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特表2023-546718電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法
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  • 特表-電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法 図1
  • 特表-電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法 図2A
  • 特表-電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法 図2B
  • 特表-電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】電気泳動ディスプレイの部分的更新中の画像アーチファクトを低減させる方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20231030BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231030BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20231030BHJP
   G02F 1/1685 20190101ALI20231030BHJP
【FI】
G09G3/34 C
G09G3/20 621K
G09G3/20 623C
G09G3/20 622C
G09G3/20 641A
G02F1/167
G02F1/1685
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524895
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021057503
(87)【国際公開番号】W WO2022094371
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/108,852
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クラウンス, ケネス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ドブ, ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール, ジャヤ
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BB13
2K101EC72
2K101ED25
2K101ED41
2K101ED51
2K101ED71
2K101EJ11
5C080AA11
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC01
5C080CC03
5C080DD10
5C080DD20
5C080DD26
5C080DD29
5C080EE01
5C080EE19
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ01
5C080JJ04
5C080KK08
(57)【要約】
眼に見えるアーチファクトを低減させるように電気光学ディスプレイを駆動する方法が、説明される。一実施形態において、そのような方法は、駆動命令の対の組を提供することによって、そうでなければ、アーチファクトにつながるであろう駆動されているエリアと駆動されていないエリアとの間の境界における余分なピクセルを駆動することを含み、所望の(駆動されていない)光学状態を維持しながら、駆動されていないエリアが、駆動されることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラを含む双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記双安定電気光学ディスプレイは、行および列に配置されたピクセルのマトリックスを有し、前記ピクセルは、
第1の光学状態から第2の光学状態への遷移を受ける一次ピクセルと、
前記一次ピクセルに直接隣接した二次ピクセルであって、前記二次ピクセルは、第3の光学状態から第4の光学状態への遷移を受ける、二次ピクセルと、
前記二次ピクセルに直接隣接した三次ピクセルと
を含み、
前記二次ピクセルは、ある行またはある列における前記一次ピクセルと前記三次ピクセルとの間にあり、前記三次ピクセルは、光学状態遷移を受けず、
前記方法は、
a)前記コントローラから前記双安定電気光学ディスプレイに第1の更新を提供することであって、前記第1の更新は、前記一次ピクセルへの第1の波形、前記二次ピクセルへの第3の波形、および前記三次ピクセルへの第5の波形を含む、ことと、
b)前記コントローラから前記双安定電気光学ディスプレイに第2の更新を提供することと
を含み、
前記第2の更新は、前記一次ピクセルへの第2の波形、前記二次ピクセルへの第4の波形、および前記三次ピクセルへの無波形を含み、
前記第1の光学状態と第2の光学状態とは、カラーまたはグレースケールにおいて異なる一方、前記第3の光学状態と第4の光学状態とは、カラーおよびグレースケールにおいて同一である、方法。
【請求項2】
前記第3の波形、前記第4の波形、および前記第5の波形の全ては、同一の光学状態を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラから前記双安定電気光学ディスプレイに第3の更新を提供することをさらに含み、前記第3の更新は、前記一次ピクセルへの第6の波形、前記二次ピクセルへの前記第3の波形、および前記三次ピクセルへの無波形を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記双安定電気光学ディスプレイは、電気泳動ディスプレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気泳動ディスプレイは、少なくとも3つの異なるタイプの電気泳動粒子を備えている電気泳動媒体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気泳動ディスプレイは、マイクロカプセル層内に配置された電気泳動媒体を備えている、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記電気泳動ディスプレイは、マイクロセル内に配置された電気泳動媒体を備えている、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記双安定電気光学ディスプレイは、色フィルタアレイを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも10個の一次ピクセルと、少なくとも10個の二次ピクセルと、少なくとも10個の三次ピクセルとを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一次ピクセルは、前記双安定電気光学ディスプレイ上に表示される画像のエッジを画定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも1,000個のピクセルを備えている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ピクセルのうちの20%以下が、一次ピクセルである(一次ピクセル数/ピクセルの総数)、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも16個の異なるカラーまたはグレーレベルを生成することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも32個の異なるカラーを生成することが可能である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、2021年11月2日に出願された米国仮特許出願第63/108,852号の優先権を主張する。本明細書に開示される全ての特許および刊行物は、参照することによって全体として組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気光学ディスプレイ、特に、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法と、そのような方法での使用のための装置とに関する。より具体的に、本発明は、ディスプレイの部分的更新中の「残影」、「ブルーミング」、および他のエッジ効果の低減を可能にし得る駆動方法に関する。本発明は、排他的ではないが、特に、1つ以上のタイプの荷電粒子が、流体中に存在し、それらが電場の影響下で流体を通して移動させられ、ディスプレイの外観を変化させる粒子ベースの電気泳動ディスプレイとの使用のために意図されている。方法は、画像のより小さな部分に光学状態に変化させながら、画像の大部分を更新されないまま残すことが有益である双安定電気光学媒体に広範に適用可能である。
【0003】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、結像技術分野におけるその従来的な意味において、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料であり、材料への電場の印加によって、その第1の表示状態からその第2の表示状態に変化させられる材料を指すために、本明細書で使用される。光学特性は、典型的に、人間の眼に知覚可能な色であるが、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
【0004】
用語「グレー状態」は、結像技術分野におけるその従来的な意味において、本明細書で使用され、2つの極端なピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれらの2つの極端な状態の間の黒色-白色遷移を意味するわけではない。例えば、下記に参照されるE Inkの特許および公開された出願のうちのいくつかは、中間の「グレー状態」が、実際には薄青色であるように、極端な状態が白色および濃青色である電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに記述されているように、光学状態の変化は、色の変化では全くないこともある。用語「黒色」および「白色」は、ディスプレイの2つの極端な光学状態を指すために以降で使用され得、通常、厳密には黒色および白色ではない極端な光学状態、例えば、前述の白色および濃青色状態を含むものとして理解されるべきである。用語「単色」は、以降では、間にあるグレー状態を伴わず、ピクセルをそれらの2つの極端な光学状態のみに駆動する駆動スキームを指すために使用され得る。
【0005】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味において、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイであって、第1または第2の表示状態のいずれかを示すように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動された後、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が持続するであろうようなディスプレイを指すために、本明細書で使用される。米国特許第7,170,670号(特許文献1)では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極端な黒色および白色状態においてのみならず、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことが、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書において、双安定および多安定ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。
【0006】
用語「インパルス」は、時間に対する電圧の積分のその従来の意味において、本明細書で使用される。しかしながら、いくつかの双安定電気光学媒体は、電荷トランスデューサとしての機能を果たし、そのような媒体を用いる場合、インパルスの代替定義、すなわち、経時的な電流の積分(印加される全電荷に等しい)が、使用され得る。インパルスの適切な定義が、媒体が電圧時間インパルストランスデューサまたは電荷インパルストランスデューサとしての機能を果たすどうかに応じて、使用されるべきである。
【0007】
下記の議論の多くは、初期グレーレベルから最終グレーレベル(初期グレーレベルと異なることも、異ならないこともある)への遷移を通して、電気光学ディスプレイの1つ以上のピクセルを駆動する方法に焦点を当てるであろう。用語「波形」は、ある特定の初期グレーレベルから特定の最終グレーレベルへの遷移をもたらすために使用される時間に対する電圧全体の曲線を示すために使用されるであろう。典型的に、そのような波形は、複数の波形要素を備えているであろう。すなわち、これらの要素が、本質的に長方形である場合(すなわち、所与の要素が、ある期間にわたって一定電圧の印加を備えている場合)、要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、特定のディスプレイに関するグレーレベル間のあらゆる可能な遷移をもたらすために十分な波形の組を意味する。ディスプレイは、2つ以上の駆動スキームを利用し得る。例えば、前述の米国特許第7,012,600号は、ディスプレイの温度またはその寿命中に動作していた時間等のパラメータに応じて、駆動スキームが修正される必要があり得、したがって、ディスプレイが異なる温度等で使用されるための複数の異なる駆動スキームを提供され得ることを教示する。この様式において使用される駆動スキームの組は、「関連駆動スキームの組」と称され得る。また、前述のMEDEOD出願のうちのいくつかに説明されるように、2つ以上の駆動スキームを同じディスプレイの異なるエリア内で同時に使用することも可能であり、この様式において使用される駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0008】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号(特許文献2)、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、上で言及される特許のうちのいくつかでは、回転部材が球形ではないので、用語「回転二色部材」が、より正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、異なる光学特性を伴う2つ以上の区分と、内部双極子とを有する多数の小さい本体(典型的に、球形または円筒形)を使用する。これらの本体は、マトリクス内の液体が充填された空胞内に懸濁され、空胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填されている。ディスプレイの外観は、ディスプレイに電場を印加し、したがって、本体を種々の位置に回転させ、視認表面を通して見られる本体の区分の位置を変動させることによって、変化させられる。このタイプの電気光学媒体は、典型的に、双安定である。
【0009】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極に取り付けられる可逆的色変化が可能な複数の染色分子とを備えているナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.,et al.,Nature 1991,353,737、およびWood,D.,Information Display,18(3),24 (2002年3月)を参照されたい。Bach,U.,et al.,Adv. Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号にも説明されている。このタイプの媒体も、典型的に、双安定である。
【0010】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R. A.,et al. 「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383-385(2003)に説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号(特許文献3)では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイが、双安定にされ得ることが示されている。
【0011】
長年にわたり精力的な研究および開発の関心の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が、電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画像品質に伴う問題は、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不適正な使用可能寿命をもたらす。
【0012】
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生成されることもできる(例えば、Kitamura,T.,et al.「Electrical toner movement for electronic paper-like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectricaily」,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4を参照)。米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直平面内に配置される看板において、媒体がそのような沈降を可能にする向きにおいて使用されるとき、粒子沈降に起因する液体ベースの電気泳動媒体と同じタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にする液体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度により、液体ベースの電気泳動媒体よりガスベースの電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0013】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化電気泳動媒体および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々は、それ自体、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的に、カプセルは、それら自体、ポリマー結合剤内に保持され、ポリマー結合剤は、2つの電極間に位置付けられたコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号第7,839,564号参照)
(d)バックプレーン、接着剤層、他の補助層、およびディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(e)カラー形成およびカラー調節(例えば、米国特許第7,075,502号および米国特許出願公開第2007/0109219号参照)
(f)ディスプレイを駆動する方法(前述のMETHOD出願参照)
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および米国特許出願公開第2006/0279527号参照)
(h)米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、および第7,420,549号、および米国特許出願公開第2009/0046082号に説明されるような非電気泳動ディスプレイ
【0014】
前述の特許および出願のうちの多くは、カプセル化電気泳動媒体中の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相によって置換され得、したがって、いわゆる「ポリマー分散電気泳動ディスプレイ」を生成し、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、高分子材料の連続相とを備え、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイにおける電気泳動流体の別々の液滴が、いかなる別々のカプセル膜も各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国公開第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0015】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、キャリア媒体、典型的に、高分子フィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号(両方は、Sipix Imaging,Inc.に譲渡されている)を参照されたい。
【0016】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子がディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断するため)、反射モードで動作し得るが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つの表示状態が、実質的に不透明であり、1つが、光透過性であるいわゆる「シャッターモード」で動作するように作製されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイと同様であるが、電場強度の変動に依拠する誘電泳動ディスプレイは、同様のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッターモードで動作することが可能であり得る。シャッターモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得る。そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接した少なくとも1つの層は、シャッターモードで動作し、視認表面からより遠隔にある第2の層をさらすか、または隠す。
【0017】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることはなく、多種多様な可撓性および剛体基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(単語「印刷」の使用は、あらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことを意図し、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティングと、ナイフオーバロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティングと、グラビアコーティングと、浸漬コーティングと、吹き付けコーティングと、メニスカスコーティングと、スピンコーティングと、ブラシコーティングと、エアナイフコーティングと、シルクスクリーン印刷プロセスと、静電印刷プロセスと、熱印刷プロセスと、インクジェット印刷プロセスと、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照)と、他の同様の技法とを含む。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体が、(様々な方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体が、安価に作製されることができる。
【0018】
他のタイプの電気光学媒体も、本発明のディスプレイにおいて使用され得る。
【0019】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイ、および同様の挙動を表示する他の電気光学ディスプレイ(そのようなディスプレイは、以降では、便利のために、「インパルス駆動ディスプレイ」と称され得る)の双安定または多安定挙動は、従来の液晶(「LC」)ディスプレイの挙動と好対照である。捩れネマチック液晶は、双安定または多安定ではないが、電圧トランスデューサとしての機能を果たし、それによって、所与の電場をそのようなディスプレイのあるピクセルに印加することが、そのピクセルにおいて先に存在するグレーレベルにかかわらず、そのピクセルにおいて特定のグレーレベルを生成する。さらに、LCディスプレイは、(非透過性または「暗い」から透過性または「明るい」へ)一方向においてのみ駆動され、より明るい状態からより暗い状態への逆遷移は、電場を低減させること、または排除することによって達成される。最終的に、LCディスプレイのピクセルのグレーレベルは、電場の極性に対して敏感ではなく、その規模に対してのみ敏感であり、実際に、技術的な理由のために、商業用LCディスプレイは、通常、頻繁に駆動場の極性を逆にする。対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、第1近似まで、インパルストランスデューサとしての機能を果たし、それによって、ピクセルの最終的な状態は、印加される電場およびこの場が印加される時間にのみ依存するのではなく、電場の印加に先立つピクセルの状態にも依存する。
【0020】
使用される電気光学媒体が、双安定であるかどうかに関わりなく、高分解能ディスプレイを取得するために、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接したピクセルからの干渉を伴わずにアドレス可能でなければならない。この目標を達成するための1つの方法は、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することであり、少なくとも1つの非線形要素は、各ピクセルに関連付けられ、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生成する。1つのピクセルをアドレスするアドレスまたはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。典型的に、非線形要素が、トランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され、この配置が、以下の説明では仮定されるであろうが、本質的に、恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。従来の方法では、高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の特定のピクセルが1つの規定された行と1つの規定された列の交点によって独自に画定されるように、行および列の2次元アレイで配置され得る。各列内の全てのトランジスタのソースは、単一の列電極に接続される一方、各行内の全てのトランジスタのゲートは、単一の行電極に接続される。再度、行へのソースおよび列へのゲートの割り当ては、所望に応じて、逆転され得る。行電極は、行ドライバに接続され、それは、本質的に、任意の所与の瞬間において、1つの行のみが選択されることを確実にする、すなわち、選択された行電極に、選択された行内の全てのトランジスタが伝導性であることを確実にするような電圧が印加される一方で、全ての他の行に、これらの選択されていない行内の全てのトランジスタが非伝導性のままであることを確実にするような電圧が印加される。列電極は、列ドライバに接続され、それは、種々の列電極に、選択された行内のピクセルをそれらの所望の光学状態に駆動するように選択される電圧をかける(前述の電圧は、従来の方法では、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、ディスプレイ全体を横断して延びている共通フロント電極に対するものである)。「ラインアドレス時間」として公知である事前選択された間隔後、選択された行が、選択解除され、次の行が、選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変化させられる。このプロセスは、ディスプレイ全体が、行毎様式で書き込まれるように繰り返される。
【0021】
初めは、そのようなインパルス駆動電気光学ディスプレイをアドレスするための理想的な方法は、各ピクセルがその初期グレーレベルからその最終グレーレベルへ直接遷移するように、コントローラが、画像の各書き込みを配置するいわゆる「一般的なグレースケール画像フロー」であろうと考えられ得る。しかしながら、必然的に、インパルス駆動ディスプレイ上に画像を書き込むことにおいていくつかの誤差が存在する。実践において遭遇されるいくつかのそのような誤差は、以下を含む。
(a)前の状態依存:少なくともいくつかの電気光学媒体の場合、ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、現在の状態および所望の光学状態のみならず、ピクセルの前の光学状態にも依存する。
(b)滞留時間依存:少なくともいくつかの電気光学媒体の場合、ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ピクセルがその種々の光学状態において費やした時間に依存する。この依存の精密な性質は、十分に理解されていないが、一般に、ピクセルがその現在の光学状態であった時間が長ければ長いほど、より多くのインパルスが、要求される。
(c)温度依存:ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、温度に大きく依存する。
(d)湿度依存:ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、少なくともいくつかのタイプの電気光学媒体の場合、周囲湿度に依存する。
(e)機械的一様性:ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ディスプレイにおける機械的変動、例えば、電気光学媒体または関連付けられた積層接着剤の厚さの変動によって影響を受け得る。他のタイプの機械的非一様性は、媒体の異なる製造バッチ処理、製造許容誤差、および材料変動間の必然的な変動から生じ得る。
(f)電圧誤差:ピクセルに印加される実際のインパルスは、必然的に、ドライバによって送達される電圧における不可避な軽微な誤差により、理論的に印加されるインパルスとはわずかに異なるであろう。
【0022】
一般的なグレースケール画像フローは、「誤差の累積」現象に悩まされる。例えば、温度依存が、各遷移において正の方向における0.2L(Lが、通常のCIE定義を有する場合:L=116(R/R0)1/3-16、式中、Rは、反射率であり、R0は、標準反射率値である)の誤差をもたらすとする。50回の遷移後、この誤差は、10Lまで累積するであろう。恐らく、より現実的に、ディスプレイの理論的な反射率と実際の反射率との間の差の観点から表される、各遷移の平均誤差は、±0.2Lであると仮定される。100回の連続遷移後、ピクセルは、2Lというその予期される状態からの平均偏差を表示するであろう。そのような偏差は、あるタイプの画像の平均的な観察者にとって明白である。
【0023】
この誤差の累積現象は、温度に起因する誤差のみならず、上でリストアップされる全てのタイプの誤差にも適用される。前述の米国特許第7,012,600号に説明されるように、そのような誤差を補償することは可能であるが、ある程度の精度までに過ぎない。例えば、温度誤差は、温度センサおよびルックアップテーブルを使用することによって補償され得るが、温度センサは、限定された分解能を有し、電気光学媒体の温度とはわずかに異なる温度を読み取り得る。同様に、前の状態依存は、前の状態を記憶し、多次元遷移マトリクスを使用することによって補償され得るが、コントローラのメモリは、記録され得る状態の数および記憶され得る遷移マトリクスのサイズを限定し、このタイプの補償の精度に制限を加える。
【0024】
したがって、一般的なグレースケール画像フローは、良好な結果を与えるために、印加されるインパルスの非常に精密な制御を要求し、経験的に、それは、電気光学ディスプレイの技術の現在の状態において、一般的なグレースケール画像フローは、商業用ディスプレイにおいて実行不可能であることが見出されている。
【0025】
いくつかの状況下で、単一のディスプレイが、複数の駆動スキーム利用することは望ましくあり得る。例えば、2つ以上のグレーレベルが可能であるディスプレイは、全ての可能なグレーレベル間の遷移をもたらし得るグレースケール駆動スキーム(「GSDS」)と、2つのグレーレベル間のみの遷移をもたらす単色駆動スキーム(「MDS」)とを利用し得、MDSは、GSDSより迅速なディスプレイの書き換えを提供する。MDSは、ディスプレイの書き換え中に変化させられている全てのピクセルがMDSによって使用される2つのグレーレベル間のみの遷移をもたらしているとき、使用される。例えば、前述の米国特許第7,119,772号は、電子ブック、またはグレースケール画像を表示することが可能であり、ユーザが、表示された画像に関連するテキストを入力することも可能にする単色ダイアログボックスを表示することも可能である同様のデバイスの形態のディスプレイを説明している。ユーザが、テキストを入力しているとき、高速MDSが、ダイアログボックスの迅速な更新のために使用され、したがって、入力されているテキストの高速確認をユーザに提供する。他方、ディスプレイ上に示されるグレースケール画像全体が変化させられているとき、低速GSDSが使用される。
【0026】
代替として、ディスプレイは、「直接更新」駆動スキーム(「DUDS」)と同時にGSDSを利用し得る。DUDSは、2つまたは2つ以上のグレーレベル、典型的に、GSDSより少ないグレーレベルを有し得るが、DUDSの最も重要な特性は、GSDSで多くの場合使用される「間接」遷移(少なくともいくつかの遷移において、ピクセルが初期グレーレベルから1つの極端な光学状態に、次いで、逆方向へ最終グレーレベルに駆動される。ある場合、遷移は、初期グレーレベルから1つの極端な光学状態に、そこから、反対の極端な光学状態に、そしてようやく、最終的な極端な光学状態に、駆動することによって達成され得る)とは対照的に、遷移が初期グレーレベルから最終グレーレベルへの単純な一方向駆動によって取り扱われることである。例えば、前述の米国特許第7,012,600号の図11Aおよび11Bに図示される駆動スキームを参照されたい。したがって、この電気泳動ディスプレイは、飽和パルスの長さ(「飽和パルスの長さ」は、1つの極端な光学状態から他方の光学状態にディスプレイのピクセルを駆動するために十分である特定の電圧における期間として定義される)の約2~3倍、または約700~900ミリ秒のグレースケールモードにおける更新時間を有し得る一方、DUDSは、飽和パルスの長さに等しいか、または約200~300ミリ秒の最大更新時間を有する。
【0027】
しかしながら、駆動スキームにおける変動は、使用されるグレーレベルの数の差に制限されない。例えば、駆動スキームは、駆動電圧が、大域的更新駆動スキーム(より正確に、「大域的完全」または「GC」駆動スキームと称される)が適用されている領域(ディスプレイ全体またはそのいくつかの画定された部分であり得る)において、あらゆるピクセルに適用される大域的駆動スキームと、駆動電圧が非ゼロ遷移(すなわち、初期グレーレベルと最終グレーレベルとが互いに異なる遷移)を受けているが、駆動電圧が、ゼロ遷移(初期グレーレベルと最終グレーレベルとが同じである)中印加されないピクセルにのみ適用される部分的更新駆動スキームとに分割され得る。駆動スキームの中間形態(「大域的限定」または「GL」駆動スキームと指定される)は、駆動電圧が、ゼロの白色から白色への遷移を受けているピクセルに印加されないことを除いて、GC駆動スキームと同様である。例えば、白色背景上に黒色テキストを表示する電子ブック読み取り機として使用されるディスプレイにおいて、特に、テキストの1つのページから次のページまで不変のままであるテキストの余白および行間において多数の白色ピクセルが存在し、故に、これらの白色ピクセルを書き換えないことは、ディスプレイ書き換えの見掛け「フラッシネス」を実質的に低減させる。しかしながら、ある問題が、このタイプのGL駆動スキームにおいて残っている。第1に、前述のMEDEOD出願のいくつかにおいて詳細に議論されるように、双安定電気光学媒体は、典型的に、完全に双安定ではなく、1つの極端な光学状態に置かれたピクセルは、中間グレーレベルに向かって、数分~数時間の期間にわたって、徐々にドリフトする。特に、ピクセル駆動されている白色は、明るいグレーカラーに向かってゆっくりとドリフトする。故に、GL駆動スキームでは、白色ピクセルが数枚のページめくりを通して駆動されないままであることが可能にされる場合、その間、他の白色ピクセル(例えば、テキスト文字の部分を形成するピクセル)が駆動され、新たに更新された白色ピクセルは、駆動されていない白色ピクセルよりわずかに明るいであろうし、最終的に、その差は、訓練されていないユーザにとってさえ明白となるであろう。
【0028】
第2に、駆動されていないピクセルが更新されているピクセルに隣接して存在するとき、駆動されているピクセルの駆動が、駆動されているピクセルのエリアよりわずかに大きいエリアにわたって光学状態の変化を引き起こし、このエリアが、隣接したピクセルのエリアの中に侵入する「ブルーミング」として公知である現象が起こる。そのようなブルーミングは、駆動されていないピクセルが駆動されているピクセルに隣接して存在するエッジに沿って、エッジ効果として現れる。同様のエッジ効果は、領域更新の場合、エッジ効果が、更新されている領域の境界で起こることを除いて、領域更新(ディスプレイの特定の領域のみが、例えば、画像を示すために更新される)を使用するとき、起こる。経時的に、そのようなエッジ効果は、視覚的に気が散るものになり、消去されなければならない。これまで、そのようなエッジ効果(および駆動されていない白色ピクセルにおける色ドリフトの効果)は、典型的に、間隔を置いて単一のGC更新を使用することによって、除去されてきた。残念ながら、そのような時折のGC更新の使用は、「フラッシーな」更新という問題を再導入し得、実際に、更新のフラッシネスは、フラッシーな更新が長い間隔を置いて起こるに過ぎないという事実によって高められ得る。
【0029】
本発明は、依然として、可能な限りフラッシーな更新を回避しながら、上で議論される問題を低減または排除することに関する。しかしながら、前述の問題を解決するために試行することにおける追加の複雑な問題、すなわち、全体的なDC平衡に対する必要性が存在する。前述のMEDEOD出願の多くにおいて議論されるように、使用される駆動スキームが、実質的に、DC平衡ではない場合(すなわち、同じグレーレベルで開始および終了する任意の一連の中、ピクセルに印加されるインパルスの代数和が、ゼロに近くない場合)電気光学の性質およびディスプレイの耐用年数は、悪影響を及ぼされ得る。特に、2つ以上の駆動スキームを使用して遂行される遷移を伴ういわゆる「非同次ループ」におけるDC平衡の問題を議論する前述の米国特許第7,453,445号を参照されたい。DC平衡駆動スキームは、任意の所与の時間における総正味インパルスバイアスが、(グレー状態の有限数により)拘束されることを確実にする。DC平衡駆動スキームでは、ディスプレイの各光学状態は、インパルス電位(IP)を割り当てられ、光学状態間の個々の遷移は、遷移の正味インパルスが、遷移の初期状態と最終状態との間のインパルス電位の差と等しくなるように定義される。DC平衡駆動スキームでは、任意の往復正味インパルスは、実質的にゼロであることを要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第5,808,783号明細書
【特許文献3】米国特許第7,420,549号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
故に、一側面では、本発明は、エッジアーチファクトを低減させまたは排除するための方法を提供する。具体的に、方法は、特別な調節がない場合、部分的更新として公知である駆動されているピクセルと駆動されていないピクセルとの間の直線エッジに沿って起こるようなアーチファクトを排除することに努める。方法では、少なくとも2つの組の制御命令が、各光学状態に関してプログラミングされる。部分的更新中、更新しているピクセルに隣接するが、それらの現在の光学状態を維持する必要があるいくつかのピクセルは、交互の対の命令組を用いて更新されるピクセルと同時に更新される。その結果として、更新される必要がないが、アーチファクトのリスクにさらされているピクセルは、その光学状態を維持し、アーチファクトを回避することができる。さらに、対の命令組間で交互することによって、所与のピクセルの前の状態を追跡することは、必要とされない。それが更新しているピクセルの近傍にある場合、2回の更新後、アーチファクトの大部分が消去されているであろう。この様式において近隣ピクセルを駆動することは、余分なピクセルによって画定されるエッジに沿って起こるいかなるエッジアーチファクトも、これらの方法を用いない場合よりはるかに目立たないので、ブルーミング等のエッジアーチファクトの可視性を大幅に低減させる。
【0032】
本発明の全ての方法では、ディスプレイは、上で議論されるタイプの電気光学媒体のいずれかを利用し得る。したがって、例えば、電気光学ディスプレイは、回転二色部材またはエレクトロクロミック材料を含み得る。代替として、電気光学ディスプレイは、流体中に配置され、電場の影響下で流体を通して移動することが可能である複数の荷電粒子を備えている電気泳動材料を含み得る。荷電粒子および流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められ得る。代替として、荷電粒子および流体は、ポリマー材料を含む連続相によって包囲される複数の別々の液滴として存在し得る。流体は、液体または気体であり得る。
【0033】
別の側面では、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法は、コントローラを含む。双安定電気光学ディスプレイは、行および列に配置されたピクセルのマトリックスを有する。マトリックスは、第1の光学状態から第2の光学状態への遷移を受ける一次ピクセルと、一次ピクセルに直接隣接した二次ピクセルであって、二次ピクセルは、第3の光学状態から第4の光学状態への遷移を受ける、二次ピクセルと、二次ピクセルに直接隣接した三次ピクセルであって、二次ピクセルは、ある行またはある列における一次ピクセルと三次ピクセルとの間にあり、三次ピクセルは、光学状態遷移を受けない、三次ピクセルとを含む。結果として生じる駆動方法は、a)コントローラから双安定電気光学ディスプレイに第1の更新を提供することであって、第1の更新は、一次ピクセルへの第1の波形、二次ピクセルへの第3の波形、および三次ピクセルへの第5の波形を含む、ことと、b)コントローラから双安定電気光学ディスプレイに第2の更新を提供することとを含み、第2の更新は、一次ピクセルへの第2の波形、二次ピクセルへの第4の波形、および三次ピクセルへの無波形を含み、第1の光学状態と第2の光学状態とは、カラーまたはグレースケールにおいて異なる一方、第3の光学状態と第4の光学状態とは、カラーおよびグレースケールにおいて同一である。
【0034】
いくつかの実施形態において、第3の波形、第4の波形、および第5の波形の全ては、同一の光学状態を生成する。いくつかの実施形態において、方法はさらに、コントローラから双安定電気光学ディスプレイに第3の更新を提供することを含み、第3の更新は、一次ピクセルへの第6の波形、二次ピクセルへの第3の波形、および三次ピクセルへの無波形を含む。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、電気泳動ディスプレイである。いくつかの実施形態において、電気泳動ディスプレイは、少なくとも3つの異なるタイプの電気泳動粒子を備えている電気泳動媒体を含む。いくつかの実施形態において、電気泳動ディスプレイは、マイクロカプセル層内に配置された電気泳動媒体を備えている。いくつかの実施形態において、電気泳動ディスプレイは、マイクロセル内に配置された電気泳動媒体を備えている。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、色フィルタアレイを備えている。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも10個の一次ピクセルと、少なくとも10個の二次ピクセルと、少なくとも10個の三次ピクセルとを備えている。いくつかの実施形態において、一次ピクセルは、双安定電気光学ディスプレイ上に表示される画像のエッジを画定する。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも1,000個のピクセルを備えている。いくつかの実施形態において、ピクセルのうちの20%以下が、一次ピクセルである(一次ピクセル数/ピクセルの総数)。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも16個の異なるカラーまたはグレーレベルを生成することが可能である。いくつかの実施形態において、双安定電気光学ディスプレイは、少なくとも32個の異なるカラーを生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ディスプレイの小さな領域内のピクセルの組が、部分的更新(この場合、固定された画像を覆うプルダウンメニュー)中にいかに異なって影響を与えられるかを図示する。
【0036】
図2A図2Aは、部分的更新を受けているディスプレイの小さな領域内のピクセルの組を更新するための第1の方法を図示する。
【0037】
図2B図2Bは、部分的更新を受けているディスプレイの小さな領域内のピクセルの組を更新するための第2の方法を図示する。
【0038】
図3図3は、3回の更新を受ける6つの隣接したピクセルに対する例示的な波形更新を図示し、異なるピクセルは、本発明による異なる波形を受信する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の方法は、駆動されているピクセルと駆動されていないピクセルとの間の直線エッジに沿って起こるエッジアーチファクトを低減させることまたは排除することに努める。人間の目は、特に、線形エッジアーチファクト、特に、ディスプレイの行または列に沿って延びているものに対して、敏感である。方法では、駆動されているエリアと駆動されていないエリアとの間のエッジに隣接したいくつかのピクセルが実際に駆動され、遷移によって引き起こされるエッジ効果が、隠されるか、または、別様に最小化される。
【0040】
上で議論されるように、部分的更新は、典型的に、プルダウンメニュー、スクロール文字、簡略化された動画等、画像の一部のみが、更新を要求するときに使用される。例が、図1に示され、プルダウンメニューが、既存の画像の上で前進させられている。ディスプレイの小さなエリア内のピクセルの一部100は、プルダウンメニューが、前進させられにつれて、全く別の色の遷移を受けるであろう。例えば、いくつかのピクセルは、「暗」から「明」に変化し、いくつかのピクセルは、その光学状態を変化させないであろう。ピクセルのうちのいくつかは、更新されているピクセルの近くの近隣ピクセルである一方、いくつかのピクセルは、十分に遠く離れており、それらは、ブルーミングまたは残影等の更新アーチファクトによって影響を与えられる可能性は低いであろう。解説の目的のために、ピクセルの一部100は、拡大されており120、図2Aおよび2Bに関して、現象のより優れた理解を可能にする。
【0041】
部分的更新に伴う1つの問題は、更新されるピクセルに隣接したピクセルが近くの近隣ピクセルの駆動に起因して、例えば、近傍の電場の存在に起因して、実際に、色を変化させ得ること、すなわち、ブルーミングである。さらに、部分的更新中のブルーミングは、白黒デバイスにおいて不明瞭なエッジを引き起こすが、例えば、高度カラー電気泳動ペーパー(ACeP(登録商標))媒体では、カラーディスプレイにおけるブルーミングの同様の量が、近傍ピクセル内の実際のカラーシフトという結果をもたらすであろう。そのようなカラーシフトは、殆どのユーザによって歓迎されない。そのようなカラーシフトは、ディザリングが次の画像において使用され、ディザパターンにおけるピクセルのいくつかが現在のディスプレイピクセルにおけるそれらと同じカラーであるとき、特に顕著である。この効果は、著しいカラー消失をもたらすほど非常に強くあり得る。
【0042】
ディスプレイの真の部分的更新では、コントローラは、画像Iにおけるピクセルが画像Iから変化させられていない場合、そのピクセルを更新(すなわち、ルックアップ電圧リストに従って、電圧の新たな組を提供)しないであろう。しかしながら、上で議論されるアーチファクトを回避するために、同じカラー状態を達成する新たな波形を用いて、更新されているピクセルの近傍のある一定のピクセルを更新することが、好ましい。図2Aおよび2Bを比較されたい。図2Aに示されるように、右上のピクセル210のみが更新されているにもかかわらず、ピクセル210の更新からの漂遊電場線が、周囲のピクセルにおいてブルーミング225を引き起こし得る。何故なら、周囲のピクセルが一定の電圧において保持されるにもかかわらず、それらのピクセルに関連付けられた電気光学媒体が、更新されているピクセル210からの電圧を「経験する」からである。下で説明される技法を実装することによって、図2Bに示されるように、ブルーミングは、本質的に、その後に続く1回または2回の更新において削除されることができる。
【0043】
ACeP型電気泳動ディスプレイ(すなわち、白色、シアン色、黄色、マゼンタ色粒子を含む、4粒子電気泳動媒体)の事例では、典型的な波形は、5ビットルックアップを有する:32個の異なる可能なカラーがある。しかしながら、多くの場合、単に、16個の異なるカラーを使用することで十分であり、それは、16個の異なるカラー波形の複写を可能にする。そのようなシステムでは、例えば、両方が白色である波形31および32に到達するまで、波形1および2の両方は、黒色に割り当てられ、波形3および波形4の両方は、青色等をもたらす。これらの対の各々における各波形は、同じ電圧リストを有する。
【0044】
異なる「カラー」としての同一波形の複写は、例えば、第1の画像において更新されているピクセルに隣接した白色ピクセル(波形32)が、次いで、第2の画像において波形31を割り当てられることを可能にする。本明細書に説明されるように実装されると、コントローラは、画像に関与する全てのピクセルのみならず、そうでなければ部分的更新において更新されないであろういくつかの近くの近隣ピクセルも更新するであろう。それにもかかわらず、近くの近隣ピクセルが同じカラー波形間で遷移しているので、それらのピクセルは、光学状態を変化させないであろう。しかし、それらは、実際に、更新されているので、それらのピクセルは、近傍の切り替えピクセルが削除されることに起因して、任意のブルーミングを有するであろう。同じ論理が、例えば、4ビットルックアップを使用し、各グレーレベルに関する対の波形の8組を用いて8つの独特のグレーレベルを作成することによって、黒色および白色ディスプレイにおけるアーチファクトを低減させるために適用され得る。
【0045】
本技法は、画像のエリアから始めて、追加されるべき要素、例えば、メニューまたはスワイプバンドをそれを覆って、その中に貼付することによって実装されることができる。この構成中、新たな要素が追加されているエリアを調査し、自己遷移が生じているピクセルを識別することが、可能である。コントローラにそれらのピクセルを強制的に更新させるための解決策は、ミラー状態、すなわち、同じ意味を伴う他の状態であるように、次の状態の画像のピクセルの状態を変化させることである。本代用が、以前に生じたかどうかを把握していないので、ピクセルの現在の状態は、どちらのパリティ(偶数または奇数)でもあり得るが、しかしながら、種々の要求される更新中、対の波形間を交互することによって、更新されていないピクセルが正しい光学状態を維持することに留意されたい。
【0046】
上で説明される奇数および偶数状態を伴う状態標識化スキームは、単なる例であり、同じことが、同等状態に関する多くの異なる定義を伴って達成され得ることに留意されたい。例えば、標準状態が1-16として定義された場合、同等状態は、それぞれ、任意のランダムな順序で、状態17-32として、定義され得る。明確なこととして、所与のコントローラ設計において、実装するために最も単純なスキームが、選定されるべきである。方法は、16個の状態に制限されないが、唯一の要件は、コントローラが、名目的な状態の数の2倍を管理することができることである。
【0047】
説明される方法は、「フェード」更新においても使用され得、この場合、一連の中間画像が、第1の画像Iと第2の画像Iとの間、または一般的に、I->2[1]~I->2[n]の間に提供される。これらの中間画像の各々において、画像エリアの選択された部分のみが、画像Iから画像Iに変化させられる。例えば、I->2(1)では、恐らく、ピクセルのうちの10%が、Iにおいて存在するであろうものであるが、90%が、Iにおいて存在するもののままである。コントローラは、部分的更新を行うように求められたときにのみ、10%のIピクセルを更新するであろう。I->2(2)では、次の10%が、更新され、そのように続く。例えば、I->2(10)に到達する時間までに、画像の更新は、完了する。
【0048】
プルダウンメニュー上の新たなエッジの上記の例のように、更新される多くのピクセルは、IとIとの間で変化させられない他のピクセルによって隣接されるであろう。上記のように、更新されていない(例えば、白色)ピクセルは、近隣更新からのフリンジ場を経験し、所望の(例えば、白色)状態からカラーを変化させられるであろう。これが生じないように阻止するために、それらが同じカラーを有しているとしても、画像Iと同じである状態が画像Iにおいて存在してはならない。これは、波形において、同じ色に関して2つのルックアップを割り当て、フェードの過程中、代替ルックアップを提供することによって達成されることができる。いくつかの事例では、「駆動されていない」ピクセルは、したがって、更新されていないエリア内で、一貫したカラーを維持するために、遷移の過程で2~3回更新されるであろう。
【0049】
本願の図に再度目を向けると、本発明の方法の影響が、可視化されることができる。図1に示されるように、図1内のピクセル100のいくつかの一部が、更新されるであろう。解説の目的のために、2行×3列の6つのピクセルが議論されるが、しかしながら、本発明は、任意の数のピクセルに広範に適用可能であり、標的とされる更新(例えば、一次ピクセル)は、典型的に、別のカラーまたはグレーレベルのフィールドの上に更新されている画像のエッジを作成する。解説の目的のために、ピクセルは、1-6と付番され、円が、図2Aにおいて、ピクセル番号を囲んでいる。ピクセル番号は、便宜上、引き継がれない。
【0050】
従来の方法では、カラー1からカラー2へのピクセル210(単独)の更新は、単に、図2Aに示されるように、ルックアップ2を実装するコントローラの問題となるであろう。ピクセル210、すなわち、ピクセル番号3は、状態変化を伴って意図的に更新されているので、ピクセル210は、一次ピクセルである。近隣(二次)ピクセル(ピクセル2、5、6)が、更新されないので、近隣(二次)ピクセルの全ては、ある程度の量のブルーミング225を受け、それは、ユーザ体験に対して有害であり得る。換言すると、近隣ピクセル220、230、240の全ては、図2Aと同様に、更新されない場合、ブルーミングのリスクにさらされる(重要なこととして、解説の目的のために、ピクセル250および260、すなわち、図2Aのピクセル1および4は、近隣ピクセルではなく、むしろ、三次ピクセルであり、典型的に、ピクセル210が更新されるときにブルーミングに対するリスクを受けない)。しかしながら、図2Bを見ると、ピクセル220が、ピクセル210と同じ時間において更新されるので、ピクセル220は、ブルーミング225を伴うことなく、以前と同じ光学状態を維持する。
【0051】
異なる実施形態において、比較のために、更新は、更新毎に、全ての二次ピクセルを第1または第2の同一波形にトグルし得る。例えば、図2Bに示されるように、ピクセル230および240は、別の二次ピクセル(22)が状態ルックアップ1Aにあったとしても、ルックアップ1Bの組によって達成された状態にすでにあることもある。全ての「A」状態が「B」状態に切り替えられたとき、ピクセル230および240は、更新されていないであろうから、一次ピクセル(210)の更新は、図2Bの中央のピクセルセットに示されるように、ブルーミングピクセル230、240を生じさせ得る。しかしながら、1回の追加の更新、「B」から「A」へのこのとき、ブルーミング225は、消去されており、それによって、ピクセル210、220、230、および240を更新することは、図2Bに示されるように、(ブルーミングほど多くはないが)ある程度225をもたらす。方法は、各ピクセルの実際の状態が、コントローラによって追跡される必要がないという利点を提供する。むしろ、2回の更新後、全ての二次ピクセルが少なくとも1回更新されており、いかなる望ましくないブルーミングの消去も可能にするはずである。換言すると、各後続の更新に関して、一次ピクセルの光学状態は、それらの更新状態を二次ピクセルの更新状態と比較する必要性なしに、前進させられることができる。最後、一次ピクセルおよび二次ピクセルの全て、すなわち、210、220、230、および240が、ルックアップXBからルックアップXAに更新され、それによって、ブルーミングを除去し、画像を真に保つ。
【0052】
本発明のさらなる例証、すなわち、コントローラによってピクセル1-6の各々に提供される例示的波形が、図3に示される。図3の波形は、一般論であり、特定のカラーまたはグレーレベルを達成することに対応していない。さらに、コントローラによって種々のピクセルに送信される波形は、典型的に、より複雑であり、例えば、準備状態削除パルス、DC平衡パルス、駆動後消去パルス等のものを含み得る。加えて、図3に示される波形は、時間の関数としての電圧の一般化された表現であり、典型的に、正および負の両方の電圧を含むであろう。
【0053】
議論されているピクセルは、「0」として示される、共通の開始点から始まる。第1の更新の場合、コントローラは、第1の波形を一次電極に送達し、それは、一次ピクセルに光学状態を変化させる。それと同時に、二次ピクセルおよび三次ピクセルは、それぞれ、第3および第5の波形を用いて更新される。第2の更新では、一次ピクセルは、第2の異なる波形を用いて、コントローラによって更新されるが、第2のピクセルは、第3の波形と同一波形である第4の波形を用いて更新される。しかしながら、三次ピクセルは、ピク光学状態を変化させるように指示されたセルのみが更新される直接更新リフレッシュで典型的に起こるであろうように、更新を受けない。その結果として、一次ピクセルは、第1から第2の光学状態に遷移し、すなわち、第1の更新後の一次ピクセルの光学状態は、第1の更新後、一次ピクセルの光学状態とは異なる。しかしながら、二次ピクセルおよび三次ピクセルの光学状態は、第2の更新に関して同じである。しかしながら、二次ピクセルは、実際に、コントローラから波形を受信したので、一次ピクセルに隣接したピクセルは、「フラッシングされ」、それによって、残影を伴うことなく、正しい光学状態を維持する。いくつかの実施形態において、さらなる第3の更新が、提供され得、それによって、一次ピクセルおよび/または二次ピクセルは、さらなる別の波形を受信する。典型的に、一次ピクセルおよび二次ピクセルの両方に関し、第3の更新は、前の更新状態、典型的に、直前の更新状態のうちの1つの波形であるであろう。これは、全てのブルーミングが、二次ピクセルから除去されることを確実にする。
【0054】
前の説明から容易に明白であろうように、本発明の方法の多くは、従来技術のディスプレイコントローラにおいて望ましい修正を要求またはレンダリングする。本発明は、低電力の直接更新と比較して、少量の追加の電力を要求するが、全体的な視聴者体験は、改良される。確実なこととして、本発明を実装するディスプレイのための消費電力は、完全更新モードで行われるように全てのピクセルが更新毎に更新される場合よりはるかに少ない。ディスプレイコントローラの種々の修正は、遷移情報の記憶を可能にするために使用されることができる。例えば、通常、最終画像における各ピクセルのグレーレベルを記憶する画像データテーブルは、各ピクセルが属するクラスを指定する、1つ以上の追加のビットを記憶するように修正され得る。例えば、ピクセルが、最終画像において16個のグレーレベルのうちのどれを示すかを示すために、各ピクセルに関して4ビットを以前に記憶していた画像データテーブルは、各ピクセルに関して5ビットを記憶するように修正され得、各ピクセルに関する最上位ビットは、ピクセルが、単色中間画像において2つの状態(黒色または白色)のうちのどちらを示すかを画定する。明白なこととして、中間画像が単色ではない場合、または2つ以上の中間画像が使用される場合、2つ以上の追加のビットが、各ピクセルに関して記憶される必要があり得る。
【0055】
代替として、異なる画像遷移は、遷移状態マップに基づいて、異なる波形モードにエンコードされることができる。例えば、波形モードAは、中間画像において白色状態を有する遷移を通したピクセルを採用する一方、波形モードBは、中間画像において黒色状態を有する遷移を通したピクセルを採用するであろう。波形モードAおよび波形モードBにおける各個々の遷移は、同じであるが、それらのそれぞれの第1のパルスの長さだけ単に遅らせられるので、同じ結果が、単一波形を使用して達成され得る。ここで、第2の更新(前の段落における大域的更新)は、第1の波形パルスの長さだけ遅らせられる。次いで、画像2が、画像バッファにロードされ、同じ波形を使用した大域的更新に関してコマンドされる。長方形領域に関する同じ自由度が、必要とされる。
【0056】
別の選択肢は、随意の状態情報のための追加のメモリ空間を伴う別個の最終および初期画像バッファ(連続画像を用いて交互にロードされる)を有するコントローラアーキテクチャを使用することである。これらは、パイプライン化された演算子をフィードし、パイプライン化された演算子は、各ピクセルの最も近くの近隣ピクセルの初期、最終、および追加の状態と、考慮下のピクセルへの影響とを考慮しながら、全てのピクセルに対して様々な動作を実施し得る。演算子は、各ピクセルに関する波形テーブルインデックスを計算し、これを別個のメモリ場所に記憶し、随意にピクセルに関する保存された状態情報を改変する。代替として、メモリフォーマットが、使用され得、それによって、メモリバッファの全てが、各ピクセルに関する単一の大きなワードに接合される。これは、ピクセルごとの異なるメモリ場所からの読み取りの回数の低減を提供する。加えて、32ビットワードが、フレームカウントタイムスタンプフィールドを伴って提案され、任意のピクセルに対する波形ルックアップテーブルの中への任意エントリ(ピクセルごとのパイプライン化)を可能にする。最終的に、演算子のためのパイプライン構造が、提案され、パイプライン構造において、3つの画像行が、演算子構造へのデータの効率的なシフトを可能にする高速アクセスレジスタの中にロードされる。
【0057】
フレームカウントのタイムスタンプフィールドおよびモードフィールドが、モードのルックアップテーブルの中に独特の指定子を作成し、ピクセルごとパイプラインの錯覚を提供するために使用されることができる。これらの2つのフィールドは、各ピクセルが15個の波形モードのうちの1つに割り当てられること(選択されたピクセルに対する無作用を示す1つのモード状態を可能にする)、および8,196個のフレーム(現在のところ、ディスプレイを更新するために必要とされるフレームの数を十分に超えている)のうちの1つに割り当てられることを可能にする。波形インデックスを従来技術のコントローラ設計のような16ビットから32ビットに拡張することによって達成されるこの追加される柔軟性の代償は、ディスプレイの走査の速さである。32ビットのシステムでは、ピクセルごとに2倍のビットが、メモリから読み取られなければならず、コントローラは、限定されたメモリの帯域幅(データが、メモリから読み取られ得る率)を有する。これは、波形テーブルインデックス全体(今のところ、各ピクセルに関して32ビットワードから成る)が、1つずつの走査フレームごとに読み取られなければならないので、パネルが走査され得る率を限定する。
【0058】
本要件を満たすメモリおよびコントローラアーキテクチャは、領域内での包含のために任意のピクセルを指定するために、画像バッファメモリ内に(領域)ビットを予約する。領域ビットは、更新バッファの修正およびルックアップテーブル番号の割り当てのために、「ゲートキーパー」として使用される。領域ビットは、実際、別個の同時に更新可能な任意成形領域(異なる波形モードを割り当てられ得る)を指すために使用され得る複数のビットを備え、したがって、任意領域が、新たな波形モードの作成を伴うことなく、選択されることを可能にし得る。
【0059】
当然ながら、部分的更新を組み込むデバイス内の画像のエッジに沿って、ブルーミングを除去するための交互の対の命令組の使用に関する上記説明は、ブルーミング性能に影響を及ぼし得る他の因子(前の状態情報(グレースケール、カラー、ディザ)、デバイス温度、デバイス寿命、正面光の照明強度またはスペクトル等)を考慮するために拡張されることができる。いくつかの電気光学媒体がメモリ効果を表示することは、公知であり、そのような媒体を用いる場合、出力信号を生成するとき、各ピクセルの初期状態のみならず、(少なくとも)同じピクセルの最初の前の状態も考慮に入れることが望ましく、代替状態命令がルックアップテーブルとなる場合、それは、多次元となるであろう。ある場合、各ピクセルの2つ以上の前の状態を考慮に入れることが望ましくあり得、したがって、3、4、5、6、または7次元、またはそれを上回る次元を有するルックアップテーブルを結果としてもたらす。
【0060】
形式上の数学的視点から、そのような方法の実装は、最終状態への遷移をもたらすためにピクセルに適用され得る関数V(t)を生成するであろうアルゴリズムを備えていると見なされ得る(電気光学ピクセルの初期、最終、および(随意に)前の状態についての所与の情報、およびディスプレイの物理的状態(例えば、温度および総動作時間)についての情報を所与として)。この形式上の視点から、本発明のコントローラは、本質的に、このアルゴリズムの物理的な実施形態と見なされ、コントローラは、情報を表示したいデバイスと電気光学ディスプレイとの間のインターフェースとしての役割を果たし得る。
【0061】
今は、物理的な状態情報を無視し、本発明によるアルゴリズムは、ルックアップテーブルまたは遷移マトリクスの形態でエンコードされる。このマトリクスは、所望の最終状態に関して、各々につき1つの次元を有し、他の状態(初期および任意の前の状態)の各々に関して、計算に使用される。マトリクスの要素は、電気光学媒体に適用されるべき関数V(t)を含むであろう。交互の対の命令組方法では、各V(t)は、交互V(t)を有し得、交互V(t)は、例えば、前の状態または温度を考慮するが、コントローラが正しい光学状態を維持するように近隣ピクセルを効果的に更新し、望ましくないブルーミングを回避することを可能にする。
【0062】
ルックアップテーブルまたは遷移マトリクスの要素は、様々な形式を有し得る。ある場合、各要素は、単一の番号を備え得る。例えば、電気光学ディスプレイは、基準電圧を上回る多数の異なる電圧および下回る多数の異なる電圧を出力することが可能である高精度電圧変調ドライバ回路を使用し、標準的な所定の期間にわたって、要求される電圧をピクセルに単に印加し得る。そのような場合、ルックアップテーブル内の各エントリは、単に、所与のピクセルに印加されるべき電圧を規定する符号付き整数の形態を有し得る。他の場合、各要素は、波形の異なる部分に関連する一連の番号を備え得る。例えば、単一のプレパルス波形または二重のプレパルス波形を使用する本発明の実施形態が、下で説明され、そのような波形が波形の異なる部分に関連するいくつかの番号を必然的に要求することを規定している。代替として、パルス長の変調は、完全な走査中の複数のサブ走査期間のうちの選択されたサブ走査期間中、所定の電圧をピクセルに使用することによって実装され得る。そのような実施形態において、遷移マトリクスの要素は、所定の電圧が、関連する遷移の各サブ走査期間中に印加されるべきかどうかを規定する一連のビットの形態を有し得る。
【0063】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の特定の実施形態において行われ得ることは、当業者に明白であろう。故に、前述の説明の全体は、限定的ではなく、例証的な意味において解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】