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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】降水吸収及び水分蒸発のための装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231031BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20231031BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20231031BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20231031BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231031BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
F24F5/00 Z
E03F1/00 Z
E03F3/04 Z
C02F1/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523185
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021066687
(87)【国際公開番号】W WO2022078637
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020127367.3
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508091085
【氏名又は名称】ウニベルジテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンバルト、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ、ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ソベク、ヴェルナー
【テーマコード(参考)】
2D063
2E110
3L054
【Fターム(参考)】
2D063AA00
2D063BA00
2E110AA03
2E110AA12
2E110AA15
2E110AA51
2E110AA55
2E110AA60
2E110AB04
2E110AB12
2E110AB22
2E110AB46
2E110BA03
2E110BA05
2E110BA12
2E110BC02
2E110CA03
2E110CA04
2E110CA08
2E110CB03
2E110CC06
2E110EA01
2E110GA15Z
2E110GA23W
2E110GA23X
2E110GA23Z
2E110GA32W
2E110GA32X
2E110GA33Y
2E110GA36Z
2E110GA42Z
2E110GB01Y
2E110GB43W
2E110GB43X
2E110GB43Z
2E110GB46W
2E110GB46X
2E110GB46Z
2E110GB53W
2E110GB53X
2E110GB53Z
3L054BF20
(57)【要約】
本発明は、降雨事象、特に豪雨事象からの降水を吸収し、蒸発により排水するための装置(10)に関する。雨水滴から水を吸収し、及び/又は蒸発によって水を排出するための少なくとも1つのテキスタイル要素(12)が設けられ、テキスタイル要素(12)は、第1の、透水層(14)と第2の、導水層(16)とを備えた3Dテキスタイル構造(13)として設計されあるいはこれを具現化し、これらの層(14、16)は導水性接続糸(18)で相互に接続されており、テキスタイル要素(12)は、好ましくは、排水管路(20)を介して集水装置(24)に、及び/又は給水管路(22)を介して給水装置(26、67)に流体接続される。建造物の内部(内側)Iを外部空間(外側)Oから分離する、斯かる装置(10)を含むファサードシステム(100)が規定され、前記ファサードシステム(100)は、任意選択で、1以上の層(104、106、108、110)及び/又はモジュールからなり、少なくとも1つの流体流通層(104、108)、断熱層(106)、内層(110)を備えていてもいなくてもよく、ファサードシステム(100)及び/又は保持装置及び/又は装置(10)のフレームプロファイル(34、34′)のこれらの構成要素は、好ましくはモジュラープロファイルシステム(102、102′)に取り付けられ若しくは取り付け可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雨事象、特に豪雨事象からの降水を吸収し、蒸発により排水するための装置(10)であって、雨水滴から水を吸収し、及び/又は蒸発によって水を排出するための少なくとも1つのテキスタイル要素(12)を備え、前記テキスタイル要素(12)は、第1の、透水層(14)と第2の、導水層(16)とを備えた3Dテキスタイル構造(13)として設計され、第1の、透水層(14)と第2の、導水層(16))は、導水性接続糸(18)で相互に接続されており、前記テキスタイル要素(12)は、好ましくは排水管路(20)及び/又は給水管路(22)に流体的に接続される、装置(10)。
【請求項2】
前記テキスタイル要素(12)及び/又は前記排水管路(20)に流体接続された集水装置(24)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記テキスタイル要素(12)及び/又は前記給水管路(22)に流体接続された給水装置(26、67)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記装置(10)及び/又は前記テキスタイル要素(12)は親水性及び/又は疎水性改良を含むことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記テキスタイル要素(12)すなわち前記3Dテキスタイル構造(13)は、好ましくは、合成繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、金属繊維、及び/又は他の適切な材料から形成され、モノフィラメント又はマルチフィラメントとして具現化されることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
第1の層(14)は、水誘引性及び/又は親水性のラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化を有し、及び/又は、前記第1の層(14)に水誘引性の層が塗布されており、前記水誘引性の層及び/又は前記第1の層(14)は、前記第1の層(14)と第2の層(16)との間に接続糸(18)によって形成されるスペーシング構造(19)よりも細かい有孔設計であることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項7】
第2の層(16)は、導水性及び/又は疎水性のラミネーション、コーティング、仕上げ及び/又はフィラメント形状の最適化を有し、及び/又は、導水層が前記第2の層(16)に塗布され、前記導水層及び/又は前記第2の層(16)が水密又は有孔であることを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記装置(10)及び/又は前記テキスタイル要素(12)が平面的な、湾曲した、折り畳まれた、及び/又は適応性を有する形状であることを特徴とする、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項9】
第1の層(14)及び/又は第2の層(16)は、前記第1の層(14)又は前記第2の層(16)の平面に平行な方向に沿って1以上のアクチュエータによって、前記第1の層(14)及び前記第2の層(16)を相互に相対変位可能となるように作動され得ることを特徴とする、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記装置(10)及び/又は前記テキスタイル要素(12)は、前記装置(10)及び/又は前記テキスタイル要素(12)をいくつかの折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション(30、30′、30″、30''')に分割する折り畳み構造(28、28′、28″)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記折り畳み構造(28、28′、28″)は機械的下部構造(57)を有し、及び/又は、例えばテキスタイル基材布地への(3D)印刷等のアディティブ及び/又はサブトラクティブ・マニュファクチャリング法によって前記テキスタイル要素(12)に導入され、及び/又は前記折り畳み構造(28、28′、28″)はテキスタイル接続手段によって具現化されることを特徴とする請求項10に記載の装置(10)。
【請求項12】
アクチュエータ(32、32′、32″)が設けられ、前記アクチュエータ(32、32′、32″)によって折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション(30、30′、30″、30''')が動作され得ることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置(10)。
【請求項13】
センサが提供され、前記センサによって気候及び/又は環境データが例えば制御ユニットのために記録されることを特徴とする、請求項1から請求項12の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項14】
アクチュエータ(32、32′、32″)を操作及び/又は調整するための制御ユニットが設けられ、前記制御ユニットは、前記装置(10)及び/又は前記テキスタイル要素(12)及び/又は前記テキスタイル要素(12)のセクション(30、30′、30″、30''')が降水及び/又は太陽放射に向けられるべく構成されることを特徴とする請求項12又は13に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記装置(10)の構成要素が取り付けられ若しくは取り付け可能な保持装置が設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項14の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項16】
集水装置(24)が、降水を貯留するためのフレームプロファイル(34、34′)及び/又は貯水庫(33)を含むことを特徴とする請求項2乃至15の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項17】
降水を濾過するためのフィルタ(36)が設けられ、前記フィルタ(36)は前記テキスタイル要素(12)に組み込まれ、及び/又は集水装置(24)の内又は上、及び/又は建造物内に配置されることを特徴とする、請求項1から請求項16の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項18】
ポンプ(38)及び/又は水温制御装置(40)が設けられ、ポンプ(38)及び/又は水温制御装置(40)が給水装置(26、67)及び/又は集水装置(24)に流体接続されることを特徴とする、請求項1から請求項17の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項19】
給水装置(26、67)及び/又は集水装置(24)が熱交換器(42、120)に接続されていることを特徴とする請求項2乃至18の何れか一項に記載の装置(10)。
【請求項20】
建造物又は土木構造物(50、60、70)の内、上又は外における建築要素としての、請求項1から請求項19の何れか一項に記載の装置(10)の使用。
【請求項21】
新築の建造物のファサード上若しくはファサード内における、及び/又は既存の建造物(80)における従来の既存のファサード(82)上の付加的要素として、請求項1から請求項19の何れか一項に記載の少なくとも1つの装置(10)の使用。
【請求項22】
建造物内部(内側)Iを外部空間(外側)Oから分離するファサードシステム(100)であって、請求項1乃至19の何れか一項に記載の装置(10)を含み、任意選択で1以上の層(104、106、108、110)及び/又はモジュールからなる、ファサードシステム(100)。
【請求項23】
前記装置(10)の前記テキスタイル要素(12)の第2テキスタイル層(16)が位置する側に、前記ファサードシステム(100)が少なくとも1つの流体流通層(104、108)及び/又は断熱層(106)及び/又は内層(110)を有することを特徴とする請求項22に記載のファサードシステム(100)。
【請求項24】
2つの流体流通層(104、108)が設けられ、第1の流体流通層(104)は断熱層(106)の一方の側に配置され、第2の流体流通層(108)は前記絶縁層(106)の他方の側に配置されることを特徴とする請求項22又は23に記載のファサードシステム(100)。
【請求項25】
2つの流体流通層(104、108)のうちの一方又は両方は集熱器として構成され、意図され、及び/又は建造物の内壁面の温度制御、空気湿度の調整、遮音特性の調整、及び/又は能動的防火対策のために使用されることを特徴とする請求項22乃至24の何れか一項に記載のファサードシステム(100)。
【請求項26】
請求項1乃至19の何れか一項に記載のさらなる装置(10′)が設けられ、前記さらなる装置(10′)は前記ファサードシステム(100)の内層を形成し、前記さらなる装置(10′)のテキスタイル要素(12′)の第1の層(14′)は、前記建造物内部(内側)Iに面していることを特徴とする請求項22乃至25の何れか一項に記載のファサードシステム(100)。
【請求項27】
前記ファサードシステム(100)は、好ましくはモジュラープロファイルシステム(102、102′)を含み、前記モジュラープロファイルシステム(102、102′)には、前記ファサードシステム(100)の構成要素、及び/又は請求項15に記載の装置(10)の保持装置、及び/又は、請求項16に記載の装置(10)のフレームプロファイル(34、34′)が取り付けられ、又は取り付け可能であることを特徴とする請求項22乃至26の何れか一項に記載のファサードシステム(100)。
【請求項28】
降水が建造物の内、上又は外での使用のために供給されることを特徴とする、請求項1乃至19の何れか一項に記載の装置(10)及び/又は請求項21に記載のファサード及び/又は請求項22乃至27の何れか一項に記載のファサードシステム(100)を建造物上で動作させるための方法。
【請求項29】
水及び/又は降水が、前記テキスタイル要素(12)を介して、特に蒸発によって排出されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記降水が原水の形態で建造物の内、上又は外の消費者に供給され、及び/又は前記降水が飲料水に加工されることを特徴とする請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記降水が、温度及び空気湿度の調整の観点から建造物の内部コンディショニング、遮音特性の調整、及び/又は能動的防火対策のために使用されることを特徴とする請求項28乃至30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
特に過剰な降水量の場合、降水は公共配水網に排出され、及び/又は近隣の建造物及び/又は土木構造物に送水されることを特徴とする請求項28乃至31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
水を吸収及び排出するための装置、特に請求項1乃至19の何れか一項に記載の装置(10)及び/又は請求項21に記載のファサード及び/又は請求項22乃至27の何れか一項に記載のファサードシステム(100)を制御する及び/又は調整する方法であって、以下の各ステップを含む、
定義された期間の気象サービスから予報気象データを検索し、
前記定義された期間の建造物又は土木構造物の内、上、又は外における飲料水、原水、及び/又は中水の消費量を、例えば消費分析によって推定し、
飲料水、原水、及び/又は中水の前記推定された消費量を、前記予報気象データからの予想される降水量と比較する、方法。
【請求項34】
前記ファサード、前記ファサードに近い空間、及び/又は都市空間の蒸発冷却に必要な水の量を決定することを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
建造物又は土木構造物の内、上又は外で必要とされる飲料水、原水及び/又は中水の量を決定することを特徴とする請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
内部コンディショニングに必要な水量を決定することを特徴とする請求項33乃至35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
工場特有の能動的防火対策の用途に必要な水の量を決定することを特徴とする請求項33乃至36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
余剰水を近隣の建造物又は土木構造物に送水すること、及び/又は余剰水を公共配水網に供給することを特徴とする請求項33乃至37の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨事象からの降水吸収、及び蒸発による排水のための装置に関する。さらに、本発明は、建造物又は土木構造物の内、上又は外における建築要素としての斯かる装置の使用に関し、また、新規若しくは既存の建造物のファサード上又はファサード内における少なくとも1つの斯かる装置の使用に関する。さらに、本発明は、建造物内部を外部空間から分離するための、斯かる装置が組み込まれた(多層)ファサードシステムに関する。最後に、本発明は、斯かる装置又は(多層)ファサードシステムを建造物の内、上又は外で操作する方法に関し、また、(降)水を吸収及び排出するための装置を制御及び/又は調整する方法に関する。上記方法は、任意選択でソフトウェアを含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
建造物内及び上において、降水は通常、室内を外部から分離している建造物のファサードや屋根に当たる降水が例えば側溝に排出され、下水システムに送られるように排出される。このため少なくとも通常の気象条件下では降水の排出は可能である。
【0003】
世界人口の増加と都市化の進行に加え、猛暑や豪雨等の異常気象条件による都市構造への気候の影響の増大を考慮すると、気候関連リスク、特に洪水や熱ストレスのリスクを軽減するための新たな可能性、方法、及びシステムが求められている。
【0004】
進行中の都市化と再高密度化は、閉ざされた地域の割合を高め、都市部の洪水のリスクを高める。都市空間の密集化に伴い、既存の下水インフラに接続される、排出効果を備えた密閉エリアが増えている。このため、大雨事象の場合に従来の下水システムの水圧容量をしばしば超過し、重大な物的損害や人体への損害を伴う洪水のリスクにつながっている。その結果は、道路空間の選択的な横溢から、通り全体の深刻な洪水、インフラや建造物の損傷まで多岐にわたる。既存の下水道システムの寸法変更は、可能であったとしても、莫大な作業量とコストを要する。
【0005】
さらに、都市部の舗装路面や建造物の表面で太陽エネルギーを吸収すると気温が大きく上昇する。地球温暖化により将来的にも同様な気温上昇があり得る。熱ストレスとは別に、特に高齢者に健康被害をもたらす、いわゆる「都市ヒートアイランド現象」が生じる。
【0006】
2つの極端事象(洪水と熱ストレス)は、気候変動によってさらに増強される。予報によれば、今後、規定の降雨限度をはるかに超える強度の大雨事象の増加と、一貫した猛暑日の増加を伴う大幅な気温上昇が予想される。したがって、特に密集した都市部において、雨水の分散型浸透のための保持エリアが緊急に必要とされている。
【0007】
下水システムへの影響を低減し、近隣気候を改善するため、いわゆる「スポンジシティ」コンセプトが国際的に推進されている。地域、若しくは溝や堀のシステム、屋上緑化等の特別なリザーバでの降水の収集、保持、蒸発を従来よりも分散化して行うものである。DIN(ドイツ工業規格)1986-10に基づき、公共下水道システムへの過負荷を回避するため、地方自治体は最大雨水排出を制限し、あるいは現場において保持オプションを規定できる。しかし、溝や堀のシステム等の分散型浸透対策用オープンキャビティは、一般に都市部の密集した居住地や都心部の構造では提供し得ない広大なスペースを必要とする。この場合、ファサード等の建造物表面は、都市の雨水や温度管理の改善において特に重要である。
【0008】
従来技術から、雨どいを通じた雨水収集のための従来の方法及びファサード領域における同様に機能する収集システムも知られている。これらのシステムは、「硬い表面」での雨水滴の跳ね返りのために、高い材料要件と低い水収率で効率が悪い。
【0009】
「グリーンファサードシステム」も最先端の技術として知られているが、水と栄養素の供給を常に必要としメンテナンス強度が高いことから、批判的に捉えられている。ファサードに当たる降水は、通常、グリーンファサードシステムの機能を維持するのに十分でなく、垂直方向の用途での水の貯蔵能力は、水平方向の屋根領域よりも大幅に低い。さらに、霜や露の変化や機械的ストレスの影響を受けやすいため、植え替えが必要になることが多いが、植え替えは特に高層ビルでは実現が難しく、屋根エリアや低層建造物のファサードでの使用も議論されている。
【0010】
モノフィラメント又はマルチフィラメントスペーサ糸の中間スペーサ構造を介して相互に接続されている、好ましくは編まれた布の2つの外層によって特徴付けられる、3Dテキスタイルとしても知られるスペーサファブリックは、室内装飾にのみ適用するための従来の最新技術において周知である(DE000009016062U1、DE000004239068A1、DE000004317883A1等)。
【0011】
衣料分野に関して蒸発冷却効果を有するテキスタイルは、先行技術、例えばDE102004002287A1、EP000001555489A2、DE102011014383A1、EP000002380534A1、EP000002560591B1、WO002011131718A1等の発明より知られる。一方、蒸発冷却機能を備えたテキスタイルベースの建造物構成要素は知られていない。
【0012】
DE102008042069A1は、3Dテキスタイル構造を介した水の収集に着目した唯一の文献であり、霧から水を得る装置を開示する。この装置はエアロゾルに含まれる液体粒子を分離するテキスタイル分離要素を備え、該分離要素は3Dテキスタイル構造として形成されている。これにより、例えば乾燥した地域において、霧から少量の飲料水を得ることができる。上記説明した発明の機能及び用途は、降水吸収及び水分蒸発に関して、上記本発明の装置とは明確に区別される。
【0013】
しかし、最先端技術は、上述した地球規模の気候課題を考慮して緊急に必要とされている、例えば降水の保持等の収集のため、及び例えばテキスタイル建築要素による、周囲の都市領域の蒸発冷却による排水のための、多機能で相互に有益な発明が存在しないことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、特に都市部において、都市の熱及び洪水のリスク、並びにこれらの事象によって引き起こされる損害及び人体への損害のリスクを低減することにある。建造物表面や他の土木構造物に適用される都市の雨水や温度管理の改善に効果的かつ経済的に貢献する分散型雨水貯留・水分蒸発のコンセプトが急務となっている。さらに、環境保護的及び経済的目的の観点から、建造物の内、上又は外での賢明な水消費のために降水を使用することが望ましい。例えば、建造物内又はその周囲のユーザ、及び/又は室内の部屋の空調やその他の建造物特有の用途のために、水とエネルギーの消費を削減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、請求項1に記載の装置により上記目的を達するものである。
【0016】
本発明は、降雨事象から、特に、例えば風によって引き起こされる水平速度成分を伴う豪雨事象からの降水を吸収し、蒸発により排水するための装置に関する。
【0017】
この装置は、(例えば水平速度成分を有する)雨水滴から水を吸収する(集水器要素として機能するテキスタイル要素)、及び/又は蒸発によって(公共配水網によって供給される)水及び/又は(上記装置によって吸収される)降水を排水する(蒸発器要素として機能するテキスタイル要素)の少なくとも1つのテキスタイル要素によって特徴付けられる。テキスタイル要素は、第1の、透水層(外層)と第2の、導水層(内層)とを備えた3Dテキスタイル構造として設計されあるいはこれを具現化する。第1の層と第2の層は、導水性接続糸で相互に接続されている。テキスタイル要素は、好ましくは排水管路及び/又は給水管路に流体的に接続されている。
【0018】
提案された装置は、吸収装置としても蒸発器装置としても作用することができ、吸収器及び蒸発器は、単一の同じ多機能装置(1つのハイブリッド統合システム)である。風によって引き起こされる水平速度成分を伴い、該成分が垂直落下方向から雨滴を偏向させる降雨又は豪雨事象の場合において、降水は吸収され、貯蔵され、及び/又は必要に応じて時間遅延を伴って蒸発により排出され、あるいは建造物の内、上又は外で使用できる。吸収する際、降水は、接続糸(スペーシング構造)に沿って、第1の透水層から収集用の第2の導水層へ導かれる。蒸発及び外部の蒸発冷却のために排水する際、水は接続糸(スペーシング構造)に沿って第2の導水層から第1の透水層に導かれる。
【0019】
降水の吸収、貯蔵及び/又は対象を絞った時間遅延を伴う特に蒸発による排水は、建造物の内、上又は外、並びに地区及び都市レベルで大きな経済的及び環境保護的利点を提供する。
【0020】
都市地域における洪水及び熱ストレスのリスクを減らすことが可能である。それは降水が吸収され、例えば時間遅延を伴って蒸発により環境に排出されるか、又は他の目的に使用されるべく貯蔵できるためである。降水を吸収・貯留することで、装置は雨水保持面として機能する。これにより、異常気象時に下水道に過負荷がかかるリスクを大幅に減らすために、大雨の排出を遅らせることができる。蒸発により環境に排水することによって、環境は冷却されることができ、熱負荷の影響を低減できる。
【0021】
建造物内部の水需要の削減も達成できる。降水を集め、トイレの洗浄、洗濯機の使用、及び/又は植物の灌漑等、建造物内外で原水として利用できるようにすることで、水の消費量を大幅に削減できる。
【0022】
さらに、装置が高層ビル内又は上に設置されている場合、装置によって建造物外表面で原水を集水する可能性は、ウォーターポンプのエネルギー消費の削減につながる。それ以外の場合、水は公共配水網によって供給され、建造物の対応する階層の高さにポンプで送水される。特に多層階若しくは高層の建造物(高層ビル等)では、建造物のファサードで集水することで、建造物の高さが指数関数的に増加するにつれ、材料とポンプのエネルギー消費量が大幅に削減される。建造物の内、上又は外における雨水の有利な使用に関して、装置はしたがって大幅な経済的節約を達成できる。
【0023】
最後に、装置によって集められた雨水は浄化されて飲料水となり、及び/又は室内の快適性の最適化(温度及び/又は湿度の調節、音響及び音の最適化)及び/又は能動的防火対策に使用され得る。
【0024】
本発明の文脈において、蒸発とは、冷却エネルギー放出による、液体凝集状態から蒸気凝集状態への水の相転移をいう。したがって、吸収は液体の収集と移動として理解される。
【0025】
3Dテキスタイル構造、例えば3Dテキスタイル又はスペーサファブリックとして従来の最新技術からも知られているスペーシング構造は、両面材料を含み、その表面は、一方の表面を他方の表面に接続するモノフィラメント又はマルチフィラメントの接続糸を接続することによって一定の距離に保たれる。
【0026】
テキスタイル要素及び/又は3Dテキスタイル構造に関して、「テキスタイル(textile)」は、特定の材料に対する材料技術的制限を意味するのではなく、巨視的に認識可能な技術的構造のみを指す。
【0027】
本発明の範囲内において、ファサード又はファサード要素とは、建造物の境界、例えば建造物を横方向すなわち建造物の(側)壁上で画定し、よって建造物の内部(内側)を外部空間(外側)から分離する、建造物の外殻構造又はその要素であると理解される。
【0028】
区別されるべきは、例えばコンクリート、レンガ、及び/又は木造建築等の、支持構造の一部である中実(ファサード)建築要素及び、例えば支持、耐荷重及び/又は荷重伝達要素としての鋼構造等のフレーム構造と、例えば多層テキスタイルファサードシステム等の外側の非支持カーテンウォールとである。
【0029】
熱及び音響減衰目的のための絶縁層との組み合わせの有無を問わず、少なくとも1つの流体流通層の有無を問わず、装置は、液体媒体の流動のためのキャビティ及び内部水密不透水性・不浸透性を備えた機能性テキスタイル層を含み、内部クロージャを形成する内層の有無を問わず、好ましくはモジュラープロファイルシステムで保持されて、建造物の内部に面しており、多層好ましくはハイドロアクティブ及び/又は適応性ファサードシステムとして規定される。
【0030】
本発明の範囲内で、「適応性」とは建造物、土木構造物、又はそれらの構成要素の、装置(10)、ファサード又は多層ファサードシステム(100)の自動調整を意味し、例えば一体形成されたセンサ、アクチュエータ及び制御ユニット等により操作されて各種環境条件に対しシステムを動作及び/又は調整する方法を取得する。
【0031】
この操作、制御、及び/又は規制方法は、体系的な手順、すなわち論理的な一連のステップとして記述される。例えば、環境保護的及び経済的な水の使用の望ましい目的に到達するための1又は複数の測定の実行等である。本方法は、例えばプログラム等のソフトウェアを含んでいてもよい。
【0032】
この文脈における「ハイドロアクティブ(hydroactive)」とは、表面が水分又は水を吸収し、及び/又は時間遅延を伴ってそれを放出する能力を意味する。
【0033】
雨等の天候に面する側、言い換えれば装置及び/又は多層ファサードシステムの外部空間(環境)に面する側を、以下では「外側(outside)」(「O」)とよぶ。
【0034】
建造物に面する側、言い換えれば装置及び/又は多層ファサードシステムの建造物内部に面する側を、以下では「内側(inside)」(「I」)とよぶ。
【0035】
特に装置を適用可能な土木構造物は、例えば橋梁、塔、風車等であり得る。土木構造物を補完する、この文脈での建造物は、1階建てと複数階建ての建造物(2階建て以上の家)を区別するために、独立して使用可能な屋根付き建築施設として理解される。例えば、少なくとも1つの部屋の階層が定義された地表レベルから22メートル以上、上にある高層建造物や高層ビルをいう。
【0036】
本発明の範囲内において、水は一般に、吸収、貯蔵又は処理可能な原水を含み、例えば吸収され、濾過された降水及び非汚染中水、及び例えば公共配水網によって供給される飲料水を含む。
【0037】
原水は、処理されていない、環境からの水であり、処理されていないことは人間の消費にとって安全ではない。原水は、例えば重力により液体の形態で地上に落下する雲、霧又は蒸気からの水等の降水又は雨水を含む。ここで、豪雨事象は、水平速度成分によって特徴付けられ、該成分は風によって例えば垂直落下方向の雨滴を偏向させる。原水は、植物の散水、洗浄目的、洗濯機の運転、及び/又はトイレの洗浄等にのみ使用でき、飲料水、例えば人間が消費する新鮮な飲用水や廃水、トイレの洗浄、食器洗い機等からのいわゆる汚染水とは対極にある。廃水は、汚染された降水、下水と、風呂、シャワー、洗濯機等からのふん便汚染のない非汚染中水とを区別する必要がある。非汚染中水は、原水と同様に処理され、非飲料水として再利用できる。
【0038】
テキスタイル製造の文脈における仕上げ、例えば耐紫外線又は耐火性の化学仕上げ等は、材料特性を最適化するためにテキスタイル、糸及び繊維をアップグレードする手段である。さらに、コーティングは、固体又は液体材料、例えばナノコーティングの基材布への塗布を含み、ここでラミネーションとは、少なくとも1つのテキスタイルを含む多層布と、さらなる層のテキスタイル、プラスチック又は金属フィルム、フォーム又は他の適切な材料との結合又は融合をいう。
【0039】
本発明でいうところの3D印刷は、3Dデジタルモデルから、典型的には材料の多数の薄層を連続して配置することによって、物理的なオブジェクトを作成する行為若しくは工程を意味する。サブトラクティブ・マニュファクチャリング法(除去製造)とアディティブ・マニュファクチャリング法(付加製造)は区別される。熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling:FDM)によるアディティブ3D印刷等のテキスタイル印刷方法と、又は、テキスタイル基材布上の熱可塑性ポリマー又は金属又は他の適切な材料との融合フィラメント製造(Fused Filament Fabrication:FFF)がその例である。
【0040】
有利な方法で、テキスタイル要素及び/又は排水管路に流体接続された集水装置を設けることができる。集水装置は、貯水庫、例えば貯水タンク及び/又は多層ファサードシステム内の流体流通層、として具現化され得る。したがって、テキスタイル要素に当たる降水は、集水装置に吸収、収集、及び/又は貯蔵され得る。
【0041】
集水又は水の排出(水の流出)は、リザーバ、水盤、側溝等を含むことができ、これらは例えば(下部)フレームプロファイルにおいて集水装置と一体形成され、及び/又は集水装置の貯水庫に接続され得る。集水装置としては、例えば貯水タンク、多層ファサードシステム内の流体流通層、及び/又は水を収集、保管、及び/又は例えば濾過等の処理のための他の構成要素、及び水輸送用の対応する導管が挙げられる。
【0042】
排水管路は、テキスタイル要素の下流に流体接続され得る。装置によって吸収された降水は、排水管路を介して排出され、水の消費者及び/又は集水装置、例えば貯水庫、に供給され得る。集水された水は、直接又は一定期間(貯蔵時間)後に排出され得る。
【0043】
適切な方法で給水装置を設けることができ、それはテキスタイル要素及び/又は給水管路に流体接続される。
【0044】
給水又は給水装置、(降)水の運搬は、溝、パイプ、チューブ、流入ライン、漏斗等を含むことができ、これらは(上部)フレームプロファイル及び水輸送のための対応する導管と一体形成され得る。また、給水装置は、装置の、建造物内部(内側)Iに面するテキスタイル要素の第2の層側に、正確な又は直線的な注水として、例えばウォータージェット、(有孔)パイプ又はホース、又はテキスタイル要素に接続された有孔流体流通層によって構成される。
【0045】
給水管路は、テキスタイル要素の上流に流体接続され得る。例えば公共配水網によって供給される水又は吸収された水(装置によって吸収される以前の降水)等の水は、給水管路によってテキスタイル要素に供給され得、蒸発によって環境に排出される。
【0046】
有利な方法で、テキスタイル要素すなわち3Dテキスタイル構造は、好ましくは、合成及び/又はポリマー繊維(例えば、ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル(PES/PET)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリアミド(PA)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)繊維等)、ガラス繊維、金属繊維、及び/又は他の適切な材料から形成することができ、これらの材料は、モノフィラメント若しくはマルチフィラメントとして具現化される。フィラメントは、より良い水輸送のため、特定の機能化されたフィラメントプロファイル、例えば螺旋形状によって形状を最適化されてもよい。これにより、良好な耐水性を有する耐紫外線性及び耐火性テキスタイル構造が達成され得る。
【0047】
適切な方法で、装置及び/又はテキスタイル要素は、親水性(水誘引性(water-attracting))及び/又は疎水性(導水性、撥水性)改良を含むことができる。これにより装置の機能は最大化され得る。親水性及び/又は疎水性改良は、ラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化(例えば螺旋状のフィラメント)、及び/又は微細構造又はマクロ構造を有する付加的な表面構造として具現化され得る。改良材料は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン、パラフィンワックス及び/又はナノコーティングとすることができ、ナノコーティングとしては二酸化チタン(TiO2)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)等、又はそれらの組み合わせとすることができる。親水性及び/又は疎水性改良は、好ましくは以下の特性、すなわち集水及び/又は蒸発効果、耐候性及び防汚性、カビ、真菌及び細菌に関する抗菌性、及び自浄特性を最大化するための導水性(撥水性)及び/又は水誘引性の達成又は最適化を達成可能である。
【0048】
有利な方法で、テキスタイル要素の第1の層は、水誘引性及び/又は親水性のラミネーション、コーティング、仕上げ及び/又はフィラメント形状の最適化(例えば螺旋状のフィラメント)を有してもよく、及び/又は(別個の)水誘引性の層を第1の層に(付加的に)塗布してもよい。水誘引性ラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化、及び/又は(別個の)塗布された水誘引性の層は、「内方」すなわちテキスタイル要素の内側への降水の吸収を促進する。(別個の)層及び/又は第1の層は、テキスタイル要素の第1の層と第2の層との間の接続糸によって形成されるスペーシング構造よりも細かい有孔設計とすることができる。第1の層及び/又は(別個の)層の細孔設計により、フィルタ機能が達成され得る。これにより、汚れ、動物、植物又はそれらの一部が装置の内部、例えばテキスタイル要素に入るのを防ぐ。細孔構造は、例えばより多くの水を包含するためのマルチフィラメント布又は不織布を含んでもよく、したがって、より効果的かつ経済的な蒸発冷却効果をもたらす。
【0049】
適切な方法で、テキスタイル要素の第2の層は、導水性(撥水性)及び/又は疎水性のラミネーション、コーティング、仕上げ及び/又はフィラメント形状の最適化(例えば螺旋状のフィラメント)を有することができ、及び/又は(別個の)導水性(撥水性)層は第2の層に(付加的に)塗布され得る。(別個の)層及び/又は第2の層は、水密又は有孔であってもよい。(別個の)層及び/又は第2の層が水密であるため、水流は好ましい影響を受け、よって吸収された降水がテキスタイル要素の第2の層側のテキスタイル要素から出ることはない(吸収された降水はテキスタイル要素内に保持される)。有孔構成は、第2の層側からテキスタイル要素の内部への水の侵入を促進する。穿孔は、例えば外部(例えばファサード、ファサードに近い空気空間及び/又は都市空間)の蒸発冷却を達成するため、テキスタイル要素を均一に湿らすことに関して有利であり得る。有孔構成の場合には、テキスタイル要素は、建造物内部(内側)Iに面する第2の層側のさらなる給水装置に流体接続され得る。
【0050】
蒸発挙動を改善するため、テキスタイル要素の第2の層と(別個の)塗布された導水(撥水)層との間に、より多くの水を包含するための追加の細孔テキスタイル層、例えばマルチフィラメント布及び/又は不織布及び/又は超吸収剤等を装置の外部空間(外側)Oに面して塗布することができ、このことは、水の消費量を削減しながら、より均一な湿潤とより高い蒸発冷却に貢献する。
【0051】
(別個の)層は、第2の層上に箔(例えばポリエチレン(PE)箔、ポリエステル(PES/PET)箔、ポリ塩化ビニル(PVC)箔、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)箔、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)箔、ポリプロピレン(PP)箔、ポリアミド(PA)箔、シリコーン箔、ラテックス箔、金属箔等)及び/又はめっき(金属めっき、ガラスめっき、シリコーンめっき、ポリマーめっき等)等をラミネートすることにより具現化され得る。
【0052】
有利な方法で、装置及び/又はテキスタイル要素は、平面、湾曲(例えば鞍形面(anticlastic)、同向面(synclastic)、凹面又は凸面)、折り畳まれ、及び/又は形状において適応性を有することができる。したがって、装置は特定の用途のために最適化され得る。形状において適応性を有するとは、装置の性能を最大化するため吸水及び/又は水分蒸発を最適化すべく適応可能であることを意味する。
【0053】
適切な方法で、第1の層及び/又は第2の層は、第1又は第2の層の面に平行な方向に沿って設けられた1以上のアクチュエータによって作動可能に構成され得る。これにより第1の層と第2の層とは相互に相対的に変位され得る。第1の層及び/又は第2の層の選択的作動により、接続糸の向きすなわち傾斜角度は、装置の吸水及び排出挙動及び/又は排水及び蒸発挙動を改善すべく変更可能である。
【0054】
有利な方法で、装置及び/又はテキスタイル要素は折り畳み構造を含んでもよい。折り畳み構造は、装置及び/又はテキスタイル要素をいくつかの折り畳み可能な、(例えば相互に相対的に)折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクションに分割する。斯かる折り畳み構造によって、機能性を高めるために、装置の、例えばテキスタイル要素の、表面を最大化できる。
【0055】
適切な方法で、折り畳み構造は、機械的下部構造を有することができる。例えば鋼、木材、アルミニウム、及び/又はポリマー等、又はそれらの組み合わせのこの下部構造は、折り畳み構造に補強を行う。任意選択で、折り畳み構造は、例えばテキスタイル基材布地への(3D)印刷、及び/又はテキスタイル接続手段、例えば縫製及び/又は熱固定等又はそれらの組み合わせ等のアディティブ及び/又はサブトラクティブ・マニュファクチャリング法によって前記テキスタイル要素に導入され得る。
【0056】
有利な方法で、アクチュエータを設けることができ、アクチュエータによって折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクションが作動され得る。このようにして、折り畳み構造は、個々のセクションの再配向及び/又は再回転によって、降水滴の衝突角度及び/又は太陽入射角にそれぞれ調整され得る。装置及び/又はテキスタイル要素のセクションの再配向及び/又は再回転は、手動、あるいはセンサ、アクチュエータ及び制御ユニットを統合することにより適応的方法にて自動で操作され得る。
【0057】
アクチュエータは、例えばリニアアクチュエータ及び/又は回転アクチュエータとして具現化されることができ、例えば電子アクチュエータ及び/又は油圧アクチュエータ及び/又は空気圧アクチュエータ等がある。したがって、装置の吸水及び排出及び/又は排水及び蒸発は選択的かつ具体的に規制及び改善され得る。こうした対策は、可能な限り多くの(降)水を吸収及び/又は排出し、装置の内及び上、例えばテキスタイル要素の内及び上、で確実に蒸発させる補助をなす。
【0058】
適切な方法でセンサを設けることができ、センサにより、特に気候及び/又は環境データ、例えば周囲温度、湿度、太陽放射量データ、風データ(例えば風速及び/又は風向)及び/又は雨データ(例えば降水量、降水滴の衝突角度、粒子サイズ及び/又は降水滴の落下速度)が記録され得る。これにより、装置の周囲条件(気候及び/又は環境データ)を監視、記録し、及び/又は、装置及び/又はテキスタイル要素の自動調整及び/又は適応を提供する制御ユニットに転送できる。
【0059】
有利な方法で、好ましくはアクチュエータを動作及び/又は調整するためのプログラム等のソフトウェアを取得する制御ユニットを設けることができ、制御ユニットは、装置及び/又はテキスタイル要素及び/又はそのセクションが気候及び/又は環境条件(例えば吸収挙動を最適化するための降水滴の衝突角度、及び/又は蒸発挙動を最適化するための太陽入射角)に関して調整されるべく構成される。このことは、装置の性能を最大化するのに役立つ。制御ユニットは、(例えば上記のように)環境及び/又は気候データを収集する1又は複数のセンサ、及びテキスタイル要素の第1層及び/又は第2層を作動させるアクチュエータ、及び/又は装置及び/又はテキスタイル要素の折り畳み式、折り畳まれた、旋回可能及び/又は回転可能なセクションを操作するアクチュエータと相互作用すべく構成できる。これにより、センサによって収集された環境及び/又は気候データに基づいて、アクチュエータを制御ユニットによって操作及び/又は調整できる。装置及び/又はテキスタイル要素の動作は、1又は複数のさらなるセンサで監視され得る。
【0060】
適切な方法で、装置の構成要素が取り付けられる又は取り付け可能な保持装置を設けることができる。したがって、本明細書で開示される装置は、斯かる保持装置、ある構成要素を別の構成要素に取り付けるための、例えば装置を建造物又は土木構造物に取り付けるためのいわゆる固定により、建造物又は他の土木構造物に適用され得る。さらに、装置の構成要素は、相互に相対的に配置される。保持装置は、フレームプロファイルとして直線的に、あるいは他の適切な方法によって正確に具現化されることができ、例えばフレームプロファイルは取付ブラケットによって保持装置に取り付けることができる。
【0061】
記述のごとく、集水装置は、フレームプロファイル及び/又は例えば降水を貯蔵するための貯蔵タンク等の貯水庫を備えることができる。テキスタイル要素は、フレームプロファイルによって、例えば縁かがり(縁取り)を施した接続部によって直線的に、及び/又は正確に、及び/又は他の適切な固定によって保持され得る。フレームプロファイルは、保持装置に組み込まれ、接続され、及び/又は取り付けられ得る。貯水庫は、フレームプロファイルと流体接続されていいてもよく、貯水庫は、多層ファサードシステム内の機能的な貯蔵場所として建造物内又はファサード内に一体形成され得る。
【0062】
適切な方法で、降水を濾過するためのフィルタを設けることができ、フィルタは、テキスタイル要素に組み込まれ、及び/又は集水装置内又は上、例えばフレームプロファイル内又は上若しくは建造物内、に配置される。これにより、水は貯蔵前若しくは消費者に利用可能となる前に濾過できる。
【0063】
有利な方法で、水を加熱及び冷却するためのポンプ及び/又は水温制御装置を設けることができ、これらは給水装置及び/又は集水装置と流体接続されている。ポンプを使用して、水は貯水タンクや多層ファサードシステムの流体流通層等の集水装置に供給され、及び/又は、例えば建造物の内、上又は外にさらに輸送されることができる。さらに、ポンプは給水装置に水を汲み上げるために使用されてもよい。水温制御装置により、必要に応じて水を調整、すなわち加熱又は冷却できる。
【0064】
適切な方法で、給水装置及び/又は集水装置は熱交換器に接続されてもよい。それにより必要に応じて給水装置及び/又は集水装置から熱を抽出し、あるいは熱を加えることができる。熱交換器の一部分は、集水装置(テキスタイル要素の下流)に接続されてもよく、熱交換器の他の部分は、給水装置(テキスタイル要素の上流)に接続することができ、熱交換器の上記部分は、さらなる建造物構成要素、例えば多層ファサードシステム内の流体流通層、及び/又は建造物又は土木構造物の内、上又は外のさらなる技術的な建造物設備、と相互作用するために相互に接続される。これにより熱交換器の部分間で熱交換が可能となる。
【0065】
本発明はまた、上記態様の1以上に係る装置を、建造物又は土木構造物の内、上又は外における建築要素として使用することによって、上記目的を達する。
【0066】
上記によって達せられる利点に関しては、重複を避けるため装置に関するそれぞれの説明が参照される。装置に関連して記載された特徴は、さらなる構成のために使用できる。
【0067】
土木構造物は、例えば、限定はされないが、橋梁、水平風力タービン若しくは垂直風力タービン又は他の土木構造物であり得る。
【0068】
本発明はまた、従来の既存のファサード上の付加的要素として、新築の建造物及び/又は既存の建造物のファサード上若しくはファサード内において上記態様の1以上に係る少なくとも1つの装置を使用することによって、上記目的を達する。
【0069】
上記によって達せられる利点に関しては、重複を避けるため装置に関するそれぞれの説明が参照される。装置に関連して記載された特徴は、さらなる構成のために使用できる。
【0070】
新築の建造物に本装置を装備できるのみならず、フレームと中実な構造(コンクリート、レンガ及び/又は木製のファサード、断熱複合システム等)による従来のファサードを有する既存の建造物にも本装置を装備できる。改良によって、これらの建造物は、例えば節水、(例えば建造物の内部コンディショニングやウォーターポンプエネルギーのための)建造物の内部エネルギー消費量の削減によって、及び/又はエネルギー効率の高い都市冷却の可能性を提供すると同時に、公共の縫製インフラへの影響も軽減することによってより環境保護的なものとなる。
【0071】
従来の断熱複合システムは、例えば次の構造、すなわち外部石膏、断熱材、石造、内部石膏を(外側から内側へ)有していてもよい。この場合、装置は外部石膏の外側Oに設置され、保持装置によって耐荷重石造に静的に固定できる。
【0072】
本発明はまた、建造物の内部(内側)Iを外部空間(外側)Oから分離する、上記態様の1以上に係る装置を備えたファサードシステムによって、上記目的を達する。該ファサードシステムは、任意選択で1以上の層及び/又はモジュールからなる。したがって、ハイドロアクティブファサードを設けることができる。
【0073】
上記によって達せられる利点に関しては、重複を避けるため装置に関するそれぞれの説明が参照される。装置に関連して記載される特徴及び/又は以下に説明される特徴は、多層ファサードシステムのさらなる構成に使用できる。
【0074】
有利な方法で、テキスタイル要素(装置)の第2のテキスタイル層が位置する側に、ファサードシステムは、熱及び/又は音響減衰目的のための少なくとも1つの流体流通層、及び/又は熱及び/又は音響減衰のための断熱層、及び/又は内層を備えていてもよい。例としては(音響)テキスタイル、及び/又はPVCコーティングされたポリエステル膜、又はPTFEコーティングされたガラステキスタイル等が挙げられる。機能層(例えば流体流通層等)は、建造物内部の環境の調整(建造物の内壁面の温度制御、及び/又は室内空気湿度の調整)、及び/又は遮音特性の調整、及び/又は能動的防火対策に使用できる。加えて、流体流通層は降水の貯水庫として機能し得る。
【0075】
適切な方法で、2つの流体流通層を設けることができ、第1の流体流通層は絶縁層の一方側に配置され、第2の流体流通層は絶縁層の他方側に配置される。2つの流体流通層によって、より多くの水を貯蔵できる。また、太陽熱エネルギーは断熱層の両面で吸収又は放出され得る。このことは、ファサードシステムの柔軟でエネルギー効率の高い適用に貢献する。
【0076】
有利な方法で、流体流通層のうち一方若しくは両方を集熱器として構成・利用することができ、及び/又は建造物の内壁面の温度制御、及び/又は室内空気湿度の調節、及び/又は遮音特性の調整、及び/又は能動的防火対策のために利用できる。集熱器として使用される際、太陽放射が吸収されて熱に変換される。加熱ユニットとして使用される際、流体流通層のうち一方若しくは両方は、支配的な周囲条件及びコンディショニング上の必要性に応じて、断熱層の対応する側に熱エネルギーを放出できる。さらに、温度、湿度、及び/又は音響の観点から、熱流束及び/又は室内快適性が影響を受けることがある。そのため、これらの層を介した、降水及び/又は公共配水網からの水の選択的な水流を開始できる。
【0077】
適切な方法で、上記態様の1以上に係るさらなる装置を設けることができ、上記さらなる装置は、内層を形成する。さらなる装置のテキスタイル要素の第1の層は、建造物内部(内側)Iに面している。その結果、内部の温度及び空気湿度を調節するためのさらなる機能層が設けられ、さらなるテキスタイル要素が内側Iで蒸発器として作用する。第1の層が建造物内部に面している状態で、このさらなる装置は、第1の装置と比較して「横方向に反転」して配置される。
【0078】
有利な方法で、ファサードシステムは、上述のような多層ファサードシステム及び/又は装置の保持装置の構成要素が取り付けられるか、又は取り付け可能な、好ましくはモジュラープロファイルシステムを含むことができる。したがって、ファサードシステムは、層を追加してモジュール式にアップグレードすることができ、用途の他、特定の局地的条件及び建造物の要件に適合させることができる。たとえば、寒冷地では、プロファイルシステムを別のプロファイルモジュールで拡張することにより、追加の絶縁層を追加できる。好ましくは、装置のフレームプロファイルと保持装置は相互に互換性を有する。したがって、フレームプロファイルは、保持装置に組み込まれ、接続され、及び/又は取り付けられ得る。プロファイルシステムは、アルミニウム、鋼、ポリマー、又は木材等、又はそれらの組み合わせ(アルミニウム、鋼、ポリマー、木材、又は複合プロファイルシステム)から作製され得る。
【0079】
本発明はまた、上記態様の1以上に係る装置及び/又は上記態様の1以上に係る多層ファサードシステムを操作する方法によって上記目的を達成し、(上記装置によって吸収される)降水は、建造物の内、上又は外での使用のために供給され、及び/又は(公共配水網によって提供される)水及び/又は(上記装置によって吸収される)降水は装置、例えばテキスタイル要素、に供給され、蒸発によって排出される。
【0080】
上記によって達せられる利点に関しては、重複を避けるため装置に関するそれぞれの説明が参照される。装置に関連して記載される特徴、多層ファサードシステム及び/又は以下に記載される特徴は、装置及び/又は多層ファサードシステムのさらなる構成に使用できる。
【0081】
適切な方法で、(公共配水網によって提供される)水及び/又は(上記装置によって吸収される)降水は、特に蒸発によって、テキスタイル要素を介して排出され得る。したがって、ファサード、ファサードに近い空気空間、及び/又は都市空間の蒸発冷却は、例えばファサード及び/又は他の密閉された都市表面上の太陽放射の吸収によって引き起こされる熱ストレスの場合に実現され得る。
【0082】
有利な方法で、装置によって吸収された降水は、原水の形で建造物の内、上又は外の消費者に供給されることができ、及び/又は飲料水に処理され得る。したがって、(例えば公共配水網によって提供される)飲料水の需要の低減、並びに水ポンプエネルギーの需要の低減を達成できる(すなわち、公共配水網から高層建造物の任意の階層のユーザに水を汲み上げる必要はない)。
【0083】
適切な方法で、降水は建造物の内部コンディショニングに使用できる。したがって、壁面の温度制御(加熱及び/又は冷却)、室内の空気湿度の調整等により、並びに、ファサードシステムの遮音特性又は品質を調整することにより、室内とユーザの快適性を向上させることができる。
【0084】
有利な方法で、降水は工場特有の防火対策のために提供され得る。したがって、能動的防火対策は、建造物の内、上又は外で実施され得る。
【0085】
適切な方法で、特に過剰な降水量の場合、降水は公共配水網に排出され、及び/又は近隣の建造物及び/又は土木構造物に送水され得る。したがって、追加の建造物及び/又は土木構造物に、降水(原水)及び/又は処理された飲料水が供給され得る。
【0086】
本発明はまた、(降)水を吸収及び排出する装置、特に、上記態様の1以上に係る装置及び/又は上記態様の1以上に係る多層ファサードシステムを制御及び/又は調整するための方法、例えばソフトウェアによって、上記目的を達する。上記方法は、以下のステップを含む:
-定義された(過去、現在、又は未来の)期間の気象サービスから(例えばインターネット経由で)予報気象データを取得する
-定義された期間における、建造物又は土木構造物の内、上又は外の飲料水、原水、及び/又は中水の消費量を、例えば建造物又は土木構造物の内、上又は外の水の消費量を(例えば流量計を用いて)分析することによって推定する、及び
-飲料水、及び/又は原水、及び/又は中水の推定消費量を、予報気象データから予想される降水量と比較する。
【0087】
上記によって達せられる利点に関しては、重複を避けるため装置に関するそれぞれの説明が参照される。装置に関連して記載される特徴、多層ファサードシステム及び/又は以下に記載される特徴は、装置及び/又は多層ファサードシステムのさらなる構成に使用できる。
【0088】
有利な方法で、ファサード、ファサードに近い空気空間、及び/又は都市空間の蒸発冷却に必要な水の量は、例えば高温の場合に備えて決定され得る。これにより、この目的のためにどれだけの水が必要か、そして他の目的のため又は消費者のためにどれだけの水を供給できるかを決定することが可能となる。
【0089】
適切な方法で、建造物又は土木構造物の内、上又は外で消費者に必要な飲料水、原水、及び/又は中水の消費量を決定できる。したがって、原水は、例えば植物の散水、洗濯機の運転及び/又はトイレの洗浄のために、消費者に提供され得る。植物の散水には、例えば装置を公共の建造物及び/又は公共の土木構造物に取り付けることによる公共の緑地の散水だけでなく、私的な散水も含まれる。
【0090】
有利な方法で、建造物又は土木構造物の内部コンディショニングに必要な水の量が決定され得る。したがって、要件の決定は、室内の快適さに関連する消費も指す。内部コンディショニングは、内壁の表面温度及び/又は室内空気湿度の調整、及び/又は室内の音響制御によって行われ得る。
【0091】
適切な方法で、工場特有の防火対策の用途に必要な水の量を決定できる。したがって、要件の決定では、能動的防火対策も考慮される。
【0092】
有利な方法で、上記装置によって吸収された余剰水は近隣の建造物及び/又は土木構造物に送水され、及び/又は余剰水は公共配水網に供給され得る。したがって、要件(蒸発冷却のための水要件、消費者のための水要件、内部コンディショニングのための水要件、及び/又は工場特有の防火対策のための水要件)のうち1以上の決定が、余剰水が利用可能であることを示している場合、余剰水は公共配水網及び/又は他の建造物、あるいは土木構造物及び/又は他の消費者に供給され得る。このことは、都市部における知的、経済的、環境保護的な給水に貢献する。
【0093】
本発明を、図を参照しながら以下にさらに詳細に説明する。同一又は機能的に同一の要素は同じ参照記号で示されるが、それはおそらく一度だけである。図面に以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】降水を吸収し、蒸発によって排水するための装置の一実施形態を示す図である。
図2a】雨の場合に降水を吸収する図1の装置の動作を示す図である。
図2b】屋外温度が高い場合に蒸発によって排水する図1の装置の動作を示す図である。
図3a】テキスタイル要素の第1の層及び/又は第2の層を作動させるためのアクチュエータを備えた図1の装置の動作を示す図であって、雨の場合に降水を吸収する場合を示す。
図3b】テキスタイル要素の第1の層及び/又は第2の層を作動させるためのアクチュエータを備えた図1の装置の動作を示す図であって、屋外温度が高い場合に蒸発によって排水する場合を示す。
図4a】橋梁における構築要素としての図1に係る装置の使用を示す図である。
図4b】垂直風力タービンにおける構築要素としての図1に係る装置の使用を示す図である。
図4c】水平風力タービンにおける構築要素としての図1に係る装置の使用を示す図である。
図5】既存の建造物の従来のファサード(例えば断熱複合システム)での図1に係る装置の使用を示す図である。
図6図1に係る装置が組み込まれている多層ファサードシステムの一実施形態を示す図である。
図7a】雨の場合に降水を吸収する図6の多層ファサードシステムの操作を示す図である。
図7b】屋外温度が高い場合に蒸発によって排水する図6の多層ファサードシステムの操作を示す図である。
図8a】暑い気象条件下における、内壁表面温度を調整するための個々の層の温度制御を備えた図6の多層ファサードシステムを示す図である。
図8b】寒冷条件下における、内壁表面温度を調整するための個々の層の温度制御を備えた図6の多層ファサードシステムを示す図である。
図9a】集熱器として使用される場合の図6の多層ファサードシステムを示す図である。
図9b】ファサードの外側Oへの熱流束に影響を与えるために使用される場合の図6の多層ファサードシステムを示す図である。
図10a】ファサードシステムの内層を形成する図1に係るさらなる装置を有する図6の多層ファサードシステムを示す図である。
図10b】内部のための蒸発によって排水する際のさらなる装置を備えた多層ファサードシステムの動作を示す図である。
図11図1に係る装置が折り畳み構造と該折り畳み構造を動作させるためのアクチュエータを備えている場合の図6の多層ファサードシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、降雨事象、特に豪雨事象からの降水を吸収し、蒸発により排水するための装置10を示す。装置10は、雨水滴を吸収するため、及び/又は蒸発によって(公共配水網によって提供される)水及び/又は(上記装置によって吸収される)降水を排出するためのテキスタイル要素12を含む。テキスタイル要素12は、第1の、透水層14(外層14)と第2の、導水層16(内層16)とを有する3Dテキスタイル構造13を具現化している。第1の層14と第2の層16とは、導水性接続糸18で相互に接続されている。接続糸18は、スペーシング構造19を形成している。図示された実施形態では、テキスタイル要素12は、排水管路20及び給水管路22に流体的に接続されている。
【0096】
排水管路20は、テキスタイル要素12の下流側に流体接続されている。給水管路22は、テキスタイル要素12の上流側に流体接続されている。
【0097】
テキスタイル要素12及び/又は排水管路20に流体接続された集水装置24が設けられている。集水装置24は、水を貯蔵、処理(例えば濾過)及び/又は輸送するための異なる構成要素を含むことができる。
【0098】
テキスタイル要素12及び/又は給水管路22に流体接続された給水装置26が設けられている。給水装置26は、公共配水網又は集水装置24(不図示)に流体接続され得る。
【0099】
テキスタイル要素12すなわち3Dテキスタイル構造13は、好ましくは、合成及び/又はポリマー繊維(例えば、ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル(PES/PET)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリアミド(PA)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)繊維等)、ガラス繊維、金属繊維、及び/又は他の材料から形成することができ、これらの材料は、モノフィラメント若しくはマルチフィラメントとして具現化され、フィラメントは、より良い水輸送のため、形状、例えば螺旋形状において最適化され得る。
【0100】
装置10及び/又はテキスタイル要素12は、親水性(水誘引性)及び/又は疎水性(導水性、撥水性)改良(不図示)を含むことができる。親水性及び/又は疎水性改良は、上記で説明したように、ラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化(例えば螺旋状のフィラメント)、及び/又は微細構造又はマクロ構造を有する付加的な表面構造として具現化され得る。改良材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン、パラフィンワックス及び/又はナノコーティングとすることができ、ナノコーティングとしては二酸化チタン(TiO2)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)等、又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0101】
テキスタイル要素12の第1の層14は、水誘引性及び/又は親水性のラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化、及び/又は第1の層14に付加的に塗布される(別個の)水誘引性の層(不図示)を有していてもよい。(別個の)層及び/又は第1の層14は、テキスタイル要素12の第1の層14と第2の層16との間に接続糸18によって形成されるスペーシング構造19よりも細かい有孔設計とすることができる。細孔テキスタイルは、例えばより多くの水を包含するためのマルチフィラメント又は不織布を含んでもよく、これによって、より効果的かつ経済的な蒸発冷却効果をもたらす(不図示)。
【0102】
テキスタイル要素12の第2の層16は、導水性(撥水性)及び/又は疎水性のラミネーション、コーティング、仕上げ、フィラメント形状の最適化を有していてもよく、及び/又は(別個の)導水性(撥水性)及び/又は疎水性の層(不図示)が第2の層16に付加的に塗布されてもよい。(別個の)層及び/又は第2の層は、水密又は有孔であってもよい。(別個の)導水性(撥水性)及び/又は疎水性層は、第2の層16上に箔(例えばポリエチレン(PE)箔、ポリエステル(PES/PET)箔、ポリ塩化ビニル(PVC)箔、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)箔、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)箔、ポリプロピレン(PP)箔、ポリアミド(PA)箔、シリコーン箔、ラテックス箔、金属箔等)及び/又はめっき(金属めっき、ガラスめっき、シリコーンめっき、ポリマーめっき等)等をラミネートすることにより具現化され得る。
【0103】
蒸発挙動を改善するため、より多くの水を包含するための追加の細孔テキスタイル層、例えばマルチフィラメント及び/又は不織布及び/又は超吸収剤等(不図示)を、テキスタイル要素12の第2の層16と、装置の外部空間(外側)Oに塗布された(別個の)導水(撥水)層(不図示)との間に塗布することができ、このことは、水の消費量を削減しながら、より均一な湿潤とより高い蒸発冷却に貢献する。
【0104】
本実施形態では、装置10及びテキスタイル要素12は、平面形状をなす。他の実施形態では、装置10及び/又はテキスタイル要素12は、湾曲し(例えば鞍形面、同向面、凹面又は凸面)、折り畳まれ、及び/又は形状において適応性を有する(図4a、4b、4c及び11を参照されたい)。
【0105】
第1の層14及び/又は第2の層16は、それぞれ第1の層14又は第2の層16の平面に平行な方向に沿って設けられた1以上のアクチュエータ(不図示)によって動作可能に構成され得る(図3a、3b参照)。
【0106】
装置10及び/又はテキスタイル要素12は、装置10及び/又はテキスタイル要素12をいくつかの折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション30、30′、30″に分割する折り畳み構造28、28′、28″を含むことができる(図11参照)。折り畳み構造28、28′、28″は、例えば鋼、木材、アルミニウム、及び/又はポリマー等、又はそれらの組み合わせの機械的下部構造を有することができ、及び/又は折り畳み構造は、例えばテキスタイル(3D)印刷等のアディティブ及び/又はサブトラクティブ・マニュファクチャリング法によってテキスタイル要素12に導入され、及び/又は折り畳み構造28、28′、28″は、テキスタイル接続手段、例えば縫製及び/又は熱固定等又はそれらの組み合わせ(不図示)によって具現化され得る。
【0107】
アクチュエータ32、32′、32″(例えば線形及び/又は回転アクチュエータ)が設けられてもよく、それにより、折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション30、30′、30″が操作され得る。
【0108】
上記説明したように、気候及び/又は環境データを記録できるセンサを設けることができる(不図示)。
【0109】
アクチュエータ32、32′、32″を操作及び/又は調整するための制御ユニット(不図示)を設けることができ、制御ユニットは、装置10及び/又はテキスタイル要素12及び/又はそのセクション30、30′、30″が気候及び/又は環境条件(例えば降水滴の衝突角度及び/又は太陽入射角)に関して調整されるべく構成される。制御ユニットは、環境及び/又は気候データを収集する1又は複数のセンサ、テキスタイル要素の第1の層及び/又は第2の層を作動させるアクチュエータ、及び/又は装置及び/又はテキスタイル要素の折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクションを操作するアクチュエータと相互作用すべく構成できる。
【0110】
装置10の構成要素が取り付けられた又は取り付け可能な保持装置(不図示)を設けることができる。これにより、装置10の構成要素は相互に相対的に配置され、装置10を建造物や土木構造物に取り付けることができる。
【0111】
集水装置24は、集水又は水の排出(水の流出)35が行われるフレームプロファイル34を含むことができ、及び/又は、集水装置24は、貯水タンクとして、又は多層ファサードシステム内の流体流通層として具現化され得る貯水庫33を含むことができる(図1及び図6参照)。テキスタイル要素12は、フレームプロファイル34によって直線的に、例えば縁かがり(縁取り)を施した接続部37によって、及び/又は正確に、及び/又は他の適切な固定(不図示)によって保持され得る。フレームプロファイル34は、保持装置(不図示)に組み込まれ、接続され、及び/又は取り付けられ得る。さらに、貯水庫33は、フレームプロファイル34と流体接続されていてもよい。
【0112】
降水を濾過するためのフィルタ36が設けられ、フィルタ36は、テキスタイル要素12に組み込まれ、及び/又は集水装置24内又は上、例えば集水装置24のフレームプロファイル34内又は上に配置され、及び/又は建造物内に配置される。
【0113】
ポンプ38及び/又は水温制御装置(水の加熱及び冷却)40が設けられており、本実施形態では、それぞれ、排水管路20を介して集水装置24と、及び/又は給水管路22を介して給水装置26と流体接続されている。
【0114】
給水装置26は、フレームプロファイル34′を備え、その中で給水39が行われる。テキスタイル要素12は、フレームプロファイル34′によって直線的に、例えば縁かがり(縁取り)を施した接続部37′によって、及び/又は正確に、及び/又は他の適切な固定(不図示)によって保持され得る。フレームプロファイル34′は、保持装置に組み込まれ、接続され、及び/又は取り付けられ得る。さらに、貯水庫33及び/又は公共配水網は、フレームプロファイル34′と流体接続されてもよい。
【0115】
給水装置26及び/又は集水装置24は、熱交換器42、120に接続できる。
【0116】
有利な方法で、給水装置26に加えて又は代替的に、例えば1又は複数の線形又は正確なインジェクタを含むさらなる給水装置67を、テキスタイル要素12を均一に湿らすために設けることができる。
【0117】
図2a及び図2bは、図1に係る装置10の動作を示す。装置10のテキスタイル要素12の第1の、透水層14(外層14)に対向する側は外部(外側)Oであり、装置10のテキスタイル要素12の第2の、導水層16(内層16)に対向する側は、内部(内側)Iである。
【0118】
図2aは、降雨事象又は豪雨事象時に降水を吸収している際の装置10を示す。この状況では、装置10は吸収体及び収集装置として機能する。降水は、装置10によって例えばテキスタイル要素12によって吸収(収集)され、任意選択で貯蔵され得る。吸収時、降水は第1の層14の側においてテキスタイル要素12に入る(矢印44参照)。降水は、第1の、透水層14から接続糸18に沿って第2の、導水層16に導かれる。
【0119】
第2の層16は導水性(撥水性)及び/又は疎水性であるため、吸収された降水は、第2の層16内若しくは第2の層16を超えて、又は多層ファサードシステムの内部に浸透することはなく、あるいは無視できる方法でしか浸透しない。重力の影響下で、吸収された水は、テキスタイル要素12中を下方に流れ、第2の層16に沿って集水又は水の排出(水の流出)35へ、例えばリザーバ、水盤、側溝等へ流れる。これらは集水装置24のフレームプロファイル34に組み込まれ得る。そこから、吸収及び収集された水は、例えば貯水庫、水消費者、及び/又は公共配水網に供給され得る。
【0120】
図2bは、熱事象時に蒸発によって排水している際の装置10を示す。この状況では、装置10は蒸発器装置として作用する。水は、装置10によって、建造物のファサード(多層ファサードシステム100又は既存の建造物80の従来のファサード82)等の外部、及び/又はファサードに近い空気量、及び/又は都市空間の蒸発冷却のため、及び/又は建造物内部(図10a、10bを参照)の蒸発冷却のために例えばテキスタイル要素12によって蒸発させられ得る。蒸発のために、水は、給水39から、例えばテキスタイル要素12の上流に配置された給水装置26のフレームプロファイル34′からテキスタイル要素12に入る。そこから、重力の影響下で、供給された水は、テキスタイル要素12内を第2の、導水(撥水性)及び/又は疎水性層16に沿って下方移動し、接続糸18を介して第1の、透水層14に移動する。このプロセスの間、装置10の内及び上の水、例えばテキスタイル要素12の内及び上の水は、装置10の外側Oに広がる太陽放射及び熱によって蒸発する(矢印46参照)。蒸発プロセスは、対応する冷却エネルギーを放出させ、装置10及び/又は多層ファサードシステム100の外側Oに対する熱負荷の影響を低減する。
【0121】
蒸発面の均一な湿潤のために、代替的に又は給水装置26に加えて、(追加の)給水装置67を設けて、テキスタイル要素12を正確に又は直線的に、好ましくはいくつかの場所で及び/又は異なる高さで水を供給できる。給水装置67は、装置10の、例えばテキスタイル要素12の高さ及び/又は幅に沿って並んで配置された1又は複数のインジェクタ、例えばウォータージェット、(有孔)パイプ又はホースを含んでいてもよい(不図示)。好ましくは、給水装置67は、給水装置26、例えばフレームプロファイル34′、及び/又は給水管路22、及び/又は集水装置24、例えばフレームプロファイル34及び/又は排水管路20と流体接続され得る。
【0122】
給水装置26を介して及び/又は給水装置67を介してテキスタイル要素12に供給される水は、装置10によって以前に吸収(集水)及び貯蔵された水及び/又は公共配水網によって供給された水であり得る。
【0123】
図3a及び3bは、テキスタイル要素12の第1の層14及び/又は第2の層16を作動させるためのアクチュエータ(不図示)を備えた場合の装置10の動作を示す。
【0124】
上述したように、第1の層14及び/又は第2の層16は、それぞれ第1の層14又は第2の層16の平面に平行な方向に沿って設けられた1以上のアクチュエータ(不図示)によって動作可能に構成され得る。これにより、第1の層14と第2の層16とを相互に相対的に変位され得る。このようにして、接続糸18の向き、例えば傾斜角度を変更できる。
【0125】
図3aは、第1の層14が重力方向(上向き)に逆らって変位するように作動される状況、及び/又は第2の層16が重力方向に沿って変位するように作動される状況(下向き;矢印43を参照)を示す。これにより、接続糸18は第1の層14から第2の層16に向かって下方に傾斜するように位置合わせされる。このようにして、吸収された水が第1の層14から第2の層16へより速く移動し、したがってテキスタイル要素12内でより速く下方移動して集水又は水の排出(水の流出)35、例えば集水装置24の(下部)フレームプロファイル34に組み込まれ得るリザーバ、水盤、側溝等へ移動するため、吸水挙動が改善される(矢印44参照)。
【0126】
図3bは、第1の層14が重力方向に沿って変位するように作動される状況(下向き)、及び/又は第2の層16が重力方向(上向き;矢印45を参照)に変位するように作動される状況を示す。これにより、接続糸18は第1の層14から第2の層16に向かって上方に傾斜するように位置合わせされる。このようにして、給水装置26の給水39及び/又は給水装置67によってテキスタイル要素12に供給される水がより速く下方移動し、したがって第1の、透水層14にもより速く移動するため、排水挙動が改善される(矢印46を参照)。
【0127】
図4a~図4cは、図1に係る装置10の、異なる建造物又は土木構造物への建築要素としての利用を示す。
【0128】
図4aは、橋梁50の形態の土木構造物への装置10の適用を示す。装置10及び/又はテキスタイル要素12は、平面形状(平面集水面及び/又は蒸発面)である。この用途では、装置10及び/又はテキスタイル要素12は同様に、湾曲(例えば鞍形面、同向面、凹面又は凸面)、折り畳まれ及び/又は形状において適応性を有する(不図示)。
【0129】
図4bは、風力タービン60の形態の土木構造物への装置10の適用を示す。装置10及び/又はテキスタイル要素12は、同向面的に(二重に)湾曲した形状(同向面的に湾曲した集水面及び/又は蒸発面)である。この用途では、装置10及び/又はテキスタイル要素12は、(二重に)鞍形面的に湾曲(鞍形面的に湾曲した集水面及び/又は蒸発面)したものとすることができる(不図示)。
【0130】
図4cは、風力タービン70の形態の土木構造物への装置10の適用を示す。装置10及び/又はテキスタイル要素12は、(単純な)凸状の湾曲面(凸曲面の集水面及び/又は蒸発面)である。本出願において、装置10及び/又はテキスタイル要素12は、(単純な)湾曲した凹面(凹状の湾曲した集水面及び/又は蒸発面)とすることができる(不図示)。
【0131】
図5は、既存の建造物80の従来のファサード82(例えば断熱複合システム上)での図1に係る装置10の使用を示す。
【0132】
既存の建造物80は、装置10を、建造物のファサードの支持構成要素、例えば中実構造88の場合には石造構造に、又はフレーム構造(不図示)の場合には鋼構造に取り付けることによって設置される。従来のファサード82(例えば断熱複合システム)は、以下の構成要素、すなわち建造物のファサードの外側の漆喰84、断熱材86、支持構成要素、例えば中実構造88及び内部漆喰90の場合には石造構造を(外側から内側へ)有していてもよい。
【0133】
装置10は、保持装置92によって既存の建造物80の従来のファサード82(例えば断熱複合システム)に取り付けられる。保持装置92は、取り付けブラケット94を含む。取り付けブラケット94は、一端において装置10のフレームプロファイル34、34′に接続され、他端においてファサード82、換言すれば建造物のファサードの支持構成要素、例えば中実構造88の場合には石造構造に、又はフレーム構造(不図示)の場合には鋼構造に、例えばネジで接続される。
【0134】
既存の建造物80を装置10で改良することにより、建造物は、例えば都市の気候の利点を同時に提供することによって、より低いエネルギー消費及び節水を通じて、より環境保護的になる。
【0135】
図6は、建造物内部(内側)Iを外部空間(外側)Oから分離する多層ファサードシステム100の一実施形態を示す。ファサードシステム100は、多層ファサードシステム100の外部(外側)Oに面する側に組み込まれた装置10を含む。装置10は図1の装置10に相当し、繰り返しを避けるために図1の仕様を参照する。
【0136】
ファサードシステム100は、ハイドロアクティブファサードを表し、それは装置10で降雨事象から水を吸収し、装置10により吸収された水、及び/又は公共配水網によって供給された水を、例えばファサードシステム100のいくつかの層において内部コンディショニングのために、貯蔵及び/又は使用し、及び/又は蒸発冷却のために装置10により水を排出することを可能にする。
【0137】
ファサードシステム100は、1以上の層及び/又はモジュールからなり得る。ファサードシステム100は、好ましくはモジュラープロファイルシステム102、102′を含む。モジュラープロファイルシステム102、102′には、多層ファサードシステム100の構成要素、及び/又は保持装置92、及び/又は装置10のフレームプロファイル34、34′を取り付けることができる。装置10及び/又は保持装置92のフレームプロファイル34、34′とプロファイルシステム102、102′は相互に互換性を有する。本実施形態では、装置10のフレームプロファイル34、34′は、ファサードシステム100のプロファイルシステム102、102′に取り付けられている。プロファイルシステム102、102′は、アルミニウム、鋼、ポリマー若しくは木材のプロファイルシステム等又はそれらの組み合わせとして具現化され得る。
【0138】
モジュラープロファイルシステム102、102′は、ファサードシステム100のいくつかの層を保持する。この実施形態では、多層ファサードシステム100は、装置10のテキスタイル要素12の第2の層16が位置する側に、(外側から内側へ)第1の流体流通層104、断熱層106、第2の流体流通層108及び内層110、例えば(音響)テキスタイル及び/又は内膜を含む。これらの層は、例えば装置10のテキスタイル要素12と第1の流体流通層104との間の空気空間(空気層)112によって、相互に分離されている。
【0139】
断熱層106、流体流通層104、108及び内層110を介して、ファサードシステム100の熱的及び音響的特性並びに建造物内部の快適性が最適化される。流体流通層104、108は、降水の貯蔵、及び/又は内部の環境及び音響調整のための、及び/又は能動的防火対策のためのリザーバとして機能し得る。流体流通層104、108は、装置10、例えばテキスタイル要素12、特に集水装置24、及び/又は給水装置26と例えばプロファイルシステム102、102′を介して、フレームプロファイル34、34′を介して、排水管路20を介して、給水管路22を介して、及び/又は流体接続部114、116を介して流体接続される。
【0140】
図7a及び図7bは、図6に係る多層ファサードシステム100の動作を示す。
【0141】
図7aは、降雨事象又は豪雨事象時に装置10が降水を吸収している際の多層ファサードシステム100を示す。吸収時、降水は第1の、透水層14の側において装置10のテキスタイル要素12に入る(矢印44参照)。重力の影響下で、吸収された降水は、第1の、透水層14から接続糸18を介して下方へ第2の、導水層16へ、集水若しくは水の排出(水の流出)35へ、例えばリザーバ、水盤、側溝等へ移動する。これらは集水装置24の(下部)フレームプロファイル34に組み込まれ得る。
【0142】
流体接続部114を介して、吸収された降水は、例えばポンプ38によって、(下部)フレームプロファイル34から流体流通層104、108に導かれ、そこにおいて、吸収された降水は貯蔵され、及び/又は内部の快適性のために使用される。そこから、貯留された水を後で排出できる。流体接続部114はさらに、降水を濾過するためのフィルタ36、及び/又はさらなる貯水庫33、例えば貯水タンク及び/又はポンプ38及び/又は水温制御装置(水の加熱及び冷却)40及び/又は熱交換器42、120に接続され得る。
【0143】
図7bは、熱事象時に蒸発によって排水している際の多層ファサードシステム100を示す。流体接続部116によって、流体流通層104、108及び/又はさらなる貯水庫33、例えば貯水タンクに貯蔵された水(例えば装置10によって吸収された水)、及び/又は公共配水網によって供給される水は、給水39、例えば側溝、パイプ、チューブ、流入ライン、漏斗等に導かれる。これらは、テキスタイル要素12の上流に配置された給水装置26の(上部)フレームプロファイル34′に組み込まれていてもよい。そこから、重力の影響下で、供給された水は、テキスタイル要素12内を第2の、導水層16に沿って下方移動し、接続糸18を介して第1の、透水層14に移動する。このプロセスの間、ファサードシステム100の外側Oに広がる太陽放射及び熱のために、水は装置10内及び上で、例えばテキスタイル要素12内及び上で蒸発する(矢印46参照)。液体から蒸気状態への水の相転移は、冷却エネルギーを放出する。これにより外側Oに対する熱負荷の影響を低減できる。
【0144】
給水装置26の給水39に代えて又は加えて、均一に湿った蒸発面を作り出すことによって蒸発挙動を最適化するため、(追加の)給水装置67を設けることができる。これにより、水は、正確に又は直線的に、好ましくはいくつかの場所で及び/又は異なる高さで、テキスタイル要素12に供給されることが可能となる。給水装置67は、装置10の、例えばテキスタイル要素12(不図示)の高さ及び/又は幅に沿って並んで配置された1又は複数のインジェクタ、例えばウォータージェット、(有孔)パイプ又はホースを含んでいてもよい。別の実施形態では、給水装置67は、平面状の有孔給水装置として構成されてもよい。有孔構成において、流体流通層104内の圧力を調節することにより、水が流体流通層104からテキスタイル要素12に均一に供給されるように、例えば流体流通層104は穿孔され、装置10に、例えばテキスタイル要素12に、第2の、導水層16を介して接続され得る。好ましくは、給水装置67は、プロファイルシステム102′、フレームプロファイル34′、給水管路22、及び/又は流体接続部116を介して給水装置26と流体接続され得る。また、給水装置67は、プロファイルシステム102、フレームプロファイル34、排水管路20、及び/又は流体接続部114を介して集水装置24と流体接続され得る。
【0145】
テキスタイル要素12を介して集水又は水の排出(水の流出)35及び/又は(下部)フレームプロファイル34に移動する水は、流体接続部114を介して流体流通層104、108及び/又は給水装置26及び/又は給水装置67に送り返されることができる。
【0146】
図8a及び8bは、図6に係る多層ファサードシステム100の別の使用を示す。
【0147】
以下の図面の表現では、薄い灰色は涼しい低温を示し、濃い灰色は暖かい高温を意味する。
【0148】
図8aは、暑い気象条件、例えば夏季における内壁表面温度の調整のための個々の流体流通層の温度制御を有する多層ファサードシステム100を示す。本実施形態では、冷水は第2の流体流通層108を通って流れるが、これは断熱層106の、内部(内側)Iに面する側に位置する。この目的のために、装置10によって吸収された水及び/又は貯水庫33、例えば貯水タンク内及び/又は第1の流体流通層104に貯蔵された水及び/又は公共配水網によって供給された水は、流体接続部114及び/又は流体接続部116に接続された水温制御装置(水の加熱及び冷却)40によって冷却され、例えばポンプ38によって、第2の流体流通層108に供給され得る。水が第2の流体流通層108に沿って移動すると、内部Iが冷却され得る(矢印51参照)。このことは、快適な室内環境と、例えば夏季における暑い気候条件でのエネルギー節約に貢献する。冷却された水は、例えばポンプ38によって、流体接続部114からプロファイルシステム102を介して第2の流体流通層108に供給され、プロファイルシステム102′へ上方移動するか、あるいは、冷却された水は流体接続部116から(上部)プロファイルシステム102′を介して第2の流体流通層108に供給され、プロファイルシステム102へ下方移動する。
【0149】
図8bは、寒冷な条件、例えば冬季における内壁表面温度の調整のための個々の流体流通層の温度制御を有する多層ファサードシステム100を示す。本実施形態では、加熱された水は第2の流体流通層108を通って流れるが、これは断熱層106の、内部(内側)Iに面する側に位置する。この目的のために、装置10によって吸収された水及び/又は貯水庫33、例えば貯水タンク内及び/又は第1の流体流通層104に貯蔵された水及び/又は公共配水網によって供給された水は、流体接続部114及び/又は流体接続部116に接続された水温制御装置(水の加熱及び冷却)40によって加熱され、例えばポンプ38によって、第2の流体流通層108に供給され得る。水が第2の流体流通層108に沿って移動すると、熱エネルギーが内部Iに伝達される(矢印53参照)。このことは、快適な室内環境と、例えば冬季における寒冷な気候条件でのエネルギー節約に貢献する。加熱された水は、例えばポンプ38によって、流体接続部114からプロファイルシステム102を介して第2の流体流通層108に供給され、プロファイルシステム102′へ上方移動するか、あるいは、加熱された水は流体接続部116から(上部)プロファイルシステム102′を介して第2の流体流通層108に供給され、プロファイルシステム102へ下方移動する。
【0150】
図9a及び図9bは、図6に係る多層ファサードシステム100の別の使用を示す。
【0151】
図9aは、集熱器として使用される場合の多層ファサードシステム100を示す。流体接続部116を介して、水は、(上部)プロファイルシステム102′を介して第1の流体流通層104に導かれ、及び/又は、給水装置26を介して、例えば(上部)フレームプロファイル34′を介して、及び/又は給水装置67を介して、装置10、例えばテキスタイル要素12に導かれる。そこから、水は、第1の流体流通層104を(下部)プロファイルシステム102へ下方移動し、及び/又は装置10、例えば第2のテキスタイル要素12を、接続糸18を介して第2の導水(撥水)層16に沿って第1の、透水層14へ下方移動し、及び/又は(下部)フレームプロファイル34へ移動する。このプロセスにより、水は太陽放射のエネルギーによって加温される(矢印47を参照)。熱交換器42、120により、及び/又は流体接続部114に連結された水温制御装置(水の加熱及び冷却)40により加温された水から熱を取り出すことができるため、水を冷却できる。冷却された水は、例えばポンプ38によって、(下部)プロファイルシステム102を介して第2の流体流通層108に供給され、そこから上方移動し、流体接続部116を通って、(上部)プロファイルシステム102′を介して再び第1の流体流通層104へ、及び/又は給水装置26を介して、例えば(上部)フレームプロファイル34′へ、及び/又は給水装置67を介して装置10、例えばテキスタイル要素12へ至る。これにより断熱層106の外側Oにある流体流通層104が太陽放射からの熱エネルギーを吸収・放散する。断熱層106の内側Iにある流体流通層108には冷水が供給され、内部温度を低下させる(矢印49参照)。このことは、内部コンディショニングのためのエネルギー節約、及び暑い気候条件における快適な室内環境に貢献する。
【0152】
なお、流体流通層104、108の流れ方向は逆方向であってもよい(不図示)。この場合、水は、流体接続部114を介して、(下部)プロファイルシステム102を介して第1の流体流通層104に導かれる。そこから、水は第1の流体流通層104を上方へポンプで送水され(上部)プロファイルシステム102′に至る。このプロセスにより、水は太陽放射のエネルギーによって加温される(矢印47を参照)。熱交換器42、120により、及び/又は流体接続部116に連結された水温制御装置(水の加熱及び冷却)40により加温された水から熱を取り出すことができるため、水を冷却できる。冷却された水は、(上部)プロファイルシステム102′を介して第2の流体流通層108に供給され、そこから下方移動し、流体接続部114を通って、(下部)プロファイルシステム102を介して再び第1の流体流通層104へ至る。これにより断熱層106の外側Oにある流体流通層104が太陽放射からの熱エネルギーを吸収・放散する。断熱層106の内側Iにある流体流通層108には冷水が供給され、内部温度を低下させる(矢印49参照)。このことは、内部コンディショニングのためのエネルギー節約、及び暑い気候条件における快適な室内環境に貢献する。
【0153】
図9bは、ファサードの外側Oへの熱流束に影響を与えるために流体流通層104、108の温度制御に使用される場合の多層ファサードシステム100を示す。水は、熱交換器42、120により、及び/又は流体接続部114及び/又は流体接続部116に連結された水温制御装置(水の加熱及び冷却)40によって加熱される。加熱された水は、例えばポンプ38によって、流体接続部114からプロファイルシステム102を介して、及び/又は流体接続部116からプロファイルシステム102′を介して第2の流体流通層108に供給され、そこから上方及び/又は下方に移動する。これにより内部(内側)Iに熱エネルギーが伝達される(矢印51参照)。いずれも、プロファイルシステム102′の上部において、加熱された水は流体接続部116を通って第1の流体流通層104に到達し、そこから加熱された水は、例えば重力によってプロファイルシステム102の下部に移動する。そうでなければ、加熱された水は、流体接続部114を通って(下部)プロファイルシステム102を介して第1の流体流通層104に供給され、そこから加熱された水は、例えばポンプ38によって(上部)プロファイルシステム102′へ上方移動することもできる。第1の流体流通層104の水に含まれる熱エネルギーが環境に伝達されるにつれ、外側Oに広がる寒気のために水が冷却される。流体流通層104、108の温度制御により、多層ファサードシステム100を通る熱流束を低減できる。このことは、内部コンディショニングのためのエネルギー節約、及び寒冷な気候条件における快適な室内環境に貢献する。
【0154】
図10a及び10bは、図6に係る多層ファサードシステム100の可能な変更を示す。ファサードシステム100は、図6で説明した構成にほぼ対応しているため、重複を避けるためにそこでの説明を参照する。
【0155】
対照をなす点として、本多層ファサードシステム100は、図1に係る装置10に対応するさらなる装置10′を有する。さらなる装置10′は、ファサードシステム100の内層110′を形成し、さらなる装置10′のテキスタイル要素12′の第1の(透水性)層14′は、内部(内側)Iに面している。これにより、さらなる装置10′は、第1の装置10と比較して横方向に反転された向きとなっている。
【0156】
さらなる装置10′のフレームプロファイル34″及び34'''は、ファサードシステム100のモジュラープロファイルシステム102、102′に接続されている。さらなる装置10′の3Dテキスタイル構造13′として規定され、又はそれを具現化しているテキスタイル要素12′は、例えば(上部)フレームプロファイル34'''を介して流体接続部116′で流体接続される。さらに、さらなる装置10′のテキスタイル要素12′は、例えばさらなる装置10′の(下部)フレームプロファイル34″を介して流体接続部114′と流体接続される。
【0157】
図10bは、例えば暑い気象条件時に蒸発によって排水している際の多層ファサードシステム100を示す。流体接続部116、116′を介して、水は、プロファイルシステム102′へ、及び/又は、テキスタイル要素12、12′の上流に配置された給水装置26、26′のフレームプロファイル34′、34″へ供給され、及び/又は給水装置67、67′を介してテキスタイル要素12、12′へ直接供給される。テキスタイル要素12、12′に供給される水は、装置10によって以前に吸収された水、及び/又は公共配水網によって多層ファサードシステム100に供給された水であり得る。
【0158】
蒸発のため、水はフレームプロファイル34′、34'''からテキスタイル要素12、12′に入る。重力の影響下で、供給された水は、テキスタイル要素12、12′内を第2の、導水(撥水)層16、16′に沿って下方移動し、接続糸18、18′を介して第1の層14、14′に移動する。このプロセスの間、装置10、10′内及び上の水、例えばテキスタイル要素12、12′内及び上の水は、装置10の外側Oに広がる太陽放射及び熱によって(矢印55参照)、及び/又は建造物内部において装置10′の内側Iの熱によって(矢印56を参照)、蒸発する。装置10及び/又はさらなる装置10′における蒸発プロセスは、対応する冷却エネルギーを放出させ、多層ファサードシステム100の外側O及び/又は内側Iにおける熱負荷の影響を低減する。
【0159】
第1の、透水層14′を有する構成では、内部(内側)Iに面するさらなる装置10′によって排出される水は、室内空気を加湿するためにさらに使用され得る。そうでなければ、第1の、非透水層14′及び/又は第1の層14′に(付加的に)塗布される非透水層を有する構成(不図示)において、蒸発した水は、内部Iの加湿を回避及び/又は低減するため、装置10′の内部、例えばテキスタイル要素12′の内部に保持され、及び排出されることができる。本実施形態では、装置10′内部の水及び空気の流れは冷却エネルギーを生じ、内部に湿度を放出することなく内側Iに面する層14′の表面温度を低下させる。
【0160】
適切な方法で、蒸発挙動を改善するため、より多くの水を包含するための追加の細孔テキスタイル層、例えばマルチフィラメント及び/又は不織布及び/又は超吸収剤等(不図示)を、テキスタイル要素12、12′の第2の層16、16′と任意選択で適用された(別個の)導水(撥水)層との間に適用することができ、このことは、水の消費量を削減しながら、より均一な湿潤とより高い蒸発冷却に貢献する。
【0161】
任意選択で、装置10′の、内部に面する第1の、透水層14′を有する構成において、より多くの水を包含するための追加の細孔テキスタイル層、例えばマルチフィラメント及び/又は不織布及び/又は超吸収剤等(不図示)を、テキスタイル要素12′の第1の層14′と任意選択で塗布された(別個の)非透水層(不図示)との間に適用でき、このことは、水の消費量を削減しながら、より均一な湿潤とより高い蒸発冷却に貢献する。
【0162】
有利な方法で、装置10及び装置10′は、同時に、すなわち相互に一緒に、あるいは独立して、すなわち相互に別々に動作させることができる。内部冷却及び/又は室内空気加湿のために装置10′のみを作動させる場合、水は流体接続部116′を介して給水装置26′へ、例えばフレームプロファイル34'''へ、及び/又はテキスタイル要素12′の給水装置67′へのみ供給される。装置10のみの同等の起動については、繰り返しを避けるために図7bの説明を参照する。
【0163】
給水装置26、26′に代えて若しくは加えて、例えばフレームプロファイル34′、34'''を介して、(追加の)給水装置67、67′を設けることができる。これにより、水は、正確に又は直線的に、好ましくはいくつかの場所で及び/又は異なる高さで、テキスタイル要素12、12′に供給されることが可能となる。給水装置67、67′は、装置10、10′の、例えばテキスタイル要素12、12′の高さ及び/又は幅に沿って並んで配置された1又は複数のインジェクタ、例えばウォータージェット、(有孔)パイプ又はホースを含んでいてもよい。別の実施形態では、給水装置67、67′は、平面状の有孔給水装置として構成されてもよく、有孔構成において、流体流通層104及び/又は108内の圧力を調節することにより、水が流体流通層104及び/又は108からテキスタイル要素12、12′に均一に供給されるように、例えば流体流通層104及び/又は108は穿孔され、装置10、10′に、例えばテキスタイル要素12、12′に、第2の、導水層16、16′を介して接続され得る。好ましくは、給水装置67、67′は、給水装置26、26′と、例えばフレームプロファイル34′、34″と、プロファイルシステム102′を介して、給水管路22、22′を介して、及び/又は流体接続部116、116′を介して、流体接続され得る。また、給水装置67、67′は、集水装置24、24′と、例えばフレームプロファイル34、34″と、プロファイルシステム102を介して、排水管路20、20′を介して、及び/又は流体接続部114、114′を介して、流体接続され得る。水の蒸発は、給水装置67、67′による配水及び水量に関して蒸発面の均一な湿潤によって最適化され得る。
【0164】
図11は、図6に係る多層ファサードシステム100の可能な変更を示す。ファサードシステム100は、図6で説明した構成にほぼ対応しているため、重複を避けるためにそこでの説明を参照する。
【0165】
対照をなす点として、本多層ファサードシステム100は、変更された図1に記載の装置10を含む。テキスタイル要素12は、テキスタイル要素12をいくつかの折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション30、30′、30″、30'''に分割する折り畳み構造28、28′、28″を含む。
【0166】
折り畳み可能な、折り畳まれた、旋回可能な及び/又は回転可能なセクション30、30′、30″、30'''は、アクチュエータ32、32′、32″、例えば線形及び/又は回転アクチュエータによって操作され得る。一端において、アクチュエータ32、32′、32″は、例えば鋼、木材、アルミニウム、及び/又はポリマー等、又はそれらの組み合わせの機械的下部構造57に接続され、それはプロファイルシステム102、102′及び/又はフレームプロファイル34、34′及び/又は装置10の保持装置92に取り付けられている。他端において、アクチュエータ32、32′、32″はテキスタイル要素12に、例えば折り畳み構造28、28′、28″に接続され、それにより、アクチュエータ32、32′、32″が操作されるとセクション30、30′、30″、30'''が折り畳まれ、旋回され及び/又は回転され得る。テキスタイル要素12と機械的下部構造57との間には、空気空間(空気層)69が配置されている。
【0167】
折り畳み構造を作動させることにより、集水面及び/又は蒸発面は最大化され、例えば降水滴の各々及び/又は太陽入射角に対し具体的に調整され得る。それにより吸水・排出挙動、及び排水・蒸発挙動を改善できる。作動は、手動にて、あるいはセンサ、アクチュエータ、制御ユニットを統合することで適応的方法にて自動的に操作され得る。
【0168】
上で説明したように、気候及び/又は環境データ(例えば周囲温度、湿度、太陽放射量、風データ及び/又は雨データ)を記録するためのセンサ(不図示)、及び/又はアクチュエータ32、32′、32″を動作及び/又は調整するための制御ユニットを設けることができる。制御ユニット(不図示)は、装置10及び/又はテキスタイル要素12及び/又はそのセクション30、30′、30″、30'''が、衝突する降水に対して及び/又は太陽入射に向かって自動的に調整されるべく構成できる。このことは、装置の性能を最大化するのに役立つ。
【0169】
制御ユニット(不図示)は、1又は複数のセンサ及びアクチュエータ32、32′、32″と相互作用すべく構成できる。装置及び/又はテキスタイル要素12及び/又はセクション30、30′、30″、30'''の動作は、1又は複数のさらなるセンサで監視され得る。方法、例えばソフトウェアは、装置10及び/又は多層ファサードシステム100を操作するための制御ユニットに実装される。
【0170】
任意選択で、折り畳み構造は、アディティブ及び/又はサブトラクティブ・マニュファクチャリング法によっても、例えばテキスタイル(3D)印刷及び/又はテキスタイル接続手段によっても、テキスタイル要素に導入され得る。
【0171】
装置10の、例えばテキスタイル要素12の吸収(収集)及び/又は排出(蒸発)表面積を単純に最大にする目的で、折り畳み構造は作動されずに装置10及び/又はテキスタイル要素12内に導入されてもよい。この場合、システムはパッシブのみである。折り畳み構造の量、例えばセクションのサイズに制限はない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
【国際調査報告】