(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】照射装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/02 20060101AFI20231030BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20231030BHJP
G21K 5/10 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G21K5/02 X
G01N23/046
G21K5/10 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549954
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 US2021056177
(87)【国際公開番号】W WO2022087357
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523152525
【氏名又は名称】シンタコール・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCINTACOR LIMITED
【住所又は居所原語表記】125 Cowley Road,Cambridge Commercial Park,Cambridge Cambridgeshire CB4 0DL Great Britain
(71)【出願人】
【識別番号】523152536
【氏名又は名称】プレシジョン・エックス-レイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PRECISION X-RAY,INC.
【住所又は居所原語表記】15 Commerce Drive,Unit 1,North Branford,Connecticut 06471 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ラヴィオラ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・フレデリック・ブラード
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA07
2G001HA14
2G001JA02
2G001JA08
2G001SA13
(57)【要約】
照射装置は、電離放射線を出力するように構成されている複数の電離放射線源点122を備える。複数の電離放射線源点122は、照射ボリューム140の周囲に分散されたアレイである。電離放射線源点122のアレイは、電離放射線を照射ボリューム140の内側に向けるように構成されている。搬送装置130は、照射ボリューム140内で照射される少なくとも1つのサンプル138を支持するように構成されている。搬送装置130は、照射ボリューム140内にある第1回転軸131の周りを回転するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射装置であって、
遮蔽されたハウジングと;
電離放射線を出力するように構成されている複数の電離放射線源点であって、前記複数の電離放射線源点は、照射ボリュームの周囲に分布するアレイであり、前記電離放射線源点の前記アレイは、電離放射線を当該照射ボリュームの内側に向けるように構成されている、複数の電離放射線源点と;
前記照射ボリューム内で照射される少なくとも1つのサンプルを支持するように構成されている搬送装置であって、前記照射ボリューム内にある第1回転軸の周りを回転するように構成されている搬送装置と、
を備える照射装置。
【請求項2】
前記電離放射線源点のアレイは、前記電離放射線源点のリングを含む、請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記電離放射線源点のアレイが前記電離放射線源点の複数のリングを備え、前記リングが前記複数のリングを通過する長手方向軸に沿ってオフセットされている、請求項1または2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記電離放射線源点のアレイが直線アレイを備える、請求項1に記載の照射装置。
【請求項5】
合計N個の前記電離放射線源点を備え、照射サイクル中に最大N個の電離放射線源点を同時に活性化するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項6】
照射サイクル中、前記複数の電離放射線源点のそれぞれの動作パラメータを独立して制御するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項7】
電離放射線源点の前記動作パラメータが、
前記電離放射線源点の活性化状態と;
前記電離放射線源点の動作電流および/または動作電圧と;
前記電離放射線源点のビーム制御デバイスのパラメータと
の少なくとも1つである、請求項6に記載の照射装置。
【請求項8】
前記複数の電離放射線源点が、複数の個別の電離放射線源;複数の電離放射線源点を有する電離放射線源のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項9】
前記搬送装置が、前記照射ボリューム内にある前記第1回転軸の周りを回転するように構成されているターンテーブルを備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項10】
前記搬送装置は、それぞれが回転の第2軸を有する複数のサンプルホルダーを備え、前記搬送装置は、前記サンプルホルダーをそれぞれの第2軸の周りでも回転させるように構成されている、請求項9に記載の照射装置。
【請求項11】
検出器のアレイを備え、前記放射線源点のうちの少なくとも1つおよび前記検出器のアレイを使用して前記照射ボリュームを画像化するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項12】
前記検出器のアレイが軸方向に延在し、前記照射装置が前記照射ボリュームの軸方向次元を画像化するように構成されている、請求項11に記載の照射装置。
【請求項13】
前記照射装置は、前記検出器のアレイと前記搬送装置との間で軸方向の相対移動を与えて、前記照射ボリュームの軸方向次元を画像化するように構成されている、請求項11または12に記載の照射装置。
【請求項14】
前記検出器のアレイは静止したままでありながら、前記搬送装置を軸方向に移動させること;前記搬送装置の軸方向位置を一定に保ちながら、前記検出器のアレイを軸方向に移動させること、のいずれかによって相対移動を与えるように構成されている、請求項13に記載の照射装置。
【請求項15】
第1放射線源点を活性化させて画像化のための放射線ビームを放射すること;
前記搬送装置を制御して前記第1回転軸の周りに回転させること;及び
前記検出器のアレイを使用して画像データを取得すること
によって照射ボリュームを画像化するように構成されている、請求項11~14のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項16】
前記搬送装置が前記第1回転軸の周りを1回転するように構成されているときに、画像データを繰り返しまたは連続的に取得するように構成されている、請求項15に記載の照射装置。
【請求項17】
画像データを用いて3次元画像を構築するように構成されている、請求項11~16のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項18】
前記取得された画像データに基づいて前記複数の電離放射線源点を制御するように構成されている、請求項11~17のいずれかに記載の照射装置。
【請求項19】
前記取得された画像データに基づいて、前記照射ボリューム内のサンプルの密度を示すデータを決定するように構成されている、請求項11~18のいずれかに記載の照射装置。
【請求項20】
前記取得された画像データに基づいて、前記照射ボリューム内のサンプルの体積分布および/または空間分布を示すデータを決定するように構成されている、請求項11~19のいずれかに記載の照射装置。
【請求項21】
前記取得された画像データに基づいてサンプルが受けるべき照射の必要な量を決定し、前記必要な量を照射するように前記複数の電離放射線源点を制御する、請求項11~20のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項22】
前記複数の電離放射線源点を制御し、サンプルホルダーおよび/またはサンプル包装の存在を考慮して放射の必要な量を照射するように構成されている、請求項21に記載の照射装置。
【請求項23】
活性化される電離放射線源点の数と;
前記活性化した電離放射線源点のそれぞれの動作電流および/または動作電圧と;
電離放射線源点におけるビーム制御デバイスのパラメータと;
前記照射の合計時間と;
の少なくとも1つを決定するように構成されている、請求項18~22のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項24】
前記電離放射線がX線放射である、請求項1~23のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項25】
照射装置によって少なくとも1つのサンプルを照射する方法であって、
照射ボリュームの周囲に分布する複数の電離放射線源点から電離放射線を出力する工程であって、前記電離放射線源点は電離放射線を照射ボリュームの内側に向ける、工程と;
前記照射ボリューム内で前記少なくとも1つのサンプルを支持し、前記照射ボリューム内にある第1回転軸の周りで前記少なくとも1つのサンプルを回転させる工程と、
を含む、方法。
【請求項26】
合計N個の電離放射線源点があり、前記方法が、最大N個の前記電離放射線源点を選択して照射サイクル中に同時に活性化する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
照射サイクル中に前記複数の電離放射線源点のそれぞれの動作パラメータを独立して制御する工程を含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
電離放射線源点の前記動作パラメータが、
前記電離放射線源点の活性化状態(オン/オフ)と;
前記電離放射線源点の動作電流および/または動作電圧と;
前記電離放射線源点のビーム制御デバイスのパラメータ;
のうちの少なくとも1つである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの前記放射線源点と検出器のアレイとを使用して、前記照射ボリュームの画像データを取得する工程を含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記取得された画像データに基づいて前記複数の電離放射線源点を制御する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線などの電離放射線を使用した物体やバルク材料の処理は、種子、幹細胞、血液、医療機器、タバコ、マリファナ、食品などのさまざまな物体や材料を処理する効果的な方法である。それは動物や昆虫にも使用され得る。照射の有用な効果としては、病原体(ウイルス、細菌、カビなど)または白血球を破壊または分解すること;不要な昆虫や殺虫剤などの化学物質を破壊すること;果物の熟成などの生物学的プロセスを遅らせること、がある。
【0003】
照射装置は、放射線源を有するキャビネットと、固定棚、または、ターンテーブルなどの搬送システムと、を備えることができ、搬送システムは、キャビネット内で照射を必要とする物体を移動させる。ターンテーブルは、放射線源の周囲に物体を回転させることができる。ターンテーブルと中央放射線源を備えた照射デバイスの一例が米国特許第4,029,967号に記載されている。より高容量の照射装置は、照射が必要なバルク材料をトート(tote)で運び、そのトートを放射線源の前を通過させることができる。
【0004】
特定の用途の照射プロセスでは、照射される物体全体にわたる吸収線量の分布の特定の均一性が必要である。用途によって異なるが、物体全体にわたる堆積線量の10%の変動は通常許容される。
【0005】
セシウム137(Cs-137)やコバルト60(Co-60)などの同位体線源が照射に一般的に使用される。これらの同位体は、それぞれ662keVと1.2MeVのエネルギーを持つガンマ光子を放出する。これらの比較的高エネルギーの光子は、食品などの有機材料をよく透過するため、良好な線量分布を容易に達成できる。しかし、それらには望ましくない代替用途があり、重要な放射線遮蔽と安全性を備えた大規模な固定施設が必要である。X線源は照射に使用される。X線源は通常、タングステンフィラメント(カソード)から放出された電子が電圧を使用して金属サンプル(アノード)上で加速される真空密閉管である。同位体線源は単一波長の放射線を放出する。X線源では、アノード材料は電子から受け取ったエネルギーを、非常に低エネルギーのX線光子からアノードとカソードの間に印加される電位まで広がるブレムスストラング放射(制動放射)スペクトルの上にある特性X線輝線として、再放出する。X線源は、この広いブレムスストラングスペクトルの放射線を生成するため、生成される吸収線量の均一性は、同じ最大エネルギーの同位体線源を照射に使用した場合よりも劣る。
【0006】
X線源には、エネルギーが与えられたときにのみ放射線を生成するという利点があるため、放射線セキュリティ上のリスクが少なく、モバイルシステムで使用できる。便利ではあるが、これらのデバイスの電力損失、したがってX線出力は低くなる。X線源のエネルギーは通常は25kV~550kVであり、Cs-137やCo-60よりも低く、これも線量均一性の低下につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術に関連する少なくとも1つの欠点に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
照射装置が提供され、前記照射装置は、
遮蔽されたハウジングと;
電離放射線を出力するように構成されている複数の電離放射線源点であって、前記複数の電離放射線源点は、照射ボリュームの周囲に分布するアレイであり、前記電離放射線源点の前記アレイは、電離放射線を当該照射ボリュームの内側に向けるように構成されている、複数の電離放射線源点と;
前記照射ボリューム内で照射される少なくとも1つのサンプルを支持するように構成されている搬送装置であって、前記照射ボリューム内にある第1回転軸の周りを回転するように構成されている搬送装置と、
を備える。
【0009】
少なくとも1つの例または実施形態の利点は、照射ボリューム内のサンプルに対する放射線の線量がより均一になることである。使用中、サンプルはさまざまな方向から届く放射線にさらされる。複数の放射線源点は、より均一な放射線量を提供することができる。
【0010】
照射ボリュームの周囲に電離放射線源点を配置する利点は、電子の運動エネルギーが放射線に変換されるアノード領域を大幅に拡大できることである。これにより、(必要に応じて)長時間にわたって高いエネルギーレベルを維持することができる。通常、電離放射線源点(X線管のアノードなど)は、電子の運動エネルギーの1%未満を電離放射線に変換し、残りは熱に変換する。不要な熱を放散することは重大な問題である。電離放射線源点を照射ボリュームの周囲に配置すると、不要な熱エネルギーを簡単に放散することもできる。
【0011】
任意に、前記電離放射線源点のアレイは、前記電離放射線源点のリングを含む。この形状は、複数の線源点が搬送装置の回転中心軸の周りに等距離にあるので有利である。リングは、複数の電離放射線源点がリング状の管の周りに分散されたリング状の単一の真空管として実装することができる。あるいは、複数の電離放射線源点は、個々のX線管などの個々の線源によって実装することもできる。放射線源点のアレイの他の可能な形状は、直線(例えば、正方形)アレイである。
【0012】
任意に、前記電離放射線源点のアレイが前記電離放射線源点の複数のリングを備え、前記リングが前記複数のリングを通過する長手方向軸に沿ってオフセットされている。
【0013】
任意に、前記電離放射線源点のアレイが直線アレイを備える。
【0014】
任意に、前記照射装置は、合計N個の前記電離放射線源点を備え、照射サイクル中に最大N個の電離放射線源点を選択的に同時に活性化するように構成されている。
【0015】
任意に、前記照射装置は、照射サイクル中、前記複数の電離放射線源点のそれぞれの動作パラメータを独立して制御するように構成されている。
【0016】
任意に、電離放射線源点の前記動作パラメータが、前記電離放射線源点の活性化状態(すなわち、オン/オフ)と;前記電離放射線源点の動作電流および/または動作電圧と;前記電離放射線源点のビーム制御デバイスのパラメータと、の少なくとも1つである。
【0017】
任意に、前記複数の電離放射線源点が、複数の個別の電離放射線源;複数の電離放射線源点を有する電離放射線源のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
任意に、前記搬送装置が、前記照射ボリューム内にある前記第1回転軸の周りを回転するように構成されているターンテーブルを備える。
【0019】
任意に、前記搬送装置は、それぞれが回転の第2軸を有する複数のサンプルホルダーを備え、前記搬送装置は、前記サンプルホルダーをそれぞれの第2軸の周りでも回転させるように構成されている。
【0020】
任意に、前記照射装置は、検出器のアレイを備え、前記放射線源点のうちの少なくとも1つおよび前記検出器のアレイを使用して前記照射ボリュームを画像化するように構成されている。
【0021】
任意に、前記検出器のアレイが軸方向に延在し、前記照射装置が前記照射ボリュームの軸方向次元を画像化するように構成されている。
【0022】
任意に、前記照射装置は、前記検出器のアレイと前記搬送装置との間で軸方向の相対移動を与えて、前記照射ボリュームの軸方向次元を画像化するように構成されている。
【0023】
任意に、前記照射装置は、前記検出器のアレイは静止したままでありながら、前記搬送装置を軸方向に移動させること;前記搬送装置の軸方向位置を一定に保ちながら、前記検出器のアレイを軸方向に移動させること、のいずれかによって相対移動を与えるように構成されている。
【0024】
任意に、前記照射装置は、第1放射線源点を活性化させて画像化のための放射線ビームを放射すること;
前記搬送装置を制御して前記第1回転軸の周りに回転させること;及び
前記検出器のアレイを使用して画像データを取得すること
によって照射ボリュームを画像化するように構成されている。
【0025】
任意に、前記照射装置は、前記搬送装置が前記第1回転軸の周りを1回転するように構成されているときに、画像データを繰り返しまたは連続的に取得するように構成されている。
【0026】
任意に、前記照射装置は、画像データを用いて3次元画像を構築するように構成されている。
【0027】
任意に、前記照射装置は、前記取得された画像データに基づいて前記複数の電離放射線源点を制御するように構成されている。
【0028】
任意に、前記照射装置は、前記照射ボリューム内のサンプルの密度を示すデータを決定するように構成されている。
【0029】
任意に、前記照射装置は、前記取得された画像データに基づいて、前記照射ボリューム内のサンプルの密度を示すデータを決定するように構成されている。
【0030】
任意に、前記照射装置は、前記取得された画像データに基づいて、前記照射ボリューム内のサンプルの体積分布および/または空間分布を示すデータを決定するように構成されている。
【0031】
任意に、前記照射装置は、前記取得された画像データに基づいてサンプルが受けるべき照射の必要な量を決定し、前記必要な量を照射するように前記複数の電離放射線源点を制御する。
【0032】
任意に、前記照射装置は、前記複数の電離放射線源点を制御し、サンプルホルダーおよび/またはサンプル包装の存在を考慮して放射の必要な量を照射するように構成されている。
【0033】
任意に、前記照射装置は、
活性化される電離放射線源点の数と;
前記活性化した電離放射線源点のそれぞれの動作電流および/または動作電圧と;
電離放射線源点におけるビーム制御デバイスのパラメータと;
前記照射の合計時間と;
の少なくとも1つを決定するように構成されている。
【0034】
任意に、前記照射装置は、前記電離放射線がX線放射である。
【0035】
照射装置によって少なくとも1つのサンプルを照射する方法が提供され、前記方法は:
照射ボリュームの周囲に分布する複数の電離放射線源点から電離放射線を出力する工程であって、前記電離放射線源点は電離放射線を照射ボリュームの内側に向ける、工程と;
前記照射ボリューム内で前記少なくとも1つのサンプルを支持し、前記照射ボリューム内にある第1回転軸の周りで前記少なくとも1つのサンプルを回転させる工程と、
を含む。
【0036】
任意に、合計N個の電離放射線源点があり、前記方法が、最大N個の前記電離放射線源点を選択して照射サイクル中に同時に活性化する工程を含む。
【0037】
任意に、方法は、照射サイクル中に前記複数の電離放射線源点のそれぞれの動作パラメータを独立して制御する工程を含む。
【0038】
任意に、電離放射線源点の前記動作パラメータが、
前記電離放射線源点の動作状態(オン/オフ)と;
前記電離放射線源点の動作電流および/または動作電圧と;
前記電離放射線源点のビーム制御デバイスのパラメータ;
のうちの少なくとも1つである。
【0039】
任意に、前記照射ボリュームの画像データを取得する工程は、少なくとも1つの前記放射線源点と検出器のアレイとを使用する。
【0040】
任意に、前記方法は、前記取得された画像データに基づいて前記複数の電離放射線源点を制御する工程を含む。
【0041】
少なくとも1つの例または実施形態の利点は、サンプル全体(または複数のサンプル全体)にわたって閾値レベルを超える放射線量を提供することである。サンプルの特性は異なり得る。例えば、サンプルは他のサンプルと比較してより高い密度を有する場合があり、またはサンプルの領域はそのサンプルの他の領域と比較してより高い密度を有する場合がある。サンプルの水分含有量により、そのサンプルが吸収する放射線の量が変化し得る。照射装置は、サンプル(またはサンプルの領域)に適用される線量を、エネルギーレベル;照射時間のうちの少なくとも1つによって変え得る。
【0042】
本発明のさらなる態様では、電離放射線源点のリングを含む電離放射線源点のアレイが提供される。この形状は、複数の線源点が搬送装置の回転中心軸の周りに等距離になるように配置され得るので有利である。
【0043】
リングは、リング状の単一の真空管として実装することができる。リングは、連続したリングであってもよいし、リング状の要素を実質的に画定する一対の対向する端部を有する不連続なものであってもよい。複数の電離放射線源点は、リング状の管の周囲に分布していてもよい。あるいは、複数の電離放射線源点は、個々のX線管などの個々の線源によって実装することもできる。放射線源点のアレイの他の可能な形状は、直線(例えば、正方形)アレイである。
【0044】
任意に、前記電離放射線源点のアレイが前記電離放射線源点の複数のリングを備え、前記リングが前記複数のリングを通過する長手方向軸に沿ってオフセットされている。
【0045】
任意に、前記電離放射線源点のアレイが直線アレイを備える。
【0046】
照射装置が提供され、前記照射装置は、合計N個の前記電離放射線源点のアレイを備え、照射サイクル中に最大N個の電離放射線源点を選択的に同時に活性化するように構成され得る。
【0047】
任意に、前記照射装置は、照射サイクル中、前記複数の電離放射線源点のそれぞれの動作パラメータを独立して制御するように構成されている。
【0048】
任意に、電離放射線源点の前記動作パラメータが、前記電離放射線源点の活性化状態(すなわち、オン/オフ)と;前記電離放射線源点の動作電流および/または動作電圧と;前記電離放射線源点のビーム制御デバイスのパラメータと、の少なくとも1つである。
【0049】
任意に、前記複数の電離放射線源点が、複数の個別の電離放射線源;複数の電離放射線源点を有する電離放射線源のうちの少なくとも1つを含む。
本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲を参照して理解することができる。
【0050】
本出願の範囲内で、前述の段落、特許請求の範囲、および/または以下の説明および図面に提示された様々な態様、実施形態、実施例および代替、並びに特にそれらの個々の特徴は、独立して又は任意の組み合わせで取られ得ることが想定される。例えば、一実施形態に関連して記載された特徴は、そのような特徴が互換性のないものでない限り、すべての実施形態に適用可能である。
【0051】
疑義を避けるため、本発明の一態様に関して記載した特徴は、単独で、または1つ以上の他の特徴と適切に組み合わせて、本発明の他の態様に含まれ得ることを理解されたい。
【0052】
次に、本発明の1つ以上の実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、照射装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、照射装置の外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、個々の放射線源を備えた照射装置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、照射装置を使用してサンプルを画像化する例を示す図である。
【
図7】
図7は、サンプルを画像化できる照射装置の側面図を示す。
【
図8】
図8は、反射型X線管の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、透過型X線管の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、X線管からのX線放射のグラフ例を示す図である。
【
図11】
図11は、リング状のX線放射線源の一例の一部を示す図である。
【
図12】
図12は、放射線源点およびビーム制御デバイスを示す図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、単一の真空管の形態のX線管が提供される本発明の実施形態を示す。
【
図14(a)】
図14(a)は、照射装置を動作させる方法を示す。
【
図14(b)】
図14(b)は、包装内のサンプルの取得された画像を概略的に示す。
【
図14(c)】
図14(c)は、照射装置を動作させるさらなる方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1および
図2は、照射装置100の一例を示す。
図1は、照射装置100の断面図を示す。照射装置100は、遮蔽ハウジング110を備える。放射線源120、または複数の放射線源が遮蔽ハウジング110内に配置される。遮蔽ハウジング110は、放射線源120から遮蔽ハウジングの外部への放射線の通過を防止または制限する。この例では、遮蔽ハウジング110は放射線源120の全側面(すなわち、前、後、左、右、上、下)を取り囲んでいる。遮蔽ハウジングの一方の側には、遮蔽ハウジング110の内部へのアクセスを可能にするアクセスドアまたはハッチ112が含まれる。
図1では、遮蔽ハウジング110は装置100の外側ハウジングの一部を形成しているが、装置100の外側ハウジングの内側または外側に配置される別個の構造であってもよい。
【0055】
放射線源120は、X線放射などの電離放射線を放出することができる。以下の説明ではX線放射について説明するが、ガンマ線などの他の種類の電離放射線も発生させることができることが理解されるであろう。
【0056】
放射線源120は、X線放射を出力するように構成された複数の放射線源点122を有する。複数の放射線源点122は、照射ボリューム140の周囲に放射線源点122のアレイを形成する。アレイ内の放射線源点122は分散され、すなわち互いにオフセットされる。間隔は均一であってもよい。
図1では、8つの放射線源点122のそれぞれは、リングの周囲に隣接する放射線源点から45度オフセットされている。他の例では、放射線源点122の間隔は不均一であってもよい。
【0057】
複数の放射線源点122は、X線放射を照射ボリューム140の内側に向けるように構成される。放射線源点122のアレイは中心軸125を有する。
【0058】
搬送装置130は、照射される少なくとも1つのサンプル138を支持するように構成されている。搬送装置130は、照射ボリューム140内に配置され、照射ボリューム140内にある第1回転軸131の周りを回転するように構成される。搬送装置130は、ターンテーブルまたは他の円形支持構造を備えることができる。この例では、放射線源点122のアレイの中心軸125は、ターンテーブルの第1回転軸131と位置合わせされる。搬送装置130は、複数のホルダーまたはキャリア134を備えることができる。ホルダー134のそれぞれは、照射されるサンプル(例えば、物体または一定量の材料)を保持することができる。例えば、各ホルダー134は、血液の入ったバッグまたは照射を必要とする一定量のばらばらの材料を支持することができる。サンプルは、ホルダー134内に直接配置されてもよいし、容器(enclosure)内に収容されてもよい。例えば、ばらばらの材料は、ホルダー134内に置かれたバッグの中に入れられてもよい。各ホルダー134は、照射を必要とするサンプルの重量を支えることができなければならない。各ホルダー134は、炭素繊維またはアルミニウムなど、X線に対する減衰が低い材料から製造することができる。各ホルダー134は、中実または部分的に開いた(例えばケージ)壁を備えたカップ状構造の形態であってもよい。搬送装置130は、ターンテーブルを駆動するモータ(図示せず)を備えている。奇数のサンプルホルダー(例:3、5、7など)は、画像化の目的に有利な場合がある。
【0059】
任意選択で、各ホルダー134は、それ自体の中心軸135の周りを回転することもできる。各ホルダー134の回転は、破線の矢印136によって示される。この動きはダブルプラネタリと呼ばれる。各ホルダー134は、中心軸131の周りのアセンブリ130全体の回転と同時に、それ自身の軸135の周りで方向136に回転する。他の例では、ホルダー134の回転軸は偏心していてもよい。
【0060】
この例では、放射線源点122のアレイは、照射ボリューム140を取り囲むリングの形態である。各放射線源点122は、放射線を照射ボリュームに対して半径方向内側に放射する。この例では、放射線源点122のアレイは8つの放射線源点122を有する。放射線源点の総数は、より少ない数であっても、より多くの数であってもよい。有利には、放射線源点の最小数は3である。源点の数が多いと均一性が向上する。
【0061】
放射線源点122のリング状のアレイを実現する1つの方法は、管の周りの位置に取り付けられたアノードを有するリング状の真空管を備えるX線管によるものである。X線管については、本明細書の後半でさらに詳しく説明する。放射線源点122のそれぞれは、独立して放射線を放出するように制御され、照射サイクルにわたって必要な量(線量)の放射線を照射することができる。
【0062】
真空管の都合のよい形状は、環状(リングまたは「ドーナツ」)の形状の構造である。
図3は、放射線源120および照射ボリューム140の斜視図を示す。放射線源120は、放射線源点122の単一のリング、または放射線源点122のアレイの長手方向軸125に沿ってオフセットされた放射線源点122の複数のリング(ドーナツ)を備えることができる。複数のリングは、複数のセットのアノードを備えたより長い真空管によって、または軸125に沿って配置された複数の真空管によって実現することができる。個々の管は、互いに直接隣り合って配置されてもよいし、軸125に沿って間隔を置いて配置されてもよい。
図3は、3組の放射線源点123A、123B、123Cを示す。他の数の放射線源点のセットを設けることもできる。リングの数が増えると、長手方向軸125に沿った適用範囲が改善される。
【0063】
照射装置100は、検出器のアレイ150も備えることができる。検出器のアレイ150は、照射ボリューム140を画像化(撮像)するために使用することができる。「画像化(imaging)」という用語は、照射ボリューム140内のサンプルの特性に関する情報を取得することを意味する。サンプルの密度などの特性を知ることは有用である。検出器のアレイ150は、X線放射(または放射線源点122によって使用される他の放射線)を検出できる複数の検出器を備える。検出器のアレイ150は、軸131と位置合わせされた中心軸を有する円形アレイとして
図1に示されている。検出器のアレイ150は、搬送装置130の全体または一部のみの周囲に延在してもよい。例えば、検出器のアレイ150は、放射線源点122の1つに対向する領域に設けることができる。検出器のアレイ150は、画像(image)のピクセルを提供する検出器要素またはデバイスのグリッドを備える。検出器要素のグリッド152の一部が
図7に示されている。検出器のアレイ150の出力は読み出し回路に接続されている。
【0064】
照射装置100は、コントローラ160を備える。コントローラ160は、放射線源点122のオンおよびオフの切り替え、放射線源120の出力レベルの制御など、放射線源120の動作を制御する。コントローラ160は、検出器のアレイ150の動作を制御する。コントローラ160は、装置の他の部分と同じメインユニット100内に配置されてもよいし、メインユニットとは別に配置されてもよい。放射線源120は、放射線源120用の少なくとも1つの電源など、これらの図には示されていない他の要素を備えることが理解されよう。
【0065】
図4は、使用中の
図1の放射線源120および照射ボリューム140を示す。この例では、放射線源120は8つの放射線源点122A~122Hを有する。明確にするために、これらのうちの2つの放射線源点122A、122Cだけが放射線を放出するように示されている。照射装置100は、放射線源点122A~122Hのうちの1つから8つまでを同時に活性化させることができる。照射ボリューム140の周囲の複数の異なる位置から放射線を放射することにより、照射ボリュームのより均一な適用範囲およびサンプルのより均一な線量を達成することができる。
【0066】
放射線源点122を実装する別の方法は、別々の(すなわち、個別の)放射線源によるものである。
図5は、照射装置200の別の例を示す。照射装置200は、上述したように、遮蔽ハウジング110、搬送装置130および照射ボリューム140を備える。この例では、放射線源220は、複数の個別の線源が実装する複数の放射線源点222を備える。放射線源は、遮蔽ハウジング110の内面に取り付けたり、遮蔽ハウジング内の構造によって支持したり、あるいは他の方法で取り付けることができる。放射線源222は、異なる形状のアレイに配置することができる。この例では、放射線源222は直線アレイに配置されている。
【0067】
照射装置100、200は、照射ボリュームの画像化を実行することもできる。すなわち、照射装置は、照射ボリューム内のサンプルに関するデータを取得する。これは、照射を必要とする材料の特性(密度など)や放射線源の最適な使用法(線源の数、出力電力、ビーム幅など)を決定するのに役立つ。また、照射ボリューム140内の異物を検出することもできる。
【0068】
X線は直線的に進み、放射線源点122の1つからビームとして現れる。X線は、減衰の程度が異なる材料(非金属材料など)を通過するか、金属などの特定の材料でより強く散乱または吸収される。検出器で受光される放射線の量は、試料の特性(材料の種類、密度など)を示す。
【0069】
図6は、サンプルを画像化するために構成された照射装置の一例を示す。放射線源点122と放射線源点に対向する検出器のアレイの領域は、画像化の目的でペアとして使用される。
図6に示す例では、放射線源点122Aは活性化して画像化のための放射線を放射し、検出器のアレイ150の領域151(太字で示す)は線源点122Aから受け取った放射線を検出するために使用される。領域151は、検出器のアレイ150全体の一部であってもよい。より小さい検出器のアレイを備えた簡略化された装置では、領域151は検出器のアレイ全体であってもよい。
【0070】
複数の線源-検出器のペアを同時に活性化することができる。例えば、第1線源-検出器のペアと第2線源-検出器のペアを同時に活性化することができる。有利には、第1線源-検出器のペアと第2線源-検出器のペアは互いに直交している。
図6では、放射線源点122Aおよび122Cは互いに直交している。
【0071】
1つ以上の放射線源点は、画像化の目的で比較的低い電力レベルで動作する。画像化に使用される放射線レベルは、照射に使用される放射線レベルよりも大幅に低くなる。
【0072】
照射ボリューム内のサンプル138の画像データを取得するには様々な方法がある。画像データを取得する1つの方法は、搬送装置130が軸131を周りに回転するように制御されている間に、単一の線源-検出器ペア(または複数の線源-検出器ペア)を使用することである。有利には、サンプルホルダー134は静止したまま、すなわち、それぞれの軸135の周りで回転しない。これにより、サンプル138は、放射線源点によって発せられるビーム(または複数の放射線源点によって発せられるビーム)の中を移動し、一方、サンプルを通過する放射線は、対応する検出器によって受け取られることになる。単一のサンプル138のみが、線源-検出器のペアの線源点と検出器との間の視線内に位置することが望ましい。サンプルホルダー134の数が奇数(例えば、
図6に示すように3つ)にされる場合、これは、サンプルホルダーが互いにオフセットされることを保証するのに役立つことができる。つまり、サンプルホルダーはターンテーブル上で互いに正反対に配置されなくなる。これにより、ターンテーブルが回転するときに単一のサンプルホルダーを画像化することができる。この構成には、ボリューム140の画像化に必要な検出器のアレイのサイズを最小限に抑えるという利点がある。画像データは、画像化動作中に検出器のアレイから繰り返しまたは連続的に取得される。
【0073】
画像データを取得する別の方法は、搬送装置130が静止したままになるように制御されている間に、線源-検出器のペアのシーケンスを使用することである。シーケンスは次の通りである:
(i)放射線源点122Aを活性化させ、放射線源点122Aの反対側の位置で放射線を検出する;
(ii)放射線源点122Bを活性化させ、放射線源点122Bの反対側の位置で放射線を検出する;そして、複数の放射線源点122C~122Hの周囲で同様に継続する。
【0074】
複数の放射線源点が同時に使用される例では、シーケンスは次の通りである:
(i)放射線源点122Aを活性化させて放射線源点122Aの反対側の位置で放射線を検出し、且つ、放射線源点122Cを活性化させて放射線源点122Cの反対側の位置で放射線を検出する;
(ii)放射線源点122Bを活性化させて放射線源点122Bの反対側の位置で放射線を検出し、且つ、放射線源点122Dを活性化させて放射線源点122Dの反対側の位置で放射線を検出する;
(iii)放射線源点122Eを活性化させて放射線源点122Eの反対側の位置で放射線を検出し、且つ、放射線源点122Gを活性化させて放射線源点122Gの反対側の位置で放射線を検出する;
(iv)放射線源点122Fを活性化させて放射線源点122Fの反対側の位置で放射線を検出し、且つ、放射線源点122Hを活性化させて放射線源点122Hの反対側の位置で放射線を検出する。
【0075】
一連の異なる線源-検出器のペアを使用すると、単一の放射線源が活性化される構成と比較して、より大きな検出器のアレイが必要になることが理解されるであろう。搬送装置130の周囲の複数の異なる位置で放射線を検出する必要があるためである。
【0076】
図7は、放射線源120、検出器のアレイ150および搬送装置130を示す。搬送装置130のサンプルホルダー134内のサンプル138が示される。搬送装置130によって運ばれるサンプル138は、軸125、すなわち軸方向、または
図7に示す垂直方向と平行な方向に延びる。サンプルの全体積を画像化することが望ましい。これはさまざまな方法で実現できる。軸方向の次元に沿ってサンプル138を画像化する1つの可能な方法は、サンプル138を画像化するのに十分な軸方向の距離だけ延びる検出器のアレイ150を提供することである。これには、検出器のアレイ150が、少なくともサンプルと同じ高さの距離だけ軸方向に延びる必要がある。上述したように、検出器のアレイ150は、搬送装置130の全体または一部の周囲に延在してもよい。軸方向の次元に沿ってサンプル138を画像化する別の可能な方法は、検出器のアレイ150と搬送装置130との間の相対移動153を可能にすることである。これにより、検出器のアレイ150の小型化が可能となる。検出器のアレイ150と搬送装置130の相対位置ごとに、検出器のアレイ150は、サンプル138の一部(すなわち、1枚)の画像を取得する。相対移動は、次のうちの1つにより達成できる:(i)検出器のアレイ150を静止させたまま、検出器のアレイ150内で搬送装置130を軸方向に移動させること;(ii)搬送装置が同じ軸方向位置に留まりながら、搬送装置を通過して検出器のアレイ150を軸方向に移動させること。
【0077】
異なる方向からサンプルの画像データのセットを取得することにより、検出器のアレイによって取得された画像データのセットから三次元画像を決定することが可能である。これはコンピュータ断層撮影(CT)と呼ばれる。CTは既知であるため、これ以上説明しない。画像は、例えば、サンプルホルダー134の軸135の周りのサンプル138の回転によって、異なる方向から取得され得る。上述の方法などによる、異なる方向からサンプルの画像を取得する能力により、サンプル内のサンプルの密度の変化に関する情報を取得できることが理解されるべきである。また、決定対象のサンプルの体積分布および空間分布に関する情報も提供する。サンプルホルダー134および/または対象サンプルの包装の相対位置も決定され得る。
【0078】
本発明の実施形態によって利用可能となる体積および空間分布情報を伴う密度の理解の向上は、特定の用途にとって有利である可能性がある。
【0079】
第1に、約300kV未満のエネルギーを有するX線放射線は、高エネルギー源(ガンマ線や高エネルギーX線放射線など)よりも微生物の改善(remediation)に効果的であることが示されている。ただし、これらのより低いエネルギーでは、サンプルによるX線の吸収と散乱がはるかに大きく、したがって放射線は高エネルギーのガンマ線源やX線源ほど均一にサンプルを透過しない。これらの低エネルギーX線の吸収と散乱の増加により、異なる密度、体積、空間分布でサンプルやサンプルの包装に照射される線量は、高エネルギーのガンマ線源やX線源よりも大幅に変化させる。したがって、サンプルへの線量照射を計画する際の注意は非常に重要であり、説明した画像化手順により、サンプルのすべての部分への均一な低エネルギーX線線量照射の計画を比較的迅速に作成することができる。
【0080】
第2に、画像化工程は、サンプルの限られた量が必要以上に線量を受けることなく、サンプルのすべての部分に対して必要な線量に達することを保証することによって、電力(省エネルギー)とスループットの最適化を可能にすることができる。これは線量均一性比の改善とも言える。
【0081】
第三に、肉、果物、香辛料、及び、大麻などの植物作物などの多くの種類の農産物では、照射されるサンプルの周囲に複数の種類の包装材を有している可能性があり、サンプルに適用する線量レベルを決定する際には、これらの包装の変更を考慮する必要がある。したがって、いくつかの実施形態では、包装によるX線放射の吸収量を考慮することができ、包装内のサンプルに対して必要な線量が達成されることを確実にするため、物品(サンプルおよび包装)が受けるX線放射の線量がこれに応じて調整され得る。いくつかの実施形態では、装置100に関連付けられたホルダー134などのサンプルホルダーによるX線放射の吸収量を考慮することができ、ホルダー134内のサンプル138への必要な線量が達成されることを確実にするため、ホルダー134およびサンプル138が受けるX線放射の線量がこれに応じて調整され得る。
【0082】
第4に、所望の最終製品包装中のサンプルのX線照射には、下流での取り扱い中のサンプルの再汚染のリスクの低減が達成され得るため、サンプルの下流での取り扱いが容易になるという利点がある。
【0083】
第5に、滅菌のために本発明の実施形態によるX線照射装置の使用を検討している顧客は、照射野内のサンプルの体積および空間分布だけでなく、密度が大きく異なるサンプルを照射することを望むかもしれない。しかし、顧客は、サンプルに使用するさまざまな包装タイプの密度と空間分布も大きく異なるサンプルを照射することを望むかもしれない。サンプルおよび関連するサンプル包装の3D画像に基づいて、サンプルの周囲のさまざまな照射源によって与えられる線量を決定することで、ユーザーはサンプル密度と空間分布のばらつきと、包装材の組成と厚さなどのサンプル包装の性質との両方を補償することができる。したがって、ユーザーは、画像化結果の分析に基づいて実質的にサンプル全体に所望の線量を与えながら、この装置を使用して、さまざまなタイプの異なるサンプルおよび異なるサンプル包装材料を照射することができる。
【0084】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、画像化工程は、より単純で低コストの装置を可能にする照射工程と同じ照射源を利用することができることを理解されたい。さらに、画像化機能と照射機能を同じ装置で実行できるため、ワークフローとスループットが向上する。
【0085】
上述したように、サンプル自体が受ける放射線の量を考慮する際には、照射されるサンプルを通るビームの経路におけるサンプルホルダーの存在も考慮に入れられることを理解されたい。
【0086】
サンプルの包装により、照射されるサンプル138の周囲に材料の高密度領域と低密度領域が形成され、これらの領域はX線画像化によって検出できることを理解されたい。例えば、サンプルは、複数の密封された容器に包装され得、容器を並べてラックに保持するか、互いの上に積み重ねるか、またはその両方を行うことができる。サンプルの照射に使用されるビームは、各照射源から発される各ビームがラックを通過する際に遭遇する容器の密度と数に基づいて、包装内の材料および包装内に含まれるサンプル内の材料の異なる密度に遭遇するだろう。また、各ビームは、容器の上部にあるプラスチックや金属カバーなどの各容器で使用されている包装材料と、容器の残りに使用されるプラスチック、ガラス、ボール紙等の材料またはその他の材料とが異なるため、各材料の異なる密度にも遭遇するだろう。
【0087】
本発明の実施形態による装置は、必要な線量の放射線をサンプル138に照射するために照射ボリュームが受ける必要な照射量を決定することができる。いくつかの実施形態では、装置は、サンプル138の異なる領域に必要な線量を照射するために、サンプル138が照射ボリューム138内で移動するときに、照射ボリュームが受ける放射線の量を決定することができる。装置は、必要な線量をさまざまな領域に照射するために、それぞれのX線放射線源をそれに応じて制御する。たとえば、サンプルの密度が高い領域ほど、より多くの放射線を受け得る。いくつかの実施形態では、水分による放射線の吸収を補うために、より高い含水量を有するサンプルの領域は、より低い含水量を有する領域よりも高い線量を受けてもよい。同様に、放射線が、1つ以上のコンテナなどの1つ以上のサンプルホルダー、および任意で照射ボリューム内の1つ以上のラックまたは他の構造要素を通過するように方向付けられる場合、装置は、必要な放射線量を決定する際にそのような物品を考慮に入れて、サンプルが移動するとき、特定の瞬間に特定の放射線源によって照射され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、サンプルを、必要な線量が照射されることを確実にするために、断続的に、または時間の関数として変化する速度で移動させてもよい。
【0089】
さらに、場合によっては、ユーザーは、最終包装内のサンプルを密封状態で照射したいと希望することも予想され、照射プロセスが完了した後、容器内のサンプルが最終包装内で完全に除染されたとみなすことができ、消費者がサンプルを配送または購入する前に、サンプルをさらに操作して再汚染の可能性が発生しないようにすることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、照射ボリュームが曝露されるX線放射の量を装置が決定することに加えて、またはその代わりに、装置は、取得された画像データに基づいて、包装および/またはサンプルホルダーによるX線吸収を補い、ユーザーによって入力されたデータに少なくとも部分的に基づいて、照射ボリュームに適用される放射線の量を決定することができる。例えば、ユーザーは、使用されている包装材料のタイプを示す(例えば、材料および厚さを示す)データ、および/または1つ以上のサンプルホルダーの存在もしくは照射ボリューム内の装置100の部分などの他の物品の存在を示すデータなどを入力することができる。装置100は、ユーザーによって入力されたデータと、包装および/またはサンプルホルダーの所定のタイプによって吸収される放射線の量を示すデータなどの保存されたデータとに少なくとも部分的に基づいて、照射ボリュームに適用されるX線放射の量に補正を適用することができる。したがって、装置100は、サンプル包装および/もしくはサンプルホルダーまたは照射ボリューム内の他の物品による吸収もしくは散乱のためにサンプルを照射しないであろう照射ボリュームに適用される放射線の量を、対応する方法で適用される放射線の量を増やすことによって補い得る。
【0091】
図8および
図9は、
図1、
図4、
図5および
図6に示されるX線源点122、222のうちの1つを提供するために使用できる2つのタイプのX線管170、180の例を示す。
【0092】
図8は、側面窓178を通してX線177を放出するX線管170の一例を示す。この窓178は、
図1、4、5、および6に示すX線源点122、222のうちの1つを形成することができる。このタイプのX線管170は、クーリッジ(Coolidge)型X線管または反射型X線管と呼ばれる。X線管170は、カソード171、フィラメント172およびアノード173を有する。電源174がフィラメント172に接続される。フィラメント172は、通常、高融点の金属で作られる。電源174は、フィラメント172の両端に電圧V1を供給するように構成されている。フィラメント172には電流I1が流れる。これは管電流と呼ばれる。電流の流れはフィラメントを加熱し、熱電子放出によってフィラメントに電子176を放出させる。電源175は、カソード171およびアノード173に接続されている。電源175は、アノード173とカソード171との間に電圧V2を供給するように構成されている。電源175は、典型的には20kVを超える高電圧電源である。使用中、電子176は、高電圧V2によりアノード173に向かって加速される。電子がアノード173に衝突すると、制動放射(Bremsstrahlung radiation)が放出される。制動放射は広いスペクトルを有し、熱およびX線光子(X線)177を含む。低エネルギー光子を吸収するために窓178にフィルターを設けることができる。
【0093】
図9は、端部窓188を通してX線187を放射するX線管180の一例を示す。この窓188は、
図1、4、5、および6に示すX線源点122、222のうちの1つを形成することができる。X線管180のタイプは、送信源と呼ばれる。特徴の多くは
図8と同じであり、同じ参照番号が付けられている。この管の動作は
図8と同様であるため、主な相違点のみを説明する。X線管180は、カソード171、フィラメント172およびアノード183を有する。アノード183は、X線管のハウジング189内に端窓を形成するか、またはアノード183をX線管のハウジングの端窓に隣接して配置することができる。低エネルギー光子を吸収するために窓188にフィルターを設けることができる。このタイプのX線管の1つの利点は、アノード183がハウジングの外面の一部またはそれに近くなり、ハウジング189内に含まれないため、熱放散が改善されることである。
【0094】
X線管170、180は、典型的には金属またはガラスで形成されるハウジングまたはチャンバ179、189を備える。ハウジング179、189は排気されている、すなわちハウジングの内部は真空である。ハウジング179、189は、窓178、188を除いて遮蔽される。遮蔽は、放射線の望ましくない放出を低減または防止する。
図8では、窓178が、アノード173と並んでハウジング179の側面に設けられている。
図9では、窓188がハウジング189の端部に設けられており、X線がアノード183からその端部窓を通して放射される。
【0095】
図10は、X線管170、180によって出力される制動放射のグラフを示す。縦軸は強度、または光子の数を表す。横軸は光子当たりのエネルギーを表す。グラフは全体的に湾曲した形状191を有し、特定のエネルギー値で1つ以上のピーク192を含み得る。低い値のエネルギーは、窓のフィルターによって除去される可能性がある。アノード173、183とカソード171の間の電圧V2が増加すると、アノード173、183に衝突する電子176のエネルギーが増加し、より高エネルギーのX線光子の数が増加する。これは、
図10のグラフを広げる効果がある。フィラメント172を横切る電圧V1(すなわち、管電流I1)が増加すると、熱電子放出の割合およびアノードに向かう電子の流れが増加し、アノードで生成されるX線光子の数が増加する。これにより強度(y軸)が増加するが、グラフの全体的な形状は変わらない。
【0096】
サンプルに照射されるX線の総線量は、次の要素によって決まる:放出されるX線光子の数を制御するX線管電流(I1);放出されるX線光子のエネルギーを制御するX線管電圧(V2);放射線が放出される時間、すなわち照射サイクル。
【0097】
照射装置は、複数の放射線源点122を備えた単一のリング状のX線管120(
図1、4、6)、または各X線管がX線源点222を有する複数のX線管(
図5)を備えることができる。複数のX線管の場合、各X線管は
図8または
図9に示すタイプにすることができる。X線管は遮蔽ハウジング内の必要な位置に配置して、放射線源点のアレイを形成できる。単一のリング状のX線管120の場合、単一のリング状の真空ハウジング189が存在する。
図11は、リング状のX線源120の一例の一部を示す。
図8または
図9に示されている特徴(つまり、アノード、フィラメント、カソード、および窓ウィンドウ)がハウジングの周囲の位置に繰り返されている。例えば、8つの線源点122A~122Hを有する
図4のX線源120は、ハウジング189の周囲の8つの位置に
図8または
図9に示される装置の8つのインスタンスを備えた単一のリング状のハウジング189を有することができる。
【0098】
さらなる代替例では、リング状のX線源120は、単一の連続したリング状アノードを有することができる。アノードは高い正の電位に保持することができ、各カソードに印加される電位を制御することにより、カソードを個別にまたは集合的にオンにすることができる。
【0099】
電源は、装置の各インスタンスに電圧V1/電流を供給して、それぞれのX線源点から放出されるX線放射の強度を制御することができる。電源は、装置の各インスタンスに電圧V2を供給して、それぞれのX線源点から放射されるX線放射のエネルギーを制御することができる。各電源は、装置の各インスタンスに印加される電圧を独立して制御できる。
【0100】
単一の電源を提供してV1およびV2を生成することもできるし、別個の電源を提供してV1およびV2のそれぞれを生成することもできることが理解されよう。電源は、放射線源点122のすべてに対してV1および/またはV2を生成することができる。あるいは、放射線源点122のそれぞれに別個の電源を提供することもできる。
【0101】
1つ以上の電源は、カソード、アノードおよびフィラメントに印加される電圧を独立して制御して、各放射線源点122によるX線放射出力を独立して制御することができる。
【0102】
図12は、放射線源点122およびビーム制御デバイスまたはコリメータ126を示す。ビーム制御デバイス126は、開口または口径のサイズを変えるように制御することができる。これにより、放射線源点122によって照射ボリューム140に向けて放射される放射線ビームの形状および/または幅が制御される。ビーム制御デバイス126は、各放射線源点122、222に設けることができる。
【0103】
図13(a)は、完全に単一のリング状のX線管120を示し、その一部が
図11に示されている。
図13(b)は、単一のリング状のX線管120の代替設計を示している。チューブ120は不連続部を有し、チューブ120の対向する近接端部の間に間隙120gが設けられる。そのような設計は、製造が容易であり、および/またはメンテナンスがより便利になり得る。
【0104】
図14(a)は、照射装置の操作方法を示す。ブロック302において、照射装置は、照射ボリューム内のサンプルに関する画像データを取得する。
【0105】
ブロック304において、本方法は、放射線源点の最適な使用を決定する。これを照射計画データと呼ぶ。照射計画データでは、次のパラメータの1つ以上を使用できる:
・総放射線量;
・放射線を照射する割合;
・照射の総継続時間;
・活性化された放射線源点の数(1から最大まで;照射サイクルの継続期間にわたって固定または変化);
・活性化された放射線源点による放射線出力(照射サイクルの継続期間にわたって固定または変化)。放射線出力は、(i)光子あたりのエネルギーを制御するための管電流I1、および(ii)光子あたりのエネルギーを制御するための管電圧V2によって決定される。
・活性化された放射線源点のそれぞれのビーム角度(照射サイクルの継続期間にわたって固定または変化)。上記で説明したように、ビーム角度はコリメータによって制御できる;
・搬送装置の回転数(速度)。例えば中心軸131の周りの搬送装置全体の回転数と、それぞれの軸135の周りのサンプルホルダーの回転数。
【0106】
ブロック306で、方法は、照射計画データを使用してボリュームを照射する。
【0107】
いくつかの実施形態では、この方法は、取得された画像データに基づいてサンプルの包装によって吸収される放射線の量が推定され、照射ボリュームへ適用する照射量を決定する際に吸収量が補償されることを必要とする場合があることを理解されたい。たとえば、この方法には、以下を特定することにより、サンプルの包装によって吸収される放射線の量を推定することが含まれ得る:
(a)放射線がサンプルのどの部分も通過せずに包装のみを通過した領域に対応する照射ボリュームの画像の一部、および
(b)放射線がサンプルやまたは包装を通過せずに検出器によって直接検出された照射ボリュームの画像の一部。
【0108】
したがって、上記で推定したように包装によって吸収される放射線の推定量は、サンプルに所望の線量を達成するためにサンプルおよび包装が受けるべき放射線の量を推定するために、サンプルに提供される所望の線量に加算され得る。いくつかの実施形態では、包装されたサンプルが提供される照射ボリュームに適用される必要な線量を計算する際のユーザーの作業負荷を軽減するために、この方法を自動化できることを理解されたい。
【0109】
図14(b)は、装置100によって取得された画像の概略図であり、サンプル138がサンプル包装138p、この場合はプラスチックフィルム材料で作られたバッグ内に収容されているのが見られる。画像の適切な第1領域R1が示されており、これは主に、サンプル138ではなくサンプル包装138pのみを通過したX線放射によって形成される(例えばサンプル138または装置100の一部による散乱のため、少量の放射が画像に寄与する可能性があることを理解されたい)。画像の適切な第2領域R2も示されており、これは主に、サンプル138またはサンプル包装138pを通過せずにX線源から検出器まで実質的に直接通過したX線放射によって形成される。
【0110】
図14(c)は、照射ボリュームに適用される包装補償された放射線量の計算方法を示す。この方法は、
図14(a)に示す方法のステップ302で実施することができる。
【0111】
ブロック302aでは、装置100によって取得されたサンプル138の画像のうち、包装138pを含みサンプル138を含まない画像である第1領域R1(
図14(b))が特定される。
【0112】
ブロック302bでは、包装138pまたはサンプル138の一部を含まず、むしろ線源から検出器に直接衝突する放射線によって形成される画像の第2領域R2が特定される。
【0113】
ブロック302cでは、包装138pによって吸収される放射線の量を推定するために、第1および第2領域R1、R2のそれぞれの領域において検出器に入射する放射線の量を示す第1および第2領域R1、R2に関する画像データが比較される。
【0114】
ブロック302dでは、包装138pによる放射線の吸収を考慮して、所望のサンプル線量を達成するために照射ボリュームに適用される放射線量の補償値が計算される。
【0115】
サンプルホルダー134(存在する場合)による放射線の吸収も同様に補償できることを理解されたい。これは、以下を特定することにより、サンプルホルダー134およびサンプルの包装(包装が存在する場合)によって吸収される放射線の量を推定することによって達成され得る:
(a)放射線がサンプルのどの部分も通過せずにサンプルホルダーと包装のみを通過した領域に対応する照射ボリュームの画像の一部;
(b)放射線がサンプルホルダー、サンプルまたは包装を通過せずに検出器によって直接検出された照射ボリュームの画像の一部。
【0116】
方法ステップ302a~302dは、画像の第1領域が、放射線がサンプル自体は通過しないがサンプルホルダー134およびサンプル包装を通過した領域または照射ボリュームに対応し、画像の第2領域が、放射線がサンプルホルダー134、サンプル包装、またはサンプル自体を通過することなく検出器によって直接検出された照射ボリュームの領域に対応するように、調整され得る。
【0117】
搬送装置130は、中心軸131の周りで回転可能である。各サンプルホルダーは、それぞれの軸135の周りで回転可能である。回転数(すなわち、単位時間当たりの完全な回転数)は、メインターンテーブルとサンプルホルダーとで異なり得る。通常、サンプルホルダーの回転数は、メインターンテーブルの回転数よりも高くなる。たとえば、サンプルホルダーの回転数は、メインターンテーブルの回転数の整数(2、3、4、…N)倍にすることができる。典型的には、照射サイクル中に搬送装置が少なくとも1回転することになる。
【0118】
照射計画データは、これらのパラメータの1つ以上を使用する場合がある。各パラメータは、照射期間中固定されてもよい。あるいは、照射中に1つ以上のパラメータ値を変更することも可能である。
【0119】
画像データは、サンプルの1つがより高い密度、またはより高い密度の領域を持っているため、より高いエネルギーの放射線を必要とすることを示している可能性がある。例えば、
図6は、サンプル138内のより高密度の領域139を示す。照射計画データは、より高密度のサンプルが放射線源点に最も近い場合に、放射線源点の線量を増加させることができる。たとえば、より密度の高いサンプル(またはサンプルのより密度の高い領域)が源点に近い場合、管電圧(光子あたりのエネルギー)が増加する可能性がある。サンプルの密度が低い場合は、管電圧を下げることができる。サンプル(またはサンプルの領域)に照射される放射線のエネルギーレベルは不均一であるが、単位体積および単位質量あたりに照射される放射線の全体的なエネルギーレベルはより均一になる。
【0120】
画像化中に使用される放射線量は、通常、照射中に使用される放射線量よりも低いか、はるかに低い。放射線量は、SI単位のグレイ(Gy)を使用して測定される。通常、画像化には0.005~0.1Gyの線量が使用される。照射には通常、少なくとも1Gyの線量が使用されるが、用途によっては、少なくとも0.02Gyの線量など、より低い線量を使用することもできる。対照的に、画像化は通常0.005~0.1Gyの範囲にある。
【0121】
次に、動作サイクル全体の概要を説明する。最初に、ホルダー134には、照射を必要とするサンプルが装填される。ホルダー134は、手動で、または自動装填システムによって装填することができる。次に、
図13に示す方法が実行される。すなわち、照射装置は、照射ボリューム内のサンプルに関する画像データを取得する;照射装置は最適な照射計画データを決定する;照射装置は、照射計画データを使用して、照射期間にわたってボリュームを照射する。照射期間の終わりに、ホルダー134は降ろされる。
【0122】
サンプルは動作サイクルごとに異なる場合がある。サンプルの特性が均一である場合、画像化および計画工程(ブロック302、304)を省略することができ、以前の画像化操作からの計画データを使用することができる。特定のサンプルまたは条件に対してパラメータ値の1つ以上のテンプレートを定義することもできる。
【0123】
より単純な例では、照射に検出器のアレイおよび照射ボリュームを画像化する機能が欠けている場合、照射装置は、例えば以下のうちの1つ以上のパラメータである照射サイクルのパラメータを設定するための入力を受信することができる:総放射線量;放射線を照射する割合;照射の合計時間;活性化された放射線源点の数(1から最大まで);活性化された放射線源点のそれぞれの電力;活性化された放射線源点のそれぞれのビーム角度;搬送装置の回転数(速度)。線量は、照射装置のコントローラがその線量を達成するために特定の動作パラメータに変換できる数値として指定することも、エネルギー(kV)や電流(mA)など、より具体的に指定することもできる。
【0124】
照射に検出器のアレイおよび照射ボリュームを画像化する機能が欠けているさらなる例では、照射装置は、次のようなパラメータを選択するための入力を受け取ることができる:照射サイクル中に供給される総放射線量;照射サイクル中の放射線の照射割合;照射の合計時間。照射装置は、入力値に基づいて放射線源点122のアレイの動作パラメータを決定することができる。パラメータは、例えば、ユーザーインターフェース(
図14の508)を介して、または別の装置から受け取った入力によって、処理装置に入力することができる。考えられるパラメータの例は以下のとおりである:アノード-カソード電位差(V2、
図8、9)の値、または電位差にマッピングできる値とすることができる、エネルギー;フィラメントを流れる電流の値とすることができる、電流。
【0125】
図15は、
図1に示されるコントローラ160など、本発明の処理の少なくとも一部を実装することができる処理装置500の例を示す。処理装置500は、
図13の方法を実装することができる。処理装置500は、1つ以上のプロセッサ501を備え、プロセッサ501は、デバイスの動作を制御するための命令を実行するための任意のタイプのプロセッサであり得る。プロセッサ501は、1つ以上のバス506を介してデバイスの他のコンポーネントに接続される。プロセッサ実行可能命令503は、任意のデータ記憶デバイスまたはメモリ502などのコンピュータ可読媒体を使用して提供され得る。プロセッサ実行可能命令503は、説明されている方法の機能を実装するための命令を含む。メモリ502は、不揮発性メモリ、磁気記憶装置または光記憶デバイスなどの任意の適切なタイプのものである。処理装置500は、入力/出力(I/O)インターフェース507を備える。I/Oインターフェース507は、検出器から信号を受け取り、照射装置を制御するための信号を出力することができ、例えば、放射線源点の数、電力、ビーム幅を制御し;搬送システムの動作(静止、1軸の周りの回転、多軸の周りの回転)を制御することができる。処理装置500は、ユーザーインターフェース508に接続する。メモリ502、または別個のメモリは、プロセッサによって使用されるデータを記憶する。これには、画像データ511;照射計画データ512;のうちの1つ以上を含めることができる。
【0126】
線量は用途の種類に応じて変化し得る。放射線量は、SI単位のグレイ(Gy)とグレイ/分(Gy/min)の線量率を使用して測定される。滅菌には通常、高線量または非常に高い線量が必要である(例:血液バッグの場合は15~50Gyの線量;果物、野菜、ナッツ、肉、魚、家禽および動物飼料の場合は400~15,000Gyの線量;大麻バッグ/ボトルの場合は2,500~15,000Gyの線量)。これは高線量率で照射することができ、数時間または数十時間の照射サイクルを必要とする場合がある。他の用途では、より少ない用量が必要になる場合があり、例えば、臨床研究のための細胞の照射には、2~15Gy/分の線量率で0.2~25Gyの線量が必要である。
【0127】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という語、およびその語句の変形例、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」ことを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数、または工程を除外することを意図するものではない(およびは除外しない)。
【0128】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈上別段の必要がない限り、明細書は単数だけでなく複数も考慮しているものとして理解されるべきである。
【0129】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して説明される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。
【国際調査報告】