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特表2023-546853極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置
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  • 特表-極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20231031BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231031BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20231031BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20231031BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20231031BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231031BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20231031BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20231031BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/133
H01M4/134
H01M10/0567
H01M10/052
H01G11/28
H01G11/62
H01G11/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522540
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021123330
(87)【国際公開番号】W WO2022078340
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011104624.X
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】江 兵
(72)【発明者】
【氏名】王 可飛
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA05
5E078AB01
5E078BA26
5E078BA30
5E078BA71
5E078BB37
5E078DA08
5E078DA19
5H017AA03
5H017AS02
5H017DD05
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH02
5H017HH03
5H029AJ05
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029DJ07
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ08
5H029HJ09
5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA14
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA04
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、エネルギー貯蔵技術分野に関し、特に極片及びそれを含む電気化学装置および電子装置に関するものである。本発明の極片は、集電体およびフィルム片を含み、前記フィルム片は、前記集電体の表面に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の表面に設けられた活物質層とを含み、前記アンダーコート層は第1のバインダーおよび第1の導電剤を含む。ここで、前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧20N/mである。本発明は、従来技術において、集電体の表面に近接する活物質部分の接着力が低いことため、極片が剥がれやすい等の問題を軽減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体およびフィルム片を含む極片であって、
前記フィルム片は、前記集電体の表面に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の表面に設けられた活物質層とを含み、
前記アンダーコート層は、第1のバインダーおよび第1の導電剤を含み、
前記フィルム片と前記集電体との粘着力は、≧20N/mであることを特徴とする、極片。
【請求項2】
前記アンダーコート層の厚さは100nm~2μmであり、好ましくは100nm~1000nmであることを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項3】
a.前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧80N/mであることと、
b.前記フィルム片の圧縮密度は1.30g/cm~1.80g/cmであることと、
c.前記フィルム片の孔隙率は20%~50%であることと、
d.前記フィルム片の抵抗は3mΩ~50mΩであることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項4】
e.前記アンダーコート層中の第1のバインダーの質量含有量は20%~95%であり、前記アンダーコート層中の第1の導電剤の質量含有量は5%~80%であることと、
f.前記第1のバインダーは、炭素-炭素二重結合、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基およびアリール基のうちの少なくとも1つを含むことと、
g.前記第1のバインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを含むことと、
h.前記第1の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項5】
前記第1の導電剤の粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径をDとし、前記アンダーコート層の厚さをHとしたとき、
DとHとの比D/Hは、0.25~1.5であり、好ましくは0.5~1.25であることを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項6】
前記活物質層は活物質および第2のバインダーを含み、前記活物質層は、
i.前記活物質は黒鉛系材料およびシリコン系材料のうちの少なくとも1つを含み、前記シリコン系材料は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合物およびシリコン合金のうちの少なくとも1つを含むことと、
j.前記活物質層は、質量含有量で、80%~99%の活物質、0.8%~20%の第2のバインダー、および0~5%の第2の導電剤を含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項7】
正極片と、負極片と、前記正極片と前記負極片との間に設けられたセパレータとを含む電気化学装置であって、
前記負極片は、請求項1~6のいずれか一項に記載の極片であることを特徴とする、電気化学装置。
【請求項8】
前記電気化学装置は、電解液を含み、
前記電解液は、S=O二重結合を含有する化合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電気化学装置は、
k.前記S=O二重結合を含有する化合物は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステルおよび環状亜硫酸エステルのうちの少なくとも1つを含むことと、
l.前記S=O二重結合を含有する化合物は、式1で示される化合物のうちの少なくとも1つを含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
【化1】
Wは
【化2】
から選択され、
Lは、単結合またはメチレン基から選択され、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~2の整数であり、且つ
pは、0~6の整数であることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記電解液における前記S=O二重結合を含有する化合物の質量分率をyとし、フィルム片の孔隙率をVとしたとき、
yとVは、関係式0.01≦y/V≦0.07を満たす、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の電気化学装置を含むことを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年10月15日に中国特許局に出願された、出願番号が202011104624.Xであり、発明の名称は「極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵技術分野に関し、具体的に、極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置、特にリチウムイオン電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
技術の発展及びモバイル装置に対する需要の増加に伴い、電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)に対する需要が著しく増加する。高いエネルギー密度、優れた寿命およびサイクル特性を併せ持つリチウムイオン電池は研究の方向の一つである。
【0004】
リチウムイオン電池の正極および負極は、サイクルの進行に伴ってリチウムイオンの挿入及び脱離を繰り返し、リチウムイオンの挿入及び脱離に伴って活物質の体積が膨張および収縮する。ここで、負極活物質(例えば石墨、シリコン系材料)の体積の膨張及び収縮が激しく、従来技術において、負極集電体の表面に近接する活物質部分の粘着力が低く、サイクル過程における活物質の体積の膨張または収縮に伴い、集電体の表層に近接する負極活物質層と集電体の表面との分離を引き起こしやすく、極片の剥がれを引き起こし、さらに内部抵抗の上昇、サイクル性の悪化をもたらす。
【0005】
近年、研究者らは、高エネルギー密度のニーズを満たすシリコン系負極材料の開発に精力的に取り組んでいる。シリコン系負極材料は、リチウムイオンの挿入及び脱離過程において、体積変化がより激しく、集電体の表面部分で上記体積変化による剥がれ現象がより深刻である。
【0006】
この実情に鑑みて、優れたサイクル特性を有する改善された電気化学装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術に存在する少なくとも1つの問題を少なくともある程度解決することができる、高い粘着力を有する極片、並びにそれを含む電気化学装置および電子装置を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、集電体およびフィルム片を含む極片を提供し、前記フィルム片は、前記集電体の表面に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の表面に設けられた活物質層とを含み、前記アンダーコート層は第1のバインダーおよび第1の導電剤を含む。ここで、前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧20N/mである。
【0009】
好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧80N/mであり、より好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧100N/mであり、より好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧500N/mである。
【0010】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記アンダーコート層の厚さは100nm~2μmであり、好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記アンダーコート層の厚さは100nm~1000nmであり、より好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記アンダーコート層の厚さは100nm~800nmである。
【0011】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第1の導電剤の粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径をDとし、前記アンダーコート層の厚さをHとしたとき、DとHとの比D/Hは、0.25~1.5であり、好ましくは0.5~1.25であることを満たす。
【0012】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片の圧縮密度は1.30g/cm~1.80g/cmである。
【0013】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片の孔隙率は20%~50%である。好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片の孔隙率は25%~40%である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片のフィルム片抵抗は3mΩ~50mΩである。好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記フィルム片のフィルム片抵抗は3mΩ~30mΩである。
【0015】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記アンダーコート層中の第1のバインダーの質量含有量は20%~95%である。
【0016】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記アンダーコート層中の第1の導電剤の質量含有量は5%~80%である。
【0017】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第1のバインダーは、炭素-炭素二重結合、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基およびアリール基のうちの少なくとも一種を含んでもよい。好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記第1のバインダーは、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基およびエステル基官能基のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0018】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第1のバインダーは、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、PAA(ポリアクリル酸)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびPAM(ポリアクリルアミド)のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0019】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第1の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0020】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記活物質層は、活物質および第2のバインダーを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記活物質は、黒鉛系材料およびシリコン系材料のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0022】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記シリコン系材料は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合物およびシリコン合金のうちの少なくとも一種を含んでもよい。好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記シリコン系材料は、純シリコン、SiO(0<x≦2)およびシリコン炭素複合物のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記活物質層はさらに第2の導電剤を含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記活物質層は、質量含有量で、80%~99%の活物質、0.8%~20%の第2のバインダーおよび0~5%の第2の導電剤を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第2のバインダーは、PAA(ポリアクリル酸)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PAM(ポリアクリルアミド)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)およびCMC(カルボキシメチルセルロース)のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記第2の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの少なくとも一種を含んでもよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、正極片と、負極片と、前記正極片と前記負極片との間に設けられたセパレータとを含む電気化学装置が提供され、ここで、前記負極片は上記の極片である。
【0028】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電気化学装置は、電解液を含み、前記電解液は、S=O二重結合を含有する化合物を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記S=O二重結合を含有する化合物は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステルおよび環状亜硫酸エステルのうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記S=O二重結合を含有する化合物は、式1で示される化合物の少なくとも一種を含んでもよい。
【0031】
【化1】
ここで、Wは、
【化2】
から選択され、
Lは、単結合またはメチレン基から選択され、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~2の整数であり、且つ
pは、0~6の整数である。
【0032】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記式1で示される化合物は、
【化3】
のうちの少なくとも一種を含み、
ここで、mは、1~4の整数であり、
nは、0~2の整数であり、且つ
pは、0~6の整数である。
【0033】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液における前記S=O二重結合を含有する化合物の質量分率をyとし、フィルム片の孔隙率をVとしたとき、yとVは、関係式0.01≦y/V≦0.07を満たす。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、前記の電気化学装置を含む電子装置が提供される。
【0035】
本発明の技術的解決策は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0036】
本発明が提供する極片およびこの極片を含む電気化学装置および電子装置は、前記極片のフィルム片にアンダーコート層を設けることにより、フィルム片と集電体との粘着力を向上させ、極片のサイクル過程における膨張、収縮による剥がれを回避し、電気化学装置のサイクル、形状安定性を大幅に向上させ、電気化学装置が優れたレート特性を有することを保証する。本発明の実施例の他の態様及び利点については、一部的に以下で説明され、示され、または本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下では、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概略に説明する。以下に説明される図面は、本発明の実施例の一部にすぎないことは自明である。当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面に例示される構造により他の実施例の図面を得ることができる。
【0038】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態によって提供される極片の構造模式図である。
図2図2は、本発明の例示的な実施形態によって提供される極片の断面概略図である。
図3図3は、本発明の実施例1-9によって提供される極片の形状安定性を模式的に示す写真である。
図4図4は、本発明の比較例1-2によって提供される極片の形状安定性を模式的に示す写真である。
【0039】
ここで、符号の説明は以下のとおりである。
10-負極集電体;
20-フィルム片;
201-アンダーコート層;
202-活物質層。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0041】
本明細書で使用されている下記した用語は、別に断らない限り、以下に示される意味を持つ。
【0042】
具体的な実施形態及び請求の範囲において、用語「のうちの少なくとも一方」、「のうちの少なくとも一つ」、「のうちの少なくとも一種」、又は、他の類似な用語で接続される項のリストは、リストされる項の任意の組み合わせを意味する。例えば、項A及びBがリストされている場合、「A及びBのうちの少なくとも1つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、またはA及びBを意味する。他の実例では、項A、B、及びCがリストされている場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、またはA、B、及びCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「および/または」または「/」という用語は、関連対象を説明する関連関係にすぎず、3つの関係が存在し得ることを示し、例えば、Aおよび/またはBは、Aが単独で存在すること、AおよびBの両方が存在すること、ならびにBが単独で存在することを示し得る。さらに、説明を容易にするために、本明細書で使用される「第1の」「第2の」、および同様の用語は、順序、量、または重要性を示すものではなく、単に異なる要素を区別するために使用される。
【0044】
なお、本明細書において、数量、比率、及びその他の値を範囲で表示する場合がある。このような範囲は、便宜及び簡潔を目的としており、かつ、このような範囲は、範囲に制限された数値として明確に指定される数値を含むだけでなく、前記範囲内に含まれた全ての各値及びサブ範囲も含み、各値及びサブ範囲が明確に指定されると相当する、ことを理解すべきである。
【0045】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の電極(正極または負極)は、一般的に、活物質、導電剤、増粘剤、バインダー及び溶媒を混合して、混合したスラリーを集電体に塗布することにより作製される。また、電気化学装置の理論容量は、活物質の種類によって異なる。サイクルが進行するにつれて、電気化学装置は、一般に、充電/放電容量の低下が生じる。それは、電気化学装置は充電および/または放電の過程で、電極の界面に変化が起こることにより、電極活物質がその機能を発揮できなくなるからである。
【0046】
本発明は、特定の粘着力を有する極片を使用することによって、サイクル中の電気化学装置の極片の安定性を保証し、サイクル中の膨張、収縮による負極の剥がれを回避し、それによって電気化学装置のサイクル特性を改善することができる。本発明の特定の粘着力を有する極片は、極片の構造およびバインダーの官能基の種類を制御することによって達成することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施例において、下記のような負極、正極、および電解液を含む電気化学装置を提供する。
【0048】
[負極]
図1図2に示すように、本発明のいくつかの実施例における負極片は、負極集電体10およびフィルム片20を含む。ここで、フィルム片20と負極集電体10との粘着力は≧20N/mである。フィルム片20は、負極集電体10の表面に設けられたアンダーコート層201と、アンダーコート層201の表面に設けられた活物質層202とを含み、アンダーコート層201の組成は、第1のバインダーおよび第1の導電剤を含む。
【0049】
当該負極は、フィルム片に第1のバインダーおよび第1の導電剤を含むアンダーコート層を設置することによって、フィルム片と負極集電体との粘着力を向上させ、それにより、当該負極のサイクル、形状安定性も大幅に向上させる。具体的に、一方では、当該アンダーコート層の存在は負極集電体の表面欠陥を向上させることができ、活物質層と極片との間のリベット接合作用を強化し、アンダーコート層と負極集電体との間の粘着力を増加させ、それによりフィルム片全体と集電体との粘着力を向上させ、フィルム片の剥がれ落ちのリスクを低下させる。他方では、当該負極がリチウムイオン電池に応用されることを例とし、アンダーコート層の存在は良好な緩衝作用を果たすことができ、負極活物質にリチウムイオンが嵌め込まれて膨張する時、アンダーコート層は膨張した活物質が集電体の表面に直接作用力を加えることを回避する。集電体の表面に直接作用力を加えると、当該方向の集電体が固定されて変位することができないため、活物質は全体的にフィルム片の外面にしか膨張することができず、リチウムイオンを放出して収縮する時、活物質の各部分は同期して収縮する傾向があり/又は電子導電性がより高い内側はより速く収縮する可能性があり、元の集電体の表面に密着した活物質が集電体から分離しフィルム片の脱落を引き起こし、内部抵抗を上昇させ、サイクル特性が悪化する。これに基づき、本発明の実施例の極片はフィルム片と集電体との粘着力を顕著に向上させることができる。本発明のいくつかの実施例において、フィルム片と集電体との粘着力は≧20N/mに限定し、特定の粘着力を有する極片を使用することによって電気化学装置のサイクル過程中の極片安定性を確保し、極片のサイクル過程における膨張、収縮による剥がれを回避し、電気化学装置のサイクル特性を向上させる。
【0050】
いくつかの実施例において、フィルム片と集電体との粘着力は≧80N/mであり、より好ましくは、いくつかの実施例において、フィルム片と集電体との粘着力は≧100N/mであり、より好ましくは、いくつかの実施例において、フィルム片と集電体との粘着力は≧500N/mであり、例えば、フィルム片と集電体との粘着力は20N/m、60N/m、80N/m、100N/m、120N/m、130N/m、160N/m、180N/m、220N/m、300N/m、400N/m、500N/m、540N/m、600N/m、630N/m等である。
【0051】
いくつかの実施例において、アンダーコート層の厚さは100nm(ナノメートル)~2μm(マイクロメートル)であり、好ましくは、いくつかの実施例において、アンダーコート層の厚さは100nm~1000nmであり、より好ましくは、いくつかの実施例において、アンダーコート層の厚さは100nm~800nmである。アンダーコート層の厚さは大きすぎることが好ましくなく、アンダーコート層の厚さがナノスケールであることが好ましく、これは、所望のフィルム片と集電体との粘着力を得ることに役立ち、それがより優れたフィルム片抵抗およびサイクル安定性を得ることに役立つ。典型的であるが非限定的に、アンダーコート層の厚さは、例えば、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、800nm、900nm、950nm、999nm、1μm、1.5μm、2μmであり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。
【0052】
いくつかの実施例において、第1の導電剤の粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径をDとし、アンダーコート層の厚さをHとしたとき、D/Hが0.25~1.5であり、好ましくは0.5~1.25である。
【0053】
理解すべきこととして、当該第1の導電剤の形態は粒子状又はチューブ状であってもよい。第1の導電剤の形態が粒子状である場合、第1の導電剤の粒子の平均粒子径Dとアンダーコート層の厚さHとの関係は、D/Hが0.5~1.25であることを満たす。第1の導電剤の形態がチューブ状である場合、第1の導電剤のチューブの平均直径Dとアンダーコート層の厚さHとの関係は、D/Hが0.5~1.25であることを満たす。典型的であるが非限定的に、粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHは、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.25であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径とアンダーコート層の厚さとの比が上記範囲内であると、極片は、より優れたフィルム片抵抗およびサイクル安定性を有することができる。本発明のいくつかの実施例において、粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHが0.5未満である場合、アンダーコート層中に多すぎる小粒子である第1の導電剤が存在し、多すぎる小粒子である第1の導電剤の間の積層によって、多すぎる界面抵抗が存在し、さらにフィルム片抵抗を上昇させ、サイクル安定性を低下させる。粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHが1.25を超えると、アンダーコート層中の第1の導電剤の分布が不均一になりやすく、フィルム片抵抗が高くなり、サイクル特性に影響を与える。
【0054】
いくつかの実施例において、フィルム片のフィルム片抵抗は3mΩ~50mΩである。好ましくは、いくつかの実施例において、フィルム片のフィルム片抵抗は3mΩ~30mΩである。典型的であるが非限定的に、フィルム片のフィルム片抵抗は、例えば、3mΩ、5mΩ、6mΩ、9mΩ、10mΩ、15mΩ、20mΩ、22mΩ、26mΩ、30mΩ、50mΩであり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。
【0055】
いくつかの実施例において、フィルム片の圧縮密度は1.30g/cm~1.80g/cmである。典型的であるが非限定的に、フィルム片の圧縮密度は、例えば、1.30g/cm、1.40g/cm、1.50g/cm、1.55g/cm、1.60g/cm、1.70g/cm、1.75g/cm、1.80g/cmであり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。適切なフィルム片の圧縮密度範囲内で、極片の剥がれのリスクを低下させることに役立ち、活物質層と集電体との間にアンダーコート層が存在することを確保し、アンダーコート層はリベット接合および緩衝作用を果たすことができ、さらにより優れたサイクル安定性およびレート特性を得ることに役立つ。
【0056】
いくつかの実施例において、フィルム片の孔隙率は20%~50%である。好ましくは、いくつかの実施例において、フィルム片の孔隙率は25%~40%である。典型的であるが非限定的に、フィルム片の孔隙率は、例えば、20%、22%、24%、25%、26%、28%、30%、32%、35%、37%、40%、45%、50%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。適切なフィルム片の孔隙率範囲内で、極片の剥がれのリスクを低下させることに役立ち、活物質層と集電体との間にアンダーコート層が存在することを確保し、アンダーコート層はリベット接合および緩衝作用を果たすことができ、電解液と十分に接触することができ、さらにより優れたサイクル安定性およびレート特性を得ることに役立つ。
【0057】
いくつかの実施例において、アンダーコート層中の第1のバインダーの質量含有量は20%~95%である。典型的であるが非限定的に、アンダーコート層中の第1のバインダーの質量含有量は、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、72%、80%、83%、85%、90%、91%、95%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。アンダーコート層における第1のバインダーの含有量を増加させることにより、フィルム片と集電体との粘着力を向上させ、より高い粘着力の極片を得ることができる。
【0058】
いくつかの実施例において、アンダーコート層中の第1の導電剤の質量含有量は5%~80%である。典型的であるが非限定的に、アンダーコート層中の第1の導電剤の質量含有量は、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、70%、80%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。
【0059】
いくつかの実施例において、第1のバインダーは、炭素-炭素二重結合、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基およびアリール基のうちの少なくとも一種を含んでもよい。好ましくは、いくつかの実施例において、第1のバインダーは、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基のうちの少なくとも一種を含んでもよい。カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基の官能基のうちの一種又は多種を含む第1のバインダーを採用することにより、フィルム片と集電体との粘着力を顕著に向上させることができる。これは上記官能基の極性が強く、電子を豊富に含む金属集電体と強い吸引作用が存在するためであり、それによりフィルム片の形状安定性がより安定し、高膨張のシリコン系活物質に対しても、同様に優れた形状安定性を保持することができる。
【0060】
いくつかの実施例において、第1のバインダーは、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、PAA(ポリアクリル酸)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびPAM(ポリアクリルアミド)のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施例において、第1の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのうちの少なくとも一種を含むが、それらに限定されていない。
【0062】
いくつかの実施例において、活物質層の組成は、活物質および第2のバインダーを含む。
【0063】
いくつかの実施例において、活物質は、黒鉛系材料およびシリコン系材料のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0064】
いくつかの実施例において、シリコン系材料は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合物およびシリコン合金のうちの少なくとも一種を含んでもよい。好ましくは、いくつかの実施例において、シリコン系材料は、純シリコン、SiO(0<x≦2)およびシリコン炭素複合物のうちの少なくとも1つを含み、ここで、好ましくは、シリコン系材料はSiO(1<x≦2)である。負極活物質は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0065】
いくつかの実施例において、活物質層はさらに第2の導電剤を含む。当該フィルム片では、アンダーコート層に第1の導電剤が含まれ、活物質層に第2の導電剤が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施例によれば、アンダーコート層中の第1のバインダーおよび活物質層中の第2のバインダーは、同じタイプのものを用いてもよく、異なるタイプのものを用いてもよい。アンダーコート層中の第1の導電剤および活物質層中の第2の導電剤は、同じタイプのものを用いてもよく、異なるタイプのものを用いてもよい。
【0067】
活物質層中の第2のバインダーは、負極活物質粒子同士の粘着、および負極活物質とアンダーコート層との粘着を向上させることができる。本発明の実施例および負極活物質層中のバインダーの種類は特に限定されず、電解液や電極作製時に用いる溶媒に対して安定なものであればよい。例示的に、いくつかの実施例において、第2のバインダーは樹脂バインダーを含む。樹脂バインダーの実例は、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂などを含むが、これらに限定されない。水系溶媒を用いて負極活物質層スラリーを調製する場合、第2のバインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどを含むが、これらに限定されない。好ましくは、いくつかの実施例において、第2のバインダーは、PAA(ポリアクリル酸)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PAM(ポリアクリルアミド)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)およびCMC(カルボキシメチルセルロース)のうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施例において、第1のバインダーの分子量は、1,500,000未満である。第2のバインダーの分子量は、1,500,000未満である。
【0069】
いくつかの実施例において、第2の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのうちの少なくとも一種を含むが、それらに限定されていない。
【0070】
いくつかの実施例において、活物質層は、質量含有量で、80%~99%の活物質、0.8%~20%の第2のバインダーおよび0~5%の第2の導電剤を含む。典型的であるが非限定的に、当該活物質層において、活物質の質量含有量は、例えば、80%、82%、84%、85%、86%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、99%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。第2のバインダーの質量含有量は、例えば、0.8%、1%、2%、4%、5%、6%、8%、10%、12%、15%、18%、20%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。第2の導電剤の質量含有量は、例えば、0、1%、2%、3%、4%、5%であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。
【0071】
いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、負極活物質の充電可能容量は、正極活物質の放電容量より大きい。
【0072】
負極活物質を保持する負極集電体としては、公知の集電体を任意に用いることができる。負極集電体の実例は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの金属材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は銅である。
【0073】
負極集電体が金属材料である場合、負極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、金属板製の網体(Metalplate net)、パンチングメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は金属薄膜である。いくつかの実施例において、負極集電体は銅箔である。いくつかの実施例において、負極集電体は、圧延法による圧延銅箔または電解法による電解銅箔である。
【0074】
いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、1μmを超え、或いは5μmを超える。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、100μm未満、或いは50μm未満である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さが上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0075】
負極は、まず、負極集電体上に、第1のバインダーと、第1の導電剤とを含むアンダーコート層スラリーを塗布し、乾燥した後、さらにアンダーコート層に、負極活物質および第2のバインダーなどを含む活物質層スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して負極集電体に負極フィルム片を形成して、負極(負極片)を得ることにより作製することができる。
【0076】
[正極]
本発明のいくつかの実施例における正極片は、正極集電体と、前記正極集電体の一つまたは二つの表面に設けられた正極活物質層とを備える。
【0077】
ここで、正極活物質層は、正極活物質を含んでいる。正極活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の正極活物質層における各層は、同一又は異なる正極活物質を含んでもよい。電気化学装置がリチウムイオン電池である場合を例に挙げると、正極活物質は、任意のリチウムイオンなどの金属イオンを可逆的に挿入及び脱離可能な物質である。いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、正極活物質的放電容量は、負極活物質の充電可能容量よりも小さい。
【0078】
本発明のいくつかの実施例によれば、正極活物質の種類は、特に限定されず、電気化学の方式で金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出可能なものであればよい。例示的に、いくつかの実施例において、正極活物質は、リチウムと少なくとも一種の遷移金属とを含む物質である。正極活物質の実例は、リチウム遷移金属複合酸化物及びリチウム含有遷移金属りん酸化合物を含むが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施例において、リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属はV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを含む。いくつかの実施例において、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoOなどのリチウム・コバルト複合酸化物;LiNiOなどのリチウム・ニッケル複合酸化物;LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウム・マンガン複合酸化物;LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2などのリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物を含み、ここで、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主成分とする遷移金属原子の一部がNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、Wなどの他の元素で置換される。リチウム遷移金属複合酸化物の実例は、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.45Co0.10Al0.45、LiMn1.8Al0.2およびLiMn1.5Ni0.5などを含むが、これらに限定されない。リチウム遷移金属複合酸化物の組み合わせの実例は、LiCoOとLiMnとの組み合わせなどを含むが、これらに限定されなく、ここで、LiMnにおけるMnの一部が遷移金属で置換されてもよく(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33)、LiCoOにおけるCoの一部が遷移金属で置換されてもよい。
【0080】
いくつかの実施例において、リチウム含有遷移金属りん酸化合物における遷移金属は、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを含む。いくつかの実施例において、リチウム含有遷移金属りん酸化合物は、LiFePO、LiFe(PO、LiFePなどのりん酸鉄類;LiCoPOなどのりん酸コバルト類を含み、ここで、これらのリチウム含有遷移金属りん酸化合物の主成分とする遷移金属原子の一部がAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Siなどの他の元素で置換される。
【0081】
いくつかの実施例において、リチウム遷移金属酸化物Liの粉末材料が使用され、ここで、0.9<a<1.1、0.9<b<1.1であり、且つMは主にMn、CoまたはNiから選択される遷移金属であり、ここで、組成であるMは粒子径とともに変化する。
【0082】
いくつかの実施例において、リチウム遷移金属酸化物Liの粉末状の電極活物質において、M=AA’Z’M’1-Z-Z’、M’=MnNiCo1-x-y、0≦y≦1、0≦x≦1、0≦Z+Z’<0.1、Z’<0.02、Aは、元素Al、Mg、Ti、Crから選択される少なくとも1つであり、且つA’は、元素F、Cl、S、Zr、Ba、Y、Ca、B、Be、Sn、Sb、Na、Znから選択される少なくとも1つである。
【0083】
いくつかの実施例において、前記遷移金属の平均組成は、M=MnNiCo1-x-yであり、ここで、0.03<x<0.35。
【0084】
いくつかの実施例において、前記遷移金属の平均組成は、M=MnNiCo1-x-yであり、ここで、0.03<x、且つx+y<0.7。
【0085】
いくつかの実施例において、サイズと組成が相関するLiの粉末状の電極活物質において、実質的に全ての粒子の全ての部分は、層状結晶構造を有する。より大きい粒子は、組成Liを有し、ここで、M=MnNiCo1-x-y、x+y<0.35。より小さい粒子については、組成Liを有し、ここで、M=Mnx’Niy’Co1-x’-y’、より大きい粒子と比較して、少なくとも10%低いCoを有し、(1-x’-y’)<0.9×(1-x-y)、および少なくとも5%高いMnを有し、x’-x>0.05である。これにより、サイズと組成が相関する粉末を得ることができる。即ち、1つの成分が大きな粒子(例えば、≧20μmに分布が集中する)を有し、この成分は迅速にバルク拡散することができる。他方の成分は、小さい粒子(例えば、5μmの周囲に分布している)を有し、この成分は、安全性を確保することできる。したがって、高いサイクル安定性および高い安全性と、高い体積エネルギー密度および高い重量エネルギー密度とを兼ね備えた電極活物質が提供される。
【0086】
いくつかの実施例において、前記正極活物質は、大粒子と小粒子との粒度比が3より大きく、Dv90/Dv10>3によって定義される広い粒度分布を有する。ここで、Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積90%となる粒子径を表す。Dv10は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積10%となる粒子径を表す。粉末の粒径分布は、当技術分野で公知の適切な方法によって決定することができる。適切な方法は、例えば、レーザー回折による方法であるか、異なるメッシュサイズを有するふるいのセットを使用することによるふるい分けである。
【0087】
いくつかの実施例において、単一粒子は、本質的にリチウム遷移金属酸化物であり、単一粒子は、Coを有し、遷移金属における単一粒子の含有量が粒径とともに連続的に増加する。
【0088】
いくつかの実施例において、単一粒子はまた、遷移金属中にMnを含有し、且つMn含有量は、粒径とともに連続的に減少する。
【0089】
いくつかの実施例において、大粒子は、高いLi拡散係数を得ることができるLiCoO組成に近い大粒子を有し、したがって、十分なレート性能を得ることができる。大粒子は、正極の全表面積のごく一部しか占めない。このため、表面または外側部分で電解質と反応して放出される熱が制限される。その結果、大きな粒子が少なくなり、安全性が低下する。小粒子は、安全性を高めるために、より少ないCoを含有する組成を有する。より低いリチウム拡散係数は、短い固体拡散経路の長さに起因して、レート性能の有意な損失を伴わずに、小粒子において許容され得る。
【0090】
いくつかの実施例において、小粒子の好ましい組成は、より少量のCoおよびより多量のMnなどの安定化元素を含有する。より遅いLiバルク拡散は許容され得るが、表面の安定性は高い。本発明の陰極活物質粉末において、大粒子の好ましい組成は、より多量のCoおよびより少量のMnを含有するが、これは、リチウムの迅速なバルク拡散が必要とされる一方で、わずかに低い表面の安定化が許容され得るためである。
【0091】
いくつかの実施例において、組成がLiMOである単一粒子の内部において、Mの少なくとも80重量%がコバルトまたはニッケルであることが好ましい。いくつかの実施例において、粒子の内側部分は、LiCoOに近い組成を有する。外側部分はリチウムマンガンニッケルコバルト酸化物である。
【0092】
サイズと組成が相関する粉末状の電極活物質は、以下の方法で調製することができる。少なくとも1つの遷移金属含有沈殿物を、沈殿物とは異なる遷移金属組成を有するシード粒子上に堆積させ、制御された量のリチウム前駆体を添加し、かつ、少なくとも1種の熱処理を行い、ここで、得られた粒子の実質的に全ては、沈殿物に由来する層によって完全に覆われたシードに由来する内部コアを含有するものである。
【0093】
[電解液]
本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、電解質と、この電解質を溶ける溶媒とを含む。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、添加剤をさらに含む。
【0094】
いくつかの実施例において、電解液は、先行技術に既知の電解液の溶媒として用いられる任意の非水溶媒をさらに含む。
【0095】
いくつかの実施例において、非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機溶媒、硫黄含有有機溶媒、及び芳香族フッ素含有溶媒のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施例において、環状カーボネートの実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネートのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、環状カーボネートは、3~6個の炭素原子を有する。
【0097】
いくつかの実施例において、鎖状カーボネートの実例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。フッ素で置換された鎖状カーボネートの実例は、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの実例は、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。
【0099】
いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルの実例は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル及びピバリン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。いくつかの実施例において、フッ素で置換された鎖状カルボン酸エステルの実例は、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施例において、環状エーテルの実例は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン及びジメトキシプロパンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施例において、鎖状エーテルの実例は、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン及び1,2-エトキシメトキシエタンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施例において、リン含有有機溶媒の実例は、りん酸トリメチル、りん酸トリエチル、りん酸ジメチルエチル、りん酸メチルジエチル、りん酸エチレンメチル、りん酸エチレンエチル、りん酸トリフェニル、亜りん酸トリメチル、亜りん酸トリエチル、亜りん酸トリフェニル、りん酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)及びりん酸トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)などのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施例において、硫黄含有有機溶媒の実例は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル及び硫酸ジブチルのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、硫黄含有有機溶媒の水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。
【0104】
いくつかの実施例において、芳香族フッ素含有溶媒は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸n-プロピル又は酢酸エチルのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0106】
電解液に鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルを添加した後、鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルは、電極表面にパッシベーション膜を形成できることにより、電気化学装置が断続的に充電サイクルした後の容量維持率を向上させることができる。いくつかの実施例において、電解液は、1%~60%の鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、電解液は、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、またはそれらの組み合わせを含み、電解液の全重量に対するこの組み合わせの含有量は1%~60%、10%~60%、10%~50%、20%~50%である。いくつかの実施例において、電解液は、電解液の全重量に対して、1%~60%、10%~60%、20%~50%、20%~40%又は30%のプロピオン酸プロピルを含有する。
【0107】
いくつかの実施例において、電解液は添加剤を含み、添加剤の実例は、フルオロカーボネート、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネート、硫黄-酸素二重結合を含有する(S=O二重結合を含有する)化合物及び酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。好ましくは、添加剤は、S=O二重結合を含有する化合物を含む。
【0108】
いくつかの実施例において、電解液の全重量に対する添加剤の含有量は0.01%~15%、0.1%~10%又は1%~5%である。
【0109】
本発明の実施例によれば、電解液の総重量に対して、プロピオネートの含有量は、添加剤の1.5~30倍、1.5~20倍、2~20倍または5~20倍である。
【0110】
いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートの一種または多種を含む。リチウムイオン電池の充電/放電時に、フルオロカーボネートがプロピオネートと協働して負極の表面に安定な保護膜を形成しうることにより、電解液の分解反応を抑制する。
【0111】
いくつかの実施例において、フルオロカーボネートは、式C=O(OR)(OR)を備え、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はハロゲン化アルキル基から選択され、R及びRのうちの少なくとも一つは、1~6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基から選択され、且つR及びRは、任意に、それらが連結する原子とともに5~7員環を形成する。
【0112】
いくつかの実施例において、フルオロカーボネートの実例は、フルオロエチレンカーボネート、シス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トランス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、炭酸メチルトリフルオロメチル、炭酸メチルトリフルオロエチル及び炭酸エチルトリフルオロエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施例において、添加剤は、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートの一種または多種を含む。炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートの実例は、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジメチルビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-n-プロピル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート及び1,1-ジエチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートは、入手しやすく、かつ更なる優れた効果を達成できるという点から、ビニレンカーボネートを含む。
【0114】
いくつかの実施例において、添加剤は、硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の一種または多種を含む。硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の実例は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0115】
ここで、環状硫酸エステルの実例は、1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、1,3-ブチレンスルフェート、1,4-ブチレンスルフェート、1,2-ペンチレンスルフェート、1,3-ペンチレンスルフェート、1,4-ペンチレンスルフェート及び1,5-ペンチレンスルフェートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0116】
鎖状硫酸エステルの実例は、ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0117】
鎖状スルホン酸エステルの実例は、フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチルなどのフルオロスルホン酸エステル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸ブチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル及び2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0118】
環状スルホン酸エステルの実例は、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メタンジスルホン酸メチレン及びメタンジスルホン酸エチレンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0119】
鎖状亜硫酸エステルの実例は、ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイトなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0120】
環状亜硫酸エステルの実例は、1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、1,3-ブチレンスルファイト、1,4-ブチレンスルファイト、1,2-ペンチレンスルファイト、1,3-ペンチレンスルファイト、1,4-ペンチレンスルファイト及び1,5-ペンチレンスルファイトなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの実施例において、添加剤は、酸無水物の一種または多種を含む。酸無水物の実例は、環状リン酸無水物、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物及びカルボン酸スルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。環状リン酸無水物の実例は、トリメチルホスホン酸無水物、トリエチルホスホン酸無水物及びトリプロピルホスホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。カルボン酸無水物の実例は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物及びマレイン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。ジスルホン酸無水物の実例は、エタンジスルホン酸無水物及びプロパンジスルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。カルボン酸スルホン酸無水物の実例は、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物及びスルホブタン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0122】
いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートと炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートとの組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートと硫黄-酸素二重結合を含有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートと2~4個のシアノ基を有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートと環状カルボン酸エステルとの組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートと環状リン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートとカルボン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロカーボネートとスルホン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートとカルボン酸スルホン酸無水物との組み合わせである。
【0123】
本発明のいくつかの実施例によれば、電解質は、特に限定されず、電解質として公知の物質を任意に使用してもよい。リチウム二次電池の場合、通常、リチウム塩が用いられる。電解質の実例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWFなどの無機リチウム塩;LiWOFなどのタングステン酸リチウム類;HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLiなどのカルボン酸リチウム塩類;FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLiなどのスルホン酸リチウム塩類;LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)などのリチウムイミド塩類;LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSOなどのリチウムメチド塩類;リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレートなどのリチウム(マロナト)ボレート塩類;リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェートなどのリチウム(マロナト)ホスフェート塩類;及びLiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSOなどのフッ素含有有機リチウム塩類;リチウムジフルオロ(オキサラト)ボラート、リチウムビス(オキサラト)ボレートなどのリチウムオキサラトホウ酸塩類;リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェートなどのリチウム(オキサラト)ホスフェート塩類などを含むが、これらに限定されない。
【0124】
いくつかの実施例において、電解質は、LiPF、LiSbF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボラート、リチウムビス(オキサラト)ボレートまたはリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートから選択される。それらは、電気化学装置の出力特性、ハイレートでの充放電特性、高温保存特性及びサイクル特性などを改善させることに寄与する。
【0125】
電解質の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。例示的に、いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、0.3mol/L以上、0.4mol/L超、或いは0.5mol/L超である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、3mol/L未満、2.5mol/L未満、或いは2.0mol/L以下である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解質の濃度が上記した範囲内にあると、荷電粒子であるリチウムが十分となり、また、粘度を適切の範囲内にさせることができるため、良好な電気伝導率を確保しやすい。
【0126】
二種以上の電解質を併用する場合、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩を含む。いくつかの実施例において、電解質は、リチウム塩を含む。いくつかの実施例において、電解質の総重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、0.01%超或いは0.1%超である。いくつかの実施例において、電解質の総重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、20%未満或いは10%未満である。いくつかの実施例において、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0127】
いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる一種以上の物質と、それ以外の一種以上の塩とを含む。それ以外の塩として、以上に例示されたリチウム塩が挙げられ、いくつかの実施例において、LiPF、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(Cが挙げられる。いくつかの実施例において、それ以外の塩は、LiPFである。
【0128】
いくつかの実施例において、電解質の総重量に対して、それ以外の塩の含有量は、0.01%超或いは0.1%超である。いくつかの実施例において、電解質の総重量に対して、それ以外の塩の含有量は、20%未満、15%未満、或いは10%未満である。いくつかの実施例において、それ以外の塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。上記含有量のそれ以外の塩は、電解液の電気伝導率と粘度とのバランスに寄与する。
【0129】
電解液には、上記した溶媒、添加剤及び電解質塩に加えて、必要に応じて負極被膜形成剤、正極保護剤、過充電防止剤などの別の添加剤を含んでもよい。添加剤として、通常、非水電解質二次電池に使用される添加剤を用いることができ、その実例は、ビニレンカーボネート、コハク酸無水物、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、2,4-ジフルオロアニソール、プロパンスルトン、プロペンスルトンなどを含むが、これらに限定されない。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。なお、電解液におけるこれらの添加剤の含有量は、特に限定されず、この添加剤の種類によって適宜設定すればよい。いくつかの実施例において、電解質の総重量に基づく添加剤の含有量は、5%未満であり、0.01%~5%の範囲内にあり、或いは0.2%~5%の範囲内にある。
【0130】
[セパレータ]
正極と負極との間に、短絡を防止するために、通常、セパレータが設けられる。この場合、本発明の電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。
【0131】
セパレータの材料及び形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定ない。セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる樹脂、ガラス繊維、無機物などであってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、保液性が優れた多孔性シートまたは不織布状形態の物質などを含む。樹脂またはガラス繊維セパレータの材料の実例は、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルターなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、セパレータの材料はガラスフィルターである。いくつかの実施例において、ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。いくつかの実施例において、ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。上記したセパレータの材料は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0132】
セパレータは、上記した材料を積層してなる材料であってもよく、その実例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンの順で積層されてなる三層セパレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0133】
無機物の材料の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物;硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなど)を含むが、これらに限定されない。無機物の形態は、粒子状または繊維状を含むが、これらに限定されない。
【0134】
セパレータの形態は、薄膜形態であり、その実例は、不織布、織布、微多孔性フィルムなどを含むが、これらに限定されない。フィルムの形態では、セパレータの孔径が0.01μm~1μmであり、厚さが5μm~50μmである。上記した独立のフィルム状のセパレータ以外に、以下のようなセパレータを用いることもできる。即ち、樹脂類のバインダーを用いて、上記した無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/または負極の表面上に形成してなるセパレータを用いることができ、例えば、バインダーとしてフッ素樹脂を用いて、90%粒子径が1μm未満である酸化アルミニウム粒子を、正極の両面に多孔層を形成させることにより形成されたセパレータを用いることができる。
【0135】
セパレータの厚さは、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、1μm超、5μm超、或いは8μm超である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、50μm未満、40μm未満、又は30μm未満である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。セパレータの厚さが上記した範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ電気化学装置のレート特性及びエネルギー密度を確保することができる。
【0136】
セパレータとして多孔性シートまたは不織布などの多孔質材料を用いる場合、セパレータの孔隙率は、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、20%超、35%超、或いは45%超である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、90%未満、85%未満、或いは75%未満である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。セパレータの孔隙率が上記範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有するものとすることができる。
【0137】
セパレータの平均孔径も、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、0.5μm未満、又は0.2μm未満である。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、0.05μmを超える。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。セパレータの平均孔径が上記した範囲外にあると、短絡が発生しやすい。セパレータの平均孔径が上記範囲内にあると、短絡を防止しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有するものとすることができる。
【0138】
[電気化学装置組立体]
電気化学装置組立体は、電極群、集電構造、外装ケース、及び保護素子を含む。
【0139】
電極群
電極群は、上記正極と負極とを上記セパレータを介して積層してなる積層構造、及び、上記正極と負極とを上記セパレータを介して渦巻き状で巻回してなる構造のうちの何れか一種を備えても良い。いくつかの実施例において、電極群の質量が電池内容積に占める割合(電極群占有率)は、40%を超え、或いは50%を超える。いくつかの実施例において、電極群占有率は、90%未満、或いは80%未満である。いくつかの実施例において、電極群占有率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電極群占有率が上記範囲内にあると、電気化学装置の容量を確保しつつ内部圧力の上昇に伴う繰り返し充放電特性及び高温保存性などの特性の低下を抑制することができ、さらにガス放出弁の作動を防止することができる。
【0140】
集電構造
集電構造は、特に限定されない。いくつかの実施例において、集電構造は、配線部分及び接合部分の抵抗を低減する構造である。電極群が上記した積層構造である場合、各電極層の金属コア部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極面積が大きくなると、内部抵抗が大きくなるので、電極内に2つ以上の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記した巻回構造である場合、正極及び負極にそれぞれ2つ以上のリード線構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0141】
外装ケース
外装ケースの材質は、用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に限定されない。外装ケースは、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属類、或いは樹脂とアルミ箔との積層フィルムを用いるが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、外装ケースは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属、或いは積層フィルムである。
【0142】
金属類の外装ケースは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着してなる封止密閉構造、或いは樹脂製ガスケットを介して上記した金属類を用いてなるリベット構造を含むが、これらに限定されない。上記した積層フィルムを用いた外装ケースは、樹脂層同士を熱融着してなる封止密閉構造などを含むが、これらに限定されない。シール性を上げるために、上記した樹脂層の間に積層フィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属は樹脂と接合するので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂または極性基を導入した変性樹脂が用いられる。また、外装ケースの形状も、任意であり、例えば、円筒形、角形、ラミネート型、ボタン型、大型などのうちの何れか一種であってもよい。
【0143】
保護素子
保護素子として、異常発熱または過大電流が流れた時に抵抗が増大する正温度係数(PTC)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力または内部温度を急激に上昇させることにより電気回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)などが用いられる。上記した保護素子は、高電流の通常の使用に作動しない素子を選択してもよく、保護素子がなくても異常発熱または熱暴走を発生することがないように設計してもよい。
【0144】
[応用]
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が生じる任意の装置を含み、その具体的な実例は、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタを含む。特に、その電気化学装置が、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0145】
本発明のいくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池を例として挙げ、正極片、セパレータ、負極片を順に巻回或いは積層して電極群となり、その後に例えばアルミニウムラミネート中に入れて封止し、電解液を注入し、フォーメーションし、封止して、リチウムイオン二次電池を製造する。次に、調製したリチウムイオン二次電池について、性能測定およびサイクル測定を行う。当業者は、以上に説明された電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の調製方法が実施例だけであることを理解するであろう。本発明に開示された内容から逸脱することなく、当技術分野で一般に使用される他の方法を使用することができる。
【0146】
本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0147】
本発明の電気化学装置の用途は、特に限定されず、既存技術で既知の任意の電子装置に用いることが可能である。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタなどに利用されるが、これらに限定されない。
【0148】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、具体的な実施例を参照しながらリチウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本発明に記載された調製方法は例示であるに過ぎず、他の任意の適切な調製方法はいずれも本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0149】
以下では、本発明によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例を説明して性能評価を行う。
【0150】
実施例1
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
第1の導電剤、第1のバインダーを質量比で脱イオン水と混合し、均一に撹拌し、アンダーコートスラリーを得た。当該アンダーコートスラリーを12μmの銅箔上に塗布し、50℃で5分間乾燥した。活物質、第2のバインダーおよび第2の導電剤を質量比で脱イオン水と混合し、均一に撹拌し、負極活物質スラリーを得た。当該負極活物質スラリーをアンダーコート層上に塗布した。乾燥し、コールドプレスして、打ち抜き、タブを溶接して、負極を得た。負極は、以下の実施例および比較例の条件に従って、対応する組成およびパラメータを有するように設定された。
【0151】
2、正極の調製
正極材料であるコバルト酸リチウム、導電材(Super-P)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比95%:2%:3%でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、均一に撹拌して、正極スラリーを得た。この正極スラリーを12μmのアルミ箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、打ち抜き、タブを溶接して、正極を得た。
【0152】
3、電解液の調製
乾燥アルゴンガス雰囲気で、EC、PC、PP及びDEC(重量比1:1:1:1)を混合し、LiPFを入れ、均一に混合して、基本電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が1.15mol/Lである。
基本電解液に質量分率で上記式1で示される化合物を添加し、その含有量関係がリチウムイオン電池の性能に与える影響を研究した。
【0153】
4、セパレータの調製
ポリエチレン(PE)多孔質重合体フィルムをセパレータとした。
【0154】
5、リチウムイオン電池の調製
得られた正極、セパレータ及び負極を順番に巻いて外装箔に入れ、注液口を残した。注液口から電解液を注入し、封止して、フォーメーション、容量測定などのプロセスを経て、リチウムイオン電池を得た。
【0155】
実施例2~6において、正極の調製、電解液の調製、セパレータの調製、およびリチウムイオン電池の調製方法は、いずれも実施例1と同じであり、実施例2~6と実施例1との違いは、負極片におけるアンダーコート層の組成が異なることだけであった。
【0156】
比較例1において、正極の調製、電解液の調製、セパレータの調製、およびリチウムイオン電池の調製方法は、いずれも実施例1~6と同じであり、比較例1と実施例1~6との違いは、比較例1の負極はアンダーコート層を含まないことだけであった。
【0157】
実施例7~9において、正極の調製、電解液の調製、セパレータの調製、およびリチウムイオン電池の調製方法はいずれも実施例1と同じであり、実施例2~6と実施例1との違いは、負極片におけるアンダーコート層の組成、および負極活物質層の組成が異なることだけであった。
【0158】
比較例2において、正極の調製、電解液の調製、セパレータの調製、およびリチウムイオン電池の調製方法はいずれも実施例7~9と同じであり、比較例2と実施例7~9との違いは、比較例2の負極はアンダーコート層を含まないことだけであった。
【0159】
実施例1~9、および比較例1~2の具体的な負極組成を下記表1に示した。
【0160】
実施例および比較例の各性能パラメータの測定方法は以下のとおりであった。
【0161】
二、測定方法
1、粘着力の測定方法
(1)乾燥後の極片を取り、ブレードで幅30mm×長さ100~160mmのサンプルを切り取った。
(2)専用両面テープを鋼板に貼り付け、テープは、幅20mm×長さ90~150mmであった。
(3)ステップ(1)で切り取られた極片サンプルを両面テープに貼り付け、測定面を下向きにした。
(4)幅が極片サンプルの幅と等しく、長さがサンプルの長さより80~200mm長い紙テープを極片の下に挿入し、且つマスキングテープで固定した。
(5)三思引張機の電源をオンにし、表示ランプを点灯させ、リミットブロックを適切な位置に調整して、測定した。
【0162】
2、フィルム片抵抗の測定方法
(1)フィルム片抵抗の測定は、INITIAL ENERGY SCIENCE&TECHNOLOGY (XIAMEN)Co.,Ltdの装置、フィルム片抵抗測定器を用いて測定した。
(2)装置の電源を220Vに維持し、気圧が0.7MPaより大きいであった。
(3)裁断された極片(60×80mm)を試料台に平らに置いた。
(4)次に、試料台を装置の測定チャンバ内に配置し、測定を開始した。
(5)全試験プロセス中、測定気圧を「0」に設定した。
【0163】
3、サイクル安定性の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を、1Cにて4.45Vまで定電流充電して、そして、4.45Vにて電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、次に1Cにて3.0Vまで定電流放電して、上記操作を初回サイクルとした。上記条件で、サイクル後の容量維持率が80%となるまでリチウムイオン電池をサイクルさせ、サイクル数を記録した。「1C」とは、リチウムイオン電池容量を1時間内で完全放電させる電流の値であった。
リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率は、下記式により算出した。
サイクル後の容量維持率=(サイクル数に対応する放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%
【0164】
4、変形の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を、1Cにて4.45Vまで定電流充電して、そして、4.45Vにて電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、次に1Cにて3.0Vまで定電流放電して、上記操作を初回サイクルとした。上記した条件でリチウムイオン電池に対して500サイクルを行った。「1C」とは、リチウムイオン電池容量を1時間内で完全放電させる電流の値である。
サイクル後に電池を分解し、負極片を取り出し、フィルム片の脱炭の有無を観察した。脱炭していれば変形し、脱炭していなければ変形していない。
【0165】
5、孔隙率の測定方法
極片の孔隙率の測定方法は全て水銀ポロシメーターを採用し、具体的な操作は以下のとおりであった。
片側の表面がフィルム片を完全に被覆する極片を取ってサンプルとした。
サンプルの密度および孔隙率を推定し、適切な膨張計を選択した。
サンプルをまずオーブンに入れて2時間乾燥し、水分を除去した。分析前にサンプルの重量を測定した。
サンプルを膨張計にロードし、密封した後に重量を秤量し、これは、サンプル+膨張計の重量であった。
膨張計を低圧ステーションにロードし、低圧ファイルを編集して低圧分析を開始した。
低圧分析が終了した後、膨張計を取り出して重量を秤量し、これはサンプル+膨張計+水銀の重量であった。
膨張計を高圧ステーションに取り付け、膨張計を固定した後に高圧ビンのヘッドをねじ込み、底部までねじ込んで気泡を除去した。
高圧分析を開始し、指示に従ってベントバルブを緩めるか締めた。
高圧分析を終了した後、膨張計を取り出して洗浄し、測定を終了した。
この時に測定されたのは、極片の孔隙率Xであった。
極片の孔隙率Xをフィルム片の孔隙率Vに変換する方法は以下の通りであった。
極片の表面からランダムに10箇所を選択し、極片の平均厚さHを測定した。
有機溶剤を利用して極片の表面のフィルム片を洗い流し、集電体の表面からランダムに10箇所を選択し、集電体の平均厚さhを測定した。
フィルム片の孔隙率V=極片の孔隙率X×H/(H-h)
【0166】
6、レート特性の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を1Cの定電流で4.45Vまで充電し、次に4.45Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置した後、0.2Cの定電流でカットオフ電圧3Vまで放電し、この時に実際の放電容量をD0として記録した。次に1Cの定電流で4.45Vまで充電し、さらに定電圧4.45Vで電流が0.05Cになるまで充電し、最後に2Cでカットオフ電圧3Vまで放電し、この時の実際の放電容量をD1として記録した。
リチウムイオン電池のレート特性=[(D1-D0)/D0]×100%
【0167】
7、粒子状導電剤の平均粒子径の測定方法
サンプルを試料台に広げ、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)によりサンプルの写真を撮影した後、画像解析ソフトを用いてSEMまたはTEM写真から無作為に10個の粒子状導電剤を選択し、これらの粒子状導電剤のそれぞれの面積を求め、次に、粒子状導電剤が球形であると仮定して、それぞれの粒子径R(直径)を以下の式により求めた。
R=2×(S/π)1/2
(ここで、Sは粒子状導電剤の面積である。)
【0168】
3枚のSEM又はTEM画像に対して上記粒子状導電剤の粒子径Rを求める処理を行い、得られた30(10×3)個の粒子状導電剤の粒子径を算術平均して、前記粒子状導電剤の平均粒子径Dを求めた。
【0169】
8、チューブ状導電剤の平均直径の測定方法
サンプルを試料台に広げ、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)によりサンプルの写真を撮影した後、画像解析ソフトを用いてSEMまたはTEM写真から無作為に10個のチューブ状導電剤を選択し、各チューブ状導電剤の写真の両側のチューブ壁から5つの点を任意に選択し、チューブ壁に垂直な延伸方向に沿って各点に垂直線を引き、他側のチューブ壁との交点までの平均距離は、当該チューブ状導電剤のチューブ径Rであった。
3枚のSEM又はTEM画像に対して上記チューブ状導電剤のチューブ径Rを求める処理を行い、得られた30(10×3)個のチューブ状導電剤のチューブ径を算術平均して、前記チューブ状導電剤の平均チューブ径Dを求めた。
【0170】
三、測定結果
表1は、実施例1~9、および比較例1~2における負極片の組成、粘着力、フィルム片抵抗、および対応するリチウムイオン電池の性能を示す。圧縮密度PDはいずれも1.30g/cmとした。
【0171】
【表1】
【0172】
表1のデータから分かるように、アンダーコート層を有する実施例1-9は、アンダーコート層を含まない比較例1-2に比べて、粘着力が大幅に向上し、それに応じて、そのサイクル、形状安定性も大幅に向上する。その理由は、一方、アンダーコート層の存在は、銅箔の表面欠陥を向上させ、活物質層と極片との間のリベット接合作用を向上させ、アンダーコート層と銅箔との間の粘着力を増加させ、これにより、フィルム片全体と集電体との粘着力を向上させ、フィルム片の脱落リスクを低減させるためである。他方では、アンダーコート層の存在は良好な緩衝作用を果たすことができ、負極活物質がリチウムイオンに嵌め込まれて膨張する時、アンダーコート層は膨張した活物質が集電体の表面に直接作用力を加えることを回避する。集電体の表面に直接作用力を加えると、当該方向の集電体が固定されて変位することができないため、活物質は全体的にフィルム片の外面にしか膨張することができず、リチウムイオンを放出して収縮する時、活物質の各部分は同期して収縮する傾向があり、又は電子導電性がより高い内側はより速く収縮する可能性があり、元の集電体の表面に密着した活物質が集電体から分離しフィルム片の脱落を引き起こし、内部抵抗を上昇させ、サイクル特性が悪化する。さらに、極性官能基(カルボキシル基)を有するアンダーコート層バインダーを用いた実施例2、6~9は、フィルム片と集電体との粘着力を著しく改善することができ、極片の形状安定性がより安定する。特に、カルボキシル基を有するアンダーコート層バインダーを用いた実施例7~9は、500N/m以上の粘着力を確保することができ、高膨張のSi系活物質に対しても優れた形状安定性を維持することができる。
【0173】
なお、図3図4との比較から分かるように、本発明の実施例1で提供される負極片の形状安定性は、比較例1~2の負極片の形状安定性と比較して大幅に改善されている。
【0174】
実施例10~14と実施例2との違いは、負極のフィルム片の圧縮密度(圧密で表される)およびフィルム片の孔隙率が異なることだけである。
【0175】
表2は実施例2、10~14において、同じ負極フィルム片の組成、異なる圧密で、フィルム片に対応する孔隙率、および対応するリチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性を示す。
【0176】
【表2】
【0177】
表2のデータから分かるように、フィルム片の圧縮密度が1.30~1.80g/cmである実施例2、10~13は、圧密が1.83g/cmである実施例14と比較して、より優れたサイクル安定性およびレート特性を有する。一方では、圧密が1.30~1.80g/cmである実施例は、適切な孔隙率を提供し、サイクル時にリチウムイオンの挿入及び脱離による体積膨張および収縮を緩衝することができ、極片の剥がれのリスクを低減することができる。他方では、適切な圧密もアンダーコート層に対する圧力を低下させ、活物質層と集電体との間にアンダーコート層が存在することを確保し、高すぎる圧力によってアンダーコート層が活物質層の隙間に押し込まれることを回避し、それにより、アンダーコート層のリベット接合及び緩衝作用を果たさないことを回避する。また、優れた孔隙率により、電解液と十分に接触することができ、電池がより優れたレート特性を有することを確保する。
【0178】
実施例15~23と実施例4との違いは、負極片のアンダーコート層における第1の導電剤(SP)の粒子度とアンダーコート層の厚さとの比が異なることだけである。実施例24~32と実施例2との違いは、負極のアンダーコート層における第1の導電剤(CNT)のチューブ直径とアンダーコート層の厚さとの比が異なることだけである。
【0179】
表3は実施例15~30において、組成がそれぞれ実施例4(SP)、実施例2(CNT)と同じであり、アンダーコート層における第1の導電剤粒子の平均粒子径/チューブの平均直径とアンダーコート層の厚さとの関係が、対応する極片の接着力、フィルム片抵抗、および対応するリチウムイオン電池のサイクル安定性に与える影響を示す。
【0180】
【表3】
【0181】
表3のデータから分かるように、D/Hが0.5~1.25の範囲内である実施例16~19、21~23、25~31は、D/Hが上記範囲外である実施例15、20、24、32と比較して、より優れたフィルム片抵抗およびサイクル安定性を有する。一方では、適切な粒度(チューブ直径)/アンダーコート層の厚さは、アンダーコート層における多すぎる小粒子導電剤の間の積層を回避することができ、多すぎる界面抵抗の存在を回避し、さらにフィルム片抵抗を低下させ、サイクル安定性を向上させる。他方では、大きすぎる粒度(チューブ直径)/アンダーコート層の厚さは、導電剤のアンダーコート層における分布の不均一をもたらし、さらにフィルム片抵抗の上昇をもたらす。
【0182】
実施例33~37と実施例2との違いは、電解液が式1で表されるS=O二重結合を含有する化合物を含み、且つ式1で表されるS=O二重結合を含有する化合物の電解液における質量分率yとフィルム片の孔隙率Vとは一定の関係を満たすことである。
【0183】
表4は実施例2、33~37において、式1で表されるS=O二重結合を含有する化合物の電解液における質量分率yとフィルム片の孔隙率Vとの関係がリチウムイオン電池の電気化学的性能に与える影響を示す。
【0184】
【表4】
【0185】
表4のデータから分かるように、S=O二重結合を含有する化合物の含有量とフィルム片の孔隙率とを、関係式0.01≦y/V≦0.07を満たすことにより、サイクル安定性およびレート特性が大幅に向上している。これは、適切な量の式1で表されるS=O二重結合を含有する化合物は、極片の表面上に完全かつ安定な高イオン伝導性固体電解質膜をさらに形成するためであり、それによって、イオン伝導率をさらに改善し、レート特性を改善することができる。式1で表されるS=O二重結合を含有する化合物の量が多すぎると、即ちy/V>0.07であると、形成される固体電解質膜が厚すぎて、リチウムイオンの輸送に不利となる。
【0186】
明細書全体では、「実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」または「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例または例は、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各場所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「他の例において」、「1つの例において」、「特定の例において」又は「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例又は例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0187】
例示的な実施例が開示及び説明されたが、当業者は、上記した実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例への改変、置換及び変更が可能であること、を理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体およびフィルム片を含む極片であって、
前記フィルム片は、前記集電体の表面に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の表面に設けられた活物質層とを含み、
前記アンダーコート層は、第1のバインダーおよび第1の導電剤を含み、
前記フィルム片と前記集電体との粘着力は、≧20N/mであることを特徴とする、極片。
【請求項2】
前記アンダーコート層の厚さは100nm~2μmであり、好ましくは100nm~1000nmであることを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項3】
a.前記フィルム片と前記集電体との粘着力は≧80N/mであることと、
b.前記フィルム片の圧縮密度は1.30g/cm~1.80g/cmであることと、
c.前記フィルム片の孔隙率は20%~50%であることと、
d.前記極片の抵抗は3mΩ~50mΩであることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項4】
e.前記アンダーコート層中の第1のバインダーの質量含有量は20%~95%であり、前記アンダーコート層中の第1の導電剤の質量含有量は5%~80%であることと、
f.前記第1のバインダーは、炭素-炭素二重結合、カルボキシル基、カルボニル基、炭素-窒素単結合、ヒドロキシル基、エステル基、アシル基およびアリール基のうちの少なくとも1つを含むことと、
g.前記第1のバインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを含むことと、
h.前記第1の導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項5】
前記第1の導電剤の粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径をDとし、前記アンダーコート層の厚さをHとしたとき、
DとHとの比D/Hは、0.25~1.5であり、好ましくは0.5~1.25であることを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項6】
前記活物質層は活物質および第2のバインダーを含み、前記活物質層は、
i.前記活物質は黒鉛系材料およびシリコン系材料のうちの少なくとも1つを含み、前記シリコン系材料は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合物およびシリコン合金のうちの少なくとも1つを含むことと、
j.前記活物質層は、質量含有量で、80%~99%の活物質、0.8%~20%の第2のバインダー、および0~5%の第2の導電剤を含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の極片。
【請求項7】
正極片と、負極片と、前記正極片と前記負極片との間に設けられたセパレータとを含む電気化学装置であって、
前記負極片は、請求項1~6のいずれか一項に記載の極片であることを特徴とする、電気化学装置。
【請求項8】
前記電気化学装置は、電解液を含み、
前記電解液は、S=O二重結合を含有する化合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電気化学装置は、
k.前記S=O二重結合を含有する化合物は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステルおよび環状亜硫酸エステルのうちの少なくとも1つを含むことと、
l.前記S=O二重結合を含有する化合物は、式1で示される化合物のうちの少なくとも1つを含むことと、
のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
【化1】
Wは
【化2】
から選択され、
Lは、単結合またはメチレン基から選択され、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~2の整数であり、且つ
pは、0~6の整数であることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記電解液における前記S=O二重結合を含有する化合物の質量分率をyとし、フィルム片の孔隙率をVとしたとき、
yとVは、関係式0.01≦y/V≦0.07を満たす、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の電気化学装置を含むことを特徴とする、電子装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記極片抵抗は3mΩ~50mΩである。好ましくは、本発明のいくつかの実施例によれば、前記極片抵抗は3mΩ~30mΩである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
理解すべきこととして、当該第1の導電剤の形態は粒子状又はチューブ状であってもよい。第1の導電剤の形態が粒子状である場合、第1の導電剤の粒子の平均粒子径Dとアンダーコート層の厚さHとの関係は、D/Hが0.5~1.25であることを満たす。第1の導電剤の形態がチューブ状である場合、第1の導電剤のチューブの平均直径Dとアンダーコート層の厚さHとの関係は、D/Hが0.5~1.25であることを満たす。典型的であるが非限定的に、粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHは、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.25であり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径とアンダーコート層の厚さとの比が上記範囲内であると、極片は、より優れた極片抵抗およびサイクル安定性を有することができる。本発明のいくつかの実施例において、粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHが0.5未満である場合、アンダーコート層中に多すぎる小粒子である第1の導電剤が存在し、多すぎる小粒子である第1の導電剤の間の積層によって、多すぎる界面抵抗が存在し、さらに極片抵抗を上昇させ、サイクル安定性を低下させる。粒子の平均粒子径またはチューブの平均直径D/アンダーコート層の厚さHが1.25を超えると、アンダーコート層中の第1の導電剤の分布が不均一になりやすく、極片抵抗が高くなり、サイクル特性に影響を与える。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
いくつかの実施例において、極片抵抗は3mΩ~50mΩである。好ましくは、いくつかの実施例において、極片抵抗は3mΩ~30mΩである。典型的であるが非限定的に、極片抵抗は、例えば、3mΩ、5mΩ、6mΩ、9mΩ、10mΩ、15mΩ、20mΩ、22mΩ、26mΩ、30mΩ、50mΩであり、ならびにこれらの値のうちの任意の2つによって形成される範囲および範囲内の任意の値である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0162
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0162】
2、極片抵抗の測定方法
(1)極片抵抗の測定は、INITIAL ENERGY SCIENCE&TECHNOLOGY (XIAMEN)Co.,Ltdの装置、極片抵抗測定器を用いて測定した。
(2)装置の電源を220Vに維持し、気圧が0.7MPaより大きいであった。
(3)裁断された極片(60×80mm)を試料台に平らに置いた。
(4)次に、試料台を装置の測定チャンバ内に配置し、測定を開始した。
(5)全試験プロセス中、測定気圧を「0」に設定した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0170
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0170】
三、測定結果
表1は、実施例1~9、および比較例1~2における負極片の組成、粘着力、極片抵抗、および対応するリチウムイオン電池の性能を示す。圧縮密度PDはいずれも1.30g/cmとした。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0171
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0171】
【表1】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0179
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0179】
表3は実施例15~30において、組成がそれぞれ実施例4(SP)、実施例2(CNT)と同じであり、アンダーコート層における第1の導電剤粒子の平均粒子径/チューブの平均直径とアンダーコート層の厚さとの関係が、対応する極片の接着力、極片抵抗、および対応するリチウムイオン電池のサイクル安定性に与える影響を示す。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0180
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0180】
【表3】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
表3のデータから分かるように、D/Hが0.5~1.25の範囲内である実施例16~19、21~23、25~31は、D/Hが上記範囲外である実施例15、20、24、32と比較して、より優れた極片抵抗およびサイクル安定性を有する。一方では、適切な粒度(チューブ直径)/アンダーコート層の厚さは、アンダーコート層における多すぎる小粒子導電剤の間の積層を回避することができ、多すぎる界面抵抗の存在を回避し、さらに極片抵抗を低下させ、サイクル安定性を向上させる。他方では、大きすぎる粒度(チューブ直径)/アンダーコート層の厚さは、導電剤のアンダーコート層における分布の不均一をもたらし、さらに極片抵抗の上昇をもたらす。
【国際調査報告】