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特表2023-546708リチウム二次電池用正極添加剤、これを含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用正極添加剤、これを含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極添加剤、これを含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20231030BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231030BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231030BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231030BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231030BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M10/052
H01M10/0569
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524814
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2022000235
(87)【国際公開番号】W WO2022149878
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0001836
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0004278
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボン・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ユン・イ
(72)【発明者】
【氏名】カンホ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジュン・パク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ11
5H029DJ08
5H029EJ04
5H029EJ11
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H050AA02
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA09
5H050GA02
5H050GA11
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明はリチウム二次電池用正極添加剤、これを含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池に関するものであって、より詳細には、化学式1で表される前記正極添加剤は正極活物質に含まれた炭素材の表面に形成され、電解液に溶解されず、正極と負極を電気的に分離する機能を果たすので、電池内において副反応を抑制して電池性能を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるリチウム二次電池用正極添加剤:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、Rは炭素鎖(carbon chain)である。
【請求項2】
前記Rは線状炭素鎖である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項3】
前記Rは炭素数8ないし12のアルキル基である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項4】
(i)ベンゾペリレンまたはその誘導体、及び(ii)少なくとも一末端にアミン基を含む炭素分子を反応させる段階を含む、リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項5】
前記ベンゾペリレンの誘導体はベンゾペリレン無水物(benzoperylene anhydride,BPA)、アミン基含有ベンゾペリレンまたはカルボキシル基含有ベンゾペリレンである、請求項4に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも一末端にアミン基を含む炭素分子は、炭素数8ないし12のアルキルアミンである、請求項4または5に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項7】
前記反応は、100℃ないし200℃の温度で還流(reflux)させた後、冷却する段階を含む脱水縮合反応である、請求項4から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項8】
炭素材を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記炭素材は炭素材表面に請求項1に記載の正極添加剤を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記炭素材が多孔性炭素材であり、前記正極添加剤は前記多孔性炭素材の外部表面及び内部表面のいずれか一つ以上に吸着結合される、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記正極添加剤は炭素材全重量に対して1ないし15重量%で含まれる、請求項8または9に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質は硫黄をさらに含む、請求項8から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
前記硫黄と、前記添加剤を含んだ炭素材全重量との割合が1:1ないし1:0.1である、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項13】
請求項8に記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項14】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在された分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は請求項13に記載の正極である、リチウム二次電池。
【請求項15】
前記電解液はエーテル系溶媒及びカーボネート系溶媒の中から選択される1種以上を含むものである、請求項14に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月7日付韓国特許出願第2021-0001836号及び2021年1月12日付韓国特許出願第2021-0004278号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極添加剤、これを含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近まで、負極としてリチウムを用いる高エネルギー密度電池を開発することに相当の関心が寄せられてきた。例えば、非電気活性材料の存在で負極の重量及び体積を増加させて電池のエネルギー密度を減少させるリチウム挿入の炭素負極、及びニッケルまたはカドミウム電極を有する他の電気化学システムに比べて、リチウム金属は低重量及び高容量特性を有するので、電気化学電池の負極活物質として非常に関心を集めている。リチウム金属負極、またはリチウム金属を主に含む負極は、リチウムイオン、ニッケル金属水素化物またはニッケル-カドミウム電池のような電池よりは軽量化され、高エネルギー密度を有する電池を構成する機会を提供する。このような特徴はプレミアムの低い加重値で支払われる、携帯電話及びラップトップコンピュータのような携帯用電子デバイス用電池に対して非常に好ましい。
【0004】
このような類型のリチウム電池用正極活物質は公知であり、前記正極活物質は硫黄-硫黄結合を含む硫黄含有正極活物質を含み、硫黄-硫黄結合の電気化学的切断(還元)及び再形成(酸化)から高エネルギー容量及び再充電能が達成される。
【0005】
前記のように負極活物質としてリチウムとアルカリ金属を、正極活物質として硫黄を用いるリチウム-硫黄二次電池は、理論エネルギー密度が2,800Wh/kgであり、硫黄の理論容量が1,675mAh/gで他の電池システムに比べてはるかに高い。また、硫黄は資源が豊富であって安価であり、環境に優しい物質であるとの長所から、リチウム-硫黄二次電池は携帯電子機器のエネルギー源として注目されている。
【0006】
しかし、リチウム-硫黄二次電池の正極活物質として用いられる硫黄は不導体であるため、電気化学反応で生成された電子の移動が難しい。また、前記リチウム-硫黄二次電池の充・放電過程で発生するポリスルフィド(Li~Li)が溶出され、前記リチウムスルフィド(Li/LiS)と硫黄は電気伝導性が良くなく、電気化学反応に対する動力学(kinetic)が遅く、電池寿命特性と速度特性が阻害される問題があった。
【0007】
このようなリチウム-硫黄二次電池における問題点を改善すべくベンゾペリレンイミド(benzo[ghi]peryleneimide, BPI)を正極の添加剤として導入する場合、前記BPIが酸化還元媒介体(redox mediator)として役割を果たし、電気化学反応の動力学(kinetic)を向上させ、電池の性能と寿命特性を向上することができるという研究結果が報告されたところである(Laura C.H.Gerber et al.; “Three-Dimensional Growth of LiS in Lithium-Sulfur Batteries Promoted by a Redox Mediator”;Nano Lett.2016,16,1,549-554)。
【0008】
しかし、前記BPIは、リチウム-硫黄二次電池の電解液に用いられるエーテル系溶媒またはカーボネート系溶媒に溶解する性質があり、前記BPIが電解液に溶解されると、電気的に分離されなければならない正極と負極の間で電子を伝達するので、内部短絡を誘発して電池の性能を低下させる問題がある。
【0009】
よって、リチウム-硫黄二次電池を始めとするリチウム二次電池の電解液に溶解されず、正極で進行される反応に対する触媒の役割が果たせる添加剤の開発が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nano Lett.2016,16,1,549-554;Laura C.H.Gerber et al.;“Three-Dimensional Growth of Li2S in Lithium-Sulfur Batteries Promoted by a Redox Mediator”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、リチウム二次電池用電解液に溶解されず、正極において酸化還元媒介体(redox mediator)として触媒の役割が果たせるリチウム二次電池用の正極添加剤を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用の正極添加剤を含む正極活物質、正極及びリチウム二次電池用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表されるリチウム二次電池用正極添加剤を提供する:
[化学式1]
【化1】
【0014】
前記化学式1において、Rは炭素鎖(carbon chain)である。
【0015】
本発明はまた、ベンゾペリレン無水物(benzoperylene anhydride、BPA)と少なくとも一末端にアミン基を含む線状炭素分子を反応させる段階を含むリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、炭素材を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、前記炭素材は炭素材表面に前記正極添加剤を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0017】
本発明はまた、前記正極添加剤を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるリチウム二次電池用正極添加剤は電解液に溶解されないので、正極添加剤が電解液に溶解される際に発生する内部短絡による電池性能の低下現象を防止することができる。
【0020】
また、前記リチウム二次電池用正極添加剤はリチウム二次電池の正極に含まれる炭素剤に吸着された状態で電気化学的活性を示し、正極において進行する反応に対する触媒の役割を果たすので、電池の電気化学的活性を向上することができる。
【0021】
また、前記リチウム二次電池用正極添加剤はリチウム二次電池の正極に含まれる炭素剤に吸着された状態で電気化学的活性を示すので、電池の電気化学的活性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例と比較例において正極添加剤を合成するために用いられた原料物質を示した模式図である。
図2】実施例1と比較例1の正極添加剤を含む混合溶液に対するFT-IR(Fourier-transform infrared spectroscopy)測定結果を示したグラフである。
図3】実施例1の正極添加剤と炭素材(MWCNT)を含む混合溶液の経時的による色変化を示した写真である。
図4】実施例1の正極添加剤の吸着有無によるコインセルの電気化学的活性を示したグラフである。
図5】正極添加剤の吸着有無による実施例2、比較例1及び3のコインセルの寿命特性を示したグラフである。
図6】正極添加剤の吸着有無による実施例2、実施例4及び比較例3のコインセルの寿命特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に対する理解に役立つために本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられた用語または単語は、通常的であるか事典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0025】
リチウム二次電池用正極添加剤
本明細書はリチウム二次電池用正極添加剤に関するものであって、一般的なリチウム二次電池用正極に用いられる炭素材に吸着して電解液に溶解されない物性を有し、炭素材表面に吸着した状態で電気化学的活性を有するリチウム二次電池用正極添加剤 に関するものである。
【0026】
本発明において、前記リチウム二次電池用正極添加剤は下記化学式1で表されるものである。
【0027】
[化学式1]
【化2】
【0028】
前記化学式1において、Rは炭素鎖(carbon chain)である。
【0029】
前記化学式1の添加剤はベンゾペリレンイミド(benzo[ghi]peryleneimide,BPI)に炭素鎖を導入した構造を有する。前記炭素鎖はその形態が特に制限されず、例えば、線状、環状または分岐状の炭素鎖であってもよい。
【0030】
また、前記炭素鎖が線状炭素鎖である場合、環状または分岐状の炭素鎖に比べて炭素材に対する吸着工程を容易に行われ、工程効率を向上することができる。例えば、前記線状の炭素鎖は脂肪族の炭素鎖(aliphatic carbon chain)であってもよい。
【0031】
前記BPIは、ベンゾペリレン無水物(benzoperylene anhydride、BPA)とアミンを含む分子の脱水縮合により合成されるイミド(imide)化合物であって、リチウム二次電池用正極添加剤として用いられている。しかし、前記BPIは電解液に溶解する性質を有するので、電解液に溶解した状態で電気的に分離されなければならない正極と負極との間で電子を伝達することになり、内部短絡を招いて電池の性能を低下させられる。
【0032】
しかし、前記化学式1のようにBPIに炭素鎖を導入することになると、炭素鎖が通常の電解液溶媒によく溶けない特性によって、電解液に溶解しなくなる。この際、前記電解液はリチウム二次電池用電解液を意味し、例えば、カーボネート系溶媒及び/またはエーテル系溶媒を含む電解液を意味するものであってもよい。
【0033】
前記炭素鎖において、炭素原子の個数が少ないと電解液への溶解度が調節できないため電解液に溶解しないようにする機能を付与することが難しく、炭素原子の個数が多いと電気化学反応ができるベンゾフェニレン無水物(BPA)の割合が相対的に減少するため、添加剤の質量当たりの効果が減少することがあり、また電池重量を不必要に増加させることができる。よって、前記Rは好ましくは炭素数8ないし12のアルキル基であってもよい。
【0034】
また、前記化学式1の添加剤において、炭素鎖ではなくエーテル鎖などが含まれると、電気陰性度の大きい酸素などの原子によって極性を有する電解液溶媒との親和性が良くなるので電解液に容易に溶解し、これにより正極と負極との間の電子伝達が行われ、内部短絡を引き起こして電池の性能を低下することができる。
【0035】
リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法
本発明はまた、リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法に関するものであって、(i)ベンゾペリレンまたはこれの誘導体、及び(ii)少なくとも一末端にアミン基を含む炭素分子を反応させる段階を含むことができる。
【0036】
本発明において、前記ベンゾペリレンの誘導体はベンゾペリレン無水物(benzoperylene anhydride,BPA)、アミン基含有ベンゾペリレンまたはカルボキシル基含有ベンゾペリレンであることができ、好ましくは、炭素分子との反応性を考慮して、前記ベンゾペリレンの誘導体はベンゾペリレン無水物(BPA)であってもよい。
【0037】
また、本発明において、前記少なくとも一末端にアミン基を含む炭素分子は炭素数8ないし12のアルキルアミンであってもよい。例えば、炭素数8ないし12のアルキルアミンは、オクチルアミン(octylamine、C19N)、アミノデカン(1-aminodecane、C10)またはドデシルアミン(dodecylamine、C12)であってもよい。
【0038】
また、前記反応は有機溶媒に反応物を溶解させた後、100℃ないし200℃の温度で還流(reflux)した後、冷却させる段階を含む脱水縮合反応であってもよい。この際、前記有機溶媒は、一般にリチウム二次電池の正極反応において用いられる有機溶媒であれば特に制限されず、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethylformamide)であってもよい。
【0039】
前記反応温度は100℃以上、120℃以上または140℃以上であることができ、160℃以下、170℃以下、または200℃以下であってもよい。前記反応温度が100℃未満であると反応速度が遅いため所望の化合物が得られず、200℃超えまたは溶媒の沸点に比べて著しく高い場合には気化により気泡が発生するため実験装置が損傷することがある。
【0040】
また、前記還流は前記化学式1の添加剤が十分に合成される程度を考慮して5時間ないし30時間実施することができ、具体的には、5時間以上または10時間以上実施したり、20時間以下または30時間以下の間実施するものである。前記還流時間が10時間未満であれば反応が終了しないため所望の反応生成物が得られず、30時間超えであれば過反応が発生し、工程効率が低下することがある。
【0041】
また、前記冷却は常温まで冷却させるものであることができ、この際、常温とは20℃以上または23℃以上であることができ、27℃以下または30℃以下であることができ、例えば、25℃である。前記冷却温度が20℃未満であれば冷却時間が長くなって工程時間が不必要に長くなり、30℃超えであれば十分に冷却されず、沈殿段階の収率が低下することがある。
【0042】
また、前記冷却後にはメタノールを添加して溶液上の反応生成物が沈殿するように撹拌する段階をさらに含むことができる。前記撹拌時間は30分ないし3時間であってもよい。例えば、前記攪拌時間は30分以上または1時間以上であることができ、2時間以下または3時間以下であってもよい。前記攪拌時間が30分未満であれば沈殿時間が十分に確保されないため収率が低くなり、3時間超えであれば工程効率が低下することがある。
【0043】
また、前記撹拌する段階の後には前記混合物を減圧ろ過及び洗浄する段階をさらに含むことができ、純度を向上させることができる。
【0044】
リチウム二次電池用正極活物質
本発明において、前記正極活物質は炭素材を含み、前記炭素材は炭素材表面に下記化学式1で表される正極添加剤を含む。
【0045】
[化学式1]
【化3】
【0046】
前記化学式1において、Rは炭素鎖(carbon chain)である。
【0047】
前記化学式1で表される正極添加剤は前述のとおりである。
【0048】
また、前記炭素材が多孔性炭素材であり、前記正極添加剤は前記多孔性炭素材の外部表面及び内部表面のいずれか一つ以上に吸着結合したものであってもよい。
【0049】
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、前記添加剤は炭素材の全重量に対して1ないし15重量%で含まれることができる。前記添加剤の含量が1重量%未満であると添加剤包含による効果が微々たるものになり、15重量%を超えると炭素材の吸着限界を超えることになり、電解液内に添加剤の一部が溶出して自己放電を引き起こしたり、重量増加により電池のエネルギー密度を減少させることができる。
【0050】
本発明において、正極活物質層は前述の活物質と共に、導電材及びバインダーを含むことができる。
【0051】
前記導電材は電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独、または2種以上の混合物が用いられる。前記導電材は通常的に正極活物質層の総重量に対して1ないし30重量%で含むことができる。
【0052】
前記バインダーは正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独、または2種以上の混合物が用いられる。前記バインダーは正極活物質層の総重量に対して1ないし30重量%で含むことができる。
【0053】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、前記正極活物質は硫黄をさらに含むことができる。具体的には本発明のリチウム二次電池用正極活物質においては、前述の添加剤が吸着された炭素素材を硫黄粉末と複合化した硫黄-炭素複合体が製造できる。前記硫黄-炭素複合体の製造方法は特に制限されず、当業界において通常的に用いる硫黄-炭素複合体の製造方法を用いることができる。
【0054】
例えば、前記硫黄-炭素複合体は溶融拡散法により製造できる。前記溶融拡散法は加熱を通じた硫黄の溶融により炭素粒子内部へ硫黄が浸透する製造方法である。この際、前記熱処理は様々な直接または間接加熱方式を含むものである。
【0055】
本発明による硫黄-炭素複合体は、(S1)硫黄と炭素を混合する段階;及び前記 (S1)段階において形成された硫黄と炭素の混合物を熱処理する段階;を含むことができる。具体的には、前記熱処理時の温度は100ないし200℃、好ましくは110ないし190℃、さらに好ましくは120ないし180℃であって、溶融拡散法によって熱処理するものであってもよい。前記範囲未満であると硫黄が溶けて炭素に浸透する過程が進行されないため、硫黄-炭素複合体そのものが製造されないことがあり、前記範囲を超えると硫黄の気化によって流失率が大きくなり、硫黄-炭素複合体が変性してリチウム二次電池の正極剤として適用する際に電池の性能改善効果がわずかであることがある。
【0056】
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、硫黄と炭素材を含む場合、前記硫黄と、前記添加剤を含んだ炭素材全重量の割合が1:1~1:0.1となり、好ましくは1:0.5ないし1:0.2になる。これより硫黄の割合が高いと炭素による導電性が足りないのでセルの抵抗が大きくなることがあり、これより硫黄の割合が低いと硫黄の重量比が低すぎて電池のエネルギー密度が低くなる。
【0057】
リチウム二次電池用正極
本発明はまた、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極に関するものである。
【0058】
好ましくは、前記正極中に含まれる化学式1の添加剤は、リチウム二次電池の電解液として一般的に用いられるカーボネート系溶媒及び/またはエーテル系溶媒に溶解しないので、硫黄-炭素複合体を正極活物質として含むリチウム-硫黄二次電池の正極として好適である。
【0059】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、前記化学式1の添加剤を前記正極に含まれた炭素材の表面に吸着したものであってもよい。吸着による強い結合力によって前記化学式1の添加剤は電池駆動時にも電解液に溶解しないことがあり、これにより、前記化学式1の添加剤が電解液に溶解して現れる電池の短絡のような現象を防止することができる。また、化学的結合無しにも前記化学式1の添加剤を炭素材表面に付着することができるので、化学的結合に必要なその他の化学物質を添加する場合に発生する化学/電気化学的介入を防止することができる。また、吸着は早い時間内に起こるので、数分以内に表面付着反応が完了できる。
【0060】
本発明において、前記化学式1の添加剤と炭素材との重量比は、0.01:1ないし0.15:1であることができ、具体的に、0.01:1以上、0.02:1以上、0.03:1以上、または0.04:1以上であることができ、0.15:1以下、0.09:1以下、0.08:1以下、または0.06:1以下であってもよい。前記重量比が0.01:1未満であると、化学式1の添加剤含量が少なく有意味の変化が現れないことがあり、0.15:1超えであると、炭素材の吸着限界を超えることとなり、電解液内に添加剤の一部が溶出して自己放電を引き起こしたり、重量増加によって電池のエネルギー密度を減少させることができる。
【0061】
リチウム二次電池
本発明はまた、正極、負極、これらの間に介在した分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池に関するものであって、前記正極は前記化学式1の添加剤を含む正極活物質を含む。前記化学式1の添加剤は後述の正極活物質層及び/または負極活物質層に含まれることができる。
【0062】
本発明の前記電解液は有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0063】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動できる媒質の役割を果たせるものであれば特に制限なく用いることができ、好ましくはエーテル系溶媒及びカーボネート系溶媒の中から選択される1種以上を含むように用いることができる。
【0064】
具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2ないしC20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などを用いることができる。なかでもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充・放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1ないし約1:9の体積比で混合して用いるのが電解液の性能が優柔に示される。
【0065】
前記リチウム塩はリチウム二次電池において用いられるリチウムイオンが提供できる化合物であれば特に制限なく用いることができる。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO)、LiN(CSO)、LiN(CFSO)、LiCl、LiI、またはLiB(C)などが用いられる。前記リチウム塩の濃度は0.1ないし2.0Mの範囲内で用いることが良い。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0066】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤をさらに1種以上含まれることもある。この際、前記添加剤は電解質の総重量に対して0.1ないし5重量%で含まれる。
【0067】
本発明において、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成され、前述の正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0068】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチール表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられる。また、前記正極集電体は、通常3ないし500μmの厚さを有することができ、前記正極集電体表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で用いることができる。
【0069】
前記正極は、前述の正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造することができる。具体的に、前述の正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造できる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含量は前述のとおりである。
【0070】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうちの1種単独、または2種以上の混合物を用いることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解または分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0071】
他の方法では、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造することもできる。
【0072】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0073】
前記負極活物質層は、負極活物質と共に選択的にバインダー及び導電材料を含む。
【0074】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を用いることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物を用いることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜を用いることもできる。また、炭素材料は低結晶炭素及び高結晶性炭素などの全て用いられる。低結晶性炭素としては軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0075】
前記バインダー、導電材及び負極集電体は、前述の正極における構成を参照して選択することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は、正極と同様に公知の塗布方法により、特に限定されるものではない。
【0076】
本発明において、前記分離膜は負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体を用いることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることもできる。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が用いられることもあり、選択的に単層または多層構造で用いられることもある。
【0077】
以下、本発明の理解に役立つために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明の範疇及び技術思想の範囲内において様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0078】
図1は実施例及び比較例において正極添加剤を合成するために用いられた原料物質を示す模式図であり、以下、実施例及び比較例においては図1に示すような原料物質を用いて添加剤を合成した。
【0079】
製造例1:ベンゾペリレン無水物(benzoperylene anhydride,BPA)の製造
三つ口フラスコにガラス蓋(glass topper)、熱電対(thermos-couple)及び還流凝縮器(reflux condenser)をそれぞれ取り付け、加熱マントル(heating mantle)に位置させた。
【0080】
無水マレイン酸(maleic anhydride)123.0gを仕込んで75℃で溶解させた後、ペリレン(perylene)8.04gを追加し、240℃に加熱した。
【0081】
クロルアニル(chloranil)16.5gを仕込んで10分間還流(reflux)した後、140℃に冷却し、60℃に加熱したキシレン(xylene)160mlを加えて混合物を得た。
【0082】
前記混合物を90℃に冷却した後、ろ過し、ろ過した混合物をエチルアセテート/クロロホルム(2:1(v/v))溶液に入れ、65℃に加熱及びろ過する洗浄過程を2回繰り返して精製した。
【0083】
その後、精製した混合物を70℃で真空乾燥してBPAを製造した。
【0084】
実施例1
(1)正極添加剤の製造
製造例1で製造したBPA8gとオクチルアミン(octylamine、C8)45mmolを仕込み、160℃で一晩還流(reflux)した後、常温に冷却して合成した化合物を得た。
【0085】
前記化合物にメタノール300mlを加え、室温で1時間撹拌した。
【0086】
その後、前記攪拌された混合物を減圧ろ過した後、メタノールで数回洗浄して乾燥し、リチウム二次電池の正極添加剤を製造した(C8 A-BPI)。
【0087】
(2)正極活物質の製造
製造例1で製造した添加剤と炭素材で多層カーボンナノチューブ(MWCNT、multi-walled CNT、CNano社)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran,TEF)溶媒に混合した。この後、80℃で1日間乾燥して前記製造例1の添加剤が吸着されたMWCNT粉末形態の正極活物質を製造した。このとき、前記添加剤と炭素材は最終生成したMWCNT粉末基準で添加剤がMWCNT粉末100重量部に対して4重量部が含まれるように混合した。
【0088】
(3)正極及びコインセルの製造
前記製造された正極活物質である、製造例1の添加剤が吸着されたMWCNT粉末とカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose,CRB)バインダーとを96:4の重量部で混合して水系スラリーを製造した。前記水系スラリーをアルミニウム箔にコーティング及び乾燥し、14piで打ち抜いて基準電極とし、リチウム電極を相対電極としてコインセルを製造した。前記コインセルの製造時、分離膜はポリエチレン分離膜(16μm、Celgard)を用い、電解液はDOLとDMEの混合溶媒(1:1(v/v))にLiTFSI 1Mが電解液を用いた。
【0089】
実施例2
(1)正極添加剤の製造
オクチルアミンの代わりにアミノデカン(1-aminodecane,C10)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池の正極添加剤(C10 A-BPI)を製造した。
【0090】
(2)正極活物質の製造
その後、硫黄と前記実施例1と同様にMWCNT100重量部に対して前記正極添加剤(C10 A-BPI)が4重量部吸着されるようにしたMWCNT粉末とを1:0.33の重量部に混合し、150℃で1時間熱処理して、正極活物質である硫黄-炭素複合粉末を製造した。
【0091】
(3)正極及びコインセルの製造
前記硫黄-炭素複合粉末とカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose,CMB)バインダーとを96:4の重量部で混合して水系スラリーを製造した。前記水系スラリーをアルミニウム箔にコーティング及び乾燥し、14piで打ち抜いて基準電極とし、リチウム電極を相対電極としてコインセルを製造した。前記コインセルの製造時、分離膜はポリエチレン分離膜(16μm、Celgard)を用い、電解液はDOLとDMEの混合溶媒(1:1(v/v))にLiTFSI 1Mが電解液を用いた。
【0092】
実施例3
オクチルアミンの代わりにドデシルアミン(dodecylamine,C12)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池の正極添加剤(C12 A-BPI)、正極活物質及びコインセル形態のリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0093】
実施例4
正極活物質として、前記実施例2の正極添加剤(C10 A-BPI)MWCNT粉末100重量部対比8重量部で吸着したMWCNT粉末を用いたことを除いては、実施例2と同様の方法で正極活物質及びコインセル形態のリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0094】
比較例1
オクチルアミン(octylamine、C8)の代わりにテトラエチレングリコールモノアミン(tetraethyleneglycol monoamine)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池の正極添加剤、正極活物質、正極及びコインセルを製造した。
【0095】
比較例2
添加剤が吸着されていない一般的なMWCNT粉末を正極活物質として用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でコインセルを製造した。
【0096】
比較例3
添加剤が吸着されていない一般的なMWCNT粉末を正極活物質として用いたことを除いては、実施例2と同様の方法でコインセルを製造した。
【0097】
実験例1:リチウム二次電池用電解液溶媒に対する可溶性実験
実施例1と比較例1において製造された添加剤が電解液溶媒に溶解するかに対する可溶性実験を行った(実施例1:C8の線状炭素鎖、比較例1:C8の線状エーテル鎖)。
【0098】
可溶性実験に溶媒はリチウム-硫黄二次電池に一般的に用いられるジメトキシエタン(dimethoxyethan,DME)を用いた。
【0099】
前記実施例1と比較例1の正極添加剤0.1gをジメトキシエタン溶媒10gに仕込んで1日間混合した後、FT-IR(Fourier-transform infrared spectroscopy)測定を行い、混合溶液内に溶質があるか確認した。このとき、FT-IRは、Nicolet iS5(Thermo Fisher Scientific社)を用いて測定した。
【0100】
図2は実施例1と比較例1の正極添加剤を含む混合溶液に対するFT-IR測定結果を示すグラフである。
【0101】
図2に示すように、実施例1の正極添加剤を含む混合溶液においては正極添加剤物質の特徴であるC=Oピークが現れず、比較例1の正極添加剤を含む混合溶液においてはC=Oピークが現れたことを確認した。
【0102】
このような結果から、実施例1の添加剤はDME溶媒に溶けず、比較例1の添加剤はDME溶媒に溶ける特性を有することが分かった。
【0103】
実験例2:炭素吸着性実験
実施例1で製造されたリチウム二次電池の正極添加剤が炭素材に対して吸着性を示すか否かに対する炭素吸着性実験を行った。
【0104】
実施例1で製造されたリチウム二次電池の正極添加剤と炭素材をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran,THF)溶媒に混合し、混合した直後及び1日後に混合溶液を目視観察した。このとき、前記炭素材は多層カーボンナノチューブ(MWCNT、multi-walled CNT、CNano社)を用いた。また、前記添加剤と炭素材は、前記混合溶液の全重量を基準にしてそれぞれ1重量%及び25重量%となるように混合した(添加剤と炭素材との重量比は0.04:1)。
【0105】
図3は実施例1の正極添加剤と炭素材(MWCNT)とを含む混合溶液の経時的な色変化を示す写真である。
【0106】
図3に示すように、実施例1の正極添加剤とMWCNTをTHF溶媒に混合した直後には混合溶液が黄色を示す一方(吸着前)、混合後1日が経過したときには黄色が消えたことを確認した(吸着後)。
【0107】
このような結果から、実施例1の添加剤が炭素材であるMWCNTを含む混合溶液において、前記実施例1の添加剤は炭素材に吸着して溶媒に溶解されないことが分かった。
【0108】
実験例3:電池の電気化学的活性との関連性実験
実施例1及び比較例2でそれぞれ製造された正極活物質を含むコインセルに対して電気化学的活性に対する実験を行った。
【0109】
実施例1の正極活物質はオクチルアミン(octylamine,C8)を原料物質として用いて製造された正極添加剤(C8 A-BPI)が吸着したMWCNT粉末であり、比較例2の正極活物質は正極添加剤が吸着していない一般MWCNT粉末である。
【0110】
実施例1と比較例2のコインセルに対して10mV/secの速度で1.8~2.9V区間を3回往復して3回目の往復時の電圧変化による電流を測定した(VMP3、Biologion)。
【0111】
図4は実施例1の正極添加剤の吸着有無によるコインセルの電気化学的活性を示すグラフである。
【0112】
図4に示すように、実施例1の正極添加剤が吸着したMWCNTを含むコインセルは、一般的なリチウム-硫黄二次電池の駆動範囲である1.8Vないし2.5Vの範囲内で電気化学的活性を有することを確認した。
【0113】
このような結果から、実施例1の正極添加剤は、リチウム-硫黄二次電池を始めとするリチウム二次電池の電気化学的活性を向上させることが分かる。
【0114】
実験例4:寿命特性の確認
実施例2と比較例1及び3のコインセルに対して0.1Cの定電流で1.8~2.5Vの範囲で3回充・放電し、0.2C/0.5C(充/放)の定電流で同一の電圧範囲で引き続き充・放電する条件で電池容量を測定し、図5に示した(PNE社のpotentiostat使用)。
【0115】
図5に示すように、実施例2は寿命悪化の問題がないのに対し、比較例1は電解液から触媒が溶出するにつれて寿命が急速に悪化することが確認できた。
【0116】
実験例4:放電速度別の放電容量による電圧変化の確認
実施例2、実施例4及び比較例3のコインセルに対して放電速度別の放電容量による電圧変化を測定して寿命特性を比較し、図6に示した。
【0117】
図6に示すように、比較例3に比べて実施例2及び実施例4は放電電圧が上昇することが分かった。
【0118】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】