(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】体腔内の血栓を治療するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A61B17/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524897
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 US2021071938
(87)【国際公開番号】W WO2022094523
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515000292
【氏名又は名称】ショックウェーブ メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ホア
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE14
4C160MM36
(57)【要約】
本開示は、概して、血栓切除デバイスに関する。例示的カテーテルは、中心管と、中心管にわたって搭載される、エミッタアセンブリであって、エミッタアセンブリは、伝導性シースと、第1の湾曲遠位部分を有する、第1の絶縁ワイヤと、第2の湾曲遠位部分を有する、第2の絶縁ワイヤとを備え、第1の湾曲遠位部分および第2の湾曲遠位部分は、伝導性シース内に位置付けられ、エミッタアセンブリは、パルス電圧が、エミッタアセンブリに印加されるとき、複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させるように構成される、エミッタアセンブリと、エミッタアセンブリを収容する外管とを備え、外管は、伝導性流体を受容するように構成され、外管は、複数のキャビテーション気泡または衝撃波および伝導性流体を前方方向に放出し、治療部位において血栓を治療するための遠位開口部を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
中心管と、
前記中心管にわたって搭載される、エミッタアセンブリであって、
伝導性シースと、
第1の湾曲遠位部分を有する、第1の絶縁ワイヤと、
第2の湾曲遠位部分を有する、第2の絶縁ワイヤと
を備え、
前記第1の湾曲遠位部分および前記第2の湾曲遠位部分は、前記伝導性シース内に位置付けられ、
前記エミッタアセンブリは、パルス電圧が、前記エミッタアセンブリに印加されるとき、複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させるように構成される、エミッタアセンブリと、
前記エミッタアセンブリを収容する、外管と
を備え、
前記外管は、伝導性流体を受容するように構成され、
前記外管は、前記複数のキャビテーション気泡または衝撃波および前記伝導性流体を前方方向に放出し、治療部位において血栓を治療するための遠位開口部を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記パルス電圧が、前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤを横断して印加されるとき、電流は、
前記第1のワイヤから前記伝導性シースへ流動し、第1の複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させることと、
前記伝導性シースから前記第2のワイヤへ流動し、第2の複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させることと
を行うように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1のワイヤは、第1の暴露される遠位先端を備え、前記第2のワイヤは、第2の暴露される遠位先端を備える、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記電流は、前記第1の暴露される先端から前記伝導性シースへ、かつ前記伝導性シースから前記第2の暴露される先端へ、伝導性流体を介して流動するように構成される、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記電流は、前記第1の暴露される遠位先端から前記伝導性シースの内壁および/または前縁へ流動するように構成される、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記中心管は、第1の区画と、前記第1の区画よりも前記中心管の近位端に近い第2の区画とを備え、前記第2の区画の直径は、前記第1の区画よりも大きい、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2の区画は、前記第1の絶縁ワイヤの一部を格納するための縦方向の溝を備える、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第1のワイヤの湾曲遠位部分は、前記中心管の前記第1の区画の周囲に巻着する、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記中心管は、ガイドワイヤを格納するための中心管腔を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
ポンプは、前記外管を通して、前記エミッタアセンブリに伝導性流体の持続的な流動を送達するように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記伝導性流体は、生理食塩水を含む、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記伝導性流体の持続的な流動は、前記治療部位から離れるように、破片を洗流する、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記電圧は、800V~2,700Vである、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記印加される電圧パルスの反復率は、約4Hz~100Hzである、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記電極対は、前記対の電極間にスパーク間隙を備え、前記スパーク間隙は、0.005インチ未満である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記第1および第2の絶縁ワイヤの前記第1および第2の湾曲遠位部分は、コイル状構成を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記第1および第2の絶縁ワイヤの前記第1および第2の湾曲遠位部分は、前記中心管の前記円周を中心として、約50~120度の範囲内に延在する、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
血管内の血栓を治療するためのカテーテルであって、
伸長中心部材と、
前記中心部材に沿って延在する、第1の絶縁ワイヤであって、前記第1のワイヤの遠位端は、前記中心部材の遠位端近傍に位置し、前記第1のワイヤの前記遠位端は、前記中心部材の前記遠位端の周囲に部分的に巻き付けられ、前記第1のワイヤの前記遠位端は、絶縁されない、第1の絶縁ワイヤと、
前記中心部材に沿って延在する、第2の絶縁ワイヤであって、前記第2のワイヤの遠位端は、前記中心部材の前記遠位端近傍に位置し、前記第2のワイヤの前記遠位端は、前記中心部材の前記遠位端の周囲に部分的に巻き付けられ、前記第2のワイヤの前記遠位端は、絶縁されない、第2の絶縁ワイヤと、
前記第1および第2のワイヤの前記遠位端の周囲に位置付けられ、それらから離間される、円筒形伝導性遮蔽体と、
前記遮蔽体を包囲し、開放遠位端を有する、外管であって、前記開放遠位端は、前記外管の近位端の中に注入される、伝導性流体が、前記第1および第2のワイヤの前記遠位端を越えて通過し、前記管の前記遠位端から外へ、前記血栓に向かって指向されるであろうように構成される、外管と
を備え、
高電圧パルスが、前記第1および第2のワイヤを横断して印加されるとき、電流は、前記第1のワイヤに沿って流動し、前記第1のワイヤの前記遠位端と前記遮蔽体との間の第1の間隙を飛び越え、次いで、前記遮蔽体に沿って、前記遮蔽体と前記第2のワイヤの前記遠位端との間の第2の間隙を飛び越え、前記第2のワイヤに沿って戻り、前記第1および第2の間隙の両方において、前記血栓に向かって前方に指向される、キャビテーション気泡または衝撃波を生成する、カテーテル。
【請求項19】
前記第1および第2のワイヤのコイル状部分は、前記中心部材の円周を中心として、約50~120度の範囲内に延在する、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記中心部材は、ガイドワイヤを格納するための管腔を含む、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記電圧パルスの電圧は、800V~2,700Vである、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記印加される電圧パルスの反復率は、約4Hz~100Hzである、請求項18に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その開示全体が、参照することによって組み込まれる、2020年10月27日に出願された、米国仮特許出願第63/106,275号、および2021年9月16日に出願された、米国非仮特許出願第17/477,483号の優先権を主張する。
【0002】
(開示の分野)
本開示は、概して、血栓切除デバイスに関し、より具体的には、患者の血管系から血栓を低減または除去するためのキャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させるように設計される、血栓切除デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
血栓切除デバイスは、凝血塊の負担を低減させ、部分的または完全に、患者の血管系から凝血塊(すなわち、血栓)を除去するように設計される。現在のところ、殆どの血栓切除デバイスにおいて血栓を除去する機構は、機械的である、またはプラスミノーゲンアクチベータ(「tPA」)治療と機械的プロセスとの組み合わせを伴う。これらのデバイスのいくつかは、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)を拡散させる目的のために、超音波を使用する。これは、血栓構造内の浸透性を増加させることによって行われ、これは、それに血栓溶解剤が、結合し得る、より多くの部位を暴露させる。これらのデバイスは全て、望ましくないように低速である凝血塊除去を提供するため、欠陥を有し、これは、典型的には、病院での1泊の入院を要求する。さらに、これらのデバイスは、高価であり、嵩張り、かつ動作が困難である傾向がある。さらに、依然として、これらのデバイスは、患者内の高い失血を伴い得る。
【0004】
故に、薬品(例えば、tPA)を使用することなく、凝血塊を治療し、血栓を治療するための費用効果的であり、時間効率的な解決策を提供する、デバイスに対する必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(簡単な要約)
本発明は、患者の血管系から血栓を低減または除去するためのキャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させるように設計される、血栓切除デバイスに関する。本発明の実施形態が、薬品(例えば、tPA)の使用を要求せず、迅速に(例えば、2時間未満で)機能することができるため、本発明は、血栓を治療するための費用効果的であり、効率的な解決策を提供する。短い手技時間は、出血性合併症を最小限にし、感染症を低減させることができる。
【0006】
例示的カテーテルは、中心管と、中心管にわたって搭載される、エミッタアセンブリであって、エミッタアセンブリは、伝導性シースと、第1の湾曲遠位部分を有する、第1の絶縁ワイヤと、第2の湾曲遠位部分を有する、第2の絶縁ワイヤとを備え、第1の湾曲遠位部分および第2の湾曲遠位部分は、伝導性シース内に位置付けられ、エミッタアセンブリは、パルス電圧が、エミッタアセンブリに印加されるとき、複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させるように構成される、エミッタアセンブリと、エミッタアセンブリを収容する、外管とを備え、外管は、伝導性流体を受容するように構成され、外管は、複数のキャビテーション気泡または衝撃波および伝導性流体を前方方向に放出し、治療部位において血栓を治療するための遠位開口部を備える。
【0007】
いくつかの実施形態では、パルス電圧が、第1のワイヤおよび第2のワイヤを横断して印加されるとき、電流が、第1のワイヤから伝導性シースへ流動し、第1の複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させ、かつ伝導性シースから第2のワイヤへ流動し、第2の複数のキャビテーション気泡または衝撃波を発生させるように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のワイヤは、第1の暴露される遠位先端を備え、第2のワイヤは、第2の暴露される遠位先端を備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、電流は、第1の暴露される先端から伝導性シースへ、かつ伝導性シースから第2の暴露される先端へ、伝導性流体を介して流動するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、電流は、第1の暴露される遠位先端から伝導性シースの内壁および/または前縁へ流動するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、中心管は、第1の区画と、第1の区画よりも中心管の近位端に近い第2の区画とを備え、第2の区画の直径は、第1の区画よりも大きい。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の区画は、第1の絶縁ワイヤの一部を格納するための縦方向の溝を備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のワイヤの湾曲遠位部分は、中心管の第1の区画の周囲に巻着する。
【0014】
いくつかの実施形態では、中心管は、ガイドワイヤを格納するための中心管腔を備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポンプが、外管を通して、エミッタアセンブリに伝導性流体の持続的な流動を送達するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、伝導性流体は、生理食塩水を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、伝導性流体の持続的な流動は、治療部位から離れるように、破片を洗流する。
【0018】
いくつかの実施形態では、電圧は、800V~2,700Vである。
【0019】
いくつかの実施形態では、印加される電圧パルスの反復率は、約4Hz~100Hzである。
【0020】
いくつかの実施形態では、電極対は、対の電極間にスパーク間隙を備え、スパーク間隙は、0.005インチ未満である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、いくつかの実施形態による、前方発射血管内カテーテルにおいて使用され得る、例示的エミッタアセンブリを描写する。
【0022】
【
図1B】
図1Bは、いくつかの実施形態による、例示的エミッタアセンブリのワイヤを描写する。
【0023】
【
図2A】
図2Aは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの部品を描写する。
【0024】
【
図2B】
図2Bは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの部品を描写する。
【0025】
【
図2C】
図2Cは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの部品を描写する。
【0026】
【
図2D】
図2Dは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの部品を描写する。
【0027】
【
図3A】
図3Aは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの遠位端の断面図を描写する。
【0028】
【
図3B】
図3Bは、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの遠位端の正面図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
以下の説明は、当業者が、種々の実施形態を作製し、使用することを有効にするために提示される。具体的なデバイス、技法、および用途の説明は、実施例としてのみ提供される。本明細書に説明される実施例に対する種々の修正は、当業者に容易に明白であって、本明細書に定義される一般原理は、種々の実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施例および用途に適用されてもよい。したがって、種々の実施形態は、本明細書に説明され、示される実施例に限定されることを意図せず、請求項と一致する範囲を許容されるものとする。
【0030】
本明細書に説明されるものは、電圧源を介して、キャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させることによって、患者の血管系から血栓を低減または除去するための例示的なシステムおよび方法である。いくつかの実施形態によると、本治療システムは、キャビテーション気泡、衝撃波、またはそれらの組み合わせを放出する、前方発射血管内カテーテルをを含む。本カテーテルは、ガイドワイヤを収容するための中心管と、中心管にわたって搭載され得る、エミッタアセンブリと、外管とを備える。いくつかの実施形態では、外管の遠位端は、(密閉されることとは対照的に)開放され、したがって、エミッタアセンブリによって生成されるキャビテーション気泡および/または衝撃波が、外管の遠位開口部を介して、前方方向に放出されることを可能にする。
【0031】
手術時、カテーテルは、体腔(例えば、血管)内で、治療部位まで(例えば、ガイドワイヤを介して)前進されることができる。エミッタアセンブリは、パルス発生器に接続されるとき、プラズマアークを形成し、ひいては、衝撃波および/またはキャビテーション気泡の発生につながる、電極を含む。キャビテーション気泡および/または衝撃波は、外管の遠位開口部を介して、前方方向に放出される。キャビテーション気泡および/または衝撃波は、機械的振動、乱流、噴射、および/または強力な圧潰を生成し、フィブリン繊維網を弱化および破壊し、したがって、血栓を低減および除去する。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明は、本質的に、衝撃波の発生およびキャビテーション気泡の発生の両方の側面を組み合わせた、ハイブリッド型システムである。各エミッタにおける(すなわち、スパーク間隙を横断する)電圧は、従来の血管内砕石術(「IVL」)よりも幾分低くあることができる。加えて、反復率は、衝撃波およびキャビテーション気泡の両方を生産するように、典型的なIVL治療よりも幾分高い。いくつかの実施形態では、カテーテルは、Shockwave Medical,Inc.から入手可能である、825D発生器(IVL発生器カタログ番号IVLGCCD)によって給電されることができる。いくつかの実施形態では、発生器の電圧は、1,800V~2,700Vで調節され、反復率は、約4Hz~25Hzに調節される。破壊電圧を維持するために、エミッタにおけるスパーク間隙(例えば、電極対の2つの電極間に形成される、スパーク間隙)は、十分に小さく、スパークを可能にする。いくつかの実施形態では、間隙は、0.005インチ未満である。
【0033】
図1Aは、いくつかの実施形態による、前方発射血管内カテーテルにおいて使用され得る、例示的エミッタアセンブリ100を描写する。エミッタアセンブリ100は、第1のワイヤ102と、第2のワイヤ104と、伝導性シース106とを備える。いくつかの実施形態では、伝導性シースは、ステンレス鋼ハイポ管であり得、ワイヤは、ポリイミド絶縁銅線であり得る。
【0034】
図1Bは、いくつかの実施形態による、ワイヤ102および104の斜視図を提供する。ワイヤ102は、直線部分102aと、湾曲遠位部分102bと、伝導性遠位端102cとを備える。いくつかの実施形態では、伝導性遠位端102cは、絶縁材料の下に、伝導性コアを暴露させるために、ワイヤ102を切断することによって形成される。同様に、ワイヤ104は、直線部分104aと、湾曲部分104bと、伝導性遠位端104cとを備える。
【0035】
エミッタアセンブリは、カテーテル内の中心管にわたって搭載されることができる。
図2Aを参照すると、例示的中心管108は、ガイドワイヤ110を格納するための中心管腔を備える。中心管はさらに、エミッタアセンブリのワイヤを格納するために、その外側表面上に、縦方向の溝(例えば、溝109)を備える。
【0036】
図2Aに描写される実施例では、中心管108は、区画108aと、区画108bとを備え、区画108bの直径は、108aよりも大きい。1つ以上の縦方向の溝(例えば、溝109)が、区画108bにわたって形成され、エミッタアセンブリのワイヤを格納することができる。区画108b内の溝における最深点は、区画108aの外側表面と整合されることができ、それによって、
図2Bのワイヤ104によって図示されるように、ワイヤが、区画108b内の溝を通して延在し、また、区画108aにわたって、平坦または略平坦な様式で静止することができる。
【0037】
図2Bおよび2Cは、エミッタアセンブリ(例えば、
図1Aのエミッタアセンブリ)が、中心管108にわたって搭載され得る方法を図示する。
図2Bを参照すると、ワイヤ104は、中心管108の縦方向の溝を通して延在し、その遠位湾曲部分104bが、中心管の周囲に巻着する。ワイヤ102は、中心管108の別の縦方向の溝を通して、同様の様式で搭載されることができる。ワイヤは、接着剤(例えば、エポキシまたはシアノアクリレート接着剤)を用いて、中心管の外側表面に接合されることができる。
図2Cを参照すると、エミッタアセンブリの伝導性シース106は、ワイヤ102および104の遠位湾曲部分にわたって(接触することなく)設置される。伝導性シース106は、接着剤(例えば、エポキシまたはシアノアクリレート接着剤)を用いて、定位置に固着されることができる。伝導性シースとワイヤ102および104の遠位端のそれぞれとの間には、隙間が、存在する。いくつかの実施形態では、間隙は、約0.003インチ~0.006インチである。
【0038】
図2Dを参照すると、カテーテルはさらに、外管112を備える。外管112は、遠位端において開放される。示されるように、外管112は、エミッタアセンブリの周囲に巻着され、伝導性シースと、ワイヤとを含む。外管は、非伝導性ポリマーまたはエラストマ(例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ネオプレン、シリコーン)から作製されることができる。
【0039】
図1Aに戻って目を向けると、手術時、エミッタアセンブリ100が、電圧源に接続されるとき、電流iが、第1の絶縁ワイヤ102と、伝導性シース106と、第2の絶縁ワイヤ104とを通して横断し、2つの場所において、キャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させる。具体的には、ワイヤ102の近位端は、電圧発生器(図示せず)の正のポートに接続され、ワイヤ104の近位端は、電圧発生器の負のポートに接続される。発生器は、持続的パルスモードで、または一連の短いバーストでエネルギーを送達する。故に、電流iは、矢印によって示されるように、エミッタアセンブリを横断する。示されるように、電流iは、ワイヤ102の近位端からその遠位湾曲部分に向かって横断する。ワイヤ102の遠位端において、ワイヤの伝導性コアは、暴露され、したがって、電流が、伝導性流体を介して、ワイヤ102の遠位端と伝導性シース106(例えば、伝導性シースの内壁および/または前縁)との間の間隙を横断することを可能にする。ワイヤ102の暴露された遠位端および伝導性シース106は、キャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させるための第1電極対を形成する。
【0040】
電流iはさらに、伝導性シース106と第2の絶縁ワイヤ104の遠位端との間の隙間を横断する。第2の絶縁ワイヤ104の遠位端において、ワイヤの伝導性コアが、暴露され、したがって、電流が、伝導性流体を介して、伝導性シース106(例えば、伝導性シースの内壁および/または前縁)とワイヤ104の伝導性遠位端との間の隙間を横断することを可能にする。第2のワイヤ104の暴露された遠位端および伝導性シース106は、キャビテーション気泡および/または衝撃波を発生させるための第2の電極対を形成する。電流iは、次いで、第2の絶縁ワイヤ104を介して、電圧発生器に帰還する。
【0041】
電流iが、ワイヤと伝導性シースとの間を横断するにつれて、複数のプラズマアークが、ワイヤの暴露された遠位端と伝導性シースの内壁および/または前縁との間に形成される。プラズマアークは、制御された方式で(一度に1回ずつ、特定の率において)、キャビテーション気泡および/または衝撃波につながり、これは、ひいては、機械的振動、および(例えば、気泡の膨張および圧潰を介して)伝導性流体中の圧潰、乱流、噴射等の他の気泡動態関連効果につながる。機械的振動は、血栓を低減または除去する役割を果たす。キャビテーションは、血栓の基底構造である、フィブリン網架橋を弱化することが知られている。機械的振動と気泡キャビテーションとの組み合わせは、血栓溶解において有効であり得る。
【0042】
図1Aに示されるように、ワイヤ102および104の遠位湾曲部分はそれぞれ、伝導性シース106の隣接する内壁と同一の方向に湾曲される。いくつかの実施形態では、各ワイヤの遠位湾曲部分は、伝導性シースの隣接する内壁に平行または略平行であることができる。プラズマアークが、電極に侵食を引き起こすため、各湾曲部分は、経時的に、侵食および短縮され得る。湾曲ワイヤ部分の曲率が、伝導性シースの隣接する内壁の曲率に類似する(例えば、同一の方向)、または同じであるため、ワイヤの遠位端と伝導性シースとの間の最短間隙は、一定または略一定に保たれ得、したがって、キャビテーション気泡および/または衝撃波が、一定または略一定の様式で発生させられることを確実にする。湾曲ワイヤ部分が、侵食されるにつれて、キャビテーション気泡および/または衝撃波の発生場所が、変化するであろうことに留意されたい。例証された実施形態では、空洞気泡および/または衝撃波の発生場所は、伝導性シース106の内周を中心として、円周方向に回転するであろう。
【0043】
上記で記述される、先行技術衝撃波発生システムにおいて使用される発生器と比較して、本システムのための発生器は、キャビテーション気泡および衝撃波の両方の利益を取得するために、より高いパルス反復率において、より低い電圧パルスを発生させるように構成され得る。例えば、先行技術システムでは、各パルスは、1Hzの反復率を伴って、約3,000ボルトであり得る。本システムの実施形態では、電圧は、800V~2,700Vで調節され、反復率は、約4Hz~100Hzに調節される。パルスデューティサイクルは、20%~60%で調節される。これらのパラメータは、凝血塊の状態に基づいて、変動されることができる。
【0044】
ワイヤおよび伝導性管によって形成される、電極対に関する付加的な詳細は、可能性として考えられる変形例とともに、譲受人の以前の出願、すなわち、「SYSTEM FOR TREATING OCCLUSIONS IN BODY LUMENS」と題された、米国公開第2019/0388110号、および「SYSTEM FOR TREATING THROMBUS IN BODY LUMENS」と題された、米国公開第2021/0085348号において提供されており、これらは両方とも、参照することによって組み込まれる。
図1A-2Dは、2本のワイヤと、1つの電圧源によって駆動される伝導性シースとを備える、エミッタアセンブリを描写するが、エミッタアセンブリの他の構成も、カテーテルの遠位先端に設置され、前方発射能力を提供することができることを理解されたい。
【0045】
図3Aおよび3Bは、それぞれ、いくつかの実施形態による、例示的前方発射血管内カテーテルの遠位端の断面図および正面図を描写する。中心管108は、ガイドワイヤ110を格納するための中心管腔を備える。ワイヤ102および104と、伝導性シース106とを備える、エミッタアセンブリが、中心管108にわたって搭載される。エミッタアセンブリは、2つのエミッタを備え、各エミッタは、電極対を備える。第1の電極対は、ワイヤ102の遠位端と、伝導性シース106とを備え、第2の電極対は、ワイヤ104の遠位端と、伝導性シース106とを備える。
図3Bに見られるように、湾曲遠位部分は、コイル状構成を有する。各湾曲部分は、中心管の第1の区画108aの円周を中心として、約50~120度の範囲内に延在する。
【0046】
カテーテルはさらに、外管112を備え、これは、エミッタアセンブリの周囲に巻着し、それを被覆する。手術時、外管112は、イオン溶液(例えば、生理食塩水または造影剤と混合された生理食塩水等の伝導性溶液)をポンプからエミッタアセンブリに送達するために使用される。上記に説明されるように、エミッタアセンブリが、電圧源に接続されるとき、プラズマアークが、各電極対において、伝導性流体を介して、(例えば、各ワイヤの遠位端とシースの内壁および/または前端との間に)形成され、これは、ひいては、大量のキャビテーション気泡の形成および圧潰、ならびに/もしくは衝撃波につながる。伝導性流体の流動は、キャビテーション気泡および/または衝撃波を前方に運搬するために、継続的に管理されることができる。
【0047】
外管112は、キャビテーション気泡を前方方向に放出するための遠位開口部を有する。電極対は、キャビテーション気泡の放出を最大限にするために、遠位開口部近傍に設置される。
図3Aの矢印114によって示されるように、エミッタアセンブリからのキャビテーション気泡は、血栓への遠位開口部を通したイオン溶液の圧送された流動によって、前方方向において遂行される。さらに、衝撃波は、遠位開口部を通して、前方に伝搬される。圧送された流動はさらに、治療部位から破片(例えば、金属、気泡)および血栓の断片を除去する。破片の迅速な除去は、キャビテーションをリフレッシュすることに役立つ。いくつかの実施形態では、ポンプは、注入と吸引の両方を提供する。
【0048】
カテーテルは、ポンプと併用されることができる。いくつかの実施形態では、ポンプは、イオン溶液(すなわち、生理食塩水または造影剤と混合された生理食塩水等の伝導性溶液)を、キャビテーションが起こるカテーテル先端に、外管を介して送達する。ポンプまたは補助的ポンプはまた、血栓領域から離れるように、破片を吸引する。注入流動は、エミッタアセンブリの電力送達に同期され、エミッタの周囲に適正なイオン溶液を確保することができる。吸引流動と注入流動とは、同期され、治療部位における圧力平衡を維持することができる。いくつかの実施例では、生理食塩水または生理食塩水/血管造影用造影剤の流動は、調節され、過熱問題を回避し、治療効率および治療率を制御する。
【0049】
いくつかの実施形態では、付加的な構成要素が、エミッタによって生産される破片を捕捉するための近位バルーン、可視化システム、および/または(例えば、側枝を)適切にナビゲートし、カテーテルを設置するための操向システム等の治療システム内に含まれる。治療システムの付加的な詳細は、上記で参照され、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国公開第2019/0388110号および第2021/0085348号において提供されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、手技は、約30分~1時間を要し得、その間、エミッタアセンブリは、キャビテーション気泡および/または衝撃波を持続的に発生させる。これらの動作パラメータ(例えば、電圧、反復率、または電圧パルスのパルスデューティサイクル)は、凝血塊の特性(例えば、凝血塊のサイズ、凝血塊の年数、凝血塊の組成、凝血塊の柔軟度、凝血塊の動脈内または静脈内の場所、凝血塊の血小板含有量、凝血塊のフィブリン含有量、または凝血塊のある他の属性)および/または患者の特性(例えば、患者の年齢または既往症)に基づいて設定されることができる。いくつかの実施形態では、手技後、術後低侵襲手技(例えば、出血および血栓再形成の治療)が、実施されることができる。
【0051】
前述は、本発明の原理の例証にすぎず、種々の修正、改変、および組み合わせが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。本明細書で開示される、種々のキャビテーションデバイスの変形例はいずれも、本明細書内の任意の他のキャビテーションデバイスまたは衝撃波デバイスの組み合わせによって説明される、特徴を含むことができる。さらに、方法はいずれも、開示されるキャビテーションデバイスのいずれとも併用されることができる。故に、添付の請求項によるものを除いて、本発明が、限定されることは意図されない。上記に説明される、全ての変形例に関して、方法のステップが、逐次的に実施される必要はない。
【国際調査報告】