(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】接着性が改善された産業用床材を製造するための縞付き金属薄板
(51)【国際特許分類】
B21B 1/22 20060101AFI20231031BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20231031BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20231031BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20231031BHJP
B21B 3/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B21B1/22 C
B21D22/02 B
B21D53/88 Z
B30B3/00 B
B21B3/00 J
B21B1/22 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521277
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 FR2021051712
(87)【国際公開番号】W WO2022074320
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519326703
【氏名又は名称】コンステリウム イソワール
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM ISSOIRE
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ロレンジノ,パブロ
【テーマコード(参考)】
4E002
4E090
4E137
【Fターム(参考)】
4E002AA08
4E002AD10
4E002BA01
4E002BB09
4E002CB03
4E090AA04
4E090AB01
4E090DA01
4E137AA01
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA03
4E137DA02
4E137EA14
4E137GA15
4E137GB01
(57)【要約】
本発明は、床材(30)、詳細には産業用車両の床材を製造するための金属薄板(10)において、その上部面(11)に複数の縞状パターンを有し、各縞状パターンが単数または複数の突出部分(20)を含み、縞状パターンが、周期的、離散的かつ秩序立った形で配置されており、前記縞状パターンの高さhが0.3~3mmである金属薄板であって、支持体への接着を目的とするその下部面(12)には、粗度R
maxが10μm~250μmである粗表面を有していることを特徴とする、金属薄板に関する。本発明はまた、この薄板の製造方法、ならびに産業用車両の床材、好ましくは保冷車両の床材を製造するための、この金属薄板の使用にも関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材(30)、詳細には産業用車両の床材を製造するための金属薄板(10)において、その上部面(11)に複数の縞状パターンを有し、各縞状パターンが単数または複数の突出部分(20)を含み、前記縞状パターンが、周期的、離散的かつ秩序立った形で配置されており、前記縞状パターンの高さhが0.3~3mmである金属薄板であって、支持体への接着を目的とするその下部面(12)には、粗度R
maxが10μm~250μmである粗表面を有していることを特徴とする、金属薄板。
【請求項2】
前記粗表面の粗度R
maxが、50μm~150μm、好ましくは100μm~140μmであることを特徴とする、請求項1に記載の金属薄板。
【請求項3】
下部面の粗度が、電気化学的フライス加工、機械的フライス加工、ブラッシング、または変形、典型的にはブラスト加工、ショットピーニング、圧延、エンボス加工、型押し加工、好ましくは圧延によって得られる、請求項1または2に記載の金属薄板。
【請求項4】
下部面の粗度が、好ましくは圧延により製造された周期的および秩序立った形で反復するテクスチャによって得られる、請求項1から3のいずれか一つに記載の金属薄板。
【請求項5】
金属薄板が、0.4%未満のCuを含む、アルミニウム協会の呼称にしたがって1xxx、3xxx、5xxx、6xxxシリーズのアルミニウム合金、ならびに7xxxシリーズの合金を含む群に属するアルミニウム合金製である、請求項1から4のいずれか一つに記載の金属薄板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の金属薄板の製造方法において、
(i)薄板の上部面の縞状パターンを得ることを可能にする彫刻されたキャビティを含む彫刻された圧延ロールを使用した圧延ステップと、
(ii)薄板の下部面の粗度を得ることを可能にする電気化学的フライス加工、機械的フライス加工、ブラッシングまたは変形、典型的には、ブラスト加工、ショットピーニング、圧延、エンボス加工、型押し加工のステップと、
を含む方法。
【請求項7】
2つのステップが、2本の彫刻されたロール、すなわち上部面の縞状パターンを得るための第1の彫刻されたロール(41)および薄板の下部面のテクスチャを得るための第2の彫刻されたロール(42)を含む圧延機(40)で同時に実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2本の彫刻されたロールが、熱間タンデム圧延機の最後のパスの際に使用される作業ロールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
産業用車両の床材、好ましくは保冷車両の床材を製造するための、請求項1から6のいずれか一つに記載の金属薄板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材、詳細には産業用車両の床材を製造するための金属薄板に関するものであって、その上部面に周期的な形で配置された複数の縞状パターンを有し、各パターン自体が、「縞(reliefs)」と呼ばれる単数または複数の突起部分で構成されている。この薄板は、産業用車両の床材を形成するために支持体へ、典型的には板材への接着を目的とする。
【背景技術】
【0002】
すでに市場では、反復的縞状パターンを有する多くのタイプの薄板、すなわち「縞薄板」が存在している。用語「縞薄板」は、EN12258-1規格によって、「圧延によって、一つの面に縞状パターンのプリントが有る」薄板を参照している。これらのパターンは、例えば、NF-EN-1386規格中に記載されており、多くの場合比喩的な呼称を有する。(格子縞、麦粒形、アーモンド、ダイヤモンド、米粒形、格好縞2、格好縞5など)。「クインテット」とも呼ばれ、産業用床材の薄板を製造するために使用されることの多い「格好縞5」のパターンは、互いに平行に延在する半卵形の5つの隆起から成る一つのグループを有しており、一つのグループが4つのグループにとり囲まれており、その4つのグループは、互いに同一で、最初のグループを90℃回転させることにより導き出される。この「クインテット」パターンを有する薄板は、非常に高い耐摩耗性を有するものの、滑り止め品質は中程度である。
図1は、EN1386規格による縞薄板を示している。縞状パターンの高さは、パターンの頂部まで測定した最大厚みと縞の無い隣接ゾーンの厚みtとの間の差hである。
【0003】
仏国特許第2747948号明細書に記載の「米粒形」パターンもまた、特に、優れた耐摩耗性を有し、スリップによる転落の危険なく歩行者が歩くことや横滑りせずにカートを押すことができる摩擦接触条件を提供することから、満足のいく使用特性を有する産業用床材向けのアルミニウム合金製薄板を製造するために使用される。
【0004】
国際公開第2011/121191号は、カートが上を通行することになる床材、詳細には産業用車両の床材を製造するための金属薄板において、測定される方向の如何に関わらず少なくとも1mmに等しい平均幅を有する、摩擦表面および0.2~1.5mmの最大高さを有する縞を有する複数のパターンを有する金属薄板について記載している。縞薄板は、フロアを構成しかつ人間または例えば産業用車両内で使用される荷役車両と接触することを目的とした上部面に、前記反復的縞状パターンを有する。
【0005】
国際公開第2003/013752号は、突出部に形成された滑り止め表面、くり抜き部または構造上の人間および/または物体の安全でかつ安定した移動に有利に作用するための他の表面を有する構造および関連する方法について記述している。
【0006】
欧州特許第2316590号明細書は、複数のパターン単位を有する反復的パターンを有する型押し加工されたシートについて記載している。各パターン単位は、高くなった細長い単数または複数の縞を含み、1つの細長い縞は、長軸に沿った長さと、長軸に直交する短軸に沿った長さよりも短い幅を有する。
【0007】
米国特許第1856898号明細書は、多数の突起またはエンボス加工によって粗くされた表面を特徴とする彫刻された薄板の製造について記載している。
【0008】
特開昭59-202103号公報は、圧延の方向で部分的に碁盤目状にされた連続的パターンを有する帯またはシートの圧延による製造について記載している。
【0009】
特開平03-114601号公報は、放射線厚み計により圧延下の帯状鋼板の厚みを測定し、かつ圧延機の引抜きをその平均値の差が所望の範囲内に入るような形で調整することによって、単一面でのみ型押し加工された帯鋼の圧延について記述している。
【0010】
縞薄板の下部面は、産業用車両の床材を形成するために、例えば典型的には合板製である木製板材などの支持体に接着されることが最も多い。薄板の下部面と支持体との間に十分な接着を得るために、従来技術によると、典型的には脱脂である表面処理、および典型的にはワニスのような接着プライマー層の被着が実施される。この処理は、有効であるものの、結果としてコストの上昇を招く補足的作業の実施を余儀なくさせる。
【0011】
特開2011-069060号公報は、床材用化粧シートにおいて、ポリプロピレン樹脂層で構成された透明性樹脂層が基材シート上に積層され、150μm以上の厚みの少なくとも1つの透明性樹脂層が、接着剤層を介して基材シート上に圧延され、(1)透明性樹脂層が2つ以上のポリプロピレン樹脂層で構成されていること、および(2)2つ以上のポリプロピレン樹脂層のうち、基材シートと接着されたポリプロピレン樹脂層が、200~500MPaの曲げ剛性を有することを特徴とするシートを開示している。
【0012】
韓国特許第102147477号公報は、接着用樹脂によって接着された複数の内側層パネルおよび、それぞれ内部層パネルの上部および下部表面に接着された外側層パネルを含む、接着性および耐久性が改善された多目的パネルにおいて、長さ方向に沿って幅方向に貫入するように複数の空気孔が形成されているパネルを開示している。
【0013】
中国実用新案公告第201933751号明細書は、厚み1.5~5.5mmの金属製フロアスラブに関する。金属フロアタイルは、パネルと、パネルの周囲から下向きに折り曲げられて形成される縁とを含み、ここでパネルには複数の開放孔が押抜きされ;各々の開放孔の一端部は下を向いていて、パネルに連結されたアンカーバーを形成しており;複数の貫通孔がリムに押抜きされており;各貫通孔の一端部は、内部に向いていて、リムに連結された補強用バーを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許第2747948号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/121191号
【特許文献3】国際公開第2003/013752号
【特許文献4】欧州特許第2316590号明細書
【特許文献5】米国特許第1856898号明細書
【特許文献6】特開昭59-202103号公報
【特許文献7】特開平03-114601号公報
【特許文献8】特開2011-069060号公報
【特許文献9】韓国特許第102147477号公報
【特許文献10】中国実用新案公告第201933751号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、表面処理および接着プライマー層の被着の作業を要せずに、改善された接着を有する縞薄板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の対象は、床材、詳細には産業用車両の床材を製造するための金属薄板において、その上部面に複数の縞状パターンを有し、各縞状パターンが単数または複数の突出部分を含み、前記縞状パターンが、周期的、離散的かつ秩序立った形で配置されており、前記縞状パターンの高さhが0.3~3mmである金属薄板であって、支持体への接着を目的とするその下部面には、粗度Rmaxが10μm~250μmである粗表面を有していることを特徴とする、金属薄板である。
【0017】
本発明の第2の対象は、本発明に係る金属薄板の製造方法において、
(i)薄板の上部面の縞状パターンを得ることを可能にする彫刻されたキャビティを含む彫刻された圧延ロールを使用した圧延ステップと、
(ii)薄板の下部面の粗度を得ることを可能にする電気化学的フライス加工、機械的フライス加工、ブラッシングまたは変形、典型的には、ブラスト加工、ショットピーニング、圧延、エンボス加工、型押し加工のステップと、
を含む方法である。
【0018】
本発明の別の対象は、産業用車両の床材、好ましくは保冷車両の床材を製造するための、本発明に係る金属薄板の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来技術に係る縞領域を有する薄板の断面概略図である。
【
図3】有利な一実施形態にしたがった本発明に係る薄板の断面概略図である。
【
図4】木製床材への本発明に係る薄板の接着を概略的に例示する。
【
図5】実施例B(
図5a)およびC(
図5b)のパターンを示す。
【
図7】本発明に係る方法において使用される圧延機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る薄板は、車両の床材を形成するために支持体への接着を目的とする金属薄板である。一般的な定義によると、薄板は、幅の10分の1を超えない平均厚みを有する全体として矩形の横断面の圧延製品である。床材は、その上部表面がフロアを形成する水平なプラットホームを構成する建造物または車両の部分である。粗度パラメータRmaxは、分析対象の長さまたは分析対象の表面上の最高ピークと最低トラフとの間の最大偏差として定義される。典型的には、分析対象の長さは、薄板の圧延方向に垂直な方向を有し、かつ以下で説明するようなRmax値に依存する値を有する。
0.025μm<Rmax≦0.1μm 典型的分析対象長さ:0.08mm
0.01μm<Rmax≦0.5μm 典型的分析対象長さ:0.25mm
0.5μm<Rmax≦10μm 典型的分析対象長さ:0.80mm
10μm<Rmax≦50μm 典型的分析対象長さ:2.50mm
50μm<Rmax≦250μm 典型的分析対象長さ:8.00mm
【0021】
離散的パターンを有するいくつかの形態については、複数のパターンを含めるのに十分な面積で特徴付けすることが適切であり得る。
【0022】
パラメータRmaxは、特に、BS規格 1134 2010 A2中で言及されており、必要な場合には上述の定義をこの規格の枠内で補完することが可能である。
【0023】
本発明に係る薄板は、床材の上部面の形成を目的とするその上部面に、単数または複数の突出部分を含みかつ結晶格子の単位格子のように周期的で秩序立った形で反復する縞状パターンを有する。したがって、縞状パターンは、薄板の平面の2方向にしたがった並進運動により無限に反復する薄板片である。この薄板片は、1つの突出部分しか含まない可能性があるが、異なる形状または配向を有し得る複数の突出部分を含むことも可能である。異なる高さの突出部分を有することが有利であるとは思われないが、それが直ちに排除されることはない。これらの縞状パターンの高さhは、0.3mm~3mmである。縞状パターンの高さは、パターンの頂部まで測定した最大厚みと縞の無い隣接ゾーンの厚みtとの間の差hである。有利には、詳細にはアルミニウム合金製の縞付き薄板に関して、この高さは、0.3~1.5mm、好ましくは0.4~0.8mmである。
【0024】
前記パターンは、また、離散的に反復するが、それはこのような構成が床材の滑り止め特性に有利であるからである。実際、縞は、靴底または車輪のタイヤトレッドの表面に作用する圧子として挙動する。すなわち、歩行者またはカートの重量の作用下で靴底または車輪のタイヤトレッドは変形し、10分の1、10分の2または10分の3ミリメートル程度である一定の高さにわたり縞の周りに「沈み込む」。不連続な縞は、靴底またはタイヤトレッド内で、その頂壁の周囲全体にわたりビードの形成に有利に作用し、それにより、靴底、タイヤトレッドまたは車輪のタイヤの床材上での「引掛り」に有利に作用する。一方、離散的に反復するパターンは、流体の流出およびその排出がより容易であることから、清掃を容易にする。したがって、本発明に係る薄板は、連続的な縞を有してはいけない。
【0025】
上部面の縞状パターンは、薄板の縞状パターンを得ることを可能にする彫刻されたキャビティを含むことを特徴とする彫刻された圧延ロールを使用して圧延により得られる。
【0026】
本発明によると、床材への接着を目的とする薄板の下部面は、10μm~250μm、好ましくは50μm~150μm、好ましくは100μm~140μmの粗度Rmaxを有する粗表面を有する。
【0027】
本発明者は、薄板の下部面の粗度によって、典型的には木製である床材と金属薄板との間の接着が、表面処理およびプライマー被着の不在下でも十分なものであることを確認した。本発明に係る粗度は、特に、電気化学的フライス加工、機械的フライス加工、ブラッシング、または変形、典型的にはブラスト加工、ショットピーニング、圧延、エンボス加工、型押し加工によって得ることのできるものである。好ましくは、粗度は圧延によって得られる。
【0028】
本発明の有利な実施形態において、薄板の下部面の粗度は、好ましくは圧延によって製作されるテクスチャによって得られる。この実施形態において、本発明に係る薄板は、下部面に、単数または複数の突出部分を含み周期的かつ秩序立った形で反復するテクスチャを有する。異なる高さの突出部分を有することは有利とは思われないが、それが直ちに排除されることはない。この実施形態において、薄板の下部面の粗度Rmaxは、下部面のこれらの突出部分の最大高さに相当する。好ましくは、この好ましい実施形態において、薄板の下部面の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%が、テクスチャによって覆われ、および/またはテクスチャの寸法は、1~6mmであり、および/またはテクスチャの再現ピッチは、1~6mmである。
【0029】
有利には、本発明に係る金属薄板は、アルミニウム合金製の薄板である。有利には、その薄板は、0.4%未満のCuを含む、アルミニウム協会の呼称にしたがって1xxx、3xxx、5xxx、6xxxシリーズのアルミニウム合金、ならびに7xxxシリーズの合金を含む群に属するアルミニウム合金製である。好ましくは、合金は、AA1050A、AA3003、AA3103、AA5026、AA5052、AA5083、AA5086、AA5754、AA6061、AA6082およびAA7020からなるリストの中から選択される。
【0030】
図2は、上部面11に高さhの突出部分20を含む縞状パターンをそして、下部面12に粗表面を有する、本発明に係る金属薄板10を概略的に示している。
【0031】
図3は、上部面11に高さhの突出部分20を含む縞状パターンをそして、下部面12に周期的かつ秩序立った形で反復する突出部分を含むテクスチャからなる粗表面を有する、好ましい一実施形態における本発明に係る金属薄板10を概略的に示している。
【0032】
図4は、接着剤31を用いて板材32に接着された本発明に係る金属薄板10を含む床材30を概略的に示している。
【0033】
本発明に係る金属薄板の製造方法は、
(i)薄板の上部面の縞状パターンを得ることを可能にする彫刻されたキャビティを含む彫刻された圧延ロールを使用した圧延ステップと、
(ii)薄板の下部面の粗度を得ることを可能にする電気化学的フライス加工、機械的フライス加工、ブラッシングまたは変形、典型的には、ブラスト加工、ショットピーニング、圧延、エンボス加工、型押し加工のステップと、
を含む。
【0034】
有利には、2つのステップは、2本の彫刻されたロール、すなわち上部面の縞状パターンを得るための第1の彫刻されたロールおよび下部面のテクスチャを得るための第2の彫刻されたロールを含む圧延機で同時に実施される。有利な一実施形態において、2本の彫刻されたロールは、熱間タンデム圧延機の最後のパスの際に使用される作業ロールである。タンデム圧延機は、連続する複数のスタンドを含む圧延機であり、製品は同時に複数のスタンドに係合されている。
【0035】
図7は、この実施形態における熱間タンデム圧延機の最終スタンド40を概略的に示している。使用される作業ロール41、42は、彫刻されたロールである。第1の彫刻されたロール41は、上部面の縞状パターンを得ることを可能にするキャビティ411を含む。第2の彫刻されたロール42は、薄板の下部面のテクスチャを得ることを可能にするキャビティ421を含む。
【0036】
産業用車両の床材、好ましくは保冷車両の床材を製造するための、本発明に係る金属薄板の使用は、極めて有利である。
【0037】
[実施例]
この実施例においては、上部面にNF規格 EN 1386中で定義されているような米粒形パターンの縞を有しかつ下部面には可変的粗度を有する、厚み2.5mmのAA5086合金製薄板の接着性能を比較した。参考例Aにおいて、下部面は、未圧延であり、粗度R
maxは3μm未満であった。本発明に係る実施例B、C、E、FおよびGにおいては、下部面は、表1に記されているような異なる高さの縞を有するパターンでテクスチャード加工されていた。テクスチャード加工されたパターンは、彫刻されたロールを用いた圧延によって得られた。試料BおよびCのために同じロールを使用し、空洞部の深さを変動させるように締付け力を異なるものにした。これらのテクスチャは、
図5に示されている。パターンピッチは、XおよびY方向で約4mmである。パターンは、直径約2.5mmの円であった。実施例E、FおよびGのパターンは、それぞれ
図8a、8bおよび8cに示されている。全ての試料を脱脂し、その後、未圧延の試料を再現可能な条件下でシミュレートするように0.3g/m
2の潤滑剤(Lubrilam)を表面に被着させた。下部面に接着プライマーワニスを被着させることにより、従来技術にしたがって第4の試料Dを調製した。
【0038】
試験の構成は、
図6に示されている。寸法100×25mmの薄板10および合板製板材32の試料を、16.5mmのジョイント長さにわたり、エポキシ31タイプの接着剤(Korapur666)を用いて接着させ、重ねせん断試験に付した。
【0039】
得られた結果は表1に示されている。木材の内部または接着剤の内部に破断が発生する場合、破断は凝集性破断と呼ばれる。破断が薄板と接着剤の間の界面で発生する場合、破断は接着性破断と呼ばれる。
【0040】
テクスチャード加工されたパターンの不在下でも、破断は本質的に接着性であり、せん断力の高分散が観察される。反対に、テクスチャード加工されたパターンの存在下で、破断は凝集性であり、得られる力は、接着プライマーの存在下で従来技術にしたがって得た力と類似である。
【0041】
【符号の説明】
【0042】
10 金属薄板
11 上部面
12 下部面
20 突出部分
30 床材
31 接着剤
32 板材
40 熱間タンデム圧延機の最終スタンド
41、42 作業ロール
411、421 キャビティ
h 縞状パターンの高さ
t 縞の無い隣接ゾーンの厚み
【国際調査報告】