(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】放熱ハウジングを有するエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20231031BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20231031BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522917
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021079803
(87)【国際公開番号】W WO2022096339
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 顕
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AB22
4B162AC01
4B162AC10
(57)【要約】
本発明は、エアロゾル発生装置に関し、特に、放熱材料を有するカバー要素を含むエアロゾル発生装置に関する。具体的には、エアロゾル発生装置は、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生基材を加熱するための加熱ユニットと、エアロゾル発生装置の外面の少なくとも一部分を形成する装置ハウジングと、を含み、装置ハウジングは、加熱ユニットを断熱し、及び/又は加熱ユニットによって発生した熱を放散するように構成されたエアロゲル材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置(100)であって、
- エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生基材(120)を加熱するための加熱ユニット(110)と、
- 前記エアロゾル発生装置(100)の外面の少なくとも一部分を形成する装置ハウジング(200、300)と、
を含み、
前記装置ハウジング(200、300)は、前記加熱ユニット(110)を断熱し、及び/又は前記加熱ユニット(110)によって発生した熱を放散するように構成されたエアロゲル材料(311)を含む、
エアロゾル発生装置(100)。
【請求項2】
前記装置ハウジング(200、300)は、前記エアロゲル材料を含み、好ましくは前記エアロゲル材料で作られた、エアロゲル層(311)を含む、請求項1に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項3】
前記エアロゲル材料は、0.10~0.15g/cm
3、好ましくは0.11~0.12g/cm
3の密度を有する、請求項1又は2に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項4】
前記エアロゲル層(311)は、固体状態である、請求項2又は3に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項5】
前記エアロゲル層(311)は、シート又はフィルムの形状を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項6】
前記装置ハウジング(200、300)は、プラスチックの層(310、312)をさらに含み、前記エアロゲル層(311)又は前記プラスチックの層(310、312)のうちの少なくとも1つが前記装置ハウジング(200、300)の最外層として配置され、前記エアロゲル層(311)の片面が、前記プラスチックの層(310、312)上に直接付着するように配置される、請求項2~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項7】
前記装置ハウジング(200、300)は、前記エアロゲル層(311)が2つのプラスチック層の間に挟まれるような方法で、前記エアロゲル層(311)の別の面に直接付着するように配置された別のプラスチックの層(310、312)を含む、請求項2又は6に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項8】
前記プラスチックの層は、透明プラスチック(312)であり、前記他のプラスチックの層(310)は、不透明プラスチックである、請求項7に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項9】
前記エアロゲル層(311)の一方の表面は、前記プラスチックの層(310、312)の表面に完全に付着している、請求項6~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項10】
前記エアロゲル層(311)は、前記加熱ユニット(110)に隣接する前記ハウジングの少なくとも一部分において、前記加熱ユニット(110)に隣接していない前記ハウジングの他の部分よりも厚い、請求項2~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項11】
前記エアロゲル層(311)は、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.4mm、より好ましくは少なくとも0.5mm、最も好ましくは少なくとも0.6mm、且つ最大1.2mm、より好ましくは最大1.0mm、さらにより好ましくは最大0.8mm、及び最も好ましくは最大0.7mmの平均厚さ(A)を有する、請求項2~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項12】
前記エアロゲル層(311)は、少なくとも0.025MPa、好ましくは少なくとも0.05MPa、より好ましくは少なくとも0.1MPa、最も好ましくは少なくとも0.15MPa、且つ最大0.45MPa、より好ましくは最大0.4MPa、さらにより好ましくは最大0.3MPa、及び最も好ましくは最大0.25MPaの曲げ強度を有する、請求項2~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項13】
前記エアロゲル材料(311)は、少なくとも0.010W/m・K、好ましくは少なくとも0.011W/m・K、より好ましくは少なくとも0.012W/m・K、最も好ましくは少なくとも0.013W/m・K、且つ最大0.017W/m・K、より好ましくは最大0.016W/m・K、さらにより好ましくは最大0.015W/m・K、及び最も好ましくは最大0.014W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項14】
前記エアロゲル材料(311)は、800nmで少なくとも92%、好ましくは800nmで少なくとも93%、より好ましくは800nmで少なくとも94%、最も好ましくは800nmで少なくとも95%、且つ800nmで最大99%、より好ましくは800nmで最大98%、さらにより好ましくは800nmで最大97%、及び最も好ましくは800nmで最大96%の可視光線透過率を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項15】
前記エアロゲル材料(311)は、少なくとも125°、好ましくは少なくとも130°、より好ましくは少なくとも135°、最も好ましくは少なくとも140°、且つ最大160°、より好ましくは最大155°、さらにより好ましくは最大150°、及び最も好ましくは最大145°の超撥水性の水接触角を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項16】
前記装置ハウジング(200、300)は、本体(200)と、前記本体(200)に取り外し可能に取り付けられるか又は接続されるカバー要素(300)とを含み、前記カバー要素(300)は前記エアロゲル材料(311)を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項17】
前記カバー要素(300)は、前記装置の使用時に前記加熱ユニット(110)からの前記熱を複数の方向に放散することができるように、湾曲を有する、請求項16に記載のエアロゾル発生装置(100)。
【請求項18】
エアロゾル層を発生させるためのエアロゾル発生基材(120)を加熱するための加熱ユニット(110)を含む、請求項2~17のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置(100)用の装置ハウジング(300)の製造方法であって、前記方法は、
- 接着、インモールド装飾、若しくはアウトモールド装飾によって前記エアロゲル層(311)をプラスチック層(310、312)に付着させるステップ、又は、
- 雌雄嵌合を用いて2つのプラスチック層の間に前記エアロゲル層(311)を固定するステップ
を含む、製造方法。
【請求項19】
前記エアロゲル層(311)は、固体状態である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記エアロゲル層(311)の一方の表面は、前記プラスチックの層(310、312)の表面に完全に付着している、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記製造方法は、
- 0.10~0.15g/cm
3、好ましくは0.11~0.12g/cm
3の密度を有する前記エアロゲル材料を含み、好ましくは前記エアロゲル材料で作られた、前記エアロゲル層(311)を得るステップ
を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置に関し、特に、放熱材料を有するカバー要素を含むエアロゾル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マークで一般的に見られるエアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置のユーザが消費するためのエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生ユニットを含む。エアロゾル発生ユニットは、通常、エアロゾル発生基材に熱を加えることによってエアロゾルを発生させる加熱ユニットを含む。エアロゾルを発生させるプロセスで加熱ユニットによって発生した熱の一部分は、エアロゾル及びエアロゾルを吸入のためにユーザに輸送する空気流を通して放散されるが、発生した熱の本質的部分は、エアロゾル発生装置内の加熱ユニットの周囲に伝達され、その後、エアロゾル発生装置の装置ハウジングを通して外部に放散される。さらにまた、エアロゾル発生装置の外表面、特に加熱ユニットに近接する部分も熱くなる可能性がある。結果として、装置ハウジングが熱くなりすぎて快適に保持したり触れたりできなくなる可能性があり、ユーザに怪我をさせる可能性がある。
【0003】
上記の問題に対処するために、いくつかのエアロゾル発生装置は、断熱スリーブ又はラッパなどの断熱要素を提供する。断熱要素は、一般的に、加熱ユニットから装置ハウジングの外表面への熱伝達を低減するために、少なくとも加熱ユニットを取り囲むか又は包み込む。しかしながら、断熱要素は、エアロゾル発生装置の全体的なサイズを増加させ、エアロゾル発生装置の複数の構成要素によって占有されるエアロゾル発生装置の内部空間によって課される空間的要件に適合する必要がある。これにより、製造の複雑度が増し、製造コストが押し上げられる。
【0004】
したがって、耐久性があり、小型で、製造コスト効率が良く、加熱ユニットからの熱を放散することが可能な断熱されたユニットを有するエアロゾル発生装置が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的のいくつか又は全ては、独立請求項の特徴によって定義される本発明によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の特徴によって定義される。
【0006】
本発明の第1の態様は、
- エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生基材を加熱するための加熱ユニットと、
- エアロゾル発生装置の外面の少なくとも一部分を形成する装置ハウジングと、
を含み、
装置ハウジングは、加熱ユニットを断熱し、及び/又は加熱ユニットによって発生した熱を放散するように構成されたエアロゲル材料を含む、
エアロゾル発生装置である。
【0007】
装置ハウジング内にエアロゲル材料を有することにより、少なくとも同じ断熱性能で、他の断熱材料を有するよりも装置ハウジングを薄くすることができる。それによって、装置ハウジングはサイズを縮小し、及び/又は装置の内部空間を拡張する。また、装置内部にエアロゲルを配置する代わりに、装置ハウジング内にエアロゲル材料を有することにより、装置内の熱放散のための空間が増加する。
【0008】
第2の態様によれば、前述の態様において、装置ハウジングは、エアロゲル材料を含み、好ましくはエアロゲル材料で作られた、エアロゲル層を含む。
【0009】
第3の態様によれば、前述の態様において、エアロゲル材料は、0.10~0.15g/cm3、好ましくは0.11~0.12g/cm3の密度を有する。
【0010】
第3の態様の構成を有することで、エアロゲル材料は、安定した固体状態であり得る。
【0011】
第4の態様によれば、第2及び第3の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層(311)は、固体状態である。
【0012】
第4の態様の構成を有することで、固体エアロゲルにより、装置を軽量化し、製造しやすくすることができる。
【0013】
第5の態様によれば、第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層(311)は、シート又はフィルムの形状を有する。
【0014】
第6の態様によれば、第2~第5の態様のいずれか1つにおいて、装置ハウジング(200、300)は、プラスチックの層(310、312)をさらに含み、エアロゲル層(311)又はプラスチックの層(310、312)のうちの少なくとも1つが装置ハウジング(200、300)の最外層として配置され、エアロゲル層(311)の片面が、プラスチックの層(310、312)上に直接、好ましくは完全に付着するように配置される。
【0015】
プラスチック層があることで、エアロゲル層はより堅くなり、したがって、損傷又はかき傷を受けにくくなるため、エアロゲルの寿命は長くなる。
【0016】
第7の態様によれば、第2~第6の態様のいずれか1つにおいて、装置ハウジング(200、300)は、エアロゲル層(311)が2つのプラスチック層の間に挟まれるような方法で、エアロゲル層(311)の別の面に直接、好ましくは完全に付着するように配置された別のプラスチックの層(310、312)を含む。
【0017】
第8の態様によれば、第2~第7の態様のいずれか1つにおいて、プラスチックの層は、透明プラスチック(312)であり、他のプラスチックの層(310)は、不透明プラスチックである。
【0018】
第9の態様によれば、第2~第8の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層(311)の一方の表面は、プラスチックの層(310、312)の表面に完全に付着している。
【0019】
第10の態様によれば、第2~第9の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、シート又はフィルムの形状を有する。
【0020】
第11の態様によれば、第2及び第10の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、エアロゲル粉末を含まないか、又はエアロゲル粉末で作られていない。
【0021】
エアロゲル粉末と異なり、特にシート又はフィルムの形態のエアロゲルによって、材料は、透明で、よりコンパクトで、所定の形状を形成しやすくなるので、第10及び第11の態様は有利である。
【0022】
第12の態様によれば、第2及び第11の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、顆粒の形態である。
【0023】
第13の態様によれば、第2~第12の態様のいずれか1つにおいて、装置ハウジングは、好ましくは不透明プラスチックの第1の層を含む。
【0024】
第14の態様によれば、前述の態様において、不透明プラスチック層は、ユーザ操作部の位置及び/若しくは機能、並びに/又はエアロゾル発生装置に関する他の情報を示すように構成された、印刷パターンを有する装飾層であり、及び/又は装飾層は、IDF(インデコレーションフィルム)着色プラスチック、OMR(外側転写)着色プラスチック、又はNCVM(非導電性真空メタライゼーション)着色プラスチックである。
【0025】
エアロゲルフィルム及びシートの透明性能により、パターン又は印刷などの装飾要素を有するプラスチック上にエアロゲル材料を適用することができるので、第13の態様及び第14の態様は、有利である。
【0026】
第15の態様によれば、第14及び第15の態様において、エアロゲル層は、プラスチックの第1の層の上に構成される。
【0027】
第16の態様によれば、第6の態様において、エアロゲル層は、プラスチックの第1の層の下に構成される。
【0028】
プラスチック物質が硬化してエアロゲル層を支持することができるので、第15及び第16の態様は、有利である。
【0029】
第17の態様によれば、第13~第16の態様のいずれか1つにおいて、装置ハウジングは、装置ハウジングの最外層である、好ましくは透明プラスチックの第2の層を含み、エアロゲル層は、プラスチックの第1の層とプラスチックの第2の層との間に構成される。
【0030】
エアロゲル及び不透明プラスチックの上に別の透明プラスチックを配置することによって、エアロゲル及び不透明プラスチックのかき傷、紫外線光線に起因する退色などの損傷を防止するので、第17の態様は有利である。
【0031】
第18の態様によれば、第2~第17の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、加熱ユニットに隣接するハウジングの少なくとも一部分において、加熱ユニットに隣接していないハウジングの他の部分よりも厚い。
【0032】
この配置は、装置ハウジングにその装置ハウジングを通した一定の触覚温度を持たせることができ、使用するエアロゲル材料を少なくすることができるので、第18の態様は、有利である。
【0033】
第19の態様によれば、第2~第18の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.4mm、より好ましくは少なくとも0.5mm、最も好ましくは少なくとも0.6mm、且つ最大1.2mm、より好ましくは最大1.0mm、さらにより好ましくは最大0.8mm、及び最も好ましくは最大0.7mmの平均厚さを有する。
【0034】
第20の態様によれば、第2~第19の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル層は、少なくとも0.025MPa、好ましくは少なくとも0.05MPa、より好ましくは少なくとも0.1MPa、最も好ましくは少なくとも0.15MPa、且つ最大0.45MPa、より好ましくは最大0.4MPa、さらにより好ましくは最大0.3MPa、及び最も好ましくは最大0.25MPaの曲げ強度を有する。
【0035】
第19及び第20の態様の厚さ及び曲げ強度で、エアロゲル層は薄く、異なる形態を容易に成形することができる。
【0036】
第21の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、少なくとも0.010W/m・K、好ましくは少なくとも0.011W/m・K、より好ましくは少なくとも0.012W/m・K、最も好ましくは少なくとも0.013W/m・K、且つ最大0.017W/m・K、より好ましくは最大0.016W/m・K、さらにより好ましくは最大0.015W/m・K、及び最も好ましくは最大0.014W/m・Kの熱伝導率を有する。
【0037】
第21の態様によるエアロゲル層は、優れた断熱及び放熱性能を提供するための優れた断熱性を持つ。
【0038】
第22の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、800nmで少なくとも92%、好ましくは800nmで少なくとも93%、より好ましくは800nmで少なくとも94%、最も好ましくは800nmで少なくとも95%、且つ800nmで最大99%、より好ましくは800nmで最大98%、さらにより好ましくは800nmで最大97%、及び最も好ましくは800nmで最大96%の可視光線透過率を有する。
【0039】
第22の態様によるエアロゲル材料の透明性により、色、パターン、及び光のある表面上に配置することが可能になる。上記の光透過率を有するエアロゲル材料は、可視光線範囲全体が高く、且つその形態が安定であることができる。
【0040】
第23の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、少なくとも125°、好ましくは少なくとも130°、より好ましくは少なくとも135°、最も好ましくは少なくとも140°、且つ最大160°、より好ましくは最大155°、さらにより好ましくは最大150°、及び最も好ましくは最大145°の超撥水性の水接触角を有する。
【0041】
第16の態様によるエアロゲル材料の疎水性又は撥水性の特性により、装置内に加熱に起因する蒸気が存在するときでも、その性能又は断熱性は存続する。
【0042】
第24の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、装置ハウジングは、本体と、本体に取り外し可能に取り付けられるか又は接続されるカバー要素とを含み、カバー要素はエアロゲル材料を含む。
【0043】
第25の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、実質的に装置ハウジング全体に配置される。
【0044】
第26の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、カバー要素は、装置の使用時に加熱ユニットからの熱を複数の方向に放散することができるように、湾曲を有する。
【0045】
第26の態様の構造により、エアロゲル層は、加熱ユニットからの熱をより効果的に放散し、装置全体の表面温度は、一貫性があるように維持される。
【0046】
第27の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、0.10~0.15g/cm3、好ましくは0.11~0.12g/cm3の密度を有する。
【0047】
第27の態様の密度により、エアロゲル材料は、比較的高い放熱性能と、0.01W/m・K以下の小さい熱伝導率とを有する一方で、それは固形のままで、割れにくいため、プラスチック層に安定して固定することができる。これに加えて、この密度のエアロゲル複合材料は、撥水、吸音、静的振動、触媒担体などにも使用することができる。
【0048】
第28の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、8~10MPa、好ましくは8.5~9.5MPa、より好ましくは9.1~9.5MPa、最も好ましくは9.2~9.25MPaの圧縮強度、及び/又は0.5~1MPa、好ましくは0.6~0.9MPa、より好ましくは0.7~0.75MPaの圧縮弾性率を有する。
【0049】
第29の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、20~100nm、好ましくは30~90nm、より好ましくは40~80nm、最も好ましくは50~70nmの平均孔径を有する。
【0050】
第30の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、1.02~1.08、好ましくは1.03~1.07、より好ましくは1.04~1.06の屈折率を有する。
【0051】
第31の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、1.05~1.15、好ましくは1.08~1.12、より好ましくは1.09~1.11の誘電率を有する。
【0052】
第32の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、窒素雰囲気中で最高550℃まで、好ましくは600℃、より好ましくは最高615℃まで、最も好ましくは最高630℃まで、及び空気雰囲気中で最高350℃まで、好ましくは400℃、より好ましくは最高450℃まで、最も好ましくは最高467℃までの耐熱温度を有する。
【0053】
第33の態様によれば、前述の態様のいずれか1つにおいて、エアロゲル材料は、62×10-6~66×10-6/K、好ましくは63×10-6~65×10-6/K、より好ましくは63.5×10-6~64.5×10-6/Kの熱膨張係数を有する。
【0054】
本発明の第34の態様は、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生基材を加熱するための加熱ユニットを含む、第2~第33の態様のいずれか1つによるエアロゾル発生装置用の装置ハウジングの製造方法であり、方法は、
- 接着、インモールド装飾、若しくはアウトモールド装飾によってエアロゲル層をプラスチック層に付着させるステップ、又は、
- 2つのプラスチック層の間にエアロゲル層を固定するステップ
を含む。
【0055】
第34の態様による製造方法では、エアロゲル層は、形状を形成しやすく、プラスチック層と固定しやすい。
【0056】
第35の態様によれば、前述の態様において、エアロゲル層は、固体状態である。
【0057】
第36の態様によれば、前述の第34又は第35の態様において、エアロゲル層(311)の一方の表面は、プラスチックの層(310、312)の表面に完全に付着している。
【0058】
第37の態様によれば、前述の第34、第35又は第36の態様において、方法は、
- 0.10~0.15g/cm3、好ましくは0.11~0.12g/cm3の密度を有するエアロゲル材料を含み、好ましくはこのエアロゲル材料で作られたエアロゲル層(311)を得るステップ
をさらに含む。
【0059】
次に、添付の図面を参照しながら、あくまで例として、好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1A-B】それぞれ、本発明の実施形態によるエアロゾル発生装置の側面図及び平面図の略図を示す。
【
図2A-B】それぞれ、本発明の実施形態によるエアロゾル発生装置のカバー要素の一部分の断面の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の説明において、向き又は位置関係を指示する、「一端」、「他端」、「外側」、「上」、「上方」、「内側」、「下」、「下方」、「水平」、「同軸」、「中央」、「端」、「部分」、「長さ」、「外端」などの用語は、図面に示す向き又は位置関係に基づいていることを理解すべきである。空間内の相対位置を指示するために本明細書で使用される「上」、「上方」、「下方」、「下」などの用語は、別のユニット又は特徴の関係と比較して図面に示したユニット又は特徴を説明するために、解説を容易にする目的で使用される。空間内の相対位置の用語は、図に示したもの以外の使用中又は動作中の装置のさまざまな向きを含むことを意図している場合がある。例えば、図中の装置が反転された場合、他のユニット又は特徴の「下方」又は「下」にあると説明されたユニットは、他のユニット又は特徴の「上方」にあることになる。したがって、例示的な用語「下方」は、上方と下方の両方の向きを包含することができる。装置は、(90度又は他の向きで回転された)他の方法で方向づけることができ、本明細書で使用される空間関連の記述語は、それに応じて解説される。より具体的には、「上方」という語は、1つのユニット、層又は要素が、他のユニット、層又は要素に向かって、装置の外部方向に相対的に配置又は構成されることを意味し、「下方」という語は、1つのユニット、層又は要素が、他のユニット、層又は要素に向かって装置の内部方向に相対的に配置又は構成されることを意味する。
【0062】
図1A及び
図1Bに示すように、エアロゾル発生装置100は、主ハウジング200と任意選択のカバー要素300とを含む装置ハウジングを含む。主ハウジング200は、ユーザが消費するためのエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生ユニットを収容するように構成される。エアロゾル発生ユニットは、エアロゾル発生基材を含む消耗品120を加熱するために構成された加熱ユニット110を含む。エアロゾル発生装置100はまた、交換可能及び/又は再充電可能な電源とすることができる電源を含み、追加として、再充電可能な電源を充電するための充電ポート又はデータ伝送線として機能するUSBポートと、オペレータ/CPUとを備え得る。電源は、バッテリ通気孔とバッテリ通気孔カバーとを備え得るバッテリとすることができる。カバー要素300は、主ハウジング200に取り外し可能に取り付けることができる。カバー要素が取り外し可能であることは、カバー要素300が、追加の工具又は補助具を必要とせずに、エアロゾル発生装置100のユーザによって主ハウジングから取り外し可能であり、したがって、ユーザが片手又は両手を利用してカバー要素300を取り外すことができることを意味する。代替として、カバー要素は、取り外し可能でなく、主ハウジングと一体的に形成されてもよい。
【0063】
エアロゾル発生装置100は、エアロゾル発生装置100を保持するときのユーザの快適さを改善するために細長い形状を有し得る。エアロゾル発生装置100の長手方向は、エアロゾル発生装置100が細長くなる方向である。
【0064】
図1Aに示すように、カバー要素300が設けられる場合、カバー要素300によって覆われた主ハウジング200の一部に操作インタフェース部(図示せず)を設けることができる。操作インタフェース部は、カバー要素300によって外的影響から保護され、ユーザ操作部320と同様に、エアロゾル発生装置100に操作入力を提供するためにユーザによって作動され得る。操作インタフェース部は、機械式又は静電容量式のタッチボタン若しくはスイッチ、光センサ、又は磁気センサなどの1つ又は複数の操作入力要素230を含む。
図1Bに示す好ましい構成では、ユーザ操作部320及び操作インタフェース部は、ユーザ操作部320を作動させることにより、エアロゾル発生装置100に操作入力を提供するための操作インタフェース部が作動するように構成され得る。この場合、ユーザ操作部320だけを作動させることにより、エアロゾル発生装置100に操作入力を提供することはできない。逆に、ユーザ操作部320の作動に起因する操作インタフェース部の結果として生じる作動は、操作入力をもたらす。例えば、ユーザ操作部320は、ユーザが押すか又は動かすことができる機械式ボタン又はスイッチを含み得る。機械式ボタン又はスイッチ320は、ボタン又はスイッチ230などの操作インタフェース部の操作入力要素に向かって突出する突起又は同様の配置を有することによって、操作インタフェース部の操作入力要素230を作動させる。ユーザ操作エリア320のボタン又はスイッチが押されたとき、突起によって操作インタフェース部のボタン又はスイッチが押される。追加として、又は代替として、ユーザ操作部320は、ボタン又はスイッチ330が作動されたときに、操作インタフェース部の操作入力要素230として設けられた磁気センサ又は光センサをそれぞれ作動させることができる、磁石若しくは強磁性体などの磁気検出物体、又は反射面などの光検出物体を備えてもよい。代替として、機械式ボタン又はスイッチの代わりに、ユーザ操作部320は、操作インタフェース部の操作入力要素230を作動させるためにユーザによって押されたときに操作インタフェース部に向かって柔軟に変形し得る柔軟なエリアを含み得る。このような構成により、ユーザは、カバー要素300によって覆われた操作インタフェース部に直接アクセスしたりこれを露出したりすることなく、ユーザ操作エリア320を作動させることによって、エアロゾル発生装置の外部からエアロゾル発生装置100に操作入力を提供するための操作インタフェース部を作動させることが可能になる。
【0065】
エアロゾル発生装置100は、電子タバコであってもよく、eベイパー又はtベイパーエアロゾル発生基材からエアロゾルを発生させるように構成されてもよい。例えば、加熱ユニット110は、タバコスティック又は同様の消耗品120を受け入れるために構成された容器を含んでもよく、加熱要素が、容器及び容器に受け入れられたタバコスティックを加熱するために構成されてもよい。代替として、容器は、液体などのエアロゾル発生基材が入っているカートリッジを受け入れるために構成されてもよく、加熱ユニット110は、芯材要素及び芯材要素を加熱するために構成された加熱要素を含んでもよい。エアロゾル発生基材に応じて、加熱ユニットは、エアロゾルを発生させるために、エアロゾル発生基材を最高350℃までの温度に加熱することができる。エアロゾル発生装置は、吸気口からエアロゾル発生ユニットを経由して空気吹き出し口まで延びる空気流路を含む。ユーザが、発生したエアロゾルを吸入することによって消耗品を消費するとき、空気は、吸気口に入り、エアロゾル発生基材を加熱することによって加熱ユニットによってエアロゾルが発生するエアロゾル発生ユニットに流れ、発生したエアロゾルをマウスピースなどの空気吹き出し口に輸送する。空気流路は、エアロゾル発生ユニットと連通しているが、空気流路は通常、エアロゾル発生の残りの内部空間と連通していない。加熱ユニット110によって発生した熱の一部は、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生基材、及び発生したエアロゾルを吸入のためにユーザに輸送する空気の流れに伝達される。しかしながら、発生した熱の残りのかなりの部分は、空気流路及びエアロゾル発生ユニットと連通していない、エアロゾル発生装置の内部空間に伝達される。発生した熱のこのかなりの部分は、その後、熱伝導及び熱放射を通して時間とともにエアロゾル発生装置の外表面に放散され、その後、周囲空気に放散される。この熱は、エアロゾル発生基材を加熱するのに役立たないので、この熱は、加熱ユニット110と連通しない加熱ユニット110の周囲のエアロゾル発生装置の内部空間に失われる損失熱に対応する。それゆえ、熱によって、連続的なベイピングの場合に外側主ハウジング200の温度が上昇する可能性があり、温度が正常に戻るまで装置100を使用できない可能性がある。消費者及び装置本体がヒータから来る熱に起因して熱くなることを防止する必要がある。
【0066】
この問題に対処するために、装置ハウジングは、エアロゲル材料を含む。エアロゾル発生装置100の内部にさらなる断熱ユニットを配置する代わりに、装置ハウジング内にエアロゲル材料を設けることによって、エアロゾル発生装置100は、コンパクトになり、断熱性能がより良好になる。
【0067】
いくつかの実施形態では、エアロゲル材料は、珪藻土粉末、ジルコニア粉末などの他の断熱材料とともに、カバー要素300に充填されたエアロゲル粉末である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態のいくつかでは、エアロゲルシート及び/又はエアロゲルフィルムが使用される。好ましくは、ブロック形状を有するモノリス型(シート状エアロゲル及びフィルム状エアロゲル)、例えば、ティエムファクトリ株式会社によって開発されたSuper Functional Air(SUFA)が使用される。本発明の他の好ましい実施形態では、エアロゲル顆粒(顆粒状エアロゲル)、ティエムファクトリ株式会社によって開発されたSuper Functional Air(SUFA)が使用される。ティエムファクトリ株式会社からのSUFAの製造方法、特性及び統計情報は、国際公開第2020166302A1号パンフレット(ティエムファクトリ株式会社[JP];會澤守、上柿愛)に開示されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、エアロゲル材料は、酸触媒を含有する水溶液にシリコン化合物を添加し、加水分解を行う、すなわちそれを加水分解してゾルを生成することによってゾルを生成するゾル生成工程によって得ることができ、シリコン化合物は、4官能シラン化合物及び3官能シラン化合物を含み、好ましくは2官能シラン化合物をさらに含み、より好ましくは、シリコン化合物は、Qx、Tx、及びDxが4官能シラン化合物、3官能シラン化合物及び2官能シラン化合物の質量百分率をそれぞれ表す場合に、0<Qx<50、50≦Tx<100、0≦Dx<30、及びQx+Tx+Dx=100を満たす部分を有する4官能シラン化合物、3官能シラン化合物及び2官能シラン化合物の混合物である。
【0070】
この組成により、エアロゲル材料の断熱特性を改善することができ、加えて、エアロゲル材料を使用して、400cm2以上の大面積を有する板形状又はフィルム形状を生産することができ、これにより大量生産が可能になる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明のエアロゲルの構造が微視的に観察されるとき、それは主に、固体物質で満たされたバルク部(骨格部)と、バルク部内に3次元ネットワーク形状に貫通した気孔部とを含む。
【0072】
バルク部は、固体がシロキサン結合による3次元ネットワークを形成する連続体から構成される。3次元ネットワークでは、ネットワークの最小単位である格子を立方体で近似したとき、その一辺の平均長さは、2nm以上25nm以下である。一辺の平均長さは、2nm以上、5nm以上、7nm以上、10nm以上、且つ25nm以下、20nm以下、及び15nm以下であることが好ましい。
【0073】
さらに、気孔部は、バルク部の内部を貫通するチューブ形状を有し、気孔はチューブによって近似され、チューブの内径を円で近似したときの平均内径は、5nm以上100nm以下である。気孔の平均内径は、5nm以上、7nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、且つ100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下であることが好ましい。ここで、チューブの内径は、大気圧における空気を構成する元素分子の平均自由行程(MFP)よりも小さい。
【0074】
さらに、エアロゲルの気孔率、すなわち、エアロゲルの総体積に対する気孔の体積の割合は、70%以上である。気孔率の一例として、それは、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上であってもよい。
【0075】
他の実施形態では、エアロゲルの他の物理特性を満たす限り、本発明のエアロゲルは、バルク部分及び気孔部以外の構造を含むこともできる。一例として、上記の気孔とは異なる空隙が含まれてもよい。加えて、さらに別の例として、それは、水以外に、有機溶剤、界面活性剤、触媒、及びそれらの分解物を含んでもよい。
【0076】
図1A及び
図1Bの実施形態では、カバー要素300は、製造工程の間にエアロゲル材料から固化される、好ましくは固体状態、より好ましくはエアロゲルシート及び/又はエアロゲルフィルムのエアロゲル層を含む。エアロゲル層により、カバー要素300は、加熱ユニット110からの損失熱によるエアロゾル発生装置100の外面の昇温を低減して、ユーザ操作部320を使用するためにカバー要素300に触れている間にユーザが熱によって負傷することを防止することができる。
【0077】
カバー要素300は、実質的に平面である中央部と、主ハウジング200とカバー要素300との間に空間を配置し又は囲んでカバー要素300を主ハウジング200に隣接させるように湾曲した、又は曲がった1つ又は複数の周辺又は外周部とを有することができ、その空間内に1つ又は複数の操作入力要素230を配置することができる。代替として、カバー要素300は、中央部が1つ又は複数の周辺又は外周部の曲率よりも小さい曲率を有する、連続的に湾曲した形状を有してもよい。本発明のエアロゲル層は、エアロゲルフィルム及びシートが有するある特定レベルの曲げ強度のおかげで、柔軟で、上記の形状を形成しやすい。本発明のエアロゲルフィルム及びシートの曲げ強度は、少なくとも0.025MPa、好ましくは少なくとも0.05MPa、より好ましくは少なくとも0.1MPa、最も好ましくは少なくとも0.15MPa、且つ最大0.45MPa、より好ましくは最大0.4MPa、さらにより好ましくは最大0.3MPa、及び最も好ましくは最大0.25MPaである。エアロゲル層の密度は、0.10~0.15g/cm3、好ましくは0.11~0.12g/cm3である。この配置、特に密度により、図示のように、エアロゲル材料を安定した固体状態にすることができ、大量生産することができる。エアロゲルの密度が減少するにつれて、熱伝導率は減少し、断熱特性はそれに応じて向上する。0.15g/cm3以下の密度で、その熱伝導率は、0.01W/m・K以下と小さくすることができる。この密度のエアロゲル材料は、製造工程の間に、水銀圧入法としても知られる水銀ポロシメトリ法によって得られる。エアロゲル層は、8~10MPa、好ましくは8.5~9.5MPa、より好ましくは9.1~9.5MPa、最も好ましくは9.2~9.25MPaの圧縮強度、及び0.5~1MPa、好ましくは0.6~0.9MPa、より好ましくは0.7~0.75MPaの圧縮弾性率を有する。エアロゲル層とカバー要素300の湾曲形状との組み合わせにより、熱が複数の方向に放散されるので、断熱及び放熱性能が大幅に向上する。この構造により、エアロゲル層311は、加熱ユニットからの熱をより効果的に放散し、少なくともカバー要素の表面温度は、一貫性があるように維持される。本発明の一実施形態では、エアロゲル層は、加熱ユニットに隣接するハウジングの少なくとも一部分において、加熱ユニットに隣接していないハウジングの他の部分よりも厚い。より具体的には、中央部は、周辺又は外周部よりも厚いエアロゲル層を有する。この配置は、装置ハウジングにそのカバー要素を通した一定の触覚又は表面温度を持たせることができ、使用するエアロゲル材料を少なくすることができる。
【0078】
エアロゲル層はまた、加熱ユニット110に適用される断熱材の厚さを低減して、エアロゾル発生装置100の全体的なサイズを低減し、内部空間を増加させる。エアロゲルシート又はフィルム311は、PEEK及び銅などの従来の断熱材料の大部分の厚さの半分、さらにはわずか3分の1しかないが、ほぼ同じ性能をもたらすことができる。より具体的には、本発明で使用されるエアロゲル層は、少なくとも0.05mm、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.3mm、最も好ましくは少なくとも0.5mm、且つ最大1.2mm、より好ましくは最大1.0mm、さらにより好ましくは最大0.8mm、及び最も好ましくは最大0.6mmの平均厚さを有する。その熱伝導率は、少なくとも0.010W/m・K、好ましくは少なくとも0.011W/m・K、より好ましくは少なくとも0.012W/m・K、最も好ましくは少なくとも0.013W/m・K、且つ最大0.017W/m・K、より好ましくは最大0.016W/m・K、さらにより好ましくは最大0.015W/m・K、及び最も好ましくは最大0.014W/m・Kである。エアロゲル層の平均孔径は、20~100nm、好ましくは30~90nm、より好ましくは40~80nm、最も好ましくは50~70nmである。その誘電率は、1.05~1.15、好ましくは1.08~1.12、より好ましくは1.09~1.11である。耐熱温度は、窒素雰囲気中で最高550℃まで、好ましくは600℃、より好ましくは最高615℃まで、最も好ましくは最高630℃まで、及び空気雰囲気中で最高350℃まで、好ましくは400℃、より好ましくは最高450℃まで、最も好ましくは最高467℃までである。熱膨張係数は、62×10-6~66×10-6/K、好ましくは63×10-6~65×10-6/K、より好ましくは63.5×10-6~64.5×10-6/Kである。
【0079】
エアロゲル層の別の利益は、それが超撥水性であり得ることである。液体などのエアロゾル発生基材を消費している間に、気化した液体は、エアロゾル発生装置100に流れ込む場合がある。他の断熱材料の場合、それが水分を吸収した時点で断熱に関する性能が低下する。しかしながら、本発明のエアロゲル層では、その超撥水特性のおかげで断熱に関する性能が維持される。より具体的には、本発明のエアロゲル層は、少なくとも125°、好ましくは少なくとも130°、より好ましくは少なくとも135°、最も好ましくは少なくとも140°、且つ最大160°、より好ましくは最大155°、さらにより好ましくは最大150°、及び最も好ましくは最大145°の超撥水性の水接触角を有する。
【0080】
図2Aに示すように、例えば、ユーザ操作部320の位置及び/若しくは機能、並びに/又はエアロゾル発生装置100に関する他の情報を示す印刷パターンを有する装飾層(カラー層又はインク層)310がエアロゲル層311の下に設けられ、構成される。換言すれば、装飾層310は、エアロゲル層311よりも、装置100の内部の位置に設けられ、構成される。装飾層は、不透明プラスチックの層である。エアロゲルシート及びフィルム311の透明性のおかげで、エアロゲル粉末と異なり、エアロゲルシート及びフィルムは、カバー要素300の下に構成され得る装飾層及びLED表示からのパターン及び色の視認性を遮断しない。そのため、エアロゲル層311は最外層である。本発明のエアロゲル層311の可視光線透過率は、800nmで少なくとも92%、好ましくは800nmで少なくとも93%、より好ましくは800nmで少なくとも94%、最も好ましくは800nmで少なくとも95%、且つ800nmで最大99%、より好ましくは800nmで最大98%、さらにより好ましくは800nmで最大97%、及び最も好ましくは800nmで最大96%である。その屈折率は、1.02~1.08、好ましくは1.03~1.07、より好ましくは1.04~1.06である。
【0081】
図2Bに示すように、エアロゲル層311及び装飾層310のかき傷及び紫外線光線に起因する装飾層310の退色などの損傷を防止するために、透明プラスチック層312、好ましくはプラスチック板がその上に構成される。透明プラスチック層312は、装置ハウジングの最外層として構成され、エアロゲル層311は、透明プラスチック層312と装飾層310との間に構成される。図には示していないが、透明プラスチック層312の下方に他のいくつかの層を配置することができ、それらの層を以下に紹介する。
【0082】
図2Aと
図2Bの両方に示すように、エアロゲル層311は、少なくとも1つ、好ましくは2つのプラスチック層に密着する、すなわち、粘着又は接着するような方法で配置される。この配置により、装置内部で結露が起こらなくなる。換言すれば、エアロゲル層311の一方の表面は、プラスチックの層310、312の少なくとも1つの表面に完全に付着しており、好ましくはプラスチックの層310、312のそれぞれの1つの表面に完全に付着している。
【0083】
カバー要素300を製造するために、本発明のエアロゲル材料は、本発明のエアロゲルシート又はフィルム311がプラスチック層の少なくとも1つに密着するような方法で、カバー要素200に適用される。好ましくは、エアロゲルフィルム又はシート311は、カバー要素200に適用される。エアロゲルフィルム及びシートは、エアロゲル粉末と異なり、その柔軟性のためすでに形状を成しているので、カバー要素200の製造は、より容易であり、厳しく複雑な製造条件及び環境を要求しない。
【0084】
より具体的には、本発明のエアロゲルシート又はフィルム311は、接着剤の層を装飾層310上に塗布し、次いでエアロゾルシート又はフィルム311を装飾層310上の接着材の層上に付着させることによって、装飾層310上に接着することができる。換言すれば、エアロゲル層310は外層として構成され、装飾層はエアロゲル層310の下に設定される。
【0085】
接着剤層は、好ましくは成形プラスチックを含む装飾層310をエアロゲル層311と組み合わせる効果を有する。成形プラスチックは、IDF(インデコレーションフィルム)着色プラスチック、OMR(外側転写)着色プラスチック、又はNCVM(非導電性真空メタライゼーション)着色プラスチックなどとすることができる。接着剤層は、好ましくは、例えば、アクリル、硝化繊維、ポリアミンフォーマット、塩素化ゴム、塩化ビニル-コ-ビニル-酢酸エステルコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリカーボネート、オレフィン、及びアクリロニトリル-ブチレン-スチレンモノマー樹脂からなる群から選択される1つから作られる。接着剤層は、一般に、例えば、凹版印刷、スクリーン印刷、及びオフセット印刷、又はスプレー、ディップコーティング法、又は逆順コーティング法を介して設けられる。装飾層310は、プラスチックベース層及び印刷層を含み得る。上記のように、装飾層310は、パターン及び色を表示するために使用され、装飾層310は、プラスチックベース層を印刷層である印刷インクでコーティングすることによって形成される。
【0086】
カバー要素Tの厚さは、少なくとも0.75mm、より好ましくは1.0mm、さらにより好ましくは1.3mm、最も好ましくは1.7mm、且つ最大2.8mm、好ましくは最大2.4mm、最も好ましくは最大2.1mmである。プラスチックベース層の厚さは、少なくとも0.6mm、より好ましくは少なくとも0.7mm、さらにより好ましくは少なくとも0.8mm、最も好ましくは少なくとも0.9mm、且つ最大1.2mm、好ましくは最大1.1mm、最も好ましくは最大1.0mmである。印刷層の厚さは、少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.15mm、さらにより好ましくは少なくとも0.2mm、最も好ましくは少なくとも0.25mm、且つ最大0.4mm、好ましくは最大0.35mm、最も好ましくは最大0.3mmである。
【0087】
他の実施形態では、エアロゲルシート又はフィルム311は、インモールド装飾又はアウトモールド装飾によってプラスチック層310に密着させることができる。インモールド装飾及びアウトモールド装飾の方法、すなわち、OMR(アウトモールドリリース)、IMR(インモールドリリース)、OMF(アウトモールドフィルム)及びIMF(インモールドフィルム)は、当業者に知られている。方法は、例えば、JP316025号明細書、JP322046号明細書、JP345288号明細書、台湾特許第I230002号公報、米国特許第7070849号明細書、欧州特許第1327510号明細書から知られている。一般に、フィルム(装飾フィルム又はラベル付けフィルム)は、成形時にプラスチック物体に貼り付けられる。成形時にフィルムのベースが除去される場合、それは「リリース」されるので、OMR又はIMRである。ベースがモールドに残る場合、それはOMF又はIMFである。
【0088】
インモールド装飾又はアウトモールド装飾によってカバー要素を生産するために、第1にフィルムを生産し、フィルムは、ベース、第1の接着剤層(又はバインダ)、アルミニウムシート(銀)層(反射防止層又は金属フィルム層として)、第2の接着剤層(又はバインダ)、本発明のエアロゲル層、第2の接着剤層(又はバインダ)、印刷層又はカラーシート(赤)、第3の接着剤層、及びトップコーティング層の順序で複数の層を含み得る。第2に、フィルムを金型のキャビティに設置して、ベース面をキャビティの表面に接触させる。第3に、金型内に樹脂を注入して、フィルムと樹脂から構成される基板(プラスチック層)との一体化体を得る。当業者は、より薄い製品を実現するために、フィルムから、アルミニウムシート層などの上記の層のいずれか1つを必要に応じて取り出すことになる。
【0089】
この場合、カバー要素Tの厚さは、少なくとも0.75mm、より好ましくは1.0mm、さらにより好ましくは1.3mm、最も好ましくは1.7mm、且つ最大2.8mm、好ましくは最大2.4mm、最も好ましくは最大2.1mmである。プラスチックベース層の厚さは、少なくとも0.6mm、より好ましくは少なくとも0.7mm、さらにより好ましくは少なくとも0.8mm、最も好ましくは少なくとも0.9mm、且つ最大1.2mm、好ましくは最大1.1mm、最も好ましくは最大1.0mmである。印刷層又はエアロゲル層を除くフィルムの残りの部分の厚さは、少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.15mm、さらにより好ましくは少なくとも0.2mm、最も好ましくは少なくとも0.25mm、且つ最大0.4mm、好ましくは最大0.35mm、最も好ましくは最大0.3mmである。
【0090】
外部からの圧力の懸念がある場合、樹脂から構成される別の透明基板(別のプラスチック層)をさらに付着させるか、又は一体化体上にインモールド装飾若しくはアウトモールド装飾を施すことができ、したがって、カバー要素の最外層又は表面としての透明基板又はプラスチックが、エアロゲル及び着色プラスチックを保護することができる。
【0091】
この場合、カバー要素Tの厚さは、少なくとも1.35mm、より好ましくは1.0mm、さらにより好ましくは1.3mm、最も好ましくは1.7mm、且つ最大4.0mm、好ましくは最大3.0mm、最も好ましくは最大2.1mmである。印刷層又はエアロゲル層を除くフィルムの残りの部分の厚さは、少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.15mm、さらにより好ましくは少なくとも0.2mm、最も好ましくは少なくとも0.25mm、且つ最大0.4mm、好ましくは最大0.35mm、最も好ましくは最大0.3mmである。
【0092】
さらに別の実施形態では、エアロゲル層311は、
図2A及び
図2Bに示すように、エアロゲル層311を1つのプラスチック層、好ましくはエアロゲル層311の異なる側の2つのプラスチック層に密着させることができるような方法で、コネクタ又はねじなどの締結具を用いた雌雄嵌合によって、内部に固定するか、又は装飾プラスチック層310と透明プラスチック層312との間に挟むか若しくは設置することができる。
【0093】
この場合、カバー要素Tの厚さは、少なくとも0.75mm、より好ましくは1.0mm、さらにより好ましくは1.3mm、最も好ましくは1.7mm、且つ最大2.8mm、好ましくは最大2.4mm、最も好ましくは最大2.1mmである。
【0094】
代替実施形態では、エアロゲル層311は、装飾層310の下又は稀に構成され得る。
【0095】
前述の実施形態では、カバー要素200のみが、その表面エリア全体にわたって配置されたエアロゲル材料又はエアロゲル層310で構成されるが、エアロゲル材料又はエアロゲル層310は、装置100の外側ハウジング全体、又は装置100の任意の他の外装部分において構成することもでき、すなわち、装置100のハウジングの完全な表面エリア全体にわたって配置することができる。
【国際調査報告】