(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習及び下部尿路症状の診断方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/20 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A61B5/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524820
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2021014355
(87)【国際公開番号】W WO2022086066
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138647
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年10月15日に公開された以下の論文。Seokhwan Bangら著、2020 Annual Meeting of The Korean Urological Association(「Feasibility of a machine learning-based diagnostic platform to evaluate male lower urinary tract disorder using simple uroflowmetry」)、2020年、69ページ
(71)【出願人】
【識別番号】512250119
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】キュ・スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドク・ヒュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ペク・ファン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ファン・バン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038DD06
(57)【要約】
本発明は、単純尿流検査結果の学習方法及び下部尿路症状の診断方法に係り、さらに詳細には、非浸湿的なデータである単純尿流検査結果を用いて神経網を学習させ、学習された神経網を用いて下部尿路症状を診断する、単純尿流検査結果の学習方法及び下部尿路症状の診断方法に関する。本発明は、ディープ・ラーニングに基づいて、非浸湿的な検査方法である単純尿流検査結果を用いて学習モデルを生成し、これを用いて下部尿路症状を診断することで、下部尿路症状の診断過程で患者の苦痛と羞恥心の発生を防止し、浸湿的な診断方法を通じて発生する2次感染の危険を低減させる下部尿路症状の診断方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部尿路症状診断のためのディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法において、
単純尿流検査を通じて獲得した結果紙から文字データを抽出する文字抽出ステップと、
前記文字データから下部尿路症状の原因と相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記文字データを学習データとする文字学習モデルを生成する文字学習モデル生成ステップと、を含むディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法。
【請求項2】
前記文字データは、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間(Voiding time)、排尿後の残量(PVR、post-void residual)、及び排尿前の尿量(BFV、bladder filling volume)のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載のディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法。
【請求項3】
下部尿路症状診断のためのディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法において、
単純尿流検査を通じて獲得した結果紙からグラフデータを抽出するグラフ抽出ステップと、
前記グラフデータから下部尿路症状の原因と相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記グラフデータを学習データとするグラフ学習モデルを生成するグラフ学習モデル生成ステップと、を含むディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法。
【請求項4】
前記グラフデータは、経時的な排尿量または経時的な排尿速度を含む、請求項3に記載のディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法。
【請求項5】
前記グラフ抽出ステップは、
前記グラフデータにおいてグラフの変動が始まる地点を、排尿が始まる開始点として抽出する開始点抽出ステップと、
前記グラフデータにおいてグラフの変動が終わる地点を、排尿が終わる終了点として抽出する終了点抽出ステップと、
前記開始点から前記終了点までの区間を抽出して、前記グラフ学習モデルに入力する前処理ステップと、をさらに含む、請求項3に記載のディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法により文字学習モデルを生成し、請求項3ないし5のうちいずれか一項に記載の方法によりグラフ学習モデルを生成する学習モデル生成ステップと、
下部尿路症状診断システムが、診断対象となる単純尿流検査結果紙を入力される入力ステップと、
前記結果紙から前記文字データ及び前記グラフデータを抽出するデータ抽出ステップと、
前記文字データ及び前記グラフデータから、下部尿路症状の原因と相関関係を持つ複数の特徴点をそれぞれ抽出して、前記特徴点を統合する特徴点統合ステップと、
前記文字学習モデル及び前記グラフ学習モデルが前記特徴点と下部尿路症状との相関関係を分析して、前記結果紙が下部尿路症状に該当するかどうかを判断する診断ステップと、を含む、ディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法。
【請求項7】
前記文字データは、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間(Voiding time)、排尿後の残量(PVR、post-void residual)、及び排尿前の尿量(BFV、bladder filling volume)のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項6に記載のディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法。
【請求項8】
前記グラフデータは、経時的な排尿量及び経時的な排尿速度のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項6に記載のディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法。
【請求項9】
前記データ抽出ステップは、
前記グラフデータにおいてグラフの変動が始まる地点を、排尿が始まる開始点として抽出する開始点抽出ステップと、
前記グラフデータにおいてグラフの変動が終わる地点を、排尿が終わる終了点として抽出する終了点抽出ステップと、
前記開始点から前記終了点までの区間を抽出して、前記グラフ学習モデルに入力する前処理ステップと、をさらに含む、請求項6に記載のディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法。
【請求項10】
前記診断ステップは、
前記判断の結果を下部尿路症状に該当する症状と組み合わせて、二進法または四進法で示すステップをさらに含む、請求項6に記載のディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法を具現するためのプログラムが記録された、コンピュータで読取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単純尿流検査結果の学習方法及び下部尿路症状の診断方法に係り、さらに詳細には、非浸湿的なデータである単純尿流検査結果を用いて神経網を学習させ、学習された神経網を用いて下部尿路症状を診断する、単純尿流検査結果の学習方法及び下部尿路症状の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部尿路症状(LUTS:Lower urinary tract symptom)とは、尿の貯蔵および排出過程に関連して現れる排尿開始の難しさ、残尿、頻尿、細い尿、排尿時の緊張、夜尿、緊急尿、間欠的尿などの様々な症状を通称するものである。最近、動物性脂肪摂取の増加と社会的な複雑度の増加に伴う心理的なストレス、喫煙、飲酒、体重増加、休息不足、運動不足などの多様な理由で、下部尿路症状の発症度及びその重症度が増加しつつある。下部尿路症状が深刻になれば、活動に制限が生じ、不安感と緊張状態に常に置かれるようになって、患者に大きい精神的なストレスを引き起こす。睡眠中にトイレを出入りすることで、それに伴う睡眠不足はもとより身体的な疲労が加重して、各種の身体的な問題も引き起こす。
【0003】
下部尿路症状は、膀胱の機能を評価する尿流動態検査(UDS: Urodynamic study)を用いて診断されているが、尿流動態検査は、主に前立腺手術を定めるために行われ、手術の効果が低い排尿筋低活動性(DUA: Detrusor under-activity)のみを持っている患者と、手術の効果が高いと知られている膀胱出口閉塞(BOO: Bladder outlet obstruction)を持っている患者とを判別するために行われる。
【0004】
しかし、従来の尿流動態検査は、膀胱と肛門に圧力を測定するチューブを挿入し、食塩水で膀胱を徐々に満たしながら圧力を測定した後、排尿しながら膀胱の圧力を測定する過程で行われる。すなわち、現在下部尿路症状を診断するために使う尿流動態検査は、患者を不快かつ恥ずかしくすることはもとより、長時間カテーテルを挿管したまま検査を行うため、感染のリスクを伴い、患者に苦痛や羞恥心を引き起こすという問題点がある。
【0005】
これによって、患者に苦痛や羞恥心を誘発せずに泌尿器系(Urinary system)の正確な状態を把握することができる下部尿路症状の診断方法の開発が継続的に求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した下部尿路症状の診断方法の開発要求に応じて、本発明は、ディープ・ラーニングに基づいて、非浸湿的な検査方法である単純尿流検査結果を用いて学習モデルを生成し、これを用いて下部尿路症状を診断することで、下部尿路症状の診断過程で患者の苦痛と羞恥心の発生を防止し、浸湿的な診断方法を通じて発生する2次感染の危険を低減させる下部尿路症状の診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態として、下部尿路症状診断のためのディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法が提供される。
【0008】
本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法は、単純尿流検査を通じて獲得した結果紙から文字データを抽出する文字抽出ステップ、及び前記文字データから下部尿路症状の原因と相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記文字データを学習データとする文字学習モデルを生成する文字学習モデル生成ステップを含む。
【0009】
本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法において、前記文字データは、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間(Voiding time)、排尿後の残量(PVR、post-void residual)、及び排尿前の尿量(BFV、bladder filling volume)のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0010】
本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法は、単純尿流検査を通じて獲得した結果紙からグラフデータを抽出するグラフ抽出ステップ、及び前記グラフデータから下部尿路症状の原因と相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記グラフデータを学習データとするグラフ学習モデルを生成するグラフ学習モデル生成ステップを含む。
本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法において、前記グラフデータは、経時的な排尿量または経時的な排尿速度を含む。
【0011】
本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法において、前記グラフ抽出ステップは、前記グラフデータにおいてグラフの変動が始まる地点を、排尿が始まる開始点として抽出する開始点抽出ステップ、前記グラフデータにおいてグラフの変動が終わる地点を、排尿が終わる終了点として抽出する終了点抽出ステップ、及び前記開始点から前記終了点までの区間を抽出して、前記グラフ学習モデルに入力する前処理ステップをさらに含む。
本発明の一実施形態として、ディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法は、本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法を用いて文字学習モデル及びグラフ学習モデルを生成する学習モデル生成ステップ、下部尿路症状診断システムが、診断対象となる単純尿流検査結果紙を入力される入力ステップ、前記結果紙から前記文字データ及び前記グラフデータを抽出するデータ抽出ステップ、前記文字データ及び前記グラフデータから、下部尿路症状の原因と相関関係を持つ複数の特徴点をそれぞれ抽出して、前記特徴点を統合する特徴点統合ステップ、及び前記文字学習モデル及び前記グラフ学習モデルが前記特徴点と下部尿路症状との相関関係を分析して、前記結果紙が下部尿路症状に該当するかどうかを判断する診断ステップを含む。
【0013】
本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法において、前記文字データは、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間、排尿後の残量(PVR)、及び排尿前の尿量(BFV)のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0014】
本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法において、前記グラフデータは、経時的な排尿量及び経時的な排尿速度のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0015】
本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法において、前記データ抽出ステップは、前記グラフデータにおいてグラフの変動が始まる地点を、排尿が始まる開始点として抽出する開始点抽出ステップ、前記グラフデータにおいてグラフの変動が終わる地点を、排尿が終わる終了点として抽出する終了点抽出ステップ、及び前記開始点から前記終了点までの区間を抽出して、前記グラフ学習モデルに入力する前処理ステップをさらに含む。
【0016】
本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法において、前記診断ステップは、前記判断の結果を、下部尿路症状に該当する症状と組み合わせて、二進法または四進法で示すステップをさらに含む。
本発明の一実施形態として、前述した方法を具現するためのプログラムが記録されている、コンピュータで読取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、非浸湿的な検査結果データのみを用いて、被検者の肉体的/精神的な苦痛を最小化して下部尿路症状を診断することができる。
また、尿流動態検査などの無駄な検査を省略することで手間を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】学習モジュールを生成して、下部尿路症状を診断する時に使われる一般的な単純尿流検査結果紙の一例である。
【
図2】文字データを用いた単純尿流検査結果の学習方法のフローチャートである。
【
図3】グラフデータを用いた単純尿流検査結果の学習方法のフローチャートである。
【
図4】本発明によるグラフ抽出ステップのフローチャートである。
【
図5】本発明による学習方法及び診断方法において、グラフデータを抽出する過程である。
【
図6】本発明によるディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法のフローチャートである。
【
図7】本発明による診断方法において、抽出された特徴点を統合する過程である。
【
図8】本発明による下部尿路症状診断システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、添付した図面を参照して当業者が容易に実施するように本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明はいろいろな相異なる形態に具現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして、図面で、本発明を明らかに説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書の全般にわたって類似した部分については、類似した図面符号を付けた。
【0020】
本発明で使われる用語について簡単に説明し、本発明について具体的に説明する。
本発明で使われる用語としては、本発明での機能を鑑みてなるべく現在広く使われている一般的な用語を選択したが、これは、当業者の意図または判例、新しい技術の出現などによって変わりうる。また、特定の場合には、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該発明の説明部分で詳細にその意味を記載する。よって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が持っている意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されねばならない。
【0021】
明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。また、明細書に記載の「…部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアで具現されるか、またはハードウェアとソフトウェアとの結合で具現される。また、明細書の全般にわたって、ある部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけではなく、「その間に他の素子を介して」連結されている場合も含む。
【0022】
以下、添付した図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、学習モジュールを生成して、下部尿路症状を診断する時に使われる一般的な単純尿流検査結果紙の一例である。
図1を参照すれば、本発明による単純尿流検査結果の学習方法及び下部尿路症状の診断方法において、格納データとして使われる単純尿流検査結果紙1は、文字データ2、グラフデータ3及び患者個人情報4を含む。
単純尿流検査結果紙1は、単純尿流検査を通じて生成された結果データを報告する形式の文書である。
【0023】
文字データ2は、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間(Voiding time)、排尿後の残量(PVR、post-void residual)、及び排尿前の尿量(BFV、bladder filling volume)のうち少なくともいずれか一つを含む。
グラフデータ3は、経時的な排尿量(Voided volume)または経時的な排尿速度を含む。
【0024】
患者個人情報4は、被検者の年齢、身長、体重、単純尿流検査を通じて獲得した被検者の排尿パターン、尿流率検査指標、前立腺症状点数、過去の病歴及び排尿効率のうち少なくともいずれか一つ以上を含む。
【0025】
前記文字データ2において、前記排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)と排尿時間は、グラフデータ3でグラフの高さ及び幅を定量化する要素として使われる。
【0026】
また、排尿前の尿量(BFV)は、排尿量に排尿後の残量(PVR)を合わせたものであるため、膀胱充満状態によって、最大尿流率及び尿流率のパターンが変わりうるという仮定の下で、排尿前の膀胱充満の程度をさらなる情報として活用することができる。
【0027】
また、排尿後の残量(PVR)(または排尿効率(Voiding efficiency))は、排尿量を排尿前の尿量(BFV)で割った値であるため、排尿後の残量(PVR)をさらなる情報として活用することができる。これを通じて、グラフには反映されない別途の値で排尿効率を示すことができる。
【0028】
本発明による単純尿流検査結果の学習方法は、単純尿流検査結果紙から文字データとグラフデータ3を抽出して、各検査データが下部尿路症状といかなる相関関係を持つかを学習する文字学習モデル及びグラフ学習モデルを生成し、下部尿路症状の診断方法は、単純尿流検査結果の学習方法によって生成された学習モデルを用いて、単純尿流検査結果紙のみを用いて下部尿路症状があるかどうかを診断する。
【0029】
図2は、文字データを用いた単純尿流検査結果の学習方法のフローチャートである。
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による文字データ2を用いた単純尿流検査結果の学習方法は、単純尿流検査を通じて獲得した結果紙から文字データ2を抽出する文字抽出ステップ(S111)、及び前記文字データ2から下部尿路症状の原因による相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記文字データ2を学習データとする文字学習モデルを生成する文字学習モデル生成ステップ(S112)を含む。
【0030】
前記文字抽出ステップ(S111)は、単純尿流検査結果紙から、排尿過程で最大尿流率を持つ地点(Qmax)、排尿時間、排尿後の残量(PVR)、及び排尿前の尿量(BFV)などの患者の排尿情報を含む文字データ2を抽出する。
【0031】
文字データ2を抽出する方法としては、単純尿流検査結果紙の全体から、抽出しようとする情報が持っている文字列と同じ文字列を含む部分を見つけ、該部分が持っている排尿情報を抽出する方法、単純尿流検査結果紙で文字データ2のある位置を見つけ、該位置を基準として所定の範囲に該当する情報を抽出する方法、または文字データ2を見つける関数を使う。
【0032】
前記文字学習モデル生成ステップ(S112)は、入力された文字データ2が持っている複数の排尿情報の特徴を、ディープ・ラーニングを用いて自動で抽出する。
【0033】
すなわち、排尿情報を見て下部尿路症状を診断するために使われる判断基準を、人間が直接比較、分析及び判断しなくても、下部尿路症状を診断するに際して意味のある排尿情報の特徴が分かる。
【0034】
図3は、グラフデータ3を用いた単純尿流検査結果の学習方法のフローチャートである。
図3を参照すれば、本発明の一実施形態によるグラフデータ3を用いたディープ・ラーニング基盤の単純尿流検査結果の学習方法は、単純尿流検査を通じて獲得した結果紙からグラフデータ3を抽出するグラフ抽出ステップ(S121)、及び前記グラフデータ3から下部尿路症状の原因による相関関係を持つ特徴点を抽出するために、前記グラフデータ3を学習データとするグラフ学習モデルを生成するグラフ学習モデル生成ステップ(S122)を含む。
【0035】
前記グラフ抽出ステップ(S121)は、単純尿流検査結果紙からグラフデータ3を抽出する。グラフデータ3を抽出する方法としては、単純尿流検査結果紙でグラフデータ3のある位置を入力されて、該位置を基準として所定の範囲に該当する情報を抽出する方法、またはグラフデータ3を見つける関数を使う。
【0036】
前記グラフ学習モデル生成ステップ(S122)は、入力されたグラフデータ3が持っている特徴を、ディープ・ラーニングを用いて自動で抽出する。脳の視覚皮質がイメージを処理して認識する原理を借用した神経網である、畳み込みニューラルネットワーク(CNN、Convolution Neural Network)が、グラフ学習モデル生成のために使われてもよい。
【0037】
図4は、本発明によるグラフ抽出ステップのフローチャートである。
図5は、本発明による学習方法及び診断方法において、グラフデータ3を抽出する過程である。
図4を参照すれば、グラフ抽出ステップ(S121)は、前記グラフデータ3においてグラフの変動が始まる地点を、排尿が始まる開始点として抽出する開始点抽出ステップ(S1211)、前記グラフデータ3においてグラフの変動が終わる地点を、排尿が終わる終了点として抽出する終了点抽出ステップ(S1212)、及び前記開始点から前記終了点までの区間を抽出して、前記グラフ学習モデルに入力する前処理ステップ(S1213)をさらに含む。
【0038】
図5を参照すれば、単純尿流検査結果紙から抽出されたグラフデータ3には、検査が始まる時点から終わる時点まで単純尿流検査装置に排出された排尿の量及び速度が記録されている。一般的に検査が始まる時点と排尿の始まる時点とは一致せず、排尿が終わる時点と検査が終わる時点とも一致しないため、グラフデータ3には、検査が始まる時点と排尿が始まる時点との間及び排尿が終わる時点と検査が終わる時点との間に無駄な情報が含まれることもある。
【0039】
無駄な情報を除去するために、本発明では、グラフデータ3において、グラフの変動が始まる地点とグラフの変動が終わる地点をそれぞれ開始点A及び終了点Bと定義し、開始点と終了点との間の区間を抽出して学習モデルの生成に使う。よって、本発明は、患者の排尿量及び排尿速度に関するより正確な情報を取得することができる。
【0040】
図6は、本発明によるディープ・ラーニング基盤の下部尿路症状の診断方法のフローチャートである。
図6を参照すれば、本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法は、本発明の一実施形態による単純尿流検査結果の学習方法を用いて文字学習モデル及びグラフ学習モデルを生成する学習モデル生成ステップ(S10)、下部尿路症状診断システムが、診断対象となる単純尿流検査結果紙を入力される入力ステップ(S20)、前記結果紙から前記文字データ2及び前記グラフデータ3を抽出するデータ抽出ステップ(S30)、前記文字データ2及び前記グラフデータ3から、下部尿路症状の原因と相関関係を持つ複数の特徴点をそれぞれ抽出して、前記特徴点を統合する特徴点統合ステップ(S40)、及び前記文字学習モデル及び前記グラフ学習モデルが前記特徴点と下部尿路症状との相関関係を分析して、前記結果紙が下部尿路症状に該当するかどうかを判断する診断ステップ(S50)を含む。
【0041】
前記学習モデル生成ステップ(S10)は、本発明の一実施形態よって生成された文字学習モデル及び本発明の一実施形態よって生成されたグラフ学習モデルを共に使う。
【0042】
すなわち、本発明は、文字データ2のみを使うかまたはイメージデータのみを使うものではなく、文字とイメージデータとを共に使うことで、イメージデータのみを使った場合に発生する間違いと文字データ2のみを使った場合に発生する間違いを低減させる。
【0043】
前記入力ステップ(S20)に入力される入力データは、単純尿流検査結果紙であって、患者の尿道と肛門に導管を挿入する過程を経ずに、コンピュータ記録装置に連結されている検査用便器に排尿をする過程だけで測定されるデータを含む。
【0044】
すなわち、導管挿入に関連して発生する合併症である痛みや尿路感染症が発生する可能性がまったくなく、ディープ・ラーニングを通じて正確な下部尿路症状の診断が可能である。また、患者の尿道と肛門に導管を挿入する過程などの無駄な過程を省略することで下部尿路症状の診断にかかる手間を低減させることができる。
【0045】
前記データ抽出ステップ(S30)は、単純尿流検査結果紙から、患者の排尿情報を含む文字データ2と、患者の排尿量及び排尿速度に関する情報を含むグラフデータ3を抽出する。
【0046】
前記特徴点統合ステップ(S40)は、文字学習モデル及びグラフ学習モデルによって生成された文字データ及びグラフデータの特徴点を統合するステップである。これは、以下で
図7を参照して詳細に説明する。
【0047】
前記診断ステップ(S50)は、判断の結果を下部尿路症状に該当する症状と組み合わせて、二進法または四進法で示すステップをさらに含む。下部尿路症状に該当する症状の例としては、膀胱出口閉塞(BOO、Bladder outlet obstruction)及び排尿筋低活動性(DUA、Detrusor underactivity)などがある。
【0048】
すなわち、前記診断ステップ(S50)は、診断の結果を、正常対非正常/BOO対Non-BOO/DUA対Non-DUAなどの二進法で表し、または正常対BOO対DUA対BOO&DUAなどの四進法で表す。
【0049】
図7は、本発明による下部尿路症状の診断方法において、抽出された特徴点を統合する過程の一実施形態である。
図7を参照すれば、本発明の一実施形態による下部尿路症状の診断方法において、特徴点統合ステップ(S40)は、文字データ2から抽出された特徴を、グラフデータ3を入力とするグラフ学習モデルの中問層に順次関数(Concatenate 関数)を適用するか、または要素別演算(Element-wise addition)を行って統合する。
【0050】
また、グラフデータ3から抽出された特徴と文字データ2で抽出された特徴それぞれを、文字学習モデルの出力層の直前に順次関数を適用するか、または要素別演算を行って統合する。
【0051】
図8は、本発明による下部尿路症状診断システムのブロック図である。
図8を参照すれば、本発明の一実施形態による下部尿路症状診断システムは、単純尿流検査結果紙から文字データ2を抽出して特徴点を学習する文字学習モデル10、結果紙からグラフデータ3を抽出して特徴点を学習するグラフ学習モデル20、単純尿流検査結果紙を入力されるデータ入力部40、単純尿流検査結果紙から患者の排尿情報を含む文字データ2及びグラフデータ3を抽出して、前記データを学習または診断過程によって学習モデルまたはメイン・プロセッサに伝送するデータ抽出部50、及び学習モデルで学習された特徴点を用いて単純尿流検査結果紙を分析し、下部尿路症状であるかどうかを判断するメイン・プロセッサ30を備える。
【0052】
本発明による下部尿路症状診断システムには、前述した方法についての内容が適用される。よって、下部尿路症状診断システムにおいて、前述した内容と同じ部分はその説明を省略した。
【0053】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、当業者ならば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形できるということを理解できるであろう。よって、以上で述べた実施例はすべて例示的なものであり、限定的なものではないと理解せねばならない。例えば、単一型に説明された各構成要素が分散して実施されてもよく、同様に、分散していると説明された構成要素も結合された形態に実施されてもよい。
【0054】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって現れ、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等な概念から導出されるすべての変更または変形された形態は、本発明の範囲に含まれると解釈されねばならない。
【国際調査報告】