化する。
放射線は、細胞にはIRで、ヒト患者には遠隔照射で照射される。この放射線は、損傷したがん細胞からのがん特異的ペプチド放出を増強し、樹状細胞による抗原の取り込みと提示を促進し、CD47を減少させ、カルレティキュリンを増加させ、更に腫瘍細胞におけるMHC-I発現をアップレギュレートして、T細胞が認識するがん細胞を増加させることがわかっている。更に、放射線誘発DNA損傷は、cGAS-STING経路を誘発してIFN遺伝子転写を活性化させる。
しかし、血液がんは播種性であり、外部照射による全身照射では正常な組織や臓器が放射線に曝露され、重大な毒性のリスクがあるため、血液がん患者にこの療法は選択できない。対照的に、選択的な腫瘍抗原を対象とした抗体放射性物質複合体(radioconjugate)、又は他の放射線治療薬を用いた標的照射では、標的薬剤によって腫瘍細胞に放射線の効力を効果的に送達できる。このような組み合わせは、大部分の正常細胞に重大な影響を与えることなく、標的細胞においてin vivoで腫瘍を除去できる。
【0033】
ここに開示する本発明の例示的な放射線治療薬は、CD33、DR5、5T4、HER2、及び/又はHER3に対する抗体放射性物質複合体(ARC)を含む。例示的なARCは、強力なα粒子放出放射性同位体アクチニウム225(225Ac)で標識した抗CD33、DR5、5T4、HER2、及び/又はHER3抗体のいずれかを含む。例えば、放射線治療薬が、225Acリンツズマブなどの、アクチニウム225で標識したCD33に対するモノクローナル抗体などである場合、放射線はCD33陽性腫瘍細胞に直接送達され、AML、MDS、及び多発性骨髄腫を含むヘム悪性腫瘍に対する治療として用いられる。ARCは、腫瘍細胞に放射線を直接送達することにより、特に播種性疾患を有する患者への投与において安全な方法で、外部照射法の強力な放射線生物効果に影響を及ぼす可能性がある。結果として、腫瘍細胞を本発明のARCに曝露すると、カルレティキュリンなどの「eat me」シグナルがアップレギュレートされ、がん細胞表面のCD47がダウンレギュレートされる。
従って、ARCとCD47-SIRPα遮断薬の併用は本発明の目的であり、この併用により、標的放射性核種弾頭の放射免疫生物学的効果の結果として、CD47-SIRPα遮断に対する貪食作用促進反応が増強される。
更に、標的ARCの放射線自体が、直接的な抗腫瘍効果に影響を及ぼすのに加えて、適応免疫反応を刺激できることから、これら2剤の併用は、治療薬の相乗効果をもたらし、治療結果と反応の持続性を共に向上させる。例えば、225Acリンツズマブは、再発性/難治性AMLを対象としたヒト試験で臨床活性と忍容性のエビデンスを実証し、標準治療との早期併用試験で有望な反応を示している。現在、AMLやMDSなどの骨髄疾患において、いくつかの抗CD47遮断薬が、単剤及び化学療法や標的療法との併用で試験されている。骨髄疾患における225AcリンツズマブとCD47遮断薬の併用は、これらの疾患における強力かつ潜在的に忍容性の高い治療戦略となる。またこの手法は、固形腫瘍や他の血液がんを含む他の腫瘍型にも拡張できる。
【0034】
CD33を標的とする放射線治療薬
本発明の例示的な放射線治療薬は、少なくとも、血液学的に関連する抗原を対象としたそうした標的薬を含む。そのような抗原の1つにCD33がある。CD33の過剰発現は、一般に、AML、CML、及びMDSを含む血液悪性腫瘍で見られる。AMLでは、患者の85~90%がCD33を発現し、これが、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg(商標))などの標的治療薬の開発につながっている。MDS患者の約96%が、骨髄芽球にCD33を発現する(Sanford et al.(2016)Leukemia&Lymphoma,vol.57(8):1965-1968)。別の試験では、MDS患者で、骨髄細胞1個当たり対照試料の約2倍のCD33分子が示された(Jilani,et al.(200)Am J Clin Pathol vol.118:560-566)。CD33抗原は、ほぼ全てのCMLに発現する。更に、60歳超の患者では、AMLの4年無病生存率がわずか10~15%と予後が不良である。AML患者の再発率がこのように高く、高齢患者では予後が不良であることから、CD33+細胞を優先的に標的とする新規の治療薬が緊急に必要とされている。
従って、本明細書に開示する方法は、CD47遮断薬と併用した、CD33に対する放射免疫治療薬の投与を含む。方法は、固形がん及び/若しくは血液疾患若しくは障害などの増殖性疾患を治療するために使用し得る、並びに/又は、CD33を発現する細胞の成長及び/若しくは増殖を阻害するために使用し得る、並びに/又は、CD33を発現若しくは過剰発現する細胞が関与する疾患若しくは障害を治療するためにも使用し得る。更に、方法により、再発性/難治性血液疾患又は障害を治療してよく、血液疾患又は障害は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性腫瘍から選択される。
【0035】
CD33は、シアル酸依存性細胞接着分子として機能し得る、67KdのI型膜貫通受容体糖タンパク質である。CD33は、長いN末端細胞外ドメイン、らせん膜貫通ドメイン、及び短いC末端細胞質ドメインを有する。CD33は、初期骨髄系前駆細胞及び骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病、AML)細胞に発現し、幹細胞には発現しない。CD33タンパク質のアミノ酸残基1~259は細胞外ドメインを、アミノ酸260~282はらせん膜貫通ドメインを、そしてアミノ酸283~364は細胞質ゾルドメイン(細胞内)を表す。CD33の細胞外ドメインには、少なくとも3つの既知の一塩基多型(「SNP」)(即ち、W22R、R69G、S128N)が存在する。
リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ、及びバダスツキシマブなどのCD33に対する抗体は、急性骨髄性白血病(AML)を含む血液悪性腫瘍や形質細胞障害の治療に対する有効性について、現在、またこれまでも臨床試験で評価が行われている。各抗体はCD33の細胞外領域の様々な部分に結合することがわかっており、それぞれ異なる臨床反応(例えば、抗腫瘍効果)を示す。ゲムツズマブはPfizerからMylotarg(商標)として、バダスツキシマブはSeattle GeneticsからVadastuximab talirineとして入手可能である。
【0036】
生きたヒト白血病骨髄芽細胞で免疫したマウスに由来する非複合型のM195を用いた試験では、飽和用量又は超飽和用量で投与した場合、ヒト患者における末梢芽球数の一時的な減少が示された。ヒト化抗体HuM195は、M195の相補性決定領域を、ヒトIgG1のフレームワークと骨格にグラフトして作成した。HuM195はM195よりも8倍高い結合親和力を有することがわかっており、M195とは異なり、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示した。しかし、HuM195は、急性前骨髄球性白血病(APL)において、微小残存病変を有する患者で使用した場合にある程度の活性を示す限られた研究があるものの、AMLにおける単剤での活性は、4週間にわたってCD33結合部位を完全に遮断する超飽和用量でもかなり低めであり、まれに完全又は部分寛解を達成するのは、腫瘍量が少ない患者に限られる。非常に高用量のリンツズマブを週1回5週間投与した後、臨床的有用性が認められた患者に隔週で投与するという小規模な試験が示唆するように、超飽和用量を繰り返し投与すれば、有効性が向上する可能性がある。
【0037】
現在利用可能なこれらの抗CD33抗体は、標識していない状態で、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及びアポトーシスによってCD33陽性細胞を排除するが、ここに開示する本発明は、放射性標識を含むこのような抗体(ARC)の使用を提供する。このため、本明細書に開示するように、標的細胞に放射線生物効果をもたらすのに必要な濃度ははるかに低い。従って、先行技術の方法における高濃度の非標識抗体に伴う好ましくない副作用は、低減又は排除される。
更に、抗CD33抗体がアクチニウム225などのα放出放射性核種で放射性標識されていると、放射線生物学的効果が高度に標的化される。225Acペイロードは高エネルギーのα粒子を腫瘍部位又はCD33発現細胞に直接送達するため、腫瘍細胞内にペイロードが大幅に蓄積せずとも、致死的なDNA二本鎖切断をもたらし、標的抗原の発現が少ない腫瘍に対しても治療効果を発揮する。経路が短く、高エネルギーα粒子の放出範囲は細胞径わずか数個分であるため、隣接する正常組織の損傷は限定的である。
【0038】
DR5を標的とする放射線治療薬
ヒトでは、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体1及び2(TRAIL-R1及びTRAIL-R2)としても知られる2つの機能的な細胞死受容体(DR4及びDR5)が発現し、これが、ウイルス感染細胞又は形質転換細胞の存在を免疫系に警告する免疫監視機構の一部として細胞表面でアップレギュレートされる。細胞死受容体に結合するリガンドであるTRAILは、T細胞やNK細胞などの免疫細胞上に発現し、DR4又はDR5と結合すると、細胞死受容体を三量体化し、p53とは独立したアポトーシスカスケードを引き起こす(Naoum,et el.(2017)Oncol.Rev.11,332)。DR4及びDR5は一部の正常組織に低レベルで発現しているのが認められるが(Spierings,et al.(2004)J.Histochem.Cytochem.,52,821-31)、腎臓がん、肺がん、急性骨髄性白血病(AML)、子宮頸がん、及び乳がんを含む多くの腫瘍組織の表面ではアップレギュレートされている。
細胞死受容体が実現性のある治療標的であることが特定された後、マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、及びLBY-135を含む数多くのDR4及びDR5標的抗体や組換えTRAIL(rTRAIL)タンパク質が開発されてきた。チガツズマブは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象とした第2相臨床試験で評価されており、原発腫瘍と転移腫瘍の両方の試料でDR5発現が確認され、DR5が、このがん種及び転移性疾患への治療介入を行うための好適な標的であることが示された(Forero-Torres,et al.(2015)Clin.Cancer Res.,21,2722-9)。
【0039】
乳がんなどの固形腫瘍を標的とする治療レジメンでは、放射線は通常、外科的切除後の原発腫瘍部位の治療にのみ、また転移の対症療法としてのみ使用される。原発腫瘍と転移腫瘍の両方を標的として放射線を送達し、かつ正常組織を放射線毒性から守る追加的又は代替的な手法は、本明細書に開示する、腫瘍関連抗原DR5を対象とする放射線治療薬の使用によるものである。
従って、使用し得る放射線治療薬は、DR5を標的とする、少なくとも抗体、ペプチド、及び/又は小分子を含む。例示的な放射線治療薬は、DR5に対する放射性標識モノクローナル抗体(例えば、225Ac-DR5)などの、DR5を標的とするARCを含む。DR5に対する例示的な抗体には、少なくとも、第一三共のチガツズマブ(CD-1008)、Amgenのコナツムマブ(AMG 655)、AstraZenecaのマパツムマブ、Creative Biolabs(米国ニューヨーク州シャーリー)のレクサツムマブ(ETR2-ST01としても知られる)、LBY-135、及びGenentechのドロジツマブがある。マウスでの試験では、代理マウス抗体TRA-8又はMD5-1を使用し得る。
【0040】
5T4を標的とする放射線治療薬
5T4としても知られる栄養膜糖タンパク質(TBPG)は、胎児の発達期には細胞上に発現するが、腫瘍以外の成体組織には発現しないことを意味する腫瘍胎児抗原に分類される糖タンパク質である(Southall,P.J.et al.(1990)Br.J.Cancer 61,89-95)。5T4は、肺がん、乳がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膵がん、及びその他多くを含む様々な腫瘍型に幅広く発現する(Stern,P.L.&Harrop,R.(2017)Cancer Immunol.Immunother.66,415-426)。放射性標識標的薬で5T4を標的とするための好ましい特徴に、内部移行率の高さ、腫瘍周辺における発現、及びがん幹細胞における発現がある。
抗体、ワクチン、及び細胞療法を含む、5T4発現を介した腫瘍に対する治療薬を開発する試みがいくつかなされてきた。非標識5T4標的抗体は有効な治療薬でなく(Boghaert,et al.(2008)Int.J.Oncol.32,221-234)、毒素を有する抗体薬物複合体(ADC)などの武装抗体が開発され、前臨床試験が行われている。臨床試験が実施されたのは、Pfizerが開発したアウリスタチンベースのADCのみであるが、客観的反応の報告はなく、アウリスタチン複合体に関連した毒性が観察された(Shapiro,G.I.et al.(2017)Invest.New Drugs 35,315-323)。
従って、ここに開示する本発明の放射線治療薬は、5T4を標的とする、少なくとも、抗体、ペプチド、及び/又は小分子を含む。例示的な放射線治療法は、5T4に対する放射性標識モノクローナル抗体(例えば、225Ac-5T4)などの、5T4を標的とするARCを含む。5T4に対する例示的な抗体には、少なくとも、Medimmune/AstraZenecaが開発したMED10641;Aptevo Therapeutics/Alligator Bioscienceが開発したALG.APV-527;Biotecnol/Chiome Bioscienceが開発したTb535;Guangdong Zhongsheng Pharmaceuticalsが開発したH6-DM5;及びZova Biotherapeuticsが開発したZV0508がある。
【0041】
HER3を標的とする放射線治療薬
ヒト上皮成長因子受容体3(ErbB3、HER3としても知られる)は、受容体型タンパク質チロシンキナーゼの上皮成長因子受容体(EGFR)サブファミリーに属する受容体型タンパク質チロシンキナーゼである。膜貫通型受容体HER3は、その中の二量体化ドメインを有する細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内タンパク質チロシンキナーゼ様ドメイン、及びC末端リン酸化ドメインからなる。他のHERファミリーメンバーと異なり、HER3のキナーゼドメインは非常に低い内在性キナーゼ活性を示す。
リガンドニューレグリン1又はニューレグリン2はHER3の細胞外ドメインに結合し、HER2などの他の二量体化パートナーとの二量体化を促進することによって受容体媒介シグナル伝達経路を活性化する。ヘテロ二量体化は、HER3の細胞内ドメインの活性化とトランスリン酸化をもたらし、シグナルの多様化だけでなくシグナル増幅の手段ともなっている。加えて、HER3ヘテロ二量体化は、リガンドの活性化がなくとも生じることがあり、これは一般にリガンド非依存性HER3活性化と呼ばれる。例えば、HER2が(例えば、乳がん、肺がん、卵巣がん、又は胃がんにおいて)遺伝子増幅の結果として高レベルで発現すると、自発的なHER2/HER3二量体が形成されることがある。このような場合、HER2/HER3は最も活性なErbBシグナル伝達二量体であると考えられ、高度に形質転換している。
乳がん、肺がん、胃腸がん、及び膵がんなどいくつかのがん種でHER3の増加が認められている。興味深いことに、HER2/HER3の発現と、非浸潤期から浸潤期への進行との相関関係が示されている(Alimandi et al.(1995)Oncogene 10:1813-1821;DeFazio et al.(2000)Cancer 87:487-498)。
従って、ここに開示する本発明の放射線治療薬は、HER3を標的とする、少なくとも、抗体、ペプチド、及び/又は小分子を含む。例示的な放射線治療法は、HER3に対する放射性標識モノクローナル抗体(例えば、225Ac-HER3)などの、HER3を標的とするARCを含む。HER3に対する例示的な抗体に、モノクローナル抗体パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、US-1402、AV-203、CDX-3379、及びGSK2849330、二重特異性抗体MM-111、MM-141/イスチラツマブ、MCLA-128、及びMEHD7945A/デュリゴツマブ、並びに本明細書に開示する他の抗HER3抗体がある。
【0042】
放射線治療薬(複数可)の投与レジメン
本明細書に開示する例示的な放射線治療薬は、CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3などの単一の抗原に対する抗体放射性物質複合体(ARC)を含むが、多特異的抗体も本発明の範囲内にある。従って、特定の態様に従って、放射線治療薬は、抗原(例えば、CD33、DR5、5T4、HER2、HER3、又は本明細書に開示するがん関連抗原標的のいずれか)の第1のエピトープ、及び同じ抗原の第2のエピトープを認識する、又は第1の抗原のエピトープ、及び、例えば、本明細書に開示するがん関連抗原のいずれかから選択される1つ若しくは複数の異なる抗原のエピトープを認識する、多特異的抗体などの多特異的標的薬を含み得る。従って、一態様では、ARCは、少なくとも、第1の抗原(例えば、CD33、DR5、5T4、HER2、HER3、又は本明細書に開示するがん関連抗原標的のいずれか)のエピトープに特異的に結合する第1の標的認識成分と、本明細書に開示するがん関連抗原のいずれかなどの、第1の抗原以外の抗原のエピトープに特異的に結合する第2の標的認識成分とを含む、二重特異性抗体などの多特異的抗体を含み得る。
【0043】
本発明の様々な態様では、がん関連抗原、又は放射性標識標的薬(ARCなど)が特異性を有する抗原は、例えば、以下のうち1つ又は複数を含み得る:CD33、DR5、5T4、HER2、HER3、メソセリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD45、CD171、CD138、CS-1、CLL-1、GD2、GD3、B細胞成熟抗原(BCMA)、Tn Ag、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、カルレティキュリン、ホスファチジルセリン、GRP78(BiP)、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、インターロイキン11受容体α(IL-l lRα)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体β(PDGFR-β)、SSEA-4、CD20、葉酸受容体α(FRα)、ERBB2(Her2/neu)、HER3、MUCl、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、DR5、5T4、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6/E7、MAGE Al、MAGEA3、MAGEA3/A6、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、プロステイン、サバイビン及びテロメラーゼ、PCTA-l/ガレクチン8、KRAS、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、GPA7、並びにIGLL1。
【0044】
第1の標的認識成分は、例えば、以下のうち1つを含み得る:第1の全長重鎖及び第1の全長軽鎖、第1のFabフラグメント、又は第1の一本鎖可変フラグメント(scFv)。第1の標的認識成分は、例えば、CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3に対する本明細書に挙げるモノクローナル抗体のいずれかに由来し得る。第2の標的認識成分は、例えば、以下のうち1つを含み得る:第2の全長重鎖及び第2の全長軽鎖、第2のFabフラグメント、又は第2の一本鎖可変フラグメント(scFv)。更に、第2の標的認識成分は、上記に挙げた追加の異なる抗原のいずれかに由来し得る。
代替的に、ここに開示する本発明は、少なくとも1つの第1の抗原(即ち、CD33、DR5、5T4、HER2、若しくはHER3)に対する第1のARCの投与と、第2のARCの投与とを含む方法を企図し、第2のARCは、第1の抗原の異なるエピトープに対するものであるか、又は、上記に挙げたリストから選択される抗原など、異なる抗原のエピトープ、若しくは、第1のARCの標的でないCD33、DR5、5T4、HER2、若しくはHER3に対する別の抗原のエピトープに対するものである。
【0045】
特定の態様に従って、本明細書に開示するARCのいずれかのような放射線治療薬の有効量は、最大耐量(MTD)を含む。
特定の態様に従って、2種以上のARCを投与する場合、ARCは同時に投与し得る。この場合、本発明の特定の態様に従って、ARCは単一の組成物として提供し得る。別法として、2種のARCを連続的に投与し得る。この場合、第1のARCは、第2のARCの前に、第2のARCの後に、又は第2のARCの前後に投与し得る。更に、第2のARCは、第1のARCの前に、第1のARCの後に、又は第1のARCの前後に投与し得る。
特定の態様に従って、ARCは、治療期間にわたって、7、10、12、14、20、24、28、35、及び42日に1回からなる群から選択される投与スケジュールに従って投与してよく、治療期間は、少なくとも2回の投与を含む。
特定の態様に従って、ARCは、治療期間の1日目と5、6、7、8、9、又は10日目、又は治療期間の1日目と8日目など、2回の投与を含む投与スケジュールに従って投与し得る。
【0046】
他の治療薬に加えての本発明のARCの投与は、局所治療と全身治療のいずれが望ましいかに応じて、及び治療する領域に応じて、いくつかの方法で提供し得る。投与は、気管内、鼻腔内、表皮及び経皮、経口、又は非経口であり得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、若しくは筋肉内注射若しくは注入;又は頭蓋内、例えば、髄腔内若しくは脳室内投与を含む。いくつかの実施形態では、標的薬(複数可)及び/又は他の治療薬を含む徐放製剤を投与し得る。様々な薬剤を、単一の治療として、又は、がんの1つ若しくは複数の症状を軽減若しくは改善させる、若しくは別の所望の効果を達成する期間にわたって、必要に応じて継続する一連の治療において投与し得る。
用量(複数可)は、例えば、対象の独自性、大きさ、及び条件に応じて、更に、投与する組成物の投与経路及び所望の効果に応じて異なり得る。治療薬の適切な用量は、発現に関する能力、又は調節すべき活性によって異なる。治療薬は、最初は比較的低用量で動物(例えば、ヒト)に投与し、その後、適切な反応が得られるまで用量を増加させることができる。
いずれかのARCなど、本明細書に開示する放射線治療薬は、1つ又は複数の追加的な治療薬と同時に、又は連続的に投与し得る。更に、2つ以上の追加的な治療薬が含まれる場合、追加的な治療薬は、互いに、及び/若しくは放射線治療薬と同時に、又は連続的に投与し得る。
【0047】
放射線治療薬を放射性標識する
放射線治療薬は、キレート剤分子のコンジュゲーションと放射性同位体のキレート化によって、α放射体(例えば、225Ac)などの放射性同位体で標識し得る。特定の態様に従って、放射線治療薬は、固有のコンジュゲーション部位であるグルタミン(即ち、Gln-295、Q295)を見いだす目的で、重鎖CH2ドメインのアスパラギン297(Asn-297、N297;Kabat番号)などの定常領域で脱グリコシル化されているものに対する抗体であってよく、それにより、二官能性キレート剤分子とのコンジュゲーションに利用できる。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、還元剤の使用などによりジスルフィド結合を減少させ、次いで、二官能性キレート剤分子とコンジュゲートさせる目的でデヒドロアラニンに変換させ得る抗体であり得る。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、還元剤を用いてジスルフィド結合を減少させ、次いで、アリール架橋により二官能性キレート剤分子とコンジュゲートさせた抗体であり得る。例えば、特定の態様に従って、3,5-ビス(ブロモメチル)ベンゼンなどのリンカー分子を用いて、抗体上の遊離スルフヒドリル基を架橋し得る。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、部位特異的標識に使用できる特定の既存のアミノ酸をシステイン(複数可)と置き換えた抗体であり得る。
特定の態様に従って、放射線治療薬は、好適な二官能性キレート剤の部位特異的コンジュゲーションによって放射性標識し得る。使用し得る例示的なキレート剤分子に、p-SCN-Bn-DOTA、NH2-DOTA、NH2-(CH21-20-DOTA、NH2-(PEG)1-20-DOTA、HS-DOTA、HS-(CH21-20-DOTA、HS-(PEG)1-20-DOTA、ジブロモ-S-(CH21-20-DOTA、ジブロモ-S-(PEG)1-20-DOTA、p-SCN-Bn-DOTP、NH2-DOTP、NH2-(CH21-20-DOTP、NH2-(PEG)1-20-DOTP、HS-DOTP、HS-(CH21-20-DOTP、HS-(PEG)1-20-DOTP、ジブロモ-S-(CH21-20-DOTP、及びジブロモ-S-(PEG)1-20-DOTPがある。
【0048】
キレート剤分子は、例えば、リンカー分子を介して標的薬と結合し得る。例示的なリンカー分子は以下を含む:
-CH2(C64)NH2又は-CH2(C64)NH-X-Y、
式中、Xは、
-R2-CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2-、
-R2-CH2CH2NHC(O)CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2-、
-R2-(CH2nCH2-、
-R2-CH2CH2NHC(O)(CH2nCH2-、
-R2-CH(C(O)R3)CH2-、式中、R3は-OH若しくは短鎖ペプチド(1~20個のアミノ酸)、
-R2-CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2C(O)O-、若しくは
-R2-CH2CH2NHC(O)CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CC(O)O-、
式中、nは1~20、及び
2は、-C(O)-若しくは-C(S)NH-;並びに
Yは、-NH2若しくは-SR4-、式中、R4は、-H若しくは-CH2-3,5-ビス(ブロモメチル)ベンゼン。
【0049】
タンパク質標的薬、例えば、抗体及び抗原結合性抗体フラグメント、並びにペプチド標的薬などの標的薬は、放射性核種のキレート化によって標的薬を放射性標識するためのキレート剤とコンジュゲートさせ得る。例えばリジン(複数可)を含むそのようなタンパク質又はペプチド標的薬は、二官能性剤S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸、別名「p-SCN-Bn-DOTA」(カタログ番号:B205;Macrocyclics,Inc.、米国テキサス州プレイノ)を用いて、部分をキレート化するDOTAに好都合にコンジュゲートさせ得る。p-SCN-Bn-DOTAは、米国特許第4,923,985号明細書に詳細に記載された多段階の有機合成によって合成し得る。DOTA部分による放射性核種のキレート化は、抗体とp-SCN-Bn-DOTAとの化学的コンジュゲーションの前に、及び/又は前記コンジュゲーションの後に実施し得る。
キレート剤とコンジュゲートした標的薬を例示的な放射性核種で標識する方法は、実施例1に記載する。
【0050】
CD47遮断
本明細書で使用する用語「CD47遮断薬」は(例えば、標的細胞上の)CD47の(例えば、食細胞上の)SIRPαへの結合を低下させる任意の薬剤を指す。好適な抗CD47試薬の非限定的な例に、SIRPαポリペプチド、抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチド、及び抗CD47抗体又は抗体フラグメントを非限定的に含むSIRPα試薬がある。特定の態様に従って、好適な抗CD47剤(例えば、抗CD47抗体、SIRPα試薬等)はCD47に特異的に結合し、CD47のSIRPαへの結合を低下させる。本発明の方法に使用する薬剤は、この薬剤がない場合と比較して、貪食作用を、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも140%、少なくとも160%、少なくとも180%、又は少なくとも200%)アップレギュレートする。同様に、SIRPαのチロシンリン酸化レベルを調べるin vitroアッセイでは、候補薬剤がない場合と比較して、リン酸化の少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%)の低下が示される。
【0051】
特定の態様に従って、SIRPα試薬は、認識できる親和性でCD47と結合するのに十分なSIRPαの部分(通常、シグナル配列と膜貫通ドメインの間にある)、又は結合活性を保持するこれらの断片を含み得る。好適なSIRPα試薬は、天然タンパク質SIRPαとCD47の間の相互作用を低減(例えば、遮断、阻止等)する。例えば、CD47遮断薬は、米国特許第9,969,789号明細書に開示されるもののいずれかであってよく、TTI-621及びTTI-622など、同特許に開示されたSIRPα-IgG Fc融合タンパク質を含むがこれらに限定されない。
特定の態様に従って、抗CD47剤は、CD47と特異的に結合する抗体(即ち、抗CD47抗体)を含み、ある細胞(例えば、感染細胞)上のCD47と、別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの相互作用を低減する。好適な抗体の非限定的な例に、クローンB6H12、5F9、8B6、及びC3(例えば、国際公開第2011/143624号に記載)がある。好適な抗CD47抗体は、そのような抗体の完全ヒト型、ヒト化型、又はキメラ型を含む。
【0052】
抗原性が低いため、ヒトでのin vivo用途で特に有用な例示的なヒト抗体又はヒト化抗体に、少なくとも、CD47に対するモノクローナル抗体、例えば、Gileadからマグロリマブとして入手可能なヒト化モノクローナル抗体、Hu5F9-G4(Sikic,et al.(2019)Journal of Clinical Oncology 37:946);I-Mab Biopharmaのレムゾパリマブ及びTJC4;Arch Oncology,IncのAO-176;Akesobio Australia PtyのAK117;Innovent BiologicsのIMC-002;Zia LabのZL-1201;Jiangsu HengRui Medincine Co.のSHR-1603;並びにSurface OncologyのSRF231がある。CD47とPD-L1の両方を標的とする、Innovent BiologicsのIBI-322などの二重特異性モノクローナル抗体も利用可能である。Alx OncologyのALX148;OSEのBI765063(OSE-172);並びに小分子阻害剤、例えばEpicentRxのRRx-001(1-ブロモアセチル-3,3-ジニトロアゼチジン)及びアゼルニジピン(CAS番号:123524-52-7)、又はこれらの薬学的に許容される塩などの、SIRPα-に対する抗体も使用し得る(表2も参照)。
AO-176は、CD47とSIRPαの相互作用を遮断することによる腫瘍貪食作用の誘発に加え、正常細胞(特に、結合が無視できるほどわずかであるRBC)よりも腫瘍細胞に優先的に結合し、正常細胞よりも腫瘍を直接死滅させることがわかっている。使用し得るその他のCD47遮断薬に、米国特許第9,969,789号明細書に開示されるもののいずれかがあり、共に腫瘍細胞上のCD47に優先的に結合すると同時にFc受容体の活性化にも関与するSIRPα-IgG Fc融合タンパク質のTTI-621とTTI-622(Trillium Therapeutics,Inc.)を非限定的に含む。
【0053】
使用し得るその他のCD47遮断薬は、Zhang他(2020),Frontiers in Immunology vol 11、記事18の表1、及び以下の表2に記載する。
【表2】
【0054】
抗CD47抗体又は他のタンパク質CD47阻害剤の治療有効用量は、約40μg/mL以上(例えば、約50μg/mL以上、約60μg/mL以上、約75μg/mL以上、約100μg/mL以上、約125μg/mL以上、又は約150μg/mL以上)の血清中タンパク質濃度を維持する用量であり得る。抗CD47抗体又はSIRPα融合タンパク質又は小分子などのCD47遮断薬の治療有効用量又は投与は、例えば、0.05~10mg/kg(薬剤質量/対象体重)の量、例えば、少なくとも0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg;又は10mg/kg、9.5mg/kg、9.0mg/kg、8.5mg/kg、8.0mg/kg、7.5mg/kg、7.0mg/kg、6.5mg/kg、6.0mg/kg、5.5mg/kg、5.0mg/kg、4.5mg/kg、4.0mg/kg、3.5mg/kg、3.0mg/kg、2.5mg/kg、2.0mg/kg、1.5mg/kg、1.0mg/kg以下、又はこれらの上限及び下限の任意の組み合わせを含む。本明細書に開示するものなどの小分子CD47遮断薬の治療有効用量も、例えば、0.01~1,000mg/kg、及びこの中のmg/kgの任意の部分範囲又は値、例えば、0.01~500mg/kg、又は0.05~500mg/kg、又は0.5~200mg/kg、又は0.5~150mg/kg、又は1.0~100mg/kg、又は10~50mg/kgを含む。
【0055】
特定の態様に従って、抗CD47剤は、SIRPαと特異的に結合し、ある細胞(例えば、感染細胞)上のCD47と、別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの相互作用を低減する可溶性CD47ポリペプチドである。好適な可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαの活性化が貪食作用を阻害するため、SIRPαによるシグナル伝達を活性化又は刺激することなく、SIRPαと結合できる。代わりに、好適な可溶性CD47ポリペプチドは、非感染細胞よりも感染細胞の優先的な貪食作用を促進する。正常な非標的細胞(正常細胞)に対して高レベルのCD47(例えば、感染細胞)を発現するこれらの細胞が、優先的に貪食されることになる。従って、好適な可溶性CD47ポリペプチドは、貪食作用を阻害するのに十分なシグナル伝達反応を活性化/刺激することなく、SIRPαと特異的に結合する。場合によっては、好適な可溶性CD47ポリペプチドは、(例えば、米国特許第20100239579号明細書に記載する)融合タンパク質であり得る。
【0056】
追加的な薬剤
放射線治療薬とCD47遮断薬の投与を含む本発明の方法は、1つ又は複数の追加的な治療薬の投与を更に含み得る。特定の態様に従って、追加的な薬剤(複数可)は、治療する疾患又は状態に関連があり得る。そのような投与は、放射線治療薬及びCD47遮断薬の投与と同時、別々、又は連続的であり得る。同時投与では、必要に応じて、複数の薬剤を1つの組成物として、又は別個の組成物として投与し得る。
例示的な追加的な治療薬には、少なくとも、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、又はこれらの組み合わせがある。更に、1つ又は複数の更なる治療薬は、抗骨髄腫薬、例えば、デキサメタゾン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びサリドマイドを含み得る。
本発明の特定の態様に従って、方法は、放射線治療薬及び/又はCD47遮断薬の投与後に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)などのサイトカインの投与を更に含み得る。GCSFは、例えば、放射性標識CD33標的薬の投与後7、8、9、10、又は11日目に投与し得る。
【0057】
例示的な化学療法剤に、以下のようなアルキル化剤を含む抗腫瘍薬があるがこれらに限定されない:ナイトロジェンマスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びセムスチン(メチルCCNU);テモダール(商標)(テモゾラミド)、エチレンイミン/メチルメラミン、例えば、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン;トリアジン、例えばダカルバジン(DTIC);葉酸類似体を含む代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート及びトリメトレキサート、ピリミジン類似体、例えば、5-フルオロウラシル(5FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2’-ジフルオロデオキシシチジン、プリン類似体、例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン(thioguamne)、アザチオプリン、T-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA);細胞分裂阻害剤を含む天然物、例えば、パクリタキセル、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビンを含むビンカアルカロイド、タキソテール、エストラムスチン、並びにリン酸エストラムスチン;ポドフィロトキシン(pipodophylotoxin)、例えばエトポシド及びテニポシド;抗生物質、例えば、アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、及びアクチノマイシン;酵素、例えばL-アスパラギナーゼ;生物学的反応調節剤、例えば、インターフェロンα、IL-2、G-CSF、及びGM-CSF;白金錯化合物を含む様々な薬剤、例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、及びカルボプラチン、アントラセンジオン、例えばミトキサントロン、置換尿素、例えばヒドロキシウレア、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、例えば、ミトタン(o、p-DDD)及びアミノグルテチミド;ホルモン、及び副腎皮質ホルモン拮抗薬を含む拮抗薬、例えばプレドニン及び等価物、デキサメタゾン、並びにアミノグルテチミド;ジェムザール(商標)(ゲムシタビン)、プロゲスチン、例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、及びリュープロリド;並びに、非ステロイド性抗アンドロゲン、例えばフルタミド。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、脱メチル化剤(例えば、ビダーザ(登録商標))、及び転写抑制解除(ATRA)療法薬を含むがこれらに限定されない、後成的機構を標的とする治療薬も本発明の抗体と組み合わせることができる。
【0058】
特定の態様に従って、化学療法剤は、タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサン及びオパキシオ(登録商標))、ドキソルビシン、スニチニブ(スーテント(登録商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、並びに他のマルチキナーゼ阻害剤、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、並びにビンブラスチンからなる群から選択し得る。一実施形態では、化学療法剤は、タキサン(例えば、タキソール(パクリタキセル)等)、ドセタキセル(タキソテール)、修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサン及びオパキシオ))からなる群から選択される。
ここに開示する本発明の態様に従って、化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、イリノテカン、又はオキサリプラチンから選択される。特定の態様に従って、化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びイリノテカン(FOLFIRI)である。他の態様に従って、化学療法剤は、5-フルオロウラシル及びオキサリプラチン(FOLFOX)である。
ここに開示する本発明の態様に従って、化学療法剤は、乳がん治療用のタキサン(例えば、ドセタキセル若しくはパクリタキセル)若しくは修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサン若しくはオパキシオ)、ドキソルビシン、カペシタビン、及び/又はベバシズマブ(アバスチン(登録商標));卵巣がん治療用のカルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン(若しくは修飾ドキソルビシン(カエリクス(Caelyx)(登録商標)若しくはドキシル(登録商標)))、又はトポテカン(ハイカムチン(登録商標))を含む治療薬;腎臓がん治療用のマルチキナーゼ阻害剤(MKI)(スーテント、ネクサバール、若しくはAMG706)及び/又はドキソルビシンを含む治療薬;扁平上皮がん治療用のオキサリプラチン、シスプラチン、及び/又は放射線照射を含む治療薬;並びに肺がん治療用のタキソール及び/又はカルボプラチンを含む治療薬から選択される。
【0059】
治療薬は、本技術分野で既知の任意の標準的な投与レジメンに従って投与し得る。例えば治療薬は、1~500mg/m2の範囲の濃度、つまり患者の表面積(m2)の関数として計算される量で投与し得る。例えば、化学療法薬パクリタキセルの例示的な用量は15~275mg/m2であってよく、ドセタキセルの例示的な用量は60~100mg/m2を含んでよく、エピチロンの例示的な用量は10~20mg/m2であってよく、及びカリチアマイシンの例示的な用量は1~10mg/m2であってよい。例示的な用量を本明細書に列挙するが、これらは参考用に提示しているにすぎず、ここに開示する本発明の薬剤の用量範囲を限定する意図はない。
【0060】
例示的な抗炎症剤は、ステロイド薬及びNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)から選択し得る。その他の抗炎症剤は、アスピリンなどのサリチル酸塩、Cox-2阻害剤(例えば、ロフェコキシブ及びセレコキシブ)、NSAIDs(例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラク、オキサプロジン、及びインドメタシン)、抗IL6R抗体、抗IL8抗体、抗IL15抗体、抗IL15R抗体、抗CD4抗体、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α4/β1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)、炎症性疾患治療用のCTLA4-1g、プレドニゾロン、プレドニゾン、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えば、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ピリミジン合成阻害剤(例えば、レフルノミド)、IL-1受容体遮断薬(例えば、アナキンラ)、TNF-α遮断薬(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、及びアダリムマブ)、並びに類似の薬剤から選択し得る。
【0061】
例示的な免疫抑制剤及び/又は免疫調節剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、副腎皮質ホルモン、例えばプレドニゾン、メトトレキサート、金塩類、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシンα、及び類似の薬剤を含む。
【0062】
ここに開示する本発明の特定の態様に従って、追加的な治療薬は抗骨髄腫薬を含み得る。例示的な抗骨髄腫薬に、デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びサリドマイド(これらのうちいくつかは上記に化学療法剤として示す)、抗炎症剤、又は免疫抑制剤がある。
ここに開示する本発明の特定の態様に従って、追加的な治療薬は、治療期間の1日目から300~600mg/日の用量で経口投与が開始され、CD33標的薬の後に少なくとも7日間継続して投与されるアロプリノールを含み得る。絶対好中球数が500/μL未満の患者には、予防的な抗生物質及び抗真菌療薬を含み得る。注入関連反応を軽減するため、CD33標的薬の注入投与前に鎮痛剤及び抗ヒスタミン剤を投与してもよい。
【0063】
追加的な治療薬は、本技術分野で既知の任意の標準的な投与レジメンに従って投与し得る。例えば治療薬は、1~500mg/m2の範囲の濃度、つまり患者の表面積(m2)の関数として計算される量で投与し得る。例えば、パクリタキセルの例示的な用量は15~275mg/m2であってよく、ドセタキセルの例示的な用量は60~100mg/m2であってよく、エピチロンの例示的な用量は10~20mg/m2であってよく、及びカリチアマイシンの例示的な用量は1~10mg/m2であってよい。例示的な用量を本明細書に列挙するが、これらは参考用に提示しているにすぎず、ここに開示する本発明の薬剤の用量範囲を限定する意図はない。
【0064】
非限定的に、本開示は以下の態様も提供する。
態様1:ヒトなどの哺乳類対象におけるがんを治療するための治療用組成物であって、本明細書に開示するもののいずれかのような、予め選択したがん関連抗原を標的とする放射性標識抗原標的薬、例えば、本明細書に開示するもののいずれかのような、予め選択したがん関連抗原を標的とする放射性標識抗体などの放射線治療薬;及びCD47遮断薬を含む組成物。
態様2:放射線治療薬は、放射性標識CD33、DR5、5T4、HER2、若しくはHER3標的薬、例えば、放射性標識抗CD33、抗DR5、抗5T4、抗HER2、若しくは抗HER3モノクローナル抗体、又は前述のモノクローナル抗体のいずれかの放射性標識抗原結合性フラグメントを含む、態様1に記載の組成物。
態様3:放射線治療薬は、131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pb、若しくは103Pd、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識を含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様4:放射線治療薬は、放射性標識リンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はこれらの組み合わせから選択されるCD33標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177標識リンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はこれらの組み合わせを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様5:放射線治療薬は、放射性標識マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、LBY-135、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識DR5標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様6:放射線治療薬は、放射性標識MED10641、ALG.APV-527、Tb535、H6-DM5、ZV0508、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識5T4標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様7:放射線治療薬は、放射性標識パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、AV-203、GSK2849330、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識HER3標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様8:アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~10μCi/kg対象体重の放射線量、及び10mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様9:アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様10:CD47遮断薬は、CD47がSIRPαに結合するのを防ぐモノクローナル抗体を含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様11:CD47遮断薬は、マグロリマブ、レムゾパリマブ、AO-176、TTI-621、TTI-622、RRx-001、アゼルニジピン、本明細書に開示する任意のCD47遮断薬、又はこれらの任意の組み合わせを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様12:CD47遮断薬の有効量は0.05~5mg/kg(薬剤質量/体重)である、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様13:放射線治療薬は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を有する225Acリンツズマブを含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様14:がんは固形腫瘍がんである、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様15:がんは血液がんである、態様1~14のうちいずれか1つに記載の組成物。
態様16:血液がんは骨髄性悪性腫瘍である、態様15に記載の組成物。
態様17:血液がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性腫瘍を含む、態様15に記載の組成物。
態様18:血液がんは再発性/難治性急性骨髄性白血病である、態様14~17のうちいずれか1つに記載の組成物。
態様19:がんは、CD33陽性、DR5陽性、5T4陽性、HER2又はHER3陽性がんである、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様20:CD33陽性がんは、CD33を発現する細胞を含み、CD33発現細胞は、骨髄芽球細胞又は悪性形質細胞を含む、態様19に記載の組成物。
態様21:少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む、前述の態様のいずれかに記載の組成物。
態様22:ヒトなどの哺乳類対象におけるがんを治療する方法であって、態様1~20のうちいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む方法。
態様23:ヒトなどの哺乳類対象におけるがんを治療する方法であって、(i)本明細書に開示するもののいずれかのような、予め選択したがん関連抗原を標的とする放射性標識抗原標的薬、例えば、本明細書に開示するもののいずれかのような、予め選択したがん関連抗原を標的とする放射性標識抗体;及び(ii)CD47遮断薬を投与することを含む方法。
態様24:放射線治療薬は、
抗CD33モノクローナル抗体若しくはこれらのCD33結合フラグメントを含み、がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性腫瘍のうち1つ若しくは複数から選択される血液疾患若しくは障害である;又は
抗5T4モノクローナル抗体若しくはこれらの5T4結合フラグメントを含み、がんは、結腸直腸がん、胃がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、膵がん、腎臓がん、若しくはこれらの任意の組み合わせである;又は
抗DR5モノクローナル抗体又はこれらのDR5結合フラグメントを含み、がんは、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、若しくは前立腺がんである;
抗HER2モノクローナル抗体又はこれらのHER2結合フラグメントを含み、がんは、膵がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、若しくは卵巣がんである;又は
抗HER3モノクローナル抗体又はこれらのHER3結合フラグメントを含み、がんは、膵がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、若しくは卵巣がんである、
態様22又は23に従った方法。
態様25:放射線治療薬は、放射性標識CD33、DR5、5T4、HER2、又はHER3標的薬、例えば、放射性標識抗CD33、抗DR5、抗5T4、抗HER2、又は抗HER3モノクローナル抗体を含む、態様22又は23に従った方法。
態様26:放射線治療薬は、131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pb、若しくは103Pd、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識を含む、態様22~25のうちいずれか1つに従った方法。
態様27:放射線治療薬は、放射性標識リンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はこれらの組み合わせから選択されるCD33標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177標識リンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はこれらの組み合わせを含む、態様22~26のうちいずれか1つに従った方法。
態様28:放射線治療薬は、放射性標識マパツムマブ、コナツムマブ、レクサツムマブ、チガツズマブ、ドロジツマブ、LBY-135、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識DR5標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様22~27のうちいずれか1つに従った方法。
態様29:放射線治療薬は、放射性標識MED10641、ALG.APV-527、Tb535、H6-DM5、ZV0508、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識5T4標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様22~28のうちいずれか1つに従った方法。
態様30:放射線治療薬は、放射性標識パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、AV-203、GSK2849330、又はこれらの組み合わせから選択される放射性標識HER3標的薬、例えば、アクチニウム225若しくはルテチウム177で放射性標識した前述の標的薬のいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様22~29のうちいずれか1つに従った方法。
態様31:アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~10μCi/kg対象体重の放射線量、及び10mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、態様22~29のうちいずれか1つに従った方法。
態様32:アクチニウム225標識放射線治療薬の有効量は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を含む、態様31に従った方法。
態様33:CD47遮断薬は、CD47がSIRPαに結合するのを防ぐモノクローナル抗体を含む、態様22~30のうちいずれか1つに従った方法。
態様34:CD47遮断薬は、マグロリマブ、レムゾパリマブ、AO-176、TTI-621、TTI-622、RRx-001、アゼルニジピン、本明細書に開示する任意のCD47遮断薬、又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様22~30のうちいずれか1つに従った方法。
態様35:CD47遮断薬の有効量は0.05~5mg/kg(薬剤質量/体重)である、態様22~34のうちいずれか1つに従った方法。
態様36:放射線治療薬は、0.1~2μCi/kg対象体重の放射線量、及び5mg/kg対象体重未満のタンパク質投与量を有する225Acリンツズマブを含む、態様22~35のうちいずれか1つに従った方法。
態様37:がんは固形腫瘍がんである、態様22~36のうちいずれか1つに従った方法。
態様38:がんは血液がんである、態様22~37のうちいずれか1つに従った方法。
態様39:血液がんは骨髄性悪性腫瘍である、態様38に従った方法。
態様40:血液がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性腫瘍を含む、態様38に従った方法。
態様41:血液がんは再発性/難治性急性骨髄性白血病である、態様38~40のうちいずれか1つに従った組成物。
態様42:がんは、CD33陽性、DR5陽性、5T4陽性、HER2又はHER3陽性がんである、態様22~41のうちいずれか1つに従った組成物。
態様43:がんは、CD33陽性骨髄芽球細胞及びCD33陽性悪性形質細胞のうちの1つ又は両方を含むCD33陽性がんを含む、態様42に従った組成物。
態様44:ヒト患者などの哺乳類対象において、例えば本明細書に開示するもののいずれかのようなCD47遮断薬と組み合わせて、がん又は前がん性増殖性疾患、例えば、本明細書に開示するもののいずれかのような血液悪性腫瘍又は固形がんを治療するための医薬品の調製における、本明細書に開示するもののいずれかのような、がん関連抗原を標的とする治療上活性な放射性標識標的薬の使用。
態様45:ヒト患者などの哺乳類対象において、例えば本明細書に開示するもののいずれかのような、がん関連抗原を標的とする治療上活性な放射性標識標的薬と組み合わせて、がん又は前がん性増殖性疾患、例えば、本明細書に開示するもののいずれかのような血液悪性腫瘍又は固形がんを治療するための医薬品の調製における、本明細書に開示するもののいずれかのようなCD47遮断薬/遮断剤の使用。
態様46:ヒト患者などの哺乳類対象において、がん又は前がん性増殖性疾患、例えば、本明細書に開示するもののいずれかのような血液悪性腫瘍又は固形がんを治療するための、本明細書に開示するもののいずれかのようなCD47遮断薬と組み合わせた、本明細書に開示するもののいずれかのような、がん関連抗原を標的とする治療上活性な放射性標識標的薬の使用。
態様47:放射性標識標的薬は、キレート剤に化学的にコンジュゲートされた標的薬を含み、キレート剤は放射性核種をキレート化する、前述の態様のいずれか。
態様48:キレート剤はDOTA又はDOTA誘導体を含む、前述の態様47。
態様49:放射性核種は、177Lu、225Ac、131I、又は90Yである、前述の態様48。
【0065】
有利には、CD47遮断薬は、標的がん細胞(又は標的前がん性病変細胞)に対する併用治療の致死率を実質的に低下させずとも、放射性標識薬剤(並びに任意の外部放射線及び/又は小線源療法)によって送達する放射線量に対する哺乳類対象の全体的な忍容性及び生存率を高め、それにより、CD47遮断薬なしで可能であったよりも高く効果的な放射線量、及び/又は高頻度の投与、及び/又は長い治療過程が可能となる。
【実施例
【0066】
実施例1:放射性標識標的薬の作製
抗体などの放射免疫治療薬は、例えば、米国特許第10,420,851号明細書、国際公開第2017/155937号、及び2019年12月9日に出願された、「Compositions and methods for preparation of site-specific radioconjugates」という名称の米国仮特許出願第63/042,651号に記載される手順に従って、111インジウム(111In)又はアクチニウム225(225Ac)で標識し得る。
【0067】
放射性標識:抗体は、リンカー、例えば、前述の特許出願に記載のリンカーのいずれかにコンジュゲートさせ得る。例示的なリンカーに、少なくともドデカン四酢酸(DOTA)があり、コンジュゲーション反応の目的は、3:1~5:1のDOTA:抗体比を達成することである。次いで、放射性核種111In又は225Acを用いたキレート化を実施し、得られた111In又は225Ac標識抗CD33抗体の有効性及び純度をHPLC及びiTLCで決定し得る。
225Acの例示的な標識反応は以下の通りである:反応では、15μLの0.15M NH4OAc緩衝液(pH=6.5)及び2μL(10μg)のDOTA-抗CD33(5mg/mL)をエッペンドルフ反応菅で混合し、続いて、0.05M HCl中の4μL(10μCi)の225Acを添加し得る。管の内容物はピペットの先端で混合し、反応混合物は、37℃で90分間、100rpmで振とうしながらインキュベートし得る。インキュベーション時間の終わりに、3μLの1mM DTPA溶液を反応混合物に添加し、室温で20分間インキュベートして未反応225Acを結合させ、225Ac-DTPA複合体にし得る。10cmのシリカゲルストリップ及び10mM EDTA/生理食塩水移動相を用いた即時薄層クロマトグラフィーを使用し、225Ac標識抗CD33(225Ac-DOTA-抗CD33)を遊離225Ac(225Ac-DTPA)から分離することにより、225Ac-DOTA-抗CD33の放射化学的純度を決定し得る。このシステムでは、放射性標識抗体は適用部位に留まり、225Ac-DTPAは溶媒先端と一緒に移動する。ストリップを半分に切り、マルチチャンネル分析器が装備されたガンマカウンターで、225Ac用のチャンネル72~110を用いて計数し、その娘核を除外し得る。
【0068】
精製:例示的な放射性標識標的薬、例えば225Ac-DOTA-抗体は、1%HSAでプレブロックしたPD10カラム、又は分画分子量が50kDaのVivaspin遠心濃縮器で、1.5mLで2回洗浄、3分/回転で精製し得る。精製後の225Ac-DOTA-抗体のHPLC分析は、フロースルーWaters UV及びBioscan放射線検出器が装備されたWaters HPLCシステムを使用し、pH=7.4、流量1mL/分のPBSで溶出するTSK3000SW XLカラムを用いて実施し得る。
【0069】
実施例2:CD33ARCの特異性及び安定性
アクチニウム225(Ac225)とコンジュゲートしたリンツズマブを、CD33を発現する特定の細胞型に対する細胞毒性について試験した。例えば、HL60(白血病細胞)の懸濁液を様々な用量の放射性標識リンツズマブ(リンツズマブAc225)と共にインキュベートしたところ、細胞の50%が死滅する用量(LD50)が、細胞懸濁液1mL当たり8pCiであることがわかった。
放射性標識リンツズマブと、非ヒト霊長類及びヒト凍結組織の末梢血及び骨髄細胞との反応性を評価する試験では、放射性標識リンツズマブは単核細胞のみに反応性を示し、特異性が実証された。更に、抗体上の放射性標識の安定性を確認する試験では、10匹の正常マウス(Taconic(ニューヨークジャーマンタウン)の8週齢のBalb/c雌マウス)の尾部に300nCiの放射性標識リンツズマブ(0.12mL中)を注射した。5日間にわたって採取した血清試料では、アクチニウム225はリンツズマブに結合したままであり、in vivoでの抗体における放射性標識の安定性が実証された。
放射性標識リンツズマブの単回投与の最大耐量(MTD)は、3μCi/kg患者体重であると決定された。分割用量(例えば、4~7日の間隔で等量を2回投与)として、MTDは、投与1回当たり2μCi/kg又は合計4μCi/kgであると決定された。このデータは、再発性/難治性AMLを有する患者への投与によって決定した。患者21人に、放射性標識リンツズマブを0.5~4μCi/kgの漸増用量で投与した。MTDは、各用量レベルで観察された有害作用の重症度に基づいて決定した。抗白血病効果には、評価可能な患者19人中13人における末梢血芽球の消失が含まれた。治療4週間後に評価可能であった患者18人中12人で骨髄芽球が減少し、うち9人が50%以上の減少を示した。それぞれ1μCi/kg、3μCi/kg、及び4μCi/kgで治療を受けた患者3人で、治療後に芽球が5%以下となった。
【0070】
実施例3:CD33ARCのヒト最大耐量及び有効性
各サイクルにおける顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)支持療法に先立つリンツズマブAc225の分割用量の最大耐量(MTD)は、約42日の投与サイクルを用いて決定し得る。サイクルは、まず1日目にリンツズマブAc225の分割用量を投与した後、9日目にGCSFを投与し、絶対好中球数(ANC)が1,000を超える(5~10日以内に起こることが予想される)まで適切な投薬指示に従ってGCSFを継続する。14、21、28、35、及び42日目に末梢血でパラプロテイン負荷について評価し得る。42日目に骨髄吸引を行い、形質細胞の浸潤を評価する。42日目の反応が部分奏功以上ながら完全奏功には至らず、かつ患者が他の点でなおも適格である場合、第1のサイクルの1日目から60日後以降に同じ用量レベルで新たなサイクルとして再投与する。用量制限毒性が認められない場合、患者に対するリンツズマブAc225の累積投与量が4μCi/kgになるまで、上記の手順を用いてサイクルを継続する。
【0071】
実施例4:5T4標的薬に対する同系マウスモデル
同系マウスモデルを用いて、正常組織に発現する5T4とも抗体が反応できるモデルで、5T4の標的化を探索し得る。このようなモデルでは、放射性同位体の弾頭でこのタンパク質を標的とすることによって生じ得るあらゆる毒性を観察する機会が得られる。
Woods(Woods,A.M.et al.(2002)Biochem.J.366,353-365)は、マウス5T4に対し反応性である抗体(9A7)を発見し、これを用いて5T4発現(表3(Woods,2002より引用)参照)についてマウス腫瘍株をスクリーニングしたことを報告している。5T4発現に対して陽性であると報告された細胞株のうち、EMT6乳腺がん細胞株は高レベルの5T4を発現し、市販の供給源から容易に購入して実験を実施できる。更に、この細胞株は放射線に対し感受性があることが報告されている。B3F1を含む特定のマウス5T4反応性抗体が入手可能である(Southgate,T.D.et al.(2010)PLoS One 5,e9982)。この抗体は、ELISA、FACS、及びウェスタンブロットアッセイにおいて5T4への強力な結合を示し、非臨床PoC試験における標的薬として好適である。そのため、5T4を発現する腫瘍細胞株EMT6を標的とするために、B3F1抗マウス5T4抗体を放射性標識に利用する。
【0072】
実験計画:例示的な実験計画は、5T4抗体B3F1とキレート剤DOTAとのコンジュゲーションと、それに続く111In又は225Acでの放射性標識を含む。放射性標識抗体の比放射能、標識効率、及び安定性は、実施例1及び2に記載のように決定できる。
【表3】

In vitro細胞死滅アッセイは、225Ac放射性標識B3F1抗体を用いて実施し得る。EMT6細胞は、5T4を発現する細胞の陽性対照として使用してよく、225Ac標識DOTA-B3F1及び非標識DOTA-B3F1の希釈系列に1時間曝露する。細胞生存率は前述のXTTアッセイを用いて測定できる。必要に応じて、LL/2細胞などの5T4を発現しない細胞株(表3参照、出所:Woods,2002)を陰性対照として使用できる。
表3は、マウス細胞株のパネルに対する9A7抗体の蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析を示し、各株の細胞105個を9A7で染色した。最後のカラムは、細胞株のパネルに対する9A7の相対的な反応性を示し、乳腺細胞株EMT6は反応性が高く、肺がん細胞株LL/2は非反応性である。
【0073】
生体内分布試験:腫瘍のないBALB/cマウスを用いて実施した生体内分布試験の1回目では、111In標識B3F1抗体を用いて抗体の正常組織への結合を評価し、かつ各臓器に対する放射線吸収線量を計算できる。生体内分布試験の2回目は、EMT6腫瘍を有するBALB/cマウスを用いて実施し、5T4を発現する腫瘍に対する抗体の特異的な標的指向性を評価し、かつ腫瘍及びその他の臓器に対する放射線吸収線量を計算できる。
生体内分布試験に続いて、腫瘍を有するマウスを、225Ac-DOTA-B3F1の単回用量を漸増させて治療し、抗体の最大耐量(MTD)を確立することができる。用量の範囲は50~400nCiであり得る。抗体の忍容性は、体重、挙動、及び血液化学/血球数の測定により決定できる。
【0074】
実施例5:5T4標的薬に対する異種移植マウスモデル
異種移植マウスモデルを利用し、標的治療薬がヒト由来がん性細胞に対する効果を有するかを決定し得る。しかし、標的薬がマウス標的と交差反応しない限り、主に異種移植細胞に対する薬剤の細胞死滅能力に関する情報しか得られず、on-target/off-tumor効果に関する情報が得られない可能性がある。
5T4を発現するがんに対し、多数の抗ヒト5T4治療薬が開発されており、その一部を表1に記載する。抗5T4抗体配列の最初の記載は、Hole及びStern(Hole,1988)によるものであった。前臨床試験などで、ここに開示する本発明による5T4標的薬として使用する抗体は、Hole及びSternが提供する配列を用いて作製し得る。代替的に、使用し得る他の5T4抗体に、以下の抗体又は以下の抗体部分がある:Medimmune/AstraZeneca(MED10641)、Aptevo Therapeutics/Alligator Bioscience(ALG.APV-527)、Biotecnol/Chiome Bioscience(Tb535)、Guangdong Zhongsheng Pharmaceuticals(H6-DM5)、及びZova Biotherapeutics(ZV0508)。二重特異性のある、又は抗体薬物複合体として入手可能なその他の抗体は表1に記載しており、その他の可能な5T4標的薬、即ち、5T4特異結合部分をもたらす。
Medimmune/Astrazenecaの抗体は組換えシステインを含み、これは、2019年12月9日に出願された米国仮特許第62/945,383号、及び2020年11月30日に出願された米国仮特許第63/119,093号(名称はいずれも「Compositions and methods for preparation of site-specific radioconjugates」であり、これらの文献は参照により本明細書に援用される)に記載されるように、DOTAの部位特異的コンジュゲーション、及びそれに続く放射性同位体を用いたキレート化に使用できる。
【0075】
腫瘍線量
4T1腫瘍を有するマウスで生体内分布試験を実施して、DR5標的ARCの正常組織分布及び線量測定プロファイルを確立し、腫瘍に対する放射性標識MD5-1抗体の選択的取り込みを確認し得る。111Inは、225Acと放射化学的特性が類似しているため、並びに225Acでは発生しないこの同位体からのγ放出により、111In放射性標識薬剤のin vivoでの検出の感度及び信頼性が向上するため、225Acの代用としてここでも使用される。それぞれ雌マウス(6~8週齢)4匹からなる5つの群に111In標識MD5-1を注射し、1群のマウスを、4、24、48、96、及び168時間の各時点で安楽死させる。その後、臓器(肝臓、肺、腎臓、脾臓、脳、胃、筋肉、及び腫瘍)を摘出し、γ線数を測定し得る。これらの測定値は、腫瘍に送達された線量を含む、各臓器への放射線の吸収線量を決定する線量測定計算に使用する。
【0076】
実施例7:225Ac-MD5-1のMTD及び単剤活性を決定する
皮下4T1腫瘍(約150~200mm3)が定着した各群6匹のマウスからなる6つの群に、非標識MD5-1(500ng)又は用量漸増で225Ac-MD5-1(50、100、200、400、500ナノキュリー(nCi)、500ng総抗体)を投与し、最大耐量(MTD)を特定する。MTDは、体重が20%超減少することなく、治療した全マウスが生存できる最高投与放射能と定義される。体重及び腫瘍の測定は、動物がInvicro施設に到着した時点で開始し、6週間の試験期間にわたって週2回実施し得る。血液生化学検査(アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、血中尿素窒素、カルシウム、リン、総タンパク質、アルブミン、グロブリン、アルブミン/グロブリン比、アミラーゼ、グルコース、総コレステロール、リパーゼ)及び全血球数(CBC)は、ベースライン、3週目、及び最終時点で試験中の動物で評価する。人道的安楽死基準には、20%超の体重減少、又は腹水による10%超の体重増加を含む。疼痛又は苦痛の徴候も考慮し得る。
動物の健康の測定及び観察は、MTDを決定するのに使用できる。腫瘍量及び生存の観察を記録し、毒性/忍容性プロファイルと併せて検討して、225Ac-MD5-1のMTDを決定し得る。この実験段階では、腫瘍測定により、予備的な抗腫瘍効果を判定し、以前に報告されているように(Demaria,S.et al.(2005)Clin.Cancer Res.11,728-34)、肺転移の代理として生存率を使用できる。
【0077】
実施例8:ヒト固形腫瘍がんモデルにおけるHER2標的ARCとCD47遮断抗体の併用
これらの試験では、ヒトHER2を発現する卵巣がん細胞株SK-OV3に対する、HER2特異的標的ARCとCD47遮断抗体を併用した効果を調べた。
抗HER2抗体トラスツズマブは、p-SCN-DOTAとコンジュゲートさせ、225Ac又は177Luで放射性標識した。両方の放射性物質複合体の生物活性は、ヒト組換えHER2及び受容体陽性腫瘍細胞株を用いて評価した。放射性物質複合体の細胞毒性効果、及びカルレティキュリン(CRT)をアップレギュレートする能力は、それぞれSK-OV3細胞でXTTアッセイ及びフローサイトメトリーを用いて評価した。抗HER2ARCとCD47抗体の併用の効果をin vitroで評価するために、フローサイトメトリーによるマクロファージ貪食アッセイを作成した。
【0078】
結果:トラスツズマブARCは自然抗体と類似の結合特性を有し、特異的な細胞毒性を示した。重要なことに、HER2発現細胞において、ARC介在性のCRTのアップレギュレーションが実証された。更に、HER2標的ARCとCD47遮断抗体の併用は、貪食作用に対する各剤単独の効果と比較して、最大試験量未満の放射線量で、in vitroでのマクロファージによる腫瘍細胞の貪食作用を増強した。
これらの知見は、ARC介在性のCRTのアップレギュレーションが、貪食促進シグナル及び抗CD47作用機序を増強し、それにより抗腫瘍活性を高めることを示唆している。
CD47遮断薬と併用したARC治療薬の腫瘍増殖に対する効果を調べる腫瘍異種移植試験も実施した。
図1は、SK-OV3ヒト卵巣がん細胞株を用いたNGSマウス異種移植モデルにおける、ビヒクルのみ(対照)、マグロリマブ単独(10mg/kg)、225Acトラスツズマブ単独(0.025μCi/動物)、及びマグロリマブ(10mg/kg)と225Acトラスツズマブ(0.025μCi/動物)の組み合わせの腫瘍増殖に対する効果を比較したグラフである。各コホートは動物8匹からなっていた。
図2は、SK-OV3ヒト卵巣がん細胞株を用いたNGSマウス異種移植モデルにおける、ビヒクルのみ(対照)、マグロリマブ単独(10mg/kg)、177Luトラスツズマブ単独(25μCi/動物)、及びマグロリマブ(10mg/kg)と177Luトラスツズマブ(25μCi/動物)の組み合わせの腫瘍増殖に対する効果を比較したグラフである。各コホートは動物8匹からなっていた。
【0079】
実施例9:AMLモデルにおけるCD33標的ARCとCD47遮断抗体の併用
これらの試験では、225Ac又はルテチウム177(177Lu)で武装した抗CD33ARCとCD47遮断抗体とを併用した効果を、in vitroヒトAMLモデル細胞株U937及びHL-60を用いて調べた。
抗CD33抗体リンツズマブは、p-SCN-DOTAとコンジュゲートさせ、225Ac又は177Luで放射性標識した。両方の放射性物質複合体の生物活性は、ヒト組換えCD33、並びに受容体陽性腫瘍細胞株U937及びHL-60を用いて評価した。放射性物質複合体の細胞毒性効果、及びカルレティキュリン(CRT)をアップレギュレートする能力は、それぞれCD33発現細胞株でXTTアッセイ及びフローサイトメトリーを用いて評価した。抗CD33ARCとCD47抗体の併用治療をin vitroで評価するために、フローサイトメトリーによるマクロファージ貪食アッセイを使用した。
【0080】
結果:抗CD33ARCは自然抗体と類似の結合特性を有し、特異的な細胞毒性を示した。CD33を発現するAML細胞の両方で、細胞表面CRTのARC介在性アップレギュレーションが実証された。更に、CD33標的ARCとCD47遮断抗体のin vitroでの併用は、貪食作用に対する各剤単独の効果と比較して、最大試験量未満の放射線量で、AML細胞株の両方について、マクロファージによる貪食作用を増強した。
これらの知見は、CD33標的ARCの放射線が、CRTのアップレギュレーションを引き起こし、それにより、抗CD47遮断抗体との併用において、貪食促進性自然免疫応答を増強するという新規の相乗機序を裏付けている。
【0081】
実施例10:ヒトBxPC3膵がん細胞における貪食作用に対するHER3標的ARCとCD47遮断抗体の併用効果
図3は、BxPC3ヒト膵がん細胞株(腺がん)細胞のヒトマクロファージによる貪食作用に対する以下のものの効果を比較したグラフである:非放射性標識抗ヒトHER3 IgGモノクローナル抗体AT-02単独(「HER3 mAb」)、抗ヒトCD47抗体単独(10μg/mL;クローンB6.H12;BioXcellカタログ番号BE0019-1;「CD47 mAb」)、225Ac標識AT-02抗HER3 mAb単独(100nCi/mL;225Ac-HER3 mAb)、及び抗CD47mAb(10μg/mL)と225Ac標識AT-02抗HER3 mAb(100nCi/mL)の組み合わせ。図からわかるように、個々の薬剤のいずれと比べても、薬剤の併用がBxPC3細胞の貪食作用を顕著に増強させた。
【0082】
本明細書において様々な特定の実施形態を例示、説明してきたが、本発明(複数可)の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を実施できることが理解されよう。更に、本発明の一態様に関連して説明した特徴は、組み合わせが明示的に例示されていなくとも、本発明の他の態様と組み合わせて使用し得る。
図1
図2
図3
【配列表】
2023546679000001.app
【国際調査報告】