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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】化粧料組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231030BHJP
   C08J 3/00 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231030BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231030BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61K8/891
C08J3/00 CFH
A61K8/81
A61K8/31
A61Q1/00
C08F283/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524986
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 KR2021013252
(87)【国際公開番号】W WO2022114490
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0161404
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521060187
【氏名又は名称】ケーシーシーシリコーンコーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KCC Silicone Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】コ・テホ
(72)【発明者】
【氏名】リ・クァンフン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユソク
【テーマコード(参考)】
4C083
4F070
4J026
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD161
4C083AD162
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE09
4C083FF01
4F070AA60
4F070AB03
4F070AB22
4F070AB23
4F070AB24
4F070AC32
4F070AE28
4F070BA09
4F070BB05
4J026AB44
4J026BA27
(57)【要約】
本発明は、アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を含み、前記希釈剤は、天然由来の炭化水素であり、前記天然由来の炭化水素の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われる真空蒸留を介して有機溶剤を除去して製造された化粧料組成物、及びその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を含み、
前記希釈剤は、天然由来の炭化水素であり、
前記天然由来の炭化水素の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われる真空蒸留を介して有機溶剤を除去して製造された、化粧料組成物。
【請求項2】
前記希釈剤は、ウンデカン及びトリデカンを1:0.1~1:3の重量比で含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を1:0.1~10の重量比で含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
ポリシロキサンとアクリレート系化合物を有機溶剤下で反応させてアクリル-シリコーン共重合体を製造する段階と、
前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を混合し、真空蒸留して有機溶剤を除去する段階と、を含み、
前記真空蒸留は、前記希釈剤の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われ、
前記希釈剤は、天然由来の炭化水素である、化粧料組成物の製造方法。
【請求項5】
前記真空蒸留は、圧力1~200torr及び温度40~150℃で行われる、請求項4に記載の化粧料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記希釈剤は、天然由来の炭素数9~15の炭化水素化合物である、請求項4に記載の化粧料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記希釈剤がウンデカン及びトリデカンを1:0.1~1:3の重量比で含む、請求項4に記載の化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来の希釈剤を使用して人体に対する有害性が低く、かつ膜形成が安定した化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン(silicone)は、安定性、使用感などに優れて多様な分野の原料として使用されている。特に、化粧料組成物に適用されるシリコーンは、ジメチルポリシロキサン重合体のような柔らかくて潤滑性に優れた樹脂である。また、ヘア用化粧料組成物は、前述したようなシリコーン及び希釈剤としてシリコーンオイルを含むことが通常的である。前記シリコーンオイルは、例えば、シクロペンタシロキサンのような低分子シロキサン系化合物、イソドデカン、ジメチコンなどが挙げられる。
【0003】
具体的には、韓国公開特許第2016-0129594号(特許文献1)には、揮発性シリコーンオイル、エタノール、及びシリコーンレジンを含む、毛髪乾燥用組成物が開示されている。しかし、最近、化粧品業界では、より向上した使用感を有し、天然由来原料を使用して人体有害性の低いシリコーンに対する要求が増加している。そこで、特許文献1の揮発性シリコーンオイルのような化学物質は、人体有害性により化粧料組成物の原料から排除されている。
【0004】
これに対する代案として、韓国公開特許第2019-0121408号(特許文献2)には、a)シリコーンアクリレート重合体パウダーを揮発性溶媒に溶解してプレミックスを形成する段階;及びb)前記プレミックスを担体と混合する段階を含む方法により製造された組成物の付くことを防止する化粧用組成物が開示されている。しかし、特許文献2のような従来のアクリレート重合体は、通常溶剤内で合成され、これはパウダー化過程を経なければならないという問題がある。
【0005】
したがって、膜形成性に優れ、希釈剤として天然由来物質を使用して人体有害性が殆どない化粧料組成物の製造方法及びこれにより製造された化粧料組成物に対する研究開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、膜形成性に優れ、希釈剤として天然由来物質を使用して人体有害性が殆どない化粧料組成物の製造方法及びこれにより製造された化粧料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を含み、前記希釈剤は、天然由来の炭化水素であり、前記天然由来の炭化水素の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われる真空蒸留を介して有機溶剤を除去して製造された化粧料組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、ポリシロキサンとアクリレート系化合物を有機溶剤下で反応させてアクリル-シリコーン共重合体を製造する段階;及び
前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を混合し、真空蒸留して有機溶剤を除去する段階;を含み、
前記真空蒸留は、前記希釈剤の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われ、
前記希釈剤は、天然由来の炭化水素である、化粧料組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る化粧料組成物は、希釈剤として天然由来の炭化水素を使用して人体有害性が少ない。また、本発明に係る化粧料組成物の製造方法は、組成物内の有機溶剤を効果的に除去すると同時に、希釈剤として天然由来の炭化水素を使用して人体有害性の少ない化粧料組成物を製造することができる。また、前記製造方法は、優れた工程費用のために経済性が高く、かつ真空蒸留による天然由来の炭化水素、すなわち、天然オイルの損失が少ないという効果がある。
【0010】
また、前記製造方法により製造された化粧料組成物は、希釈剤として天然由来の炭化水素を含むので、人体有害性が低く、かつ膜形成性に優れてキャリアとして非常に適合している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0012】
本明細書において使用された「重量平均分子量」は、当業界に知られている通常の方法により測定されたものであり、例えば、GPC(gel permeation chromatograph)方法で測定してよい。
【0013】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
【0014】
化粧料組成物の製造方法
本発明に係る化粧料組成物の製造方法は、アクリル-シリコーン共重合体を製造する段階;及び前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を混合し、真空蒸留して有機溶剤を除去する段階;を含む。
【0015】
アクリル-シリコーン共重合体の製造
本段階においては、ポリシロキサンとアクリレート系化合物を有機溶剤下で反応させてアクリル-シリコーン共重合体を製造する。
【0016】
前記ポリシロキサンは、(メタ)アクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンであってよく、例えば、下記化学式1で表される。
【0017】
[化学式1]
【化1】
【0018】
化学式1で、Rは、C1-10のアルキル基又は水素基であり、
は、C1-10のアルキレン(alkylene)基であり、
mは、10~30の整数である。
【0019】
例えば、Rは、メチル基又は水素基であり、Rは、C1-5のアルキレン基であり、mは、15~30の整数であってよい。
【0020】
この際、前記アルキル基及びアルキレン基は、線状又は分岐状であってよい。また、前記アルキレン基は、アルキル基の炭素原子から1つの水素原子が除去されて誘導される、分岐鎖、直鎖、又は環状である2価ラジカルを指称する。例えば、前記アルキレン基は、メチレン(-CH-)、1,1-エチレン(-CH(CH)-)、1,2-エチレン(-CHCH-)、1,1-プロピレン(-CH(CHCH)-)、1,2-プロピレン(-CHCH(CH)-)、1,3-プロピレン(-CHCHCH-)、1,4-ブチレン(-CHCHCHCH-)、2,4-ブチレン(-CH(CH)CHCH-)、1,6-ヘキシレン(-CHCHCHCHCHCH-)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
また、mが前記範囲内の場合、組成物の柔らかさ及び使用感を向上させる効果がある。
【0022】
前記アクリレート系化合物は、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される1種以上、すなわち、アクリレート基及び/又はメタクリレート基を含む化合物であってよい。具体的には、前記アクリレート系化合物は、C1~10アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシC1~10アルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってよい。例えば、前記アクリレート系化合物は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどのC1~10アルキルメタクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシC1~10アルキルメタクリレート;及びメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのC1~10アルキルアクリレート;及び2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシC1~10アルキルアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
また、前記有機溶剤は、通常シリコーン共重合体の製造時に使用可能なものであれば特に制限せず、例えば、キシレン(xylene)、トルエンなどの芳香族化合物;イソドデカン、ウンデカン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素化合物;及びブチルアセテートのような極性溶剤などからなる群より選択される1種以上を含んでよい。また、前記有機溶剤の市販品としては、例えば、アイソパーC、E、G、Hなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリシロキサンとアクリレート系化合物の反応時、開始剤を添加してよい。この際、前記開始剤は、通常のラジカル重合反応開始剤を使用してよく、例えば、タート-ブチルパーオキシド-2-エチルヘキサノエート(tert-butylperoxy-2-ethylhexanoate)などが挙げられる。
【0025】
前記ポリシロキサンとアクリレート系化合物は、1:0.2~5の重量比、又は1:0.5~2.5の重量比で反応させてよい。ポリシロキサンとアクリレート系化合物の反応時、重量比が前記範囲未満、すなわち、少量のアクリレート系化合物が使用される場合、フィルム状の乾燥塗膜が形成されず、フィルムフォーマーとして機能しない問題が発生し、前記範囲超え、すなわち、過量のアクリレート系化合物が使用される場合、硬化物がプラスチックのように堅い物質となり、溶剤に溶解されない問題が発生する可能性がある。
【0026】
また、ポリシロキサンとアクリレート系化合物は、反応温度は50℃~180℃、又は70℃~150℃で未反応アクリレート基の含量が0.1重量%~5重量%、又は0.5重量%~2重量%になるまで反応させてよい。
【0027】
前述したような反応により製造されたアクリル-シリコーン共重合体は、アクリル主鎖にシロキサンペンダントが付加した構造であってよく、これにより、シロキサンの特性である撥水性及び撥油性を有し、アクリル基の特性である光沢に優れた膜を形成することができるという利点がある。具体的には、前記アクリル-シリコーン共重合体は、下記化学式2で表される。
【0028】
[化学式2]
【化2】
【0029】
化学式2で、Rは、C1~10炭化水素基であり、xは、3~20の整数であり、yは、3~25の整数であり、nは、10~30の整数である。
【0030】
具体的には、前記Rは、C1~10アルキル基であり、xは、5~20の整数であり、yは、5~20の整数であり、nは、15~30の整数であり、前記アルキル基は、水酸基又はハロゲン原子に置換されてよい。この際、前記アルキル基は、線状又は分岐状であってよい。
【0031】
前記x、y及びnが前記範囲内の場合、組成物に被膜感を付与し、持続性及び使用感を向上させる効果がある。
【0032】
また、前記アクリル-シリコーン共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が35~60℃、37~55℃、又は38~50℃であり、アクリル-シリコーン共重合体の総重量を基準としてシリコーン含量が65~90重量%、70~88重量%、又は75~85重量%であってよい。前記アクリル-シリコーン共重合体のガラス転移温度が前記範囲内の場合、被膜形成性及び被膜持続性を向上させる効果があり、シリコーン含量が前記範囲内の場合、使用感を増進させる効果がある。
【0033】
前記アクリル-シリコーン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が7,000~48,000g/mol、8,000~45,000g/mol、又は10,000~45,000g/molであり、25℃での粘度が100~700cP、150~650cP、又は200~600cPであってよい。前記アクリル-シリコーン共重合体の重量平均分子量(Mw)が前記範囲内の場合、乾燥後被膜の持続性と光沢性に優れ、25℃での粘度が前記範囲内の場合、組成物の被膜感に優れた効果がある。
【0034】
有機溶剤を除去する段階
本段階においては、前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を混合し、真空蒸留して有機溶剤を除去する。これにより、アクリル-シリコーン共重合体内の有機溶剤を除去して人体有害性の低い化粧料組成物を製造することができる。この際、前記有機溶剤は、アクリル-シリコーン共重合体の製造時に使用した溶剤であって、悪臭又は異臭を有する。
【0035】
前記希釈剤は、天然由来の炭化水素であり、例えば、天然由来の炭素数9~15又は炭素数12~15の炭化水素化合物であってよい。具体的には、前記希釈剤は、炭素数10~14のアルカンであってよく、より具体的には、ウンデカン及びトリデカンの混合物であってよい。具体的には、前記希釈剤は、ウンデカン及びトリデカンを1:0.1~1:3の重量比、又は1:1~1:2.5の重量比で含んでよい。
【0036】
ウンデカン及びトリデカンの混合重量比が前記範囲未満、すなわち、炭素数の低いウンデカンを過量混合する場合、真空蒸留時にウンデカンが気化して廃棄物の量が増加するという問題があり、前記範囲超え、すなわち、炭素数の高いトリデカンを過量混合すると、廃棄物の量は減少するが、化粧品に適用すると、揮発性が劣勢で被膜感が足りなくなるという問題がある。
【0037】
前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤は、1:0.1~10の重量比、1:0.3~5の重量比、又は1:0.5~2の重量比で混合されてよい。アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤の混合重量比が前記範囲未満、すなわち、少量の希釈剤を混合すると、反応時に局所的な反応が発生するか、反応器の温度維持が難しいという問題があり、前記範囲超え、すなわち、過量の希釈剤を混合すると、過量の希釈剤により原料費用が増加し、生産量が低くなるという問題が発生する可能性がある。
【0038】
前記真空蒸留は、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われてよい。例えば、前記真空蒸留は、圧力1~200torr、4~50torr、又は5~30torr、及び、温度40~150℃又は60~120℃で行われてよい。真空蒸留時、圧力が前記範囲未満の場合、有機溶剤の除去が足りず、前記範囲超えの場合、希釈剤の廃棄量が多くなり、経済性が低下するという問題が発生する可能性がある。また、真空蒸留時、温度が前記範囲未満の場合、蒸留物である有機溶剤の除去が足りないという問題があり、前記範囲超えの場合、蒸留するに非常に高い温度で多くのエネルギーを消費しなければならず、高温処理によりアクリル-シリコーン共重合体が分解する可能性がある。
【0039】
また、希釈剤の廃棄量を最小化するために、真空蒸留時、窒素バブリングする工程をさらに含んでよい。すなわち、本段階においては、前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を混合し、真空蒸留しながら窒素バブリングして有機溶剤を除去することができる。
【0040】
前述したように、真空蒸留して有機溶剤が除去された化粧料組成物は、組成物の総重量に対して有機溶剤を0.2重量%未満、0.0001~0.2重量%、又は0.0001~0.1重量%の含量で含んでよい。有機溶剤の含量が前記範囲超えの場合、有機溶剤による臭い、すなわち、異臭又は悪臭が製品から発生する可能性があり、皮膚に刺激を起こす可能性がある。この際、前記有機溶剤の含量は、希釈剤である天然由来の炭化水素を除いた溶剤の含量である。
【0041】
前述したような本発明に係る化粧料組成物の製造方法は、組成物内の有機溶剤を効果的に除去すると同時に、希釈剤として天然由来の炭化水素を使用して人体有害性の少ない化粧料組成物を製造することができる。また、前記製造方法は、優れた工程費用のために経済性が高く、かつ真空蒸留による天然由来の炭化水素、すなわち、天然オイルの損失が少ないという効果がある。
【0042】
化粧料組成物
本発明に係る化粧料組成物は、アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤を含み、前記希釈剤は、天然由来の炭化水素であり、前記天然由来の炭化水素の存在下で、圧力1~500torr及び温度30~200℃で行われる真空蒸留を介して有機溶剤を除去して製造される。
【0043】
また、前記化粧料組成物は、組成物の総重量に対して有機溶剤を0.2重量%未満、0.0001~0.2重量%、又は0.0001~0.1重量%の含量で含んでよい。有機溶剤の含量が前記範囲超えの場合、有機溶剤の臭いである異臭又は悪臭が製品から発生する可能性があり、皮膚に刺激を起こす可能性がある。この際、前記有機溶剤の含量は、希釈剤である天然由来の炭化水素を除いた溶剤の含量である。
【0044】
前記希釈剤は、前記製造方法で定義したとおりである。例えば、前記化粧料組成物は、ウンデカン及びトリデカンを1:0.1~1:3の重量比、又は1:1~1:2.5の重量比で含んでよい。
【0045】
また、前記化粧料組成物は、前記アクリル-シリコーン共重合体及び希釈剤が1:0.1~10の重量比、1:0.3~5の重量比、又は1:0.5~2の重量比で混合してよい。
【0046】
また、前記化粧料組成物は、組成物の総重量に対して固形分の含量が20~50重量%、又は30~45重量%であり、25℃での粘度が100~6,000cP、400~4,000cP、又は500~3,000cPであってよい。
【0047】
前述したような化粧料組成物は、希釈剤として天然由来の炭化水素を含んで人体有害性が低く、膜形成性に優れてキャリアとして非常に適合している。
【0048】
以下、下記実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、下記実施例による説明は、本発明の具体的な実施態様を特定して説明しようとするのみであり、本発明の権利範囲をこれら実施例に記載された内容の限定や制限解釈を意図するものではない。
【0049】
実施例1.化粧料組成物の製造
反応容器に、ポリシロキサン50重量部、ブチルメタクリレート15重量部、2-エチルヘキシルアクリレート15重量部、メチルメタクリレート20重量部、及び有機溶剤としてアイソパーE(Exxon mobile社製品、沸点:114~136℃)100重量部を入れ、100℃で粘度が500cPになるまで反応させてアクリル-シリコーン共重合体を製造した。この際、ポリシロキサンとしては、メタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンを使用し、製造されたアクリル-シリコーン共重合体は、ガラス転移温度が50℃であり、重量平均分子量が30,000g/molであり、25℃で粘度が500cPであった。
【0050】
その後、アクリル-シリコーン共重合体100重量部及び希釈剤としてウンデカンとトリデカンの混合物(ウンデカンとトリデカンを1:2.3の重量比で含む)150重量部を混合し、圧力10torr及び温度95℃で3時間真空蒸留して有機溶剤であるアイソパーEを除去し、窒素ガスのバブリング下で圧力10torr及び温度95℃で5時間蒸留して化粧料組成物を製造した。
【0051】
製造された化粧料組成物は、ウンデカンとトリデカンの混合物の含量が組成物の総重量に対して60重量%であり、25℃の粘度が715cPであり、固形分の含量が組成物の総重量に対して40重量%であった。
【0052】
実施例2~10及び比較例1~5.
表1に記載されたものと同様の条件で真空蒸留又は蒸留し、希釈剤の種類を変更したことを以外は、実施例1と同様に化粧料組成物を製造した。
【0053】
この際、実施例8は、窒素ガスのバブリングなしに真空蒸留した。
【0054】
【表1】
【0055】
試験例.物性評価
実施例及び比較例の化粧料組成物の物性を下記のような方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0056】
(1)粘度
粘度計(HBDV Brookfield viscometer、spindle #93、2.5rpm)を用いて、25℃での粘度を測定した。
【0057】
(2)外観
化粧料組成物内の気泡を除去した状態で、25℃で目視で外観を観察して透明性を観察した。評価結果は、透明、少し透明、少し不透明、不透明の4段階で相対評価し、色相を目視で確認した。
【0058】
(3)有機溶剤及び希釈剤の含量
化粧料組成物内の有機溶剤であるアイソパーEの含量、及び希釈剤の含量をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0059】
(4)被膜感
化粧料組成物0.20gを手の甲に乗せ、円を描くように薄く塗り広げた後、塗布中の触感及び皮膚感覚を介して使用感を評価した。具体的には、被膜が形成されるか、ベタつきが少ないかを比べ、この際、評価結果は、非常に優秀、優秀、普通、不足、及び非常に不足の5段階で相対評価した。
【0060】
(5)希釈剤の廃棄量
真空蒸留前の希釈剤の重量を基準として真空蒸留後の希釈剤の重量差を希釈剤廃棄量として計算した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2のように、実施例の組成物は、粘度が適切であり、外観が無色で透明であり、臭い(異臭又は悪臭)を有する有機溶剤の含量が低いので、人体有害性が低く、被膜感に優れた。
【0063】
一方、真空ではない単純蒸留を進行した比較例1は、有機溶剤の含量が高く、25℃での粘度が低くて被膜感が足りなかった。
【0064】
また、希釈剤が天然由来の炭化水素ではないデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を含む比較例2は、D5による臭い(異臭及び/又は悪臭)があり、被膜感が足りなかった。
【0065】
さらに、蒸留時に圧力が過度に低い比較例3、及び蒸留時に圧力が過度に高い比較例5は、被膜感が足りなかった。
【0066】
また、蒸留時に温度が高い比較例4は、25℃での粘度が高くて被膜感が足りなかった。
【国際調査報告】