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特表2023-546824着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット及び製造方法
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  • 特表-着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット及び製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20231031BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 6/16 20200101ALI20231031BHJP
   A61K 6/78 20200101ALI20231031BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20231031BHJP
   A61K 6/822 20200101ALI20231031BHJP
【FI】
C04B35/488
A61C13/08 Z
A61K6/16
A61K6/78
A61K6/818
A61K6/822
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521450
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2021058689
(87)【国際公開番号】W WO2022074494
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200937.9
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヤーンス,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュナグル,ハンス アール.
(72)【発明者】
【氏名】シェヒナー,ガルス
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA20
4C089CA06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットであって、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、異なるイットリア含有量を有する複数の層を含み、最下層と最上層とを有し、イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、最下層から最上層に向かって互いに反対方向に変化し、イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクについて、最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%が、本質的に一定の比率となるように調整される、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットに関する。本発明はまた、そのようなセットを製造する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットであって、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、
ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、
異なるイットリア含有量を有する複数の層を含み、
最下層と最上層とを有し、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記最下層から前記最上層に向かって互いに反対方向に変化し、
前記イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%が、本質的に一定の比率となるように調整される、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項2】
前記多孔質ジルコニアミルブランク中のイットリアの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって増加し、前記多孔質ジルコニアミルブランク中の着色イオンの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって減少する、請求項1に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項3】
一連の偏差値Dを有し、前記偏差値Dは、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率Rから下記式
【数1】
を用いて計算され、Dは、N個の異なる色を含有する前記セット内では、前記少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、2.70以下であり、Rmaxは、前記セット内で見出される最も高い比率であり、N≧2、n=1、2、・・・、Nである、請求項1又は2に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項4】
前記少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの前記イットリア含有量が、層ごとに0.5mol%以下、好ましくは0.35~0.5mol%の範囲の量で異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項5】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対するmol%で、
89.35~97.18mol%のZrO
0~3mol%のHfO
2.8~7.0mol%のY
0~0.15mol%のAl
0.02~0.5mol%の、それぞれの酸化物として計算される着色イオン
を含み、前記着色イオンが、Er、及びFe、Tb、V、Mn、Cr、Coのリストから選択される少なくとも1つの更なるイオンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項6】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、少なくとも3つの層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項7】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの個々の層の厚さが、2~12mmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項8】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、以下の特徴:
密度:2.8~3.2g/cm
2軸曲げ強度:8~80MPa、
BET表面:2~20m/g、
ビッカース硬度:25~150(HV 0.5)又は35~140(HV 1)
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項9】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、以下の特徴:
層数:3~7層、
前記層間のイットリア濃度差:0.35~0.5mol%、
Erと、Fe、Tb、V、Mn、Cr、Coから選択される少なくとも1つの更なる着色イオンとを含むこと、
イットリア濃度:2.8~7.0mol%、最上層と最下層との差が少なくとも1.0mol%
で特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項10】
(前記最上層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)/(前記最下層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)の比率Rが、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.83~1.67の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.37~1.31の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.66~1.54の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.25~1.20の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.2~5.65mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.76~1.62の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを製造する方法であって、
少なくとも以下の粉末組成物:
イットリア含有量Y1を有するジルコニア粉末ZP1、
イットリア含有量Y2を有するジルコニア粉末ZP2、
着色イオンCI-Aを含有するジルコニア粉末ZP3、
着色イオンCI-Bを含有するジルコニア粉末ZP4
を準備する工程であって、前記イットリア含有量Y2のmol%が、前記イットリア含有量Y1よりも高い、工程と、
前記ジルコニア粉末ZP1、ZP2、ZP3、及びZP4を異なる混合比で混合して、少なくとも
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-B、
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-I
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-T
を得る工程であって、前記ジルコニア粉末組成物の前記イットリア含有量のmol%が、
【数2】
であり、
中間層の数が、M≧1であり、m=1、...、Mであり、
前記セットの各着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記ジルコニア粉末組成物を型のキャビティ内に、
ZP-MX-Bの層が、ZP-MX-Iの層の下に位置し、
ZP-MX-Iの層が、ZP-MX-Tの層の下に位置する
ように積層する、工程と、
前記積層されたジルコニア粉末組成物を圧縮する工程と、
任意選択で、前記圧縮されたジルコニア粉末組成物を熱処理する工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記ジルコニア粉末組成物層の層厚が以下のとおり:
【数3】
である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
歯科用修復物を製造する方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを準備する工程と、
前記セットから多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択する工程と、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用修復物前駆体を機械加工する工程と、
前記多孔質歯科用修復物前駆体を焼結して、歯科用修復物を得る工程と、を含む、方法。
【請求項14】
前記歯科用修復物が、以下の特徴:
密度:5.8~6.1g/cm
透光性:前記歯科用ジルコニアミルブランクの前記最上層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも30%、
透光性:前記歯科用ジルコニアミルブランクの前記最下層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも15%
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットと、歯科用セメントと、を含む、パーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット、そのようなセットを製造する方法、そのようなセットから歯科用修復物を製造する方法、及びそのようなセットと歯科用セメントとを含むパーツキットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用ジルコニア修復物、特にモノリシック歯科用ジルコニア修復物の審美的外観の改善に対する継続的な要求がある。
【0003】
ジルコニア材料を天然歯の外観により近づけるために、1つの修復物において異なる透光性レベルを有するジルコニアを使用して、象牙質からエナメル質への天然の移行を模倣することができる。
【0004】
この点に関して、種々の方法及び材料が提案されている。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0120765(A1)号(Dangら)は、歯科補綴物を製造するための歯科用物品であって、第1の重量百分率の量のイットリア及び酸化ジルコニア粒子を含む第1の層と、第2の重量百分率の量のイットリア及び酸化ジルコニア粒子を含む第2の層と、第3の重量百分率の量のイットリア及び酸化ジルコニア粒子を含む第3の層とを含み、第1の層が第2の層及び第3の層の下に位置し、第2の層が第1の層と第3の層との間に位置し、第1の層、第2の層、及び第3の層のうちの少なくとも1つが特定の重量百分率の量の顔料を含む、歯科用物品を記載している。
【0006】
国際公開第2019/180766(A1)号(Tosoh)は、透光性と高強度の両方を有するジルコニア焼結体及びその製造方法に関し、これは、原料粉末の状態を制御することによって、例えば、イットリア含有量が2~4mol%(両端の値を含む)の第1のジルコニア粉末と、イットリア含有量が4mol%を超えかつ6mol%以下の第2のジルコニア粉末とを使用することによって製造することができ、イットリア含有量が3mol%を超えかつ5.2mol%以下である。
【0007】
米国特許出願公開第2019/0380815(A1)号(Aibaら)は、複数の層を有する歯科用ジルコニアブランクであって、91.6~96.5mol%の酸化ジルコニウム及び3.5~8.4mol%の酸化イットリウムを含有する高透過性セラミックからなる第1の層と、95.6~98.5mol%の酸化ジルコニウム及び1.5~4.4mol%の酸化イットリウムを含有する低透過性セラミックからなる第2の層とを含み、低透過性セラミックにおける酸化イットリウムの含有率が高透過性セラミックにおける酸化イットリウムの含有率よりも0.5~5.4mol%低く、第1の層が複数の層の積層方向の一端に位置する、歯科用ジルコニアブランクを記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2018/0263863(A1)号(Kimら)は、焼結ジルコニアセラミック体の光学特性を向上させるための方法を記載しており、ジルコニアセラミック歯科用修復物が提供される。方法工程は、a)予備焼結又は多孔質セラミック体の表面上に第1のイットリウム含有組成物を適用することと、b)予備焼結又は多孔質セラミック体上に第2のイットリウム含有組成物を適用することと、c)セラミック体を焼結することと、を含む。
【0009】
米国特許出願公開第2019/0321146(A1)号(Jungら)は、イットリアの量がその厚さを通して増加する化学組成と、厚さにわたって実質的に一定で白色である彩度の予備焼結光学特性とを有し、ミリング加工され、着色され、焼結されて、焼結後に歯科補綴物の厚さを通して彩度が減少する光学特性を有する歯科補綴物を形成する、グリーン体ジルコニア歯科用ブランクに関する。
【0010】
米国特許出願公開第2016/157971(A1)号(Rothbrustら)は、(a)少なくとも第1の酸化物セラミック材料及び第2の酸化物セラミック材料を準備することであって、第1の酸化物セラミック材料及び第2の酸化物セラミック材料が焼結挙動に関して異なる、準備することと、(b)酸化物セラミック材料の少なくとも1つを、第1の酸化物セラミック材料の焼結挙動を第2の酸化物セラミック材料の焼結挙動に合わせるように適合させることと、を含む方法を記載している。
【0011】
米国特許出願公開第2018/002235(A1)号(Itoら)は、4mol%~7mol%のイットリアを安定剤として含む部分安定化ジルコニア焼結体であって、ジルコニア焼結体が遮光性材料を含み、ジルコニア焼結体が、第1の領域と、第1の領域よりも遮光性材料の含有率が高い第2の領域とを有し、第1の領域におけるイットリアの含有率と第2の領域におけるイットリアの含有率との差が1mol%以下である、部分安定化ジルコニア焼結体を記載している。
【0012】
米国特許第10,238,473号(Jungら)は、a)ジルコニアを含む焼結体、b)焼結体が、少なくとも1つの上部領域及び少なくとも1つの下部領域を含む複数の異なる領域を有すること、c)少なくとも1つの上部領域及び少なくとも1つの下部領域がそれらの間で異なる化学組成を有し、少なくとも1つの領域が別の領域と異なる強度を有すること、並びにd)焼結体が、逆の関係を有する透光性及び強度を有し、透光性が複数の異なる領域にわたって1つの方向に増加し、強度が複数の異なる領域にわたって同じ方向に減少すること、を含むジルコニア焼結体を記載している。
【0013】
欧州特許第3108849(A1)号(3M)は、最下層B、最上層E、少なくとも1つの中間層E及び少なくとも1つの中間層Bを含む多孔質多層着色ジルコニア歯科用ミルブランクであって、層は交互に配置され、個々の層B、Bの厚さは下から上に向かって減少し、個々の層E、Eの厚さは上から下に向かって減少する、多孔質多層着色ジルコニア歯科用ミルブランクを記載している。
【発明の概要】
【0014】
異なるイットリア含有量を有する異なるジルコニア組成物を積層することによって審美的に心地よい歯科用修復物を提供することは困難であり得る。
【0015】
いくつかの要因、例えば、層間のイットリア含有量の差、及び各層のイットリア含有量と着色成分との相互作用を考慮しなければならない。
【0016】
時には、異なってドープされた材料層間の界面は、不透明に見えるか、又は材料中に他の望ましくない光学効果を生じることがある。観察された効果は、層間のイットリアドーピングの差が大きすぎることから生じると推測される。
【0017】
着色成分のより高いドーピングは、イットリアの相対量を減少させる。更に、イットリアと着色成分との合計は、イットリア単独の量より多くてもよいが、着色成分によって色が濃くなると、ドーパントの量が多くても、得られる透光性は通常低くなり、高くならない。
【0018】
したがって、歯科用ミルブランクの製造業者は、機械加工及び焼結後に、異なる歯の色調に対して所望の透光性を有する歯科用修復物をもたらす歯科用ミルブランクを提供するという目的に直面している。
【0019】
透光性勾配が改善され得る、すなわち、明確に視認可能となり、同時に、例えば、非常に明るい色から非常に暗い色までの多種多様な歯の色について可能な限り類似し得ることが望ましい。
【0020】
材料の強度も同じことが有効である。異なる量の添加剤(例えば、着色イオン及び安定剤)は、通常、セラミックの異なる強度をもたらす。この差は、例えば、非常に明るい色から非常に暗い色までの多種多様な歯の色について予測可能であることが望ましい。
【0021】
しかしながら、歯科用ミルブランク内に存在する異なる量の添加剤(例えば、着色イオン及び安定剤)は、焼結挙動に影響を及ぼし得る。ブランク中の化学組成に応じて、焼結中にセラミックの歪みが生じることがある。
【0022】
したがって、審美的に満足のいく結果をもたらし、透光性及び強度に関して信頼性があり、容易に製造することができ、確実に焼結することができる歯科用ミルブランクのセットが必要とされている。
【0023】
本明細書に記載される発明は、イットリア及び着色イオンを特定の比率で含む着色ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを提供することによって、この目的に対処する。この比率は、例えば、非常に明るい色から非常に暗い色までの多種多様な歯の色を有するミルブランクのセットに対して、可能な限り高く、かつ可能な限り一定であることが好ましい。
【0024】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットであって、
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、
ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、
異なるイットリア含有量を有する複数の層を含み、
最下層と最上層とを有し、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、最下層から最上層に向かって互いに反対方向に変化し、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクについて、最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%が、本質的に一定の比率となるように調整される、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを特徴とする。
【0025】
本発明はまた、本明細書に記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを製造する方法であって、
少なくとも以下の粉末組成物:
イットリア含有量Y1を有するジルコニア粉末ZP1、
イットリア含有量Y2を有するジルコニア粉末ZP2、
着色イオンCI-Aを含有するジルコニア粉末ZP3、
着色イオンCI-Bを含有するジルコニア粉末ZP4
を準備する工程であって、イットリア含有量Y2のmol%が、イットリア含有量Y1よりも高い、工程と、
ジルコニア粉末ZP1、ZP2、ZP3、及びZP4を異なる混合比で混合して、少なくとも
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-B、
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-I
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-T
を得る工程であって、ジルコニア粉末組成物のイットリア含有量のmol%が、
【数1】
であり、
中間層の数が、M≧1であり、m=1、...、Mであり、
セットの各着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、ジルコニア粉末組成物を型(mould)のキャビティ内に、
ZP-MX-Bの層が、ZP-MX-Iの層の下に位置し、
ZP-MX-Iの層が、ZP-MX-Tの層の下に位置する
ように積層する、工程と、
積層されたジルコニア粉末組成物を圧縮する工程と、
任意選択で、圧縮されたジルコニア粉末組成物を熱処理する工程と、を含む、方法にも関する。
【0026】
本発明の更なる実施形態は、歯科用修復物を製造する方法であって、
本明細書に記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを準備する工程と、
セットから多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択又は選ぶ工程と、
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用修復物前駆体を機械加工する工程と、
多孔質歯科用修復物前駆体を焼結して、歯科用修復物を得る工程と、を含む、方法を対象とする。
【0027】
更に、本発明は、本明細書に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットと、歯科用セメントと、を含む、パーツキットに関する。
【0028】
別段の定義のない限り、本明細書では、以下の用語は、以下に記載の意味を有する。
【0029】
用語「歯科用物品」は、歯科又は歯列矯正の分野で、特に歯科用修復物、歯型及びこれらの一部を製造するために、又は、それら自体として、使用される物品を意味する。
【0030】
「歯科用修復物」は、欠損した歯牙構造を修復するための歯科用物品を意味する。歯科用修復物は、典型的には、三次元の内側表面及び外側表面を有する。表面は、典型的には、凸状及び凹状構造を含む。陶器又は敷石などの他の物品と比較して、歯科用修復物は、小さく繊細なものである。歯科用修復物の厚さは、非常に薄い、例えば、縁部及びリム(0.1mm未満)から、かなり厚い、例えば、咬合領域(最大8又は16mm)まで変化し得る。歯科用ブリッジ内のクラウン部分を架橋するセクションは、最大20mmの厚さを有し得る。外側表面は、典型的には全体的な凸状形状を有するが、一方内側表面は、典型的には全体的な凹状形状を有する。
【0031】
本明細書に記載の歯科用修復物は、焼結後に、イットリウム安定化ジルコニアを含む多結晶セラミック材料を含むか、又はこれから本質的になる。
【0032】
歯科用物品の例としては、クラウン(モノリシックなクラウンなど)、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、前装、コーピング、クラウン及びブリッジフレームワーク、インプラント、アバットメント、歯列矯正器具(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、クリート及びボタン)、モノリシックな歯科用修復物(すなわち、ベニアを接着する必要のない修復物)並びにこれらの一部が挙げられる。
【0033】
歯の表面は、歯科用物品ではないものとみなされる。
【0034】
歯科用物品は、患者の健康に有害である成分を含有せず、ひいては歯科用物品から移動し得る有害かつ毒性の成分を含まない必要がある。
【0035】
「歯科用ミルブランク」とは、そこから歯科用物品、歯科用加工品、歯科用支持構造又は歯科用修復物を、任意のサブトラクティブなプロセス、例えばミリング加工以外に研削、ドリル加工などによって機械加工することができ、典型的にはこれらのプロセスによって機械加工されるべき、材料の中実なブロック(三次元物品)を意味する。
【0036】
歯科用ミルブランクは、幾何学的に画定された形状を有し、少なくとも1つの平坦な表面を有している。いわゆる「自由成形表面」は、「幾何学的に画定された」とはみなされない。この点で、歯科用修復物(例えば、クラウン又はブリッジ)の形状自体は、歯科用ミルブランクとはみなされない。
【0037】
「ジルコニア物品」とは、少なくとも1つのx、y、z寸法が少なくとも約5mmである三次元物品を意味するものとし、この物品は、少なくとも80又は少なくとも90又は少なくとも95重量%のジルコニアで構成される。
【0038】
「セラミック」とは、熱を加えることによって製造される無機の非金属材料を意味する。セラミックは、通常、硬く、多孔質かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックとは対照的に、本質的に純粋な結晶質構造を示す。
【0039】
「結晶質」とは、三次元で周期的なパターンで配置される原子から構成される(すなわち、X線回折により測定して、長範囲結晶構造を有する)固体を意味する。結晶構造としては、正方晶系、単斜晶系、立方晶系のジルコニア及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
「モノリシックな歯科用修復物」は、その表面に前装もベニアも貼り付けられていない歯科用セラミック物品を意味するものとする。すなわち、モノリシックな歯科用修復物は、本質的に、1つの材料組成物のみからなる。しかしながら、所望であれば、薄いグレージング層を適用することができる。
【0041】
「ガラス」は、熱力学的に過冷却された、及び凝固された溶融物である無機の非金属非晶質材料を意味する。ガラスは、硬く、脆性の、透明な固体を指す。典型的な例としては、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、結晶化することなく剛性状態まで冷却された融合物の無機生成物である。ほとんどのガラスは、それらの主成分としてのシリカ、並びに特定量のガラス形成剤及びガラス変性剤を含有する。
【0042】
本明細書に記載の多孔質セラミック歯科用材料は、ガラスを含有しない。
【0043】
「ガラスセラミック」とは、無機の非金属材料であって、ガラス材料とセラミック材料とを組み合わせて又は混合物の状態で含むように、1つ以上の結晶相がガラス相によって囲まれている、材料を意味する。ガラスセラミックはガラスとして形成された後、熱処理によって部分的に結晶化するように作製される。ガラスセラミックは、酸化リチウム、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムの混合物を指す場合がある。
【0044】
本明細書に記載の多孔質歯科用材料は、ガラスセラミックを含有しない。
【0045】
「粉末」とは、振盪されるか又は傾けられる際に自由に流動することができる多数の微細な粒子から構成された乾燥したバルクを意味する。
【0046】
「粒子」とは、幾何学的に測定できる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は規則的であっても不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析され得る。
【0047】
「密度」とは、物体の質量の体積に対する比を意味する。密度の単位は、典型的には、g/cmである。物体の密度は、例えば、その体積を求め(例えば、計算により又はアルキメデスの原理若しくは方法を適用することにより)、その質量を測定することによって、算出することができる。
【0048】
サンプルの体積は、サンプルの全体の外側寸法に基づいて求めることができる。サンプルの密度は、測定されたサンプル体積及びサンプル質量から算出することができる。セラミック材料の総体積は、サンプルの質量及び使用した材料の密度から計算することができる。サンプル中の気泡の総容積は、サンプル体積の残部(100%から材料の総体積を減算したもの)であると想定される。
【0049】
「多孔質材料」は、セラミックの技術分野では、空隙、細孔、又は気泡によって形成される部分容積を含む材料を指す。したがって、材料の「連続気泡(open-celled)」構造は「開多孔質(open-porous)」構造と呼ばれることがあり、「独立気泡(closed-celled)」材料構造は「閉多孔質(closed-porous)」構造と呼ばれることがある。本技術分野では、用語「気泡」の代わりに「細孔」の使用が見受けられる場合もある。材料構造分類の「連続気泡」及び「独立気泡」は、DIN 66133に従って、異なる材料サンプルにて測定された異なる多孔率について評価することができる(例えば、米国のQuantachrome Inc.製の水銀「Poremaster 60-GT」を使用して)。連続気泡又は開多孔質構造を有する材料には、例えばガスを通過させることができる。
【0050】
「連続気泡」材料についての典型的な値は、15%~75%、又は18%~75%、又は30%~70%、又は34%~67%、又は40%~68%、又は42%~67%である。用語「独立気泡」は、「閉多孔率」に関連する。独立気泡は、外側からアクセス不可能であって、周囲条件下でガスが侵入することができない気泡である。
【0051】
「平均連結孔径(average connected pore diameter)」は、材料の連続気泡孔の平均サイズを意味する。平均連結孔径は、実施例の項に記載のとおりに算出することができる。
【0052】
「か焼」は、揮発性化学結合成分(例えば、有機成分)の少なくとも90重量%を除去するために固体材料を加熱するプロセスを指す(例えば、物理的に結合している水を加熱により除去する乾燥と対比される)。か焼は、予備焼結工程の実施に必要な温度よりも低い温度で実施される。
【0053】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。予備焼結されたセラミック物品は、焼結工程中、すなわち、適切な温度が適用される場合に、収縮する。適用される焼結温度は、選択されたセラミック材料に応じて異なる。ジルコニアベースのセラミックの場合、典型的な焼結温度範囲は1,100℃~1,600℃である。焼結は、典型的には、より高い密度を有する、多孔率がより低い材料(又はより少ない気泡を有する材料)への、多孔質材料の高密度化を含み、いくつかの場合では、焼結には、材料相組成の変化(例えば、非晶質相の結晶相への部分的転化)も含まれ得る。
【0054】
「蛍光剤」とは、可視光領域(380~780nm)で蛍光を示すか又は提供する薬剤を意味するものとする。
【0055】
「機械加工」は、機械による材料のミリング加工、研削、切断、カービング、又は成形を意味する。ミリング加工は、通常、研削よりも速く、費用対効果が高い。「機械加工可能な物品」は、三次元形状を有し、かつ機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0056】
「周囲条件」とは、本発明の溶液が、保管及び取り扱いの際に通常曝される条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力900~1,100mbar、温度10~40℃及び相対湿度10~100%としてもよい。技工室では、周囲条件は、20~25℃及び1000~1025mbar(海面の高度で)に調整される。
【0057】
組成物が特定の成分を本質的な特徴として含有しない場合、この組成物はこの成分を「本質的又は実質的に含まない」。したがって、この成分は、それだけで、又は他の成分若しくは他の成分の含有物質(ingredient)との組み合わせでのいずれによっても、組成物に意図的に添加されない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常はその成分を全く含有しない。しかしながら、例えば用いられる原料に含有される不純物のために、少量のこの成分が存在するのを回避できないこともある。
【0058】
本明細書で使用される「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。
【0059】
「含む」又は「含有する」という用語及びこれらの変形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲で記載される場合、限定的な意味を有しない。「から本質的になる」は、特定の更なる成分、つまり物品又は組成物の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分が存在し得ることを意味する。「からなる」は、更なる成分が存在するべきではないことを意味する。用語「含む」はまた、用語「から本質的になる」及び「からなる」を含むものとする。
【0060】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0061】
用語に「(s)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、「添加剤(additive(s))」という用語は、1つの添加剤及び2つ以上の添加剤(例えば2つ、3つ、4つなど)を意味する。
【0062】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている、例えば下に記載するものなどの含有物質の量、物性の測定値を表す全ての数は、全ての例で「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】色及び透光性勾配を有する多層歯科用ミルブランクを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書に記載された発明は、いくつかの理由で有利である。
【0065】
多孔質歯科用ミルブランクは、異なるイットリア含有量を有する複数の層を含むため、歯科用ミルブランク又はその機械加工された歯科用物品は、焼結後に透光性勾配を示す。
【0066】
加えて、イットリア及び着色イオンの量は、最下層から最上層に向かって互いに反対方向に変化するため、歯科用ミルブランク又はその機械加工された歯科用物品は、焼結後に色勾配を示す。
【0067】
焼結後に得られる透光性及び/又は色勾配は、天然歯の透光性及び色勾配にかなり類似している。
【0068】
更に、最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計の比率は、セットの歯科用ミルブランクについて本質的に一定であるため、異なった色のジルコニアミルブランクを本質的に同じ条件で焼結し、変色及び/又は歪みのリスクを低減することができる。
【0069】
特定のモル比のイットリア及び着色成分を使用することによって、(非常に明るいものから非常に暗いものまでの)異なる色調にわたるドーパント量全体のより高い安定性が達成され得ることが見出された。これにより、(非常に明るいものから非常に暗いものまでの)多種多様な歯の色について、透光性勾配の強度及び信頼性を改善することができる。
【0070】
本発明は、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを対象とする。
【0071】
このセットは、少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクを含む。このセットは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、16又は17個の、異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクを含み得る。
【0072】
異なった色とは、個々のジルコニア歯科用ミルブランクが、焼結プロセスを実施した後に得られる色によって互いに区別され得ることを意味する。
【0073】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、最下層と最上層とを有する。最下層及び最上層は、個々の層に対応する。3つ以上の層が存在する場合、更なる層は中間層と呼ばれる。
【0074】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、異なるイットリア含有量を有する複数の層を含む。
【0075】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、典型的には、少なくとも3又は4又は5つの層を含む。通常、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、3~8つ又は4~7つの層を含む。
【0076】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの個々の層の厚さは、典型的には、2~12mm、又は2~10mm、又は2~8mmの範囲である。
【0077】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの層の厚さは、等しくても異なっていてもよい。
【0078】
一実施形態によれば、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの最下層(本体領域)は、最上層(エナメル質領域)よりも厚い。そのような配置は、審美的結果を更に改善するのに役立ち得る。
【0079】
一実施形態によれば、個々の層の厚さは、以下のとおりである:最下層>最上層>中間層。
【0080】
6つの層を有する歯科用ミルブランクの一例を図1に示す。与えられた値は、予備焼結されたブランクにおけるmm単位での層高さである。
【0081】
歯科用ミルブランクは、最下層から最上層への色勾配を示す。与えられた数字は、層厚をmm単位で記載している(左:ジルコニア粉末をプレスする前のモールド(mold)内の粉末高さ、右:ジルコニア粉末をプレスした後の推定層高さ)。
【0082】
隣接層間のイットリア濃度差は、典型的には0.5mol%以下であり、好ましくは0.35~0.5mol%の範囲である。
【0083】
これは、この差が、一方では測定可能な透光性勾配を得るのに十分に高く、他方では焼結中の歪みのリスクを低減するのに十分に低いため、有利であり得る。
【0084】
更に、隣接層間のイットリア濃度の差があまり高くない場合、層界面における不透明な光学的効果を回避することができる。
【0085】
イットリアの量及び着色イオンの量(mol%で与えられる)は、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの最下層から最上層に向かって互いに反対方向に変化する。
【0086】
一実施形態によれば、最下層におけるイットリアの量は最上層よりも少なく、最下層における着色イオンの量は最上層よりも多い。
【0087】
したがって、焼結後、歯科用ミルブランク又はその機械加工された歯科用物品は、透光性及び/又は色勾配を示す。
【0088】
イットリア及び着色イオンの量は、セットに含有される歯科用ミルブランクについて、最上層と最下層の間のドーパントが、本質的に一定の比率となるように調整される。
【0089】
より正確には、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率は、歯科用ミルブランクの異なる色について本質的に一定である。
【0090】
本質的に一定とは、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率が、セットの全ての着色ミルブランクについて、2.70以下の偏差Dで変化することを意味する。
【0091】
偏差Dは、各色について、上述した比率Rから式(1)を用いて計算することができる。
【数2】
ブランクのセットは、N≧2、n=1、2、...、NであるN個の色を含有する。
【0092】
R=(最上層におけるイットリア+着色酸化物の量のmol%)/(最下層におけるイットリア+着色酸化物の量のmol%)。Rmaxは、セット内の色組成について見出される最も高い比率である。通常、最も高い比率は、セットの最も明るい色について見出される。
【0093】
歯科用ミルブランク中に存在するイットリアの量に応じて、最上層におけるイットリアの量+着色イオンの量(mol%)を最下層におけるイットリアの量+着色イオンの量(mol%)で割った比率は変化し得る。
【0094】
例えば、最下層から最上層に向かって3.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの場合、比率は、より暗い色について、特に次第に暗くなる色について、典型的には1.83以下であり、好ましくは1.83~1.67の範囲である。
【0095】
最下層から最上層に向かって4.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの場合、比率は、より暗い色について、特に次第に暗くなる色について、典型的には1.37以下であり、好ましくは1.37~1.31の範囲である。
【0096】
最下層から最上層に向かって3.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの場合、比率は、より暗い色について、特に次第に暗くなる色について、典型的には1.66以下であり、好ましくは1.66~1.54の範囲である。
【0097】
最下層から最上層に向かって4.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの場合、比率は、より暗い色について、特に次第に暗くなる色について、典型的には1.25以下であり、好ましくは1.25~1.20の範囲である。
【0098】
最下層から最上層に向かって3.2~5.65mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの場合、比率は、より暗い色について、特に次第に暗くなる色について、典型的には1.76以下であり、好ましくは1.76~1.62の範囲である。
【0099】
これらの差は、式(1)によって説明される。RとRmaxとの間の偏差を計算するための単純な方法は、(Rmax-R)/Rmax 100であり、これはパーセントでの偏差である。この項をRmax で割ることによって、結果は正規化され、多くの異なるイットリア勾配に対して有効になるが、より単純に計算された偏差は、イットリア勾配又はRmax値それぞれが増加するにつれて増加する。
【0100】
歯科用ミルブランクのセットが非常に明るい色を含有し、着色イオンのドーピングが低い場合、上記のRmax値が適用可能であることも考慮されなければならない。これが当てはまらない場合、イットリア勾配が比較的高い場合であっても、Rmax値はより低くなり得る。
【0101】
本明細書に記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、ジルコニア、イットリア、及び着色イオン、並びに任意選択で蛍光成分及び/又はアルミナを含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0102】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの層は、異なる量のイットリア、典型的には、2.8~7.0mol%又は3.0~5.5mol%の範囲の量のイットリアを含有する。
【0103】
本明細書に記載されるミルブランクのセットの多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの層はまた、着色イオン、特にErと、Fe、Tb、V、Mn、Cr、Coから選択される少なくとも1つの更なる着色イオンとを含有する。
【0104】
任意選択で、アルミナが存在してもよい。アルミナが存在する場合、アルミナは、典型的には、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対して最大0.15mol%、又は最大0.1mol%、又は最大0.05mol%の量で存在する。
【0105】
所望であれば、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクはまた、蛍光剤、特にBi成分を含有してもよい。Bi成分が存在する場合、Fe成分の存在は避けるべきである。
【0106】
Bi成分が存在する場合、Bi成分(Biとして計算される)は、典型的には、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対して最大0.04mol%、又は最大0.03mol%、又は最大0.02mol%の量で存在する。
【0107】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、Feを着色剤として使用することにより、蛍光を開始させるために必要とされる紫外線、若しくは放射された青色の蛍光自体のいずれか、又は更にはこれらの両方が、Fe成分によって吸収されることで失われ、所望の視覚的外観が得られなくなるものと考えられる。
【0108】
本明細書に記載される歯科用ミルブランクのセットの多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、典型的には、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの化学組成に対するmol%で、89.35~97.18mol%のZrO、0~ mol%のHfO、2.8~7.0mol%のY、0~0.15mol%のAl、0.02~0.5mol%の、それぞれの酸化物として計算される着色イオンを含むか、又はこれらから本質的になり、着色イオンは、Erのイオン、及びFe、Tb、V、Mn、Cr、Coのリストから選択される少なくとも1つの更なるイオンである。
【0109】
2.8~7.0mol%のイットリアの量は、ブロックが本明細書に記載されるイットリア勾配を有するという条件で、個々のブロックの個々の各層を指す。
【0110】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、典型的には、以下のパラメータ:
a)平均一次粒径:900nm未満又は800nm未満又は600nm未満、
b)平均連結孔径:10~200nm、
c)BET表面:2~20m/g又は5~16m/g又は7~14m/g、
d)2軸曲げ強度:8~80又は15~55MPa、
e)ビッカース硬度:25~150(HV 0.5)又は35~140(HV 1)
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0111】
一実施形態によれば、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、以下のパラメータ:
a)平均一次粒径:800nm未満、
b)平均連結孔径:10~200nm、
c)BET表面:2~20m/g、
d)2軸曲げ強度:8~80MPa、
e)ビッカース硬度:25~150(HV 0.5)
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0112】
別の実施形態によれば、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、以下のパラメータ:
a)平均一次粒径:600nm未満、
b)平均連結孔径:10~200nm、
c)BET表面:7~14m/g、
d)2軸曲げ強度:15~55MPa、
e)ビッカース硬度:35~140(HV 1)
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0113】
所望であれば、それぞれの特性は、実施例の項に記載のとおりに測定することができる。
【0114】
パラメータa)及びb)、又はa)及びc)、又はa)及びd)、又はa)、c)及びd)の組み合わせが好ましい場合があり得る。
【0115】
多孔質ジルコニア材料が特定のBET表面を有する場合、特定の特性にとって有益であり得ることが見出された。BET表面は、特定の範囲にある必要がある。BET表面は、小さすぎても大きすぎてもならない。
【0116】
材料のBET表面が低すぎる場合、スピード焼結サイクルにおいて理論密度に到達するか又は近付くための焼結活性が十分でない場合があり、これは、材料強度及び透光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0117】
材料のBET表面が高すぎる場合、焼結挙動を十分に制御することが困難になる可能性がある。この場合、所望の強度及び透光性の材料を得ることも困難となり得る。
【0118】
この材料のビッカース硬度もまた、典型的には、特定の範囲にある。
【0119】
材料のビッカース硬度が低すぎる場合、機械加工性が低下し、品質が損なわれる可能性がある(加工品の縁部欠け又は破損)か、又は歯科用修復物若しくはモノリシックな修復物のフレームを個別化するための手作業再加工による同様な困難さも発生する可能性がある。
【0120】
材料のビッカース硬度が高すぎる場合、工作工具の摩耗が不経済な範囲まで増大する場合があるか、又は工作工具が加工品を破損及び破壊する場合がある。
【0121】
材料の2軸曲げ強度もまた、典型的には、特定の範囲にある。
【0122】
材料の2軸曲げ強度が低すぎる場合、ミリング加工の際又は歯科技工士による手作業での仕上げ加工の際に、材料がクラックを生じやすいことが見出された。
【0123】
他方、材料の2軸曲げ強度が高すぎる場合、ミリング加工機による材料の加工は、適切な実施では不可能であることが多い。ミリング加工工具又はミリング加工された材料は、欠けたり、又は破損したりする傾向がある。そのような場合には、材料の成形は、例えば、Cerec(商標)研削機(Sirona)を使用した研削によって行わなければならないだろう。
【0124】
上記の特徴を有する多孔質歯科用材料は、典型的には、良好な透光性及び強度を維持しながら、他の市販の歯科用ミルブランクと比較して、より良好な機械加工性及びより速い焼結性を呈することが見出された。
【0125】
したがって、本明細書に記載の多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの多孔質ジルコニア材料は特徴の特有の組み合わせを有することができ、これによって審美性の高い歯科用セラミック物品の信頼性のある製造が容易となる。
【0126】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクはまた、その形状及び/又はサイズで特徴付けることができる。
【0127】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、歯科用ミルブランクの機械加工装置への取り外し可能な取り付け又は固定を可能にする形状を有する。好適な形状としては、円盤形又はブロック(例えば、立方形、直方形、円筒形など)が挙げられる。
【0128】
立方形又は直方形の形状の歯科用ミルブランクの場合、典型的な寸法は、二次元において少なくとも19mm、三次元において少なくとも12mmである。
【0129】
あるいは、ブロックの形状を有する歯科用ミルブランクは、x寸法:12~45mm又は19~40mm、y寸法:12~70mm又は19~60mm、z寸法:10~40mm又は12~25mmを有することができる。
【0130】
円筒形又は円盤形の形状の歯科用ミルブランクの場合、典型的な寸法は、直径19mm超、高さ12mm超である。
【0131】
あるいは、円盤形の形状を有する歯科用ミルブランクは、x、y寸法:90~110mm又は95~105mm、z寸法:10~35mm又は12~30mmを有することができる。
【0132】
歯科用ミルブランクはまた、歯科用ミルブランクを機械加工装置に取り付けるための手段を含んでもよい。好適な手段としては、フレーム、ノッチ、スタブ、マンドレル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0133】
そのような手段への歯科用ミルブランクの固定は、クランピング、接着、ねじ込み、及びこれらの組み合わせによってなされ得る。そのような手段を使用することは、機械加工装置による歯科用修復物の製造を容易にすることができる。
【0134】
保持装置又は手段の例は、例えば、米国特許第8,141,217(B2)号(Gublerら)、国際公開第02/45614(A1)号(ETH Zurich)、独国特許第20316004(U1)号(Stuehrenberg)、米国特許第7,985,119(B2)号(Baslerら)又は国際公開第01/13862号(3M)に記載されている。保持装置の説明に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本発明はまた、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクのセットを製造する方法を対象とする。
【0136】
概して、歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニア材料は、
異なる組成の粉末を混合して粉末混合物を得る工程と、
粉末混合物をプレスする工程と、
任意選択で、プレスされた粉末混合物を熱処理する工程と、を含む、方法によって得ることができる。
【0137】
個々の粉末は、
ジルコニア粉末を、着色イオン、特にErイオンと、Fe、Tb、V、Mn、Cr及び/又はCoから選択される更なるイオンとを含有する溶液で処理する工程と、
混合物を乾燥して粉末を得る工程と、を含む、方法によって得ることができる。
【0138】
あるいは、個々の粉末は、
ジルコニア粉末を、着色酸化物を含有する粉末、特にEr酸化物と、Fe、Tb、V、Mn、Cr及び/又はCoの更なる酸化物とを含む粉末で処理する工程と、
混合物を湿潤状態でミリング加工する工程と、
混合物を(噴霧)乾燥して粉末を得る工程と、を含む、方法によって得ることができる。
【0139】
好適なジルコニア粉末は、東ソー株式会社(日本)をはじめとする様々な供給元から市販されている。
【0140】
個々の粉末の混合は、粉末を振盪するか、又はミル(例えばボールミル、アトライターミル)に粉末を入れて、均一な粉末混合物が得られるまで粉末をミリング加工することによって達成することができる。更なる可能な混合機器としては、ふるい又は造粒機が挙げられる。
【0141】
プレス工程又は圧縮工程を容易にするため、所望であれば、プレス助剤を添加することができる。
【0142】
好適なプレス助剤としては、結合剤、潤滑剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0143】
所望であれば、これらの助剤は、粉末混合物の主成分である酸化ジルコニア粉末に添加することができる。
【0144】
次いで粉末混合物を型に入れて(層ごとに)、歯科用ミルブランクの形状にプレスする。
【0145】
加える圧力は典型的には、150~300MPaの範囲である。あるいは、加える圧力は、プレスされたセラミック体が特定の密度、例えばジルコニアセラミックの場合、2.8g/cm~3.5g/cmの密度に達するように設定される。
【0146】
更なる工程では、典型的には、多孔質歯科用ミルブランクを得るために、圧縮された組成物に熱処理を適用する。この工程の間に、有機化合物(例えば、結合剤成分)が除去される(しばしばか焼と呼ばれる)。
【0147】
熱処理の温度は、典型的には、800~1,100℃、又は900~1,000℃の範囲である。熱処理は、典型的には、10~70時間、又は15~60時間の持続時間にわたって適用される。
【0148】
熱処理後に得られた物品を、任意の所望の形状に機械加工又は切片化することができる。
【0149】
より具体的には、本明細書に記載されるセットの多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、以下の工程:
少なくとも以下の粉末組成物:
イットリア含有量Y1を有するジルコニア粉末ZP1、
イットリア含有量Y2を有するジルコニア粉末ZP2、
着色イオンCI-Aを含有するジルコニア粉末ZP3、
着色イオンCI-Bを含有するジルコニア粉末ZP4
を準備する工程であって、イットリア含有量Y2のmol%が、イットリア含有量Y1よりも高い、工程と、
ジルコニア粉末ZP1、ZP2、ZP3、及びZP4を異なる混合比で混合して、少なくとも
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-B、
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-I
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-T
を得る工程であって、ジルコニア粉末組成物のイットリア含有量のmol%が、
【数3】
であり、
中間層の数が、M≧1であり、m=1、...、Mであり、
セットの各着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、ジルコニア粉末組成物を型のキャビティ内に、
ZP-MX-Bの層が、ZP-MX-Iの層の下に位置し、
ZP-MX-Iの層が、ZP-MX-Tの層の下に位置する
ように積層する、工程と、
積層されたジルコニア粉末組成物を圧縮する工程と、
任意選択で、圧縮されたジルコニア粉末組成物を熱処理する工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0150】
一実施形態によれば、ジルコニア粉末組成物層の層厚は以下のとおり:ZP-MX-B>ZP-MX-I<ZP-MX-Tであり、典型的にはZP-MX-B>ZP-MX-Tである。
【0151】
一実施形態によれば、本明細書に記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットは、少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含み、
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、
ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、
着色イオンは、Erと、Fe、Tb、V、Mn、Cr、Coから選択される少なくとも1つの更なるイオンとから選択され、
3~7つの層を含み、
最初の層は最下層と呼ばれ、最後の層は最上層と呼ばれ、
最下層は、最上層よりも厚く、
各層は異なるイットリア含有量を有し、
イットリア含有量は、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対して2.8~7.0mol%の範囲であり、
イットリア含有量は、層ごとに0.5mol%以下で異なり、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、最下層から最上層に向かって互いに反対方向に変化し、
最上層と最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率Rから下記式
【数4】
を用いて計算された偏差Dは、N個(N≧2、n=1、2、...、N)の異なる色を含有するセット内では、の全ての異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、2.70以下であり、Rmaxは、セット内で見出される最も高い比率である。
【0152】
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用ミルブランクのセットの多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから歯科用修復物を製造する方法を対象とする。
【0153】
そのような方法は、典型的には、
本明細書に記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを準備する工程と、
任意選択で、修復される歯の歯色を決定する工程と、
セットから多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択する工程と、
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用修復物前駆体を機械加工する工程と、
多孔質歯科用修復物前駆体を焼結する工程と、を含む。
【0154】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択又は選ぶ工程は、特に限定されない。セットの任意の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択することができる。典型的には、施術者は、焼結後に修復される歯の歯色と一致させるのに最も適した多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクをセットから選択する。
【0155】
所望であれば、歯色は、市販のシェードガイド(例えば、Vita社製)を用いて決定することができる。
【0156】
機械加工工程は、典型的には、ミリング加工装置又は研削装置により、又はこれらを使用して行われる。これらの装置は、例えば、Roland(DWXミル)、又はSirona(CEREC(商標)inLab CAD/CAM)などから市販されている。
【0157】
機械加工工程は、ミリング加工装置、ドリル加工装置、切断装置、カービング装置、又は研削装置によって行うことができる。
【0158】
有用なミリング加工のパラメータとしては、ミリング加工工具の回転速度:5,000~40,000回転/分、供給速度:20~5,000mm/分、ミリング加工カッター径:0.8~4mmが挙げられる。
【0159】
所望であれば、機械加工された多孔質歯科用ジルコニア修復物は、例えば、加圧空気を用いてミリング加工による粉塵を除去することによって、洗浄する。
【0160】
歯科用修復物を製造する方法は、焼結工程を含む。
【0161】
焼結により、結晶質金属酸化物物品と呼ばれることもある、ジルコニア歯科用物品がもたらされる。
【0162】
実施される場合、焼成又は焼結工程は、許容し得る歯に似た色(例えば、Vita(商標)Classicalシェードシステムに適合する色)を有する歯科用セラミック物品をもたらす条件下で行う必要がある。
【0163】
有用な焼結条件は、概ね、以下のパラメータ:
温度:1,100~1,600℃、又は1,100~1,500℃、又は1,100℃~1,450℃、又は1,100℃~1,300℃、又は1,300℃~1,600℃、又は1,400℃~1,580℃、又は1,450℃~1,580℃、
雰囲気:空気、
持続時間:材料の理論的実現可能密度の少なくとも98又は99~100%の密度に到達するまで、
放置時間:0~24時間、又は0.1~5時間、
圧力:周囲気圧
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0164】
一実施形態によれば、焼結条件は、温度:1,100~1,600℃、雰囲気:空気、持続時間:材料の理論的実現可能密度の少なくとも98%の密度に到達するまで、放置時間:0~24時間で特徴付けられる。
【0165】
焼成プロセス中に、多孔質歯科用物品は、その最終形状まで焼結され、これによって、寸法、密度、硬度、曲げ強度及び/又は粒径に関して変化が起きる。
【0166】
放置時間は、物品が最高焼結温度で保持される間の時間である。放置時間は0である場合もある。しかしながら、放置時間はまた、0~24時間、又は0.1~5時間の範囲であり得る。
【0167】
しかしながら、焼結温度及び放置時間は、典型的には相関している。典型的には、温度が高いほど、放置時間は短くなる。
【0168】
したがって、放置時間は、0~5時間(例えば、焼成温度が1,550℃の場合)、又は0.1~24時間(例えば、焼成温度が1,100℃の場合)続いてもよい。
【0169】
概して、焼結又は焼成条件は、焼結された歯科用セラミック物品が、理論的実現可能密度に比べて、98%以上の密度を有するように調整される。
【0170】
より高速の加工が望まれる場合、より高い加熱速度を使用することができる。
【0171】
概して、いわゆるスピード焼結又は高速焼結に有用な熱処理条件は、以下の特徴:
a)加熱速度:1.5~7℃/秒、又は2~7℃/秒、又は3~7℃/秒、
b)焼結温度:少なくとも1,400℃、又は少なくとも1,450℃、又は少なくとも1,500℃、
c)雰囲気:空気、
d)持続時間:60分未満、
e)放置時間:0~10分、
f)圧力:周囲気圧、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0172】
一実施形態によれば、好適な熱処理条件は、以下の特徴:
a)加熱速度:2~7℃/秒、
b)焼結温度:少なくとも1,500℃、
c)雰囲気:空気、
d)持続時間:60分未満;
e)放置時間:0~10分;
f)圧力:周囲気圧、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0173】
以下の特徴の組み合わせ:a)及びb)、a)、b)及びd)、a)、b)、c)、d)及びe)が好ましいことがある。
【0174】
本明細書に記載の方法に使用できるオーブンは、Dentsply Sironaから市販されている(SpeedFire(商標))。
【0175】
好適な炉もまた、国際公開第2017/144644(A1)号(Sirona)に記載されている。この炉は、歯科用交換部品の熱処理を実行するためのものであり、誘導コイル、輻射ヒーター、絶縁層、及び炉室を備える。更に、炉は、炉室の内部温度を制御するための冷却システムを有する。
【0176】
高い加熱速度が使用される高速熱処理プロセスに代わるものとして、焼結プロセスはまた、より低い加熱速度を使用することによって実施することもできる。
【0177】
それぞれの焼結プロトコルは、加熱速度:1~60℃/分、焼結温度:1,100~1,600℃、持続時間:60~480分で特徴付けることができる。
【0178】
使用できる炉は、市販のLava(商標)Furnace 200(3M Oral Care)である。
【0179】
また、本明細書に記載されるセットの多孔質ジルコニアミルブランクから(例えば、機械加工工程を適用することによって)得られるか又は得ることができる歯科用修復物前駆体も記載される。
【0180】
そのような歯科用修復物前駆体、又はそのような歯科用修復物前駆体を焼結することによって得られる後の歯科用修復物は、典型的には、インレー、アンレー、ベニア、前装、コーピング、クラウン、ブリッジ、インプラント、アバットメント、歯科矯正器具、又はこれらの一部の形状を有する。
【0181】
また、歯科用修復物前駆体を焼結することによって得られるか又は得ることができる歯科用修復物も記載される。
【0182】
そのような歯科用修復物は、典型的には、以下の特徴:
密度:5.8~6.1g/cm
透光性:歯科用ジルコニアミルブランクの最上層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも30%、
透光性:歯科用ジルコニアミルブランクの最下層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも15%
の単独又は組み合わせで特徴付けられる。
【0183】
所望であれば、歯科用ミルブランクの焼結サンプルは、2軸曲げ強度及び結晶相含有量などの更なるパラメータによって特徴付けることもできる。
【0184】
2軸曲げ強度は、典型的には、500MPa~2,000MPaの範囲である。
【0185】
結晶相含有量は、典型的には、正方晶相について30~80重量%の範囲であり、立方晶相について20~70重量%の範囲である。
【0186】
本発明はまた、パーツキットも対象とする。パーツキットは、本明細書に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットと、歯科用セメントと、を含む。
【0187】
歯科用セメントは、歯科用ミルブランクから機械加工された歯科用修復物を歯表面に取り付けるか又は固定するために使用される。
【0188】
好適な歯科用セメントとしては、樹脂変性グラスアイオノマーセメント(RM-GIZ)、及びまた自己接着性樹脂セメントも挙げられる。
【0189】
RM-GIZセメントは、典型的には、酸反応性充填剤(フルオロアルミノシリケートガラスなど)、水、任意選択でポリ酸、重合性成分((メタ)アクリレート成分など)、及び開始剤系を含有する。
【0190】
自己接着性樹脂セメントは、典型的には、酸性重合性成分(例えば、リン酸又はカルボン酸部分を有する(メタ)アクリレート成分)、酸性部分を有しない重合性成分、開始剤系、及び充填剤を含有する。
【0191】
好適な歯科用セメントも市販されており、例えばRelyX(商標)Unicem 2又はRelyX(商標)Luting Plus(3M Oral Care)がある。
【0192】
本明細書に記載のパーツキットは、以下の構成要素:使用説明書、焼結炉、を単独で又は組み合わせて更に含み得る。
【0193】
使用説明書は、典型的には、適用される機械加工プロセス及びパラメータ、並びに機械加工された物品を本明細書に記載のように最終密度まで焼結する上で有用な焼結条件に関する情報を含んでいる。
【0194】
焼結炉は、通常の焼結プロセスを実施するための、又はスピード焼結プロセスを実施するための炉であり得る。
【0195】
本明細書に記載の焼結装置を使用することができる。焼結炉はまた、例えば、3M Oral Care、DentsplySirona、又はIvoclarから市販されている。
【0196】
本明細書に記載される歯科用ジルコニアミルブランクを製造するために使用される全ての成分は、十分に生体適合性であるべきである、すなわち、歯科用ジルコニアミルブランクの材料は、生体組織において毒性応答も、傷害性応答も、免疫学的応答も生じるべきではない。
【0197】
本明細書に記載の歯科用物品は、典型的には、本発明によって達成することを意図する目的に弊害のある成分も添加剤も含有しない。したがって、歯の色に着色されていない歯科用物品を最終的にもたらす量で添加される成分又は添加剤は、通常、この歯科用物品に含有されない。典型的には、当業者に既知であるVita(商標)カラーコードシステムの色に物品を割り当てることができない場合には、その物品は歯の色に着色されていないと特徴付けられる。更に、機械的損傷が起こる程度まで歯科用修復物の機械的強度を低下させることになる成分もまた、通常、歯科用物品には含まれない。
【0198】
更に、ジルコニア歯科用ミルブランク又はそれから得られる歯科用物品の製造は、熱間静水圧圧縮成形工程(HIP)の適用を、典型的には必要としない。
【0199】
より正確には、本明細書に記載されるセットの歯科用ミルブランクは、典型的には、歯科用ジルコニアミルブランクに対する重量%で、以下の成分:1重量%超の量のガラス、1重量%超の量のガラスセラミック、1重量%超の量の安定剤としてのCa又はMg、0.1重量%超の量のフッ化物、を単独で又は組み合わせて含有しない。
【0200】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。上記の明細書、例及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用並びに方法の説明を提供する。本発明は、本明細書に開示された実施形態には限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
【0201】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられる。
【実施例
【0202】
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示のない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。
【0203】
方法
元素組成
所望であれば、元素組成は、蛍光X線分光計(XRF)により、例えば、日本の株式会社リガク製のZSX Primus IIを用いて測定することができる。この方法は、固体、例えば、ジルコニアセラミック又はガラス材料の分析に特に適している。
【0204】
平均連結孔径
所望であれば、平均連結孔径は、以下のように測定することができる。ポロシメータ(Quantachrome Poremaster)を用いて高圧下で水銀を多孔質材料に導入する。加えられる圧力は、水銀の表面張力に対して反対の力によって、孔サイズに関連するものである。いわゆるWashburn方程式を使用して、平均連結孔径を測定することができる。以下の測定パラメータが結果の計算に適用又は使用される。圧力範囲20~60000PSIA、測定中の温度20℃、Hg接触角140°及びHg表面張力480mN/m。
【0205】
多孔率
所望であれば、多孔率は以下のように求めることができる。多孔率=(1-(多孔質材料の密度/焼結した材料の密度))×100。多孔質材料の密度は、重量と体積との割算によって算出することができる。体積は幾何学的測定によって得ることができる。
【0206】
焼結体の平均粒径
所望であれば、平均粒径は、直線切片分析を用いて求めることができる。70,000倍の倍率を有するFESEM顕微鏡写真が、粒径測定に使用される。各サンプルについて、焼結体の異なる領域から撮られた3枚又は4枚の顕微鏡写真を使用する。各顕微鏡写真の高さに対してほぼ等しい間隔で離れて配置される10本の水平線を引く。各直線上で観察した粒界切片の数を計数し、これを用いて切片間の平均距離を算出する。各直線についての平均距離に1.56を乗じて粒径を求め、この値を各サンプルの全ての顕微鏡写真の全ての直線にわたって平均する。
【0207】
粉末組成物の平均一次粒径
所望であれば、ジルコニア粉末の粒子の平均一次粒径は、光散乱技術、例えばMalvern PanalyticalのMastersizer 3000によって求めることができる。
【0208】
2軸曲げ強度
所望であれば、予備焼結した材料の2軸曲げ強度は、ISO 6872に従って、以下の修正を加えて測定することができる。予備焼結したサンプルを、ドライカットソーを用いて2±0.1mmの厚さのウェハに切断する。サンプルの直径は、17±2mmである必要がある。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。各ウェハは、14mmの支持直径を有する3つの鋼球(球の直径6mm)の支持体の中心に置かれる。ウェハと接触するパンチ直径は3.6mmである。パンチは、0.1mm/分の速度でウェハ上に押し込まれる。平均強度を測定するために、最低15個のサンプルを測定する。試験は、Instron5566万能試験機(Instron Deutschland GmbH)で実施することができる。
【0209】
ビッカース硬度
所望であれば、ビッカース硬度は、ISO 14705に従って、以下の修正を加えて求めることができる。予備焼結したサンプルの表面を、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削する。焼結したサンプルの表面は、20μmダイヤモンド懸濁液で研磨される。試験荷重は、サンプルの硬度レベルに調整する。用いた試験荷重は0.2kg~2kgであり、各凹部に15秒間加える。最低10個の凹部を測定し、平均ビッカース硬度を求める。試験は、硬度試験器Leco M-400-G(Leco Instrumente GmbH)によって実施することができる。
【0210】
密度
所望であれば、焼結した材料の密度は、アルキメデス法により測定することができる。この測定は、密度測定キット(Sartorius Ag製「YDK01」の名称)を用いて、精密天びん上で行われる。この手順において、まずサンプルを空気中で計量し(A)、次に溶液(B)に浸漬する。溶液は、脱イオン水中の0.05重量%のテンシド溶液である(例えば、「Berol 266,Fa.Hoesch)。密度は、式ρ=(A/(A-B))ρ0を用いて算出される(式中、ρ0は水の密度である)。相対密度は、材料の理論密度(ρt)を参照することにより、算出することができる。ρrel=(ρ/ρt)100。
【0211】
結晶相含有量
所望であれば、相含有量は、Bruker D8 Discover装置(Bruker AXS)及び製造業者(Bruker)が提供するTOPAS(商標)ソフトウェアを使用して、Rietveld解析を適用し、Bragg-Brentanoジオメトリを使用してX線回折(XRD)により測定することができる。TOPAS(商標)ソフトウェアによって算出された相含有量は重量%で示される。測定は、典型的には、ジルコニアにおけるX線のおよその侵入深さである、3~6μmの深さまで行われる。
【0212】
BET表面
所望であれば、多孔質物品のBET表面は、以下のように測定され得る。総孔容積及び平均孔径は、N吸着等温線及びBET表面積分析を使用することで分析できる。より大きなサンプルから、必要に応じて0.1~2g程度のサンプルを切り出し、装置の試験用直管に挿入した。全てのサンプルを、分析前に120℃で1時間超、真空脱気する。次いで、Belsorb II(Robotherm Prazisionsmesstechnik,Bochum,Germanyによって販売)を用い、9mmのセルで2cmのバルブ及び5mmのガラスロッドで、サンプルをNガスの吸着及び脱着によって分析する。液体窒素の温度で、吸収データポイントを0.1~0.99p/p0で収集し、脱着ポイントを、0.99~0.5p/p0で収集する。比表面積Sは、p/p0 0.25~0.3でのBET法によって算出される(算出に関する詳細は、Belsorb Analysis Software User Manual Operating Manual,Chapter 12,Bel Japan.INCを参照されたい)。
【0213】
蛍光
所望であれば、例えば薄層クロマトグラフィープレートの検査に使用されるUV光ボックスの中に、サンプルを置く。蛍光は、黒色の背景に対して、サンプルを照らし出すことによって、肉眼により検出できる。
【0214】
透光性を測定する方法
所望であれば、セラミック物品の透光性は、以下の手順で評価することができる。およそ1±0.05mmの厚さ、及び直径少なくとも10mmの測定面積を有する円盤形の形状の試験片を提供する。試験片の調製のために、予備焼結したブロック形状のサンプルを、ドライカットソーを使用して、およそ1.3mmの厚さを有するウェハに切断する。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。あるいは、円盤形形状のサンプルをプレス工程中に製造することもでき、この場合は、切断及び研削が不要となる。サンプルを、適切な炉内で焼結し、1±0.05mmの厚さを有する焼結したサンプルにする。焼結したサンプルを、白色及び黒色の背景に対して反射モードで分光光度計(例えば、X-Rite Color i7,Grand Rapids,USA)を用いて焼成したまま測定して、400~700nmの波長にわたる平均値である材料の不透明度(コントラスト比)を得る。透光性Tは、T=100%-不透明度(パーセント)に従って計算される。より高い透光性の値は、光の透過率がより高く、不透明度がより低いことを示す。
【0215】

所望であれば、L値は、不透明度(コントラスト比)及び透光性を測定するために使用されるものと同じ機器及び材料サンプルを使用して測定することができる。
【0216】
材料
表1に記載した粉末を使用することができる。
【表1】
【0217】
計算に使用した分子量は、ZrO:123.22g/mol;HfO:210.49g/mol;Y:225.81g/mol;Al:101.96g/mol;Er:382.56g/mol;Tb:747.70g/mol;MnO:86.94g/molである。
【0218】
個々のジルコニア粉末を製造するための全般手順
個々の粉末は、共沈ジルコニア/ハフニア/イットリア粉末を、着色酸化物、例えばEr、Tb又はMnの酸化物を含有する粉末で処理する工程と、任意選択でアルミナ粉末も添加する工程と、混合物を湿潤状態でミリング加工する工程と、混合物を(噴霧)乾燥してプレス可能な粉末を得る工程と、を含む、方法によって得ることができる。
【0219】
混合ジルコニア粉末を製造するための全般手順
混合粉末は、表1の4つの原料(例えば、ZRO2-3.2Y及びZRO2-P1(Er)及びZRO2-Y(Tb)及びZRO2-G(Mn))を所望の量で組み合わせ、均質な混合物が得られるまで、混合物を、実験室混合装置(IKA製のMinishaker MS2)を用いて振盪することによって製造することができる。
【0220】
歯科用ジルコニアサンプルを製造するための全般手順
上記のジルコニア材料を使用することにより、サンプルを製造することができる。
【0221】
以下の工程を適用する:
4つのジルコニア粉末を粉末組成物に混合する工程、
粉末組成物を型(直径:24.9mm)に充填する工程、
粉末充填物に圧力(97kN)を加える工程、
圧縮体を型から取り出す工程、
960℃で約1時間の熱処理を適用する工程、
得られたブロックからディスクをスライスし、研削する工程。
【0222】
サンプルは、厚さがおよそ1.3mmである。焼結後、サンプル寸法は色及び透光性測定に適したものである。
【0223】
本発明の実施例(IE)1:
本体中のおよそ3.0mol%のY及びエナメル質中のおよそ5.6mol%のYからのY-勾配:
ジルコニア粉末ZRO2-3.2Y、ZRO2-5.6Y、ZRO2-P2、ZRO2-Y、及びZRO2-Gを異なる比率で混合して、異なるVita(商標)Classicalシェード(すなわち、A1、A2、A3、A4、B4、C4、D4)と非常に明るいブリーチシェードとのための、本体組成物(ZRO2-3.2Yを使用)とエナメル質組成物(ZRO2-5.6Yを使用)とを得る。
【表2】
【表3】
【0224】
本発明の実施例(IE)2:
本体中のおよそ4.0mol%のY及びエナメル質中のおよそ5.6mol%のYからのY-勾配:
あまり明確ではないY-勾配を得るために、ジルコニア粉末ZRO2-4.0Y、ZRO2-5.6Y、ZRO2-P2、ZRO2-Y、及びZRO2-Gを使用する。
【表4】
【表5】
【0225】
比較例(CE)1:
本体中のおよそ3.0mol%のY及びエナメル質中のおよそ5.6mol%のYからのY-勾配:
本発明の実施例1とは異なるエルビウムドープジルコニア粉末を使用して、IE1と同じ色を得る。粉末ZRO2-3.2Y、ZRO2-5.6Y、ZRO2-P1、ZRO2-Y及びZRO2-Gを使用する。
【表6】
【表7】
【0226】
比較例(CE)2:
本体中のおよそ4.0mol%のY及びエナメル質中のおよそ5.6mol%のYからのY-勾配:
あまり明確ではないY-勾配を得るために、ジルコニア粉末ZRO2-4.0Y、ZRO2-5.6Y、ZRO2-P1、ZRO2-Y、及びZRO2-Gを使用する。
【表8】
【表9】
【0227】
それぞれの色の本発明の実施例及び比較例は、同じmol%の着色イオンを含有することを目的とした。しかしながら、異なるZRO2粉末の量の精度は、10分の1重量%であるように選択された。これは、製造プロセスにおいて作業するのに妥当な精度であるが、混合粉末の組成に非常に小さな変動を引き起こす可能性がある。そのような小さな変動は、結果として生じる色に対して無視できる影響を有する。
【0228】
表6に示される「色の比率R」値は、mol%値から計算され、したがって、場合によっては最後の桁が外れていることもある。当業者であれば、異なるZRO2粉末の量の精度を100分の1又は更には1000分の1重量%まで高める場合、これは材料に追加の利益をもたらさないが、全く同じ組成(表2~5の4桁目まで)を得ることができることを理解するであろう。
【0229】
「色の比率R」は、表2~5からの各色について、エナメル質の「有色酸化物の合計」を本体の「有色酸化物の合計」で割ることによって計算される。
【0230】
「色+Yの比率R」は、表2~5からの各色について、エナメル質の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム」を本体の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム」で割ることによって計算される。
【0231】
「色+Yの偏差D」は、Rがそれぞれの色に対する「色+Yの比率R」値であり、Rmaxが漂白に対する「色+Yの比率R」値である式(1)を使用することによって計算される。
【0232】
2.70の限界を超えるDの値に下線が引かれている。
【0233】
例えば、本発明の実施例1(A1)について、計算は以下のとおりである:
エナメル質の「有色酸化物の合計(A1)」:0.0355mol%
本体の「有色酸化物の合計(A1)」:0.0669mol%
⇒「色の比率R(A1)」:0.0355mol%/0.0669mol%=0.5306
エナメル質の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム(A1)」:5.5557mol%
本体の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム(A1)」:3.1960mol%
⇒「色+Yの比率R(A1)」:5.5557mol%/3.1960mol%=1.7383
エナメル質の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム(漂白)」:5.6145mol%
本体の「有色酸化物の合計+酸化イットリウム(漂白)」:3.1924mol%
⇒「色の比率R(漂白)」:5.6145mol%/3.1924mol%=1.7587
「Rmax」は、「色 Yの比率R(漂白)」:1.7587に対応する
「RA1」は、「色 Yの比率R(A1)」:1.7383に対応する
【数5】
【表10】
【0234】
エナメル質層は本体層よりも明るい色調を有するため、エナメル質:本体中の着色酸化物含有量(mol%)の比率(「色の比率R」)は全て<1である。エナメル質層は、着色酸化物が補償しない本体層よりも高いイットリア含有量を有するため、エナメル質:本体中の着色酸化物+イットリア含有量(mol%)の比率(「色+Yの比率R」)は全て>1である。
【0235】
表6の結果は、本発明の実施例が、試験した全ての色にわたって非常に安定したエナメル質:本体のドーピング比率(全ての色について2.70未満のD値)を有することを示す。
【0236】
そのような安定した比率は、比較例における粉末のセットでは得ることができない(かなり暗い色について2.70を超えるD値)。
【0237】
実施例は全て、審美的色勾配について0.49~0.77の「色の比率R」を有する。1に近い数は、より緩やかな勾配を示し、これは、所望よりも小さいか又は見るのが困難であり得る。0.5をはるかに下回る数は、あまりにも明確な色勾配を示し得る。
【0238】
高く安定した「色+Yの比率R」値を有する本発明の実施例は、広範囲の異なる色にわたって、望ましい、明確で信頼できる透光性勾配を示すことが期待される。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0238
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0238】
高く安定した「色+Yの比率R」値を有する本発明の実施例は、広範囲の異なる色にわたって、望ましい、明確で信頼できる透光性勾配を示すことが期待される。
本願発明は、以下の態様を包含する。
(1)少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットであって、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、
ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、
異なるイットリア含有量を有する複数の層を含み、
最下層と最上層とを有し、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記最下層から前記最上層に向かって互いに反対方向に変化し、
前記イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%が、本質的に一定の比率となるように調整される、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(2)前記多孔質ジルコニアミルブランク中のイットリアの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって増加し、前記多孔質ジルコニアミルブランク中の着色イオンの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって減少する、項目1に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(3)一連の偏差値D を有し、前記偏差値D は、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率R から下記式
【数6】
を用いて計算され、D は、N個の異なる色を含有する前記セット内では、前記少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、2.70以下であり、R max は、前記セット内で見出される最も高い比率であり、N≧2、n=1、2、・・・、Nである、項目1又は2に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(4)前記少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの前記イットリア含有量が、層ごとに0.5mol%以下、好ましくは0.35~0.5mol%の範囲の量で異なる、項目1~3のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(5)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対するmol%で、
89.35~97.18mol%のZrO
0~3mol%のHfO
2.8~7.0mol%のY
0~0.15mol%のAl
0.02~0.5mol%の、それぞれの酸化物として計算される着色イオン
を含み、前記着色イオンが、Er、及びFe、Tb、V、Mn、Cr、Coのリストから選択される少なくとも1つの更なるイオンである、項目1~4のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(6)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、少なくとも3つの層を含む、項目1~5のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(7)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの個々の層の厚さが、2~12mmの範囲である、項目1~6のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(8)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、以下の特徴:
密度:2.8~3.2g/cm
2軸曲げ強度:8~80MPa、
BET表面:2~20m /g、
ビッカース硬度:25~150(HV 0.5)又は35~140(HV 1)
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、項目1~7のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(9)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、以下の特徴:
層数:3~7層、
前記層間のイットリア濃度差:0.35~0.5mol%、
Erと、Fe、Tb、V、Mn、Cr、Coから選択される少なくとも1つの更なる着色イオンとを含むこと、
イットリア濃度:2.8~7.0mol%、最上層と最下層との差が少なくとも1.0mol%
で特徴付けられる、項目1~8のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(10)(前記最上層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)/(前記最下層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)の比率Rが、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.83~1.67の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.37~1.31の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.66~1.54の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.25~1.20の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.2~5.65mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.76~1.62の範囲である、項目1~9のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
(11)項目1~10のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを製造する方法であって、
少なくとも以下の粉末組成物:
イットリア含有量Y1を有するジルコニア粉末ZP1、
イットリア含有量Y2を有するジルコニア粉末ZP2、
着色イオンCI-Aを含有するジルコニア粉末ZP3、
着色イオンCI-Bを含有するジルコニア粉末ZP4
を準備する工程であって、前記イットリア含有量Y2のmol%が、前記イットリア含有量Y1よりも高い、工程と、
前記ジルコニア粉末ZP1、ZP2、ZP3、及びZP4を異なる混合比で混合して、少なくとも
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-B、
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-I
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-T
を得る工程であって、前記ジルコニア粉末組成物の前記イットリア含有量のmol%が、
【数7】
であり、
中間層の数が、M≧1であり、m=1、...、Mであり、
前記セットの各着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記ジルコニア粉末組成物を型のキャビティ内に、
ZP-MX-Bの層が、ZP-MX-I の層の下に位置し、
ZP-MX-I の層が、ZP-MX-Tの層の下に位置する
ように積層する、工程と、
前記積層されたジルコニア粉末組成物を圧縮する工程と、
任意選択で、前記圧縮されたジルコニア粉末組成物を熱処理する工程と、を含む、方法。
(12)前記ジルコニア粉末組成物層の層厚が以下のとおり:
【数8】
である、項目11に記載の方法。
(13)歯科用修復物を製造する方法であって、
項目1~10のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを準備する工程と、
前記セットから多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択する工程と、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用修復物前駆体を機械加工する工程と、
前記多孔質歯科用修復物前駆体を焼結して、歯科用修復物を得る工程と、を含む、方法。
(14)前記歯科用修復物が、以下の特徴:
密度:5.8~6.1g/cm
透光性:前記歯科用ジルコニアミルブランクの前記最上層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも30%、
透光性:前記歯科用ジルコニアミルブランクの前記最下層から切り出された厚さ1mmを有するサンプルについて、反射モードで測定し、400~700nmの波長にわたって平均して、少なくとも15%
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、項目13に記載の方法。
(15)項目1~10のいずれかに記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットと、歯科用セメントと、を含む、パーツキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを含む多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットであって、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、
ジルコニア、イットリア、着色イオン、及び任意選択でアルミナを含み、
異なるイットリア含有量を有する複数の層を含み、
最下層と最上層とを有し、
イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記最下層から前記最上層に向かって互いに反対方向に変化し、
前記イットリア及び着色イオンの含有量のmol%は、前記少なくとも2つの異なった色のジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%が、本質的に一定の比率となるように調整される、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項2】
前記多孔質ジルコニアミルブランク中のイットリアの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって増加し、前記多孔質ジルコニアミルブランク中の着色イオンの含有量が、前記最下層から前記最上層に向かって減少する、請求項1に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項3】
一連の偏差値Dを有し、前記偏差値Dは、前記最上層と前記最下層の間のイットリアと着色イオンの合計のmol%の比率Rから下記式
【数1】
を用いて計算され、Dは、N個の異なる色を含有する前記セット内では、前記少なくとも2つの異なった色の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、2.70以下であり、Rmaxは、前記セット内で見出される最も高い比率であり、N≧2、n=1、2、・・・、Nである、請求項1又は2に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項4】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクが、前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料に対するmol%で、
89.35~97.18mol%のZrO
0~3mol%のHfO
2.8~7.0mol%のY
0~0.15mol%のAl
0.02~0.5mol%の、それぞれの酸化物として計算される着色イオン
を含み、前記着色イオンが、Er、及びFe、Tb、V、Mn、Cr、Coのリストから選択される少なくとも1つの更なるイオンである、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項5】
(前記最上層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)/(前記最下層におけるイットリアの量+着色イオンの量のmol%)の比率Rが、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.83~1.67の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.5mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.37~1.31の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.66~1.54の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって4.0~5.0mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.25~1.20の範囲であり、
前記最下層から前記最上層に向かって3.2~5.65mol%のイットリア勾配を有する多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、1.76~1.62の範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを製造する方法であって、
少なくとも以下の粉末組成物:
イットリア含有量Y1を有するジルコニア粉末ZP1、
イットリア含有量Y2を有するジルコニア粉末ZP2、
着色イオンCI-Aを含有するジルコニア粉末ZP3、
着色イオンCI-Bを含有するジルコニア粉末ZP4
を準備する工程であって、前記イットリア含有量Y2のmol%が、前記イットリア含有量Y1よりも高い、工程と、
前記ジルコニア粉末ZP1、ZP2、ZP3、及びZP4を異なる混合比で混合して、少なくとも
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-B、
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-I
ジルコニア粉末組成物ZP-MX-T
を得る工程であって、前記ジルコニア粉末組成物の前記イットリア含有量のmol%が、
【数2】
であり、
中間層の数が、M≧1であり、m=1、...、Mであり、
前記セットの各着色多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクについて、前記ジルコニア粉末組成物を型のキャビティ内に、
ZP-MX-Bの層が、ZP-MX-Iの層の下に位置し、
ZP-MX-Iの層が、ZP-MX-Tの層の下に位置する
ように積層する、工程と、
前記積層されたジルコニア粉末組成物を圧縮する工程と、
任意選択で、前記圧縮されたジルコニア粉末組成物を熱処理する工程と、を含む、方法。
【請求項7】
歯科用修復物を製造する方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットを準備する工程と、
前記セットから多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクを選択する工程と、
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用修復物前駆体を機械加工する工程と、
前記多孔質歯科用修復物前駆体を焼結して、歯科用修復物を得る工程と、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクのセットと、歯科用セメントと、を含む、パーツキット。
【国際調査報告】