(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231030BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231030BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524949
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 KR2022007802
(87)【国際公開番号】W WO2022255803
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071883
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェギル・イ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
(57)【要約】
本発明は、リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム-硫黄電池用電解液であって、前記添加剤は化学式1で表される化合物を含み、前記化学式1においてR1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立して水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC60のアリール基;置換または非置換したC1ないしC60のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC60のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つは、Hではない、リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム-硫黄電池用電解液であって、
前記添加剤は、下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム-硫黄電池用電解液:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC60のアリール基;置換または非置換したC1ないしC60のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC60のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHではない。
【請求項2】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC20のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC20のアリール基;置換または非置換したC1ないしC20のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC20のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHではない、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項3】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;及び置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHではない、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項4】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;ペンチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;ヘキシル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;及び2-エチルブチル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHではない、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxolane)、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン(2,2-dimethyl-1,3-dioxolane)、2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン(2,2,4-trimethyl-1,3-dioxolane)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものである、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項6】
前記リチウム-硫黄電池用電解液は、電解液の総重量対比0.1ないし5重量%の前記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項7】
前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)であり、
前記リチウム-硫黄電池用電解液は、電解液の総重量対比0.1ないし5重量%の前記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項8】
正極;
負極;
前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の電解液を含む、リチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月3日付韓国特許出願第10-2021-0071883号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、リチウム-硫黄電池用電解液及びそれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池が活用される範囲が小型の携帯型電子機器から中大型の電気自動車(Electric vehicle;EV)、エネルギー貯蔵装置(Energy Storage System、ESS)、電気船舶などに拡張するにつれ高容量、高エネルギー密度及び、長い寿命を有するリチウム二次電池に対する需要が急増している。
【0004】
リチウム金属は理論的に3,860mAh/gの非常に高い比容量(Specific capacity)を有し、負極材として電位が低く、密度が非常に小さいという点で、電池の負極として使用しようとする様々な試みがなされてきた。
【0005】
なかでもリチウム-硫黄二次電池は、「S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)」を有する硫黄系列の物質を正極活物質であって、リチウム金属を負極活物質として用いる電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、低い原子当たりの重量を有しながらも資源が豊富で、需給が容易であるだけでなく、安価で電池の製造コストを下げることができ、毒性がなく環境に優しいという点で特性を有する。
【0006】
特に、リチウム-硫黄二次電池は理論放電容量が1,675mAh/g-sulfurであり、理論上では重量対比2,600Wh/kgの高いエネルギー貯蔵密度が具現できるため、現在研究されている他の電池システム(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べて非常に高い数値を有するため現在まで開発されている中大型の二次電池市場において大いに注目されている。
【0007】
前記リチウム-硫黄二次電池の寿命に影響を及ぼす要因としてリチウム負極の退化が挙げられ、これは正極活物質との反応や電解液との反応などが原因となって発生できる。前記負極の退化は結果的にデンドライトを形成させ、クーロン効率(Coulombic Efficiency, C.E)を低下させる問題点が指摘されてきた。特にデンドライトが一次元の形態で形成されると、気孔を含む分離膜を通じて内部短絡(Internal short circuit)が発生し、電解液の燃焼による安全や寿命減少の問題が発生できる。
【0008】
よって、前記デンドライト現象によるリチウム-硫黄電池の問題点を改善するために、負極表面に均一にリチウムを被覆(plating)及び剥離(stripping)させてデンドライトの形成を抑制するための研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0119963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、前記問題を解決するために、リチウム-硫黄電池用電解液にジオキソラン系誘導体を添加し、電池の寿命及び効率を改善したリチウム-硫黄電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面によると、
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム-硫黄電池用電解液であって、前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム-硫黄電池用電解液を提供する。
【0012】
【0013】
前記化学式1において、R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立して水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換されたC6ないしC60のアリール基;置換または非置換したC1ないしC60のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC60のアリールオキシ基からなる群から選択され、R1ないしR6の少なくとも1つはHではない。
【0014】
本発明の一具体例において、前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立して水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC20のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC20のアリール基;置換または非置換したC1ないしC20のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC20のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0015】
本発明の一具体例において、前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立して水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0016】
本発明の一具体例において、R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立して水素;重水素;メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;ペンチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;ヘキシル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;2-エチルブチル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0017】
本発明の一具体例において、前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxolane)、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン(2,2-dimethyl-1,3-dioxolane)、2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン(2,2,4-trimethyl-1,3-dioxolane)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものである。
【0018】
本発明の一具体例において、前記リチウム-硫黄電池用電解液は、電解液の総重量対比0.1ないし5重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0019】
本発明の一具体例において、前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)であり、前記リチウム-硫黄電池用電解液は電解液の総重量対比0.1ないし5重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0020】
本発明の第2の側面によると、
正極;負極;前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び前記電解液を含むリチウム-硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るリチウム-硫黄電池は、ジオキソラン系誘導体を電解液内添加剤として含み、リチウム系金属である負極表面において開環重合反応(Ring opening polymerization)を通じて保護膜を形成し、リチウムデンドライトの生成を抑制し、電池寿命とクーロン効率を向上させる効果を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明により提供される具体例は、下記の説明によって全て達成できる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述することとして理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0023】
本明細書において用いられている用語「ポリスルフィド」は、「ポリスルフィドイオン(Sx
2-、x=8、6、4、2)」及び「リチウムポリスルフィド(Li2SxまたはLiSx
-、x=8、6、4、2)」を全て含む概念である。
【0024】
本明細書において使用される用語「置換」は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか相違である。
【0025】
本明細書において用いられている「置換または非置換」の任意の置換基としては重水素;ハロゲン;シアノ基;炭素数1ないし60のアルキル基;炭素数2ないし60のアルケニル基;炭素数2ないし60のアルキニル基;炭素数3ないし60のシクロアルキル基;炭素数2ないし60のヘテロシクロアルキル基;炭素数5ないし60のアリール基;炭素数2ないし60のヘテロアリール基;炭素数1ないし60のアルコキシ基;炭素数5ないし60のアリールオキシ基;炭素数1ないし60のアルキルシリル基;及び炭素数6ないし60のアリールシリル基からなる群から選択された1以上の置換基であることができ、置換基が複数の場合には互いに同一であるか相違である。
【0026】
リチウム-硫黄電池用電解液
本発明によるリチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム-硫黄電池用電解液であって、前記添加剤は、下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム-硫黄電池用電解液を提供する。
【0027】
【0028】
前記化学式1において、
R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC60のアリール基;置換または非置換したC1ないしC60のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC60のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHではない。
【0029】
前記リチウム-硫黄電池用電解液に対して添加剤として前記化学式1で表される化合物であるジオキソラン系誘導体(dioxolane derivatives)が含まれることで、負極として用いられるリチウム系金属表面において開環重合反応(Ring opening polymerization)を通じて負極保護膜が形成され、デンドライトの形成を低減し、効率的な被覆(plating)及び剥離(stripping)過程を通じて電池の寿命及び効率特性を改善する効果が表れる。
【0030】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC60のアリール基;置換または非置換したC1ないしC60のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC60のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0031】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC40のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC40のアリール基;置換または非置換したC1ないしC40のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC40のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0032】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC20のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC20のアリール基;置換または非置換したC1ないしC20のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC20のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0033】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC10のアリール基;置換または非置換したC1ないしC10のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC10のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0034】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC10のアリール基;及び置換または非置換したC1ないしC10のアルコキシ基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0035】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;置換または非置換したC6ないしC10のアリール基;及び置換または非置換したC6ないしC10のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0036】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;置換または非置換したC1ないしC10のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC10のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0037】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC6ないしC10のアリール基;置換または非置換したC1ないしC10のアルコキシ基;及び置換または非置換したC6ないしC10のアリールオキシ基からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0038】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;及び置換または非置換したC6ないしC10のアリール基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0039】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;及び置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0040】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;ペンチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;ヘキシル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;2-エチルブチル基;ヘプチル基;n-ヘプチル基;1-メチルヘキシル基;シクロペンチルメチル基;シクロヘキシルメチル基;オクチル基;n-オクチル基;tert-オクチル基;1-メチルヘプチル基;2-エチルヘキシル基;2-プロピルペンチル基;n-ノニル基;2,2-ジメチルヘプチル基;1-エチル-プロピル基;1,1-ジメチル-プロピル基;イソヘキシル基;2-メチルペンチル基;4-メチルヘキシル基;及び5-メチルヘキシル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0041】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;ペンチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;ヘキシル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;及び2-エチルブチル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0042】
前記R1ないしR6は互いに同一であるか、または異なって、それぞれ独立に水素;重水素;メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;及びsec-ブチル基;からなる群から選択され、前記R1ないしR6の少なくとも1つはHでなくてもよい。
【0043】
本明細書において、前記アルキル基は具体的には メチル基;エチル基;プロピル基;n-プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;ペンチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;ヘキシル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;2-エチルブチル基;ヘプチル基;n-ヘプチル基;1-メチルヘキシル基;シクロペンチルメチル基;シクロヘキシルメチル基;オクチル基;n-オクチル基;tert-オクチル基;1-メチルヘプチル基;2-エチルヘキシル基;2-プロピルペンチル基;n-ノニル基;2,2-ジメチルヘプチル基;1-エチル-プロピル基;1,1-ジメチル-プロピル基;イソヘキシル基;2-メチルペンチル基;4-メチルヘキシル基;及び5-メチルヘキシル基からなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本明細書において、前記アリール基は具体的にはフェニル基;ビフェニル基;ターフェニル基;クォーターフェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェナントレニル基;ピレニル基;ペリレニル基;トリフェニル基;クライセニル基;フルオレニル基;及びトリフェニレニル基からなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本明細書において、前記アルコキシ基は具体的にメトキシ;エトキシ;n-プロポキシ;i-プロピルオキシ;n-ブトキシ;イソブトキシ;tert-ブトキシ;sec-ブトキシ;n-ペンチルオキシ;ネオペンチルオキシ;イソペンチルオキシ;n-ヘキシルオキシ;3,3-ジメチルブチルオキシ;2-エチルブチルオキシ;n-オクチルオキシ;n-ノニルオキシ;及びn-デシルオキシからなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本明細書において、前記アリールオキシ基は具体的にはフェノキシ基;p-トリルオキシ基;m-トリルオキシ基;3,5-ジメチル-フェノキシ基;2,4,6-トリメチルフェノキシ基;p-tert-ブチルフェノキシ基;3-ビフェニルオキシ基;4-ビフェニルオキシ基;1-ナフチルオキシ基;2-ナフチルオキシ基;4-メチル-1-ナフチルオキシ基;5-メチル-2-ナフチルオキシ基;1-アントリルオキシ基;2-アントリルオキシ基;9-アントリルオキシ基;1-フェナントリルオキシ基;3-フェナントリルオキシ基;及び9-フェナントリルオキシ基からなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxolane)、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン(2,2-dimethyl-1,3-dioxolane)、2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン(2,2,4-trimethyl-1,3-dioxolane)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであってもよく、好ましくは2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxolane)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであってもよい。
【0048】
前記リチウム-硫黄電池用電解液は、電解液の総重量対比0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、0.7重量%以上、0.9重量%以上の前記化学式1で表される化合物を含むことができ、5重量%以下、4.6重量%以下、4.2重量%以下、3.8重量%以下、3.4重量%以下、3重量%以下の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。前記リチウム-硫黄電池用電解液が電解液の総重量対比0.1重量%未満の前記化学式1で表される化合物を含むなら、添加される量が少なく、負極保護膜の形成はかすかで、ジオキソラン系誘導体の添加剤の投入による目的とした機能を発揮できなくなる問題が生じ得る。また前記リチウム-硫黄電池用電解液が、電解液の総重量対比5重量%を超える前記化学式1で表される化合物を含むなら、電池に過電圧が誘導され、電池駆動上の問題が生じ得る。
【0049】
前記リチウム-硫黄電池用電解液は、前記化学式1で表される化合物は、2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)であり、前記リチウム-硫黄電池用電解液は電解液の総重量対比0.1ないし5重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0050】
前記有機溶媒は、線状エーテル化合物、環状エーテル化合物及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0051】
前記線状エーテル化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルtertブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtertブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0052】
前記環状エーテル化合物は、1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-ジオキソラン、4,5-ジエチル-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、2-エトキシテトラヒドロフラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、2-メトキシ-1,3-ジオキソラン、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、イソソルビドジメチルエーテル(isosorbide dimethyl ether)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0053】
本発明のリチウム-硫黄電池用電解液はリチウム塩を含むことができる。前記リチウム塩は有機溶媒に溶解しやすい物質であって、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiB(Ph)4、LiC4BO8、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSO3CH3、LiSO3CF3、LiSCN、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(SO2F)2、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択されるものであることができ、好ましくは、LiN(CF3SO2)2(LITFSI)である。
【0054】
前記リチウム塩の濃度は、電解液に含まれた混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解した塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野において公知された他の要因のようないくつの要因により、0.1~5.0M、好ましくは0.2~3.0M、さらに具体的には0.5~2.5Mである。0.1M未満に使用すれば電解液の伝導度が低くなって電解液の性能が低下でき、5.0Mを超えて使用すれば電解液の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が減少できる。
【0055】
本発明のリチウム-硫黄電池用電解液は、前述の組成以外に該当技術分野において通常用いられる添加剤をさらに含むことができる。一例として、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0056】
本発明によるリチウム-硫黄電池用電解液の製造方法は、本発明において特に限定せず、当業界において公知の通常の方法により製造することができる。
【0057】
リチウム-硫黄電池
本発明によるリチウム-硫黄電池は正極;負極;前記正極と負極との間に介在した分離膜;及び電解液;を含み、前記電解液として本発明によるリチウム-硫黄電池用電解液を含む。
【0058】
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層とを含むことができる。
【0059】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いることができる。
【0060】
前記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0061】
前記正極活物質層は正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0062】
前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、有機硫黄化合物Li2Sn(n≧1)及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)からなる群から選択された1種以上であってもよい。好ましくは無機硫黄(S8)を用いることができる。
【0063】
前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して用いられる。これにより、前記硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれ、好ましくは、前記正極活物質は硫黄-炭素複合体である。
【0064】
前記硫黄-炭素複合体に含まれる炭素は、多孔性炭素材で前記硫黄が均一、かつ安定的に固定される骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学反応が円滑に進行できるようにする。
【0065】
前記多孔性炭素材は一般的に様々な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造することができる。前記多孔性炭素材は内部に一定でない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nmの範囲であり、気孔度または空隙率は多孔性炭素材の全体積の10ないし90%の範囲である。万一、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔サイズが分子レベルに過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、逆に前記範囲を超える場合、多孔性炭素材の機械的強度が弱化し、電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0066】
前記多孔性炭素材の形態は球形、棒形、針状、板状、チューブ型、またはバルク型であって、リチウム-硫黄電池に通常用いられるものであれば制限なく使用することができる。
【0067】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であるか、比表面積の高いものであって、当業界において通常用いられるものであればいずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材としてはグラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化カーボンファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群から選択される1種以上であるが、これに限らない。
【0068】
前記硫黄-炭素複合体の製造方法は本発明において特に限定せず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。
【0069】
前記正極は前記正極活物質以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0070】
前記遷移金属元素としてはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記IIIA族元素としてはAl、Ga、In、Tiなどが含まれ、前記IVA族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれ得る。
【0071】
前記導電材は、電解液と正極活物質とを電気的に連結させ、集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役割を果たす物質であって、導電性を有するものであれば制限なく用いることができる。
【0072】
例えば、前記導電材としては天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの伝導性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの導電性高分子を単独または混合して用いることができる。
【0073】
前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結してこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界において公知の全てのバインダーを用いることができる。
【0074】
例えば、前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(Styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を含むポリアルコール系バインダー;ポリアクリル酸(polyacrylic acid、PAA)を含むポリアクリル系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を用いることができる。
【0075】
前記正極の製造方法は本発明において特に限定せず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。一例として、前記正極は正極スラリー組成物を調製した後、これを前記正極集電体の少なくとも一面に塗布することで製造されたものである。
【0076】
前記正極スラリー組成物は前述の正極活物質、導電材及びバインダーを含み、その他の溶媒をさらに含むことができる。
【0077】
前記溶媒としては正極活物質、導電材及びバインダーを均一に分散することができるものを用いる。このような溶媒としては水系溶媒として水が最も好ましく、この際、水は蒸留水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)であってもよい。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールを用いることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水とともに混合して用いることができる。
【0078】
前記正極において硫黄のローディング量は、1ないし10mAh/cm2、好ましくは1ないし6mAh/cm2である。
【0079】
前記負極は負極集電体及び前記負極集電体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または前記負極はリチウム金属板である。
【0080】
前記負極集電体は負極活物質層の支持のためのものであり、電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限せず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。前記ステンレススチールはカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理することができ、前記合金としてはアルミニウム-カドミウム合金を用いることができ、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを用いることもできる。一般に、負極集電体としては銅薄板を適用する。
【0081】
また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が用いられる。
【0082】
前記負極活物質層は、負極活物質以外に導電材、バインダーなどを含むことができる。この際、前記導電材及びバインダーは前述した内容にしたがう。
【0083】
前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0084】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物である。リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化錫、窒化チタンまたはシリコンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0085】
好ましくは、負極活物質はリチウム金属であることができ、具体的にはリチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態である。
【0086】
前記負極活物質の形成方法は特に限定されず、当業界において通常用いられる層または膜の形成方法を用いることができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組立てた後、初期充電により金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0087】
前記電解液は、それを媒介に前記正極と負極において電気化学的酸化または還元反応を引き起こすためのものであり、前述した内容にしたがう。
【0088】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性により、リチウム-硫黄電池の製造工程のうち適切な段階で行われる。すなわち、リチウム-硫黄電池の組立て前または組立ての最終段階などで適用される。
【0089】
前記正極と負極との間には通常の分離膜が介在できる。前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗で、かつ電解液含湿能に優れるものが好ましい。
【0090】
また、前記分離膜は、前記正極と負極とを互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオン輸送を可能にするもので、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなり得る。前記分離膜は通常、リチウム-硫黄電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能である。前記分離膜はフィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0091】
前記分離膜は多孔性基材からなり得るが、前記多孔性基材は通常リチウム-硫黄電池に用いられる多孔性基材であれば全て使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記多孔性基材の材質としては、本発明において特に限定せず、通常リチウム-硫黄電池に用いられる多孔性基材であれば全て使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole))及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0093】
前記多孔性基材の厚さは特に限定されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmである。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述の範囲に限定されるものではないが、厚さが前述の下限より薄すぎる場合には機械的物性が低下し、電池の使用中に分離膜が容易に損傷されることがある。
【0094】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔度また特に限定されないが、それぞれ0.1ないし50μm及び10ないし95%である。
【0095】
本発明によるリチウム-硫黄電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0096】
前記リチウム-硫黄電池の形状は特に限定されず、円筒形、積層型、コイン形など様々な形状とすることができる。
【0097】
以下、本発明の理解に役立つために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0098】
実施例:リチウム-硫黄電池の製造
リチウム-硫黄電池用電解液の製造:製造例1ないし24
[製造例1]
有機溶媒である1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)と1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)を1:1の体積比(v/v)で混合及び添加剤として2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-methyl-1,3-dioxolane)0.5重量%を添加し、1Mのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と1重量%のLiNO3を溶解してリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0099】
[製造例2ないし7]
添加剤である2-メチル-1,3-ジオキソランの添加重量比を下記表1のように異にしたことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0100】
[製造例8ないし14]
添加剤として4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)を用い、添加重量比を下記表1のように異にしたことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0101】
[製造例15ないし21]
添加剤として2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(2-ethyl-2-methyl-1,3-dioxolane)を用い、添加重量比を下記表1のように異にしたことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0102】
[製造例22]
添加剤を用いていないことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0103】
[製造例23及び24]
添加剤として1,3-ジオキソランを下記表1の重量比でさらに添加したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0104】
【0105】
リチウム-硫黄電池の製造:実施例1ないし21及び比較例1ないし3
[実施例1]
水を溶媒とし、正極活物質と硫黄-炭素複合体、導電材及びバインダーを87.5:5:7.5の割合で混合して正極活物質スラリーを製造した。この際、硫黄-炭素複合体は、硫黄とカーボンナノチューブ(CNT)を75:25の重量比で混合して製造した。また導電材としてはデンカブラックを、バインダーとしてはスチレン-ブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=70:30、重量比)を混合して、正極スラリー組成物を製造した。
【0106】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥した後圧延して気孔度68%及びローディング量5.6mAh/cm2の正極を製造した。
【0107】
負極としては厚さ45μmのリチウム金属を用いた。
【0108】
前記製造された正極と負極とを対面するように位置させた後に、厚さ16μm及び気孔度45%のポリエチレン分離膜を正極と負極との間に介在して電極組立て体を製造した。その後、前記電極組立て体をケース内部に位置させた後、ケース内部へ前記製造例1のリチウム-硫黄電池用電解液を注入してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0109】
[実施例2ないし21]
リチウム-硫黄電池用電解液として前記製造例2ないし21の電解液を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池を製造した。
【0110】
[比較例1ないし3]
リチウム-硫黄電池用電解液として前記製造例22ないし24の電解液を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池を製造した。
【0111】
【0112】
実験例1:電池の寿命特性の評価
前記実施例1ないし21及び比較例1ないし3により製造されたリチウム-硫黄電池について、充放電サイクルの繰り返しを通じて電池の寿命特性を評価した。評価結果は下記表3に示す。
【0113】
具体的には、リチウム-硫黄電池に対して25℃の電池駆動温度条件においてCCモードで0.1Cで1.8Vまで放電及び0.1Cで2.5Vまで充電を2回繰り返した後、0.2Cで充電及び放電を1回繰り返し、0.3C充電/0.5C放電を200サイクルまで繰り返して電池の寿命特性を評価した。
【0114】
前記電池寿命特性評価では、0.3C充電/0.5C放電を始めるサイクルにおける放電容量対比当該サイクルにおける放電容量の割合(%)を維持率(Retention)に定義し、また寿命を評価するために維持率(Retention)(%)が80%になったときのサイクル数を下記表3のように示す。
【0115】
【0116】
前記表3の結果を通じて、電解液添加剤としてジオキソラン系誘導体のうち「2-メチル-1,3-ジオキソラン」を含む実施例1ないし7のリチウム-硫黄電池は、「電解液添加剤を全く含まない比較例1」または「電解液添加剤として1,3-ジオキソランを含む比較例2及び3」に比べて、サイクルが繰り返されても容量維持率が高く維持され、優れた電池寿命特性を有することを確認することができた。
【0117】
具体的に、電解液添加剤としてジオキソラン系誘導体である「2-メチル-1,3-ジオキソラン」を含む実施例1ないし7は少なくとも61サイクルに達してから維持率(Retention)が80%に達することが分かった。しかし、前記比較例1ないし3の場合には47サイクル以前に既に80%維持率(Retention)に達して充放電による容量維持率が著しく低下することが確認できた。
【0118】
特に、電解液添加剤である「2-メチル-1,3-ジオキソラン」を電解液の総重量対比0.1ないし5重量%含む実施例1ないし5の場合、100サイクル以上の充放電が進行したにもかかわらず、80%以上の容量維持率を示し、優れた寿命特性を有することが確認できた。
【0119】
また、電解液添加剤として「4-メチル-1,3-ジオキソラン」及び「2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン」をそれぞれ電解液の総重量対比0.1ないし5重量%を含むように用いた実施例8ないし12または実施例15ないし19の場合が、5重量%を超えて添加剤を投入した場合に比べて高い容量維持率で優れた寿命特性を有することが確認できた。
【0120】
本発明の単なる変形または変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になる。
【国際調査報告】