(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】腫瘍壊死因子-アルファおよびトランスフォーミング増殖因子-ベータの二機能性アンタゴニストならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231030BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231030BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20231030BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231030BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231030BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231030BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231030BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231030BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231030BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231030BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231030BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231030BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20231030BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231030BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231030BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20231030BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20231030BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20231030BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231030BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231030BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231030BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231030BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/46 ZNA
C07K16/24
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P7/00
A61P7/06
A61P43/00 105
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P21/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P9/10
A61P29/00
A61P35/04
A61P19/08
A61P19/10
A61P9/04
A61P3/10
A61P19/02
A61P1/04
A61P31/14
A61P37/02
A61P31/04
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549958
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 US2021056282
(87)【国際公開番号】W WO2022087435
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523151768
【氏名又は名称】ハン,ハック
【氏名又は名称原語表記】HAN,Hq
(71)【出願人】
【識別番号】523151779
【氏名又は名称】シュウ,シャオラン
【氏名又は名称原語表記】ZHOU,Xiaolan
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ハック
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャオラン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明の開示は、TNF-αおよびTGF-βを並行して隔離する能力を高度に有する、少なくとも1つのTNF-α結合性ドメインおよび少なくとも1つのTGF-β結合性ドメインを含む新規の二機能性アンタゴニストポリペプチドを提供する。そのような二機能性ポリペプチドアンタゴニストの医薬組成物、ならびに、その病理発生がTNF-α媒介性NF-KBシグナル伝達経路およびTGF-β媒介性Smad2/3シグナル伝達経路の両方の活性化を伴う様々な複合疾患状態を処置するためのそれらの使用もまた提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む単離された二機能性アンタゴニスト分子であって、TNFシグナル伝達およびTGF-βシグナル伝達を強力な方式において同時に中和する、前記単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項2】
前記第1の抗原結合性分子が、配列番号1~5に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドからなる群から選択されるTNFリガンドに特異的に結合し、および前記第2の抗原結合性分子が、配列番号6~9に記載されるアミノ酸配列を含むTGF-βリガンドからなる群から選択されるTGF-βリガンドに特異的に結合する、請求項1に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項3】
TNF-αリガンドに特異的に結合する前記第1の抗原結合性分子(「TNF-α結合性ポリペプチド」)が、抗TNF-α抗体、抗TNF-α抗体の断片、野生型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン(ECD)、改変型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン、ならびにTNF-αリガンドを標的化するファージディスプレイ由来ポリペプチドからなる群から選択され;ならびにTGF-βリガンドに特異的に結合する前記第2の抗原結合性分子(「TGF-β結合性ポリペプチド」)が、抗TGF-β抗体、抗TGF-β抗体の断片、野生型TGF-β 2型受容体(TGFβRIIAおよびTGFβRIIBを含む)細胞外ドメイン(ECD)、改変型TGFβRIIAおよびTGFβRIIB細胞外ドメイン、ならびにTGF-βリガンドを標的化するファージディスプレイ由来アンタゴニストポリペプチドからなる群から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項4】
前記TNF結合性ポリペプチドが、配列番号1~5に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの群から選択され、および前記TGF-β結合性ポリペプチドが、配列番号6~9に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項5】
前記TNF結合性ポリペプチドが、単離された抗TNF抗体、またはその抗原結合性断片を含み、および前記TGF-β結合性ポリペプチドが、単離された抗TGF-β抗体、またはその抗原結合性断片を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項6】
前記単離された抗TNF抗体またはその抗原結合性断片および単離された抗TGF-β抗体またはその抗原結合性断片が、モノクローナルAb(mAb)、ポリクローナルAb、Ab断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラAb、ミニAbまたはドメインAb(dAb)、二重特異性Ab、二特異性Ab、ヘテロコンジュゲートAb、単鎖Ab(SCA)、単鎖可変領域断片(ScFv)、ヒト化Ab、完全ヒトAb、および要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン(Ig)分子の任意の他の改変された構成からなる群から選択される、請求項5に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項7】
前記単離された抗体またはその抗原結合性断片が、完全ヒト、ヒト化およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項5~6のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項8】
前記TNF結合性ポリペプチドが、配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号14に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号15に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号14に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号15に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号22に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号23に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号22に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号23に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である、請求項5~7のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項9】
前記TGF-β結合性ポリペプチドが、配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である、請求項5~8のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項10】
前記二機能性分子が、配列番号30に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号31に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子;ならびに配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子からなる群から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項11】
前記二機能性分子が、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号35に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;および配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子からなる群から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の単離された二機能性アンタゴニスト分子。
【請求項12】
医薬的に許容される担体と混合された治療有効量の請求項1~11のいずれか1項に記載の二機能性アンタゴニスト分子を含む医薬組成物。
【請求項13】
その病理発生がTNF-α媒介性NF-κBシグナル伝達経路およびTGF-β媒介性Smad2/3シグナル伝達経路の両方の活性化を伴う疾患状態を処置または予防する方法であって、前記対象に治療有効量の請求項12に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記疾患状態が、血液障害、無効赤血球生成、貧血、汎血球減少症、骨髄異形成症候群;線維性疾患:NASH、肝臓線維症、肺線維症、腎臓線維症、多発性嚢胞腎疾患、心臓線維症、筋肉線維症、骨髄線維症、皮膚線維症、目の線維症、手の線維症、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、黒色腫、筋ジストロフィー、脊髄筋萎縮症、脊髄傷害、卒中、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、サルコペニア、がん悪液質、神経性食欲不振、骨転移、骨脆弱性、骨折、骨減少症、骨粗しょう症、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、心筋梗塞、心不全、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、慢性腎臓疾患、関節リウマチ、炎症性腸疾患、SARS-CoV、サイトカインストーム症候群、敗血症、および熱傷からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二機能性アンタゴニスト分子をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項17】
請求項13に記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二機能性アンタゴニスト分子を製造する方法であって、a)前記二機能性アンタゴニスト分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで宿主細胞を形質転換するステップ、b)前記二機能性アンタゴニスト分子の発現のために好適な条件下で前記宿主細胞を培養するステップおよびc)培養物から前記二機能性アンタゴニスト分子を回収するステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2020年10月23日に出願された米国仮出願第63/104,850号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、NF-kBシグナル伝達を媒介し、細胞増殖、分化、アポトーシス、および免疫応答のモジュレーションおよび炎症の誘導を含む、様々な生理学的なおよび病理学的なプロセスにおいて重要な役割を果たす。TNFは、2つの受容体、TNFR1(TNF受容体-1)およびTNFR2(TNF受容体-2)を通じて作用する。TNF-αは、炎症応答、プログラム細胞死および組織壊死において極めて重要な役割を果たす。増加したTNF-αシグナル伝達は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病および乾癬を含む、多数の炎症性疾患に結び付けられており、抗TNF療法、例えばアダリムマブ、インフリキシマブおよびエタネルセプトは、そのような炎症性疾患の処置において高度に有効であることが示されている。上昇したTNF-αレベルおよび増加したTNF-αシグナル伝達はまた、貧血、白血病、多発性骨髄腫、線維症、高血圧、筋消耗、骨減少症、神経変性、敗血症、線維症、疼痛、慢性腎臓疾患、肝臓疾患、および心不全を含む多くの他の疾患状態の病理発生および進行に結び付けられている。
【0003】
TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3を含む、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)は、細胞表面上の高親和性受容体TGFβRIIおよびTGFβRIIBの結合および活性化を通じてSmad2/3シグナル伝達を媒介する。TGF-βは、免疫機能、細胞増殖および分化、上皮間葉転換、線維化、造血、筋発生ならびに骨リモデリングを含む、広範囲の生物学的活性の調節において不可欠な役割を果たす。上昇したTGF-βレベルおよび結果的に増加したSmad2/3シグナル伝達は、がん、貧血、骨転移、骨減少症、線維症、疼痛、筋肉喪失、インスリン抵抗性、慢性腎臓疾患、肝臓疾患、および心臓血管疾患を含む多くの疾患状態の病理発生および進行に結び付けられている。
【0004】
多くの複合障害は、その活性が病理発生および進行を促進するTNF-α媒介性NF-kBシグナル伝達経路およびTGF-β媒介性Smad2/3シグナル伝達経路の並行した活性化を伴うことを増加する証拠は指し示している。そのような複合障害の例は、ある特定の血液学的障害、例えば難治性貧血および骨髄異形成症候群、心臓血管疾患、例えば肺高血圧症および鬱血性心不全、骨障害、例えば骨転移および骨折、臓器不全、例えば腎不全、肝不全または骨髄不全、ならびに線維性疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎、硬変および肺線維症、ならびに疼痛、例えば侵害受容性または神経障害性疼痛を含む。
【0005】
これらの複合障害に対する現行の処置オプションは限られている。これらの障害における1つより多くの疾患シグナル伝達機序の関与に起因して、単一の疾患機序を標的化するために設計された現行で利用可能な療法は、典型的には、不良な有効性および低い奏効率を有する。TNF-α-NF-kBシグナル伝達経路およびTGF-β-Smad2/3シグナル伝達経路の両方は疾患病理発生および進行に不可欠に関与するので、2つの疾患シグナル伝達経路を並行して阻害する能力を有する新規の二機能性アンタゴニストを開発することは明確に重要である。
【発明の概要】
【0006】
発明の開示
1つの態様において、本発明は、TNF-αシグナル伝達およびTGF-βシグナル伝達を強力な方式において同時に中和するために特異的に設計された新規のポリペプチドベースの二機能性アンタゴニスト分子を提供する。様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、
図1において描写されるように設計される。様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、
図2において描写されるように設計される。様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、
図3において描写されるように設計される。
【0007】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子(「TNF-α結合性ポリペプチド」)およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子(「TGF-β結合性ポリペプチド」)を含む二機能性分子である。様々な実施形態において、「TNF-α結合性ポリペプチド」は、抗TNF抗体、抗TNF抗体の断片、野生型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン(ECD)、改変型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン、ならびにTNF-αリガンドを標的化するファージディスプレイ由来ポリペプチドからなる群から選択され、ならびに「TGF-β結合性ポリペプチド」は、抗TGF-β抗体、抗TGF-β抗体の断片、野生型TGF-β 2型受容体(TGFβRIIAおよびTGFβRIIBを含む)細胞外ドメイン(ECD)、改変型TGFβRIIAおよびTGFβRIIB細胞外ドメイン、ならびにTGF-βリガンドを標的化するファージディスプレイ由来アンタゴニストポリペプチドからなる群から選択される。
【0008】
様々な実施形態において、二機能性分子は、TNF-αに特異的に結合する単離された抗体、またはその抗原結合性断片、およびTGF-βリガンドに特異的に結合する単離された抗体、またはその抗原結合性断片を含む。様々な実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナルAb(mAb)、ポリクローナルAb、Ab断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラAb、ミニAbまたはドメインAb(dAb)、二重特異性Ab、二特異性Ab、ヘテロコンジュゲートAb、単鎖Ab(SCA)、単鎖可変領域断片(ScFv)、ヒト化Ab、完全ヒトAb、および要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン(Ig)分子の任意の他の改変された構成からなる群から選択される。様々な実施形態において、二機能性分子は、完全ヒト、ヒト化およびキメラ抗体からなる群から選択される単離された抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0009】
様々な実施形態において、第1の抗原結合性分子は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第1の抗原結合性分子は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第1の抗原結合性分子は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第1の抗原結合性分子は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第1の抗原結合性分子は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むTNFリガンドに特異的に結合する。
【0010】
様々な実施形態において、第2の抗原結合性分子は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むTGF-βリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第2の抗原結合性分子は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むTGF-βリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第2の抗原結合性分子は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むTGF-βリガンドに特異的に結合する。様々な実施形態において、第2の抗原結合性分子は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含むTGF-βリガンドに特異的に結合する。
【0011】
様々な実施形態において、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子は、配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号12に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号13に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号12に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号13に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である。
【0012】
様々な実施形態において、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子は、配列番号14に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号15に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号14に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号15に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号16に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号17に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号16に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号17に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である。
【0013】
様々な実施形態において、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子は、配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号20に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号21に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号20に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号21に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である。
【0014】
様々な実施形態において、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子は、配列番号22に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号23に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号22に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号23に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号24に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号25に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号24に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号25に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である。
【0015】
様々な実施形態において、TGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子は、配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む抗体;配列番号28に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;配列番号29に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体;ならびに配列番号28に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号29に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される単離された抗体である。
【0016】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二機能性分子であり、TNF-αリガンド結合性分子は、配列番号1~5および10~25に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの群から選択され、ならびにTGF-βリガンド結合性分子は、配列番号6~9および26~29に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの群から選択される。
【0017】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二機能性分子であり、二機能性分子は、配列番号30に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号31に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子;ならびに配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む二機能性分子からなる群から選択される。
【0018】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子は、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二機能性分子であり、二機能性分子は、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号35に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子;および配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含む二機能性分子からなる群から選択される。
【0019】
別の態様において、本開示は、本開示の二機能性アンタゴニスト分子をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。様々な実施形態において、単離された核酸分子は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含み、および本明細書に記載される少なくとも1つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。様々な実施形態において、核酸分子は、本明細書に記載されるリンカーまたはヒンジリンカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0020】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される核酸を含むベクターを提供する。様々な実施形態において、ベクターは発現ベクターである。別の態様において、本開示は、本開示の核酸を含む単離された細胞を提供する。様々な実施形態において、細胞は、本開示の発現ベクターを含む宿主細胞である。別の態様において、二機能性アンタゴニスト分子を製造する方法であって、該タンパク質またはポリペプチドの発現を促進する条件下で宿主細胞を培養することによる、方法が提供される。
【0021】
別の態様において、提供されるのは、本明細書に記載されているTNF-αに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二機能性アンタゴニスト分子を製造する方法であって、a)前記二機能性アンタゴニスト分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで宿主細胞を形質転換するステップ、b)二機能性アンタゴニスト分子の発現のために好適な条件下で宿主細胞を培養するステップおよびc)培養物から二機能性アンタゴニスト分子を回収するステップを含む、方法である。本発明はまた、本発明の方法により製造される二機能性アンタゴニスト分子を包含する。
【0022】
別の態様において、本開示は、医薬的に許容される担体と混合された単離された二機能性アンタゴニスト分子を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
別の態様において、本開示は、その病理発生がTNF-α媒介性NF-κBシグナル伝達経路およびTGF-β媒介性Smad2/3シグナル伝達経路の両方の活性化を伴う様々な複合疾患状態を処置または予防する方法を提供する。
【0024】
様々な実施形態において、本発明の新規の二機能性アンタゴニスト分子は、以下の状態:血液障害:無効赤血球生成、貧血、汎血球減少症、骨髄異形成症候群;線維性疾患:NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、肝臓線維症、肺線維症、腎臓線維症、多発性嚢胞腎疾患、心臓線維症、筋肉線維症、骨髄線維症、皮膚線維症、手の線維症および目の線維症;がん:多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、黒色腫;チェックポイント阻害剤、例えば抗PD1、抗PDL1および抗CTL4抗体またはキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法と組み合わせたがん処置;神経筋疾患:筋ジストロフィー、脊髄筋萎縮症、脊髄傷害、卒中;疼痛:侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛;消耗性障害:サルコペニア、がん悪液質、神経性食欲不振;骨障害:骨転移、骨脆弱性、骨折、骨減少症、骨粗しょう症;心臓血管疾患:肺高血圧症、肺動脈高血圧症、心筋梗塞、心不全;代謝障害:インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、慢性腎臓疾患;炎症性疾患:関節リウマチ、炎症性腸疾患;感染症:SARS-CoV、サイトカインストーム症候群、敗血症;ならびに外傷:熱傷を含むが、これらに限定されない、様々な障害の処置のための広い応用を有してもよい。
【0025】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されている任意の障害または状態の処置用の医薬を製造するための、二機能性アンタゴニスト分子の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の代表的な二機能性アンタゴニスト分子を描写する。この図式に示されている「TNF結合性ポリペプチド」は、抗TNF抗体、抗TNF抗体の断片、野生型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン(ECD)、改変型TNFR1およびTNFR2細胞外ドメイン、ならびにTNF-αを標的化するファージディスプレイ由来ポリペプチドを含むが、これらに限定されない、TNF-αに結合する能力を有する任意のポリペプチドを指す。この図式に示されている「TGF-β結合性ポリペプチド」は、抗TGF-β抗体、抗TGF-β抗体の断片、野生型TGF-β 2型受容体(TGFβRIIAおよびTGFβRIIBを含む)の細胞外ドメイン(ECD)、改変型TGFβRIIAおよびTGFβRIIB細胞外ドメイン、ならびにTGF-βに結合してそれを中和する能力を有するファージディスプレイ由来アンタゴニストポリペプチドを含むが、これらに限定されない、TGF-β(すなわち、TGF-β1、TGF-β2またはTGF-β3)に結合する能力を有する任意のポリペプチドを指す。この図式に示されている「リンカー」は、任意のペプチドリンカーまたは化学的リンカーの使用を含むが、これらに限定されない、異なるポリペプチド融合パートナーを融合させて二特異性および多特異性分子を生成する様々な方法を指す。
【
図2】
図2は、(A)TNF-α結合性ポリペプチドが抗TNF-α抗体であり、およびTGF-β結合性ポリペプチドが、抗TNF-α抗体の重鎖CH3にリンカーを介して取り付けられたTGF-β受容体ECDであるか;または(B)TGF-β結合性ポリペプチドが抗TGF-β抗体であり、およびTNF-α結合性ポリペプチドが、抗TGF-β抗体の重鎖CH3にリンカーを介して取り付けられたTNF受容体ECDである、本発明の2つの代表的な二機能性アンタゴニスト分子を描写する。代替的な実施形態において、TGF-β受容体ECD(またはTNF受容体ECD)は、抗TNF-α抗体(または抗TGF-β抗体)抗体の重鎖可変領域(VH)においてリンカーを介して取り付けられている。代替的な実施形態において、TGF-β受容体ECD(またはTNF受容体ECD)は、抗TNF-α抗体(または抗TGF-β抗体)抗体の軽鎖可変領域(VL)においてリンカーを介して取り付けられている。代替的な実施形態において、TGF-β受容体ECD(またはTNF受容体ECD)は、抗TNF-α抗体(または抗TGF-β抗体)抗体の重鎖CH3、VL、またはVH部位ではなく内部部位においてリンカーを介して取り付けられている。
【
図3】
図3は、(A)抗TGF-β抗体に由来する可変領域(VHおよびVL)ならびに(B)抗TNF抗体の可変領域(VHおよびVL)を含む、二特異性抗体の形態の本発明の代表的な二機能性アンタゴニスト分子を描写する。
図3に図示される二特異性抗体は1つの特有の構成において示されているが、抗TGF-βおよび抗TNF抗体の両方からの可変領域を含む二特異性抗体は、多様な構成において当業者により構築され得ることが留意される。
【
図4】
図4は、二機能性アンタゴニスト分子A-119は、細胞ベースのアッセイにおいてTNF-α、TGF-β1、およびTGF-β3を強力に中和することを示す線グラフを描写する。細胞ベースのTNF-α中和およびTGF-β中和IC
50値は、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を使用して算出およびプロットした。
【
図5】
図5は、二機能性アンタゴニスト分子A-120は、細胞ベースのアッセイにおいてTNF-α、TGF-β1、およびTGF-β3を強力に中和することを示す線グラフを描写する。細胞ベースのTNF-α中和およびTGF-β中和IC
50値は、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を使用して算出およびプロットした。
【
図6】
図6A~
図6Gは、異なる処理条件下でのヒト初代肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の細胞増殖および細胞形態における変化を描写し、二機能性アンタゴニストA120は、PASMCのTNFα-およびTGF-β1誘導性過形成および肥大を高度に有効な方式において予防したことを示す。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、上昇したTNFαおよびTGF-β1の文脈において、A120は、PASMCの過形成および肥大の両方の予防において抗TNF抗体またはTGFRII-Fcよりも有効であったことを示す棒グラフを描写する。PASMCの形態計測学的分析は、ImageJソフトウェアを使用して行った。
【
図8】
図8A~
図8Fは、H&E染色された肺切片の組織学的画像およびAshcraftスコアに関する棒グラフを描写し、A120は、ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスにおける肺組織損傷および線維化の低減において抗TNF抗体またはTGFRII-Fcよりも有効であったことを示す。
【
図9】
図9A~
図9Fは、マッソントリクローム染色された肺切片の組織学的画像およびコラーゲン沈着面積の定量的分析に関する棒グラフを描写し、A120は、ブレオマイシンで処置されたマウスにおいて抗TNF抗体またはTGFRII-Fcよりも有効に肺線維症を減弱したことを示す。
【
図10】
図10A~
図10Eは、肺切片におけるαSMA染色の組織学的画像を描写し、A120は、ブレオマイシンで処置されたマウスの肺組織におけるαSMAの誘導の予防において抗TNF抗体またはTGFRII-Fcよりも有効であったことを示す。肺切片は、抗αSMA抗体およびHRP標識された二次抗体を用いて免疫化学的に染色した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示を実行するための形態
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において交換可能に使用される。様々な実施形態において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、そのアルファ炭素がペプチド結合を通じて連結されているアミノ酸の鎖である。鎖の1つの末端(アミノ末端)における末端アミノ酸はしたがって遊離アミノ基を有し、鎖の他の末端(カルボキシ末端)における末端アミノ酸は遊離カルボキシル基を有する。本明細書において使用される場合、「アミノ末端」(N末端と略記される)という用語は、ペプチドのアミノ末端におけるアミノ酸上の遊離α-アミノ基またはペプチド内の任意の他の位置におけるアミノ酸のα-アミノ基(ペプチド結合に参加する場合にイミノ基)を指す。同様に、「カルボキシ末端」という用語は、ペプチドのカルボキシ末端における遊離カルボキシル基またはペプチド内の任意の他の位置におけるアミノ酸のカルボキシル基を指す。ペプチドはまた、ペプチド模倣物、例えばアミド結合とは対照的にエーテルにより接合されたアミノ酸を含むが、これらに限定されない、本質的に任意のポリアミノ酸を含む。
【0028】
本開示のポリペプチドは、例えば、(1)タンパク質加水分解に対する感受性を低減させるため、(2)酸化に対する感受性を低減させるため、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更するため、(4)結合親和性を変更するため、および(5)他の物理化学的または機能的特性を付与または改変するために任意の仕方でおよび任意の理由で改変されているポリペプチドを含む。
【0029】
アミノ酸「置換」は、本明細書において使用される場合、親ポリペプチド配列中の特定の位置における1つのアミノ酸の、異なるアミノ酸でのポリペプチド中の置換を指す。アミノ酸置換は、当技術分野において周知の遺伝学的または化学的方法を使用して生成され得る。例えば、単一のまたは複数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)が、天然に存在する配列中(例えば、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分中)で行われてもよい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸の、機能的に類似したアミノ酸でのポリペプチド中の置換を指す。以下の6つの群の各々は、互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)
2)アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)およびグルタミン(Q)
4)アルギニン(R)およびリジン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、およびバリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)
【0030】
「非保存的アミノ酸置換」は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、別のクラスからのメンバーによる置換を指す。そのような変化を行う際に、様々な実施形態にしたがって、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮されてもよい。各々のアミノ酸は、その疎水性および電荷的特徴に基づいてハイドロパシー指数を割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。
【0031】
タンパク質への相互作用性生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は当技術分野において理解されている(例えば、Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.157:105-131を参照)。ある特定のアミノ酸は、類似したハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換されて、類似した生物学的活性を依然として保持し得ることが公知である。ハイドロパシー指数に基づいて変化を行う際に、様々な実施形態において、そのハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。様々な実施形態において、±1以内であるものが含まれ、様々な実施形態において、±0.5以内であるものが含まれる。
【0032】
似たアミノ酸の置換は親水性に基づいて有効に行うことが可能であり、これは特には、それにより作り出される生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドが、本明細書に開示されように、免疫学的な実施形態における使用のために意図される場合に該当することもまた当技術分野において理解される。様々な実施形態において、その隣接するアミノ酸の親水性により支配されるような、タンパク質の最大の局所的な平均親水性は、その免疫原性および抗原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関する。
【0033】
以下の親水性値がこれらのアミノ酸残基に対して割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0.+-.1);グルタミン酸(+3.0.+-.1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5.+-.1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5)およびトリプトファン(-3.4)。類似した親水性値に基づいて変化を行う際に、様々な実施形態において、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、様々な実施形態において、±1以内であるものが含まれ、様々な実施形態において、±0.5以内であるものが含まれる。
【0034】
【0035】
当業者は、周知の技術を使用して本明細書に記載されているポリペプチドの好適なバリアントを決定することができる。様々な実施形態において、当業者は、活性のために重要ではないと考えられる領域を標的化することにより活性を破壊することなく変化され得る分子の好適な区画を同定してもよい。他の実施形態において、当業者は、類似したポリペプチドの間で保存されている分子の残基および部分を同定することができる。さらなる実施形態において、生物学的活性のためまたは構造のために重要であり得る区画であっても、生物学的活性を破壊することもポリペプチド構造に悪影響を与えることもなく保存的アミノ酸置換に供され得る。
【0036】
追加的に、当業者は、活性または構造のために重要な類似したポリペプチド中の残基を同定する構造-機能研究を検討することができる。そのような比較を考慮して、当業者は、類似したポリペプチドにおいて活性または構造のために重要なアミノ酸残基に対応するポリペプチド中のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測された重要なアミノ酸残基のための化学的に類似したアミノ酸置換を選択してもよい。
【0037】
当業者はまた、類似したポリペプチドにおける3次元構造およびその構造に関連するアミノ酸配列を分析することができる。そのような情報を考慮して、当業者は、その3次元構造に関してポリペプチドのアミノ酸残基のアライメントを予測してもよい。様々な実施形態において、当業者は、ポリペプチドの表面上にあることが予測されるアミノ酸残基に対して抜本的な変化を行わないように選択してもよく、その理由は、そのような残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るからである。さらに、当業者は、各々の所望されるアミノ酸残基における単一のアミノ酸置換を含有する試験バリアントを生成してもよい。バリアントは次に、当業者に公知の活性アッセイを使用してスクリーニングされ得る。そのようなバリアントは、好適なバリアントについての情報を集めるために使用され得る。例えば、特定のアミノ酸残基への変化が、破壊されたか、望ましくなく低減されたか、または好適でない活性を結果としてもたらすことが発見された場合、そのような変化を有するバリアントは回避され得る。換言すれば、そのようなルーチンの実験から集められた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換が単独でまたは他の突然変異と組み合わせて回避されるべきアミノ酸を容易に決定することができる。
【0038】
「ポリペプチド断片」および「切断されたポリペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、対応する全長タンパク質と比較してアミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。様々な実施形態において、断片は、例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900または少なくとも1000アミノ酸の長さであることができる。様々な実施形態において、断片はまた、例えば、最大で1000、最大で900、最大で800、最大で700、最大で600、最大で500、最大で450、最大で400、最大で350、最大で300、最大で250、最大で200、最大で150、最大で100、最大で50、最大で25、最大で10、または最大で5アミノ酸の長さであることができる。断片は、その末端のいずれかまたは両方において、1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、異なる天然に存在するタンパク質からのアミノ酸の配列(例えば、Fcもしくはロイシンジッパードメイン)または人工的なアミノ酸配列(例えば、人工的なリンカー配列)をさらに含むことができる。
【0039】
「ポリペプチドバリアント」、「ハイブリッドポリペプチド」および「ポリペプチド突然変異体」という用語は、本明細書において使用される場合、別のポリペプチド配列と比べて1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列に挿入、欠失および/または置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。様々な実施形態において、挿入、欠失、または置換されるアミノ酸残基の数は、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450または少なくとも500アミノ酸の長さであることができる。本開示のハイブリッドは融合タンパク質を含む。
【0040】
ポリペプチドの「誘導体」は、化学的に修飾されている、例えば、別の化学的部分、例えば、ポリエチレングリコール、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)へのコンジュゲーション、リン酸化、およびグリコシル化をされているポリペプチドである。
【0041】
「%の配列同一性」(配列同一性%)という用語は、「%の同一性」(同一性%)という用語と本明細書において交換可能に使用され、配列アライメントプログラムを使用してアライメントされた場合の、2つ以上のペプチド配列の間のアミノ酸配列同一性のレベルまたは2つ以上のヌクレオチド配列の間のヌクレオチド配列同一性のレベルを指す。例えば、本明細書において使用される場合、80%の同一性は、定義されたアルゴリズムにより決定される80%の配列同一性と同じことを意味し、所与の配列が別の配列に対して少なくとも80%同一であることを意味する。様々な実施形態において、同一性%は、所与の配列に対する例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%またはより高い配列同一性から選択される。様々な実施形態において、同一性%は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲内である。
【0042】
「%の配列相同性」(配列相同性%)という用語は、「%の相同性」(相同性%)という用語と本明細書において交換可能に使用され、配列アライメントプログラムを使用してアライメントされた場合の、2つ以上のペプチド配列の間のアミノ酸配列相同性のレベルまたは2つ以上のヌクレオチド配列の間のヌクレオチド配列相同性のレベルを指す。例えば、本明細書において使用される場合、80%の相同性は、定義されたアルゴリズムにより決定される80%の配列相同性と同じことを意味し、よって所与の配列のホモログは、所与の配列の長さにかけて80%より高い配列相同性を有する。様々な実施形態において、相同性%は、所与の配列に対する例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%またはより高い配列相同性から選択される。様々な実施形態において、相同性%は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲内である。
【0043】
2つの配列の間の同一性を決定するために使用され得る例示的なコンピュータプログラムは、NCBIのウェブサイトにおいてインターネット上で公開されている一連のBLASTプログラム、例えば、BLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTNを含むが、これらに限定されない。Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990(公開されたデフォルトの設定、すなわち、パラメーターw=4、t=17が特に参照される)およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402,1997も参照。配列検索は、典型的には、GenBank Protein Sequencesおよび他の公的なデータベース中のアミノ酸配列と比べて所与のアミノ酸配列を評価する場合にBLASTPプログラムを使用して実行される。BLASTXプログラムは、GenBank Protein Sequencesおよび他の公的なデータベース中のアミノ酸配列に対してすべてのリーディングフレームにおいて翻訳された核酸配列を検索するために好ましい。BLASTPおよびBLASTXの両方は、11.0のオープンギャップペナルティ、および1.0のエクステンデッドギャップペナルティのデフォルトのパラメーターを使用して実行され、BLOSUM-62マトリックスを利用する。
【0044】
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc. Nat’l.Acad.Sci.USA,90:5873-5787,1993を参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの指標は最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間のマッチが偶然に起こるであろう確率の指標を提供する。例えば、参照核酸との試験核酸の比較における最小和確率が、例えば、約0.1より低い、約0.01より低い、または約0.001より低い場合に、核酸は参照配列に類似していると考えられる。
【0045】
「修飾」または「改変」(modification)という用語は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドのペプチド骨格(例えば、アミノ酸配列)または翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)の任意のマニピュレーションを指す。
【0046】
「抗原結合性分子」という用語は、本明細書において使用される場合、その最も広い意味において、抗原決定因子に特異的に結合する分子を指す。抗原結合性分子の例は、抗体、抗体断片およびスキャフォールド抗原結合性タンパク質である。参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合性分子」は、競合アッセイにおいてその抗原への参照分子の結合を50%またはより大きく遮断する抗原結合性分子を指し、反対に、参照分子は、競合アッセイにおいてその抗原への抗原結合性分子の結合を50%またはより大きく遮断する
【0047】
本明細書において使用される場合、「抗原結合性部位」という用語は、抗原決定因子に特異的に結合する抗原結合性分子の部分を指す。より特には、「抗原結合性部位」という用語は、抗原の部分または全体に特異的に結合する、および該部分または全体に相補的な区画を含む抗体の部分を指す。抗原が大きい場合、抗原結合性分子は抗原の特定の部分にのみ結合することがあり、該部分はエピトープと称される。抗原結合性部位は、例えば、1つ以上の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)により提供され得る。好ましくは、抗原結合性部位は抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0048】
本明細書において使用される場合、「抗原決定因子」という用語は「抗原」および「エピトープ」と同義であり、抗原結合性部分が結合して抗原結合性部分-抗原複合体を形成するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続するストレッチまたは連続しないアミノ酸の異なる領域から作られるコンホメーション配置)を指す。有用な抗原決定因子は、例えば、腫瘍細胞の表面上、ウイルス感染細胞の表面上、他の疾患細胞の表面上、免疫細胞の表面上、遊離して血清中、および/または細胞外マトリックス(ECM)中に見出され得る。本明細書において抗原として有用なタンパク質は、他に指し示されなければ、哺乳動物、例えば霊長動物(例えば、ヒト)ならびに齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意のネイティブな形態のタンパク質であることができる。様々な実施形態において、抗原はヒトタンパク質である。
【0049】
本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味において使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性および多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、ならびに所望される抗原結合活性を呈する限り抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0050】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の部分が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0051】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、およびFRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つの、および典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明により包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、定常領域が、特にC1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して、本発明による特性を生成するために元々の抗体のものから追加的に改変または変化を受けている抗体である。
【0052】
「ヒト」抗体は、ヒトもしくはヒト細胞により産生されるか、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コーディング配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0053】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、起こり得るバリアント抗体、例えば、天然に存在する突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の製造の間に生じるものを除いて、同一であり、および/または同じエピトープに結合し、そのようなバリアントは一般に微量で存在する。異なる決定因子(エピトープ)に対して方向付けられた異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各々のモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子に対して方向付けられている。
【0054】
「単一特異性」抗体という用語は、本明細書において使用される場合、同じ抗原の同じエピトープにその各々が結合する1つ以上の結合性部位を有する抗体を表す。「二特異性」という用語は、抗体が少なくとも2つの別個の抗原決定因子に特異的に結合できることを意味し、例えば2つの結合性部位の各々は、異なる抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに結合する抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)のペアにより形成される。そのような二特異性抗体は1+1フォーマットである。他の二特異性抗体フォーマットは2+1フォーマット(第1の抗原もしくはエピトープのための2つの結合性部位および第2の抗原もしくはエピトープのための1つの結合性部位を含む)または2+2フォーマット(第1の抗原もしくはエピトープのための2つの結合性部位および第2の抗原もしくはエピトープのための2つの結合性部位を含む)である。典型的には、二特異性抗体は、その各々が異なる抗原決定因子に特異的である2つの抗原結合性部位を含む。
【0055】
「価」(valent)という用語は、本出願内において使用される場合、抗原結合性分子における指定される数の結合性部位の存在を表す。そのため、「二価」、「四価」、および「六価」という用語は、抗原結合性分子中のそれぞれ2つの結合性部位、4つの結合性部位、および6つの結合性部位の存在を表す。本発明による二特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」または「多価」(例えば、「四価」もしくは「六価」)であってもよい。様々な実施形態において、本発明の抗体は、2つ以上の結合性部位を有し、二特異性である。すなわち、抗体は、2つより多くの結合性部位がある(すなわち抗体は三価または多価である)場合であっても二特異性であり得る。特に、本発明は、特異的に結合する各々の抗原のための1つの結合性部位を有する二特異性二価抗体に関する。
【0056】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全体抗体」という用語は、ネイティブな抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために本明細書において交換可能に使用される。「ネイティブな抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブなIgGクラス抗体は、ジスルフィド結合した2つの軽鎖および2つの重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端へ、各々の重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端へ、各々の軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて、軽鎖定常領域とも呼ばれる軽鎖定常ドメイン(CL)を有する。抗体の重鎖は、アルファ(IgA)、デルタ(IgD)、イプシロン(IgE)、ガンマ(IgG)、またはミュー(IgM)と呼ばれる5つの種類のうちの1つに割り当てられ得、これらの一部は、サブタイプ、例えば、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)、ガンマ4(IgG4)、アルファ1(IgA1)およびアルファ2(IgA2)にさらに分けられ得る。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0057】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、cross-Fab断片;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);抗体断片から形成される多特異性抗体および単一ドメイン抗体を含むがこれらに限定されない。ある特定の抗体断片の総説のために、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照。scFv断片の総説のために、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994);そしてまた国際公開第93/16185号;ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照。サルベージ受容体結合性エピトープ残基を含み、および増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片の議論のために、米国特許第5,869,046号を参照。ダイアボディは、二価または二特異性であり得る2つの抗原結合性部位を有する抗体断片であり、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003);およびHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照。トリアボディおよびテトラボディもまたHudson et al.,Nat Med 9,129-134 (2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体もしくは部分または軽鎖可変ドメインの全体もしくは部分を含む抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。追加的に、抗体断片は、VLドメインと共に機能的な抗原結合性部位にアセンブルできるというVHドメインの特徴、またはVHドメインと共に機能的な抗原結合性部位にアセンブルできるというVLドメインの特徴を有し、それにより全長抗体の抗原結合特性を提供できる単鎖ポリペプチドを含む。抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化分解の他に、本明細書に記載されるように、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)もしくはファージ)による製造を含むがこれらに限定されない、様々な技術により製造され得る。
【0058】
インタクトな抗体のパパイン消化は2つの同一の抗原結合性断片を生成し、該抗原結合性断片は「Fab」断片とも呼ばれ、各々は、重鎖および軽鎖可変ドメインならびに軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含有する。本明細書において使用される場合、「Fab断片」という用語は、VLドメインおよび軽鎖の定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片、ならびにVHドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加によりFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’断片である。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)およびFc領域の部分を有するF(ab’)2断片をもたらす。
【0059】
「単鎖Fab断片」または「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)およびリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメインおよび前記リンカーは、N末端からC末端への方向で以下の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1またはd)VL-CH1-リンカー-VH-CLの1つを有し;ならびに前記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである。前記単鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然のジスルフィド結合を介して安定化される。追加的に、これらの単鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabatの番号付けにしたがって可変重鎖中の44位および可変軽鎖中の100位)を介する鎖間ジスルフィド結合の生成によりさらに安定化され得る。
【0060】
「単鎖可変断片(scFv)」は、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドで接続された、抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常は、柔軟性のためのグリシンの他に、溶解性のためのセリンまたはスレオニンに富んでおり、VHのN末端をVLのC末端と接続することができるか、またはその逆である。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元々の抗体の特異性を保持する。scFv抗体は、例えば、Houston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-96に記載されている。追加的に、抗体断片は、VLドメインと共に機能的な抗原結合性分子にアセンブルできるというVHドメインの特徴、またはVHドメインと共に機能的な抗原結合性分子にアセンブルできるというVLドメインの特徴を有し、それにより全長抗体の抗原結合特性を提供できる単鎖ポリペプチドを含む。
【0061】
本明細書における「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。該用語は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。特には、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226から、またはPro230から、カルボキシル末端まで伸長している。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし、または存在しなくてもよい。重鎖のアミノ酸配列は常にC末端リジンと共に示されるが、C末端リジンを有しないバリアントは本発明に含まれる。
【0062】
IgG Fc領域はIgG CH2およびIgG CH3ドメインを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常は、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで伸長する。1つの実施形態において、炭水化物鎖がCH2ドメインに取り付けられている。本明細書におけるCH2ドメインはネイティブ配列CH2ドメインまたはバリアントCH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域中のCH2ドメインに対してC末端にある残基のストレッチ(すなわちIgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基まで)を含む。本明細書におけるCH3領域はネイティブ配列CH3ドメインまたはバリアントCH3ドメイン(例えば、その1つの鎖における導入された「隆起」(「ノブ」)およびその他の鎖における対応する導入された「空洞」(「ホール」)を有するCH3ドメイン;参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,333号を参照)であってもよい。そのようなバリアントCH3ドメインは、本明細書に記載されている2つの非同一の抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進するために使用されてもよい。本明細書において他に指定されなければ、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれる、EU番号付けシステムによるものである。
【0063】
「ノブ-イントゥー-ホール」技術は、例えば、米国特許第5,731,168号;同第7,695,936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)およびCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般に、方法は、第1のポリペプチドの境界面において隆起(「ノブ」)を、および第2のポリペプチドの境界面において対応する空洞(「ホール」)を導入し、その結果、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進しおよびホモ二量体形成を邪魔するように空洞中に配置され得るようにすることを伴う。隆起は、第1のポリペプチドの境界面からの小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同一のまたは類似したサイズの代償的な空洞は、大きいアミノ酸側鎖を、より小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることにより第2のポリペプチドの境界面において作り出される。隆起および空洞は、例えば、部位特異的な突然変異誘発により、ポリペプチドをコードする核酸を変更することにより、またはペプチド合成により作られ得る。特有の実施形態において、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの1つにおけるアミノ酸置換T366Wを含み、ならびにホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの他の1つにおけるアミノ酸置換T366S、L368AおよびY407Vを含む。さらなる特有の実施形態において、ノブ改変を含むFcドメインのサブユニットはアミノ酸置換S354Cを追加的に含み、およびホール改変を含むFcドメインのサブユニットはアミノ酸置換Y349Cを追加的に含む。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fc領域の2つのサブユニットの間のジスルフィドブリッジの形成を結果としてもたらし、そのため二量体をさらに安定化させる(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0064】
「免疫グロブリンのFc領域と同等の領域」は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在するアレルバリアントの他に、置換、付加、または欠失を生成するが、エフェクター機能(例えば抗体依存性細胞傷害性)を媒介する免疫グロブリンの能力を実質的に減少させない変更を有するバリアントを含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生物学的機能の実質的な喪失なしに免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失され得る。そのようなバリアントは、活性に対して最小の効果を有するように当技術分野において公知の一般的な規則にしたがって選択され得る(例えば、Bowie,J.U.et al.,Science 247:1306-10(1990)を参照)。
【0065】
「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプと共に変動する、抗体のFc領域に帰せられる生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合および補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、ならびにB細胞活性化を含む。
【0066】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域によるエンゲージメント後に、エフェクター機能を行うように受容体保有細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体は、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、およびFcαRI(CD89)を含む。特定の活性化Fc受容体はヒトFcγRIIIa(UniProtアクセッション番号P08637、バージョン141を参照)である。
【0067】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するかまたは低減させる抗体である。一部の実施形態において、遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。例えば、本発明の二特異性抗体は、TNF-α-NF-kBシグナル伝達経路およびTGF-β-Smad2/3シグナル伝達経路を阻害するようにTNF-αおよびTGF-βを通じたシグナル伝達を遮断する。
【0068】
本明細書において使用される場合、「特異的結合」は、結合が抗原のために選択的であり、望ましくないまたは非特異的な相互作用から識別され得ることが意味される。特異的な抗原に結合する抗原結合性分子の能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または当業者が精通している他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore機器上で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、および伝統的な結合アッセイのいずれかを通じて測定され得る(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))。
【0069】
「親和性」または「結合親和性」という用語は、本明細書において使用される場合、分子(例えば、抗体)の単一の結合性部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総計の強さを指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、解離定数(KD)により一般に表すことができ、KDは、解離および会合速度定数(それぞれkoffおよびkon)の比である。親和性を測定する特定の方法は表面プラズモン共鳴(SPR)である。本明細書において使用される場合、抗体の「高い親和性」という用語は、抗体が標的抗原に対して10-9Mまたはより低い、よりいっそう特には10-10Mまたはより低いKdを有することを指す。抗体の「低い親和性」という用語は、抗体が10-8Mまたはより高いKdを有することを指す。「低減した結合」という用語は、本明細書において使用される場合、例えばSPRにより測定された場合の、それぞれの相互作用についての親和性における減少を指す。反対に、「増加した結合」は、それぞれの相互作用についての結合親和性における増加を指す。
【0070】
「TNF-αに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二特異性抗体」、「TNF-αおよびTGF-βに特異的に結合する二特異性抗体」、「TNF-αおよびTGF-βに特異的な二特異性抗原結合性分子」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、抗体が診断および/または治療剤としてTNF-αおよびTGF-βの標的化において有用であるような十分な親和性でTNF-αおよびTGF-βに結合する能力を有する二特異性抗体を指す。
【0071】
「抗TNF-α抗体」および「TNF-αに結合する抗原結合性部位を含む抗体」という用語は、抗体が診断および/または治療剤としてTNF-αの標的化において有用であるような十分な親和性でTNF-α、特に細胞表面上に発現されるTNF-αポリペプチドに結合する能力を有する抗体を指す。1つの実施形態において、無関連の非TNF-αタンパク質に対する抗TNF-α抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくはフローサイトメトリー(FACS)によりまたはバイオセンサーシステム、例えばBiacore(登録商標)システムを使用して表面プラズモン共鳴アッセイにより、測定された場合に、TNF-αに対する抗体の結合の約10%より低い。ある特定の実施形態において、ヒトTNF-αに結合する抗原結合性分子は、例えば、10-8M~10-13Mの、ヒトTNF-αへの結合についての結合親和性のKD値を有する。1つの好ましい実施形態において、結合親和性のそれぞれのKD値は、TNF-α結合親和性のためにヒトTNF-αの細胞外ドメイン(ECD)(TNF-α-ECD)を使用して表面プラズモン共鳴アッセイにおいて決定される。「抗TNF-α抗体」という用語はまた、TNF-αおよび第2の抗原に結合する能力を有する二特異性抗体を包含する。
【0072】
「抗TGF-β抗体」および「TGF-βに結合する抗原結合性部位を含む抗体」という用語は、抗体が診断および/または治療剤としてTGF-βの標的化において有用であるような十分な親和性で、TGF-β、特に細胞表面上に発現されるTGF-βポリペプチドに結合する能力を有する抗体を指す。1つの実施形態において、無関連の非TGF-βタンパク質への抗TGF-β抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくはフローサイトメトリー(FACS)によりまたはバイオセンサーシステム、例えばBiacore(登録商標)システムを使用して表面プラズモン共鳴アッセイにより、測定された場合に、TGF-βに対する抗体の結合の約10%より低い。ある特定の実施形態において、ヒトTGF-βに結合する抗原結合性分子は、例えば、10-8M~10-13Mの、ヒトTGF-βへの結合についての結合親和性のKD値を有する。1つの好ましい実施形態において、結合親和性のそれぞれのKD値は、TGF-β結合親和性のためにヒトTGF-βの細胞外ドメイン(ECD)(TGF-β-ECD)を使用して表面プラズモン共鳴アッセイにおいて決定される。「抗TGF-β抗体」という用語はまた、TGF-βおよび第2の抗原に結合する能力を有する二特異性抗体を包含する。
【0073】
「融合タンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、別々のタンパク質を元々はコードしていた2つ以上の遺伝子を含む融合ポリペプチド分子であって、融合タンパク質の構成要素が、直接的にまたはペプチドリンカーを通じて、ペプチド結合により互いに連結されているものを指す。「融合した」という用語は、本明細書において使用される場合、直接的にまたは1つ以上のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合により連結された構成要素を指す。
【0074】
「リンカー」は、共有結合的に、またはイオン、ファンデルワールスもしくは水素結合を通じて、2つの他の分子を接合する分子、例えば、5’末端において1つの相補的配列に、および3’末端において別の相補的配列にハイブリダイズし、そのため2つの非相補的配列を接合する核酸分子を指す。「切断可能なリンカー」は、分解または他に切断されて、切断可能なリンカーにより接続された2つの構成要素を分離させることができるリンカーを指す。切断可能なリンカーは、一般に、酵素、典型的にはペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、およびリパーゼなどにより切断される。切断可能なリンカーはまた、環境上のキュー、例えば、温度、pH、塩濃度における変化などにより切断されてもよい。
【0075】
「ペプチドリンカー」という用語は、本明細書において使用される場合、1つ以上のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当技術分野において公知であるか、または本明細書に記載されている。好適な、非免疫原性のリンカーペプチドは、例えば、(G4S)n、(SG4)nまたはG4(SG4)nペプチドリンカーを含む。「n」は一般に1~10、典型的には2~4の数である。
【0076】
「医薬組成物」は、動物における医薬的な使用のために好適な組成物を指す。医薬組成物は、薬理学的に有効な量の活性剤および医薬的に許容される担体を含む。「薬理学的に有効な量」は、意図される薬理学的な結果を生成するために有効な剤の量を指す。「医薬的に許容される担体」は、標準的な薬学的担体、媒体、緩衝剤、および賦形剤、例えばリン酸緩衝食塩水溶液、5%のデキストロースの水性溶液、ならびにエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびに様々な種類の湿潤剤および/または佐剤のいずれかを指す。好適な薬学的担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,21st Ed.2005,Mack Publishing Co,Eastonに記載されている。「医薬的に許容される塩」は、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む、医薬的な使用のために化合物中に配合され得る塩である。
【0077】
本明細書において使用される場合、「処置」(およびその文法的変形、例えば「処置する」(treat)または「処置する」(treating))は、処置されている個体における疾患の自然経過を変更する試みでの臨床的介入を指し、予防のためまたは臨床的な病理の経過の間のいずれかで行われ得る。処置の望ましい効果は、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的なまたは間接的な病的な帰結の縮小、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の寛解または一時的緩和、および軽快または改善された予後を含むが、これらに限定されない。本明細書において使用される場合、疾患、障害または状態を「軽減する」ことは、疾患、障害、または状態の症状の重症度および/または発生頻度を低減させることを意味する。さらに、「処置」への本明細書における言及は、治癒的な、姑息的なおよび予防的な処置への言及を含む。
【0078】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、指定される障害、状態または疾患を処置するため、例えばその症状の1つ以上を寛解させ、緩和し、減少させ、および/または遅延させるために十分な化合物または組成物の量を指す。がんまたは他の望ましくない細胞増殖に関して、有効量は、(i)がん細胞の数を低減させるため;(ii)腫瘍サイズを低減させるため;(iii)末梢臓器中へのがん細胞浸潤を阻害し、遅延させ、何らかの程度まで緩慢化させ、好ましくは停止させるため;(iv)腫瘍転移を阻害する(すなわち、何らかの程度まで緩慢化させ、好ましくは停止させる)ため;(v)腫瘍成長を阻害するため;(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発を予防するかもしくは遅延させるため;ならびに/または(vii)がんと関連付けられる症状の1つ以上を何らかの程度まで緩和するために十分な量を含む。有効量は1つ以上の投与において投与され得る。
【0079】
「投与する」または「投与されることを引き起こす」という語句は、医療専門家(例えば、医師)、または患者の医療看護を管理する者により為される、患者への問題とする剤/化合物の投与を制御および/または許容する行為を指す。投与されることを引き起こすことは、診断および/もしくは適切な治療レジメンの決定、ならびに/または患者のための特定の剤/化合物の処方を伴うことができる。そのような処方は、例えば、処方箋のフォームを記述すること、および医療記録をアノテートすることなどを含むことができる。投与が本明細書に記載される場合、「投与されることを引き起こすこと」もまた想定される。
【0080】
「患者」、「個体」、および「対象」という用語は、交換可能に使用されて、哺乳動物、好ましくはヒトまたは非ヒト霊長動物を指すことができるが、飼いならされた哺乳動物(例えば、イヌまたはネコ)、実験室用哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット)、および農業用哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ)も指すことができる。様々な実施形態において、患者は、外来、または他の臨床的状況として、病院、精神医学的看護施設において医師または他の医療従事者の看護下にあるヒト(例えば、成人男性、成人女性、思春期男性、思春期女性、男児、女児)であることができる。様々な実施形態において、患者は、原発性免疫不全症、AIDS;がんを有する患者、およびある特定の免疫抑制薬を取っている移植患者;および免疫系に影響する遺伝性疾患(例えば、先天性無ガンマグロブリン血症、先天性IgA欠損症)を有する患者を含むが、これらに限定されない免疫不全患者または弱くなった免疫系を有する患者であってもよい。様々な実施形態において、患者は、膀胱がん、肺がん、黒色腫、および突然変異の高い率を有することが報告されている他のがんを含むが、これらに限定されない、免疫原性がんを有する(Lawrence et al.,Nature,499(7457):214-218,2013)。
【0081】
「免疫療法」という用語は、特異的な腫瘍抗原に対する枯渇性抗体を使用する処置;抗体-薬物コンジュゲートを使用する処置;共刺激または共阻害分子(免疫チェックポイント)、例えばCTLA-4、PD-1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、SIRP、CD40、CD47、シグレック8、シグレック9、シグレック15、TIGITおよびVISTAに対するアゴニスト、アンタゴニスト、または遮断抗体を使用する処置;二特異性T細胞エンゲージング抗体(BiTE(登録商標))、例えばブリナツモマブを使用する処置:生物学的応答改変剤、例えばIL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-βおよびIFN-γの投与を伴う処置;治療ワクチン、例えばシプリューセル-Tを使用する処置;カルメット-ゲラン桿菌(BCG)を使用する処置;樹状細胞ワクチン、または腫瘍抗原ペプチドワクチンを使用する処置;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を使用する処置;CAR-NK細胞を使用する処置;腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を使用する処置;養子移入された抗腫瘍T細胞(エクスビボ拡大増殖および/またはTCRトランスジェニック)を使用する処置;TALL-104細胞を使用する処置;ならびに免疫賦活剤、例えばToll様受容体(TLR)アゴニストCpGおよびイミキモドを使用する処置を含むが、これらに限定されないがん処置を指す。
【0082】
「抵抗性または難治性がん」は、例えば、化学療法、手術、放射線療法、幹細胞移植、および免疫療法を含む以前の抗がん療法に応答しない腫瘍細胞またはがんを指す。腫瘍細胞は、処置の始めにおいて抵抗性もしくは難治性であることができるか、または処置の間に抵抗性もしくは難治性となってもよい。難治性腫瘍細胞は、処置の開始時に応答しないか、または最初に短い期間にわたり応答するが、処置に応答しない腫瘍を含む。難治性腫瘍細胞はまた、抗がん療法での処置に応答するが、その後のラウンドの療法に応答しない腫瘍を含む。本発明の目的のために、難治性腫瘍細胞はまた、抗がん療法での処置により阻害されるようであるが、処置が中止された5年後までに、場合により10年後までにまたはより長期の後に再発する腫瘍を包含する。抗がん療法は、単独での化学療法剤、単独での放射線、単独での標的化療法、単独での免疫療法、単独での手術、またはこれらの組合せを用いることができる。記載の容易性のために、および限定ではなく、難治性腫瘍細胞は抵抗性腫瘍と交換可能であることが理解される。
【0083】
「ポリマー」という用語は、本明細書において使用される場合、ホモポリマー;コポリマー、例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーなど;ならびに三元コポリマー;ならびにこれらのブレンド物および改変物を一般に含むが、これらに限定されない。さらには、他に特に限定されなければ、「ポリマー」という用語は、材料のすべての可能な幾何学的構成を含む。これらの構成は、アイソタクチックの、シンジオタクチックの、およびランダムな対称性を含むが、これらに限定されない。
【0084】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位から構成されるポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、天然に存在する核酸、例えばデオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)の他に、核酸アナログを含む。核酸アナログは、天然に存在しない塩基、天然に存在するホスホジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの連結に関与するヌクレオチドを含むか、またはホスホジエステル結合以外の連結を通じて取り付けられた塩基を含むものを含む。そのため、ヌクレオチドアナログは、例えばおよび限定なく、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、およびペプチド-核酸(PNA)などを含む。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、自動化されたDNA合成装置を使用して、合成され得る。「核酸」という用語は典型的には大きいポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」という用語は典型的には短いポリヌクレオチド、一般に約50個以下のヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列により表される場合(すなわち、A、T、G、C)、これはまた、「U」が「T」を置き換えるRNA配列(すなわち、A、U、G、C)を含むことが理解される。
【0085】
従来の表記は、ポリヌクレオチド配列を記載するために本明細書において使用される:一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’末端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’-方向として参照される。新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’への付加の方向は転写方向として参照される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は「コーディング鎖」として参照され;そのDNAから転写されるmRNAと同じ配列を有し、およびRNA転写物の5’末端に対して5’に位置するDNA鎖上の配列は「上流配列」として参照され;RNAと同じ配列を有し、およびコーディングRNA転写物の3’末端に対して3’にあるDNA鎖上の配列は「下流配列」として参照される。
【0086】
「相補的な」は、2つのポリヌクレオチドの相互作用性表面のトポロジカルな適合性またはマッチングを指す。そのため、2つの分子は相補的として記載することが可能であり、さらには、接触表面の特徴は互いに相補的である。第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列に実質的に同一であるか、または第1のポリヌクレオチドがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズできる場合に、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドに相補的である。
【0087】
「~に特異的にハイブリダイズする」または「特異的なハイブリダイゼーション」または「~に選択的にハイブリダイズする」は、特定のヌクレオチド配列がDNAまたはRNAの複雑な混合物(例えば、全細胞)中に存在する場合に、核酸分子がストリンジェントな条件下でその配列に優先的に結合、二重化(duplexing)、またはハイブリダイズすることを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブがその標的部分配列に優先的にハイブリダイズし、および他の配列により低い程度でハイブリダイズするか、または全くハイブリダイズしない条件を指す。核酸ハイブリダイゼーション実験、例えばサザンおよびノーザンハイブリダイゼーションの文脈における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーションの洗浄条件」は、配列依存的であり、異なる環境上のパラメーターの下で異なる。核酸のハイブリダイゼーションに関する大規模なガイドは、Tijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes,part I,chapter 2,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”,Elsevier,N.Y.;Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,3.sup.rd ed.,NY;およびAusubel et al.編,Current Edition,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,NYに見出され得る。
【0088】
一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、定義されたイオン強度およびpHにおいて特有の配列についての熱的融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列の50%が、完璧にマッチしたプローブにハイブリダイズする(定義されたイオン強度およびpH下での)温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブについてのTmに等しくなるように選択される。サザンまたはノーザンブロットにおけるフィルター上での約100個より多くの相補的な残基を有する相補的な核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃で1mgのヘパリンを含む50%のホルマリンであり、ハイブリダイゼーションは終夜実行される。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、0.15M NaCl、72℃、約15分間である。ストリンジェントな洗浄条件の例は、0.2×SSCでの洗浄、65℃、15分間である。SSC緩衝剤の説明のためにSambrook et al.を参照。高ストリンジェンシーの洗浄は、バックグラウンドプローブシグナルを除去するために低ストリンジェンシーの洗浄により先行され得る。例えば、約100個より多くのヌクレオチドの、二重鎖のための例示的な中ストリンジェンシーの洗浄は、1×SSC、45℃、15分間である。例えば、約100個より多くのヌクレオチドの、二重鎖のための例示的な低ストリンジェンシーの洗浄は、4~6×SSC、40℃、15分間である。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関連のプローブについて観察されるシグナル対ノイズ比よりも2倍の(またはより高い)シグナル対ノイズ比は、特異的なハイブリダイゼーションの検出を指し示す。
【0089】
「プライマー」は、指定されるポリヌクレオチド鋳型に特異的にハイブリダイズし、および相補的なポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供する能力を有するポリヌクレオチドを指す。そのような合成は、ポリヌクレオチドプライマーが、合成が誘導される条件下に置かれた場合に、すなわち、ヌクレオチド、相補的なポリヌクレオチド鋳型、および重合のための剤、例えばDNAポリメラーゼの存在下で起こる。プライマーは典型的には一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。プライマーは典型的にはデオキシリボ核酸であるが、多様な合成のおよび天然に存在するプライマーが多くの応用のために有用である。プライマーは、合成の開始のための部位として役立つためにプライマーがハイブリダイズするように設計された鋳型に相補的であるが、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。そのような場合において、鋳型へのプライマーの特異的なハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば、色素生成性、放射性、または蛍光性の部分で標識され、検出可能な部分として使用され得る。
【0090】
「プローブ」は、ポリヌクレオチドに関して使用される場合、別のポリヌクレオチドの指定される配列に特異的にハイブリダイズする能力を有するポリヌクレオチドを指す。プローブは、標的となる相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするが、鋳型の正確な相補的配列を反映する必要はない。そのような場合において、標的へのプローブの特異的なハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プローブは、例えば、色素生成性、放射性、または蛍光性の部分で標識され、検出可能な部分として使用され得る。プローブが相補的なポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供する事例において、プローブはまたプライマーであることができる。
【0091】
「ベクター」は、それに連結された別の核酸を細胞に導入するために使用され得るポリヌクレオチドである。1つの種類のベクターは「プラスミド」であり、これは、追加の核酸セグメントがそれにライゲートされ得る直鎖状または環状二本鎖DNA分子を指す。別の種類のベクターはウイルスベクター(例えば、複製欠陥性レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)であり、追加のDNAセグメントはウイルスゲノムに導入され得る。ある特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞中で自律複製する能力を有する(例えば、細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入で宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。「発現ベクター」は、選択されたポリヌクレオチドの発現を指令することができるベクターの種類である。
【0092】
「調節配列」は、それが作動可能に連結された核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、または位置)に影響する核酸である。調節配列は、例えば、調節される核酸に対して直接的に、または1つ以上の他の分子(例えば、調節配列および/もしくは核酸に結合するポリペプチド)の作用を通じてその効果を発揮することができる。調節配列の例は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。調節配列のさらなる例は、例えば、Goeddel,1990,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press,San Diego,Calif.およびBaron et al.,1995,Nucleic Acids Res.23:3605-06に記載されている。ヌクレオチド配列は、調節配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、または位置)に影響する場合に、調節配列に「作動可能に連結されている」。
【0093】
「宿主細胞」は、本開示のポリヌクレオチドを発現させるために使用され得る細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌であることができるか、または真核生物、例えば、単細胞の真核生物(例えば、酵母もしくは他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコもしくはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、もしくは昆虫細胞)もしくはハイブリドーマであることができる。典型的には、宿主細胞は、ポリペプチドをコードする核酸を用いて形質転換またはトランスフェクトされ得る培養される細胞であり、該核酸は次に宿主細胞中で発現され得る。「組換え宿主細胞」という語句は、発現されるべき核酸を用いて形質転換またはトランスフェクトされている宿主細胞を表すために使用され得る。宿主細胞はまた、核酸を含むが、調節配列が該核酸と作動可能に連結されるように宿主細胞に導入されるまで、所望されるレベルで該核酸を発現しない細胞であることができる。宿主細胞という用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫もまた指すことが理解される。ある特定の改変が、例えば、突然変異または環境上の影響に起因して、後続する世代において起こり得るので、そのような子孫は実際には親細胞と同一でないことがあるが、該子孫は、本明細書において使用される場合の該用語の範囲内に依然として含まれる。
【0094】
「単離された分子」(分子は、例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドである)という用語は、その起源または由来となる供給源を理由として、(1)そのネイティブな状態においてそれと一緒にある天然に随伴される成分と随伴されていないか、(2)同じ種からの他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種からの細胞により発現されるか、または(4)天然に存在しない分子である。そのため、化学的に合成されたか、または分子が天然に起源とする細胞とは異なる細胞システムにおいて発現された分子は、その天然に随伴される成分から「単離されている」。分子はまた、当技術分野において周知の精製技術を使用して、単離により天然に随伴される成分を実質的に含まないようにされてもよい。分子の純度または均質性は、当技術分野において周知の多数の手段によりアッセイされてもよい。例えば、ポリペプチド試料の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動および当技術分野において周知の技術を使用してポリペプチドを可視化するためのゲルの染色を使用してアッセイされてもよい。ある特定の目的のために、より高い分解能が、HPLCまたは精製のための当技術分野において周知の他の手段を使用することにより提供されてもよい。
【0095】
試料の少なくとも約60%~75%が単一の種のポリペプチドを呈する場合に、タンパク質またはポリペプチドは、「実質的に純粋」、「実質的に均質」、または「実質的に精製されている」。ポリペプチドまたはタンパク質は単量体または多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、典型的には、タンパク質試料の約50%、60%、70%、80%または90% W/W、より通常は約95% W/Wを構成し、好ましくは99%を上回って純粋である。タンパク質の純度または均質性は、当技術分野において周知の多数の手段、例えばタンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いて当技術分野において周知の染色剤を用いてゲルを染色して単一のポリペプチドバンドを可視化することにより指し示されてもよい。ある特定の目的のために、より高い分解能が、HPLCまたは精製のための当技術分野において周知の他の手段を使用することにより提供されてもよい。
【0096】
「標識」または「標識された」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体中の別の分子の組込みを指す。1つの実施形態において、標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組込み、またはマーキングされたアビジン(例えば、光学的なもしくは熱量測定の方法により検出され得る蛍光マーカーもしくは酵素活性を含有するストレプトアビジン)により検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの取付けである。別の実施形態において、標識またはマーカーは、治療剤、例えば、薬物コンジュゲートまたは毒素であることができる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野において公知であり、使用され得る。ポリペプチドのための標識の例は、以下:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合性部位、金属結合性ドメイン、エピトープタグ)、磁気的な剤、例えばガドリニウムキレート、毒素、例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログを含むが、これらに限定されない。様々な実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を低減させるために様々な長さのスペーサーアームにより取り付けられる。
【0097】
「異種」という用語は、本明細書において使用される場合、ネイティブでも、天然に見出されるものでもない、例えば、既存の天然の組成物または状態を、別の供給源に由来するもので置き換えることにより達成され得る、組成物または状態を指す。同様に、タンパク質が天然に発現される生物以外の生物におけるそのタンパク質の発現は異種発現システムおよび異種タンパク質を構成する。
【0098】
本明細書に記載される開示の態様および実施形態は、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および実施形態を含むことが理解される。
【0099】
本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に方向付けられたバリエーションを含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0100】
本明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「または」、および「the」は、文脈が他に明確に規定しなければ、複数の指示対象を含む。本明細書に記載される開示の態様およびバリエーションは、「からなる」および/または「から本質的になる」態様およびバリエーションを含むことが理解される。
【0101】
腫瘍壊死因子リガンド
TNFは、免疫プロセスのために要求される免疫調節性サイトカインである。TNFの調節されない活性は、炎症性疾患の発症に繋がり得る。細胞中の過剰な量の発現されたTNFは、関節リウマチ、クローン病、乾癬性関節炎、および炎症性腸疾患を含む、免疫疾患の発症と関連付けられる。TNFの機能は、その2つの受容体、TNF受容体1(TNFR1)およびTNF受容体2(TNFR2)への結合を要求する。TNFとTNFRとの間の相互作用の遮断は、炎症性または自己免疫疾患の処置における療法として成功裏に開発されている。
【0102】
様々な実施形態において、本発明の二機能性アンタゴニストは、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む二機能性分子である。様々な実施形態において、二機能性分子は、配列番号1~5に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するTNF-αリガンドに結合する能力を有する:
ヒトTNFR1 ECD IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAGFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTT(配列番号1)
ヒトTNFR2 ECD
LPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD(配列番号2)
ヒトTNFR1/CRD1-TNFR2/CRD2/3/4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD
(配列番号3)
ヒトTNFR1/CRD1/2/3-TNFR2/CRD4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD(配列番号4)
TNFR1/ΔCRD4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVC(配列番号5)
【0103】
様々な実施形態において、二機能性分子は、表2に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するTNF-αリガンドに結合する能力を有する:
【0104】
TGF-βリガンド
TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3を含む、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)は、細胞表面上の高親和性受容体TGFβRIIおよびTGFβRIIBの結合および活性化を通じてSmad2/3シグナル伝達を媒介する。TGF-βは、免疫機能、細胞増殖および分化、上皮間葉転換、線維化、造血、筋発生、骨リモデリング、がんの進行および転移を含む、広範囲の生物学的活性の調節において不可欠な役割を果たす。上昇したTGF-βレベルおよび結果的に増加したSmad2/3シグナル伝達は、がん、貧血、骨転移、骨減少症、線維症、疼痛、筋肉喪失、インスリン抵抗性、慢性腎臓疾患、肝臓疾患、および心臓血管疾患を含む多くの疾患状態の病理発生および進行に結び付けられている。
【0105】
様々な実施形態において、本発明の二機能性分子は、配列番号6~9に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するTGF-βリガンドに結合する能力を有する:
ヒトTGF-β受容体IIアイソフォーム1
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQVTGISLLPPLGVAISVIIIFYCYRVNRQQKLSSTWETGKTRKLMEFSEHCAIILEDDRSDISSTCANNINHNTELLPIELDTLVGKGRFAEVYKAKLKQNTSEQFETVAVKIFPYEEYASWKTEKDIFSDINLKHENILQFLTAEERKTELGKQYWLITAFHAKGNLQEYLTRHVISWEDLRKLGSSLARGIAHLHSDHTPCGRPKMPIVHRDLKSSNILVKNDLTCCLCDFGLSLRLDPTLSVDDLANSGQVGTARYMAPEVLESRMNLENVESFKQTDVYSMALVLWEMTSRCNAVGEVKDYEPPFGSKVREHPCVESMKDNVLRDRGRPEIPSFWLNHQGIQMVCETLTECWDHDPEARLTAQCVAERFSELEHLDRLSGRSCSEEKIPEDGSLNTTK
(配列番号6)
ヒトTGF-β受容体II-ECDアイソフォーム1(TGF-β RIIB-ECD)
TIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号7)
ヒトTGF-β受容体IIアイソフォーム2
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQVTGISLLPPLGVAISVIIIFYCYRVNRQQKLSSTWETGKTRKLMEFSEHCAIILEDDRSDISSTCANNINHNTELLPIELDTLVGKGRFAEVYKAKLKQNTSEQFETVAVKIFPYEEYASWKTEKDIFSDINLKHENILQFLTAEERKTELGKQYWLITAFHAKGNLQEYLTRHVISWEDLRKLGSSLARGIAHLHSDHTPCGRPKMPIVHRDLKSSNILVKNDLTCCLCDFGLSLRLDPTLSVDDLANSGQVGTARYMAPEVLESRMNLENVESFKQTDVYSMALVLWEMTSRCNAVGEVKDYEPPFGSKVREHPCVESMKDNVLRDRGRPEIPSFWLNHQGIQMVCETLTECWDHDPEARLTAQCVAERFSELEHLDRLSGRSCSEEKIPEDGSLNTTK(配列番号8)
ヒトTGF-β受容体II-ECDアイソフォーム2(TGF-β RIIA-ECD)
TIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号9)
【0106】
様々な実施形態において、二機能性分子は、表3に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するTGF-βリガンドに結合する能力を有する:
【0107】
TNF-αおよび/またはTGF-β抗体ならびに抗体断片
TNF-αおよび/またはTGF-βリガンドおよび/または受容体に結合する新規の抗体を生成する方法は当業者に公知である。例えば、TNF-αおよび/またはTGF-βリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する方法は、検出可能な免疫応答を刺激するために有効な量の、TNF-αおよび/またはTGF-βリガンドを含む免疫原性組成物をマウスに投与すること、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓からの細胞)を得、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させて抗体産生ハイブリドーマを得ること、ならびに抗体産生ハイブリドーマを試験して、TNF-αおよび/またはTGF-βリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定することを含んでもよい。ハイブリドーマが一旦得られたら、ハイブリドーマは、任意選択的に、ハイブリドーマ由来細胞がTNF-αおよび/またはTGF-βリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件において、細胞培養において繁殖させることができる。モノクローナル抗体は、細胞培養物から精製されてもよい。抗原/抗体相互作用を試験して特に望ましい抗体を同定するために様々な異なる技術が次に利用可能である。
【0108】
必要な特異性の抗体を製造または単離する他の好適な方法が使用可能であり、これは、例えば、ライブラリーから組換え抗体を選択するか、またはヒト抗体の完全なレパートリーを産生する能力を有するトランスジェニック動物(例えば、マウス)の免疫化に依拠する方法を含む。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),90:2551-2555,1993;Jakobovits et al.,Nature,362:255-258,1993;Lonberg et al.、米国特許第5,545,806号;およびSurani et al.、米国特許第5,545,807号を参照。
【0109】
抗体は多数の仕方で操作され得る。抗体は、単鎖抗体(小モジュラー免疫医薬品またはSMIPs(商標)を含む)、FabおよびF(ab’)2断片などとして作られ得る。抗体は、ヒト化、キメラ化、脱免疫化、または完全ヒト抗体であることができる。多数の刊行物は、多くの種類の抗体およびそのような抗体を操作する方法を記載している。例えば、米国特許第6,355,245号;同第6,180,370号;同第5,693,762号;同第6,407,213号;同第6,548,640号;同第5,565,332号;同第5,225,539号;同第6,103,889号;および同第5,260,203号を参照。
【0110】
キメラ抗体は、当技術分野において公知の組換えDNA技術により製造され得る。例えば、マウス(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素で消化され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等の部分で置換される(Robinson et al.、国際公開PCT/US86/02269;Akira、et al.、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi,M.、欧州特許出願第171,496号;Morrison et al.、欧州特許出願第173,494号;Neuberger et al.、国際公開第86/01533号;Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Cabilly et al.、欧州特許出願第125,023号;Better et al.,Science,240:1041-1043,1988;Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),84:3439-3443,1987;Liu et al.,J.Immunol.,139:3521-3526,1987;Sun et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),84:214-218,1987;Nishimura et al.,Canc.Res.,47:999-1005,1987;Wood et al.,Nature,314:446-449,1985;およびShaw et al.,J.NatlCancer Inst.,80:1553-1559,1988を参照)。
【0111】
抗体をヒト化する方法は当技術分野において記載されている。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒトCDRに加えて、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、Winterおよび共同研究者ら(Jones et al.,Nature,321:522-525,1986;Riechmann et al.,Nature,332:323-327,1988;Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536,1988)の方法にしたがって、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより本質的に行われ得る。よって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変領域よりも実質的に少ない部分が、非ヒト種からの対応する配列により置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、一部の超可変領域残基および場合により一部のフレームワーク領域残基が齧歯動物抗体における類似の部位からの残基により置換されたヒト抗体である。
【0112】
Queen et alの米国特許第5,693,761号は、抗体をヒト化するためのWinter et al.における精密化を開示しており、これは、立体的なまたは他の化学的な不適合のために、マウス抗体において見出される結合を可能とするコンホメーションへのCDRのフォールディングに干渉する、ヒト化されたフレームワークにおける構造モチーフにおける問題にアビディティ喪失を帰せる前提に基づく。この問題に対処するために、Queenは、ヒト化されるべきマウス抗体のフレームワーク配列に密接に相同的な直鎖状ペプチド配列中のヒトフレームワーク配列を使用することを教示している。よって、Queenの方法は、種の間でフレームワーク配列を比較することに焦点を当てている。典型的には、すべての利用可能なヒト可変領域配列が特定のマウス配列と比較され、対応するフレームワーク残基の間の同一性パーセンテージが算出される。ヒト化プロジェクトのためのフレームワーク配列を提供するために、最も高いパーセンテージを有するヒト可変領域が選択される。Queenはまた、ヒト化されたフレームワークにおいて、結合を可能とするコンホメーションにおけるCDRをサポートするために不可欠なマウスフレームワークからのある特定のアミノ酸残基を保持することが重要であることを教示している。潜在的な不可欠性は分子モデルから評価される。保持のための候補残基は、典型的には、直鎖状配列においてCDRに隣接するか、または物理的に任意のCDR残基の6Å以内にあるものである。
【0113】
「フレームワークシャッフリング」として参照される、抗体をヒト化する別の方法は、個々のヒト生殖系列フレームワークのプールにインフレームで融合された非ヒトCDR可変領域を有するコンビナトリアルライブラリーを生成することに依拠する(Dall’Acqua et al.,Methods,36:43,2005)。ライブラリーは次に、良好な結合を保持するヒト化抗体をコードするクローンを同定するためにスクリーニングされる。
【0114】
完全ヒト抗体を作る方法は当技術分野において記載されている。例として、抗TNF-α抗体またはその抗原結合性断片を製造する方法は、ファージ上のヒト抗体のライブラリーを合成するステップ、TNF-αポリペプチドまたはその抗体結合性部分を用いてライブラリーをスクリーニングするステップ、TNF-αポリペプチドに結合するファージを単離するステップ、およびファージから抗体を得るステップを含む。別の例として、ファージディスプレイ技術における使用のための抗体のライブラリーを調製する1つの方法は、TNF-αポリペプチドまたはその抗原性部分を用いてヒト免疫グロブリン座位を含む非ヒト動物を免疫化して免疫応答を生じさせるステップ、免疫化された動物から抗体産生細胞を抽出するステップ;抽出された細胞から本発明の抗体の重鎖および軽鎖をコードするRNAを単離するステップ、RNAを逆転写してcDNAを製造するステップ、プライマーを使用してcDNAを増幅するステップ、およびcDNAをファージディスプレイベクターに挿入して、抗体をファージ上に発現させるステップを含む。本発明の組換え抗TNF-α抗体は、この仕方で得られてもよい。
【0115】
本発明の組換えヒト抗TNF-αおよび/またはTGF-β抗体はまた、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。好ましくは、ライブラリーは、B細胞から単離されるmRNAから調製されるヒトVLおよびVH cDNAを使用して生成されるscFvファージディスプレイライブラリーである。そのようなライブラリーを調製およびスクリーニングする方法は当技術分野において公知である。ファージディスプレイライブラリーを生成するためのキットは商業的に入手可能である(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標) phage display kit、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおいて使用され得る他の方法および試薬もある(例えば、米国特許第5,223,409号;PCT国際公開第92/18619号、国際公開第91/17271号、国際公開第92/20791号、国際公開第92/15679号、国際公開第93/01288号、国際公開第92/01047号、国際公開第92/09690号;Fuchs et al.,Bio/Technology,9:1370-1372(1991);Hay et al.,Hum.Antibod.Hybridomas,3:81-85,1992;Huse et al.,Science,246:1275-1281,1989;McCafferty et al.,Nature,348:552-554,1990;Griffiths et al.,EMBO J.,12:725-734,1993;Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,226:889-896,1992;Clackson et al.,Nature,352:624-628,1991;Gram et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),89:3576-3580,1992;Garrad et al.,Bio/Technology,9:1373-1377,1991;Hoogenboom et al.,Nuc.Acid Res.,19:4133-4137,1991;およびBarbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),88:7978-7982,1991を参照;すべては参照により本明細書に組み込まれる)。
【0116】
ヒト抗体はまた、ヒトIgE抗原を用いて、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖座位の一部または全部をそのゲノム内に含む非ヒトトランスジェニック動物、例えば、XenoMouse(商標)動物(Abgenix,Inc./Amgen,Inc.--Fremont,Calif.)を免疫化することにより製造される。XenoMouse(商標)マウスは、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖座位の大きい断片を含み、ならびにマウス抗体産生が欠損した操作されたマウス系統である。例えば、Green et al.,Nature Genetics,7:13-21,1994ならびに米国特許第5,916,771号、同第5,939,598号、同第5,985,615号、同第5,998,209号、同第6,075,181号、同第6,091,001号、同第6,114,598号、同第6,130,364号、同第6,162,963号および同第6,150,584号を参照。XenoMouse(商標)マウスは、完全ヒト抗体の成体様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的なヒト抗体を生成する。一部の実施形態において、XenoMouse(商標)マウスは、酵母人工染色体(YAC)中のメガ塩基サイズの、ヒト重鎖座位およびカッパ軽鎖座位の生殖系列構成断片の導入を通じてヒト抗体V遺伝子レパートリーの約80%を含有する。他の実施形態において、XenoMouse(商標)マウスは、ヒトラムダ軽鎖座位のおおよそすべてをさらに含有する。Mendez et al.,Nature Genetics,15:146-156,1997;Green and Jakobovits,J.Exp.Med.,188:483-495,1998;および国際公開第98/24893号を参照。1つの態様において、本発明は、TNF-αおよび/またはTGF-βポリペプチドを用いてヒト免疫グロブリン座位を含む非ヒトトランスジェニック動物を免疫化することにより非ヒト、非マウス動物から抗TNF-αおよび/またはTGF-β抗体を製造する方法を提供する。上記において参照される文献に記載される方法を使用してそのような動物を製造することができる。
【0117】
抗TNF-α抗体
FDA承認済みの抗TNF-α抗体、アダリムマブ(Abbvie HUMIRA(登録商標);DrugBank DB00051)は、ヒトを処置するために使用されている。本発明の様々な実施形態において、抗TNF-α抗体は、配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNVYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号10)
配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQRYNRAPYTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号11)
または配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号11に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片;
配列番号12に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSS(配列番号12)
配列番号13に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQRYNRAPYTFGQGTKVEIK(配列番号13)
または配列番号12に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号13に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片である。
【0118】
様々な実施形態において、本発明は、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方;重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む、抗体であって;重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域が、配列番号10、11、13、または13に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み;抗体がヒトTNF-αに特異的に結合する、抗体を提供する。
【0119】
FDA承認済みの抗TNF-α抗体、インフリキシマブ(Centocor REMICADE(登録商標);DrugBank DB00065)は、ヒトを処置するために使用されている。本発明の様々な実施形態において、抗TNF-α抗体は、配列番号14に記載される重鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFIFSNHWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRSKSINSATHYAESVKGRFTISRDDSKSAVYLQMTDLRTEDTGVYYCSRNYYGSTYDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号14)
配列番号15に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DILLTQSPAILSVSPGERVSFSCRASQFVGSSIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESMSGIPSRFSGSGSGTDFTLSINTVESEDIADYYCQQSHSWPFTFGSGTNLEVKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号15)
または配列番号14に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号15に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片;
配列番号16に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFIFSNHWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRSKSINSATHYAESVKGRFTISRDDSKSAVYLQMTDLRTEDTGVYYCSRNYYGSTYDYWGQGTTLTVSS
(配列番号16)
配列番号17に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DILLTQSPAILSVSPGERVSFSCRASQFVGSSIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESMSGIPSRFSGSGSGTDFTLSINTVESEDIADYYCQQSHSWPFTFGSGTNLEVK(配列番号17)
または配列番号16に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号17に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片である。
【0120】
様々な実施形態において、本発明は、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方;重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む、抗体であって;重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域が、配列番号14、15、16、または17に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み;抗体がヒトTNF-αに特異的に結合する、抗体を提供する。
【0121】
FDA承認済みの抗TNF-α抗体、セルトリズマブ-ペゴル(UCB CIMZIA(登録商標);DrugBank DB08904)は、ヒトを処置するために使用されている。本発明の様々な実施形態において、抗TNF-α抗体は、配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYVFTDYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYIGEPIYADSVKGRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYRSYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCAA(配列番号18)
配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGTNVAWYQQKPGKAPKALIYSASFLYSGVPYRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)
または配列番号18に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号19に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片;
配列番号20に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYVFTDYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYIGEPIYADSVKGRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYRSYAMDYWGQGTLVTVSS
(配列番号20)
配列番号21に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGTNVAWYQQKPGKAPKALIYSASFLYSGVPYRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPLTFGQGTKVEIK(配列番号21)
または配列番号20に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号21に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片である。
【0122】
様々な実施形態において、本発明は、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方;重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む、抗体であって;重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域が、配列番号18、19、20、または21に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み;抗体がヒトTNF-αに特異的に結合する、抗体を提供する。
【0123】
FDA承認済みの抗TNF-α抗体、ゴリムマブ(Janssen Biotech SIMPONI(登録商標);DrugBank DB06674)は、ヒトを処置するために使用されている。本発明の様々な実施形態において、抗TNF-α抗体は、配列番号22に記載される重鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFIFSSYAMHWVRQAPGNGLEWVAFMSYDGSNKKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGIAAGGNYYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)
配列番号23に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVYSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号23)
または配列番号22に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号23に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片;
配列番号24に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFIFSSYAMHWVRQAPGNGLEWVAFMSYDGSNKKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGIAAGGNYYYYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号24)
配列番号25に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVYSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPFTFGPGTKVDIK(配列番号25)
または配列番号24に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号25に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片である。
【0124】
様々な実施形態において、本発明は、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方;重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む、抗体であって;重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域が、配列番号22、23、24、または25に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み;抗体がヒトTNF-αに特異的に結合する、抗体を提供する。
【0125】
抗TGF-β抗体
本発明の様々な実施形態において、抗TGF-β抗体は、配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号26)
配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKH KVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号27)
または配列番号26に記載される重鎖アミノ酸配列および配列番号27に記載される軽鎖アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片;
配列番号28に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSS
(配列番号28)
配列番号29に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片:
ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIK(配列番号29)
または配列番号28に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号29に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むヒト抗体もしくは抗原結合性断片
である抗TGF-β抗体である。
【0126】
様々な実施形態において、本発明は、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方;重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む、抗体であって;重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域が、配列番号26、27、28および29に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む;抗体がヒトTGF-βに特異的に結合する、抗体を提供する。
【0127】
リンカー
様々な実施形態において、TNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子は、TGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子にリンカーおよび/またはヒンジリンカーペプチドにより取り付けられる。リンカーまたはヒンジリンカーは、二次構造を相対的に含まないか、またはα-ヘリックスコンホメーションを示す5、10、15、20、30、40またはより多く個数の間のアミノ酸の人工的な配列であってもよい。
【0128】
ペプチドリンカーは、タンパク質ドメインの間の共有結合性連結ならびに追加の構造的および/または空間的柔軟性を提供する。当技術分野において公知のように、ペプチドリンカーは、柔軟なアミノ酸残基、例えばグリシンおよびセリンを含有する。様々な実施形態において、ペプチドリンカーは1~100個のアミノ酸を含んでもよい。様々な実施形態において、スペーサーはGGGSGGGS(配列番号51)のモチーフを含有することができる。他の実施形態において、リンカーはGGGGS(配列番号54)nのモチーフを含有することができ、nは1~10の整数である。他の実施形態において、リンカーはまた、グリシンおよびセリン以外のアミノ酸を含有することができる。別の実施形態において、リンカーは、α-ヘリックスコンホメーションの配列、例えばAEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号49)を含むがこれに限定されない、他のタンパク質モチーフを含有することができる。様々な実施形態において、リンカーの長さおよび組成は、活性、または、発現レベルおよび凝集傾向を含むがこれらに限定されない、開発可能性を最適化するためにチューニングされ得る。別の実施形態において、ペプチドリンカーは、単純な化学結合、例えば、アミド結合(例えば、PEGの化学的コンジュゲーションによるもの)であることができる。
【0129】
【0130】
二機能性アンタゴニスト分子
本発明は、TNF-αシグナル伝達およびTGF-βシグナル伝達を強力な方式において同時に中和するために特異的に設計されており、ならびにTNF-αリガンドに特異的に結合する第1の抗原結合性分子およびTGF-βリガンドに特異的に結合する第2の抗原結合性分子を含む、新規のポリペプチドベースの二機能性アンタゴニスト分子を提供する。様々な実施形態において、二機能性分子は、TNF-αに特異的に結合する単離された抗体、またはその抗原結合性断片、およびTGF-βリガンドに特異的に結合する単離された抗体、またはその抗原結合性断片を含む。重要なことに、これらの二機能性アンタゴニストはまた、有利な特性、例えば生産可能性、安定性、結合親和性、生物学的活性、ある特定の細胞の特異的な標的化、標的化効率および低減した毒性を提供する。
【0131】
例示的な二機能性アンタゴニスト分子
様々な実施形態において、本発明の二機能性アンタゴニスト分子は、表5に記載されている設計されたおよび融合パートナーを含む分子の群から選択される:
【0132】
様々な実施形態において、本発明の二機能性アンタゴニスト分子は、表6に記載されている分子の群から選択される:
【0133】
ポリヌクレオチド
別の態様において、本開示は、本開示の二機能性アンタゴニスト分子をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。対象核酸は一本鎖または二本鎖であってもよい。そのような核酸はDNAまたはRNA分子であってもよい。DNAは、例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、PCRにより増幅されたDNA、およびこれらの組合せを含む。二機能性アンタゴニスト分子をコードするゲノムDNAは、多数の種のために入手可能なゲノムライブラリーから得られる。合成DNAは、オーバーラップするオリゴヌクレオチド断片の化学合成、続いてコーディング領域の部分または全体および隣接配列を再構成するための断片のアセンブリーにより入手可能である。RNAは、mRNAの高レベルの合成を指令する原核発現ベクター、例えばT7プロモーターを使用するベクターおよびRNAポリメラーゼから得られ得る。cDNAは、二機能性アンタゴニスト分子を発現する様々な組織から単離されるmRNAから調製されるライブラリーから得られる。本開示のDNA分子は、全長遺伝子の他に、そのポリヌクレオチドおよび断片を含む。全長遺伝子はまた、N末端シグナル配列をコードする配列を含んでもよい。
【0134】
様々な実施形態において、単離された核酸分子は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含み、および本明細書に記載される少なくとも1つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。様々な実施形態において、核酸分子は、本明細書に記載されるリンカーまたはヒンジリンカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0135】
様々な実施形態において、本開示の組換え核酸は、発現構築物中で1つ以上の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結されていてもよい。調節配列は当技術分野において認識されており、二機能性アンタゴニスト分子の発現を指令するために選択される。よって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。典型的には、前記1つ以上の調節性ヌクレオチド配列は、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列を含んでもよいが、これらに限定されない。当技術分野において公知のような構成的または誘導性プロモーターは本開示により想定される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または1つより多くのプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであってもよい。発現構築物は、エピソーム、例えばプラスミド上で細胞中に存在してもよく、または発現構築物は染色体に挿入されてもよい。様々な実施形態において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能とするための選択マーカー遺伝子を含有する。選択マーカー遺伝子は当技術分野において周知であり、使用される宿主細胞と共に変動する。
【0136】
本開示の別の態様において、対象核酸は、二機能性アンタゴニスト分子をコードするヌクレオチド配列を含み、および少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された発現ベクター中で提供される。「発現ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド配列からポリペプチドを発現させるためのプラスミド、ファージ、ウイルスまたはベクターを指す。宿主細胞中での発現のために好適なベクターは容易に入手可能であり、核酸分子は、標準的な組換えDNA技術を使用してベクターに挿入される。そのようなベクターは、DNA配列に作動可能に連結された場合に、二機能性アンタゴニスト分子をコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得るDNA配列の発現を制御する多様な発現制御配列を含むことができる。そのような有用な発現制御配列は、例えば、SV40の早期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス最初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、その発現がT7 RNAポリメラーゼにより指令されるT7プロモーター、ファージラムダの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質のための制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のためのプロモーター、酸ホスファターゼ、例えば、PhoSのプロモーター、酵母a接合因子のプロモーター、バキュロウイルスシステムのポリヘドロンプロモーターならびに原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知の他の配列、ならびにこれらの様々な組合せを含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現が所望されるタンパク質の種類などの要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、ベクターによりコードされる任意の他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーのコピー数および発現を制御する能力もまた考慮されるべきである。
【0137】
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子、またはその部分を、原核細胞、真核細胞(酵母、鳥、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方における発現のために好適なベクターにライゲートすることにより製造され得る。組換え二機能性アンタゴニスト分子の製造のための発現媒体はプラスミドおよび他のベクターを含む。例えば、好適なベクターは、原核細胞、例えば大腸菌中での発現のための種類のプラスミド:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミドを含む。
【0138】
一部の哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの繁殖を促すための原核性配列、および真核細胞中で発現される1つ以上の真核性転写単位の両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションのために好適な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を促すために、細菌プラスミド、例えばpBR322からの配列で改変されている。代替的に、ウイルス、例えばウシパピローマウイルス(BPV-1)、またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)の誘導体は、真核細胞中でのタンパク質の一過性発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現システムの例は、以下の遺伝子療法送達システムの記載において見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる様々な方法が当技術分野において周知である。原核細胞および真核細胞の両方のための他の好適な発現システムの他に、一般的な組換え手順について、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989) Chapter 16および17を参照。一部の事例において、バキュロウイルス発現システムの使用により組換えポリペプチドを発現させることが望ましいことがある。そのようなバキュロウイルス発現システムの例は、pVL由来ベクター(例えばpVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えばpAcUW1)、ならびにpBlueBac由来ベクター(例えばB-gal含有pBlueBac III)を含む。
【0139】
様々な実施形態において、ベクターは、CHO細胞中での対象となる二機能性アンタゴニスト分子の製造のために設計され、これは例えばPcmv-Scriptベクター(Stratagene、La Jolla、Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega、Madison、Wis.)である。明らかなように、対象遺伝子構築物は、例えば、精製のための、融合タンパク質またはバリアントタンパク質を含む、タンパク質を製造するために、培養において繁殖された細胞中での対象となる二機能性アンタゴニスト分子の発現を引き起こすために使用され得る。
【0140】
よって、本開示は、対象となる二機能性アンタゴニスト分子を製造する方法にさらに関する。例えば、二機能性アンタゴニスト分子をコードする発現ベクターを用いてトランスフェクトされた宿主細胞は、二機能性アンタゴニスト分子の発現が起こることを可能とするための適切な条件下で培養され得る。二機能性アンタゴニスト分子は、分泌され、細胞と、二機能性アンタゴニスト分子を含有する培地との混合物から単離されてもよい。代替的に、二機能性アンタゴニスト分子は、細胞質にまたは膜画分中に保持され、細胞が採取され、溶解され、タンパク質が単離されてもよい。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副生成物を含む。細胞培養のための好適な培地は当技術分野において周知である。
【0141】
本開示のポリペプチドおよびタンパク質は、当業者に周知のタンパク質精製技術にしたがって精製され得る。これらの技術は、1つのレベルにおいて、タンパク質性および非タンパク質性画分の粗分別を伴う。他のタンパク質からペプチドやポリペプチドが分離されたら、関心対象のペプチドまたはポリペプチドは、部分的なまたは完全な精製(または均質性までの精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製され得る。「単離されたポリペプチド」または「精製されたポリペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、該ポリペプチドがその天然に取得可能な状態と比べて任意の程度まで精製されている、他の成分から単離可能な、組成物を指すことが意図される。精製されたポリペプチドはしたがってまた、ポリペプチドが天然に存在し得る環境から自由になった該ポリペプチドを指す。一般に、「精製された」は、様々な他の成分を除去するための分別に供されており、およびその発現される生物学的活性を実質的に保持するポリペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この指定は、そのポリペプチドまたはペプチドが組成物の主な成分を形成する、例えば組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、または約90%またはより多くを構成するペプチドまたはポリペプチド組成物を指す。
【0142】
精製における使用のために好適な様々な技術が当業者に周知である。これらは、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、および抗体(免疫沈降)などを用いるかまたは熱変性による沈殿、続いて遠心分離;クロマトグラフィー、例えばアフィニティークロマトグラフィー(プロテイン-Aカラム)、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、疎水性相互作用クロマトグラフィー;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらの技術の組合せを含む。当技術分野において一般に公知のように、様々な精製ステップを実行する順序が変更され得るか、またはある特定のステップが省略され得るが、依然として実質的に精製されたポリペプチドの調製のための好適な方法を結果としてもたらし得ると考えられる。
【0143】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、医薬的に許容される担体と混合された単離された二機能性アンタゴニスト分子を含む医薬組成物を提供する。そのような医薬的に許容される担体は周知であり、当業者に理解されており、広範に記載されている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company,1990を参照)。医薬的に許容される担体は、例えば、組成物のpH、容量オスモル濃度、粘性、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着または透過を修飾、維持または保存する目的のために含まれてもよい。そのような医薬組成物は、ポリペプチドの物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼし得る。好適な医薬的に許容される担体は、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジン);抗微生物剤;抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムもしくは亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えばホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、リン酸、他の有機酸);充填剤(例えばマンニトールもしくはグリシン)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA));複合体化剤(例えばカフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンもしくはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン);充填剤;単糖;二糖および他の炭水化物(例えばグルコース、マンノース、もしくはデキストリン);タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン);着色剤;香味剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えばナトリウム);防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸もしくは過酸化水素);溶媒(例えばグリセリン、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール);糖アルコール(例えばマンニトールもしくはソルビトール);懸濁化剤;界面活性剤もしくは湿潤剤(例えばプルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、トライトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール(tyloxapal));安定性増強剤(スクロースもしくはソルビトール);張度増強剤(例えばアルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは塩化ナトリウムもしくはカリウム、マンニトール ソルビトール);送達媒体;希釈剤;賦形剤ならびに/または医薬的佐剤を含むが、これらに限定されない。
【0144】
医薬組成物中の主要な媒体または担体は、水性または非水性のいずれかの性質であってもよい。例えば、好適な媒体または担体は、注射用の水、生理食塩水溶液または人工脳脊髄液であってもよく、これらは場合により、非経口投与用の組成物において一般的な他の材料を補充されていてもよい。中性緩衝化食塩水または血清アルブミンと混合された食塩水はさらなる例示的な媒体である。他の例示的な医薬組成物は、約pH 7.0~8.5のTris緩衝液、または約pH 4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、これらはソルビトールまたはその好適な代用物をさらに含んでもよい。本開示の1つの実施形態において、組成物は、凍結乾燥されたケーキまたは水性溶液の形態において所望される程度の純度を有する選択された組成物を任意選択的な製剤化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上掲)と混合することにより貯蔵のために調製されてもよい。さらに、治療用組成物は、適切な賦形剤、例えばスクロースを使用して凍結乾燥物として製剤化されてもよい。最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与の経路、送達フォーマット、および所望される投薬量に依存して、当業者により決定される。
【0145】
非経口投与が想定される場合、治療用医薬組成物は、医薬的に許容される媒体中に所望される二機能性アンタゴニスト分子を含む、パイロジェン非含有の、非経口的に許容される水性溶液の形態であってもよい。非経口注射のための特に好適な媒体は無菌蒸留水であり、無菌蒸留水中にポリペプチドは、適正に保存される無菌の等張溶液として製剤化される。様々な実施形態において、注射可能な投与のために好適な薬学的製剤は、水性溶液中に、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理緩衝食塩水中に製剤化されてもよい。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘性を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有してもよい。追加的に、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として調製されてもよい。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定化剤または化合物の溶解性を増加させるための剤を含有してもよく、高度に濃縮された溶液の調製を可能とし得る。
【0146】
様々な実施形態において、治療用医薬組成物は、コロイド分散システムを使用して標的化された送達のために製剤化されてもよい。コロイド分散システムは、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースのシステムを含む。リポソーム製造において有用な脂質の例は、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドを含む。実例的なリン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンを含む。リポソームの標的化はまた、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、これは当技術分野において公知である。
【0147】
様々な実施形態において、医薬組成物の経口投与が想定される。この様式において投与される医薬組成物は、固体投薬形態、例えば錠剤およびカプセルの調合において慣習的に使用される担体を用いてまたは用いずに製剤化され得る。経口投与用の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、および顆粒など)において、本開示の1つ以上の治療用化合物は、1つ以上の医薬的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/または以下:(1)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/もしくはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/もしくはアカシアなど;(3)湿潤剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えばアガー-アガー、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど;(8)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ;(9)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物;ならびに(10)着色剤のいずれかと混合されてもよい。カプセル、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物はまた緩衝化剤を含んでもよい。類似した種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤の他に、高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられてもよい。経口投与用の液体投薬形態は、医薬的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含む。活性成分に加えて、液体投薬形態は、当技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールならびにソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、佐剤、例えば湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、ならびに防腐剤を含むことができる。
【0148】
様々な実施形態において、皮膚または粘膜のいずれかへの医薬組成物の外用投与が想定される。外用製剤は、皮膚または角質層透過増強剤として有効であることが公知の多様な剤の1つ以上をさらに含んでもよい。これらの例は、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。製剤を美容的に許容されるものとするために追加の剤がさらに含まれてもよい。これらの例は、脂肪、ワックス、油、色素、芳香剤、防腐剤、安定化剤、および表面活性剤である。角質溶解剤、例えば当業者に公知のものもまた含まれ得る。例はサリチル酸および硫黄である。外用または経皮投与用の投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤を含む。活性化合物は、医薬的に許容される担体と、および要求され得る任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と無菌条件下で混合されてもよい。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本開示の対象化合物(例えば、二機能性アンタゴニスト分子)に加えて、賦形剤、例えば動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含有してもよい。
【0149】
本明細書において使用のために想定される追加の医薬組成物は、持続または制御送達製剤中にポリペプチドを伴う製剤を含む。様々な他の持続または制御送達手段、例えばリポソーム担体、生体内分解性マイクロ粒子または多孔性ビーズおよびデポー注射を製剤化するための技術もまた当業者に公知である。
【0150】
治療的に用いられる医薬組成物の有効量は、例えば、治療的な文脈および目的に依存する。当業者は、処置のための適切な投薬レベルはそのため、送達される分子、ポリペプチドが使用されている適応症、投与の経路、ならびに患者のサイズ(体重、身体表面または臓器サイズ)ならびに条件(年齢および全般的健康状態)に部分的に依存して変動することを理解する。よって、臨床医は、最適な治療効果を得るために投薬量を滴定し、および投与の経路を改変することができる。典型的な投薬量は、上記される要因に依存して、約0.1mg/kg~約100mg/kgの範囲内またはより多くであってもよい。ポリペプチド組成物は、好ましくは、静脈内に注射または投与されてもよい。長期作用性の医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に依存して3~4日毎、毎週、または隔週で投与されてもよい。投薬の頻度は、使用される製剤中のポリペプチドの薬物動態パラメーターに依存する。典型的には、組成物は、所望される効果を達成する投薬量に達するまで投与される。組成物は、したがって、単回用量として、または(同じもしくは異なる濃度/投薬量の)複数回用量として経時的に、または連続注入として投与されてもよい。適切な投薬量のさらなる精密化は通常通りに為される。適切な投薬量は、適切な用量-応答データの使用を通じて確認されてもよい。
【0151】
医薬組成物の投与の経路は公知の方法に従い、例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、病巣内経路、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、もしくは腹腔内への注射を通じて;他に鼻腔内、腸内、外用、舌下、尿道、経膣、もしくは直腸手段で、持続放出システムにより、または埋め込みデバイスにより為される。所望される場合、組成物は、ボーラス注射によりまたは注入により連続的に、または埋め込みデバイスにより投与されてもよい。代替的に、または追加的に、組成物は、所望される分子が吸収または被包されている膜、スポンジ、または別の適切な材料の埋め込みを介して局所的に投与されてもよい。埋め込みデバイスが使用される場合、デバイスは任意の好適な組織または臓器に埋め込まれてもよく、所望される分子の送達は、拡散、時限放出ボーラス、または連続的な投与を介して為されてもよい。
【0152】
治療的使用
別の態様において、本開示は、その病理発生がTNF-α媒介性NF-κBシグナル伝達経路およびTGF-β媒介性Smad2/3シグナル伝達経路の活性化を伴う様々な複合疾患状態を処置または予防する方法を提供する。
【0153】
様々な実施形態において、本発明の新規の二機能性アンタゴニスト分子は、対象において、以下の状態:貧血、炎症、肺高血圧症、心不全、腎不全、筋ジストロフィー、関節炎、臓器線維症およびがんを含むが、これらに限定されない、様々な障害の処置のための広い応用を有してもよく、該処置は、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含み、そのような投与は、筋肉量の喪失および/または筋肉機能の喪失を減弱する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、単剤療法または免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD1、抗PDL1、および抗CTL4抗体と組み合わせた併用療法としての、血液障害(例えば無効赤血球生成、汎血球減少症、骨髄異形成症候群、骨髄不全、白血病、ベータ-サラセミア、および鎌状赤血球疾患)、線維性疾患(例えば非アルコール性脂肪性肝炎またはNASH、硬変、肺線維症、腎臓線維症、多発性嚢胞腎疾患、心臓線維症、筋肉線維症、骨髄線維症、皮膚線維症、および目の線維症)、筋ジストロフィー(例えばDMD、ベッカー型MD、肢帯型筋ジストロフィー、筋緊張性MDおよびFSHD)、筋炎(例えば多発性筋炎および皮膚筋炎)、ミオパチー(遺伝性ミオパチーおよび後天性ミオパチーを含む)、運動ニューロン疾患(例えばルー-ゲーリッグ病またはALS)、神経変性疾患(例えばパーキンソン病、ハンチントン病およびアルツハイマー病)、がん悪液質、サルコペニア、骨脆弱性障害(例えば骨折およびがんにおける転移)、慢性心不全、慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、感染症(例えばAIDS、結核、SARS-CoV、および敗血症)の結果としてもたらされるサイトカインストーム、関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA)を含む関節炎、外傷(例えば熱傷またはオートバイ事故)、ICU救命治療、除神経(例えば卒中または脊髄傷害)、長期化した床上安静、サルコペニック肥満症、ならびに年齢関連筋肉および骨減少(閉経後骨粗しょう症および年齢関連サルコペニアを含む)、臓器または組織移植(例えば心臓移植、腎臓移植および肝臓移植)、ならびに様々な悪性腫瘍(例えば白血病、黒色腫、乳がん、多発性骨髄腫、前立腺がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、結腸直腸がん、脳のがん、膀胱がん、および頭頸部がん)を含むが、これらに限定されない、様々な複合疾患の処置において有用である。
【0154】
本開示は、対象において心臓血管疾患を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含み、そのような投与が、血管系、ならびに、平滑筋、心筋および骨格筋を含む、筋肉の炎症および線維症を減弱する、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、心不全、肺動脈高血圧症を含む肺高血圧症、心筋炎、冠動脈疾患、心筋梗塞、心臓不整脈、心臓弁疾患、心筋症、心膜疾患、大動脈疾患、マルファン症候群および心臓萎縮症の処置において有用である。
【0155】
本開示は、有効量の二機能性アンタゴニスト分子を対象に投与することを含む、対象において心臓機能障害または心不全を処置する方法を提供する。モジュレーションは、前記対象の心臓機能を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%改善してもよい。心臓機能の改善は、1)排出される血液体積および排出の効率に焦点を当てた心臓ポンプ機能ならびに2)心筋収縮の強さに焦点を当てた心筋機能を測定するための心臓超音波検査法により評価され得る。
【0156】
本開示は、対象において代謝障害を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、肥満症、脂質異常症、糖尿病、インスリン抵抗性、サルコペニック肥満症、脂肪症、およびメタボリックシンドロームから選択される代謝性疾患の他に、糖尿病性ミオパチー、腎症、ニューロパチー、網膜症、骨減少症、耐糖能障害、高血糖症、およびアンドロゲン枯渇の処置において有用である。
【0157】
本開示は、対象においてがん細胞を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含み、そのような投与ががん細胞の成長および/または増殖を阻害する、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、がんとして特徴付けられる障害の処置において有用である。そのような障害は、固形腫瘍、例えば乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、目、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがんおよびそれらの遠隔転移、リンパ腫、肉腫、多発性骨髄腫ならびに白血病を含むが、これらに限定されない。乳がんの例は、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性腺管癌、および非浸潤性小葉癌を含むが、これらに限定されない。気道のがんの例は、小細胞および非小細胞肺癌の他に、気管支腺腫および肺胸膜芽細胞腫を含むが、これらに限定されない。脳のがんの例は、脳幹および視床下部(hypophthalmic)神経膠腫、小脳および大脳星細胞腫、髄芽腫、上衣腫の他に、神経外胚葉および松果体腫瘍を含むが、これらに限定されない。男性生殖器の腫瘍は、前立腺および精巣がんを含むが、これらに限定されない。女性生殖器の腫瘍は、子宮内膜、子宮頸部、卵巣、膣、および外陰がんの他に、子宮の肉腫を含むが、これらに限定されない。消化管の腫瘍は、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、および唾液腺がんを含むが、これらに限定されない。尿路の腫瘍は、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、および尿道がんを含むが、これらに限定されない。眼がんは、眼内黒色腫および網膜芽腫を含むが、これらに限定されない。肝臓がんの例は、肝細胞癌(線維層板状バリアントを伴うまたは伴わない肝細胞癌)、胆管癌(肝臓内胆管癌)、および混合型肝細胞胆管癌を含むが、これらに限定されない。皮膚がんは、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚がん、および非黒色腫皮膚がんを含むが、これらに限定されない。頭頸部がんは、鼻咽頭がん、および口唇がんを含むが、これらに限定されない。リンパ腫は、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫を含むが、これらに限定されない。肉腫は、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性繊維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫を含むが、これらに限定されない。白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病を含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、がんは、TNF-αおよびTGF-βの高い発現を伴うがん、例えば、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、結腸直腸がん、黒色腫、白血病、肺がん、前立腺がん、脳のがん、膀胱がん、および頭頸部がんである。
【0158】
本開示は、対象において慢性腎臓疾患(CKD)を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含み、そのような投与が、腎臓機能の喪失を減弱し、および筋肉喪失を予防し、または腎臓線維症を阻害する、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、腎不全、間質性線維症、および腎臓透析を含むCKDの他に、CKDと関連付けられるタンパク質エネルギー消耗(PEW)の処置において有用である。モジュレーションは、前記対象のCKDまたはPEWを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%改善してもよい。腎臓機能の改善は、尿中のタンパク質/クレアチニン比(PCR)および糸球体濾過量(GFR)を測定することにより評価され得る。PEWの改善は、アルブミンおよび炎症性サイトカインの血清レベル、タンパク質合成および分解の速度、体重、筋肉量、身体活動性ならびに栄養的アウトカムを測定することにより評価され得る。
【0159】
本開示は、対象において自己免疫疾患を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、多発性硬化症、糖尿病(1型)、糸球体腎炎、重症筋無力症、乾癬、全身性硬化症および全身性ループスエリテマトーデス、多発性筋炎ならびに原発性胆汁性肝硬変から選択される自己免疫障害の処置において有用である。
【0160】
本開示は、対象において関節炎を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、関節リウマチおよび変形性関節症から選択される関節炎の処置において有用である。
【0161】
本開示は、対象において食欲不振を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、神経性食欲不振および食欲不振-悪液質症候群から選択される食欲不振の処置において有用である。
【0162】
本開示は、対象において肝臓疾患を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪肝疾患、肝硬変、肝不全、自己免疫性肝炎および肝細胞癌から選択される肝臓疾患の処置において有用である。
【0163】
本開示は、対象において臓器または組織移植を行う方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。特に、本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、腸および胸腺の臓器移植または骨、腱、角膜、皮膚、心臓弁、神経および静脈の組織移植から選択される移植の処置において有用である。
【0164】
本開示は、対象において貧血を処置する方法であって、前記対象に治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンのいずれかとして)の、医薬的に許容される担体中の本開示の二機能性アンタゴニスト分子を投与することを含む、方法を提供する。様々な実施形態において、貧血は、がん関連貧血、化学療法誘導性貧血、慢性腎臓疾患関連貧血、鉄欠乏貧血、サラセミア、鉄およびヘモクロマトーシス(iron and hemochromatosis)、鎌状赤血球疾患、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、汎血球減少症ならびに骨髄不全を含む様々な貧血障害から選択される。
【0165】
本開示は、対象において線維症を処置する方法であって、治療有効量の本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、対象はヒト対象である。様々な実施形態において、線維症は、肺線維症(例えば特発性肺線維症および嚢胞性線維症)、肝臓線維症(例えば非アルコール性脂肪性肝炎および肝硬変)、気道線維症(例えば喘息)、心臓線維症(例えば心筋梗塞、拡張期機能障害または心臓弁疾患)、腎臓線維症(例えば間質性線維症)、骨髄線維症、特発性後腹膜線維症、腎原性線維性皮膚障害、炎症性腸疾患における腸線維症(クローン病を誘導する)、ケロイド、強皮症、全身性硬化症、手の線維症(例えば、デュピュイトラン秒)、目の線維症ならびに関節線維症から選択される。
【0166】
本開示は、対象において疼痛を処置する方法であって、治療有効量の本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、対象はヒト対象である。様々な実施形態において、疼痛は、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、またはがん疼痛から選択される。
【0167】
本開示は、対象において骨疾患を処置する方法であって、治療有効量の本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、対象はヒト対象である。様々な実施形態において、骨疾患は、骨軟化症、骨粗しょう症、骨形成不全症、進行性骨化性線維異形成症、コルチコステロイド誘導性骨減少症、骨折、および骨転移から選択される。
【0168】
本開示は、対象において筋肉量および/または筋肉機能の喪失を阻害する方法であって、有効量の二機能性アンタゴニスト分子を対象に投与することを含む、方法を提供する。モジュレーションは、前記対象の筋肉量および/または機能の喪失を少なくとも5%、10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%減弱してもよい。筋肉量および機能の喪失の阻害は、イメージング技術および身体強度検査を使用することにより評価され得る。筋肉量評価のためのイメージング技術の例は、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)、磁気共鳴イメージング(MRI)、およびコンピューター断層撮影法(CT)を含む。筋肉機能検査の例は、握力検査、階段昇降検査、簡易身体測定バッテリー(short physical performance battery;SPPB)および6分歩行の他に、呼吸筋強度を測定するために使用される最大吸気圧(MIP)および最大呼気圧(MEP)を含む。
【0169】
「治療有効量」または「治療有効用量」は、処置されている障害の症状の1つ以上を何らかの程度まで緩和する投与されている治療剤の量を指す。
【0170】
治療有効用量は、IC50を決定することにより最初に細胞培養アッセイから概算され得る。用量は次に、細胞培養において決定されたようなIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて定式化され得る。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿におけるレベルは、例えば、HPLCにより、測定されてもよい。正確な組成物、投与の経路および投薬量は、対象の条件を考慮して個々の医師により選択され得る。
【0171】
投薬量レジメンは、最適な所望される応答(例えば、治療的なまたは予防的な応答)を提供するために調整され得る。例えば、単一のボーラスが投与可能であり、いくつかの分割された用量(複数または反復または維持)が経時的に投与可能であり、用量は、治療的な状況の緊急性により指し示されるように比例的に低減または増加され得る。投与の容易性および投薬量の均一性のために投薬単位形態において非経口組成物を製剤化することが特に有利である。投薬単位形態は、本明細書において使用される場合、処置される哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に別々の単位であって;各々の単位が、要求される薬学的担体との関連で所望される治療効果を生成するために算出された予め決定された量の活性化合物を含有するものを指す。本開示の投薬単位形態のための仕様は、主に抗体の独特の特徴および達成されるべき特定の治療または予防効果により支配される。
【0172】
そのため、当業者は、本明細書において提供される開示に基づいて、用量および投薬レジメンは、治療分野において周知の方法にしたがって調整されることを理解する。すなわち、最大の許容できる用量は容易に確立可能であり、対象に検出可能な治療的な利益を提供する有効量もまた決定可能であり、対象に検出可能な治療的な利益を提供するために各々の剤を投与するための時間的な要求も同様に決定され得る。よって、ある特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されるが、これらの例は決して、本開示の実施において対象に提供され得る用量および投与レジメンを限定しない。
【0173】
投薬量の値は、軽減されるべき状態の種類および重症度と共に変動してもよく、また単一のまたは複数の用量を含んでもよいことが留意されるべきである。任意の特定の対象のために、特有の投薬量レジメンは、個々の必要性および組成物を投与するかまたはその投与を監督する者の専門的な判断にしたがって経時的に調整されるべきであること、ならびに本明細書に記載される投薬量範囲は例示的なものに過ぎず、クレームされた組成物の範囲または実施を限定することは意図されないことがさらに理解されるべきである。さらに、本開示の組成物を用いる投薬量レジメンは、疾患の種類、対象の年齢、体重、性別、医学的条件、状態の重症度、投与の経路、および用いられる特定の抗体を含む、様々な要因に基づいてもよい。そのため、投薬量レジメンは広く変動し得るが、標準的な方法を使用してルーチンで決定され得る。例えば、用量は、臨床的な効果、例えば毒性効果および/または実験値を含み得る、薬物動態または薬力学パラメーターに基づいて調整されてもよい。そのため、本開示は、当業者により決定されるような対象内の用量漸増を包含する。適切な投薬量およびレジメンの決定は関連技術分野において周知であり、本明細書に開示される教示を一旦提供されれば、当業者によりもたらされることが理解される。
【0174】
治療または予防有効量の本開示の二機能性アンタゴニスト分子のための例示的な、非限定的な1日当たりの投薬範囲は、0.001~100mg/kg、0.001~90mg/kg、0.001~80mg/kg、0.001~70mg/kg、0.001~60mg/kg、0.001~50mg/kg、0.001~40mg/kg、0.001~30mg/kg、0.001~20mg/kg、0.001~10mg/kg、0.001~5mg/kg、0.001~4mg/kg、0.001~3mg/kg、0.001~2mg/kg、0.001~1mg/kg、0.010~50mg/kg、0.010~40mg/kg、0.010~30mg/kg、0.010~20mg/kg、0.010~10mg/kg、0.010~5mg/kg、0.010~4mg/kg、0.010~3mg/kg、0.010~2mg/kg、0.010~1mg/kg、0.1~50mg/kg、0.1~40mg/kg、0.1~30mg/kg、0.1~20mg/kg、0.1~10mg/kg、0.1~5mg/kg、0.1~4mg/kg、0.1~3mg/kg、0.1~2mg/kg、0.1~1mg/kg、1~50mg/kg、1~40mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、1~10mg/kg、1~5mg/kg、1~4mg/kg、1~3mg/kg、1~2mg/kg、または1~1mg/kg体重であることができる。投薬量の値は、軽減されるべき状態の種類および重症度と共に変動してもよいことが留意されるべきである。任意の特定の対象のために、特有の投薬量レジメンは、個々の必要性および組成物を投与するかまたはその投与を監督する者の専門的な判断にしたがって経時的に調整されるべきであること、ならびに本明細書に記載される投薬量範囲は例示的なものに過ぎず、クレームされた組成物の範囲または実施を限定することは意図されないことがさらに理解されるべきである。
【0175】
様々な実施形態において、投与される総用量は、例えば、約1~1000μg/ml、約1~750μg/ml、約1~500μg/ml、約1~250μg/ml、約10~1000μg/ml、約10~750μg/ml、約10~500μg/ml、約10~250μg/ml、約20~1000μg/ml、約20~750μg/ml、約20~500μg/ml、約20~250μg/ml、約30~1000μg/ml、約30~750μg/ml、約30~500μg/ml、約30~250μg/mlの範囲内の、血漿抗体濃度を達成する。
【0176】
本開示の医薬組成物の毒性および治療指数は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬的手順により決定され得る。毒性用量と治療的な有効用量との間の用量比は治療指数であり、治療指数は比LD50/ED50として表され得る。大きい治療指数を呈する組成物は一般に好ましい。
【0177】
二機能性アンタゴニスト分子の医薬組成物の投与の投薬頻度は、療法の性質および処置されている特定の疾患に依存する。対象は、所望される治療結果が達成されるまで、定期的な間隔で、例えば週毎にまたは月毎に処置され得る。例示的な投薬頻度は、休薬なしで週に1回;週に1回で隔週毎;2週毎に1回;3週毎に1回;週毎に休薬なしで2週間、次に月毎;週毎に休薬なしで3週間、次に月毎;月毎;隔月毎に1回;3か月毎に1回;4か月毎に1回;5か月毎に1回;または6か月毎に1回、または年毎を含むが、これらに限定されない。
【0178】
併用療法
本明細書において使用される場合、本開示の二機能性アンタゴニスト分子および1つ以上の他の治療剤に言及する、「併用投与」、「併用投与される」および「~と組み合わせて」という用語は、以下を意味し、および言及し、および含むことが意図される:処置を必要とする対象への本開示の二機能性アンタゴニスト分子および治療剤のそのような組合せの同時の投与であって、そのような成分が、前記対象に実質的に同じ時間において前記成分を放出する単一の投薬形態となるように一緒に製剤化されている場合;処置を必要とする対象への本開示の二機能性アンタゴニスト分子および治療剤のそのような組合せの実質的に同時の投与であって、そのような成分が、前記対象により実質的に同じ時間において摂取される別々の投薬形態となるように互いから離して製剤化されており、前記摂取で前記成分が前記対象に実質的に同じ時間において放出される場合;処置を必要とする対象への本開示の二機能性アンタゴニスト分子および治療剤のそのような組合せの逐次的な投与であって、そのような成分が、各々の投与の間の有意な時間間隔と共に前記対象により連続する時間において摂取される別々の投薬形態となるように互いから離して製剤化されており、前記摂取で前記成分が前記対象に実質的に異なる時間において放出される場合;ならびに処置を必要とする対象への本開示の二機能性アンタゴニスト分子および治療剤のそのような組合せの逐次的な投与であって、そのような成分が、制御された方式において前記成分を放出する単一の投薬形態となるように一緒に製剤化されており、前記放出でそれらは、前記対象に同じおよび/または異なる時間において並行して、連続的に、および/またはオーバーラップして放出され、各々の部分が、同じまたは異なる経路により投与され得る場合。
【0179】
別の態様において、本開示は、対象において筋肉消耗性疾患を処置する方法であって、a)治療有効量の本開示の二機能性アンタゴニスト分子;およびb)第2の剤の組合せの投与を含む、方法に関する。この併用療法は、第2の剤を単独で使用する処置に対して抵抗性または難治性の筋肉消耗性疾患に対して特に有効であり得る。様々な実施形態において、第2の剤は、成長ホルモン、グレリン、IGF1、炎症性サイトカイン、例えばTNF-アルファおよびTNF-アルファ、IL-6、IL-1ならびにそれらの受容体に対するアンタゴニスト、ならびにミオスタチンおよびアクチビンAならびにそれらの受容体に対する他のアンタゴニストから選択される。
【0180】
様々な実施形態において、併用療法は、同じ医薬組成物中または別々の医薬組成物中のいずれかで、二機能性アンタゴニスト分子および第2の剤の組成物を同時に投与することを含む。様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子の組成物および第2の剤の組成物は逐次的に投与され、すなわち、二機能性アンタゴニスト分子の組成物は、第2の剤の組成物の投与の前または後のいずれかにおいて投与される。
【0181】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子の組成物および第2の剤の組成物の投与は同時発生的であり、すなわち、二機能性アンタゴニスト分子の組成物および第2の剤の組成物の投与期間は互いとオーバーラップする。
【0182】
様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子の組成物および第2の剤の組成物の投与は非同時発生的である。例えば、様々な実施形態において、二機能性アンタゴニスト分子の組成物の投与は、第2の剤の組成物が投与される前に終了される。様々な実施形態において、第2の剤の組成物の投与は、二機能性アンタゴニスト分子の組成物が投与される前に終了される。
【0183】
以下の実施例は、本開示をより十分に説明するために与えられるが、その範囲を限定するものとして解釈されない。
【実施例】
【0184】
実施例1
本開示の二機能性アンタゴニスト分子は、当業者に周知の組換えDNA技術にしたがって調製され得る。この実施例において、二機能性アンタゴニスト分子の調製が一般に記載される。
【0185】
様々な新規の二機能性アンタゴニストポリペプチドをコードするcDNAを遺伝子合成を介して生成し、哺乳動物発現プラスミドにサブクローニングした。CHO細胞を、個々の二機能性ポリペプチドアンタゴニストをコードする哺乳動物発現プラスミドを用いて一過的にまたは安定的にトランスフェクトした。一過的にトランスフェクトされたCHO細胞または安定的にトランスフェクトされたCHOプールを32℃のCO2振盪インキュベーター中の高密度懸濁培養物中で6~8日間増殖させた。0.22μmフィルターユニット(Millipore Corporation、MA)を通過させた後に培養培地を収集した。組換えにより発現された二機能性ポリペプチドを、AKTA PFLCシステム(GE Healthcare)を使用してプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを介して培養培地から精製した。
【0186】
実施例2
この実施例において、ヒトリガンドに対する個々の二機能性アンタゴニストの結合活性を、Octet RED96(ForteBIO、Pall Corporation、USA)を使用してバイオレイヤー干渉法(BLI)により測定した。結合分析を、最初にポリペプチド二機能性アンタゴニストをバイオセンサーに捕捉することにより行った。会合および解離の速度を測定するために、二機能性アンタゴニストを捕捉させたバイオセンサーを、1xキネティック緩衝液中に希釈された異なる濃度のリガンド(例えばTNF-α、TGF-β1およびTGF-β3)を含有するウェル中に10分間、続いて1xキネティック緩衝液中に10~20分間浸漬した。試験されたすべてのリガンドは、それらのヒト配列に基づいて組み換えにより製造されたことが留意される。二機能性ポリペプチドアンタゴニストを捕捉させたセンサーをまた、1xキネティック緩衝液を含有するウェルに浸して、捕捉された二機能性アンタゴニストの天然の解離を補償するための単一参照サブトラクション(single reference subtraction)を可能とした。バイオセンサーに対して8チャネル検出モードを使用して結合センサーグラムを収集した。ForteBIO Data acquisitionソフトウェアv11.1(ForteBIO、Pall Corporation、USA)を使用してデータを取得し、分析した。
【0187】
表7に示されるように、A119およびA120は、TNF-α、TGF-β1およびTGF-β3に高い親和性で結合する。
【0188】
二特異性抗体の形態で設計された本発明の代表的な二機能性アンタゴニスト、A131のリガンド結合親和性を、BLI分析を使用して調べた。表8に示されるように、A131は、TNF-αおよびTGF-βの両方に高い親和性で結合することができる。
【0189】
実施例3
この実施例において、TNF-αシグナル伝達およびTGF-βシグナル伝達を感知する能力を有する細胞ベースのNF-κBおよびSmad2/3レポーターアッセイを使用することにより二機能性アンタゴニストの中和活性を調べた。
【0190】
Smad2/3シグナル伝達アッセイ。Smad2/3シグナル伝達を感知する能力を有する操作されたルシフェラーゼレポーター細胞系、C2C12-CAGA-lucを使用して、細胞培養物においてTGF-βシグナル伝達活性を測定する。二機能性アンタゴニストの中和活性を測定するために、1nMのヒトリガンド(TGF-β1、TGF-β2またはTGF-β3)を、0.00004nM、0.0004nM、0.004nM、0.04nM、0.4nM、4nM、40nMおよび400nMの増加性濃度の各々の二機能性アンタゴニストと室温で1時間プレインキュベートした。その後に、反応混合物をC2C12-CAGA-luc細胞培養物に加えた。37℃のCO2インキュベーター中での5時間のインキュベーション後に、LuminoSkan Ascent(Thermo Scientific)を使用することによりC2C12-CAGA-lucレポーター培養物のルシフェラーゼ活性を測定した。Prismソフトウェア(GraphPad Software)を使用してIC50値を分析し、プロットした。
【0191】
NF-κBシグナル伝達アッセイ。TNF-α中和活性を測定するために、TNF-α媒介性NF-kBシグナル伝達を感知する能力を有する安定的にトランスフェクトされたルシフェラーゼレポーター細胞系K536-NF-κB-lucを使用して、TNF-α媒介性NF-kBシグナル伝達を遮断する各々の二機能性アンタゴニストのIC50値を定量化した。特に、TNF-α中和活性を測定するために、0.02nMの最終濃度のTNF-αを、0.00001nM、0.0001nM、0.001nM、0.01nM、0.1nM、1.0nM、10nMおよび100nMの増加性濃度の個々の二機能性アンタゴニストと室温で1時間プレインキュベートした。反応混合物を次にK536-NF-kB-lucレポーター細胞培養物に加えた。CO2インキュベーター中37℃での5時間のインキュベーション後に、Luminoskan Ascent(Thermo Scientific)を使用することによりK536-NF-kB-lucレポーター培養物のルシフェラーゼ活性を測定した。細胞ベースのTNF-α中和IC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を使用して算出およびプロットした。
【0192】
図4および
図5に描写されるように、A-119およびA-120は、細胞ベースのアッセイにおいてTNF-α、TGF-β1、およびTGF-β3を強く中和する。
【0193】
実施例4
肺動脈高血圧症(PAH)は、肺動脈平滑筋細胞の増殖および肥大に起因する肺動脈壁の肥厚の他に、増加した細胞外マトリックス沈着により特徴付けられる。TNF-αおよびTGF-βは、PAHを有する患者およびPAHの動物モデルの肺組織において有意に上昇することが示されている。TNF-αまたはTGF-βの阻害は肺高血圧症を減弱できることが示されている。したがって、TNF-αおよびTGF-βの両方はPAHの病理発生に結び付けられる。
【0194】
この実施例において、TNF-αおよびTGF-βの存在下でヒト初代肺動脈平滑筋細胞培養物を使用することにより、肺動脈平滑筋細胞リモデリングに影響を及ぼす、TNF-αおよびTGF-βの二機能性アンタゴニスト、A120の能力を抗TNF抗体およびTGFRII-Fcと比較して調べた。
【0195】
37℃のCO2インキュベーター中、10%のFBSを補充した血管平滑筋培地中でヒト初代肺動脈平滑筋細胞(ATCC)を増殖させた。80%のコンフルエンスに達したら、0.2%のFBSを補充した培地中に細胞を再プレーティングし、以下:1)なし、2)TNF-α、3)TGF-β1、4)TNF-α+TGF-β1、5)TNF-α+TGF-β1+抗TNF抗体、6)TNF-α+TGF-β1+TGFRII-Fc、および7)TNF-α+TGF-β1+A120の通りに様々な剤の追加のありまたはなしで異なる条件下でインキュベートした。72時間のインキュベーション後に、デジタルカメラと連結させた倒立顕微鏡を用いて細胞培養物を写真撮影した。形態計測学的分析は、ImageJソフトウェアを使用して行った。
【0196】
図6および
図7は、ヒト初代肺動脈平滑筋細胞(PASMC)における細胞増殖および細胞サイズに対するTNF-α、TGF-β1、およびTNF-αとTGF-β1との組合せの効果を描写する。さらに、図はまた、外因的に加えられたTNF-αおよびTGF-β1の存在を伴う細胞培養物中のPASMCの増殖およびサイズに対するそれぞれ抗TNF抗体、TGF-β中和タンパク質TGFRII-Fcおよび二機能性アンタゴニストA120の効果を示す。培養物へのTNF-αの追加は、加速された細胞増殖に起因するPASMCの過形成を結果としてもたらし(
図6、パネルB)、培養物へのTGF-β1の追加は、細胞サイズにおける拡大に起因してPASMCの肥大に繋がり(
図6、パネルC)、ならびに培養物への組合せでのTNF-αおよびTGF-β1の追加は、細胞増殖および細胞サイズにおける並行した増加に起因してPASMCの過形成および肥大の両方を結果としてもたらした(
図6、パネルD)ことをデータは実証する。したがって、上昇したTNF-αおよびTGF-β1への曝露で、PASMCは、過形成および肥大の両方により特徴付けられる劇的な病理学的なリモデリングを起こした。さらに、上昇したTNF-αおよびTGF-β1の文脈において、抗TNF抗体によるTNF-αの阻害は、PASMCの過形成を予防したが肥大を予防せず(
図6、パネルE)、TGFRII-FcによるTGF-β1の阻害は、PASMCの肥大を減弱したが過形成を減弱せず(
図6、パネルF)、ならびにA120によるTNF-αおよびTGF-β1の並行した阻害は、PASMCの過形成および肥大の両方を予防した(
図6、パネルG)。細胞数(
図7、パネルA)および細胞サイズ(
図7、パネルB)に関する形態計測学的分析は、抗TNF抗体またはTGFRII-Fcと比較して、A120はPASMCにおいて病理学的なリモデリングをより有効に阻害できたことを指し示す。PASMCの過形成および肥大の両方を阻害するA120の優れた能力は、本発明において開示されるTNF-αおよびTGF-βの新規の二機能性アンタゴニストは、PAHを処置するための有望な新たな治療アプローチとなることを示唆する。
【0197】
実施例5
繊維状組織での機能的な組織の置き換えにより特徴付けられる病理学的な状態である線維症は、実質的に任意の種類の組織または臓器において起こって様々な線維性疾患に繋がり得る。主要な線維性状態として、特発性肺線維症(IPF)は、持続した炎症および過度のコラーゲン原線維産生および細胞外マトリックスへの沈着に起因して肺組織における大規模な傷害を伴う。TNF-αおよびTGF-βの発現レベルは、IPFを有する患者の他に肺線維症の動物モデルの肺組織において上方調節されることが示されている。上昇したTNF-αは肺炎を媒介し、そしてまた肺炎から線維症への遷移において役割を果たし、上昇したTGF-βは、コラーゲン原線維の過剰産生を刺激することにより肺線維症を直接的に促進することができる。
【0198】
この実施例において、ブレオマイシン誘導性肺線維症の疾患マウスモデルにおいて線維症を処置する能力について、TNF-αおよびTGF-βの新規の二機能性アンタゴニスト、A120をそれぞれ抗TNF抗体およびTGFRII-Fcと比較して評価した。
【0199】
ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスモデル研究。動物を伴うすべての手順は、動物実験委員会により承認された。8週齢雄C57BL/6マウスはJackson Laboratoriesから購入した。マウスを12時間の明/暗サイクルに維持し、水および齧歯動物用実験室飼料に自由にアクセスさせた。マウスを1週間順化させた後に処置を与えた。ブレオマイシン(Sigma)を無菌の0.9%食塩水に溶解させ、動物当たり0.5mg/kgの単回用量として投与した。対照動物には単独で食塩水を与えた。すべての動物に0日目にブレオマイシンまたは食塩水のいずれかの気管内注射(IT)滴下注入を与えた。マウスを以下の群:(1)IT食塩水(対照);(2)ITブレオマイシン(ブレオマイシン)、(3)TGFRII-Fc処置を伴うITブレオマイシン(ブレオマイシン+TGFRII-Fc);(4)TNF抗体処置を伴うITブレオマイシン(ブレオマイシン+TNF Ab);(4)A120処置を伴うITブレオマイシン(ブレオマイシン+A120)に無作為に割り当てた。-2日目に開始して、TGFRII-Fc、抗TNFおよびA-120を個々のマウス群にそれぞれ、週当たり1回でSC投与を介して、各々の剤の分子量で正規化された5~10mg/kgの用量で与えた。2週の処置後に、動物を乱切し、右肺組織をカセットに収集し、中性緩衝ホルマリン中に固定した。組織学的評価のために、試料を、グレード付けされたエタノールシリーズ中で脱水し、キシレン中で清澄化し、パラフィン中に包埋した。4~6μmの厚さの切片を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、マッソントリクローム(TM)、ならびにHRPを連結させた抗アルファ-SMA抗体で染色した。線維性肺傷害をAshcroftスコアリングシステム(Hubner et al. 2008. PMID: 18476815; DOI: 10.2144/000112729)を通じて組織学的に評価した。Ashcroftスコアを10Xの倍率で分析した。
【0200】
図8は、対照およびブレオマイシン誘導性肺線維症マウスからのH&E染色された肺切片の組織学的画像および肺切片のAshcraftスコアを示す。A120によるTNF-αおよびTGF-βの並行した阻害はブレオマイシン誘導性肺線維症を著しく低減させたが、抗TNF抗体またはTGFRII-Fcはブレオマイシン誘導性肺線維症を穏やかに阻害したことをデータは指し示す。A120処置は、抗TNF抗体処置またはTGFRII-Fc処置と比較して肺線維症のより大きい低減を結果としてもたらすことをAshcraftスコアに関する分析は明らかにした。
【0201】
図9は、対照およびブレオマイシンで処置されたマウスからの肺切片におけるマッソントリクローム染色された肺切片の組織学的画像およびコラーゲン沈着面積の定量的分析を描写する。A120は、抗TNF抗体またはTGFRII-Fcと比較してブレオマイシン誘導性コラーゲン沈着をより有効に減少させることができることをデータは実証した。
【0202】
図10は、対照およびブレオマイシンで処置されたマウスからの肺切片における線維症のマーカー、アルファ-平滑筋アクチン(αSMA)の免疫化学染色を示す。抗TNF抗体またはTGFRII-Fcと比較して、A120は、ブレオマイシンで処置されたマウスにおいてαSMA免疫反応性の誘導をより有効に減弱したことをデータは指し示す。
【0203】
以上を合わせると、A120は、TNF-αおよびTGF-βを同時に中和することにより、線維症の予防において抗TNF抗体またはTGFRII-Fcよりも有効であることをブレオマイシン誘導性肺線維症マウスから得られたデータは実証する。A120の増強された抗線維症効果は、本発明において開示されるTNFおよびTGF-βの新規の二機能性アンタゴニストは様々な線維性疾患を処置するための有望な新たなアプローチとなることを示唆する。
【0204】
本出願において開示およびクレームされる物品および方法のすべては、本発明に照らして過度の実験なしに製造および実行され得る。本発明の物品および方法が好ましい実施形態の観点において記載されたが、バリエーションが本発明の精神および範囲から離れることなく物品および方法に適用され得ることは当業者に明らかである。当業者に明らかなすべてのそのようなバリエーションおよび均等物は、現存するものであれ後に開発されるものであれ、添付の請求項により定義される本発明の精神および範囲内にあるとみなされる。本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、本発明が関する技術分野の当業者の水準を指し示すものである。すべての特許、特許出願、および刊行物は、すべての目的のために、ならびに各々の個々の刊行物が任意のおよびすべての目的のために参照により全体が組み込まれることを特におよび個々に指し示されたのと同じ程度まで、参照により全体が本明細書に組み込まれる。好適に本明細書に実例的に記載される本発明は、本明細書に特に開示されていない任意の要素の非存在下で実施されてもよい。そのため、本発明が好ましい実施形態および任意選択的な特徴により特に開示されているが、本明細書に開示される概念の修飾およびバリエーションが当業者により取られてもよいこと、ならびにそのような修飾およびバリエーションは、添付の請求項により定義される本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0205】
配列表
添付の配列表に列記される核酸およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822において定義されている、ヌクレオチド塩基のための標準的な略記文字およびアミノ酸のための3文字コードを使用して示される。
配列番号1~5は様々なTNFリガンドのアミノ酸配列である。
配列番号6~9は様々なTGF-βリガンドのアミノ酸配列である。
配列番号10、14、18および22は、TNF-αリガンドに特異的に結合する様々な抗体の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号11、15、19および23は、TNF-αリガンドに特異的に結合する様々な抗体の軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号12、16、20および24は、TNF-αリガンドに特異的に結合する様々な抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号13、17、21および25は、TNF-αリガンドに特異的に結合する様々な抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号26は、TGF-βリガンドに特異的に結合する抗体の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号27は、TGF-βリガンドに特異的に結合する抗体の軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号28は、TGF-βリガンドに特異的に結合する抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号29は、TGF-βリガンドに特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号30~31は、TNF-αリガンドおよびTGF-βリガンドに特異的に結合する二機能性アンタゴニスト分子の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号32~41は、TNF-αリガンドに特異的に結合し、およびTGF-βリガンドに特異的に結合する様々な二機能性アンタゴニスト分子のアミノ酸配列である。
配列番号42は、TNF-αリガンドおよびTGF-βリガンドに特異的に結合する二機能性アンタゴニスト分子の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号43は、TNF-αリガンドおよびTGF-βリガンドに特異的に結合する二機能性アンタゴニスト分子の軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号44~63は様々なペプチドリンカー配列のアミノ酸配列である。
配列表
ヒトTNFR1 ECD
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAGFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTT(配列番号1)
ヒトTNFR2 ECD
LPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD(配列番号2)
ヒトTNFR1/CRD1-TNFR2/CRD2/3/4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD(配列番号3)
ヒトTNFR1/CRD1/2/3-TNFR2/CRD4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD(配列番号4)
TNFR1/ΔCRD4
IYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVC(配列番号5)
ヒトTGF-β受容体IIアイソフォーム1
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQVTGISLLPPLGVAISVIIIFYCYRVNRQQKLSSTWETGKTRKLMEFSEHCAIILEDDRSDISSTCANNINHNTELLPIELDTLVGKGRFAEVYKAKLKQNTSEQFETVAVKIFPYEEYASWKTEKDIFSDINLKHENILQFLTAEERKTELGKQYWLITAFHAKGNLQEYLTRHVISWEDLRKLGSSLARGIAHLHSDHTPCGRPKMPIVHRDLKSSNILVKNDLTCCLCDFGLSLRLDPTLSVDDLANSGQVGTARYMAPEVLESRMNLENVESFKQTDVYSMALVLWEMTSRCNAVGEVKDYEPPFGSKVREHPCVESMKDNVLRDRGRPEIPSFWLNHQGIQMVCETLTECWDHDPEARLTAQCVAERFSELEHLDRLSGRSCSEEKIPEDGSLNTTK
(配列番号6)
ヒトTGF-β受容体II-ECDアイソフォーム1(TGF-β RIIB-ECD)
TIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号7)
ヒトTGF-β受容体IIアイソフォーム2
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQVTGISLLPPLGVAISVIIIFYCYRVNRQQKLSSTWETGKTRKLMEFSEHCAIILEDDRSDISSTCANNINHNTELLPIELDTLVGKGRFAEVYKAKLKQNTSEQFETVAVKIFPYEEYASWKTEKDIFSDINLKHENILQFLTAEERKTELGKQYWLITAFHAKGNLQEYLTRHVISWEDLRKLGSSLARGIAHLHSDHTPCGRPKMPIVHRDLKSSNILVKNDLTCCLCDFGLSLRLDPTLSVDDLANSGQVGTARYMAPEVLESRMNLENVESFKQTDVYSMALVLWEMTSRCNAVGEVKDYEPPFGSKVREHPCVESMKDNVLRDRGRPEIPSFWLNHQGIQMVCETLTECWDHDPEARLTAQCVAERFSELEHLDRLSGRSCSEEKIPEDGSLNTTK(配列番号8)
ヒトTGF-β受容体II-ECDアイソフォーム2(TGF-β RIIA-ECD)
TIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号9)
抗TNF-α抗体重鎖アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNVYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号10)
抗TNF-α抗体軽鎖アミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQRYNRAPYTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号11)
抗TNF-α抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSS(配列番号12)
抗TNF-α抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQRYNRAPYTFGQGTKVEIK(配列番号13)
抗TNF-α抗体重鎖アミノ酸配列
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFIFSNHWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRSKSINSATHYAESVKGRFTISRDDSKSAVYLQMTDLRTEDTGVYYCSRNYYGSTYDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号14)
抗TNF-α抗体軽鎖アミノ酸配列
DILLTQSPAILSVSPGERVSFSCRASQFVGSSIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESMSGIPSRFSGSGSGTDFTLSINTVESEDIADYYCQQSHSWPFTFGSGTNLEVKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号15)
抗TNF-α抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFIFSNHWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRSKSINSATHYAESVKGRFTISRDDSKSAVYLQMTDLRTEDTGVYYCSRNYYGSTYDYWGQGTTLTVSS(配列番号16)
抗TNF-α抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
DILLTQSPAILSVSPGERVSFSCRASQFVGSSIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESMSGIPSRFSGSGSGTDFTLSINTVESEDIADYYCQQSHSWPFTFGSGTNLEVK(配列番号17)
抗TNF-α抗体重鎖アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYVFTDYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYIGEPIYADSVKGRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYRSYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCAA(配列番号18)
抗TNF-α抗体軽鎖アミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGTNVAWYQQKPGKAPKALIYSASFLYSGVPYRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)
抗TNF-α抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYVFTDYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYIGEPIYADSVKGRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYRSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号20)
抗TNF-α抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGTNVAWYQQKPGKAPKALIYSASFLYSGVPYRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPLTFGQGTKVEIK(配列番号21)
抗TNF-α抗体重鎖アミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFIFSSYAMHWVRQAPGNGLEWVAFMSYDGSNKKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGIAAGGNYYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)
抗TNF-α抗体軽鎖アミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVYSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号23)
抗TNF-α抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFIFSSYAMHWVRQAPGNGLEWVAFMSYDGSNKKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGIAAGGNYYYYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号24)
抗TNF-α抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVYSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPFTFGPGTKVDIK(配列番号25)
抗TGF-β抗体重鎖アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号26)
抗TGF-β抗体軽鎖アミノ酸配列
ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKH KVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号27)
抗TGF-β抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSS
(配列番号28)
抗TGF-β抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIK(配列番号29)
A119重鎖アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号30)
A120重鎖アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号31)
A121アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTTGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号32)
A122アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTTGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号33)
A123アミノ酸配列
LPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号34)
A124アミノ酸配列
LPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号35)
A125アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号36)
A126アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号37)
A127アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号38)
A128アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号39)
A129アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号40)
A130アミノ酸配列
LVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCGGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号41)
A131重鎖アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSAITWNSGHIDYADSVEGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVSYLSTASSLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号42)
A131軽鎖アミノ酸配列
ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIKGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQRYNRAPYTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号43)
ペプチドリンカー配列GGGSGGGSGGGS(配列番号44)
ペプチドリンカー配列GGGS(配列番号45)
ペプチドリンカー配列GSSGGSGGSGGSG(配列番号46)
ペプチドリンカー配列GSSGT(配列番号47)
ペプチドリンカー配列GGGGSGGGGSGGGS(配列番号48)
ペプチドリンカー配列AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号49)
ペプチドリンカー配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号50)
ペプチドリンカー配列GGGSGGGS(配列番号51)
ペプチドリンカー配列GS(配列番号52)
ペプチドリンカー配列GGS(配列番号53)
ペプチドリンカー配列GGGGS(配列番号54)
ペプチドリンカー配列GGSG(配列番号55)
ペプチドリンカー配列SGGG(配列番号56)
ペプチドリンカー配列GSGS(配列番号57)
ペプチドリンカー配列GSGSGS(配列番号58)
ペプチドリンカー配列GSGSGSGS(配列番号59)
ペプチドリンカー配列GSGSGSGSGS(配列番号60)
ペプチドリンカー配列GSGSGSGSGSGS(配列番号61)
ペプチドリンカー配列GGGGSGGGGS(配列番号62)
ペプチドリンカー配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号63)
【配列表】
【国際調査報告】