(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】溝を充填するデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
B41F 15/44 20060101AFI20231030BHJP
B41F 15/00 20060101ALI20231030BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B41F15/44 B
B41F15/00 B
B41F15/08 303E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524805
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 NL2021050641
(87)【国際公開番号】W WO2022086331
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロプ・ヤーコプ・ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・ベルナルデュス・ヨハンネス・コルデウェイ
(72)【発明者】
【氏名】エムディ・タミド・ホサイン
【テーマコード(参考)】
2C035
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FD01
2C035FD42
2C035FD43
(57)【要約】
本開示は、具体的には高粘度ペーストである印刷可能媒材2でワークピース900の表面中に設けられた溝901を充填するための付着システム1、方法、およびかかるシステムの使用に関する。このシステムは、第1のオリフィス121まで延在する少なくとも第1の付着チャンバ111を備える少なくとも付着ヘッド100を備える。このオリフィスは、少なくとも2つのシャッタ要素201、202の間で可逆的に閉じられる。いくつかの実施形態では、このシステムは、デュアルチャンバシステムであり、各チャンバシステムが、可逆的に閉鎖可能なオリフィスを有する。このシステムは、作用圧力の印加時に溝が充填されるように、ワークピースとシャッタ要素の終端部との間を同一平面内に維持するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(900)の表面(902)内に設けられた溝(901)内に印刷可能媒材(2)を付着するための付着システム(1)であって、付着面(101)を備える付着ヘッド(100)と、前記ワークピースの前記表面に対する交軸方向において前記付着ヘッドと前記ワークピースとの相対移動を実現するための駆動ユニット(20)とを備え、
前記付着ヘッド(100)は、
少なくとも第1の付着チャンバ(111)を備える主要本体(110)であって、前記第1の付着チャンバ(111)は、前記主要本体中の凹部(115)により少なくとも部分的に画成され、少なくとも2つのシャッタ要素(201、202)間に位置する前記付着面内の第1のオリフィス(121)まで延在する、主要本体(110)と、
前記第1の付着チャンバに対して作用し、使用時に前記第1の付着チャンバ内に収容された前記印刷可能媒材(2)に第1の作用圧力(WP1)を印加するように構成された、第1の加圧機構(141)と、
前記主要本体(110)に設けられた少なくとも第1のマウント(211)と
を備え、
前記少なくとも2つのシャッタ要素は、第1のブレード(221)を備える第1のシャッタ要素(201)を含み、前記第1のブレード(221)は、閉状態において前記第1のブレードの終端部と前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素(202)の終端部との間で前記第1のオリフィス(121)を閉じるように、前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素に向かって前記第1のマウントから延在し、
前記第1のブレード(221)は、印加される第1の作用圧力に応答して撓曲することにより前記第1のオリフィス(121)を少なくとも部分的に開くように構成され、
前記駆動ユニット(20)は、撓曲状態にある場合に前記ワークピース(900)の前記表面(902)と、前記第1のブレードの前記終端部と、前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素の終端部との間の同一平面内接触を維持するように、使用時に前記主要本体(110)と前記ワークピースの前記表面との相対位置を調節するように構成される、
付着システム(1)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素は、前記第1の付着チャンバから横方向に隔てられた第2の付着チャンバを画成するように、前記凹部を長手方向に貫通して延在する隔壁を備え、
前記第2の付着チャンバは、前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素とさらなるシャッタ要素との間に位置する前記付着面内の第2のオリフィスまで延在し、
前記さらなるシャッタ要素は、第2のブレードを備え、前記第2のブレードは、前記凹部を挟んで第1のマウントの反対側において主要本体に設けられた対応する第2のマウントから前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素に向かって延在して、閉状態において前記第2のブレードの終端部と前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素の終端部との間で前記第2のオリフィスを閉じ、
前記付着システムは、第2の加圧機構(32)をさらに備え、前記第2の加圧機構(32)は、前記第2の付着チャンバに対して作用し、使用時に前記第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第2の作用圧力を印加するように構成され、前記第2のブレードは、印加された第2の作用圧力に応答して撓曲することにより、前記第2のオリフィスを少なくとも部分的に開くように構成される、
請求項1に記載の付着システム。
【請求項3】
前記第1のマウントは、使用時に少なくとも前記第1の作用圧力に応じて前記主要本体に対する前記第1のブレードの位置および/または配向を調節して、使用時に前記第1のブレードの前記終端部と前記ワークピースの前記表面との間の接触圧力を少なくとも部分的に相殺することにより、使用時に前記ワークピースの前記表面と前記第1のブレードの前記終端部と前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素との間の同一平面内接触を維持するように構成される、
請求項1または2に記載の付着システム。
【請求項4】
前記第1のマウントは、使用時に前記ブレードに沿った方向に前記対応するブレードを引き戻すように構成された引戻し機構を備える、請求項3に記載の付着システム。
【請求項5】
摺動要素(260)をさらに備え、前記摺動要素(260)は、前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素の前記終端部に設けられ、前記付着面に沿って延在し、閉状態においては前記摺動要素の両終端部に沿って前記第1のブレードの終端部および前記第2のブレードの終端部に接触するように構成され、前記摺動要素は、使用時に前記少なくとも部分的に開いた第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間で前記ワークピースの前記表面に沿って接触および摺動するための細長接触面を提供する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の付着システム。
【請求項6】
前記第1のオリフィスおよび前記第2のオリフィスは、1~10ミリメートルの間の範囲内の距離だけ相互に横方向に離間される、
請求項2から5のいずれか一項に記載の付着システム。
【請求項7】
前記第1の付着チャンバおよび前記第2の付着チャンバの一方に正圧の作用圧力を印加し、前記第1の付着チャンバおよび前記第2の付着チャンバの他方に負圧を印加することによって、使用時に前記対応する付着チャンバの一方から洗浄剤を付着し、前記対応する付着チャンバの他方を介して前記洗浄剤を少なくとも部分的に回収するように構成された、
請求項2から6のいずれか一項に記載の付着システム。
【請求項8】
前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素は、前記凹部を挟んで前記第1のマウントの反対側において前記主要本体に設けられた対応するマウントから前記第1のブレードの前記終端部に向かって延在するさらなるブレードを備える、
請求項1に記載の付着システム。
【請求項9】
ワークピースの表面内に設けられた前記溝を洗浄するための洗浄剤と、前記洗浄された溝を充填するための高固形分印刷可能媒材とを逐次的に付着するように構成され、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの付着システムと、請求項7に記載の少なくとも1つの付着システムと、を備える、
付着システムアセンブリ(1000)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の付着システムによりワークピースの表面内に設けられた溝内に印刷可能媒材を付着する方法であって、
前記ワークピースの前記表面と前記第1のブレードの前記終端部と前記少なくとも2つのシャッタ要素の中の前記他のシャッタ要素の前記終端部との間の同一平面内接触を維持するために前記工作物の前記表面に対する交軸方向において前記主要本体と前記ワークピースとの相対移動を実現しつつ、前記第1の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第1の作用圧力を印加して前記第1のブレードを撓曲させることにより前記第1のオリフィスを少なくとも部分的に開かせるステップと、
前記ワークピースの前記表面に沿った横方向において前記付着ヘッドと前記ワークピースとの相対移動を実現することによって、前記溝を越えて前記付着ヘッドを案内するステップと
を含む、
方法。
【請求項11】
前記付着システムは、請求項2から8のいずれか一項に記載のものであり、
前記第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第2の作用圧力を印加して前記第2のブレードを撓曲させることにより、前記第2の作用圧力を印加しつつ前記第2のオリフィスを少なくとも部分的に開くステップ
をさらに含み、
前記付着ヘッドが前記溝を越えて案内されるときに、前記第1のオリフィスが先導し、前記第2のオリフィスが後続する場合には(横移動方向に沿ってみた場合)、前記第1の作用圧力は前記第2の作用圧力よりも高い、または、前記第2のオリフィスが先導し、前記第1のオリフィスが後続する場合には、前記第2の作用圧力は前記第1の作用圧力よりも高い、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記付着システムは、請求項4から8のいずれか一項に記載のものであり、
前記第1のブレードの前記終端部と前記ワークピースの前記表面との間の接触圧力を少なくとも部分的に相殺するために、前記第1のブレードに沿った方向に前記第1のブレードを引き戻すステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記付着システムは、請求項7に記載のものであり、
前記印刷可能媒材は、洗浄剤であり、
前記第1の作用圧力を印加している間に前記洗浄剤の少なくとも一部を回収するために、負圧である第2の作用圧力を前記第2の付着チャンバに印加するステップをさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記同一平面内接触が解消される前に、前記少なくとも部分的に開かれた第1のオリフィスおよび/または第2のオリフィスを閉じるステップを含む、
請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ワークピースから可溶性物質または被吸着物質を除去するための請求項7に記載の前記システムの使用であって、
適切な第1の作用圧力を印加することにより前記第1の付着チャンバから前記ワークピースに対して前記物質に適した洗浄剤である印刷可能媒材を付着することと、適切な第2の作用圧力を印加することにより前記第2の付着チャンバを介して前記付着した印刷可能媒材の少なくとも一部を回収することとを含む、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークピースの表面中に設けられた溝内に印刷可能媒材を付着するための方法およびシステムに関する。特に、本開示は、高固形分ペーストで溝を充填することに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースの表面に対して前進角にて位置決めされたドクターブレードを使用して、この表面にわたって例えばペーストなどの一定量の充填材をドラッグすることによりワークピース表面中の溝を充填すると、結果的にこれらの溝の不完全な充填が即座に生じてしまうため不利である。これは、例えば、ドクターブレードがこの溝間にわたって引かれる際に、付着された材料の下方に閉じ込められた空気が貯めこまれてしまうことに起因する。とりわけ、接着剤、および/または例えばはんだペーストなどの導電性材料の場合に、不完全な充填は、例えば導電性の低下などにより最終製品の機能不全につながる場合がある。同様の問題がスクリーン印刷においても知られている。スクリーン印刷では、部分的にブロックされたメッシュに粘性ペーストを押し通すためにスクイージーまたはドクターブレードが一般的に使用される。付着の厚さおよびクオリティは、主としてスクリーンのタイプ、スクイージーの硬度、スクイージーの角度、および印刷速度により左右される。
【0003】
スクイージー使用の1つの代替例としては、ポンプシステムとスクリーン印刷との組合せが報告されている。WO01/05592A1は、印刷スクリーンに対してペースト状製品を塗布するためのスクリーン印刷ヘッドについて開示している。このヘッドは、開口を有するチャンバを備え、ペースト状製品は、この開口を通過してスクリーン中に押し込まれる。チャンバは、1対の側方に離間されたブレードの間で側方を区切られ、使用時にはこれらのブレードがスクリーンに対して押し付けられる。ブレード間に位置決めされたフローディレクタは、スクリーン充填の改善を目的として循環流を供給する。米国特許出願公開第201039509A1号は、このコンセプトに基づき、回転ドラムをフローディレクタとして用意することにより改良を実現している。ポンプシステムは、プリント回路基板(PCB)製造業界でははんだペーストまたは導電性接着剤を印刷するために主として使用される。ポンプシステムが、特に専用のスクリーン印刷ペーストを用いたスクリーン印刷(キャビティを介した)との組合せにおいて使用され得る一方において、ワークピースの表面内の溝を充填するための改良された方法またはデバイスが、依然として必要とされている。とりわけ、例えば高固形分ペーストなどより多様な材料を付着するために構成されたデバイス、および/または、付着速度の改善、充填レベルに関する制御性の改善、非標的領域(例えば溝の脇など)における付着および/または溢流の軽減、および/または特に比較的軟質の外方表面仕上げを有するワークピースのためのワークピースおよび/またはデバイスに対する損耗の軽減の中の1つまたは複数をもたらすデバイスが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO01/05592A1
【特許文献2】米国特許出願公開第201039509A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様は、ワークピースの表面内に設けられるような溝または空洞部内に印刷可能媒材を付着するための付着システムに関する。この付着システムは、付着面を備える付着ヘッドと、ワークピースの表面に対する交軸方向において付着ヘッドとワークピースとの相対移動を実現するための駆動ユニットとを備える。付着ヘッドは、少なくとも第1の付着チャンバを備える主要本体を備える。第1の付着チャンバは、主要本体中の凹部により少なくとも部分的に画成される。第1の付着チャンバは、少なくとも2つのシャッタ要素間に位置する付着面内の第1のオリフィスまで延在する。付着ヘッドは、第1の付着チャンバに対して作用し、使用時に第1の付着チャンバ内に収容されたある量の印刷可能媒材に第1の作用圧力を印加するように構成された、第1の加圧機構をさらに備える。さらに、付着システムは、主要本体に設けられた少なくとも第1のマウントを備える。前記少なくとも2つのシャッタ要素は、第1のシャッタ要素を含む。第1のシャッタ要素は、第1のブレードを備え、第1のブレードは、閉状態において第1のブレードの終端部と少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間で第1のオリフィスを閉じるように、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素に向かって第1のマウントから延在する。第1のブレードは、印加される第1の作用圧力に応答して撓曲することにより第1のオリフィスを少なくとも部分的に開くように構成される。駆動ユニットは、撓曲状態にある場合に、使用時にワークピースの表面と、第1のブレードの終端部と、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間の同一平面内接触を維持するように、使用時に主要本体とワークピースの表面との相対位置を調節するように構成される。
【0006】
好ましい一実施形態では、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素は、第1の付着チャンバから横方向に隔てられた第2の付着チャンバを画成するように、凹部を長手方向に貫通して延在する隔壁を備える。前記第2の付着チャンバは、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素とさらなるシャッタ要素との間に位置する付着面内の第2のオリフィスまで延在する。前記さらなるシャッタ要素は、第2のブレードを備え、第2のブレードは、対応する第2のマウントから少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素に向かって延在して、閉状態において第2のブレードの終端部と少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間で第2のオリフィスを閉じる。第2のマウントは、凹部を挟んで第1のマウントの反対側において主要本体に設けられる。好ましくは、付着システムは、第2の加圧機構をさらに備え、この第2の加圧機構は、使用時に第2の付着チャンバに対して作用し、使用時に第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に対して典型的には第1の作用圧力とは異なる第2の作用圧力を印加するように構成される。第2のブレードは、印加された第2の作用圧力に応答して撓曲することにより、第2のオリフィスを少なくとも部分的に開くように構成される。少なくとも第1の作業チャンバおよび第2の作業チャンバを備える前記システムは、デュアルチャンバシステムを構成するものとして理解できる。前記デュアルチャンバシステムにより、2つの別個のオリフィス殻の1つまたは複数の印刷可能媒材の付着が可能となる。第1のチャンバ内および第2のチャンバ内の印刷可能媒材は、典型的には同一であるが、異なることも可能である。2つの相互に異なる組成物を使用することにより、例えば導電性下層および比較的より高い接着性を有する層または保護閉鎖層となどの、2層充填物で溝を充填することが可能となる。しかし、典型的には、同様の組成物またはさらにはまったく同一の組成物が使用される。
【0007】
さらなる、またはより好ましい実施形態では、第1のマウントは、使用時に少なくとも第1の作用圧力に応じて主要本体に対する第1のブレードの位置および/または配向を調節して、使用時に第1のブレードの終端部とワークピースの表面との間の接触圧力を少なくとも部分的に相殺するように構成される。
【0008】
さらなる態様によれば、本開示は、本明細書において開示されるような付着システムの中の1つまたは複数により、ワークピースの表面内に設けられた溝内に印刷可能媒材を付着する方法に関する。この方法は、ワークピースの表面と第1のブレードの終端部と少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間の同一平面内接触を維持するために工作物の表面に対する交軸方向において主要本体とワークピースとの相対移動を実現しつつ、第1の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第1の作用圧力を印加して第1のブレードを撓曲させることにより第1のオリフィスを少なくとも部分的に開かせるステップと、ワークピースの表面に沿った横方向において付着ヘッドとワークピースとの相対移動を実現することによって、好ましくは前記同一平面内接触を維持しつつ、溝を越えて付着ヘッドを案内するステップとを含む。
【0009】
好ましい一実施形態では、ならびにデュアルチャンバシステムとも呼ばれる少なくとも第1の作業チャンバおよび第2の作業チャンバを備えるシステムに即して、この方法は、第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第2の作用圧力を印加して第2のブレードを撓曲させることにより、第2の作用圧力を印加しつつ第2のオリフィスを少なくとも部分的に開くステップをさらに含む。好ましくは、付着ヘッドが溝を越えて案内されるときに、第1のオリフィスが先導し、第2のオリフィスが後続する場合には、第1の作用圧力は第2の作用圧力よりも高い、または、または第2のオリフィスが先導し、第1のオリフィスが後続する場合には、第2の作用圧力は第1の作用圧力よりも高い。
【0010】
さらなる、またはより好ましい実施形態では、および第1のマウントが使用時に少なくとも第1の作用圧力とは無関係に主要本体に対する第1のブレードの位置および/または配向を調節するように構成されたシステムに即して、この方法は、第1のブレードの終端部とワークピースの表面との間の接触圧力を少なくとも部分的に相殺するように、主要本体に対して第1のブレードを位置変更および/または配向変更するステップを含む。
【0011】
さらに他の態様によれば、本開示は、溝を洗浄するためのおよび/またはワークピースから可溶性物質もしくは被吸着物質を除去するための、方法、あるいは本明細書において開示されるようなデュアルチャンバシステムの使用に関する。前記プロセスは、適切な第1の作用圧力を印加することにより第1の付着チャンバから前記ワークピースに対して前記物質に適した洗浄剤である印刷可能媒材を付着することと、適切な第2の作用圧力を印加することにより第2の付着チャンバを介して付着した印刷可能媒材の少なくとも一部を回収することとを少なくとも含む。
【0012】
本明細書において開示されるような付着システムは、例えばスクリーン印刷および/またはドクターブレーディングなどの既知の方法に比べて複数の利点をもたらす。以降においてさらに詳細に説明するように、これらの利点としては、付着速度の改善、充填レベルに関する制御の改善、例えば溝の脇などの非標的領域における付着および/または溢流の軽減、および/またはワークピースおよび/またはデバイスに対する損耗の軽減の中の1つまたは複数が含まれる。
【0013】
本開示の装置、システム、および方法のこれらのおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面からよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】閉状態にある付着システムの側方断面図である。
【
図1B】開状態にある付着システムの側方断面図である。
【
図2A】使用時における付着システムを示す図である。
【
図2B】使用時における付着システムを示す図である。
【
図2C】使用時における付着システムを示す図である。
【
図3】閉状態にある付着システムの側方断面図である。
【
図4】開状態にある付着システムの側方断面図である。
【
図6B】閉状態および開状態におけるシャッタ要素を示す図である。
【
図7A】圧力に対するブレードの曲げを示す図である。
【
図7B】圧力に対するブレードの曲げを示す図である。
【
図11】溝が充填されたワークピースを示す図である。
【
図12】使用時における付着システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特定の実施形態を説明するために用いられる術語は、本発明を限定するようには意図されない。本明細書において、単数形「1つの(a, an)」および「その(the)」は、文脈において別様のことが明示されない限り複数形も包含するように意図される。「および/または」という用語は、関連して列挙される項目の中の1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。「備える」および/または「備えている」という用語は、述べられる特徴物の存在を明示するものではあるが、1つまたは複数の他の特徴物の存在もしくは追加を排除するものではない点が理解されよう。さらに、別様のことが明示されない限り、ある方法のある特定のステップが別のステップの後に続くものとして言及される場合には、この前者のステップは前記他方のステップの直後に続くものであり得るか、あるいは前者の特定のステップの実施前に1つまたは複数の中間ステップが実施されてもよい点が理解されよう。同様に、別様のことが明示されない限り、構造物間または構成要素間における連結が述べられる場合に、この連結は、直接的にまたは中間構造物もしくは中間構成要素を介して確立されてもよい点が理解されよう。
【0016】
本明細書において説明されるようなシステムおよび方法は、いかなる特定の印刷可能媒材にも限定されるものとして解釈されるべきではない。原則として、この印刷可能媒材は、例えば溶剤および溶剤ベースインクなどの液体だけではなくさらには例えばペースト状製品などの高粘度媒材を含む、多様な組成物を含むものとして理解することができる。典型的には、一般的な溶剤ベースインクは、最大で40重量パーセントの例えば銅などの固形分を含み、溶剤は、一般的にはインクの総体積の大半を占める。すなわち、溶剤が揮発すると、溝の充填レベルは、最初の充填レベルに対してある割合まで低下することになる。インクジェット用のインクの場合には、溝の充填レベルは、20~40重量パーセントの間の銅を最初に含有するインクの場合であっても、一般的に最初の充填レベルの約3~5体積パーセントまで低下する。結果として、機能材料で溝を完全に充填するためには、20~40の間の充填サイクルが必要となり得る。より効果的に溝を充填するためには、高含有率ペーストが好ましい、例えばスクリーンペースト(60~75重量%の金属含有率で知られる)高固形分ペーストを使用することにより、必要となる充填ステップ数を減らすことができる。例えば約80重量%を超過する範囲内の、例えば85~99重量%、例えば95重量%などの、固形含有率を有するものなどの、さらにより高い含有率のペーストがさらに好ましい。しかしながら依然として、例えば高粘度などに起因する制約によって、溝の迅速な充填は困難である。さらに、限定的な溶剤の量に起因する乾燥しやすい傾向により、溝を充填するためのかかる媒材の塗布は実現不可能なままとなっている。
【0017】
本明細書において説明されるようなシステムおよび方法は、高粘度を有する媒材との組合せにおいて、とりわけ例えばスクリーンペーストまたはさらにより高い含有率のペーストなどのペースト状製品との組合せにおいて、特に有利に利用することができる点が理解されよう。さらに、本システムは、例えば約1000Pa.sの範囲内(Haake RS1 C20/20TiL、230秒-1、25℃)などの、500Pa.sを超過する粘度を有するインクまたはペーストを付着させるために使用することも可能である。かような高粘度を有するペーストは、印刷業界においては非常にまれであり、典型的には例えば最大で約50Pa.sの範囲内の粘度を有するインク/ペーストを使用するスクリーン印刷などの既知のデバイスおよび方法に対して適さないものと考えられている。比較的より高い固形分のペースト(すなわちより高い粘度のペースト)の使用を可能にすることによって、同等の充填レベルを実現するために必要とされるパス数を減らすことが可能となる。以降においてさらに詳細に説明されるように、さらに本システムは、例えばペーストなどの材料を溝内へ押し込むために印加される圧力を上昇することなどによって、充填速度を上昇させることができる(その結果としてプロセス時間全体がさらに短縮される)。
【0018】
本発明は、本発明の実施形態を図示する添付の図面を参照として、以降でさらに十分に説明される。図面では、明確にするために、システム、構成要素、層、および領域の絶対サイズおよび相対サイズが誇張される場合がある。実施形態は、本発明の可能な限り理想化された実施形態および中間構造物の概略図および/または断面図を参照として説明される場合がある。説明および図面において、類似の番号は全体を通じて類似の要素を示す。相対語およびその派生語は、そこで説明されるような配向または論じられる図に示されるような配向を基準とするものとして解釈されるべきである。これらの相対語は、説明の都合上によるものであり、別様のことが明示されない限り、本システムがある特定の配向において構成されるまたは動作されることを要求するものではない。
【0019】
次に、
図1を参照として、印刷可能媒材を付着させるための付着システムを説明する。
図1Aは、閉状態にある付着システム1の側方断面図であり、
図1Bは、開状態にある付着システム1の側方断面図である。理解を容易にするために、印刷可能媒材の付着のいくつかの特色については、以降においてさらに詳細に説明する。
図1Aおよび
図1Bに示すように、この付着システムは、付着ヘッド100を備える。付着ヘッド100は、第1の付着チャンバ111を少なくとも備え、この第1の付着チャンバ111は、付着ヘッド100の本体中の凹部115により少なくとも部分的に画定され、少なくとも2つのシャッタ要素201、202間に位置する付着面101(破線を参照)中の第1のオリフィス121まで延在する。このオリフィスは、可逆的に開閉され得る。例えば作用圧力などの使用条件に応じて、オリフィスの開口距離(または長さ)が調整可能である。このシステムには、第1の加圧機構141と、ワークピースの表面に対する交軸方向において付着ヘッドとワークピースとの相対移動を実現するための駆動ユニット20とが少なくとも設けられる。加圧機構141は、第1の付着チャンバに対して作用し、使用時には第1の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材2に対して第1の作用圧力WP1を印加するように構成される。典型的には、さらに、このシステムは、ワークピースの表面に沿った横方向において付着ヘッド100とワークピースとの相対移動を実現するための手段を備える。前記手段は、例えばコンベヤなどとしてこのシステムに備えられ得る。代替的にはまたは追加的には、駆動ユニット20は、横方向移動を実現するように構成され得る。任意には、この付着システムは、コンベヤ手段を予め備えた例えば生産ラインなどの他のシステムとの組合せにおいて使用されてもよい。
【0020】
前記少なくとも2つのシャッタ要素201、202は、第1のシャッタ要素201を含む。第1のシャッタ要素は、第1のブレード221を備え、この第1のブレード221は、これら少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202に向かって第1のマウント211から延在して、閉状態においては第1のブレード221の終端部と少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間で第1のオリフィス121を閉じる。前記第1のブレード221は、印加される第1の作用圧力に応答して撓曲することにより第1のオリフィス121を少なくとも部分的に開くように構成される。例えば作用圧力の印加時にオリフィスを開くことにより、媒材2は、付着チャンバから退出し、ワークピースに向かって流れ得る。
【0021】
図示するように、第1のシャッタ要素201は、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202との組合せにおいて、付着チャンバを可逆的に開閉するための機構として理解することができる。この付着システム1に閉鎖機構を備え付けることにより、システムがアイドル状態にある間における、付着ヘッド100から例えばワークピースの非標的付着領域上などへの印刷可能媒材2のこぼれまたは漏れが有利に緩和される。アイドル状態では、印刷可能媒材2に対する圧力は、大気圧と同様の比較的低い状態に維持され、それにより付着チャンバ111は、閉状態に留まる。さらに、これらのシャッタ要素は、閉鎖力の印加により閉位置を維持するための手段を備えることが可能である。適切な手段としては、バネ、空気圧シリンダ、ソレノイド等が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
図2に関連してさらに詳細に説明されるように、駆動ユニット20は、使用時に、撓曲状態にある間において、ワークピースの表面と、第1のブレード221の終端部と、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202の終端部の間における同一平面内接触を維持するために、主要本体110とワークピースの表面との相対位置を調節するように構成される。付着作業の最中に同一平面内接触を維持することにより、ワークピースの表面に沿った例えばブレードを越えるような印刷可能媒材の横方向流が制限される。
【0023】
例えば
図1Aに示すようないくつかの実施形態では、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202は、さらなるブレードを備える。前記さらなるブレードは、凹部を挟んで第1のマウントの反対側において主要本体に設けられた対応するマウントから第1のブレード221の終端部に向かって延在する。好ましくは、前記さらなるブレードもまた、印加された第1の作用圧力に応答して撓曲することにより、第1のオリフィス121を少なくとも部分的に開くことに寄与するように構成される。代替的には、これら少なくとも2つのシャッタ要素中の他のシャッタ要素202は、例えば壁の一部分またはさらには凹部115の対向側エッジなど、突出部などの固定シャッタ要素であることが可能である。そのため、第1の付着チャンバ111は、単一のブレードにより閉じられるものとして理解することができる。
【0024】
図2は、ワークピース900の表面中に設けられた溝901を充填するための、使用時における付着システムの態様を示す。理解を容易にするために、例えば加圧機構などのいくつかのパーツが図示されない。
図2Aは、アイドル状態にある付着ヘッド100を示す。第1の付着チャンバ111は、印刷可能媒材2で充填される。オリフィスは、閉状態121'にある。オリフィスを開く前に、付着ヘッド100は、ワークピースの表面902に対して交軸方向である方向「z」に移動される。インク2に対する圧力は、少なくとも2つのシャッタ要素の中の第1のシャッタ要素201および他のシャッタ要素202の終端部同士が接触状態に留まるように、比較的低く維持される。典型的には、閉鎖力CFは、オリフィスが閉状態121'にあることを確保するように印加される。これらのブレードがワークピースに接触すると、閉鎖力が印加されていた場合にはこの閉鎖力が解除され、インクに対する作用圧力WPが上昇されて、ブレードを撓曲させ、オリフィスを開状態121へと切り替える。必要に応じて、制御ユニットは、これらのシャッタ要素の終端部がワークピースと接触状態に留まる間にオリフィスが開かれ得るように、垂直方向位置を調節する。
【0025】
オリフィスが開かれると、インク2は、溝内へと押し込まれ得る。印刷可能媒材2がオリフィス121から排出されるときにワークピースに印加される圧力を含む、結果的に得られる力によって、このシステムはワークピースから引き上げられなければならなくなる。これは、撓曲状態にある間において、ワークピースの表面と、第1のブレード221の終端部と、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202の終端部との間における同一平面内接触を維持するために、駆動ユニット20が、主要本体とワークピースの表面との相対位置を適切に調節することによって抑制される。
【0026】
いくつかの実施形態では、この駆動ユニットは、付着ヘッド100とワークピースとの間において計測される力に応じて、主要本体とワークピースの表面との相対位置を調節するように構成される。これを目的として、本システムは、例えば力計30または圧力センサなどの適切な力感知手段を備えることが可能である。前記手段の出力は、同一平面内接触を維持するための制御パラメータとして使用され得る。他のまたはさらなる実施形態では、駆動ユニットは、例えばチルトステージまたはθステージなどを用いて、例えば同一平面内接触を維持するためになど付着ヘッドとワークピースとの間の角度を調節するようにさらに構成される。
【0027】
図2Bに示すように、同一平面内接触は、ヘッド100がワークピースの表面中を案内される(横方向移動L)ときに維持される。少なくとも付着作業の最中において同一平面内接触を実現することは、ヘッドから溝内への媒材の流れを制約して溝外への材料付着を減少させることに寄与するものとして理解することができる。
【0028】
ヘッドが溝を越えて通過するときにインクが溝内に押し込まれることにより、充填前線「ff」が形成され、この充填前線「ff」は、横方向移動「L」と同じ方向へと前記溝外に空気を押し出す(横方向移動Lの方向を先導しているシャッタ要素の終端部の正面において)。この先導中のシャッタ要素の終端部の正面に空気を押し出すことにより、例えばドクターブレードなどが溝を越えて通過するときにある量のインクが先導中のブレードの終端部の正面に押し出される方法において生じ得る、気泡の貯め込みに起因する溝の不完全な充填が緩和される。
【0029】
充填工程の完了後に、ヘッド100は、ワークピース900から引き戻される。好ましくは、オリフィスは、同一平面内接触が解消される前に閉じられる。オリフィスの閉鎖は、シャッタ要素に閉鎖力CFを印加することと、適切な負圧を印加することとの中の1つまたは複数によって実現されてもよい。同一平面内接触の解消前にオリフィスを閉じることにより、特に一般的に非常に粘度の高いペースト状製品の場合には、ヘッドがワークピースから引き離されるときの残渣の付着が緩和される。
【0030】
印加される作用圧力は、印刷可能媒材2の粘度および/または充填対象となる溝のジオメトリによって決定され、経験的に決定され得る。高アスペクト比の溝(幅/深さ>1)は、低アスペクト比の溝と比較した場合により高い作用圧力を一般的に必要とする。典型的には、印加される作用圧力は、7バール以上であることが可能であり、例えば大気圧~6バールの間の範囲内またはそれ以上、例えば最大で10バールまたはそれ以上、例えばいくつかのシリンジシステムにおいて可能であるように最大で24バールまたは30バール、などであることが可能である。圧力がより高くなるほど、より短いおよび/またはより厚いブレードがブレードの撓曲を限定するために好ましいものとなり得る点に留意されたい。上限は、例えば第1のブレードなどの使用されるシャッタ要素の強度によって決定することができる。
【0031】
熱が、印刷可能媒材の粘度を低下させるために供給され得る。好ましくは、本システムは、例えば
図3および
図4に示すように、付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材2に対して局所的に作用するような位置にヒータ180を備える。印刷可能媒材2を加熱することにより、インクの粘度が低下し、したがって所与の作用圧力における付着速度を上昇させることができる。目標温度の上限は、印刷可能媒材の熱安定性に依存し、例えばこの印刷可能媒材の成分中の1つまたは複数の沸点温度および/または熱分解温度に依存する。より高い含有率のペーストでは、この上限は、典型的には80~100℃の間である。したがって、典型的には、インクは、30~約100℃の間の温度まで加熱され、例えば40~80℃の間または30~70℃の間の温度まで加熱される。
【0032】
例えば
図3および
図4に示すような好ましい一実施形態では、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202は、隔壁220を備える。この隔壁220は、凹部115を貫通して長手方向に延在して、前記隔壁220により第1の付着チャンバ111から横方向に隔てられた第2の付着チャンバ112を画成する、または換言すれば、デュアルチャンバシステムを画成する。図示するように、第1のマウントおよび第2のマウントは、典型的には凹部115の両エッジに沿って設けられ、これらの各マウントは、対応するオリフィスを覆う。
【0033】
典型的には、
図1Bおよび
図3に示すようなかかるデュアルチャンバシステムは、第2の加圧機構142をさらに備え、この第2の加圧機構142は、第2の付着チャンバに対して作用し、使用時には第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第2の作用圧力を印加する。図示するように、前記第2の付着チャンバ112は、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素202とさらなるシャッタ要素203との間に位置する付着面101中の第2のオリフィス122まで延在する。
図3は、閉位置にある、すなわち第1のオリフィス121'および第2のオリフィス122'が閉状態にある状態における、シャッタ要素を示す。前記さらなるシャッタ要素203は、第2のブレード223を備え、この第2のブレード223は、閉状態において第2のブレードの終端部と、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間の第2のオリフィスを閉じるために、凹部115を挟んで第1のマウント211の反対側において主要本体110に設けられた対応する第2のマウント213から、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素に向かって延在する。好ましくは、前記第2のブレードは、第1のブレードと同様に、印加された第2の作用圧力に応答して撓曲することによって第1のオリフィスを少なくとも部分的に開くように構成される。
【0034】
有利には、デュアルチャンバシステムは、2つのオリフィスを形成し、媒材は、これらの2つのオリフィスから溝内へと付着され得る。有利には、第1の付着チャンバと第2の付着チャンバとを隔てる隔壁220は、第1の作用圧力とは実質的に無関係である第2の作用圧力の印加を可能にする、またはその逆を可能にする。それぞれ異なる作用圧力を印加することにより、充填の最適化を含む複数の利点が得られることが判明した。
【0035】
図2に関連して上述したように、充填速度は、作用圧力を上昇させることによって上昇し得る。シングルチャンバシステムと比較して、デュアルチャンバシステムは、印加可能な作用圧力の選択においてより高い自由度をもたらすため有利である。この点に関する主要な一側面は、流れ抵抗における経験的相違に起因して、機能性ペースト2が幅狭溝とは対照的に幅広溝内へとより容易に流れるという理解に基づくものである。これはすなわち、特に複数の溝を備えるワークピースの場合には、単一の作用圧力下において動作するシステムは、不均一な溝充填をもたらす可能性があるということであり、例えば幅広溝は、幅狭溝と比べて潜在的に過充填されやすいということである。これを緩和するために、例えば寸法のそれぞれ異なる溝の充填レベルにおける不均質性を緩和するために、大気圧に比べて若干のみの過圧を利用してインクを付着することが考えられ得る。しかし、若干の過圧を利用することにより、流量は必然的に低下し、したがってヘッドが溝を越えて移動されることが可能な速度が限定されるため、ワークピースの処理に必要となる合計時間が長くなる。
【0036】
有利には、デュアルチャンバシステムを提供することにより、チャンバにおいて種々の作用圧力を使用することによって、これらの側面が緩和され得、したがって、充填レベルに関する制御を維持またはさらには改善しつつ、充填速度を上昇させることを可能にする。使用の最中に、これら2つのチャンバは、溝を逐次的に越えて通過する。第1のチャンバ、すなわち先導チャンバは、高い付着速度にて溝への初期充填を少なくとも実現するために、例えば6バールの過圧など比較的高い圧力にて動作される。第2のチャンバ、すなわち後続チャンバは、溝の充填を完了するために、例えば1バールの過圧など比較的低い圧力にて動作する。第2のブレード、すなわち後続ブレードは、充填を制御するスクレーパとして機能し得る。
【0037】
好ましくは、これらのオリフィスは、比較的短い距離だけ、しかしながら相互に異なる作用圧力下で動作しつつもこれらの両オリフィスからの単一の溝の同時充填を可能にするのに十分な遠い距離だけ離間される。第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間の離間距離がより大きいほど、圧力デカップリングが改善される(溝を挟んだ圧力カップリングが軽減される)。離間距離がより小さい場合には、2つのチャンバ間における圧力降下が、例えば充填対象の溝に沿った浸透通路などによって軽減され得るため、これによりデュアルチャンバシステムを使用する利点が部分的に無効にされる場合がある。デュアルチャンバシステムが溝を越えて通過する場合のクロスカップリングを緩和するために、好ましくは、チャンバ同士を隔てる隔壁の領域は、ワークピースから見た場合に溝の断面積(溝に沿って見た場合の)を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍だけ上回る。好ましい一実施形態では、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスは、充填対象の溝の最大深さ以上の、かつ充填対象の溝の最小横幅、深さ未満の距離だけ、相互に横方向に離間される。典型的には、隔壁は、1~約10ミリメートルの範囲内の幅を有する。この範囲内の幅を有する隔壁は、関連範囲内の寸法を有する多様な溝を確実に充填することが判明した。
【0038】
図示するように、少なくとも第1のブレードのそれぞれが、ワークピースの表面に対して鋭角に位置決めされる。好ましくは、この角度は、15~60度の範囲内であり、より好ましくは20~35度の範囲内である。これらの特定の範囲内の角度は、ワークピースに印加される圧力と例えば印刷されることとなる媒材のワイピングまたはスクレーピングなどの閉込めとの間の良好なバランスをもたらすことが判明した。
【0039】
作用圧力は、原則的には、付着速度に影響を及ぼすために大きな範囲にわたって調節され得る。ワークピースと同一平面内接触状態にない場合においては、作用圧力がより高いほど、結果としてブレードの曲がりはより大きくなり、したがってブレード先端部の外方変位が大きくなるほど、結果としてオリフィスの開口距離はより大きくなる。しかし、予め同一平面内接触状態にある場合には、作用圧力の上昇により、結果として先端部とワークピースとの間の接触圧力が上昇し得る。接触圧力を上昇させることにより、例えばワークピースの表面中を付着ヘッドが横方向に並進移動する最中などにおけるブレードの摩耗および/またはワークピースの表面のスクラッチが大きくなり得る。
【0040】
システムおよびしたがってブレードが、典型的には種々の動作温度にておよび/または潜在的に大きく変動的な組成を有する印刷可能媒材との組合せにおいて使用されるため、好ましくは、これらのブレードは、ブレードの頻繁な交換の必要性を緩和するための弾性ブレードである。プラスチック組成物から形成されたブレードは、強度、剛直性、および靭性を含む特性の適切な組み合わせをもたらすことが判明した。例えばPEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリ(エーテルケトンケトン))、PEEKK(ポリ(エーテルエーテルエーテルケトン))、PEKEKK(ポリ(エーテルケトン-エーテルケトンケトン))、またはそれらの混合物などの、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマーを含む組成物から形成されたブレードは、低摩擦(付着性の低さ)、適切な強度、適切な剛直性、および適切な靭性を併せ持つため、特に適することが判明した。有利には、これらのポリマーの特性は、最高で200℃の高温にて安定状態にまたは少なくとも予想可能な状態に留まる。特に好ましい組成物は、PEEKを含む。
【0041】
非常に好ましい実施形態では、第1のマウントは、使用時に、少なくとも第1の作用圧力に応じて主要本体に対する第1のブレードの位置および/または配向を調節するように構成される。主要本体に対する第1のブレードの位置および/または配向を調節することは、主要本体に対する第1のブレードの回転運動および/または並進運動を実現することを含むものとして理解することができる。有利には、第1のブレードの位置および/または配向を調節することは、閉鎖機構を開閉する手段を構築することとして、すなわち例えばワークピースとの同一平面内接触状態を維持しつつ付着工程を行う最中などにおいてオリフィスの開口幅の制御に寄与するものとして、理解することができる。
【0042】
好ましくは、シャッタ要素とワークピースとの間における過剰な接触力が回避されることにより、シャッタ要素および/またはワークピースに対する損耗が緩和されることが理解されよう。シャッタ要素とワークピースとの間の過剰な接触力は、例えばプラスチックブレードなどの比較的軟質のシャッタブレードを使用する場合には、および/または例えばPCBなどのプラスチック基材もしくはさらには例えば複数の層900a、900b、900c、900d、および900eから構成された
図4および
図5に示す例示のワークピース900などの3D印刷パーツなどの比較的軟質のワークピースを用いる場合には、特に不利となる。図示するように、付着ヘッド100は、埋設された電子デバイス904の接触子905への導電性接触パッドを形成するために、溝内に導電性ペースト2を付着するために使用される。有利には、使用時に少なくとも第1の作用圧力に応じて主要本体に対する第1のブレードの位置および/または配向を調節するように構成された第1のマウントを備えるシステムは、接触圧力を所定の最大接触圧力未満に維持することを可能にする。比較的軟質のワークピースおよび/または上述ものなどのプラスチック組成物を含むブレードを有するシステムの場合には、ブレード先端部とワークピースとの間の接触圧力が、好ましくは約0.5バール未満に維持される、好ましくは0.1~0.4バールの間の範囲内に維持される、最も好ましくは約0.2バールまたは0.3バールに維持されることに本発明者らは気づいた。
【0043】
ワークピースの表面とブレードの終端部との間において最小接触圧力を維持するために、好ましくは、本デバイスおよび具体的には第1のマウントは、使用時に、少なくとも第1の作用圧力に応じて第1のブレードの位置および/または配向を調節するようにさらに構成され、これによって、使用時に第1のブレードの終端部とワークピースの表面との間における前記接触圧力が少なくとも部分的に相殺される。有利には、少なくとも第1の作用圧力に応じて第1のブレードの位置および/または配向を調節することにより、この接触圧力を軽減することが可能になり、したがって先端部とワークピースとの間の過剰な接触圧力が緩和される。
【0044】
接触圧力の相殺は、
図6を参照としてさらに詳細に説明されることになる複数の方法によって実現され得る。
図6Aは、第1のシャッタ要素の2つの実施形態201aおよび201bを示す。これらの両実施形態において、マウントは、軸211aを中心として回転可能になるように構成され、それによりブレードの先端部は、例えば付着面101を越えてなどワークピースの方向に向かう先端部の動作を生じさせることなく、閉位置から離れる方向へ引かれることが可能となる。実施形態201aでは、回転軸は、ブレードの先端部を越えて延在するアームの終端部の付近に設けられる。実施形態201bは、仮想軸に沿って回転するように構成された代替的なマウントを示す。
【0045】
例えば
図3~
図5および
図6に示すような非常に好ましい一実施形態では、第1のマウント211は、使用時に対応するブレード221に沿った方向にこのブレードを引き戻すように構成された引戻し機構を備える。
図6Bは、ブレード221がアイドル位置および動作条件下位置にあるマウントを示す。アイドル位置では、ブレードは、反対側の他のシャッタ要素202の終端部に接触する。開位置において、ブレードは、引戻し位置221'まで距離RDだけ引き戻される。さらに、第1の付着チャンバ111内のインクに印加された作用圧力の影響下における引戻し位置にあるブレードの撓曲が図示される。好ましくは、ブレードは、付着面101を越えるブレードの先端部の移動を回避するように、印加される作用圧力に依存して引き戻され、したがって、同一平面内接触を維持しつつブレードとワークピースとの間の接触力を緩和させる。オリフィスの開口幅Wは、摺動距離および作用圧力(ブレードの撓曲距離)によって決定される点が理解されよう。
【0046】
いくつかの実施形態では、ブレードの摺動運動および/または回転運動は、所定の較正値に応じて制御される。好ましくは、本システムは、コントローラを備え、例えばこれはフィードバックコントローラであり、例えば主要本体に対するブレードの終端部の中の1つまたは複数の位置および/または配向を調節するために第1のマウントおよび第2のマウントの中の1つまたは複数に対して作用する力フィードバックコントローラである。
【0047】
例えば
図5および
図6Bに示すようないくつかの実施形態では、付着システムは、少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素(隔壁)の終端部に設けられる摺動要素260を備える。摺動要素260は、付着面101に沿って延在し、閉状態においては前記摺動要素の両終端部に沿って第1のシャッタ要素および第2のシャッタ要素(ブレード)の終端部同士を接触させるように構成される。有利には、摺動要素は、使用時にワークピースの表面に沿って接触および摺動するための細長接触面を備える。摺動要素は、使用時にシステムとワークピースとの間の接触圧力を軽減することが理解できる。好ましくは、細長接触面は、低摩擦および/または耐摩耗性の材料からなり、またはこの材料から形成され、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリフッ化ポリマー、ナイロン、および/またはポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含むポリマー組成物などのコーティングからなるまたは形成される。
【0048】
典型的には、ブレードは、0.5~3ミリメートルの間の範囲内の厚さと、約1.5~10ミリメートルの範囲内のマウント/先端部間長さ(アーム)とを有する。
図7は、室温にて印加圧力に依存する、2~7ミリメートルの間の長さ(マウントと先端部との間のアーム)を有する典型的なPEEKブレードの曲がりを示す。
図7Aは、1ミリメートルの厚さを有するPEEKブレードの場合の先端部の所定の撓曲距離「h」を示す。
図7Bは、他の同様のしかし1.6mmの厚さを有するブレードの曲がりを示す。理解されるように、撓曲距離は、印加される圧力に対して線形比例することが判明した。有利には、例えば上述のような好ましい動作温度などの高音においても、非常に予想可能な挙動が見られた。
【0049】
いくつかの実施形態では、付着システムは、超音波トランスデューサ185を備える。好ましくは、前記トランスデューサは、例えば隔壁の終端部になどワークピースの付近に設けられるか、または例えば
図4および
図5に示すように隔壁の終端部内に埋設される。ワークピースの付近に超音波トランスデューサを位置決めすることにより、トランスデューサは、使用時に、溝内に付着された印刷可能媒材に対して作用することが可能となる。超音波処理は、溝内の気泡形成を軽減させ得る。より重要な点として、トランスデューサは、
図8に示すような付着システムアセンブリとの関連においてさらに詳細に説明されるように、洗浄動作モードに寄与し得る。
【0050】
有利には、本明細書において開示されるような付着システムは、低粘度インク、および/またはエタノール、プロパノール、およびアセトンなどの有機溶剤を含むがこれらに限定されない、洗浄剤を付着するためにも使用することが可能である。有利には、洗浄剤は、特に超音波処理と組み合わされる場合に、表面および/または溝を洗浄するために使用され得る。溶融したコンタミが例えば溶剤の揮発時になどワークピース上に再付着するのを避けるために、溶剤は、好ましくはワークピースから除去され、例えば吸い上げられる。
図8に示すように、デュアル付着チャンバシステムが、特定の利益のためにこの効果を伴いつつ使用され得る。
図8では、使用時に、第1の付着チャンバおよび第2の付着チャンバの一方から洗浄剤2'を付着し、第1の付着チャンバおよび第2の付着チャンバの他方を介して前記洗浄剤を少なくとも部分的に回収するためのシステム1'が示される。洗浄剤2'の付着およびその後の除去は、対応する付着チャンバの一方に正圧の作用圧力WP1'を印加し、対応する付着チャンバの他方に負圧WP2'を印加することによって実現され得る。
【0051】
さらなる一態様によれば、本開示は、付着システムアセンブリに関する。
図8は、一例のアセンブリ1000を示す。例えば図示されるようなアセンブリ1000は、ワークピースの表面内に設けられた溝を洗浄するための洗浄剤と、前記洗浄された溝を充填するための高固形分印刷可能媒材とを逐次的に付着するように構成される。これを目的として、前記システムは、直列に配置された、本明細書において開示されるような少なくとも2つの付着システムを備える。これらのシステムの少なくとも一方、好ましくは両方が、デュアル付着チャンバシステムである。好ましくは、これらのシステムの一方が、洗浄剤を付着および除去するために構成される。他方のシステムは、洗浄された溝内に例えば高固形分ペーストなどの印刷可能媒材2を付着するために構成される。任意には、付着システムアセンブリは、溝の外部に付着されたある量の印刷可能媒材の少なくとも一部を選択的に除去するために配置された、例えばワイピングシステム601、602、603などの1つまたは複数の洗浄システムを備える。例えば、本アセンブリは、ワークピースから洗浄剤2'の残渣を除去するために洗浄ユニットと充填ユニットとの間に位置決めされたワイパーまたはブロワーの中の1つまたは複数を備えることが可能である。代替的にはまたは追加的には、本アセンブリは、着面/引き戻り位置にてワークピース上に残った印刷可能媒材2のトレースを除去するための1つまたは複数のワイパーを、および/またはワークピースのエッジに沿って付着した印刷可能媒材のトレースを除去するように構成されたワイパーを備え得る。
【0052】
さらに他の態様では、本開示は、溝内に印刷可能媒材を付着する方法と、本開示のシステムの使用とに関する。ワークピースの表面内に設けられた溝内に印刷可能媒材を付着するこの方法は、本明細書において開示されるような付着システムを用意するステップと、第1の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第1の作用圧力を印加することにより第1のブレードを撓曲させて第1のオリフィスを少なくとも部分的に開くステップと、ワークピースの表面に対する交軸方向における主要本体とワークピースとの相対移動を実現することにより、ワークピースの表面と第1のブレードの終端部と少なくとも2つのシャッタ要素の中の他のシャッタ要素の終端部との間の同一平面内接触を維持するステップと、ワークピースの表面に沿って横方向に付着ヘッドとワークピースとの相対移動を実現することにより、溝を越えるように付着ヘッドを案内するステップとを少なくとも含む。
【0053】
好ましくは、本システムは、デュアルチャンバタイプのものである。したがって、およびかかるデュアルチャンバシステムの説明に即して、本方法は、さらに、第2の付着チャンバ内に収容された印刷可能媒材に第2の作用圧力を印加することにより第2のブレードを撓曲させて、第2の作用圧力を印加しつつ第2のオリフィスを少なくとも部分的に開くステップを含む。好ましくは、付着ヘッドが溝を越えて案内されるときに第1のオリフィスが先導し第2のオリフィスが後続する(横移動方向に沿ってみた場合に)場合には、第1の作用圧力は第2の作用圧力よりも高く、または第2のオリフィスが先導し第1のオリフィスが後続する場合には、第2の作用圧力は第1の作用圧力よりも高い。
【0054】
図9は、本明細書において開示されるようなデュアルチャンバシステムを使用して充填されたワークピース中に形成された例示の溝901-1~901-4の実験結果を示す。第1の付着チャンバ111および第2の付着チャンバ112が図示され、これらの各チャンバは、1000Pa.sの粘度および4であるチクソ指数を有する印刷可能媒材で充填される。このシステムは、ワークピースと同一平面内接触状態にある。例えばブレードなどのシステムの他のパーツは、理解を容易にするために省略される。このシステムは、対応する矢印により示される方向へと速度Vcにてワークピースを越えて移動される。先導する作業チャンバ111(移動方向において)内の作用圧力WP1(P1)は、後続するチャンバ112内の圧力WP2(P2)よりも高い。これらのチャンバが溝を越えて通過するときに、印刷可能媒材2(ペースト)が各溝内へと押し込まれる。理解されるように、ペーストは、溝内へと選択的に付着され、インクは、溝に隣接するワークピースの表面902の領域上には実質的にまったく付着されない。下方の2つの断面図は、充填レベルを示す。情報の断面図は、実施される作業に関し、先導チャンバWP1内の作用圧力は6バールに設定され(過圧)、後続チャンバWP2内の圧力は1バールの過圧に設定された。下方の断面図では、WP2は、3.5バールに変更された。いずれの場合においても、速度は0.025m/sであった。理解されるように、後続チャンバ内の作用圧力を変更することは、受点レベルに対して顕著な効果を有し、充填レベルに関する制御を可能にし、さらには1度のパスで実質的に完全な溝の充填を可能にする。
【0055】
別のまたは他の好ましい実施形態では、提供される本システムは、使用時に前記ブレードに沿った方向に対応するブレードを引き戻すように構成された引戻し機構を備える第1のマウントを備える。したがって、この方法は、第1のブレードの終端部とワークピースの表面との間の接触圧力を少なくとも部分的に相殺するように、前記ブレードに沿った方向に第1のブレードを引き戻すステップを含むものとして理解することができる。本システムとの関連において説明されるように、第1のブレードの引戻しは、オリフィスを開き、ワークピースとブレードとの間の接触圧力を軽減することに寄与するものとして理解することができる。
【0056】
典型的には、これらの方法は、1つまたは複数のオリフィスを閉じるステップを含む。例えば付着サイクルの完了後などにオリフィスを閉じるステップは、典型的には、印刷可能媒材の吐出を停止するために印加作用圧力を少なくとも低下させることを含む。典型的には、1つまたは複数のオリフィスを閉じるステップは、アイドル閉位置へと第1のブレードを位置変更することを含む。典型的には、閉位置へのブレードの位置決めは、適用された引戻し距離を反転させることを含む。代替的にはまたは追加的には、オリフィスを閉じることは、対応する作業チャンバに負圧を印加することを含み得る。付着される材料のタイプに関わらず、好ましくは、開いた第1のオリフィスおよび/または第2のオリフィスを閉じるステップは、同一平面内接触状態が解消される前に実施される。
【0057】
図10は、溝を洗浄する方法を示す。上方の図は、本明細書において開示されるようなデュアルチャンバシステムを使用して洗浄される例示の溝を示す。このシステムは、ワークピースと同一平面内に位置しながら、矢印により示される方向においてワークピースの表面を越えて移動される。
図9と同様に、このシステムの第1の付着チャンバ111および第2の付着チャンバ112のみが図示される。ワークピースは、未硬化樹脂で最初にそれぞれ充填される4つの溝901-1~901-4を備える。先導チャンバ111(大気圧を若干上回るWP1で動作される)は、洗浄剤を収容する。後続チャンバ112は、付着した洗浄剤を溝外へと吸い上げる負圧WP2で動作される。洗浄剤が除去されると、洗浄剤中に溶融した樹脂が溝から抽出される。下方の図は、溝に沿った断面図を示し、このシステムが溝を越えて通過するときに溝内に収容される充填レベル(樹脂の割合)を示唆する。トレースから分かるように、これらの溝は、効果的に洗浄され得る。
【0058】
図11は、約250μmの幅および約50μmの深さを有する充填済みの溝901'を有するワークピース900の写真を示す。これらの溝(トラック)は、導電性銀ペースト2(DuPontPE828)で充填される。この特定のワークピースでは、これらの溝は、ほぼ同様の寸法を有する。シングルチャンバシステムは、これらの溝を充填するのに十分に適したものであることが判明した。
図12は、使用されたものと同様の試験設備1を示す。この設備は、
図1Aに示すタイプの、しかし
図3に関連して説明するような摺動機構を有するシングルチャンバシステムを備える。図示するような設備は、ワークピース900と接触状態にありながら付着ヘッド100を支持する並進移動ステージを備える。ワークピースが深さおよび/または幅においてより可変的な溝を備える場合には、デュアルチャンバシステムがより効果的なものとなり得る。
【0059】
これらの溝は、25mm/sのパス速度にて、3バールの圧力を利用して、20℃の温度にて充填した。ブレードは、PEEKから形成され、長さ6ミリメートルおよび厚さ1ミリメートルを有する。
図7Aに関連して説明したように、これらのブレードは、これらの条件下において約150μmの曲がりを有する。理解されるように、これらの溝に直ぐ隣接する表面は、非常に清浄な状態に留まり、これは、スクレーパブレードが予期したとおりに機能していることを示唆するものである。この特定の設備に関して理解されるように、いくつかの材料は、ヘッドのエッジに沿って付着し、これは、例えばワイパーシステムによりおよび/または付着ヘッドの終端境界部に沿ってシールを改善することにより改善され得る。
【0060】
充填済みのトラックは、3D印刷で埋設されたベアダイチップ(50μm厚さ)に接触する。100℃の温度にて5分間にわたりペーストを固化した後に、すべての相互接続部が完全に機能することが確認できた。
【0061】
明快かつ正確な説明のために、本明細書においては、特徴部が同一または別個の実施形態の一部として説明されるが、本発明の範囲は、説明されるすべてのまたは一部の特徴部の組合せを有する実施形態を含み得る点を理解されたい。当然ながら、上記の実施形態またはプロセスのいずれも、設計および利点の発見およびマッチングにおけるさらなる改善を実現するために、1つまたは複数の他の実施形態またはプロセスと組み合わされてもよい点を理解されたい。
【0062】
添付の特許請求の範囲の解釈において、「備えている」という語は、所与の特許請求の範囲内に列挙されるもの以外の他の要素または動作の存在を排除するものではなく、ある要素に先行する「1つの」という語は、複数のかかる要素の存在を排除するものではなく、複数の「手段」は、同一のもしくは異なるアイテムまたは実装された構造体もしくは機能に相当するものであってもよく、開示されるデバイスまたはその部分はいずれも、別様のことが明示されない限りは共に組み合わされてもまたはさらなる部分へと分割されてもよい点を理解されたい。ある請求項が他の請求項を参照する場合に、これは、それあのそれぞれの特徴部の組合せにより実現される相乗的利点を示唆し得る。しかし、いくつかの手段がそれぞれ異なる請求項において記載されている場合であっても、その事実のみによって、これらの手段の組合せを有利に使用することも不可能であるという意味にはならない。したがって、これらの実施形態は、請求項のあらゆる有効な組み合わせを包含し得るものであり、各請求項は、コンテクスト内において明確に除外しない限り、原則的には先行する請求項を参照し得る。
【符号の説明】
【0063】
1 付着システム、試験設備
1' システム
2 印刷可能媒材、インク、機能性ペースト、導電性ペースト
2' 洗浄剤
20 駆動ユニット
30 力計
50 ベアダイチップ
60 スクリーンペースト
100 付着ヘッド
101 付着面
110 主要本体
111 第1の付着チャンバ、先導チャンバ、先導する作業チャンバ
112 第2の付着チャンバ、後続チャンバ
115 凹部
121 第1のオリフィス、開状態
121' 第1のオリフィス、閉伝導
122' 第2のオリフィス
141 第1の加圧機構
142 第2の加圧機構
180 ヒータ
185 超音波トランスデューサ
201 シャッタ要素、第1のシャッタ要素
201a 第1のシャッタ要素の実施形態
201b 第1のシャッタ要素の実施形態
202 シャッタ要素、他のシャッタ要素、
203 シャッタ要素、さらなるシャッタ要素
211 第1のマウント
213 第2のマウント
220 隔壁
221 第1のブレード
221' 引戻し位置
211a 軸
223 第2のブレード
260 摺動要素
601 ワイピングシステム
900 ワークピース
900a 層
900b 層
900c 層
900d 層
900e 層
901 溝
901-1 溝
901-2 溝
901-3 溝
901-4 溝
901' 充填済みの溝
902 表面
904 電子デバイス
905 接触子
1000 アセンブリ
WP1 第1の作用圧力、先導チャンバ内の作用圧力
WP1' 正圧の作用圧力
WP2 後続チャンバ内の圧力、負圧
WP2' 負圧
【国際調査報告】