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特表2023-546798圧力解放機構、電池単体、電池、電力使用装置およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】圧力解放機構、電池単体、電池、電力使用装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20231031BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/15
H01M50/103
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519719
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2021121962
(87)【国際公開番号】W WO2023050236
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】黄 守君
(72)【発明者】
【氏名】鄭 于錬
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬
(72)【発明者】
【氏名】陳 新祥
(72)【発明者】
【氏名】劉 彦宇
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011BB03
5H011DD11
5H012AA07
5H012BB02
5H012CC01
5H012DD01
5H012EE04
5H012FF01
5H012FF08
5H012GG01
5H012JJ10
(57)【要約】
本出願の実施例は、圧力解放機構、電池単体、電池、電力使用装置およびその製造方法を提供する。圧力解放機構は、前記圧力解放機構の外周領域に位置し、前記ケーシングプレートに接続された接続部と、一端が前記接続部に接続され、他端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分と、前記第1部分の突出する前記他端に接続された薄弱部と、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が前記薄弱部に接続された第2部分と、を含み、その中で、前記電池単体の内部気圧または温度が第1所定値未満である場合、前記薄弱部は前記第1部分および/または前記第2部分によって押圧される。本出願の実施例の技術的解決手段によれば、圧力解放機構の寿命を効果的に延長することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池単体のケーシングプレートに設けられた圧力解放機構であって、
前記圧力解放機構の外周領域に設けられ、前記ケーシングプレートに接続された接続部と、
一端が前記接続部に接続され、他端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分と、
前記第1部分の突出する前記他端に接続された薄弱部と、
電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が前記薄弱部に接続された第2部分と、を含み、
前記電池単体の内部の温度または気圧が第1所定値未満である場合、前記薄弱部は前記第1部分および/または前記第2部分によって押圧される、圧力解放機構。
【請求項2】
電池単体の内部の温度または気圧が前記第1所定値以上である場合、前記第2部分は電池単体内部に向かう方向に突出する形状から電池単体内部から離れる方向に突出する形状に変化し、前記薄弱部が前記第2部分および/または前記第1部分によって引っ張られる、請求項1に記載の圧力解放機構。
【請求項3】
前記第1部分の厚さが前記第2部分の厚さ以上である、請求項1または2に記載の圧力解放機構。
【請求項4】
前記電池単体内部温度または気圧が第2所定値以上である場合、前記薄弱部の動作により前記電池単体の内部圧力が前記圧力解放機構を介して解放される、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項5】
前記第2部分は中間領域をさらに含み、前記中間領域が前記外縁領域に接続され、前記中間領域が前記ケーシングプレートの前記圧力解放機構が設けられた部位に概ね平行である、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項6】
前記第2部分に薄肉領域が設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項7】
前記第1部分に補強構造が設けられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項8】
前記補強構造は、前記第1部分の一側表面に設けられた突起した補強リブを含む、請求項7に記載の圧力解放機構。
【請求項9】
前記補強構造は、前記第1部分の他側表面に、前記補強リブに対応する位置に設けられた窪みをさらに含む、請求項8に記載の圧力解放機構。
【請求項10】
前記接続部は環状であり、2つの直線部および2つの前記直線部の端部をそれぞれ接続するための2つの円弧状部を含み、前記補強構造は前記直線部に対応する前記第1部分に位置する、請求項8または9に記載の圧力解放機構。
【請求項11】
前記薄弱部の少なくとも一部領域の厚さが前記第1部分と第2部分の厚さよりも小さい、請求項1~10のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項12】
前記薄弱部は窪みである、請求項1~11のいずれか1項に記載の圧力解放機構。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の圧力解放機構を含む電池単体。
【請求項14】
請求項13に記載の電池単体を含む電池。
【請求項15】
電気エネルギーを供給するための請求項14に記載の電池を含む電力使用装置。
【請求項16】
圧力解放機構の外周領域に設けられ、ケーシングプレートに接続された接続部を用意するステップと、
一端が前記接続部に接続され、他端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分を用意するステップと、
前記第1部分の突出する前記他端に接続された薄弱部を用意するステップと、
電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が前記薄弱部に接続された第2部分を用意するステップとを含み、
前記電池単体の内部気圧または温度が第1所定値未満である場合、前記薄弱部は前記第1部分および/または前記第2部分によって押圧される、ことを特徴とする圧力解放機構の製造方法。
【請求項17】
前記第1部分の厚さが前記第2部分の厚さ以上である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第2部分に、前記第2部分の変形を容易にするために薄肉領域が設けられる、請求項16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記第1部分に補強構造が設けられて前記薄弱領域を支持する、請求項16~18のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池分野に関し、具体的には圧力解放機構、電池単体、電池、電力使用装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、例えば過充電や金属導体による電極シート貫通およびホットボックス試験などの場合に、内部に熱やガスが急速に蓄積し、内部の気圧が上昇し、ひどい場合、電池の膨張や爆発が発生することもある。
【0003】
したがって、電池には、通常、圧力解放機構が設けられ、電池内部の気圧または温度がある程度上昇すると、圧力解放機構が適時に開かれ、内部ガスが圧力解放機構から放出され、電池の爆発を回避する。従来技術では、電池が正常動作状態である場合に、電池内部の気圧が圧力解放機構の設計動作圧力より小さくても、圧力解放機構が故障することもあり、圧力解放機構の耐用年数が短くなり、電池の安全性能に影響を与えるおそれがある。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施例は、圧力解放機構、電池単体、電池、電力使用装置および圧力解放機構の製造方法を提供し、圧力解放機構が小さな気圧の場合に故障するのを防止し、圧力解放機構の耐用年数を確保し、電池の安全性能を向上させることができる。
【0005】
第1側面によれば、電池単体のケーシングプレートに設けられた圧力解放機構を提供し、前記圧力解放機構の外周領域に位置し、前記ケーシングプレートに接続された接続部と、一端が前記接続部に接続され、他端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分と、前記第1部分の突出する前記他端に接続された薄弱部と、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が前記薄弱部に接続された第2部分と、を含み、前記電池単体の内部の気圧または温度が第1所定値未満である場合、前記薄弱部は前記第1部分および/または前記第2部分によって押圧される。
【0006】
本出願の実施例の圧力解放機構では、電池単体内部の気圧作用下において、電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分と、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有する第2部分とは、電池単体内部から離れる方向に移動するか、または電池単体内部から離れる方向に移動する傾向があり、第1部分は接続部によって制限される。したがって、電池単体内部の気圧または温度が小さく、具体的には、第1所定値未満である場合、圧力解放機構の電池単体内部一側の輪郭は、周長が減少し、圧力解放機構を中心に収縮する傾向があり、薄弱部が第1部分および/または第2部分によって押圧され、薄弱部の割れを抑制し、小さな気圧の場合における圧力解放機構のクリープ破壊を防止し、圧力解放機構の寿命を効果的に延長することができる。
【0007】
いくつかの実施例では、電池単体内部の気圧または温度がさらに第1所定値以上に上昇すると、第1部分と第2部分がさらに電池単体内部から離れる方向に移動して、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有する第2部分が電池単体内部から離れる方向に突出する形状に変形し、このとき薄弱部が第1部分および/または第2部分によって引っ張られ、薄弱部の割れを促進し、圧力を迅速に解放し、電池の爆発をより効果的に回避する。
【0008】
いくつかの実施例では、前記第1部分の厚さが前記第2部分の厚さ以上である。第2部分が比較的薄く第1部分が比較的厚いため、電池単体の内部の気圧または温度がさらに第1所定値以上に上昇すると、第2部分が電池単体内部から離れる方向に突出する形状へと、より容易かつより迅速に変形し、大きく変形し、第1部分が小さく変形し、薄弱部をより効果的に引っ張り、薄弱部の割れを促進し、圧力を迅速に解放し、電池の爆発を回避する。
【0009】
いくつかの実施例では、前記電池単体内部温度または気圧が第2所定値以上である場合、前記薄弱部の動作により前記電池単体の内部圧力が前記圧力解放機構から解放される。つまり、第2所定値は圧力解放機構の破裂圧力または温度であり、電池単体の内部の温度または気圧が第2所定値以上である場合、薄弱部が動作して圧力解放機能を実現する。
【0010】
いくつかの実施例では、前記第2部分は、中間領域をさらに含み、前記中間領域は前記外縁領域に接続され、前記中間領域は前記ケーシングプレートの前記圧力解放機構が設けられた部位と概ね平行である。
【0011】
中間領域は前記エンドキャップと概ね平行であるため、第2部分が激しく変形せず、第2部分に割れが発生しにくく、薄弱部以外の位置から動作するリスクを低減する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記第2部分に薄肉領域が設けられる。
【0013】
薄肉領域の設置により第2部分が気圧の作用下でさらに変形しやすい。圧力解放機構の寸法が小さく、第2部分全体を十分に薄くすることができない場合、薄肉領域を設けることで第2部分の変形を実現し、薄弱部の動作を促進することができる。
【0014】
いくつかの実施例では、前記第1部分に補強構造が設けられる。
【0015】
補強構造の設置により、第1部分の強度を高め、薄弱部をより良く支持し、第1部分の不要な変形を防止し、小さな気圧または温度下で第1部分が薄弱部を効果的に押圧し、薄弱部の割れを抑制し、電池単体の正常動作の場合圧力解放機構が作動するのを回避し、圧力解放機構の寿命を効果的に延長する。
【0016】
いくつかの実施例では、前記補強構造は、前記第1部分の一側表面に突起する補強リブを含む。
【0017】
この補強リブにより、第1部分の一部領域の厚さを増加させ、第1部分の強度を高めることができる。
【0018】
いくつかの実施例では、前記補強構造は、前記第1部分の他側表面に設けられ、前記補強リブに対応する位置に設けられた窪みをさらに含む。
【0019】
この窪みにより、第1部分の強度を高め、この補強リブと窪みをプレス加工により容易に製造することができる。
【0020】
いくつかの実施例では、前記接続部は環状であり、2つの直線部および2つの前記直線部の端部にそれぞれ接続された2つの円弧状部を含み、前記補強構造は前記直線部に対応する前記第1部分に位置する。
【0021】
直線部における第1部分の安定性が円弧状部よりも低いため、補強構造を直線部に対応する位置に設けることで、第1部分の強度をより効果的に高めることができる。
【0022】
つまり、圧力解放機構の輪郭がランウェイ形状であり、大きな排気面積を達成し、圧力解放に有利である。
【0023】
いくつかの実施例では、前記薄弱部の少なくとも一部領域の厚さが前記第1部分と第2部分の厚さよりも小さい。つまり、薄弱部の一部の厚さを薄くしないため、薄弱部が破断したとき、第2部分が気流などの排出物とともに飛び出すことがない。
【0024】
いくつかの実施例では、前記薄弱部は窪みである。窪み構造をプレス加工により容易に製造することができる。
【0025】
第2側面によれば、本出願は、第1側面の圧力解放機構を含む電池単体を提供する。
【0026】
第3側面によれば、本出願は、第2側面の電池単体を含む電池を提供する。
【0027】
第4側面によれば、本出願は、第3側面の電池を含み、この電池が電気エネルギーを供給する電力使用装置を提供する。
【0028】
第5側面によれば、圧力解放機構の製造方法を提供し、この方法は、前記圧力解放機構の外周領域に設けられ、前記ケーシングプレートに接続された接続部を用意するステップと、一端が前記接続部に接続され、他端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分を用意するステップと、前記第1部分の突出する前記他端に接続された薄弱部を用意するステップと、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が前記薄弱部に接続された第2部分を用意するステップとを含み、その中で、前記電池単体の内部気圧または温度が第1所定値未満である場合、前記薄弱部は前記第1部分および/または前記第2部分によって押圧される。
【0029】
上記の説明は、本出願の技術的解決手段の概要に過ぎず、本出願の技術的手段をより明確に理解できるように、明細書の内容に従って実施でき、本出願の上記および他の目的、特徴および利点をより明確に理解できるように、以下、本出願の具体的な実施形態を挙げて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明により、様々な他の利点および利益が当業者にとって明らかになるであろう。図面は、好ましい実施形態を示す目的でのみ使用され、本出願を限定するものではない。すべて図面において、同じ部材を同じ符号で示す。
【0031】
図1】本出願のいくつかの実施例の車両の構造概略図である。
図2】本出願のいくつかの実施例の電池の構造概略図である。
図3】本出願のいくつかの実施例の電池単体の分解図である。
図4】本出願のいくつかの実施例のエンドキャップの正面図である。
図5図4のa-a断面図である。
図6】本出願のいくつかの実施例の圧力解放機構の斜視図である。
図7図6の圧力解放機構の図である。
図8図7のb-b断面図である。
図9図8中の領域X1の拡大図である。
図10】電池単体の内部の気圧または温度が第1所定値未満である場合の圧力解放機構の斜視図である。
図11】圧力解放機構の断面図である。
図12図11の領域X2の拡大図である。
図13】電池単体の内部の気圧または温度が第1所定値以上に上昇し、第2部分が上方に突出する状態に変化する場合の斜視図である。
図14】圧力解放機構の断面図である。
図15図14の領域X3の拡大図である。
図16】電池単体の内部の気圧または温度が第2所定値以上に上昇し、圧力解放機構が破断する直前の斜視図である。
図17】圧力解放機構の断面図である。
図18図17の領域X4の拡大図である。
図19】本出願のいくつかの実施例の圧力解放機構の領域X1に対応する部分の拡大図であり、圧力解放機構の一変形例を示す。
図20】従来技術の圧力解放機構の初期状態を示す。
図21図20の領域X5の拡大図である。
図22】従来技術の圧力解放機構の低い気圧下での状態を示す。
図23図22の領域X6の拡大図である。
図24】従来技術の圧力解放機構が割れた状態を示す。
図25図24の領域X7の拡大図である。
図26】本出願の別の実施例の圧力解放機構の部分拡大図である。
図27】本出願のさらに別のいくつかの実施例の圧力解放機構の斜視図である。
図28図27の領域X9の拡大図である。
図29図27の圧力解放機構の別の方向の斜視図である。
図30図29の領域X10の拡大図である。
図31図27の圧力解放機構の電池単体から離れた側の正面図である。
図32図31の圧力解放機構の断面図である。
図33図31の圧力解放機構の別の断面図である。
図34】本出願のいくつかの実施例の圧力解放機構の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本出願の技術的解決手段の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本出願の技術的解決手段をより明確に説明するためにのみ使用され、本出願の保護範囲はそれに限定されない。
【0033】
特に定義しない限り、本出願で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本出願の技術分野に属する技術者が一般的に理解するのと同じ意味を有し、本出願の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明する目的のみのものであり、本出願を制限するものではなく、本出願の明細書および特許請求の範囲並びに図面における説明中にある用語「含む」、「有する」およびそれらの任意変形は、非排他的な包含を意図している。本出願の明細書と特許請求の範囲または図面における「第1」、「第2」などの用語は、異なる対象を区別するために使用され、特定の順序または優先関係を説明することを意図しない。
【0034】
本出願で言及される「実施例」とは、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本出願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所でのこのフレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施例に言及しているわけではなく、他の実施例と相互に排他的である別個のまたは代替の実施例に言及しているわけでもない。本出願で説明される実施例が他の実施例と組み合わせることができることを、明示的にも暗黙的にも、当業者は理解することができる。
【0035】
本出願の説明において、明示的に規定され限定されない限り、「取付」、「接続」、「連結」、「付属」という用語は広義に理解されるべきであることに留意すべきであり、例えば、固定接続であってもよい、着脱接続であってもよい、一体接続でもよい、直接接続でも中間媒体を介して間接接続でもよい、二つの構成要素の内部の連通であってもよい、などが挙げられる。当業者にとって、本出願における上記用語の具体的な意味は、特定の状況に応じて理解することができる。
【0036】
本出願の「および/または」の用語は、単に関連対象の関連関係を説明するものであり、例えば、Aおよび/またはBは、A単独、AおよびBの両方、B単独という3つの意味を有する。また、本出願の「/」の文字は、一般に、前後の関連対象が「または」の関係を有することを意味する。
【0037】
本出願で言及される「複数」とは2つ以上(2つを含む)を意味し、同様に、「複数組」とは2組以上(2組を含む)を意味し、「複数枚」とは2枚以上(2枚を含む)を意味する。
【0038】
本出願では、電池単体は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池またはマグネシウムイオン電池などを含むが、本出願の実施例はそれに限定されない。電池単体は円筒形、平板形、角形または他の形状などであり得るが、本出願の実施例はそれに限定されない。電池単体は一般にパッケージ方法によって円筒電池単体、角形電池単体およびソフトパック電池単体とうい3種類に大別されるが、本出願の実施例は特に限定されない。
【0039】
本出願の実施例で提出される電池は、より高い電圧と容量を提供するために、1つまたは複数の電池単体からなる単一の物理モジュールである。例えば、本出願で提出される電池は、電池モジュールまたは電池パックなどを含んでもよい。電池は一般的に、1つまたは複数の電池単体をパッケージするための箱体を含んでいる。箱体により、液体や他の異物が電池単体の充放電に影響を与えるのを防止することができる。
【0040】
電池単体は、電極アセンブリと電解液を含み、電極アセンブリは正極片、負極片およびダイヤフラムから構成される。電池単体は主に正極片と負極片間の金属イオンの移動によって動作する。正極片は、正極集電体と正極活物質層を含み、正極活物質層は正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は正極活物質層が塗布された正極集電体から突出し、正極活物質層が塗布されていない正極集電体を正極ラグとする。リチウムイオン電池を例にとると、正極集電体の材料はアルミニウムであり、正極活物質はコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元系リチウム、マンガン酸リチウムであることが可能である。負極片は、負極集電体と負極活物質層とを含み、負極活物質層は、負極集電体の表面に被覆され、負極活物質層のない負極集電体は、負極活物質層が被覆された負極集電体から突出し、負極活物質層で被覆されていない負極集電体が負極ラグとして使用される。負極集電体の材質は銅、負極活物質の材質は炭素またはシリコンとすることができる。また、溶断することなく大電流を流すために、正極ラグの数は複数で積層し、負極ラグの数は複数で積層している。ダイヤフラムの材質はPPまたはPEなどであり得る。また、電極アセンブリは、巻回構造であってもよく、積層構造であってもよく、本出願の実施例はこれに限定されるものではない。
【0041】
電池技術の発展は、エネルギー密度、循環寿命、放電容量、充放電速度などの性能パラメータに加え、電池の安全性も同時考慮する必要がある。
【0042】
電池単体の場合、主な安全上危険は充電と放電過程から生じ、同時に適切な環境温度設計からの影響も受け、不必要な損失を効果的に避けるために、一般に3種類の電池単体保護対策がある。具体的には、保護対策は少なくともスイッチングデバイス、適切なダイヤフラム材料および圧力解放機構を含む。スイッチングデバイスとは、電池単体内の温度または抵抗が一定閾値に達すると電池の充電または放電を停止するためのデバイスを指す。ダイヤフラムは正極片と負極片を隔離するために使用され、温度が一定値に上昇するとその上に付着したミクロンオーダー(あるいはナノオーダー)微細穴を自動的に溶解し、金属イオンがダイヤフラムを通過することを遮断して、電池単体の内部反応を終了させることができる。
【0043】
圧力解放機構とは、電池単体の内部圧力または温度が所定閾値に達すると動作して内部圧力または温度を解放するためのデバイスまたは部材を指す。この閾値は、設計要件に応じて設計され得る。前記閾値は、電池単体中の正極片、負極片、電解液とダイヤフラムのうちの1つまたは複数の材料に依存する。圧力解放機構は防爆弁、ガス弁、圧力解放弁または安全弁などの形を採用し、具体的には、圧力や温度に敏感な部品や構造物の形態をとることができる。電池単体の内部圧力または温度が所定閾値に達すると、圧力解放機構が動作しまたは圧力解放機構に設けられた弱構造が破壊されて割れ、内部圧力または温度の解放開口または通路を形成する。
【0044】
本出願で提出される「動作」とは、圧力解放機構が動作しまたは一定の状態まで活性化されて、電池単体の内部圧力及温度を解放することを意味する。圧力解放機構の動作は、圧力解放機構中の少なくとも一部が破断、破砕、裂かれまたは開かれるなどを含むが、これらに限定されない。圧力解放機構の動作時、電池単体の内部の高温高圧物質が排出物として動作部位から外部へ排出される。このように、圧力または温度を制御可能の場合に電池単体の圧力を解放し、温度を下げて、潜在的なより重大な事故を未然に防止することができる。
【0045】
本出願で言う電池単体からの排出物は、電解液、溶解または分割した正負極片、ダイヤフラムの破片、反応による高温高圧ガス、火炎などを含むが、これらに限定されない。
【0046】
電池単体の圧力解放機構は、電池の安全性に重要な影響を与える。例えば、短絡、過充電などの場合、電池単体内部で熱暴走が起こり、圧力または温度が急激に上昇することがある。このような場合に、圧力解放機構の動作により内部圧力および温度を外部に放出でき、電池単体の爆発や発火を防止することができる。
【0047】
電池単体が正常に動作する場合、電池単体内部に一定の気圧が圧力解放機構に作用し、この気圧が設計された初期動作気圧の下限よりも低いが、気圧の継続的な作用および電池単体内部の温度作用下で、圧力解放機構の粒界が滑り、粒界に沿って粒子が広がり、圧力解放機構の構造が薄くなり、圧力解放機構の耐圧能力が低下し、圧力解放機構が設定された動作圧力より小さい圧力の作用下で破断し故障する可能性がある。
【0048】
これを鑑み、本出願は、圧力解放機構を提供し、この圧力解放機構は、一端が電池単体内部に向かう方向に傾斜して突出する第1部分、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有する第2部分を含む。電池単体内部の気圧および温度の作用下で、第2部分が電池単体内部から離れる方向に移動し、第1部分が接続部によって制限され、電池単体内部から離れる方向に移動する傾向がある。したがって、電池単体内部の気圧または温度が小さいと、具体的には、第1所定値未満である場合、圧力解放機構の電池単体内部の一側の輪郭は周長が減少し、圧力解放機構中心に収縮する傾向があり、薄弱部が第1部分および/または第2部分によって押圧され、薄弱部の割れを抑制し、圧力解放機構が小さな気圧の場合に割れるのを防止し、圧力解放機構の寿命を効果的に延長する。
【0049】
ここで、第1所定値を第1部分および/または第2部分が薄弱部を押圧する状態から薄弱部を引っ張る状態に変化する気圧または温度値として設定する。
【0050】
本出願の実施例で説明される技術的解決手段は、電池を使用する各種の装置、例えば、携帯電話、携帯機器、ノートパソコン、電気自転車、電動玩具、電気工具、電気車両、船舶および航行器などに適用され、例えば、航行器は飛行機、ロケット、スペースシャトルおよび宇宙船等を含む。
【0051】
理解できるように、本出願の実施例で説明される技術的解決手段は、上記説明される装置に適用されるだけでなく、電池を使用するすべて装置に適用され得る。説明を簡略化するために、下記の実施例では電気車両を例にして説明する。
【0052】
次に、本出願の具体的な実施例を詳細に説明する。
【0053】
図1は本出願の一実施例の車両800の構造概略図である。車両800は、燃料自動車、ガス自動車または新エネルギー自動車であり、新エネルギー自動車は、純電自動車、ハイブリッド自動車または長距離自動車などであってもよい。車両の内部にモータ400、コントローラー300および電池500が設けられ、コントローラー300は電池500を制御してモータ400に給電させる。例えば、車両の底部、前部または後部に電池500を設けてもよい。電池500は車両の給電に使用され、例えば、電池500は車両の操作電源として、車両800の回路システムに使用され、例えば車両800の起動、ナビゲーションおよび走行時の動作電力使用要件を満たす。本出願の別の実施例では、電池500は車両800の操作電源とするだけでなく、車両800の駆動電源として、燃料またはガスの一部または全部を代替して車両800に駆動力を提供する。
【0054】
異なる電力使用要件を満たすために、電池は複数の電池単体を含み得、その中で、複数の電池単体は直列、並列または混在して接続され得、混在とは直列と並列の混合を意味する。電池は電池パックとも呼ばれる。いくつかの実施例では、複数の電池単体はまず直列、並列または混在し接続して電池モジュールを形成した後、複数の電池モジュールを直列、並列または混在し接続して電池を形成する。つまり、複数の電池単体は電池を直接形成してもよいし、電池モジュールを形成して、電池モジュールで電池を形成してもよい。
【0055】
図2は本出願の一実施例の電池500の構造概略図である。電池500は、複数の電池単体1を含む。電池500は箱体600(カバーとも呼ばれる)をさらに含み、箱体600は中空構造であり、複数の電池単体1が箱体600内に収容される。図2に示すように、箱体600は、第1ケース601と第2ケース602を含み、第1ケース601と第2ケース602が係合される。第1ケース601と第2ケース602の形状は、複数の電池単体1の組み合わせ形状に応じて決定され、第1ケース601と第2ケース602にそれぞれ1つの開口が設けられる。例えば、第1ケース601と第2ケース602は中空角形でありそれぞれの一側が開放され、第1ケース601の開口と第2ケース602の開口が対向して配置され、第1ケース601と第2ケース602が互いに係合されて封止チャンバーを有する箱体を形成する。複数の電池単体1は、互いに並列、直列または混在して組み合わせた後、第1ケース601と第2ケース602が係合されて形成された箱体内に配置され得る。
【0056】
異なる電力要件に応じて、電池単体1の数は、任意に設定され得る。複数の電池単体1は、直列、並列または混在して接続されて大容量または大パワーを形成する。各電池500に含まれる電池単体1の数が多いため、取付けを容易にするために、電池単体1がグループ化され、各グループの電池単体1が電池モジュールを構成する。電池モジュールに含まれる電池単体1の数には制限がなく、必要に応じて設定すればよい。例えば、電池は複数の電池モジュールを含み、これらの電池モジュールは直列、並列または混在して接続される。
【0057】
図3は、本出願のいくつかの実施例の電池単体1の分解図である。図4は、本出願のいくつかの実施例のエンドキャップ10の上面図である。図5は、図4中の直線a-aにおける矢印A方向に沿った断面図である。
【0058】
図3に示すように、電池単体1は、ケーシングプレート50およびケーシングプレート50内に設けられた電極アセンブリ40を含み、ケーシングプレート50は、エンドキャップ10およびケーシング20を含み、ケーシング20は開口を有し、電極アセンブリ40はケーシング20の開口を介してケーシング20に配置される。電極アセンブリ40は、本体部41とラグ42を含み、ラグ42は本体部41から延伸する。本体部41は、正極片、負極片およびダイヤフラムを含む。本体部41は、正極片、ダイヤフラムおよび負極片を巻き付けて形成された巻付構造であってもよいし、正極片、ダイヤフラムおよび負極片を積層して配置することで形成された積層式構造であってもよい。正極ラグ421と負極ラグ422は、本体部41の同一側に位置してもよいし、それぞれ本体部41の対向する両側に位置してもよい。図3では、正極ラグ421と負極ラグ422が本体部41の同一側に位置する場合を例示的に示す。エンドキャップ10は、ケーシング20の開口を被覆して、電極アセンブリ40および電解質を収容するための密閉空間を形成し、電解質は電解液であり得る。
【0059】
図3図4、および図5に示すように、いくつかの実施例では、圧力解放機構100は、エンドキャップ10のおおよそ中間部位に配置されるが、電極アセンブリの設置方法および位置によって異なり、圧力解放機構100はケーシングプレート50の他の位置に配置されてもよい。エンドキャップ10に2つの電極端子30がさらに設けられ、電極端子30はラグ42に電気的に接続されて電池単体1の電気エネルギーを出力し、または外部電源に接続されて電池単体を充電するために使用される。圧力解放機構100は、2つの電極端子30間に配置される。電池単体1は、接続部材60をさらに含み、電極端子30はラグ42と接続部材60を介して電気的に接続される。
【0060】
図6は、本出願のいくつかの実施例の圧力解放機構100の斜視図である。図7は、圧力解放機構100の電池単体内部に向かう側からの図である。図8は、図7の直線b-bにおける、矢印B方向に沿った断面図である。図9は、図8の領域X1の拡大図である。
【0061】
図6図9は、圧力解放機構100の初期状態、つまり圧力が作用しない状態を示す。
【0062】
図6図9に示すように、圧力解放機構100は、接続部101、第1部分102、薄弱部103と第2部分104を含む。接続部101は圧力解放機構100の外周領域に設けられ、図3図4図5中のエンドキャップ10に接続される。一実施例では、例えば、図7に示すように、接続部101は2つの直線部1011と2つの直線部1011の端部にそれぞれ接続された2つの円弧状部1012を含み、全体がランウェイ形状である。
【0063】
図9に示すように、第1部分102の一端が接続部101に接続され、他端が電池単体1の内部の電極アセンブリ40の方向、つまり図3の下方向に傾斜して突出する。薄弱部103は第1部分102の突出する前記他端に接続される。図6図8に示すように、第2部分104は電池単体1内部に向かう方向に突出する形状を有し、第2部分104の外縁領域1041は薄弱部103に接続される。電池単体1の内部の気圧または温度が第1所定値未満である場合、薄弱部103は、第1部分102および/または第2部分104によって押圧される。
【0064】
図9に示すように、第1部分102全体は、接続部101よりも電池単体1の内部に近い。第1部分102の突出部分の形状は、特に限定されなく、本実施例では、図9に示すように、第1部分102は概ね直線方向に沿って電池単体1の内部から突出するが、第1部分102は円弧状であり、曲線形状に突出してもよい。
【0065】
薄弱部103は、第1部分102と第2部分104間に位置し、つまり第1部分102の突出する前記他端に位置し、第1部分102よりも電池単体1の内部に近い。薄弱部103の強度は、第1部分102と第2部分104よりも小さく、圧力を解放するとき薄弱部103も動作して圧力を解放する。
【0066】
図6図7図8に示すように、第2部分104は、圧力解放機構100中の最も大きな面積の部分であり、圧力解放機構100の中央部に位置し、外縁領域1041と中間領域1042を含み(図8)、外縁領域1041の一端が薄弱部103に接続され、他端が中間領域1042に接続される。第2部分104全体は薄弱部103よりも電池単体1の内部に近く、電池単体1内部に向かう方向に突出する形状を有し、例えば、第2部分104は電池単体1の内部方向に突出するアーチ形状であるが、不規則的な突出形状であってもよい。図8に示すように、第2部分104の外縁領域1041は、電池単体内部に向かう方向に傾斜して延伸し、延伸方向が第1部分102の突出方向と概ね同じであり、中間領域1042は、圧力解放機構100が設けられたエンドキャップ10に概ね平行である。
【0067】
中間領域1042は、エンドキャップ10に概ね平行であるため、第2部分104は激しく変形せず、第2部分104で割れが発生しにくく、薄弱部103以外の位置から動作するリスクを低減することができる。
【0068】
図10図18は、本出願の実施例の圧力解放機構100が異なる気圧または温度下での状態を示す。
【0069】
図10は、電池単体1の内部気圧または温度が第1所定値未満である場合の圧力解放機構100の斜視図である。図11は、圧力解放機構100の断面図であり、切断位置と観察視角が図8と同じであり、図8中の説明を参照すればよい。図12は、図11中の領域X2の拡大図である。
【0070】
電池単体1が正常に動作する場合、電池単体1の内部の気圧または温度は低い。以下、気圧を例にして説明する。電池単体1の内部の気圧が圧力解放機構100に継続的な作用して、第1部分102、薄弱部103と第2部分104が上向きに移動するか、または上向きに移動する傾向があり、第1部分102、薄弱部103と第2部分104は全体として、輪郭の周長が減少して中心に収縮する。
【0071】
具体的に、図11図12に示すように、第1部分102が電池単体1の内部に傾斜し、薄弱部103の位置が接続部101よりも電池単体の内部に近く、つまり薄弱部103の位置が圧力解放機構100とエンドキャップ10の固定点の位置よりも電池単体の内部に近い。そして、第1部分102の一端が接続部101によって制限され、第1部分102の電池単体1の内部に突出する他端が図12の右の矢印方向に沿って薄弱部103を押圧し、薄弱部103の割れを抑制し、電池単体1が正常に動作するとき圧力解放機構100がクリープ破壊されるのを防止し、圧力解放機構の寿命を効果的に延長する。同様に、図12に示すように、第2部分104は気圧作用下で上向きに移動し、第2部分104は図12の左の矢印方向に沿って薄弱部103を押圧し、薄弱部103の割れを抑制し、電池単体1が正常に動作するとき圧力解放機構100がクリープ破壊を防止し、圧力解放機構100の寿命を効果的に延長する。
【0072】
図13は、電池単体1の内部気圧または温度が第1所定値以上に上昇し、第2部分104が上向きに反転して突出する過程の状態図である。図14は、圧力解放機構100の断面図であり、切断位置と観察視角は図8図11と同じである。図15は、図14中の領域X3の拡大図である。
【0073】
図13図15に示すように、電池単体1の内部気圧または温度が第1所定値以上に上昇すると、第1部分102、薄弱部103と第2部分104全体が継続的に上向きに移動し、第2部分104が大きく変形し、下向きに突出する形状から上向きに反転し、上向きに突出する形状に変化する。このとき、第2部分104の中間領域1042が薄弱部103の上方まで移動し、第1部分102が接続部101によって制限され、わずかに移動する。第2部分104の反転が完了した後、第2部分104全体が薄弱部103上方まで移動し、第2部分104が図12に示すような薄弱部103を押圧する状態から薄弱部103を引っ張る状態に変化し、薄弱部103の割れを促進し、圧力を迅速に解放することに有利である。
【0074】
ここで、第2所定値は、圧力解放機構100の所定圧力解放温度または圧力値として定義される。つまり、電池単体1の内部の温度または圧力値が第2所定値に達すると、圧力解放機構100が作動し、例えば、薄弱部103が割れ、電池単体1の内部圧力が圧力解放機構100を介して解放される。
【0075】
図16は、電池単体1の内部の気圧または温度が第2所定値以上に上昇し、圧力解放機構100が破断される直前の斜視図である。図17は、圧力解放機構100の断面図であり、切断位置と観察視角は図8図11図14と同じである。図18は、図17中の領域X4の拡大図である。
【0076】
図16図18に示すように、電池単体1の内部の気圧または温度が第2所定値に達すると、第1部分102、薄弱部103と第2部分104全体が継続的に上向きに移動し、薄弱部103により大きな引張力を加える。第1部分102が接続部101によって制限され、わずかに移動するため、第2部分104と第1部分102により薄弱部103を効果的に引っ張り、薄弱部103が破断され、電池単体1の内部圧力が放出される。
【0077】
図19は、図9中の圧力解放機構100の一変形例である。
【0078】
図19に示すように、いくつかの実施例では、第1部分102の厚さが第2部分104の厚さ以上である。
【0079】
第2部分104が比較的薄く第1部分102が比較的厚いため、電池単体1の内部の気圧または温度が上昇すると、薄い第2部分104がより容易かつ迅速に電池単体1の内部から離れる方向に突出する形状に変化し、大きく変形し、厚い第1部分102は小さく変形するため、第1部分102、第2部分104により薄弱部103を良好に引っ張り、薄弱部103の割れを促進し、圧力を迅速に解放し、電池の爆発を効果的に防止する。
【0080】
比較例として、以下従来技術の圧力解放機構を説明する。
【0081】
図20は、従来技術の圧力解放機構の断面図であり、切断位置と観察視角は図8と同じである。図21は、図20中の領域X5の拡大図である。
【0082】
図20図21は、圧力解放機構200の初期状態、つまり圧力が作用しない状態を示す。
【0083】
図20図21に示す従来技術の圧力解放機構200は、接続部201、第1部分202、薄弱部203と第2部分204を含む。圧力解放機構200の輪郭形状は、本出願の圧力解放機構100と概ね同じである。図20に示すように、第1部分202、第2部分204と接続部201が同一平面に位置し、圧力解放機構200の第1部分202が電池単体内部に突出することなく、第2部分204は電池単体1の内部方向に突出する形状を有しない。
【0084】
図22は、従来技術の圧力解放機構200が低気圧作用下での状態を示す(切断位置と観察視角は図20と同じである)。図23は、図22中の領域X6の拡大図である。
【0085】
電池単体が正常動作する場合、電池単体の内部の気圧が圧力解放機構200に作用し、このとき、第1部分202と第2部分204が電池単体内部から離れる方向に移動し、電池単体の内部気圧の継続的な作用下で、第1部分202と第2部分204がそれぞれ図23の矢印方向に沿って薄弱部203を継続的に引っ張るため、電池単体が正常に動作する場合、薄弱部203小さな気圧作用で割れるおそれがある。
【0086】
図24は、従来技術の圧力解放機構の割れ状態を示す(切断位置と観察視角は図20と同じである)。図25は、図24の中の領域X7の拡大図である。
【0087】
電池単体の内部気圧が圧力解放機構200に長期間作用し、薄弱部203が第1部分202と第2部分204によって継続的に引っ張られクリープ破壊が発生し、第1部分202と第2部分204が継続的に上方に移動し、薄弱部203が電池単体の正常動作状態下で破断し、クリープ破壊されることを招き得る。
【0088】
図26は、本出願の他の実施例の圧力解放機構の断面図の局所拡大図である(切断位置と観察視角は図8と同じである)。
【0089】
図26に示すように、第2部分104に薄肉領域1043が設けられ、この薄肉領域1043の厚さは、第2部分104の他の領域の厚さよりも小さい。いくつかの実施例では、薄肉領域1043は電池単体1の内部に向かう方向に開放された環状窪みである。
【0090】
圧力解放機構100の寸法が小さいと、第2部分104を十分に薄くする必要があり、気圧または温度が第1所定値以上であると、第2部分104が電池単体1の内部から離れる方向に突出する状態に変化し、薄弱部103の割れを促進し、大寸法の圧力解放機構と同様の圧力解放効果を達成する。しかしながら、製造装置や製造プロセスの制限によって、第2部分104を十分に薄くすることが困難である。そのために、第2部分104に薄肉領域1043を設けて、気圧作用下で、第2部分104の他の領域と比較して、薄肉領域1043がより変形しやすく、第2部分104が電池単体1の内部から離れる方向に突出する状態に変化しやすい。
【0091】
本出願の薄肉領域1043は上記構造に限定されず、電池単体1の内部から離れる方向に開放された環状窪みであってもよいし、第2部分104の上面と下面に両方とも環状窪みを設けてもよい。また、薄肉領域1043の形状は特に制限なく、環状ではなく円弧状、直線形または他の形状であってもよく、気圧を均一にするために、好ましくは第2部分104に薄肉領域1043を対称に設ける。また、薄肉領域1043の数も特に制限なく、必要に応じて適切に設定すればよい。
【0092】
図27は、本出願の他の実施例の圧力解放機構100の電池単体1の内部から離れる方向の側からの図である。図28は、図27の領域X9の拡大図である。
【0093】
図29は、図27の圧力解放機構100の他側の斜視図である。図30は、図29の領域X10の拡大図である。
【0094】
図31は、図27の圧力解放機構100の電池単体1の内部から離れる方向の側からの平面図である。図32は、図31中の圧力解放機構100の断面図である(切断位置と観察視角は図8と同じである)。図33は、図31中の圧力解放機構100の直線l-lにおける矢印L方向に沿った断面図である。
【0095】
いくつかの実施例では、図27図30に示すように、第1部分102に補強構造1021が設けられる。
【0096】
大寸法の圧力解放機構の場合、圧力解放機構100の面積が大きく、気圧の圧力が高く、低気圧の場合でも第1部分102が大きく移動し、薄弱部103を効果的に押圧することができない。第1部分102の厚さを増加させて不要な変形を防止するために、第1部分と設計された薄弱部103の厚み差が大きすぎ、所要厚さの薄弱部103を形成し難く、製造コストが上昇する。そのために、補強構造1021を設けることで、第1部分102の強度を補強しながら加工しやすい。
【0097】
いくつかの実施例では、図33に示すように、第1部分102の一側表面に突起する補強リブ1021bが設けられる。補強リブ1021bは、第1部分102の電池単体1の内部から離れる方向の一側に設けられてもよいし、第1部分102の電池単体1の内部に向かう方向の一側に設けられてもよい。
【0098】
いくつかの実施例では、第1部分102の他側の表面に、補強リブ1021bに対応する位置に窪み1021aが設けられ、具体的に、図33に示すように、補強リブ1021bと窪み1021aは補強構造1021を構成する。本実施例では、窪み1021aの窪む深さが補強リブ1021bの突出高さよりも大きく、窪み1021aの開口部の幅(図33の左右方向)が補強リブ1021bの幅よりも小さい。したがって、窪み1021aの左右両側に2つの局所増肉領域1021cが設けられ、この局所増肉領域1021cの厚さは第1部分102の他の位置の厚さよりも大きい。このような構造は第1部分102全体の体積を増加することなく、第1部分102の主受力方向の強度を向上させることができる。また、このような構造の補強構造1021はプレス加工によって容易に製造できる。
【0099】
以上の構造に加えて、補強構造1021は、第1部分102の一部の領域を化学的処理して強度を高めた構造であってもよい。
【0100】
いくつかの実施例では、図27、29、31を参照すると、接続部101は環状の板状構造であり、例えば溶接によってエンドキャップ10に接続される。溶接位置はエンドキャップ10の外側であり、第1部分102がエンドキャップの厚さを超えて延伸すると、溶接位置はエンドキャップ10の内側であってもよい。接続部101は、2つの直線部1011と2つの直線部1011の端部にそれぞれ接続された2つの円弧状部1012を含み、上記補強構造1021は直線部1011に対応する第1部分102に位置する。直線部1011における第1部分102の安定性が円弧状部1012における第1部分102より低いため、補強構造1021を直線部1011に対応する位置に設けることで、第1部分102の強度をより効果的に高めることができる。もちろん、必要に応じて、補強構造1021は円弧状部1012に対応する位置に設けられてもよい。2つの直線部1011同士は概ね平行であり、2つの直線部1011と2つの円弧状部1012で構成された接続部101全体は環状のランウェイ形状である。
【0101】
通常の円形防爆シートと比較して、本実施例の接続部101は環状ランウェイ形状であり、圧力解放機構100が小寸法の電池単体に適用されると、同じ縦横面積で、圧力解放時の排気面積がより大きく、ガスをより迅速に排出することができる。
【0102】
いくつかの実施例では、圧力解放機構100をエンドキャップ10に設ける方法は、図4に示すように、圧力解放機構100が2つの電極端子30間に位置し、直線部よりも、2つの円弧状部がそれぞれ圧力解放機構100両側の電極端子30に近く、より具体的には、2つの円弧状部1012の円弧状中点の結線と2つの電極端子30の結線とが同一直線上にある。例えば、2つの円弧状部1012の円弧状中点の結線と2つの電極端子30の結線とは、すべて図4に示すa-a線上にある。このように、他の設置方向と比較すると、圧力解放機構100の応力作用による変形が最も大きい。もちろん、圧力解放機構100は、図3に示すように、直線部が電極端子30により近づくように設定することも可能である。
【0103】
いくつかの実施例では、薄弱部103の少なくとも一部領域の厚さが第1部分102と第2部分104の厚さよりも小さく、つまり、薄弱部103すべての部分の厚さが第1部分102と第2部分104の厚さよりも小さいのではなく、薄弱部103の一部のみ厚さが第1部分102と第2部分104の厚さよりも小さく、他の部分の厚さは第1部分102および/または第2部分104の厚さ以上であってもよい。
【0104】
薄弱部103の一部の厚さが減少しないので、薄弱部103が破断しても、第2部分104が気流などの排出物とともに飛び出すことがない。
【0105】
いくつかの実施例では、薄弱部103は窪み構造であり、例えば、電池単体1の内部の一側に開放された環状窪み構造である。また、この環状窪み構造は、複数の断続的な窪みを含んでもよく、つまり、薄弱部103の部分領域の厚さが第1部分102と第2部分104の厚さよりも小さいのを満たす。
【0106】
薄弱部103は窪み構造であり、薄弱部103の厚さと強度が第1部分102および第2部分104よりも小さいので、薄弱部103が割れやすい。
【0107】
薄弱部103は窪み構造に限定されなく、薄弱部103の強度が第1部分102と第2部分104の構造よりも十分に小さいものであればよい。例えば、薄弱部103は、化学的処理して薄弱部103の強度を低下させた構造であってもよい。
【0108】
以上、本出願の実施例の圧力解放機構100を説明した。
【0109】
本出願の別の側面によれば、上記の電池単体1を含む電池500をさらに提供する。
【0110】
本出願の別の側面によれば、電気エネルギーを供給するための上記電池500を含む電力使用装置をさらに提供する。選択可能に、電力使用装置は図1に示す車両800や船舶または航行器であってもよい。
【0111】
本出願は、圧力解放機構の製造方法をさらに提供する。
【0112】
図34は、本出願の一実施例の圧力解放機構100の製造方法のフローチャートである。
【0113】
図34に示すように、本実施例の製造方法は、以下のステップを含む。
【0114】
ステップS1、圧力解放機構100の外周領域に設けられ、エンドキャップ10に接続される接続部101を用意する。
【0115】
ステップS2、一端が接続部101に接続され、他端が電池単体内部方向に傾斜して突出する第1部分102を用意する。
【0116】
ステップS3、薄弱部103を用意し、それを第1部分102の突出する上記他端に接続する。および
【0117】
ステップS4、電池単体内部に向かう方向に突出する形状を有し、外縁領域が薄弱部103に接続される第2部分104を用意する。電池単体の内部の気圧または温度が第1所定値未満である場合、薄弱部103が第1部分102および/または第2部分104によって押圧される。
【0118】
より具体的には、金属材料を用いて上記接続部101、第1部分102および第2部分104が金型で一体的に成形される。金属材料は、例えばアルミニウム箔、銅箔などであってもよい。このとき、第1部分102および第2部分104は、外観上区別されない。第1部分102および第2部分104の全体にプレス加工や切削加工などにより予設位置に窪み状の薄弱部103を形成して、図6図10に示す圧力解放機構100を得る。適切な材料を選択し、第1部分102の厚さ、第1部分102の突出長さ、第2部分104の面積、第2部分104の厚さ、薄弱部103の厚さなどのパラメータを設定することで、電池単体の内部気圧または温度が第1所定値未満である場合、薄弱部103が第1部分102、第2部分104によって押圧されるという効果が達成される。具体的なパラメータは、圧力解放機構の寸法などによって適切に設定され、本出願では詳しく説明しない。
【0119】
好ましい実施例では、第1部分102の厚さは、前記第2部分104の厚さ以上である。これは、例えば、成形金型の形状を調整することで実現することができる。
【0120】
好ましい実施例では、第2部分104に図26に示す薄肉領域1043が設けられ、第2部分104の変形に有利である。薄肉領域1043は、第2部分104をプレス加工や切削加工などにより形成されてもよいし、金型の形状を設定して第2部分104と一体的に成形されてもよい。
【0121】
好ましい実施例では、第1部分102に図27図32に示す補強構造1021が設けられ、薄弱領域103を支持する。補強構造1021は第1部分102をプレス加工することで形成されてもよいし、金型の形状を設定し第1部分102と一体的に成形されてもよい。
【0122】
最後に、以上の各実施例は本出願の技術的解決手段を説明するために使用され、限定するものではなく、前記各実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者は、前記各実施例に記載される技術的解決手段を修正したり、その一部または全部の技術特徴を同等置換することができ、それらの修正や置換は、かかる技術的解決手段の本質を本出願の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させることなく、すべて本出願の特許請求の範囲および明細書の範囲に含まれるものとする。特に、構造上矛盾しない限り、各実施例で提出される各技術的特徴を任意に組み合わせることができる。本出願は以上の特定の実施例に限定されなく、特許請求の範囲内のすべての技術的解決手段を含むことを意図している。
【符号の説明】
【0123】
1 電池単体
10 エンドキャップ
20 ケーシング
30 電極端子
40 電極アセンブリ
41 本体部
42 ラグ
421 正極ラグ
422 負極ラグ
50 ケーシングプレート
60 接続部材
100 圧力解放機構
101 接続部
102 第1部分
103 薄弱部
104 第2部分
1041 外縁領域
1042 中間領域
1043 薄肉領域
1021 補強構造
1021b 補強リブ
1021a 窪み
1021c 局所増肉部
1011 直線部
1012 円弧状部
200 比較例の圧力解放機構
201 接続部
202 第1部分
203 薄弱部
204 第2部分
300 コントローラー
400 モータ
500 電池
600 箱体
601 第1ケース
602 第2ケース
800 車両
図1
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【国際調査報告】