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特表2023-546910組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20231031BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231031BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231031BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231031BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231031BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20231031BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20231031BHJP
   C07K 14/18 20060101ALI20231031BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N7/01
A61K38/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61P37/04
A61K39/00 H
A61P31/12
G01N33/53 D
G01N33/536 C
G01N33/543 545A
C07K14/18
C07K16/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524114
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2021124794
(87)【国際公開番号】W WO2022083600
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/121786
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】520359778
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ (チャイナ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】チェン ニン
(72)【発明者】
【氏名】リウ フアンフアン
(72)【発明者】
【氏名】トン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジアイン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA94Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA02
4C084AA13
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA51
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、動物の健康の分野に関する。特に、本発明は、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるエピトープに少なくとも1つの突然変異を含む組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質に関する。さらに、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む免疫原性組成物、ならびに動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置するための免疫原性組成物の使用を提供する。さらに、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するための方法およびキットを提供する。さらに、本発明は、E2タンパク質を産生するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E2タンパク質のアミノ酸10位、41位、又は64位の6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、未修飾の6B8エピトープが、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される、組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項2】
E2タンパク質の6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異が、このような突然変異した6B8エピトープへの6B8モノクローナル抗体の結合の特異的阻害をもたらす、請求項1に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項3】
6B8モノクローナル抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、または
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、または
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含む、または
(iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
請求項1または2に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項4】
6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープが、少なくともE2タンパク質の14位、22位、24位、24位/25位、10位、41位、及び/又は64位にあるアミノ酸残基によって定義される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項5】
6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープが、少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、E24、E24/G25、Y10、D41および/もしくはR64によって定義される、または少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、G24、G24/G25、Y10、D41および/もしくはR64によって定義される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項6】
E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸24位/25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸22位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項7】
E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D、若しくはIに置換されており、Rが好ましく、E2タンパク質の24位及び25位のアミノ酸が、それぞれ、R、D、若しくはIに(Rが好ましい)及びD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPに(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)置換されており、E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、Q、若しくはRに置換されており、E2タンパク質の22位のアミノ酸が、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSに置換されており、A、Q、D、E、N、及びSが好ましく、E2タンパク質の10位のアミノ酸が、A若しくはPに置換されており、E2タンパク質の41位のアミノ酸が、A、N、若しくはEに置換されており、並びに/又はE2タンパク質の64位のアミノ酸が、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWに置換されており、A、K、及びWが好ましい、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項8】
E2タンパク質のアミノ酸24位でのE若しくはGからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸24位でのE若しくはGからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、並びに/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項9】
組換えCSFV E2タンパク質が、C株または野外株QZ07もしくはGD18に由来する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項10】
組換えCSFV E2タンパク質が、野外株QZ07に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、又はE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)及びアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換を含んでもよい、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項11】
組換えCSFV E2タンパク質が、野外株GD18に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、又はE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)及びアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換を含んでもよい、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項12】
組換えCSFV E2タンパク質が、C株に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのGからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからKへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)をさらに含んでもよい、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項13】
配列番号15~20、22~33、35~40、49~72、および74~81からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項14】
豚Fc断片などのFc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており、好ましくは、豚Fc断片などのFc断片が、好ましくはペプチドリンカーを介してE2タンパク質のC末端に連結されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする組換え核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸又は請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、CHO細胞などの哺乳動物細胞である宿主細胞。
【請求項18】
(i)請求項16に記載の宿主細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、および
(ii)CSFV E2タンパク質を単離する、および任意に精製するステップ
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えE2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)。
【請求項20】
弱毒化されている、請求項19に記載の組換えCSFV。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質、請求項15に記載の組換え核酸、請求項16に記載のベクター、及び/又は請求項19若しくは20に記載の組換えCSFVを含む免疫原性組成物。
【請求項22】
ワクチン、例えばマーカーワクチンまたはDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)ワクチンである、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
請求項21または22に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法において使用するための、請求項21または22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
請求項21または22に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法。
【請求項25】
a)サンプルを得るステップ、および
b)前記サンプルを免疫試験において試験するステップ
を含む、CSFVに感染した動物を、請求項21または22に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法。
【請求項26】
免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープまたはその抗原結合断片を特異的に認識する抗体がサンプル中のCSFV E2タンパク質に結合し得るかどうかを試験するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップ、および/または組換えCSFV E2タンパク質の突然変異した6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
免疫試験が、EIA(酵素免疫アッセイ)またはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、好ましくは二重競合ELISAである、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、または
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、または
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含む、または
(iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープまたはその抗原結合断片を特異的に認識する抗体を含む、CSFVに感染した動物を、請求項21または22に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキット。
【請求項31】
組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ、
b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法。
【請求項32】
組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)培地での高密度懸濁培養に適応させたCHO細胞を増殖させるステップ、
b)ステップa)のCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は請求項1~14のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法。
【請求項33】
ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約32~37℃、好ましくは約32℃で培養される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約5~8%CO2の加湿雰囲気で培養される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項35】
組換えCSFV E2タンパク質が、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の健康の分野に関する。特に、本発明は、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるエピトープに少なくとも1つの突然変異を含む組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質に関する。さらに、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む免疫原性組成物、ならびに動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置するための免疫原性組成物の使用を提供する。さらに、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するための方法およびキットを提供する。さらに、本発明は、E2タンパク質を産生するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
古典的豚熱(CSF)は、著しい経済損失を生じさせる、豚およびイノシシの高伝染性の疾患である。この疾患の原因物質は、古典的豚熱ウイルス(CSFV)である。中国では、予防的ワクチン接種および根絶戦略の組み合わせが、CSFのアウトブレイクを制御するために実行されている。しかし、孤発性のCSFアウトブレイクおよび持続的な感染が、中国のほとんどの地域において依然として報告されている。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野において、安全で、効果的で、かつ、それをワクチン接種された動物を、野生型の野外株に感染している動物から区別することができる、新規なCSFVワクチンが依然として必要とされている。
一態様において、本発明は、E2タンパク質の6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、(未修飾の)6B8エピトープが6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質をコードする単離核酸を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
一態様において、本発明は、それぞれ本発明に従った、組換えCSFV E2タンパク質、組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸、またはこのような核酸をコードするベクターを含む免疫原性組成物を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の免疫原性組成物をそれを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法を提供する。
一態様において、本発明は、a)動物からサンプルを得ること、およびb)前記サンプルを免疫試験において分析することを含む、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法を提供する。
一態様において、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】CSFV E2の構造および6B8エピトープの重要なアミノ酸を示す図である。
図2】野生型CSFV E2および6B8エピトープに様々な置換を有する突然変異CSFV E2の構築を示す図である。
図3】mAb 6B8がほとんどのCSFV株を認識するがBVDVウイルスとの反応は有さないことを示す図である。
図4】CSFV単離体、BVDV株、および一部の他のペスチウイルスの配列アラインメントを示す図である。
図5】14位、22位、または24位/25位のアミノ酸残基がmAb 6B8の結合に重要であることを示すIFAの結果を示す図である。(図5A-5C)
図6】A)- SDS PAGE及びウェスタンブロッティングの両方によって確認された、wt-E2及びE2-KARD又はE2-KRDの精製結果(図6A)、及びB)- 精製されたE2-KARD又はE2-KRDが、6B8染色で負の結果を示した(図6B)ことを示す図である。
図7】SDS PAGE及びウェスタンブロッティングの両方によって確認された、QZ07-E2-Fc-WTの精製結果を示す図である。
図8】有効性研究におけるチャレンジ後の体温を示す図である。
図9】有効性研究におけるチャレンジ後の白血球数を示す図である。
図10】有効性研究におけるチャレンジ後の死亡率を示す図である。
図11】有効性研究におけるチャレンジ後の臨床スコアを示す図である。
図12】有効性研究の間の血清応答を示す図である。
図13】E2タンパク質がCHO系において高収量で発現されたことを示す図である。
図14】CHO系で発現されたE2タンパク質が免疫原性であることを示す図である。
図15】E2における6B8結合のための追加の重要な残基の同定を示す図である。CHO細胞発現系におけるE2タンパク質の突然変異形態のIFA検出は、10、41、又は64位のアミノ酸残基が、mAb 6B8結合に重要であることを示す。
図16】CHO細胞発現系におけるE2タンパク質の突然変異形態のウェスタンブロット検出を示す図である。
図17】E2における6B8結合を阻害するための22位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
図18】E2における6B8結合を阻害するための24位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
図19】E2における6B8結合を阻害するための25位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
図20】E2における6B8結合を阻害するための64位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の態様を記載する前に、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、複数形での言及を含むことに留意されなくてはならない。したがって、例えば、「エピトープ(a or an epitope)」への言及は複数のエピトープを含み、「ウイルス」への言及は、1つまたは複数のウイルスおよび当業者に公知のこれらの同等物への言及であり、他もまた同様である。用語「および/または」は、この用語によって接続される項目の任意の組み合わせを包含することを意図しており、全ての組み合わせを個別に列挙していることに等しい。例えば、「A、B、および/またはC」は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、ならびに「AおよびBおよびC」を包含する。別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されるものに類似のまたは同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料がここでは記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物において報告されているウイルス株、細胞系、ベクター、および方法論を記載および開示する目的で、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書において記載されるいずれの刊行物も、先行発明を理由に本発明がこのような開示に先行する権利を有するものではないと承認すると解釈されるものではない。
【0006】
一態様において、本発明は、E2タンパク質の6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、(未修飾の)6B8エピトープが6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される、CSFV E2タンパク質を提供する。
本明細書において使用される用語「CSFV」は、フラビウイルス(Flaviviridae)科のペスチウイルス(Pestivirus)属の古典的豚熱ウイルス(CSFV)種に属する全てのウイルスを指す。
【0007】
用語「組換え」は、遺伝子操作によって改変されている、再配列されている、または修飾されているタンパク質または核酸を指す。しかし、この用語は、自然発生的な突然変異などの天然の事象の結果生じるポリヌクレオチド、アミノ酸配列、ヌクレオチド配列における改変は指さない。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は単離される。
ポリペプチドまたは核酸分子は、これらのネイティブな生物学的由来源および/またはこれらが得られた元である反応培地もしくは培養培地中においてこれらに通常付随している少なくとも1種の他の成分、例えば、別のタンパク質/ポリペプチド、別の核酸、別の生物学的成分もしくは高分子、または少なくとも1種の汚染物質、不純物、もしくは微量成分から、これらが分離されている場合、例えば前記由来源または培地と比較して、「単離されている」とみなされる。特に、ポリペプチドまたは核酸分子は、それが少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも100倍、および最大1000倍、またはそれを超えて精製されている場合、「単離されている」とみなされる。「単離された形態の」ポリペプチドまたは核酸分子は、適切な技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの適切なクロマトグラフィー技術を使用して決定すると、好ましくは本質的に均質である。
【0008】
本明細書における「E2タンパク質の6B8エピトープ」はまた、本明細書において開示されている6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質のエピトープも指す。6B8エピトープは立体構造エピトープであり得る。6B8エピトープは、E2タンパク質の24、25、14、22、10、41、及び/又は64位に規定のアミノ酸を含み得る。例えば、6B8エピトープは、E2タンパク質の14位にS、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを含み得る。
【0009】
用語「6B8モノクローナル抗体」は、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を指し、6B8モノクローナル抗体は、6B8エピトープ、特にE2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを少なくとも含む6B8エピトープを特異的に認識する。好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含むモノクローナル抗体を指す。好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むモノクローナル抗体を指す。さらに好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含むモノクローナル抗体を指す。さらに好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体を指す。
【0010】
本明細書において使用される場合、「抗体」は、完全長免疫グロブリンの結合特異性能力を保持する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部を含有するその任意の断片を含む、天然の、または部分的にもしくは完全に合成によって産生された、例えば組換えによって産生された、免疫グロブリンおよび免疫グロブリン断片を指す。したがって、抗体には、免疫グロブリンの抗原結合ドメインに相同なまたは実質的に相同な結合ドメイン(抗体結合部位)を有するあらゆるタンパク質が含まれる。抗体には、抗体断片が含まれる。本明細書において使用される場合、抗体という用語としては、したがって、合成抗体、組換産生抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、および抗体断片が含まれる。本明細書において提供される抗体には、任意の免疫グロブリン型(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA、およびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)のメンバーが含まれる。
【0011】
本明細書において使用される用語「可変領域」は、当技術分野においておよび以下で「フレームワーク領域1」または「FR1」、「フレームワーク領域2」または「FR2」、「フレームワーク領域3」または「FR3」、および「フレームワーク領域4」または「FR4」とそれぞれ呼ばれる4つの「フレームワーク領域」から基本的になる免疫グロブリンドメインを意味する。これらのフレームワーク領域には、当技術分野においておよび以下で「相補性決定領域1」または「CDR1」、「相補性決定領域2」または「CDR2」、および「相補性決定領域3」または「CDR3」とそれぞれ呼ばれる3つの「相補性決定領域」または「CDR」が介在している。したがって、免疫グロブリン可変領域の一般的な構造または配列は、以下のように示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。VHまたはVHは重鎖可変領域を指し、VLまたはVLは軽鎖可変領域を指す。同様に、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3は、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3をそれぞれ指す。VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3をそれぞれ指す。
【0012】
本明細書において使用される場合、「抗体断片」または抗体の「抗原結合断片」は、完全長よりは短いが、抗原を結合する抗体可変領域の少なくとも一部分(例えば、1つもしくは複数のCDRおよび/または1つもしくは複数の抗体結合部位)を有し、したがって完全長抗体の結合特異性、および特異的結合能力の少なくとも一部を保持する、完全長抗体の任意の部分を指す。したがって、抗原結合断片は、抗体断片が由来する元である抗体と同一の抗原に結合する抗原結合部分を有する抗体断片を指す。抗体断片には、完全長抗体の酵素処理によって産生された抗体誘導体、ならびに合成によって、例えば組換えによって産生された誘導体が含まれる。抗体断片は、抗体に含まれる。抗体断片の例としては、限定はしないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv、dsFv、ダイアボディ、FdおよびFd’断片、ならびに、修飾断片を含む他の断片が含まれる(例えば、Methods in Molecular Biology, Vol 207: Recombinant Antibodies for Cancer Therapy Methods and Protocols (2003); Chapter 1; p 3-25, Kipriyanovを参照されたい)。断片は、例えばジスルフィド架橋および/またはペプチドリンカーによって共に連結された複数の鎖を含み得る。抗原結合断片は、(例えば、対応する領域を置き換えることによって)抗体フレームワークに挿入されると、抗原に免疫特異的に結合する(すなわち、少なくともまたは少なくとも約107~108-1のKaを示す)抗体を生じさせる、任意の抗体断片を含む。
【0013】
用語「6B8モノクローナル抗体の抗原結合断片」は、6B8モノクローナル抗体の断片を指すか、又は6B8エピトープ、特にE2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを少なくとも含む6B8エピトープを特異的に認識するアミノ酸配列を少なくともコードする。この用語は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、ならびに/または、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3をコードするアミノ酸断片をさらに包含する。さらに、この用語はまた、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含むアミノ酸断片も包含する。さらに好ましくは、この用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によってコードされるアミノ酸断片を包含し、このアミノ酸断片は、6B8エピトープに特異的に結合する。
【0014】
用語「突然変異」は、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む。突然変異という用語は当業者に周知であり、当業者は、さらなる苦労を伴うことなく突然変異を生成させることができる。
一態様において、本発明のE2タンパク質の6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異は、このような突然変異した6B8エピトープへの6B8モノクローナル抗体の結合の特異的阻害をもたらす。
【0015】
用語「特異的に阻害する又は特異的な阻害」は、6B8抗体が、未修飾の6B8エピトープと比較して、特に、E2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、64位にR、又はそれらの組合せを有する未修飾の6B8エピトープと比較して、少なくとも2分の1、好ましくは5分の1、さらに好ましくは10分の1、及びまたさらに好ましくは50分の1の親和性で、突然変異6B8エピトープに結合することを意味する。「親和性」は、抗体分子上の単一の抗原結合部位と単一のエピトープとの間の相互作用である。親和性は、会合定数KA=k会合/k解離、または解離定数KD=k解離/k会合によって表される。さらに好ましくは、用語「特異的に阻害するまたは特異的な阻害」は、6B8モノクローナル抗体、特に、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体が、特異的免疫蛍光アッセイにおいて、好ましくは実施例5で記載される特異的免疫蛍光アッセイにおいて、または、特異的ドットブロットアッセイにおいて、好ましくは実施例6で記載される特異的ドットブロットアッセイにおいて、本発明に従った突然変異6B8エピトープに検出可能に結合しないことを意味する。特異的免疫蛍光アッセイおよび特異的ドットブロットアッセイの両方は、特異的阻害を判定するために使用することができるが、2つのアッセイから得られた結果が一致しない場合には、ドットブロットアッセイから得られた結果が優先される。
【0016】
用語「置換」は、アミノ酸が同一の位置で別のアミノ酸によって置き換えられていることを意味する。したがって、置換という用語は、アミノ酸の除去/欠失と、その後の、同一の位置での別のアミノ酸の挿入とを網羅する。
用語「E2タンパク質」は、CSFVのポリプロテイン(Npro-C-Erns-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5B)からの最終切断産物として生じる、プロセシングされたE2タンパク質を指す。当業者には、CSFVのあらゆるE2タンパク質を本発明において使用することができることが認識されよう。本発明の一態様において、組換えE2タンパク質は、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される6B8エピトープを有する野生型E2タンパク質に由来する。例えば、E2タンパク質は、C株などの公知のCSFV株に、または本明細書において定義されるQZ07もしくはGD18などの新たな単離体に由来し得る。例えば、野外株QZ07のE2タンパク質は、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有し、野外株GD18のE2タンパク質は、配列番号10で示されるアミノ酸配列を有し、野外株GD191のE2タンパク質は、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有し、そして、C株のE2タンパク質は、配列番号21で示されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
本発明の一態様において、組換えE2タンパク質は、配列番号9、10、34および21のいずれか1つに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むが、本明細書において開示されている6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含む。
2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、配列間で同一のアミノ酸のパーセンテージを示す。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の配列同一性のレベルを評価するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、配列分析ソフトウェアが、アミノ酸配列の同一性を決定するために頻繁に使用される。例えば、同一性は、NCBIデータベースにあるBLASTプログラムを使用することによって決定することができる。配列同一性の決定については、例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987、およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照されたい。
【0018】
本発明の好ましい態様において、本明細書において開示されている6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を有する組換えE2タンパク質は、免疫原性であり、好ましくは、CSFVに対する防御免疫を付与する。E2タンパク質は、4つの抗原性ドメインであるAドメイン、Bドメイン、Cドメイン、およびDドメインを有し、これらのドメインの全ては、E2タンパク質のN末端に位置する。これら4つのドメインは、一方がB/Cドメインの単位であり、他方がA/Dドメインを含む、2つの独立した抗原性単位を構成している。B/Cドメインはアミノ酸1位から84位/111位であり、D/Aドメインは、アミノ酸77位から111位/177位に位置している。さらに、B/Cドメインは、アミノ酸4Cと48Cとの間の推定上のジスルフィド結合によって連結されており、一方、単位D/Aは、一方がアミノ酸103Cと167Cとの間であり、他方がアミノ酸129Cと139Cとの間である、2つのジスルフィド結合で形成されている。これらのシステイン残基は、E2タンパク質の立体構造の抗原性構造に不可欠である。抗原性モチーフ(82~85LLFD)は、回復期血清の結合のためのE2タンパク質の抗原性構造に重要である。別のモチーフ(RYLASLHKKALPT、アミノ酸64~76位)もまた、E2タンパク質の立体構造エピトープの認識の構造的完全性に重要であると同定されている。加えて、上記の抗原性ドメインの1つのみを有するE2タンパク質が免疫原性を維持しており、感染性CSFVのチャレンジから豚を防御し得ることが報告されている。したがって、本発明の好ましい態様において、本明細書において記載される、6B8エピトープ内に少なくとも1つの修飾を有する組換えE2タンパク質は、上記の抗原性ドメインのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1つを保持している。好ましくは、本発明の組換えE2タンパク質は、CSFVに対する防御免疫を付与し得る。一態様において、本明細書において定義される6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異を、CSFVに対する組換えE2タンパク質の防御免疫原性にほとんど影響することなく導入することができる。
【0019】
本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープは、少なくともE2タンパク質の14位、22位、24位、24及び25(「24/25」)位、10位、41位、並びに/又は64位のアミノ酸残基によって定義される。
本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープは、例えば単離体QZ07、GD18、またはGD191では、少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、E24、E24/G25、Y10、D41、および/またはR64によって定義される。本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープは、例えばC株では、少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、G24、E24/G25、Y10、D41、および/またはR64によって定義される。
【0020】
アミノ酸残基の番号付けは、プロセシングされたE2タンパク質におけるN末端からのアミノ酸位置、例えば、配列番号9または10において典型的な様式で示されるアミノ酸位置を指す。しかし、アミノ酸位置は、ポリプロテイン(Npro-C-Erns-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5Bを有する)と比較して、例えば、配列番号11または12において典型的な様式で示されるアミノ酸位置と比較してさらに定義することができる。例えば、E2タンパク質の14位、22位、24位、25位、10位、41位、及び64位のアミノ酸残基は、ポリプロテインの703位、711位、713位、714位、699位、730位、及び753位のアミノ酸残基に対応する。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸24位/25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸22位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換を含み、アミノ酸64位での置換が好ましい。
【0021】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換を含み、アミノ酸64位での置換が好ましい。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換及びE2タンパク質のアミノ酸25位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換及びE2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
【0022】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸25位での置換、及びE2タンパク質のアミノ酸14位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
【0023】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換及びE2タンパク質のアミノ酸22位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸25位での置換、及びE2タンパク質のアミノ酸22位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
【0024】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFVタンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換及びE2タンパク質のアミノ酸22位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、及びE2タンパク質のアミノ酸22位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
【0025】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、及びE2タンパク質のアミノ酸22位での置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換からなる群から選択され、アミノ酸64位での置換が好ましい少なくとも1つのさらなる置換を含む。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸22位での置換、およびE2タンパク質のアミノ酸64位での置換を含む。
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質は、以下の表1~7に定義される、E2タンパク質のアミノ酸位置での置換を含む。例えば、表1の2行目は、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質が、E2タンパク質のアミノ酸10位(「10位」)に置換を含むことを意味し、表1の3行目は、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質が、E2タンパク質のアミノ酸10位及び14位に置換を含むことを意味する、などである。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質では、E2タンパク質の10位のアミノ酸はA若しくはPに置換されており、E2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、Q、若しくはRに置換されており、E2タンパク質の22位のアミノ酸は、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSに置換されており、A、Q、D、E、N、及びSが好ましく、E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D、若しくはIに置換されており、Rが好ましく、E2タンパク質の25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPに置換されており、D、E、K、L、N、R、T、及びVが好ましく、E2タンパク質の41位のアミノ酸は、A、N、若しくはEに置換されており、並びに/又はE2タンパク質の64位のアミノ酸は、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWに置換されており、A、K、及びWが好ましい。
【0035】
本発明の一態様において、表1~7に記載のアミノ酸置換は、上記段落に記載の特定の置換であると理解される。例えば、表1~7に記載のE2タンパク質の10位のアミノ酸は、A若しくはPに置換され得、表1~7に記載のE2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、Q、若しくはRに置換され得、表1~7に記載のE2タンパク質の22位のアミノ酸は、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSに置換され得、A、Q、D、E、N、及びSが好ましく、表1~7に記載のE2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D、若しくはIに置換され得、Rが好ましく、表1~7に記載のE2タンパク質の25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPに置換され得、D、K、L、N、R、T、及びVが好ましく、表1~7に記載のE2タンパク質の41位のアミノ酸は、A、N、若しくはEに置換され得、並びに/又は表1~7に記載のE2タンパク質の64位のアミノ酸は、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWに置換され得、A、K、及びWが好ましい。表1~7内の全ての考え得る並び替えを実施し、例えば、突然変異10Aを突然変異14K、14Q、若しくは14Rと組み合わせるか、又は突然変異10Pを突然変異14K、14Q、若しくは14Rと組み合わせることなどは、当業者の知識内にある。
【0036】
本発明の一態様において、本発明に従ったE2タンパク質の6B8エピトープ内のアミノ酸置換は、E2タンパク質の10位にアミノ酸A若しくはP、E2タンパク質の14位にアミノ酸K、Q、若しくはR、E2タンパク質の22位にアミノ酸A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはS、E2タンパク質の24位にアミノ酸R、D、若しくはI、E2タンパク質の25位にアミノ酸D、K、L、N、R、T、V、E、若しくはP、E2タンパク質の41位にアミノ酸A、N、若しくはE、及び/又はE2タンパク質の64位にアミノ酸A、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWを含み、アミノ酸22位ではA、Q、D、E、N、及びSが好ましく、アミノ酸24位ではRが好ましく、アミノ酸25位ではD、K、L、N、R、T、及びVが好ましく、E2タンパク質のアミノ酸64位ではA、K、及びWが好ましい突然変異6B8エピトープをもたらす。
【0037】
当業者には、6B8エピトープが様々なCSFV株の間で進化的に保存されていることから、本発明の組換えCSFV E2タンパク質が様々なCSFV単離体に由来し得ることが認識されよう。
本発明の一態様において、本発明の組換えCSFV E2タンパク質は、ジェノグループ2.1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば野外株GD18またはQZ07に由来する。野外株QZ07は、配列番号13で示される完全長ヌクレオチド配列を有するか、または、配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するポリプロテインを含むかもしくは発現する。野外株GD18は、配列番号14で示される完全長ヌクレオチド配列を有するか、または、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するポリプロテインを含むかもしくは発現する。
本発明の一態様において、本発明の組換えCSFV E2タンパク質は、ジェノグループ1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、当技術分野において周知のC株に由来する。
【0038】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株QZ07に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、並びに/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む。
【0039】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株QZ07に由来し、かつアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換をさらに含んでもよい。
【0040】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株QZ07に由来し、かつアミノ酸24位でのEからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、又はRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、又はEへの置換(A及びRが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、又はWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株GD18に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含んでもよい。
【0041】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株GD18に由来し、かつアミノ酸24位でのEからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換を含んでもよい。
【0042】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、野外株GD18に由来し、かつアミノ酸24位でのEからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、又はRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、又はSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、又はWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む。
【0043】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、C株に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのGからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換を含んでもよい。
【0044】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、C株に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのGからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換を含んでもよい。
【0045】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、例えば、C株に由来し、かつアミノ酸24位でのGからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、又はRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、又はSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、又はWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む。
【0046】
本発明の一態様において、可溶性E2タンパク質を得るために、本発明に従った組換えE2タンパク質を、膜貫通ドメインを除去するためにトランケートすることができる。例えば、無傷の本発明に従ったE2タンパク質のC末端の最後の約40個のアミノ酸(例えば、42個または43個のアミノ酸)を欠失させてもよい。
本発明の一態様において、分泌形式の本発明に従った組換えE2タンパク質を得るために、シグナルペプチドをE2タンパク質のN末端に付加することができる。例えば、E1タンパク質の最後の約20個のアミノ酸、特に最後の16個のアミノ酸(例えばC株では)、または21~23個のアミノ酸(例えば、GD18もしくはQZ07では)を、本発明に従った組換えE2タンパク質のN末端に付加することができる。一態様において、シグナルペプチドは、配列番号41~43から選択されるアミノ酸配列を含み得る。当業者には、隠れた発現を可能にする他のシグナルペプチドもまた本発明において適用され得ることが認識されよう。
本発明の一態様において、E2タンパク質を、膜貫通ドメインを除去するためにトランケートすることができ、また、シグナルペプチドを、可溶性の分泌されたE2タンパク質を得るために、E2タンパク質のN末端に付加することができ、例えば、無傷のE2タンパク質の最後の43個のアミノ酸を欠失させてよく、そしてE1タンパク質の最後の16個のアミノ酸または21~23個のアミノ酸を、E2タンパク質のN末端に付加することができる。
【0047】
本発明の一態様において、組換えE2タンパク質はまた、同定および/または精製のための融合タグも含み得る。HisタグまたはFLAGタグなどのこのようなタグは、当技術分野において周知である。
本発明の一態様において、免疫グロブリンFc断片が、E2タンパク質に連結されていてもよい。本明細書において使用される用語「免疫グロブリンFc断片」は、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、さらに特に、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域並びに軽鎖定常領域1(CL1)を含まないタンパク質を指す。この用語は、免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の部分(つまり、重鎖定常領域のヒンジ領域)をさらに含んでもよい。また、免疫グロブリンFc断片は、重鎖定常領域1(CH1)の一部を含んでもよい。本明細書において使用される用語「免疫グロブリンFc断片」は、「Fc断片」と等価であることが理解される。
【0048】
本明細書において使用される用語「連結された」は、特に、ポリペプチド内で免疫グロブリンFc断片をE2タンパク質のC末端又はN末端に接続するためのあらゆる手段を指す。連結手段の例には、免疫グロブリンFc断片とE2タンパク質との共有結合による直接連結が含まれ得る。一態様において、Fc断片は、E2タンパク質のC末端に連結され得る。
一態様において、免疫グロブリンFc断片は、ペプチドリンカーを介してE2タンパク質に連結され得る。本明細書において使用される用語「ペプチドリンカー」は、1つ又は複数のアミノ酸残基を含むペプチドを指す。さらに特に、本明細書において使用される用語「ペプチドリンカー」は、2つの可変タンパク質及び/又はドメイン、例えばE2タンパク質及び免疫グロブリンFc断片を接続し得るペプチドを指す。本明細書において言及されるペプチドリンカーは、好ましくは、長さが3~20アミノ酸残基であるアミノ酸配列である。例えば、リンカー部分は、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸残基であるペプチドリンカーであり得る。ペプチドリンカーの例示的な配列は、GGS、GSGGSG、GGGGS、GGGGSGGGGSであり得る。一態様では、ペプチドリンカーのアミノ酸配列はGGS(配列番号91)である。
【0049】
一態様では、免疫グロブリンFc断片は豚IgG Fc断片である。一態様において、Fc断片は、E2タンパク質のC末端に連結され得る。一態様において、Fc断片は、ペプチドリンカーを介してE2タンパク質のC末端に連結され得る。一態様では、豚Fc断片のアミノ酸配列は、配列番号95によって示される。Fc断片をコードするヌクレオチド配列は、配列番号96によって示される。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号15~20、22~33、35~40、49~72、および74~81からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含む。
本発明の一態様において、本発明の組換えE2タンパク質は、6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異を有する、配列番号15~20、22~33、35~40、49~72、および74~81のいずれか1つに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
一態様において、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)を提供する。本発明の一態様において、組換えCSFVは弱毒化されている。
当業者には、6B8エピトープが様々なCSFV株の間で進化的に保存されていることから、本発明の組換えCSFVが様々なCSFV単離体に由来し得ることが認識されよう。本発明の一態様において、本発明の組換えCSFVは、ジェノグループ1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFVは、例えば野外株GD18又はQZ07に由来する。本発明の一態様では、本発明の組換えCSFVは、ジェノグループ1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFVは、当技術分野において周知のC株に由来する。
【0051】
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質及び/又は本発明の組換えCSFVを含む免疫原性組成物を提供する。
本明細書において使用される用語「免疫原性組成物」は、免疫原性組成物が投与される宿主において免疫学的応答を引き起こす少なくとも1種の抗原を含む組成物を指す。このような免疫学的応答は、本発明の免疫原性組成物に対する細胞性および/または抗体介在性の免疫応答であり得る。宿主はまた、「対象」とも記載される。好ましくは、本明細書において記載または言及される宿主または対象はいずれも、動物である。
【0052】
通常、「免疫学的応答」には、限定はしないが、以下の影響の1つまたは複数が含まれる:本発明の免疫原性組成物に含まれる1種または複数種の抗原に特異的に向けられる抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、ならびに/または細胞傷害性T細胞および/もしくはガンマ-デルタT細胞の産生または活性化。好ましくは、宿主は、防御免疫応答または治療応答のいずれかを示す。
「防御免疫応答」は、感染した宿主によって通常示される臨床徴候の低減または欠如のいずれか、より短い回復時間および/もしくは感染期間の短縮、または、感染した宿主の組織もしくは体液もしくは排出物における病原体力価の低下によって示される。
本明細書において使用される「抗原」は、限定はしないが、このような抗原またはその免疫学的に活性な成分を含む、宿主において目的の免疫原性組成物またはワクチンに対する免疫学的応答を引き起こす成分を指す。
宿主が防御免疫応答を示し、その結果、新たな感染に対する耐性が増強されるおよび/または疾患の臨床的重症度が低減するケースでは、免疫原性組成物は「ワクチン」と記載される。
【0053】
一態様において、本発明の免疫原性組成物はワクチンである。
本明細書において理解される用語「ワクチン」は、抗原性物質を含む獣医学的使用のためのワクチンであり、CSFV感染によって引き起こされる疾患に対する特異的かつ活性な免疫を誘発する目的で投与される。
好ましくは、本発明に従ったワクチンは、宿主動物において防御免疫応答を引き起こす、好ましくは本明細書において記載されるような組換えCSFV E2タンパク質を含む、サブユニットCSFVワクチンである。
ワクチンは、医薬組成物に典型的なさらなる成分をさらに含み得る。
【0054】
免疫応答を増強させるためのさらなる成分は、「アジュバント」と一般に呼ばれる構成成分、または、ワクチンに添加される、もしくはこのようなさらなる成分によるそれぞれの誘導の後に身体によって生成される、補助分子、例えば限定はしないが、インターフェロン、インターロイキン、もしくは成長因子である。本明細書において使用される「アジュバント」としては、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えば、Quil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge、MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンが含まれ得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方型);スクアランまたはスクアレンなどのイソプレノイド油;アルケンの、特にイソブテンまたはデセンのオリゴマー化の結果生じる油;直鎖状アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル、さらに特に、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)、またはプロピレングリコールジオレエート;分枝鎖状の脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルをベースにしているものであり得る。油は、エマルジョンを形成するために乳化剤と組み合わせて使用される。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特に、任意にエトキシ化されている、ソルビタンの、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)の、グリコールの、ポリグリセロールの、プロピレングリコールの、およびオレイン酸、イソステアリン酸、リシンオレイン酸、またはヒドロキシステアリン酸のエステル、ならびにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)、およびTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。典型的なアジュバントは、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の第147頁に記載されているSPTエマルジョン、およびこれと同一の本の第183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0055】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよび無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋している、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた、少なくとも3つの、好ましくは8つ以下のヒドロキシル基を有し、これら少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が、少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋している、このようなアクリルポリマーを記載している、米国特許第2,909,462号を参照することもできる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子を有するラジカル、例えば、ビニル、アリル、および他のエチレン不飽和基である。不飽和ラジカルは、それ自体、メチルなどの他の置換基を有し得る。カーボポールという名称で市販されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が特に適切である。これらは、アリルショ糖またはアリルペンタエリスリトールと架橋している。これらのうち、カーボポール974P、934P、および971Pに言及することができる。最も好ましいものは、カーボポール971Pの使用である。無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーとしては、コポリマーEMA(Monsanto)があり、これは、無水マレイン酸およびエチレンのコポリマーである。水中にこれらのポリマーを溶解すると酸性の溶液が生じ、この溶液は、免疫原性の免疫学的組成物またはワクチン組成物自体を組み込むアジュバント溶液を作製するために、好ましくは生理学的pHに中和される。
【0056】
さらなる適切なアジュバントとしては、数ある中でとりわけ、限定はしないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta、GA)、SAF-M(Chiron、Emeryville、CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)(組換えまたはその他)の易熱性エンテロトキシン、コレラ毒素、IMS 1314もしくはムラミルジペプチド、あるいは、天然のもしくは組換えのサイトカインもしくはこれらの類似体または内因性サイトカイン放出の刺激物質が含まれる。
【0057】
一態様において、免疫原性組成物は、適切なアジュバントと共に、油中水型エマルジョンに製剤される。アジュバントは、油および界面活性剤を含み得る。一態様において、アジュバントは、MONTANIDE(商標)ISA 71R VG(Seppic Incによる製造、カタログ番号:365187)である。一態様において、アジュバントは、Seppic ISA 206である。アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で添加され得る。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で添加される。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約500μg~約5mgの量で添加される。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約750μg~約2.5mgの量で添加される。最も好ましくは、アジュバントは、用量当たり約1mgの量で添加される。一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、用量当たり、アジュバントを含有する約7割の油相、および本発明のE2タンパク質を含有する約3割の水相を含む。
【0058】
本発明の一態様において、上記で定義される、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異、例えば、E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸24位/25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸22位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換は、マーカーとして使用される。
本明細書において使用される用語「マーカー」は、本発明に従った突然変異6B8エピトープを指す。本発明に従った突然変異6B8エピトープは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ配列(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)と異なる。したがって、本発明に従った突然変異6B8エピトープによって、典型的な免疫試験および/またはゲノム解析試験を使用して、突然変異していない6B8エピトープを有する天然に感染した動物を、本発明に従った突然変異6B8エピトープを有するワクチン接種された動物から区別することが可能となる。
【0059】
本発明の一態様において、本発明の免疫原性組成物は、マーカーワクチンまたはDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別(differentiation between infected and vaccinated animals))ワクチンである。
用語「マーカーワクチン」または「DIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)」は、上記に示すマーカーを有するワクチンを指す。したがって、マーカーワクチンは、ワクチン接種された動物を天然に感染した動物から区別するために使用することができる。本発明の免疫原性組成物はマーカーワクチンとして作用するが、それは、野生型CSFVでの感染とは対照的に、本発明のワクチンを接種された動物において、本発明に従った置換型6B8エピトープが検出され得るためである。典型的な免疫試験および/またはゲノム解析試験によって、本発明に従った置換型6B8エピトープは、野生型CSFVの6B8エピトープ配列(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)から区別され得る。最後に、マーカーエピトープは、家畜内に存在し得る他の生物によって誘導される偽陽性の血清学的結果を避けるために、病原体に特異的であるべきである。しかし、6B8エピトープは進化的に保存されている(配列アラインメントによる)ため、CSFVに特異的である(6B8 mAbはBVDVに結合しない)。したがって、本発明に従った置換型6B8エピトープは、マーカーワクチンにおける使用に非常に適している。
有効なマーカーワクチンの主な利点は、ワクチンが、急性に感染した豚、またはワクチン接種された豚集団においてサンプルを採取するある程度(例えば、少なくとも約3週間)前に感染した豚の検出を可能とし、したがって、豚集団におけるCSFVの拡大または再導入をモニタリングする能力を提供することである。したがって、ワクチンは、ある程度の信頼レベルで、実験室での試験結果に基づいて、ワクチン接種された豚集団がCSFVを有していないと断言することを可能にする。
【0060】
本発明のマーカーワクチンは、豚の発熱の検出またはアウトブレイクのケースにおける緊急のワクチン接種に理想的に適している。マーカーワクチンは、迅速かつ効果的な投与を容易にし、野外ウイルス(疾患に関連する)に感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別を可能にする。
本発明の一態様において、本発明の免疫原性組成物で処置された動物は、天然の豚熱ウイルスに感染した動物から、免疫試験および/またはゲノム解析試験を使用する前記動物から得たサンプルの分析を介して、区別され得る。
用語「サンプル」は、体液のサンプル、分離された細胞のサンプル、または組織もしくは器官のサンプルを指す。体液のサンプルは周知の技術によって得ることができ、これには、好ましくは、血液、血漿、血清、または尿のサンプル、さらに好ましくは、血液、血漿、または血清のサンプルが含まれる。組織または器官のサンプルは、例えば生検によって、任意の組織または器官から得ることができる。分離された細胞は、遠心分離または細胞選別などの分離技術によって、体液または組織または器官から得ることができる。
【0061】
「得られた」という用語は、沈殿、カラムなどを好ましくは使用する、当業者に公知の単離および/または精製ステップを含み得る。
用語「免疫試験」および「ゲノム解析試験」は、以下に詳述される。しかし、前記「免疫試験」および「ゲノム解析試験」の分析はそれぞれ、本発明に従った免疫原性組成物をワクチン接種された動物と、天然の(疾患に関連する)豚熱ウイルスに感染した動物とを区別するための基礎である。
本発明の一態様において、前記免疫原性組成物は、単回用量投与のために製剤される。
有利には、本発明によって提供される実験データは、本発明の免疫原性組成物の単回用量投与が防御免疫応答を確実にかつ効果的に刺激したことを開示している。したがって、本発明の一態様において、前記免疫原性組成物は、単回用量投与のために製剤され、単回用量投与によって効果的である。
【0062】
また、本発明は、医薬品として使用するための本発明の免疫原性組成物の使用も提供する。
一態様において、本発明は、本発明に従った免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法を提供する。一態様において、CSFVに関連する疾患は、CSFである。
本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物のいずれかを動物に投与することを含む、動物を免疫化するための方法に関する。本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物のいずれかを動物に単回投与することを含む、動物を免疫化するための方法に関する。好ましくは、動物を免疫化するための方法は、このような動物への本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって効果的である。
用語「免疫化」は、免疫化される動物に免疫原性組成物を投与し、これによって、このような免疫原性組成物に含まれる抗原に対する免疫学的応答を生じさせることによる、能動免疫化に関連する。
免疫化は、群れにおける特定のCSFV感染の発生の減少、または、特定のCSFV感染によって生じるもしくは特定のCSFV感染に関連する臨床徴候の重症度の低減をもたらす。好ましくは、免疫化は、本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって、群れにおける特定のCSFV感染の発生の減少、または、特定のCSFV感染によって生じるもしくは特定のCSFV感染に関連する臨床徴候の重症度の低減をもたらす。
【0063】
本発明の一態様に従うと、本明細書で提供される免疫原性組成物での、必要とする動物の免疫化は、好ましくは本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって、CSFV感染による対象の感染の予防をもたらす。またさらに好ましくは、免疫化は、CSFV感染に対する効果的な、長期の、免疫学的応答をもたらす。前記期間は、2カ月間超、好ましくは3カ月間超、さらに好ましくは4カ月間超、さらに好ましくは5カ月間超、さらに好ましくは6カ月間超、継続することが理解されよう。免疫化は、免疫化された動物の全てにおいて効果的でなくてもよいことが理解される。しかし、この用語は、群れにおける有意な割合の動物が効果的に免疫化されることを要する。
好ましくは、この文脈において、通常は、すなわち免疫化されていないと、CSFV感染によって通常生じるまたはCSFV感染に関連する臨床徴候を発症する動物の群れが想定される。群れの動物が効果的に免疫化されているかどうかは、当業者によって、さらなる苦労を伴うことなく決定され得る。好ましくは、免疫化は、所与の群れの動物の少なくとも33%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%における臨床徴候が、発生または重症度において、免疫化されていないまたは本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で免疫化されているがその後CSFVに感染している動物と比較して少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、またさらに好ましくは少なくとも30%、またさらに好ましくは少なくとも40%、またさらに好ましくは少なくとも50%、またさらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは少なくとも70%、またさらに好ましくは少なくとも80%、またさらに好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%低下している場合、効果的であるとされるべきである。
【0064】
本発明の一態様において、動物は豚である。一態様において、動物は子豚である。子豚は通常、3~4週齢よりも若い。一態様において、子豚は、1~4週齢の間にワクチン接種される。一態様において、動物は雌豚である。一態様において、動物は、妊娠中の雌豚である。
本発明の一態様において、免疫原性組成物は、真皮内、気管内、膣内、筋肉内、鼻腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、経口、髄腔内、皮下、皮内、心臓内、葉内(intralobal)、髄内、肺内、およびこれらの組み合わせで投与される。しかし、化合物の性質および作用機序に応じて、免疫原性組成物は、他の経路でも投与され得る。
本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、CSFに関連する1つまたは複数の臨床徴候の発生または動物における重症度を低減させる方法であって、1つまたは複数の臨床徴候の発生または重症度の低減が、免疫原性組成物を投与されていない動物と比較される方法を提供する。好ましくは、本方法は、単回用量の免疫原性組成物の投与を含み、また、免疫原性組成物のこのような単回投与によって、1つまたは複数の臨床徴候の発生または重症度の低減において効果的である。
【0065】
本明細書において使用される用語「臨床徴候」は、動物のCSFV感染の徴候を指す。臨床徴候は、以下でさらに定義される。しかし、臨床徴候としてはまた、限定はしないが、生きている動物から直接観察可能な臨床徴候も含まれる。生きている動物から直接観察可能な臨床徴候の例には、鼻および眼の排出物、嗜眠、咳、喘鳴、動悸、発熱、体重増加または体重減少、脱水、下痢、関節の腫れ、跛行、衰弱、皮膚の蒼白、発育不全、およびそれに類するものが含まれる。Mittelholzerら(Vet.Microbiol., 2000. 74(4): p. 293-308)は、CSFの動物実験において臨床スコアを決定するためのチェックリストを開発した。このチェックリストは、活気、身体の緊張、体形、呼吸、歩行、皮膚、眼/結膜、食欲、排便、および強制給餌の食べ残しというパラメータを含む。
好ましくは、臨床徴候は、発生または重症度において、処置されていないまたは本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で処置されているがその後CSFVに感染している対象と比較して少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、またさらに好ましくは少なくとも30%、またさらに好ましくは少なくとも40%、またさらに好ましくは少なくとも50%、またさらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは少なくとも70%、またさらに好ましくは少なくとも80%、またさらに好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%低下する。
【0066】
本発明の一態様において、免疫原性組成物は1回投与され、また、このような単回投与によって有効である。
しかし、単回用量投与が好ましいものの、免疫原性組成物は2回または数回投与することもでき、第1の用量は、第2の(ブースター)用量の投与の前に投与される。好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも15日後に投与される。さらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の15~40日後の間に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも17日後に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の17~30日後の間に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも19日後に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の19~25日後の間に投与される。最も好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも21日後に投与される。2回投与レジメンの好ましい態様において、免疫原性組成物の第1の用量および第2の用量の両方は、同一の量で投与される。第1および第2の用量レジメンに加えて、別の実施形態は、さらなるその後の用量を含む。例えば、第3、第4、または第5の用量を、これらの態様において投与することができる。好ましくは、その後の第3、第4、および第5の用量のレジメンは、第1の用量と同一の量で投与され、用量間の時間枠は、上記の第1の用量と第2の用量との間の時間と一致する。
【0067】
本発明の一態様において、1つまたは複数の臨床徴候は、呼吸窮迫、努力呼吸、咳、くしゃみ、鼻炎、頻呼吸、呼吸困難、肺炎、耳および外陰部の赤/青の変色、黄疸、リンパ球浸潤、リンパ節腫脹、肝炎、腎炎、食欲不振、発熱、嗜眠、乳汁分泌不全(agalatia)、下痢、鼻からの排出物、結膜炎、進行性の体重減少、体重増加の低減、皮膚の蒼白、胃潰瘍、器官および組織での肉眼的および顕微鏡的な病変、リンパの病変、死亡を免れない状態、ウイルス誘発性の流産、死産、子豚の奇形、ミイラ変性、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
一態様において、本発明はまた、
a)サンプルを得るステップ、および
b)前記サンプルを免疫試験において試験するステップ
を含む、CSFVに感染した動物を、本発明に従った免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法も提供する。
【0068】
用語「免疫試験」は、CSFVのE2タンパク質の6B8エピトープに特異的な抗体を含む試験を指す。抗体は、本発明に従った突然変異6B8エピトープに、または野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的であり得る。しかし、用語「免疫試験」は、本発明に従った突然変異6B8エピトープペプチドまたは野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープペプチド(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を含む試験も指す。免疫試験の例としては、任意の酵素免疫学的または免疫化学的検出方法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、EIA(酵素免疫アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、蛍光抗体試験(FAT)、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離-増強ランタニドフルオロ免疫アッセイ(DELFIA)もしくは固相免疫試験、免疫蛍光試験(IFT)、免疫組織染色、ウェスタンブロット分析、または当業者に利用可能なあらゆる他の適切な方法などが含まれる。使用するアッセイに応じて、抗原または抗体は、酵素、フルオロフォア、または放射性同位体によって標識することができる。例えば、Coligan et al. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons Inc., New York, N.Y. (1994);およびFrye et al., Oncogen 4: 1153-1157, 1987を参照されたい。
【0069】
好ましくは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープに特異的な抗体は、野生型CSFVに感染していることが疑われる、または本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物(豚など)の血清中細胞(白血球など)または単離された器官(扁桃腺、脾臓、腎臓、リンパ節、回腸の遠位部分など)のクリオスタット切片におけるCSFV抗原を検出するために使用される。このようなケースでは、野生型CSFVに感染した動物のサンプルのみが、前記6B8エピトープ特異的抗体による陽性結果を示す。逆に、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物のサンプルは、本発明に従った6B8エピトープ内での突然変異を理由に、前記6B8エピトープ特異的抗体による結果を示さない。代替的な試験では、CSFVは、例えば、野生型CSFVに感染した、感染していることが疑われる、またはワクチン接種された動物の器官(動物の扁桃腺など)または血清中細胞(白血球など)から単離され、ウイルスでの細胞の感染のために、適切な細胞系(SK-6細胞またはPK-15細胞など)とインキュベートされる。複製したウイルスはその後、野外(野生型、疾患に関連する)CSFVと本発明に従った組換えCSFVとの間を区別する6B8エピトープ特異的抗体を使用して、細胞において検出される。さらに、ペプチドを、非特異的な交差反応性をブロックするために使用することができる。さらに、野生型CSFVの他のエピトープに特異的な抗体を、ポジティブコントロールとして使用することができる。
【0070】
さらに好ましくはELISAが使用され、この場合、感染した豚を、本発明に従ったワクチンを接種された豚から区別するために、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体がマイクロウェルアッセイプレートに架橋される。前記架橋は、好ましくは、例えばポリ-L-リジンなどのアンカータンパク質を介して行われる。このような架橋を利用するELISAは、通常、受動的にコーティングされる技術を利用するELISAと比較した場合、感度が高い。野生型(疾患に関連する)CSFVは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体に結合する。野生型CSFVの6B8エピトープに特異的な抗体への野生型CSFVウイルスの結合の検出は、CSFVに特異的なさらなる抗体によって行うことができる。このようなケースでは、感染した豚のサンプルのみが、6B8エピトープ特異的抗体による陽性結果を示す。さらに、ペプチドを、非特異的な交差反応性をブロックするために使用することができる。さらに、野生型CSFVの他のエピトープに特異的な抗体を、ポジティブコントロールとして使用することができる。
【0071】
あるいは、マイクロウェルアッセイプレートを、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体以外の、CSFVに特異的な抗体と架橋させてもよい。野生型(疾患に関連する)CSFVは、架橋した抗体に結合する。架橋した抗体への野生型CSFVの結合の検出は、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体によって行うことができる。
上記で既に示したように、6B8エピトープは進化的に保存されており、野生型CSFVに特異的である。
したがって、さらに好ましくは、ELISAは、本発明に従った突然変異6B8エピトープまたは野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に対する抗体をサンプルにおいて検出するために使用される。このような試験は、本発明に従った突然変異6B8エピトープペプチドまたは野生型CSFVの6B8エピトープペプチド(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を含む。
【0072】
このような試験は、マイクロウェルアッセイプレートに架橋した本発明に従った置換型6B8エピトープまたは野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を有するウェルを例えば含み得る。前記架橋は、好ましくは、例えばポリ-L-リジンなどのアンカータンパク質を介して行われる。突然変異体または野生型6B8エピトープを得るための発現系は、当業者に周知である。あるいは、前記6B8エピトープは、化学的に合成することができる。突然変異6B8エピトープまたは野生型6B8エピトープはこうして、本発明に従った試験において使用することができるが、完全なE2タンパク質を含むタンパク質または前記6B8エピトープを含むE2タンパク質の断片を、比較的短いエピトープの代わりにそのまま使用することが都合が良い可能性があることが理解されるべきである。特に、エピトープが、標準的なELISA試験におけるウェルのコーティング剤に例えば使用される場合、エピトープを含む、より大きなタンパク質をコーティングステップに使用することが、より効率的であり得る。
【0073】
本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物は、野生型6B8エピトープに対する抗体を産生しなかった。しかし、このような動物は、本発明に従った置換型6B8エピトープに対する抗体を産生している。その結果、野生型6B8エピトープでコーティングしたウェルに結合する抗体はない。逆に、ウェルが本発明に従った突然変異6B8エピトープでコーティングされている場合、抗体は、前記突然変異6B8エピトープに結合する。
野生型CSFVに感染した動物は、しかし、CSFVの野生型エピトープに対する抗体を産生している。しかし、このような動物は、本発明に従った突然変異6B8エピトープに対する抗体を産生していない。その結果、本発明に従った突然変異6B8エピトープでコーティングされたウェルに結合する抗体はない。逆に、ウェルが野生型6B8エピトープでコーティングされている場合、抗体は、野生型6B8エピトープに結合する。
本発明に従った突然変異6B8エピトープまたは野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)への抗体の結合は、当業者に周知の方法によって行うことができる。
【0074】
好ましくは、ELISAは、サンドイッチタイプのELISAである。さらに好ましくは、ELISAは競合ELISAである。最も好ましくは、ELISAは二重競合ELISAである。しかし、様々なELISA技術が当業者に周知である。ELISAは典型的には、Wensvoort G. et al., 1988 (Vet. Microbiol. 17(2): 129-140)によって、Robiolo B. et al., 2010 (J. Virol. Methods. 166(1-2): 21-27)によって、およびColijn, E.O. et al., 1997 (Vet. Microbiology 59: 15-25)によって記載されている。
本発明の一態様において、免疫試験は、CSFV E2タンパク質の無傷の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中のCSFV E2タンパク質に結合しているかどうかの試験を含む。本発明の一態様において、免疫試験は、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかの試験、および/または、CSFV E2タンパク質の突然変異した6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかの試験を含む。このような突然変異した6B8エピトープは、本明細書において定義される6B8エピトープにおける突然変異を含む。
本発明の一態様において、免疫学的試験は、EIA(酵素免疫アッセイ)またはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)である。本発明の一態様において、ELISAは、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、または二重競合ELISAであり、好ましくは二重競合ELISAである。
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸も提供する。
【0075】
用語「核酸」は、DNA分子、RNA分子、cDNA分子、または誘導体を含むポリヌクレオチドを指す。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチドも二本鎖ポリヌクレオチドも包含する。本発明の核酸は、組換えポリヌクレオチド(すなわち、その天然の背景からの組換え)および遺伝子修飾された形態を包含する。さらに、天然の修飾されたポリヌクレオチド、例えばグリコシル化もしくはメチル化されたポリヌクレオチド、または人工的に修飾されたポリヌクレオチド、例えばビオチン化されたポリヌクレオチドを含む、化学的に修飾されたポリヌクレオチドも含まれる。さらに、本発明の組換えCSFV E2タンパク質が、縮重した遺伝子コードを理由として多くのポリヌクレオチドによってコードされ得ることを理解されたい。本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸は、核酸が導入されることになる宿主細胞に応じてコドン最適化されている。
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸を含むベクターも提供する。一態様において、ベクターは発現ベクターである。
【0076】
用語「ベクター」は、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、および人工染色体、例えば細菌または酵母の人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダムなまたは部位特異的な組み込みを可能にする、標的化構築物も指す。このような標的構築物は、好ましくは、以下に詳述するような相同組換えまたは非相同組換えに十分な長さのDNAを含む。本発明の核酸を包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖および/または選択のための選択マーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野において周知の様々な技術によって宿主細胞に組み込むことができる。例えば、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿もしくは塩化ルビジウム沈殿などの沈殿に、または荷電した脂質との複合体に、またはフラーレンなどの炭素ベースのクラスターに、導入することができる。あるいは、プラスミドベクターは、熱ショックまたはエレクトロポレーション技術によって導入することができる。ベクターがウイルスである場合には、ベクターは、宿主細胞に適用する前に、適切なパッケージング細胞系を使用してインビトロでパッケージングしてよい。レトロウイルスベクターは、複製増殖型または複製欠損型であり得る。後者のケースでは、ウイルス増殖は一般に、補完性の宿主/細胞でのみ生じる。さらに好ましくは、ポリヌクレオチドは発現制御配列に作動可能に連結しており、その結果、原核細胞もしくは真核細胞またはこれらの単離画分における発現を可能にする。前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野において周知である。これらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、ならびに任意に、転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。さらなる調節エレメントには、転写エンハンサーおよび翻訳エンハンサーが含まれ得る。原核宿主細胞における発現を可能にする、考えられる調節エレメントは、例えば、大腸菌のlac、trp、またはtacプロモーターを含み、真核宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母のAOX1もしくはGAL1プロモーター、または、哺乳動物細胞および他の動物細胞のCMV-プロモーター、SV40-プロモーター、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、もしくはグロビンイントロンである。さらに、誘導性の発現制御配列を、本発明によって包含される発現ベクターにおいて使用してもよい。このような誘導性ベクターは、tetもしくはlacオペレーター配列、または熱ショックもしくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現制御配列は、当技術分野において周知である。例えば、この技術は、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)において記載されている。好ましくは、本発明のベクターは、バキュロウイルスベクターである。さらに好ましくは、本発明のベクターは、CHO細胞などの哺乳動物細胞における発現のための哺乳動物発現ベクターである。
【0077】
一態様において、本発明はまた、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞も提供する。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞、または例えば昆虫(inset)細胞などの真核細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞はSF9細胞である。さらに好ましくは、宿主細胞は、CHO細胞などの哺乳動物細胞である。
【0078】
一態様において、本発明はまた、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含むか又は本明細書において別様に開示される組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
(i)本明細書において定義される宿主細胞、好ましくはCHO細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
(ii)CSFV E2タンパク質を単離する、および任意に精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0079】
CSFV E2タンパク質の精製は、例えば、CSFV E2タンパク質に付着した融合タグ又は融合ペプチドを介して、例えばHisタグ、FLAGタグ、又は存在する場合はFc断片を介して行うことができる。
一態様において、本発明はまた、(i)E2タンパク質を発現し得る発現ベクターを有する細胞を培養すること、および(ii)本明細書において上記で定義されている6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含むE2タンパク質または当該E2タンパク質を含む細胞培養物全体を採取することを含む、免疫原性組成物を調製する方法も提供する。
【0080】
本発明の一態様において、発現ベクターは、本発明の核酸分子を含む組換え哺乳動物発現ベクターである。一態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、商品に由来する。一態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、pcDNA3.4(Invitrogen)に由来する。一態様において、細胞は哺乳動物細胞である。一態様において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0081】
一態様において、この方法は、ユーザーマニュアル(改訂版D.0、2018年5月25日、Thermo Fisher Scientific Inc)に従って、ExpiCHO(商標)発現系(Gibico、カタログ番号A29133)を使用することによって実施される。一実施形態において、CHO細胞は、Gibicoからカタログ番号A29127で販売されているExpiCHO-S(商標)細胞である。一実施形態において、この方法は、哺乳動物細胞を、例えばExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)を使用して、本発明の組換え哺乳動物発現ベクターに感染させるステップを含む。
【0082】
本発明の一態様において、発現ベクターは、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスである。一態様において、組換えバキュロウイルスは、商品に由来する。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルスという商標で販売されている商品(Allele Biotechnology)に由来する。一態様において、細胞は昆虫細胞である。一態様において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
本発明の一態様において、本方法は、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製するステップを含む。一態様において、組換えバキュロウイルスは、商品に由来する。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。
本発明の一態様において、本方法は、本発明の組換えバキュロウイルスで細胞を感染させるステップを含む。一実施形態において、細胞は昆虫細胞である。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
【0083】
本発明の一態様において、本方法は、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製すること、および組換えバキュロウイルスで昆虫細胞を感染させることを含む。一実施形態において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
本発明の一態様において、本方法は、(i)本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製すること、(ii)組換えバキュロウイルスで昆虫細胞を感染させること、(iii)昆虫細胞を培養培地において培養すること、および(iv)本発明のE2タンパク質または本発明のE2タンパク質を含む細胞培養物全体を採取することを含む。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
【0084】
本発明の一態様において、本発明の細胞を培養するための培養培地は、当業者によって決定される。一態様において、培養培地は、無血清昆虫細胞培地である。一態様において、培養培地は、Ex-CELL 420(昆虫細胞用のEx-CELL(登録商標)420無血清培養培地、Sigma-Aldrich、カタログ番号14420C)である。
本発明の一態様において、昆虫細胞は、E2タンパク質の発現に適した条件下で培養される。一態様において、昆虫細胞は、最長10日間、好ましくは約2日間~約10日間、さらに好ましくは約4日間~約9日間、およびまたさらに好ましくは約5日間~約8日間の期間にわたりインキュベートされる。一態様において、昆虫細胞の培養に適した条件は、約22~32℃の間、好ましくは約24~30℃の間、さらに好ましくは約25~29℃の間、またさらに好ましくは約26~28℃の間、および最も好ましくは約27℃の温度を含む。
本発明の一態様において、本方法は、本発明の細胞培養物を不活化するステップをさらに含む。限定はしないが化学的および/または物理学的処理を含む任意の従来の不活化方法を、本発明の目的に使用することができる。
【0085】
一態様において、不活化ステップは、好ましくは約1~約20mMの、好ましくは約2~約10mMの、さらに好ましくは約5mMまたは10mMの濃度の、環化バイナリエチレンイミン(BEI)の添加を含む。一実施形態において、不活化ステップは、NaOH中で環化してBEIを形成する2-ブロモエチレンアミンヒドロブロミドの溶液の添加を含む。
一態様において、不活化ステップは、25~40℃の間、好ましくは28~39℃の間、さらに好ましくは30~39℃の間、さらに好ましくは35~39℃の間で行われる。一実施形態において、不活化ステップは、24~72時間、好ましくは30~72時間、さらに好ましくは48~72時間行われる。通常、不活化ステップは、検出可能なウイルスベクターの複製がなくなるまで行われる。
【0086】
本発明の一態様において、本方法は、不活化ステップの後に中和ステップをさらに含む。中和ステップは、溶液中の不活化剤を中和する等量の薬剤の添加を含む。一実施形態において、不活化剤はBEIである。一態様において、中和剤はチオ硫酸ナトリウムである。一態様において、不活化剤がBEIである場合、等量のチオ硫酸ナトリウムが添加される。例えば、BEIが最終濃度5mMまで添加される場合、1.0Mのチオ硫酸ナトリウム溶液が、全ての残留BEIを中和するための最終最小濃度5mMとなるまで添加される。一態様において、中和ステップは、不活化剤がBEIである場合、チオ硫酸ナトリウム溶液を最終濃度1~20mM、好ましくは2~10mM、さらに好ましくは5mMまたは10mMまで添加することを含む。一態様において、中和剤は、不活化ステップが完了した後、すなわち、ウイルスベクターの複製が検出され得なくなった後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが24時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが30時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが48時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが72時間行われた後に添加される。
【0087】
本発明の一態様において、CSFV E2タンパク質はさらに精製される。例えば、本発明に従ったCSFV E2タンパク質は、CSFV E2タンパク質に付着している、例えばHisタグ、FLAGタグ、又はFc断片などの融合ペプチドを含み得る。Hisタグを有するCSFV E2タンパク質は、例えば、Ni-NTA親和性(ニトリロ三酢酸にカップリングされたニッケル2+イオン)によって精製することができる。FLAGタグ(DYKDDDDK)を有するCSFV E2タンパク質は、例えば、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体によって精製することができる(市販のキットは、例えば、Sigma-Aldrichから入手可能である(Anti-FLAG(登録商標)M1アガロース親和性ゲル))。Fc断片に連結されたCSFV E2タンパク質は、例えば、プロテインA親和性又はプロテインG親和性のいずれかによって精製することができる。
【0088】
一態様において、本発明はまた、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含むか又は本明細書において別様に開示される組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ、
b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含むか又は本明細書において別様に開示される組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む組換え哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0089】
一態様において、本発明はまた、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)培地での高密度懸濁培養に適応させたCHO細胞を増殖させるステップ、
b)ステップa)のCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0090】
一実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、pcDNA3.4(Invitrogen)に由来する。
一実施形態において、CHO細胞は、Gibicoからカタログ番号A29127で販売されているExpiCHO-S(商標)細胞である。
一実施形態において、この方法で使用される培地は、Gibicoからカタログ番号A29100で販売されているExpiCHO(商標)発現培地である。
一実施形態において、適応させたCHO細胞は、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)を使用することによってトランスフェクトされる。
一実施形態において、ステップc)では、トランスフェクトされたCHO細胞は、約32~37℃、好ましくは約32℃で培養される。
一実施形態において、ステップc)では、トランスフェクトされたCHO細胞は、約5~8%CO2の加湿雰囲気で培養される。
【0091】
一実施形態において、ExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及びExpiCHO(商標)Feedが、ステップc)にて添加される。
一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される。
【0092】
本発明の一態様において、CSFV E2タンパク質はさらに精製される。例えば、本発明に従ったCSFV E2タンパク質は、CSFV E2タンパク質に付着している、例えばHisタグ、FLAGタグ、又はFc断片などの融合ペプチドを含み得る。Hisタグを有するCSFV E2タンパク質は、例えば、Ni-NTA親和性(ニトリロ三酢酸にカップリングされたニッケル2+イオン)によって精製することができる。FLAGタグ(DYKDDDDK)を有するCSFV E2タンパク質は、例えば、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体によって精製することができる(市販のキットは、例えば、Sigma-Aldrichから入手可能である(Anti-FLAG(登録商標)M1アガロース親和性ゲル))。Fc断片に連結されたCSFV E2タンパク質は、例えば、プロテインA親和性又はプロテインG親和性のいずれかによって精製することができる。
一態様において、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキットを提供する。一態様において、キットは、本明細書において定義される抗体もしくはその抗原結合断片、6B8エピトープに突然変異を有する本発明の組換えE2タンパク質、および/または本明細書において定義される6B8エピトープを含むCSFVの野生型E2タンパク質を含む。キットはまた、使用説明書も含み得る。
【0093】
以下の項もまた本明細書において記載され、本発明の開示の一部である。
1. 6B8エピトープ内に少なくとも1つの突然変異を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、未修飾の6B8エピトープが6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される、組換えCSFV E2タンパク質。
2. E2タンパク質の6B8エピトープ内の少なくとも1つの突然変異が、このような突然変異した6B8エピトープへの6B8モノクローナル抗体の結合の特異的阻害をもたらす、項1に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
3. 6B8モノクローナル抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、または
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、または
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含む、または
(iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
項1または2に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0094】
4. 6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープが、少なくともE2タンパク質の10位、14位、22位、24位、24位/25位、41位、及び/又は64位にあるアミノ酸残基によって定義される、項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
5. 6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるE2タンパク質の6B8エピトープが、少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、E24、E24/G25、Y10、D41、および/もしくはR64によって定義される、または少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、G24、G24/G25、Y10、D41、および/もしくはR64によって定義される、項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
6. E2タンパク質のアミノ酸24位での置換、E2タンパク質のアミノ酸24位/25位での置換、E2タンパク質のアミノ酸14位での置換、E2タンパク質のアミノ酸22位での置換、E2タンパク質のアミノ酸10位での置換、E2タンパク質のアミノ酸41位での置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位での置換を含む、項1~5のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
7. E2タンパク質の24位のアミノ酸がRに置換されており、E2タンパク質の24位及び25位のアミノ酸がそれぞれR及びDに置換されており、E2タンパク質の14位のアミノ酸がK、Q、若しくはRに置換されており、E2タンパク質の22位のアミノ酸がA、R、Q、若しくはEに置換されており、A及びRが好ましく、E2タンパク質の10位のアミノ酸がA若しくはPに置換されており、E2タンパク質の41位のアミノ酸がA、N、若しくはEに置換されており、並びに/又はE2タンパク質の64位のアミノ酸がA、S、若しくはEに置換されており、A及びSが好ましい、項1~6のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0095】
8. E2タンパク質のアミノ酸24位でのE若しくはGからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸24位でのE若しくはGからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、E2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、E2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、並びに/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)を含む、項1~7のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
9. 6B8エピトープ内のアミノ酸置換が、E2タンパク質の24位にアミノ酸R、D、若しくはI、E2タンパク質の25位にアミノ酸D、K、L、N、R、T、V、E、若しくはP、E2タンパク質の14位にアミノ酸K、Q、若しくはR、E2タンパク質の22位にA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはS、E2タンパク質の10位にアミノ酸A若しくはP、E2タンパク質の41位にアミノ酸A、N、若しくはE、及び/又はE2タンパク質の64位にアミノ酸A、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWを含む突然変異6B8エピトープをもたらす、項1~8のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0096】
10. 組換えCSFV E2タンパク質が、C株又は野外株QZ07若しくはGD18に由来する、項1~9のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
11. 組換えCSFV E2タンパク質が、野外株QZ07に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、又はE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからRへの置換及びアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換をさらに含んでもよい、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
12. 組換えCSFV E2タンパク質が、野外株GD18に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)、又はE2タンパク質のアミノ酸24位でのEからR、D、若しくはIへの置換(Rが好ましい)及びアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、若しくはPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからK、Q、若しくはRへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換をさらに含んでもよい、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0097】
13. 組換えCSFV E2タンパク質が、C株に由来し、かつE2タンパク質のアミノ酸24位でのGからR、D、又はIへの置換(Rが好ましい)、及びE2タンパク質のアミノ酸25位でのGからD、K、L、N、R、T、V、E、又はPへの置換(D、K、L、N、R、T、及びVが好ましい)を含み、また、E2タンパク質のアミノ酸14位でのSからKへの置換、又はE2タンパク質のアミノ酸22位でのGからA、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V、若しくはSへの置換(A、Q、D、E、N、及びSが好ましい)、並びにE2タンパク質のアミノ酸10位でのYからA若しくはPへの置換、E2タンパク質のアミノ酸41位でのDからA、N、若しくはEへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸64位でのRからA、S、E、D、G、H、T、L、P、K、若しくはWへの置換(A、K、及びWが好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる置換をさらに含んでもよい、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0098】
14. 組換えCSFV E2タンパク質が、表1~7において定義されるE2タンパク質のアミノ酸位置に1つ又は複数のアミノ酸置換を含む、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
15. 配列番号15~20、22~33、35~40、49~72、および74-81からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含む、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
16. 豚Fc断片などのFc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており、好ましくは、豚Fc断片などのFc断片が、好ましくはペプチドリンカーを介してE2タンパク質のC末端に連結されている、項1~15のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
17. 項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする組換え核酸。
18. 項17の核酸を含むベクターであって、好ましくは、哺乳動物発現ベクターであるベクター。
19. 項17に記載の核酸又は項18に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくはCHO細胞である宿主細胞。
20. 項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を含む組換えCSFV。
【0099】
21. 弱毒化されている、請求項20に記載の組換えCSFV。
22. 項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質、項17に記載の組換え核酸、項18に記載のベクター、項19に記載の宿主細胞、及び/又は項20若しくは21に記載の組換えCSFVを含む免疫原性組成物。
23. ワクチン、好ましくはマーカーワクチンまたはDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)ワクチンである、項22に記載の免疫原性組成物。
24. 項22または23に記載の免疫原性組成物を、動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法において使用するための、項22または23に記載の免疫原性組成物。
25. 項22又は23に記載の豚である動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
26. 項22又は23に記載の子豚である動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
【0100】
27. 項22又は23に記載の1~4週齢の子豚である動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
28. 項22又は23に記載の雌豚である動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
29. 項22又は23に記載の妊娠中の雌豚である動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
30. 1回のみ投与される、項22又は23に記載の動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、項22又は23に記載の免疫原性組成物。
31. 動物に1回のみ投与され、かつ、免疫原性組成物の前記単回投与の後にCSFVに関連する疾患の予防および/または処置において効果的である、項22または23に記載の動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法において使用するための、項22または23に記載の免疫原性組成物。
【0101】
32. 1回または複数回投与される、項22または23に記載の動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法において使用するための、項22または23に記載の免疫原性組成物。
33. 動物に1回または複数回投与され、かつ、免疫原性組成物の前記単回投与または複数回投与の後にCSFVに関連する疾患の予防および/または処置において効果的である、項22または23に記載の動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法において使用するための、項22または23に記載の免疫原性組成物。
34. 項22または23に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防および/または処置する方法。
35. a)サンプルを得るステップ、および
b)前記サンプルを免疫試験において試験するステップ
を含む、CSFVに感染した動物を、項22または23に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法。
【0102】
36. 免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープまたはその抗原結合断片を特異的に認識する抗体がサンプル中のCSFV E2タンパク質に結合し得るかどうかを試験するステップを含む、項35に記載の方法。
37. 免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップ、および/または組換えCSFV E2タンパク質の突然変異した6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップを含む、項35または36に記載の方法。
38. 免疫試験が、EIA(酵素免疫アッセイ)またはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、好ましくは二重競合ELISAである、項35~37のいずれか1項に記載の方法。
39. 6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、または
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、または
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含む、または
(iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
項36~38のいずれか1項に記載の方法。
40. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープまたはその抗原結合断片を特異的に認識する抗体を含む、CSFVに感染した動物を、項22または23に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキット。
【0103】
41. (i)項19に記載の宿主細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
(ii)CSFV E2タンパク質を単離し、任意に精製するステップ
を含む、項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法。
42. 組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ、
b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法。
【0104】
43. 組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)培地での高密度懸濁培養に適応させたCHO細胞を増殖させるステップ、
b)ステップa)のCHO細胞に、組換えCSFV E2タンパク質、好ましくは、表1~7において定義される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む組換えCSFV E2タンパク質、又は項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意に精製するステップ
を含む方法。
【0105】
44. ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約32~37℃、好ましくは、約32℃で培養される、項42又は43に記載の方法。
45. ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約5~8%CO2の加湿雰囲気で培養される、項42~44のいずれか1項に記載の方法。
46. 組換えCSFV E2タンパク質が、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される、項42~45のいずれか1項に記載の方法。
47. CHO細胞が、Gibicoからカタログ番号A29127で販売されているExpiCHO-S(商標)細胞である、項42~46のいずれか1項に記載の方法。
48. 上記方法で使用される培地が、Gibicoからカタログ番号A29100で販売されているExpiCHO(商標)発現培地である、項44~47のいずれか1項に記載の方法。
49. 適応させたCHO細胞が、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)を使用することによってトランスフェクトされる、項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
50. ExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及びExpiCHO(商標)Feedが、ステップc)において添加される、項42~49のいずれか1項に記載の方法。
51. CSFV E2タンパク質がさらに精製される、項42~50のいずれか1項に記載の方法。
52. CSFV E2タンパク質が融合ペプチドを含み、CSFV E2タンパク質の精製が、融合ペプチドに特異的に結合するマトリックスに対する親和性によって行われる、項42~51のいずれか1項に記載の方法。
53. CSFV E2タンパク質が、Hisタグを融合ペプチドとして含み、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質をHisタグを介してNi-NTAに結合させ、CSFV E2タンパク質をNi-NTAから放出させることによって精製される、項42~52のいずれか1項に記載の方法。
54. CSFV E2タンパク質が、FLAGタグを融合ペプチドとして含み、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質を、FLAGタグを介して、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体に結合させ、CSFV E2タンパク質をそのようなモノクローナル抗体から放出させることによって精製される、項42~52のいずれか1項に記載の方法。
55. CSFV E2タンパク質がFc断片に連結されており、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質をFc断片を介してプロテインA又はプロテインGに結合させ、CSFV E2タンパク質をプロテインA又はプロテインGから放出させることによって精製される、項42~52のいずれか1項に記載の方法。
【実施例
【0107】
以下の実施例は、本発明を例示的な様式でさらに説明する。本発明は以下に記載されるような実施例のいずれかに限定されるものではないことを理解されたい。当業者には、これらの実施例の性能、結果、および所見が本発明の全体的な記載に照らしてより広い意味で適合および適用され得ることが理解される。
材料および方法
1. 細胞の培養
sf9細胞系を、5%ウシ胎児血清(FBS)と共にExcell 420で培養し、CO2の不存在下で27℃でインキュベートした。
sf+細胞系をExcell 420で培養し、27℃の振とう器で120rpmの速さでインキュベートした。
PK/WRL細胞系を、10%ウシ胎児血清(FBS)と共に培養し、5%CO2の存在下で37℃でインキュベートした。
【0108】
2. QZ07-E2及びQZ07-E2突然変異のためのpVl1393ベースシャトルプラスミドの構築
QZ07-E2配列、QZ07-E2-KRD配列、およびQZ07-E2-KARD配列を、昆虫発現系に従ってそれぞれコドン最適化し(それぞれ配列番号44~46)合成した。可溶性かつ分泌された形態のE2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸(aa)を、最終的な最適化配列において欠失させ、一方、E1タンパク質の最後の21aaをシグナルペプチドとして付加した。発現させようとしているE2構造の略図を図1に示した。それぞれ合成された配列を、BamH IおよびEcoR IによってpVL1393シャトルプラスミドにクローニングして、さらなるコトランスフェクションのためのpVL1393-シャトルプラスミドを完成させた。CSFV E2および6B8エピトープの突然変異を有するCSFV E2の全構築プロセスは、図2を参照する。KARDは、S14K、G22A、およびE24R/G25D突然変異を意味し、アミノ酸の番号付けは、配列番号9などのE2タンパク質を参照している。KRD(S14K、およびE24R/G25D)などの突然変異の他の組み合わせもまた、E2タンパク質にそれぞれ導入した。
【0109】
C-E2配列およびC-E2-KARD配列(それぞれ配列番号47および48)をそれぞれ合成した。可溶性かつ分泌された形態のE2タンパク質を得るために、E2の最後の42個のアミノ酸(aa)を、最終的な配列において欠失させ、一方、E1タンパク質の最後の16aaをシグナルペプチドとして付加した。発現させようとしているE2構造の略図は、図1に示すものと同一であった。それぞれ合成された配列を、BamH IおよびEcoR IによってpVL1393シャトルプラスミドにクローニングして、さらなるコトランスフェクションのためのpVL1393-シャトルプラスミドを完成させた。CSFV E2および6B8エピトープの突然変異を有するCSFV E2の全構築プロセスは、図2を参照する。KARDは、S14K、G22A、およびG24R/G25D突然変異を意味し、アミノ酸の番号付けは、配列番号21などのE2タンパク質を参照している。
【0110】
3. E2発現カセットを有する組換えバキュロウイルスの構築
1ウェルのSF9細胞(1.0×106個)を、トランスフェクションのために6ウェルプレート内に調製し、別のウェルを、細胞コントロールとして使用した。細胞を1時間インキュベーションした後に、表面全体に等しく分配した。DNAリポプレックストランスフェクション混合物を以下のように調製した:1つの試験管において、0.5mlの無血清グレース昆虫培地(添加物なし)および3μlのDNAシャトルトランスフェクション試薬の混合物を添加した。別の試験管において、1μlのサファイアバキュロウイルスDNA、1μgのトランスファープラスミド、および0.5mlの無血清グレース昆虫培地(添加物なし)を添加した。両試験管の内容物を1つにまとめ、穏やかに混合し、そして室温で20分間置いた。培地を細胞から除去し、単層を、1mlの無血清グレース昆虫培地(添加物なし)で毎回2回ずつすすぎ、次いで培地を細胞から除去し、そしてDNA/トランスフェクション試薬混合物を添加した。細胞単層を4~5時間、27℃でインキュベートし、そして、トランスフェクション混合物を、2mlのExcell 420および5%FBSで置き換えた。インキュベーションを27℃で5~6日間継続した。細胞および細胞培養培地を、3000rpmで10分間、4℃で、遠心分離機によって回収した。
【0111】
4. 組換えバキュロウイルスでのプラーク精製プロセス
sf9細胞(1.5×106個細胞/ウェル)を有する6ウェルプレートを準備し、室温で1時間置いた。各ウイルスの10-1~10-6希釈の10倍連続希釈物(50μLのウイルスおよび450μLの培地)を調製した。細胞培養培地をプレートから除去し、ウェル当たり100μLの10-3~10-6希釈のウイルスを、各皿の中央に滴下様式で添加した(希釈当たり2つのウェルを感染させた)。次いで、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション期間の間、1%(w/v)LGTアガロース培地を37℃の水浴で調製した。ウイルス接種材料を各ウェルから除去し、そして2mlの1%(w/v)LGTアガロース培地をピペッティングし、各ウェルに被せる。プレートを、固まるまで、室温で約15分間インキュベートした。次いで、ウェル当たり1mlの昆虫細胞培養培地をアガロースオーバーレイの一番上に添加し、27℃で5日間インキュベートした。最後に、液体オーバーレイを除去し、1mlのニュートラルレッド(培地で1:20)を各ウェルに添加し、2~4時間、27℃でインキュベートした。プラークを透明にするために、皿を反転させて4時間暗所に置いた。プラーク数を数え、そしてウイルス力価を計算した。個々のプラークをピペットチップで採取し、そして200μLの培地に溶解し、増殖するまで4℃で保存した。
【0112】
5. E2タンパク質の精製
300mlの培養上清を遠心分離し、その後、濾過した。濾過上清をNiセファロースexcelビーズと2時間インキュベートして、標的タンパク質を捕捉した。ビーズをpH7.4のPBS緩衝液で洗浄し、次いで、20mM、50mM、80mMのイミダゾールをそれぞれ含有する緩衝液で洗浄し、最後に、200mMのイミダゾールおよび500mMのイミダゾールを含有する緩衝液によって溶出した。SDS PAGEおよびウェスタンブロッティングを行って、標的タンパク質の純度および濃度を確認した。
【0113】
6. QZ07-E2-Fc-WT及びQZ07-E2-Fc-突然変異のためのE2発現カセットを有する組換えプラスミドの構築、並びにCHO細胞での発現
QZ07-E2-Fc-WT配列(CSFV E2-Fc融合タンパク質)及び6B8エピトープ突然変異を有するCSFV E2-Fc融合タンパク質を、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)の使用説明書に従ってコドン最適化及び合成した。可溶性かつ分泌された形態のE2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸(aa)を、最終的な最適化配列において欠失させ、一方、E1タンパク質の最後の21個のaaをシグナルペプチドとして付加した。また、E2タンパク質とFc断片の間にペプチドリンカーを付加した。QZ07-E2-Fc-WT配列(「QZ07-E2-WT-FL-Fc」ともいう)のアミノ酸配列を配列番号97に示した。合成した配列をそれぞれpCDNA3.4プラスミドにクローニングした。CSFV E2-Fc融合タンパク質及び6B8エピトープ突然変異(64位での突然変異など)を有するCSFV E2-Fc融合タンパク質の構築プロセス全体は、図2を参照することができる。
【0114】
また、トランスフェクション及び培養を、Thermo FisherのExpiCHO(商標)発現系ガイドの使用説明書に従うことによって行った。
トランスフェクションの前日(-1日目)、ExpiCHO-S(商標)培養物を、3×106~4×106生存細胞/mLの最終密度に分割し、細胞の一晩増殖を可能にした。トランスフェクションの当日(0日目)に、生存細胞密度及び生存率を決定した。細胞が約7×106~10×106生存細胞/mLの密度に達し、生存率が95~99%だったら、細胞を、新鮮なExpiCHO(商標)発現培地で6×106生存細胞/mLの最終密度に希釈した。フラスコを穏やかに回旋させて細胞を混合した。冷却試薬(4℃)を使用してExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体を調製した。試薬を単に冷蔵庫から取り出し、DNA複合体形成を開始させた。以下のステップが含まれていた:a)ExpiFectamine(商標)CHO試薬ボトルを4~5回を穏やかに逆さにして混合するステップ、b)プラスミドDNAを冷却OptiPRO(商標)培地で希釈し、チューブを回旋させることによって及び/又は逆さにすることによって混合するステップ、c)ExpiFectamine(商標)CHO試薬をOptiPRO(商標)培地で希釈し、チューブを回旋させることによって及び/又は逆さにすることによって又は2~3回穏やかにピペッティングすることによって混合し、チューブを回旋させることによって又は逆さにすることによって混合し、ExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体(ステップdからの)を室温で1~5分間インキュベートし、次いで溶液をゆっくりとシェーカーフラスコに移し、添加中はフラスコを穏やかに旋回させるステップ。1日目、トランスフェクションの翌日(1日目、トランスフェクションの18~22時間後)、ExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及びExpiCHO(商標)Feedをフラスコに添加し(ガイドに従った容積を添加)、続いて添加中はフラスコを穏やかに回旋させた。フラスコを、空気中5%CO2の加湿雰囲気を有する32℃インキュベーターに移し、振盪しながら6~10日間培養した。細胞培養培地を、4℃にて15分間4000rpmで遠心分離することによって回収した。
【0115】
7. E2-Fc融合タンパク質及び6B8エピトープ突然変異を有するE2-Fc融合タンパク質の精製
E2-Fc融合タンパク質及び6B8エピトープ突然変異を有するE2-Fc融合タンパク質の精製は、それぞれ、ThermoのプロテインAアガロースを使用することによって実施した。精製溶液は、1M Tris緩衝液(pH9.0)を含む。精製プロセスは、以下のステップを含む:プロテインアガロース及び全ての緩衝液を室温に平衡化するステップ;カラムに付属の使用説明書に従って、カラムに、0.5ml(QZ07-E2-Fc-WT及び64位の突然変異などのQZ07-E2-Fc突然変異のため)の樹脂スラリーを慎重に充填するステップ;5mlの結合緩衝液を添加することによってカラムを平衡化し、溶液がカラムから排出されることを可能にするステップ;サンプルをプロテインAカラムにアプライする前に結合緩衝液で1:2に希釈して、最適な結合のために適正なイオン強度及びpHを維持するステップ;希釈したサンプルをカラムにアプライし、サンプルが樹脂へと完全に流れ込むことを可能にするステップ;10mlの結合緩衝液でプロテインAカラムを洗浄するステップ;5mLの溶出緩衝液で抗体を溶出し、画分を回収するステップ;100μlの中和緩衝液を1mlの溶出物に添加することによって、溶出画分を生理学的pHへと直ちに調整するステップ;溶出物を遠心分離フィルターに移し、6mlのPBSを添加するステップ;チューブを15分間4000rpmで遠心分離するステップ;10mlのPBSを使用してチューブを洗浄するステップ;遠心分離ステップを繰り返して、サンプルを1~2mlに濃縮するステップ;Qubitキットを使用して、精製緩衝液交換サンプルを測定するステップ;並びにSDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって産物を確認するステップ。
【0116】
(実施例1)
DIVA部位の同定および組み込み
所望の新規なワクチンの主要な特徴は、ワクチン接種された動物を、感染した動物から区別する(DIVA)その能力である。DIVA特徴は、従来のCSFV E2サブユニットワクチンからの本質的な改善であり、重要な技術的利点を有する。DIVA特徴を導入する戦略は、免疫優性のE2タンパク質の表面における1つまたは複数の重要なエピトープを改変すること、および、ELISAを使用して、野生型エピトープを認識する抗体の不存在を、ワクチン接種の指標として示すことである(負のDIVA)。
【0117】
この戦略を実行するために、本発明者らは、強力に中和性のマウスmAb 6B8を選択する。ハイブリドーマ産生モノクローナル抗体6B8を浙江大学から入手し、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCC((CHINA CENTER FOR TYPE CULTURE COLLECTION)、武漢大学、Wuhan 430072、P.R.China)に、2018年6月13日に寄託した。モノクローナル抗体6B8のシーケンシングによって、この抗体が、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有することが明らかになった。この抗体のCDRは、Kabatの方法などの当技術分野において公知の様々な方法によって容易に決定することができる。例えば、mAb 6B8は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列のVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列のVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列のVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列のVL CDR2、および配列番号6で示されるアミノ酸配列のVL CDR3を含む。
【0118】
1. 6B8 mAbの特徴付け
mAb 6B8をほとんどのCSFVに使用できるかどうかを調べるために、本発明者らは、mAb 6B8と、様々なCSFウイルス、例えば、群1のCSFV(Shimen株およびC株を含む)ならびに群2のCSFV(QZ07およびGD18を含む)との結合、コントロールとしての2つのBVDVとの結合を試験した。結果を図3に示した。遺伝子型群2のさらなる8つの野外CSFV単離体もまた、6B8 mAb陽性として試験した(データは示していない)。これらのデータは、6B8が、CSFウイルスのほとんどに存在する保存されたエピトープを認識するが、BVDVウイルスとは反応しないことを示した。
【0119】
2. 6B8の結合のための重要なアミノ酸の同定
C株ウイルスをmAb 6B8の存在下でPK/WRL細胞培養物において連続継代した後、エスケープ突然変異体が生じ、これは、中和濃度の6B8抗体の存在下で成長することができる。このようなエスケープ突然変異体の4つのクローンを得、これらは全て、6B8の結合からのエスケープを生じた。これらのE2遺伝子をシーケンシングし、シーケンシングの結果は、2つのコドンにおける2つのヌクレオチド突然変異(GGAGGTからAGAGAT)を示した。これらの変化は、連続する24位および25位での2つのアミノ酸突然変異に翻訳された(Gly-GlyからArg-Asp、またはGGからRD)。
次いで、E2配列のアラインメント(QZ07、GD18、GD191、およびC株)をBVDVおよび他のペスチウイルスのE2と行って、6B8結合のための他の潜在的な重要なアミノ酸を同定した(図4)。このアプローチによって、14位および22位のアミノ酸などのさらなる潜在的な重要なアミノ酸が同定された。
【0120】
全てのこれらの潜在的な突然変異(S14K、G22A、E24R/G25D)をE2発現ベクターに個々に導入して、6B8結合に対するその影響を試験した。E2遺伝子をpCI-neo-Tagベクター(Promega、カタログ番号E1841)にクローニングして、発現ベクターを得た。E2タンパク質の正確な発現を確認した後、全ての突然変異をE2発現ベクターに導入した。これらのベクターを次いで、24ウェルプレート内でリポフェクタミン3000(Invitrogen、カタログ番号L3000015)を使用してPK/WRL細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、次いで、0.1%トリトンX-100で処理した。細胞を次いで、IFA(免疫蛍光(immunoinfluoscent)アッセイ)試験において、mAb 6B8またはCSFVに対するウサギポリクローナル抗体(修飾された6B8エピトープを有するCSFVを検出するためのポジティブコントロールとして使用した)、および対応するAlexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート型二次抗体(Invitrogen、カタログ番号21206)で染色する。図5Aに示すように、顕微鏡的検査によって、S14K、G22A、E24R/G25D突然変異が6B8結合の無効化に重要であることが明らかとなった。
【0121】
本発明者らはまた、6B8抗体との結合に対する14位、22位、24位、および25位の他の突然変異の影響を個別に試験した。図5Bに示すように、突然変異S14Q、S14R、およびG22Rは、6B8の結合を完全に無効化したが、G22E、G22Qは、6B8の結合に部分的に影響し、このことは、14位および22位が6B8の結合に重要であることをさらに示している。図5Cに示すように、単一の突然変異G24K(C株で)は6B8の結合を完全に無効化し、このこともまた、24位が6B8の結合に重要であることを裏付けている。G25S単独では、6B8の結合を無効化することはできない。しかし、25位のGlyからAspへの突然変異は24位での突然変異と共に現れるため、これら2つの突然変異は1つの突然変異(24/25突然変異)とみなすことができる。
この結果は、14位、22位、24位、および/または24位/25位での突然変異をDIVAに使用し得ることを示唆している。この結果はまた、突然変異したE2タンパク質がCSFVに対するポリクローナル抗体によって依然として認識され得ることから、6B8エピトープの突然変異がE2タンパク質の全体的な免疫原性をほとんど変化させないことも示唆している。
【0122】
(実施例2)
バキュロウイルス発現系の構築
各構築物のバキュロウイルス発現系を、市販のキット(SapphireバキュロウイルスDNAおよびトランスフェクションキット:Allele Biotech、カタログ番号ABP-BVD-100029)による、pVl1393-QZ07-E2、QZ07-E2-KARD、QZ07-E2-KRD、C-E2、およびC-E2-KARDと、バキュロウイルスゲノムDNAとの、sf9細胞へのコトランスフェクションによって構築し、そして、各E2発現カセットを有する組換えバキュロウイルスを、Sf9細胞系でのプラーク精製によって精製した。トランスフェクトした細胞を6ウェルプレートで培養し、27℃で5日間インキュベートした。トランスフェクトした各サンプルの上清を回収し、さらなるプラーク精製のために4℃で保存した。
プラーク精製アッセイを次いで、上記方法で記載されているように、各構築物について回収された上清で行った。2ラウンドの精製の後、各E2発現カセットを有する最終的な組換えバキュロウイルスが成功裏に構築された。
【0123】
(実施例3)
E2およびE2-KARDまたはE2-KRDの発現および精製のスケールアップ
QZ07-E2、QZ07-E2-KARD、QZ07-E2-KRD、C-E2、およびC-E2-KARD発現カセットを有する組換えバキュロウイルスを、MOI5でのSF+細胞系の感染によって増幅させた。感染した各SF+細胞から回収された300mlの上清を、方法で記載されているように、精製に使用した。
最終産物を、SDS PAGEおよびウェスタンブロッティングアッセイの両方によって検証した。精製されたE2は、二量体形態で110kDaおよび一量体形態で55kDaの正確な分子量を示した(図6A)。
さらなるドットブロットアッセイは、精製されたQZ07-E2-KARD、QZ07-E2-KRD、およびC-E2-KARDと、6B8 mAbとの反応を示さず(図6B)、このことは、E2の各DIVAが成功裏に精製されたこと、およびサブユニットワクチンとしてさらに適用され得ることを示している。結果はまた、突然変異したE2タンパク質が、複数の回復期の豚血清およびC株をワクチン接種された血清によって依然として認識され得ることから、6B8エピトープの突然変異がE2タンパク質の全体的な免疫原性をほとんど変化させないことも示唆している。
【0124】
(実施例4)
組換えプラスミド-CHO発現系の構築及び精製
QZ07-E2-Fc-WT配列及びQZ07-E2-Fc-64位突然変異を、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)の使用説明書に従ってコドン最適化及び合成した。可溶性かつ分泌された形態のE2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸(aa)を、最終的な最適化配列において欠失させ、一方、E1タンパク質の最後の21個のaaをシグナルペプチドとして付加した。また、E2タンパク質とFc断片の間にペプチドリンカーを付加した。合成した突然変異配列をそれぞれ、pCDNA3.4プラスミドにクローニングした。次いで、各構築物のトランスフェクション及び培養を、上記の方法に記載のように実施した。最後に、各構築物を含む上清の回収に成功した。
【0125】
E2-Fc融合タンパク質及び64位に6B8エピトープ突然変異を有するE2-Fc融合タンパク質の精製を、それぞれ、ThermoのプロテインAアガロースを使用することによって実施した。次いで、上記の方法に記載のように精製プロセスを実施した。E2-Fc融合タンパク質の精製産物を、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって確認した(図7)。64位に6B8エピトープ突然変異を有するE2-Fc融合タンパク質の精製産物も、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって確認した。精製産物は、WH303染色及びSDS-PAGEではE2-Fc融合体タンパク質と同様の結果を示すが、6B8染色については負の結果を示す。
【0126】
(実施例5)
E2およびE2-KARDの有効性の評価
この実施例の目的は、3週齢の子豚における候補サブユニットワクチンの有効性を評価することであった。
2つのIVP(試験用獣医医薬品(Investigational Veterinary Products))である、実施例2で示した免疫賦活化したC-E2およびC-E2-KARDを、有効性の評価にかける。
簡潔に述べると、全部で20頭の子豚(3週齢)を4つの群(群1、2、3、および4)に割り当て、群1(C-E2)および群2(C-E2-KARD)でそれぞれ5頭の子豚をIVP試験に使用し、一方、群3の別の5頭の子豚をチャレンジコントロールとして用いた。群4の残りの5頭の子豚は、厳密な(ネガティブ)コントロールとして用いた。0日目に、群1および群2の動物に、子豚当たり2mLのSeppic ISA 206アジュバントC-E2(54.2μg/ml)またはC-E2-KARD(55.2μg/ml)をそれぞれ接種した(IM)。群3には、0日目に、2mLのPBS+アジュバント(Seppic ISA 206)を接種し(IM)、チャレンジコントロールとして用いた。群1、2、および3の動物に、105MLD/mL以上の用量のCSFV Shimen株を21日目に接種した(IM)。全ての子豚は、0日目に、臨床的に健康であり、CSFV抗体およびPRRSV抗体を有しておらず、また、BVDV、PRVを含む抗原を有していなかった。全ての動物は、免疫化の時点で健康であった。
【0127】
直腸温および臨床的所見を、21日目~37日目まで、1日に1回回収した。血清サンプルを、-7日目から開始して7日間ごとに回収した。21日目、24日目、28日目、31日目、および37日目(チャレンジ後0日目、3日目、7日目、10日目、16日目)に、全ての動物の全血サンプルおよび鼻スワブ(swap)サンプルを回収した。
体温
図8に示すように、チャレンジコントロール群(群3)の平均体温はチャレンジ後に大きく変動し、豚が瀕死の状態となると体温は低下した。群1および群2の体温は、チャレンジ後の数日間(2日目~4日目)以内に高く上昇したが、すぐに、厳密なコントロール群と類似のレベルまで低下している。
白血球数
図9に示すように、チャレンジコントロール群の白血球数はチャレンジ後に大きく減少したが、ワクチン接種群における動物の白血球数はチャレンジ後にわずかに減少し、その後、上昇した。
【0128】
死亡率
図10に示すように、チャレンジコントロール群では子豚は全て死亡した(群3)。他の群では死亡した子豚はいなかった。
臨床的所見
臨床的所見は、表8に示すような、活気、身体の緊張(こわばり、けいれん)、体形(身体状態、筋肉組織の痩せ)、呼吸、歩行、皮膚、結膜の外観、食欲、および排便の評価からなる。ゼロは臨床徴候がないことを示し、臨床スコアの増大は、臨床徴候の重症度の程度の増大を示す。個々の動物が2を上回る全臨床スコアを示す場合、3つの連続的な所見ポイントが、CSFに関連する臨床徴候として考慮される。
【0129】
【表9】
図11に示すように、チャレンジコントロール群(群3)の平均臨床スコアは、チャレンジ後に増々と上昇した。群1、群2、および群4の平均臨床スコアは、研究中、全て0であった。
【0130】
ウイルスの単離
全血サンプル、鼻スワブサンプル、および扁桃腺サンプルにおけるウイルスの単離を、当技術分野における標準的な方法によって決定した。結果を以下の表9に示す。群1および群2から得た全てのサンプルは、全ての回収されたサンプルからのVI(ウイルス単離)が陰性であった。
【0131】
【表10】
【0132】
血清応答
サンプルの抗体力価を、IDEXX ELISA(カタログ番号99-43220)を使用して試験した。図12で見ることができるように、2つのIVP群の抗体力価は、21日目で陽性(>40%)であった。
結論
豚は、2つのIVPをワクチン接種された後に防御され、死亡率および罹患率は全て0%であった。ウイルス血症または遮蔽はIVP群から検出され得ず、CSFV陽性の扁桃腺組織は見られなかった。21日目の血清は、2つのIVP群で全て陽性であった。DIVA突然変異の導入(6B8エピトープへの)は、有効性に影響していない。
【0133】
(実施例7)
突然変異した6B8エピトープへの6B8 mAbの結合を決定するための免疫蛍光(immunoinfluoscent)アッセイ(IFA)
突然変異した6B8エピトープ(試験サンプル)への6B8 mAbの結合を、以下のステップに従った免疫蛍光(immunoinfluoscent)アッセイ(IFA)によって決定する:
1. 96ウェルマイクロタイタープレートに1.0×106個のSF9細胞/ウェルを播種し、その後、以下の組換えバキュロウイルスにMOI0.01で感染させ、それぞれ2セット行う:
(i)試験サンプル:修飾された6B8エピトープを有するE2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルス、
(ii)ポジティブコントロール:野生型6B8エピトープを有するE2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルス;
(iii)ネガティブコントロール:本明細書において記載される6B8エピトープ内にKARD突然変異を有するE2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルス。
【0134】
バキュロウイルスに感染した細胞を、約27℃のインキュベーター内で5日間保持する。
2. 培養培地を廃棄し、細胞を1×PBS(200~250μL/ウェル)で1回すすぐ。
3. 100μlの冷たいメタノール/アセトン(50:50)をウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートする。
4. 固定剤を規定の廃棄物容器に廃棄し、プレートを、ヒュームフードの下で15~30分間乾燥させる。
5. 6B8特異的なmAb(受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される抗体など)を、5%BSAを含有するPBSで1:500~1:1000に希釈し、次いで、50μL/ウェルでアッセイプレートに添加する。プレートに蓋を被せ、37℃で1~2時間インキュベートする。
6. アッセイプレートを1×PBS(250μL/ウェル)で3回すすぐ。
【0135】
7. 二次抗体である、6B8抗体に特異的に結合するAlexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート型ロバ抗マウス抗体(Invitrogen、カタログ番号21202)を、5%BSAを含有するPBSで400倍に希釈し、50μL/ウェルでアッセイプレートに添加する。プレートに蓋を被せ、37℃で1時間インキュベートする。
8. アッセイプレートを1×PBS(250μL/ウェル)で3回すすぐ。最後に、1×PBSを100μL/ウェルで添加する。最終蛍光シグナルを倒立型蛍光顕微鏡法で読み取る。
(両セットにおける)このIFAでの試験サンプルの負の結果は、E2タンパク質の6B8エピトープ内の1つまたは複数の突然変異が、このような突然変異した6B8エピトープへの6B8モノクローナル抗体の結合の特異的阻害をもたらすことを示している。
【0136】
(実施例8)
突然変異した6B8エピトープへの6B8 mAbの結合を決定するためのドットブロットアッセイ
突然変異した6B8エピトープ(試験サンプル)への6B8 mAbの結合を、以下のステップに従ってドットブロットアッセイによって決定する。
1. 1~5ugの、PBS中に希釈した各精製タンパク質をNC膜(Pall、カタログ番号66485)にスポットし、ヒュームフードの下で30分間以上空気乾燥する。
(i)試験サンプル:修飾された6B8エピトープを有するE2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルス、
(ii)ポジティブコントロール:野生型6B8エピトープを有するE2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルス。
2. 膜を、ブロック溶液(PBST中の5%脱脂乳)で、室温で1時間、ブロックする。
3. 6B8特異的mAb(受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される抗体など)を、5%脱脂乳を含有するPBSTで1:800~1:1000に希釈し、次いで、各ドット膜に10ml/膜で添加する。膜を蓋で密封し、37℃で1~2時間インキュベートする。
4. 一次抗体を廃棄し、各膜を3×PBSTで3回洗浄する。
【0137】
5. 二次抗体である、6B8抗体に特異的に結合するHRPコンジュゲート型抗マウス抗体(Bio-Rad、STAR117P)を、5%脱脂乳を含有するPBSTで2000倍に希釈し、各ドット膜に10ml/膜で添加する。膜を蓋で密封し、37℃で1時間インキュベートする。
6. 二次抗体を廃棄し、各膜を3×PBSTで3回洗浄する。
7. 各膜のブロットシグナルを、1~5mLのスーパーシグナルキット(Thermo、カタログ番号34080)を用いて室温で発色させる。
【0138】
8. 発色時間は1~10秒間であり、写真をchemdoc(Bio-Rad)で撮影する。
このドットブロットにおける試験サンプルの負の結果は、E2タンパク質の6B8エピトープ内の1つまたは複数の突然変異が、このような突然変異した6B8エピトープへの6B8モノクローナル抗体の結合の特異的阻害をもたらすことを示している。
【0139】
(実施例9)
CHO系及びバキュロウイルス系におけるE2タンパク質の発現比較
QZ07-E2をコドン最適化し(OptimumGene(商標)アルゴリズムを使用)(QZ07-E2のコドン最適化配列は配列番号82に示される)、CHO細胞発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Gibico、カタログ番号A29133)に従って合成した。可溶性かつ分泌された形態のE2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸(aa)を、最終的な最適化配列において欠失させ、一方、E1タンパク質の最後の21個のaaをシグナルペプチドとして付加した。合成した突然変異配列を、pCDNA3.4プラスミドにクローニングした。
【0140】
ExpiCHO-S(商標)細胞(Gibico、カタログ番号A29127、これはCHO-S細胞系のクローン誘導体である)をExpiCHO(商標)発現培地(Gibico、カタログ番号A2910001)での高密度懸濁培養に適応させた。ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)の使用説明書に従って、組換えpcDNA3.4プラスミドのトランスフェクションを実施した。発現は、ExpiCHO(商標)発現系のユーザーガイド(改訂版D.0、2018年5月25日、Thermo Fisher Scientific Inc)に従って、ExpiCHO(商標)Feed(高力価)法を使用して実施した。
【0141】
具体的には、ExpiCHO-S(商標)細胞を、37℃に予熱した新鮮なExpiCHO発現培地を有するフラスコに、6×106生存細胞/mlの最終密度で接種した。フラスコを穏やかに回旋させて細胞を混合した。プラスミドDNAを冷却OptiPRO培地で希釈し、ExpiCHO Fectamine CHO試薬を冷却OptiPRO培地で希釈した。次いで、上記の2つを一緒に混合し、ExpiFectamine CHO試薬/プラスミドDNA複合体を、室温で2分間インキュベートした。次いで、溶液をシェーカーフラスコにゆっくりと移し、添加中はフラスコを旋回させた。トランスフェクションの翌日、ExpiFectamine CHOエンハンサー及びExpiCHO Feedを添加し、添加中はフラスコを穏やかに回旋させた。フラスコを、空気中5%CO2の加湿雰囲気の32℃インキュベーター内の125±5rpmのオービタルシェーカーに置いた。上清及び細胞を遠心分離によって分離し、トランスフェクション後4日目~10日目に回収した。
【0142】
BEVS(バキュロウイルス発現ベクター系、上記を参照)での発現と比較した、CHO細胞でのQZ07-E2の発現結果を図13に示す。CHO発現系でのE2の収量は、BEVS系(約10μg/ml)と比較して高かった(約1mg/ml)。
CHO細胞及びBEVSで発現させたE2タンパク質の有効性を試験した。具体的には、50μgの未精製CHO発現E2及び50μgの精製BEVS発現E2を、豚に1回投与(IM)した(n=10匹の豚/群)。ワクチン接種21日後の血清中のCSF抗体を試験した。結果を図14に示す。E2を発現したCHOは、豚においてその免疫原性を維持していることを見て取ることができる。
【0143】
(実施例10)
E2タンパク質における6B8結合のための追加の重要な残基の同定
この実施例では、E2のアミノ酸10位、41位、及び64位が、6B8 mAb結合のための追加の重要な残基であると同定された。
Y10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、又はR64Eを含む突然変異体QZ07-E2タンパク質(アミノ酸配列はそれぞれ配列番号74~81に示されており、コドン最適化コード配列はそれぞれ配列番号83~90に示されている)を、それぞれCHO細胞で発現させ(前出の実施例に記載の方法に従って)、IFA(免疫蛍光アッセイ)試験に供した(前出の実施例に記載の方法に従って)。結果を図15に示す。置換Y10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、及びR64Eは、それぞれ6B8 mAb結合を阻害することができ、こうした突然変異をDIVAでも使用することができることを示す。
Y10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、又はR64Eを含む突然変異体QZ07-E2タンパク質の発現を、ウェスタンブロッティングによって検出した。結果を図16に示す。突然変異R64A及びR64Sは、CHO細胞系におけるタンパク質発現分泌にわずかに影響を及ぼしたに過ぎなかった。したがって、残基64での追加の突然変異を、発現及び有効性の評価のためにKARDと組み合わせることになる。
【0144】
(実施例11)
E2タンパク質における6B8結合を阻害するための追加の重要な残基の同定
この実施例では、E2のアミノ酸22位、24位、25位、及び64位でのより多くの突然変異が、6B8 mAb結合を阻害するための追加の重要なものであると同定された。
22位、24位、25位、及び64位にそれぞれ様々な突然変異を含む突然変異体QZ07-E2タンパク質をCHO細胞で発現させ(前出の実施例に記載の方法に従って)、IFA(免疫蛍光アッセイ)試験に供した(前出の実施例に記載の方法に従って)。22位、24位、25位、及び64位にそれぞれ様々な突然変異を含む突然変異体QZ07-E2タンパク質の発現を、ウェスタンブロッティングによって検出した。突然変異体QZ07-E2-Fc-R64D、突然変異体QZ07-E2-Fc-R64H、突然変異体QZ07-E2-Fc-R64T、突然変異体QZ07-E2-Fc-R64G、突然変異体QZ07-E2-Fc-R64Kを含む一部の突然変異体を、タンパク質発現を増強するために突然変異体E2のC末端をFc断片にさらに連結することによって調製した。突然変異体QZ07-E2-Fcタンパク質の調製方法は、上記の実施例を参照することができる。結果を図17~20に示す。
【0145】
アミノ酸22位の場合、G22A、G22Q、G22D、G22E、G22N、及びG22Sが、収量及びmAb 6B8との反応性の両方の点で置換候補であり得る。
アミノ酸24位の場合、G24Rは、依然としてmAb 6B8との弱い反応性を示し、G24D及びG24I突然変異体は、mAb 6B8と反応することができないが、収量が低い。
アミノ酸25位の場合、G25D、G25K、G25L、G25N、G25R、G25T、及びG25Vが、収量及びmAb 6B8との反応性の両方の点で置換候補であり得る。
アミノ酸26位の場合、R64A、R64K、及びR64Wが、収量及びmAb 6B8との反応性の点で突然変異体候補である。
【0146】
(実施例12)
突然変異体E2タンパク質の有効性評価
10位、14位、22位、24位、24位/25位、41位、又は64位に1つ又は複数の突然変異を有するE2タンパク質を、前出の実施例で使用した方法に従ってCHO細胞で発現させる。簡潔に述べると、突然変異体E2タンパク質をコードするコドン最適化配列を、pcDNA3.4ベクターにクローニングし、得られた構築物を、それぞれExpiCHO(商標)発現培地(Gibico、カタログ番号A2910001)での高密度懸濁培養に適応させたExpiCHO-S(商標)細胞(Gibico、カタログ番号A29127)にトランスフェクトし、トランスフェクションの約2~14日後にタンパク質を回収する。
【0147】
発現された突然変異体E2タンパク質の有効性を、前出の実施例に記載の方法に従って評価する。簡潔に述べると、子豚(3週齢)を様々なIVP試験群(試験しようとする突然変異体E2タンパク質に応じて)、チャレンジコントロール群、及び厳密な(ネガティブ)コントロール群に割り当てる。0日目に、IVP試験群の動物に、2mLのアジュバント化(Seppic ISA206)突然変異体E2タンパク質(約50μg/ml)をそれぞれ接種(IM)する。0日目にチャレンジコントロール群の動物にPBS+アジュバント(Seppic ISA206)を接種(IM)する。21日目に、IVP試験群及びチャレンジコントロール群の動物にCSFV Shimen株を用量≧105MLD/mLで接種(IM)する。21日目から37日目まで、直腸温度及び臨床観察を毎日収集する。-7日目から開始して7日毎に血清サンプルを採取する。21、24、28、31、及び37日目(DPC0、3、7、10、16)に、全ての動物の全血サンプル及び鼻スワブサンプルを採取する。有効性の評価のために、体温、白血球数、死亡率、表8に列挙されている臨床スコア、ウイルス単離、及び血清学的応答を分析する。
【0148】
CHO細胞での発現も、6B8エピトープへの追加の突然変異の導入も、有効性に悪影響を及ぼさない。
図1
図2
図3
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図5
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図20
【配列表】
2023546910000001.app
【国際調査報告】