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特表2023-546735Ssu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】Ssu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20231030BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231030BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231030BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231030BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231030BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61K38/16
C12N15/12 ZNA
C12N15/86 Z
A61P35/00
A61P1/16
A61K48/00
G01N33/68
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546577
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022050421
(87)【国際公開番号】W WO2022157630
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008251
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523137980
【氏名又は名称】クロゲン テクノロジー カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514293260
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュンクァン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】2066, SEOBU-RO, JANGAN-GU, SUWON-SI, GYEONGGI-DO, 16419, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,チャン ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジン クァン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジュン ソップ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB01
2G045DA36
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA22
4C084CA01
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB26
(57)【要約】
Ssu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、高い敏感度と特異度とで副作用なしに肝損傷及び肝線維化を抑制しながら肝癌を迅速に治療することができるSsu72タンパク質またはSsu72タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む、肝癌治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号2で示される核酸配列からなる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記非ウイルス性ベクターは、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記DNAベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージミドベクターまたは人工ヒト染色体である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記肝癌は、原発性肝癌または続発性肝癌である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記原発性癌は、肝細胞癌または胆管細胞癌である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
肝癌患者から収得された試料でSsu72発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階と、
Ssu72が正常者または肝癌患者の正常組織に比べて高く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現される場合、前記肝癌がNASH由来の肝細胞癌であると診断する段階と、
を含む、肝癌患者の肝癌類型の判定方法。
【請求項10】
肝癌患者から収得された試料でSsu72発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階と、
Ssu72が正常者または患者の正常組織に比べて高く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現されると判定された患者にSsu72タンパク質またはそれを暗号化するポリヌクレオチドを投与する段階と、
を含む、肝癌の治療方法。
【請求項11】
脂肪肝または脂肪肝炎患者から収得された試料でSsu72発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階と、
Ssu72の発現が正常者または患者の正常組織に比べて低いか、前記Ssu72が不活性の形態で発現される場合、NASH由来の肝細胞癌が発生する確率が高いと判定する段階と、
を含む、脂肪肝または脂肪肝炎患者のNASH由来の肝細胞癌の発病可能性の予測方法。
【請求項12】
配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記Ssu72ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを個体に投与する段階を含む、前記個体で肝癌を予防する方法。
【請求項13】
培養中である肝細胞またはヒトを除いた実験動物に候補物質を処理する段階と、
前記肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を測定する段階と、
前記肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を増加させる候補物質を選別する段階と、
を含む、肝癌治療剤の候補物質のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、Ssu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物に係り、さらに詳細には、Ssu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防、改善及び治療用薬学的組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
国際疾病負担(the Global Burden of Disease、GBD)の2019年の報告書によれば、肝硬変症(Cirrhosis)は、年間死亡率(year of life lost)の側面で6位を占め、肝癌は、早期死亡による寿命損失年数(Number of years of life lost)の側面で4位を占めた。肝硬変症と肝癌は、主に慢性ウイルス性肝炎や脂肪肝疾患のように徐々に進行する慢性肝疾患によって発生し、このような慢性肝疾患は、明確な症状がなく、肝線維化症が次第に蓄積されて肝を非可逆的に損傷させるために、「沈黙の殺人者」と呼ばれる。現代社会の生活習慣と西欧化された食習慣とによって代謝症侯群の発生が増加しており、身体の最も重要な代謝器官である肝が慢性的に激しく影響を受けている。肝疾患、特に、非アルコール性肝脂肪疾患(NALFD)は、全世界的に持続的に増加しており、積極的な保健政策にも拘らず、身体活動の減少と高齢化とによって、それを減らしにくい実情である。非アルコール脂肪肝疾患は、肥満有無と関係なく代謝症侯群の発生危険が高く、病理学的機転でインスリン抵抗性、炎症性サイトカイン分泌、異常脂血症、線維素溶解因子が関与する。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝細胞癌腫(HCC)、肝線維症のような深刻な肝疾患に進行しうる。最近、肝での炎症と線維化とを緩和させるための研究が続いており、多様な薬剤が開発されているが、いまだにはFDAの正式承認を受けた薬剤はない(Yoo,J.J.et al.,Clin.Mol.Hepatol.25:1-11,2019)。肝癌は、肝移植、肝切除術などの手術的治療と局所治療、経皮的動脈化学塞栓術(TACE)、放射線療法、免疫療法、全身化学療法などの非手術的治療法で治療されているが、肝癌によく伴われる慢性疾患である肝硬変症と慢性肝炎との場合、そのような方式の治療効果が十分ではない実情である。
【0003】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、前記先行技術の場合、慢性肝炎、肝硬変症などの副作用と共に治療効率が高くないという問題点がある。
【0004】
本発明は、前記問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、高い敏感度と特異度とで副作用なしに肝癌を迅速に治療することができるSsu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0005】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一観点によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む肝癌治療用薬学的組成物が提供される。
【0006】
本発明の一観点によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む肝癌予防用薬学的組成物が提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、肝癌患者から収得された試料でSsu72の発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72が正常者または肝癌患者の正常組織に比べて高く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現される場合、前記肝癌がNASH由来の肝細胞癌であると診断する段階;を含む肝癌患者の肝癌類型の判定方法が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、肝癌患者から収得された試料でSsu72の発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72が正常者に比べて高く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現されると判定された患者にSsu72タンパク質またはそれを暗号化するポリヌクレオチドを投与する段階;を含む肝癌の治療方法が提供される。
【0009】
本発明の他の一観点によれば、脂肪肝または脂肪肝炎患者から収得された試料でSsu72の発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72の発現が正常個体や患者の正常組織に比べて低いか、前記Ssu72が不活性の形態で発現される場合、NASH由来の肝細胞癌が発生する確率が高いと判定する段階;を含む脂肪肝または脂肪肝炎患者のNASH由来の肝細胞癌の発病可能性の予測方法が提供される。
【0010】
本発明の他の一側面によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記Ssu72ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む肝癌治療用薬学的組成物が提供される。
【0011】
本発明の一側面によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記Ssu72ペプチドをコーディングするポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを有効成分として含む発現ベクターを含む肝癌予防用薬学的組成物が提供される。
【0012】
本発明の他の一側面によれば、肝癌患者から得たサンプルでSsu72の発現レベルまたは前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72の発現量が正常者または患者の正常組織よりも低いか、Ssu72が不活性の形態で発現される場合、肝癌をNASH由来の肝細胞癌腫と診断する段階;を含む肝癌患者の類型を決定する方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の側面によれば、肝癌患者から得た試料でSsu72の発現レベルまたは前記Ssu72の活性を測定する段階;及び配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記Ssu72ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターをSsu72の発現量が正常個体または肝癌患者の正常組織よりも低いか、Ssu72が不活性の形態で発現される患者に投与する段階;を含む肝癌を治療する方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の側面によれば、個体から得た試料でSsu72の発現レベルまたは前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72の発現レベルが正常個体または患者の正常組織よりも低いか、Ssu72が不活性で発現される場合、前記個体が非アルコール性肝脂肪疾患(NASH)由来の肝細胞癌腫(HCC)に発展する可能性があると判断する段階;を含む前記個体での肝癌の発病可能性の予測方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の側面によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、Ssu72ペプチドをコーディングするポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを個体に投与する段階を含む前記個体での肝癌の予防方法が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の側面によれば、ヒトを除いた培養動物または実験動物の肝細胞に候補物質を処理する段階;肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を測定する段階;及び肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を増加させる候補物質を選別する段階;を含む肝癌治療の候補物質のスクリーニング方法が提供される。
【0017】
〔発明の効果〕
本発明の一実施例による薬学的組成物は、個体が高脂肪食餌に慣れ、慢性肝毒性化学物質に露出された場合であるとしても、有効成分であるSsu72が脂質沈着及び肝線維症を抑制するために、肝癌、特に、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)から由来した肝細胞癌腫(HCC)の治療に使われる。また、本発明の薬剤学的組成物は、遺伝的原因によって誘発された肝細胞癌腫の治療に使われる可能性がある。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本発明の一実施例による肝細胞癌治療用pCMV.HA-Ssu72ベクターの構造を概略的に示す概要図である。
【0019】
図2〕本発明の一実施例によるウイルスベクターとしてAAV8.TBG.HA-Ssu72ベクターを準備する過程及びチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターによって駆動されるSsu72遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAVs)パッケージング戦略を示す概要図である。図2に記述されたTBGプロモーターは、AAVウイルスベクターでSsu72の肝特異的発現に使われた。
【0020】
図3〕正常者の肝組織サンプルと脂肪肝炎、軽度肝線維症、肝硬変症及び肝細胞癌(HCC)を病んでいる患者の肝組織サンプルでそれぞれSsu72タンパク質の発現レベルをウェスタンブロット分析を通じて免疫ブロッティングした結果である。
【0021】
図4A〕Ssu72肝特異的欠損マウス(Ssu72Δhep)と比較群である野生型マウス(Ssu72WT)とにDEN(diethylnitrosamine)を処理して肝細胞癌腫(hepatocellular calcinoma、HCC)を誘導後、4ヶ月及び10ヶ月後、摘出した肝組織の外見(上段)及び組織内部構造(下段)を示す写真である。
【0022】
図4B〕Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、10ヶ月後、肝を摘出して腺腫の数、腫瘍結節の数、腫瘍のサイズを分析した結果を示すグラフである。
【0023】
図4C〕Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、4、9、及び10ヶ月後、実験動物の重量及び摘出された肝の重量を測定して、体重対肝の重量比を分析した結果を示すグラフである。
【0024】
図4D〕Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、10ヶ月後、組織内構造分析及び組織化学分析を通じて異型性結節(Dysplastic nodules)、腺腫(Adenoma)、肝細胞癌腫(HCC)及び肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma、HCC-ICC)の頻度を分析した結果を示す。
【0025】
図5A〕Ssu72WT(上段)とSsu72Δhep(下段)マウスとにストレプトゾトシン(Streptozotocin)を生後2日である時に注射し、生後4週から高脂肪食餌(High-Fat diet、HFD)を給餌して、肝線維化及び肝癌を誘発したSTAMモデル動物から摘出された肝の外見(左側)及び内部構造(右側)を撮影した代表的写真である。肝の内部構造に対する代表的写真は、H&E染色後、顕微鏡を用いて撮影されたものである。
【0026】
図5B〕Ssu72WT(白色菱形)とSsu72Δhep(黒色菱形)マウスとにSTAMモデルを適用後、4ヶ月後に肝を摘出して、腫瘍結節の数(左上隅)、腫瘍のサイズ(右上隅)、非アルコール性脂肪肝疾患活性点数(Nonalcoholic fatty liver disease activity score、NAS、左下隅)、線維化(Fibrosis)点数(右下隅)を分析した結果を示す一連のグラフである。
【0027】
図6A〕DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞に対してRNA-Seqを使用してDEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスの間の肝細胞-、胆汁-及び前駆-マーカーに対する下向き調節または上向き調節された遺伝子を示すヒートマップグラフである。特に、6週齢のSsu72WT及びSsu72ΔhepマウスにDEN(150mg/kg)を処理し、5日後にマウスの肝細胞を肝から分離した(n=グループ当たりマウス2匹)。カラーバーは、log2-fold変化の勾配を示す。
【0028】
図6B〕DENを処理したSsu72WT及びSsu72Δhepマウスからそれぞれ分離された肝細胞に対するRNA-Seq分析を通じて収得した遺伝子発現の変化を分析して、下向き調節された遺伝子と上向き調節された遺伝子とに分類することにより、遺伝子を機能別にグループ化した結果を示すものであって、DAVID基盤の遺伝子オントロジー分析を通じて有意度が高い遺伝子を羅列しているグラフである。カラーバーは、log2-fold変化の勾配を示す。
【0029】
図6C〕DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞でRNA-Seqを使用してSsu72WTマウスと比較して、Ssu72Δhepマウスの肝細胞で下向き調節された遺伝子のうち、HNF4α標的遺伝子を示すヒートマップグラフである。円形チャートは、あらゆる下向き調節された遺伝子の45%がHNF4α標的遺伝子であることを示す。
【0030】
図6D〕DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞でRNA-Seqを利用した遺伝子分析結果からqRT-PCRを用いてSsu72WTマウスに比べて、Ssu72Δhep由来の肝細胞で下向き調節された4個のHNF4α標的遺伝子をさらに分析した結果を示すグラフである。
【0031】
図6E〕NASH関連肝細胞癌腫患者31人を対象にして抗Ssu72抗体及び抗HNF4α抗体で免疫組織化学的(IHC)染色した結果を示す代表写真(上段)及びIHC分析の染色強度を定量化したグラフ(スケールバー=100μm、下段)である。散点図は、NASH関連HCC患者のサンプルでSsu72とHNF4α発現との間の有意な相関関係を示す(下段、n=31)。
【0032】
図6F〕正常個体(正常と診断、n=10)、軽度線維症患者(n=70)及び肝線維症/肝硬変症患者(n=105)の試料からSsu72(上段)及びHNF4α(下段)mRNAの相対的な発現レベルを比較分析した結果を示す一連のグラフである。
【0033】
図7A〕HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、Ssu72WT及びSsu72Δhep肝抽出物を用いてHNF4α、AMPKα、E2F、Ssu72及びアクチン(Actin)に対して免疫ブロッティングを行った結果を示すゲル写真である。5週齢Ssu72WT及びSsu72ΔhepマウスにDEN(150mg/kg)を投与し、前記Ssu72WT及びSsu72Δhepマウスの肝を3日目及び5日目に収得した。Phos-tagは、phospho-tag gelを使用してリン酸化されたタンパク質の移動性の変化を示す。
【0034】
図7B〕HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhep肝でphospho-HNF4α(pS304)に対するIHC染色写真である。
【0035】
図7C〕HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、抗HNF4α、抗E2F、抗Rb及び抗Ssu72抗体を使用して免疫ブロッティングを行った結果を示すゲル写真である。PBSまたはDEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhep抽出物は、Ssu72抗体で免疫沈殿された。共免疫沈殿されたHNF4αは、VeriBlot 2次抗体を使用してIgG重鎖によるマスキングなしに検出された。
【0036】
図7D〕肝細胞の損傷時に、HNF4α転写活性とSsu72発現との関係を調べるために行った実験日程を示す模式図(上段);実験のための遺伝子コンストラクトの構造を示す遺伝子地図(中段);及びSsu72WTマウスから分離された肝細胞にTfr2WT、Tfr2MT、対照プロモータープラスミドをそれぞれ形質感染させ、形質感染1日目に肝細胞を対照群(Ad-GFP)またはCre(Ad-Cre)アデノウイルスで感染させた後、形質感染3日目にパルミチン酸のような遊離脂肪酸(FFA)で肝細胞を処理して肝細胞の損傷を誘導した後、前記肝細胞でルシフェラーゼ活性を測定した結果を示すグラフ(下段)である。
【0037】
図8A〕8週齢の正常マウスにSTAMモデルを適用することにより、NASH/HCCが誘発されたマウスに治療剤としてAAV8-Ssu72または対照群にAAV8-GFPを注射した後、肝組織をhematoxylin & Eosin(H&E)で染色し、撮影した顕微鏡イメージである。注射後、4週目にマウスを犠牲にさせ、その肝を切除した。
【0038】
図8B〕STAMモデルが適用された8週齢マウスにAAV8-GFP(左)またはAAV8-Ssu72(右)投与4週後、犠牲にさせ、収得された肝組織切片をシリウスレッドで染色して線維化程度を測定した結果及び切除された全体肝の外見を示す一連の写真である。
【0039】
図8C〕STAMモデルが適用されたマウスから肝組織を摘出して、肝の体重に比べて、体重、血清化学分析を通じて得たAST及びALTレベル、シリウスレッド(Sirius red)で染色された組織の面積比を分析した一連のグラフである。
【0040】
図9A〕野生型マウスにSTAMモデルを適用した後、肝癌誘発程度を分析するための実験日程を示す概要図である。
【0041】
図9B〕野生型マウスにSTAMモデル適用後、12週目に犠牲になった肝組織でH&E染色及び肝細胞癌腫の標準マーカーであるCD10及びCD34に対する免疫組織化学(IHC)分析結果を示す一連の写真(上段)及び前記IHC分析結果を定量化して示す一連のグラフ(下段)である。
【0042】
図9C〕野生型マウスにSTAMモデル適用後、12週目にAAV8またはAAV8 Ssu72を注射し、4週後に犠牲にさせた実験動物の肝細胞癌腫に対するSsu72の治療効果を調査するための実験日程を示す概要図である。
【0043】
図9D図9Cに記載された実験後、肝の外見及び肝組織内のHCC関連タンパク質(VEGF、PCNA、CD10及びCD34)に対するIHC分析結果を示す一連の写真(上段)及び前記IHC分析結果を定量化した一連のグラフ(下段)である。
【0044】
〔発明を実施するための形態〕
用語の定義:
本明細書で使われる用語「肝癌(liver cnacer)」は、肝で一次的に発生した、すなわち、原発性の悪性腫瘍を意味する。一般人は、他の器官から肝に転移した癌も、よく肝癌と呼ぶが、厳密には、原発性の癌のみを指す。病理学的(組織的)に原発性肝癌には、肝細胞癌腫と胆管上皮癌腫、肝芽細胞腫、血管肉腫など多種があり、そのうち、肝細胞癌腫と胆管上皮癌腫とがほとんどを占める。
【0045】
本明細書で使われる用語「原発性肝癌」は、肝細胞で発生した肝細胞癌と肝胆管の上皮細胞で発生した胆管細胞癌とに分類されるが、これらの全部、細胞が増殖し、肝は、結節状で大きく増殖及び拡大して正常細胞を破壊し、黄疸を発生させ、さらに腹膜や肺に転移を起こすことにより、患者を死亡に至らしめる。
【0046】
本明細書で使われる用語「続発性肝癌(secondary liver cancer)」は、肝臓で生じる原発性肝癌と他の臓器に発生した癌が転移して生じる肝癌とであって、原発性よりも遥かに多くて、臨床的に約2倍程度と報告されている。続発性肝癌は、門脈と肝動脈などの血行性転移が主に行われるが、原発病巣としては、胃癌、直腸癌、大腸癌などの消化器癌や膵臓癌、胆嚢癌、肺癌、乳癌、子宮癌などがあり、そのうち、消化器癌で最も多く転移する。続発性肝癌は、ほとんど多発性であるために、切除が不可能であって、抗ガン剤を使用する場合が多い。
【0047】
本明細書で使われる用語「Ssu72」は、酵母モデルでRNA重合酵素IIのC末端ドメインの脱リン酸化を触媒する脱リン酸化酵素として知られているが、高等動物では、生体内機能がよく知られなかった。前記遺伝子及びタンパク質は、酵母からチンパンジー、犬、豚、マウス、ラットなどでいずれも保存されており、具体的な塩基配列及びタンパク質情報は、NCBIに公知されている(NCBI Reference Sequence:NM_026899.3,NM_200728.1など)。
【0048】
発明の詳細な説明:
本発明の一観点によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む肝癌治療用薬学的組成物が提供される。
【0049】
本発明の一観点によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含む肝癌予防用薬学的組成物が提供される。
【0050】
前記薬学的組成物において、前記ポリヌクレオチドは、配列番号2で示される核酸配列を有しうる。
【0051】
前記薬学的組成物において、前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターであり、前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり、前記非ウイルス性ベクターは、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームであり、前記DNAベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージミドベクターまたは人工ヒト染色体である。
【0052】
前記薬学的組成物において、前記肝癌は、原発性肝癌または続発性肝癌であり、前記原発性癌は、肝細胞癌または胆管細胞癌である。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量のSsu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを有効成分として含む組換えベクターを単独で含むか、1つ以上の薬学的に許容される担体を含みうる。この際、薬学的に許容される担体は、製剤時に通用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。また、前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、目的の方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、投与量は、環軸の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択されうる。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、環軸疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定されうる。本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与され、従来の治療剤とは順次または同時に投与され、単一または多重投与される。前記要素をいずれも考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されうる。具体的に、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内に活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、疾病の種類、併用される薬物によって変わりうる。併用投与は、一般的には、体重1kg当たり1~500mgを毎日または隔日投与するか、1日1~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、性別、体重、年齢などによって増減されうるので、前記投与量が如何なる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。ベクターがAAVベクターである望ましい実施例で、ベクターの投与量は、1X1010~1X1015gc/kg以上、望ましくは、1X1012~1X1014gc/kg、さらに望ましくは、5X1012~5X1013gc/kgである。
【0056】
一般的に、それを必要とする個体は、哺乳動物、望ましくは、霊長類、より望ましくは、ヒトである。典型的に、それを必要とする個体は、疾病の特徴的な症状を示す。前記方法は、典型的に治療剤を治療的有効量を発現することにより、それを必要とする個体によって表われる症状を緩和させることを含む。
【0057】
試験管内及び生体内標的細胞での治療的遺伝子発現のための遺伝子療法プロトコルは、当業者によく知られており、本発明で詳しく議論されない。簡単に言えば、これらは、プラスミドDNAベクター(ネイキッドまたはリポソーム)またはウイルスベクターの筋肉内注射、癲癇注射、気道点滴、内皮塗布、肝内注射、実質内注射または静脈内または動脈内投与(例えば、肝内動脈、肝内静脈)を含む。標的細胞に対するDNAの可溶性を向上させるために、多様な装置が開発された。簡単な接近方式は、対象細胞を関連ベクターを含むカテーテルまたは移植可能な物質と物理的に接触させるものであるが、さらに複雑な接近方式は、筋肉内遺伝子伝達のためにジェット注入装置または電気穿孔器を使用することができる。哺乳類肝細胞への遺伝子伝達は、生体外及び生体内手続きをいずれも使用して行われた。体外接近法は、典型的に肝細胞の収獲、適した発現ベクターを使用した試験管内形質導入、引き続き、形質導入された肝細胞を肝の再導入を必要とする。非ウイルス性ベクターまたはウイルス性ベクターに肝実質、肝動脈または門脈に注入して生体内遺伝子伝達を達成した。
【0058】
本発明の他の一観点によれば、肝癌患者から収得された試料でSsu72の発現程度または前記Ssu72の活性を確認する段階;及びSsu72が正常者または肝癌患者の正常組織に比べて低く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現される場合、前記肝癌がNASH由来の肝細胞癌であると診断する段階;を含む肝癌患者の肝癌類型の判定方法が提供される。
【0059】
前記判定方法において、前記試料は、肝組織生検または体液であり、前記体液は、唾液、血液、小便、涙または汗である。
【0060】
本発明の他の一観点によれば、肝癌患者から収得された試料でSsu72の発現程度または前記Ssu72の活性を測定する段階;及びSsu72が正常個体または肝癌患者の正常組織に比べて低く発現されるか、前記Ssu72が不活性の形態で発現されると判定された患者にSsu72タンパク質またはそれを暗号化するポリヌクレオチドを投与する段階;を含む肝癌の治療方法が提供される。
【0061】
前記治療方法において、前記Ssu72は、肝細胞内で発現が抑制されるか、過リン酸化によって機能が低下したHNF4αの発現を増加させるか、過リン酸化HNF4αを脱リン酸化させて、その機能を回復することにより、個体の肝癌を治療可能にする。
【0062】
したがって、本発明は、他の側面では、Ssu72またはそれを暗号化するポリヌクレオチドを肝細胞癌患者に投与する段階を含む前記個体の肝細胞でのHNF4αの発現または機能を回復させる方法を提供する。
【0063】
したがって、他の観点から、Ssu72ペプチドまたはそれを暗号化するポリヌクレオチドを肝細胞癌腫にかかった個体に投与する段階を含む前記個体の肝細胞でHNF4αの発現または機能を回復させる方法が提供される。
【0064】
前記方法において、前記試料は、肝組織生検または体液であり、前記体液は、唾液、血液、小便、涙または汗である。
【0065】
本発明の他の一観点によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチド、前記Ssu72ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを個体に投与する段階を含む前記個体で肝癌を予防する方法が提供される。
【0066】
本発明のさらに他の側面によれば、培養中である肝細胞またはヒトを除いた実験動物に候補物質を処理する段階;前記肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を測定する段階;及び前記肝細胞または実験動物でSsu72の発現またはSsu72とHNF4αとの相互作用を増加させる候補物質を選別する段階;を含む肝癌治療の候補物質のスクリーニング方法が提供される。
【0067】
本発明の一実施例によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列で記載されるSsu72ポリペプチドは、薬物伝達体の上または内部に位置することができ、前記薬物伝達体は、例えば、ナノ粒子、マイセル、リポソーム、脂質由来の小胞またはエクソソームである。
【0068】
本発明の一具現例によれば、Ssu72を暗号化するポリヌクレオチドを有効成分として含むベクターを含む薬学的組成物は、HCCの予防または治療用ワクチンとして使われる。この場合、ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクターである。ウイルスベクターは、アデノウイルス、AAV(adeno-associated virus)、ヘルパー依存性アデノウイルス及びレトロウイルスベクターからなる群から選択される何れか1つであり、非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソームなどである。この際、アデノ随伴ウイルスは、肝特異的遺伝子伝達のためのAAV8であるが、これに制限されるものではない。
【0069】
本発明において、前記Ssu72タンパク質は、配列番号1で示されるアミノ酸配列で構成することができる。選択的に、配列番号1で示されたアミノ酸配列と70%以上、望ましくは、80%以上、より望ましくは、90%以上の相同性を有するペプチド、最も望ましくは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性を有するならば、前記Ssu72の生物学的活性を有したペプチドが使われる。本発明において、Ssu72タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号2で表される核酸配列で構成することができる。
【0070】
本発明の一実施例では、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるSsu72ペプチドにHAタグが含まれるように遺伝子コンストラクトを製造した。遺伝子導入によって発現されるSsu72タンパク質は、体内で内因性Ssu72タンパク質と区別が不可能であるために、ウェスタンブロッティング(Western blotting)分析のような分析を行う時、固有なSsu72タンパク質から形質導入によって発現される組換えSsu72タンパク質の区分が必要であるためである。したがって、実際、治療または予防用途の遺伝子コンストラクトは、HAタグのような識別のためのタグを含むか、免疫原性を最小化するために除去される。本発明の発現ベクターは、一般的に製造されるあらゆる組換えベクターであり、非ウイルスベクター及びウイルスベクターをいずれも含み、望ましくは、組換えウイルスベクターであるが、これに制限されるものではない。
【0071】
前記組換えベクターで、前記ポリヌクレオチドは、調節配列に作動可能に連結された遺伝子コンストラクトの形態で含まれる。
【0072】
本明細書において、「作動可能に連結された」という用語は、標的核酸配列(例えば、試験管内転写/翻訳システムまたは宿主細胞で)が前記標的核酸配列が発現される方式で調節配列に連結されることを意味する。
【0073】
本明細書で使われる用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及びその他の調節要素(例えば、ポリアデニル化信号)を含むことを意味する。調節配列の例は、標的核酸が多い宿主細胞で持続的に発現されるように指示する配列、標的核酸がただ宿主細胞のみで発現されるように指示する配列(例えば、組織特異的調節配列)及び特定組織細胞、及び発現が特定信号によって誘導されるように指示する配列(例えば、誘導性調節配列)を含む。当業者は、発現ベクターの設計が形質転換される宿主細胞の選択及び所望のタンパク質発現レベルのような因子によって変わりうるということを理解することができる。本発明の発現ベクターは、融合タンパク質を発現させるために宿主細胞に導入される。真核細胞及び原核細胞で発現を可能にする調節配列は、当業者によく知られている。前述したように、これらの調節配列は、一般的に転写開始を担当する調節配列及び選択的に転写終結及び転写体安定化を担当するポリA信号を含む。追加的な調節配列は、転写調節因子に加えて翻訳強化因子及び/または自然組み合わせまたは異種プロモーター領域を含みうる。例えば、哺乳類宿主細胞で発現を可能にする調節配列は、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、ヒト腎臓ウレア1αプロモーター、グルココルチコイド誘導MMTV(モロニーマウス腫瘍ウイルス)プロモーター、メタロチオネイン-またはテトラサイクリン-誘導性プロモーター、またはCMVプロモーター及びSV40プロモーターのような増幅剤を含む。肝での発現のためには、PBGDプロモーター、α1抗トリプシンプロモーター(EhAlbAAT)、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、肝調節領域(HCR)-ApoCII、ハイブリッドプロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、アポリポタンパクE(ApoE)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ[PGK]プロモーター、ハイブリッド肝特異的プロモーター[HLP]または先行技術(WO2001098482A;WO2020104782A)に開示された肝特異的プロモーターが使われる。前記言及されたプロモーターは、当業者に公知されており、文献に記載されている(Charron,J.Biol.Chem.270:25739-25745,1995)。原核細胞での発現のために、lacプロモーター、tacプロモーターまたはtrpプロモーターを含む多数のプロモーターが開示されている。転写を開始することができる因子に加えて、調節配列は、本発明の一実施例によってポリヌクレオチドの下流にSV40ポリA部位及びTKポリA部位のような転写終結信号を含みうる。適した発現ベクターは、当業者に知られており、その例としては、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Parmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGX-27(大韓民国登録特許第1442254号)、pX(Pagano et al.,Science 255:1144-1147,1992)、pEG202及びdpJG4-5のような酵母2-ハイブリッドベクター(Gyuris et al.,Cell 75:791-803,1995)、及びラムダgt11及びpGEX(Amersham Pharmacia)のような原核発現ベクターが挙げられる。前記ベクターは、本発明の核酸分子以外に分泌信号をコーディングするポリヌクレオチドをさらに含みうる。分泌信号は、当業者によく知られている。また、使われる発現システムによって、本発明の一実施例による融合タンパク質を特定細胞区画に誘導することができるリーダー配列が、本発明の一実施例によるポリヌクレオチドの暗号化配列と結合され、望ましくは、翻訳されたタンパク質またはそのタンパク質を細胞質周囲または細胞外培地に直接分泌することができるリーダー配列である。
【0074】
本発明の一具現例による組成物で、前記調節配列は、全身発現または組織特異的発現の態様を示すことができ、組織特異的発現の場合、肝特異的発現パターンを示すことができる。この際、肝特異的な発現パターンを示すために、TGBプロモーター(配列番号3)のような肝特異的な調節配列を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0075】
また、本発明のベクターは、例えば、標準組換えDNA技術によって製造され、標準組換えDNA技術の例としては、平滑末端と接着末端との結紮、適切な末端の生成のための制限酵素処理、不適切な結合を防止するためのアルカリ性ホスファターゼ処理によるリン酸基の除去及びT4 DNAリガーゼによる酵素的結合が挙げられる。本発明のベクターは、化学的合成または遺伝子組換え技術で得たシグナルペプチドを暗号化するDNAと本発明の一実施例によるSsu72ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドとを適切な調節因子を含むベクターと組替えて製造することができる。調節配列を含むベクターは、商業的に購入または製造することができる。
【0076】
前記発現ベクターは、分泌信号配列を暗号化するポリヌクレオチドをさらに含み、前記分泌信号配列は、細胞内から発現される組換えタンパク質の細胞外分泌を誘導し、tPA(Tissue plasminogen activator)信号配列、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質信号配列、Ds(HSV gDs)信号配列、または成長ホルモン信号配列である。
【0077】
本発明の一実施例による発現ベクターは、宿主細胞でタンパク質を発現することができる発現ベクターであり、前記発現ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、ファージミド(phagemid)ベクターまたは人工ヒト染色体を含む。
【0078】
本発明者らは、Ssu72を暗号化するポリヌクレオチドを含む薬学的組成物を通じてNASH由来の肝癌または慢性化学刺激誘発肝癌を治療することができるということを確認した。本発明者らは、肝細胞の分化及び機能に重要な役割を行う染色体無欠性を調節するSsu72の機能を最初に究明した。また、本発明者らは、マウスモデルで肝細胞特異的なSsu72遺伝子欠乏がNAFLD及びNASHを誘発することを報告した(Se-Hyuk KIM et al.,Hepatol.63:247-259,2016;KR10-2016-0054719A)。引き続き、本発明者らは、肝癌モデルマウス及びHCC患者の臨床肝生検を使用した分析を通じて、Ssu72の下向き調節と肝細胞癌腫の発病または悪性肝細胞癌腫との関連性及び肝細胞癌腫調節の核心転写因子であるHNF4αとSsu72との相関関係を確認することにより、Ssu72が肝細胞の機能的調節にも影響を及ぼすことができるということを調査した。これに基づいて、本発明者らは、Ssu72を含む薬学的組成物を製造し、食餌誘導肝癌モデルマウス及び化学物質誘導肝癌モデルマウスで肝癌治療用組成物の治療効果を確認した。したがって、本発明の薬学的組成物は、ヒトの肝癌治療用治療剤の製造に使われる。
【0079】
肝癌は、遺伝的要因、非遺伝的要因、ウイルス感染、飲酒、喫煙、食餌療法、薬物、ストレスなど多様な原因があり、肝を構成する肝細胞のような実質細胞の間の複雑な信号伝達体系が肝微細環境を構成する肝星状細胞、免疫細胞のような非実質細胞は、前記原因で長期間影響を受ける。したがって、特定肝癌関連遺伝子に欠陥がある場合、当該遺伝子の非正常な発現または抑制された発現が肝癌を誘発すると確認される場合が多い。しかし、肝癌の治療において、特定単一遺伝子のみを含む薬学的組成物を製造して肝癌の治療を期待することは非常に難しい。長期間にわたって多様な要因によって発生する肝癌の発病機転を通じて作用機転を予測しにくい理由である。本発明者らは、Ssu72欠損による肝癌の発病機転及び肝癌の発生において、HNF4αとSsu72との力学的関係を究明した。また、本発明者らは、Ssu72を含む薬学的組成物を製造し、それを基盤に肝癌治療に対する組成物の治療効果を確認した。本発明は、Ssu72またはSsu72タンパク質を暗号化する遺伝子のみで慢性肝癌を治療することができ、肝細胞癌動物モデルでSsu72を誘導する作用機転を通じて治療効果を示す差別的な長所を有した肝癌治療剤に関するものである。
【0080】
最近、癌細胞の多様な特性を用いて特定標的のみを選択的に攻撃することにより、副作用が少なく、より効果的な結果を期待することができる分子標的治療剤が台頭しつつある。そのうち、最も代表的な薬剤がソラフェニブ(Sorafenib)であって、チロシンプロテインキナーゼ(tyrosine protein kinases)及びRafキナーゼ(kinases)抑制を通じて進行性腎臓癌及び肝癌に頻繁に用いられている代表的な経口用抗ガン剤としてさまざまな腫瘍発生関連信号伝達経路と血管新生因子関連収容体とを遮断する多重リン酸化酵素阻害剤(kinase inhibitor)である。最近、非反応性甲状腺癌、肺の扁平細胞癌腫及び再発性神経膠腫(glioblastoma)などにもある程度効果を示すと知られているが、皮膚発疹、手足症候群(hand-foot skin reactions)、下痢、高血圧、可逆的後脳病症候群(reversible posterior leukoencephalopathy syndrome)及び赤血球増加症のような意図しない多様な副作用が臨床からもたらされており、ソラフェニブに対する過敏反応も報告されている。これと共に、デキサメタゾン(dexamethasone)、ケトコナゾール(ketoconazole)、リファンピン(rifampin)及びドキソルビシン(doxorubicin)は、肝のミクロゾーム酵素に影響を与えるか、肝ミクロゾーム酵素によって代謝される薬物またはUGT酵素(uridine diphosphate-glucuronosyltransferase)によって代謝される薬物と共に有害な相互作用を示すと知られている。これにより、肝癌治療に画期的な転機を設けた分子標的治療剤の種類及び使用量が全世界的に増加すると予想されたが、分子標的遺伝子の発見と前臨床研究モデルなどの不足によって多様な分子標的治療剤が開発されることができない実情である。
【0081】
このような背景下で、本発明者らは、Ssu72遺伝子の脂肪肝、肝炎、肝線維化の治療効果及び抗ウイルス効果を研究し、最終的に肝癌への進行の抑制に寄与する肝癌治療剤を開発するために研究努力した結果、Ssu72遺伝子を肝癌が誘発されたマウスに投与した後、高い敏感度と特異度とで副作用なしに肝損傷及び肝線維化を抑制しながら肝細胞癌を効果的に治療することができるSsu72タンパク質またはSsu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物を開発した。
【0082】
具体的に、本発明者らは、Ssu72を発現する治療用非ウイルスpCMVベクターを作製するために、PCRを通じてSsu72遺伝子をクローニングし、Bam HI、Xba I制限酵素を処理してpCMV.HA-Ssu72を作製し、Ssu72を発現するウイルスベクター、AAV8ベクターを作製するために、AAV.TBG.PI.Cre.rBGベクター(Addgene、USA)からCreを除去し、Cla I、Sal I制限酵素を処理してAAV.TBG.HA-Ssu72(以下、「AAV8 Ssu72」と略称する)をクローニングした。その後、前記製造されたベクターを用いて肝癌の緩和及び治療効果を検証した。これは、Ssu72が欠乏したマウスと正常マウスとに肝癌を誘発することができる2種のモデルを適用してSsu72の肝癌での機能を確認した。最初に、DEN投与を通じて肝癌の発生有無及び肝癌の進行程度を確認してSsu72を利用した肝癌治療の可能性を確認し、二番目に、生後2日にSTZ(Streptozotocin)を投与し、高脂肪食餌(HFD)を給餌したSTAMモデルを用いて肝癌の発生及び線維化程度を比較した。前記結果に基づいてAAV8 Ssu72に対する治療効能の評価のために、正常マウスにSTAMモデルを適用した後、AAV8 Ssu72を投与して肝疾患の発生及び重症度を評価した結果、AAV8 Ssu72投与群では、脂肪肝炎、肝線維化、肝癌直前段階から観察される肝結節(Liver nodule)、肝重量の増加及び肝数値の増加に対する顕著な治療効果を確認した。
【0083】
また、本発明者らは、Ssu72の脂肪肝でのHCCへの転移において役割に対する分子機転を確認するために、オミックス分析を行った結果、肝細胞でSsu72の発現が欠乏するように遺伝子操作されたSsu72Δhep細胞で下向き調節された遺伝子群の42%が転写調節因子であるHNF4αの標的遺伝子であることを確認した。このような結果に基づいて、Ssu72とHNF4α発現との間の相関関係をHCC患者、そして、脂肪肝炎及び/または肝硬変患者の臨床試料を用いてさらに分析したが、HCC患者では、Ssu72及びHNF4αの発現が有意に低くなっていることを確認することができ、脂肪肝炎及び/または肝硬変患者でも、Ssu72とHNF4α発現との間に密接な正の相関関係が確認された。また、肝細胞でのSsu72が過リン酸化されたHNF4αと複合体を形成し、肝細胞でSsu72の欠乏は、肝毒性条件で過リン酸化HNF4αの保持を誘発して、HNF4αの転写活性を落とすと確認された。それだけではなく、Ssu72Δhep細胞で外来的にSsu72を形質導入して発現させる場合、過リン酸化HNF4αを減少させると確認されて、Ssu72やそれを暗号化するポリヌクレオチドを個体に投与する場合、発現が減少するか、過リン酸化されて機能が低下したHNF4αの機能を回復させることができると確認された。したがって、本発明の一実施例によるSsu72タンパク質またはそれを暗号化するポリヌクレオチドは、NASHや肝線維化、そして、このような病的状態でHCCへの発展に密接に関連したHNF4αの機能低下を逆転させることにより、これらの疾患の治療に有用に使われる。
【0084】
発明のモード:
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施例は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0085】
<実施例1:実験の準備>
本発明で使われたあらゆる動物実験は、大韓民国の成均館大学校医科大学(Sungkyunkwan University School of Medicine;SUSM)にある動物実験倫理委員会(The Institutional Animal Care and Use Committee;IACUC)によって承認された、国際実験動物評価管理人認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International;AAALAC International)と実験動物センター(Institute of Laboratory Animal Resources;ILAR)とのガイドライン(guidelines)によって行った。
【0086】
<実施例2:Ssu72タンパク質をコーディングするヌクレオチドを含む発現ベクターの作製>
<2-1:pCMV.HA-Ssu72プラスミドベクターの作製>
本発明者らは、Ssu72を暗号化するポリヌクレオチド(配列番号2)をPCRを通じてクローニングして、Ssu72を発現する治療用非ウイルス性pCMVベクターを作製した後、増幅されたポリヌクレオチドにBam HI及びXba I制限酵素を処理した後、切断されたポリヌクレオチド断片をpCMV.HAベクター(Clonetech、USA)に挿入した後、構築された組換えベクターを「pCMV.HA-Ssu72」と名付けた(図1)。
【0087】
<2-2:AAV8.TBG.HA-Ssu72(AAV8 Ssu72)ベクターの作製>
本発明者らは、Ssu72を発現するAAV8ベクターを作製するために、実施例2-1から製造されたpCMV.HA-Ssu72ベクターから切断されたHA-Ssu72を暗号化するポリヌクレオチドをpAAV.TBG.PI.Cre.rBGベクター(Addgene、USA)からCreモイエティを暗号化するポリヌクレオチドを除去することにより、pAAV.TBG.PI.Cre.rBGベクターを生成し、それをCla I及びSal I制限酵素で切断された後、挿入した。作製されたベクターは、「AAV8.TBG.HA-Ssu72(AAV8 Ssu72)」と名付けた(図2)。
【0088】
<2-3:AAV8.TBG.HA-Ssu72(AAV8 Ssu72)ウイルスの作製>
本発明者らは、前記実施例2-2から収得したプラスミドDNAを使用してAAVを作製した。具体的に、AAVを生産するために、293T細胞を前日準備して24時間安定化させ、前記細胞に実施例2-2で作製したプラスミドDNAとAAV生産に必要なプラスミドであるpHelper及びpAAV-RC8(Agilent、USA)とを形質感染(Transfection)させ、3~4日経過後、AAVを収得した。その後、AAVは、適正キット(AAVpro Titration Kit、Takara、Japan)を通じて定量してAAVを生産した。
【0089】
<実施例3:Ssu72タンパク質発現レベルの分析>
本発明者らは、肝疾患が発生すれば、肝でのSsu72タンパク質発現レベルに変化があるかを調査した。具体的に、元気なヒト(normal)及び脂肪肝炎(Steatohepatitis)、軽度線維化(Mild fibrosis)、線維化/硬変症(Fibrosis/Cirrhosis)または肝細胞癌(HCC)を病んでいるヒトの肝組織を用いてタンパク質分析を行った。その結果、Ssu72の発現レベルは、元気なヒトの肝で顕著に高く、肝疾患を保有しているヒトの肝では、Ssu72発現が抑制されているということを確認した(図3)。前記結果は、Ssu72の発現低下と肝疾患との相関関係があるということを示唆するものである。
【0090】
<実施例4:Ssu72の抑制による肝細胞癌の出演の変化に対する観察>
本発明者らは、Ssu72発現抑制によって肝癌感受性の増加有無を確認するために、Ssu72肝特異的欠損マウス(Ssu72Δhep)と比較群である野生型マウス(Ssu72WT)とにDENを処理して肝癌(hepatocellular calcinoma、HCC)を誘導後、4ヶ月及び10ヶ月後、肝を摘出して組織分析を行った。その結果、野生型マウスと比較してSsu72肝特異的欠損マウス(Ssu72Δhep)の肝表面にさらに多くの結節とさらに大きな肝癌とが発生することを確認することができた(図4A)。組織構造分析のためのH&E染色結果、肝癌誘導4ヶ月後からSsu72Δhep肝で腺腫が表われ始め、肝癌誘導10ヶ月後には、Ssu72WTよりもSsu72Δhep肝でさらに深刻な肝癌が観察された。また、DEN処理を通じた肝癌誘導マウスの肝を摘出して体重に比べて、肝の重量比を測定した結果、Ssu72WTとSsu72Δhepマウス肝の重量比は、発癌誘導4ヶ月までは類似している態様を示したが、深刻な肝癌が発生する9ヶ月及び10ヶ月時点には、Ssu72Δhepの肝の重量比が著しく増加することを確認した(図4B)。引き続き、前記実験で肝組織を摘出した後、H&E染色法を通じて肝内部組織分析を行った結果、発癌誘導4ヶ月後には、Ssu72Δhep肝で腺腫が発見される一方、Ssu72WT肝は、いずれも正常表現型を示した。また、肝癌誘発マウスでDEN処理で肝を切除して、肝の重量に比べて、体重比を測定した結果、Ssu72WT及びSsu72Δhepマウスの肝の重量に比べて、体重比は4日まで類似したパターンを示した。9ヶ月及び10ヶ月経過時に、Ssu72Δhepマウスの肝の重量/体重比が有意に増加することを確認した(図4C)。
【0091】
また、前記Ssu72WTとSsu72Δhepマウス間で肝疾患の発生比率を比較した結果、DEN投与を通じた肝細胞癌モデルでは、異型性結節、腺腫、肝細胞癌(HCC)の順に肝疾患が悪化し、Ssu72WTでは、異型性結節と腺腫との比率が高い一方、Ssu72Δhepでは、肝細胞癌の比率が最も高かった。特に、Ssu72WTでは、ほとんど見えなかった肝内胆管癌も発生すると表われた(図4D)。前記結果は、Ssu72の欠損が肝癌の発生速度と深刻度とを増加させることを示唆するものである。
【0092】
<実施例5:非アルコール性脂肪肝炎の分析>
本発明者らは、本発明のSsu72に欠損による非アルコール性脂肪肝炎の悪化有無を調査した。具体的に、マウス生後2日である時、ストレプトゾトシンを注射し、生後4週から高脂肪食餌(HFD)を給餌して、線維化及び肝癌を誘発するSTAMモデルを製造した。STAMモデルの期間を長くすれば、重症HCCも誘発が可能であるが、犠牲時点を調節して非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis、NASH)及び肝癌の発生過程を同時に観察することができる。本発明者らは、Ssu72WTとSsu72ΔhepとにSTAMモデルを適用した後、生後4ヶ月の時、腺腫及び肝表面の結節を観察した。
【0093】
その結果、Ssu72WTでは、腺腫及び肝表面の結節の数が少なく、重症度が低い一方、Ssu72Δhepでは、結節の数が多く、組織構造上、脂肪含有度が高く、炎症細胞の群集を確認して、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が誘発されたということを観察した(図5A)。また、肝組織及び表面を分析して腫瘍及び結節の数とそれぞれのサイズとを測定した結果、Ssu72WTに比べてSsu72Δhepで腫瘍及び結節の数が増加し、それぞれのサイズもさらに増加したと表われた。また、NASHの重症度を確認するために、NAS scoreを測定した結果、Ssu72WTに比べてSsu72Δhepで約5倍ほど点数が増加し、線維化面積を基準に線維化点数を測定した結果、Ssu72WTに比べてSsu72Δhepで約4倍ほど増加したと表われた(図5B)。前記結果は、Ssu72の活性化は、NASHの重症度及び進行を抑制することができるということを示唆するものである。
【0094】
<実施例6:Ssu72抑制によるオミックス(omics)変化の分析及び関連機転の研究>
本発明者らは、肝損傷後、Ssu72枯渇によって肝脱分化可能性が増加する潜在的なメカニズムを理解するために、DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞でRNA-Seqを使用して遺伝子発現分析を行った。ヒートマップ分析によれば、DEN処理Ssu72WTマウスの肝細胞と比較してDEN処理Ssu72Δhepマウスの肝細胞で肝細胞及び胆汁マーカー遺伝子下位集合の発現レベルが非常に下向き調節された一方、前駆遺伝子は、DEN処理Ssu72WTマウスの肝細胞に比べて、DEN処理Ssu72Δhepマウスの肝細胞で劇的に上向き調節された(図6A)。DEN処理Ssu72WTマウスとDEN処理Ssu72Δhepとの肝細胞の肝遺伝子発現の変化をDAVIDを通じて機能別に分類して信頼度が高い項目を互いに比較した。その結果、DEN処理Ssu72Δhepマウスの肝細胞で脂質、コレステロール、レチノールの代謝過程、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、酸化的リン酸化など肝細胞固有の生理学的特徴と関連した遺伝子が下向き調節された。これは、肝細胞の本質的な生理的特徴でSsu72の潜在的な役割を示唆し、Ssu72が肝細胞の本質的な機能の保持に必須的であることを立証するものである(図6B)。一方、細胞周期関連遺伝子下位集合は、DEN処理Ssu72Δhepマウスの肝細胞で非正常に上向き調節されて肝損傷に対する反応でSsu72枯渇によって肝細胞が脱分化されて増殖潜在力を回復することを示唆する。
【0095】
また、本発明者らは、Ssu72Δhepマウスの肝細胞で下向き調節された遺伝子下位集合の約45%が肝細胞機能保持に重要な転写因子であるHNF4αの標的遺伝子に属すことを見つけた(図6C)。また、Ssu72Δhepマウスの肝細胞で発現が上向き調節された遺伝子下位集合の約39%がE2Fの標的遺伝子に属し、これは、Ssu72の欠乏が損傷-媒介変性を通じた増殖能力の回復に寄与することを示す(Hyun Soo Kim et al.,Cell Death & Differentiation Epub,2021)。また、qRT-PCT分析を通じてSsu72の欠乏が4個のHNF4α標的遺伝子であるAadat、Fabp1、Grb7及びF10を下向き調節する傾向があるということを確認した(図6D)。Ssu72及びHNF4αの間の臨床的関連性を調査するために、本発明者らは、免疫組織化学染色によって28人のNASH関連HCC患者から収得された一対組織(paired tissues)のタンパク質発現レベルを評価した。その結果、Ssu72の発現が弱い肝細胞癌腫患者は、同じ組織でHNF4αの発現が低く、その反対の場合も同様であった。Ssu72とHNF4α発現との間の相関関係をNASH及び/または肝硬変患者でさらに分析し、Ssu72とHNF4α発現との間の密接な正の相関関係は、脂肪肝炎、軽度肝線維症または肝線維症/肝硬変患者から見つけられた(図6E)。
【0096】
また、ヒト肝組織生検を収得してSsu72及びHNF4αの発現レベルを比較した。脂肪肝炎(n=12)、軽度肝線維症(n=70)または肝線維症/肝硬変症(n=105)患者と正常者(診断学的異常なし、n=10)とを分析した結果、Ssu72とHNF4α発現との間の密接な正の相関関係も確認された(図6F)。
【0097】
このような結果は、Ssu72がHNF4α発現との関連性を通じてNASH及びHCC患者で潜在的に大きく下向き調節されるために、肝組織でSsu72が肝損傷に対する反応でHNF4α媒介転写信号を調節するということを示唆する。
【0098】
<実施例7:Ssu72によるHNF4αリン酸化及び活性の調節>
HNF4αは、肝機能保持と関連したマスター転写因子であり、NASH、ASH、肝硬変及び肝癌の発生で非常に下向き調節される。特に、HNF4αの転写活性は、主にリン酸化変形によって調節される。肝損傷でAMPK、MAPK及びPKAのような多様なキナーゼの活性は、HNF4αの過リン酸化を誘導して転写活性を減少させることができる。これにより、本発明者らは、HNF4αとSsu72との関係を確認するために、実験用マウスでDEN処理後、リン酸化程度を調査した。
【0099】
その結果、DENは、Ssu72WTマウスの肝細胞に対するphospho-tagゲルの移動性の変化で立証されるHNF4αのリン酸化を有意に誘導し、HNF4αの過リン酸化は、Ssu72WTマウスの肝でDEN投与後、5日以内に部分的に回復された。また、DEN処理されたSsu72Δhepマウスの肝でHNF4αの過リン酸化形態は、肝損傷時に、HNF4αのSer304をリン酸化させると知られたAMPKαのようなキナーゼの活性化なしにDEN投与後、5日間持続的に保持された(図7A)。IHC分析は、またHNF4αがDEN処理されたSsu72Δhepマウスの肝で過リン酸化されたということを表わした(図7B)。前記の結果は、Ssu72がHNF4αの過リン酸化に直接反応する可能性を増加させて肝損傷によるHNF4αの脱リン酸化(または、低リン酸化)に寄与することができるということを示唆する。また、Ssu72とHNF4αとの関係を確認するために、Ssu72がHNF4αに物理的に結合することができるかを調べるために、免疫沈殿分析を実施した。その結果、DEN誘導損傷条件でSsu72がHNF4αと相互作用することを確認し、これは、Ssu72がHNF4αと相互作用することを示唆する。これは、Ssu72が過リン酸化されたHNF4αと選択的に複合体を形成することができるということを示唆する(図7C)。また、Ssu72欠乏がHNF4αの過リン酸化状態を保持することにより、HNF4αの活性に影響を及ぼすという点を考慮して、肝損傷以後、HNF4αの転写活性を調査するために、Floxedマウスから肝細胞を分離し、HNF4α結合モチーフを含むTfr2プロモーターを含むレポーター遺伝子コンストラクトで肝細胞を形質導入した。その後、肝細胞をCre(Ad-Cre)及び対照群(Ad-GFP)をコーディングするポリヌクレオチドを含むアデノウイルスで感染させ、500μMパルミチン酸を投与して6時間肝損傷を誘導した。その結果、Ssu72が正常に存在する肝細胞では、肝損傷によってHNF4αの転写活性が少し減少した一方、Ssu72が欠乏した肝細胞では、Ssu72欠乏によって活性が大きく減少した(図7D)。
【0100】
前記結果は、Ssu72-HNF4α信号伝達が発癌性肝脱分化調節に重要な機能を行い、Ssu72がHNF4α媒介転写を活性化して肝細胞発癌性の増殖及び脱分化を否定的に調節することを示す。したがって、Ssu72は、NASH関連肝細胞癌腫治療剤として活用されうるということを示唆する。
【0101】
<実施例8:STAMモデル(Streptozotocin-High fat diet model)で肝疾患の予防及び治療効果の検証>
<8-1:Ssu72発現誘導を通じた治療効果の検証>
本発明者らは、AAV8 Ssu72投与による肝疾患に対するSsu72の効果を検証した。特に、NASH初期には、脂肪肝が代表的な症状なので、食餌調節することが良く、効果がある場合が多い。しかし、脂肪肝を含めた線維化が進行して食餌調節のみでは、重症NASHを治療しにくい。このような重症NASHは、肝癌に発展することができ、B型肝炎ウイルスによる肝癌に対する予防法がないために、重症NASHを治療する方法及び治療剤の開発が至急な実情である。したがって、重症NASHの効果的な治療のためには、肝線維症の治療が重要であり、この基準は、肝癌の予防可能性を判断する指標になる。STAMモデルを適用した正常マウスは、6週齢に脂肪肝が発生し、8週齢にNASH及び初期肝線維化が表われ、12週齢に肝線維化が激しくなる。本発明のAAV8 Ssu72と対照群であるAAV8 GFPとを8週齢のSTAMモデルマウスにしっぽ静脈(3x1010gc/g)を通じて投与し、4週後にマウスを犠牲にさせてH&E染色を通じて組織内の構造的の差を比較した。
【0102】
その結果、対照群であるAAV8 GFPを投与したマウスで脂肪肝が確認されて激しい肝損傷が観察された一方、AAV8 Ssu72を投与したマウスでは、対照群に比べて脂肪分布が少なく、脂肪のサイズが小さく、損傷した部位が著しく少ないと表われた(図8A)。
【0103】
<8-2:肝線維化の抑制効能の比較>
本発明者らは、AAV8 Ssu72投与を通じた肝線維化の抑制有無を評価するために、シリウスレッド染色を行った。具体的に、STAMモデルマウスに本発明のAAV8 Ssu72と対照群であるAAV8 GFPとをしっぽ静脈を通じて投与(3x1010gc/g)し、4週後、マウスを犠牲にさせた後、肝で線維化反応を通じて生成されたコラーゲン沈着の位置と量とを決定するために、コラーゲンI/IIIをシリウスレッドで染色した。
【0104】
その結果、AAV8 GFPを投与したマウスの肝組織は、表面に薄い褐色を示し、シリウスレッド染色では、中心静脈と肝門脈とが強い赤色に染色されると共に、2つの静脈の間の染色部位が互いに連結されていることが観察されて脂肪含量が高いと表われた(図8B)。しかし、本発明の一実施例によるAAV8 Ssu72を投与したマウスの肝組織は、濃いさび色であり、組織に脂肪の蓄積がほとんど見えなかった。AAV8 GFPを投与したマウスと類似に中心静脈と肝門脈の周辺部がシリウスレッドで強く染色されたが、2つの染色部位の間の連結は観察されていない。前記結果は、対照群に比べてAAV8 Ssu72投与によって肝線維化が抑制されることを示唆する。
【0105】
<8-3:肝損傷の軽減分析>
本発明者らは、AAV8 GFPまたはAAV8 Ssu72を投与したSTAMモデルマウスの肝及び血液を用いて血清化学分析、体重に比べて、肝の重量、シリウスレッドで染色された組織の面積比に対する分析を行った。肝の重量対体重は、肝損傷、線維化、脂肪肝などによる肝肥大程度を測定する指標であり、ASTとALT数値は、肝で損傷が発生する場合、血液から検出される酵素の濃度であるために、肝損傷の指標になる。
【0106】
その結果、AAV8 GFPを投与したマウスに比べてAAV8 Ssu72を投与したマウスで3種のレベルいずれも有意に減少したことを確認した。また、シリウスレッド陽性面積を測定した結果、AAV8 Ssu72を処理したマウスの陽性面積が有意に減少したと観察された(図8C)。したがって、前記結果は、本発明の一実施例によるAAV8 Ssu72が肝線維症の予防及び治療効果を示すので、肝癌の予防及び治療に使われるということを示唆する。
【0107】
<実施例9:STAMモデル適用による肝細胞癌腫の誘導、肝細胞癌腫標識子の分析及び肝細胞癌腫に対するSsu72の抑制効果>
STAMモデルを適用したマウスは、脂肪症とNASH表現型とを伴い、HFD摂食期間が長くなるほど激しい肝細胞癌腫が表われる。しかし、STAMモデルの限界によって長期間観察時に、一部のマウスが死亡するので、本発明者らは、肝癌モデルを確立するために、HCC表現型が発現される最小期間を先に設定した。STAMモデルを適用した正常マウスを12週齢に犠牲にさせ、切除された肝を分析した。当該実験日程を図9Aに概略的に示した。STAMモデル適用12週後、犠牲になったマウスから得た肝組織を固定し、H&E染色で分析した。その結果、腫瘍病変が確認され、正常組織と異なる細胞の分布と形態とが観察された。IHC分析は、病変でHCCマーカーと知られたCD10及びCD34抗体を使用して行われた。CD10は、多様な細胞から発現される細胞表面タンパク質であるが、多様な癌腫、特に、肝細胞癌腫で発現が増加するために、肝細胞に転移した転移癌と肝細胞癌とを区分するマーカーとして使われる(WG McCluggage et al.,Histopathol.39:273-278,2001)。CD34は、HCCの正弦波型血管(sinosoid-like vessel)の内皮細胞から発現され、HCCの指標である(MacSween’s Pathology of the liver,2017 May;22)。STAMモデルが適用されたマウスで正常食餌マウスである対照群に比べて2つのマーカーの発現が有意に増加することを観察した(図9B)。したがって、前記の結果は、STAMモデルを適用した後、12週にHCCが発生することを示唆する。
【0108】
本発明者らは、確認されたHCC発病を基準にHCC(3x1010gc/g)を含むSTAMモデルの時点である12週目にAAV8 Ssu72及び対照群AAV8を投与し、4週後、HCCに対する治療効果を検証した。当該実験日程を図1に概略的に示した(図9C)。AAV8を投与した対照群の肝は、表面が滑らかでなくて結節が肉眼で観察されたが、AAV8 Ssu72を投与したグループの肝の形状は、正常肝と類似した(図9D)。組織を固定し、HCCマーカーCD10、CD34、VEGF及びPCNAをIHCを使用して分析した。VEGFは、血管形成を促進する成長因子として癌から過発現されて血管新生を誘導するために、癌マーカーとして使われる。PCNAは、細胞が増殖する時、核で発現が増加するタンパク質である。正常な条件で肝細胞は、ほとんど分裂せず、癌細胞は、統制されない細胞増殖を示すために、積極的に分裂する癌細胞でPCNA発現を観察することができる。AAV8 Ssu72投与群は、対照群に比べて4種のマーカーの発現がほとんど観察されず、組織内細胞の形態及び分布が正常組織と類似していることを確認した。Image Jプログラムを使用したIHC実験で比色強度の定量化は、図9Dに要約されている。したがって、前記結果は、AAV8 Ssu72が肝癌に対する治療効果を示すので、肝癌の治療方法として使われるということを示唆する。
【0109】
結論的に、本発明の一実施例によるSsu72タンパク質またはSsu72タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む肝癌の予防または治療用薬学的組成物は、副作用なしに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の重症度及び進行を抑制することにより、肝線維症の予防及び治療を可能にする。したがって、本発明の一実施例による組成物は、多様な類型の肝癌治療のための治療剤として使われる。
【0110】
以上、本発明を実施例によって説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【0111】
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、肝癌治療用薬剤学的組成物に関するものである。したがって、本発明は、治療剤、特に、肝細胞癌のような肝癌治療用治療剤の製造に使われる。
【0112】
本発明は、国家新薬開発事業(課題番号:1465034859、課題番号:HN21C0805000021、課題期間:2021.09.01~2023.08.31)は、大韓民国政府の多様な部処と韓国保健産業振興院とが支援する研究プロジェクトであって、本出願人のうち一ヶ所である(株)キュロジェンテクノロジーが行っている。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】本発明の一実施例による肝細胞癌治療用pCMV.HA-Ssu72ベクターの構造を概略的に示す概要図である。
図2】本発明の一実施例によるウイルスベクターとしてAAV8.TBG.HA-Ssu72ベクターを準備する過程及びチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターによって駆動されるSsu72遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAVs)パッケージング戦略を示す概要図である。図2に記述されたTBGプロモーターは、AAVウイルスベクターでSsu72の肝特異的発現に使われた。
図3】正常者の肝組織サンプルと脂肪肝炎、軽度肝線維症、肝硬変症及び肝細胞癌(HCC)を病んでいる患者の肝組織サンプルでそれぞれSsu72タンパク質の発現レベルをウェスタンブロット分析を通じて免疫ブロッティングした結果である。
図4A】Ssu72肝特異的欠損マウス(Ssu72Δhep)と比較群である野生型マウス(Ssu72WT)とにDEN(diethylnitrosamine)を処理して肝細胞癌腫(hepatocellular calcinoma、HCC)を誘導後、4ヶ月及び10ヶ月後、摘出した肝組織の外見(上段)及び組織内部構造(下段)を示す写真である。
図4B】Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、10ヶ月後、肝を摘出して腺腫の数、腫瘍結節の数、腫瘍のサイズを分析した結果を示すグラフである。
図4C】Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、4、9、及び10ヶ月後、実験動物の重量及び摘出された肝の重量を測定して、体重対肝の重量比を分析した結果を示すグラフである。
図4D】Ssu72WT(白色四角)とSsu72Δhep(黒色四角)マウスとにDEN処理後、10ヶ月後、組織内構造分析及び組織化学分析を通じて異型性結節(Dysplastic nodules)、腺腫(Adenoma)、肝細胞癌腫(HCC)及び肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma、HCC-ICC)の頻度を分析した結果を示す。
図5A】Ssu72WT(上段)とSsu72Δhep(下段)マウスとにストレプトゾトシン(Streptozotocin)を生後2日である時に注射し、生後4週から高脂肪食餌(High-Fat diet、HFD)を給餌して、肝線維化及び肝癌を誘発したSTAMモデル動物から摘出された肝の外見(左側)及び内部構造(右側)を撮影した代表的写真である。肝の内部構造に対する代表的写真は、H&E染色後、顕微鏡を用いて撮影されたものである。
図5B】Ssu72WT(白色菱形)とSsu72Δhep(黒色菱形)マウスとにSTAMモデルを適用後、4ヶ月後に肝を摘出して、腫瘍結節の数(左上隅)、腫瘍のサイズ(右上隅)、非アルコール性脂肪肝疾患活性点数(Nonalcoholic fatty liver disease activity score、NAS、左下隅)、線維化(Fibrosis)点数(右下隅)を分析した結果を示す一連のグラフである。
図6A】DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞に対してRNA-Seqを使用してDEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスの間の肝細胞-、胆汁-及び前駆-マーカーに対する下向き調節または上向き調節された遺伝子を示すヒートマップグラフである。特に、6週齢のSsu72WT及びSsu72ΔhepマウスにDEN(150mg/kg)を処理し、5日後にマウスの肝細胞を肝から分離した(n=グループ当たりマウス2匹)。カラーバーは、log2-fold変化の勾配を示す。
図6B】DENを処理したSsu72WT及びSsu72Δhepマウスからそれぞれ分離された肝細胞に対するRNA-Seq分析を通じて収得した遺伝子発現の変化を分析して、下向き調節された遺伝子と上向き調節された遺伝子とに分類することにより、遺伝子を機能別にグループ化した結果を示すものであって、DAVID基盤の遺伝子オントロジー分析を通じて有意度が高い遺伝子を羅列しているグラフである。カラーバーは、log2-fold変化の勾配を示す。
図6C】DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞でRNA-Seqを使用してSsu72WTマウスと比較して、Ssu72Δhepマウスの肝細胞で下向き調節された遺伝子のうち、HNF4α標的遺伝子を示すヒートマップグラフである。円形チャートは、あらゆる下向き調節された遺伝子の45%がHNF4α標的遺伝子であることを示す。
図6D】DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhepマウスから分離された肝細胞でRNA-Seqを利用した遺伝子分析結果からqRT-PCRを用いてSsu72WTマウスに比べて、Ssu72Δhep由来の肝細胞で下向き調節された4個のHNF4α標的遺伝子をさらに分析した結果を示すグラフである。
図6E】NASH関連肝細胞癌腫患者31人を対象にして抗Ssu72抗体及び抗HNF4α抗体で免疫組織化学的(IHC)染色した結果を示す代表写真(上段)及びIHC分析の染色強度を定量化したグラフ(スケールバー=100μm、下段)である。散点図は、NASH関連HCC患者のサンプルでSsu72とHNF4α発現との間の有意な相関関係を示す(下段、n=31)。
図6F】正常個体(正常と診断、n=10)、軽度線維症患者(n=70)及び肝線維症/肝硬変症患者(n=105)の試料からSsu72(上段)及びHNF4α(下段)mRNAの相対的な発現レベルを比較分析した結果を示す一連のグラフである。
図7A】HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、Ssu72WT及びSsu72Δhep肝抽出物を用いてHNF4α、AMPKα、E2F、Ssu72及びアクチン(Actin)に対して免疫ブロッティングを行った結果を示すゲル写真である。5週齢Ssu72WT及びSsu72ΔhepマウスにDEN(150mg/kg)を投与し、前記Ssu72WT及びSsu72Δhepマウスの肝を3日目及び5日目に収得した。Phos-tagは、phospho-tag gelを使用してリン酸化されたタンパク質の移動性の変化を示す。
図7B】HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、DEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhep肝でphospho-HNF4α(pS304)に対するIHC染色写真である。
図7C】HNF4α及びSsu72の間の関係を確認するために、実験マウスにDEN処理後、リン酸化レベルを調査したものであって、抗HNF4α、抗E2F、抗Rb及び抗Ssu72抗体を使用して免疫ブロッティングを行った結果を示すゲル写真である。PBSまたはDEN処理されたSsu72WT及びSsu72Δhep抽出物は、Ssu72抗体で免疫沈殿された。共免疫沈殿されたHNF4αは、VeriBlot 2次抗体を使用してIgG重鎖によるマスキングなしに検出された。
図7D】肝細胞の損傷時に、HNF4α転写活性とSsu72発現との関係を調べるために行った実験日程を示す模式図(上段);実験のための遺伝子コンストラクトの構造を示す遺伝子地図(中段);及びSsu72WTマウスから分離された肝細胞にTfr2WT、Tfr2MT、対照プロモータープラスミドをそれぞれ形質感染させ、形質感染1日目に肝細胞を対照群(Ad-GFP)またはCre(Ad-Cre)アデノウイルスで感染させた後、形質感染3日目にパルミチン酸のような遊離脂肪酸(FFA)で肝細胞を処理して肝細胞の損傷を誘導した後、前記肝細胞でルシフェラーゼ活性を測定した結果を示すグラフ(下段)である。
図8A】8週齢の正常マウスにSTAMモデルを適用することにより、NASH/HCCが誘発されたマウスに治療剤としてAAV8-Ssu72または対照群にAAV8-GFPを注射した後、肝組織をhematoxylin & Eosin(H&E)で染色し、撮影した顕微鏡イメージである。注射後、4週目にマウスを犠牲にさせ、その肝を切除した。
図8B】STAMモデルが適用された8週齢マウスにAAV8-GFP(左)またはAAV8-Ssu72(右)投与4週後、犠牲にさせ、収得された肝組織切片をシリウスレッドで染色して線維化程度を測定した結果及び切除された全体肝の外見を示す一連の写真である。
図8C】STAMモデルが適用されたマウスから肝組織を摘出して、肝の体重に比べて、体重、血清化学分析を通じて得たAST及びALTレベル、シリウスレッド(Sirius red)で染色された組織の面積比を分析した一連のグラフである。
図9A】野生型マウスにSTAMモデルを適用した後、肝癌誘発程度を分析するための実験日程を示す概要図である。
図9B】野生型マウスにSTAMモデル適用後、12週目に犠牲になった肝組織でH&E染色及び肝細胞癌腫の標準マーカーであるCD10及びCD34に対する免疫組織化学(IHC)分析結果を示す一連の写真(上段)及び前記IHC分析結果を定量化して示す一連のグラフ(下段)である。
図9C】野生型マウスにSTAMモデル適用後、12週目にAAV8またはAAV8 Ssu72を注射し、4週後に犠牲にさせた実験動物の肝細胞癌腫に対するSsu72の治療効果を調査するための実験日程を示す概要図である。
図9D図9Cに記載された実験後、肝の外見及び肝組織内のHCC関連タンパク質(VEGF、PCNA、CD10及びCD34)に対するIHC分析結果を示す一連の写真(上段)及び前記IHC分析結果を定量化した一連のグラフ(下段)である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
【配列表】
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【国際調査報告】