(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】抗CD73抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20231030BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231030BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231030BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231030BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20231030BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231030BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231030BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/12
C07K16/46
C12N15/62 Z
A61K39/395 P
A61P35/00
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548995
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2021125564
(87)【国際公開番号】W WO2022083723
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】202011152518.9
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(71)【出願人】
【識別番号】523150026
【氏名又は名称】アケソ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AKESO PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リ,バイヨン
(72)【発明者】
【氏名】シア,ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョンミン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA92X
4B065AB01
4B065AB05
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085CC02
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗CD73抗体及びその使用に関する。前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号15~17に示されるHCDR1~HCDR3のアミノ酸配列を含み、且つ前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号18~20に示されるLCDR1~LCDR3のアミノ酸配列を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD73(例えばヒトCD73)抗体又はその抗原結合断片であって、そのうち、IMGTナンバリングシステムによれば、前記抗CD73抗体は、
配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3、及び配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
好ましくは、IMGTナンバリングシステムによれば、前記抗CD73抗体は、
配列番号15に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR1と、
配列番号16に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR2と、
配列番号17に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR3と、
配列番号18に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR1と、
配列番号19に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR2と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列、前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR3と、を含む、
抗CD73(例えばヒトCD73)抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体の重鎖可変領域は、
配列番号2、配列番号6又は配列番号10、或いは配列番号2、配列番号6又は配列番号10に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示されるアミノ酸配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなり、且つ
前記抗体の軽鎖可変領域は、
配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14、或いは配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%を有し、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に示されるアミノ酸配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなる、
請求項1に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4にに示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号8に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号12に示され、又は
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10に示され、且つ前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号14に示される、
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体の重鎖定常領域がIg gamma-1鎖C領域、ACCESSION: P01857であり、軽鎖定常領域がIg kappa鎖C領域、ACCESSION: P01834である、
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)である、
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv、dAb、Fab/c、相補性決定領域断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体又は二重特異性抗体から選ばれる、
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
以下、
(1)配列番号15、配列番号16及び配列番号17に示される配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は配列番号18、配列番号19、配列番号20に示される配列を更に含む、単離されたポリペプチド;
(2)配列番号18、配列番号19、配列番号20に示される配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は、配列番号15、配列番号16と配列番号17に示される配列を更に含む、単離されたポリペプチド;
(3)配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は、それぞれ配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む、単離されたポリペプチド;
(4)配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は、それぞれ配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む、単離されたポリペプチド;
(5)配列番号10に示される配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は、それぞれ配列番号14に示される配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、:86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%配列同一性を有する配列、又は前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む、単離されたポリペプチド;及び
(6)配列番号14に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、前記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、前記抗体は、それぞれ配列番号10に示される配列、或いは前記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは前記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む、単離されたポリペプチド
からなる群より選ばれる、単離されたポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項7に記載の単離されたポリペプチドをコードする、
核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の核酸分子、或いは請求項9に記載のベクターを含む、
宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片及びコンジュゲート部分を含むコンジュゲートであって、そのうち、前記コンジュゲート部分が精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識であり、好ましくは、前記コンジュゲート部分が放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、有色物質、ポリエチレングリコール又は酵素である、
コンジュゲート。
【請求項12】
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、
融合タンパク質又は多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体)。
【請求項13】
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のコンジュゲート或いは請求項12に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体を含むキットであって、好ましくは、前記キットは前記抗体を特異的に識別する第二抗体を更に含み、任意選択的に、前記第二抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、有色物質又は酵素を更に含み、好ましくは、前記キットは、CD73のサンプルにおける存在又はそのレベルの検出に用いられる、
キット。
【請求項14】
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のコンジュゲート或いは請求項12に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体を含む医薬組成物であって、任意選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体及び/又は賦形剤を更に含み、好ましくは、前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射での投与に適する形態である、
医薬組成物。
【請求項15】
腫瘍(例えば固形腫瘍、好ましくは非小細胞肺癌、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、トリプルネガティブ乳癌、卵巣癌、大腸癌(マイクロサテライト安定性(MSS)とミスマッチ修復機能欠陥/マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-high)型を含む)、胃癌(マイクロサテライト安定性(MSS)とミスマッチ修復機能欠陥/マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-high)型を含む)、メラノーマ、頭頸部癌、腎細胞癌又は膵管腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造、又は腫瘍の診断に用いられる薬物の製造における、
請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のコンジュゲート或いは請求項12に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体の使用。
【請求項16】
中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託しており、寄託番号がCCTCC NO:C2018137であるLT014から選ばれる、
ハイブリドーマ細胞株。
【請求項17】
(1)請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のコンジュゲート或いは請求項12に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体と、(2)抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体と、場合により取扱説明書を含むキットであって、好ましくは、前記抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列番号35に示されるものであり、軽鎖アミノ酸配列は、配列番号36に示されるものである、
キット。
【請求項18】
患者に治療有効量の薬物Aと治療有効量の薬物Bを投与する腫瘍を治療及び/又は予防する方法であって、そのうち、薬物Aは、請求項1~6の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のコンジュゲート或いは請求項12に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体を含み、薬物Bは、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体を含み、好ましくは、薬物Aと薬物Bを同時に又は順次に投与し、そのうち、前記順次に投与するのは、先に薬物A又は先に薬物Bを投与することを指し、好ましくは、前記抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列番号35に示されるものであり、軽鎖アミノ酸配列は、配列番号36に示されるものである、
腫瘍を治療及び/又は予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関する。具体的には、抗CD73抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エクト-5’-ヌクレオチダーゼ(Ecto-5’-nucleotidase)、即ち、CD73タンパク質は、NT5E遺伝子によってコードされるタンパク質分子量70KDの多機能糖タンパク質であり、グリコシルホスファチジルイノシトール(glyocsyl phosphatidy linositol、GPI)によって細胞膜にアンカーされている(Zimmermann H. Biochem J. 1992; 285: 345-365)。
【0003】
CD73はヒト組織細胞の表面に広く分布しており、これまでの研究では、腫瘍微小環境の癌細胞、樹状細胞、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)など、複数種の固形腫瘍でCD73が高発現されることが発見されている。低酸素は、低酸素誘導因子-1(HIF-1)などの分子のアップレギュレーションを誘導し、その結果、腫瘍微小環境におけるCD73の広い発現をもたらす(Synnestvedt K, et al. J Clin Invest. 2002; 110: 993-1002.)。臨床腫瘍サンプルに対する分析によれば、CD73の高発現は、乳腺癌、肺癌、卵巣癌、腎癌、胃癌、頭頸部癌などを含む様々な種類の腫瘍の予後不良に密接に関連する潜在的な生物的マーカーである。
【0004】
CD73は加水分解酵素活性と非加水分解酵素作用の両方を有する。CD73の酵素的及び非酵素的機能は、腫瘍関連プロセスに存在し、互いに促進して腫瘍の進行を維持する。ますます多くの研究からわかるように、CD73はインビトロでは腫瘍細胞の増殖、転移及び浸潤、インビボでは腫瘍血管新生と腫瘍の免疫回避機構を制御する重要な因子であり、そのうち、最も重要な免疫抑制機構の1つはCD73-アデノシン(Adenosine)代謝シグナル伝達経路により媒介され、CD73の上流にあるCD39は、ATPからのアデノシン一リン酸(AMP)の生成を触媒し、生成されたAMPはCD73によってアデノシンに変換され、アデノシンは下流のアデノシン受容体(A2AR)に結合し、A2ARはプロテインキナーゼA(PKA)とCskキナーゼを活性化することで、LCK、MAPK、PKCなどの免疫活性化に関連する一連のシグナル伝達経路を阻害し、T細胞の免疫殺傷作用を阻害することにより、免疫抑制作用を発揮する(Antonioli L, et al. Nat Rev Cancer. 2013; 13: 842-857.)。
【0005】
膜貫通受容体PD-1(プログラム細胞死-1)はCD28遺伝子ファミリーのメンバーの1つであり、活性化されたT細胞、B細胞及び骨髄系細胞で発現している。PD-1のリガンドPDL1(Programmed cell death 1 ligand 1、PDL-1とも略称される)及びPDL2(Programmed cell death 1 ligand 2、PDL-2とも略称される)は何れもB7スーパーファミリーに属し、そのうち、PDL1はT細胞、B細胞及び内皮細胞と上皮細胞を含む多種の細胞に発現されるが、PDL2は樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞にのみ発現される。
【0006】
PD-1/PDL1シグナル伝達経路は、免疫寛容、微生物感染及び腫瘍の免疫回避の調節において重要な役割を果たしている。PD-1は主にT細胞などの免疫細胞に発現されるが、PD-1のリガンドPDL1は主に多くのヒト腫瘍組織で高発現される。PD-1/PDL1シグナル伝達経路を遮断することにより、抑制されたT細胞が活性化され、ひいては癌細胞を攻撃することができる。PD-1/PDL1シグナル伝達経路を遮断することにより、腫瘍抗原特異性T細胞の増殖を促進し、腫瘍細胞を殺傷する作用を発揮し、ひいては局所腫瘍の増殖を抑制できる(Julie R et al., 2012, N Engl J Med. 366: 2455-2465)。また、PDL1を高発現する腫瘍は検出困難な癌を伴う(Hamanishi et al, 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104: 3360-5)。実施が効果的な方法は、抗PD-1抗体を体内に注射してPD-1の発現を制御することである。PD-1経路に対する抗体は、PD-1抗体の幅広い抗腫瘍性の有望さ及び驚くべき薬効のために、非小細胞性肺癌、腎細胞癌、卵巣癌、黒色腫(Homet M. B., Parisi G., et al., 2015, Semin Oncol. 42(3): 466-473)、白血病及び貧血(Held SA, Heine A, et al., 2013, Curr Cancer Drug Targets. 13(7): 768-74)の治療に用いられる多種の腫瘍の突破の進行をもたらすと業界において一般的に考えられている。
【0007】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(cytotoxic T lymphocyte sociated antigen 4、CTLA4とも略称される)は、遺伝子構造、染色体位置、配列の相同性及び遺伝子発現においてCD28分子と非常に密接に関連し、両方とも共刺激分子B7の受容体であり、主に活性化されたT細胞の表面に発現される。CTLA4は、B7と結合することでマウス及びヒトT細胞の活性化を抑制でき、T細胞の活性化において負の調節作用を果たしている。
【0008】
CTLA4抗体(又は抗CTLA4モノクローナル抗体)又はCTLA4リガンドは、CTLA4とその天然リガンドの結合を阻害し、それによってCTLA4のT細胞への負の調節シグナルの伝達を遮断し、様々な抗原に対するT細胞の応答性を増強することができ、この点に関してインビボとインビトロ研究の結果は基本的に一致している。現在、CTLA4モノクローナル抗体は、既に前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、悪性黒色腫などの治療のために臨床試験中又は承認されている(Grosso JF., Jure-Kunkel MN., 2013, Cancer Immun. 13: 5.)。
【0009】
CTLA4及びCTLA4抗体は、T細胞の機能状況に影響を与える重要な因子として、生体の免疫微小環境に介入することで作用する。インビトロ及びインビボ試験において、CTLA4抗体は生体に対するCTLA4の免疫抑制を特異的に解除し、T細胞を活性化し、IL-2の産生を誘導することができ、抗腫瘍及び寄生虫などの疾患の遺伝子治療において広範な応用の将来性がある。CTLA4抗体は疾患に対して特異的な治療効果且つ高い治療効果を発揮し、従来の薬物療法を補完し、遺伝子治療の新たな道を切り開くことができる。
【0010】
ADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)、即ち、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用は、抗体のFab断片がウイルス感染細胞又は腫瘍細胞の抗原エピトープに結合し、そのFc断片はキラー細胞(NK細胞、マクロファージなど)の表面のFc受容体(Fc Receptor、FcR)に結合し、キラー細胞を介在して標的細胞を直接殺傷することを指す。
【0011】
CDC(complement dependent cytotoxicity)、即ち、補体依存性細胞傷害活性は、抗体が細胞膜表面の対応する抗原に特異的に結合することで複合体を形成し、補体系を活性化し、ひいては標的細胞の表面にMACを形成して標的細胞を溶解させることを指す。補体は、様々な細菌やその他の病原体の細胞を溶解させ、病原体の感染を抵抗する生体の重要な防御機構である。
【0012】
Fc受容体は、抗体のFc領域を認識して免疫応答を媒介するために、特定の免疫細胞表面に発現される免疫グロブリンファミリーのタンパク質である。抗体のFab領域が抗原を認識した後、その抗体Fc領域は免疫細胞(例えば、キラー細胞)上のFc受容体に結合し、食作用及びADCCなどの免疫細胞の応答機能を開始させる。Fc受容体が認識する抗体の種類や発現細胞の違いによれば、FcγRIIIaがADCC効果に密接に関係していることが発見されている。FcγRIIIaはADCCを媒介する最も主要な分子である(Hogarth PM, Pietersz GA. 2012, NATURE REVIEWS DRUG DISCOVERY, 11(4): 311-331)。
【0013】
IgGファミリーはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の4つのメンバーを含み、それらの重鎖定常領域の結晶化可能な断片(fragment crystallizable、Fc)領域にアミノ酸の差異が存在するため、FcγRsに対する親和性がそれぞれ異なる。IgG1は、ヒトの体内に最も多く存在するアイソフォームで、モノクローナル抗体薬剤において最も使用されるアイソフォームであり、IgG1は、様々なFcγRsと結合することができ、ADCC及びCDC効果を引き起こせる。抗体におけるADCC及び/又はCDCの存在は、不必要な標的組織の損傷を引き起こし、薬物薬理学に悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究と創造的な努力を重ね、哺乳動物細胞発現系を利用して組換えヒトCD73を抗原として発現させてマウスを免疫し、マウス脾臓細胞と骨髄腫細胞の融合によってハイブリドーマ細胞を得る。発明者らは、多数のサンプルに対するスクリーニングにより、ハイブリドーマ細胞株LT014(寄託番号はCCTCC NO:C2018137である)を得ている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、ハイブリドーマ細胞株LT014は、ヒトCD73に特異的に結合する特異性モノクローナル抗体(19F3と命名する)を分泌することができ、且つ当該モノクローナル抗体はCD73の酵素活性反応を非常に効果的に非基質競合的に阻害し、アデノシンの産生を抑制し、T細胞の活性を促進し、腫瘍増殖を抑制する効果を発揮することができる。
【0016】
更に、本発明者らは、抗ヒトCD73のヒト化抗体(19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)、19F3H2L3及び19F3H2L3(hG1DM)と命名する)を創造的に作製し、また、抗CD73抗体はADCC及びCDC効果を除去するためにアミノ酸の変異を導入し、抗体によって媒介される不必要な毒性効果を回避する。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の抗体と抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の併用は、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体単剤又は抗CD73抗体単剤より優れた腫瘍細胞の増殖を効果的に抑制する薬理学効果を有する。
【0018】
本発明の別の態様は、更に、抗体に関し、そのうち、上記抗CD73抗体は、
配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3、及び配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
好ましくは、IMGTナンバリングシステムによれば、上記抗CD73抗体は、
配列番号15に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR1と、
配列番号16に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR2と、
配列番号17に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるHCDR3と、
配列番号18に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR1と、
配列番号19に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR2と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列、上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、又は上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1個、2個又は3個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるLCDR3と、を含む。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態において、
上記抗体の重鎖可変領域は、
配列番号2、配列番号6又は配列番号10、或いは配列番号2、配列番号6又は配列番号10に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示されるアミノ酸配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなり、且つ
上記抗体の軽鎖可変領域は、
配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14、或いは配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは配列番号4、配列番号8、配列番号12又は配列番号14に示されるアミノ酸配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなる。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2に示され、且つ上記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4に示され、
上記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6に示され、且つ上記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号8に示され、
上記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10に示され、且つ上記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号12に示され、又は
上記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10に示され、且つ上記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号14に示される。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗体の重鎖定常領域はIg gamma-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であり、軽鎖定常領域はIg kappa鎖C領域、ACCESSION:P01834である。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗体の重鎖定常領域はIg gamma-1鎖C領域、ACCESSION:P01857の上で、第234位にロイシンからアラニンへの点変異(L234A)を導入し、第235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)を導入し、軽鎖定常領域はIg kappa鎖C領域、ACCESSION:P01834であり、アミノ酸配列は配列番号22に示される。
【0023】
軽鎖及び重鎖の可変領域が抗原の結合を決定し、各鎖の可変領域は、何れも3つの高可変領域を含み、相補性性決定領域(CDR)と呼ばれる(重鎖(H)のCDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖(L)のCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、それはKabatらによって命名され、Bethesda M.d., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition ,NIH Publication 1991; 1-3: 91-3242を参照されたい)。
【0024】
好ましくは、CDRはIMGTナンバリングシステムによって定義され、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF. Nucleic acids research 2009; 38(suppl_1): D301-D307を参照されたい。
【0025】
当業者に周知される技術的手段により、例えば、VBASE2データベースでIMGT定義に従ってモノクローナル抗体配列のCDR領域のアミノ酸配列を解析した。
【0026】
本発明に係る抗体19F3、19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)、19F3H2L3(hG1DM)は同じCDRを有する。
【0027】
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りである:
HCDR1:GYSFTGYT(配列番号15)、
HCDR2:INPYNAGT(配列番号16)、
HCDR3:ARSEYRYGGDYFDY(配列番号17)、
【0028】
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りである:
LCDR1:QSLLNSSNQKNY(配列番号18)、
LCDR2:FAS(配列番号19)、
LCDR3:QQHYDTPYT(配列番号20)。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗体はモノクローナル抗体である。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗体はヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態において、上記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、Fab/c、相補性性決定領域断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体又は二重特異性抗体から選ばれる。
【0032】
本発明の別の態様は、単離されたポリペプチドに関し、次の各項からなる群より選ばれる。
【0033】
(1)配列番号15、配列番号16及び配列番号17に示される配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は配列番号18、配列番号19、配列番号20に示される配列を更に含む。
【0034】
(2)配列番号18、配列番号19、配列番号20に示される配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は配列番号15、配列番号16及び配列番号17に示される配列を更に含む。
【0035】
(3)配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は、それぞれ、配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む。
【0036】
(4)配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は、それぞれ、配列番号2、配列番号6又は配列番号10に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む。
【0037】
(5)配列番号10に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は、それぞれ、配列番号14に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む。
【0038】
(6)配列番号14に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、そのうち、上記ポリペプチドは抗CD73抗体の一部としてCD73に特異的に結合し、上記抗体は、それぞれ、配列番号10に示される配列、或いは上記配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列、或いは上記配列と比べて1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有するアミノ酸配列を更に対応して含む。
【0039】
本発明の別の態様は、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は上記単離されたポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関する。
【0040】
本発明の更なる態様は、本発明の単離された核酸分子を含むベクターに関する。
【0041】
本発明の更なる態様は、本発明の単離された核酸分子、又は本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0042】
本発明の更なる態様は、抗体及びコンジュゲート部分を含むコンジュゲートに関し、そのうち、上記抗体は本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であり、上記コンジュゲート部分は精製タグ(例えば、Hisタグ)、検出可能な標識であり、好ましくは、上記コンジュゲート部分は放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物質、ポリエチレングリコール又は酵素である。
【0043】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、融合タンパク質又は多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体)に関する。
【0044】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明のコンジュゲート、融合タンパク質又は多重特異性抗体を含むキットに関し、好ましくは、上記キットは第二抗体を更に含み、それは上記抗体を特異的に識別し、任意選択的に、上記第二抗体は、検出可能な標識を更に含み、例えば放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、有色物質又は酵素である。
【0045】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明のコンジュゲート、融合タンパク質又は多重特異性抗体のキットの調製における使用に関し、上記キットはCD73のサンプルにおける存在又はそのレベルの検出に用いられる。
【0046】
本発明の更なる態様は、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明のコンジュゲート、融合タンパク質又は多重特異性抗体を含む医薬組成物に関し、任意選択的に、上記医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体及び/又は賦形剤を更に含む。好ましくは、上記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射での投与に適する形態である。
【0047】
本発明の更なる態様は、腫瘍(例えば固形腫瘍、好ましくは非小細胞肺癌、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、トリプルネガティブ乳癌、卵巣癌、大腸癌(マイクロサテライト安定性(MSS)とミスマッチ修復機能欠陥/マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-high)型を含む)、胃癌(マイクロサテライト安定性(MSS)とミスマッチ修復機能欠陥/マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-high)型を含む)、メラノーマ、頭頸部癌、腎細胞癌又は膵管腺癌を治療及び/又は予防する薬物の調製、又は腫瘍の診断に用いられる薬物の調製における、本発明の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明のコンジュゲート、融合タンパク質又は多重特異性抗体の使用に関する。
【0048】
本発明の更なる態様は、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託しており、寄託番号がCCTCC NO:C2018137であるハイブリドーマ細胞株LT014に関する。
【0049】
本発明の更なる態様は、(1)本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明に記載のコンジュゲート又は本発明に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体、と(2)抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体、と任意選択的に、取扱説明書を含むキットに関する。
【0050】
本発明の更なる態様は、患者に治療有効量の薬物Aと治療有効量の薬物Bを投与する腫瘍を治療及び/又は予防する方法に関し、そのうち、薬物Aは、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、本発明に記載のコンジュゲート又は本発明に記載の融合タンパク質又は多重特異性抗体を含み、薬物Bは、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体を含み、好ましくは、薬物Aと薬物Bを同時に又は順次に投与し、そのうち、上記順次に投与するのは、先に薬物A又は先に薬物Bを投与することを指す。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態において、上記PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列番号35に示され、軽鎖アミノ酸配列は、配列番号36に示される。
【0052】
本発明において、特に言及しない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。また、本明細書で用いられる細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学的実験室操作手順は当技術分野で広く使用されている通常手順である。同時に、本発明をより良く理解するために、以下に関連用語の定義及び説明を提供する。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語EC50は、最大効果の50%をもたらすことができる濃度を指す、半最大効果濃度(concentration for 50% of maximal effect)を指す。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、一般に2つの対のポリペプチド鎖(各対が1つの「軽」(L)鎖及び1つの「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類することができる。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεに分けられ、且つ抗体のアイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義される。軽鎖と重鎖では、可変領域と定常領域は、約12個又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域を通じて連結され、重鎖はまた約3個又はそれ以上のアミノ酸の「D」領域を更に含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織又は因子(免疫系の各細胞(例えば、エフェクター細胞)と古典的補体系の第一成分(C1q)を含む)への結合を媒介することができる。VH及びVL領域は、更に、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、高可変性を有する領域(相補性性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分することもできる。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ基端末からカルボキシル基端末まで配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、それぞれ抗原結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, M. d. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 1987; 196: 901-917; Chothia et al. Nature 1989; 342: 878-883又はIMGTナンバリングシステムに従って定義され、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. “IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.” Nucleic acids research 2009; 38 (suppl_1): D301-D307.の定義を参照する。用語「抗体」は、抗体を産生する任意の特定の方法によって限定されない。例えば、これには、特に、組換え抗体、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体であってもよく、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソフォーム)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体である。
【0055】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」又は類する用語は、相同性の高い一連の抗体分子のうちの1つの抗体又は抗体の1つの断片に由来するものを指し、即ち、自発的に出現する自然変異を除いて、完全に同じである一連の抗体分子である。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対する高い特異性を有する。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体と比較して、一般的には、抗原上の異なるエピトープを一般的に認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は、一般に、最初にKohlerらによって発表されたハイブリドーマ技術(Kohler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity[J]. nature, 1975; 256(5517): 495)を用いて得ることができ、組換えDNA技術(例えば、U.S.Patent 4,816,567を参照する)を用いて得ることもできる。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDR領域の全て又は一部が、非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域で置換された後に得られる抗体又は抗体断片を指し、そのうち、ドナー抗体は、所望の特異性、親和性又は反応性を有する非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット又はウサギ)であり得る。更に、レセプター抗体のフレームワーク領域(FR)の幾つかのアミノ酸残基はまた、抗体の性能を更に改良又は最適化するために、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基又は他の抗体のアミノ酸残基と置換され得る。ヒト化抗体の更なる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 1986; 321:522-525; Reichmann et al., Nature 1988; 332:323-329; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2:593-596;和Clark M. Antibody humanization: a case of the ‘Emperor’s new clothes’?[J]. Immunol. Today, 2000; 21(8): 397-402を参照することができる。
【0057】
本明細書で使用されるように、「単離する」又は「単離される」という用語は、天然の状態から手作業で得られることを指す。特定の「単離」物質又は成分が自然界に存在する場合、それが存在する自然環境が変化したか、又は自然環境から物質が単離されたか、又はその両方である可能性がある。例えば、天然に存在する単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドは、動物の生体内で天然に存在し、そのような天然の状態から単離された、同じポリヌクレオチド又はポリペプチドの高純度のものは、単離と呼ばれる。用語「単離する」又は「単離される」は、人工物質又は合成物質の混合物を排除するものではなく、また、物質の活性に影響を及ぼしない他の不純物の存在を排除するものでもない。
【0058】
本明細書で使用されるように、用語「ベクター(vector)」は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸ビークルを指す。ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入され、それが保持する遺伝物質エレメントを宿主細胞において発現させることができる。ベクターは当業者に周知であり、限定されるものではないが、プラスミド、ファージミド、コックスプラスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、バクテリオファージ、例えばラムダファージ又はM13ファージ、及び動物ウイルスなどが挙げられる。ベクターとして有用な動物ウイルスには、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パピローマバキュロウイルス(SV40など)が含まれるが、これらに限定されない。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子を含むが、これらに限定されず、複数の発現制御エレメントを含み得る。また、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「宿主細胞」は、ベクターの導入に有用な細胞を指し、大腸菌又は枯草菌などの原核細胞、酵母細胞又はアスペルギルスなどの真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞又はSf9などの昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、GS細胞、BHK細胞、HEK 293細胞又はヒト細胞などの動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「特異的結合」は、2つの分子間の非ランダム結合反応、例えば、抗体と、それが向けられる抗原との間の反応を指す。ある実施形態において、抗原に特異的に結合する抗体(又は抗原に対して特異性を有する抗体)とは、抗体が約10-5 M未満、例えば、約10-6 M未満、約10-7 M未満、約10-8 M未満、約10-9 M未満、約10-10 M未満又はそれ以下の親和性(KD)で当該抗原に結合することを指す。
【0061】
本明細書で使用されるように、用語「KD」は、抗体と抗原との間の結合親和性を記述するために使用される、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原結合がより密であり、抗体と抗原との間の親和性がより高い。一般に、抗体は、約10-5 M未満、例えば、約10-6 M未満、約10-7 M未満、約10-8 M未満、約10-9 M未満、約10-10 M未満又はそれ以下の解離平衡定数(KD)で抗原(例えば、PD-1タンパク質)に結合する。当業者に知られている種々の方法でKDを測定し、例えば、Fortebio分子相互作用装置を用いて測定する。
【0062】
本明細書で使用されるように、用語「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体」は、同じ意味を有し、交換可能に使用され、用語「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体」は、同じ意味を有し、交換可能に使用され、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同じ意味を有し、交換可能に使用される。また、本発明において、アミノ酸は、当該技術分野において周知の略号、略号の単語で通常表される。例えば、アラニンはA又はAlaで表すことができる。
【0063】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容され得る担体及び/又は賦形剤」とは、薬理学及び/又は生理学的に対象及び活性成分に適合する担体及び/又は賦形剤を指し、これは当分野で周知される事項であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照する)、且つpH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤を含み、但しそれらに限定されない。例えば、pH調整剤は、リン酸塩緩衝液を含むが、これに限定されず、界面活性剤は、Tween-80などのカチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されず、イオン強度増強剤は、塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0064】
本明細書で使用されるように、用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに、又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍)を予防する有効量とは、疾患(例えば、腫瘍)の発生を予防、阻止又は遅延するのに十分な量を指し、疾患を治療する有効量とは、疾患を有している患者の疾患及びその合併症を治癒し又は少なくとも一部阻止するのに十分な量を指す。
【発明の効果】
【0065】
本発明のモノクローナル抗体は、CD73によく特異的に結合することができ、且つCD73の酵素活性反応を非常に効果的に非基質競合的に阻害し、アデノシンの産生を抑制し、T細胞の活性と腫瘍増殖を抑制する効果を促進することができる。同時に、本発明の抗体と抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の併用は、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体単剤又は抗CD73抗体単剤より優れた腫瘍細胞の増殖を効果的に抑制する薬理学効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】19F3H2L3(hG1DM)とC1qとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図2】MEDI9447とC1qとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図3】IgG1野生型抗体とC1qとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図4】19F3H2L3(hG1DM)とFcγRIIIaとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図5】MEDI9447とFcγRIIIaとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図6】IgG1野生型抗体とFcγRIIIaとの結合の動態親和性データフィッティング曲線である。
【
図7】群分け後の23日目の各群のマウスの腫瘍重量である。**P<0.01。
【
図8】Day 0と比べて、実験中の各群の動物の体重変化率である。
【
図9】抗CD73抗体はCD73の酵素活性を効果的に抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。当業者であれば、以下の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないと理解すべきである。実施例で具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野の文献に記載された技術又は条件に従って(例えば、Sambrook J, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する)、又は製品の説明書に従って行われる。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されていない場合、市販されている一般的な製品であってもよい。
【0068】
本発明の下記実施例で使用するBALB/cマウスは、広東医学実験動物センターより購入される。
【0069】
本発明の下記実施例において、使用する陽性対照抗体MEDI9447(Oleclumab)は、中山康方生物医薬有限公司から生産され、その配列は、Medlmmune LimitedがWHOウェブサイトで公開して記載されたInternational Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances (INN)に記載する抗体配列と同じである(World Health Organization (2016). “International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances (INN). Proposed INN: List 116” (PDF). WHO Drug Information. 30 (4) , P661-662.)。
【0070】
本発明の下記実施例において、使用する陽性対照抗体野生IgG1対照抗体の重鎖定常領域は、Ig gamma-1 chain C region、ACCESSION: P01857を採用し、軽鎖定常領域は、Ig kappa chain C region、ACCESSION: P01834を採用する。
【0071】
本発明の下記実施例において、使用するC1qは、fizgeraldより購入され、貨物番号がA16050201である。
【0072】
本発明の下記実施例において、使用するFcγRIIIa-bioは、Sino Biologicalより購入され、貨物番号がLC09JA0407である。
【0073】
本発明の下記実施例において、使用するCD73(5′-ヌクレアーゼ)特異性阻害剤APCP(alpha、beta―methylene adenosine-5′-diphosphate、5’-α、β-メチレン-ジリン酸アデノシン)は、sigmaに由来し、貨物番号がM3763-10MGである。
【0074】
本発明の下記実施例において、使用するアイソタイプ対照抗体は、ヒト抗鶏卵リソソーム抗体(human anti-Hen Egg Lysozyme IgG、即ちanti-HEL抗体、又はhuman IgG、hIgGと略称し、又はアイソタイプ対照)であり、その配列は、Aciernoらより発表されたAffinity maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodiesにおけるFab F10.6.6配列の可変領域配列(Aciernoら. J Mol Biol. 2007; 374(1): 130-146.)に由来する。
【実施例】
【0075】
実施例1:抗CD73抗体19F3の調製
1、ハイブリドーマ細胞株LT014の調製
抗CD73抗体が使用する抗原は、ヒトNT5E-His(NT5EがGenbankID:NP_002517.1、位置:1-552、中山康方生物医薬有限公司で調製される)。免疫後のマウスの脾細胞を取ってマウスの骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を作製する。ヒトNT5E(NT5EがGenbankID:NP_002517.1、位置:1-552)-Biotin(NT5E-Biotin、中山康方生物医薬有限公司で調製される)を抗原とし、ハイブリドーマ細胞を間接ELISA法でスクリーニングし、CD73に特異的に結合する抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞を取得する。スクリーニングして取得したハイブリドーマ細胞に対し、有限希釈法で安定したハイブリドーマ細胞株を取得した。以上のハイブリドーマ細胞株をハイブリドーマ細胞株LT014と命名し、それが分泌したモノクローナル抗体を19F3と命名する。
ハイブリドーマ細胞株LT014(CD73-19F3とも称する)であって、2018年6月21日より中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC NO: C2018137であり、寄託住所が中国武漢・武漢大学であり、郵便番号が430072である。
【0076】
2、抗CD73抗体19F3の調製
CD培地(Chemical Defined Medium)で作製された上記LT014細胞株をそれぞれ培養する(CD培地は、1%のペニシリン・ストレプトマイシンを含み、5%のCO2で、37℃でセルインキュベーターに培養する)。7日後、細胞培養上清を回収し、高速遠心で、微多孔膜により真空を引いて濾過し、HiTrap protein A HPカラムでの精製を経て、抗体19F3を取得する。
【0077】
実施例2:抗CD73の抗体19F3の配列分析
培養細胞/細菌総RNA抽出キット(Tiangen、貨物番号:DP430)の方法により、実施例1に培養されたLT014細胞株からmRNAを抽出する。
Invitrogen SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット説明書により、cDNAを合成し、PCR増幅を行う。
PCR増幅産物に対して直接TAクローニングを行い、具体的な操作は、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)キット説明書を参照して行われる。
TAクローニングの産物に対して直接配列決定を行い、抗CD73の抗体19F3の配列分析の配列決定結果は、以下のようである。
重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号1に示すように、長さが363bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号2に示すように、長さが121aaである。
そのうち、重鎖CDR1の配列は、配列番号15に示すように、重鎖CDR2の配列は、配列番号16に示すように、重鎖CDR3の配列は、配列番号17に示すようである。
軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号3に示すように、長さが339bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号4に示すように、長さが113aaである。
そのうち、軽鎖CDR1の配列は、配列番号18に示すように、軽鎖CDR2の配列は、配列番号19に示すように、軽鎖CDR3の配列は、配列番号20に示すようである。
【0078】
実施例3:抗ヒトCD73のヒト化抗体の軽鎖と重鎖の設計と調製
ヒトCD73タンパク質の3次元結晶構造(Hage T, Reinemer P, Sebald W. Crystals of a 1:1 complex between human interleukin-4 and the extracellular domain of its receptor alpha chain. Eur J Biochem. 1998; 258(2):831-6.)及び実施例2で取得した抗体19F3の配列により、コンピュータによる抗体モデルをシミュレーションし、モデルに基づいて変異を設計し、19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)、19F3H2L3(hG1DM)の可変領域配列を取得する。
上記ヒト化抗体の設計した可変領域配列は、以下のようである。
【0079】
(1)ヒト化モノクローナル抗体19F3H1L1(hG1DM)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域配列
重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号5に示すように、長さが363bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号6に示すように、長さが121aaであり、そのうち、重鎖CDR1の配列は、配列番号15に示すように、重鎖CDR2の配列は、配列番号16に示すように、重鎖CDR3の配列は、配列番号17に示すようである。
軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号7に示すように、長さが339bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号8に示すように、長さが113aaであり、そのうち、軽鎖CDR1の配列は、配列番号18に示すように、軽鎖CDR2の配列は、配列番号19に示すように、軽鎖CDR3の配列は、配列番号20に示すようである。
【0080】
(2)ヒト化モノクローナル抗体19F3H2L2(hG1DM)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域配列
重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号9に示すように、長さが363bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号10に示すように、長さが121aaであり、そのうち、重鎖CDR1の配列は、配列番号15に示すように、重鎖CDR2の配列は、配列番号16に示すように、重鎖CDR3の配列は、配列番号17に示すようである。
軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号11に示すように、長さが339bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号12に示すように、長さが113aaであり、そのうち、軽鎖CDR1の配列は、配列番号18に示すように、軽鎖CDR2の配列は、配列番号19に示すように、軽鎖CDR3の配列は、配列番号20に示すようである。
【0081】
(3)ヒト化モノクローナル抗体19F3H2L3(hG1DM)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域配列
重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号9に示すように、長さが363bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号10に示すように、長さが121aaであり、そのうち、重鎖CDR1の配列は、配列番号15に示すように、重鎖CDR2の配列は、配列番号16に示すように、重鎖CDR3の配列は、配列番号17に示すようである。
軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号13に示すように、長さが339bpである。
それがコードするアミノ酸配列は、配列番号14に示すように、長さが113aaであり、そのうち、軽鎖CDR1の配列は、配列番号18に示すように、軽鎖CDR2の配列は、配列番号19に示すように、軽鎖CDR3の配列は、配列番号20に示すようである。
【0082】
3、ヒト化19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)と19F3H2L3 (hG1DM)の調製
19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)と19F3H2L3(hG1DM)の抗体の軽鎖定常領域は、Ig kappa鎖C領域で、ACCESSIONがP01834である。
重鎖定常領域は、Ig gamma-1 chain C region、ACCESSION: P01857の上で、第234位にロイシンからアラニンへの点変異(L234A)を導入し、第235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)(配列番号21)を導入し、19F3H1L1(hG1DM)、19F3H2L2(hG1DM)と19F3H2L3(hG1DM)と命名するヒト化抗体を取得した。
19F3H1L1(hG1DM)重鎖cDNAと軽鎖cDNA、19F3H2L2(hG1DM)重鎖cDNAと軽鎖cDNA、及び19F3H2L3(hG1DM)の重鎖cDNAと軽鎖cDNAをそれぞれpUC57simple(ジェンスクリプト社が提供)ベクターにクローニングし、それぞれpUC57simple-19F3H1(hG1DM)、pUC57simple-19F3L1、pUC57simple-19F3H2(hG1DM)、pUC57simple-19F3L2とpUC57simple-19F3L3を取得した。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed」で紹介された標準的な技術を参照し、EcoRI&HindIIIで合成した重鎖、軽鎖全長遺伝子を消化し、制限酵素(EcoRI&HindIII)の消化で発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、発現プラスミドpcDNA3.1-19F3H1(hG1DM)、pcDNA3.1-19F3L1、pcDNA3.1-19F3H2(hG1DM)、pcDNA3.1-19F3L2とpcDNA3.1-19F3L3を取得し、更に組換え発現プラスミドの重鎖/軽鎖遺伝子に対して配列決定分析を行う。続いて、対応する軽鎖、重鎖が含まれる組換えプラスミドに対して遺伝子組合せpcDNA3.1-19F3H1(hG1DM)/pcDNA3.1-19F3L1、pcDNA3.1-19F3H2(hG1DM)/ pcDNA3.1-19F3L2とpcDNA3.1-19F3H2(hG1DM)/pcDNA3.1-19F3L3を設計し、それぞれ293F細胞にコトランスフェクションした後、培養液を回収して精製した。正しい配列決定と検証した後、内毒素が含まれない発現プラスミドを調製してプラスミドをHEK293細胞に一過性コトランスフェクションして抗体を発現し、7日培養後、細胞培養液を回収し、Protein Aカラムを採用して親和性精製を行うことにより、ヒト化抗体を取得した。
【0083】
実施例4:抗CD73抗体とC1q及びFcγRIIIaの動態親和性測定
(1)抗CD73抗体とC1qの動態親和性測定
サンプル希釈緩衝液がPBS、0.02%Tween-20、0.1%BSA、pH7.4である。50μg/mLの抗体をFAB2Gセンサに固定し、固定高さが約2.0nmであり、センサを緩衝液に60s平衡化し、センサに固定された抗体は抗原C1qに結合し、抗原濃度が0.63~10nM(2倍勾配希釈)であり、時間が60sであり、抗原抗体は緩衝液で解離し、時間が60sである。センサは、10mMグリシンを使用し、pH1.7で再生し、時間が5sであり、4回繰り返した。試料板振動速度が1000rpmであり、検出温度が30度であり、検出周波数が0.6Hzである。データを1:1モデルでフィッティングして分析し、親和性定数を取得した。データ収集ソフトウェアが、Fortebio Data Acqμisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアが、Fortebio Data Analysis 7.0である。
結果は、表1と
図1-~3に示すように、19F3H2L3(hG1DM)とMEDI9447haは、いずれもC1qと結合活性がない。
【0084】
【0085】
(2)抗CD73抗体とFcγRIIIaの動態親和性測定
サンプル希釈緩衝液がPBS、0.02%Tween-20、0.1%BSA、pH7.4である。0.5μg/mLのFcγRIIIa(Sino Biologicalに由来する)をSAセンサに固定し、時間が120sであり、センサを緩衝液で60s平衡化し、センサに固定されたCD16aは各抗体に結合し、抗体濃度が31.3~500nM(2倍勾配希釈)であり、時間が60sであり、抗体抗原は、緩衝液で解離し、時間が60sである。センサは、10mM NaOHで再生する。検出温度が30℃であり、周波数が0.6Hzである。データを1:1モデルでフィッティングして分析し、親和性定数を取得した。
結果は、表2と
図4~6に示すように、19F3H2L3(hG1DM)はFcγRIIIaに結合しないが、MEDI9447はFcγRIIIaと結合活性を有する。
【0086】
【0087】
実施例5:抗CD73抗体と抗CTLA-4/PD-1二重特異性抗体の併用による腫瘍細胞の成長への有効的な遮断
本実験は、抗CD73抗体、即ち19F3H2L3(hG1DM)は、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体BiAb004(hG1TM)(その重鎖アミノ酸配列は、配列番号35に示すように、軽鎖アミノ酸配列は、配列番号36に示すように、軽鎖及び重鎖CDRアミノ酸配列は、配列番号23~配列番号34に示すように)と併用して腫瘍成長を抑制する薬理学的活性を考察した。
結果は、
図7に示すように、抗CD73抗体と抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体の併用は、抗CD73抗体単剤、抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体単剤と比べると、より優れた腫瘍への抑制作用を示し、且つマウスの体重に有意な影響がない(
図8)。
【0088】
【0089】
マウス結腸癌細胞MC38-hPDL1/hCD73(江蘇集萃薬康生物科技股フン有限公司が提供)を蘇生し、蘇生世代がPn+3世代である。対数成長期のMC38-hPDL1/hCD73細胞を回収し、培養液を除去してPBSで二回洗浄した後、C57BL/6-hPD1/hPDL1/hCD73マウス(江蘇集萃薬康生物科技股フン有限公司が提供)(腫瘤前、腫瘤後、MC38-hPDL1/hCD73細胞の生存率がそれぞれ99.1%及び96.4%である)に接種し、接種量が2*106/100μL/匹であり、接種位置がマウスの右前足である。接種後5日目、平均の腫瘍体積は86.02mm3に達する際、32匹のマウスは、腫瘍体積によってランダムに4つの群に分けられ、群ごとに8匹である。群分け当日をDay0とし、表3によってDay0から投与を開始した。
細胞接種後、毎週、動物の正常な行動に対する腫瘍の影響を定期的に監視する。投与日期がDay0、Day3、Day7、Day10、Day14、Day17、Day22である。Day0、Day3、Day6、Day10、Day13、Day17、Day20、Day23に、腫瘍の大きさを観測してマウスの体重を秤量する。Day23実験終了後、各群の動物の腫瘍組織を掘り取って秤量する。マウスの体重の変化率、腫瘍の重量等の実験結果は平均値±標準誤差(Mean±SEM)で表示する。独立サンプルTを採用し、異なる治療群が対照群と比べると有意差があるかどうかを検証し、P < 0.05は、有意差があると考えられる。データは、Graphpad又はExcelでプロットする。
【0090】
実施例6:抗CD73抗体による細胞内在性発現を抑制するCD73酵素活性の検出
実験ステップは、以下のようである。状態が良好な対数期MDA-MB-231細胞(ATCC、HTB-26に由来する)、血清がないRPMI-1640培養液を取って細胞を再懸濁し、カウントした。MDA-MB-231細胞を96ウェルプレート(3*10
4個の細胞/100μL/ウェル)に接種した。血清がないRPMI-1640培養液で抗体を希釈し、開始濃度が200μg/mLであり、2.5倍で勾配希釈し、抗体を96ウェルプレートに添加し、ウェルごとに50μLであり、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、ウェルごとに50μLのRPMI-1640で希釈された600μMのAMPを添加し、3時間後、細胞培養液上清を25μL取り、新しい96ウェルプレートに移動し、ウェルごとに25μLの100μMのATPと50μLのCTG(CellTiter-Glo(登録商標) One Solution Assay、promega、Cat: G8461)発色液を添加し、発色させ、マルチラベルマイクロウェルプレート検出器(PerkinElmer、貨物番号: 2140-0020)でデータを読み取った。アイソタイプ対照抗体及びCD73特異性阻害剤APCPをそれぞれ陰性対照及び陽性対照とした。
実験結果は、
図9に示すように、19F3、19F3H2L3(hG1DM)、19F3H2L3(hG1DM)と19F3H2L3(hG1DM)は、MDA-MB-231で内在性発現のCD73酵素がAMPをアデノシンAに触媒する活性を用量依存的に抑制することにより、平均蛍光強度RLUの生産を用量依存的に減少した。
以上の実験結果は、添加したAMPがCD73抗体による処理がない場合、細胞の表面にMDA-MB-231内在性発現するCD73酵素に触媒され、アデノシンに変換し、ルシフェリン酵素活性に対する抑制を解除する。しかし、抗体を添加した後、CD73が抗体で結合されたため、その酵素触媒活性を減少し、AMPをアデノシンに変換できない。抗CD73抗体は、非基質競争方式でCD73の酵素活性反応を効果的に抑制し、アデノシンの産生を減少することを示唆した。
【配列表】
【国際調査報告】