(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】石油炭化水素材料の軟化点の制御プロセス
(51)【国際特許分類】
C10C 3/04 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C10C3/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522801
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 CA2021000092
(87)【国際公開番号】W WO2022077090
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152094
【氏名又は名称】トンゴールド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ウェイシン
【テーマコード(参考)】
4H058
【Fターム(参考)】
4H058DA07
4H058DA38
4H058DA48
4H058EA05
4H058GA13
4H058GA25
4H058GA27
4H058HA02
4H058HA06
(57)【要約】
本開示は、室温で液体であるか、または加熱すると液体になる熱可塑性の性質を有する炭化水素材料を処理して、その軟化点温度を最大400℃に増加させる方法に関する。この方法は、環境制御反応器内で硫黄含有ガス状触媒を炭化水素材料と混合するステップと、混合物を流動ガス環境で280℃~480℃の温度に加熱し、混合物をこの温度で2時間~5時間保持するステップと、混合物を撹拌し、炭化水素材料が固体になるまで撹拌を維持するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で液体であるか、または加熱すると液体になる熱可塑性の性質を有する炭化水素材料を処理して、その軟化点温度を最大400℃に増加させる方法であって、前記方法は、
a.環境制御反応器内で硫黄含有ガス状触媒を前記炭化水素材料と混合するステップと、
b.前記混合物を流動ガス環境で280℃~480℃の温度に加熱し、前記混合物をこの温度で2時間~5時間の期間保持するステップと、
c.前記混合物を撹拌し、前記炭化水素材料が固体になるまで撹拌を維持するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ガス環境が、窒素、蒸気、酸素含有ガスおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状触媒が、硫黄-および酸素-含有ガス状触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒を混合するステップが、
a.固体の粉末状のアンモニウム-、硫黄-および酸素-含有化学添加剤を混合するステップと、
b.前記固体粉末状化学添加剤を分解させてガス状触媒を得るステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アンモニウム-、硫黄-および酸素-含有化学添加剤が、(NH
4)
2S
2O
8(過硫酸アンモニウム)、(NH
4)
2S
2O
7(ピロ硫酸アンモニウム)、(NH
4)
2SO
4(硫酸アンモニウム)、(NH
4)
2S
2O
3(チオ硫酸アンモニウム)、(NH
4)
2SO
3(亜硫酸アンモニウム)、NH
4HSO
3(亜硫酸水素アンモニウム)、(NH
4)
2S(硫化アンモニウム)からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記硫黄含有触媒が、HSO
4
-含有化合物、HSO
3
-含有化合物、S
2O
7
2-含有化合物、S
2O
8
2-含有化合物、S
2O
3
2-含有化合物、SO
3
2-含有化合物、SO
2、Sおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンモニウム-、硫黄-および酸素-含有化学添加剤が、HSO
4
-含有化合物、HSO
3
-含有化合物、S
2O
7
2-含有化合物、S
2O
8
2-含有化合物、S
2O
3
2-含有化合物、SO
3
2-含有化合物、SO
2、Sおよびそれらの組み合わせに分解する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
流動ガス環境で前記混合物を加熱し、一定期間保持するステップが、2つ以上の個別のサブステップを含み、前記加熱温度、ガス環境および期間が、各個別のサブステップごとに異なる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記2つ以上の個別のサブステップが、前記混合物を第1の温度で第1の期間にわたって第1のガス環境に保持し、次いで前記混合物を第2の温度で第2の期間にわたって第2のガス環境に保持し、次いで前記混合物を第3の温度で第3の期間にわたって第3のガス環境に保持する3つの個別のサブステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の温度、前記第2の温度または前記第3の温度のいずれか1つ以上が、前記化学添加剤の分解温度、炭化水素材料の架橋が起こる温度、または前記流動ガスと前記炭化水素材料との間の反応が起こる温度のいずれか1つ以上と一致する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理された混合物を最終温度に冷却することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記最終温度が、室温、および室温と前記第3の温度との間の中間温度から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理された炭化水素材料が、100℃~350℃の軟化点温度の増加を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
軟化点が増加した前記処理された炭化水素材料が、炭素繊維または活性炭を製造するための原料として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
軟化点が増加した前記処理された炭化水素材料が、その化学組成の変化なしに室温で半固体材料または固体材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記半固体材料または固体材料が、粉末およびペレットを含む固体物理的形態にさらに加工可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ペレットが、様々な形状およびサイズへの押出または鋳造に適した温度に再加熱可能である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
元の炭化水素材料の化学組成を変えることなく石油炭化水素材料の軟化点を増加させるための熱および化学プロセスが開発されている。
【背景技術】
【0002】
石油および石油由来生成物は、異なる分子量の炭化水素ポリマー材料の複雑な混合物である。
【0003】
熱可塑性ポリマーのカテゴリーに属する石油生成物は、それらの分子量ならびにポリマー内の分子内力および分子間力に関連する軟化点および融点を有する。100モル/gの範囲の分子量を有する熱可塑性ポリマーの融点は-50℃より十分低く、それらが常に室温で液体であることを意味するが、400モル/gより大きい分子量を有するものは、より高い軟化点、典型的には50℃より高い軟化点を有する。
【0004】
非常に低温では、熱可塑性ポリマーは非常に脆い。温度が上昇すると、通常、それらの剛性が突然低下する。これが起こる温度点は、ガラス点Tgと呼ばれる。可塑性ポリマーのTgと溶融温度(Tm)との間は、ポリマーが軟化し、繊維などのフィラメントに引き込まれ得る軟化点と呼ばれるゴム流体状態である。次いで、これらの繊維を処理して炭素繊維を作製することができる。
【0005】
かかる石油材料が炭素繊維を製造するための前駆体として使用される場合、それらの軟化点は、繊維への引き込みまたは紡糸に十分な強度を可能にするために230℃~280℃の範囲であることが好ましい。軟化点がこの温度未満である場合、石油生成物は柔らかすぎて液化しやすく、操作できない。この範囲の軟化点を有する石油製品、一般に石油ピッチは、最初に溶融紡糸されて未加工繊維を製造する。次いで、未加工繊維は、繊維が溶融または融合しない点まで分子を架橋するために、酸素含有ガス中、通常約200~400℃で数時間行われるプロセスで安定化または酸化される。これに続いて、酸素のない環境で、はるかに高い温度、典型的には約1000~2000℃で行われる炭化が行われる。
【0006】
石油生成物が230℃未満のより低い軟化点を有する場合、かかる材料は、それらが酸化/安定化温度に加熱されたときに未加工繊維の融合という望ましくない結果をもたらす。したがって、石油および石油生成物の軟化点を増加させることが望ましい。
【0007】
230℃未満の軟化点を有する石油製品の使用はまた、例えば石油ピッチのようなより高い軟化点を有する石油製品からの炭素繊維収率と比較して、揮発性になり得る低分子量を有する大部分の成分が存在するため、実質的に低い炭素繊維収率、50%をはるかに下回る炭素繊維収率をもたらし得る。より高い軟化点はまた、より短い安定化時間(例えば、Fullerら、米国特許出願公開第3,959,448号明細書)を必要とし得る。
【0008】
一方、高い軟化点を有する石油ピッチ系炭素繊維前駆体は、より高い溶融紡糸温度を必要とすることも知られている。高い紡糸温度で製造された得られる炭素繊維は、通常、低温(米国特許第5213677号明細書,1993,Spinning pitch for carbon fibers and process for its production)でより低い圧縮強度を示す。したがって、軟化点温度の操作および制御は、炭素繊維生成にとって非常に重要である。
【0009】
原油またはビチューメンがそれらの固体形態で移送されることが好ましい状況が存在する。一例は、アルバータ州のオイルサンドから生成されたものなどの重質原油またはビチューメンであり得る。重質ビチューメンを固体に変換することにより、石炭のように出荷することができる。この用途のためには、これらの重質炭化水素材料の軟化点を約100℃に増加させることが必要とされる。
【0010】
石油材料の軟化点は、一般に、熱凝縮(>350℃)中に石油材料から軽質留分を除去することによって増加させられる。温度が増加させられると、脱水素、架橋、縮合などが起こり、H2、H2O、H2Sおよび低分子量成分が放出される。同時に、残りの材料は、より低いH/C比およびより高い軟化点を有するより高い分子量を有することになる。
【0011】
従来技術は、等方性ピッチの軟化点を増加させるために開発されたいくつかの方法を開示している(Carbon Fibers,Technology&Engineering,3rd Edition,J-B Donnet,R.C.Bansal,1998,page 45)。これらには、減圧熱凝縮、薄膜式蒸発法、酸素含有ガスブロー酸化、硫化、付加法およびPVC法が含まれる。従来技術はまた、以下に要約されるように、炭素繊維を製造するための前駆体としてそれらを使用する目的で、メゾ相ピッチの軟化点および粘度を増加または減少させるための多くの方法を開示する。
・熱改質:これらの方法は、メゾ相の形成を妨げる軽質分子画分を除去することを目的としている。
・溶媒改質:溶媒を使用して、最低分子量材料が溶液中に残り、一方で、高分子量材料が沈殿し、炭素繊維溶融紡糸のために抽出される。
・水素化:メゾ相ピッチが、部分的に水素化された縮合環芳香族炭化水素に変わり、その結果、より高い分子量、より低い溶融温度およびより低い粘度を有するピッチが形成され得る。
・触媒改質:ルイス酸(例えば、AlCl3、HF/BF3)を添加して、メゾ相の軟化点および粘度を増加させることができる触媒重合を達成する
【0012】
炭素繊維の広範な使用を妨げる主な障壁の1つは、繊維を生成する元になる供給原料の調製コストである。ほとんどのプロセスは、一般に、数時間にわたる高温での従来のピッチ材料の加熱(例えば、Lewisら、米国特許第3,967,729号明細書、Singer、米国特許第4,005,183号明細書、およびSchulz、米国特許第4,014,725号明細書)、または反応から添加剤および固体を除去するための後処理濾過を必要とする。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、室温で液体であるか、または加熱すると液体になる熱可塑性の性質を有する炭化水素材料を処理して、その軟化点温度を最大400℃に増加させる方法に関する。本方法は、
a.環境制御反応器内で硫黄含有ガス状触媒を炭化水素材料と混合するステップと、
b.この混合物を流動ガス環境で280℃~480℃の温度に加熱し、この混合物をこの温度で2時間~5時間の期間保持するステップと、
c.この混合物を撹拌し、炭化水素材料が固体になるまで撹拌を維持するステップと
を含む。
【0014】
炭化水素材料の最終軟化点は、触媒の量、処理温度および時間、ならびに方法中に使用されるガス環境の種類を調整することによって制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の説明は、例示および説明の目的で提示されているが、網羅的であること、または開示された形態の開示に限定されることを意図するものではない。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本開示の原理および実際の適用を最もよく説明し、当業者が企図される特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な実施形態についての開示を理解することを可能にするために選択および説明された。以下の説明が本開示の特定の実施形態または特定の使用に関するものである限り、それは例示のみを意図しており、特許請求される開示を限定するものではない。
【0016】
本開示は、石油、精製後のその重質留分、および他の熱可塑性ポリマー材料を含む炭化水素材料の軟化点を増加させる方法を教示する。方法の生成物は、炭素繊維もしくは活性炭の前駆体として、または固体形態で輸送するために炭化水素材料を固化させるために使用することができる。
【0017】
処理方法は比較的短く、通常は5時間未満であり、バッチまたは連続設定のいずれかで行うことができる。バッチプロセスは、1つの反応器内ですべてのステップを実施することによって達成することができるが、連続的な設定は、必要なステップを複数の反応器が順次終了することを必要とする場合がある。次いで、本方法の生成物は、炭素繊維の前駆体として役立てることができる。
【0018】
本方法は、元の炭化水素材料の化学組成を変えることを回避する熱および化学プロセスを含む。プロセスは比較的短く、得られる材料は、良好な加工性、生成物収率および性能を有する炭素繊維または活性炭を製造するための供給原料として直接使用することができる。このプロセスを使用して、炭化水素液体の軟化点または融点を増加させ、かかる液体が室温で固体のままとなるように、炭化水素液体を輸送しやすくするために固体に変換することができる。増加した軟化点を有する処理された炭化水素材料は、その化学組成の変化なしに室温で半固体材料または固体材料である。半固体材料または固体材料は、粉末およびペレットを含む固体物理的形態にさらに加工可能である。ペレットは、様々な形状およびサイズへの押出または鋳造に適した温度に再加熱可能である。
【0019】
本開示に従って処理することができる炭化水素材料には、石炭由来炭化水素材料、オイルサンドビチューメン由来炭化水素、例えば流動接触分解(FCC)または残留接触分解(RCC)スラリー油、アスファルト、石油ピッチ、真空蒸留残渣またはアスファルテンなどが含まれる。アスファルテンは石油の一般的な成分であり、熱可塑性ポリマーでもある。アスファルテンは、ビチューメンまたは原油から得られる固体沈殿物であり、操作上、石油のn-ヘプタン不溶性、トルエン可溶性成分として定義される。バレル底部(bottom-of-the-barrel)とも呼ばれる真空蒸留残渣(VDR)も石油の成分である。
【0020】
本方法は、熱可塑性である任意の他の炭化水素材料に適用することができる。方法のステップは以下のとおりである:
a)環境制御反応器内で触媒または固体の化学添加剤を炭化水素材料と混合するステップ;
b)炭化水素材料または上記混合物を、純粋な窒素、純粋な蒸気、酸素含有ガスまたはそれらの混合物などの流動ガス環境で280℃~480℃の温度に加熱し、処理の全過程であり得るか、または処理方法の選択された期間だけであり得る期間、この温度で混合物を保持するステップ;
c)炭化水素材料が低粘度になったときに混合物を撹拌し、炭化水素材料が固体になったときに処理プロセスの終わりまで撹拌を維持するステップ。
【0021】
混合ステップは、加熱ステップの前に室温で行うことができ、または混合ステップは、加熱ステップにおいて炭化水素材料を加熱した後に行うことができる。混合および加熱後に撹拌を行うことができ、または混合および加熱のいずれか一方または両方の間に撹拌を行うことができる。したがって、本方法は、3つの別々に時間を決められたステップ、2つの別々に時間を決められたステップ、またはすべてを1つのステップとして実行することができる。
【0022】
炭化水素材料の軟化点は、本方法において、以下の可変部を操作することによって、最大400℃に、より好ましくは100℃~350℃の間に増加させることができる:
触媒-これらは、元の炭化水素材料の化学を変えることなく、炭化水素材料中の架橋反応によって軟化点を増加させるのに役立つ。分子成分、特に低分子量を有するものの架橋は、より高い軟化点を有するより大きな分子を形成する。
【0023】
触媒は、好ましくは、例えばSxOyの式を有する硫黄含有触媒である。これらの触媒は、HSO4
-含有化合物、HSO3
-含有化合物、S2O7
2-含有化合物、S2O8
2-含有化合物、S2O3
2-含有化合物、SO3
2-含有化合物を含むことができる。これらの触媒は、約250℃~500℃の温度範囲内で炭化水素材料の所望の架橋を分解および生成することができる。これらのガス分解性触媒は、該触媒を炭化水素材料にバブリングすることによって反応器に添加し、撹拌によって炭化水素材料と混合することができる。反応に流入するガス状触媒の流量は、処理される炭化水素材料の量に基づいて、またガス環境の流動ガスの流量に基づいて変化させることができる。
【0024】
触媒の投入量が重要であり、なぜなら投入量が多すぎると架橋が非常に激しく、処理中の炭化水素が熱硬化性プラスチックまたはコークスに発生する可能性があるためである。触媒の投入量が低すぎると、十分な架橋反応が生じない。
【0025】
代替的な実施形態では、固体粉末状化学添加剤を反応器に添加し、炭化水素材料と混合することができる。粉末状化学添加剤は、ガス状触媒に分解し、次いで架橋プロセスに触媒作用を及ぼす。次いで触媒は、炭化水素材料に結合することなく、反応器から除去される気相にさらに分解することができる。結果として、初期炭化水素材料の化学的性質は変わらない。
【0026】
固体の化学添加剤は、好ましくはアンモニウム-、硫黄-および酸素-含有化合物である。化学添加剤は、(NH4)2S2O8(過硫酸アンモニウム)、(NH4)2S2O7(ピロ硫酸アンモニウム)、(NH4)2SO4(硫酸アンモニウム)、(NH4)2S2O3(チオ硫酸アンモニウム)、(NH4)2SO3(亜硫酸アンモニウム)、NH4HSO4(硫酸水素アンモニウム)、NH4HSO3(亜硫酸水素アンモニウム)、(NH4)2S(硫化アンモニウム)を含むことができ、最も好ましくは、化学添加剤はピロ硫酸アンモニウム(NH4)2S2O7である。
【0027】
上記化学添加剤の種は、炭化水素原料材料の架橋および/または加硫を引き起こす触媒として働くHSO4
-含有化合物、HSO3
-含有化合物、S2O7
2-含有化合物、S2O8
2-含有化合物、S2O3
2-含有化合物、SO3
2-含有化合物、SO2、またはS、またはそれらの組み合わせに分解する。
【0028】
添加され得る固体粉末状化学添加剤の1つは、ピロ硫酸アンモニウムである。ピロ硫酸アンモニウムの熱分解は、以下の反応に従うことが決定された:
3(NH4)2S2O7=2NH3+2N2+6SO2+9H2O 1)
【0029】
過硫酸アンモニウムを、反応2)によって120℃で本発明のピロ硫酸アンモニウムに分解する固体の化学添加剤としても使用することができる。
2(NH4)2S2O8=2(NH4)2S2O7+O2 2)
【0030】
硫酸アンモニウムを、250℃を超える温度でピロ硫酸アンモニウムに分解する固体の化学添加剤として使用することができる:
(NH4)2SO4=NH4HSO4+NH3 3)
2NH4HSO4=(NH4)2S2O7+H2O 4)
【0031】
反応4)から、ピロ硫酸アンモニウムは、反応1)に従ってガス状触媒にさらに分解する。
【0032】
ここでも、触媒または固体の化学添加剤の投入は、激しい架橋、コークスのような非軟化材料の形成、または非常に高い軟化点を有する材料の形成を引き起こす可能性がある過剰投入を回避するために重要である。かかる過剰投入の場合、化学添加剤またはガス状触媒は炭化水素に捕捉または結合され、処理される初期炭化水素材料の望ましくない化学変化をもたらす可能性がある。
【0033】
化学添加剤の投与量は、処理される炭化水素材料の初期軟化点、処理温度、ガス状環境、軟化点の所望の増加、および処理される材料の所望の最終レオロジー特性に応じて、処理される炭化水素材料の1%~50%の任意の値であり得る。ガス状触媒を直接添加する場合、添加されるガス状触媒の量は、固体の化学添加剤の分解により放出されるガスの量と同等であり得る。
【0034】
加熱-解重合であって、これは加熱時の揮発相の蒸発によって低分子量物質の除去をもたらす。処理温度および時間の両方を操作して、潜在的な将来の溶融紡糸および他の活性炭処理のために、処理された炭化水素材料の反応速度および加工性を制御することができる。炭化水素は、多くの場合、480℃を超える温度で炭化することができ、したがって、炭化またはコークス形成を回避するために、処理は480℃未満の温度で行われなければならない。さらに、処理温度は、反応器に添加される任意の化学添加剤の熱分解温度よりも高くなければならず、架橋を引き起こすガス状触媒へのそれらの分解を確実にしなければならない。一実施形態では、280℃~480℃の加熱温度範囲が好ましい。
【0035】
反応器中のガス環境-ガス環境は、純粋な窒素、純粋な蒸気、酸素含有ガス、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。これらのガスは、添加される固体の化学添加剤触媒の分解から存在するガス状触媒に加えて存在する。ガス環境は、炭化水素材料の鎖に結合し、側鎖を切断することによって鎖をより長くする機構のいずれか1つによって炭化水素材料を改質するのに役立つ。鎖切断は、脂肪族側鎖の消失などの鎖切断をもたらし、処理される炭化水素材料中のより低い水素対炭素比をもたらす。これにより、最終的な炭化水素生成物、すなわち炭素繊維前駆体の分子構造を、得られる炭素繊維の溶融紡糸性、紡糸温度および最終的な機械的特性に関してさらに制御することが可能になる。流動ガスはまた、炭化水素材料が処理装置の内側に堆積または付着する可能性を低減する。
【0036】
炭素繊維への更なる加工に必要な炭化水素前駆体材料の特性に応じて、ガス流の種類の選択、および滞留時間を処理中に変えることができる。ガス環境の選択は、架橋を達成する際の触媒の有効性を変化させる。窒素ガス環境は、コークスの形成を促進し、蒸気環境よりも効果的に軟化点を増加させる。炭化水素材料が高い軟化点に達し、コークス形成のリスクが高い場合、蒸気が好ましい。ガス環境はまた、例えば、先に示したように特定の側鎖または分子基を除去するための鎖開裂、および炭化水素分子からの水素の除去を引き起こす脱水素化によって、処理される初期炭化水素材料の化学構造の変化に影響を及ぼす。脱水素化は、H/C比の低下をもたらし、これは、処理された炭化水素材料の特定のその後の使用に望ましい場合がある。
【0037】
撹拌の作用-これは、外部から加熱することができる炭化水素材料と反応器の壁との間の熱伝達、ガス状触媒または化学添加剤と炭化水素材料との混合、蒸発の増加、およびガス環境と処理される炭化水素材料との混合を含む複数の目的に役立つ。
【0038】
以下の例6に詳細に示される本発明の更なる実施形態において、本発明者らは、驚くべきことに、アスファルテン含有量を有する炭化水素材料の場合、これらの炭化水素の軟化点の増加が、炭化水素材料中のアスファルテン含有量、および炭化水素材料のアスファルテン成分の軟化点によっても影響を受けることを見出した。
【0039】
このため、アスファルテンを有する炭化水素材料の場合、ガス環境で一定期間加熱する本方法のステップは、いくらか変更される。より具体的には、本発明者らは、ガス環境で加熱する2つ以上の個別のサブステップを含むように方法を操作し、前述の個別のサブステップの各々は、異なる加熱温度、異なるガス環境および/または他のサブステップとは異なる期間のうちの少なくとも1つを有する。これは、1)アスファルテン含有量の軟化点、2)アスファルテン含有量、したがって3)全体的な軟化点を制御するのに役立つ。
【0040】
一例では、これは、混合物を第1の温度で第1の期間にわたって第1のガス環境に保持し、次いで混合物を第2の温度で第2の期間にわたって第2のガス環境に保持し、次いで混合物を第3の温度で第3の期間にわたって第3のガス環境に保持する3つの個別のサブステップを含むことができる。
【0041】
各サブステップの個別の温度に関して、一例では、第1の温度、第2の温度または第3の温度のいずれか1つは、固体の化学添加剤の分解が起こる温度と一致することができ、または温度のいずれか1つ以上は、炭化水素材料の架橋または加硫反応が起こる温度であることができ、もしくはそれらは流動ガスと炭化水素材料との間の反応が起こる温度であることができる。これらの事象のすべてが、処理の第2または第3の温度であり得る同じ温度で起こることも可能である。
【0042】
本方法は、以下の態様を提供する:
・これは、分子修飾(解重合、架橋、開裂およびクラッキング)の様々なプロセスを単一の処理で一連の単一のプロセス条件に組み合わせ、前述の条件は最終生成物の様々な要件を満たすように調整することができる。
・他の方法とは異なり、化学添加剤およびガス状触媒は、処理後に気相に変換され、処理される炭化水素材料から除去することが容易であり、元の炭化水素材料の化学的性質に最小限の変化をもたらす。
・本開示のプロセスを使用して生成された炭化水素材料は、元の炭化水素材料よりも脂肪族水素の存在量が少ない。炭素繊維を作製するための炭素前駆体として生成物を使用する場合、より高い芳香族性がより望ましい。
・本開示のプロセスは、任意の炭化水素材料をそれらの起源にかかわらず処理するために適用することができる。本明細書の例は石油由来の炭化水素材料を用いて実証されているが、本プロセスは、石炭由来の炭化水素などの他の種類の炭化水素の処理、またはそれらの同様の熱可塑性の性質により他の処理活動に使用することができる。
【0043】
本開示のプロセスの更なる説明として、以下の例を参照することができる。特に明記しない限り、すべての部およびパーセンテージは重量基準である。
【0044】
例1
真空製油所残渣を原料炭化水素材料として使用した。この残渣材料は、サンプル0として表1に列挙される化学組成を有する。600gの量の(NH
4)
2S
2O
7固体粉末を2kgの真空製油所残渣に添加した。混合物を密封円筒形反応器に入れ、混合物を異なる最終温度に加熱しながら30RPM(毎分回転数)の速度で撹拌し、最終温度で120分間保持した。N
2ガスの流れは、炭化水素材料が液体状態にあるとき、混合物の加熱および冷却の全時間にわたって維持された。得られる材料を分析して、真空製油所残渣の初期重量、化学組成、示差走査熱量測定(DSC)を使用した軟化点、およびプロトン核磁気共鳴(1H NMR)を使用した相対芳香族パーセンテージに関する収率を決定した。得られた結果を表1に示す。原料炭化水素材料は室温で粘性液体であり、その軟化点は室温未満であったが、測定されなかった。350℃での処理(サンプル1)は、炭素、水素含有量の減少をもたらしたが、窒素、硫黄および酸素、芳香族留分の増加、ならびに室温未満から約300℃への軟化点のジャンプをもたらした。380℃での処理は、水素の還元を除いて化学組成の最小変化をもたらしたが、軟化点の増加はわずか240℃であり、これは、より低温で処理したサンプル1の軟化点よりも低い。処理温度を450℃に増加させると(サンプル3)、残渣はコークスに変化した(非軟化)。すべての処理条件において、処理材料の収率は、処理温度の増加と共に減少する。
【表1】
【0045】
例2
例1で使用したのと同じ真空残渣に、より多量の(NH
4)
2S
2O
7固体粉末を添加してサンプル4を作製した。例1のサンプル2に対して行ったのと同じ処理手順をサンプル4に適用した。(NH
4)
2S
2O
7を30%から40%に増加させると、残渣が非軟化材料(コークス)に変換された。
【表2】
【0046】
例3
例1で使用したのと同じ真空残渣を異なる環境で処理した。例1のサンプル2およびこの例のサンプル5に、同じ量の(NH
4)
2S
2O
7を添加し、同じ温度で処理した。サンプル2を純粋な窒素ガス環境で2時間処理し、サンプル5をさらに1時間蒸気中で処理した。窒素中での処理に続く蒸気中での処理は、サンプル5の軟化点を40℃増加させた。
【表3】
【0047】
例4
例1で使用したのと同じ真空残渣を異なる環境で処理した。この例のサンプル6を、最初にN
2中で1時間、次いで蒸気中で1時間、400℃で処理した。この例のサンプル7も400℃で処理したが、最初に蒸気中で1時間、次いでN
2中で1時間処理した。サンプル6は約182℃に軟化点を有するが、処理後のサンプル7は非軟化性であった(コークス)。さらに、サンプル7は、サンプル6よりも水素含有量および生成物収率が低い。蒸気を最初に適用することによる処理は、脱水素化および鎖開裂を促進すると思われる。
【表4】
【0048】
例5
例1で使用したのと同じ真空残渣を2つの別々の処理ステップで処理し、それらの各々は異なる別々の温度およびガス環境を有する。この例のサンプル8は、最初にN
2中350℃で2時間処理し、次いで蒸気中400℃で2時間のみ処理した。この例のサンプル9も、最初に350℃で2時間、一方で蒸気中で処理し、次いで400℃で2時間、一方でN
2中で処理した。サンプル8は、サンプル9よりも軟化点が高く、生成物収率が高い。さらに、サンプル8ではN
2から蒸気へ、サンプル9では蒸気からN
2へのガス環境の逆転は、サンプル8ではCの減少をもたらしたが、サンプル9ではCの増加をもたらした。いずれの場合も水素の量は減少しているが、サンプル9ではより多くの水素が減少した。これらの変化はすべて、サンプル9においてはるかに低いH/Cモル比をもたらした。N
2中での第1の処理は、蒸気中よりも高い生成物収率および軟化点をもたらす架橋を促進し、一方、蒸気中での第1の処理は脱水素化および鎖開裂を促進する。
【表5】
【0049】
例6
例1で使用したのと同じ真空残渣を2つまたは3つの別々の処理ステップで処理し、それらの各々は異なる別々の温度、時間およびガス環境を有する。この例では、7重量%または4重量%の量の真空製油所残渣の(NH
4)
2S
2O
7固体粉末を添加したが、これは先の例で添加した量よりもはるかに少なかった。この例のサンプル10を最初にN
2中330℃で2時間処理し、次いで蒸気中420℃で2時間処理し、180℃で軟化点を得た。この例のサンプル11は、サンプル10を窒素中410℃で1時間さらに処理したものであり、これは第3のステップで軟化点を20℃増加させた。第3の処理時間を3時間に増やした場合、軟化点(サンプル12)は、サンプル11の軟化点と比べて20℃増加した。サンプル13~15に、4重量%(NH
4)
2SO
4固体粉末を添加した。第2のステップでは、これらのサンプルをより高温で、蒸気の代わりに窒素ガス中で処理した。サンプル15はまた、より高い第1の処理温度を有していた。この例は、炭化水素材料中に存在する異なる量のC5不溶分、すなわちアスファルテンの含有量が、材料全体の軟化点を変化させ得ることを示している。C5不溶分/アスファルテンの軟化点もまた、処理によって変えることができる。アスファルテンの量およびそれらの軟化点は、処理された炭化水素材料が繊維に押し出される粘度および能力に影響を及ぼす。
【表6】
【0050】
例7
この例では、処理に使用される供給原料はアスファルテンであり、これはビチューメンまたは原油にn-ペンタン溶媒を添加することによって得られる固体沈殿物であり、当業者に溶媒脱歴として知られているプロセスである。このプロセスは、ビチューメンおよび原油に直接適用することができ、またはいくつかの熱変換プロセスまたはクラッキングの後に適用することができる。アスファルテンは室温で固体材料であるが、80℃を超える温度に加熱すると軟化し始め、温度が190℃になると粘性液体になる。アスファルテンが広範囲の温度にわたって軟化するという事実は、異なる分子構造および分子量を特徴とする複雑な組成を反映している。(NH
4)
2S
2O
7を添加し、例1と同様の手順に従うことによって、アスファルテンの軟化点の変化および製油所残渣の処理から観察される他のすべての効果が起こり得る。しかしながら、アスファルテンの同じ程度の変化または効果を達成するために必要な(NH
4)
2S
2O
7の投入量は、製油所残渣と比較してはるかに少ない。例えば、10%の(NH
4)
2S
2O
7をアスファルテンに添加すると、350℃の処理温度でアスファルテンがコークスに変換した。対照的に、5%未満の(NH
4)
2S
2O
7をアスファルテンに添加することにより、アスファルテンの軟化点を265℃に上昇させることができた。
【表7】
【0051】
例8
本プロセスは、活性炭の生成のための更なるプロセスの前処理段階として使用される。この例では、例1で使用したのと同じ真空残渣を使用した。600gの(NH
4)
2S
2O
7固体粉末を2kgの真空製油所残渣に添加した。混合物を密封反応器に入れ、混合物を350℃に加熱して撹拌し、その温度で2時間保持した。N
2ガスの流れは、混合物を室温から加熱し、室温に冷却する全体にわたって維持された。純粋なN
2を維持するか、または350℃で2時間の保持中に蒸気を導入した。異なる条件での前処理から得られた材料を使用して化学的活性化を行い、活性炭を生成した。化学的活性化の手順は、先行技術(Activated carbon with high surface area and its making method-米国特許出願公開第2019/0202702号明細書)に詳述されている。前処理された真空残渣に同じ化学的活性化の条件を適用した。30%(NH
4)
2S
2O
7と混合した製油所残渣をN
2中350℃で前処理すると、活性炭の収率が増加したが、得られる活性炭の比表面積は減少しなかった。しかしながら、蒸気中350℃で30%(NH
4)
2S
2O
7と混合した製油所残渣の前処理は、得られる活性炭の比表面積の減少を引き起こしたが、活性炭の収率の増加を引き起こした。
【表8】
【0052】
例9
本プロセスは、活性炭の生成のための更なるプロセスの前処理段階として使用される。この例では、例1で使用したのと同じ真空残渣を使用した。600gの(NH
4)
2S
2O
7固体粉末を2kgの真空製油所残渣に添加した。混合物を密封反応器に入れ、混合物を400℃に加熱して撹拌し、その温度で2時間保持した。N
2ガスの流れは、混合物を室温から加熱し、室温に冷却する全体にわたって維持された。純粋なN
2を維持するか、または400℃で2時間の保持中に蒸気を導入した。異なる条件での前処理から得られた材料を化学的活性化に使用して、活性炭を生成した。化学的活性化の手順は、先行技術(Activated carbon with high surface area and its making method-米国特許出願公開第2019/0202702号明細書)に詳述されている。前処理された真空残渣に同じ化学的活性化の条件を適用した。表8に示すように、30%(NH
4)
2S
2O
7と混合した製油所残渣を400℃で蒸気中で前処理すると、活性炭の比表面積が増加し、活性炭の収率はわずかに低下した。しかしながら、窒素中400℃で30%(NH
4)
2S
2O
7と混合した製油所残渣の前処理は、得られる活性炭の比表面積の実質的な減少を引き起こしたが、活性炭の収率の増加を引き起こした。
【表9】
【0053】
例10
この例では、例1で使用したのと同じ真空残渣を使用した。これらを例1~6に示したものと同様に処理して、室温より高い軟化点または融点を有する処理された真空残渣を生成した。かかる処理は、真空残渣の非軟化材料(コークス)への変換を回避するために行われるべきである。かかる処理条件では、製油所残渣の粘性液体は、化学組成の変化の有無にかかわらず半固体材料および/または固体材料に変換され、固体材料と同じ方法で輸送することができる。これらの半固体材料または固体材料は、それらを冷却後に粉砕することによって粉末などの異なる物理的形態にさらに加工することができ、冷却中またはそれらの再加熱後に依然として成形可能である場合には押出機によってペレットに加工することができ、または任意の形状およびサイズの型に鋳造することができる。製油所残渣の固体形態は、炭素繊維、活性炭を作製するためにさらに処理することができ、または燃焼用の燃料粉末として使用することができる。
【0054】
例11
この例では、処理に使用された供給原料は、希釈剤の除去後のオイルサンドビチューメンであった。通常、希釈剤は、パイプライン輸送の便宜のために粘度を低下させるためにオイルサンドに最大30%添加される。希釈剤の除去は、オイルサンドビチューメンを真空条件下、150℃で2時間加熱することによって達成した。残りを処理して、約110℃に軟化点を有する固体ビチューメンを生成した。この軟化点を有する固体ビチューメンは、石炭のような方法で安全に輸送することができる。希釈剤除去後のビチューメンは、20℃未満の軟化点を有していた(サンプルC0)。異なる量の(NH
4)
2S
2O
7を添加し、処理温度を330℃から350℃に調整することにより、すべてのサンプル(サンプルC1~C3)が約110℃の軟化点に達することができる。しかしながら、固形ビチューメン生成物の収率は、処理温度が330℃の場合には約89.5%であり、処理温度が350℃に増加すると約69%に低下した。
【表10】
【0055】
例12
この例では、例11と同じ炭化水素サンプルの調製方法を使用した。しかしながら、(NH4)2S2O7触媒の添加は、それぞれ(NH4)2S2O8(過硫酸アンモニウム)および(NH4)2SO4(硫酸アンモニウム)の添加によって置き換えた。過硫酸アンモニウムは、120℃で(NH4)2S2O7およびO2に分解する。(NH4)2S2O8の添加量が表10に列挙された(NH4)2S2O7の量よりも約10%多いことを条件として、表10に示すのと同じ結果を達成することができる。対照的に、(NH4)2SO4が添加される場合、その量は、表10に列挙された同じ結果を得るために、(NH4)2S2O7の量よりも約25%高くなければならない。反応3)および反応4)に示すように、(NH4)2SO4は(NH4)2S2O7に分解する。
【国際調査報告】