(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】酸化ベリリウム含有物を含む改良されたグラファイト中性子反射体
(51)【国際特許分類】
G21C 1/06 20060101AFI20231030BHJP
G21C 7/10 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G21C1/06
G21C7/10 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525110
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021072035
(87)【国際公開番号】W WO2022094552
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】アレシン、ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】レビンスキー、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイゼル、マシュー、アール
(72)【発明者】
【氏名】ケルナー、スチュアート、ティー
(57)【要約】
炉心(102)と、炉心を取り囲む反射体アセンブリ(150)と、を含む、原子炉(100)が開示されている。反射体アセンブリは静止反射体構成要素(152)を含み、静止反射体構成要素には、内部に複数のチャネル(158)が画定されているグラファイト支持構造体(156)と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムピン(160)とが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉であって、
炉心と、
前記炉心を取り囲み、静止反射体構成要素を含む反射体アセンブリと、を備え、
前記静止反射体構成要素が、
内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、
前記チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムピンと、を含む、原子炉。
【請求項2】
前記反射体アセンブリが、可動反射体構成要素を更に備え、前記可動反射体構成要素が、前記静止反射体構成要素に対して回転可能な複数の制御ドラムを含む、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、前記反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、請求項2に記載の原子炉。
【請求項4】
炉心ハウジングを更に備え、
前記炉心が、前記炉心ハウジング内に位置付けられ、
前記炉心ハウジングが、酸化ベリリウムを含む、請求項1に記載の原子炉。
【請求項5】
前記グラファイト支持構造体の半径方向厚さが、約0.3メートル~約1.0メートルである、請求項1に記載の原子炉。
【請求項6】
前記複数のチャネルの各々の直径が、約0.005メートル~約0.05メートルである、請求項1に記載の原子炉。
【請求項7】
前記複数のチャネルの各々のピッチが、約0.013メートル~約0.07メートルである、請求項1に記載の原子炉。
【請求項8】
前記複数のチャネルの各々が、互いに約0.001メートル~約0.06メートルだけ離間されている、請求項1に記載の原子炉。
【請求項9】
前記グラファイト支持構造体が、中性子を連続的に反射するように位置付けられた複数のグラファイト支持構造体からなるアセンブリである、請求項1に記載の原子炉。
【請求項10】
炉心を備える原子炉で使用可能な反射体アセンブリであって、前記反射体アセンブリが、前記炉心を取り囲むように構成され、
前記反射体アセンブリが、
内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体、及び
前記チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウム含有物と、を備える、反射体アセンブリ。
【請求項11】
前記グラファイト支持構造体に対して回転可能な複数の制御ドラムを更に備える、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項12】
前記制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、前記反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、請求項11に記載の反射体アセンブリ。
【請求項13】
前記グラファイト支持構造体の半径方向厚さが、約0.3メートル~約1.0メートルである、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項14】
前記複数のチャネルの各々の直径が、約0.005メートル~約0.05メートルである、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項15】
前記複数のチャネルの各々のピッチが、約0.013メートル~約0.07メートルである、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項16】
前記複数のチャネルの各々が、互いに約0.001メートル~約0.06メートルだけ離間されている、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項17】
前記グラファイト支持構造体が、中性子を連続的に反射するように位置付けられた複数のグラファイト支持構造体からなるアセンブリである、請求項10に記載の反射体アセンブリ。
【請求項18】
原子炉であって、
炉心と、
前記炉心を取り囲む反射体アセンブリと、を備え、前記反射体アセンブリが、
静止反射体部分であって、
内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体、及び
前記チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムインサートを含む、静止反射体部分と、
前記静止反射体部分に対して回転可能な複数の制御ドラムを含む可動反射体部分と、を含む、原子炉。
【請求項19】
前記制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、前記反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、請求項18に記載の原子炉。
【請求項20】
炉心ハウジングを更に備え、
前記炉心が、前記炉心ハウジング内に位置付けられ、
前記炉心ハウジングが、酸化ベリリウムを含む、請求項18に記載の原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月26日出願の「ENHANCED GRAPHITE NEUTRON REFLECTOR WITH BERYLLIUM OXIDE INCLUSIONS」と題された米国非仮出願第17/080,241号の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国エネルギー省により授与された契約DE-NE0008853に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、一般に、小型モジュール炉(SMR)及びマイクロ炉などの原子炉に関し、より具体的には、原子炉の炉心を取り囲む反射体の配置に関する。
【0004】
電力エネルギー市場は、集中型及び分散型の市場に分けられる。集中型市場は、大規模な(数百MWeの範囲の)発電機、及び大容量で高密度の送電及び配電ネットワークに基づいている。分散型又はオフグリッド市場は、代わりに、通常は小規模な局地的配電ネットワーク又はマイクログリッドに接続される小型発電機(<15MWe)に依存している。現在、遠隔地のアーティックコミュニティ、遠隔地の鉱山、軍事基地、及び島のコミュニティが分散型市場の例である。現在、オフグリッド市場におけるエネルギーの必要性は、主にディーゼル発電機によって満たされている。これは、高い電気代、化石燃料への依存、負荷制限、複雑な燃料供給ロジスティクス、及びインフラの老朽化につながる。オフグリッド市場の厳しい要件には、手頃な価格、信頼性、柔軟性、レジリエンシー、持続可能性(クリーンエネルギー)、エネルギー安全保障、並びに迅速な設置及び最小限のメンテナンス作業が含まれる。これら全ての要求は、原子力エネルギーで対処することができる。
【0005】
マイクロ炉は、10MWe未満を発電することができ、遠隔用途に展開できる原子炉である。これらのマイクロ炉は、比較的小さな容器にパッケージングされ、人員の積極的な関与なしに動作し、かつ従来の原子力発電所よりも長期間、燃料補給/交換することなく動作することができる。
【0006】
そのようなマイクロ炉の1つは、Westinghouse Electric Companyにより設計された、eVinci(商標)マイクロ炉システムである。これらのマイクロ炉は、比較的小さな容器に包装され、人員の積極的な関与なしに動作し、かつ従来の原子力発電所よりも長期間、燃料補給/交換することなく動作することができる。マイクロ炉の他の例は、「HIGH TEMPERATURE HYDRIDE MODERATOR ENABLING COMPACT AND HIGHER POWER DENSITY CORES IN NUCLEAR MICRO-REACTORS」と題する共同所有の米国仮出願公開第62/984,591号、および、米国特許出願公開第2016/0027536号として公開された「MOBILE HEAT PIPE COOLED FAST REACTOR SYSTEM」と題する米国特許出願第14/773,405号に記載され、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
炉の小規模なサイズを確保するためには、効果的な中性子反射体の使用が必要とされる。反射体材料及びその寸法は、燃料量、マイクロ炉の炉心サイズ、質量、及び熱電力に影響する。中性子反射体はまた、中性子遮蔽にも寄与する。したがって、反射体設計の選択は、マイクロ炉設計開発の重要部分である。
【0008】
ベリリウム系反射体の既存の製造技術では、酸化ベリリウム構成要素のサイズを最大化しようとしても、有意な制限が課される。現在、数百個の反射体片を、良好な中性子特性を有していない材料と組み合わせ、定置しなければならず、これは労働集約的であることに加えて、中性子反射体全体の性能に悪影響を与える。
【0009】
ベリリウム系反射体に加えて、グラファイト反射体が知られており、広く使用されている。しかしながら、グラファイト反射体は、ベリリウム系反射体よりも中性子効率が低く、一部の用途に課せられたサイズ、質量及び電力出力のマイクロ炉要件を満たすことができない。
【0010】
加えて、中性子反射体材料及び設計選択を考慮するとき、熱機械性能は、考慮を必要とする別の態様である。炉心が位置する反射体の内縁から反射体の外縁まで、半径方向反射体には半径方向に有意な温度勾配がある。したがって、温度誘導応力を考慮に入れ、設計及び材料選択によって最小化されなければならない。
【0011】
本開示の様々な態様は、炉の効率を改善するために改善された反射体設計を提供する。
【発明の概要】
【0012】
様々な実施形態では、炉心と、炉心を取り囲む反射体アセンブリとを含む、原子炉が開示される。反射体アセンブリは、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムピンとを含む、静止反射体構成要素を含む。
【0013】
様々な実施形態では、原子炉で使用可能な反射体アセンブリが開示される。原子炉は、炉心を含む。反射体アセンブリは、炉心を取り囲むように構成されている。反射体アセンブリは、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウム含有物とを含む。
【0014】
様々な実施形態では、炉心と、炉心を取り囲む反射体アセンブリとを含む、原子炉が開示される。反射体アセンブリは、静止反射体部分及び可動反射体部分を含む。静止反射体部分は、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムインサートとを含む。可動反射体部分は、静止反射体部分に対して回転可能な複数の制御ドラムを含む。
【0015】
本明細書に説明される実施形態の様々な特徴は、その利点とともに、以下の添付図面と併せて行われる以下の説明に従って理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の少なくとも1つの態様による、改良された中性子反射体アセンブリを有するマイクロ炉を例示する。
【
図2】本開示の少なくとも1つの態様による、
図1のマイクロ炉の拡大斜視図を例示する。
【0017】
対応する参照文字は、数個の図全体を通して対応する部分を示す。本明細書に記載される例示は、本発明の様々な実施形態を1つの形態で例示し、そのような例示は、いかなる様式によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に説明され、かつ添付の図面に例示される実施形態の全体的な構造、機能、製造、及び使用の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。周知の動作、構成要素、及び要素は、本明細書に説明される実施形態を不明瞭にしないために、詳細に説明されていない。読み手は、本明細書に説明及び例示される実施形態が非限定的な例であることを理解し、したがって、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、代表的及び例示的であり得ることが理解され得る。それに対する変形及び変更は、特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0019】
ここで
図1及び
図2を参照すると、本開示の少なくとも1つの態様による、マイクロ炉100が提供される。マイクロ炉100は、燃料、減速材チャネル、ヒートパイプ、及び反応度制御チャネル(停止棒)を収容し得る炉心102を含み得る。様々な実施形態では、炉心102は、米国仮出願公開第62/984,591号及び米国特許出願第14/773,405号に説明される炉心と同様であり得、これらはどちらも上記の参照によって組み込まれた。様々な実施形態では、炉心102は、燃料、複数のヒートパイプ、複数の減速材チャネル、及び炉心102内の複数の反応度制御チャネルを収容し得る、炉心ハウジング、又はシェル104を含み得る。燃料は、炉心102内にカプセル化され得るが、一方で、ヒートパイプ、減速材チャネル、及び反応度制御チャネルは、炉心102の外側でマイクロ炉100の二次側まで延在して、燃料によって生成される熱の抽出を可能にし得る。
【0020】
様々な実施形態では、マイクロ炉100は、炉心102を取り囲む改良された中性子反射体アセンブリ150を含み得る。特に
図2を参照すると、反射体アセンブリ150は、静止反射体構成要素152及び可動反射体構成要素154の両方を含み得る。
【0021】
一態様では、
図2を引き続き参照すると、静止反射体構成要素152は、内部に画定された複数のチャネル158を含み得るグラファイト支持構造体156を含み得る。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156は、単一構造体であり得る。様々な他の実施形態では、グラファイト支持構造体156は、グラファイト支持構造体156を形成するように一緒に継ぎ合わせられた複数のより小さなグラファイト支持構造体から組み立てられ得る。グラファイト支持構造体156が複数のより小さなグラファイト支持構成要素から形成されることにより、製造プロセスが容易になる。また、以下でより詳細に説明されるように、グラファイト指示構造体を用いることにより、可動反射体構成要素154などの、静止反射体構成要素152内の他の構成要素のための間隔を調整することができる。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156は複数のより小さなグラファイト支持構成要素から形成することができ、中性子が連続的に反射されるように個々の構成要素を位置付けることができる。1つの例示的な実施形態では、複数のより小さなグラファイト支持構成要素が、中性子を連続的に反射するように、炉心102に対して半径方向及び軸方向の両方に位置付けられ得る。加えて、複数のより小さなグラファイト支持構造構成要素からグラファイト支持構造体156を組み立てることは、個々の構成要素間に残る隙間が重なることを可能にする。より小さなグラファイト支持構成要素間のこれらの隙間を選択することにより、炉心102と反射体アセンブリ150の熱膨張が異なっても中性子を連続的に反射するとともに、機械的負荷伝達及び熱除去を支援することが可能になる。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156の半径方向厚さは、約0.3メートル~約1.0メートルの範囲とすることができる。他の実施形態は、グラファイト支持構造体156の半径方向厚さが1.0メートル超又は0.3メートル未満であり得ると想定される。
【0022】
一態様では、反射体アセンブリ150は、グラファイト支持構造体156によって画定されたチャネル158内に取り外し可能に位置付けられ得る、複数の酸化ベリリウム含有物、ピン、又はインサート160を更に含み得る。一態様では、任意のタイプのベリリウム系又は酸化ベリリウム含有物が使用され得る。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156は、チャネル158内などで、酸化ベリリウム含有物160を支持するための支持構造体として作用し得るが、一方で、炉心102からの中性子反射も支持し、機械的及び熱的負荷伝達も提供する。
【0023】
上述のように、マイクロ炉100は、可動反射体構成要素154を更に含み得る。様々な実施形態では、可動反射体構成要素154は、静止反射体構成要素152内に回転可能に位置付けられ得る複数の制御ドラム106を含み得る。一態様では、制御ドラム106は、中性子吸収体部分110及び中性子反射体部分108を含み得る。様々な実施形態では、制御ドラム106は、各々、中性子反射位置と中性子吸収位置との間で、静止反射体構成要素152に対して回転可能であり得る。中性子反射位置では、制御ドラム106の中性子反射体部分108は、炉心102に面し、したがって、炉心102の反応度を増加させ得る。中性子吸収位置では、中性子吸収体部分110は、炉心102に面し、炉心102内の反応を制限又は停止し得る。様々な実施形態では、中性子反射体部分108は、酸化ベリリウムを含み得る。1つの例示的な実施形態では、中性子反射体部分108は、グラファイトから製造され、グラファイト支持構造体156と同様に、内部に画定されたチャネルを含み得る。そのような実施形態では、酸化ベリリウムは、グラファイト制御ドラムに画定されたチャネル内に位置付けられ得る。様々な他の実施形態では、制御ドラム106の中性子反射体部分108は、全体ではないにしても、酸化ベリリウムから実質的に製造され得る。
【0024】
一態様では、制御ドラム106は、炉心102内の唯一の可動構成要素であり得る。一実施形態では、制御ドラム106の全ては、制御ドラム106の全てが中性子反射位置又は中性子吸収位置のいずれかにあるように、一緒に回転し得る。他の実施形態では、制御ドラム106は、互いに対して独立して回転可能であり得る。他の実施形態では、制御ドラム106は、中性子吸収体部分110及び中性子反射体部分108の両方の一部分が、炉心に少なくとも部分的に面し、したがって、炉心102内で反応度が中間レベルになるように、部分的に回転された位置に回転させることができる。別の実施形態では、制御ドラム106は、炉心102内の温度などの様々な因子に応じて、中性子反射位置と中性子吸収位置との間で自動的に回転し得る。一態様では、炉心102内の温度が閾値温度を満たすか又はそれを超えるとき、制御ドラム106は、中性子吸収位置に自動的に回転し得る。別の態様では、炉心102内の温度が閾値温度を下回るとき、制御ドラム106は、中性子反射位置に自動的に回転し得る。制御ドラム106が、炉内の他の測定されたパラメータに基づいて、中性子吸収位置と中性子反射位置との間で回転し得る、様々な他の実施形態が想定される。一例として、制御ドラム106は、マイクロ炉100内の測定された中性子束に基づいて、中性子吸収位置と中性子反射位置との間で回転可能であり得る。
【0025】
様々な実施形態では、炉心102及び改良された中性子反射体アセンブリ150は、コンテナ構造体112、中性子吸収体容器122、及びホウ素カーバイド、又はガンマ線・中性子遮蔽体114内に収容され得る。加えて、遮蔽体冷却及びガンマ線遮蔽のために、中性子吸収体容器122とホウ素カーバイド遮蔽体114との間に空隙116を設けてよい。全てのこれらの構成要素は、外側キャニスタ構造体120の内側に配置され得る。様々な他の実施形態では、炉心102及び改良された中性子反射体アセンブリ150はまた、米国仮出願公開第62/984,591号、及び米国特許出願第14/773,405号に説明されたハウジングに収容されてもよく、これらは、それらの全体が上記の参照によって組み込まれている。様々な実施形態では、炉心ハウジング104も酸化ベリリウムを含み得る。
【0026】
一態様では、グラファイト支持構造体156に画定されたチャネル158は、反射体アセンブリ150の良好な中性子性能が酸化ベリリウム含有物160によって達成できるように、サイズ決めされ、位置付けられ得る。様々な実施形態では、隣接するチャネル158に対するチャネル158の直径、ピッチ、及び間隔の選択は、反射体アセンブリ150の性能を最適化するように変更され得る。1つの例示的な実施形態では、チャネル158は、可動反射体構成要素154及び分割された静止反射体部品、並びに炉心の熱的評価に対する想定を考慮に入れて、実質的に可能な限り均一に三角形又は長方形のピッチで配置され得る。様々な実施形態では、チャネル158のピッチは、約0.013メートル~約0.07メートルの範囲内であり得る。様々な実施形態では、チャネル158の直径、及びしたがって、酸化ベリリウム含有物160の直径は、約0.005メートル~約0.05メートルの範囲内であり得る。他の実施形態では、酸化ベリリウム含有物160の直径及びチャネル158の直径は、異なってもよい。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156に画定されたチャネル158は、0.001メートル~約0.06メートルの範囲で離して。隣接チャネル158から離間させてよい。一態様では、チャネル158の間隔は、1つのチャネル158の外縁と隣接チャネル158の外縁との間の空間として画定され得る。様々な実施形態では、グラファイト支持構造体156における上述のパラメータ(直径、ピッチ、及びチャネル間隔)は、チャネル毎に変えてもよい。
【0027】
上述のコンセプトによれば、中性子反射効率は、厳密には酸化ベリリウム反射体性能に劣るが、その差は、実質的に有意ではなく、必要とされるマイクロ炉電力出力への影響もない。そうではあっても、上述のコンセプトによれば、反射体の熱機械性能が改善されるとともに、製造及び組み立てプロセスが簡略化される。更に、グラファイトと酸化ベリリウムの密度差を考慮に入れると、このコンセプトにより小規模反射体全体の質量低減が期待される。上述のコンセプトによる反射体はまた、酸化ベリリウム形状が単純化されることによるコスト低減、及び酸化ベリリウム構成要素の数の削減をもたらすことができる。このコンセプトの利点としては、限定されるものではないが、中性子反射体自体の寸法を比較的小さく保ち、必要な熱電力を提供するための燃料を比較的少量に保ち、反射体の製造可能性及び組み立てを改善し、熱機械性能を向上させ、さらに反射体のコストを下げられることが挙げられる。かくして、材料(グラファイトと酸化ベリリウム)の組み合わせにより、良好な中性子反射と許容可能な熱機械性能が得られ、さらに製造・組み立てが容易になり、非常に有益である。
【0028】
本明細書に説明される主題の様々な態様が、以下の実施例に記載される。
【0029】
【実施例】
【0030】
[実施例1]
原子炉であって、炉心と、炉心を取り囲む反射体アセンブリと、を備え、反射体アセンブリが、静止反射体構成要素を含み、静止反射体構成要素が、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムピンと、を含む、原子炉。
【0031】
[実施例2]
反射体アセンブリが、可動反射体構成要素を更に備え、可動反射体構成要素が、静止反射体構成要素に対して回転可能な複数の制御ドラムを含む、実施例1の原子炉。
【0032】
[実施例3]
制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、実施例2の原子炉。
【0033】
[実施例4]
炉心ハウジングを更に備え、炉心が、炉心ハウジング内に位置付けられ、炉心ハウジングが、酸化ベリリウムを含む、実施例1~3のいずれか1つの原子炉。
【0034】
[実施例5]
グラファイト支持構造体の半径方向厚さが、約0.3メートル~約1.0メートルである、実施例1~4のいずれか1つの原子炉。
【0035】
[実施例6]
複数のチャネルの各々の直径が、約0.005メートル~約0.05メートルである、実施例1~5のいずれか1つの原子炉。
【0036】
[実施例7]
複数のチャネルの各々のピッチが、約0.013メートル~約0.07メートルである、実施例1~6のいずれか1つの原子炉。
【0037】
[実施例8]
複数のチャネルの各々が、互いに約0.001メートル~約0.06メートルだけ離間されている、実施例1~7のいずれか1つの原子炉。
【0038】
[実施例9]
グラファイト支持構造体が、中性子を連続的に反射するように位置付けられた複数のグラファイト支持構造体からなるアセンブリである、実施例1~8のいずれか1つの原子炉。
【0039】
[実施例10]
炉心を備える原子炉で使用可能な反射体アセンブリであって、反射体アセンブリが、炉心を取り囲むように構成され、反射体アセンブリが、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウム含有物と、を備える、反射体アセンブリ。
【0040】
[実施例11]
グラファイト支持構造体に対して回転可能な複数の制御ドラムを更に備える、実施例10の反射体アセンブリ。
【0041】
[実施例12]
制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、実施例11の反射体アセンブリ。
【0042】
[実施例13]
グラファイト支持構造体の半径方向厚さが、約0.3メートル~約1.0メートルである、実施例10~12のいずれか1つの反射体アセンブリ。
【0043】
[実施例14]
複数のチャネルの各々の直径が、約0.005メートル~約0.05メートルである、実施例10~13のいずれか1つの反射体アセンブリ。
【0044】
[実施例15]
複数のチャネルの各々のピッチが、約0.013メートル~約0.07メートルである、実施例10~14のいずれか1つの反射体アセンブリ。
【0045】
[実施例16]
複数のチャネルの各々が、互いに約0.001メートル~約0.06メートルだけ離間されている、実施例10~15のいずれか1つの反射体アセンブリ。
【0046】
[実施例17]
グラファイト支持構造体が、中性子を連続的に反射するように位置付けられた複数のグラファイト支持構造体からなるアセンブリである、実施例10~16のいずれか1つの反射体アセンブリ。
【0047】
[実施例18]
炉心と、炉心を取り囲む反射体アセンブリと、を備える、原子炉であって、反射体アセンブリが、静止反射体部分及び可動反射体部分を含む、原子炉。静止反射体部分は、内部に複数のチャネルが画定されているグラファイト支持構造体と、チャネル内に位置付けられた複数の酸化ベリリウムインサートとを備える。可動反射体部分は、静止反射体部分に対して回転可能な複数の制御ドラムを含む。
【0048】
[実施例19]
制御ドラムの各々が、反射体部分及び吸収体部分を含み、反射体部分が、酸化ベリリウムを含む、実施例18の原子炉。
【0049】
[実施例20]
炉心ハウジングを更に備え、炉心が、炉心ハウジング内に位置付けられ、炉心ハウジングが、酸化ベリリウムを含む、実施例18又は19の原子炉。
【0050】
上記の開示から明らかなように別途具体的に記載されていない限り、上記の開示全体を通して、「処理する」、「算出する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」などの用語を使用する議論は、コンピュータシステム、あるいはコンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理的(電子的)な量として表現されるデータを、コンピュータシステムメモリもしくはレジスタ、または他のそのような情報記憶、伝送、もしくはディスプレイデバイス内の物理的な量として同様に表現される他のデータに操作および変換する、同様の電子コンピューティングデバイスの措置およびプロセスを指す。
【0051】
1つ以上の構成要素は、本明細書では、「~するように構成された」、「~するように構成可能な」、「~するように動作可能/動作自在な」、「~するように適合された/適合可能な」、「~することができる」、「~するように順応可能な/順応された」などと称され得る。当業者は、文脈上別段の要求がない限り、「~するように構成された」が、アクティブ状態構成要素及び/又は非アクティブ状態構成要素及び/又はスタンバイ状態構成要素を概して包含し得ることを認識するであろう。
【0052】
当業者は、概して、本明細書、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、概して、「オープン」な用語として意図されていることを認識するであろう(例えば、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」と解釈されるべきである、など)。導入される特許請求の範囲の特定の数が意図される場合、そのような意図は、特許請求の範囲に明示的に列挙されることになり、そのような列挙がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、理解の支援として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するための、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という導入句の使用を含有し得る。しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の列挙の導入が、そのような導入された請求項の列挙を含有する任意の特定の請求項を、同じ請求項が導入句の「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含むときでさえ、1つのそのような列挙のみを含む請求項に限定することを暗示するものとして解釈されるべきではなく(例えば、 「a」及び/又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の列挙を導入するために使用される特定の物品の使用についても同様である。
【0053】
加えて、導入された請求項の列挙の特定の数が明示的に列挙されているとしても、当業者は、そのような列挙は、典型的には、少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを理解するであろう(例えば、「2つの列挙」のそのままの列挙は、他の修飾子なしでは、少なくとも2つの列挙、又は2つ以上の列挙を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似している慣例が使用される、そのような事例では、一般的に、そのような構造は、当業者が、慣例(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するなどのシステムを含むであろう)を理解するであろうという意味で意図される。「A、B、又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される、そのような事例では、一般的に、そのような構造は、当業者が慣例(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するなどのシステムを含むであろう)を理解するであろうという意味で意図される。説明、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する典型的な選言的な単語及び/又は語句は、文脈が別途指示しない限り、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図することが理解されるべきであることが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、「A又はB」という語句は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されることになる。
【0054】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者は、その中に列挙された動作が概して任意の順序で実施され得ることを理解するであろう。また、様々な動作フロー図が配列で提示されるが、様々な動作が例示されたもの以外の他の順序で実施されてもよく、又は同時に実施されてもよいことが理解されるべきである。そのような代替的な順序付けの例としては、文脈が別途指示しない限り、重複、交互配置、中断、再順序付け、増分、予備、補足、同時、逆、又は他の様々な順序付けが挙げられ得る。更に、文脈が別段の指示をしない限り、「応答する」、「関連する」、又は他の過去型形容詞などの用語は、概して、そのような変形を除外することを意図していない。
【0055】
「1つの態様」、「一態様」、「一例示」、「1つの例示」などへの任意の参照は、態様に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味することに留意すべきである。したがって、本明細書全体を通して、様々な場所における「1つの態様では」、「一態様では」、「一例示では」、及び「1つの例示では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ態様を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の態様では、任意の好適な様式で組み合わせられ得る。
【0056】
本明細書において参照され、及び/又は任意の出願データシートに列挙される任意の特許出願、特許、非特許刊行物、又は他の開示資料は、本明細書に参照により組み込まれ、その限りにおいて、本明細書に組み込まれた資料と矛盾しない。したがって、本明細書に記載の開示は、必要な範囲において、参照により本明細書に組み込まれた任意の矛盾する資料に優先する。既存の定義、記述、又は本明細書に記載された他の開示資料と矛盾するが、参照により本明細書に組み込まれると言及された全ての資料、又はそれらの一部分は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾がない程度だけ組み込まれることになる。
【0057】
「備える」(並びに「comprises」及び「comprising」などのcompriseの任意の形態)、「有する」(並びに「has」及び「having」などのhaveの任意の形態)、「含む」(並びに「includes」及び「including」などのincludeの任意の形態)、「含有する」(並びに「contains」及び「containing」などのcontainの任意の形態)という用語は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つ以上の要素を「備える」、「有する」、「含む」、又は「含有する」システムは、それらの1つ以上の要素を保有するが、それらの1つ以上の要素のみを保有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む」、「有する」、「含む」、又は「含有する」システム、デバイス、又は装置の要素は、それらの1つ以上の特徴を保有するが、それらの1つ以上の特徴のみを保有することに限定されない。
【0058】
本開示で使用される「実質的に」、「約」又は「およそ」の用語は、別段の指定がない限り、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、「実質的に」、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4の標準偏差以内を意味する。特定の実施形態では、「実質的に」、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0059】
要約すると、本明細書に説明される概念を採用することから結果的に生じる多数の利益が説明されている。1つ以上の形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。これは、開示される正確な形態を網羅又は限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、修正又は変形が可能である。1つ以上の形態は、原理及び実践的適用を例示するために選択及び説明され、それによって、当業者が様々な形態を、及び企図される特定の使用に好適な様々な修正を用いて利用することを可能にする。本明細書で提出された特許請求の範囲は、全体的な範囲を定義することが意図される。
【国際調査報告】